説明

撮影装置

【課題】撮影時のレンズ及びズーム率に対応する歪曲収差係数を算出する事が可能な撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影装置10は、撮影用のレンズを有し、当該レンズを用いた撮影が可能な撮影部20と、撮影部20がそれぞれ異なる撮影姿勢で撮影を行うことで得られる複数の画像情報から特徴点を抽出し、一の画像情報から抽出された特徴点と、他の画像情報から抽出された特徴点とから、被写体上の同一点を示す特徴点の組を探索し、特徴点の組に基づいて、他の画像情報が撮影されたときの撮影姿勢を推定し、推定された撮影姿勢に基づいて、レンズの歪曲収差係数を算出する歪曲収差係数算出部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを用いて撮影された画像には、歪曲収差が発生する。化学的なフィルムを用いたカメラにおいては、このような歪曲収差を補正することは困難であったが、近年普及しているデジタルスチルカメラにおいては、例えば特許文献1、2に記載されているように、歪曲収差を補正することができるようになってきている。
【0003】
ここで、デジタルスチルカメラが取得した画像の歪曲収差補正は、収差情報の取得と画像の幾何変換という2つの段階からなる。
【0004】
[収差情報の取得]
撮像面上(撮像素子の面上)の光学的な結像点(実際の投影点)と、歪曲収差が無いと仮定したときの結像点(真の投影点)とについて、各点の座標の対応を表すものが収差情報である。
【0005】
この収差情報は様々な形式で表すことができるが、投影中心(光軸と撮像素子の面との交点)からの距離(像高)rを用いた式が用いられることが多い。
【0006】
実際の投影点を(x,y)、真の投影点を(x,y)、投影中心の座標を(x,y)とする。このとき真の像高rと実際の像高rは式1で表される。
【0007】
【数1】

…(1)
【0008】
ここで、rとrとの関係は、歪曲係数(歪曲収差係数)h、hを用いて式2で表される。
【0009】
【数2】

…(2)
【0010】
なお、測定誤差を考えると5次程度が必要十分とされる。偶数次項は使用されない。
[画像の幾何変換]
画像の幾何変換としては、対応点を補間する方式と、矩形変換による方式が広く用いられている。
【0011】
対応点を補間する方式は、画像内の任意の点について真の投影点と実際の投影点とを1対1で対応させ、実際の投影点の画素値を補間するものである。精度は高いが計算量は比較的多くなる。
【0012】
矩形変換による方式は、画像を複数の矩形領域に分割し、矩形変換によって出力画像を作成するものである。精度はやや落ちるが計算量は比較的少なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−290863号公報
【特許文献2】国際公開第2008/044591A1号
【特許文献3】特開平6−141237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、歪曲収差量は、レンズ及びズーム率毎に異なる。したがって、歪曲収差補正を正確に行うためには、撮影時のレンズ及びズーム率に対応する歪曲収差係数を取得する必要がある。この点について、特許文献1、2は、レンズユニットに予め登録(記憶)されている歪曲収差係数を取得する技術を開示する。しかし、特許文献1、2に開示された技術は、レンズユニットに歪曲収差係数が登録されていない場合には、歪曲収差係数を取得することができない。
【0015】
なお、特許文献3には、2つの撮影装置を用いて画像を取得し、これらの画像の重複領域について幾何変換を行う技術を開示する。しかし、この技術は、重複領域において画像が2重にならないように幾何変換を行うものであって、歪曲収差を補正するものではない。
【0016】
したがって、従来の技術には、撮影時のレンズ及びズーム率に対応する歪曲収差係数を取得することができない場合があるという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、撮影時のレンズ及びズーム率に対応する歪曲収差係数を従来よりも確実に取得することが可能な、新規かつ改良された撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、撮影用のレンズを有し、当該レンズを用いた撮影が可能な撮影部がそれぞれ異なる撮影姿勢で撮影を行うことで得られ、互いに一部の領域が重複する複数の画像情報の各々から特徴点を抽出する特徴点抽出部と、一の画像情報から抽出された第1の特徴点と、他の画像情報から抽出された第2の特徴点とから、被写体上の同一点を示す特徴点の組を探索する特徴点相関部と、特徴点の組に基づいて、他の画像情報が撮影されたときの撮影姿勢を推定する姿勢推定部と、姿勢推定部が推定した撮影姿勢に基づいて、レンズの歪曲収差係数を算出する収差係数算出部と、を備えることを特徴とする、撮影装置が提供される。
【0019】
この観点による撮影装置は、撮影時のレンズやズーム率がどのようなものであっても、画像情報に基づいて撮影姿勢を推定し、歪曲収差係数を算出することができる。したがって、撮影装置は、撮影時のレンズ及びズーム率に対応する歪曲収差係数を従来よりも確実に算出することができる。また、撮影装置は、撮影者が実際の風景を撮影したときに歪曲収差係数を算出することができるので、幾何情報が既知のチャート、サンプルを用いることなく、歪曲収差係数を算出することができる。
【0020】
ここで、特徴点相関部は、一の画像情報と他の画像情報との重複領域に存在する第1の特徴点のうち、所定数以上の第1の特徴点が特徴点の組を構成する場合に、一の画像情報と他の画像情報とが相関すると判定し、姿勢推定部は、一の画像情報と他の画像情報とが相関すると判定された場合に、特徴点の組に基づいて、他の画像情報が撮影されたときの撮影姿勢を推定するようにしてもよい。この観点による撮影装置は、一の画像情報と他の画像情報とが相関する場合に、撮影姿勢を推定するので、撮影姿勢をより確実に推定することができる。
【0021】
また、姿勢推定部は、以下の式(3)の左辺を特異値分解することで、行列U、Vと、特異値を対角成分に持つ対角行列Sとの積U・S・Vに変換し、最小の特異値の列に対応する行列Vの列成分をa00〜a22とすることで、以下の式(4)で表される姿勢行列Rを算出するようにしてもよい。
【0022】
【数3】

