説明

操縦士監視装置

【課題】本発明は、飛行機操縦士の操縦状況を十分に確認することができる操縦士監視装置を提供する。
【解決手段】本発明の操縦士監視装置は、操縦室10に3台のテレビカメラ22、24、26を設置し、これらのテレビカメラ22、24、26によって実際に操縦している操縦士を撮像し、操縦室10全体を撮像し、機外の状況を撮像し、これらの3画像をピクチャーレコーダー28の3枚のDVDに記録する。ピクチャーレコーダー28のテレビカメラ22に対応するDVDを再生することにより、操縦士12の操縦状況を画像として確認できる。また、テレビカメラ24に対応するDVDを再生することにより、操縦室10全体を画像にて確認できるので、操縦士12以外の副操縦士、航空機関士の状況を確認できる。更に、テレビカメラ26に対応するDVDを再生することにより、機外の状況も確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は操縦士監視装置に係り、特に飛行機を操縦する操縦士の操縦状況を監視するための操縦士監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飛行機を操縦する操縦士の操縦状況は、音声にてコックピットボイスレコーダーに記録されている。コックピットボイスレコーダーは、フライトレコーダーとともに飛行機への搭載が法律で義務づけられた装置であり、操縦士、副操縦士などクルー一人ひとりの発言を、それぞれのマイクから個別のチャンネルに録音し、且つ天井に設置されたエリアマイクを介してコックピット内のあらゆる音声をテープ又はマイクロチップにより録音する装置である。このようなコックピットボイスレコーダーは、エンジンの始動と同時に作動し、エンジンが停止するまでの間、エンドレスで常に最新の音声を30分から長いもので2時間分録音する。
【0003】
一方、特許文献1には、自動車の運転者を監視する運転者監視装置が開示されている。この運転者監視装置は、運転者の顔部分をビデオカメラによって撮像し、この画像と予め記憶された標準画像とを比較して不一致の場合に不適切画像を取得し、不適切画像が連続して取得されるカウントが所定の上限値を超えたときに警報装置から警告を発生させるものである。
【特許文献1】特開2004−102971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の飛行機操縦士の操縦状況は、コックピットボイスレコーダーだけでしか確認することができないため、操縦状況を必ずしも十分に確認することができなかった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、飛行機操縦士の操縦状況を十分に確認することができる操縦士監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、飛行機の操縦室に設置され該飛行機を操縦する操縦士を撮像する第1の撮像手段と、前記操縦室全体を撮像する第2の撮像手段と、前記操縦室に設置され該操縦室の風防ガラスを介して機外の状況を撮像する第3の撮像手段と、前記第1の撮像手段、第2の撮像手段、及び第3の撮像手段によって撮像された画像を記録する画像記録手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、操縦室に複数の撮像手段を設置し、これらの撮像手段によって操縦士等を撮像し、この画像を画像記録手段に記録する。これにより、本発明は、操縦士の操縦状況を画像として確認することができるので、飛行機操縦士の操縦状況を十分に確認することができる。また、撮像手段としては、実際に操縦している操縦士(操縦士又は副操縦士)を撮像する第1の撮像手段と、操縦室全体を撮像する第2の撮像手段と、機外の状況を撮像する第3の撮像手段とを備えている。操縦士のみではなく、操縦室全体を撮像して操縦士以外のクルーの状況を確認するとともに機外の状況も確認することにより、例えば事故時の検証に大いに役立つようになる。更に、これらの撮像手段として、監視カメラ等のテレビカメラに採用される昼夜撮影可能な照度範囲の広いテレビカメラを採択することにより、昼夜ともピントの合った鮮明画像を記録することができ、昼夜において航行する飛行機用の監視装置として好適になる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の撮像手段による撮像範囲は、前記操縦士の顔部分に設定されていることを特徴としている。これにより、操縦士の状況、例えば居眠りしているか否か等を確認することができる。この場合、記録手段に目をつむった画像を予め記録させておき、第1の撮像手段で撮像された画像と前記目をつむった画像とを比較し、一致した状態が所定時間連続した場合にアラームから警報を発生させるようにしてもよい。