説明

撮像装置

【課題】 高解像度かつ高フレームレートの撮像装置を提供する。
【解決手段】 撮像素子103aに結像光の反射光が入射するよう可動ミラー101を偏向させ、撮像素子103bに結像光の反射光が入射するよう可動ミラーを偏向させ、撮像素子103cに結像光の反射光が入射するよう可動ミラーを偏向させて、撮像素子103a、103b、103cによりそれぞれ可動ミラーの反射タイミングで撮像光を受光した複数の信号を合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD、CMOSイメージセンサなどを撮像デバイスとする撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD、CMOSイメージセンサなどを撮像デバイスとして動画、静止画を撮像するカメラの高画質化、小型化、低価格化が進んでいる。CMOSイメージセンサは、CCDと比べ、感度が劣るが、約1/10の消費電力で動作すること、また3.3Vの単一電圧で駆動できること、周辺回路を一体化できることなどを大きな特徴とし、デジタルカメラの省電力化と小型化、低価格化に貢献しており、既にCMOSイメージセンサを採用した実用レベルのデジタルカメラが販売されている。
【0003】
CCD、CMOSイメージセンサなどを撮像素子として動画、静止画を撮像するカメラにおいて、CCDなどにより光電変換した信号をA/D変換し、デジタル的に信号処理する際、人間の目の解像度は暗い方に対して高く、明るい方に対しては低いという特性があるため、光量に対してリニアな感度特性を持つ光電変換した信号を単純にA/D変換しただけでは、A/D変換のダイナミックレンジを有効に使えないという問題がある。
【0004】
そこで、撮像デバイスそのもののダイナミックレンジの狭さを解消する手法として、実際の露光量と異なる露光量として撮像し、異なる露光量で撮像した信号を合成することも行われている。この方法には、光学系においてミラーあるいはプリズムによりレンズの結像光を2分割し、それぞれ異なる露光で撮像する方法(例えば下記の特許文献1参照)、同一の撮像デバイス内部において時分割で異なる露光量で撮像した信号を加算して出力する方法などが知られている。
【0005】
CMOSイメージセンサでは、画素単位でPD(フォトダイオード)をリセットすることが可能であるため、露光途中のPDをあるレベルでリセットし、リセットレベルより信号が多いPDの電荷を部分的に捨ててから、再度露光を開始することによって、感度特性に非直線性を持たせることができ、ダイナミックレンジの向上が可能となる(下記の非特許文献1参照)。また、画素を形成するPDの負荷抵抗をFETで形成することによっても、感度特性に非直線性を持たせることが可能となる。
【0006】
また、前記光学系によりレンズの結像光を2分割する構造では、複数の撮像素子で撮像した後、合成することで高解像度を得ることができる。また、複数の撮像素子を画素の半ピッチあるいはそれ以下の量だけ位置をずらして配置することにより、得られた複数の画像から撮像素子の画素数より多い情報を得ることができる、画素ずらしによる高解像度化の手法も数多く提案されており、手振れを防止するための、光学系と撮像素子を相対的に変位させる変位手段(振動素子)によって画素ずらしを行う撮像装置も提案されている(下記の特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−154210号公報(要約書)
【特許文献2】特開平7−240932号公報(要約書)
【非特許文献1】映情学技報 Vol.28 No.58/59
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現在、一般に普及している安価なCMOSイメージセンサを撮像素子とした撮像装置の解像度及びフレームレートは、VGAクラス(35万画素程度)で30[fps]程度であり、UXGAクラス (200万画素程度)では10[fps]である。そのため、高解像度かつ高フレームレートの撮像装置の実現は困難であった。また、CCDを撮像素子とした場合でも、SXGAクラス(145万画素程度)でのフレームレートは最大30[fps]程度のものが実現されているが、非常に高価である。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、高解像度かつ高フレームレートの撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、撮像し集光して得た撮像光を複数の撮像素子の受光面側に対して順次反射供給し、順次受光した前記複数の撮像素子からそれぞれ出力される撮像信号をフレーム単位で合成することによって高解像度の撮像信号を出力する撮像装置であって、
