説明

撮像装置

【課題】PN接合部を有する電界放出型陰極を用いた光導電型撮像装置において、PN接合部に光が当たることによってPN接合部の電気的絶縁性が劣化するのを防止する。
【解決手段】外囲器2内に、電子ビームを放出する電界放出型陰極10と電子ビームが入射する光電変換ターゲット7との間の高真空状態に維持された第1空間61が形成されている。外囲器2を通過した光が電界放出型陰極10のP型半導体からなる陰極ベースとN型半導体からなり、陰極ベースに接合された陰極電極との接合部に入射しないように、外囲器2の少なくとも一部が遮光性の材料300で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PN接合部を含む電界放出型陰極を備えた撮像装置に関する。特に電界放出型陰極内のリーク電流を抑制するための構造を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換膜が入射光量に応じて信号電荷を発生、蓄積し、この電荷を電子ビームによって時系列的に外部回路に読み出すことにより、入射光量の空間的分布に対応した時系列電気信号を発生する撮像装置として、光導電型撮像装置が知られている。前記電子ビームを光電変換膜に照射する手段として電界放出型陰極を用いた光導電型撮像装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
図8は、この光導電型撮像装置の主要部の概略構造を示す切り欠き斜視図である。電界放出型陰極100は、基板101上に、複数のストライプ状の陰極電極102、絶縁層103、複数のストライプ状のゲート電極104をこの順に有している。絶縁層103及びゲート電極104には多数の開口105が形成されている。各開口105内に露出した陰極電極102上には、コーン形状のエミッタ106が設けられている。複数のストライプ状の陰極電極102及び複数のストライプ状のゲート電極104は、それぞれ互いに直交する方向に延設されてXYマトリクスを構成している。任意の陰極電極102に対して任意のゲート電極104に正電位Vdを印加することにより、この陰極電極102とこのゲート電極104との交点位置にあるエミッタ106から電子ビーム107を電界放出させることができる。電位差Vdを印加する陰極電極102及びゲート電極104を順次変更することにより、電界放出型陰極100をマトリクス駆動することができる。
【0004】
電界放出型陰極100に対面して透光性基板150が設けられている。その電界放出型陰極100に対向する面(内面)には、順次積層された透光性の導電膜151及び光電変換膜152からなる光電変換ターゲットが形成されている。透光性基板150の光変換ターゲットとは反対側の面(外面)に入射した光160は、透光性基板150及び導電膜151を透過して光電変換膜152に入射する。
【0005】
このような光導電型撮像装置において、電界放出型陰極100をマトリクス駆動し、エミッタ106から放出された電子ビーム107で光電変換膜152を走査する。光電変換膜152の電界放出型陰極100側の面、即ち走査面は、2次電子を放出しにくい材料又は構造を有している。従って、電子ビーム107が光電変換膜152に到達すると、走査面の電位が降下していくが、その電位が陰極電極102の電位に等しくなるとそれ以上電子ビーム107が到達し得なくなる。従って、電子ビーム107の走査直後の光電変換膜152の走査面電位は陰極電極102の電位と平衡する。透光性導電膜151には陰極電極102に対して正のターゲット電圧Vaが印加されているため、光電変換膜152内には、透光性導電膜151側が正で走査面側が負とする向きの電界が形成される。
【0006】
この状態で、外部からの光160が光電変換膜152に入射すると、その入射量に応じた電子正孔対が光電変換膜152中に発生し、前記電界によって電子は透光性導電膜151側に、正孔は走査面側にそれぞれ走行し、光電変換膜152の走査面電位は到達した正孔によって陰極電極102の電位から上昇してゆく。そこへ再び電子ビーム107が到達すると、走査面電位は陰極電極102の電位にリセットされ、その際、出力端子170から入射光量の空間分布に対応する時系列電気信号が得られる。
【0007】
また、上記の光導電型撮像装置において前記電気信号を外部回路に読み出すための構造として、透光性基板150を貫通した電極リードピン(図示せず)の一端を透光性導電膜151に接触させ、他端を外部回路の増幅器に接続させる構造がよく用いられている。
