撮像装置
【課題】撮影レンズの絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置としてのデジタルカメラ100は、被写体からの光が入射する撮影レンズ50と、被写体の画像を取得する撮像素子10と、撮像レンズ50及び撮像素子10間に配設される光学ローパスフィルタ20とを備える。光学ローパスフィルタ20は、互いに隣接する等幅の凹部21b及び等幅の凸部21aで構成される単位格子を格子ピッチPで周期的に配列したリニア型位相回折格子21を含む。リニア型位相回折格子21によって位相が変化する光の光路長差ΔHは、使用する基準波長λであるときに、λ/2に等しい。
【解決手段】撮像装置としてのデジタルカメラ100は、被写体からの光が入射する撮影レンズ50と、被写体の画像を取得する撮像素子10と、撮像レンズ50及び撮像素子10間に配設される光学ローパスフィルタ20とを備える。光学ローパスフィルタ20は、互いに隣接する等幅の凹部21b及び等幅の凸部21aで構成される単位格子を格子ピッチPで周期的に配列したリニア型位相回折格子21を含む。リニア型位相回折格子21によって位相が変化する光の光路長差ΔHは、使用する基準波長λであるときに、λ/2に等しい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に、撮影レンズ及び撮像素子の間に配設される回折格子型光学ローパスフィルタを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等の撮像装置は、被写体からの光が入射する撮影レンズと、被写体の画像を取得する撮像素子と、該撮影レンズ及び撮像素子の間に配設される光学ローパスフィルタとを備える。撮像素子は、例えば、単板式撮像管又は固体撮像素子(CCD)から成る。
【0003】
光学ローパスフィルタは、被写体からの光に含まれる高周波成分をカットするために、撮像素子の結像面側の表面上に、光学的な軸を変えながら配置された複数の水晶が形成されている。これにより、高周波成分の光のパターンが上記撮像素子の画素に影響を与えることによって発生するモアレや偽色を除去することができる。
【0004】
このような光学ローパスフィルタの一例として、特許文献1では、回折格子を含む光学ローパスフィルタ(以下、「回折格子型光学ローパスフィルタ」という)が提案されている。この回折格子型光学ローパスフィルタは回折格子を含むので、水晶を含まない。また、特許文献2では、回折格子型光学ローパスフィルタに用いる回折格子を構成する四角柱形状の単位格子が2次元的に配置されている。
【0005】
特許文献1,2には、回折格子のパターンによって、撮像素子の表面に形成される光像に対応する輝度信号の強度が平均化されることが記載されている。
【特許文献1】特開平01−254912号(第3頁〜第4頁、第1図等)
【特許文献2】特開平03−219207号(第3頁〜第7頁、第1図〜第3図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した水晶を含む光学ローパスフィルタは、複数の水晶をその光学的な軸を変えながら配置する必要があるため、高価であるのと同時にスペース的に不利である。
【0007】
また、上記回折格子型光学ローパスフィルタは、水晶を含む光学ローパスフィルタよりも廉価で且つスペース的にも有利である。一方で、撮影レンズの絞りを絞ったときに、撮像素子には、回折格子の構造パターンに起因した光像の写り込み(影)が発生する問題を抱えている。特に、一眼レフタイプの撮像装置では、様々なレンズを交換可能にしなければならないので、コンパクトデジタルカメラでは必要としないFno16以上の光線束に対しても影の発生を抑制する必要がある。
【0008】
さらに、回折格子型光学ローパスフィルタでは、回折格子の構造パターンだけでなく、回折格子から撮像素子までのギャップ(間隔)によっても、撮像素子の表面に形成される光像のパターンが複雑に変動する。具体的には、一般的な撮像条件下であっても、光像のパターンの変動に起因して光像の光強度が高い部分が局所的に存在することがある。さらには、撮像素子の開口率が完全に100%とはならないので、局所的に高い光強度の部分において光量の平均化が困難となる。したがって、単純に回折格子を用いただけでは、例えばFno16以上の光線束が入射した場合に、その光線束に対して発生した影の発生を抑制することが困難となる。
【0009】
本発明の目的は、撮影レンズの絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、被写体からの光が入射する撮影レンズと、前記被写体の画像を取得する撮像素子と、前記撮像レンズ及び前記撮像素子間に配設される光学ローパスフィルタとを備える撮像装置において、前記光学ローパスフィルタは、互いに隣接する等幅の凹部及び等幅の凸部で構成される単位格子を格子ピッチPで周期的に配列した位相格子を含み、使用する基準波長の最短波長がλSであり、前記基準波長の最長波長がλLであるときに、前記位相格子によって位相が変化する前記光の光路長差ΔHが、λS/2よりも大きく且つλL/2よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮影レンズの絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1(a),(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0014】
図1(a),(b)に示すデジタルカメラ100は、後述する撮像素子ユニット200を内包する筐体と、該筐体に交換可能に設けられた撮影レンズユニット40とを備える一眼レフタイプの撮像装置である。
【0015】
撮影レンズユニット40には、被写体からの光が入射する撮影レンズ50と、撮影レンズ50の開口径を調節する絞り機構60とが内蔵されている。
【0016】
絞り機構60には、撮影レンズ50の開口径を調節するために、任意の絞り値(Fno値)が設定される。絞り機構60は、設定された絞り値に応じて、撮影レンズ50の開口径、即ち撮影レンズ50に入射する被写体からの光線束1の明るさを調節することができる。具体的には、図1(a)は、絞り機構60のFno値を「2」(以下、「Fno2」というように表記する)に設定した場合の明るい光線束1を示し、図1(b)は、絞り機構60にFno32を設定した場合の暗い光線束1を示している。
【0017】
図2(a),(b)は、図1(a),(b)における撮像素子ユニット200の拡大図であり、図2(b)は、図2(a)における部分領域Aの拡大図である。
【0018】
図2(a)に示すように、撮像素子ユニット200は、被写体の光像に応じた画像を取得する撮像素子10と、光学ローパスフィルタ20と、カバーガラス30と、セラミック製パッケージ35とを備える。撮像素子10は、ベイヤ配列カラーフィルタを有するCMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor)タイプの撮像素子である。
【0019】
カバーガラス30及びセラミック製パッケージ35は、撮像素子10及び光学ローパスフィルタ20を密封するように配置されている。これにより、撮像素子10の耐環境性を向上させることができる。
【0020】
また、カバーガラス30は、赤外線をカットするIRカットフィルタとして機能する材料で構成されている。これにより、光線束1から可視領域の光を効率的に抽出することができる。
【0021】
図2(b)に示すように、互いに対面する撮像素子10と光学ローパスフィルタ20の間において、それらの周縁部を保持すべく保持部15が配設されている。保持部15は、スペーサ15aと、紫外線硬化性のUV接着剤15b,15bとから構成されている。UV接着剤15bは、撮像素子10、スペーサ15a、及び光学ローパスフィルタ20を互いに接着した後、紫外線が照射されると硬化し、これにより、これら部材を気密的に接合する。
