説明

撮影光学系、及び撮影装置

【課題】撮像チップ直前のプリズムによる不要光の発生を抑えつつ撮影装置の薄型化設計に有利な撮影光学系を提供すること。
【解決手段】少なくとも1枚のレンズを有する結像レンズ群と、結像レンズ群を透過した光を折り曲げる像側プリズム108と、像側プリズムで折り曲げられた光を透過させる撮像素子用カバーガラス110とを有した撮影光学系において、折り曲げた光を射出する像側プリズムの射出面108bと撮像素子用カバーガラスの入射面110aとを光学的に透明な接着剤112で接着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮影するための撮影光学系、及び該撮影光学系を有する撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、撮像モジュールを搭載したデジタル機器、例えば携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistants)、PND(Portable Navigation Device)、PHS(Personal Handy phone System)、携帯ゲーム機、ノートPC等が広く普及している。この種のカメラ又はデジタル機器には、本体部を薄型化させるため、本体部筐体の厚み方向(以下、説明の便宜上「筐体厚方向」と記す。)と直交する方向(以下、説明の便宜上「筐体面方向」と記す。)に光路が長く取られた撮影光学系(いわゆる屈曲光学系)を搭載したものがある。
【0003】
ところで、光路が筐体面方向に向く場合、被写体像を撮像チップのセンサ面に入射させるため、センサ面を筐体厚方向と平行に配置する必要がある。しかし、撮像チップのセンサ面方向の外形寸法は大きいため、センサ面を筐体厚方向と平行に配置した場合には本体部筐体を薄型に設計するのが難しい。
【0004】
そこで、例えば特許文献1〜6に、撮像チップのセンサ面を筐体面方向と平行に配置して筐体厚方向の寸法を抑えるべく、撮像チップの直前にプリズムを配置して光路を筐体厚方向に折り曲げた撮影光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−058840号公報
【特許文献2】特開2006−154702号公報
【特許文献3】特開2007−033819号公報
【特許文献4】特開2004−247887号公報
【特許文献5】特開2007−316528号公報
【特許文献6】特開2008−268700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜6に記載の撮影光学系においては、撮像チップの直前にプリズムを配置したことにより、正規の像形成に寄与しない不要光が発生してゴーストやフレアとして画像に現れる。ゴーストやフレアには、意図しない像形成やコントラストの低下を生じさせて画質を劣化させるという問題がある。ゴーストやフレアの発生を抑える有効な手段として、例えば不要光の発生原因となる光学素子と撮像チップとの間の光路に遮光マスクを配置することが考えられる。しかし、特許文献1〜6に記載の構成においては、撮像チップ直前のプリズムと撮像チップとの間に遮光マスクを配置するスペースを確保するのは難しい。また、遮光マスクを配置しただけでは不要光を十分に抑えることができず画質の劣化が抑えられない虞がある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、撮像チップ直前のプリズムによる不要光の発生を抑えつつ撮影装置の薄型化設計に有利な撮影光学系、及び該撮影光学系を有する撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る撮影光学系は、少なくとも1枚のレンズを有する結像レンズ群と、結像レンズ群を透過した光を所定位置に設置される撮像素子に向けて折り曲げる像側プリズムと、像側プリズムで折り曲げられた光を透過させる撮像素子用カバーガラスとを有し、折り曲げた光を射出する像側プリズムの射出面と撮像素子用カバーガラスの入射面とが光学的に透明な接着剤で接着されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、像側プリズムの内部から外部に進む光の射出面での臨界角が接着層のない(つまり空気層)の場合と比べて大きくなり、全反射する光が減少する。接着層の屈折率が像側プリズムの屈折率よりも高い場合は、そもそも全反射自体が起こらない。すなわち、射出面で全反射する光が減少し又は無くなるため、撮影装置の薄型化設計に有利ないわゆる屈曲光学系でありつつも、ゴーストやフレアの発生が効果的に抑えられる。また、像側プリズムと撮像素子用カバーガラスとが接着固定されているため、撮影光学系と撮像素子との相対位置が簡易に精度良く決まる。
【0010】
本発明に係る撮影光学系は、像側プリズムの屈折率をnと定義し、該像側プリズムと撮像素子用カバーガラスとの間の接着層の屈折率をnと定義し、該撮像素子用カバーガラスの屈折率をnと定義した場合に、次式(1)
≦n≦n・・・(1)
