説明

操作感触付与型入力装置

【課題】複数のボタンが縦横に配列して表示される場合において、縦横いずれか一方の方向に沿ってポインタを移動させる場合、他方の方向へのずれ込みが起こりにくくする。
【解決手段】操作感触付与型入力装置は、表示画面内のポインタPをユーザの操作に応じて移動させる際、各ボタンの内方に向けてポインタPを移動させる引込力を発生させている。例えば、複数のボタンが縦横に配列して表示されている画面内でユーザがボタンBS0内からX(横)方向に並んでいるボタンBS1〜BS3へポインタPを移動させようとする場合、X方向の引込力Fxを減衰させて縦方向へのずれ込みを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子機器や車載電装品等の入力デバイスとして利用することができる操作感触付与型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の操作感触付与型入力装置に関して、レバーやスティック等の操作部材をユーザが操作すると、その操作位置に応じて表示画面内でポインタを移動させるとともに、表示画面内でボタンの近くにポインタが位置すると、ボタンの内方に向けてポインタを引き込む制御を実行する先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。先行技術でいう引込力は、実際にユーザが操作している操作部材への外力(動作力)として付与される。このためユーザは、操作部材を通じてあたかもポインタがボタンの内方へ引き込まれていくかのような操作感覚を得ることができる。
【0003】
上記の先行技術では、ボタンの中心位置もしくは辺縁位置からポインタの位置までの距離に基づき引込先となる1つのボタンが決定され、その引込先のボタンの中心位置からポインタの位置までの距離に応じて引込力の大きさが設定されている。すなわち、画面内には現在の引込先となっているボタンの周囲に引込領域が形成され、この引込領域内でポインタはボタンの中心位置に向かって引き込まれるものとなっている。
【特許文献1】特開2006−268156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば複数のボタンが縦方向及び横方向(升目状)に配列されている表示画面内でユーザがポインタを縦方向又は横方向のどちらか一方の方向だけに移動させようとする場合、先行技術の手法では、ポインタが引込領域を抜け出す際にユーザは大きな反力を受けるため、それによってポインタの位置が他方の方向にずれ込むことがある。例えば、ユーザが現在のボタンから横方向に隣接する別のボタンに向かってポインタを移動させようとする場合、引込領域から抜け出す際に発生する引込力がユーザの操作に対する大きな反力となり、それによってユーザの操作が縦方向にぶれることがある。この場合、次の引込先となるボタンが横方向ではなく縦方向に隣接した他のボタンに決定されることがあり、その結果、ポインタの位置がユーザの意図に反して縦方向にずれ込むことがある。
【0005】
そこで本発明は、縦方向及び横方向に複数のボタンが配列して表示される場合において、縦横いずれか一方の方向に沿ってポインタを移動させる場合、他方の方向へのずれ込みが起こりにくくする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
すなわち本発明は、少なくとも縦方向及び横方向を含む2次元内で操作可能に設けられ、操作者による操作に応じて任意の操作位置に変位する操作部材と、この操作部材の操作位置を検出する操作位置検出手段と、操作部材に動作力を付与することで、操作者による操作とは別に操作部材の操作位置を変化させるアクチュエータと、所定の表示画面内にその縦方向及び横方向に配列して表示された複数のボタンの表示領域に関する情報を記憶する記憶手段と、操作位置検出手段により検出された操作部材の操作位置に基づき、表示画面内で操作部材の操作位置に対応した指示位置にポインタを表示させるための指示信号を出力するとともに、表示画面内でみて各ボタンの内方に向けてポインタを移動させる縦方向への引込力及び横方向への引込力をそれぞれ発生するべく操作部材の操作位置を縦方向及び横方向にそれぞれ変化させる態様でアクチュエータを駆動する制御手段とを備えた操作感触付与型入力装置である。
【0007】
その上で制御手段は、所定の条件に基づき表示画面上でポインタが縦方向又は横方向のうちいずれか一方の移動方向に沿ってボタンの表示領域内からその外方へ向けて移動される特定移動状態であるかを判断し、その結果、特定移動状態であると判断した場合、縦方向又は横方向のうちポインタの移動方向に対応するいずれか一方向への引込力の大きさを、特定移動状態であると判断しない場合(通常の場合)に発生させる引込力の大きさに比較して小さく設定するものである。
【0008】
上記のように本発明の入力装置は、アクチュエータを駆動することで操作部材に動作力を付与し、それによって表示画面に表示されているボタンの内方に向けてポインタを移動させる引込力を発生させている。このとき操作部材の操作位置は、表示画面内でポインタが表示される指示位置に対応しているので、アクチュエータの動作力で操作部材の操作位置が変化すると、その変化に連動して表示画面内でポインタの表示位置も移動する。このため操作者であるユーザは、表示画面内でのポインタの移動と連動して発生する操作部材への動作力から引込力を実感することができ、そこに明確な操作感触を見出すことができる。
【0009】
一方で引込力は、ボタンの表示領域内からその外方へ向けてポインタを移動させようとする場合(ボタンから抜け出させようとする場合)、ユーザにとっては操作に対する反力として覚知されることになる。したがって、発生させる引込力が大きければ大きいほど、ポインタを抜け出させる際の反力が大きく感じられるため、それだけポインタの自由な移動は制限されることになる。逆に言えば、あるボタンからポインタを抜け出させる場合は、より反力の小さい方向へ抜け出させる方が容易であることがわかる。
【0010】
そうすると、特に横方向に長いボタンについては、単純にその中心位置からポインタの指示位置までの距離に依存して引込力の大きさを設定すると、ボタンの横方向(長手方向)の辺縁部において縦方向の引込力が横方向の引込力より小さくなる。このため、横長のボタンについては基本的に横方向よりも縦方向へ抜け出させる方がユーザにとっての操作は比較的容易である。
【0011】
このような背景から、表示画面内に複数のボタンが縦方向及び横方向に配列して表示されている場合、たとえユーザが横方向への移動を意図していたとしても、その途中で縦方向にポインタがずれ込む現象が発生しやすくなる。
【0012】
そこで本発明の入力装置は、表示画面内に複数のボタンが縦方向及び横方向に配列して表示されている場合において、ユーザの操作に基づくポインタの移動がボタンの表示領域内からその外方に向かうものであり、そのときの移動方向が縦方向又は横方向のどちらか一方向に沿うものであれば、一方向に関して引込力の大きさを通常よりも小さくすることで、ポインタの移動を容易化している。また、他方向については特定移動状態と判断されない場合(通常)の大きさで引込力が発生するので、他方向よりも一方向への移動が相対的に容易化されることになる。
