説明

操作装置

【課題】操作者の手が、右手であるのか左手であるのかを正確に判別することができる操作装置を提供する。
【解決手段】操作装置1は、主に、なされた操作に基づいて操作信号を出力し、操作する操作者の掌紋を検出して検出信号を出力する掌紋検出部としての機能を有する操作部10と、操作部10から取得した検出信号に基づいて操作者の掌紋、又は掌紋の一部を認識して操作に用いられた手が右手か左手かを判別する判別部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、車載機器を操作する入力手段と、走行状態に応じて車載機器への入力を制限する入力制限手段と、入力手段へ近接した操作者の手の軌跡を検出する近接軌跡検出手段と、検出された近接軌跡に基づいて、操作者を判別する操作者判別手段と、を備え、入力制限手段は、判別された操作者に応じて車載機器への入力操作を制限する車両用入力装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この車両入力装置の近接軌跡検出手段は、左右の手の形状差を利用していずれの手によって入力手段が操作されているのかを検出できるように、3個の検出センサにより構成されている。特に、一の検出センサは、右手で操作がなされるときは薬指を検出し、左手で操作がなされるときは人差指を検出するように配置されている。従って、車両入力装置は、近接軌跡検出手段によって検出される手の形状に基づいていずれの手によって操作がなされているかを判別することで、操作者を判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−199973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の車両入力装置は、操作者の手の置き方や手の大きさによって、右手の薬指、又は左手の人差指が、必ずしも一の検出センサで検出されるとは限らないことから、検出結果に差が生じ易い。
【0006】
従って、本発明の目的は、操作者の手が、右手であるのか左手であるのかを正確に判別することができる操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、なされた操作に基づいて操作信号を出力する操作部と、操作部を操作する操作者の掌紋を検出して検出信号を出力する掌紋検出部と、掌紋検出部から取得した検出信号に基づいて操作者の掌紋、又は掌紋の一部を認識して操作に用いられた手が右手か左手かを判別する判別部と、を備えた操作装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作者の手が、右手であるのか左手であるのかを正確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、実施の形態に係る操作装置が搭載された車両内部の概略図であり、(b)は、操作装置のブロック図である。
【図2】図2(a)は、左手の掌の概略図であり、(b)は、右手の掌の概略図であり、(c)は、操作部によって検出された左手の掌紋画像の一部であり、(d)は、右手の掌紋画像の一部である。
【図3】図3は、実施の形態に係る操作装置の動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る操作装置は、なされた操作に基づいて操作信号を出力する操作部と、操作部を操作する操作者の掌紋を検出して検出信号を出力する掌紋検出部と、掌紋検出部から取得した検出信号に基づいて操作者の掌紋、又は掌紋の一部を認識して操作に用いられた手が右手か左手かを判別する判別部と、を備える。
【0011】
[実施の形態]
(操作装置1の構成)
図1(a)は、実施の形態に係る操作装置が搭載された車両内部の概略図であり、(b)は、操作装置のブロック図である。なお、実施の形態に係る各図において、部品と部品との比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
操作装置1は、主に、なされた操作に基づいて操作信号を出力し、操作する操作者の掌紋を検出して検出信号を出力する掌紋検出部としての機能を有する操作部10と、操作部10から取得した検出信号に基づいて操作者の掌紋、又は掌紋の一部を認識して操作に用いられた手が右手か左手かを判別する判別部12と、を備える。
【0013】
操作装置1は、例えば、接続された電子機器の操作を行うことができるものである。操作装置1は、例えば、導電性を有するペンや指による操作により、電子機器に表示されたカーソルの移動や選択、表示されたアイコンのドラッグ、ドロップ等の指示を行うことができるように構成されている。
【0014】
