操作レバーの取付構造
【課題】操作レバーの可動範囲を十分に確保できると共に水栓本体のコンパクト化を図ることができる操作レバーの取付構造を提供すること。
【解決手段】開口部3から前記水栓本体2の内側に向けて、開口部3を覆い操作レバー4が挿通するレバー操作窓5bを有する化粧カバー5と、滑り面形成部材6と、操作レバー4に貫通されレバー操作窓5bよりも小さいレバー貫通孔7aを有すると共に操作レバー4の傾倒操作に伴って常にレバー操作窓5bを覆いながら滑り面形成部材6に沿って摺動する略平板状の摺動カバー7と、摺動カバー7を滑りパッキン6に押し当てる押し当て部材8とをこの順に備えている。
【解決手段】開口部3から前記水栓本体2の内側に向けて、開口部3を覆い操作レバー4が挿通するレバー操作窓5bを有する化粧カバー5と、滑り面形成部材6と、操作レバー4に貫通されレバー操作窓5bよりも小さいレバー貫通孔7aを有すると共に操作レバー4の傾倒操作に伴って常にレバー操作窓5bを覆いながら滑り面形成部材6に沿って摺動する略平板状の摺動カバー7と、摺動カバー7を滑りパッキン6に押し当てる押し当て部材8とをこの順に備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバーの取付構造に関するものであり、傾倒によって少なくとも吐水流量を調節するための操作レバーを見栄え良く水栓に取り付ける操作レバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献1に示すように水栓本体の上部に設けた操作レバーの傾倒によって吐水の流量および温度の調整を可能とする、デザイン性を高めたシングルレバー式湯水混合栓が用いられている。
【0003】
図19は、この種の従来の湯水混合栓90の構成を説明する図である。図19に示す操作レバー91は、その基部に略球状表面のフランジ92を備え、いわばドーム形フランジ構造の覆いを設けている。このフランジ92を設けることにより、操作レバー91の傾倒に伴ってフランジ92が移動し、水栓の開口93を覆うことができ、異物が水栓内に入ることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−518033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図19に示すような構成では、フランジ92が略球状表面であるため、操作レバー91の基部にドーム状の突部を形成することになり、これによって湯水混合栓の高さHpが高くなる。加えて、その見栄えを悪くし、水栓に自由なデザインを施すことができなかった。
【0006】
また、従来のドーム形フランジ構造の覆いでは操作レバー91に設けたフランジ92が操作レバー91の傾倒に伴って移動するために、その一端92aが水栓カートリッジ94など、水栓本体側の部材に当たることにより、操作レバー91の可動範囲を制限する必要があった。
【0007】
他方、図20に示すように、操作レバー91の可動範囲を広くするためにフランジ92の幅を狭くし、開口93を大きくすると、フランジ92の他端92bが開口93から突出し、湯水混合栓90内に異物が混入するという問題がある。
【0008】
加えて、フランジ92と開口93の間に隙間dを形成する必要があるので、水栓使用時に手についた水がフランジ92の表面をつたって開口93とフランジ92の間を介して水栓内に入るので不衛生であり、水栓内部に溜まった水や異物によって水栓の動作不良が起こることが懸念される。
【0009】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、操作レバーの可動範囲を十分に確保できると共に水栓本体のコンパクト化を図ることができる操作レバーの取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、
水栓本体の外面に設けた開口部から該水栓本体の外方に突出し、傾倒によって少なくとも前記水栓本体に設けられた吐水管の吐水流量を調節するための操作レバーを有する水栓における操作レバーの取付構造であって、
前記開口部から前記水栓本体の内側に向けて、
前記開口部を覆い前記操作レバーが挿通するレバー操作窓を有する化粧カバーと、
滑り面形成部材と、
前記操作レバーに貫通され前記レバー操作窓よりも小さいレバー貫通孔を有すると共に前記操作レバーの傾倒操作に伴って常に前記レバー操作窓を覆いながら前記滑り面形成部材に沿って摺動する略平板状の摺動カバーと、
前記摺動カバーを前記滑り面形成部材に押し当てる押し当て部材とをこの順に備えている(請求項1)。
【0011】
前記構成よりなる操作レバーの取付構造によれば、化粧カバーが開口部を覆い、水栓にデザインを施すことができる。また、化粧カバーの裏面に当接する滑り面形成部材と摺動カバーとの間に生じる静摩擦抵抗は低く抑えられ、滑り面形成部材に対する摺動カバーの滑り(滑動性)が良いので、摺動カバーの摺動ひいては操作レバーの傾倒操作を少しの力で行うことができる。
【0012】
また、操作レバーの傾倒操作に合わせて摺動カバーが滑り面形成部材に沿って摺動し、操作レバーがどの位置にあってもレバー操作窓は摺動カバーによって覆われる。加えて、摺動カバーはドーム状ではなく略平板状であるからそれだけ水栓本体をコンパクト化することができ、摺動カバーが前記ドーム形フランジ構造のように水栓カートリッジなどに当たることがなく、レバー操作窓を大きくして操作レバーの操作角を大きくすることができる。さらに、操作レバーの傾倒に伴う摺動カバーの移動(摺動)は、この摺動カバーが略平板状であるのでレバー操作窓を通して外部から視認しにくく、これにより、操作レバーの操作時の水栓の外観が洗練されたものとなる。
【0013】
押し当て部材は摺動カバーを滑り面形成部材に押し当てるので、摺動カバーと滑り面形成部材は密着し、この間に塵埃や異物が入り込むことを防止して、水栓内への塵埃や異物の侵入を防止することができる。
【0014】
前記水栓を、湯水混合栓、つまり、シングルレバー式湯水混合栓としてもよく、この場合、前記操作レバーの傾倒によって吐水管から吐水する水の吐水流量および温度をそれぞれ調整することができるように操作レバーの傾倒方向を設定すればよく、前記レバー操作窓の形状はたとえば略円形状とすることができる。しかしながら、水栓は単水栓であってもよく、この場合、前記レバー操作窓の形状はスリット形状であってもよい。
【0015】
前記化粧カバーを、水栓本体の開口部に嵌め込むように形成された蓋体としてもよく、この場合、水栓本体の材質やデザインに合うように、化粧カバーを、例えば金属または金属メッキを施した硬質の合成樹脂または陶器によって形成し、水栓本体との一体感を得るようにすることが好ましい。しかしながら、化粧カバーは水栓の表面全体に被せられるカバーであっても、金属メッキや塗布によって水栓本体の開口部を覆うように形成された薄い層であっても水栓にデザインを施すものであればよい。
【0016】
化粧カバーが、レバー操作窓が形成された板状部と、この板状部に連設された筒部とを有するようにし、かつ、前記滑り面形成部材を、前記筒部に形成した溝(段差)に嵌めて固定保持し、滑り面形成部材がレバー操作窓内に全く現れないようにレバー操作窓を避けて滑り面形成部材を設けることが見栄えを良くする上で好ましい。また、接着剤などを用いて滑り面形成部材を化粧カバーの裏面側に貼着してもよい。
【0017】
前記摺動カバーを、化粧カバーと同じく水栓本体の材質やデザインに合わせて例えば金属または金属メッキを施した硬質の合成樹脂からなる略平板状とすることが、水栓全体に一体感を持たせることができるので好ましい。レバー貫通孔は、操作レバーの基部が貫通する必要最小限の大きさの孔であることが好ましい。
【0018】
前記押し当て部材は弾性を有する材料からなるものであることが好ましく、この場合、押し当て部材の弾性力を利用して前記摺動カバーを滑り面形成部材に押し当てることができるが、ばねなどの付勢手段を用いて押し当て部材を摺動カバーに押し当てるようにしてもよい。なお、摺動カバーと押し当て部材の間に別の滑り面形成部材を介在させてもよい。
【0019】
前記滑り面形成部材はポリアセタールからなるシート状の部材である場合(請求項2)には、静摩擦抵抗を十分に低く抑えることができるので、滑り面形成部材と摺動カバーの当接面をより強い力で密着させて、水栓本体への塵埃および異物の混入をさらに確実に阻止することができる。
【0020】
また、本発明の操作レバーの取付構造が、水栓本体の外面に設けた開口部から該水栓本体の外方に突出し、傾倒によって少なくとも前記水栓本体に設けられた吐水管の吐水流量を調節するための操作レバーを有する水栓における操作レバーの取付構造であって、
前記開口部から前記水栓本体の内側に向けて、
前記開口部を覆い前記操作レバーが挿通するレバー操作窓を有する化粧カバーと、
前記操作レバーに貫通され前記レバー操作窓よりも小さいレバー貫通孔を有すると共に前記操作レバーの傾倒操作に伴って常に前記レバー操作窓を覆いながら前記化粧カバーに沿って摺動する略平板状の摺動カバーと、
前記摺動カバーを前記化粧カバーに押し当てる押し当て部材とをこの順に備えたものであってもよい(請求項3)。この場合には、滑り面形成部材を別途設けない分、構成がよりシンプルとなる。