…(3)
【0023】
ここで、nは自然数であり、i1、j1は、前記一の画像情報から抽出された特徴点のx座標及びy座標であり、i2、j2は、前記他の画像情報から抽出された特徴点のx座標及びy座標である。
【0024】
【数4】

…(4)
【0025】
この観点による撮影装置は、撮影姿勢を姿勢行列Rとして算出するので、撮影姿勢をより確実に推定することができる。
【0026】
また、収差係数算出部は、姿勢行列Rに基づいて、一の画像情報から抽出された特徴点の真の像高を算出し、一の画像情報から抽出された特徴点の座標(i1、j1)に基づいて、一の画像情報から抽出された特徴点の実際の像高を算出し、算出された真の像高及び実際の像高と、以下の式(5)とに基づいて、歪曲収差係数h、hを算出するようにしてもよい。
【0027】
【数5】

…(5)

【0028】
この観点による撮影装置は、レンズやズーム率が変更されても、変更後に取得された画像情報に基づいて、撮影姿勢を推定し、歪曲収差係数h、hを算出することができる。
【0029】
また、レンズを識別するための識別情報と、撮影部が前記被写体を撮影する際のズーム率に関するズーム率情報とを取得するレンズ情報取得部と、レンズ情報取得部が取得した情報と、収差係数算出部が算出した歪曲収差係数とを対比させて記憶する収差情報保存部と、を備えるようにしてもよい。
【0030】
この観点による撮影装置は、収差情報保存部に保存された各歪曲収差係数がどのような条件で算出されたものであるのかを容易に判断することができる。
【0031】
また、レンズ情報取得部が取得した情報に対応する歪曲収差係数を収差情報保存部から検索し、検索された歪曲収差係数に基づいて、撮影部が取得した画像情報を補正する収差補正部と、を備えるようにしてもよい。
【0032】
この観点による撮影装置は、現在使用されているレンズ及びズーム率に応じた歪曲収差係数を用いて補正を行うことができるので、補正をより正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明による撮影装置は、撮影時のレンズ及びズーム率に対応する歪曲収差係数を従来よりも確実に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係る歪曲収差係数算出部の構成を示すブロック図である。
【図3】撮影装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】撮影装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】表示部に表示されるガイドフレームを示す説明図である。
【図6】実際の風景及びこの風景を撮影したときに得られる画像を示す説明図である。
【図7】撮影者が撮影した画像を示す説明図である。
【図8】抽出された特徴点を示す説明図である。
【図9】撮影装置の撮影姿勢を示す説明図である。
【図10】特徴点の対応付けを示す説明図である。
【図11】歪曲収差補正による座標点の対応を示す説明図である。
【図12】画素補間の概念を示す説明図である。
【図13】歪曲収差の種類を示す説明図である。
【図14】投影中心からの距離と歪曲比との関係を、歪曲収差の種類ごとに示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0036】
[撮影装置10の構成]
まず、図1に基づいて、撮影装置10の概略構成について説明する。撮影装置10は、いわゆるデジタルスチルカメラであって、撮影部20と、レンズ情報取得部30と、カメラ制御部40と、歪曲収差係数算出部50と、収差情報保存部60と、収差補正部70と、画像保存部80と、表示部90とを備える。なお、撮影装置10は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアを有しており、CPUがROMに記憶されたプログラムを読みだして実行することによって、上記各機能ブロックによる処理が実現される。
【0037】
撮影部20は、レンズユニット21と、撮像素子22と、画像処理部23とを備える。レンズユニット21は、撮影装置10に対して着脱可能となっており、一または複数のレンズL(図9参照)と、ズーム率、フォーカス、絞り、及びシャッタースピードを調整する調整機構と、レンズユニット21に関する各種情報を記憶する保存部と、調整機構の制御や保存部に記憶された情報の出力等、レンズユニット21に関する各種制御を行うレンズユニット制御部とを備える。保存部に記憶される情報は、例えば、レンズLを識別するためのレンズID(識別情報)や、現在の(即ち撮影時の)ズーム率、フォーカス、絞り、及びシャッタースピードに関する撮影情報等が考えられる。レンズユニット21は、撮影装置10の外部の光を取り込み、取り込んだ光を、レンズLを介して撮像素子22に入射させる。