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の撮像手段による撮像範囲は、前記操縦士の手元部分に設定されていることを特徴としている。これにより、操縦士がどのボタンやレバーを操作したか確認することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る操縦士監視装置によれば、操縦室に複数の撮像手段を設置し、これらの撮像手段によって操縦士等を撮像し、この画像を記録手段に記録するようにしたので、操縦士の操縦状況を画像として確認することができる。これによって、操縦士の操縦状況を十分に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る操縦士監視装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0012】
図1は、本発明の操縦士監視装置が設置された飛行機の操縦室10を示した模式図である。同図に示す操縦室10には、操縦士12が着座する操縦席14、及びこの操縦席14に隣接した副操縦士用の操縦席(不図示)が並設されている。各々の操縦席14に着座した操縦士12及び副操縦士の手元位置には操縦桿16が設けられるとともに、足元位置には方向蛇ペダル(不図示)が設けられている。また、2つの操縦席の間には、エンジンの推力をコントロールするスラストレバー18が設けられている。操縦士12は、操縦桿16や方向蛇ペダルを操作して飛行機の姿勢をコントロールするとともに、スラストレバー18を操作することによりスピードや上昇率、降下率をコントロールする。
【0013】
操縦室10には多数の計器が設けられており、特に操縦席14の前面のパネル20の中央には、飛行機の姿勢を示す姿勢指令指示器が取り付けられ、その左側には速度計、右側には高度計及び昇降計、下側には飛行コースや飛行方位を示す水平位置指示器がそれぞれ取り付けられている。また、操縦席14の後方の側壁には、燃料系統、空調系統、油圧系統などのスイッチや計器が付いたフライトエンジニア・パネル(不図示)が設けられ、このフライトエンジニア・パネルは、航空機関士によって操作される。すなわち、この飛行機は操縦士、副操縦士、及び航空機関士の3人のクルーによって操縦されている。
【0014】
実施の形態の操縦士監視装置は、操縦室10内に設置される3台のテレビカメラ22、24、26と、これらのテレビカメラ22、24、26によって撮像された画像を記録すするピクチャーレコーダー(画像記録手段)28(図2参照)から構成されている。
【0015】
テレビカメラ(第1の撮像手段)22は、操縦席14に着座した操縦士12を撮像するテレビカメラであり、操縦室10の天井面30の前方側に操縦士12に向けて傾斜して設置されている。また、テレビカメラ(第2の撮像手段)24は、前記3人のクルー全員を撮像するように操縦室10全体を撮像する広角のテレビカメラであり、操縦室10の後方の壁面に設置されている。更に、テレビカメラ(第3の撮像手段)26は、操縦室10の風防ガラス32を介して機外の状況を撮像するテレビカメラであり、風防ガラス32に対向する操縦室10の後方の壁面に設置されている。これにより、テレビカメラ26は、飛行方向前方の状況を撮像することができる。なお、飛行方向側方を撮像するための別のテレビカメラを設置してもよい。
【0016】
実施の形態のテレビカメラ22、24、26としては、昼夜(デイナイト)使用可能な監視カメラが採択されている。すなわち、テレビカメラ22、24、26は、カメラ本体に設けられた撮像素子の結像面に昼間は可視光領域の光を結像させてカラー撮影を行い、夜間は近赤外波長域の光を結像させてモノクロ撮影を行うテレビカメラである。このため、テレビカメラ22、24、26の撮影レンズ23、25、27には、昼光における結像位置のずれを補正する赤外カットフィルタが撮影レンズ23、25、27の光路に対して進退移動自在に設けられている。この赤外カットフィルタは、夜間撮影時に前記光路から退避されるとともに、光路長を調整する所定厚さの透光性平行平面板が光学系の光路に挿入される。これにより、昼夜ともピントが合った状態で撮影され、その画像がピクチャーレコーダー28に記録される。
【0017】
ピクチャーレコーダー28は、エンジンの始動と同時に作動し、エンジンが停止するまでの間、エンドレスで常に最新の画像を30分から長いもので2時間分DVD、ハードディスク等の記録媒体に記録する。また、ピクチャーレコーダー28は、コックピットボイスレコーダーやフライトレコーダーの外装ケーシングと同様に耐衝撃性や耐熱耐久性を備え、また、水中音波発信装置も備えている。