【0008】
以上の光導電型撮像装置では、光電変換膜152に入射した光量が多いほど、光電変換膜152の走査面電位の上昇も大きいが、光電変換膜152の走査面に到達した正孔をリセットするのに十分な電子ビーム107が光電変換膜152に到達しないと、光電変換膜152の走査面電位を陰極電極102の電位にまで下げることができず、結果として、出力端子170から得られる電気信号は、実際の入射光量から得られるべき電気信号よりも小さくなってしまう。換言すれば、光電変換膜152に到達に到達する電子ビーム107の量が十分に大きければ、小さな入射光量から大きな入射光量まで、入射光量に応じて正確に電気信号に変換することができる、いわゆるダイナミックレンジの広い撮像装置を実現できる。
【0009】
光電変換膜152に到達する電子ビーム107の量を増大させるには、電界放出型陰極の電流容量、即ち電流密度を増大させることにより実現できる。
【0010】
特許文献2には、シリコン基板上にフォトリソグラフィー法により極小開口が形成されたゲート電極を形成することで、高電流密度を実現した電界放出型陰極が開示されている。
【0011】
この種の電界放出型陰極の基本的構造を図9に示す。P型半導体からなる陰極ベース200上にN型半導体からなる陰極電極201が形成され、陰極電極201に、先端の尖った複数のエミッタ202がエッチング加工により形成されている。また、陰極電極201の上には絶縁層210を介してゲート電極220が形成されている。絶縁層210及びゲート電極220には、各エミッタ202に対応する位置に、エミッタ202の先端を中心とする略円形の開口205が形成されている。
【0012】
動作時には、P型半導体である陰極ベース200には相対的に低い電圧(例えば0ボルト)を印加し、エミッタ202が形成されたN型半導体である陰極電極201には相対的に高い電圧(例えば+数十ボルト)を印加することにより、いわゆるPN接合部に常に逆バイアス電圧が印加された状態にしてPN接合部に空乏層を形成する。これにより、動作時に、陰極ベース200と陰極電極201との間の電気的絶を確保でき、電界放出型陰極の背面(光電変換ターゲットとは反対側の面)の電気的絶縁及び背面電位の安定化が得られる。
【特許文献1】特開平6−176704号公報
【特許文献2】特開平8−17330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上述べたように、光導電型撮像装置のダイナミックレンジを拡大するためには、電界放出型陰極の高電流密度化が不可欠であり、このためにはシリコン基板上に極小開口が形成されたゲート電極を備えた電界放出型陰極が有効である。
【0014】
また、シリコン基板上に形成された電界放出型陰極では、その背面の電気絶縁及び背面電位の安定化のためには、電界放出型陰極の陰極ベースとしてP型半導体を用い且つエミッタが形成された陰極電極としてN型半導体を用いてPN接合部を形成し、PN接合部に常に逆バイアス電圧を印加して空乏層が形成された状態とすることが有効である。
【0015】
しかしながら、PN接合部にたとえ逆バイアス電圧が印加された状態であっても、PN接合部に光が当たると、価電子帯の電子が伝導帯に励起され電流が流れる、いわゆる光電効果が発生し、PN接合部に電流が流れ、これが不所望なリーク電流となり、撮像装置におけるノイズ成分となるという問題がある。
【0016】
本発明は、電界放出型陰極を用いた光導電型撮像装置において、PN接合部に光が当たることによるPN接合部の電気的絶縁性の劣化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の撮像装置は、外部からの入射光が透過する透光性導電膜、及び前記入射光により信号電荷を発生する光電変換膜からなる光電変換ターゲットが形成された透光性基板と、前記光電変換ターゲットに向かって電子ビームを放出する電界放出型陰極が設けられた実装基板と、前記透光性基板と前記実装基板とを離間して保持するスペーサー部材と、少なくとも前記光電変換ターゲットと前記電界放出型陰極との間の高真空状態に維持された第1空間を内部に含む外囲器とを備える。
【0018】
前記電界放出型陰極は、P型半導体からなる陰極ベースと、複数のエミッタを有し、N型半導体からなり、前記陰極ベースに接合された陰極電極と、前記エミッタから前記電子ビームを電界放出させるゲート電極とを備える。
【0019】
