説明

撮像装置

【課題】X線検出部のオフセット値に応じて、X線の撮像開始を示すトリガが正確に生成できる撮像装置を提供すること。
【解決手段】X線照射により生成されるX線像を撮像する撮像部7と、X線照射を検出し、この検出結果を示す検出信号を出力するX線検出部90と、X線検出部90のオフセット値を記憶するEP−ROM93aと、EP−ROM93aに記憶されたオフセット値に基づいて、撮像部7による撮像の開始タイミングを検出信号から取得するための基準情報を生成する信号処理部61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線像を撮像する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、CCD(Charge Coupled Devices)を有するイメージセンサを用いて、被検者の歯牙等のX線像を撮像するX線撮像装置(X線画像形成装置)が開示されている。このイメージセンサは、X線像を撮像するCCDに加えて、X線の照射タイミングを検知するためのモニタ用のフォトダイオード(X線検出部)を有する。このX線検出部からの出力信号に基づいてX線撮像の開始・終了を示すトリガ信号が生成される。具体的には、出力信号の値が所定閾値を超えるとX線撮像の開始を示すトリガ信号が生成される。
【特許文献1】特許第3335350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、X線検出部からの出力信号のオフセット値はX線検出部毎に異なっており、同様のX線強度であってもX線検出部が異なれば出力信号の値も異なる。このため、X線が照射されても出力信号の値が予め設定された閾値を超えず、X線の撮像開始を示すトリガ信号が生成されない、という事態が生じ得る。そこで、本発明の目的は、X線検出部のオフセット値に応じて、X線の撮像開始を示すトリガが正確に生成できる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、X線照射により生成されるX線像を撮像する撮像手段と、上記X線照射を検出し、この検出結果を示す検出信号を出力するX線検出手段と、上記X線検出手段のオフセット情報を記憶する記憶手段と、上記記憶手段に記憶された上記オフセット情報に基づいて上記撮像手段による撮像の開始タイミングを上記検出信号から取得するための取得基準情報を生成する基準情報生成手段とを備える。従って、X線検出手段のオフセット情報が記憶手段に予め記憶されているので、X線検出手段毎のオフセット値のバラつきに応じて取得基準情報をその都度調整する、という作業が必要無くなる。
【0005】
また、本発明は、X線照射により生成されるX線像を撮像する撮像手段と、上記X線照射を検出し、この検出結果を示す検出信号を出力するX線検出手段と、上記検出信号に基づいて上記X線検出手段のオフセット情報を取得し、このオフセット情報に基づいて上記撮像手段による撮像の開始タイミングを上記検出信号から取得するための取得基準情報を生成する基準情報生成手段とを備える。このように、X線検出手段からの検出信号に基づいて取得基準情報が生成され、この取得基準情報に基づいて撮像開始タイミングがこの検出信号から取得できるので、検出信号に含まれるX線検出手段のオフセット値のバラつきによらず、撮像開始タイミングがX線照射の度に正確に取得できる。更に、X線検出手段毎のオフセット値のバラつきに応じて取得基準情報をその都度調整する、という作業が必要無くなる。
【0006】
更に、上記基準情報生成手段は、上記オフセット情報と上記X線の照射強度とに基づいて上記取得基準情報を生成することを特徴とする。このように、オフセット情報に加えてX線の照射強度に基づいて、取得基準情報が生成されるので、X線の照射強度の変動によらずに撮像開始タイミングが確実に取得できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、X線検出部のオフセット値に応じて、X線の撮像開始を示すトリガが正確に生成できる撮像装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0009】
