擬似基地局装置及び該装置を用いたテレビ電話端末試験方法
【課題】 対向端末を必要とせず、1台の端末でのテレビ電話を実現し、被試験端末のテレビ電話機能の試験を可能にする。
【解決手段】 フレーム抽出部4aは、被試験端末2からのデータ通信の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出する。メッセージ処理部4cは、抽出された制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて被試験端末2へ応答するための折り返し制御コマンドを作成する。フレームデータ作成部4d,4eは、抽出された任意の時刻での通信データ、作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成する。送受信データ処理部3は、フレームデータ作成部4d,4eで作成された折り返しフレームを被試験端末2へ折り返し送信する。
【解決手段】 フレーム抽出部4aは、被試験端末2からのデータ通信の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出する。メッセージ処理部4cは、抽出された制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて被試験端末2へ応答するための折り返し制御コマンドを作成する。フレームデータ作成部4d,4eは、抽出された任意の時刻での通信データ、作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成する。送受信データ処理部3は、フレームデータ作成部4d,4eで作成された折り返しフレームを被試験端末2へ折り返し送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話や端末装置等の被試験端末の擬似基地局として機能し、被試験端末のデータ処理機能(音声、画像、各種データの処理機能)を試験するために用いられる擬似基地局装置及び該装置を用いたテレビ電話端末試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IMT−2000(International Mobile Telecommunications-2000)標準に基づく第三世代移動通信サービスが開始され、広帯域性を活用することにより、例えばテレビ電話や映像配信など情報量の大きい動画像を含むマルチメディアサービスが可能となっている。
【0003】
特に、動画像サービスに関しては、移動網にとどまらず、地上固定通信網との間のテレビ電話接続、インターネットを介した映像配信まで広がりつつあり、携帯電話はますますマルチメディアを含んだ高速・高機能化が進んでいる。
【0004】
このように、進化を続ける携帯電話を開発するにあたっては、その開発途上で音声、画像、各種データの処理機能を試験して性能を評価することも重要となってくる。ここでは、携帯電話のデータ処理機能として音声、画像を取り扱うテレビ電話機能を試験する場合を例にとって説明する。
【0005】
開発中の携帯電話のテレビ電話機能を試験するにあたっては、従来よりテレビ電話のループバックの機能の実現についてのユーザからの要求が強いのに反し、この種の試験を行うための対応可能な装置が無かったため、従来は被試験端末としての携帯電話とは別に対向機を用意して通信試験を行っていた。
【0006】
具体的に、2台のシミュレータによる対向試験を行う場合には、図9(a)に示すように、被試験端末である開発中の携帯電話21に試験装置22を接続し、この試験装置22に例えばイーサネット(登録商標)を介してもう1台の試験装置23を接続し、さらにこの試験装置23に対向機としての相手端末24を接続して試験システムを構築していた。そして、この試験システムでは、図10に示すように、被試験端末21から試験装置22への接続要求により被試験端末21と試験装置22との間が接続されると共に、試験装置22からもう1台の試験装置23に対して対向試験開始通知が行われ、試験装置23と相手端末24との間が接続される。これにより、被試験端末21と試験装置22との間の無線接続、試験装置23と相手端末24との間の無線接続が確立すると、2台の試験装置21,22を介して被試験端末21と相手端末24との間で通信可能となり、被試験端末21と相手端末24との間で対向試験を実施していた。
【0007】
また、ISDN端末を使用した通話試験では、図9(b)に示すように、被試験端末21に試験装置22を接続し、試験装置22にISDN回線を介して対向機としての相手端末25を接続して試験システムを構築している。そして、この試験システムでは、図11に示すように、被試験端末21から試験装置22への接続要求により被試験端末21と試験装置22との間で通信が行われ、試験装置22から相手端末25への接続要求により相手端末25のセットアップ・呼び出し等が行われ、被試験端末21と試験装置22との間、試験装置22と相手端末25との間の無線接続が確立すると、試験装置22を介して被試験端末21と相手端末25との間で通信可能となり、被試験端末21と相手端末25との間でテレビ電話接続を確立させて通話試験を実施していた。
【0008】
しかしながら、上述した従来の試験システムでは、対向試験や通話試験など各種試験を行うにあたって対向機としての相手端末24,25が必要不可欠であり、装置も大掛かりになり、システムも複雑化するという問題があった。また、被試験端末21と相手端末24,25とでプロトコルバージョンや画像圧縮方法が異なると、データ通信が正常に行なえない、音声が正しく再生されない、画像が途切れる、接続できないといった状況を招き、被試験端末21と相手端末24,25との間の接続を確実に確立させて試験を行うことができない場合があった。
【0009】
さらに、テレビ電話試験の場合、画像と音声が多重化されたデータが通信され、この種の多重化データから画像と音声を切り出して解析処理するなど、被試験端末21と相手端末24,25との間で複数の処理が必要となり、試験結果も被試験端末21とは関係ない相手端末24,25の性能に左右されるため、正確な試験が行えなかった。しかも、試験結果が相手端末24,25の性能に左右されるので、被試験端末21自身の処理時間を測定することが困難であった。
【0010】
このため、被試験端末(テレビ電話)の開発にあたっては、被試験端末を改造してH.245による接続のための手順を無効として、画像・音声データを折り返すことでループバックを擬似的に行うなどの方法で代替的な試験を行なっていた。
【0011】
しかしながら、上述した方法では、被試験端末に改造が必要であり、被試験端末全体としての試験を行うことができなかった。
【0012】
ところで、異なる画像符号方式を持つ端末間で画像データを変換するシステムとして、下記特許文献1に開示される画像通信システムが知られている。この特許文献1に開示される従来の画像通信システムは、図12に示すように、端末31,32間に接続され、制御部33、制御プロトコル部34、多重分離プロトコル部35、画像符号変換部36、2つの固定パターン格納部37,38を備えている。各構成について説明すると、制御部33は、各プロトコルの制御と画像符号変換制御を行う。制御プロトコル部34は、H.242とH.245のプロトコル処理を行う。多重分離プロトコル部35は、制御プロトコルのデータと画像データを多重して各端末31,32に送信したり、画像データを受信して制御プロトコルのデータと画像データに分離する。画像符号変換部36は、画像データの符号化方式の変換を行う。一方の固定パターン格納部37は、端末31に適合したH.261の画像符号化方式の固定パターンデータを格納する。他方の固定パターン格納部38は、端末32に適合したMPEG4の画像符号化方式の固定パターンデータを格納する。この画像通信システムによれば、先に接続完了した端末に対して、相手端末と同じ画像・音声の固定データを送るので、正常に画像データを送信することができる。