前記外囲器を通過した光が前記陰極ベース及び前記陰極電極に入射しないように、前記外囲器の少なくとも一部が遮光性の材料で覆われている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外囲器を通過した光が陰極ベース及び陰極電極に入射しないように、外囲器の少なくとも一部が遮光性の材料で覆われているので、外光が外囲器を通過して、陰極ベースと陰極電極とが接合されたPN接合部に入射するのを防止できる。従って、電界放出型陰極内に不所望なリーク電流が発生してPN接合部の電気的絶縁性が劣化するのを防止できる。よって、高信頼性の撮像装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記の本発明の撮像装置において、前記外囲器内であって、前記実装基板に対して反対側には、前記外囲器内を高真空状態に維持するためのゲッターが配置された第2空間が形成されており、前記実装基板には、前記第1空間と前記第2空間とをつなぐ貫通孔が形成されていることが好ましい。これにより、外囲器内を高真空状態に維持することができる。また、光電変換ターゲット及び電界放出型陰極が配置された第1空間とは別の第2空間内にゲッターが配置されているので、ゲッターとして蒸発型のゲッターを用いることができる。即ち、ゲッター材料を蒸発させて第2空間を形成する内壁面上にゲッター材料の蒸着膜を形成する際に、蒸発したゲッター材料が第1空間内の電界放出型陰極のエミッタに付着してエミッション特性が劣化するという問題は生じにくい。
【0022】
前記遮光性の材料が前記外囲器の外面にコーティングされることにより、前記外囲器の少なくとも一部が前記遮光性の材料で覆われていることが好ましい。これにより、外囲器の少なくとも一部を遮光性の材料で覆う作業が容易になる。
【0023】
前記遮光性の材料がシリコーン樹脂を含むことが好ましい。シリコーン樹脂は弾力性を有するので、撮像装置の耐衝撃性を向上させることができる。
【0024】
前記光電変換膜がX線に対して感度を有し、前記遮光性の材料がX線遮蔽特性を有し、不所望なX線が前記外囲器を通過して前記光電変換膜に入射するのを前記遮光性の材料が防止することが好ましい。これにより、不所望なX線によって光電変換膜内に発生するノイズを低減することができる。
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1にかかる撮像装置の概略構造を示した断面図、図2はその切り欠き斜視図である。
【0027】
本実施の形態1の撮像装置は、基本的に、内面に光電変換ターゲット7が形成された透光性基板3と、光電変換ターゲット7に向かって電子ビームを放出する電界放出型陰極10が設けられた実装基板4と、透光性基板3と実装基板4とを離間して保持するスペーサー部材5とを備えている。実装基板4の透光性基板3とは反対側の面にはゲッター容器25が設けられている。
【0028】
実装基板4とスペーサー部材5、及び実装基板4とゲッター容器25は、それぞれ低融点の封着用ガラス30を介して気密に接合されており、透光性基板3とスペーサー部材5とは封着用低融点金属40を介して気密に接合されている。実装基板4、スペーサ部材5、及びゲッター容器25は透光性のガラス材料からなる。透光性基板3、実装基板4、スペーサー部材5、及びゲッター容器25で、内部が高真空状態に維持された外囲器2が構成される。外囲器2内の空間は、透光性基板3、実装基板4、及びスペーサー部材5で形成された第1空間と、実装基板4及びゲッター容器25で形成された第2空間とに大別される。第1空間61と第2空間62とは、実装基板4に形成された貫通孔60を介して繋がっている。
【0029】
透光性基板3の材料は、撮像する光の波長に応じて公知の基板材料の中から選択して用いれば良く、例えば可視光を撮像する撮像装置の場合にはガラス基板が用いられ、紫外光を撮像する撮像装置の場合にはサファイヤや石英ガラスが用いられ、X線光を撮像する撮像装置の場合には金属Be,Al,Ti,BNなどが用いられる。
【0030】
透光性基板3の内面に形成された光電変換ターゲット7は、外囲器2外からの入射光1に応じて信号電荷を発生し蓄積する。光電変換ターゲット7は、透光性基板3側から、外部からの入射光1が透過する透光性導電膜22と、入射光1により信号電荷を発生する光電変換膜23とをこの順に備える。
【0031】
透光性導電膜22としては、例えば真空蒸着法やスパッタリング法などにより形成されたSnO2膜やITO膜などの金属薄膜を用いることができる。
