説明

撮像装置

【課題】撮像装置において、光学系の大型化を抑える。
【解決手段】撮像装置は、観察物32(33)が配置されるステージ部30と、該ステージ部に配置された観察物の光学像を形成する光学系40および該光学像を撮像する複数の撮像素子53を有する撮像部50と、ステージ部および撮像部を相対移動させる移動機構35と、移動機構にステージ部および撮像部を一定の方向に所定量ずつ相対移動させながら撮像部に複数回の撮像を行わせ、該複数回の撮像においてそれぞれ複数の撮像素子からの出力を用いて生成された画像を合成することで、観察物の全体を含む全撮像領域の撮影画像を生成する処理部60とを有する。撮像部において、複数の撮像素子は、該複数の撮像素子の全てにステージ部からの光を導くのに必要な光学系の有効径が全撮像領域に外接する円の直径よりも小さくなるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察物を撮像する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子を用いて観察物を撮像し、生成された画像をモニタに表示する撮像装置において、広い撮像領域を得るための方法がいくつか提案されている。特許文献1には、撮像領域を一部がオーバーラップする多数の小区画に分けて撮像し、それぞれの区画での撮像により得られた複数の画像(タイル画像)を繋ぎ合わせることにより、広い撮像領域に対応する全体画像を生成する撮像装置が開示されている。また、特許文献2には、ラインセンサ状の撮像素子を使い、観察物および撮像素子を一方向に相対移動させながら撮像素子による撮像を行うことで、観察物の全体を撮像した画像を得るスキャン撮像を行う撮像装置が開示されている。
【0003】
さらに、特許文献3,4にて開示された撮像装置では、2次元方向に並べられた複数の撮像素子を備えた撮像部と観察物とを相対移動させながら撮像部により複数回の撮像を行う。そして、該複数回の撮像により得られた画像群を合成することで、観察物全体を含む広い撮像領域の画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−510201号公報
【特許文献2】特表2004−514920号公報
【特許文献3】特開2009−003016号公報
【特許文献4】特開2009−063655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示された撮像装置では、多数の区画の1つずつで順次撮像を行い、さらにそれぞれの区画での撮像により得られた多数の画像を繋ぎ合わせるために、全体画像を得るまでに多大な時間を要する。また、特許文献2にて開示されたスキャン撮像方式では、撮像素子を撮像領域の一端から他端までスキャン移動させる必要があり、さらに良質な画像を得るためにもある程度長い撮像時間を必要とするため、全体画像を得るまでに長時間がかかる。
【0006】
一方、特許文献3,4にて開示された撮像装置では、1回の撮像によって複数の撮像素子のそれぞれによる画像取得が行え、数回の撮像によって全体画像が得られるため、全体画像を得るまでに要する時間が短くなる。ただし、このような撮像装置では、観察物側からの光を複数の撮像素子に十分に到達させるために必要な光学系の有効径が、全撮像領域を含む円の直径よりも大きくなる可能性がある。つまり、全撮像領域を1回の撮像でカバーする場合よりも、複数の撮像素子を2次元方向に並べて用いる方が、有効径が大きな光学系が必要となるおそれがある。
【0007】