【0038】
撮像素子22は、撮像素子22に入射された光に応じた電気信号(Raw data)を生成し、画像処理部23に出力する。
【0039】
画像処理部23は、撮像素子22から与えられた電気信号を画像情報に変換する。この画像情報は、画素毎に座標及び画素値(画素の色や輝度を示すもの)が設定されたものである。ここで、各画素の座標は、撮像素子22上に定義され、投影中心を原点としたxy平面上の座標として与えられる。x座標及びy座標はいずれも整数となっている。投影中心は、レンズLの光軸が撮像素子22に交差する点である。レンズユニット21のレンズによって歪曲収差が発生しているので、画像処理部23が生成した画像情報には、歪曲収差による画像歪みが発生している。
【0040】
画像処理部23は、画像情報を歪曲収差係数算出部50及び収差補正部70に出力する。また、画像処理部23は、表示部90に、画像情報を表示する。
【0041】
レンズ情報取得部30は、レンズID及び撮影情報をレンズユニット21から取得し、カメラ制御部40に出力する。
【0042】
カメラ制御部40は、撮影装置10の各構成要素を制御する。また、カメラ制御部40は、レンズ情報取得部30から与えられたレンズID及び撮影情報を収差情報保存部60及び収差補正部70に出力する。
【0043】
歪曲収差係数算出部50は、画像処理部23から与えられた画像情報に基づいて、歪曲収差の補正に必要な歪曲収差係数を算出し、この歪曲収差係数に関する収差情報を収差情報保存部60に出力する。
【0044】
収差情報保存部60は、カメラ制御部40から与えられたレンズID及び撮影情報と、歪曲収差係数算出部50から与えられた収差情報とを対応させて記憶する。すなわち、歪曲収差量は、撮影時のレンズ及びズーム率によって異なるので、歪曲収差の補正に必要な歪曲収差係数も、撮影時のレンズ及びズーム率によって値が変化する。そこで、本実施形態では、収差情報保存部60が撮影時のレンズ(すなわちレンズID)及びズーム率と歪曲収差係数とを対応させて記憶することとした。
【0045】
収差補正部70は、カメラ制御部40から与えられたレンズID及び撮影情報に対応する収差情報を、収差情報保存部60から検索する。そして、収差補正部70は、検索した収差情報に基づいて、画像処理部23から与えられた画像情報を補正する。収差補正部70は、補正後の画像情報を画像保存部80に出力する。画像保存部80は、収差補正部70から与えられた画像情報を保存する。
【0046】
表示部90は、ディスプレイ100(図5参照)を有し、ディスプレイ100に各種の画像を表示する。
【0047】
[歪曲収差係数算出部50の構成]
次に、図2に基づいて、歪曲収差係数算出部50の構成について説明する。歪曲収差係数算出部50は、特徴点抽出部51と、特徴点相関部52と、姿勢推定部53と、収差係数算出部54とを備える。
【0048】
特徴点抽出部51は、画像処理部23から与えられた画像情報から特徴点を抽出する。ここで、特徴点とは、画像情報を構成する画素のうち、被写体の輪郭を構成するものである。特徴点を抽出する手法としては、特に限定されず、公知の手法が任意に適用される。特徴点抽出部51は、特徴点の座標、画素値、及び特徴点が抽出された画像情報に関する特徴点抽出情報を生成し、特徴点相関部52に出力する。
【0049】
特徴点相関部52は、特徴点抽出部51から一の画像情報に対応する特徴点抽出情報と、他の画像情報に対応する特徴点抽出情報とが与えられた際に、一の画像情報から抽出された第1の特徴点と、他の画像情報から抽出された第2の特徴点とから被写体上の同一点を示す特徴点の組を探索する。ここで、後述するように、一の画像情報と他の画像情報とは、一部が重複している。
【0050】
特徴点相関部52は、一の画像情報と他の画像情報との重複領域に存在する第1の特徴点のうち、所定数以上(例えば重複領域に存在する第1の特徴点の総数の80%以上)の第1の特徴点が特徴点の組を構成する場合に、これらの画像情報が相関すると判定する。特徴点相関部52は、一の画像情報と他の画像情報とが相関する場合には、探索された特徴点の組に関する特徴点相関情報を生成し、姿勢推定部53及び収差係数算出部54に出力する。
【0051】
姿勢推定部53は、特徴点相関部52から与えられた特徴点相関情報に基づいて、以下の式(4)で表される姿勢行列Rを算出する。
【0052】
【数6】