【0021】
前記押し当て部材はその外周部を縮径方向に弾性変形可能とする切り欠き部を備える略Cリング状であってその外周部にテーパ面を有し、前記開口部の内側には前記押し当て部材が縮径した状態でそのテーパ面に当接するテーパ受け面を有するガイド部が設けられ、前記押し当て部材は、縮径した状態からの拡径に伴って、前記テーパ面に対する前記テーパ受け面のガイドにより、前記摺動カバー側に向けて摺動するように構成されている場合(請求項4)には、略Cリング状の押し当て部材は若干縮径した状態でテーパ面がテーパ受け面に当接するように前記ガイド部内に挿入され、テーパ面に対するテーパ受け面のガイドによって押し当て部材は摺動カバー側に向けて移動しようとするので、摺動カバーを滑り面形成部材に密着させるように付勢し続けることができる。また、押し当て部材は縮径させることによりテーパ受け面を有するガイド部に着脱自在であり、組み付け性およびメンテナンス性においても優れている。
【0022】
略Cリング状の押し当て部材の前記切り欠き部両端に、押し当て部材を縮径方向に弾性変形させる工具を挿入するための孔を形成してあることが好ましく、切り欠き部と対角位置の幅は狭く形成した弾性変形部であることが好ましい。また、押し当て部材の材質はばね材としての弾性を備える合成樹脂であることが好ましい。
【0023】
前記押し当て部材は外周部に雄ねじを有し、この雄ねじが螺合する雌ねじを有するガイド部が前記開口部の内側に設けられている場合(請求項5)には、ガイド部の雌ねじに対する押し当て部材の雄ねじのねじ込み量を調整することによって摺動カバーを滑り面形成部材に押し当てる力を調整することができる。
【0024】
前記操作レバーの基部においてその軸方向に移動可能に取り付けられた筒状部材と、この筒状部材を摺動カバーに当接する方向に付勢する付勢手段とを備える場合(請求項6)には、筒状部材が摺動カバーに当接することにより、摺動カバーと操作レバーの間の隙間を覆うことができ見栄えがよい。また、水栓内への塵埃や異物の混入をさらに効果的に阻止することができる。
【0025】
前記筒状部材の特に下端部分は球状曲面を形成するものであることが好ましく、摺動カバーに設けたレバー貫通孔の周壁は操作レバーの球状曲面に当接する曲面を有するものであることが好ましい。なお、筒状部材とレバー貫通孔の当接部分には水密を保つための合成樹脂をパッキンとして配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
前述したように、本発明によれば、水栓のコンパクト化を図れると共に水栓内への塵埃や異物の侵入を阻止し、自由なデザインを施すことができる操作レバーの取付構造を提供できる。
【0027】
また、押し当て部材の外周部にテーパ面が設けられ、開口部の内側にテーパ受け面を有するガイド部を備える場合には、滑り面形成部材と摺動カバーの間の水密状態を確実に保つことができると共に組み付け性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0028】
操作レバーの基部に筒状部材を備える場合には、摺動カバーと操作レバーの接続部における隙間を埋めることができ、さらに見栄えが良くなり、水栓内への塵埃や異物の侵入をより確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係る操作レバーの取付構造及びその要部を示す図である。
【図2】前記操作レバーの取付構造の動作を説明する図である。
【図3】前記操作レバーの取付構造の細部を説明する図である。
【図4】第2実施形態の操作レバーの取付構造を説明する図である。
【図5】同上操作レバーの取付構造の細部を説明する図である。
【図6】第3実施形態の操作レバーの取付構造を説明する図である。
【図7】同上操作レバーの取付構造の細部を説明する図である。
【図8】第4実施形態の操作レバーの取付構造を示す図である。
【図9】同上操作レバーの取付構造の動作を説明する図である。
【図10】第5実施形態の操作レバーの取付構造を説明する図である。
【図11】(A)及び(B)は同上操作レバーの取付構造の構成を概略的に示す平面図及び縦断面図である。
【図12】(A)及び(B)は同上操作レバーの取付構造の構成を概略的に示す下方側及び上方側からみた分解斜視図である。
【図13】(A)〜(C)は同上操作レバーの取付構造の水栓本体の構成を概略的に示す平面図、正面図、縦断面図、(D)は該水栓本体の底部の底面図、(E)及び(F)は(C)においてイ及びロで囲った部分の拡大図である。
【図14】(A)は同上操作レバーの取付構造のカートリッジホルダの構成を概略的に示す平面図、(B)は(A)のA−A線切断端面図、(C)は(A)のB−B線階段断面図である。
【図15】(A)〜(D)は同上操作レバーの取付構造の化粧カバーの構成を概略的に示す平面図、斜視図、縦断面図及び底面図である。
【図16】(A)及び(B)は同上操作レバーの取付構造の押し当て部材の構成を概略的に示す上方側及び下方側からみた斜視図、(C)は平面図、(D)は縦断面図、(E)は(C)におけるC−C線断面図、(F)は底面図である。
【図17】(A)は同上操作レバーの取付構造のカートリッジ押さえの構成を概略的に示す平面図、(B)は(A)のD−D線階段断面図である。
【図18】同上操作レバーの取付構造の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図19】従来の操作レバーの取付構造の例を示す図である。
【図20】従来の操作レバーの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態に係る操作レバーの取付構造1を示す図である。図1(A)に示すように、本発明は水栓本体2の外面(上面)に設けた開口部3から水栓本体2の外方に突出し、前後方向の傾倒によって吐水管15から行う吐水の流量(吐水流量)、左右方向の傾倒によって前記吐水の湯温を調節するための操作レバー4を有する湯水混合栓における操作レバーの取付構造1に関するものである。
【0031】
本発明の操作レバーの取付構造1は、開口部3から水栓本体2の内側に向けて、開口部3に設けられた化粧カバー5と、この化粧カバー5の裏面5aに当接する滑り面形成部材6と、この滑り面形成部材6の下面6aに当接する摺動カバー7と、この摺動カバー7を滑り面形成部材6に押し当てるように摺動カバー7の下面7bに当接する押し当て部材8と、前記操作レバー4のレバー本体40の基部においてその軸方向に移動可能に取り付けられた筒状部材9とを有する。
【0032】
前記湯水混合栓2は、略筒状の水栓本体(胴)10と、この水栓本体10内に取り付けられたカートリッジホルダ11と、このカートリッジホルダ11に挿入されたカートリッジ12と、湯、水供給用の2本の配管13,13から水栓本体10内に供給され、操作レバー4の傾倒操作によって混合比及び吐水流量が調整される湯水を吐水する吐水部(図示していない)を備えた吐水管15とを備えている。
【0033】
また、水栓本体10内には内部に水が侵入した場合にこの水を排水するための排水溝16を備え、その下端には排水管17を備え、この排水管17は水栓本体10と取付け台Tとの間の隙間18を介して外部に連通している。
【0034】
19はカートリッジ12をカートリッジホルダ11に挿入した状態でその上端部に当接して締付けられるカートリッジ押さえ、20は前記レバー本体40の基部が螺合連結され、傾倒によってカートリッジ12を介して吐水管15からの吐水の流量及び温度の調整を可能とする栓棒であり、この栓棒20とレバー本体40とで操作レバー4が構成されている。尚、本例では操作レバー4を上記のように構成してあるが、操作レバー4の栓棒20とレバー本体40とを別部材とせずに一体化させてあってもよい。
【0035】
前記開口部3は水栓本体2の上端部に形成された開口部分であり、操作レバー4の傾倒に干渉しない大きさ及び形状を有している。また、水栓本体2の上端部の内側面には前記化粧カバー5の下端部が当接してこれを安定して取り付けるためのフランジ(内向きフランジ)3aが設けられている。
【0036】
前記レバー本体40はその基端部に前記栓棒20に螺合連結する雌ねじ部4aを備え、水栓本体2の材質やデザインに合わせた金属からなる棒状体であり、その遊端部4bの直径を幾らか大きく形成することによりデザイン性および操作性を向上するグリップを形成するものである。なお、レバー本体40は金属メッキを施した硬質の合成樹脂であっても水栓本体2のデザインに合わせた別の材質からなるものであってもよい。
【0037】
図3(A)に示すように、前記化粧カバー5は前記開口部3に嵌合してこれを覆うように形成された蓋状の部材であり、板状部5Aと、この板状部5Aに連設された筒部5Bとを備え、水栓本体2の材質やデザインに合わせた金属からなるものである。板状部5Aには前記操作レバー4の傾倒を妨げない大きさのレバー操作窓5bを形成し、かつ、その裏面5aは前記滑り面形成部材6が当接する部分であり、前記滑り面形成部材6の外周部が当接する段差5cを形成している。
【0038】
さらに、前記押し当て部材8の外周端が当接する部分には末窄まりのテーパを施したテーパ受け面を有するガイド部5dを形成している。なお、5eは前記レバー操作窓5bより大きな外形部分を盛り上げて形成した環状の稜線、5fは化粧カバー5のスカート部の外周にOリングを嵌合させるために連続して形成された溝である。