【0013】
これにより、例えばある1つのボタンからその横方向に隣接するボタンへの移動過程では、横方向への反力を小さくしてユーザの操作を容易化することにより、結果的に縦方向へのずれ込みを発生しにくくすることができる。また、横方向への反力を小さくした分、ユーザにとっては相対的に縦方向への反力が大きくなることから、横方向への移動中に操作部材の操作方向が縦方向にぶれたとしても、そのようなぶれが反力によって押し戻され(跳ね返され)、あたかも操作部材が横方向にだけ案内されているかのような操作感触を受けることになる。これにより、ユーザが主に横方向への移動を所望している場合、その意思に沿った操作感触の付与を実現することができる。
【0014】
また本発明において、制御手段は複数の制御態様を有する。第1の制御態様は、所定の条件として以下の内容を定めたものである。すなわち制御手段は、所定時間における表示画面内でのポインタの縦方向又は横方向のうちいずれか一方向への移動量が他方向への移動量より大きい場合、特定移動状態であると判断して、一方向への引込力の大きさを特定移動状態であると判断しない場合に発生させる引込力の大きさに比較して小さく設定することができる。
【0015】
この場合、縦方向と横方向のうち、ユーザがポインタを移動させようとしている一方向については、他方向に比較して所定時間あたりの移動量が大きくなる傾向にある。したがって、このような傾向を利用して条件判断を行えば、ユーザの意思を正確に判断した上で上記の制御を実現することができる。また、所定時間の長さを制御上で適切に設定することにより、ユーザによる操作部材の操作開始に伴って即座に条件判断を行い、上述した制御を迅速に実行することができる。
【0016】
第2の制御態様は、所定の条件として以下の内容を定めたものである。すなわち制御手段は、所定時間における表示画面内でのポインタの縦方向又は横方向のうちいずれか一方向への移動量が所定の移動量より大きい場合、特定移動状態であると判断して、一方向への引込力の大きさを特定移動状態であると判断しない場合に発生させる引込力の大きさに比較して小さく設定することができる。
【0017】
この場合も同様に、縦方向と横方向のうち、ユーザがポインタを移動させようとしている一方向については、所定時間あたりの移動量が全体的に大きくなる傾向にあり、その移動量が所定距離よりも大きい場合に条件を満たすと判断すれば、ユーザの意思を正確に判断した上で上記の制御を実現することができる。また、所定時間の長さや所定距離をそれぞれ制御上で適切に設定することにより、ユーザによる操作部材の操作開始に伴って即座に条件判断を行い、上述した制御を迅速に実行することができる。
【0018】
第3の制御態様は、所定の条件として以下の内容を定めたものである。すなわち制御手段は、所定時間における表示画面内でのポインタの縦方向又は横方向のうちいずれか一方向への移動量が他方向への移動量より大きく、かつ、所定の移動量より大きい場合、特定移動状態であると判断して、一方向への引込力の大きさを特定移動状態であると判断しない場合に発生させる引込力の大きさに比較して小さく設定することができる。なお、第3の制御態様において特定移動状態であると判断しない条件は、所定時間における表示画面内でのポインタの縦方向又は横方向のうちいずれか一方向への移動量が他方向への移動量より大きくないか、もしくは、所定の移動量より小さい場合である。
【0019】
第3の制御態様によれば、上述した第1及び第2の制御態様の各条件を合わせて判断することにより、より精細な制御を実現することができる。
【0020】
また本発明において、制御手段は、所定の条件に基づき特定移動状態であると判断した場合、縦方向又は横方向のうちポインタの移動方向に対応するいずれか一方向への引込力の大きさを他方向への引込力に比較して小さく設定するものとする。
【0021】
この場合、例えば横方向について制御手段が特定移動状態と判断し、横方向への引込力の大きさを通常よりも小さく設定した場合、それによって横方向で発生する引込力の大きさが縦方向で発生する引込力よりも小さくなる。したがって、この点でもユーザにとっては縦方向よりも横方向へポインタを移動させる操作が容易になるので、確実に縦方向へのずれ込みを抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の操作感覚付与型入力装置は、ユーザが表示画面内で縦横いずれか一方の方向にポインタを移動させる操作を容易にし、意思とは異なる方向へのずれ込みを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の操作感触付与型入力装置は、例えば、各種の電子機器(コンピュータ機器、オーディオ機器、ビデオ機器)をはじめ、カーナビゲーション装置等の車載電装品用の入力デバイス(ユーザインタフェース)として利用することができる。
【0024】
〔実施形態の概要〕
図1は、一実施形態の入力装置2が適用された車載部品を部分的に示す斜視図である。図1に示される車載部品は、例えばインストルメントパネル4、センタコンソール6及びフロアコンソール8等から構成されている。このうちインストルメントパネル4は、自動車の室内(フロントシートの前方)に車幅方向に沿って配置される内装品である。またセンタコンソール6は、インストルメントパネル4の下方に連結して配置される内装品であり、このセンタコンソール6は車幅方向でみて中央に位置する。そしてフロアコンソール8は、センタコンソール6に続いて自動車のフロアパネル上に配置される内装品であり、このフロアコンソール8は車室内で運転席と助手席(図示していない)との間に位置する。
【0025】
インストルメントパネル4には、例えば幅方向の中央位置に液晶ディスプレイ等の表示装置10が組み込まれている他、その両側にはエアコン(車内空調機)の噴出口12が設けられている。またインストルメントパネル4には、表示装置10の下方位置に各種のスイッチ類(参照符号省略)が埋め込まれている。これらスイッチ類は、例えばエアコンの温度設定や風量調節、図示しないオーディオ機器の音量調節、ラジオ放送の選局、オーディオトラックの変更等を行うためのものである。
【0026】
またセンタコンソール6には、例えば上段位置に音楽CD(コンパクトディスク)の出入口14が設けられている他、その下段位置にはシフトレバー16が設置されている。
【0027】
そしてフロアコンソール8には、本実施形態の入力装置2を構成する操作スティック20及びプッシュスイッチ22が設置されている。入力装置2はメカニカルボックス24を備えており、このメカニカルボックス24は操作スティック20及びプッシュスイッチ22に連なる機構部品を有している。
【0028】
上記の操作スティック20は、上記の表示装置10と連動してユーザ(運転者)の操作を受け付けるための操作部材である。またプッシュスイッチ22は、同じく表示装置10と連動してユーザの操作を受け付けるための入力デバイスである。
【0029】
