説明

撮像装置

【課題】 ローパスフィルターの分光透過率の均一性を高め、ゴーストの発生を抑えると共に、光学的な収差発生に起因する結像性能の劣化を防止して、高品位な撮像を可能とする撮像装置を提供する。
【解決手段】 被写体からの光を、撮像レンズ110を介して撮像素子120に結像し、被写体を撮像する撮像装置100であって、撮像レンズ110と撮像素子120との間に配置され、撮像素子120が出力する撮像信号に含まれる偽信号の発生を抑圧する光学ローパスフィルター130を有し、光学ローパスフィルター130は、複屈折材料から構成され、少なくとも一断面に曲面を有することを特徴とする撮像装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、撮像装置に係り、特に、撮像光学系と撮像装置との間に光学ローパスフィルターを備えた撮像装置に関する。本発明は、例えば、ビデオカメラやデジタルカメラに好適である。
【背景技術】
【0002】
近年のビデオカメラやデジタルカメラなどの撮像装置の普及に伴って、かかる撮像装置には低コスト化及び撮像の高品位化がますます要求されるようになってきている。かかる撮像装置の一例として、図10に示すように、複数のレンズ群1100a乃至1100dで構成される撮像光学系1100と撮像素子1200との間に光学ローパスフィルター1300を配置したビデオカメラ1000が従来から提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。図10は、従来のビデオカメラ1000の構成を示す要部断面図である。
【0003】
ビデオカメラ1000を用いて所望の被写体を撮像する際、被写体を発した光は、撮像光学系1100を通過して光学ローパスフィルター1300に入射する。光学ローパスフィルター1300は、人工水晶などの複屈折性を有する透過部材で構成され、入射する光線を空間的に光路が離間した常光線と異常光線とに分離して射出する。かかる分離幅は、撮像素子1200の画素配列ピッチに応じており、被写体中の画素配列ピッチに近接する空間周波数成分が減衰されて撮像素子1200に像が形成され、被写体の特定空間周波数と撮像素子1200の画素配列ピッチとの干渉に起因するサンプリングノイズである偽信号が抑制される。
【0004】
更に、光学ローパスフィルター1300の射出面(撮像素子1200に対向して光軸に垂直な透過面)には、赤外反射膜1400が形成されており、光学ローパスフィルター1300から撮像素子1200に向かう光に含まれる赤外領域を中心とした波長の光(画質にとって有害な波長光)を反射し、撮像光学系1100側に戻す。これにより、撮像素子1200に形成される被写体像は有害波長光を含まず、撮像信号の画質が向上する。
【特許文献1】特開2002−152562号公報
【特許文献2】特開平10−10423号公報
【特許文献3】特開平7−123424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の撮像装置は、光学ローパスフィルターが有する入射角度依存性によって、近年要求されている撮像の高品位化を十分に達成することができなくなってきた。撮像光学系を経た光は、様々な角度で光学ローパスフィルターの入射面に入射するため、透過率特性の均一性が劣化し、色むらを発生させてしまうからである。
【0006】
一方、赤外反射膜も光学ローパスフィルターと同様に、入射角度依存性を有するため、色むらの発生の原因となる。また、赤外反射膜で反射された光(即ち、赤外領域を中心とした波長の光)は、通常、撮像光学系を通過して外部に射出されたり、撮像装置の筐体などに吸収されたりするが、一部の光は撮像光学系のレンズ面(光学面)で再反射されて撮像素子に達する場合がある。かかる光が撮像素子に達すると、撮像画面には赤色がかったゴースト(赤色ゴースト)が現れ、撮像の高品位化の妨げとなる。赤外反射膜で反射した光が撮像光学系のレンズ面で再反射して撮像素子に入射することがないように、光学ローパスフィルターを光軸に対して所定の角度傾けることも考えられる。しかし、所定の厚さを有する光学ローパスフィルターを傾けると、撮像光学系の非点収差、コマ収差等が発生し、結像性能が劣化してしまう。
【0007】
また、赤外反射膜の代わりに赤外吸収フィルターを用いて赤外領域を中心とした波長の光を吸収することもできる。しかし、赤外吸収フィルターは、赤外反射膜と比較してコストが高い(即ち、撮像装置全体のコストを引き上げる)ため、低コスト化の要求に反する。
【0008】