…(4)
【0053】
次いで、姿勢推定部53は、算出された姿勢行列Rに関する姿勢行列情報を収差係数算出部54に出力する。
【0054】
収差係数算出部54は、特徴点相関部52及び姿勢推定部53から与えられた情報に基づいて、歪曲収差係数h、hを算出する。収差係数算出部54は、算出された歪曲収差係数に関する収差情報を生成し、収差情報保存部60に出力する。
【0055】
[歪曲収差係数算出処理]
次に、図3に示すフローチャートに沿って、撮影装置10による歪曲収差係数算出処理について説明する。なお、歪曲収差係数算出処理が行われるタイミングとしては、例えば、撮影装置10への電源投入時、レンズユニット21の交換時、撮影者から補正指示がなされた時(この場合、そのような指定を行うためのスイッチが撮影装置10に別途設けられる)等が考えられる。撮影者は、歪曲収差係数算出処理が行われる間は、ズーム率を固定し、レンズユニット21の交換も行わないものとする。
【0056】
図3に示すステップS10において、画像処理部23は、表示画面100に、図5(a)に示すガイドフレーム101〜105を表示する。なお、ガイドフレーム101〜105には番号が付されており、これらの番号はガイドフレームの順番を意味する。即ち、ガイドフレーム101〜105は、ガイドフレーム101から順次1個目、2個目、…、55個目のガイドフレームとなる。
【0057】
ガイドフレーム101の右上1/4の領域は、ガイドフレーム102の左下1/4の領域と重複しており、ガイドフレーム101の右下1/4の領域は、ガイドフレーム103の左上1/4の領域と重複している。ガイドフレーム101と他のガイドフレーム104、105とも同様にして一部の領域が重複している。このように、ガイドフレーム101と他のガイドフレームとは、それらの領域の1/4(25%)が互いに重複しているが、少なくとも20%以上の領域で重複していることが好ましい。また、ガイドフレームの数は5つに限定されない。
【0058】
一方、レンズユニット21は、外部からの光を常時取り込んで撮像素子22に入射させ、撮像素子22は、電気信号を画像処理部23に出力する。画像処理部23は、この電気信号に基づいて画像情報を生成する。
【0059】
ステップS20において、画像処理部23は、図5(a)に示すように、1個目のガイドフレーム101をアクティブにし、ガイドフレーム101に画像情報を縮小表示する。これにより、画像処理部23は、ライブビュー、即ち現在の撮影対象となっている風景をガイドフレーム101に表示する。例えば、図6(a)に示す風景(家屋A1、樹木A2〜A4、ビルA5〜A7、工場A8を含む)が撮影の対象となる場合、画像処理部23は、この風景の一部をライブビューとして表示する。
【0060】
ステップS30において、画像処理部23は、撮影者から撮影指示(即ち、シャッタボタンの押下)があるまで待機する。一方、撮影者はガイドフレーム101に表示されたライブビューを参考にして撮影指示を出す(即ち、撮影を行う)。画像処理部23は、操作者から撮影指示があった際にステップS40に進む。
【0061】
ステップS40において、画像処理部23は、撮影指示があった際にガイドフレーム101に表示されていた画像情報を1枚目の画像情報とし、特徴点抽出部51に出力する。例えば、画像処理部23は、図6(b)に示す画像情報P1をガイドフレーム101にライブビューとして表示している際に、操作者から撮影指示があった際には、当該画像情報P1を1枚目の画像情報とする。なお、画像情報P1は、図9に示すように、撮影部20が撮影姿勢L1及び視点(レンズLの焦点)B1で撮影を行うことで取得される。撮影姿勢は、例えばレンズLの位置や向き等で示されるが、具体的には、姿勢行列Rで示される。
【0062】
ステップS50において、特徴点抽出部51は、1枚目の画像情報から特徴点を抽出する。ここで、特徴点は、上述した通り、被写体の輪郭を構成する画素である。例えば、1枚目の画像情報が図7(a)に示す画像情報P1となる場合、特徴点抽出部51は、図8(a)に示すように、家屋A1、樹木A2、A3、ビルA6の輪郭を構成する特徴点Q11〜Q12を抽出する。ついで、特徴点抽出部51は、抽出した特徴点の座標、画素値、及び特徴点が抽出された画像情報に関する特徴点抽出情報を生成し、特徴点相関部52に出力する。
【0063】
ステップS60において、画像処理部23は、次のガイドフレームをアクティブにする。例えば、画像処理部23は、ガイドフレーム101がアクティブになっている場合には、図5(b)に示すように、次のガイドフレーム102をアクティブにする。そして、画像処理部23は、ステップS20と同様に、アクティブなガイドフレームにライブビューを表示する。このとき、すでにガイドフレーム内に固定されている画像情報は、継続してそのガイドフレーム内に固定される。また、2枚の画像情報(ライブビュー含む)の重複領域は、画像処理部23によってアルファブレンド処理がなされる。これにより、当該重複領域には、2枚の画像情報を重畳させたものが表示される。
【0064】
ステップS70において、画像処理部23は、撮影者から撮影指示があるまで待機する。一方、撮影者は、アクティブなガイドフレームに表示されたライブビューの一部が1枚目の画像情報に一致するように、撮影装置10の撮影姿勢を調整し、この状態で撮影を行う。例えば、ガイドフレーム102がアクティブとなる場合、ライブビューの左下1/4の部分が1枚目の画像情報の右上1/4の部分に一致するように、撮影装置10の撮影姿勢を調整し、この状態で撮影を行う。画像処理部23は、操作者から撮影指示があった際にステップS80に進む。