具体的には、表示装置10の表示画面内にはポインタP(例えば十字ポインタ、十字カーソル)や各種のボタンBL,BSの画像が表示されており、ユーザが操作スティック20を任意の方向に傾ける操作を行うと、その操作に連動してポインタPが表示画面内を移動する。そして、いずれかのボタンBL,BS内にポインタPが移動した状態でユーザがプッシュスイッチ22を押し込む操作を行うと、そのボタンBL,BSに割り当てられたファンクションを選択することができる。
【0030】
なおこの例では、表示画面内で上段に表示されている3つのボタンBSにそれぞれ「TV」、「ラジオ」、「CD」のファンクションが割り当てられており、下段に表示されている横長のボタンBLには「ナビゲーション」のファンクションが割り当てられている。したがって、ユーザがいずれかのファンクションを選択する際は、操作スティック20を操作してポインタPを所望のファンクションに対応したボタンBL,BSまで移動させ、その状態でプッシュスイッチ22を操作すればよい。
【0031】
〔構造例〕
図2及び図3は、メカニカルボックス24の構造例を示す図である。以下、メカニカルボックス24の構造について説明する。
【0032】
図2中(A):ここにはメカニカルボックス24が平面視で示されている。メカニカルボックス24はケース体24aを備えており、このケース体24aは例えば中空の立方体形状をなしている。ケース体24aの上面には円形の開口24bが形成されており、この開口24bを通じて上記の操作スティック20がケース体24aの天板を上下方向に貫通して延びている。なお操作スティック20はノブ20a及びレバー20bからなり、レバー20bの頂部にノブ20aが取り付けられている。なお、ケース体24aは複数のパーツを組み合わせた構造であってもよい。
【0033】
また上記のプッシュスイッチ22は、ケース体24aの上面に設置されている。プッシュスイッチ22には例えばスイッチボックス22aが付属しており、このスイッチボックス22aには図示しないマイクロスイッチやこれに連なるスイッチ回路、配線等の電子部品がさらに付属する。
【0034】
ケース体24aの外面には、第1モータ26及び第2モータ28が取り付けられている。これら2つのモータ26,28の出力軸は、互いに直角をなしてケース体24aの内部に向けて延びている。また、各出力軸の延長線は操作スティック20の中心にて交差している。なおケース体24aには、各出力軸を挿通するための貫通孔(図中符号省略)が形成されている。
【0035】
また第1モータ26及び第2モータ28には、それぞれ第1回転センサ30、第2回転センサ32が取り付けられている。これら回転センサ30,32は、それぞれ対応するモータ26,28の回転角及び回転方向に応じた検出信号を出力する。このような回転センサ30,32は、例えば2つの受光素子を備えて回転方向も検出可能なフォトインタラプタとスリット付ディスクとの組み合わせで構成することができる。
【0036】
図2中(B):ここにはメカニカルボックス24の縦断面(図2中(A)のB−B線に沿う断面)が示されている。ケース体24aの内部には、第1駆動部材34が収容されており、この第1駆動部材34の一端部は第1モータ26の出力軸26aに連結されている。また第1駆動部材34の他端部は、第1モータ26と反対側でケース体24aの側板に回転自在に支持されている。他端部が支持される位置は、出力軸26aの延長線上にある。このため第1駆動部材34は、第1モータ26の出力軸26aの回転に伴って一体に回転することができる。なお、ここでは出力軸26aと第1駆動部材34とを直結した例を挙げているが、これらの間に減速機構を介在させてもよい。
【0037】
第1駆動部材34の中央位置には、軸部34aが形成されている。この軸部34aは出力軸26aと直交する方向に延びている。レバー20bには軸受孔20cが形成されており、軸部34aはレバー20bの軸受孔20c内を貫通している。この状態で、レバー20bは軸部34aによって図中の左右方向にスイング(いわゆる揺動)可能に支持されている。ただし、これ以外についてレバー20bの可動方向はなく、レバー20bは第1駆動部材34が回転すると、これに伴って一体に回転(図中の前後方向にスイング)する。
【0038】
図3中(C):ここにはメカニカルボックス24の別の縦断面(図2中(A)のC−C線に沿う断面)が示されている。上記の第1駆動部材34とは別に、ケース体24aの内部には第2駆動部材36が収容されており、この第2駆動部材36の一端部は第2モータ28の出力軸28aに連結されている。また第2駆動部材36の他端部は、第2モータ28と反対側でケース体24aの側板に回転自在に支持されている。他端部が支持される位置は、出力軸28aの延長線上である。このため第2駆動部材36は、第2モータ28の出力軸28aの回転に伴って一体に回転する。ここでも同様に、出力軸28aと第2駆動部材36との間に減速機構を介在させてもよい。
【0039】
第2駆動部材36は、その中央部分が下方へクランク状に折れ曲がっており、これにより第2駆動部材36と第1駆動部材34との間には適度なクリアランスが確保されている。そして第2駆動部材36には、このクランク状の部分にガイド溝36aが形成されており、このガイド溝36a内にレバー20bの下端部が挿入されている。ガイド溝36aは第2駆動部材36の長手方向(図中の左右方向)に延びており、その幅はレバー20bの外径よりも僅かに大きい。またガイド溝36aの長さは、第1駆動部材34の回転に伴うレバー20bの下端部の可動範囲よりも大きい。このためレバー20bがスイングする際、その下端部はガイド溝36a内をその長手方向へ自由に移動することができる。またレバー20bが最大角度までスイングしても、その下端部はガイド溝36aから抜け出ることはない。ただし、ガイド溝36a内では長手方向以外にレバー20bの可動方向はなく、レバー20bは第2駆動部材36が回転すると、それに伴って一体に回転(図中の前後方向にスイング)する。
【0040】
図3中(D):ここにはメカニカルボックス24の横断面(図2中(A)のD−D線に沿う断面)が示されている。上記のようにメカニカルボックス24は、第1及び第2駆動部材34,36の回転に伴い、それぞれの可動範囲内でレバー20bを2方向にスイングさせることができる。したがってメカニカルボックス24は、第1及び第2モータ26,28をそれぞれ回転させることで、レバー20bの可動範囲内で操作スティック20をケース体24aに対して任意の方向に任意の角度だけ傾斜させることができる。
【0041】
〔制御に関する構成〕
図4は、入力装置2の制御に関する構成を概略的に示すブロック図である。入力装置2は制御ユニット40を備えており、この制御ユニット40は、CPU42をはじめROM44やRAM46等のメモリデバイスを有する制御用コンピュータである。また制御ユニット40は、入力回路48や出力回路50等のドライバや車両内部のネットワークに接続するための通信インタフェース51を有する他、図示しないクロック発生回路や割り込みコントローラ等の周辺ICを有している。
【0042】