また、操作装置1は、例えば、操作者が運転席26に着座する運転者なのか、助手席28に着座する乗員なのかを判定し、運転手が操作者である場合、接続された電子機器の操作を予め定められた操作に制限させる判別信号を、通信部16を介して出力するように構成されている。なお、本実施の形態に係る車両2は、右ハンドルであることから、運転席26に着座する者を運転者と記載し、助手席28に着座する者を乗員と記載するものとする。また、運転手は、左手により操作装置1を操作するものとし、乗員は、右手により操作装置1を操作するものとする。従って、左ハンドルの車両の場合は、運転手は右手で操作を行い、乗員は左手で操作を行うので、操作装置1は、右手が検出されると運転手であると判別し、左手が検出されると乗員であると判別する。
【0015】
本実施の形態に係る電子機器は、一例として、カーナビゲーション装置5である。このカーナビゲーション装置5は、例えば、車両2のインストルメントパネル22に設けられた表示部24に地図等を表示させるように構成されている。また、カーナビゲーション装置5は、例えば、車両2を運転中の運転者が行うことができる操作を制限するように構成されている。この操作の制限は、例えば、操作装置1から取得した判別信号に基づいて判断され行われる。なお、カーナビゲーション装置5は、一例として、車両が停止中である場合、操作者に関わらず操作を制限しない。また、操作者が運転手である場合に制限される操作は、例えば、操作装置1に接続される電子機器によって異なる。例えば、カーナビゲーション装置5では、地図を表示させるための住所の入力等の予め複雑と定められた操作が制限される。
【0016】
また、カーナビゲーション装置5は、一例として、操作を行う前に操作部10に掌を接触させた後、操作を受け付けるように構成されている。つまり、カーナビゲーション装置5は、一例として、操作者が運転者か乗員かを判別した後、操作を受け付けるように構成されている。なお、掌紋検出部が、操作部10と兼用されていない場合、例えば、パームレスト等に掌紋検出部が配置され、手をパームレストに載せることで、操作者が判別される場合は、操作者が操作部10に接触する動作を省略することも可能である。
【0017】
(操作部10の構成)
操作部10は、例えば、図1(a)に示すように、運転席26と助手席28との間で、車両2の前方から後方に伸びるセンターコンソール20に設けられている。
【0018】
操作部10は、例えば、操作者の体の一部(例えば、指)や専用のペンで検出面10aに触れることにより、触れた検出面10a上の位置を検出するタッチセンサである。操作者は、例えば、検出面10aに操作を行うことにより、接続された電子機器の操作を行うことが可能となる。
【0019】
本実施の形態に係る操作部10は、例えば、検出面10aに指が近づくことによる、センサワイヤと指との距離に反比例した電流の変化を検出する静電容量方式のタッチセンサである。このセンサワイヤは、図示は省略しているが、例えば、後述するx軸と、x軸と交差するy軸と、に沿って検出面10aの下に複数設けられている。
【0020】
x軸方向には、例えば、m個のセンサワイヤが等間隔で並べられている。このmは、例えば、正の整数である。また、y軸方向には、例えば、n個のセンサワイヤが等間隔で並べられている。このnは、例えば、正の整数である。
【0021】
x軸に沿って並べられたセンサワイヤは、例えば、y軸に沿って並べられたセンサワイヤよりも検出面10aに近い層に形成されている。また、x軸に沿って並べられたセンサワイヤは、例えば、y軸に沿って並べられたセンサワイヤと電気的に絶縁されている。
【0022】
この操作部10は、例えば、図1(b)に示すように、判別部12に接続され、接触が検出された検出面10a上の座標を示す操作信号を判別部12に出力するように構成されている。
【0023】
また、操作部10は、例えば、図1(b)に示すように、クロック信号生成部14と電気的に接続されている。操作部10は、例えば、クロック信号生成部14が生成するクロック信号に基づいてx軸及びy軸を走査してセンサワイヤごとの静電容量を読み出し、操作がなされた座標を算出するように構成されている。
【0024】
ここで、本実施の形態では、操作を検出する操作部と、掌紋を検出する掌紋検出部と、を、タッチセンサを含んで構成した操作部10としている。本実施の形態の変形例として、例えば、操作部は、プッシュスイッチ等のスイッチを用いて構成され、掌紋検出部は、当該スイッチの近傍に配置されたタッチセンサ又は掌紋を撮像する撮像装置を用いて構成されても良い。掌紋検出部が撮像装置である場合、操作装置1は、一例として、テンプレートマッチングを用いて、掌紋の向きを識別して、右手か左手かを判別する。
【0025】
(判別部12の構成)
