説明

撮像装置

【課題】光学プリズムを有する撮像装置に於いて、低照度下の被写体に対して赤外線を利用して撮像する場合でも色再現性のある画像が得られる撮像装置を提供することである。
【解決手段】本発明の撮像装置は、被写体の光学像を波長分光するギャップレスプリズム28と、光路30上に対して出し入れ可能なIRカットフィルタ27と、ギャップレスプリズム28により分光された波長毎に配置されたBch撮像素子11、Gch撮像素子12、Rch+IR撮像素子13とを備えている。そして、IRカットフィルタ27が光路30上から出された場合に、前記Rch+IR撮像素子13から出力される赤外線混合画像データから特定分光信号と赤外線信号とに分離するための赤外線分離器を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関し、より詳細には、低照度下の被写体に対して赤外線を利用して撮像する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
簡単な膜構成より成る色分解光学系を使用することにより、赤外モード撮像時に可視域から離れた波長領域の赤外光束を用いて可視域の光束と分離して撮像することができるカラーモード・赤外モード共用型テレビカメラに関する技術が、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に記載されたカラーモード・赤外モード共用型テレビカメラは、対物レンズを通過した被写体からの光束を、色分解光学系を介して少なくとも青色光、赤色光、緑色光の3つの色光に色分解し、該3つの色光に対応する撮像素子へ導くと共に、該被写体と該撮像素子との間の光路中に赤外線を阻止する赤外線阻止フィルター又は赤外線を透過する赤外線透過フィルターを着脱させることにより、カラーモード撮像と赤外モード撮像との切り替えを行なうカラーモード・赤外モード共用型テレビカメラであって、該色分解光学系は少なくとも3つのプリズムブロックより成り、該3つのプリズムブロックのうち、該被写体からの光束を入射させるプリズムブロックは、その透過反射面の一部に青色光及び赤外光を反射させ、残りの色光を透過させる青反射ダイクロイック膜が施されており、該青反射ダイクロイック膜は、その基本膜構成を高屈折率層膜と低屈折率層膜との光学膜厚比が3:1で12層以上の交互層より構成されており、該赤外線阻止フィルターを光路内に挿入したときには、該青色用の撮像素子から取り出す信号をカラー画像の青色信号として取り出し、該赤外線阻止フィルターを光路内から取り外し、該赤外線透過フィルターを光路内に挿入したときには、該青色用の撮像素子から取り出す信号を赤外画像の信号として取り出すことにより、カラーモード撮像と赤外モード撮像との切り替えを行なうようにしたことを特徴としている。
【特許文献1】特開平8−275182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に記載のカラーモード・赤外モード共用型テレビカメラでは、該被写体と該撮像素子との間の光路中に赤外線を阻止する赤外線阻止フィルター又は赤外線を透過する赤外線透過フィルターを着脱させることにより、カラーモード撮像と赤外モード撮像との切り替える技術が記載されている。そして、青色光及び赤外光を反射させる青反射ダイクロイック膜に用いる蒸着物質及びその膜構成を適切に設定し、簡単な膜構成より成る色分解光学系を用いることにより、赤外モード撮像時に於いて、可視域から離れた波長領域の赤外光束を用いて可視域の光束と分離して撮像(赤外画像の撮影)することができることを目的としている。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のカラーモード・赤外モード共用型テレビカメラは、赤外線領域に於いても撮像可能な共用構成の撮像装置ではあるものの、赤外モード時で得られる画像はモノクロ画像であり、カラーモードと赤外モードとの混合モードについての記載はない。
【0006】
したがって本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、光学プリズムを有する撮像装置に於いて、低照度下の被写体に対して赤外線を利用して撮像する場合でも、色再現性のある画像を得ることのできる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、被写体の光学像を波長分光する光学プリズムと、前記被写体から前記光学プリズムまでの光路上に対し進退可能な赤外線カットフィルタと、前記光学プリズムにより分光された波長毎に配置される複数の撮像素子と、を備えた撮像装置であって、前記複数の撮像素子の1つは特定分光と赤外線との双方を受光する赤外線混合撮像素子であり、前記赤外線カットフィルタが前記光路上から出