上記の第1及び第2モータ26,28は、この制御ユニット40により動作を制御されている。すなわち制御ユニット40は、第1及び第2モータ26,28にそれぞれ駆動信号を印加して、出力軸26a,28aをそれぞれ決まった回転方向へ必要な回転角だけ回転させるとともに、必要なトルクを発生させる。これにより、操作スティック20に対して動作力が付与されることになる。このときの動作力(ベクトル量)の大きさと方向は、モータ26,28の回転角、回転方向及びその時のトルクによって決定される。また制御ユニット40は、各回転センサ30,32から出力される検出信号に基づいて、各モータ26,28の回転角及び回転方向を検出することができる。なお制御ユニット40は、例えば上記のインストルメントパネル4内に設置されている。
【0043】
〔入力対象システム〕
入力装置2の制御ユニット40は、例えば自動車の車載電装システム52に対してユーザの入力操作に応じた指示信号を出力する。制御ユニット40は、上記の通信インタフェース51により車内のネットワークを通じて車載電装システム52との通信を行うことができる。なお車載電装システム52は、例えば自動車のナビゲーション装置や、これと連動してエアコンやオーディオ機器、テレビ等を作動させる公知のシステムである。
【0044】
また上記の表示装置10は、車載電装システム52の一部として機能する。制御ユニット40から車載電装システム52に出力(送信)される指示信号は、表示装置10の表示画面内でポインタPを任意の方向に移動させたり、各種のボタンBL,BSをクリックしたりするユーザの操作(意思)を反映したものとなる。
【0045】
〔基本動作〕
このような入力装置2を車載電装システム52の入力デバイスに適用することで、例えば以下の基本動作を実現することができる。
【0046】
先ず入力装置2の制御ユニット40は、各センサ30,32からの検出信号に基づいて現時点での操作スティック20の操作位置を検出し、その検出結果に対応した指示位置を指示信号として出力する。操作スティック20の操作位置はリアルタイムで検出され、その都度、リアルタイムな指示位置が指示信号として車載電装システム52に送信される。
【0047】
また制御ユニット40は、ユーザによりプッシュスイッチ22が操作されると、その操作信号を車載電装システム52に向けて出力する。プッシュスイッチ22の操作信号は、例えば外部割り込み信号として車載電装システム52に入力される。
【0048】
車載電装システム52の制御部(図示していない)は、制御ユニット40から受け取ったリアルタイムな指示位置に基づいて表示装置10にポインタPを表示する制御を実行する。またシステム52の制御部は、プッシュスイッチ22の操作信号に基づいて各種のボタンBL,BSに対応するファンクションの選択又は非選択を決定する制御を実行する。
【0049】
また車載電装システム52からは、現在表示中である各種のボタンBL,BSに関する表示情報が制御ユニット40に提供される。この情報は、表示装置10の表示画面を2次元平面(x−y座標面)としたとき、そのとき表示している各種のボタンBL,BSの位置(中心座標)とその表示領域の大きさ(縦方向及び横方向の長さ)を表すものである。制御ユニット40は、システム52から提供される表示情報を例えばRAM46に記憶するとともに、現在のポインタPの指示位置に関する情報(指示点の座標)を合わせて記憶する。また、システム52において各種のボタンBL,BSの表示位置や大きさが変化すると、それに応じて表示情報は更新される。
【0050】
あるいは、各種のボタンBL,BSの表示情報を予め制御ユニット40のROM44に記憶させておき、システム52からは現在表示中のボタンの種類(例えばボタン番号)だけを受け取って、制御ユニット40はROM44から対応するボタンの表示情報を読み出すこととしてもよい。いずれにしても、制御ユニット40が各種のボタンBL,BSに関する表示情報を記憶することで、自身のメモリ空間(RAM46)上で各ボタンBL,BSの表示領域及びポインタPの指示位置を認識することができる。
【0051】
〔引込力の発生〕
本実施形態の入力装置2は、ユーザに操作感覚を付与するタイプの入力装置である。操作感覚は、上記のように操作スティック20に動作力を付与することでユーザに実感させることができる。特に本実施形態では、表示装置10の表示画面内で現在のポインタPの指示位置と各ボタンBS,BLとの位置関係から引込先となるいずれかのボタンBS,BLを決定し、そのいずれかのボタンBL,BSの内方に向けてポインタPを移動させる引込力を発生させるべくモータ26,28の動作を制御している。これにより、ユーザは操作スティック20を操作しながら自分でポインタPを移動させつつ、その過程であたかも各ボタンBL,BSの内方にポインタPが引き込まれていくかのような操作感覚を受けることになる。
【0052】
〔制御方法〕
次に、制御ユニット40において上記の基本動作や引込力の発生を実現するための具体的な制御方法について説明する。
【0053】
〔デバイス管理処理〕
図5は、制御ユニット40のCPU42が実行するデバイス管理処理の手順例を示すフローチャートである。このデバイス管理処理は、例えばCPU42に内蔵のROMにメイン制御プログラムとして格納されている。制御ユニット40の電源投入(自動車のメインスイッチON)に伴いCPU42が起動すると、CPU42はデバイス管理処理を実行する。
【0054】
デバイス管理処理は、例えばCPU42が定常的に実行する複数の処理(プログラムモジュール)の集合として構成されている。CPU42はデバイス管理処理に記述された順序で複数の処理を実行する。以下、それぞれの概要を説明する。
【0055】
ステップS10:先ずCPU42は、初期設定処理を実行する。この処理は、各センサ30,32からの検出信号に基づき、各モータ26,28の回転に関する基準位置を定義(イニシャライズ)するための処理である。CPU42は、この処理を通じて各モータ26,28の基準位置を定義するとともに、この基準位置を操作スティック20の基準位置(中立位置)に対応付けて定義する。ここで定義した基準位置は、例えばRAM46にセーブされて制御ユニット40の電源遮断後もバックアップされる。なお、この処理は毎回の起動時に必ず行うのではなく、ある程度の期間(例えば10回の起動)をおいて実行してもよい。
【0056】
ステップS20:次にCPU42は、座標取得処理を実行する。この処理は、現在の操作スティック20の操作位置に対応する座標(x−y座標)を取得するためのものである。例えば、CPU42は各センサ30,32から出力された検出信号に基づき、先の初期設定処理で定義した基準位置から各モータ26,28がどの方向へどれだけの回転角だけ回転しているかを演算する。そしてCPU42は、このときの回転方向と回転角から、仮想平面上で操作スティック20が基準位置からどれだけ変位しているかを演算し、その結果から現在の操作位置の座標を取得する。なお、ここで取得した座標が表示画面内でのポインタPの指示位置となる。
【0057】
ステップS30:次にCPU42は、信号出力処理を実行する。この処理は、入力装置2の制御ユニット40から車載電装システム52に対して指示信号を出力するためのものである。具体的には、CPU42は先の座標取得処理で取得した座標、つまりポインタPの指示位置を制御ユニット40からの指示信号として車載電装システム52に転送する。外部の車載電装システム52は、この指示信号に基づいて表示装置10におけるポインタPの表示位置を制御する。
【0058】