そこで、本発明は、ローパスフィルターの分光透過率の均一性を高め、ゴーストの発生を抑えると共に、光学的な収差発生に起因する結像性能の劣化を防止して、高品位な撮像を可能とする撮像装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての撮像装置は、被写体からの光を、撮像レンズを介して撮像素子に結像し、前記被写体を撮像する撮像装置であって、前記撮像レンズと前記撮像素子との間に配置され、前記撮像素子が出力する撮像信号に含まれる偽信号の発生を抑制する光学ローパスフィルターを有し、前記光学ローパスフィルターは、複屈折材料から構成され、少なくとも一断面に曲面を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ローパスフィルターの分光透過率の均一性を高め、ゴーストの発生を抑えると共に、光学的な収差発生に起因する結像性能の劣化を防止して、高品位な撮像を可能とする撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面である撮像装置について説明する。なお、各図において、同一の部材については、同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
まず、本発明の例示的一態様である撮像装置の理解を深めるために、本発明の撮像装置の特徴的な要件について説明する。
【0014】
本発明の撮像装置は、撮像レンズを介して撮像素子に被写体の像を形成し、被写体像を撮像する撮像装置であって、撮像レンズと撮像素子との間に、撮像素子が出力する撮像信号に含まれる偽信号の発生を抑制する光学ローパスフィルターを有している。そして、この光学ローパスフィルターは、複屈折材料から構成され、少なくとも一断面に曲面を有することを特徴とする。これは、光学ローパスフィルターに付加される赤外反射膜や紫外反射膜などの角度依存性や光学収差を低減するために好ましい要件であり、可視域、赤外及び紫外の面反射ゴースト回避にも有効な要件である。
【0015】
この光学ローパスフィルターの曲面は、撮像素子側に凸面形状を有し、曲面の有効範囲の近似曲率半径Rは、以下の数式1で示される関係を満足することが好ましい。
【0016】
【数1】

【0017】
数式1の下限値を超えると、同じ画角の光線で光学フィルターに対する光線入射角度差が大きくなるため、特定の画角において、コマ収差や像面湾曲等が大きく発生し、結像性能が劣化する。また、数式1の上限値を超えると、光学ローパスフィルターに対する光線入射角度を中心画角と周辺画角で揃えることが困難となり、中心部と周辺部の分光透過率むらの補正が困難となる。
【0018】
また、光学ローパスフィルターの厚さTは、以下の数式2で示される関係を満足することが好ましい。
【0019】
【数2】

【0020】
数式2の下限値を超えると、ローパス特性を左右する光線分離幅が小さくなりすぎるために、十分なローパス効果を得ることが困難となる。数式2の上限値を超えると、光学ローパスフィルターの曲面の入射側と反射側での光線の位置ずれによる光学的な非点収差及び球面収差の発生量が大きくなるために、結像性能が劣化することになる。
【0021】
また、光学ローパスフィルターの厚さのばらつきは、1%以内であることが好ましい。これにより、光学ローパスフィルターがパワーを有することなく、優れたローパス効果を発揮することができる。
【0022】
また、光学ローパスフィルターは、複屈折型高分子材料で構成すると加工上有利である。かかる複屈折型高分子材料は、常光線と異常光線の屈折率差を大きくすることが可能であり、光学ローパスフィルターを、数式2に示すような、適度な厚さにすることができる。また、樹脂製であることから、容易に曲面化して形成したり、成形時に平面のものを湾曲させたりして用いることが可能である。
【0023】
また、光学ローパスフィルターは、撮像光軸近傍より離れた位置を中心軸として回転可能とすることもできる。このとき、撮像光軸と中心軸までの距離をX、回転軸及び撮像光軸と直交する方向の光線有効幅をYとしたとき、以下の数式3で示される関係を満足することが好ましい。
【0024】
【数3】

【0025】
これは、光学ローパスフィルターを回転させることによって、そのローパス効果を可変させるものである。数式3の下限値を超えると、光学ローパスフィルターの可変範囲を十分に取るために回転角度を大きくした場合、回転時に光学ローパスフィルターに対する上下方向での入射角の差が大きくなってしまうため、色むらが大きくなってくる。数式3の上限値を超えると、光学ローパスフィルターの回転角度を大きくした場合、そのスペースを確保するために撮像装置全体が大型化してしまう。
【0026】
また、光学ローパスフィルターは、撮像レンズの有効光束通過外に退避可能とすることもできる。これにより、ローパス効果を可変にする場合、ローパス効果がないモードを設定することができる。
【0027】