【0065】
ステップS80において、画像処理部23は、撮影指示があった際にアクティブなガイドフレームに表示されていた画像情報をN枚目の画像情報とし、特徴点抽出部51に出力する。ここで、Nは2〜5の整数であり、アクティブなガイドフレームの順番を示す。
【0066】
例えば、アクティブなガイドフレームがガイドフレーム102となる場合、N=2となる。画像処理部23は、図6(b)に示す画像情報P2−1をライブビューとしてガイドフレーム102に表示している際に、操作者から撮影指示があった場合には、画像情報P2−1を2枚目の画像情報として取得する。画像情報P2−1の左下1/4の部分は、画像情報P1の右上1/4の部分に一致する。すなわち、1枚目の画像情報P1と2枚目の画像情報P2−1との重複領域P12において、両者の画像が一致する。なお、画像情報P2−1は、図9に示すように、撮影部20が撮影姿勢L2及び視点B2で撮影を行うことで取得される。
【0067】
一方、画像処理部23は、図6(c)に示す画像情報P2−2をライブビューとしてガイドフレーム102に表示している際に、操作者から撮影指示があった場合には、画像情報P2−2を2枚目の画像情報として取得する。画像情報P2−2の左下1/4の部分は、画像情報P1の右上1/4の部分と異なる。すなわち、1枚目の画像情報P1と2枚目の画像情報P2−2との重複領域P12において、両者の画像が異なっている。
【0068】
ステップS90において、特徴点抽出部51は、N枚目の画像情報から特徴点を抽出する。例えば、特徴点抽出部51は、2枚目の画像情報(N=2)として、図7(b)に示す画像情報P2−1を取得した場合、図8(b)に示すように、家屋A1、樹木A2、A3の輪郭を構成する特徴点Q21を抽出する。ついで、特徴点抽出部51は、抽出した特徴点の座標、画素値、及び特徴点が抽出された画像情報に関する特徴点抽出情報を生成し、特徴点相関部52に出力する。なお、図7(b)は画像情報2−1の一部を示す。
【0069】
ステップS100において、特徴点相関部52は、特徴点抽出部51から与えられた1枚目の画像情報に対応する特徴点抽出情報と、N枚目の画像情報に対応する特徴点抽出情報とに基づいて、1枚目の画像情報から抽出された第1の特徴点と、N枚目の画像情報から抽出された第2の特徴点とから被写体上の同一点を示す特徴点の組を探索する。特徴点相関部52は、第1の特徴点のうち、1枚目の画像情報とN枚目の画像情報との重複領域に存在する第1の特徴点のうち、所定数以上(例えば1枚目の画像情報とN枚目の画像情報との重複領域に存在する第1の特徴点の総数の80%以上)の第1の特徴点が特徴点の組を構成する場合に、これらの画像情報が相関すると判定する。
【0070】
例えば、図7(a)に示す1枚目の画像情報P1から図8(a)に示す第1の特徴点Q11、Q12が抽出され、図7(b)に示す2枚目(N=2)の画像情報P2−1から図8(b)に示す第2の特徴点Q21が抽出された場合、すべての第1の特徴点Q11とすべての第2の特徴点Q21とはいずれも1枚目の画像情報と2枚目の画像情報との重複領域P12に存在する。また、すべての第1の特徴点Q11とすべての第2の特徴点Q21とは、家屋A1、及び樹木A2、A3上の同一点を構成するので、特徴点の組を構成する。したがって、すべての第1の特徴点Q11が特徴点の組を構成するので、特徴点相関部52は、1枚目の画像情報P1と2枚目の画像情報P2−1とが相関すると判定する。図10に、特徴点の組を構成する特徴点同士を連結した直線Cを示す。
【0071】
一方、1枚目の画像情報が画像情報P1となり、2枚の画像が図6(c)に示す画像情報P2−2となる場合、これらの画像情報から抽出される特徴点は、特徴点の組を構成しないので、特徴点相関部52は、これらの画像情報が相関しないと判定する。
【0072】
次いで、特徴点相関部52は、1枚目の画像情報とN枚目の画像情報とが相関すると判定した場合には、ステップS110に進み、これらが相関しないと判定した場合には、ステップS140に進む。
【0073】
ステップS110において、特徴点相関部52は、1枚目の画像情報と5枚目の画像情報との相関がとれたか否かを判定し、これらの相関がとれたと判定した場合には、ステップS120に進み、これらの相関がとれていないと判定した場合には、ステップS60にもどる。
【0074】
ステップS120において、特徴点相関部52は、1枚目の画像情報と2〜5枚目の画像のそれぞれとから得られる特徴点の組に関する特徴点相関情報を生成し、姿勢推定部53及び収差係数算出部54に出力する。
【0075】
次いで、姿勢推定部53は、特徴点相関情報に基づいて、上述した姿勢行列Rを、画像情報の組み合わせ(1枚目の画像情報と2〜5枚目の画像情報のそれぞれとの組み合わせ)毎に算出する。例えば、姿勢推定部53は、1枚目の画像情報と2枚目の画像情報との組み合わせに対応する姿勢行列Rを以下のように算出する。すなわち、姿勢推定部53は、以下の式(3)の左辺を特異値分解することで、行列U、Vと、特異値を対角成分に持つ対角行列Sとの積U・S・Vに変換し、最小の特異値の列に対応する行列Vの列成分をa00〜a22とすることで、姿勢行列Rを算出する。
【0076】
【数7】