【特許文献1】特開2004−48261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に開示される従来の画像通信システムでは、各端末31,32毎にその端末に適合する画像符号化方式の固定パターンを格納しておき、先に接続した端末に対してもう一方の端末が接続できるまでの間、相手端末と同じ画像符号化方式の固定パターンを送信する構成なので、例えばH.261,MPEG4等の特定の画像符号化方式のみに限定され、端末の画像符号化方式が異なる場合、その端末に適合する画像符号化方式の固定パターンを予め格納しておく必要があり、相手端末の性能にも左右され、互換性の問題があった。
【0014】
このように、特許文献1に開示される画像通信システムを含め、従来の試験システムでは、被試験端末のデータ処理機能(例えば音声・画像を通信するテレビ電話機能やパソコン通信などのデータ通信機能)を試験するにあたっては対向端末を必要不可欠とする共通の課題があった。
【0015】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、対向端末を必要とせず、被試験端末のデータ処理機能を試験することができる擬似基地局装置を提供することを目的としている。
【0016】
また、上記擬似基地局装置を使用したテレビ電話通信試験において、受信したデータを擬似基地局装置にて折り返すことで、1台の端末でのテレビ電話を実現してテレビ電話機能を試験することができるテレビ電話端末試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された擬似基地局装置は、被試験端末2のデータ処理機能を試験するための擬似基地局装置1であって、
前記被試験端末からの通信を受信する受信手段3と、
前記受信手段を介して前記被試験端末からのデータ通信の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出するフレーム抽出手段4aと、
前記フレーム抽出手段で抽出された前記制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて前記被試験端末へ応答するための折り返し制御コマンドを作成するメッセージ処理手段4cと、
前記フレーム抽出手段で抽出された任意の時刻での通信データと、及び前記メッセージ処理手段で作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから前記接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成するフレームデータ作成手段4d,4eと、
前記フレームデータ作成手段で作成された前記折り返しフレームを前記被試験端末へ送信する送信手段3とを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載された擬似基地局装置は、被試験端末2のテレビ電話機能を試験するための擬似基地局装置1であって、
前記被試験端末からの通信を受信する受信手段3と、
前記受信手段を介して前記被試験端末からのテレビ電話の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出するフレーム抽出手段4aと、
前記フレーム抽出手段で抽出された前記制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて前記被試験端末へ応答するための折り返し制御コマンドを作成するメッセージ処理手段4cと、
前記フレーム抽出手段で抽出された任意の時刻での通信データと、及び前記メッセージ処理手段で作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから前記接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成するフレームデータ作成手段4d,4eと、
前記フレームデータ作成手段で作成された前記折り返しフレームを前記被試験端末へ送信する送信手段3とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載された擬似基地局装置は、請求項2記載の擬似基地局装置において、
前記抽出したデータのデータを可変するためのデータ処理手段4fを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載された擬似基地局装置は、請求項2又は請求項3記載の擬似基地局装置において、
前記制御コマンドの種類を示すメッセージを記憶するメッセージ記憶部4bを備え、
前記メッセージ処理手段4cは、前記制御コマンドを前記メッセージ記憶部に記憶された前記メッセージの種類に基づいて同様の内容のコマンドの送出が必要なコマンドと解析したときに、該制御コマンドをそのまま前記折り返し制御コマンドとすることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載された擬似基地局装置は、請求項3記載の擬似基地局装置において、
前記データ処理手段4fは、前記抽出したデータにエラーを付加することを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載された擬似基地局装置は、請求項3記載の擬似基地局装置において、
前記データ処理手段4fは、前記抽出したデータに替えてダミーデータに置き換えることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載された擬似基地局装置は、請求項3記載の擬似基地局装置において、
前記データ処理手段4fは、前記抽出したデータを任意の時間遅らせるための遅延回路として機能することを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載された擬似基地局装置は、請求項2記載の擬似基地局装置において、
前記メッセージ処理手段4cは、前記制御コマンドを出力可能なことを特徴とする。
【0025】
請求項9に記載されたテレビ電話端末試験方法は、請求項2の擬似基地局装置1を用いて被試験端末2のテレビ電話機能を試験するテレビ電話端末試験方法であって、
テレビ電話の接続手順を行いテレビ電話接続を確立する段階と、
前記被試験端末がカメラを用いて被写体の画像を捉え、前記被試験端末の表示器上の第1の画面2aに前記画像を表示するとともに前記画像を多重化データに変換して送信する第1の段階と、
前記被試験端末から送信された前記多重化データを受けて折返す第2の段階と、
折り返された前記多重化データを受けて画像に変換し前記被試験端末の表示器上の第2の画面2bに表示する第3の段階と、
前記第1の画面と前記第2の画面に表示される画像の時間差から前記被試験端末の第1の段階、第2の段階および第3の段階の処理時間の合計を判定する段階とを有することを特徴とする。
【0026】
請求項10に記載されたテレビ電話端末試験方法は、請求項5の擬似基地局装置1を用いて被試験端末2のテレビ電話機能を試験するテレビ電話端末試験方法であって、
テレビ電話の接続手順を行いテレビ電話接続を確立する段階と、
前記被試験端末がカメラを用いて被写体の画像を捉え、前記被試験端末の表示器上の第1の画面2aに前記画像を表示するとともに前記画像を多重化データに変換して送信する第1の段階と、
前記被試験端末から送信された前記多重化データを受けてそのデータを可変してエラーを付加した多重化データとして折返す第2の段階と、
折り返された前記エラーを付加した多重化データを受けて画像に変換し前記被試験端末の表示器上の第2の画面2bに表示する第3の段階と、
前記第1の画面と前記第2の画面に表示される画像から前記被試験端末の前記第3の段階のエラー訂正処理の許容範囲を判定する段階とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の擬似基地局装置によれば、例えば携帯電話等の被試験端末に対する折り返し試験であっても、擬似基地局装置が通信データのデータ形式(例えば圧縮方式、暗号化方式等)の処理機能を有する必要が無いので、折り返しが高速で、かつ汎用性も高く複数種類の被試験端末に対して試験が可能であり、対向する端末も不要となるため安価に被試験端末の試験環境を提供できる。