また、光学ローパスフィルターの曲面の形状は、可変とすることもできる。これにより、焦点距離が変動するズームレンズや、光学ローパスフィルターに入射する角度が限定されないレンズ交換式の撮像装置にも対応することが可能となる。
【0028】
以下、図1乃至図9を参照して、本発明の撮像装置の実施例を具体的に説明する。図1は、本発明の一側面としての撮像装置100の構成を模式的に示す概略断面図である。
【0029】
撮像装置100は、被写体からの光を、撮像レンズを介して撮像素子に結像し、被写体を撮像する撮像装置であり、本実施形態では、ビデオカメラ又はデジタルカメラなどで具現化される。
【0030】
図1において、110は撮像光学系(撮像レンズ)を示す。撮像光学系110は複数のレンズ群を有する。例えば、撮像光学系は4つのレンズ群で構成されるズームレンズであり、被写体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群、変倍のために光軸に沿って移動する負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、変倍に伴う像面位置の変動を補償する正の屈折力の第4レンズ群によって構成される。また、LU及びLDは、撮像光学系110から射出される上下方向の最大画角の中心光束を示す。
【0031】
120は、光電変換面に形成された光学像を電気信号に変換する撮像素子を示す。撮像素子120は、撮像光学系110の結像面に配置され、本実施形態では、CCD(Charge Couple Device)である。
【0032】
130は、光学ローパスフィルターを示し、図1に示すように、撮像素子120に対して(即ち、撮像素子120側に)凸面形状を有する。光学ローパスフィルター130は、撮像光学系110から入射する光線を空間的に光路が離間した常光線と異常光線とに分離して射出する。光学ローパスフィルター130の分離幅は、撮像素子120の画素配列ピッチに応じた寸法であり、被写体の画素配列ピッチに応じた所定の空間周波数成分を減衰させて、撮像素子120の光電変換面に像を形成する。換言すれば、光学ローパスフィルター130は、ある特定の空間周波数の像をぼかす機能を有する。
【0033】
光学ローパスフィルター130は、回転軸RAを中心に回転できるように構成され、例えば、130a、130b及び130cの位置、又は、その中間にも移動可能に構成される。これにより、光学ローパスフィルター130に対する光の入射角度を変化させることが可能となり、光線分離度合いを変化させ、ローパス効果を可変にすることができる。なお、130cの位置では、光学ローパスフィルター130は、光束外(即ち、最大画角の中心光束LU及びLDの領域外)に退避されるために、ローパス効果がないモードとなる。また、本実施形態の光学ローパスフィルター130は、通常、130aの位置に固定されている。
【0034】
光学ローパスフィルター130は、人工水晶などの複屈折性を有する透過部材で構成され、本実施形態では、特開平8−122708号公報で提案されているような複屈折型の高分子材料を含む材料を複数枚接合して構成される。かかる材料は、常光線と異常光線の屈折率差を大きく確保することができるために薄くすることが可能であり、本実施形態では、0.2mmに設定されている。
【0035】
本実施形態の光学ローパスフィルター130は、赤外反射特性(即ち、赤外反射膜)及び紫外光カット特性(紫外反射膜)が付加され、一の機能光学素子となっている。図1に示すように、光学ローパスフィルター130が撮像光学系110に対して凹面形状を向けた構成となっているのは、光学ローパスフィルター130に対する撮像光学系110からの光線入射角度において、光軸近傍と周辺光束部(最大画角の中心光束LU及びLD)との差を小さくするような曲率に設定しているからである。このように設定することにより、赤外反射膜の分光透過率の入射角度依存性による色むらを低減させることができる。また、反射される赤外光の発散及び集光の度合いを光学ローパスフィルター130の曲率(の自由度)によって変化させることが可能であり、撮像素子120では集光しないように制御することができる。本実施形態では、光学ローパスフィルター130の曲面は、入射角度依存性とゴーストの2つの要素がバランスのよい曲率に設定されている。なお、面反射ゴースト回避の原理に関しては、可視光及び紫外光も同様である。
【0036】
図2を参照して、光学ローパスフィルター130に対する入射角度(面法線に対する角度)の均一性(の向上)について説明する。図2は、光学ローパスフィルター130の入射角度依存性について説明するための図である。
【0037】