本発明は、光学系の大型化を抑えつつ、広い撮像領域を高速で撮像でき、良好な画質の画像が得られるようにした撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての撮像装置は、観察物が配置されるステージ部と、該ステージ部に配置された観察物の光学像を形成する光学系および該光学像を撮像する複数の撮像素子を有する撮像部と、ステージ部および撮像部を相対移動させる移動機構と、移動機構にステージ部および撮像部を一定の方向に所定量ずつ相対移動させながら撮像部に複数回の撮像を行わせ、該複数回の撮像においてそれぞれ複数の撮像素子からの出力を用いて生成された画像を合成することで、観察物の全体を含む全撮像領域の撮影画像を生成する処理部とを有する。そして、撮像部において、複数の撮像素子は、該複数の撮像素子の全てにステージ部からの光を導くのに必要な光学系の有効径が全撮像領域に外接する円の直径よりも小さくなるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の撮像素子を備えた撮像部と観察物が配置されるステージ部とを相対移動させながら複数回の撮像を行うことにより広い撮像領域を得る撮像装置において、撮像部に含まれる光学系の有効径を小さくすることができる。したがって、広い撮像領域を高速で撮像でき、良好な画質の画像が得られる撮像装置の全体をコンパクト化することができる。しかも、光学系の有効径が小さくなることで、光学系の設計や製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例である撮像装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施例の撮像装置における電気基板と撮像素子の配列を示す図。
【図3】実施例の撮像装置における標本部(および検体)を示す図。
【図4】実施例の撮像装置において撮像部により形成された検体像を示す図。
【図5】実施例の撮像装置における複数回の撮像により取得される全体画像を示す図。
【図6】実施例における撮像素子の配列パターン(a)〜(e)を説明する図。
【図7】実施例における撮像素子の配置条件に用いられる変数、全撮像領域および撮影光学系の有効径を説明する図。
【図8】図6に示した撮像素子の配列パターン(a)〜(e)に対する全撮像領域を示す図。
【図9】図6(a)〜(c)に示した撮像素子配列パターンをXY座標系に置き換えた図。
【図10】図6(d),(e)に示した撮像素子配列パターンをXY座標系に置き換えた図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
図1には、本発明の実施例1である透過型撮像装置の構成を示している。該撮像装置1は、例えば顕微装置や拡大観察装置として用いられ、光源10と、照明光学系20と、標本部(ステージ部)30と、撮像部50と、処理部60とを有する。
【0013】
光源10は、後述する観察物を照明するための光を発する。該光源10は、ハロゲンランプ、キセノンランプおよびLED等により構成される。
【0014】
照明光学系20は、光源10からの光を整形するとともに、該光をミラー25を介して標本部30に導く。
【0015】
標本部30は、図3に示すように、観察物としての検体33を含む標本32が配置される標本ステージ31を有する。標本32としては、例えば、検体33をスライドガラスとカバーガラスの間に挟んだものが用いられる。
【0016】
撮像部50は、撮影光学系40と、撮像ステージ51と、該撮像ステージ51に固定された電気基板52と、該電気基板52上に搭載された複数の撮像素子53とで構成される。撮影光学系40は、照明光学系20から射出した光により照明された標本32内の検体33の光学像(以下、検体像という)を形成する光学倍率がβ倍の結像光学系である。撮像素子53は、CCDセンサやCMOSセンサ等の2次元イメージセンサ(光電変換素子)である。撮影光学系40に対して、標本部30(標本32)と撮像部50(撮像素子53)は、物面と像面の関係となるように配置される。
【0017】
撮像素子53の配置例を図2に示す。図2は撮像ステージ51を撮影光学系側から見て示している。複数の撮像素子53は、XY面上に互い間隔をあけて離散的に2次元配列されている。より詳しくは、該複数の撮像素子53は、Y方向に延びる列をX方向に複数形成するように配列されている。ただし、X方向において隣り合う列同士におけるY方向での撮像素子53の位置は、互いに半ピッチずれている。言い換えれば、Y方向から見たときには隣り合う列の間に重なりはないが、X方向から見たときには隣り合う列の間に重なりがある。以下の説明において、複数の撮像素子53の撮像面を含むXY面を、撮像面ともいう。
【0018】
