説明

撮影装置

【課題】スコープ部の細径化を妨げることなく、画像の全領域において合焦している画像を取得する。
【解決手段】照明光が照射された被写体の画像を、複数のピント位置の中から所定のピント位置で撮像する内視鏡装置において、制御部210は、第1のピント位置で撮像した第1の画像の各画素領域の明るさに基づいて、この画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定し、この画像のほぼ全領域において合焦してはいないと判定した場合には、第1のピント位置とは異なる第2のピント位置で被写体の第2の画像を撮像させ、第1の画像内の合焦している領域と、第2の画像内の合焦している領域とを合成して、合成画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内などの被写体の画像を取得する内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療の分野においては、先端にCCDなどが取り付けられた細長いスコープ部を被検体の体腔内に挿入し、被検体の体腔内を撮影して腫瘍や血栓などを観察する内視鏡装置が広く利用されている。このような内視鏡装置によれば、被検体の体腔内を直接撮影することによって、被検体に外的なダメージを与えることなく、放射線画像では分かりにくい病巣の色や形状などを把握することができ、治療方針の決定などに必要な情報を手軽に得ることができる。このような内視鏡装置では、被検体の体腔内を照明により照らし、その照明下で撮影が行われる。
【0003】
一方、内視鏡では細長い体腔内を撮影する場合も多く、そのような場合には、一枚の画像の中に、近距離から遠距離までの画像が含まれ、画像の一部、例えば中距離に対応する部分のみがピントが合い、近距離や遠距離に対応する部分はピントが合っていない場合がある。
【0004】
通常のカメラにおいては、一枚の画像内の複数の被写体について、撮影距離の異なる複数の被写体に関して、それぞれ撮影距離を測定し、撮影光学系のピント位置をずらしながら複数回撮影を繰り返し、それらの複数の撮影駒から、それぞれピントが合っている部分を選択して、複数の被写体のピントが全て合っている1枚の画像を合成する方法が提案されている。(特許文献1参照)しかし、このようなカメラでは測距手段が必要であり、製造コストが増加する。また、この技術を内視鏡装置へ適用する場合、内視鏡のスコープ部の先端に、測距手段を設置するためのスペースが必要となるので、少しでも細いスコープ部を使用したいという医師の要望にも応えられなくなる。さらに、画像を合成する場合においてピントを合わせたい被写体を指定する必要があり煩わしい。内視鏡装置では、通常観察するのは胃等の内部であるため、カメラで風景シーンや、人物シーンを写すのとは異なり、画像は、1つ1つの被写体で構成されるような画像ではないので、複数の被写体の撮影距離を得るにも、画像のどの部分の撮影距離を測定してよいか不明瞭である、
また、異なる焦点距離をもって撮影された複数枚の画像から1枚の画像を合成する機能を有し、撮影済み画像のそれぞれをお互いに対応する複数の画像領域に分割したうえ、高周波成分量の多い画像領域を優先的に選択することにより、対応する画像領域同士のうちから合焦している画像領域のみを選択して組み合わせること特徴とする電子スチルカメラも提案されている。(特許文献2参照)このカメラには、測距手段も必要でなく、合成時にピントを合わせたい被写体を指定する必要もない。
【特許文献1】特開平10−10805号公報
【特許文献2】特開平10−210341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内視鏡で通常観察する画像は、胃などの粘膜の画像であるため、局所領域においては、画像のコントラストが小さく、ノイズ等の影響もあり高周波成分量では合焦している画像領域をうまく抽出できない場合がある。このため、上記特許文献2に記載の技術を内視鏡装置へ適用した場合、合成した画像が不自然になる場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、スコープ部の細径化を妨げることなく、画像の全領域において合焦している画像を取得することのできる内視鏡装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内視鏡装置は、照明光を射出する光源手段と、前記照明光が照射された被写体の画像を、複数のピント位置の中から所定のピント位置で撮像する撮像手段と、前記画像の撮像動作を制御する制御手段とを有する内視鏡装置において、
前記制御手段が、第1のピント位置で撮像した第1の画像の各画素領域の明るさに基づいて、前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定し、