【0022】
これにより、撮像素子10、光学ローパスフィルタ20、保持部15は、撮像素子10及び光学ローパスフィルタ20間の間隔(後述する図5に示すD)を規定するエアギャップ16を画成する。
【0023】
図3(a),(b)は、図2(a)の光学ローパスフィルタ20の外観を説明するための図であり、図3(a)は側面図であり、図3(b)は底面図である。
【0024】
図3(a)に示すように、光学ローパスフィルタ20は、上部にフラット面を有する。また、光学ローパスフィルタ20は、下部表面上に形成された回折格子21を含む。回折格子21は、後述する格子ピッチPで周期的に配列された複数の単位格子から構成された位相格子から成る。なお、位相格子とは、入射光の位相を変化させる特性を持つ回折格子をいう。
【0025】
また、図3(b)に示すように、光学ローパスフィルタ20の下部表面上には、図2(b)の保持部15を配置するためのギャップ保持接着領域22が設けられている。ギャップ保持接着領域22の幅は、例えば0.5mmである。また、図3(b)に示す回折格子21の表面は、光学ローパスフィルタ20に入射した光線束1が撮像素子10に向かって出射する光線有効領域をなす。
【0026】
図4は、図3(a)の光学ローパスフィルタ20の拡大図である。
【0027】
図4に示すように、光学ローパスフィルタ20の回折格子21は、同一ピッチで形成された単位格子としての等幅長尺状の凸部21a(突条部)から構成されており、凸部21a間には等幅の凹部21bが形成されている。なお、この凹部21bは、凸部21aの高さを規定するものであるから回折格子の一部をなすと云える。
【0028】
凸部21a間の間隔を規定する格子ピッチPは、例えば8.06(=5.7×√2)μmである。したがって、凸部21aと凹部21bは、それぞれ、格子ピッチPの半分即ちP/2のピッチで形成されている。
【0029】
凸部21aは、石英基板上に形成された屈折率n=1.6の有機材料に対してフォトリソ工程を施すことにより形成されたものである。このフォトリソ工程後には、光学ローパスフィルタ20のベース部分を構成する石英が凹部21bにおいて露出する。
【0030】
また、凸部21aの高さ、即ち図4に示す格子高さHは、例えば0.45μmである。このような格子高さHは、下記のように算出される。
【0031】
まず、本発明では、回折格子21によって位相が変化する入射光の光路長差ΔHが、下記式1,2によって規定される。
【0032】
ΔH=H×(n−1) ……(1)
ΔH=λ/2 ……(2)
式2におけるλは、使用する基準波長であり、例えば540nmである。したがって、式1,2において、基準波長λ(=540nm)及び屈折率n(=1.6)を代入すると、式1から格子高さHの値(nm)を算出することができる。
【0033】
図5は、図2(a)における光学ローパスフィルタ20と撮像素子10の位置関係を説明するための図である。
【0034】
図5において、撮像素子10及び光学ローパスフィルタ20間の距離を規定する間隔Dは、例えば30μmである。
【0035】
また、図5に示すように、撮像素子10の各画素の上部表面には、所定の開口部を有するマイクロレンズ11が配置されている。このマイクロレンズ11は、光線束1のうちその開口部を通過した光を画素の受光面即ち結像面まで導く。これにより、各画素の結像面上には光線束1に対応する光像が結像する。このようにして、撮像素子10では、各画素に導かれた光の光量及び強度のサンプリング、即ち画像データの取得を行う。
【0036】
図5において、撮像素子10の画素間の距離を規定する画素ピッチP’は、例えば5.7μmである。
【0037】
ここで、一般的には、下記式3に撮像素子10の画素ピッチP’の値を代入することにより、サンプリング周波数の1/2に該当するナイキスト周波数Ns(μm-1)を算出することができる。
【0038】
Ns=1000/(2×P’) ……(3)
ところで、撮影レンズ50による光線束1の結像位置での集光状態は、波動光学的な観点から同心円状の複数のリングで形成されるパターン即ちエアリディスクパターン(Airy Disk pattern)として扱うことができる。MTF(Modulation Transfer Function)特性を考える場合、線像がどのように分布するかを解析する必要がある。
【0039】
図19は、波長550nmでのエアリディスクパターンから線像がどのように分布するかを計算した結果を示しており、線像分布とFno値との間の関係を示す。図19に基づいて周波数解析を行うとMTF特性が算出され、図20のようになる。図20から、理想光学系での撮影レンズ50のMTF特性を示すMTF値とFno値との間には相関関係があることが分かる。
【0040】
概略的には、下記式4に絞り値(Fno値)を代入することにより、周波数M0の値(μm-1)を算出することができる。例えば、Fno32やFno16においてMTF値が0〜0.1に収まる周波数M0を掛けると約1600μm-1になる。
【0041】
M0=1600/Fno ……(4)
そこで、式3,4式から、ナイキスト周波数Nsの値が周波数M0の値よりも大きくなるように(Ns>M0)設定された絞り値(Fno値)の範囲では、光学ローパスフィルタ20を含む光学ローパスフィルタは不要となる。具体的には、下記式5に示す範囲に該当する絞り値において光学ローパスフィルタが不要となる。
【0042】
Fno>3.2×P’ ……(5)
式5において画素ピッチP’の値が5.7μmである場合、絞り値(Fno値)が18を超える場合に、光学ローパスフィルタを配設する必要がなくなる。したがって、このような絞り値(Fno値)の範囲では、光学的な回折による光線束1に対するローパス機能は不要であるため、撮像素子10における影の発生を抑制することを優先させることができる。
【0043】
図6(a)〜(c)は、図5における回折格子21から観た撮像素子10の上面図であり、回折格子21の凸部21aが撮像素子10に対して横方向にずれた状態を示している。
【0044】
図6(a)〜(c)に示すように、回折格子21の凸部21aの位置は、撮像素子10の画素の配置に対して相対的に横方向に例えば数十μmだけずれている。このように、相対的に横方向にずれている位置関係にある2つの部材の位置合わせはプロセス上困難である。さらには、撮影レンズ50を通過した光線束1が撮像素子10に対して斜めに入射するような場合にも、実質的に回折格子21と撮像素子10の間の横方向における相対的な位置関係がずれる。
【0045】
以上のことから、図6に示すような相対的な位置のずれが発生している場合であっても、絞り機構60の絞りが小径であるときに各画素を介して行う撮像素子10の光量及び光強度のサンプリングにバラツキが発生しないようにする必要がある。
【0046】
ここで、回折格子21(以下、場合によっては「リニア型位相回折格子21」という)の格子ピッチPの値が8.06μmであり、使用する基準波長λの値が540nmである場合について説明する。これらの値を下記式6に代入すると、図5に示す間隔Dの値30.08μmを算出することができる。
【0047】
D=P2/4λ ……(6)
なお、ここで、間隔Dは、P2/4λL < D < P2/4λSの関係式を満たすものであればよく、λSは基準波長λの最短波長を示し、λLは基準波長λの最長波長を示す。
【0048】
図7(a)は、平行な光線束1が入射したリニア型位相回折格子21から出射される光像の形状を例示する図であり、図7(b)は、図7(a)に示す光像の光強度の一例を模式的に示す図である。また、図8(a)〜(e)は、図7(b)に示すような光強度分布の光線束1がリニア型位相回折格子21から出射された後に撮像素子10の結像面に形成される光像の光強度と、間隔Dとの関係を示す図である。