検体33からの光は、撮影光学系40によって、図4中に実線で示すように撮像面上に検体像を形成する。
【0019】
なお、図2(および後述する図6)では、複数の撮像素子53が厳密な規則性にを持って整列配置されている場合について説明するが、必ずしも厳密な規則性にて整列配置される必要はなく、規則性が多少崩れていても構わない。
【0020】
処理部60は、制御部61と画像生成部62とを含む。制御部61は、撮像素子53を駆動して撮像を行わせる。また、制御部61は、撮像時には、標本部30(検体33)と撮像部50(撮影光学系40および撮像素子53)とを、撮影光学系40の光軸に直交する面(水平面)内において一定の方向(一方向)に相対移動させながら撮像部50に複数回の撮像を行わせる。より詳しくは、撮像部50による1回の撮像と標本部30と撮像部50との所定量の相対移動(ステップ移動)とが交互に繰り返される。以下の説明において、1回の撮像ごとにステップ移動する所定量を、ステップ量という。
【0021】
図1では、標本部30に移動機構としてのアクチュエータ35が接続されており、制御部61が該アクチュエータ35を駆動することで、標本部30が撮像部50に対して上記一方向に移動される場合を示している。ただし、撮像部50に接続されたアクチュエータを駆動することで、撮像部50が標本部30に対して上記一方向に移動されるようにしてもよい。なお、以下の説明において、標本部30と撮像部50の相対移動方向である上記一方向をステップ移動方向という。
【0022】
画像生成部62は、各回の撮像にて複数の撮像素子53から出力された撮像信号を用いて、各撮像素子53に対応した領域のみに検体像の一部が有効部分画像として取り込まれたモザイク状の画像(以下、モザイク画像という)を生成する。そして、画像生成部62は、複数回の撮像により生成された複数のモザイク画像を合成して、検体33全体の撮影画像(以下、全体画像という)を生成する。モニタ70には、全体画像が表示される。
【0023】
このようなステップ撮像方式の撮像装置での撮像の手順について図5を用いて説明する。図5(a)〜(c)には、標本部30を光軸に対してステップ移動方向(図2のX方向)に順次ステップ移動させたときの撮像素子53と検体像との位置関係を示している。図5において、符号53が示す点線枠内の領域は、撮像素子の有効撮像領域、すなわちそこからの出力を用いて画像生成部62が有効部分画像を生成できる領域を示している。また、符号54が示す実線枠内の領域は、有効撮像領域のうち、1回の撮像で得られる有効部分画像と次の1回の撮像により得られる有効部分画像とに重なりが生じない非重複撮像部分を示している。言い換えれば、撮像素子の有効撮像領域のうち非重複撮像部分より外側の部分は、連続した2回の撮像において検体像の同じ部分を有効部分画像の一部として取り込む重複撮像部分である。
【0024】
図5(a)に示す位置関係において1回目の撮像が行われると、図5(d)に示すように、検体像のうち離散的な複数の部分が有効部分画像として取り込まれた第1のモザイク画像が生成される。
【0025】
次に、非重複撮像部分のステップ移動方向での長さ(前述したステップ量)だけ標本部30がステップ移動した後、図5(b)に示す位置関係で2回目の撮像が行われる。2回目の撮像では、検体像のうち1回目の撮像により取り込まれた複数の部分からステップ量だけずれた複数の部分が有効部分画像として取り込まれた第2のモザイク画像が生成される。そして、第1のモザイク画像と第2のモザイク画像とを合成すると、図5(e)に濃くして示す領域に有効部分画像が存在する合成画像が生成される。第1のモザイク画像と第2のモザイク画像の合成は、撮像素子の重複撮像部分によりこれらモザイク画像の一部として取り込まれた検体像の共通部分を重ね合わせることで繋ぎ目が目立たないように行われる。
【0026】
最後に、図5(b)に示す位置関係からステップ量だけ標本部30がステップ移動した後、図5(c)に示す位置関係で3回目の撮像が行われ、第3のモザイク画像が生成される。そして、第3のモザイク画像を、第1および第2のモザイク画像と合成すると、図5(f)に濃くして示す領域に有効部分画像が存在する全体画像としての合成画像が生成される。図5(f)にて点線枠で囲んだ領域が全撮像領域に相当し、この全撮像領域の画像である全体画像が実際にモニタ70に表示される。