【0028】
請求項2の擬似基地局装置によれば、請求項1の擬似基地局装置と同様に、例えば携帯電話等の被試験端末に対する折り返し試験であっても、擬似基地局装置が通信データのデータ形式(例えば圧縮方式、暗号化方式等)の処理機能を有する必要が無いので、折り返しが高速で、かつ汎用性も高く複数種類の被試験端末に対して試験が可能であり、対向する端末も不要となるため安価に被試験端末の試験環境を提供できる。そして、特に、テレビ電話側で撮影した画像と、通常同一のデータが折り返されるため、画像の比較も容易になる。
【0029】
請求項3の擬似基地局装置によれば、抽出されたデータが可変可能なため、抽出されたデータのデータの一部を誤らせたり、データを欠落させたり、データを付加することができ、通常正常系(データ通信が成功する基本シーケンス)の動作試験である折り返し試験においても準正常系(正常系とは違う何らかの手順を踏むが最終的には正常にデータ通信が終了するシーケンス)、異常系(異常終了で終わり、データ通信が正常に終了しないシーケンス)の試験を簡単に行うことができる。
【0030】
請求項4の擬似基地局装置によれば、被試験端末の音声、画像データの圧縮方法(AMR,MPEG4)等の各種設定情報の制御が必要なく、接続された被試験端末に対して被試験端末と同じ機能を持つ端末とあたかも接続されたように被試験端末と同じ内容で設定させることができる。このため、擬似基地局装置内に各種設定情報を持つ必要が無いばかりでなく、対向試験における端末間の機能の違い等による接続不能のような状態も発生しない。
【0031】
請求項5の擬似基地局装置によれば、抽出されたデータにエラーを付加することができ、被試験端末のエラー訂正能力の試験を簡単に行うことができる。
【0032】
請求項6の擬似基地局装置によれば、抽出されたデータの替わりに例えば予め記憶したダミーデータに置き換えることができ、被試験端末に対して期待されないデータが送られた場合に準正常系や異常系の試験を簡単に行うことができる。
【0033】
請求項7の擬似基地局装置によれば、折り返し処理時間が可変可能な擬似基地局装置を2台用意して、従来端末または他社端末(基準端末)による画像処理時間と、被試験端末による画像処理時間が目視上同一となるようにより速い画像処理時間の端末が接続された擬似基地局装置の折り返し処理時間を調整(遅らせる)することで、基準端末と被試験端末との画像処理時間の性能差を測定することができる。
【0034】
請求項8の擬似基地局装置によれば、制御コマンドをデータファイル等に出力可能なため、任意のプロトコル解析装置が使用可能となり、通信に係るプロトコルの解析が容易となる。
【0035】
請求項9のテレビ電話端末試験方法によれば、第2段階が予め知ることができるほぼ一定の処理時間のため、被試験端末自身のデータ処理時間を測定することができ、被試験端末の開発、検査に役立つ。
【0036】
請求項10のテレビ電話端末試験方法によれば、テレビ電話端末において、カメラで撮像した画像と、多重化データが折り返された画像が表示されているため、折り返される多重化データへエラーを付加しその影響をテレビ電話上で比較判断できるため、簡単にかつ最低限の設備でテレビ電話端末のエラー訂正処理の許容範囲を調べることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は被試験端末のデータ処理機能を試験するための本発明に係る擬似基地局装置の機能ブロック図、図2(a)〜(c)は本発明に係る擬似基地局装置のフレーム抽出部で処理される各種データ例を示す図、図3は本発明に係る擬似基地局装置と被試験端末との間で送受信されるメッセージの具体例を示す動作シーケンス図、図4(a),(b)は本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末の遅延時間を測定する場合の概念図、図5は本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末からのデータに対する誤り訂正確認をする場合の概念図、図6は本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末との間の接続維持確認をする場合の概念図、図7は本発明に係る擬似基地局装置によって制御情報の解析を行う場合の概念図、図8(a),(b)は本発明に係る擬似基地局装置と従来の試験システムの個々における被試験端末との接続時の動作シーケンスの比較図である。
【0038】
(実施例1)
図1に示すように、本例の擬似基地局装置1には、例えば携帯電話や端末装置などの被試験端末2が有線接続又は無線接続される。この擬似基地局装置1は、被試験端末2のデータ処理機能(例えば音声、画像、各種データの処理機能)を試験するもので、送受信データ処理部3とユーザデータ処理部4とを備えて概略構成される。以下では、データ処理機能として、音声、画像の処理によるテレビ電話機能の試験を行う場合を例にとって説明する。
【0039】
被試験端末2は、例えばカメラ機能を有する携帯電話からなり、カメラを用いて被写体の画像を捉え、この画像を多重化データに変換して擬似基地局装置1に送信する。また、被試験端末2は、図1に示すように、表示画面が第1の画面2aと第2の画面2bとに分割された表示器を本体に具備している。第1の画面2aには、カメラで捉えた被写体の画像が表示される。また、第2の画面2bには、被試験端末2からの多重化データの送信に伴って擬似基地局装置1から折り返される多重化データを変換して得られる画像(擬似基地局装置1からの折り返し受信画像)が表示される。
【0040】
送受信データ処理部3は、送信手段及び受信手段を含み、図1に示すように、3GPP(3rd Generation Partnership Project :第3世代移動体通信システムの標準化プロジェクト。また、同プロジェクトによる移動体通信システムの標準規格) で定義されているPHY(Physical Layer)3a,MAC(Medium Access Control Layer) 3b,RLC(Radio Link Control Layer)3c,RRC(Radio Resource Control Layer)3dの各レイヤ部を有している。
【0041】
これらのレイヤ部は、被試験端末2と本例の擬似基地局装置1との間で無線区間を確立するために必要なレイヤである。その概略について説明すると、PHY3aは、規格番号TS 25.211〜215で、伝送路上のデータ表現形式とインタフェース形状の規定をする物理層のレイヤである。MAC3bは、規格番号TS 24.321で、相手までデータを届けるための各通信チャネルの変換を行うレイヤである。RLC3cは、規格番号TS 25.322で、相手まで確実に効率良くデータを届けるためのデータ分割、結合、再送制御などを行うレイヤである。RRC3dは、規格番号TS 25.331で、データの送受信を行うための仮想的な経路(コネクション)の確立や開放を行うレイヤである。
【0042】
ユーザデータ処理部4は、上記送受信データ処理部3によって被試験端末2と擬似基地局装置1との間の無線接続が確立されると、その無線区間を介して被試験端末2との間でデータの送受信を行っている。ユーザデータ処理部4は、図1に示すように、フレーム抽出部4a、メッセージ記憶部4b、メッセージ処理部4c、フレーム作成部4d、データ作成部4e、データ処理部4fを備えて概略構成される。なお、フレーム作成部4d及びデータ作成部4eによってフレームデータ作成部(図1の破線で囲んだ部分)を構成している。
【0043】
フレーム抽出部4aは、RLC3cからのUplink RLC Dataから同期フラグを検出し、有意なH.223フレームを抽出している。なお、H.223は、ITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector :国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化部門)勧告のマルチメディア・データの多重分離方法であり、ファイル転送やホワイトボードなどのデータ共有のためのチャネルも提供する。