が満たされる構成としてもよい。かかる構成によれば、像側プリズムの射出面、撮像素子用カバーガラスの入射面の何れにおいても全反射が起こらないため、ゴーストやフレアの発生がより一層効果的に抑えられる。
【0011】
本発明に係る撮影光学系は、次式(2)
−n<0.02・・・(2)
が満たされる構成としてもよい。かかる構成によれば、像側プリズムの射出面で全反射が実質的に起こらないため、ゴーストやフレアの発生がより一層好適に抑えられる。
【0012】
本発明に係る撮影光学系は、次式(3)
−n<0.07・・・(3)
が満たされる構成としてもよい。かかる構成によれば、撮像素子用カバーガラスの入射面で全反射が実質的に起こらないため、ゴーストやフレアの発生がより一層好適に抑えられる。
【0013】
上記の課題を解決する本発明の別の形態に係る撮影光学系は、像側プリズムの射出面と撮像素子用カバーガラスの入射面とが接着される構成に代わり、像側プリズムと撮像素子用カバーガラスとが一体形成部品であることを特徴とする。
【0014】
像側プリズムは、筐体面方向に光路を長く取りつつ撮像素子のセンサ面を筐体面方向と平行に配置して筐体厚方向の寸法を抑えるため、例えば光路を略90°折り曲げる直角プリズムとしてもよい。
【0015】
本発明に係る撮影光学系は、結像レンズ群を構成する少なくとも1枚のレンズを像側プリズムとの間に挟んで配置された物体側プリズムを有する構成としてもよい。物体側プリズムは、被写体からの筐体厚方向の光を筐体面方向に折り曲げるため、光路を略90°折り曲げる直角プリズムとしてもよい。
【0016】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る撮影装置は、上記の撮影光学系と、結像レンズ群の結像面上にセンサ面が配置された撮像素子とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、撮像チップ直前のプリズムによる不要光の発生を抑えつつ撮影装置の薄型化設計に有利な撮影光学系、及び該撮影光学系を有する撮影装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の撮影装置の構成を示す図である。
【図2】従来の撮影装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1の撮影光学系の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例2の撮影光学系の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例3の撮影光学系の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例4の撮影光学系の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施例5の撮影光学系の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の撮影光学系を有する撮影装置について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の撮影装置1の構成を示す図である。図1においては、図面を明瞭にする便宜上、本発明の要部である光学構成について図示する一方、要部でない機械構成及び回路構成については図示を省略する。本実施形態において、撮影装置1は、携帯電話端末を想定しているが、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、撮像モジュールを搭載したPDA、PND、PHS、携帯ゲーム機、ノートPC等の別形態の装置に置き換えてもよい。又は、この種の装置に搭載される撮影モジュール自体が撮影装置1であってもよい。
【0021】
図1(a)に示されるように、撮影装置1は、厚みTの筐体10を有している。図1においては、説明の便宜上、筐体10の厚みT方向をZ軸方向と定義し、Z軸方向に直交しかつ互いに直交する二方向をX軸方向(紙面と直交する方向)、Y軸方向(紙面と平行な方向)と定義する。
【0022】
図1(a)に示される破線部の構成は、図1(b)に示される。図1(b)に示されるように、撮影装置1は、撮影光学系100を有している。撮影光学系100は、対物レンズ102、物体側プリズム104、結像レンズ群106、像側プリズム108、カバーガラス110を有している。物体側プリズム104、像側プリズム108は何れも光路を90°折り曲げる直角プリズムである。結像レンズ群106中には、絞りSが配置されている。図1(b)中、一点鎖線は、撮影光学系100の光軸AXを示す。
【0023】