【0049】
なお、図7(a)乃至図8(e)に示す光像の光強度は、波動シミュレーションによる計算結果である。ここで、小径開口による光強度のリンギング(波打ち)を抑制するために、リニア型位相回折格子21に入射する光線束1の強度をガウシアン分布にしている。
【0050】
図7(b)に示す光像は、間隔Dのエアギャップ16を通過する間に、光の干渉を起こし、図8(a)乃至図(e)に示すような光像となる。
【0051】
ここで、図8(c)に示すように、間隔Dの値が、式6から算出した値30.08μmに最も近い30μmであるときは、回折格子21の境以外は、ほぼ回折格子21がない状態の光強度分布と同等の特性を示す。一方、図8(b),(d)及び図8(a),(e)に示すように、間隔Dの値が、式6から算出した値30.08μmからずれていくにしたがって、光像に干渉縞が局所的に発生する。
【0052】
なお、図8(a)〜(e)で示した光強度分布は、図7(b)の照射光線束を想定した場合であるため、実際には、図7(b)の照射光線束を横方向にずらしたものの重ね合わせとなる。したがって、間隔Dの値が30μm近傍での光強度の像分布は、位相回折格子21の境界を除いてはほぼフラットな状態となる。
【0053】
従って、撮像素子10の結像面上に形成された像を撮像素子10のマイクロレンズ11を介して撮像素子10の受光部で得られる1画素毎の光強度はほぼフラットにすることが可能となる。
【0054】
また、図6(a)〜(c)のように撮像素子10と回折格子21の相対位置が横方向にずれている場合において、絞りが小径であるとき、例えばFno32が設定されているときにも(図1(b)参照)、入射した光線束1が形成する光像の光強度の分布は位相回折格子21の境界を除いてはほぼフラットな状態となる。
【0055】
図9は、図1(a)のようにFno2が設定されている場合において点像がどのように像分離するかについて波動解析を行った結果を例示する図である。
【0056】
図9によれば、例えばFno2のように絞りが大径である場合にもローパス効果が発揮されていることが分かる。
【0057】
図10は、図2(a)の光学ローパスフィルタ20を用いたときの像分離の水平方向に関するMTF特性を示す図である。
【0058】
図10に示すMTF特性から、水平方向及び対角方向の偽色を抑制する効果が顕著であるが、垂直方向の偽色を抑制する効果は顕著ではないことが分かる。これにより、撮影像の品位として、偽色を抑制するほど解像感が低下するという相反する特性を考慮したバランスで偽色を効果的に抑制することができる。すなわち、上述した本実施の形態は、解像感即ち解像度の高さを重視するために、1軸方向のみの光学ローパスフィルタを用いた具体例を示している。
【0059】
なお、本実施の形態では、水平方向に関して光学ローパス効果を持たせたが、回折格子21の凸部21a及び凹部21bの配列を90度回転させることにより、垂直方向に関して光学ローパス効果を持たせてもよい。
【0060】
以上詳細に説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、一次元の回折格子、即ちリニア型位相回折格子21を用いることにより、撮影レンズ50の絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る撮像装置は、第1の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラ100と同様であるので、同様の構成及び構成要素には同様の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0062】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の回折格子型光学ローパスフィルタと撮像素子の位置関係を示す図である。
【0063】
図11に示すように、撮像素子10及び光学ローパスフィルタ20’間の間隔Dの値が30μmであり、撮像素子10の画素ピッチP’が5.7μmである。
【0064】
また、撮像素子10の各画素の表面には、所定の開口部を有するマイクロレンズ11が配設されている。このマイクロレンズ11は、光線束1のうちその開口部を通過した光を画素の受光面即ち結像面まで導く。これにより、各画素の結像面上には光線束1に対応する光像が結像する。このようにして、撮像素子10では、各画素に導かれた光の光量及び強度のサンプリング、即ち画像データの取得を行う。
【0065】
図12(a),(b)は、図11における光学ローパスフィルタ20’の回折格子21’の凸部21a’がなす位相型千鳥格子の形状を示す図である。なお、図12(a)は、千鳥格子の斜視図であり、図12(b)は、千鳥格子を形成する凸部21a’のパターンを模式的に示す上面図である。
【0066】
図13(a)〜(e)は、図12(b)の位相型千鳥格子の構成を説明するための図である。
【0067】
図13(a)は、図6(a)に示したようなリニア型位相回折格子21の凸部21aを左に45度回転させたものであり、図13(b)は、図6(a)に示したようなリニア型位相回折格子21の凸部21aを右に45度回転させたものである。
【0068】
図13(c)は、図13(a),(b)に示すリニア型位相回折格子21の凸部21aを互いに重ね合わせることにより形成された位相型千鳥格子を示す模式図である。図13(c)において、凸部21a同士が重なり合っていない領域A,Bでは、格子高さに変化がないので、位相高さΔHも1倍である。また、凸部21a同士が重なり合った領域Cでは格子高さが2倍となるので、位相高さΔHも2倍となる(即ち2×ΔH)。なお、凹部21b同士が重なり合った領域Dでは格子高さが0である。
【0069】
ここで、位相高さΔHは上記式2に示したようにλ/2に等しいので、凸部21aが重なり合った領域Cにおける位相高さはλに等しくなる。したがって、位相の観点で云えば、領域Cでは位相ズレが発生していないことが分かる。
【0070】
図13(d)は、図13(c)の千鳥格子の位相高さを示す模式図である。図13(d)に示すように、凸部21aが重なり合った領域Cにおいて位相高さが0となっている。
【0071】
図13(e)は、図13(d)の千鳥格子において、位相高さが同一の領域、即ち領域A,Bをパターン化したものを示す模式図である。図13(e)に示すパターンは、図12(b)に示した千鳥格子形状と同一であることが分かる。
【0072】
このとき、千鳥格子を構成する各格子間の縦横ピッチP0は、5.7μmであり、画素ピッチPの値に等しい。
【0073】
図14(a)〜(c)は、図11における回折格子21から観た撮像素子10の上面図であり、回折格子21の凸部21a’が撮像素子10に対して横方向にずれた状態を示している。
【0074】
図14(a)〜(c)に示すように、相対的な位置のずれが発生している場合にも、図6(a)〜(c)を用いて説明したのと同様に、絞り機構60の絞りが小径であるときに各画素を介して行う撮像素子10の光量及び光強度のサンプリングにバラツキが発生しないようにする必要がある。
【0075】
図15(a)は、平行な光線束1が入射した位相型千鳥格子21’から出射される光像の形状を例示する図であり、図15(b)は、図15(a)に示す光像の光強度の一例を模式的に示す図である。また、図16(a)〜(e)は、図15(b)に示すような光強度分布の光線束1がリニア型位相回折格子21から出射された後に撮像素子10の結像面に形成される光像の光強度と、間隔Dとの関係を示す図である。
【0076】
なお、図15(a)乃至図16(e)に示す光像の光強度は、波動シミュレーションによる計算結果である。ここで、小径開口による光強度のリンギング(波打ち)を抑制するために、リニア型位相回折格子21に入射する光線束1の強度をガウシアン分布にしている。