図2(a)を参照するに、撮像光学系110の射出瞳の中心EEから±20度の範囲で、最大画角の中心光束LU及びLDが射出されているとする。この場合、光学ローパスフィルター130に対する入射角は、中心(光軸近傍)で0度、光束LU及びLDの周辺部で20度となる。ここで、光学ローパスフィルター130を光軸を中心に30度回転させ(図2(a)中の破線(130’))、ローパス効果(常光線と異常光線の光線分離幅)を変化させる。この位置での光学ローパスフィルター130’に対する入射角は、中心(光軸近傍)で30度、光束LU及びLDの周辺部で10度及び50度となり、光束LUと光束LDでは相対的に40度の大きな入射角度差となる。
【0038】
そこで、図2(b)に示すように、撮像光学系110の射出瞳EEを中心とし、曲率半径をRとする曲面をローパスフィルター130に形成することにより、光学ローパスフィルター130に対する入射角は、中心(光軸近傍)及び光束LU及びLDの周辺部でも上下方向に関しては0度となる。更に、図2(b)に破線で示す光軸を中心に30度回転させた光学ローパスフィルター130’においても、光学ローパスフィルター130’に対する入射角を、中心(光軸近傍)で30度、光束LU及びLDの周辺部で31度及び25度にすることができ、相対入射角度差を小さくすることができる。
【0039】
本実施形態では、図2(c)に示すように、光学ローパスフィルター130の回転軸RAを、光束LDが光学ローパスフィルター130を通過する位置の近傍に設定している。この場合、30度回転させた光学ローパスフィルター130’に対する入射角は、中心(光軸近傍)で31度、光束LU及びLDの周辺部で28度及び30度となり、相対入射角度差を小さくすることができる。また、45度回転させた光学ローパスフィルター130’’に対する入射角は、図2(d)に示すように、中心(光軸近傍)で49度、光束LU及びLDの周辺部で46度及び45度となり、相対入射角度差を更に小さくすることができる。
【0040】
光学ローパスフィルター130は、本実施形態では、図3に示すように、厚さT=0.2mm、曲率半径R=70mmの円筒面形状を有し、光軸から回転中心までの距離をX、光学ローパスフィルター130の光線有効幅をYmmとしたとき、X/Y=0.50の位置を回転中心とする。光学ローパスフィルター130の角度が変化することによる上下方向の光線分離幅の変化を図4及び図5に示す。ここで、図3は、光学ローパスフィルター130の形状を示す概略斜視図である。図4は、光学ローパスフィルター130の光線分離方向を示す図である。図5は、光学ローパスフィルター130のローパス特性(光線分離幅)を示すグラフであって、横軸に光学ローパスフィルター130の角度(度)を、縦軸に分離幅(mm)を採用した。
【0041】
撮像装置100は、図6に示すように、光学ローパスフィルター130を130a及び130bの位置のみに移動可能に構成してもよい。図6に示す撮像装置100は、ローパス効果がないモードがないために、撮像光学系110と撮像素子120との間を、図1に示す撮像装置100と比較して短くすることが可能である。
【0042】
また、ローパス効果を変化させる方向に関しては、図1に示す撮像装置100の場合は、図1に対して上下方向であり、紙面と直交する方向の分離幅は変化していない。一方、図6に示す撮像装置100では、130aの位置における光線分離方向を図6の上下方向と紙面と直交する方向との中間で、45度方向と135度方向の4点分離に設定することにより、1方向に光学ローパスフィルター130を傾けることで2次元方向におけるローパス効果の可変を可能としている。ここで、図6は、撮像装置100の別の構成を模式的に示す概略断面図である。
【0043】
図6に示す撮像装置100における光学ローパスフィルター130は、図7に示すように、厚さT=0.4mm、曲率半径R=50mmの球面形状を有し、光軸から回転中心までの距離をXmm、光学ローパスフィルター130の光線有効幅をYmmとしたとき、X/Y=0.65の位置を回転中心とする。本実施形態の光学ローパスフィルター130による光線分離の方向を図8に示す。ここで、図7は、光学ローパスフィルター130の形状を示す概略斜視図である。図8は、光学ローパスフィルター130の光線分離方向を示す図である。
【0044】
また、図3に示すような円筒面形状を有する光学ローパスフィルター130は、図9に示すように、断面形状(130α、130β、130γ)を可変とする構成にしてもよい。これは、ズームレンズを装着して変倍したり、レンズ交換式のカメラにおいては、撮像光学系の射出瞳の位置が変化するために、かかる影響で光学ローパスフィルター130に入射する光の角度が変化し、分光透過率などの角度依存性が生じて色むらが発生したり、ある撮像条件においてはゴーストが発生してしまうからである。このような場合、光学ローパスフィルター130の曲面を変化可能に構成することにより、どのようなズームレンズやレンズ交換式のカメラにも対応させることが可能となる。本実施形態では、光学ローパスフィルター130の曲面の曲率を変化させるために、複屈折型の高分子材料を光学ローパスフィルター130に用いて、例えば、固定枠を機械的に変形可能にして素材弾性力によって滑らかに連続的に変形(曲率変化)可能としている。かかる光学ローパスフィルター130は、例えば、厚さT=0.05mm、曲率半径R=40乃至500mmの可変円筒面形状で構成される。