<第1実施形態> まず、図1(a)を参照してX線撮像システム10の構成を説明する。X線撮像システム10は、医療用のX線撮像システムであり、被検者の歯牙等に対するX線撮像を行うためものものである。このX線撮像システム10は、X線照射装置1、X線撮像装置2、PC(Personal Computer)3及びディスプレイ4を備える。X線照射装置1は、歯牙等にX線照射を行うX線照射装置であり、固定設置型に構成されている。X線照射装置1は、X線の照射開始指示の入力に応じて、X線の照射終了指示の入力までの間(或いは、照射終了用のタイマが満了するまでの間)に、高周波インバータ方式で得られる完全直流電圧の電圧波形に応じた定常的なX線照射を行う。なお、X線照射装置1は、AC電源電圧の半波整流波形に応じた周期的なX線照射を行うことも可能である。
【0010】
X線撮像装置2は、歯牙等のX線像を撮像するためのX線撮像装置であり、光像取得部5と制御部6とを備える。光像取得部5は、撮像部7(撮像手段)と接続部8とを有しており、撮像部7は信号ケーブルL1を介して接続部8に接続されている。撮像部7は、後述のCCD72を有し、このCCD72によって歯牙等に対するX線像の撮像を行う。撮像部7は、被検者の口腔内に容易に挿入可能な寸法形状を有している。ここで、図1(b)に、撮像部7が被検者の口腔内に挿入された状態の一例を示す。撮像部7は、被検者の上顎にある前歯の内側に挿入され、この撮像部7からは信号ケーブルL1が口腔の外部に延びている。制御部6は、信号ケーブルL2を介してPC3に接続されている。制御部6は、PC3から送信された光像取得部5に対する各種制御指示に応じて、光像取得部5(特に撮像部7)を制御したり、PC3に画像データを送信したりする。信号ケーブルL2は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等である。USBケーブルは、信号の送受信に加え、X線撮像装置2に対する電源供給が可能である。
【0011】
PC3は、信号ケーブルL2を介して、X線撮像装置2に対する各種設定(例えば、解像度の設定等)やX線撮像指示を行ったり、X線撮像装置2からX線像を表す画像データを取り込んで各種解析(例えば、画像の特定領域の抽出・拡大等)を行ったり、更には、この画像データや解析結果を表すデータをメモリに保存したりする。更に、PC3は、X線撮像装置2から取り込んだ画像データに基づいて、ディスプレイ4にX線像を表示したり、この画像データに対する上記の解析結果等を表示したりする。ここで、ディスプレイ4は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等の表示部を有する。
【0012】
次に、図2を参照してX線撮像装置2の構成を説明する。撮像部7は、シンチレータ71、CCD72及びCCD制御部73を有している。信号ケーブルL1は、検出信号ラインL11、制御信号ラインL12及び画像情報ラインL13を含む。シンチレータ71は、X線が入射すると、このX線のエネルギー量に応じた光量の可視光を発光する。CCD72は、シンチレータ71から可視光が照射されると、この可視光を光電変換し、この可視光の光量に応じた電荷(画像を表す電荷であり、以下、画像情報という。)を生成し、この電荷を読み取り可能に蓄積する(以下、撮像する、とも言う)。CCD制御部73は、CCD72と、制御信号ラインL12及び画像情報ラインL13とに接続されている。CCD制御部73は、CCD72に対する制御信号を制御部6から制御信号ラインL12を介して受信すると、この制御信号に応じてCCD72を駆動制御する。ここで、上記のCCD72に対する制御信号とは、例えば、X線像の撮像指示やX線像を表す画像情報の読み取り指示等である。なお、以下の記載において「信号」はアナログ信号を意味する。CCD制御部73は、制御部6による制御に基づいて、CCD72から画像情報を読み取り、この読み取った画像情報を画像情報ラインL13を介して制御部6に出力する。
【0013】
接続部8は、信号ケーブルL1に接続されており、光像取得部5を制御部6に着脱自在に接続する機能を有する。撮像部7に対する制御信号は、接続部8と制御信号ラインL12とを介して制御部6から撮像部7に伝送される。CCD72から読み取られる画像情報は、画像情報ラインL13と接続部8とを介して制御部6に伝送される。そして、接続部8は、コネクタ81を有する。コネクタ81は、例えば36pinMDRコネクタ等である。
【0014】