…(3)
【0077】
ここで、nは自然数であり、i1、j1は、1枚目の画像情報から抽出された特徴点のx座標及びy座標であり、i2、j2は、2枚目の画像情報から抽出された特徴点のx座標及びy座標である。
【0078】
ここで、式(3)の導出過程について説明する。姿勢行列Rは、以下の式(6)で表される。
【0079】
【数8】

…(6)
【0080】
ここで、wは媒介変数であり、fは焦点距離である。fは1であっても一般性を失わない。kは1〜nの自然数である。
【0081】
式(6)から媒介変数wを消去すると、以下の式(7)、(8)が得られる。
【0082】
【数9】

…(7)
【0083】
【数10】

…(8)
【0084】
姿勢行列Rが上述した式(4)のように表せると仮定して、式(8)を展開すると、以下の式(9)が得られる。
【0085】
【数11】

…(9)
【0086】
式(9)を左辺に纏めると、式(10)が得られる。
【0087】
【数12】

…(10)
【0088】
式(10)のkに1〜nをそれぞれ代入し、行列の形に書き直すと、式(3)が得られる。
【0089】
なお、他の画像情報の組み合わせに対応する姿勢行列Rも、上記と同様にして算出される。したがって、姿勢行列Rは、合計4つ算出される。以下、1枚目の画像情報とN枚目の画像情報との組み合わせに対応する姿勢行列Rを、「N個目の姿勢行列R」とも称する。
【0090】
姿勢推定部53は、算出された姿勢行列Rに関する姿勢行列情報を収差係数算出部54に出力する。
【0091】
ステップS130において、収差係数算出部54は、特徴点相関部52及び姿勢推定部53から与えられた情報に基づいて、歪曲収差係数h、hを算出する。以下、具体的な算出方法を説明する。
【0092】
収差係数算出部54は、特徴点相関情報と姿勢行列情報とに基づいて、投影歪み(perspective)と歪曲収差とを分離し、歪曲収差係数を算出する。具体的には、収差係数算出部54は、まず、1枚目の画像情報から抽出された特徴点の実際の像高を算出する。実際の像高は、以下の式(11)で表される。
【0093】
【数13】

【0094】
さらに、収差係数算出部54は、1枚目の画像情報の図5中右上1/4の領域(2枚目の画像情報との重複領域)内に存在する特徴点の真の像高を、2個目の姿勢行列Rに基づいて算出する。
まず、収差係数算出部54は、以下の式(12)、(13)に基づいて、特徴点の真の座標(歪曲収差が生じないときの座標)(i2’、j2’)を算出する。
【数14】

…(12)
【数15】

…(13)
そして、収差係数算出部54は、真の像高を以下の式(14)に基づいて算出する。
【0095】
【数16】

【0096】
同様に、収差係数算出部54は、1枚目の画像情報の他の領域内に存在する特徴点の真の像高を、3〜5個目の姿勢行列Rに基づいて算出する。これにより、収差係数算出部54は、1枚目の画像情報の全特徴点について、真の像高と実際の像高とを算出する。
【0097】
次いで、収差係数算出部54は、1枚目の画像情報の全特徴点について算出された真の像高及び実際の像高と、以下の式(5)とに基づいて、歪曲収差係数h、hを算出する。
【0098】
【数17】

…(5)
【0099】
ここで、式(5)の右辺第1項はムーアペンローズの一般化逆行列を示す。なお、式(5)は以下のように導出される。すなわち、実際の像高と真の像高とは、以下の式(15)の関係を満たす。
【0100】
【数18】

…(15)
【0101】
これを行列の形にすると以下の式(16)が得られる。
【0102】
【数19】

…(16)
【0103】
kに1〜nを代入して書き下すと、以下の式(17)が得られる。
【0104】
【数20】

…(17)
【0105】
これをムーア−ペンローズの一般化逆行列を用いて変形すると、式(5)が得られる。
収差係数算出部54は、算出された歪曲収差係数に関する収差情報を生成し、収差情報保存部60に出力する。
【0106】
一方、レンズ情報取得部30は、レンズID及び撮影情報をレンズユニット21から取得し、カメラ制御部40に出力する。カメラ制御部40は、レンズ情報取得部30から与えられたレンズID及び撮影情報を収差情報保存部60に出力する。次いで、収差情報保存部60は、カメラ制御部40から与えられたレンズID及び撮影情報と、歪曲収差係数算出部50から与えられた収差情報とを対応させて記憶する。収差情報保存部60に記憶された情報は、収差補正部70によって参照される。具体的には後述する。
【0107】
ステップS140において、特徴点相関部52は、N枚目の画像情報が1枚目の画像情報と相関が取れなかった旨を画像処理部23に通知し、画像処理部23は、アクティブなガイドフレームを強調表示する。このような強調表示としては、例えば、ガイドフレームを太線で表示する、ガイドフレームを点滅させる、ガイドフレームを赤で着色して表示する(通常は黒)等が考えられる。これにより、再度の撮影が促される。音声によるガイドを併用してもよい。この時の音声としては、例えば、「画像が重なる部分が一致するように、撮影を行ってください」というものが考えられる。
【0108】
[歪曲収差補正処理]
次に、撮影装置10が行う歪曲収差補正処理について、図4に基づいて説明する。ステップS200において、レンズユニット21は、外部からの光を常時取り込んで撮像素子22に入射させ、撮像素子22は、電気信号を画像処理部23に出力する。画像処理部23は、この電気信号に基づいて画像情報を生成する。画像処理部23は、生成した画像情報を表示画面100に表示する。これにより、ライブビューが表示画面100に表示される。なお、歪曲収差補正処理では、ガイドフレーム101〜105は表示されず、表示画面100全面にライブビューが表示される。また、撮影者は、ズーム率やフォーカス等の撮影条件を任意に設定して撮影を行うことができる。撮影者から撮影指示がなされると、画像処理部23は、撮影時(撮影指示がなされた時)の画像情報を収差補正部70に出力する。
【0109】
一方、レンズ情報取得部30は、レンズID及び撮影情報をレンズユニット21から取得し、カメラ制御部40に出力する。カメラ制御部40は、レンズ情報取得部30から与えられたレンズID及び撮影情報を収差補正部70に出力する。
【0110】
ステップS210において、収差補正部70は、カメラ制御部40から与えられたレンズID及び撮影情報に対応する収差情報を、収差情報保存部60から検索する。この結果、収差補正部70は、このような収差情報を検索できたか否かを判定し、検索できた場合にはステップS220に進み、検索できなかった場合には、画像処理部23から与えられた画像情報を画像保存部80に出力し、ステップS230に進む。
【0111】
ステップS220において、収差補正部70は、検索した収差情報に基づいて、画像処理部23から与えられた画像情報を補正する。収差補正部70は、具体的には、以下のように補正を行う。
【0112】
まず、収差補正部70は、補正後の画像情報として、補正後の画素の座標(i、j)を定義する。次いで、収差補正部70は、補正後の画素が補正前の画像情報(画像処理部23から与えられた画像情報)のどの画素に対応するかを、以下の式(18)に基づいて算出する。
【0113】
【数21】