【0077】
図15(a)に示すように、位相型千鳥格子21’から出射される光像の形状は、図13(c)を用いて説明したように、格子ピッチPが8.06μmのリニア型位相回折格子の凸部21aを左右に45度回転させたものを互いに重ね合わせることによって形成した千鳥格子の形状と同一である。
【0078】
したがって、第1の実施の形態で説明したリニア型位相回折格子の凸部21aと同様の議論が位相型千鳥格子21’でも成り立つことが分かる。具体的には、図16(a)〜(e)から分かるように、光の回折によって干渉縞(回折像)が局所的に発生しないような間隔Dの値は、図16(c)に示す約30μmと特定される。
【0079】
なお、図16(a)〜(e)で示した光強度分布は、図15(b)の照射光線束を想定した場合であるため、実際には、図15(b)の照射光線束を横方向にずらしたものの重ね合わせとなる。したがって、間隔Dの値が30μm近傍での光強度の像分布は、位相回折格子21の境界を除いてはほぼフラットな状態となる。
【0080】
図17は、図1(a)のようにFno2が設定されている場合において点像がどのように像分離するかについて波動解析を行った結果を例示する図である。
【0081】
図17によれば、例えばFno2のように絞りが大径である場合にもローパス効果が発揮されていることが分かる。
【0082】
図18(a)は、図11の光学ローパスフィルタ20’を用いたときの像分離の水平方向及び垂直方向に関するMTF特性を示す図であり、図18(b)は、図11の光学ローパスフィルタ20’を用いたときの像分離の対角方向に関するMTF特性を示す図である。
【0083】
図18(a)に示すMTF特性から、水平方向及び対角方向の偽色を抑制する効果が顕著であるが、垂直方向の偽色を抑制する効果は顕著ではないことが分かる。また、図18(b)に示すMTF特性から、偽色を抑制する効果は特に対角方向におけるナイキスト周波数Nsにほぼ一致しているため、対角方向の偽色を確実になくすことできることが分かる。これらにより、撮影像の品位として、偽色を抑制するほど解像感が低下するという相反する特性を考慮したバランスで偽色を効果的に抑制することができる。
【0084】
なお、上記第2の実施の形態では、千鳥格子を構成する各格子間の縦横ピッチP0の値が画素ピッチPの値に等しい場合について説明したが、縦横ピッチP0の値が画素ピッチPの値に等しくなくてもよい。
【0085】
以上詳細に説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、二次元の回折格子、即ち位相型回折格子21’を用いることにより、撮影レンズ50の絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる。
【0086】
なお、上記第1及び第2実施の形態では、本発明を撮像装置に適用したが、撮像装置に限られることはなく、所定の面上に光像を形成する装置であればいかなる装置であっても適用することが可能である。
【0087】
また、上記実施の形態では、間隔Dが、P2/4λL < D < P2/4λSの関係式を満たせばよいとしたが、この関係式は、2×(λS×D)1/2<P < 2×(λL×D)1/2というように変形することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラの内部構成を概略的に示すブロック図であり、(a)は、Fno2を設定した場合を、(b)は、Fno32を設定した場合を示す。
【図2】(a)は、図1における撮像素子ユニットの拡大図であり、(b)は、(a)における部分領域Aの拡大図である。
【図3】図2(a)の光学ローパスフィルタの外観を説明するための図であり、(a)は側面図であり、(b)は底面図である。
【図4】図3(a)の光学ローパスフィルタの拡大図である。
【図5】図2(a)における光学ローパスフィルタと撮像素子の位置関係を説明するための図である。
【図6】図5における回折格子から観た撮像素子の上面図であり、(a)〜(c)は、それぞれ、回折格子の凸部が撮像素子に対して横方向にずれた状態を示している。
【図7】(a)は、平行な光線束が入射したリニア型位相回折格子から出射される光像の形状を例示する図であり、(b)は、(a)に示す光像の光強度の一例を模式的に示す図である。
【図8】図7(b)に示すような光強度分布の光線束がリニア型位相回折格子から出射された後に撮像素子の結像面に形成される光像の光強度と、間隔Dとの関係を示す図である。
【図9】図1(a)のようにFno2が設定されている場合において点像がどのように像分離するかについて波動解析を行った結果を例示する図である。
【図10】図2(a)の光学ローパスフィルタを用いたときの像分離の水平方向に関するMTF特性を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の回折格子型光学ローパスフィルタと撮像素子の位置関係を示す図である。
【図12】図11における回折格子型光学ローパスフィルタの回折格子の凸部がなす位相型千鳥格子の形状を示す図であり、(a)は、千鳥格子の斜視図であり、(b)は、千鳥格子を形成する凸部のパターンを模式的に示す上面図である。
【図13】(a)〜(e)は、図12(b)の位相型千鳥格子の構成を説明するための図である。
【図14】図11における回折格子から観た撮像素子の上面図であり、(a)〜(c)は、それぞれ、回折格子の凸部が撮像素子に対して横方向にずれた状態を示している。
【図15】(a)は、平行な光線束が入射した位相型千鳥格子から出射される光像の形状を例示する図であり、(b)は、(a)に示す光像の光強度の一例を模式的に示す図である。
【図16】図15(b)に示すような光強度分布の光線束がリニア型位相回折格子から出射された後に撮像素子の結像面に形成される光像の光強度と、間隔Dとの関係を示す図である。
【図17】図1(a)のようにFno2が設定されている場合において点像がどのように像分離するかについて波動解析を行った結果を例示する図である。
【図18】(a)は、像分離の水平方向及び垂直方向に関するMTF特性を示す図であり、(b)は、像分離の対角方向に関するMTF特性を示す図である。
【図19】線像分布とFno値との間の関係を示す図である。
【図20】図19に基づいて算出したMTF特性を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 光線束
10 撮像素子
15 保持部
20,20’ 光学ローパスフィルタ
21 回折格子
21a,21a’ 凸部
40 撮影レンズユニット
50 撮影レンズ
60 絞り機構
100 デジタルカメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に、撮影レンズ及び撮像素子の間に配設される回折格子型光学ローパスフィルタを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等の撮像装置は、被写体からの光が入射する撮影レンズと、被写体の画像を取得する撮像素子と、該撮影レンズ及び撮像素子の間に配設される光学ローパスフィルタとを備える。撮像素子は、例えば、単板式撮像管又は固体撮像素子(CCD)から成る。
【0003】
光学ローパスフィルタは、被写体からの光に含まれる高周波成分をカットするために、撮像素子の結像面側の表面上に、光学的な軸を変えながら配置された複数の水晶が形成されている。これにより、高周波成分の光のパターンが上記撮像素子の画素に影響を与えることによって発生するモアレや偽色を除去することができる。
【0004】
このような光学ローパスフィルタの一例として、特許文献1では、回折格子を含む光学ローパスフィルタ(以下、「回折格子型光学ローパスフィルタ」という)が提案されている。この回折格子型光学ローパスフィルタは回折格子を含むので、水晶を含まない。また、特許文献2では、回折格子型光学ローパスフィルタに用いる回折格子を構成する四角柱形状の単位格子が2次元的に配置されている。