された場合に、前記赤外線混合撮像素子から出力される赤外線混合画像データから特定分光信号と赤外線信号とに分離するための赤外線分離器を具備することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に於いて、前記赤外線カットフィルタと光路長が略一致するダミーレンズを更に具備し、前記赤外線カットフィルタが前記光路上から出された場合には、前記ダミーレンズが被写体と前記撮像素子との光路上に装着されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明に於いて、前記赤外線混合画像データから前記特定分光信号と前記赤外線信号との分離境界値を設定する特定分光調整手段と、前記複数の撮像素子から出力される画像データのホワイトバランスを調整するホワイトバランス調整手段と、前記複数の撮像素子から出力される画像データに基づいて画像の輝度を演算する輝度演算器と、前記複数の撮像素子から出力される画像データに基づいて画像のクロマを演算するクロマ演算器と、を更に具備することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明に於いて、前記光学プリズムはプリズム部材にエアーギャップを設けないギャップレスプリズムであり、前記ギャップレスプリズムにより青色波長分光と緑色波長分光をなすことで、前記赤外線混合撮像素子は赤色波長撮像素子と赤外線撮像素子とを兼ねることが可能となることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明に於いて、前記輝度演算器には可視光味付け係数kによる輝度マトリクスの調整が可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の発明に於いて、被写体に対して前記赤外線カットフィルタを挿入して撮像することで前記特定分光信号を測定し、前記赤外線カットフィルタを外して撮像することで前記赤外線信号を差分算出し、前記特定分光信号と前記赤外線信号とから可視赤外比率を演算する可視赤外比演算器を更に具備し、前記特定分光調整手段は、前記可視赤外比率に基づいて前記特定分光信号と前記赤外線信号との分離境界値を自動設定することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明に於いて、前記特定分光調整手段には特定分光調整操作部が接続されており、前記特定分光調整手段は前記可視赤外比演算器と前記特定分光調整操作部との入力切り替えが可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明に於いて、前記ホワイトバランス調整手段にはホワイトバランス操作部が接続されており、前記ホワイトバランス操作部からホワイトバランスの手動調整をすることが可能であり、前記ホワイトバランス操作部から前記ホワイトバランスの手動調整をした後で、前記特定分光調整手段により設定された前記分離境界値の変動が発生した場合には、前記分離境界値の変動を前記ホワイトバランス調整手段に入力することで前記ホワイトバランスの手動調整が保たれることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明に於いて、手動で色補正を施すことができる色ベクタ調整部を更に具備し、前記色ベクタ調整部は、Rゲイン調整、Cyゲイン調整、Mg色相調整、低彩度Mg色消し調整、肌色調整、緑葉色調整、青色調整、のうち少なくとも1つ以上の調整が可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学プリズムを有する撮像装置に於いて、低照度下の被写体に対して赤外線を利用して撮像する場合でも、色再現性のある画像が得られる撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による撮像装置の電気系の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に於いて、この撮像装置10は、青色(B)用の青色チャネル(Bch)撮像素子11と、緑色(G)用の緑色チャネル(Gch)撮像素子12と、赤外線混合撮像素子としての赤色(R)用の赤色チャネル及び赤外線チャネル(Rch+IRch)撮像素子13と、ホワイトバランス調整部15と、ホワイトバランス操作部16と、可視赤外比演算器17と、R/IR分離器18と、Rch調整部19と、Rch調整操作部20と、輝度/クロマ演算器22と、色ベクタ調整部23と、より構成されている。
【0020】