…(18)
【0114】
ここで、xは補正前の画像情報を構成する画素のx座標、yは補正前の画像情報を構成する画素のy座標である。xは補正後の投影中心のx座標(補正前と同じ)であり、yは補正後の投影中心のy座標(補正前と同じ)である。f(r)は歪曲比、即ち(実際の像高)/(真の像高)である。真の像高は、上述した式(14)から得られる。実際の像高は、上述した式(15)に真の像高を代入することで得られる。図11に、補正後の画像情報Pi上の画素E1と補正前の画像情報Pr上の画素E2との対応関係を概念的に示した。
【0115】
次に、収差補正部70は、補正後の画像情報を構成する各画素の画素値、即ち補正後の画素値を決定する。上述した方法により算出された座標(x、y)は、実数値で与えられる。一方、補正前の画像情報を構成する各画素の座標は、整数値で与えられる。このため、座標(x、y)で表される画素には、画素値ν(x、y)が与えられていない。そこで、収差補正部70は、画素値ν(x、y)を画素補間により算出し、これを補正後の画素値ν(i、j)とする。収差補正部70は、具体的には、以下の式(19)に基づいて、画素値ν(x、y)を算出する。
【0116】
【数22】

…(19)
【0117】
ここで、[x]はxを超えない最大の整数であり、[y]はyを超えない最大の整数である。p、qは任意の自然数である。kは重み関数であり、重み関数kの与え方によって、画素補間が「ニアレストネイバ」、「バイリニア」、「バイキュービック」等と呼ばれることもある。図12に、画素補間が行われる様子を概念的に示した。ここでは、画素E2の画素値がその周囲に存在する画素の画素値によって算出される。
【0118】
これにより、収差補正部70は、補正後の画像情報を構成する各画素の座標及び画素値を算出する。即ち、収差補正部70は、画像情報の歪曲収差を補正する。
【0119】
ステップS230において、画像保存部80は、収差補正部70から与えられた画像情報を記憶する。
【0120】
したがって、本実施形態では、収差係数算出部54は、1枚目の画像情報と2〜5枚目の画像情報との重複領域を用いて、収差補正係数を算出し(図5〜図10参照)、収差補正部70は、この収差補正係数を用いて、画像情報の補正を行う。なお、撮影装置10は、2〜5枚目の画像情報のうち、特徴点の組が最も多い画像情報を選択し、この画像情報と1枚目の画像情報とから算出される収差補正係数に基づいて、画像情報の補正を行ってもよい。このような補正が可能なのは、歪曲収差が投影中心に関して回転対称となるからである。以下、この点について説明する。
【0121】
図13は、歪曲収差の種類を示し、図14は、投影中心からの距離、即ち実際の像高と歪曲比(式(16)のf(r))との関係を歪曲収差毎に示すグラフである。具体的には、図13(a)は樽型収差を示し、図14(a)は、樽型収差における実際の像高と歪曲比との関係を示す。図13(b)は糸巻き型収差を示し、図14(b)は、糸巻き型収差における実際の像高と歪曲比との関係を示す。図13(c)は陣笠収差を示し、図14(c)は、陣笠収差における実際の像高と歪曲比との関係を示す。図13に示すように、すべての歪曲収差が投影中心Dに関して回転対称となっているので、画像情報内のすべての領域が、図14に示す関係を満たす。したがって、収差補正部70は、上記のように補正を行っても、画像情報全体を精度良く補正することができる。また、収差補正部70は、1枚目の画像情報と最大相関画像情報との重複領域だけを用いて歪曲収差係数を算出するので、計算に掛かる負荷を低減することができる。
【0122】
以上により、本実施形態に係る撮影装置10は、撮影部20がそれぞれ異なる撮影姿勢で撮影を行うことで得られる複数の画像情報から特徴点を抽出し、一の画像情報から抽出された特徴点と、他の画像情報から抽出された特徴点とから、被写体上の同一点を示す特徴点の組を探索する。そして、撮影装置10は、特徴点の組に基づいて、他の画像情報が撮影されたときの撮影姿勢を推定し、推定された撮影姿勢に基づいて、レンズの歪曲収差係数を算出する。したがって、撮影装置10は、レンズユニット21やズーム率が変更されても、変更後に取得された画像情報に基づいて、撮影姿勢を推定し、歪曲収差係数を算出することができる。すなわち、撮影装置10は、撮影時のレンズ(すなわち撮影時のレンズユニット21)やズーム率に対応する歪曲収差係数を従来よりも確実に取得することができる。また、撮影装置10は、撮影者が実際の風景を撮影したときに歪曲収差係数を算出することができるので、幾何情報が既知のチャート、サンプルを用いることなく、歪曲収差係数を算出することができる。
【0123】
さらに、撮影装置10は、一の画像情報と他の画像情報との重複領域に存在する第1の特徴点のうち、所定数以上の第1の特徴点が特徴点の組を構成する場合に、一の画像情報と他の画像情報とが相関すると判定し、一の画像情報と他の画像情報とが相関すると判定した場合に、特徴点の組に基づいて、撮影姿勢を推定する。したがって、撮影装置10は、撮影姿勢をより確実に推定することができる。
【0124】
さらに、撮影装置10は、上述した式(3)の左辺を特異値分解することで、行列U、Vと、特異値を対角成分に持つ対角行列Sとの積U・S・Vに変換し、最小の特異値の列に対応する行列Vの列成分をa00〜a22とすることで、式(4)で表される姿勢行列Rを算出する。したがって、撮影装置10は、撮影姿勢を姿勢行列Rとして算出するので、撮影姿勢をより確実に推定することができる。
【0125】
さらに、撮影装置10は、姿勢行列Rに基づいて、一の画像情報から抽出された特徴点の真の像高を算出し、一の画像情報から抽出された特徴点の座標(i1、j1)に基づいて、一の画像情報から抽出された特徴点の実際の像高を算出する。そして、撮影装置10は、算出された真の像高及び実際の像高と、上述した式(5)とに基づいて、歪曲収差係数h、hを算出する。したがって、撮影装置10は、レンズユニット21やズーム率が変更されても、変更後に取得された画像情報に基づいて、撮影姿勢を推定し、歪曲収差係数h、hを算出することができる。
【0126】
さらに、撮影装置10は、レンズIDと、撮影時の撮影情報とを取得し、取得された情報と、算出された歪曲収差係数とを対比させて収差情報保存部60に保存するので、収差情報保存部60に保存された各歪曲収差係数がどのような条件で算出されたものであるのかを容易に判断することができる。
【0127】
さらに、撮影装置10は、レンズIDと、撮影時の撮影情報とを取得し、これらの情報に対応する歪曲収差係数を収差情報保存部60から検索し、検索された歪曲収差係数に基づいて画像を補正する。したがって、撮影装置10は、現在使用されているレンズ及びズーム率に応じた歪曲収差係数を用いて補正を行うことができるので、補正をより正確に行うことができる。
【0128】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0129】