【0005】
特許文献1,2には、回折格子のパターンによって、撮像素子の表面に形成される光像に対応する輝度信号の強度が平均化されることが記載されている。
【特許文献1】特開平01−254912号(第3頁〜第4頁、第1図等)
【特許文献2】特開平03−219207号(第3頁〜第7頁、第1図〜第3図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した水晶を含む光学ローパスフィルタは、複数の水晶をその光学的な軸を変えながら配置する必要があるため、高価であるのと同時にスペース的に不利である。
【0007】
また、上記回折格子型光学ローパスフィルタは、水晶を含む光学ローパスフィルタよりも廉価で且つスペース的にも有利である。一方で、撮影レンズの絞りを絞ったときに、撮像素子には、回折格子の構造パターンに起因した光像の写り込み(影)が発生する問題を抱えている。特に、一眼レフタイプの撮像装置では、様々なレンズを交換可能にしなければならないので、コンパクトデジタルカメラでは必要としないFno16以上の光線束に対しても影の発生を抑制する必要がある。
【0008】
さらに、回折格子型光学ローパスフィルタでは、回折格子の構造パターンだけでなく、回折格子から撮像素子までのギャップ(間隔)によっても、撮像素子の表面に形成される光像のパターンが複雑に変動する。具体的には、一般的な撮像条件下であっても、光像のパターンの変動に起因して光像の光強度が高い部分が局所的に存在することがある。さらには、撮像素子の開口率が完全に100%とはならないので、局所的に高い光強度の部分において光量の平均化が困難となる。したがって、単純に回折格子を用いただけでは、例えばFno16以上の光線束が入射した場合に、その光線束に対して発生した影の発生を抑制することが困難となる。
【0009】
本発明の目的は、撮影レンズの絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、被写体からの光が入射する撮影レンズと、前記被写体の画像を取得する撮像素子と、前記撮像レンズ及び前記撮像素子間に配設される光学ローパスフィルタとを備える撮像装置において、前記光学ローパスフィルタは、互いに隣接する等幅の凹部及び等幅の凸部で構成される単位格子を格子ピッチPで周期的に配列した位相格子を含み、使用する基準波長の最短波長がλSであり、前記基準波長の最長波長がλLであるときに、前記位相格子によって位相が変化する前記光の光路長差ΔHが、λS/2よりも大きく且つλL/2よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮影レンズの絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1(a),(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0014】
図1(a),(b)に示すデジタルカメラ100は、後述する撮像素子ユニット200を内包する筐体と、該筐体に交換可能に設けられた撮影レンズユニット40とを備える一眼レフタイプの撮像装置である。
【0015】
撮影レンズユニット40には、被写体からの光が入射する撮影レンズ50と、撮影レンズ50の開口径を調節する絞り機構60とが内蔵されている。
【0016】
絞り機構60には、撮影レンズ50の開口径を調節するために、任意の絞り値(Fno値)が設定される。絞り機構60は、設定された絞り値に応じて、撮影レンズ50の開口径、即ち撮影レンズ50に入射する被写体からの光線束1の明るさを調節することができる。具体的には、図1(a)は、絞り機構60のFno値を「2」(以下、「Fno2」というように表記する)に設定した場合の明るい光線束1を示し、図1(b)は、絞り機構60にFno32を設定した場合の暗い光線束1を示している。
【0017】
図2(a),(b)は、図1(a),(b)における撮像素子ユニット200の拡大図であり、図2(b)は、図2(a)における部分領域Aの拡大図である。
【0018】
図2(a)に示すように、撮像素子ユニット200は、被写体の光像に応じた画像を取得する撮像素子10と、光学ローパスフィルタ20と、カバーガラス30と、セラミック製パッケージ35とを備える。撮像素子10は、ベイヤ配列カラーフィルタを有するCMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor)タイプの撮像素子である。
【0019】
カバーガラス30及びセラミック製パッケージ35は、撮像素子10及び光学ローパスフィルタ20を密封するように配置されている。これにより、撮像素子10の耐環境性を向上させることができる。
【0020】
また、カバーガラス30は、赤外線をカットするIRカットフィルタとして機能する材料で構成されている。これにより、光線束1から可視領域の光を効率的に抽出することができる。
【0021】
図2(b)に示すように、互いに対面する撮像素子10と光学ローパスフィルタ20の間において、それらの周縁部を保持すべく保持部15が配設されている。保持部15は、スペーサ15aと、紫外線硬化性のUV接着剤15b,15bとから構成されている。UV接着剤15bは、撮像素子10、スペーサ15a、及び光学ローパスフィルタ20を互いに接着した後、紫外線が照射されると硬化し、これにより、これら部材を気密的に接合する。
【0022】
これにより、撮像素子10、光学ローパスフィルタ20、保持部15は、撮像素子10及び光学ローパスフィルタ20間の間隔(後述する図5に示すD)を規定するエアギャップ16を画成する。
【0023】
図3(a),(b)は、図2(a)の光学ローパスフィルタ20の外観を説明するための図であり、図3(a)は側面図であり、図3(b)は底面図である。
【0024】
図3(a)に示すように、光学ローパスフィルタ20は、上部にフラット面を有する。また、光学ローパスフィルタ20は、下部表面上に形成された回折格子21を含む。回折格子21は、後述する格子ピッチPで周期的に配列された複数の単位格子から構成された位相格子から成る。なお、位相格子とは、入射光の位相を変化させる特性を持つ回折格子をいう。
【0025】
また、図3(b)に示すように、光学ローパスフィルタ20の下部表面上には、図2(b)の保持部15を配置するためのギャップ保持接着領域22が設けられている。ギャップ保持接着領域22の幅は、例えば0.5mmである。また、図3(b)に示す回折格子21の表面は、光学ローパスフィルタ20に入射した光線束1が撮像素子10に向かって出射する光線有効領域をなす。
【0026】
図4は、図3(a)の光学ローパスフィルタ20の拡大図である。
【0027】
図4に示すように、光学ローパスフィルタ20の回折格子21は、同一ピッチで形成された単位格子としての等幅長尺状の凸部21a(突条部)から構成されており、凸部21a間には等幅の凹部21bが形成されている。なお、この凹部21bは、凸部21aの高さを規定するものであるから回折格子の一部をなすと云える。
【0028】
凸部21a間の間隔を規定する格子ピッチPは、例えば8.06(=5.7×√2)μmである。したがって、凸部21aと凹部21bは、それぞれ、格子ピッチPの半分即ちP/2のピッチで形成されている。
【0029】
凸部21aは、石英基板上に形成された屈折率n=1.6の有機材料に対してフォトリソ工程を施すことにより形成されたものである。このフォトリソ工程後には、光学ローパスフィルタ20のベース部分を構成する石英が凹部21bにおいて露出する。
【0030】
また、凸部21aの高さ、即ち図4に示す格子高さHは、例えば0.45μmである。このような格子高さHは、下記のように算出される。