このような構成の撮像装置10は、低照度下の被写体(図示せず)に対して赤外線を照射して、被写体の赤外線反射率を画像データの輝度に反映させるものである。また、Rch撮像素子とIRch撮像素子とを1つの撮像素子で兼用しているため、低照度下の被写体に対して赤外線を利用して撮像する場合に於いては、Rch+IRch撮像素子13からは、R+IR信号が出力される。このR+IR信号の分離方法は、R,G,Bのホワイトバランス、及びカラーバランスに基づいて、R信号とIR信号との分離境界値を設定し、その分離境界値に基づいて、R信号とIR信号とに分離するものである。この分離境界値の設定には、手動調整と自動調整とがあるが、詳細は後述する。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態による光学ブロックの構成例を示した図である。
【0022】
図2に於いて、この光学ブロックは、レンズ25と、ダミーレンズ26と、IRカットフィルタ27と、ギャップレスプリズム28と、Bch撮像素子11と、Gch撮像素子12と、Rch+IRch撮像素子13と、より構成されている。前記IRカットフィルタ27は、図示されない被写体からレンズ25を介してギャップレスプリズム28までの光路30から進退可能に設けられている。また、前記Bch撮像素子11と、Gch撮像素子12と、Rch+IRch撮像素子13とについては、図1に示される撮像装置10の構成のように結線される。
【0023】
図2では、一例として、プリズム部材にエアーギャップを設けないギャップレスプリズム28が用いられているが、撮像装置の用途によっては、ギャップ型プリズムを用いても良い。ギャップレスプリズム28を用いる利点には、光学プリズムの小型化が図れる点と、IRカットフィルタ27を光路30上から外すだけで、容易にRchとIRchとを合わせた波長分光ができる点が挙げられる。また、図2では、撮像素子13がRchとIRchとを兼用しているが、IRchと兼用する色はRchに限らなくとも良い。しかし、RchとIRchとを兼用したRch+IRch撮像素子13にて設計する場合には、Rch+IRch撮像素子13のみ、長波長の感度を優先した撮像素子を用いても良い。
【0024】
次に、図1に示されるホワイトバランス調整部15について説明する。
【0025】
Bch撮像素子11から出力されるB信号と、Gch撮像素子12から出力されるG信号と、Rch+IRch撮像素子13から出力されるR+IR信号をR/IR分離器18にて分離して得られるR信号は、ホワイトバランス調整部15によりホワイトバランスが調整される。このホワイトバランスについて図3及び図4を参照して説明する。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態による撮像装置に於いて、白を撮像した各ch毎の受光量を示すグラフである。或いは、この図3は、撮像素子の実効画素内に設定されるホワイトバランスデータ取得エリアから取得された、各ch毎の相対受光量を示すグラフであっても良い。
【0027】
図3に示されるように、R+IRch撮像素子13から取得される受光量は、RchとIRchとであって分離されておらずに混在している。そのため、本実施形態に於ける撮像装置10では、Rch+IRch撮像素子13に混在しているR信号とIR信号とを、R/IR分離器18にて分離してから、ホワイトバランスの調整をする必要がある。
【0028】
前記R/IR分離器18は、赤外線混合撮像素子であるRch+IRch撮像素子13に混在している赤外線混合画像データであるR信号とIR信号を、特定分光信号(R信号)と赤外線信号(IR信号)とに分離するために設けられている。そして、図1に示されるように、R/IR分離器18には、Rch調整部19が接続されていることがわかる。このRch調整部19は、赤外線混合画像データから、前記特定分光信号と前記赤外線信号との分離境界値を設定するための特定分光調整手段である。そして、このRch調整部19により、R信号とIR信号との分離境界値が定められることで、R信号とIR信号とが分離されている。R信号とIR信号が分離されてから、R、G、B各色信号の信号レベルが略一致するように、ホワイトバランスゲインを掛けるべきである。
【0029】
Rch調整部19には手動調整と自動調整とがあるが、手動調整の場合は、画像画枠全体のカラーバランスを基準にRchの粗調整を行い、ホワイトバランスを取り直した後、再びRchの微調整を行うと良い。自動調整については後述する。
【0030】
また、ホワイトバランスをマニュアルにて調整する際は、図1に示されるホワイトバランス操作部16により行われる。操作部材の一例としては、ダイヤル、レバー、釦等が考えられる。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態による撮像装置のホワイトバランス調整部15の信号レベルを示すグラフである。
【0032】