前記画像のほぼ全領域において合焦してはいないと判定した場合には、前記撮像手段により、前記第1のピント位置とは異なる第2のピント位置で前記被写体の第2の画像を撮像させ、
前記第1の画像内の合焦している領域と、前記第2の画像内の合焦している領域とを合成して、合成画像を生成することを特徴とするものである。
【0008】
なお、ここで「画素領域の明るさ」とは、一つの画素の明るさであってもよいし、あるいは隣接する複数個の画素の明るさであってもよい。具体的には、一つの画素の輝度値や、あるいは隣接する複数個の画素の平均輝度値などを「画素領域の明るさ」として用いることができる。また、「画像のほぼ全領域」とは、画像の80%以上の領域、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の領域を意味している。
【0009】
前記制御手段は、前記第1の画像を、各画素領域の明るさに基づいて、前記第1のピント位置と対応する第1の領域と、前記第2のピント位置と対応する第2の領域とへ分割し、
前記第1の領域では、前記第1の画像を用い、前記第2の領域では第2の画像を用いることにより、合成画像を生成するものであってもよい。
【0010】
さらに、前記被写体と光の反射特性がほぼ等しい模擬被写体を所定被写体距離へ配置し、所定の光量の照明光を照射して撮像した画像の画素領域の明るさである基準明るさ情報と、前記複数のピント位置毎の被写界深度とを記憶する記憶手段を備える場合であれば、
前記制御手段は、前記第1の画像の各画素領域の明るさと、前記基準明るさ情報とに基づいて、前記被写体の被写体距離範囲を算出し、該被写体距離範囲と前記複数のピント位置毎の被写界深度とから、前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定するものであってもよい。
【0011】
また、前記被写体と光の反射特性がほぼ等しい模擬被写体を所定被写体距離へ配置し、所定の光量の照明光を照射して撮像した画像の画素領域の明るさである基準明るさ情報と、前記複数のピント位置毎の被写界深度とを記憶する記憶手段を備えるものであれば、
前記制御手段は、前記第1の画像の各画素領域の明るさと、前記基準明るさ情報とに基づいて、前記各画素領域毎に、前記被写体の被写体距離を算出し、算出した各画素領域毎の前記被写体の被写体距離と前記複数のピント位置毎の被写界深度とに基づいて、前記第1の画像を、前記第1のピント位置と対応する第1の領域と、前記第2のピント位置と対応する第2の領域とへ分割するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内視鏡装置は、第1のピント位置で撮像した第1の画像の各画素領域の明るさに基づいて、前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定し、前記画像のほぼ全領域において合焦してはいないと判定した場合には、前記撮像手段により、前記第1のピント位置とは異なる第2のピント位置で前記被写体の第2の画像を撮像させ、前記第1の画像内の合焦している領域と、前記第2の画像内の合焦している領域とを合成して、合成画像を生成するため、従来必要であった測距手段を備える必要がないので、スコープ部の細径化が妨げられることがなく、また、各画素領域の明るさに基づいて、前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定するため、画像のコントラストが少ない場合であっても、良好な精度で前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定することができ、合焦していない場合のみ、複数のピント位置において画像を取得して、合成画像を生成するので、装置の利便性が向上する。
【0013】
前記制御手段が、前記第1の画像を、各画素領域の明るさに基づいて、前記第1のピント位置と対応する第1の領域と、前記第2のピント位置と対応する第2の領域とへ分割し、
前記第1の領域では、前記第1の画像を用い、前記第2の領域では第2の画像を用いることにより、合成画像を生成するものであれば、容易に合成画像を生成することができる。
【0014】
さらに、前記被写体と光の反射特性がほぼ等しい模擬被写体を所定被写体距離へ配置し、所定の光量の照明光を照射して撮像した画像の画素領域の明るさである基準明るさ情報と、前記複数のピント位置毎の被写界深度とを記憶する記憶手段を備え、前記制御手段が、前記第1の画像の各画素領域の明るさと、前記基準明るさ情報とに基づいて、前記被写体の被写体距離範囲を算出し、該被写体距離範囲と前記複数のピント位置毎の被写界深度とから、前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定する場合には、より良好な精度で、前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定することができる。