被写体からのZ軸方向(筐体厚方向)の光は、対物レンズ102に入射して物体側プリズム104でY軸方向(筐体面方向)に折り曲げられた後、結像レンズ群106を透過して像側プリズム108の反射面108aで再度Z軸方向に折り曲げられて、像側プリズム108の射出面108bを射出してカバーガラス110を透過する。カバーガラス110は、樹脂パッケージに接着された撮像チップ20を封止している。カバーガラス110を透過した光は、撮像チップ20のセンサ面22の有効画素領域に入射する。撮像チップ20は、反射面108aでZ軸方向に折り曲げられた光をセンサ面22の有効画素領域に正対して入射させるため、センサ面22がXY平面と平行に配置されている。センサ面方向に寸法の大きい撮像チップ20をこのように配置することにより、撮影光学系100と撮像チップ20とからなるブロックのZ軸方向の寸法tが抑えられる。その結果、筐体10の厚みTが抑えられて、撮影装置1が薄型化する。
【0024】
撮像チップ20は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサチップである。撮像チップ20のセンサ面22は、結像レンズ群106の結像面上に配置されている。撮像チップ20は、センサ面22上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して撮像信号に変換して、図示省略された画像処理エンジンに出力する。画像処理エンジンは、撮像信号を処理して画像を生成して表示画面に出力したり記録メディアに保存したりする。なお、撮像チップ20は、CMOSイメージセンサチップに限らず、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサチップとしてもよい。
【0025】
ところで、像側プリズム108と撮像チップ20との間の光路には、正規の像形成に寄与する正規光を遮光することなく不要光のみを遮光するマスクを配置するスペースが無い。そのため、像側プリズム108が原因で発生した不要光がゴーストやフレアとして現れて画質を劣化させるという不具合が懸念される。ここで、従来の撮影光学系で発生していた不要光によるゴーストやフレアの一例を図2を用いて説明する。図2に示される光線Rは、センサ面22の有効画素領域に設計上入射しない、最大画角よりも外側の光線である。光線Rの定義は、後述する各実施例及び比較例においても同一である。図2の従来構成及び後述する各実施例において、本実施形態と同一の又は同様の構成には、同一の又は同様の符号を付して説明を省略する。
【0026】
図2に示される従来構成の撮影光学系200は、対物レンズ202、物体側プリズム204、結像レンズ群206、像側プリズム208、カバーガラス210を有している。光線Rは、対物レンズ202に入射して物体側プリズム204で折り曲げられた後、結像レンズ群206を透過して像側プリズム208に入射する。光線Rは、像側プリズム208の射出面208bに入射する。射出面208bに対する光線Rの入射角は大きく、臨界角以上である。そのため、光線Rは、射出面208bで全反射する。全反射した光線Rは、反射面208aに入射する。光線Rは、反射面208aで再度全反射した後に射出面208bを透過する。光線Rは、カバーガラス210を透過してセンサ面22の有効画素領域に入射する。すなわち、従来構成の撮影光学系200では、射出面208bで全反射した画角外の光がゴーストやフレアとして現れて画質を劣化させる。
【0027】
本実施形態の撮影光学系100では、この種のゴーストやフレアの発生を抑えるべく、像側プリズム108の射出面108bとカバーガラス110の入射面110aとを接着している。像側プリズム108とカバーガラス110との間の接着層112は、光学的に透明な接着剤からなり、空気よりも屈折率が高い。そのため、像側プリズム108の内部から外部に進む光の射出面108bでの臨界角が接着層のない(つまり空気層)の場合と比べて大きくなり、全反射する光が減少する。接着層112の屈折率が像側プリズム108の屈折率よりも高い場合は、そもそも全反射自体が起こらない。すなわち、本実施形態の撮影光学系100においては、射出面108bで全反射する光が減少し又は無くなるため、ゴーストやフレアの発生が効果的に抑えられる。また、像側プリズム108とカバーガラス110とが接着固定されているため、撮影光学系100とセンサ面22との相対位置が簡易に精度良く決まる。
【0028】
撮影光学系100は、像側プリズム108の屈折率をnと定義し、接着層112の屈折率をnと定義し、カバーガラス110の屈折率をnと定義と定義した場合に、次式(1)
≦n≦n・・・(1)
を満たす構成であることがより一層好適である。像側プリズム108の射出面108b、カバーガラス110の入射面110aの何れにおいても全反射が起こらないため、ゴーストやフレアの発生が効果的に抑えられる。
【0029】
像側プリズム108と外側の媒質との屈折率差が少ないほど全反射する光が減少することから、像側プリズム108よりも低い屈折率を持つ接着剤を選択しても(空気よりも屈折率が高いため)本発明の目的を達成することができる。例えば屈折率nとnが次式(2)を満たす関係であるとき、対物レンズ102から入射し像側プリズム108に到達しうる光に対して像側プリズム108の射出面108bで全反射が実質的に起こらないため、ゴーストやフレアの発生が好適に抑えられる。式(2)を満たさない場合は、射出面108bで全反射が起こり、ゴーストやフレアが発生しやすくなる。