【0039】
前記滑り面形成部材6は、静摩擦抵抗が低く、摺動(すべり摩擦)性、耐磨耗性及び耐疲労性に優れたシート状の部材であり、本例ではポリアセタールからなるシート(耐磨耗シート)であって、図3(B)に示すように、その中央部には前記レバー操作窓5bより大きな開口6aを形成している。この滑り面形成部材6は前記化粧カバー5の裏面5aに形成した段差5cに嵌められることにより固定保持されて、化粧カバー5のレバー操作窓5b内に露出することがないように取り付けられる。また、滑り面形成部材6は、化粧カバー5の裏面5aにおけるレバー操作窓5bを避けた位置に当接するのであり、より詳しくは、裏面5aに対してレバー操作窓5bを囲繞するように当接する。なお、滑り面形成部材6の材質はポリアセタールに限られるものではなく、摩擦抵抗が低いポリエチレンなど、種々の合成樹脂を用いてもよい。
【0040】
図3(C)に示すように、前記摺動カバー7は水栓本体2の材質やデザインに合わせた金属からなる略平板状の部材であり、その内側には前記レバー操作窓5bよりも小さいレバー貫通孔7aを有している。本例では、レバー貫通孔7aを、操作レバー4を傾倒した状態においても、栓棒20を貫通させることができる必要最小限の大きさに形成している。
【0041】
図3(D)及び(E)に示すように、前記押し当て部材8は弾性を有する合成樹脂からなる略Cリング状の部材であり、その切り欠き部8aの両側には縮径方向の弾性変形を容易に行うペンチなどの工具を挿入するための孔8bを形成しており、切り欠き部8aの対角位置には、その幅Wを狭く形成した弾性変形部8cを形成している。加えて、押し当て部材8の外周部には末窄まりのテーパ面8dを形成している。なお、摺動カバー7と押し当て部材8の間に別途滑り面形成部材(例えば上記滑り面形成部材6と同様のもの。図示していない)を介在させてもよい。
【0042】
図1(A)及び(B)に示すように、前記筒状部材9にはその一端部(下端部)9a側から前記栓棒20が挿入され、他端部(上端部)9b側からレバー本体40が挿入された状態となっている。つまり、筒状部材9は、栓棒20とレバー本体40の接合部を覆うように、レバー本体40の基部に配置され、操作レバー4(レバー本体40)の長手方向に摺動自在に構成された外周形状が略球状曲面を有する部材である。また、筒状部材9はコイルばね(付勢手段の一例)9cによって下方の摺動カバー7側に向けて付勢されている。尚、コイルばね9cは、図1(B)に示すように、レバー本体40の基部に設けられた小径部4cと、筒状部材9の一端部9aに設けられた内向きフランジ9dとによって保持されている。
【0043】
前記構成の操作レバーの取付構造1は以下の手順によって水栓本体に組付けることができる。すなわち、カートリッジホルダ11に挿入されたカートリッジ12をカートリッジ押さえ19の螺合によってしっかりと固定する。一方、前記化粧カバー5の裏面5aに滑り面形成部材6を当接し、さらに、滑り面形成部材6の下面に摺動カバー7を当接した状態で、前記押し当て部材8の孔8bにペンチなどの工具を挿入して押し当て部材8を縮径させ、そのテーパ面8dをガイド部5dのテーパ受け面に当接させるように化粧カバー5内に挿入する。このように挿入された押し当て部材8は、縮径した状態からの拡径に伴って、前記テーパ面8dに対するガイド部5dのテーパ受け面のガイドにより、前記摺動カバー7側に向けて摺動する。
【0044】
次いで、部材6〜8を組み付けた化粧カバー5を開口部3内に挿入し、摺動カバー7の貫通孔7aを貫通する栓棒20に対して筒状部材9、コイルばね9c、レバー本体40をこの順番で組み付けることができる。このとき、化粧カバー5の外周部にはOリングを配置するための溝5fを形成しているので、この溝5f内にOリングを嵌めることにより、Oリングが化粧カバー5の抜け止めとなる。
【0045】
前記構成の操作レバーの取付構造1によれば、操作レバー4の傾倒操作に伴って(図1(A)及び図2参照)、摺動カバー7は常に前記レバー操作窓5bを覆いながら滑り面形成部材6と押し当て部材8の間で図示左右方向に摺動し(滑り面形成部材6に沿って摺動し)、これにより、開口部3を化粧カバー5と摺動カバー7によって覆うことができるので、水栓の見栄えが良く水栓本体2内への塵埃の侵入を可及的に阻止することができる。また、開口部3を塞ぐ化粧カバー5の板状部5Aと摺動カバー7は何れも略平板状であるから、カートリッジ12の上端から化粧カバー5の上端までの高さHを低く抑えることができ、湯水混合栓に自由なデザインを施すことができる。
【0046】
また、レバー本体40と摺動カバー7の接合部分を筒状部材9によって覆うことにより、さらに見栄えを整えることができ、摺動カバー7は押し当て部材8によって常に押し上げられ、滑り面形成部材6との密着状態が保たれるので、この密着により塵埃および異物の水栓本体2内への侵入を確実に阻止することができる。さらに、摺動カバー7のレバー貫通孔7aを介して幾らかの水が水栓本体2内に侵入することも考えられるが、レバー貫通孔7aが筒状部材9によって覆われているので、水栓本体2への水の侵入を抑えることができる。
【0047】
加えて、水栓本体2内への水の侵入があったとしても、この水が排水溝16および配水管17を介して水栓本体2の外部に排出されるので、衛生的である。
【0048】
尚、例えば、滑り面形成部材6の成形に用いたポリアセタールや摩擦抵抗が低いポリエチレン等の種々の合成樹脂を、化粧カバー5の成形に用いたり、あるいは化粧カバー5の裏面5aのコーティングに用いたりすることにより、この化粧カバー5の裏面5aが滑り面形成部材6と同様の機能を発揮するように構成すれば、滑り面形成部材6を省くことができる。この場合、摺動カバー7は、押し当て部材8によって化粧カバー5に押し当てられ、操作レバー4の傾倒に伴って化粧カバー5に沿って摺動することになる。
【0049】
図4,5は本発明の第2実施形態にかかる操作レバーの取付構造1Aの構成を示す図である。図4,5において、図1〜3と同じ符号を付した部分は同一、または、同等の部材であるから、その詳細な構成の説明を省略する。
【0050】
第2実施形態の操作レバーの取付構造1Aにおいては、化粧カバー5’の形状が、第1実施形態の操作レバーの取付構造1の化粧カバー5と異なっている。すなわち、本実施形態において、化粧カバー5’の裏面5gの直径を前記滑り面形成部材6の直径に合わせることができるように、前記テーパ面5dの形成部分に段部5hを形成している。
【0051】
本実施形態のように構成された操作レバーの取付構造1Aでは滑り面形成部材6がずれる恐れがなく、それだけ、確実な動作を得ることができる。
【0052】
図6,7は本発明の第3実施形態にかかる操作レバーの取付構造1Bを示す図である。第3実施形態の操作レバーの取付構造1Bにおいては、化粧カバー5''の内周部に雌ねじを有するガイド部5iを形成している点と、押し当て部材8’の外周部に前記雌ねじ5iに螺合する雄ねじ8eを形成した板状体(例えば金属板)である点において、第1実施形態〜第2実施形態の操作レバーの取付構造と異なっている。しかしながら、その他の点については同じであるから、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態の押し当て部材8’は化粧カバー5''に螺合連結されるものであるから、そのねじ込み量をかえることにより、摺動カバー7を滑り面形成部材6に押し当てる力を調整することが可能である。
【0054】
図8,9は本発明の第4実施形態にかかる操作レバーの取付構造1Cを示す図である。第4実施形態の操作レバーの取付構造1Cにおいては、摺動カバー7’に前記筒状部材9の球状曲面を受け止める曲面の接続受け部7cを備える点において、第1実施形態〜第3実施形態の操作レバーの取付構造と異なっている。しかしながら、その他の点については同じであるから、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態のように、接続受け部7cを設けることにより、この接続受け部7cと筒状部材9を常に密着させることが可能となる。すなわち、それだけ水栓本体2への塵埃や異物の侵入を確実に阻止することができる。なお、この接続受け部7cにはポリアセタールあるいはポリエチレンからなる合成樹脂を形成してもよい。
【0056】
図10〜図18は本発明の第5実施形態に係る操作レバーの取付構造1Dを示す図である。以下、第5実施形態の操作レバーの取付構造1Dについて、第1実施形態〜第4実施形態の操作レバーの取付構造と異なる点を主に説明する。尚、上記各実施形態と共通する構成には、同一の符号を用いる。
【0057】
図10に示すように、第5実施形態の湯水混合栓は、洗面台に設置され、吐水管15の横長の吐水口15aから幅広で帯状(膜状)の吐水を行うように構成されている。
【0058】
そして、第5実施形態の水栓本体(胴)2’は、上記第1〜第4実施形態の水栓本体2とは異なり、図13(A)〜(F)に示すように構成されている。
【0059】