【0044】
このフレーム抽出部4aによって抽出されるH.223フレームは、被試験端末2からの接続確立要求から使用されるフレームであり、図2(a)〜(c)に示すように、SRP(Simple Retransmission Protocol)コマンド/NSRP(Numbered Simple Retransmission Protocol) レスポンスと多重化データ(無い場合もある)との組み合わせによって構成される。また、SRPコマンドは、再送制御のため処理されて付加される部分であるシーケンスNo.等とH.245制御コマンドとで構成される。NSRPレスポンスは、再送制御のため処理されて付加されるシーケンスNo.等で構成されている。
【0045】
フレーム抽出部4aは、図2(a)に示すように、H.223フレームにSRPコマンドがある場合、SRPコマンドをメッセージ処理部4cに送出し、多重化データがある場合は多重化データをAudio,Visualデータとしてデータ作成部4eに送出している。また、図2(b)に示すように、H.223フレームにNSRPレスポンスがある場合には、NSRPレスポンスを廃棄し、多重化データがある場合は多重化データをAudio,Visualデータとしてデータ作成部4eに送出している。さらに、図2(c)に示すように、H.223フレームが多重化データ(例えばテレビ電話接続確立後の多重化データ)のみで構成される場合には、その多重化データをAudio,Visualデータとしてデータ作成部4eに送出している。すなわち、フレーム抽出部4aは、上記SRPコマンド/NSRPレスポンス以外のデータに関して特別な解析を行わず、Audio,Visualデータとしてデータ作成部4eに送出している。
【0046】
ここで、SRP/NSRPは、H.245メッセージのデータリンクレイヤとして、ITU−T勧告H.324で規定される再送手順プロトコルである。
【0047】
また、H.245は、ITU−T勧告のパケット多重によるマルチメディア通信制御プロトコルであり、QoS(サービス品質)非保証型LANでテレビ電話・会議を行うH.323等のシステムの中で、ACK(Acknowledgment 、肯定確認応答) とNACK(Negative Acknowledgment、否定確認応答) のやり取りによる、エンド・ツー・エンドの通信制御を行っている。
【0048】
メッセージ記憶部4bは、無線接続の確立によって被試験端末2から受けたH.223フレーム中のSRPコマンドのH.245制御コマンドの内容であるメッセージの種類を記憶している。メッセージの種類には、メッセージ自体(名称等)とそのメッセージを受けた時の対応を定義した内容が含まれている。
【0049】
メッセージ処理部4cは、フレーム抽出部4aで抽出された制御コマンドを解析処理している。また、メッセージ処理部4cは、コマンドのやり取りにシーケンス番号等による再送制御を行う再送制御手段4caを有している。さらに説明すると、メッセージ処理部4cでは、フレーム抽出部4aで抽出されたSRPコマンドからシーケンス番号を抽出してNSRPレスポンスを作成している。また、メッセージ処理部4cは、フレーム抽出部4aで抽出されたSRPコマンドからH.245制御コマンドを抽出し、そのメッセージと予めメッセージ記憶部4bに記憶されたメッセージの種類とを比較し、その比較結果に応じて例えば以下に示す(1)〜(5)の処理を実行している。
【0050】
(1)Request Messageが「MasterSlaveDetermination」(通信端末同士で、Master,Slaveを決めるためのメッセージ)であれば、「MasterSlaveDeterminationAck」のResponseメッセージを作成する。Request Messageが「RoundTripDelayRequest」(通信中のDelayを測定する場合に用いられるメッセージ)であれば、「RoundTripDelayResponse」のResponseメッセージを作成する。
【0051】
(2)上記以外のRequestメッセージであれば、Responseメッセージを作成せず、そのまま折り返す。
【0052】
(3)Responseメッセージが、音声・画像データの圧縮方法(AMR,MPEG)等の各種設定情報を含む応答メッセージである「TerminalCapabilitySetAck」、音声・画像データの多重方法の応答メッセージである「MultiplexEntrySendAck」、LogicalChannelの起動の応答メッセージである「OpenLogicalChannelAck」の何れかであれば、そのResponseメッセージをそのまま折り返す。
【0053】
(4)(3)で示した以外のResponseメッセージであれば廃棄する。
【0054】
(5)CommandメッセージとIndicationメッセージは廃棄する。
【0055】
そして、メッセージ処理部4cは、折り返しのために上記で作成したH.245制御コマンドであるResponseメッセージ、及びそのまま折り返す必要のあるRequestメッセージとResponseメッセージとを作成し、各々SRPコマンドとしてカプセリングしている。また、メッセージ処理部4cは、上記で作成したSRPコマンドをフレーム作成部4dに送出している。なお、メッセージ処理部4cは、抽出した(受信した)H.245制御コマンド及び、作成した(送出した)H.245制御コマンドの両方又はどちらか一方を必要に応じてデータファイル等に出力することができる。
【0056】
フレーム作成部4dは、メッセージ処理部4cから送られてきたNSRPレスポンスとSRPコマンドをH.223フレームでカプセリングし、このカプセリングされたH.223フレームをデータ作成部4eに送出している。
【0057】
データ作成部4eは、フレーム抽出部4aで任意の時刻に抽出したAudio,Visualデータと、フレーム作成部4dから任意の時刻に送られてきたH.223フレームとを個別に、又は1つのH.223フレームとし、Downlink RLC DataとしてRLC3cに送出可能なように分割等してRLC3cに送出している。すなわち、フレーム抽出部4aが抽出した同一のH.223フレーム内のSRPコマンドと多重化データ(Audio,Visualデータ)は、別々に処理されるため、折り返すH.223フレームでは同一のフレームに入る必要はない。
【0058】
データ処理部4fは、データを記憶するデータ記憶部を含み、被試験端末2からの多重化データ(Audio,Visualデータ)の加工、記憶、置き換え等を行っている。さらに説明すると、データ処理部4fでは、装置本体に設けられる不図示の入力手段の入力操作(例えば操作パネルに設けられるキー操作やコマンド入力など)により、被試験端末2の試験開始前に、データ作成部4fにデータを送出するまでの遅延時間、エラーを付加するビット数、ダミーフレーム、データ付加の各種設定が行えるようになっている。また、データ処理部4fは、被試験端末2からの多重化データを折り返して送出する際に、その多重化データを設定した遅延時間だけ遅延させて被試験端末2に送出する遅延回路としても機能する。なお、被試験端末2との接続確立後に上記各種設定を行った場合には、設定後に受信した多重化データから設定内容が反映される。また、データ処理部4fは、通常のテレビ電話通信では何も処理しない。
【0059】
(実施例2)
次に、上記のように構成される擬似基地局装置1によるテレビ電話接続(接続確立)時のシーケンス例について図3を参照しながら説明する。
【0060】