−n<0.02・・・(2)
【0030】
例えば屈折率nとnが次式(3)を満たす関係であるときには、対物レンズ102から入射し像側プリズム108に到達しうる光に対してカバーガラス110の入射面110aで全反射が実質的に起こらないため、ゴーストやフレアの発生が好適に抑えられる。式(3)を満たさない場合は、入射面110aで全反射が起こり、ゴーストやフレアが発生しやすくなる。
−n<0.07・・・(3)
【0031】
次に、これまで説明した撮影装置1に組み込まれる撮影光学系100の具体的数値実施例を5例説明し、比較例として従来の撮影光学系200を1例説明する。各実施例1〜5の撮影光学系100は、像側プリズム108より物体側の構成が共通であり、図1に示される通りである。従って、各実施例1〜5の構成図においては、重複した図示を避ける便宜上、像側プリズム108以降の光学構成のみを図示する。
【実施例1】
【0032】
図3は、本発明の実施例1の撮影光学系100の構成を示す図である。本実施例1の撮影光学系100の具体的数値構成(設計値)は、表1に示される。表1において、R(単位:mm)は光学部材の各面の曲率半径を、D(単位:mm)は光軸AX上の光学部材厚又は光学部材間隔を、Ndはd線(波長588nm)の屈折率を、それぞれ示す。本実施例1の表又は図面についての説明は、以降の各実施例又は比較例で提示される表又は図面においても適用する。また、何れの実施例及び比較例においても、結像レンズ群106、206の焦点距離が4.0mm、像側プリズム108、208で光路が屈折される断面(YZ平面)内での最大像高が2.45mmである。
【0033】
【表1】

【実施例2】
【0034】
図4は、本発明の実施例2の撮影光学系100の構成を示す。本実施例2の撮影光学系100の具体的数値構成(設計値)は、表2に示される。表2中、面No.1〜10は数値が表1と同一であるため、重複説明を避ける便宜上省略している。以降の実施例又は比較例の表においても同様に省略する。
【0035】
【表2】

【実施例3】
【0036】
図5は、本発明の実施例3の撮影光学系100の構成を示す。本実施例3の撮影光学系100の具体的数値構成(設計値)は、表3に示される。
【0037】
【表3】

【実施例4】
【0038】
図6は、本発明の実施例4の撮影光学系100の構成を示す。本実施例4の撮影光学系100の具体的数値構成(設計値)は、表4に示される。
【0039】
【表4】

【実施例5】
【0040】
図7は、本発明の実施例5の撮影光学系100の構成を示す。本実施例5の撮影光学系100の具体的数値構成(設計値)は、表5に示される。本実施例5の撮影光学系100は、像側プリズム108とカバーガラス110とを接着固定するのに代わり、像側プリズム108とカバーガラス110とが一体に形成されている。なお、図7においては、説明の便宜上、二点鎖線を境に、一体部品の右側部分に符号108を付し、一体部品の左側部分に符号110を付している。
【0041】
【表5】

【0042】
(比較例1)
比較例1の撮影光学系200は、図2に示される構成を有する。比較例1の撮影光学系200の具体的数値構成(設計値)は、表6に示される。比較例1の撮影光学系200は、像側プリズム208とカバーガラス210とが接着されておらず、別個独立に固定されている。具体的には、像側プリズム208は図示省略されたレンズホルダに取り付けられている一方、カバーガラス210は回路基板に実装された樹脂パッケージに接着されている。像側プリズム208の射出面208bとカバーガラス210の入射面210aとの間は空気層である。
【0043】
【表6】

【0044】
(比較検証)
比較例1の撮影光学系200は、像側プリズム208と外側の媒質(空気層)との屈折率差が大きく、射出面208bでの臨界角が小さいため、射出面208bで光が全反射しやすい。そのため、ゴーストやフレアによる画質の劣化が生じやすい。例えば図2に示されるように、比較例1において、光線Rは、射出面208bで全反射した後、反射面208aで再度全反射してセンサ面22の有効画素領域に入射する。すなわち、比較例1において、光線Rは、ゴーストやフレアとして画像に現れる。
【0045】
本実施例1〜4の撮影光学系100は、像側プリズム108の射出面108bとカバーガラス110の入射面110aとを接着したことにより、像側プリズム108と外側の媒質(接着層112)との屈折率差が小さい。射出面108bでの臨界角が大きいため、射出面108bで全反射する光が減少してゴーストやフレアが現れにくくなる。本実施例5においては、像側プリズム108とカバーガラス110とを一体形成して像側プリズム108とカバーガラス110との境界自体をなくしたことにより、ゴーストやフレアによる画質の劣化が抑えられている。
【0046】