また、カートリッジホルダ11’は、上記第1〜第4実施形態のカートリッジホルダ11とは異なり、図12(B)、図14(A)及び(B)に示すように、一端(上端)側の外縁に切り欠き部21を有している。
【0060】
尚、図14(A)〜(C)に示すように、2本の配管13,13からの水、湯は、カートリッジホルダ11’の開口14、14(図14(A)参照)を経てカートリッジ12内に導入され、カートリッジ12内にて適宜の比率で混合された後、図14(A)及び(B)に示す開口22からカートリッジホルダ11’内の混合流路23、吐水管15をこの順に経て吐水口15aから吐水される。そして、この点は、上記第1〜第4実施形態のカートリッジホルダ11も同様である。
【0061】
第5実施形態の化粧カバー24は、上記化粧カバー5、5’、5''と異なり、図11(A)及び図15(A)に示すように、板状部5Aの表面(上面)に「HOT」、「STOP」、「COLD」の表示が設けられている。
【0062】
すなわち、操作レバー4を水栓本体2に向かって左側(図11(A)において「HOT」の文字がある側)に傾倒させるに伴って吐水の温度が上がり、逆側(図11(A)において「COLD」の文字がある側)に傾倒させるに伴って吐水の温度が下がる。また、図11(B)に実線及び仮想線で示すように、操作レバー4を水栓本体2の後側に向かって傾倒させるに伴って吐水流量が大きくなる。そして、このことを使用者に案内するために、上記表示が設けられている。尚、図10、図12(B)、図15(B)では上記表示の図示を省略してある。
【0063】
また、化粧カバー24の筒部5Bの内壁には、図12(A)及び図15(C)に示すように、環状のテーパ溝24aが設けられている。
【0064】
さらに、化粧カバー24の筒部5Bの先端(下端)には、図12(A)及び(B)、図15(B)〜(D)に示すように、切り欠き溝24bが設けられている。
【0065】
第5実施形態の押し当て部材8’は、上記第1〜第4実施形態の押し当て部材8と同じく、弾性を有する合成樹脂からなる略Cリング状の部材であるが、押し当て部材8と形状が異なっており、図12(A)及び(B)、図16(A)〜(F)に示すように構成されている。
【0066】
ここで、図12(A)、図16(B)、(D)、(E)に示すように、押し当て部材8’には、押し当て部材8の二つの孔8bの代わりに、二つの突起25が一面(下面)側に設けられている。そして、上記押し当て部材8では、二つの孔8bにペンチなどの工具を挿入して押し当て部材8を縮径させていたが、第5実施形態の押し当て部材8’では、二つの突起25を例えばペンチなどの工具によって互いに接近するように挟み込むことにより、押し当て部材8’を縮径させることができる。
【0067】
また、図12(A)及び(B)、図16(A)〜(F)に示すように、押し当て部材8’の一面(下面)側には、該一面側に突出した第1突出片26と、押し当て部材8’の側方に突出した第2突出片27とが設けられ、第2突出片27は第1突出片26に連設されている。また、第1突出片26はカートリッジホルダ11’の切り欠き部21に係止可能であり、第2突出片27は化粧カバー24の切り欠き溝24bに係止可能である。
【0068】
さらに、図12(A)及び(B)、図16(A)〜(F)に示すように、押し当て部材8’の側方には、化粧カバー24のテーパ溝24aに係止する複数(図示例では4枚)の係止片28が設けられている。
【0069】
尚、図12(A)及び(B)に示すように、操作レバー4、コイルばね9c、筒状部材9、滑り面形成部材6、摺動カバー7、カートリッジ押さえ19、カートリッジ12は、上記第1実施形態のものと同一のものを用いている。
【0070】
ここで、念のためにカートリッジ押さえ19の構成について述べておくと、このカートリッジ押さえ19は、図12(A)及び(B)、図17(A)及び(B)に示すように、略筒状の部材であり、カートリッジホルダ11’に螺着するための雄ねじ19aが外周面に形成されている。また、カートリッジ押さえ19の一端部(上端部)には、カートリッジホルダ11’への上記螺着の操作を行い易くするための二つの切り欠き19bが設けられている。
【0071】
前記構成の操作レバーの取付構造1Dは以下の手順によって水栓本体に組付けることができる。すなわち、カートリッジホルダ11’に挿入されたカートリッジ12をカートリッジ押さえ19の螺合によってしっかりと固定する。
【0072】
一方、前記化粧カバー24の裏面5a(図12(A)参照)に滑り面形成部材6を当接し、さらに、滑り面形成部材6の下面に摺動カバー7を当接した状態で、前記押し当て部材8’の突起25にペンチなどの工具を引っ掛けて挟み込むことにより押し当て部材8’を縮径させ、押し当て部材8’の各係止片28を化粧カバー24のテーパ溝24aに係止させるように押し当て部材8’を化粧カバー24内に挿入する。そして、このとき、押し当て部材8’の第2突出片27を化粧カバー24の切り欠き溝24bに嵌め込む。
【0073】
次いで、化粧カバー24を開口部3から水栓本体2’内に挿入し、摺動カバー7の貫通孔7aを貫通する栓棒20に対して筒状部材9、コイルばね9c、レバー本体40をこの順番で組み付ける。このとき、化粧カバー24に装着された押し当て部材8’の第1突出片26をカートリッジホルダ11’の切り欠き部21に係止(当接)させる。
【0074】
前記構成の操作レバーの取付構造1Dによれば、図18に示すように、押し当て部材8’の第1突出片26、第2突出片27が、カートリッジホルダ11’の切り欠き部21、化粧カバー24の切り欠き溝24bにそれぞれ係合し、これに伴って、カートリッジホルダ11’に対する化粧カバー24の向きが必然的に定まる。そして、カートリッジホルダ11’に対するカートリッジ12の取付け向きは、図14(A)に示す開口14,14,22の配置に合わせて決まるように構成されているので、カートリッジ12に対する化粧カバー24の向きも必然的に定まることになり、化粧カバー24に設けられた上記表示はカートリッジ12の栓棒20の動きに対応した正規の方向を向いた状態となる。従って、化粧カバー24の上記表示によって操作レバー4の操作案内を必ず正確に行うことができ、そのために必要なのは第1、第2突出片26,27、切り欠き部21及び切り欠き溝24bであり、操作レバーの取付構造1Dの構成が複雑化することもない。
【0075】
尚、上記各実施形態における湯水混合栓は、取付け台T等のカウンタ面に設置されるタイプに限られず、壁面に取り付けられる壁面取付型の水栓であってもよい。
【0076】
また、上記各実施形態の構成及びその変形を、適宜に組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1,1A〜1D 操作レバーの取付構造
2 水栓本体
3 開口部
4 操作レバー
5 化粧カバー
5b レバー操作窓
5d ガイド部
6 滑り面形成部材
7 摺動カバー
7a レバー貫通孔
8 押し当て部材
8a 切り欠き部
8d テーパ面
9 筒状部材
9c 付勢手段
H 高さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバーの取付構造に関するものであり、傾倒によって少なくとも吐水流量を調節するための操作レバーを見栄え良く水栓に取り付ける操作レバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献1に示すように水栓本体の上部に設けた操作レバーの傾倒によって吐水の流量および温度の調整を可能とする、デザイン性を高めたシングルレバー式湯水混合栓が用いられている。
【0003】
図19は、この種の従来の湯水混合栓90の構成を説明する図である。図19に示す操作レバー91は、その基部に略球状表面のフランジ92を備え、いわばドーム形フランジ構造の覆いを設けている。このフランジ92を設けることにより、操作レバー91の傾倒に伴ってフランジ92が移動し、水栓の開口93を覆うことができ、異物が水栓内に入ることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−518033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図19に示すような構成では、フランジ92が略球状表面であるため、操作レバー91の基部にドーム状の突部を形成することになり、これによって湯水混合栓の高さHpが高くなる。加えて、その見栄えを悪くし、水栓に自由なデザインを施すことができなかった。
【0006】
また、従来のドーム形フランジ構造の覆いでは操作レバー91に設けたフランジ92が操作レバー91の傾倒に伴って移動するために、その一端92aが水栓カートリッジ94など、水栓本体側の部材に当たることにより、操作レバー91の可動範囲を制限する必要があった。
【0007】
他方、図20に示すように、操作レバー91の可動範囲を広くするためにフランジ92の幅を狭くし、開口93を大きくすると、フランジ92の他端92bが開口93から突出し、湯水混合栓90内に異物が混入するという問題がある。
【0008】
加えて、フランジ92と開口93の間に隙間dを形成する必要があるので、水栓使用時に手についた水がフランジ92の表面をつたって開口93とフランジ92の間を介して水栓内に入るので不衛生であり、水栓内部に溜まった水や異物によって水栓の動作不良が起こることが懸念される。