ステップS40:続いてCPU42は、引込力演算処理を実行する。この処理は、先の座標取得処理で取得した現在の座標(x,y)に基づき引込先となるいずれかのボタンBS,BLを決定するとともに、座標(x,y)をパラメータとして引込力の大きさを計算(設定)するためのものである。
【0059】
例えば、CPU42は座標(x,y)と各ボタンBS,BLの距離に基づいていずれか1つのボタンBS,BLを引込先として決定すると、そのときのx軸方向におけるボタンの中心位置(座標x)とポインタの指示位置(座標x)との距離Dx(=x−x)を計算する。続いてCPU42は、y軸方向におけるボタンの中心位置(座標y)とポインタの指示位置(座標y)との距離Dy(=y−y)を計算する。そしてCPU42は、算出した距離DxとX方向に関する引込力の大きさとの対応関係から引込力Fx(スカラー量)を計算する。この計算には、例えば予め用意されたFx−x線図(関数)を用いることができる。またCPU42は、算出した距離DyとY方向に関する引込力の大きさとの対応関係から引込力Fy(スカラー量)を計算する。ここでも同様に、予め用意されたFy−y線図(関数)を用いることができる。なお、現在の座標(x,y)に対して特に引込先となるボタンが存在しない場合、CPU42は上記の計算を実行しない(引込力Fx=0,Fy=0)。
【0060】
ステップS50:そしてCPU42は、アクチュエータ駆動処理を実行する。この処理は、先の引込力演算処理の算出結果に基づいて各モータ26,28を駆動することにより、実際に引込力を発生させるための処理である。
【0061】
ここでは、例えばCPU42は、先の引込力演算処理で算出したX方向への引込力Fxに基づいて第1モータ26を駆動するとともに、同じく算出したY方向への引込力Fyに基づいて第2モータ28を駆動する。これにより、操作スティック20に対して実際に動作力が付与される結果、2つの引込力の合成引込力(ベクトル量)が発生する。このときの合成引込力がユーザに操作感触として覚知される。なお、上記のように引込先となるボタンが存在しない場合、CPU42はいずれのモータ26,28も駆動しない。
【0062】
またこの間にプッシュスイッチ22から操作信号(ON信号)が入力されると、CPU42は割込イベント処理を実行して上記のように車載電装システム52に対する外部割り込み信号を送信する。
【0063】
制御ユニット40のCPU42が以上の処理を定常的に実行することで、入力装置2において上記の基本動作や操作感覚を付与する動作が実現される。また本実施形態では、引込力の発生に際して制御ユニット40が別途の引込力調整処理を行うことにより、表示画面の内容に適した引込力の調整機能を実現している。以下、本実施形態の調整機能について説明する。
【0064】
図6は、表示装置10により複数のボタンを配列して表示した画面の一例を示す図である。例えば、ユーザが車載電装システム52に対して50音で文字入力を行う場合、表示装置10の画面内に「あ」〜「ん」の平仮名を表す複数のボタンBS(一部のみ符号を付す)が縦方向及び横方向に配列して表示される。またボタンBSの配列中には、濁音符「゛」や半濁音符「゜」を表すものや、長音符号「ー」を表すもの、空白の記号「_」を表すもの等が含まれている。
【0065】
この他に表示画面内の上部位置には、例えば文字入力行Lが表示される。この文字入力行Lには、入力途中の平仮名や符号、記号等が表示されるものとなっている。また表示画面内でボタンBSの配列の下方には、例えば入力ファンクションとして「消去」や「後退」、「入力完了」の機能にそれぞれ対応した3つのボタンBLが表示されている。さらに表示画面内の右上位置には、操作ファンクションとして1つ前の画面に戻る意味の矢印記号を表すボタンBLが表示されている。なお、各ボタンBS,BLに対応する文字や機能はその他のものであってもよい。
【0066】
各種のボタンBS,BLに対応する文字の入力やファンクションの実行は、上記のように表示画面内でポインタPをいずれかのボタンBS,BL内に位置付けた状態で、プッシュスイッチ22をユーザが押下することで行われる。このためユーザは、文字の入力やファンクションの実行を行う場合、表示画面内でポインタPを目的のボタンBS,BLに向けて移動させるべく操作スティック20を操作することになる。
【0067】
このとき、ボタンBSの配列内にポインタPが位置した状態で、例えばユーザがポインタPを横方向へ移動させようとした場合を想定する。すなわち図中に実線の矢印で示すように、平仮名の「る」を表すボタンBS(図中符号なし)内から「く」を表す別のボタンBS(図中網掛け)まで右方向にある程度の距離(7コマ分)だけポインタPを移動させる場合である。
【0068】
上記の基本動作では、現在のボタンBSから全方向(縦横斜めの8方向)へ自由な移動が可能であり、ポインタPはこの後の指示位置(座標)の変化次第で、その周囲に位置する8つのボタンBSのいずれについても次の引込先として決定される可能性がある。この場合、横方向への移動中にユーザによる操作スティック20の操作方向が縦方向にぶれると、それによって上段や下段のボタンBSが次の引込先となり、その結果、ポインタPは上段や下段のボタンBSに引き込まれるため、図中に破線の矢印で示すように、ある程度の距離を移動していく過程でポインタPが縦方向にも移動し、結果的にポインタPが目的位置から上下(この例では「か」、「こ」等のボタンBS)にずれ込むことがある。
【0069】
そこで本実施形態では、制御ユニット40が引込力演算処理において移動方向別の調整を行うことにより、ポインタPの移動方向が主に横方向又は縦方向のいずれかである場合、そのときのユーザの意思を反映して引込力の大きさを適宜に調整する機能を有している。
【0070】
〔引込力調整処理〕
図7は、制御ユニット40のCPU42が実行する引込力調整処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、例えば上述したデバイス管理処理とは別に一定の割り込み周期(例えば数ミリ秒周期)で実行されている。以下、各手順に沿って引込力調整処理の内容を説明する。
【0071】
ステップS400:先ずCPU42は、現在の引込力の調整パラメータが有効であるか否かを確認する。調整パラメータは、縦方向又は横方向のいずれかについて引込力の大きさを通常よりも減衰させるための変数であり、例えば「0」〜「99」の調整パラメータを受信していた場合、CPU42は調整パラメータが有効であると判断する(Yes)。
【0072】
ここで調整パラメータは、表示装置10による現在表示中の画面の内容に応じて適宜、車載電装システム52から制御ユニット40に送信されるものである。例えば、先の図6に示したように画面内に複数のボタンBSを縦横に配列して表示する場合、車載電装システム52は「0」〜「99」のいずれかの調整パラメータを制御ユニット40に送信する。そして制御ユニット40のCPU42は、車載電装システム52から調整パラメータを受信すると、その都度、最新の調整パラメータをRAM46の変数領域に格納する。
【0073】
なお、例えば画面内に表示されるボタンBS,BLの数が少なく、互いの位置が離れている場合(図1参照)のように、画面内でのボタンBS,BLの配列上、特に引込力の調整が必要でなければ、車載電装システム52は調整パラメータとして「100」を制御ユニット40に送信する。この場合、CPU42は調整パラメータが有効でないと判断する(No)。