10 撮影装置
20 撮影部
21 レンズユニット
22 撮像素子
23 画像処理部
30 レンズ情報取得部
40 カメラ制御部
50 歪曲収差係数算出部
51 特徴点抽出部
52 特徴点相関部
53 姿勢推定部
54 収差係数算出部
60 収差情報保存部
70 収差補正部
80 画像保存部
90 表示部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影用のレンズを有し、当該レンズを用いた撮影が可能な撮影部がそれぞれ異なる撮影姿勢で撮影を行うことで得られ、互いに一部の領域が重複する複数の画像情報の各々から特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
一の画像情報から抽出された第1の特徴点と、他の画像情報から抽出された第2の特徴点とから、被写体上の同一点を示す特徴点の組を探索する特徴点相関部と、
前記特徴点の組に基づいて、前記他の画像情報が撮影されたときの撮影姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記姿勢推定部が推定した撮影姿勢に基づいて、前記レンズの歪曲収差係数を算出する収差係数算出部と、を備えることを特徴とする、撮影装置。
【請求項2】
前記特徴点相関部は、前記一の画像情報と前記他の画像情報との重複領域に存在する第1の特徴点のうち、所定数以上の第1の特徴点が前記特徴点の組を構成する場合に、前記一の画像情報と前記他の画像情報とが相関すると判定し、
前記姿勢推定部は、前記一の画像情報と前記他の画像情報とが相関すると判定された場合に、前記特徴点の組に基づいて、前記他の画像情報が撮影されたときの撮影姿勢を推定することを特徴とする、請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記姿勢推定部は、以下の式(1)の左辺を特異値分解することで、行列U、Vと、特異値を対角成分に持つ対角行列Sとの積U・S・Vに変換し、最小の特異値の列に対応する行列Vの列成分をa00〜a22とすることで、以下の式(2)で表される姿勢行列Rを算出することを特徴とする、請求項1または2記載の撮影装置。
【数1】

…(1)
ここで、nは自然数であり、i1、j1は、前記一の画像情報から抽出された特徴点のx座標及びy座標であり、i2、j2は、前記他の画像情報から抽出された特徴点のx座標及びy座標である。
【数2】

…(2)
【請求項4】
前記収差係数算出部は、前記姿勢行列Rに基づいて、前記一の画像情報から抽出された特徴点の真の像高を算出し、前記一の画像情報から抽出された特徴点の座標(i1、j1)に基づいて、前記一の画像情報から抽出された特徴点の実際の像高を算出し、算出された真の像高及び実際の像高と、以下の式(3)とに基づいて、歪曲収差係数h、hを算出することを特徴とする、請求項3記載の撮影装置。
【数3】

…(3)

【請求項5】
前記レンズを識別するための識別情報と、前記撮影部が前記被写体を撮影する際のズーム率に関するズーム率情報とを取得するレンズ情報取得部と、
前記レンズ情報取得部が取得した情報と、前記収差係数算出部が算出した歪曲収差係数とを対比させて記憶する収差情報保存部と、を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項6】
前記レンズ情報取得部が取得した情報に対応する歪曲収差係数を前記収差情報保存部から検索し、検索された歪曲収差係数に基づいて、前記撮影部が取得した画像情報を補正する収差補正部を備えることを特徴とする、請求項5記載の撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−134662(P2012−134662A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283670(P2010−283670)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】