光像取得部5は、トリガ生成ユニット9を更に有する。トリガ生成ユニット9は、X線像の撮像開始指示及び撮像終了指示を示すトリガ信号を生成し、このトリガ信号を制御部6に出力する。トリガ生成ユニット9は、PD91(PD:Photo Diode)及び増幅部92を有するX線検出部90(X線検出手段)と、検出信号ラインL11と、このX線検出部90に検出信号ラインL11を介して接続されたトリガ生成部93とを有する。トリガ生成部93は、EP−ROM93a(記憶手段)とコンパレータ93bとを有する。X線検出部90は撮像部7に設けられている。PD91は、撮像部7に照射されるX線をモニタするためのモニタ用のフォトダイオードであり、CCD72に設けられている。増幅部92は、CCD制御部73に設けられている。PD91は、増幅部92に接続されており、増幅部92は検出信号ラインL11に接続されている。検出信号ラインL11は、信号ケーブルL1に含まれている。トリガ生成部93は、接続部8に設けられている。
【0015】
制御部6は、信号処理部61(基準情報生成手段)、トリガ処理部62、I/O制御部63、A/D変換部64、CCD駆動部65及びD/A変換部66を有する。制御部6は、光像取得部5のコネクタ81が着脱可能な接続端子(図示略)を有しており、この接続端子を介して光像取得部5と各種信号の送受信を行う。制御部6は、信号ケーブルL2に接続されており、信号ケーブルL2を介してPC3と各種データの送受信を行う。なお、以下の記載において「データ」はデジタルデータを意味する。信号処理部61は、トリガ処理部62、I/O制御部63、A/D変換部64及びCCD駆動部65に接続されている。そして、信号処理部61は、コネクタ81を介してEP−ROM93aに接続されている。信号処理部61は、トリガ処理部62から入力される後述のトリガデータ(X線像の撮像開始タイミングや撮像終了タイミングを示すデータ)や、I/O制御部63を介して入力されるPC3からのコマンドデータに応じて、光像取得部5やトリガ処理部62等の各構成部に対する制御を行ったり、或いは、CCD制御部73からA/D変換部64を介して画像データを取得し、この取得した画像データをI/O制御部63を介してPC3に送信したりする。信号処理部61は、X線検出部90からの出力信号(後述の信号S2)のオフセット値(オフセット情報)を示すデータをEP−ROM93aから取得し、この取得したデータに基づいて、トリガ生成部93によるトリガ信号の生成に用いる基準データ(取得基準情報)を生成する。信号処理部61は、基準データを、I/O制御部63を介してD/A変換部66に出力する。この後、基準データは、D/A変換部66によりアナログ信号(基準信号S3)に変換され、この基準信号S3は、コンパレータ93bに出力される。なお、信号処理部61は、X線検出部90からの出力信号(信号S2)のオフセット値とX線検出部90により検出されるX線の照射強度とに基づいて基準信号S3を生成してもよい。また、上述の信号処理部61の各機能は、ハードウェアにより実現されるものであってもよいし、ソフトウェアにより実現されるものであってもよい。
【0016】
トリガ処理部62は、信号処理部61に接続されている。トリガ処理部62は、コネクタ81を介してコンパレータ93bに接続されている。トリガ処理部62は、コンパレータ93bからコネクタ81を介して入力されるトリガ信号S4のパルス(図4(a)に示すパルスP2又は図4(b)に示すパルスP4)に応じて、X線像の撮像開始タイミングを示すトリガデータと撮像終了タイミングを示すトリガデータとを生成し、これら各トリガデータを信号処理部61に出力する。I/O制御部63は、信号処理部61及び信号ケーブルL2に接続されている。I/O制御部63は、例えば、USBやIEEE1394等のデータ伝送方式に基づいて、信号ケーブルL2を介してPC3とデータの送受信を行うためのインタフェースを有する。なお、I/O制御部63は、有線によるデータ伝送に限らず、無線LAN(Local Area Network)やブルートゥース(Bluetooth)等の無線データ伝送方式に対応したインタフェースを有していてもよい。
【0017】
A/D変換部64は、信号処理部61に接続されている。A/D変換部64は、コネクタ81及び画像信号ラインL13を介してCCD制御部73に接続されている。A/D変換部64は、画像信号ラインL13及びコネクタ81を介してCCD制御部73から取得した画像情報を画像データに変換し、この画像データを信号処理部61に出力する。CCD駆動部65は、信号処理部61から入力される撮像部7に対する各種制御データに応じて制御信号(信号パルス)を生成し、この制御信号を撮像部7に出力する。D/A変換部66は、I/O制御部63に接続されている。D/A変換部66は、コネクタ81を介してコンパレータ93bに接続されている。D/A変換部66は、信号処理部61からI/O制御部63を介して入力される基準データをアナログ信号の基準信号S3に変換し、この基準信号S3を、コネクタ81を介してコンパレータ93bに出力する。