図3において、擬似基地局装置1は、被試験端末2から「TerminalCapabilitySet」(イ)を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(2)の処理により、「TerminalCapabilitySet」(ロ)をそのまま被試験端末2に折り返す。そして、被試験端末2は、擬似基地局装置1から「TerminalCapabilitySet」を受けると、「TerminalCapabilitySetAck」(ハ)を擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1は、被試験端末2から「TerminalCapabilitySetAck」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(3)の処理により、「TerminalCapabilitySetAck」(ニ)をそのまま被試験端末2に折り返す。
【0061】
次に、被試験端末2は、擬似基地局装置1から「TerminalCapabilitySetAck」を受けると、「MasterSlaveDetermination」を擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1は、被試験端末2から「MasterSlaveDetermination」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(1)の処理により、「MasterSlaveDeterminationAck」をResponseメッセージとして折り返す。被試験端末2は、擬似基地局装置1から「MasterSlaveDeterminationAck」を受けると、「MasterSlaveDeterminationAck」を擬似基地局装置1に送る。
【0062】
そして、擬似基地局装置1は、被試験端末2から「MasterSlaveDeterminationAck」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(4)の処理により、「MasterSlaveDeterminationAck」を廃棄する。
【0063】
その後、擬似基地局装置1は、被試験端末2から「OpenLogicalChannel」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(2)の処理により、「OpenLogicalChannel」をそのまま被試験端末2に折り返す。被試験端末2は、擬似基地局装置1から「OpenLogicalChannel」を受けると、「MultiplexEntrySendAck」を擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1は、被試験端末2から「MultiplexEntrySendAck」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(3)の処理により、「MultiplexEntrySendAck」をそのまま被試験端末2に折り返す。
【0064】
このように、上述したシーケンス例では、被試験端末2からのメッセージ(イ)に対する擬似基地局装置1の応答(ニ)と、擬似基地局装置1からのメッセージ(ロ)に対する被試験端末2の応答(ハ)とが入れ子状態となって見かけ上シーケンスを実現している。そして、本例の擬似基地局装置1では、被試験端末2からのH.223フレーム内のSRPコマンドからH.245メッセージを抽出し、そのメッセージタイプに応じて処理を行っているので、H.245プロトコルで被試験端末2の音声、画像データの圧縮方法(AMR,MPEG4)等の各種設定情報の制御が必要なく、接続された被試験端末2に対して被試験端末2と同じ機能を持つ端末(対向機に相当)とあたかも接続されたように設定させることができる。このため、擬似基地局装置1内に各種設定情報を持つ必要が無いばかりでなく、対向試験における端末間の機能の違い等による接続不能のような状態も発生しない。
【0065】
(実施例3)
次に、本例の擬似基地局装置1を用いてテレビ電話端末試験を行う場合の方法について説明する。
【0066】
テレビ電話端末試験を行う場合には、まず、図3に示すようなテレビ電話の接続手順を行い、被試験端末2と擬似基地局装置1との間でテレビ電話接続を確立する(ステップ1)。このテレビ電話接続が確立した状態で被試験端末2がカメラを用いて被写体を捉え、被試験端末2の表示器上の第1の画面2aに被写体の画像を表示するとともに、その画像を多重化データに変換して擬似基地局装置1に送信する(ステップ2)。擬似基地局装置1では、被試験端末2から送信された多重化データを受けて被試験端末2にそのまま折り返す(ステップ3)。被試験端末2は、擬似基地局装置1から折り返された多重化データを受けて画像に変換し、この変換された画像を被試験端末2の表示器上の第2の画面2bに表示する(ステップ4)。そして、第1の画面2aと第2の画面2bに表示される画像の時間差から被試験端末2の全体処理時間の合計(ステップ2〜4の処理時間の合計)を判定する。なお、第1の画面2aと第2の画面2bに表示される映像の時間差は、被試験端末2内の不図示のタイマ、又は不図示の外部時間測定装置によりカウントされる。そして、その時間差を画面上に表示することができる。
【0067】
上述したテレビ電話端末試験では、擬似基地局装置1内での処理時間、すなわち被試験端末2から送信された多重化データを受けて折り返すまでの時間、また、受けたデータを可変して折り返すまでに要する処理時間がほぼ一定で予め判るため、被試験端末2自身のデータ処理時間を測定することができ、被試験端末の開発、検査に役立つ。
【0068】
(実施例4)
また、上述したテレビ電話端末試験において、エラー訂正処理の許容範囲を判定する場合には、まずステップ1、2を実行する。そして、擬似基地局装置1は、被試験端末2から送信された多重化データを受けると、その多重化データを可変し、エラーを付加した多重化データ(以下エラー多重化データとも言う)として被試験端末2に折り返す(ステップ3’)。被試験端末2は、この折り返されたエラー多重化データを受けて画像に変換し、この変換された画像を被試験端末2の表示器上の第2の画面2bに表示する(ステップ4’)。そして、擬似基地局装置1から折り返されたエラー多重化データを受けて画像に変換し、この変換された画像を第2の画面2bに表示する段階(ステップ4’)でのエラー訂正処理の許容範囲を第1の画面2aと第2の画面2bに表示される画像から判定する。
【0069】
このエラー訂正処理の許容範囲を判定する試験では、被試験端末2において、カメラで撮像した画像と、擬似基地局装置1で折り返された多重化データを変換した画像とが一緒に表示されるので、折り返される多重化データへエラーを付加し、その影響を被試験端末2の表示器の画面上で比較判断することができる。これにより、簡単、かつ最低限の設備でテレビ電話端末のエラー訂正処理の許容範囲を調べることができる。
【0070】
具体的には、上述したエラー多重化データに付加するエラーをデータ処理部4fで増加(エラービット数を増加するなど)させていき、折り返された多重化データによる画像が乱れた場合(カメラで撮像した画像に対して異常な画像となったとき)のエラー付加量を観測することでテレビ電話端末のエラー訂正処理の許容範囲を調べることができる。
【0071】
(実施例5)
次に、本例の擬似基地局装置1の各種試験例について図4乃至図7を参照しながら説明する。
【0072】
まず、本例の擬似基地局装置1によれば、被試験端末2自身の遅延時間を測定することができる。本例の擬似基地局装置1では、従来の試験システムにおける対向機が不要であり、擬似基地局装置1内で処理に要する時間が予め判るため、被試験端末1の遅延時間を求めることができる。
【0073】
具体的には、今、図4に示すように、被試験端末2からの多重化データを受けてから被試験端末2に折り返すまでの擬似基地局装置1内での処理による遅延時間をCとし、被試験端末2がカメラで被写体の映像を捉えて第1の画面2aに表示し、この映像を多重化データに変換して擬似基地局装置1に送るまでの処理時間をA、擬似基地局装置1から折り返される多重化データを画像に変換して第2の画面2bに表示するまでの処理時間をBとする。これにより、被試験端末2がカメラで被写体を捉えて第1の画面2aに画像を表示し、この画像を多重化データに変換して擬似基地局装置1に送り、被試験端末2から送られる多重化データを被試験端末2に折り返し、この折り返された多重化データを画像に変換して第2の画面2bに表示するまでに要する全体の処理時間XはA+B+Cとなる。