【0015】
また、前記被写体と光の反射特性がほぼ等しい模擬被写体を所定被写体距離へ配置し、所定の光量の照明光を照射して撮像した画像の画素領域の明るさである基準明るさ情報と、前記複数のピント位置毎の被写界深度とを記憶する記憶手段を備え、前記制御手段が、前記第1の画像の各画素領域の明るさと、前記基準明るさ情報とに基づいて、前記各画素領域毎に、前記被写体の被写体距離を算出し、算出した各画素領域毎の前記被写体の被写体距離と前記複数のピント位置毎の被写界深度とに基づいて、前記第1の画像を、前記第1のピント位置と対応する第1の領域と、前記第2のピント位置と対応する第2の領域とへ分割するものであれば、ピント位置が異なる画像の中から、それぞれの領域で合焦している画像を確実に選択することができ、より自然な合成画像を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態である内視鏡装置を示す図である。
【0017】
この図1に示す内視鏡装置10は、動作を表示する動画表示モードまたは静止画を表示する静止画表示モードにより動作するものであり、照明光を伝播する光ファイバからなるライトガイド110が内部に配置され、また先端近傍にCCD120が設けられており、被検者の体腔内、例えば食道等に挿入されるスコープ部100と、CCD120で撮像された画像に各種の画像処理等を施し、動画用の画像データまたは静止画用の画像データを生成するプロセッサ部200と、ライトガイド110へ照明光を供給する光源装置300と、プロセッサ部200において生成された画像データを表示するモニタ400とを備えている。
【0018】
スコープ部100は、プロセッサ部200および光源装置300に着脱自在に装着されるものであり、CCD120の先端には該CCD120へ被写体像を結像させるための撮像光学系180とピント位置変更手段170とが設けられている。ライトガイド110は、光源装置300から射出される照明光を、被検体の体腔内にある被写体に導き、CCD120は、その照明光下で、被写体で反射された光を受光することでその被写体の像をあらわすアナログ画像データを生成する。CCD120には、相関二重サンプリング(CDS)を行うとともに、アナログデータを適宜に増幅する自動利得制御(AGC)を行うCDS/AGC回路130が接続され、該CDS/AGC回路130には、A/D変換回路140が接続されている。CCD120で生成されたアナログ画像データは、CDS/AGC回路130を経てA/D変換回路140に渡され、デジタル画像データに変換される。そして、そのデジタル画像データが、プロセッサ部200に渡される。スコープ部100の根元部分には、表示モードを動画表示モードから静止画表示モードへ切り換えるための静止画指定ボタン160が設けられている。また、スコープ部100には、このスコープ部100の型番等の各種情報を記憶するEEPROM150も備えられている。
【0019】
プロセッサ部200は、スコープ100の各構成要素の動作を含む、この内視鏡装置10全体の制御を行い、また静止画像表示モードが指示された場合には、静止画像データを生成する制御部210と、動画表示モードが選択されている場合には、スコープ部100から出力される動画画像データを後段へ出力し、静止画表示モードが選択されている場合には、制御部210から出力される静止画像データを後段へ出力する切換部220と、該切換部220から出力された画像データに対してホワイトバランス補正、ガンマ補正や彩度補正等といった各種画像処理を行う信号処理回路230と、該信号処理回路230により画像処理が施された表示画像データをモニタ400に表示させる表示制御部240とを備えている。また、制御部210には、各種制御プログラム、制御に必要な各種情報、を記憶するメモリ250が接続されている。
【0020】
制御部210には、ヒストグラム生成手段211、画像領域分割手段212および画像合成手段213を有している。なお、ヒストグラム生成手段211、画像領域分割手段212および画像合成手段213の詳細については後述する。
【0021】
また、メモリ250には、ピント位置・被写界深度情報と後述する基準輝度情報が記憶されている。ピント位置・被写界深度情報は、各ピント位置と、被写界深度前端Dnと被写界深度後端Dfとの関係を示すものであり、テーブルとして記憶されている。本実施形態において、このメモリ250に格納されているマトリクスデータの一例は次の表1のようになる。
【表1】

【0022】