【0027】
以上説明した撮像方式は、数回の撮像とステップ移動とを行って取得した数枚のモザイク画像を合成すればよいので、広い撮像領域を高速で撮像することができる。
【0028】
ただし、撮像部50での複数の撮像素子53の配置の仕方によっては、全撮像領域を1回で撮像する場合よりも、撮影光学系40の有効径が大きくなる可能性がある。本実施例にいう撮影光学系40の有効径は、複数の撮像素子53の全てに標本部30からの光を十分に到達させるために必要な直径である。このため、以下に撮影光学系40の有効径をできるだけ小さくすることができる複数の撮像素子53の配置の仕方について説明する。
【0029】
図6(a)〜(e)には、撮像素子53の配置パターンの例を示す。なお、これらの図には、前述した非重複撮像部分54のみを示している。
【0030】
撮像素子の配置パターンは、ステップ方向において撮像素子が奇数列をなすように配置される奇数列配置パターンと偶数列をなすように配置される偶数列配置パターンの2つに大別できる。図6(a)〜(c)は奇数列配置パターンであり、図6(d)〜(e)は偶数列配置パターンである。
【0031】
また、配置パターンは、ステップ方向での隣り合う2列での撮像素子の数が互いに同じ配置パターンと該数が互いに異なる配置パターンとに分けることもできる。図6(c),(e)は前者の配置パターンであり、図6(a),(b),(d)は後者の配置パターンである。隣り合う2列での撮像素子の数が互いに異なる配置パターンには、図6(a)と図6(b)に示すように、ステップ方向での端列における撮像素子の数がそれに隣り合う列における撮像素子の数よりも少ない配置パターンと多い配置パターンがある。
【0032】
図6(a)は、奇数列配置パターンであって、端列の撮像素子数がその隣列よりも少ない配置パターンである。図6(b)は、奇数列配置パターンであって、端列の撮像素子数がその隣列よりも多い配置パターンである。図6(c)は、奇数列配置パターンであって、列ごとの撮像素子の数が互いに同じ配置パターンである。図6(d)は、偶数列配置パターンであって、端列の撮像素子数がその隣列と異なる配置パターンである。図6(e)は、偶数列配置パターンであって、列ごとの撮像素子数が互いに同じ配置パターンである。
【0033】
以下、これらの配置パターンに対する撮影光学系の有効径と全撮像領域の外接円の直径とを比較する。そして、撮影光学系の有効径を全撮像領域の外接円の直径よりも小さくすることができる配置パターンにおいてさらに満足すべき条件を説明する。
【0034】
ここでは、図7(a)に示すように、矩形の全撮像領域のステップ方向での長さをXとし、該ステップ方向に直交する方向の長さをYとする。各撮像素子のステップ方向での長さをxとし、ステップ方向に直交する方向の長さをyとする。ただし、ここにいう撮像素子の各方向の長さは、非重複撮像部分54の同方向の長さである。また、ステップ量(所定量)をxで除した値をStとする。図7(a)に一点鎖線で示した円は、全撮像領域の外接円であり、その半径はRである。
【0035】
さらに、図7(b)に示すように、全ての撮像素子(非重複撮像部分54)を含む最小の矩形領域(以下、撮像素子包含領域という)のステップ方向での長さをX′とし、ステップ方向に直交する方向での長さをY′とする。また、各撮像素子のステップ方向での列数をTとし、ステップ方向に直交する方向での数(行数)をTとする。図7(b)の例では、T=5,T=7となる。図7(b)に一点鎖線で示した円は、撮影光学系40に必要な最小の有効径R′を表す円である。この円は、全ての撮像素子を含む矩形領域である撮像素子包含領域の外接円ではなく、全ての撮像素子を含む最小半径の円(言い換えれば、全ての撮像素子の外接円)である。以下、この有効径R′を示す撮像素子の外接円を、有効径円という。
【0036】
以上の定義のもとで、全撮像領域の大きさ(X,Y)と撮像素子包含領域の大きさ(X′,Y′)はそれぞれ、以下の式で表すことができる。
【0037】
【数5】