【0074】
そして、本例では、擬似基地局装置1での遅延時間Cが予め判っているので、前述したテレビ電話端末試験によって全体の処理時間X(=A+B+C)を判定し、この全体の処理時間Xから遅延時間Cを差し引けば被試験端末2の処理時間A+Bを知ることができる。また、擬似基地局装置1と接続される被試験端末2を変えて同様の試験を行うことにより、被試験端末2毎の処理時間A+Bを知ることができる。そして、被試験端末同士の試験結果を比較することで被試験端末の性能を比較することができる。
【0075】
(実施例6)
次に、本例の擬似基地局装置1によれば、被試験端末2と接続して誤り訂正確認をすることができる。本例の擬似基地局装置1では、被試験端末2からのUplink RLC Dataから有意なH.223フレームを抽出し、さらにH.223フレームからSRPコマンド/NSRPレスポンスと多重化データとを分離抽出し、抽出された多重化データにエラービットを付加することができる。例えば図5に示すように、被試験端末2がカメラで被写体を捉えて第1の画面2aに画像を表示し、この画像を多重化データ「01010010100101」に変換して擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1では、被試験端末2からの多重化データ「01010010100101」に対し、エラービットを付加した多重化データ「01010010100011」を被試験端末2に折り返す。被試験端末2では、擬似基地局装置1からのエラービットを付加した多重化データを処理し、第2の画面2bに表示する。これにより、被試験端末2が擬似基地局装置1から受けたエラービットを付加した多重化データをどのように処理するか、第1の画面2aと第2の画面2bを比較することで誤り訂正能力を確認することができる。
【0076】
(実施例7)
次に、本例の擬似基地局装置1によれば、被試験端末2との接続維持の確認をすることができる。本例の擬似基地局装置1では、被試験端末2から送られてくる多重化データに対してデータを付加したり、ダミーフレームに置き換える処理をデータ処理部4fで行っている。例えば図6の例では、被試験端末2がカメラで被写体を捉えて第1の画面2aに画像(被写体が両手を下げて正面を向いている状態)を表示し、この画像を多重化データAに変換して擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1では、被試験端末2からの多重化データAをそのまま被試験端末2に折り返す。被試験端末2では、擬似基地局装置1から折り返される多重化データAを画像に変換して第2の画面2bに表示する。このとき、第2の画面2bには、第1の画面2aと同様の画像が表示される。次に、片手を上げたときの被写体をカメラで捉えて第1の画面2aに表示し、この画像を多重化データBに変換して擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1では、被試験端末2からの多重化データBを多重化データA(ダミーフレーム:例えばそれ以前に被試験端末2から送られてきた多重化データ)に置き換えて被試験端末2に折り返す。これにより、擬似基地局装置1からの多重化データAを被試験端末2がどのように処理するか、第2の画面2b(図中の斜線部分)を観察することで通信維持の状態を目視で確認することができ、被試験端末2の動作確認が行える。
【0077】
このように、本例(実施例6及び実施例7)の擬似基地局装置1では、被試験端末2からの抽出された多重化データに対してデータの内容をデータ処理部4fで任意に可変することができるので、抽出された多重化データのデータの一部を誤らせたり、データを欠落させたり、データを付加し、通常の正常系(データ通信が成功する基本シーケンス)の動作試験である折り返し試験においても準正常系(正常系とは違う何らかの手順を踏むが最終的には正常にデータ通信が終了するシーケンス)や異常系(異常終了で終わり、データ通信が正常に終了しないシーケンス)の試験を簡単に行うことができる。
【0078】
(実施例8)
次に、本例の擬似基地局装置1によれば、被試験端末2のテレビ電話に使用するプロトコルの解析に貢献することができる。本例の擬似基地局装置1では、図7に示すように、被試験端末2からのUplink RLC Data(図のA)からH.245制御コマンド(図中のControl)と多重化データ(図中のAudio,Visual)とを分離抽出し、抽出したH.245制御コマンドを例えばデータファイルとして出力することができる。そして、この外部出力されるH.245制御コマンドは、例えばTCP−IPに乗せて他の機器へ送信することが可能であり、プロトコル解析用ツールを用いてH.245制御コマンドの内容を解析することでテレビ電話に使用するプロトコルの解析に貢献することができる。
【0079】
尚、上記抽出したH.245制御コマンドに加えて、折り返し(送出)するために作成されたH.245制御コマンドについても、抽出したH.245制御コマンドと共に出力することもできる。また、折り返し(送出)するために作成されたH.245制御コマンドのみを出力することもできる。
【0080】
(実施例9)
また、他の応用例として、2つの試験環境を構築するため、データ処理部4fによる被試験端末2からの多重化データの折り返し処理時間(遅延時間)が可変可能な擬似基地局装置1を2台用意し、基準端末(従来端末や他社端末)による画像処理時間と、被試験端末2による画像処理時間とが目視上又は、時間計測にて同一となるように2台の擬似基地局装置1の折り返し処理時間(遅延時間)をデータ処理部4fで調整する。これにより、被試験端末2の基準端末との画像処理時間の性能差を測定することができる。
【0081】
このように、本例の擬似基地局装置1では、被試験端末2に対する擬似基地局として、被試験端末2から受信したデータ(多重化データ)を折り返すことにより1台の装置でのテレビ電話を実現している。これにより、被試験端末のデータ処理機能(テレビ電話機能)を試験することができる。しかも、図8(a),(b)の本例の擬似基地局装置1と従来の測定システムにおける被試験端末2とのシーケンスの比較図を見ても判るように、本例の擬似基地局装置1によれば、従来の試験システムのように、対向端末(図9(a)に示すような試験装置と相手端末、図9(b)に示すような相手端末)が不要となり、システムをシンプルに構成することができる。
【0082】
また、被試験端末2との通信上のフレーム内の多重化データを分解せずにそのまま折り返すので、従来のような対向機による遅延もなく速度向上が図れ、被試験端末2とは関係ない相手端末の性能にも左右されない。そして、被試験端末2からの多重化された音声データと画像データとを分離して解析する処理も必要ないので、通信相手側の処理時間の短縮が図れ、測定時間を短縮化でき、被試験端末2自身の遅延を測定することも可能となる。
【0083】
さらに、被試験端末2からのフレーム内の多重化データをそのまま被試験端末2に折り返すので、プロトコルバージョン等の差異等で繋がらない可能性もなく、かつ送受信でバージョン等が変わることもない。そして、接続できない端末もないので、完全互換をとることができる。
【0084】
ところで、上述した形態では、被試験端末2のテレビ電話機能を試験する場合を例にとって説明したが、例えばパソコン通信のように各種データの処理機能を試験する場合にも本例の擬似基地局装置1を採用することができる。
【0085】
また、本例の擬似基地局装置1によれば、図1に示すように、被試験端末2との間の無線区間が確立した状態で、ユーザデータ処理部4を介して被試験端末2とISDN端末や他の試験装置との間で通信を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る擬似基地局装置の機能ブロック図である。
【図2】(a)〜(c) 本発明に係る擬似基地局装置のフレーム抽出部で処理される各種データ例を示す図である。