光源装置300は、光源310と、該光源310とスコープ部100のライトガイド110の入射端の間に配置された絞り320と、この光源部装置300全体の動作制御を行う光源制御部330と、各種制御プログラムや制御に必要な各種情報を記憶する光源装置側のメモリ340とが備えられている。光源制御部330は、絞り320の開閉量を制御することにより、光源装置300から射出される照明光の射出光量を制御する。なお、本装置においては、動画表示モードが選択されている場合には、被写体に照射される照明光の照度が適切な値となるように、光源装置300から射出される照明光の照射光量が自動的に調整される。
【0023】
以下、まず動画表示モードが選択されている場合の撮影動作および照明光の照射光量の自動調整動作について説明する。
【0024】
まず、動画表示モードにおいては、スコープ部100から出力される画像データは、切換部220と制御部210の両方へ送られる。切換部220は、スコープ部100から出力される動画画像データを信号処理回路230へ出力する。信号処理回路230では、順次おくられてくる各フレームの動画画像データに対して、ホワイトバランス補正、ガンマ補正および彩度補正を施し、表示制御部240に出力する。なお、信号処理回路230においては、その他、シャープネス処理や、ノイズ抑制処理など、既知の画像処理を適宜施しても良い。
【0025】
また、上記の信号処理動作と平行して、プロセッサ部200の制御部210内のヒスとグラム生成手段211では、送られてくる各フレームの画像データについて、まず画素毎の輝度値を取得する。制御部210のヒストグラム生成手段211では、この輝度値を用いて図2に示すようなヒストグラムを作成する。なお、輝度値Yとしては、例えば画素データが、RGBからなる場合であれば、Y=(R+G+B)/3 あるいはY=(R+2B+B)/4として求めることができる。このヒストグラムの縦軸は度数、横軸は輝度値である。制御部210では、このヒストグラムから、ヒストグラム特徴量である下記のピーク輝度値Yp、平均輝度値Yaおよびボトム輝度値Ybを算出する。
【0026】
ピーク輝度値Yp:ヒストグラムの高輝度側からカウントして所定の相対累積度数(3%〜20%程度が望ましい)になる輝度値
平均輝度値Ya:ヒストグラムの平均値となる輝度値
ボトム輝度値Yb:ヒストグラムの低輝度側からカウントして所定の相対累積度数(3%〜20%程度が望ましい)になる輝度値
ピーク輝度値Ypは画像データの高輝度側代表値であり、ボトム輝度値Ybは画像データの低輝度側代表値である。画像データの輝度値は、ボトム輝度値Yb〜ピーク輝度値Ypの範囲に分布しているとみなすことができる。
【0027】
次に、制御部210は、平均輝度値Yaとあらかじめ設定されている基準平均輝度値Yiとを比較し、次フレームの画像を撮像する際の照明光の射出光量Iを算出し、光源制御部330へ出力する。制御部210は、平均輝度値Yaが基準平均輝度値Yiよりも小さい場合は、次フレームの画像を取得する際の照明光の射出光量を増大させ、平均輝度値Yaが基準平均輝度値Yiよりも大きい場合は、次フレームの画像を取得する際の照明光の射出光量を減少させ、平均輝度値Yaと基準平均輝度値Yiとが同じ値である場合には、照明光の射出光量を変化させない。
【0028】
光源制御部330では、予めメモリ340に記憶されている照明光の射出光量と絞りの開閉量との関係に基づいて、光源装置300から所定の射出光量Iの照明光が射出されるように、絞り320の開閉量を制御する。
【0029】
なお、本実施の形態においては、平均輝度値Yaを用いて照明光の射出光量を制御したが、これに限定されるものではなく、他の輝度値、例えばヒストグラムの高輝度側からカウントして20の相対累積度数になる高域輝度値Ycと、予め設定されている基準高域輝度値Yiとが等しくなるように、照明光の射出光量を制御してもよい。あるいは、使用者が、平均輝度値Yaまたは高域輝度値Ycの一方を選択できるようにしてもよい。
【0030】
次に、静止画表示モードが選択された場合の動作について説明する。使用者はモニタ400に表示されている動画を観察しながら、所望のタイミングで、スコープ部100に設けられている静止画指定ボタン160を押圧する。静止画指定ボタン160が押圧されると、該静止画指定ボタン160からプロセッサ200の制御部210内へ表示モードを静止画表示モードへ切り替える静止画表示モード信号が送信される。制御部210では、この静止画表示モード信号を受信すると、受信したタイミングにおいて、CCD120から出力されてくる動画用の画像データから、静止画表示モード信号を受信したタイミングで取得された画像データに関して、前述した各画素領域毎の輝度値のヒストグラムを生成すると同時に、この画像データ(以下画像データMsと記載)をメモリ250内に取り込む。なお、
静止画表示モードにおいては、切換部220は、制御部210の画像合成手段213から出力される画像データを信号処理回路230へ出力する。
【0031】