【0038】
そして、図7(a)に示した全撮像領域の外接円の半径Rは、以下の式で表すことができる。
【0039】
【数6】

【0040】
この関係は、撮像素子の配置パターンに関係なく適用できる。例えば、式(1)と式(3)より、全撮像領域の大きさは、撮像素子包含領域の大きさよりも、撮像素子1つ分の大きさxだけ小さいことがわかる。つまり、図6(a)〜(e)に示した配置パターンにおける全撮像領域はそれぞれ、図8(a)〜(e)に点線で示すようになる。
【0041】
まず、図6(a)の配置パターンについて検討する。XY座標系で大きさを比較するために、図6(a)を図9(a)のように書き換える。
【0042】
図9(a)においては、撮像素子包含領域を点線で示し、全撮像領域を実線で示している。また、撮像素子として、重複撮像部分54を示している。さらに、撮像素子包含領域の対角線の交点を原点Oとしている。これらのことは、図6(b)〜(e)を同様にXY座標系に書き換えた図9(b),(c)および図10(a),(b)についても同じである。
【0043】
図9(a)でも、全撮像領域の対角線の交点は原点Oに位置する。この配置パターンでは、全撮像素子はX軸およびY軸に関して対称に配置されている。このため、撮影光学系40の有効径の中心(光軸)も原点Oに位置する。有効径円は、撮像素子包含領域の外縁線(矩形枠の辺)上の点を通る円である。有効径円が通ることができる撮像素子包含領域の外縁線上の点としては、図9(a)の第1象限には、点Aと点Bがある。つまり、有効径円としては、点Aを通る有効径円と点Bを通る有効径円とが考えられる。また、点Aに対応する第2、第3および第4象限の点として、点A′、点A″、点A′″がある。
【0044】
点Aを通る有効径円について考える。矩形AA′A″A′″の外接円は、全撮像領域よりも明らかに小さい。これは、矩形AA′A″A′″は、全撮像領域に対して、Y方向の長さは同じであるが、X方向の長さが短いためである。
【0045】
次に、点Bを通る有効径円について考える。点Bを通る有効径円の半径R′は、線分OBの長さと同じである。点Bの座標を(X′/2, Y′/2−y)とおき、線分OBの長さを求める。これが式(5)で表されるRよりも小さければ、撮影光学系40の有効径は、全撮像領域の外接円の直径よりも小さくなる。
OB>0,R>0なので、R−OBを解くと、以下の関係式が得られる。
【0046】
【数7】

【0047】
この式(6)が0より大きい場合を考えればよい。つまり、
【0048】
【数8】

【0049】
なる条件が満足されればよい。図6(a)の配置パターンでは、式(7)が満足されれば、撮影光学系40の有効径は、全撮像領域の外接円の直径よりも小さくなる。
【0050】
次に、図6(b)の配置パターンについて、図9(b)のように書き換えて検討する。図9(b)では、全撮像領域の対角線の交点も原点Oに位置する。この配置パターンでは、全撮像素子はX軸およびY軸に関して対称に配置されている。このため、撮影光学系40の有効径の中心(光軸)も原点Oに位置する。
【0051】
図9(b)において、有効径円が通ることができる撮像素子包含領域の外縁線上の点としては点Aがある。しかし、点Aを通る有効径円は、撮像素子包含領域の外接円に相当し、全撮像領域の外接円よりも明らかに大きい。これは、撮像素子包含領域は、全撮像領域に対して、Y方向の長さは同じであるが、X方向の長さが長いためである。このため、この配列パターンでは、撮影光学系40の有効径は、全撮像領域の外接円の直径よりも大きくなる。したがって、図6(b)に示す配置パターンは、採用できない。
【0052】
次に図6(c)の配置パターンについて、図9(c)のように書き換えて検討する。図9(c)でも、全撮像領域の対角線の交点は原点Oに位置する。この配置パターンでは、全撮像素子はY軸に関して対称に配置されている。このため、撮影光学系40の有効径の中心(光軸)はY軸上に位置する。有効径円としては、撮像素子包含領域の外縁線上の点Aと点Cと点C′を通る円および点Bと点Cと点C′を通る円の2つが考えられる。
【0053】
前者の円について考える。点Aと点Cと点C′を座標で表すと、
点A(X′/2−xSt/2,Y′/2)
点C(−X′/2,−Y′/2)
点C′(X′/2,−Y′/2)
となる。点Aと点Cと点C′を通る円の中心は、線分AC′の垂直二等分線とY軸との交点に位置する。この円の中心O′の座標は、
(0,−xST(X′−xST/2)/4Y′)
となる。ここから、R−O′A>0であるなら、撮影光学系の有効径は、全撮像領域の外接円の直径よりも小さくなる可能性がある。
O′A>0,R>0であるから、R−O′Aを計算すると、以下の結果が得られる。
【0054】
【数9】

【0055】
このため、以下の条件を満足することで、撮影光学系の撮像有効径は、撮像領域よりも小さくなる可能性がある。
【0056】
【数10】

【0057】
ただし、有効径円が点Aではなく点Bを通る場合は、式(9)の条件を満足しても、以下に説明するように、撮影光学系40の有効径が全撮像領域の外接円の直径よりも小さくならない。
【0058】
点Bと点Cと点C′を通る円について考える。ΔBCC′は、∠BC′Cが直角であるので、線分BCが該円の直径となる。点Bの座標は、(X′/2,Y′/2−y)である。点Bと点Cの座標から、線分BCの長さを計算できる。
R−(BC/2)>0であるなら、撮影光学系40の有効径は、全撮像領域の外接円の直径よりも小さくなる可能性がある。BC>0,R>0なので、R−(BC/2)を計算すると、以下の結果が得られる。
【0059】
【数11】