【0045】
以上説明したように、撮像装置100は、光学ローパスフィルター130の分光透過率の均一性を高めることが可能であり、面反射ゴーストの少ない高品位な撮像を提供することができる。また、光学ローパスフィルター130のローパス特性を可変とし、光学ローパスフィルター130を回転させた場合においても、光学的な収差発生による結像性能の劣化が少なく、分光透過率の均一性を維持することができる。更に、レンズ交換やズームレンズの変倍により、撮像光学系の射出瞳の位置が変化しても上述の効果を得ることができる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一側面としての撮像装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
【図2】図1に示す光学ローパスフィルターの入射角度依存性について説明するための図である。
【図3】図1に示す光学ローパスフィルターの形状を示す概略斜視図である。
【図4】図1に示す光学ローパスフィルターの光線分離方向を示す図である。
【図5】図1に示す光学ローパスフィルターのローパス特性(光線分離幅)を示すグラフである。
【図6】本発明の撮像装置の別の構成を模式的に示す概略断面図である。
【図7】図6に示す光学ローパスフィルターの形状を示す概略斜視図である。
【図8】図6に示す光学ローパスフィルターの光線分離方向を示す図である。
【図9】断面形状(曲面形状)を可変とする光学ローパスフィルターを示す概略断面図である。
【図10】従来のビデオカメラの構成を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0048】
100 撮像装置
110 撮像光学系
120 撮像素子
130 光学ローパスフィルター
LU及びLD 光束
RA 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を、撮像レンズを介して撮像素子に結像し、前記被写体を撮像する撮像装置であって、
前記撮像レンズと前記撮像素子との間に配置され、前記撮像素子が出力する撮像信号に含まれる偽信号の発生を抑制する光学ローパスフィルターを有し、
前記光学ローパスフィルターは、複屈折材料から構成され、少なくとも一断面に曲面を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記光学ローパスフィルターの曲面は、前記撮像素子側に凸面形状を有し、
前記曲面の有効範囲の近似曲率半径Rは、
20mm<R<1000mm
を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記光学ローパスフィルターの厚さTは、
0.01mm<T<0.5mm
を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記光学ローパスフィルターの厚さのばらつきは、1%以内であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光学ローパスフィルターは、複屈折型高分子材料から構成されることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光学ローパスフィルターは、撮像光軸近傍より離れた位置を中心軸として回転可能であり、
前記撮像光軸と前記中心軸までの距離をX、前記回転軸及び前記撮像光軸と直交する方向の光線有効幅をYとしたとき、
0.25<X/Y<0.75
を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光学ローパスフィルターは、前記撮像レンズの有効光束通過外に退避可能であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項8】
前記光学ローパスフィルターの曲面の形状は、可変であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−109144(P2006−109144A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293808(P2004−293808)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】