制御部210では、まず画像データMsのヒストグラムと、該画像データMsを取得した際の照明光の射出光量Isと、メモリ250に記憶されている基準輝度値情報とから、被写体距離範囲Dsp〜Dsbを算出する。
【0032】
なお、基準輝度値情報は、基準輝度値Yo、基準被写体距離Doおよび基準射出光量Ioとからなる。基準輝度値Yoとは、被写体と略同一の反射率を有する粘膜を、基準被写体距離Doに配置し、基準射出光量Ioの照明光を照射して撮像した画像の所定画素の輝度値であり、予め実測により求められて、メモリ250に記憶されている。
【0033】
内視鏡においては、被写体に照射される照明光の照度がM倍になると画素の輝度値YはM倍になり、被写体の被写体距離DがN倍になると被写体に照射される照明光の照度は1/N倍になると考えることができる。また、観察される被写体は胃等の粘膜であり、反射率はほぼ一定であるとみなすことができる。
【0034】
このため、画像データMsの所定の画素の被写体距離Dは下記式(1)を用いて算出することができる。
【数1】

【0035】
なお、式(1)において、Yoは基準輝度値、Doは基準被写体距離、Ioは照明光の基準射出光量、Yは画像データMsの所定の画素の輝度値、Iは画像データMsを撮像した際の照明光の射出光量である。
【0036】
上述したように、画像データMsの輝度値は、ボトム輝度値Yb〜ピーク輝度値Ypの範囲に分布しているとみなすことができるので、画像データMsの被写体距離範囲をDp〜Dbとすると、DpおよびDbは下記の式(2)により求めることができる。
【数2】

【0037】
制御部210では、画像データMsを撮像した際のピント位置と、メモリ250に予め記憶されているピント位置・被写界深度情報とから、画像データMsを撮像した際の被写界深度範囲Dn〜Dfを求め、被写体距離範囲Dp〜Dbと比較する。
【0038】
もし、被写体距離範囲Dp〜Dbが被写界深度範囲Dn〜Dfに含まれる場合には、被写体距離の全範囲にわたって合焦しているとみなすことができる。制御部210は、メモリ250内に取り込んだ画像データMsを、画像合成手段213へ読み込み、切換部220へ出力する。切換部220は、画像合成手段213から出力された画像データMsを信号処理回路230へ出力する。信号処理回路230では、この画像データMsに対して、ホワイトバランス補正、ガンマ補正および彩度補正を施し、表示制御部240に出力する。表示制御部240では、この画像データMsを静止画としてモニタ400へ表示する。
【0039】
一方、被写体距離範囲Dp〜Dbが被写界深度範囲Dn〜Dfに含まれない場合には、被写体範囲の全範囲にわたっては合焦していないことになる。この場合には、制御部210は、メモリ250に記憶した被写界深度情報を参照して、被写体距離範囲の全範囲で合焦させるために必要なピント位置を決定する。
【0040】
まず、制御部210は、各ピント位置P1〜P5において、被写界深度情報後端Df、被写界深度前端Dn、基準輝度値Yo、基準被写体距離Do、基準射出光量Ioおよび画像データMsを撮像時の照明光の射出光量Isを用いて、被写界深度後端Dfに相当する輝度値(後端)Yfと被写界深度前端Dnに相当する輝度値(前端)Ynとを算出する。
【0041】
各ピント位置P1〜P5に対する輝度値(後端)Yfおよび輝度値(前端)Ynは、次の表2のようになる。
【表2】

【0042】
すなわち、画像データMsの所定画素の輝度値Yが、例えばYf3より小さく、Yf4<Y<Yn4であれば、この画素に対応する被写体の画像はピント位置4で撮像することにより合焦することがわかる。また、各ピント位置毎の被写界深度範囲はそれぞれ重なりがあるため、各ピント位置での合焦する輝度値の範囲も重なりが生じる。このため、制御部210は、各ピント位置に対応する被写界の合焦輝度値範囲の境界を表3に示すように、重なっている範囲の中間に設定する。
【表3】

【0043】
制御部210では、表3に示す各ピント位置に対応する被写界の合焦輝度値範囲と、画像データMsのボトム輝度値Yb〜ピーク輝度値Ypとを比較し、ボトム輝度値Yb〜ピーク輝度値Ypの範囲をカバーするために必要なピント位置を決定し、そのピント位置での撮像が行われていないピント位置での画像の撮像を行い、その画像データをメモリ250へ記憶する。
【0044】
例えば、ボトム輝度値Yb〜ピーク輝度値Ypの範囲が、ピント位置P3、ピント位置P4およびピント位置P5に該当するものであり、画像データMsがピント位置P3で撮像された画像であった場合には、制御部210は、ピント位置変更手段170によりピンと位置を変更し、ピント位置P4およびピント位置P5での画像を撮像し、その画像データをメモリ250へ記憶する。
【0045】