図2(a)は、左手の掌の概略図であり、(b)は、右手の掌の概略図であり、(c)は、操作部10によって検出された左手の掌紋画像の一部であり、(d)は、右手の掌紋画像の一部である。図2(c)及び(d)は、掌紋が含まれる、操作部10の検出領域の一部を示しており、横軸をx軸、縦軸をy軸とし、左上を原点としている。また、図2(c)及び(d)に示す格子状の直線は、操作部10のセンサワイヤを模式的に示したものである。
【0026】
判別部12は、例えば、図2(a)及び(b)に示す掌紋の違いに基づいて操作がなされた手が右手であるのか左手であるのかを判別する。
【0027】
ここで、掌紋とは、手のひら全体に見られる皮膚隆起線であって、その紋様は、一生不変で遺伝性である。本実施の形態では、個人を特定する必要がないので、この紋様の細かい違いを必要としない。よって、操作部10は、例えば、個人を判別するほどの高い分解能は必要としない。
【0028】
従って、判別部12が、判別に用いる紋様は、例えば、図2(a)及び(b)に示すように、掌紋の中で特に線の溝が深く、検出が容易となる、左手の掌紋3の第1の線31〜第3の線33、及び右手の掌紋4の第1の線41〜第3の線43である。
【0029】
第1の線31及び第1の線41は、親指の付け根の皮膚が隆起しているために生じる皮膚隆起線である。つまり、第1の線31は、左手の親指の付け根の皮膚隆起線であり、第1の線41は、右手の親指の付け根の皮膚隆起線である。従って、第1の線31は、例えば、図2(a)の紙面において、左上から中央下に向って円弧を描くような形状を有する。第1の線41は、例えば、図2(b)の紙面において、右上から中央下に向って円弧を描くような形状を有する。
【0030】
第2の線32及び第2の線42は、親指と人差指の間から小指と手首の間の手首側に向って伸びる皮膚隆起線である。つまり、第2の線32は、左手の親指と人差指の間から小指と手首の間に伸び、第2の線42は、右手の親指と人差指の間から小指と手首の間に伸びている。従って、第2の線32は、例えば、図2(a)の紙面において、左上から右下に向って円弧を描くような形状を有する。また、第2の線42は、例えば、図2(b)の紙面において、右上から左下に向って円弧を描くような形状を有する。
【0031】
一方、第3の線33及び第3の線43は、小指と手首の間の小指側から中央上に向けて伸びる皮膚隆起線である。つまり、第3の線33は、左手の小指と手首の間の小指側から中央上に伸び、第3の線43は、右手の小指と手首の小指側から中央上に伸びている。従って、第3の線33は、例えば、図2(a)の紙面において、中央上から小指と手首の間の小指側に円弧を描くような形状を有する。また、第3の線43は、例えば、図2(b)の紙面において、中央上から小指と手首の間の小指側に円弧を描くような形状を有する。
【0032】
操作者が、操作部10に手の掌を載せると、判別部12は、例えば、図2(c)及び(d)に示すように、取得した検出信号に基づいて掌紋画像を作成する。
【0033】
図2(c)に示す掌紋画像100は、左手の掌紋の一例である。この掌紋画像100の第1の線101は、例えば、左手の掌紋3の第1の線31に相当する。また、掌紋画像100の第2の線102は、例えば、左手の掌紋3の第2の線32に相当する。さらに、掌紋画像100の第3の線103は、例えば、左手の掌紋3の第3の線33に相当する。
【0034】
図2(d)に示す掌紋画像110は、右手の掌紋の一例である。この掌紋画像110の第1の線111は、例えば、右手の掌紋4の第1の線41に相当する。また、掌紋画像110の第2の線112は、例えば、右手の掌紋4の第2の線42に相当する。さらに、掌紋画像110の第3の線113は、例えば、右手の掌紋4の第3の線43に相当する。
【0035】
ここで、判別部12は、例えば、テンプレート120を有し、このテンプレート120と掌紋画像とを比較するテンプレートマッチングにより、左手であるのか、右手であるのか、を判別するように構成されている。
【0036】
従って、判別部12は、掌紋の3つの線の少なくとも1つの線に基づいて判別を行う。これは、図2(c)及び(d)に示すように、掌紋画像100の第1の線101〜第3の線103、掌紋画像110の第1の線111〜第3の線113のいずれであっても、右上がりなのか左上がりなのかの判別が可能であるからである。また、判別部12は、例えば、第1の線に基づいて判別を行い、判別が困難な場合は、残りの第2の線、第3の線に基づいて判別を行うように構成されている。
【0037】
以下に、本実施の形態に係る操作装置1の操作者の手の判別の動作を、図3のフローチャートに従って説明する。なお、車両2は、走行中であるものとする。
【0038】
(動作)
操作者は、操作部10の検出面10aに掌を接触させる。