【0018】
次に、図3及び図4を参照して、トリガ生成ユニット9の構成を説明する。PD91は、X線照射装置1により照射されるX線を検出する。PD91は、検出したX線のエネルギー量に応じた電気信号(以下、信号S1という。)を出力する。ここで、信号S1は、完全直流電圧の電圧波形に応じた定常的なX線照射がX線照射装置1により行われた場合、図4(a)に示すように、全X線照射期間T1(数10msec〜数秒程度)に対応するパルス幅のパルスP1を含む。このパルスP1は、完全直流電圧の電圧波形に応じた定常的なX線照射により生じるパルスである。また、信号S1は、AC電源電圧の半波整流波形に応じた周期的なX線照射がX線照射装置1により行われる場合、図4(b)に示すように、全X線照射期間T1の間に複数の周期的なパルスP3を含む。このパルスP3は、AC電源電圧の半波整流波形に応じた周期的なX線照射により生じるパルスである。増幅部92は、I−V変換アンプ92a及びゲインアンプ92bを有する。I−V変換アンプ92aは、PD91に接続されており、PD91から入力された信号S1を電流値から電圧値に変換する。ゲインアンプ92bは、I−V変換アンプ92aに接続されており、I−V変換アンプ92aにより電圧値に変換される信号S1を、後段の接続部8において処理可能な信号レベルに増幅した信号S2(検出信号)を出力する。ゲインアンプ92bは、検出信号ラインL11に接続されており、信号S2を、検出信号ラインL11を介してトリガ生成部93に出力する。
【0019】
EP−ROM93aは、コネクタ81に接続されている。EP−ROM93aは、コネクタ81を介して信号処理部61に接続されており、信号処理部61による制御に基づいて、X線検出部90からの出力信号(信号S2)のオフセット値を示すデータを、コネクタ81を介して信号処理部61に出力する。EP−ROM93aは、光像取得部5(或いはトリガ生成ユニット9やX線検出部90)の型番、シリアルナンバー、製造年月日、出荷履歴等のデータ、並びに、X線検出部90からの出力信号(信号S2)のオフセット値や、このオフセット値近傍にある複数の値(検出感度の幅を持たせるための値)を示すデータを記憶する。EP−ROM93aに記憶されるオフセット値は、トリガ生成ユニット9を実際に用いて予め測定したオフセット値である。なお、光像取得部5の使用環境(例えば温度)に応じた複数のオフセット値がEP−ROM93aに記憶されていてもよい。この場合、PC3のメモリ3aは、光像取得部5(或いはトリガ生成ユニット9やX線検出部90)の型番及びシリアルナンバーや光像取得部5の使用環境(例えば温度)毎に、オフセット値に対する補正値や画像読取時の解像度を示す各種データを記憶し、PC3は、メモリ3aに記憶されている上記の各種データに基づいて、制御部6によるトリガデータの生成や画像読取等に対する各種制御を行う。
【0020】
コンパレータ93bは、検出信号ラインL11とコネクタ81とに接続されている。コンパレータ93bは、コネクタ81を介してトリガ処理部62及びD/A変換部66に接続されている。コンパレータ93bは、検出信号ラインL11を介して入力される信号S2と、D/A変換部66からコネクタ81を介して入力される基準信号S3とを比較する。そして、コンパレータ93bは、図4(a)及び図4(b)に示すように、信号S2の値が基準信号S3の値を超えた場合、トリガ信号S4のパルスP2を出力する。トリガ信号S4は、完全直流電圧の電圧波形に応じた定常的なX線照射がX線照射装置1により行われる場合、図4(a)に示すように、全X線照射期間T1(パルスP1のパルス幅)にほぼ対応するパルス幅のパルスP2を含む。また、トリガ信号S4は、AC電源電圧の半波整流波形に応じた周期的なX線照射がX線照射装置1により行われる場合、図4(b)に示すように、パルスP3に対応する複数のパルスP4を含む。
【0021】