図4ではホワイトバランス調整の一例として、G信号のホワイトバランスゲインを×1倍に固定しているが、これはホワイトバランス調整部15の回路規模を考慮したものであり、必ずしもゲインを×1倍に固定しなければならないわけではない。しかしながら、図4に示されるように、R信号とB信号とに対してのみホワイトバランスゲインを掛けた場合は、IR信号とG信号との比率は保たれたままであるという特徴がある。
【0033】
また、図1に示されるように、IR信号はホワイトバランス調整部15には入力しなくても良い。これは、IR信号には色情報が存在しないからである。
【0034】
次に、図1に示されている輝度/クロマ演算器22について説明する。
【0035】
輝度演算器22に関しては、通常の輝度Yマトリクスに可視光味付け係数kを掛けて、IR成分を加算したもので良い。
【0036】
Y=I+k(r*R+g*G+b*B) …(1)
ここで、Iとは、IR信号の信号レベルを表す。k,r,g,bは正の実数である。
【0037】
Yマトリクス(r,g,b)については、各種応用があると思われるが、例えば、標準光源の白を撮像した場合のレンズ、プリズム、光学フィルタ、撮像素子を掛け合わせたRGB分光感度比を参考に設定しても良い。例えば、3200Kを標準光源の色温度とした結果、RGB分光感度比が(3:6:1)と略一致しているのならば、Yマトリクス係数を(3:6:1)にしても良い。
【0038】
Y=I+k(0.3*R+0.6*G+0.1*B) …(2)
または、例えば、5600Kを標準光源の色温度とした結果、RGB分光感度比が(2:7:1)と略一致しているのならば、Yマトリクス係数を(2:7:1)にしても良い。
【0039】
Y=I+k(0.2*R+0.7*G+0.1*B) …(3)
また、撮像条件(ゲイン)や画像処理条件(ノイズキャンセル係数、画像画枠の切り出し)の変化に応じて輝度S/Nが変化する場合等は、可視光味付け係数kではなく、例えば、画像処理条件に基づいた、場合分けファジー関数f(χ)を用いても良い。
【0040】
Y=I+f(χ)*(r*R+g*G+b*B) …(4)
ここで、χは撮像条件(ゲイン)とする。
【0041】
クロマ演算器に関しては、色相(hue )と、彩度(Saturation)とを、図1に示された(R’,G,B’)から演算すれば良い。クロマ演算器ではIR信号は用いられない。これは、IR信号には色情報が存在しないからである。また、色再現性については、輝度YとクロマCとの信号レベルバランスが重要であり、輝度Yに階調性処理が成された場合には、輝度階調性に基づいてクロマCにも同様の階調性処理を施すべきである。
【0042】
次に、前記Rch調整操作部20について説明する。
【0043】
Rch調整部19には、Rch調整操作部20と、可視赤外比演算器17とが接続されている。Rch調整操作部20とは特定分光調整操作部であり、ユーザが出力映像を目視してR信号とIR信号との分離境界値を定めるマニュアル調整操作部のことであり、操作部材の一例としては、ダイヤル、レバー、釦等が考えられる。
【0044】
次に、前記可視赤外比演算器17について説明する。
【0045】
この可視赤外比演算器17は、被写体の光源が略一致する1シーンについて、図2で示されるダミーレンズ26とIRカットフィルタ27とを相互に出し入れして、個々に撮像し、Rch+IRch撮像素子13が出力するR信号とIR信号との可視赤外比率を算出する演算器である。つまり、図3に示されたR受光量とIR受光量との分離境界値を定める演算器であり、Rch調整を自動調整することを目的としている。
【0046】
ここで、図2に示されるダミーレンズ26とは、可視光と赤外線の双方共に透過するレンズである。このダミーレンズ26の光路長は、IRカットフィルタ27の光路長と略一致するようにできている。尚、IRカットフィルタ27の光路長が無視できる場合には、必ずしもダミーレンズ26を搭載しなくても良い。
【0047】
このように、図1に示される撮像装置10の構成は、Rch調整部19にRch調整操作部20と、可視赤外比演算器17とが並列に接続されているので、可視赤外比演算器17にてRch比率の粗調整をした後、Rch調整操作部20にてRch比率の微調整をするような2段階調整にすることも可能である。
【0048】
本実施形態の撮像装置10は、図1に示されるホワイトバランス操作部16により、ユーザの好みに合わせてホワイトバランスをマニュアル調整することが可能である。ユーザがマニュアル操作にてホワイトバランスを調整する場合は、必ずしも、図4に示されるようなホワイトバランスの解と一致するとは限らない。何故ならば、定量的な白とユーザが好む定性的な白とは異なることがあるからである。
【0049】