【0032】
光電変換膜23は光を透過しない不透膜であり、従来から知られているPbO,Sb23,Sc,Si,Cd,Zn,As,Teなどからなる半導体材料を真空蒸着法などで膜状に形成して作成することができる。その中でも非晶質Seを主体とする半導体材料を用いて光電変換膜23を形成すると、これに高電界を印加したときに膜内で信号電荷のアバランシェ増倍を生じさせて感度を飛躍的に高めることができる。
【0033】
透光性基板3には、透光性導電膜22に電圧を供給するために、外囲器2内の空間を真空気密に保ちながら透光性基板3を貫通したリードピン24が設けられている。リードピン24は、超音波はんだ加工法等により透光性導電膜22と電気的に導通されている。
【0034】
光電変換ターゲット7に対向して、実装基板4上に、電界放出型陰極10が設けられている。電界放出型陰極10は、光電変換ターゲット7に空間分布的に蓄積された信号電荷を時系列電気信号として読み出すための電子ビームを放出する。
【0035】
電界放出型陰極10は、図9に示すように、シリコン基板に不純物を導入して低抵抗化したP型半導体からなる陰極ベース200と、例えばりん等の不純物を導入して形成されたN型半導体からなる陰極電極201とが接合されたPN接合部を有している。陰極電極201の表面には、N型半導体からなる複数のエミッタ202が形成されている。
【0036】
図3は、本実施の形態1にかかる撮像装置の主要部の概略構造を示す切り欠き斜視図である。電界放出型陰極10は、陰極ベース200上に、第1方向と平行な複数のストライプ状の陰極電極201、SiO2からなる絶縁層210、第2方向と平行な複数のストライプ状のゲート電極220をこの順に有している。絶縁層210及びゲート電極220には多数の開口205が形成されている。各開口205内に露出した陰極電極201上には、コーン形状のエミッタ202が設けられている。複数のストライプ状の陰極電極201及び複数のストライプ状のゲート電極220は、それぞれ互いに直交する方向に延設されてXYマトリクスを構成している。任意の陰極電極201に対して任意のゲート電極220に正電位Vdを印加することにより、この陰極電極201とこのゲート電極220との交点位置にあるエミッタ202から電子ビーム107を電界放出させることができる。電位差Vdを印加する陰極電極201及びゲート電極220を順次変更することにより、電界放出型陰極10をマトリクス駆動することができる。かくして、電界放出型陰極10から放出された電子ビーム107で光電変換ターゲット7を走査する。
【0037】
電界放出型陰極10をマトリクス駆動するためには、複数の陰極電極201が互いに絶縁され、且つ、複数のゲート電極220が互いに絶縁されている必要がある。そこで、絶縁層210は、互いに隣り合う陰極電極201間及び互いに隣り合うゲート電極220間にも形成されている。
【0038】
但し、陰極電極201の下面(ゲート電極220とは反対側の面)にもSiO2からなる絶縁層210を形成すると、電界放出型陰極10内に極めて大面積のSiO2膜が形成されることになるため、マトリクス駆動時に印加されるパルス状電圧によってSiO2膜に電荷がチャージして電位が不安定となり、ノイズ等の悪影響を及ぼすと共に、電界放出型陰極10の構造が複雑となりコストアップにつながる。
【0039】
そこで、本実施の形態1では、P型半導体からなる陰極ベース200上にN型半導体からなる陰極電極201を形成し、陰極ベース200にゼロ電位を与える。これにより、比較的安価に陰極電極201の下面の電位を安定化させることができる。
【0040】
また、駆動時には、例えば陰極ベース200にゼロ電位、陰極電極201にプラス電位をそれぞれ印加して、PN接合部に常に逆バイアス電圧が印加された状態にする。これにより、PN接合部に空乏層が形成されるので、陰極ベース200と陰極電極201との間の電気的絶縁を確保することができる。
【0041】
尚、図3は電界放出型陰極10の一部を描いた図であり、実際には更に多数のエミッタ202が格子点上に配置されている。
【0042】
電界放出型陰極10は絶縁材料からなる実装基板4上に接着・固定されている。電界放出型陰極10の複数の陰極電極201及び複数のゲート電極220は、実装基板4上にパターニング形成された複数の電極50に接続されている。電極50は外囲器2外へ引き出され駆動回路(図示せず)に接続される。
【0043】