次に、図5を参照して、X線撮像装置2の動作について説明する。トリガ処理部62は、トリガ生成ユニット9からトリガ信号S4が入力されると、このトリガ信号S4に応じて、X線像の撮像開始タイミングを示すトリガデータと、撮像終了タイミングを示すトリガデータとを信号処理部61に出力する。この場合、トリガ処理部62は、パルスP2(又はパルスP4)の立ち上がりタイミングを検出すると、このタイミングに同期して撮像開始タイミングを示すトリガデータを信号処理部61に出力する。そして、トリガ処理部62は、パルスP2(又はパルスP4)の立ち上がりタイミングから所定の期間T1(全X線照射期間T1に対応する予め設定された期間)が経過したタイミングに同期して、撮像終了タイミングを示すトリガデータを信号処理部61に出力する(第1撮像モード)。第1撮像モードは、完全直流電圧の電圧波形に応じた定常的なX線照射がX線照射装置1により行われる場合、又は、AC電源電圧の半波整流波形に応じた周期的なX線照射がX線照射装置1により行われる場合の何れであっても適用できる。図5(a)は、パルスP4を有する信号S4に対し行われる第1撮像モードのタイミングチャートである。なお、完全直流電圧の電圧波形に応じた定常的なX線照射がX線照射装置1により行われる場合、トリガ処理部62は、上記の第1撮像モードに換えて、図5(b)に示すように、撮像終了タイミングを示すトリガデータを、パルスP2の立ち下りタイミングに同期して出力できる(第2撮像モード)。
【0022】
トリガ処理部62は、完全直流電圧の電圧波形に応じた定常的なX線照射がX線照射装置1により行われる場合、PC3から信号処理部61を介して送信されるコマンドデータに基づいて第1撮像モード又は第2撮像モードの何れかの撮像モードに設定される。これに対し、AC電源電圧の半波整流波形に応じた周期的なX線照射がX線照射装置1により行われる場合、トリガ処理部62は、第1撮像モードに設定される。なお、X線撮像装置2は、第1撮像モードにおける撮像終了タイミングが、トリガ処理部62ではなく信号処理部61により検出される構成であってもよい。CCD駆動部65は、信号処理部61による制御に基づいて、撮像開始タイミングを示すトリガデータが信号処理部61に入力される時から撮像終了タイミングを示すトリガデータが信号処理部61に入力される時までの撮像期間(期間T1又は全X線照射期間T1)に対応するパルス幅のパルスP5(制御信号S5)を撮像部7に出力する。撮像部7は、パルスP5の立ち上がりタイミングに同期して撮像(画像情報の蓄積)を開始し、パルスP5の立ち下がりタイミングに同期して撮像を終了する。この後、信号処理部61は、撮像期間内に撮像部7により蓄積された画像情報の読み取りを行う(期間T2)。この場合、撮像部7のCCD制御部73は、信号処理部61による制御に基づいて、PC3等を介して予め指定された解像度に応じて、画像情報の水平成分(水平方向)と垂直成分(垂直方向)とをCCD72から交互に読み取る。このように、CCD制御部73によってCCD72から読み取られた画像情報は、A/D変換部64によって画像データに逐次変換され、この画像データは、信号処理部61に取り込まれる。次いで信号処理部61は、期間T2の後、A/D変換部64を介して撮像部7から取り込んだ画像データを、I/O制御部63を介してPC3に順次転送する(期間T3)。
【0023】
以上説明したように、X線検出部90のオフセット値がEP−ROM93aに記憶されているので、EP−ROM93aからオフセット値が読み出され、このオフセット値に基づいてトリガ信号生成に用いる基準信号S3が生成される。このように、オフセット値がEP−ROM93aに予め記憶されているので、X線検出部90毎のオフセット値のバラつきに応じてトリガ信号生成に用いる基準信号S3をその都度調整する必要が無くなる。また、光像取得部5(或いはトリガ生成ユニット9やX線検出部90)の型番やシリアルナンバー等のデータがEP−ROM93aに記憶されているので、これらのデータが改ざんされたり喪失したりすることが無くなる。また、EP−ROM93aに記憶されている光像取得部5(或いはトリガ生成ユニット9やX線検出部90)の型番及びシリアルナンバーや、光像取得部5の使用環境(例えば温度)等に応じて、オフセット値の補正等がPC3を介してソフトウェアにより容易に行える。よって、光像取得部5の使用環境の変動によらず、トリガ信号の生成(撮像開始タイミングの取得)が確実に行える。このため、利便性が向上されると共に、誤作動や誤検出の発生が抑制できる。また、オフセット値に対する補正値を複数利用できるので、トリガの検出感度の調整が柔軟に行える。また、X線検出部90のオフセット値のバラツキに対応するために従来よりトリガ生成部93に用いられているトリマ抵抗を用いる必要がないので、トリガ生成部93の装置構成が簡略となり、コストが低減される。また、オフセット値とX線検出部90により検出されるX線の照射強度とに基づいて基準信号S3が生成される場合には、X線の照射強度の変動によらずに撮像開始タイミングや撮像終了タイミングが確実に取得できる。