【0018】
このように構成された操縦士監視装置によれば、操縦室10に3台のテレビカメラ22、24、26を設置し、これらのテレビカメラ22、24、26によって実際に操縦している操縦士12(又は副操縦士)を撮像し、操縦室10全体を撮像し、機外の状況を撮像し、これらの3画像をピクチャーレコーダー28の3枚のDVD34、36、38にそれぞれ記録する。
【0019】
これにより、実施の形態の操縦士監視装置によれば、ピクチャーレコーダー28のテレビカメラ22に対応するDVD34を再生することにより、操縦士12の操縦状況を画像として確認することができるので、操縦士12の操縦状況を十分に確認することができる。また、テレビカメラ24に対応するDVD36を再生することにより、操縦室10全体を画像にて確認できるので、操縦士12以外の副操縦士、航空機関士の状況を確認することができる。更に、テレビカメラ26に対応するDVD38を再生することにより、飛行方向前方の機外の状況も確認できる。以上により、3枚のDVD34、36、38を再生することにって、例えば事故時の検証に大いに役立つようになる。
【0020】
また、テレビカメラ22による撮像範囲を、操縦士12の顔部分に設定すれば、操縦士12の状況、例えば居眠りしているか否か等を確認することができる。この場合、図3の如くピクチャーレコーダー28とは別系に設けられたメモリ40に、操縦士の目をつむった画像を予め記録させておき、制御部42がテレビカメラ22で撮像された画像と前記目をつむった画像とを画像比較部44において比較させ、一致した状態が所定時間連続した場合に、アラーム46から警報を発生させるようにしてもよい。
【0021】
更に、テレビカメラ22による撮像範囲を、操縦士12の手元部分に設定すれば、操縦士12がどのボタンやレバーを操作したか確認することができる。また、このとき、操縦士が実際に行う操作手順を画像認識し、この操作手順とメモリに記憶させておいた操作マニュアルの手順とを比較させ、操作マニュアルの手順に対して誤操作した場合にはアラームを発生させるようにしてもよい。更に、誤操作したと判定された飛行点の情報をメモリに記憶させ、記憶された飛行点の情報に基づき、飛行機が次回その飛行点に接近していると判定されたとき、アラームで警告を発生させるようにしてもよい。このように誤操作があった飛行点に飛行機が接近すると、操縦士に警告を発生するようにしているので、操縦士はその警告によって、以前誤操作を行った飛行点に接近していることを認識し、注意を喚起させることができる。
【0022】
このような操縦士監視装置をコックピットボイスレコーダーと併用することにより、事故時の検証に大いに役立つようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の操縦士監視装置が設置された飛行機のコックピットの状況を示した模式図
【図2】操縦士監視装置の構成を示したブロック図
【図3】操縦士監視装置の構成を示した他のブロック図
【符号の説明】
【0024】
10…操縦室、12…操縦士、14…操縦席、16…操縦桿、18…スラストレバー、20…パネル、22、24、26…テレビカメラ、23、25、27…撮影レンズ、28…ピクチャーレコーダー、30…天井面、32…風防ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行機の操縦室に設置され該飛行機を操縦する操縦士を撮像する第1の撮像手段と、
前記操縦室全体を撮像する第2の撮像手段と、
前記操縦室に設置され該操縦室の風防ガラスを介して機外の状況を撮像する第3の撮像手段と、
前記第1の撮像手段、第2の撮像手段、及び第3の撮像手段によって撮像された画像を記録する画像記録手段とを備えたことを特徴する操縦士監視装置。
【請求項2】
前記第1の撮像手段による撮像範囲は、前記操縦士の顔部分に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の操縦士監視装置。
【請求項3】
前記第1の撮像手段による撮像範囲は、前記操縦士の手元部分に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の操縦士監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−88927(P2006−88927A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277907(P2004−277907)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】