また、ホワイトバランス調整の後にRch調整がなされた場合は、R信号とIR信号との分離境界値の変動と連動して、ホワイトバランスが保たれるべきである。一例としては、R信号の分離境界値の増減比に反比例してRchホワイトバランスゲインを増減する回路構成を、図1に示されるホワイトバランス調整部15内に備えることが考えられる。
【0050】
R信号の分離境界値の変動をホワイトバランス調整部15に反映させるために、Rch調整部19とホワイトバランス調整部15とは接続されている方が良い。
【0051】
次に、図5を参照して、本実施形態による色ベクタ調整部23について説明する。
【0052】
図5に示されるように、色ベクタ調整部23とは、ベクタ表示枠35内のベクトルスコープ上の概念にて色補正するものであり、必ずしもベクタ表示しなくても良いが、ベクタ表示した場合には、人間の視覚特性と直感的に一致しやすい調整操作性が得られる。
【0053】
色ベクタ調整部23の一例としては、Rゲイン調整、Cyゲイン調整、Mg色相調整、低彩度Mgの色消し調整(低彩度マジェンダ色を更に低彩度にする調整)、肌色調整、緑葉色調整、青色調整、等がある。前述してきたRch調整部19は、全体の色調をおおよそ合わせる目的で調整し、より詳細な色表現には色ベクタ調整部23を用いた方が、表現上豊かなカラーコレクト処理が可能となる。
【0054】
尚、ベクタ表示以外の表示手法としては、例えば、各調整項目を帯グラフで表示させ、帯状の長方形の区切り位置にて調整量を表しても良い。
【0055】
また、図5に示される色ベクタ調整部23は、図1に示された色ベクタ調整部23のように、輝度/クロマ演算器22に結線しても良い。また、色ベクタ調整部23は、専用のベクタ表示部にて表示しても良いし、或いは映像出力部にベクタ信号を重畳させても良いし、更にEVF(電子ビューファインダ)に重畳表示、または切り替え表示させても良い。
【0056】
ユーザにとって、画像の色再現性の良し悪しについては、必ずしも定量的な色再現が好まれるとも限らないもので、期待色、または記憶色が好まれることもある。また、映像表現上の色に調整したい場合もある。そこで、図5に示される色ベクタ調整部23が、Rch調整部19とは別の構成として存在していた方が良い。
【0057】
また、前記(1)式で記した、可視光味付け係数kを大きくすればするほど、ノイズメータ上の輝度S/Nは劣化することがあり、特に0.1ルクス以下の被写体では色ベクタ調整部が必須となるシーンも考えられる。
【0058】
尚、前記(1)式で記した可視光味付け係数kの調整操作を色ベクタ調整部23内に組み込んで、可視光味付け係数kの調整と色ベクタ調整とを、ユーザが連動してマニュアル操作できるようにしても良い。可視光味付け係数kの調整操作部材の一例としては、ダイヤル、レバー、釦、タッチパネル等が考えられる。
【0059】
前述したように、本実施形態に於ける撮像装置は、光学プリズムを有する撮像装置に於いて、低照度下の被写体に対して赤外線を利用して撮像する場合でも、Rch調整部19によってR信号とIR信号との分離境界値を定め、R/IR分離器18にてR信号とIR信号とを分離することで、色再現性のある映像信号(Y,C)を得ることができる。
【0060】
尚、低照度下の被写体ではなく、可視光のみを利用して撮像する通常撮像モードの場合には、図2で示されるIRカットフィルタ27を光路30上に装着し、ダミーレンズ26を光路30上から外すようにすれば良い。また、通常撮像モード時には、図1に示されるR/IR分離器18は、R信号を素通しするように構成しても良い。
【0061】
尚、本発明の撮像装置は、報道用動画カメラ、映画用動画カメラ、コンテンツ制作用動画カメラ、静止画カメラ、監視カメラ、セキュリティカメラ、計測器、医療用動画カメラ、医療用静止画カメラ等に応用が可能である。
【0062】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0063】
更に、前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態による撮像装置の電気系の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による光学ブロックの構成例を示した図である。
【図3】本発明の一実施形態による撮像装置に於いて、白を撮像した各ch毎の受光量を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態による撮像装置のホワイトバランス調整部を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態による撮像装置の色ベクタ調整部の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0065】