【図3】本発明に係る擬似基地局装置と被試験端末との間で送受されるメッセージの具体例を示す動作シーケンス図である。
【図4】本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末の遅延時間を測定する場合の概念図である。
【図5】本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末からのデータに対する誤り訂正確認をする場合の概念図である。
【図6】本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末との間の接続維持確認をする場合の概念図である。
【図7】本発明に係る擬似基地局装置によって制御情報の解析を行う場合の概念図である。
【図8】(a),(b) 本発明に係る擬似基地局装置と従来の試験システムの個々における被試験端末との接続時の動作シーケンスの比較図である。
【図9】(a),(b) 従来の試験システムの各例を示す概略図である。
【図10】図9(a)の試験システムによる被試験端末の対向試験時の動作シーケンスの概略図である。
【図11】図9(b)の試験システムによる被試験端末のISDN端末との接続試験時の動作シーケンスの概略図である。
【図12】特許文献1に開示される従来の画像通信システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0087】
1 擬似基地局装置
2 被試験端末
2a 第1の画面
2b 第2の画面
3 送受信データ処理部
3a PHY
3b MAC
3c RLC
3d RRC
4 ユーザデータ処理部
4a フレーム抽出部
4b メッセージ記憶部
4c メッセージ処理部
4ca 再送制御手段
4d フレーム作成部
4e データ作成部
4f データ処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話や端末装置等の被試験端末の擬似基地局として機能し、被試験端末のデータ処理機能(音声、画像、各種データの処理機能)を試験するために用いられる擬似基地局装置及び該装置を用いたテレビ電話端末試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IMT−2000(International Mobile Telecommunications-2000)標準に基づく第三世代移動通信サービスが開始され、広帯域性を活用することにより、例えばテレビ電話や映像配信など情報量の大きい動画像を含むマルチメディアサービスが可能となっている。
【0003】
特に、動画像サービスに関しては、移動網にとどまらず、地上固定通信網との間のテレビ電話接続、インターネットを介した映像配信まで広がりつつあり、携帯電話はますますマルチメディアを含んだ高速・高機能化が進んでいる。
【0004】
このように、進化を続ける携帯電話を開発するにあたっては、その開発途上で音声、画像、各種データの処理機能を試験して性能を評価することも重要となってくる。ここでは、携帯電話のデータ処理機能として音声、画像を取り扱うテレビ電話機能を試験する場合を例にとって説明する。
【0005】
開発中の携帯電話のテレビ電話機能を試験するにあたっては、従来よりテレビ電話のループバックの機能の実現についてのユーザからの要求が強いのに反し、この種の試験を行うための対応可能な装置が無かったため、従来は被試験端末としての携帯電話とは別に対向機を用意して通信試験を行っていた。
【0006】
具体的に、2台のシミュレータによる対向試験を行う場合には、図9(a)に示すように、被試験端末である開発中の携帯電話21に試験装置22を接続し、この試験装置22に例えばイーサネット(登録商標)を介してもう1台の試験装置23を接続し、さらにこの試験装置23に対向機としての相手端末24を接続して試験システムを構築していた。そして、この試験システムでは、図10に示すように、被試験端末21から試験装置22への接続要求により被試験端末21と試験装置22との間が接続されると共に、試験装置22からもう1台の試験装置23に対して対向試験開始通知が行われ、試験装置23と相手端末24との間が接続される。これにより、被試験端末21と試験装置22との間の無線接続、試験装置23と相手端末24との間の無線接続が確立すると、2台の試験装置21,22を介して被試験端末21と相手端末24との間で通信可能となり、被試験端末21と相手端末24との間で対向試験を実施していた。
【0007】
また、ISDN端末を使用した通話試験では、図9(b)に示すように、被試験端末21に試験装置22を接続し、試験装置22にISDN回線を介して対向機としての相手端末25を接続して試験システムを構築している。そして、この試験システムでは、図11に示すように、被試験端末21から試験装置22への接続要求により被試験端末21と試験装置22との間で通信が行われ、試験装置22から相手端末25への接続要求により相手端末25のセットアップ・呼び出し等が行われ、被試験端末21と試験装置22との間、試験装置22と相手端末25との間の無線接続が確立すると、試験装置22を介して被試験端末21と相手端末25との間で通信可能となり、被試験端末21と相手端末25との間でテレビ電話接続を確立させて通話試験を実施していた。
【0008】
しかしながら、上述した従来の試験システムでは、対向試験や通話試験など各種試験を行うにあたって対向機としての相手端末24,25が必要不可欠であり、装置も大掛かりになり、システムも複雑化するという問題があった。また、被試験端末21と相手端末24,25とでプロトコルバージョンや画像圧縮方法が異なると、データ通信が正常に行なえない、音声が正しく再生されない、画像が途切れる、接続できないといった状況を招き、被試験端末21と相手端末24,25との間の接続を確実に確立させて試験を行うことができない場合があった。
【0009】
さらに、テレビ電話試験の場合、画像と音声が多重化されたデータが通信され、この種の多重化データから画像と音声を切り出して解析処理するなど、被試験端末21と相手端末24,25との間で複数の処理が必要となり、試験結果も被試験端末21とは関係ない相手端末24,25の性能に左右されるため、正確な試験が行えなかった。しかも、試験結果が相手端末24,25の性能に左右されるので、被試験端末21自身の処理時間を測定することが困難であった。
【0010】
このため、被試験端末(テレビ電話)の開発にあたっては、被試験端末を改造してH.245による接続のための手順を無効として、画像・音声データを折り返すことでループバックを擬似的に行うなどの方法で代替的な試験を行なっていた。
【0011】
しかしながら、上述した方法では、被試験端末に改造が必要であり、被試験端末全体としての試験を行うことができなかった。
【0012】
ところで、異なる画像符号方式を持つ端末間で画像データを変換するシステムとして、下記特許文献1に開示される画像通信システムが知られている。この特許文献1に開示される従来の画像通信システムは、図12に示すように、端末31,32間に接続され、制御部33、制御プロトコル部34、多重分離プロトコル部35、画像符号変換部36、2つの固定パターン格納部37,38を備えている。各構成について説明すると、制御部33は、各プロトコルの制御と画像符号変換制御を行う。制御プロトコル部34は、H.242とH.245のプロトコル処理を行う。多重分離プロトコル部35は、制御プロトコルのデータと画像データを多重して各端末31,32に送信したり、画像データを受信して制御プロトコルのデータと画像データに分離する。画像符号変換部36は、画像データの符号化方式の変換を行う。一方の固定パターン格納部37は、端末31に適合したH.261の画像符号化方式の固定パターンデータを格納する。他方の固定パターン格納部38は、端末32に適合したMPEG4の画像符号化方式の固定パターンデータを格納する。この画像通信システムによれば、先に接続完了した端末に対して、相手端末と同じ画像・音声の固定データを送るので、正常に画像データを送信することができる。