【0074】
ステップS402:調整パラメータが有効でなければ(ステップS400:No)、CPU42は通常状態を維持したまま定常のデバイス管理処理に復帰する。通常状態では特に引込力の調整は行われないので、上述した基本動作がそのまま適用されることになる。これに対し、調整パラメータが有効であると判断した場合(ステップS400:Yes)、CPU42は以下の手順を実行する。
【0075】
ステップS404:調整パラメータが有効である場合、CPU42は内蔵のタイマが現在カウント中であるか否かを確認する。現時点で内蔵タイマがカウント中でなければ(No)、次にCPU42はステップS406を実行する。
【0076】
ステップS406:CPU42は、移動前座標を取得する。ここで取得する座標は、内蔵タイマのカウント開始前における操作スティック20の操作位置に対応する座標(x−y座標)である。取得した移動前座標は、例えばRAM46のバッファ領域に保存される。
【0077】
ステップS408:次にCPU42は、内蔵のタイマをリセット(t=0)する。内蔵タイマはリセットされると始動し、その後の経過時間に応じてタイマ値をインクリメントする。
【0078】
ステップS410:そしてCPU42は、内蔵タイマの値(t)を参照してタイマが満了したか否かを確認する。具体的には、現在のタイマ値(t)が予め定められた所定時間(T:例えば数十ms)に達しているか否か(t≧T)を確認する。未だタイマが満了していなければ(No)、CPU42は引込力調整処理から定常のデバイス管理処理に復帰する。
【0079】
次回以降の割り込み周期では、既に内蔵タイマがカウント中であるので(ステップS404:Yes)、CPU42は引き続き内蔵タイマの値が所定時間に達したか否かの確認を繰り返す。この間、ユーザの操作に応じて操作スティック20の操作位置が変化すると、その都度、座標取得処理(図5中のステップS20)で取得される現在の座標も変化する。そして、タイマが満了したことを確認すると(Yes)、CPU42は次のステップS412に進む。
【0080】
ステップS412:この場合、CPU42は、内蔵タイマのカウントを停止する。
ステップS414:そしてCPU42は、移動後座標を取得する。ここで取得する座標は、先のステップS406で移動前座標を取得してから所定時間経過後における操作スティック20の操作位置に対応する座標(x−y座標)となる。
【0081】
ステップS416:CPU42は、移動前座標と移動後座標からX方向(横方向)の移動量ΔXとY方向(縦方向)の移動量ΔYをそれぞれ算出し、以下の条件式(1),(2)をともに満たすか否かを判断する。
ΔX>ΔY/2・・・(1)
ΔX≧D ・・・(2)
【0082】
条件式(2)中、比較値Dは所定距離(判断閾値)を表す。すなわちタイマ満了までの間の移動量ΔXが所定距離に満たない場合、引込力の調整は行わないこととしている。なお所定距離は、例えばユーザが単に操作スティック20に手を触れているだけの状態(別のボタンBSへ移動しない場合)でも発生し得る移動量の上限値とすることができる。いずれにしても、条件式(1),(2)をともに満足する(特定移動状態)と判断した場合(Yes)、CPU42は次にステップS418を実行する。
【0083】
ステップS418:この場合、CPU42は制御上の内部ステータスとしてX方向(横方向)の引込力減衰状態を設定する。X方向引込力減衰状態を設定すると、CPU42はこれ以降の引込力演算処理(図5中のステップS40)においてX方向への引込力を減衰調整して演算を行う。なお、減衰調整については具体例を挙げて後述する。
【0084】
ステップS420:一方、上記の条件式(1),(2)をともに満足しなかった場合(ステップS416:No)、CPU42は以下の条件式(3),(4)をともに満たすか否かを判断する。なお、比較値Dは上記の所定距離と同じでよい。
ΔY>ΔX/2・・・(3)
ΔY≧D ・・・(4)
【0085】
そして、条件式(3),(4)をともに満足する(特定移動状態)と判断した場合(Yes)、CPU42は次にステップS422を実行する。
【0086】
ステップS422:この場合、CPU42は制御上の内部ステータスとしてY方向(縦方向)の引込力減衰状態を設定する。Y方向引込力減衰状態を設定すると、CPU42はこれ以降の引込力演算処理(図5中のステップS40)においてY方向への引込力を減衰調整して演算を行う。
【0087】
これに対し、条件式(3),(4)をともに満足しなかった場合(ステップS420:No)、CPU42は新たに内部ステータスを設定することなくデバイス管理処理に復帰する。この場合、それまでの内部ステータスとして通常状態が設定されていれば(ステップS402)、そのまま通常状態が維持される。あるいは、既にX方向引込力減衰状態が設定されていれば(ステップS418)、引き続きその状態が維持されることになり、また、既にY方向引込力減衰状態が設定されていれば(ステップS422)、引き続きその状態が維持されることになる。したがって一度設定された内部ステータスは、その他の状態に遷移するまで継続される。
【0088】
〔引込力調整機能の図解〕
図8は、複数のボタンBSが配列して表示された画面内でのポインタPの位置と、そのときのX方向及びY方向にそれぞれ発生する引込力との関係を示した図である。
【0089】
〔表示領域内〕
例えば、初期状態で画面内に表示されている1つのボタンBS0内にポインタPが位置しているとする。この場合、ボタンBS0が現在の引込先として決定され、その表示領域内では図8中のFx−x線図(引込力LF1)に示すように、その中心位置C(x,y)からポインタPの現在位置までのX軸方向の距離に比例してX方向(横方向)への引込力Fxが発生する。またY方向に関しては、図8中のFy−y線図(引込力LF2)に示すように、中心位置C(x,y)からのY軸方向の距離に比例してY方向(縦方向)への引込力Fyが発生する。したがってこの例では、ボタンBS0の表示領域内ではポインタPが中心位置Cから遠ざかるに連れて引込力Fx,Fyの大きさがそれぞれ増していく。なお引込力Fxは便宜上、表示画面内でみた左方向を正とし、右方向を負として表している。また引込力Fyについては便宜上、表示画面内でみた下方向を正とし、上方向を負として表している。
【0090】
この状態で、例えばユーザが操作スティック20を右方向に操作していくと、図8中のFx−x線図に示すように、ポインタPがボタンBS0の右辺に達したところでX方向への引込力Fxが最大となり、この引込力Fxが操作スティック20を通じて反力としての操作感触をユーザに付与する。
【0091】
この後、反力に抗してユーザが操作スティック20をさらに右方向に操作し、ポインタPがボタンBS0の表示領域外に移動すると、ボタンBS0の境界(辺縁)からの距離に応じてX方向への引込力Fxは減少し、隣接するボタンBS1との中間位置で引込力Fxは0となる。このように、ボタンBS0の表示領域外であっても、その周囲で引込力Fxが0となる位置(この例ではボタンBS0の右辺とボタンBS1の左辺との中間位置)まではボタンBS0の引込領域となっている。