10…撮像装置、11…青色チャネル(Bch)撮像素子、12…緑色チャネル(Gch)撮像素子、13…赤色チャネル及び赤外線チャネル(Rch+IRch)撮像素子、15…ホワイトバランス調整部、16…ホワイトバランス操作部、17…可視赤外比演算器、18…R/IR分離器、19…Rch調整部、20…Rch調整操作部、22…輝度/クロマ演算器、23…色ベクタ調整部、25…レンズ、26…ダミーレンズ、27…IRカットフィルタ、28…ギャップレスプリズム、30…光路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の光学像を波長分光する光学プリズムと、
前記被写体から前記光学プリズムまでの光路上に対し進退可能な赤外線カットフィルタと、
前記光学プリズムにより分光された波長毎に配置される複数の撮像素子と、
を備えた撮像装置であって、
前記複数の撮像素子の1つは特定分光と赤外線との双方を受光する赤外線混合撮像素子であり、
前記赤外線カットフィルタが前記光路上から出された場合に、前記赤外線混合撮像素子から出力される赤外線混合画像データから特定分光信号と赤外線信号とに分離するための赤外線分離器を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記赤外線カットフィルタと光路長が略一致するダミーレンズを更に具備し、
前記赤外線カットフィルタが前記光路上から出された場合には、前記ダミーレンズが被写体と前記撮像素子との光路上に装着されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記赤外線混合画像データから前記特定分光信号と前記赤外線信号との分離境界値を設定する特定分光調整手段と、
前記複数の撮像素子から出力される画像データのホワイトバランスを調整するホワイトバランス調整手段と、
前記複数の撮像素子から出力される画像データに基づいて画像の輝度を演算する輝度演算器と、
前記複数の撮像素子から出力される画像データに基づいて画像のクロマを演算するクロマ演算器と、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記光学プリズムはプリズム部材にエアーギャップを設けないギャップレスプリズムであり、
前記ギャップレスプリズムにより青色波長分光と緑色波長分光をなすことで、前記赤外線混合撮像素子は赤色波長撮像素子と赤外線撮像素子とを兼ねることが可能となることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記輝度演算器には可視光味付け係数kによる輝度マトリクスの調整が可能であることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
被写体に対して前記赤外線カットフィルタを挿入して撮像することで前記特定分光信号を測定し、前記赤外線カットフィルタを外して撮像することで前記赤外線信号を差分算出し、前記特定分光信号と前記赤外線信号とから可視赤外比率を演算する可視赤外比演算器を更に具備し、
前記特定分光調整手段は、前記可視赤外比率に基づいて前記特定分光信号と前記赤外線信号との分離境界値を自動設定することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記特定分光調整手段には特定分光調整操作部が接続されており、前記特定分光調整手段は前記可視赤外比演算器と前記特定分光調整操作部との入力切り替えが可能であることを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記ホワイトバランス調整手段にはホワイトバランス操作部が接続されており、前記ホワイトバランス操作部からホワイトバランスの手動調整をすることが可能であり、前記ホワイトバランス操作部から前記ホワイトバランスの手動調整をした後で、前記特定分光調整手段により設定された前記分離境界値の変動が発生した場合には、前記分離境界値の変動を前記ホワイトバランス調整手段に入力することで前記ホワイトバランスの手動調整が保たれることを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
手動で色補正を施すことができる色ベクタ調整部を更に具備し、
前記色ベクタ調整部は、Rゲイン調整、Cyゲイン調整、Mg色相調整、低彩度Mg色消し調整、肌色調整、緑葉色調整、青色調整、のうち少なくとも1つ以上の調整が可能であることを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−131292(P2008−131292A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313354(P2006−313354)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】