【0031】
まず、本発明では、回折格子21によって位相が変化する入射光の光路長差ΔHが、下記式1,2によって規定される。
【0032】
ΔH=H×(n−1) ……(1)
ΔH=λ/2 ……(2)
式2におけるλは、使用する基準波長であり、例えば540nmである。したがって、式1,2において、基準波長λ(=540nm)及び屈折率n(=1.6)を代入すると、式1から格子高さHの値(nm)を算出することができる。
【0033】
図5は、図2(a)における光学ローパスフィルタ20と撮像素子10の位置関係を説明するための図である。
【0034】
図5において、撮像素子10及び光学ローパスフィルタ20間の距離を規定する間隔Dは、例えば30μmである。
【0035】
また、図5に示すように、撮像素子10の各画素の上部表面には、所定の開口部を有するマイクロレンズ11が配置されている。このマイクロレンズ11は、光線束1のうちその開口部を通過した光を画素の受光面即ち結像面まで導く。これにより、各画素の結像面上には光線束1に対応する光像が結像する。このようにして、撮像素子10では、各画素に導かれた光の光量及び強度のサンプリング、即ち画像データの取得を行う。
【0036】
図5において、撮像素子10の画素間の距離を規定する画素ピッチP’は、例えば5.7μmである。
【0037】
ここで、一般的には、下記式3に撮像素子10の画素ピッチP’の値を代入することにより、サンプリング周波数の1/2に該当するナイキスト周波数Ns(μm-1)を算出することができる。
【0038】
Ns=1000/(2×P’) ……(3)
ところで、撮影レンズ50による光線束1の結像位置での集光状態は、波動光学的な観点から同心円状の複数のリングで形成されるパターン即ちエアリディスクパターン(Airy Disk pattern)として扱うことができる。MTF(Modulation Transfer Function)特性を考える場合、線像がどのように分布するかを解析する必要がある。
【0039】
図19は、波長550nmでのエアリディスクパターンから線像がどのように分布するかを計算した結果を示しており、線像分布とFno値との間の関係を示す。図19に基づいて周波数解析を行うとMTF特性が算出され、図20のようになる。図20から、理想光学系での撮影レンズ50のMTF特性を示すMTF値とFno値との間には相関関係があることが分かる。
【0040】
概略的には、下記式4に絞り値(Fno値)を代入することにより、周波数M0の値(μm-1)を算出することができる。例えば、Fno32やFno16においてMTF値が0〜0.1に収まる周波数M0を掛けると約1600μm-1になる。
【0041】
M0=1600/Fno ……(4)
そこで、式3,4式から、ナイキスト周波数Nsの値が周波数M0の値よりも大きくなるように(Ns>M0)設定された絞り値(Fno値)の範囲では、光学ローパスフィルタ20を含む光学ローパスフィルタは不要となる。具体的には、下記式5に示す範囲に該当する絞り値において光学ローパスフィルタが不要となる。
【0042】
Fno>3.2×P’ ……(5)
式5において画素ピッチP’の値が5.7μmである場合、絞り値(Fno値)が18を超える場合に、光学ローパスフィルタを配設する必要がなくなる。したがって、このような絞り値(Fno値)の範囲では、光学的な回折による光線束1に対するローパス機能は不要であるため、撮像素子10における影の発生を抑制することを優先させることができる。
【0043】
図6(a)〜(c)は、図5における回折格子21から観た撮像素子10の上面図であり、回折格子21の凸部21aが撮像素子10に対して横方向にずれた状態を示している。
【0044】
図6(a)〜(c)に示すように、回折格子21の凸部21aの位置は、撮像素子10の画素の配置に対して相対的に横方向に例えば数十μmだけずれている。このように、相対的に横方向にずれている位置関係にある2つの部材の位置合わせはプロセス上困難である。さらには、撮影レンズ50を通過した光線束1が撮像素子10に対して斜めに入射するような場合にも、実質的に回折格子21と撮像素子10の間の横方向における相対的な位置関係がずれる。
【0045】
以上のことから、図6に示すような相対的な位置のずれが発生している場合であっても、絞り機構60の絞りが小径であるときに各画素を介して行う撮像素子10の光量及び光強度のサンプリングにバラツキが発生しないようにする必要がある。
【0046】
ここで、回折格子21(以下、場合によっては「リニア型位相回折格子21」という)の格子ピッチPの値が8.06μmであり、使用する基準波長λの値が540nmである場合について説明する。これらの値を下記式6に代入すると、図5に示す間隔Dの値30.08μmを算出することができる。
【0047】
D=P2/4λ ……(6)
なお、ここで、間隔Dは、P2/4λL < D < P2/4λSの関係式を満たすものであればよく、λSは基準波長λの最短波長を示し、λLは基準波長λの最長波長を示す。
【0048】
図7(a)は、平行な光線束1が入射したリニア型位相回折格子21から出射される光像の形状を例示する図であり、図7(b)は、図7(a)に示す光像の光強度の一例を模式的に示す図である。また、図8(a)〜(e)は、図7(b)に示すような光強度分布の光線束1がリニア型位相回折格子21から出射された後に撮像素子10の結像面に形成される光像の光強度と、間隔Dとの関係を示す図である。
【0049】
なお、図7(a)乃至図8(e)に示す光像の光強度は、波動シミュレーションによる計算結果である。ここで、小径開口による光強度のリンギング(波打ち)を抑制するために、リニア型位相回折格子21に入射する光線束1の強度をガウシアン分布にしている。
【0050】
図7(b)に示す光像は、間隔Dのエアギャップ16を通過する間に、光の干渉を起こし、図8(a)乃至図(e)に示すような光像となる。
【0051】
ここで、図8(c)に示すように、間隔Dの値が、式6から算出した値30.08μmに最も近い30μmであるときは、回折格子21の境以外は、ほぼ回折格子21がない状態の光強度分布と同等の特性を示す。一方、図8(b),(d)及び図8(a),(e)に示すように、間隔Dの値が、式6から算出した値30.08μmからずれていくにしたがって、光像に干渉縞が局所的に発生する。
【0052】
なお、図8(a)〜(e)で示した光強度分布は、図7(b)の照射光線束を想定した場合であるため、実際には、図7(b)の照射光線束を横方向にずらしたものの重ね合わせとなる。したがって、間隔Dの値が30μm近傍での光強度の像分布は、位相回折格子21の境界を除いてはほぼフラットな状態となる。
【0053】
従って、撮像素子10の結像面上に形成された像を撮像素子10のマイクロレンズ11を介して撮像素子10の受光部で得られる1画素毎の光強度はほぼフラットにすることが可能となる。
【0054】
また、図6(a)〜(c)のように撮像素子10と回折格子21の相対位置が横方向にずれている場合において、絞りが小径であるとき、例えばFno32が設定されているときにも(図1(b)参照)、入射した光線束1が形成する光像の光強度の分布は位相回折格子21の境界を除いてはほぼフラットな状態となる。
【0055】
図9は、図1(a)のようにFno2が設定されている場合において点像がどのように像分離するかについて波動解析を行った結果を例示する図である。
【0056】
図9によれば、例えばFno2のように絞りが大径である場合にもローパス効果が発揮されていることが分かる。
【0057】
図10は、図2(a)の光学ローパスフィルタ20を用いたときの像分離の水平方向に関するMTF特性を示す図である。
【0058】