【0060】
このため、以下の条件を満足する場合には、撮影光学系40の有効径が全撮像領域の外接円の直径よりも小さくなる可能性がある。
【0061】
【数12】

【0062】
以上より、図6(c)の配置パターンにおいて、式(9)と式(11)の条件を満足すれば、撮影光学系40の有効径は全撮像領域の外接円の直径よりも小さくなる。
【0063】
次に図6(d)の配置パターンについて、図10(a)のように書き換えて検討する。図10(a)では、全撮像領域の左端を、撮像素子包含領域の左端(線分CC′)に一致させて示している。この配置パターンでは、全撮像素子はX軸に関して対称に配置されている。このため、撮影光学系40の有効径の中心(光軸)はX軸上に位置する。有効径円としては、撮像素子包含領域の外縁線上の点Aと点Cと点C′を通る円および点Bと点Cと点C′を通る円の2つが考えられる。
まず前者の円について考える。点Aと点Cと点C′を座標で表すと、
点A(X′/2,Y′/2−y)
点C(−X′/2,Y′/2)
点C′(−X′/2,−Y′/2)
となる。点Aと点Cと点C′を通る円の中心は、線分ACの垂直二等分線とX軸との交点に位置する。この円の中心O′の座標は、
(−y(Y′−y)/2X′,0)
となる。全撮像領域の中心座標をO″とすると、点O′のX座標が点O″のX座標よりも負側であれば(つまり、O′A<O″A)であれば、撮影光学系40の有効径を全撮像領域の外接円の直径よりも小さくすることができる。
【0064】
点O″の座標は、矩形の全撮像領域の頂点である点Cとその対角にある点Dとを結ぶ対角線の中点である。点Dの座標は(X′/2−x,Y′/2)である。このため、点O″の座標は(−x/2,0)である。
【0065】
(O′のX座標)−(O″のX座標)を計算すると、以下の結果が得られる。
【0066】
【数13】

【0067】
式(12)が0より小さければよいので、以下の式(13)の条件を満足する場合は、撮影光学系40の有効径は、全撮像領域の外接円の直径よりも小さくなる可能性がある。
【0068】
【数14】