【0092】
そして、ポインタPが右方向に隣接するボタンBS1の引込領域内に移動すると、ボタンBS1が次の引込先として決定される。この場合、ポインタPの指示位置からボタンBS1の境界(辺縁)までの距離に基づきボタンBS1の内方(中心位置C1)に向かうX方向(図中右方向)への引込力Fxが次第に大きくなり、ポインタPがボタンBS1の境界位置(表示領域内)まで移動すると、引込力Fxは最大となる。このときの引込力Fxが操作スティック20を積極的に動作させる動作力となる。したがって、ユーザにはあたかも自然にポインタPがボタンBS1の内方へ引き込まれていくかのような操作感触が付与されることになる。
【0093】
以上は基本動作の中での説明であるが、本実施形態ではポインタPの移動方向が主にX方向(横方向)である場合、上述したように引込力調整処理においてX方向引込力減衰状態が設定される(図7中のステップS418)。
【0094】
〔X方向引込力減衰状態〕
X方向引込力減衰状態では、CPU42は先の引込力演算処理(図5中のステップS40)において、通常状態よりもX方向への引込力Fxを減衰調整する。具体的には、図8中のFx−x線図において、実線で示される通常状態の引込力LF1を、破線で示される減衰状態の引込力LF1’として演算を行う。減衰状態の引込力LF1’は、通常状態の引込力LF1に比較して傾斜が緩やかであり、それだけ全体的に大きさが減衰されている。
【0095】
なお、ここでの減衰率は上述した調整パラメータの値(0〜99)に基づいて設定することができる。例えば、調整パラメータの値が「50」であれば、CPU42は通常状態での引込力LF1の傾きを50%低下させて減衰状態の引込力LF1’を設定することができる。したがって、調整パラメータが極端に小さい値(例えば「0」)になると、引込力LF1’はx軸に略一致する。
【0096】
一方、X方向引込力減衰状態で、上記のようにCPU42はY方向の引込力について減衰調整を行わない。したがってY方向の引込力Fyについては、CPU42は図8中のFy−y線図に示される通常の引込力LF2に基づいて演算を行うことになる。
【0097】
この結果、ポインタPの横方向への移動中は通常よりも横方向への引込力が小さく設定されるため、ユーザにとっては通常よりも横方向への反力が軽減されたように感じられることになる。また、合わせて縦方向への引込力よりも横方向への引込力が相対的に小さくなり、この点でもユーザにとっては横方向への反力が比較的小さく感じられることになる。したがって、ユーザは操作スティック20を右方向に移動させながら、順次、横方向に隣接するボタンBS1〜BS3に向けてポインタPを容易に移動させることができる。
【0098】
この間、例えば図中に破線の矢印で示すように、たとえユーザによる操作スティック20の操作が上方向にぶれたとしても、上記のように縦方向への引込力は通常状態と同じ大きさで発生するため、これが反力となって操作スティック20を下方向に押し戻す(跳ね返らせる)ことができる。これにより、ポインタPの移動方向を横方向に向けて適宜修正することで、ユーザの意思を反映した操作感触を付与することができる。
【0099】
以上の説明は横方向への移動の場合の内容であるが、ポインタPの移動方向が主にY方向(縦方向)である場合も同様である。すなわち、この場合は引込力調整処理においてY方向引込力減衰状態が設定される(図7中のステップS422)ため、CPU42は先の引込力演算処理(図5中のステップS40)において、通常状態よりもY方向への引込力Fyを減衰調整する。
【0100】
この場合、ポインタPの縦方向への移動中は通常よりも縦方向への引込力が小さく設定されるため、ユーザにとっては通常よりも縦方向への反力が軽減されたように感じられることになる。また、合わせて横方向への引込力よりも縦方向への引込力が相対的に小さくなり、この点でもユーザにとっては縦方向への反力が比較的小さく感じられることになる。したがって、ユーザは操作スティック20を縦方向に移動させながら、順次、縦方向に隣接する他のボタンに向けてポインタPを容易に移動させることができる。
【0101】
また同様に、この間にユーザによる操作スティック20の操作が横方向にぶれたとしても、横方向への引込力は通常状態と同じ大きさで発生しているため、これが反力となって操作スティック20を逆方向(例えば右方向にぶれた場合は左方向)に押し戻すことができる。これにより、ポインタPの移動方向を縦方向に向けて適宜修正することで、同じくユーザの意思を反映した操作感触を付与することができる。
【0102】
〔その他の実施形態〕
図7の引込力調整処理において、X方向又はY方向の引込力減衰状態を設定するか否かを判断するための条件を以下のように設定してもよい。
【0103】
〔その他の条件1〕
例えば、図7中のステップS416では条件式(1)を満たすか否かだけを判断し、またステップS420では条件式(3)を満たすか否かだけを判断してもよい。この場合、X方向への移動量ΔXがY方向への移動量ΔYの2分の1より大きい場合にX方向引込力減衰状態が設定され、Y方向への移動量ΔYがX方向への移動量ΔXの2分の1より大きい場合にY方向引込力減衰状態が設定される。
【0104】
〔その他の条件2〕
あるいは、図7中のステップS416では条件式(2)を満たすか否かだけを判断し、またステップS420では条件式(4)を満たすか否かだけを判断してもよい。この場合、X方向への移動量ΔXが所定距離以上の場合にX方向引込力減衰状態が設定され、Y方向への移動量ΔYが所定距離以上の場合にY方向引込力減衰状態が設定されることになる。
【0105】
〔その他の条件3〕
また、図7中のステップS416では条件式(1)を満たすか否かだけを判断し、ステップS420では条件式(4)を満たすか否かだけを判断してもよい。この場合、X方向については移動量ΔXがY方向への移動量ΔYの2分の1より大きい場合にX方向引込力減衰状態が設定されるが、Y方向については、移動量ΔYが所定距離以上の場合にY方向引込力減衰状態が設定される。
【0106】
〔その他の条件4〕
逆に、図7中のステップS416では条件式(2)を満たすか否かだけを判断し、ステップS420では条件式(3)を満たすか否かだけを判断してもよい。この場合、X方向については、移動量ΔXが所定距離以上の場合にX方向引込力減衰状態が設定されるが、Y方向については移動量ΔYがX方向への移動量ΔXの2分の1より大きい場合にY方向引込力減衰状態が設定される。
【0107】
〔その他の条件5〕
また、図7中のステップS416では条件式(1),(2)をともに満たすか否かを判断するが、ステップS420では条件式(4)を満たすか否かだけを判断してもよい。この場合、X方向については移動量ΔXがY方向への移動量ΔYの2分の1より大きく、かつ、移動量ΔXが所定距離以上の場合にX方向引込力減衰状態が設定されるが、Y方向については、移動量ΔYが所定距離以上の場合にY方向引込力減衰状態が設定される。
【0108】
〔その他の条件6〕