図10に示すMTF特性から、水平方向及び対角方向の偽色を抑制する効果が顕著であるが、垂直方向の偽色を抑制する効果は顕著ではないことが分かる。これにより、撮影像の品位として、偽色を抑制するほど解像感が低下するという相反する特性を考慮したバランスで偽色を効果的に抑制することができる。すなわち、上述した本実施の形態は、解像感即ち解像度の高さを重視するために、1軸方向のみの光学ローパスフィルタを用いた具体例を示している。
【0059】
なお、本実施の形態では、水平方向に関して光学ローパス効果を持たせたが、回折格子21の凸部21a及び凹部21bの配列を90度回転させることにより、垂直方向に関して光学ローパス効果を持たせてもよい。
【0060】
以上詳細に説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、一次元の回折格子、即ちリニア型位相回折格子21を用いることにより、撮影レンズ50の絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る撮像装置は、第1の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラ100と同様であるので、同様の構成及び構成要素には同様の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0062】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の回折格子型光学ローパスフィルタと撮像素子の位置関係を示す図である。
【0063】
図11に示すように、撮像素子10及び光学ローパスフィルタ20’間の間隔Dの値が30μmであり、撮像素子10の画素ピッチP’が5.7μmである。
【0064】
また、撮像素子10の各画素の表面には、所定の開口部を有するマイクロレンズ11が配設されている。このマイクロレンズ11は、光線束1のうちその開口部を通過した光を画素の受光面即ち結像面まで導く。これにより、各画素の結像面上には光線束1に対応する光像が結像する。このようにして、撮像素子10では、各画素に導かれた光の光量及び強度のサンプリング、即ち画像データの取得を行う。
【0065】
図12(a),(b)は、図11における光学ローパスフィルタ20’の回折格子21’の凸部21a’がなす位相型千鳥格子の形状を示す図である。なお、図12(a)は、千鳥格子の斜視図であり、図12(b)は、千鳥格子を形成する凸部21a’のパターンを模式的に示す上面図である。
【0066】
図13(a)〜(e)は、図12(b)の位相型千鳥格子の構成を説明するための図である。
【0067】
図13(a)は、図6(a)に示したようなリニア型位相回折格子21の凸部21aを左に45度回転させたものであり、図13(b)は、図6(a)に示したようなリニア型位相回折格子21の凸部21aを右に45度回転させたものである。
【0068】
図13(c)は、図13(a),(b)に示すリニア型位相回折格子21の凸部21aを互いに重ね合わせることにより形成された位相型千鳥格子を示す模式図である。図13(c)において、凸部21a同士が重なり合っていない領域A,Bでは、格子高さに変化がないので、位相高さΔHも1倍である。また、凸部21a同士が重なり合った領域Cでは格子高さが2倍となるので、位相高さΔHも2倍となる(即ち2×ΔH)。なお、凹部21b同士が重なり合った領域Dでは格子高さが0である。
【0069】
ここで、位相高さΔHは上記式2に示したようにλ/2に等しいので、凸部21aが重なり合った領域Cにおける位相高さはλに等しくなる。したがって、位相の観点で云えば、領域Cでは位相ズレが発生していないことが分かる。
【0070】
図13(d)は、図13(c)の千鳥格子の位相高さを示す模式図である。図13(d)に示すように、凸部21aが重なり合った領域Cにおいて位相高さが0となっている。
【0071】
図13(e)は、図13(d)の千鳥格子において、位相高さが同一の領域、即ち領域A,Bをパターン化したものを示す模式図である。図13(e)に示すパターンは、図12(b)に示した千鳥格子形状と同一であることが分かる。
【0072】
このとき、千鳥格子を構成する各格子間の縦横ピッチP0は、5.7μmであり、画素ピッチPの値に等しい。
【0073】
図14(a)〜(c)は、図11における回折格子21から観た撮像素子10の上面図であり、回折格子21の凸部21a’が撮像素子10に対して横方向にずれた状態を示している。
【0074】
図14(a)〜(c)に示すように、相対的な位置のずれが発生している場合にも、図6(a)〜(c)を用いて説明したのと同様に、絞り機構60の絞りが小径であるときに各画素を介して行う撮像素子10の光量及び光強度のサンプリングにバラツキが発生しないようにする必要がある。
【0075】
図15(a)は、平行な光線束1が入射した位相型千鳥格子21’から出射される光像の形状を例示する図であり、図15(b)は、図15(a)に示す光像の光強度の一例を模式的に示す図である。また、図16(a)〜(e)は、図15(b)に示すような光強度分布の光線束1がリニア型位相回折格子21から出射された後に撮像素子10の結像面に形成される光像の光強度と、間隔Dとの関係を示す図である。
【0076】
なお、図15(a)乃至図16(e)に示す光像の光強度は、波動シミュレーションによる計算結果である。ここで、小径開口による光強度のリンギング(波打ち)を抑制するために、リニア型位相回折格子21に入射する光線束1の強度をガウシアン分布にしている。
【0077】
図15(a)に示すように、位相型千鳥格子21’から出射される光像の形状は、図13(c)を用いて説明したように、格子ピッチPが8.06μmのリニア型位相回折格子の凸部21aを左右に45度回転させたものを互いに重ね合わせることによって形成した千鳥格子の形状と同一である。
【0078】
したがって、第1の実施の形態で説明したリニア型位相回折格子の凸部21aと同様の議論が位相型千鳥格子21’でも成り立つことが分かる。具体的には、図16(a)〜(e)から分かるように、光の回折によって干渉縞(回折像)が局所的に発生しないような間隔Dの値は、図16(c)に示す約30μmと特定される。
【0079】
なお、図16(a)〜(e)で示した光強度分布は、図15(b)の照射光線束を想定した場合であるため、実際には、図15(b)の照射光線束を横方向にずらしたものの重ね合わせとなる。したがって、間隔Dの値が30μm近傍での光強度の像分布は、位相回折格子21の境界を除いてはほぼフラットな状態となる。
【0080】
図17は、図1(a)のようにFno2が設定されている場合において点像がどのように像分離するかについて波動解析を行った結果を例示する図である。
【0081】
図17によれば、例えばFno2のように絞りが大径である場合にもローパス効果が発揮されていることが分かる。
【0082】
図18(a)は、図11の光学ローパスフィルタ20’を用いたときの像分離の水平方向及び垂直方向に関するMTF特性を示す図であり、図18(b)は、図11の光学ローパスフィルタ20’を用いたときの像分離の対角方向に関するMTF特性を示す図である。
【0083】
図18(a)に示すMTF特性から、水平方向及び対角方向の偽色を抑制する効果が顕著であるが、垂直方向の偽色を抑制する効果は顕著ではないことが分かる。また、図18(b)に示すMTF特性から、偽色を抑制する効果は特に対角方向におけるナイキスト周波数Nsにほぼ一致しているため、対角方向の偽色を確実になくすことできることが分かる。これらにより、撮影像の品位として、偽色を抑制するほど解像感が低下するという相反する特性を考慮したバランスで偽色を効果的に抑制することができる。
【0084】
なお、上記第2の実施の形態では、千鳥格子を構成する各格子間の縦横ピッチP0の値が画素ピッチPの値に等しい場合について説明したが、縦横ピッチP0の値が画素ピッチPの値に等しくなくてもよい。
【0085】