【0024】
<第2実施形態> 第2実施形態に係るX線撮像システム10は、第1実施形態に係るX線撮像装置2に換えて図6に示すX線撮像装置2aを備える。まず、X線撮像装置2aの構成を説明する。X線撮像装置2aは、X線撮像装置2の制御部6及びトリガ生成ユニット9に換えて制御部6a及びトリガ生成ユニット9aを有する。制御部6aは、制御部6の構成に加えてA/D変換部68を更に有する。A/D変換部68は、コネクタ81、トリガ生成部931及び信号ケーブルL1を介して増幅部92に接続されている。A/D変換部68は、信号処理部61に接続されている。A/D変換部68は、増幅部92から入力される信号S2をデジタルデータに変換し、この信号S2を表すデジタルデータを信号処理部61に出力する。信号処理部61は、A/D変換部68から入力される信号S2を表すデジタルデータに基づいてこの信号S2に含まれているX線検出部90のオフセット値を取得し、この取得したオフセット値(或いは、このオフセット値とX線の照射強度と)に基づいてトリガデータ生成用の基準値を示す基準データを生成し、そして、この生成した基準データをI/O制御部63を介してD/A変換部66に出力する。基準データは、D/A変換部66によってアナログ信号(トリガデータ生成用の基準値を示すアナログ信号であり、第1実施形態に係る基準信号S3に相当する。)に変換され、トリガ処理部62に出力される。トリガ処理部62は、コネクタ81、トリガ生成部931及び信号ケーブルL1を介して増幅部92に接続されている。トリガ処理部62は、信号処理部61及びD/A変換部66に接続されている。この第2実施形態に係るトリガ処理部62は、増幅部92から入力される信号S2と、D/A変換部66から入力されるアナログ信号(トリガデータ生成用の基準値を示すアナログ信号)とに基づいて、コンパレータ93bと同様の処理を行う。A/D変換部68は、増幅部92から入力される信号S2をデジタルデータに変換し、このデジタルデータを信号処理部61に出力する。
【0025】
トリガ生成ユニット9aは、図7に示すように、トリガ生成ユニット9のトリガ生成部93に換えてトリガ生成部931を有する。トリガ生成部931は、EP−ROM93aを有しているが、コンパレータ93bを有していない。増幅部92から入力される信号S2は、信号ケーブルL1、トリガ生成部931及びコネクタ81を介してトリガ処理部62及びA/D変換部68に直接出力される。EP−ROM93aは、コネクタ81を介して制御部6aの信号処理部61に接続されている。EP−ROM93aは、光像取得部5(或いはトリガ生成ユニット9aやX線検出部90)の型番、シリアルナンバー、製造年月日、出荷履歴等のデータを記憶する。この場合、PC3のメモリ3aは、光像取得部5(或いはトリガ生成ユニット9aやX線検出部90)の型番及びシリアルナンバーを示すデータ毎に、トリガデータ生成用の基準値を示す基準データや画像読取時の解像度を示すデータを記憶する。PC3は、メモリ3aに記憶されている上記の各種データに基づいて、X線撮像装置2によるトリガデータの生成や画像読取等に対する各種制御を行う。
【0026】
次に、第2実施形態に係るX線撮像装置2aの動作を説明する。トリガ処理部62は、トリガ生成ユニット9aから信号S2が入力されると、この信号S2と、D/A変換部66から入力されるアナログ信号(トリガデータ生成用の基準値を示すアナログ信号)とに基づいて、X線像の撮像開始タイミングを示すトリガデータと、撮像終了タイミングを示すトリガデータとを生成し、各トリガデータを信号処理部61に出力する。なお、以後のX線撮像装置2aの動作についての説明は、上述の第1実施形態に係るX線撮像装置2の動作の説明及び図5において、信号S4、パルスP2及びパルスP4の各々を信号S2、パルスP1及びパルスP3にそれぞれ読み替えることにより得られる。
【0027】
以上説明したように、第2実施形態に係るX線撮像装置2aは、X線検出部90からの信号S2に基づいてトリガデータ生成用の基準値を示す基準データを生成する。従って、X線撮像を行う度に好適なトリガデータ生成用の基準データが生成できる。よって、撮像開始タイミングや撮像終了タイミングが確実に取得できる。また、トリガ生成部93は、コンパレータ93bを用いないので、トリガ生成部931の装置構成が簡略となり、コストが低減される。また、光像取得部5(或いはトリガ生成ユニット9aやX線検出部90)の型番やシリアルナンバー等のデータがEP−ROM93aに書き込まれているので、これらのデータが改ざんされたり喪失したりすることが無くなる。また、X線照射装置1により照射されるX線の照射強度に応じてトリガデータ生成用の基準データが生成されるので、X線の照射強度の変動によらずに撮像開始タイミングや撮像終了タイミングが確実に取得できる。