図4〜図6を用いて、シリコン基板にエミッタ及びゲート電極を形成する方法を簡単に説明する。
【0044】
まず、図4(A)に示すように、P型シリコン層251及びN型シリコン層252を形成したシリコンの基板250のN型シリコン層252の表面に熱酸化法により酸化シリコン膜253を形成し、さらにその表面をフォトレジスト254で被覆する。
【0045】
次に、図4(B)に示すように、フォトリソグラフィー法によりフォトレジスト254をエッチングして、約1μmの径を有する円盤状のエッチングマスク255を形成する。
【0046】
次に、図4(C)に示すように、ドライエッチング法によりエッチングマスク255の周辺の酸化シリコン膜253を除去し、エッチングマスク255の下に、これとほぼ同等の径を有する酸化シリコンからなる円盤構造256を形成する。
【0047】
次に、図5(A)に示すように、エッチングマスク255が付着した状態で、酸化シリコンからなる円盤構造256の側面にウェットエッチングを施すことにより径が縮小された酸化シリコンからなる円盤構造256aを形成する。
【0048】
次に、図5(B)に示すように、エッチングマスク255を除去することにより、約0.3μmの微小径を有する酸化シリコンからなる円盤状の微小エッチングマスク256aを形成する。
【0049】
次に、図5(C)に示すように、微小エッチングマスク256aをマスクとして使用してサイドエッチングがほとんど生じない条件でN型シリコン層252をドライエッチングすることにより、微小エッチングマスク256aの下に円柱状の立体構造252aを形成する。
【0050】
次に、図6(A)に示すように、円柱状の立体構造252aに異方性エッチングを施すことにより、一対の円錐形状が互いにその頂点で接続された形状を有する微小立体構造252bを形成する。微小立体構造252bの最小径(即ち、一対の円錐形状の接続部の径)は、微小エッチングマスク256aの径よりも小さく、約0.1μmである。
【0051】
次に、図6(B)に示すように、微小エッチングマスク256aを介して蒸着することにより、微小エッチングマスク256aの上面及び微小立体構造252bの周囲のN型シリコン層252の上面に絶縁物257およびゲート電極となる金属258を順に付着させる。
【0052】
次に、図6(C)に示すように、微小立体構造252bの側面にウェットエッチングを施して、微小立体構造252bの最小径を零に減少させることにより、微小エッチングマスク256aおよび微小エッチングマスク256aの上に付着した絶縁物257および金属258を除去する。この結果、微小エッチングマスク256aと同等の内径を有する微小開口のゲート258a内に、急峻な先端を有するエミッタ259が形成される。
【0053】
図1に示すように、電界放出型陰極10と光電変換ターゲット7との間には、シールド−グリッド電極20が配置されている。シールド−グリッド電極20は、多数の貫通孔が形成された板状の電極であり、スペーサー部材5に保持されている。シールド−グリッド電極20は、電界放出型陰極10から放出された電子ビームを効果的に光電変換ターゲット7に到達させる作用、外囲器2内に存在する迷走電子、余剰電子、及び残留ガスイオンなどによって電界放出型陰極10が損傷するのを防止する作用、及び、電界放出型陰極10から電子ビームを放出する位置を時間的に切り替えるために陰極電極201及びゲート電極220に印加される駆動パルス電圧によって光電変換ターゲット7に生じる雑音を低減する作用を有している。
【0054】
ゲッター容器25内にはゲッター26が収納されている。外囲器2を気密に封着した後、外囲器2外からゲッター26に電流を流してゲッター26を加熱し、ゲッター26の材料からなる薄膜(ゲッター膜)を第2空間62を形成する内壁面に蒸着形成する。これにより、外囲器2内の余分なガスが吸着除去され、高真空状態が形成され維持される。
【0055】
本実施の形態1では、ゲッター容器25は透光性のガラス材料からなり、その外面は遮光性のシリコーン樹脂系材料300で覆われている。同様に、実装基板4及びスペーサー部材5の外面も遮光性のシリコーン樹脂系材料300で覆われている。この結果、外光が、ゲッター容器25、実装基板4、又はスペーサー部材5を通過して外囲器2内に入射するのが防止されている。
【0056】