前記撮像光を受光可能であり、かつ前記複数の撮像素子の受光面側に位置しており、前記複数の撮像素子の受光面側へ前記撮像光を順次反射供給するように順次偏向させる可動ミラーを有する。
【0010】
また、本発明は上記目的を達成するために、撮像し集光して得た撮像光を複数の撮像素子の受光面側に対して順次反射供給し、順次受光した前記複数の撮像素子からそれぞれ出力される撮像信号をフレーム単位で合成することによって高解像度の撮像信号を出力する撮像装置であって、
前記撮像光を受光可能であり、かつ前記複数の撮像素子の受光面側に位置し、かつ前記複数の撮像素子の受光面側にそれぞれ対応する位置に設けた複数の反射面を備えており、前記複数の撮像素子の受光面側へ前記撮像光を前記複数の反射面をそれぞれ介して順次反射供給するように順次偏向させる可動ミラーを有する。
【0011】
また、前記可動ミラーは、前記撮像し集光して得た撮像光の光スポットに対して十分大きい反射面を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可動ミラーと複数の安価な撮像素子を用い、撮像光を可動ミラーによって複数の撮像素子に順次に照射させ、複数の撮像素子からの出力信号を合成することにより、高解像度かつ高フレームレートの撮像装置を安価に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図1に、実施の形態1における、撮像素子の数を3とした場合の撮像部の構造を示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は被写体側から見た正面図、図1(c)は可動ミラーの背面から見た背面図である。撮像部は、可動ミラー101、撮像レンズ102、撮像素子103a、103b、103cから構成される。可動ミラー101は2次元に偏向が可能であり、可動ミラー101の回転軸と撮像レンズ102は中心軸が一致するように配置され、撮像素子103a、103b、103cは撮像レンズ102の周辺に、撮像面を可動ミラー101側、すなわち被写体とは反対側に向けて配置される。
【0014】
被写体からの光は撮影レンズ102を通して結像光となり、可動ミラー101によって反射される。可動ミラー101は、撮像レンズ102によって集光される、被写体からの結像光の大きさに対して充分大きいものとする。可動ミラー101は結像光の反射光が撮像素子103a、103b、103cに順次に照射されるように偏向を繰り返す。図2(a)は撮像素子103aに結像光の反射光が入射するよう可動ミラー101を偏向させた場合、図2(b)は撮像素子103bに結像光の反射光が入射するよう可動ミラー101を偏向させた場合、図2(c)は撮像素子103cに結像光の反射光が入射するよう可動ミラー101を偏向させた場合を示している。
【0015】
図3に撮像素子のフレームレートと露光時間の関係について示す。図3(a)は一般的な撮像素子のフレームレートと露光時間である。図3(b)はCCDの蓄積方式であるグローバルシャッター方式の読込時間を示している。CCDでは、同一時間内に画素内のPDへ入射した光を信号電荷として蓄積し、全ての画素を同時に垂直CCDへ読み出す。図3(c)は一般的なCMOSイメージセンサの蓄積方式であるローリングシャッター方式の読込時間を示している。一般的なCMOSイメージセンサでは、信号を出力した画素はその時点から、再び光電変換した信号の蓄積を開始するため、撮像面の走査方法、タイミングにより、蓄積時間にずれが生じる。この方式では、高速に動く被写体を撮像する際に、撮像画像に歪みが生じる。そのため、近年、CMOSイメージセンサにもグローバルシャッターの機能を有するものが増えている。本発明では、CCDまたはグローバルシャッター機能を有するCMOSイメージセンサを撮像素子103a、103b、103cとする。
【0016】
図4は3つの撮像素子103a、103b、103cを約130万画素、フレームレートを10[fps]、撮像素子103a、103b、103cをグローバルシャッター機能を有するCMOSイメージセンサとした場合の撮像タイミングを示す。撮像素子103aの露光時間t1では、可動ミラー101は被写体からの撮像光の反射光が撮像素子103aに入射するよう偏向している。撮像素子103aの露光時間t1が終了し、蓄積時間に入ると、可動ミラー101は反射光が撮像素子103bに入射するように偏向し、撮像素子103bの露光時間t2の間、その偏向を維持する。撮像素子103bの露光時間t2が終了し、蓄積時間に入ると、可動ミラー101は反射光が撮像素子103cに入射するように偏向し、撮像素子103cの露光時間t3の間、その偏向を維持する。撮像素子103cの露光時間t3が終了し、蓄積時間に入ると同時に、撮像素子103aの蓄積時間が終了し、可動ミラー101は、再び反射光が撮像素子103aに入射するよう偏向する。上記タイミングで撮像素子103a、103b、103cによって撮像された画像を合成することにより、30[fps]のフレームレートを得ることができる。