【0009】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、操作レバーの可動範囲を十分に確保できると共に水栓本体のコンパクト化を図ることができる操作レバーの取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、
水栓本体の外面に設けた開口部から該水栓本体の外方に突出し、傾倒によって少なくとも前記水栓本体に設けられた吐水管の吐水流量を調節するための操作レバーを有する水栓における操作レバーの取付構造であって、
前記開口部から前記水栓本体の内側に向けて、
前記開口部を覆い前記操作レバーが挿通するレバー操作窓を有する化粧カバーと、
滑り面形成部材と、
前記操作レバーに貫通され前記レバー操作窓よりも小さいレバー貫通孔を有すると共に前記操作レバーの傾倒操作に伴って常に前記レバー操作窓を覆いながら前記滑り面形成部材に沿って摺動する略平板状の摺動カバーと、
前記摺動カバーを前記滑り面形成部材に押し当てる押し当て部材とをこの順に備えている(請求項1)。
【0011】
前記構成よりなる操作レバーの取付構造によれば、化粧カバーが開口部を覆い、水栓にデザインを施すことができる。また、化粧カバーの裏面に当接する滑り面形成部材と摺動カバーとの間に生じる静摩擦抵抗は低く抑えられ、滑り面形成部材に対する摺動カバーの滑り(滑動性)が良いので、摺動カバーの摺動ひいては操作レバーの傾倒操作を少しの力で行うことができる。
【0012】
また、操作レバーの傾倒操作に合わせて摺動カバーが滑り面形成部材に沿って摺動し、操作レバーがどの位置にあってもレバー操作窓は摺動カバーによって覆われる。加えて、摺動カバーはドーム状ではなく略平板状であるからそれだけ水栓本体をコンパクト化することができ、摺動カバーが前記ドーム形フランジ構造のように水栓カートリッジなどに当たることがなく、レバー操作窓を大きくして操作レバーの操作角を大きくすることができる。さらに、操作レバーの傾倒に伴う摺動カバーの移動(摺動)は、この摺動カバーが略平板状であるのでレバー操作窓を通して外部から視認しにくく、これにより、操作レバーの操作時の水栓の外観が洗練されたものとなる。
【0013】
押し当て部材は摺動カバーを滑り面形成部材に押し当てるので、摺動カバーと滑り面形成部材は密着し、この間に塵埃や異物が入り込むことを防止して、水栓内への塵埃や異物の侵入を防止することができる。
【0014】
前記水栓を、湯水混合栓、つまり、シングルレバー式湯水混合栓としてもよく、この場合、前記操作レバーの傾倒によって吐水管から吐水する水の吐水流量および温度をそれぞれ調整することができるように操作レバーの傾倒方向を設定すればよく、前記レバー操作窓の形状はたとえば略円形状とすることができる。しかしながら、水栓は単水栓であってもよく、この場合、前記レバー操作窓の形状はスリット形状であってもよい。
【0015】
前記化粧カバーを、水栓本体の開口部に嵌め込むように形成された蓋体としてもよく、この場合、水栓本体の材質やデザインに合うように、化粧カバーを、例えば金属または金属メッキを施した硬質の合成樹脂または陶器によって形成し、水栓本体との一体感を得るようにすることが好ましい。しかしながら、化粧カバーは水栓の表面全体に被せられるカバーであっても、金属メッキや塗布によって水栓本体の開口部を覆うように形成された薄い層であっても水栓にデザインを施すものであればよい。
【0016】
化粧カバーが、レバー操作窓が形成された板状部と、この板状部に連設された筒部とを有するようにし、かつ、前記滑り面形成部材を、前記筒部に形成した溝(段差)に嵌めて固定保持し、滑り面形成部材がレバー操作窓内に全く現れないようにレバー操作窓を避けて滑り面形成部材を設けることが見栄えを良くする上で好ましい。また、接着剤などを用いて滑り面形成部材を化粧カバーの裏面側に貼着してもよい。
【0017】
前記摺動カバーを、化粧カバーと同じく水栓本体の材質やデザインに合わせて例えば金属または金属メッキを施した硬質の合成樹脂からなる略平板状とすることが、水栓全体に一体感を持たせることができるので好ましい。レバー貫通孔は、操作レバーの基部が貫通する必要最小限の大きさの孔であることが好ましい。
【0018】
前記押し当て部材は弾性を有する材料からなるものであることが好ましく、この場合、押し当て部材の弾性力を利用して前記摺動カバーを滑り面形成部材に押し当てることができるが、ばねなどの付勢手段を用いて押し当て部材を摺動カバーに押し当てるようにしてもよい。なお、摺動カバーと押し当て部材の間に別の滑り面形成部材を介在させてもよい。
【0019】
前記滑り面形成部材はポリアセタールからなるシート状の部材である場合(請求項2)には、静摩擦抵抗を十分に低く抑えることができるので、滑り面形成部材と摺動カバーの当接面をより強い力で密着させて、水栓本体への塵埃および異物の混入をさらに確実に阻止することができる。
【0020】
また、本発明の操作レバーの取付構造が、水栓本体の外面に設けた開口部から該水栓本体の外方に突出し、傾倒によって少なくとも前記水栓本体に設けられた吐水管の吐水流量を調節するための操作レバーを有する水栓における操作レバーの取付構造であって、
前記開口部から前記水栓本体の内側に向けて、
前記開口部を覆い前記操作レバーが挿通するレバー操作窓を有する化粧カバーと、
前記操作レバーに貫通され前記レバー操作窓よりも小さいレバー貫通孔を有すると共に前記操作レバーの傾倒操作に伴って常に前記レバー操作窓を覆いながら前記化粧カバーに沿って摺動する略平板状の摺動カバーと、
前記摺動カバーを前記化粧カバーに押し当てる押し当て部材とをこの順に備えたものであってもよい(請求項3)。この場合には、滑り面形成部材を別途設けない分、構成がよりシンプルとなる。
【0021】
前記押し当て部材はその外周部を縮径方向に弾性変形可能とする切り欠き部を備える略Cリング状であってその外周部にテーパ面を有し、前記開口部の内側には前記押し当て部材が縮径した状態でそのテーパ面に当接するテーパ受け面を有するガイド部が設けられ、前記押し当て部材は、縮径した状態からの拡径に伴って、前記テーパ面に対する前記テーパ受け面のガイドにより、前記摺動カバー側に向けて摺動するように構成されている場合(請求項4)には、略Cリング状の押し当て部材は若干縮径した状態でテーパ面がテーパ受け面に当接するように前記ガイド部内に挿入され、テーパ面に対するテーパ受け面のガイドによって押し当て部材は摺動カバー側に向けて移動しようとするので、摺動カバーを滑り面形成部材に密着させるように付勢し続けることができる。また、押し当て部材は縮径させることによりテーパ受け面を有するガイド部に着脱自在であり、組み付け性およびメンテナンス性においても優れている。
【0022】
略Cリング状の押し当て部材の前記切り欠き部両端に、押し当て部材を縮径方向に弾性変形させる工具を挿入するための孔を形成してあることが好ましく、切り欠き部と対角位置の幅は狭く形成した弾性変形部であることが好ましい。また、押し当て部材の材質はばね材としての弾性を備える合成樹脂であることが好ましい。
【0023】
前記押し当て部材は外周部に雄ねじを有し、この雄ねじが螺合する雌ねじを有するガイド部が前記開口部の内側に設けられている場合(請求項5)には、ガイド部の雌ねじに対する押し当て部材の雄ねじのねじ込み量を調整することによって摺動カバーを滑り面形成部材に押し当てる力を調整することができる。
【0024】
前記操作レバーの基部においてその軸方向に移動可能に取り付けられた筒状部材と、この筒状部材を摺動カバーに当接する方向に付勢する付勢手段とを備える場合(請求項6)には、筒状部材が摺動カバーに当接することにより、摺動カバーと操作レバーの間の隙間を覆うことができ見栄えがよい。また、水栓内への塵埃や異物の混入をさらに効果的に阻止することができる。
【0025】
前記筒状部材の特に下端部分は球状曲面を形成するものであることが好ましく、摺動カバーに設けたレバー貫通孔の周壁は操作レバーの球状曲面に当接する曲面を有するものであることが好ましい。なお、筒状部材とレバー貫通孔の当接部分には水密を保つための合成樹脂をパッキンとして配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
前述したように、本発明によれば、水栓のコンパクト化を図れると共に水栓内への塵埃や異物の侵入を阻止し、自由なデザインを施すことができる操作レバーの取付構造を提供できる。
【0027】
また、押し当て部材の外周部にテーパ面が設けられ、開口部の内側にテーパ受け面を有するガイド部を備える場合には、滑り面形成部材と摺動カバーの間の水密状態を確実に保つことができると共に組み付け性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0028】
操作レバーの基部に筒状部材を備える場合には、摺動カバーと操作レバーの接続部における隙間を埋めることができ、さらに見栄えが良くなり、水栓内への塵埃や異物の侵入をより確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係る操作レバーの取付構造及びその要部を示す図である。