【0069】
ただし、有効径円が点Aではなく点Bを通る場合は、式(13)の条件を満足しても、以下に説明するように、撮影光学系40の有効径が全撮像領域の外接円の直径よりも小さくならない。
【0070】
点Bと点Cと点C′を通る円について考える。この円は、点Bと該点Bに対してX軸に関して対称な点B′とを通る。このため、点Bと点Cと点C′を通る円は、矩形BB′C′Cに外接する円である。この円は、全撮像領域の外接円よりも明らかに小さい。矩形BB′C′Cは、全撮像領域に対して、Y方向の長さは同じであるが、X方向の長さが短いためである。したがって、図6(d)の配置パターンにおいて、式(13)の条件を満足すれば、撮影光学系40の有効径は、全撮像領域の外接円の直径よりも小さくなる。
【0071】
次に、図6(e)の配置パターンについて、図10(b)のように書き換えて検討する。図10(b)では、全撮像領域の対角線の交点は原点Oに位置する。この配置パターンでは、全撮像素子はX軸に関してもY軸に関しても対称に配置されていない。
【0072】
有効径円としては、図10(b)に示す点Aと点A′とを結ぶ線分を直径とする円が考えられる。しかし、この円は、撮像素子包含領域の外接円に相当し、全撮像領域の外接円よりも明らかに大きい。撮像素子包含領域は、全撮像領域に対して、Y方向の長さが同じであるが、X方向の長さが長いためである。このため、この配列パターンでは、撮影光学系40の有効径は、全撮像領域の外接円の直径よりも大きくなる。したがって、図6(e)に示す配置パターンは、採用できない。
【0073】
撮像光学系40の有効径が全撮像領域の外接円の直径より小さくなる撮像素子の配置パターンを選択する場合は、撮像素子の大きさとその間隔が重要なパラメータとなる。特に、複数の撮像素子を並べるためには、電気配線や放熱のための構造物を配置するための撮像素子間のスペースが問題になる。しかし、前述した条件を考慮することで、それらのスペースに必要な条件も同時に満足することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施例によれば、撮像部に複数の撮像素子を配置したステップ撮像方式の撮像装置において、該撮像素子の配置を適切に選択することにより、全撮像領域を1回で撮像する場合よりも、撮影光学系の有効径を小さくすることができる。このため、撮影光学系の大きさや撮像装置全体の大きさの増加を抑えることができる。しかも、撮影光学系の設計および製造が容易となる。また、撮像素子間の電気配線や構造物の配置スペースのコンパクト化も併せて可能となり、消費電力の低減効果も得られる。
【0075】
なお、撮像光学系の有効径が全撮像領域の外接円の直径より小さくなる撮像素子の配置パターンについては、上記実施例で説明した条件を満足すれば、図6(a),(c),(d)に示した配置パターン以外のものを採用してもよい。
【0076】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
複数の撮像素子を用いつつ撮影光学系の有効径が小さな撮像装置を提供できる。
【符号の説明】
【0078】
1 撮像装置
10 光源
30 標本部
33 検体
40 撮影光学系
50 撮像部
53 撮像素子
60 処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察物が配置されるステージ部と、
該ステージ部に配置された前記観察物の光学像を形成する光学系および該光学像を撮像する複数の撮像素子を有する撮像部と、
前記ステージ部および前記撮像部を相対移動させる移動機構と、
前記移動機構に前記ステージ部および前記撮像部を一定の方向に所定量ずつ相対移動させながら前記撮像部に複数回の撮像を行わせ、該複数回の撮像においてそれぞれ前記複数の撮像素子からの出力を用いて生成された画像を合成することで、前記観察物の全体を含む全撮像領域の撮影画像を生成する処理部とを有し、
前記撮像部において、前記複数の撮像素子は、該複数の撮像素子の全てに前記ステージ部からの光を導くのに必要な前記光学系の有効径が前記全撮像領域に外接する円の直径よりも小さくなるように配置されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記複数の撮像素子は、前記ステージ部および前記撮像部の相対移動方向において奇数列をなすように配置されており、
前記奇数列のうち互いに隣り合う2つの列に含まれる前記撮像素子の数が互いに異なるとともに、前記奇数列のうち端列に含まれる前記撮像素子の数が、該端列に隣り合う列に含まれる前記撮像素子の数よりも少なく、
かつ以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【数1】


ただし、Tは前記相対移動方向での前記撮像素子の数であり、Tは前記相対移動方向に対して直交する方向での前記撮像素子の数であり、xは前記各撮像素子の前記相対移動方向での長さであり、yは該各撮像素子の前記直交する方向での長さであり、Stは前記所定量をxで除した値である。
【請求項3】
前記複数の撮像素子は、前記ステージ部および前記撮像部の相対移動方向において奇数列をなすように配置されており、
該奇数列の全ての列に含まれる前記撮像素子の数が互いに同じであり、
かつ以下の2つの条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【数2】


【数3】


ただし、Tは前記相対移動方向での前記撮像素子の数であり、Tは前記相対移動方向に対して直交する方向での前記撮像素子の数であり、xは前記各撮像素子の前記相対移動方向での長さであり、yは該各撮像素子の前記直交する方向での長さであり、Stは前記所定量をxで除した値である。
【請求項4】
前記複数の撮像素子は、前記ステージ部および前記撮像部の相対移動方向において偶数列をなすように配置されており、
前記偶数列のうち互いに隣り合う2つの列に含まれる前記撮像素子の数が互いに異なるとともに、前記偶数列のうち端列に含まれる前記撮像素子の数が、該端列に隣り合う列に含まれる前記撮像素子の数と異なり、
かつ以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【数4】


ただし、Tは前記相対移動方向での前記撮像素子の数であり、Tは前記相対移動方向に対して直交する方向での前記撮像素子の数であり、xは前記各撮像素子の前記相対移動方向での長さであり、yは該各撮像素子の前記直交する方向での長さであり、Stは前記所定量をxで除した値である。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−2923(P2012−2923A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136124(P2010−136124)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】