【0017】
<実施の形態2>
図5に、撮像素子の数を3とした場合の実施の形態2における撮像部の構造を示す。被写体からの光は撮影レンズ102を通して結像光となり、可動ミラー101によって反射される。可動ミラー101は、入射する撮像光を撮像素子103aの方向へ反射する面101aと、撮像素子103bの方向へ反射する面101bと、撮像素子103cの方向へ反射する面101cを有し、反射面101a、101b、101cによりそれぞれ反射された撮像光が撮像素子103a、103b、103cにより撮像される。可動ミラー101の各反射面101a、101b、101cは、被写体からの結像光の大きさに対して充分大きいものとし、また、可動ミラー101はそれぞれの面101a、101b、101cに順次撮像光が入射するように回転軸を中心に回転する。
【0018】
図5(a)、(d)はそれぞれ撮像素子103aに結像光の反射光が入射するよう可動ミラー101を回転させた場合の正面図及び背面図、図5(b)、(e)はそれぞれ撮像素子103bに結像光の反射光が入射するよう可動ミラー101を回転させた場合の正面図及び背面図、図5(c)、(f)は撮像素子103cに結像光の反射光が入射するよう可動ミラー101を回転させた場合の正面図及び背面図を示している。実施の形態1と同様に、図4に示す撮像タイミングによって可動ミラー101を回転させ、撮像素子103a、103b、103cへ撮像光を入射させることにより、従来の3倍のフレームレートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における撮像部を示す構成図である。
【図2】図1の可動ミラーの偏向を示す説明図である。
【図3】従来の撮像素子のフレームレートと露光時間の関係について示す説明図である。
【図4】図1の撮像部におけるフレームレートと露光時間の関係について示す概念図である。
【図5】本発明の実施の形態2における撮像部を示す構成図及び可動ミラーの偏向を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
101 可動ミラー
101a、101b、101c 反射面
102 撮像レンズ
103a、103b、103c 撮像素子
t1、t2、t3 撮像素子103a、103b、103cの露光時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像し集光して得た撮像光を複数の撮像素子の受光面側に対して順次反射供給し、順次受光した前記複数の撮像素子からそれぞれ出力される撮像信号をフレーム単位で合成することによって高解像度の撮像信号を出力する撮像装置であって、
前記撮像光を受光可能であり、かつ前記複数の撮像素子の受光面側に位置しており、前記複数の撮像素子の受光面側へ前記撮像光を順次反射供給するように順次偏向させる可動ミラーを有する撮像装置。
【請求項2】
撮像し集光して得た撮像光を複数の撮像素子の受光面側に対して順次反射供給し、順次受光した前記複数の撮像素子からそれぞれ出力される撮像信号をフレーム単位で合成することによって高解像度の撮像信号を出力する撮像装置であって、
前記撮像光を受光可能であり、かつ前記複数の撮像素子の受光面側に位置し、かつ前記複数の撮像素子の受光面側にそれぞれ対応する位置に設けた複数の反射面を備えており、前記複数の撮像素子の受光面側へ前記撮像光を前記複数の反射面をそれぞれ介して順次反射供給するように順次偏向させる可動ミラーを有する撮像装置。
【請求項3】
前記可動ミラーは、前記撮像し集光して得た撮像光の光スポットに対して十分大きい反射面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−67570(P2007−67570A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248252(P2005−248252)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】