本実施例1では、式(1)が満たされる。本実施例1においては、像側プリズム108の射出面108b、カバーガラス110の入射面110aの何れにおいても全反射が起こらないため、ゴーストやフレアの発生が好適に抑えられる。例えば図3に示されるように、本実施例1において、光線Rは、射出面108b、入射面110aを順に透過後、カバーガラス110の射出面110b(カバーガラス110と樹脂パッケージ内部の空気層との境界)で全反射してセンサ面22の有効画素領域外に進む。射出面110bは、像側プリズム108の反射面108aから離れている。そのため、射出面110bで全反射した光が反射面108aに入射することがなく、ゴーストやフレアとして画像に現れることもない。この点は、他の実施例においても同様である。
【0047】
本実施例2、3においてはそれぞれ、式(2)、(3)が満たされる。本実施例4においては、式(2)、(3)が共に満たされる。例えば図4〜6に示されるように、本実施例2〜4において、光線Rは、射出面108b、入射面110aを順に透過後、センサ面22の有効画素領域外に進む。すなわち、本実施例2〜4において、光線Rは、ゴーストやフレアとして画像に現れない。
【0048】
本実施例5においては、像側プリズム108とカバーガラス110とが一体形成部品であるため、射出面108b(つまり反射面108aに近接した面)で全反射が起こり得ない。本実施例5において、光線Rは、像側プリズム108に入射後、センサ面22の有効画素領域外に伝播するため、ゴーストやフレアとして画像に現れない。
【0049】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば物体側プリズム104は、光路を折り曲げる反射ミラーであってもよい。また、物体側プリズム104は、結像レンズ群106よりも物体側の位置に配置されていなくてもよい。物体側プリズム104は、例えば結像レンズ群106を構成する複数枚のレンズの間に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 撮影装置
10 筐体
20 撮影チップ
100 撮影光学系
108 像側プリズム
110 カバーガラス
112 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚のレンズを有する結像レンズ群と、
前記結像レンズ群を透過した光を所定位置に設置される撮像素子に向けて折り曲げる像側プリズムと、
前記像側プリズムで折り曲げられた光を透過させる撮像素子用カバーガラスと、
を有し、
折り曲げた光を射出する前記像側プリズムの射出面と前記撮像素子用カバーガラスの入射面とが光学的に透明な接着剤で接着されていることを特徴とする撮影光学系。
【請求項2】
前記像側プリズムの屈折率をnと定義し、該像側プリズムと前記撮像素子用カバーガラスとの間の接着層の屈折率をnと定義し、該撮像素子用カバーガラスの屈折率をnと定義した場合に、次式(1)
≦n≦n・・・(1)
が満たされることを特徴とする、請求項1に記載の撮影光学系。
【請求項3】
前記像側プリズムの屈折率をnと定義し、該像側プリズムと前記撮像素子用カバーガラスとの間の接着層の屈折率をnと定義した場合に、次式(2)
−n<0.02・・・(2)
が満たされることを特徴とする、請求項1に記載の撮影光学系。
【請求項4】
前記像側プリズムと前記撮像素子用カバーガラスとの間の接着層の屈折率をnと定義し、該撮像素子用カバーガラスの屈折率をnと定義した場合に、次式(3)
−n<0.07・・・(3)
が満たされることを特徴とする、請求項1又は請求項3に記載の撮影光学系。
【請求項5】
少なくとも1枚のレンズを有する結像レンズ群と、
前記結像レンズ群を透過した光を所定位置に設置される撮像素子に向けて折り曲げる像側プリズムと、
前記像側プリズムで折り曲げられた光を透過させる撮像素子用カバーガラスと、
を有し、
前記像側プリズムと前記撮像素子用カバーガラスとが一体形成部品であることを特徴とする撮影光学系。
【請求項6】
前記像側プリズムは、光路を略90°折り曲げる直角プリズムであることを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の撮影光学系。
【請求項7】
前記結像レンズ群を構成する少なくとも1枚のレンズを前記像側プリズムとの間に挟んで配置された物体側プリズムを有することを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の撮影光学系。
【請求項8】
前記物体側プリズムは、光路を略90°折り曲げる直角プリズムであることを特徴とする、請求項7に記載の撮影光学系。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の撮影光学系と、
前記結像レンズ群の結像面上にセンサ面が配置された撮像素子と、
を有することを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−68509(P2012−68509A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214152(P2010−214152)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】