シリコーン樹脂系材料300が設けられていない場合、例えばゲッター容器25を通過した外光は実装基板4の貫通孔60などを通過して第1空間61内に到達し、直接的に又は第1空間61内で反射して間接的に、電界放出型陰極10のPN接合部に入射する可能性がある。PN接合部に光が入射すると、光電効果によりN型半導体からなる陰極電極201とP型半導体からなる陰極ベース200との間に不所望なリーク電流が流れ、陰極電極201に印加される駆動パルス波形が歪んで所望のエミッタ電流が得られない。外光がスペーサー部材5又は実装基板4を通過して外囲器2内に入射した場合も、上記と同様の現象が生じる可能性がある。
【0057】
外光がPN接合部に入射しないように外囲器2の少なくとも一部を遮光性材料300で覆うことにより、PN接合部の光電効果による不所望なリーク電流の発生を防ぐことができるので、電界放出型陰極10のマトリクス駆動に支障を来すことがない。
【0058】
撮像装置の製造工程に於いては、ゲッター膜の形成状態を確認して不良品を排除できるように、少なくともゲッター膜を形成した後に、遮光性のシリコーン樹脂系材料300をゲッター容器25の外面に被覆することが望ましい。
【0059】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2にかかる撮像装置の概略構造を示した断面図である。実施の形態1に係る撮像装置を示した図1と機能及び構造が同一であると見なせる部材については図1と同一の符号を付して、それらの説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0060】
実施の形態1では実装基板4及びスペーサー部材5は透光性のガラス材料からなるが、本実施の形態2では実装基板70及びスペーサー部材80は例えばセラミック等の遮光性の材料からなる。従って、実施の形態1と異なり、実装基板70及びスペーサー部材80の外面は遮光性のシリコーン樹脂系材料300で覆われていない。
【0061】
ゲッター容器25も遮光性材料で形成すれば、外光がゲッター容器25を通過して外囲器2内に入射するのを防止できる。ところが、この場合、ゲッター膜の形成状態を確認することができないという問題が生じる。従って、実施の形態1と同様に本実施の形態2でも、ゲッター容器25は透光性のガラス材料からなる。
【0062】
しかしながら、ゲッター容器25の外面は遮光性のシリコーン樹脂系材料300で覆われているので、外光がゲッター容器25を通過して外囲器2内に入射するのを防ぐことができる。従って、電界放出型陰極10のPN接合部に光が入射して、光電効果により不所望なリーク電流が流れるのを防ぐことができ、信頼性の高い撮像装置を提供することができる。
【0063】
また、実装基板70及びスペーサー部材80が遮光性の材料からなるので、遮光性のシリコーン樹脂系材料300で覆う領域を少なくすることができる。
【0064】
なお、撮像装置の製造工程に於いてゲッター膜の形成状態を確認して不良品を排除できるという実施の形態1の効果は本実施の形態2でも同様に得られる。
【0065】
上記の実施の形態1,2において、外囲器2の外面の少なくとも一部を覆う遮光性材料300の厚み等の詳細寸法は、外光を十分に遮蔽することができるように、使用する遮光性材料の遮光特性などを考慮して適宜決定すれば良い。
【0066】
上記の実施の形態1,2では、外囲器2の外面の少なくとも一部を覆う遮光性材料としてシリコーン樹脂系材料を用いたが、遮光性を有する材料であればこれに限定されない。
【0067】
例えば外囲器2の外面の少なくとも一部を覆う遮光性材料として、鉛ガラス、鉛含有樹脂、タングステン含有樹脂等のX線をも遮蔽する特性を有する材料を用いても良い。この場合、紫外線からX線の領域にまで感度を有する光電変換膜23に外囲器2を通過して入射する不所望なX線を遮蔽することができる。従って、この不所望なX線によって光電変換膜23内に発生するノイズを低減することができるという付加的効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によればPN接合部を有する電界放出型陰極内に不所望なリーク電流が発生するのを防止できるので、高信頼性の撮像装置として広範囲に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる撮像装置の概略構造を示した断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1にかかる撮像装置の概略構造を示した切り欠き斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