【図2】前記操作レバーの取付構造の動作を説明する図である。
【図3】前記操作レバーの取付構造の細部を説明する図である。
【図4】第2実施形態の操作レバーの取付構造を説明する図である。
【図5】同上操作レバーの取付構造の細部を説明する図である。
【図6】第3実施形態の操作レバーの取付構造を説明する図である。
【図7】同上操作レバーの取付構造の細部を説明する図である。
【図8】第4実施形態の操作レバーの取付構造を示す図である。
【図9】同上操作レバーの取付構造の動作を説明する図である。
【図10】第5実施形態の操作レバーの取付構造を説明する図である。
【図11】(A)及び(B)は同上操作レバーの取付構造の構成を概略的に示す平面図及び縦断面図である。
【図12】(A)及び(B)は同上操作レバーの取付構造の構成を概略的に示す下方側及び上方側からみた分解斜視図である。
【図13】(A)〜(C)は同上操作レバーの取付構造の水栓本体の構成を概略的に示す平面図、正面図、縦断面図、(D)は該水栓本体の底部の底面図、(E)及び(F)は(C)においてイ及びロで囲った部分の拡大図である。
【図14】(A)は同上操作レバーの取付構造のカートリッジホルダの構成を概略的に示す平面図、(B)は(A)のA−A線切断端面図、(C)は(A)のB−B線階段断面図である。
【図15】(A)〜(D)は同上操作レバーの取付構造の化粧カバーの構成を概略的に示す平面図、斜視図、縦断面図及び底面図である。
【図16】(A)及び(B)は同上操作レバーの取付構造の押し当て部材の構成を概略的に示す上方側及び下方側からみた斜視図、(C)は平面図、(D)は縦断面図、(E)は(C)におけるC−C線断面図、(F)は底面図である。
【図17】(A)は同上操作レバーの取付構造のカートリッジ押さえの構成を概略的に示す平面図、(B)は(A)のD−D線階段断面図である。
【図18】同上操作レバーの取付構造の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図19】従来の操作レバーの取付構造の例を示す図である。
【図20】従来の操作レバーの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態に係る操作レバーの取付構造1を示す図である。図1(A)に示すように、本発明は水栓本体2の外面(上面)に設けた開口部3から水栓本体2の外方に突出し、前後方向の傾倒によって吐水管15から行う吐水の流量(吐水流量)、左右方向の傾倒によって前記吐水の湯温を調節するための操作レバー4を有する湯水混合栓における操作レバーの取付構造1に関するものである。
【0031】
本発明の操作レバーの取付構造1は、開口部3から水栓本体2の内側に向けて、開口部3に設けられた化粧カバー5と、この化粧カバー5の裏面5aに当接する滑り面形成部材6と、この滑り面形成部材6の下面6aに当接する摺動カバー7と、この摺動カバー7を滑り面形成部材6に押し当てるように摺動カバー7の下面7bに当接する押し当て部材8と、前記操作レバー4のレバー本体40の基部においてその軸方向に移動可能に取り付けられた筒状部材9とを有する。
【0032】
前記湯水混合栓2は、略筒状の水栓本体(胴)10と、この水栓本体10内に取り付けられたカートリッジホルダ11と、このカートリッジホルダ11に挿入されたカートリッジ12と、湯、水供給用の2本の配管13,13から水栓本体10内に供給され、操作レバー4の傾倒操作によって混合比及び吐水流量が調整される湯水を吐水する吐水部(図示していない)を備えた吐水管15とを備えている。
【0033】
また、水栓本体10内には内部に水が侵入した場合にこの水を排水するための排水溝16を備え、その下端には排水管17を備え、この排水管17は水栓本体10と取付け台Tとの間の隙間18を介して外部に連通している。
【0034】
19はカートリッジ12をカートリッジホルダ11に挿入した状態でその上端部に当接して締付けられるカートリッジ押さえ、20は前記レバー本体40の基部が螺合連結され、傾倒によってカートリッジ12を介して吐水管15からの吐水の流量及び温度の調整を可能とする栓棒であり、この栓棒20とレバー本体40とで操作レバー4が構成されている。尚、本例では操作レバー4を上記のように構成してあるが、操作レバー4の栓棒20とレバー本体40とを別部材とせずに一体化させてあってもよい。
【0035】
前記開口部3は水栓本体2の上端部に形成された開口部分であり、操作レバー4の傾倒に干渉しない大きさ及び形状を有している。また、水栓本体2の上端部の内側面には前記化粧カバー5の下端部が当接してこれを安定して取り付けるためのフランジ(内向きフランジ)3aが設けられている。
【0036】
前記レバー本体40はその基端部に前記栓棒20に螺合連結する雌ねじ部4aを備え、水栓本体2の材質やデザインに合わせた金属からなる棒状体であり、その遊端部4bの直径を幾らか大きく形成することによりデザイン性および操作性を向上するグリップを形成するものである。なお、レバー本体40は金属メッキを施した硬質の合成樹脂であっても水栓本体2のデザインに合わせた別の材質からなるものであってもよい。
【0037】
図3(A)に示すように、前記化粧カバー5は前記開口部3に嵌合してこれを覆うように形成された蓋状の部材であり、板状部5Aと、この板状部5Aに連設された筒部5Bとを備え、水栓本体2の材質やデザインに合わせた金属からなるものである。板状部5Aには前記操作レバー4の傾倒を妨げない大きさのレバー操作窓5bを形成し、かつ、その裏面5aは前記滑り面形成部材6が当接する部分であり、前記滑り面形成部材6の外周部が当接する段差5cを形成している。
【0038】
さらに、前記押し当て部材8の外周端が当接する部分には末窄まりのテーパを施したテーパ受け面を有するガイド部5dを形成している。なお、5eは前記レバー操作窓5bより大きな外形部分を盛り上げて形成した環状の稜線、5fは化粧カバー5のスカート部の外周にOリングを嵌合させるために連続して形成された溝である。
【0039】
前記滑り面形成部材6は、静摩擦抵抗が低く、摺動(すべり摩擦)性、耐磨耗性及び耐疲労性に優れたシート状の部材であり、本例ではポリアセタールからなるシート(耐磨耗シート)であって、図3(B)に示すように、その中央部には前記レバー操作窓5bより大きな開口6aを形成している。この滑り面形成部材6は前記化粧カバー5の裏面5aに形成した段差5cに嵌められることにより固定保持されて、化粧カバー5のレバー操作窓5b内に露出することがないように取り付けられる。また、滑り面形成部材6は、化粧カバー5の裏面5aにおけるレバー操作窓5bを避けた位置に当接するのであり、より詳しくは、裏面5aに対してレバー操作窓5bを囲繞するように当接する。なお、滑り面形成部材6の材質はポリアセタールに限られるものではなく、摩擦抵抗が低いポリエチレンなど、種々の合成樹脂を用いてもよい。
【0040】
図3(C)に示すように、前記摺動カバー7は水栓本体2の材質やデザインに合わせた金属からなる略平板状の部材であり、その内側には前記レバー操作窓5bよりも小さいレバー貫通孔7aを有している。本例では、レバー貫通孔7aを、操作レバー4を傾倒した状態においても、栓棒20を貫通させることができる必要最小限の大きさに形成している。
【0041】
図3(D)及び(E)に示すように、前記押し当て部材8は弾性を有する合成樹脂からなる略Cリング状の部材であり、その切り欠き部8aの両側には縮径方向の弾性変形を容易に行うペンチなどの工具を挿入するための孔8bを形成しており、切り欠き部8aの対角位置には、その幅Wを狭く形成した弾性変形部8cを形成している。加えて、押し当て部材8の外周部には末窄まりのテーパ面8dを形成している。なお、摺動カバー7と押し当て部材8の間に別途滑り面形成部材(例えば上記滑り面形成部材6と同様のもの。図示していない)を介在させてもよい。
【0042】
図1(A)及び(B)に示すように、前記筒状部材9にはその一端部(下端部)9a側から前記栓棒20が挿入され、他端部(上端部)9b側からレバー本体40が挿入された状態となっている。つまり、筒状部材9は、栓棒20とレバー本体40の接合部を覆うように、レバー本体40の基部に配置され、操作レバー4(レバー本体40)の長手方向に摺動自在に構成された外周形状が略球状曲面を有する部材である。また、筒状部材9はコイルばね(付勢手段の一例)9cによって下方の摺動カバー7側に向けて付勢されている。尚、コイルばね9cは、図1(B)に示すように、レバー本体40の基部に設けられた小径部4cと、筒状部材9の一端部9aに設けられた内向きフランジ9dとによって保持されている。
【0043】
前記構成の操作レバーの取付構造1は以下の手順によって水栓本体に組付けることができる。すなわち、カートリッジホルダ11に挿入されたカートリッジ12をカートリッジ押さえ19の螺合によってしっかりと固定する。一方、前記化粧カバー5の裏面5aに滑り面形成部材6を当接し、さらに、滑り面形成部材6の下面に摺動カバー7を当接した状態で、前記押し当て部材8の孔8bにペンチなどの工具を挿入して押し当て部材8を縮径させ、そのテーパ面8dをガイド部5dのテーパ受け面に当接させるように化粧カバー5内に挿入する。このように挿入された押し当て部材8は、縮径した状態からの拡径に伴って、前記テーパ面8dに対するガイド部5dのテーパ受け面のガイドにより、前記摺動カバー7側に向けて摺動する。