上記と逆に、図7中のステップS416では条件式(2)を満たすか否かだけを判断し、ステップS420では条件式(3),(4)をともに満たすか否かを判断してもよい。この場合、X方向については移動量ΔXが所定距離以上の場合にX方向引込力減衰状態が設定されるが、Y方向については移動量ΔYがX方向への移動量ΔXの2分の1より大きく、かつ、移動量ΔYが所定距離以上の場合にY方向引込力減衰状態が設定される。
【0109】
また本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。一実施形態では、ボタンBSの形状を横長の長方形としているが、ボタンBSは縦長の長方形であってもよいし、正方形であってもよい。また、ボタンBSは四角形に限らず、その他の多角形や円形、楕円形、長円形であってもよい。
【0110】
また、X方向及びY方向の位置と引込力との関係(Fx−x線図及びFy−y線図)は図示の例に限らず、その他の関係(例えば二次曲線的な関係)を適用してもよい。
【0111】
一実施形態では、X方向又はY方向の引込力だけを減衰させているが、例えばX方向引込力減衰状態ではX方向の引込力をある程度まで減衰させつつ、Y方向の引込力を通常より増加してもよいし、Y向引込力減衰状態ではY方向の引込力をある程度まで減衰させつつ、X方向の引込力を通常よりも増加してもよい。
【0112】
あるいは、X方向引込力減衰状態ではY方向の引込力を通常よりも増加することで、相対的にX方向への引込力が通常よりも減衰された状態としてもよい。同様にY方向引込力減衰状態ではX方向の引込力を通常よりも増加することで、相対的にY方向への引込力が通常よりも減衰された状態としてもよい。
【0113】
また一実施形態では、定常のデバイス管理処理(図7)の中で座標取得処理(ステップS20)、信号出力処理(ステップS30)、引込力演算処理(ステップS40)及びアクチュエータ駆動処理(ステップS50)を実行しているが、これら一連の処理をタイマ割込処理の中で実行してもよい。
【0114】
一実施形態ではスイング式の操作スティック20を例示しているが、操作スティック20が平面上で2次元方向にスライドする構造であってもよい。この場合、アクチュエータとして直動式のものを用いてもよいし、モータの回転運動を直線運動に変換する伝達機構を用いてもよい。
【0115】
その他、図示とともに示した各種部材の形状や配置はいずれも好ましい例であり、本発明の実施に際してこれらを適宜変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】一実施形態の入力装置が適用された車載部品を部分的に示す斜視図である。
【図2】メカニカルボックスの構造例を示す図(1/2)である。
【図3】メカニカルボックスの構造例を示す図(2/2)である。
【図4】入力装置の制御に関する構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】デバイス管理処理の手順例を示すフローチャートである。
【図6】複数のボタンを配列して表示した画面の一例を示す図である。
【図7】引込力調整処理の手順例を示すフローチャートである。
【図8】画面内でのポインタPの位置とX方向及びY方向にそれぞれ発生する引込力との関係を示した図である。
【符号の説明】
【0117】
2 入力装置
10 表示装置
20 操作スティック
20a ノブ
20b レバー
22 プッシュスイッチ
24 メカニカルボックス
26 第1モータ
28 第2モータ
30 第1回転センサ
32 第2回転センサ
40 制御ユニット
42 CPU
44 ROM
46 RAM
52 車載電装システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも縦方向及び横方向を含む2次元内で操作可能に設けられ、操作者による操作に応じて任意の操作位置に変位する操作部材と、
前記操作部材の操作位置を検出する操作位置検出手段と、
前記操作部材に動作力を付与することで、操作者による操作とは別に前記操作部材の操作位置を変化させるアクチュエータと、
所定の表示画面内にその縦方向及び横方向に配列して表示された複数のボタンの表示領域に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記操作位置検出手段により検出された前記操作部材の操作位置に基づき、前記表示画面内で前記操作部材の操作位置に対応した指示位置にポインタを表示させるための指示信号を出力するとともに、前記表示画面内でみて前記各ボタンの内方に向けて前記ポインタを移動させる縦方向への引込力及び横方向への引込力をそれぞれ発生するべく前記操作部材の操作位置を縦方向及び横方向にそれぞれ変化させる態様で前記アクチュエータを駆動する制御手段とを備えた操作感触付与型入力装置であって、
前記制御手段は、
所定の条件に基づき前記表示画面上で前記ポインタが縦方向又は横方向のうちいずれか一方の移動方向に沿って前記ボタンの表示領域内からその外方へ向けて移動される特定移動状態であるかを判断し、その結果、前記特定移動状態であると判断した場合、縦方向又は横方向のうち前記ポインタの移動方向に対応するいずれか一方向への引込力の大きさを前記特定移動状態であると判断しない場合に発生させる引込力の大きさに比較して小さく設定することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記制御手段は、
所定時間における前記表示画面内での前記ポインタの縦方向又は横方向のうちいずれか一方向への移動量が他方向への移動量より大きい場合、前記特定移動状態であると判断することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項3】
請求項1に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記制御手段は、
所定時間における前記表示画面内での前記ポインタの縦方向又は横方向のうちいずれか一方向への移動量が所定の移動量より大きい場合、前記特定移動状態であると判断することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項4】
請求項1に記載の操作感触付与型入力装置において、
前記制御手段は、
所定時間における前記表示画面内での前記ポインタの縦方向又は横方向のうちいずれか一方向への移動量が他方向への移動量より大きく、かつ、所定の移動量より大きい場合、前記特定移動状態であると判断することを特徴とする操作感触付与型入力装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の操作感触付与型入力装置において、
前記制御手段は、
前記特定移動状態であると判断した場合、縦方向又は横方向のうち前記ポインタの移動方向に対応するいずれか一方向への引込力の大きさを他方向への引込力に比較して小さく設定することを特徴とする操作感触付与型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−92408(P2010−92408A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263974(P2008−263974)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】