以上詳細に説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、二次元の回折格子、即ち位相型回折格子21’を用いることにより、撮影レンズ50の絞りを絞った時でも影の発生を抑制することができる。
【0086】
なお、上記第1及び第2実施の形態では、本発明を撮像装置に適用したが、撮像装置に限られることはなく、所定の面上に光像を形成する装置であればいかなる装置であっても適用することが可能である。
【0087】
また、上記実施の形態では、間隔Dが、P2/4λL < D < P2/4λSの関係式を満たせばよいとしたが、この関係式は、2×(λS×D)1/2<P < 2×(λL×D)1/2というように変形することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラの内部構成を概略的に示すブロック図であり、(a)は、Fno2を設定した場合を、(b)は、Fno32を設定した場合を示す。
【図2】(a)は、図1における撮像素子ユニットの拡大図であり、(b)は、(a)における部分領域Aの拡大図である。
【図3】図2(a)の光学ローパスフィルタの外観を説明するための図であり、(a)は側面図であり、(b)は底面図である。
【図4】図3(a)の光学ローパスフィルタの拡大図である。
【図5】図2(a)における光学ローパスフィルタと撮像素子の位置関係を説明するための図である。
【図6】図5における回折格子から観た撮像素子の上面図であり、(a)〜(c)は、それぞれ、回折格子の凸部が撮像素子に対して横方向にずれた状態を示している。
【図7】(a)は、平行な光線束が入射したリニア型位相回折格子から出射される光像の形状を例示する図であり、(b)は、(a)に示す光像の光強度の一例を模式的に示す図である。
【図8】図7(b)に示すような光強度分布の光線束がリニア型位相回折格子から出射された後に撮像素子の結像面に形成される光像の光強度と、間隔Dとの関係を示す図である。
【図9】図1(a)のようにFno2が設定されている場合において点像がどのように像分離するかについて波動解析を行った結果を例示する図である。
【図10】図2(a)の光学ローパスフィルタを用いたときの像分離の水平方向に関するMTF特性を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の回折格子型光学ローパスフィルタと撮像素子の位置関係を示す図である。
【図12】図11における回折格子型光学ローパスフィルタの回折格子の凸部がなす位相型千鳥格子の形状を示す図であり、(a)は、千鳥格子の斜視図であり、(b)は、千鳥格子を形成する凸部のパターンを模式的に示す上面図である。
【図13】(a)〜(e)は、図12(b)の位相型千鳥格子の構成を説明するための図である。
【図14】図11における回折格子から観た撮像素子の上面図であり、(a)〜(c)は、それぞれ、回折格子の凸部が撮像素子に対して横方向にずれた状態を示している。
【図15】(a)は、平行な光線束が入射した位相型千鳥格子から出射される光像の形状を例示する図であり、(b)は、(a)に示す光像の光強度の一例を模式的に示す図である。
【図16】図15(b)に示すような光強度分布の光線束がリニア型位相回折格子から出射された後に撮像素子の結像面に形成される光像の光強度と、間隔Dとの関係を示す図である。
【図17】図1(a)のようにFno2が設定されている場合において点像がどのように像分離するかについて波動解析を行った結果を例示する図である。
【図18】(a)は、像分離の水平方向及び垂直方向に関するMTF特性を示す図であり、(b)は、像分離の対角方向に関するMTF特性を示す図である。
【図19】線像分布とFno値との間の関係を示す図である。
【図20】図19に基づいて算出したMTF特性を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 光線束
10 撮像素子
15 保持部
20,20’ 光学ローパスフィルタ
21 回折格子
21a,21a’ 凸部
40 撮影レンズユニット
50 撮影レンズ
60 絞り機構
100 デジタルカメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光が入射する撮影レンズと、前記被写体の画像を取得する撮像素子と、前記撮像レンズ及び前記撮像素子間に配設される光学ローパスフィルタとを備える撮像装置において、
前記光学ローパスフィルタは、互いに隣接する等幅の凹部及び等幅の凸部で構成される単位格子を格子ピッチPで周期的に配列した位相格子を含み、
使用する基準波長の最短波長がλSであり、前記基準波長の最長波長がλLであるときに、前記位相格子によって位相が変化する前記光の光路長差ΔHが、λS/2よりも大きく且つλL/2よりも小さいことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記位相格子と前記撮像素子の間の間隔Dが、関係式「P2/4λL < D < P2/4λS」を満たすように、前記光学ローパスフィルタ及び前記撮像素子が配置されていることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子は、画素ピッチP’で配列された複数の画素から構成され、前記撮影レンズの絞り値Fnoが3.2×P’を超えることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記単位格子の凸部は長尺状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記位相格子は、前記凸部が長尺状の第1及び第2の単位格子を互いに重ね合わせた二次元形状のとしての千鳥格子から構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項1】
被写体からの光が入射する撮影レンズと、前記被写体の画像を取得する撮像素子と、前記撮像レンズ及び前記撮像素子間に配設される光学ローパスフィルタとを備える撮像装置において、
前記光学ローパスフィルタは、互いに隣接する等幅の凹部及び等幅の凸部で構成される単位格子を格子ピッチPで周期的に配列した位相格子を含み、
使用する基準波長の最短波長がλSであり、前記基準波長の最長波長がλLであるときに、前記位相格子によって位相が変化する前記光の光路長差ΔHが、λS/2よりも大きく且つλL/2よりも小さいことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記位相格子と前記撮像素子の間の間隔Dが、関係式「P2/4λL < D < P2/4λS」を満たすように、前記光学ローパスフィルタ及び前記撮像素子が配置されていることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子は、画素ピッチP’で配列された複数の画素から構成され、前記撮影レンズの絞り値Fnoが3.2×P’を超えることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記単位格子の凸部は長尺状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記位相格子は、前記凸部が長尺状の第1及び第2の単位格子を互いに重ね合わせた二次元形状のとしての千鳥格子から構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−46163(P2008−46163A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218920(P2006−218920)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]