【0039】
操作部10は、掌の検出に基づいて検出信号を生成して出力する(S1)。
【0040】
判別部12は、操作部10から取得した検出信号に基づいて検出された掌が右手であるのか、左手であるのかを判別する。判別部12は、検出された掌が右手だと判別すると(S2:Yes)、助手席28側からの操作と判別し、カーナビゲーション装置5の全ての操作を許可する判別信号を生成し、通信部16を介してカーナビゲーション装置5に出力し(S3)、操作者の手の判別動作を終了する。
【0041】
ここで、ステップ2において、判別部12は、検出された掌が左手だと判別すると(S2:No)、運転席26側からの操作と判別し、カーナビゲーション装置5の操作を予め定められた操作に制限する判別信号を生成し、通信部16を介してカーナビゲーション装置5に出力し(S4)、操作者の手の判別動作を終了する。
【0042】
なお、実施の形態の変形例として、上記の実施の形態では、操作の前に掌を検出される動作を行ったが、これに限定されず、パームレスト等にタッチセンサを配置し、操作中の掌紋を検出する構成としても良い。
【0043】
また、他の変形例として、上記のカーナビゲーション装置5は、車両が停止中である場合、操作に制限を設けなかったがこれに限定されず、例えば、操作装置1が車両2の状態を示す情報を取得し、この取得した情報に基づいて車両2が停止している場合は、操作を制限させない判別信号を出力するように構成されても良い。
【0044】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る操作装置1は、検出された掌紋に基づいて操作者の手が右手であるのか左手であるのかを判別するため、手の形状に基づいて判別するものと比べて、正確に判別することができる。
【0045】
操作装置1は、掌紋の第1の線〜第3の線の少なくとも1つの線から判別することができるので、手の形状を判別した後に右手であるのか左手であるのかを判別するものと比べて、手の大きさや手の置き方に左右され難く、また、処理負荷が抑制される。また、操作装置1は、個人を判別するほどの解像度を必要としないので、個人を判別するほどの解像度が必要な場合と比べて、製造コストが抑制され、また、処理速度が高速となる。
【0046】
操作装置1は、操作部及び掌紋検出部をタッチセンサによって兼用させることができるので、手の形状を検出するセンサを操作部とは別の部品を用いて配置する場合と比べて、部品点数が少なくなり、製造コストを抑制することができ、さらに、小型化することができる。
【0047】
操作装置1は、運転者による操作か、乗員による操作か、を精度良く判別することができるので、利便性が高い。また、操作装置1は、精度良く操作者を判別することができるため、車両2の運転中における運転者による操作を精度良く判別して操作を制限させることができ、安全性が高い。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…操作装置
2…車両
3、4…掌紋
5…カーナビゲーション装置
10…操作部
10a…検出面
12…判別部
14…クロック信号生成部
16…通信部
20…センターコンソール
22…インストルメントパネル
24…表示部
26…運転席
28…助手席
31〜33…第1の線〜第3の線
41〜43…第1の線〜第3の線
100…掌紋画像
101〜103…第1の線〜第3の線
110…掌紋画像
111〜113…第1の線〜第3の線
120…テンプレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
なされた操作に基づいて操作信号を出力する操作部と、
前記操作部を操作する操作者の掌紋を検出して検出信号を出力する掌紋検出部と、
前記掌紋検出部から取得した検出信号に基づいて前記操作者の掌紋、又は前記掌紋の一部を認識して操作に用いられた手が右手か左手かを判別する判別部と、
を備えた操作装置。
【請求項2】
前記操作部は、タッチセンサを含んで構成され、さらに前記掌紋検出部としても用いられる請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記判別部は、判別結果に基づいて被制御装置の可能な操作を制限させる判別信号を出力する請求項1又は2に記載の操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−88959(P2013−88959A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227582(P2011−227582)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】