【0028】
なお、本発明は、上述の第1及び第2実施形態に限るものではなく、種々の変更が可能である。例えば、トリガ生成部93やトリガ生成部931のEP−ROM93aに換えて、書き込み/読み出し自在なフラッシュメモリを用いてもよい。この場合、PC3を用いれば、メモリ内のデータの書き込み、書き換え及び消去が容易となる。このため、光像取得部5(或いはトリガ生成ユニット9、トリガ生成ユニット9a、そしてX線検出部90)の型番やシリアルナンバー、オフセット値(及びその補正値)及び使用環境(例えば温度)等のデータ更新が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係るX線撮像システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係るX線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係るトリガ生成ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係るトリガ生成ユニットの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本実施形態に係るX線撮像装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】本実施形態に係る他のX線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本実施形態に係る他のトリガ生成ユニットの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1…X線照射装置、2,2a…X線撮像装置、3…PC、3a…メモリ、4…ディスプレイ、5…光像取得部、6,6a…制御部、7…撮像部、8…接続部、9,9a…トリガ生成ユニット、10,10a…X線撮像システム、12…保持部材、61…信号処理部、62…トリガ処理部、63…I/O制御部、64,68…A/D変換部、65…CCD駆動部、71…シンチレータ、72…CCD、73…CCD制御部、81…コネクタ、90…X線検出部、91…PD、92…増幅部、92a…I−V変換アンプ、92b…ゲインアンプ、93,931…トリガ生成部、93a…EP−ROM、93b…コンパレータ、D/A変換部66、L1…信号ケーブル、L11…検出信号ライン、L12…制御信号ライン、L13…画像情報ライン、L2…信号ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射により生成されるX線像を撮像する撮像手段と、
前記X線照射を検出し、この検出結果を示す検出信号を出力するX線検出手段と、
前記X線検出手段のオフセット情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記オフセット情報に基づいて前記撮像手段による撮像の開始タイミングを前記検出信号から取得するための取得基準情報を生成する基準情報生成手段と
を備える撮像装置。
【請求項2】
X線照射により生成されるX線像を撮像する撮像手段と、
前記X線照射を検出し、この検出結果を示す検出信号を出力するX線検出手段と、
前記検出信号に基づいて前記X線検出手段のオフセット情報を取得し、該オフセット情報に基づいて前記撮像手段による撮像の開始タイミングを前記検出信号から取得するための取得基準情報を生成する基準情報生成手段と
を備える撮像装置。
【請求項3】
前記基準情報生成手段は、前記オフセット情報と前記X線の照射強度とに基づいて前記取得基準情報を生成する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−125903(P2008−125903A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316052(P2006−316052)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】