制御部210の画像領域分割手段212では、画像データMsに対して、表3に示した合焦輝度範囲と、画像データMsの各画素の輝度値とに基づいて、領域分割を行い、領域データとする。これは、撮影した複数枚の画像の中で、画像データの局所的な領域ごとに、どのピント位置で撮影した画像が合焦しているかを示すものである。図3Aは画像データMsを表示した画面の一例であり、図3Bは画像データMsを領域分割した領域データの一例である。P3と記載されている領域は、ピント位置P3で撮影した画像で合焦している領域であり、P4およびP5と記載されている領域は、それぞれ、ピント位置P4およびP5で合焦する領域である。
【0046】
画像合成手段213では、図3Bに示す領域データに基づいて、領域P3はピント位置P3で撮像された画像データMsを用い、領域P4はピント位置P4で撮像された画像データを用い、領域P5はピント位置P5で撮像された画像データを用いて、合成画像データを生成し、切換部220へ出力する。
【0047】
切換部220は、画像合成手段213から出力された合成画像データを信号処理回路230へ出力する。信号処理回路230では、この画像データMsに対して、ホワイトバランス補正、ガンマ補正および彩度補正を施し、表示制御部240に出力する。表示制御部240では、この合成画像データを静止画としてモニタ400へ表示する。モニタ400には、近景から遠景まで合焦した静止画像が表示される。なお、ピント位置P3で撮像した画像データMsを用いる領域とピント位置P4で撮像した画像データを用いる領域との境界など、領域の境界付近では合成結果が不自然とならないように、両方の画像データの重み付け平均をとるなどの処理を行っても良い。
【0048】
なお、使用者が、スコープ部100に設けられている静止画指定ボタン160を再度押圧すると、表示モードは静止画表示モードから動画表示モードに戻る。あるいは、静止画表示モードから所定時間経過後した場合に、動画表示モードに自動的に戻ってもよい。
【0049】
以上の説明で明らかなように、本内視鏡装置では、従来必要であった測距手段を備える必要がないので、スコープ部の細径化が妨げられることなく、画像全体が合焦している画像を取得することができる。また、各画素領域の明るさに基づいて、画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定するため、画像のコントラストが少ない場合であっても、良好な精度で前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定することができる。さらに、合焦していない場合のみ、複数のピント位置において画像を取得して、合成画像を生成するので、装置の利便性が向上する。
【0050】
なお、基準輝度情報や各ピント位置における被写界深度情報は、スコープ部100に設けられたCCD120の感度や、撮像光学系180の特性等により変化するので、異なる特性のスコープ部100がプロセッサ部200へ接続されて使用される場合は、スコープ部100の機種別にこれらの情報を設定する必要がある。このため、例えば、スコープ部100に設けられEEPROM150へこれらの情報を記憶し、スコープ部100とプロセッサ部200との接続時にプロセッサ部200がこれらの情報を読み出して、用いてもよい。
【0051】
また、プロセッサ部200のメモリ250に、複数の機種別のスコープ部100に対応する基準輝度情報や各ピント位置における被写界深度情報が記憶されている場合であれば、スコープ部100とプロセッサ部200との接続時に、スコープ部100に設けられEEPROM150に保存されたスコープ部100の機種情報を読み出し、プロセッサ内200のメモリ250に機種別に保存された基準輝度情報と被写界深度情報から該当機種のものを読み出し用いても良い。
【0052】
また、上記実施例では基準輝度情報は「基準射出光量で模擬被写体を基準被写体距離で撮像した場合の輝度」として一つの値が設定されており、照明光の射出光量が調整されることは考慮されているが、シャッタースピード設定や、アナログゲイン設定が変更されることは考慮していない。これらの変更機能を搭載する場合は、各設定組合せにおける基準輝度情報を保持しておき、該当設定の基準輝度情報を読み出して用いるか、基準輝度情報Yoを「基準シャッタースピードTo、基準アナログゲイン設定値Go、基準射出光量Ioで、模擬被写体を基準被写体距離Doで撮影した場合の輝度値」として記憶しておき、式(1)の代わりに下記式を適用して、被写体距離を算出することができる。
【数3】

【0053】
ただし、Tはシャッタースピード設定値、Gはアナログゲイン設定値である。他の式も同様に変形して用いることができる。
【0054】
また、静止画像表示モードにおいては、上記実施例のように、画像データのほぼ全域にわたり合焦していないと判断された場合に、複数のピント位置で撮影した画像から合焦している画像を合成する処理を有効にする場合と、無効にする場合とをスイッチ等で任意に切り替えられようにしてもよい。