1にかかる光導電型撮像装置の主要部の概略構造を示した切り欠き斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1にかかる光導電型撮像装置の電界放出型陰極の形成方法を工程順に示した断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1にかかる光導電型撮像装置の電界放出型陰極の形成方法を工程順に示した断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1にかかる光導電型撮像装置の電界放出型陰極の形成方法を工程順に示した断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2にかかる撮像装置の概略構造を示した断面図である。
【図8】図8は、従来の光導電型撮像装置の主要部の概略構造を示した切り欠き斜視図である。
【図9】図9は、電界放出型陰極の基本的構造を示した断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 光
2 外囲器
3 透光性基板
4 実装基板
5 スペーサー部材
7 光電変換ターゲット
10 電界放出型陰極
20 シールド−グリッド電極
22 透光性導電膜
23 光電変換膜
24 リードピン
25 ゲッター容器
26 ゲッター
30 封着用ガラス
40 封着用低融点金属
50 電極
60 貫通孔
61 第1空間
62 第2空間
70 実装基板
80 スペーサー部材
107 電子ビーム
200 陰極ベース
201 陰極電極
202 エミッタ
205 開口
210 絶縁層
220 ゲート電極
300 遮光性のシリコーン樹脂系材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの入射光が透過する透光性導電膜、及び前記入射光により信号電荷を発生する光電変換膜からなる光電変換ターゲットが形成された透光性基板と、
前記光電変換ターゲットに向かって電子ビームを放出する電界放出型陰極が設けられた実装基板と、
前記透光性基板と前記実装基板とを離間して保持するスペーサー部材と、
少なくとも前記光電変換ターゲットと前記電界放出型陰極との間の高真空状態に維持された第1空間を内部に含む外囲器と
を備えた撮像装置であって、
前記電界放出型陰極は、P型半導体からなる陰極ベースと、複数のエミッタを有し、N型半導体からなり、前記陰極ベースに接合された陰極電極と、前記エミッタから前記電子ビームを電界放出させるゲート電極とを備え、
前記外囲器を通過した光が前記陰極ベース及び前記陰極電極に入射しないように、前記外囲器の少なくとも一部が遮光性の材料で覆われていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記外囲器内であって、前記実装基板に対して反対側には、前記外囲器内を高真空状態に維持するためのゲッターが配置された第2空間が形成されており、
前記実装基板には、前記第1空間と前記第2空間とをつなぐ貫通孔が形成されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記遮光性の材料が前記外囲器の外面にコーティングされることにより、前記外囲器の少なくとも一部が前記遮光性の材料で覆われている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記遮光性の材料がシリコーン樹脂を含む請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光電変換膜がX線に対して感度を有し、前記遮光性の材料がX線遮蔽特性を有し、不所望なX線が前記外囲器を通過して前記光電変換膜に入射するのを前記遮光性の材料が防止する請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−97971(P2008−97971A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277797(P2006−277797)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(503217783)MT映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】