【0044】
次いで、部材6〜8を組み付けた化粧カバー5を開口部3内に挿入し、摺動カバー7の貫通孔7aを貫通する栓棒20に対して筒状部材9、コイルばね9c、レバー本体40をこの順番で組み付けることができる。このとき、化粧カバー5の外周部にはOリングを配置するための溝5fを形成しているので、この溝5f内にOリングを嵌めることにより、Oリングが化粧カバー5の抜け止めとなる。
【0045】
前記構成の操作レバーの取付構造1によれば、操作レバー4の傾倒操作に伴って(図1(A)及び図2参照)、摺動カバー7は常に前記レバー操作窓5bを覆いながら滑り面形成部材6と押し当て部材8の間で図示左右方向に摺動し(滑り面形成部材6に沿って摺動し)、これにより、開口部3を化粧カバー5と摺動カバー7によって覆うことができるので、水栓の見栄えが良く水栓本体2内への塵埃の侵入を可及的に阻止することができる。また、開口部3を塞ぐ化粧カバー5の板状部5Aと摺動カバー7は何れも略平板状であるから、カートリッジ12の上端から化粧カバー5の上端までの高さHを低く抑えることができ、湯水混合栓に自由なデザインを施すことができる。
【0046】
また、レバー本体40と摺動カバー7の接合部分を筒状部材9によって覆うことにより、さらに見栄えを整えることができ、摺動カバー7は押し当て部材8によって常に押し上げられ、滑り面形成部材6との密着状態が保たれるので、この密着により塵埃および異物の水栓本体2内への侵入を確実に阻止することができる。さらに、摺動カバー7のレバー貫通孔7aを介して幾らかの水が水栓本体2内に侵入することも考えられるが、レバー貫通孔7aが筒状部材9によって覆われているので、水栓本体2への水の侵入を抑えることができる。
【0047】
加えて、水栓本体2内への水の侵入があったとしても、この水が排水溝16および配水管17を介して水栓本体2の外部に排出されるので、衛生的である。
【0048】
尚、例えば、滑り面形成部材6の成形に用いたポリアセタールや摩擦抵抗が低いポリエチレン等の種々の合成樹脂を、化粧カバー5の成形に用いたり、あるいは化粧カバー5の裏面5aのコーティングに用いたりすることにより、この化粧カバー5の裏面5aが滑り面形成部材6と同様の機能を発揮するように構成すれば、滑り面形成部材6を省くことができる。この場合、摺動カバー7は、押し当て部材8によって化粧カバー5に押し当てられ、操作レバー4の傾倒に伴って化粧カバー5に沿って摺動することになる。
【0049】
図4,5は本発明の第2実施形態にかかる操作レバーの取付構造1Aの構成を示す図である。図4,5において、図1〜3と同じ符号を付した部分は同一、または、同等の部材であるから、その詳細な構成の説明を省略する。
【0050】
第2実施形態の操作レバーの取付構造1Aにおいては、化粧カバー5’の形状が、第1実施形態の操作レバーの取付構造1の化粧カバー5と異なっている。すなわち、本実施形態において、化粧カバー5’の裏面5gの直径を前記滑り面形成部材6の直径に合わせることができるように、前記テーパ面5dの形成部分に段部5hを形成している。
【0051】
本実施形態のように構成された操作レバーの取付構造1Aでは滑り面形成部材6がずれる恐れがなく、それだけ、確実な動作を得ることができる。
【0052】
図6,7は本発明の第3実施形態にかかる操作レバーの取付構造1Bを示す図である。第3実施形態の操作レバーの取付構造1Bにおいては、化粧カバー5''の内周部に雌ねじを有するガイド部5iを形成している点と、押し当て部材8’の外周部に前記雌ねじ5iに螺合する雄ねじ8eを形成した板状体(例えば金属板)である点において、第1実施形態〜第2実施形態の操作レバーの取付構造と異なっている。しかしながら、その他の点については同じであるから、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態の押し当て部材8’は化粧カバー5''に螺合連結されるものであるから、そのねじ込み量をかえることにより、摺動カバー7を滑り面形成部材6に押し当てる力を調整することが可能である。
【0054】
図8,9は本発明の第4実施形態にかかる操作レバーの取付構造1Cを示す図である。第4実施形態の操作レバーの取付構造1Cにおいては、摺動カバー7’に前記筒状部材9の球状曲面を受け止める曲面の接続受け部7cを備える点において、第1実施形態〜第3実施形態の操作レバーの取付構造と異なっている。しかしながら、その他の点については同じであるから、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施形態のように、接続受け部7cを設けることにより、この接続受け部7cと筒状部材9を常に密着させることが可能となる。すなわち、それだけ水栓本体2への塵埃や異物の侵入を確実に阻止することができる。なお、この接続受け部7cにはポリアセタールあるいはポリエチレンからなる合成樹脂を形成してもよい。
【0056】
図10〜図18は本発明の第5実施形態に係る操作レバーの取付構造1Dを示す図である。以下、第5実施形態の操作レバーの取付構造1Dについて、第1実施形態〜第4実施形態の操作レバーの取付構造と異なる点を主に説明する。尚、上記各実施形態と共通する構成には、同一の符号を用いる。
【0057】
図10に示すように、第5実施形態の湯水混合栓は、洗面台に設置され、吐水管15の横長の吐水口15aから幅広で帯状(膜状)の吐水を行うように構成されている。
【0058】
そして、第5実施形態の水栓本体(胴)2’は、上記第1〜第4実施形態の水栓本体2とは異なり、図13(A)〜(F)に示すように構成されている。
【0059】
また、カートリッジホルダ11’は、上記第1〜第4実施形態のカートリッジホルダ11とは異なり、図12(B)、図14(A)及び(B)に示すように、一端(上端)側の外縁に切り欠き部21を有している。
【0060】
尚、図14(A)〜(C)に示すように、2本の配管13,13からの水、湯は、カートリッジホルダ11’の開口14、14(図14(A)参照)を経てカートリッジ12内に導入され、カートリッジ12内にて適宜の比率で混合された後、図14(A)及び(B)に示す開口22からカートリッジホルダ11’内の混合流路23、吐水管15をこの順に経て吐水口15aから吐水される。そして、この点は、上記第1〜第4実施形態のカートリッジホルダ11も同様である。
【0061】
第5実施形態の化粧カバー24は、上記化粧カバー5、5’、5''と異なり、図11(A)及び図15(A)に示すように、板状部5Aの表面(上面)に「HOT」、「STOP」、「COLD」の表示が設けられている。
【0062】
すなわち、操作レバー4を水栓本体2に向かって左側(図11(A)において「HOT」の文字がある側)に傾倒させるに伴って吐水の温度が上がり、逆側(図11(A)において「COLD」の文字がある側)に傾倒させるに伴って吐水の温度が下がる。また、図11(B)に実線及び仮想線で示すように、操作レバー4を水栓本体2の後側に向かって傾倒させるに伴って吐水流量が大きくなる。そして、このことを使用者に案内するために、上記表示が設けられている。尚、図10、図12(B)、図15(B)では上記表示の図示を省略してある。
【0063】
また、化粧カバー24の筒部5Bの内壁には、図12(A)及び図15(C)に示すように、環状のテーパ溝24aが設けられている。
【0064】
さらに、化粧カバー24の筒部5Bの先端(下端)には、図12(A)及び(B)、図15(B)〜(D)に示すように、切り欠き溝24bが設けられている。
【0065】
第5実施形態の押し当て部材8’は、上記第1〜第4実施形態の押し当て部材8と同じく、弾性を有する合成樹脂からなる略Cリング状の部材であるが、押し当て部材8と形状が異なっており、図12(A)及び(B)、図16(A)〜(F)に示すように構成されている。
【0066】
ここで、図12(A)、図16(B)、(D)、(E)に示すように、押し当て部材8’には、押し当て部材8の二つの孔8bの代わりに、二つの突起25が一面(下面)側に設けられている。そして、上記押し当て部材8では、二つの孔8bにペンチなどの工具を挿入して押し当て部材8を縮径させていたが、第5実施形態の押し当て部材8’では、二つの突起25を例えばペンチなどの工具によって互いに接近するように挟み込むことにより、押し当て部材8’を縮径させることができる。
【0067】
また、図12(A)及び(B)、図16(A)〜(F)に示すように、押し当て部材8’の一面(下面)側には、該一面側に突出した第1突出片26と、押し当て部材8’の側方に突出した第2突出片27とが設けられ、第2突出片27は第1突出片26に連設されている。また、第1突出片26はカートリッジホルダ11’の切り欠き部21に係止可能であり、第2突出片27は化粧カバー24の切り欠き溝24bに係止可能である。
【0068】
さらに、図12(A)及び(B)、図16(A)〜(F)に示すように、押し当て部材8’の側方には、化粧カバー24のテーパ溝24aに係止する複数(図示例では4枚)の係止片28が設けられている。
【0069】
尚、図12(A)及び(B)に示すように、操作レバー4、コイルばね9c、筒状部材9、滑り面形成部材6、摺動カバー7、カートリッジ押さえ19、カートリッジ12は、上記第1実施形態のものと同一のものを用いている。