【0055】
さらに、静止画像データをメディア等に画像ファイルとして保存する場合には、合成画像データと、合成されていない画像データとの双方を保存するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態である内視鏡装置の概略構成図。
【図2】ヒストグラムを示す図
【図3A】画面の模式図
【図3B】画像データを領域分割した領域データの模式図
【符号の説明】
【0057】
10 内視鏡装置
100 スコープ部
110 ライトガイド
120 CCD
130 CDS/AGC回路
140 A/D変換回路
150 EEPROM
160 静止画指定ボタン
170 ピント位置変更部
180 撮像光学系
200 プロセッサ部
210 制御部
211 ヒストグラム生成手段
212 画像領域分割手段
213 画像合成手段
220 切換部
230 信号処理回路
240 表示制御部
250 メモリ
300 光源装置
310 光源
320 絞り
330 光源装置側CPU
340 光源装置側メモリ
400 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を射出する光源手段と、前記照明光が照射された被写体の画像を、複数のピント位置の中から所定のピント位置で撮像する撮像手段と、前記画像の撮像動作を制御する制御手段とを有する内視鏡装置において、
前記制御手段が、第1のピント位置で撮像した第1の画像の各画素領域の明るさに基づいて、前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定し、
前記画像のほぼ全領域において合焦してはいないと判定した場合には、前記撮像手段により、前記第1のピント位置とは異なる第2のピント位置で前記被写体の第2の画像を撮像させ、
前記第1の画像内の合焦している領域と、前記第2の画像内の合焦している領域とを合成して、合成画像を生成することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記第1の画像を、各画素領域の明るさに基づいて、前記第1のピント位置と対応する第1の領域と、前記第2のピント位置と対応する第2の領域とへ分割し、
前記第1の領域では、前記第1の画像を用い、前記第2の領域では前記第2の画像を用いることにより、合成画像を生成することを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記被写体と光の反射特性がほぼ等しい模擬被写体を所定被写体距離へ配置し、所定の光量の照明光を照射して撮像した画像の画素領域の明るさである基準明るさ情報と、前記複数のピント位置毎の被写界深度とを記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段が、前記第1の画像の各画素領域の明るさと、前記基準明るさ情報とに基づいて、前記被写体の被写体距離範囲を算出し、該被写体距離範囲と前記複数のピント位置毎の被写界深度とから、前記画像のほぼ全領域において合焦しているか否かを判定するものであることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記被写体と光の反射特性がほぼ等しい模擬被写体を所定被写体距離へ配置し、所定の光量の照明光を照射して撮像した画像の画素領域の明るさである基準明るさ情報と、前記複数のピント位置毎の被写界深度とを記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段が、前記第1の画像の各画素領域の明るさと、前記基準明るさ情報とに基づいて、前記各画素領域毎に、前記被写体の被写体距離を算出し、算出した各画素領域毎の前記被写体の被写体距離と前記複数のピント位置毎の被写界深度とに基づいて、前記第1の画像を、前記第1のピント位置と対応する第1の領域と、前記第2のピント位置と対応する第2の領域とへ分割することを特徴とする請求項2または3記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3B】
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【図3A】
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【公開番号】特開2009−240531(P2009−240531A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90674(P2008−90674)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】