【0070】
ここで、念のためにカートリッジ押さえ19の構成について述べておくと、このカートリッジ押さえ19は、図12(A)及び(B)、図17(A)及び(B)に示すように、略筒状の部材であり、カートリッジホルダ11’に螺着するための雄ねじ19aが外周面に形成されている。また、カートリッジ押さえ19の一端部(上端部)には、カートリッジホルダ11’への上記螺着の操作を行い易くするための二つの切り欠き19bが設けられている。
【0071】
前記構成の操作レバーの取付構造1Dは以下の手順によって水栓本体に組付けることができる。すなわち、カートリッジホルダ11’に挿入されたカートリッジ12をカートリッジ押さえ19の螺合によってしっかりと固定する。
【0072】
一方、前記化粧カバー24の裏面5a(図12(A)参照)に滑り面形成部材6を当接し、さらに、滑り面形成部材6の下面に摺動カバー7を当接した状態で、前記押し当て部材8’の突起25にペンチなどの工具を引っ掛けて挟み込むことにより押し当て部材8’を縮径させ、押し当て部材8’の各係止片28を化粧カバー24のテーパ溝24aに係止させるように押し当て部材8’を化粧カバー24内に挿入する。そして、このとき、押し当て部材8’の第2突出片27を化粧カバー24の切り欠き溝24bに嵌め込む。
【0073】
次いで、化粧カバー24を開口部3から水栓本体2’内に挿入し、摺動カバー7の貫通孔7aを貫通する栓棒20に対して筒状部材9、コイルばね9c、レバー本体40をこの順番で組み付ける。このとき、化粧カバー24に装着された押し当て部材8’の第1突出片26をカートリッジホルダ11’の切り欠き部21に係止(当接)させる。
【0074】
前記構成の操作レバーの取付構造1Dによれば、図18に示すように、押し当て部材8’の第1突出片26、第2突出片27が、カートリッジホルダ11’の切り欠き部21、化粧カバー24の切り欠き溝24bにそれぞれ係合し、これに伴って、カートリッジホルダ11’に対する化粧カバー24の向きが必然的に定まる。そして、カートリッジホルダ11’に対するカートリッジ12の取付け向きは、図14(A)に示す開口14,14,22の配置に合わせて決まるように構成されているので、カートリッジ12に対する化粧カバー24の向きも必然的に定まることになり、化粧カバー24に設けられた上記表示はカートリッジ12の栓棒20の動きに対応した正規の方向を向いた状態となる。従って、化粧カバー24の上記表示によって操作レバー4の操作案内を必ず正確に行うことができ、そのために必要なのは第1、第2突出片26,27、切り欠き部21及び切り欠き溝24bであり、操作レバーの取付構造1Dの構成が複雑化することもない。
【0075】
尚、上記各実施形態における湯水混合栓は、取付け台T等のカウンタ面に設置されるタイプに限られず、壁面に取り付けられる壁面取付型の水栓であってもよい。
【0076】
また、上記各実施形態の構成及びその変形を、適宜に組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1,1A〜1D 操作レバーの取付構造
2 水栓本体
3 開口部
4 操作レバー
5 化粧カバー
5b レバー操作窓
5d ガイド部
6 滑り面形成部材
7 摺動カバー
7a レバー貫通孔
8 押し当て部材
8a 切り欠き部
8d テーパ面
9 筒状部材
9c 付勢手段
H 高さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体の外面に設けた開口部から該水栓本体の外方に突出し、傾倒によって少なくとも前記水栓本体に設けられた吐水管の吐水流量を調節するための操作レバーを有する水栓における操作レバーの取付構造であって、
前記開口部から前記水栓本体の内側に向けて、
前記開口部を覆い前記操作レバーが挿通するレバー操作窓を有する化粧カバーと、
滑り面形成部材と、
前記操作レバーに貫通され前記レバー操作窓よりも小さいレバー貫通孔を有すると共に前記操作レバーの傾倒操作に伴って常に前記レバー操作窓を覆いながら前記滑り面形成部材に沿って摺動する略平板状の摺動カバーと、
前記摺動カバーを前記滑り面形成部材に押し当てる押し当て部材とをこの順に備えた操作レバーの取付構造。
【請求項2】
前記滑り面形成部材はポリアセタールからなるシート状の部材である請求項1に記載の操作レバーの取付構造。
【請求項3】
水栓本体の外面に設けた開口部から該水栓本体の外方に突出し、傾倒によって少なくとも前記水栓本体に設けられた吐水管の吐水流量を調節するための操作レバーを有する水栓における操作レバーの取付構造であって、
前記開口部から前記水栓本体の内側に向けて、
前記開口部を覆い前記操作レバーが挿通するレバー操作窓を有する化粧カバーと、
前記操作レバーに貫通され前記レバー操作窓よりも小さいレバー貫通孔を有すると共に前記操作レバーの傾倒操作に伴って常に前記レバー操作窓を覆いながら前記化粧カバーに沿って摺動する略平板状の摺動カバーと、
前記摺動カバーを前記化粧カバーに押し当てる押し当て部材とをこの順に備えた操作レバーの取付構造。
【請求項4】
前記押し当て部材はその外周部を縮径方向に弾性変形可能とする切り欠き部を備える略Cリング状であってその外周部にテーパ面を有し、前記開口部の内側には前記押し当て部材が縮径した状態でそのテーパ面に当接するテーパ受け面を有するガイド部が設けられ、前記押し当て部材は、縮径した状態からの拡径に伴って、前記テーパ面に対する前記テーパ受け面のガイドにより、前記摺動カバー側に向けて摺動するように構成されている請求項1〜3の何れかに記載の操作レバーの取付構造。
【請求項5】
前記押し当て部材は外周部に雄ねじを有し、この雄ねじが螺合する雌ねじを有するガイド部が前記開口部の内側に設けられている請求項1〜3の何れかに記載の操作レバーの取付構造。
【請求項6】
前記操作レバーの基部においてその軸方向に移動可能に取り付けられた筒状部材と、この筒状部材を摺動カバーに当接する方向に付勢する付勢手段とを備えた請求項1〜5の何れかに記載の操作レバーの取付構造。
【請求項1】
水栓本体の外面に設けた開口部から該水栓本体の外方に突出し、傾倒によって少なくとも前記水栓本体に設けられた吐水管の吐水流量を調節するための操作レバーを有する水栓における操作レバーの取付構造であって、
前記開口部から前記水栓本体の内側に向けて、
前記開口部を覆い前記操作レバーが挿通するレバー操作窓を有する化粧カバーと、
滑り面形成部材と、
前記操作レバーに貫通され前記レバー操作窓よりも小さいレバー貫通孔を有すると共に前記操作レバーの傾倒操作に伴って常に前記レバー操作窓を覆いながら前記滑り面形成部材に沿って摺動する略平板状の摺動カバーと、
前記摺動カバーを前記滑り面形成部材に押し当てる押し当て部材とをこの順に備えた操作レバーの取付構造。
【請求項2】
前記滑り面形成部材はポリアセタールからなるシート状の部材である請求項1に記載の操作レバーの取付構造。
【請求項3】
水栓本体の外面に設けた開口部から該水栓本体の外方に突出し、傾倒によって少なくとも前記水栓本体に設けられた吐水管の吐水流量を調節するための操作レバーを有する水栓における操作レバーの取付構造であって、
前記開口部から前記水栓本体の内側に向けて、
前記開口部を覆い前記操作レバーが挿通するレバー操作窓を有する化粧カバーと、
前記操作レバーに貫通され前記レバー操作窓よりも小さいレバー貫通孔を有すると共に前記操作レバーの傾倒操作に伴って常に前記レバー操作窓を覆いながら前記化粧カバーに沿って摺動する略平板状の摺動カバーと、
前記摺動カバーを前記化粧カバーに押し当てる押し当て部材とをこの順に備えた操作レバーの取付構造。
【請求項4】
前記押し当て部材はその外周部を縮径方向に弾性変形可能とする切り欠き部を備える略Cリング状であってその外周部にテーパ面を有し、前記開口部の内側には前記押し当て部材が縮径した状態でそのテーパ面に当接するテーパ受け面を有するガイド部が設けられ、前記押し当て部材は、縮径した状態からの拡径に伴って、前記テーパ面に対する前記テーパ受け面のガイドにより、前記摺動カバー側に向けて摺動するように構成されている請求項1〜3の何れかに記載の操作レバーの取付構造。
【請求項5】
前記押し当て部材は外周部に雄ねじを有し、この雄ねじが螺合する雌ねじを有するガイド部が前記開口部の内側に設けられている請求項1〜3の何れかに記載の操作レバーの取付構造。
【請求項6】
前記操作レバーの基部においてその軸方向に移動可能に取り付けられた筒状部材と、この筒状部材を摺動カバーに当接する方向に付勢する付勢手段とを備えた請求項1〜5の何れかに記載の操作レバーの取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−209660(P2010−209660A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78703(P2009−78703)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】
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