【特許文献1】特開2004−48261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に開示される従来の画像通信システムでは、各端末31,32毎にその端末に適合する画像符号化方式の固定パターンを格納しておき、先に接続した端末に対してもう一方の端末が接続できるまでの間、相手端末と同じ画像符号化方式の固定パターンを送信する構成なので、例えばH.261,MPEG4等の特定の画像符号化方式のみに限定され、端末の画像符号化方式が異なる場合、その端末に適合する画像符号化方式の固定パターンを予め格納しておく必要があり、相手端末の性能にも左右され、互換性の問題があった。
【0014】
このように、特許文献1に開示される画像通信システムを含め、従来の試験システムでは、被試験端末のデータ処理機能(例えば音声・画像を通信するテレビ電話機能やパソコン通信などのデータ通信機能)を試験するにあたっては対向端末を必要不可欠とする共通の課題があった。
【0015】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、対向端末を必要とせず、被試験端末のデータ処理機能を試験することができる擬似基地局装置を提供することを目的としている。
【0016】
また、上記擬似基地局装置を使用したテレビ電話通信試験において、受信したデータを擬似基地局装置にて折り返すことで、1台の端末でのテレビ電話を実現してテレビ電話機能を試験することができるテレビ電話端末試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された擬似基地局装置は、被試験端末2のデータ処理機能を試験するための擬似基地局装置1であって、
前記被試験端末からの通信を受信する受信手段3と、
前記受信手段を介して前記被試験端末からのデータ通信の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出するフレーム抽出手段4aと、
前記フレーム抽出手段で抽出された前記制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて前記被試験端末へ応答するための折り返し制御コマンドを作成するメッセージ処理手段4cと、
前記フレーム抽出手段で抽出された任意の時刻での通信データと、及び前記メッセージ処理手段で作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから前記接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成するフレームデータ作成手段4d,4eと、
前記フレームデータ作成手段で作成された前記折り返しフレームを前記被試験端末へ送信する送信手段3とを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載された擬似基地局装置は、被試験端末2のテレビ電話機能を試験するための擬似基地局装置1であって、
前記被試験端末からの通信を受信する受信手段3と、
前記受信手段を介して前記被試験端末からのテレビ電話の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出するフレーム抽出手段4aと、
前記フレーム抽出手段で抽出された前記制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて前記被試験端末へ応答するための折り返し制御コマンドを作成するメッセージ処理手段4cと、
前記フレーム抽出手段で抽出された任意の時刻での通信データと、及び前記メッセージ処理手段で作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから前記接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成するフレームデータ作成手段4d,4eと、
前記フレームデータ作成手段で作成された前記折り返しフレームを前記被試験端末へ送信する送信手段3とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載された擬似基地局装置は、請求項2記載の擬似基地局装置において、
前記抽出したデータのデータを可変するためのデータ処理手段4fを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載された擬似基地局装置は、請求項2又は請求項3記載の擬似基地局装置において、
前記制御コマンドの種類を示すメッセージを記憶するメッセージ記憶部4bを備え、
前記メッセージ処理手段4cは、前記制御コマンドを前記メッセージ記憶部に記憶された前記メッセージの種類に基づいて同様の内容のコマンドの送出が必要なコマンドと解析したときに、該制御コマンドをそのまま前記折り返し制御コマンドとすることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載された擬似基地局装置は、請求項3記載の擬似基地局装置において、
前記データ処理手段4fは、前記抽出したデータにエラーを付加することを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載された擬似基地局装置は、請求項3記載の擬似基地局装置において、
前記データ処理手段4fは、前記抽出したデータに替えてダミーデータに置き換えることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載された擬似基地局装置は、請求項3記載の擬似基地局装置において、
前記データ処理手段4fは、前記抽出したデータを任意の時間遅らせるための遅延回路として機能することを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載された擬似基地局装置は、請求項2記載の擬似基地局装置において、
前記メッセージ処理手段4cは、前記制御コマンドを出力可能なことを特徴とする。
【0025】
請求項9に記載されたテレビ電話端末試験方法は、請求項2の擬似基地局装置1を用いて被試験端末2のテレビ電話機能を試験するテレビ電話端末試験方法であって、
テレビ電話の接続手順を行いテレビ電話接続を確立する段階と、
前記被試験端末がカメラを用いて被写体の画像を捉え、前記被試験端末の表示器上の第1の画面2aに前記画像を表示するとともに前記画像を多重化データに変換して送信する第1の段階と、
前記被試験端末から送信された前記多重化データを受けて折返す第2の段階と、
折り返された前記多重化データを受けて画像に変換し前記被試験端末の表示器上の第2の画面2bに表示する第3の段階と、
前記第1の画面と前記第2の画面に表示される画像の時間差から前記被試験端末の第1の段階、第2の段階および第3の段階の処理時間の合計を判定する段階とを有することを特徴とする。
【0026】
請求項10に記載されたテレビ電話端末試験方法は、請求項5の擬似基地局装置1を用いて被試験端末2のテレビ電話機能を試験するテレビ電話端末試験方法であって、
テレビ電話の接続手順を行いテレビ電話接続を確立する段階と、
前記被試験端末がカメラを用いて被写体の画像を捉え、前記被試験端末の表示器上の第1の画面2aに前記画像を表示するとともに前記画像を多重化データに変換して送信する第1の段階と、
前記被試験端末から送信された前記多重化データを受けてそのデータを可変してエラーを付加した多重化データとして折返す第2の段階と、
折り返された前記エラーを付加した多重化データを受けて画像に変換し前記被試験端末の表示器上の第2の画面2bに表示する第3の段階と、
前記第1の画面と前記第2の画面に表示される画像から前記被試験端末の前記第3の段階のエラー訂正処理の許容範囲を判定する段階とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の擬似基地局装置によれば、例えば携帯電話等の被試験端末に対する折り返し試験であっても、擬似基地局装置が通信データのデータ形式(例えば圧縮方式、暗号化方式等)の処理機能を有する必要が無いので、折り返しが高速で、かつ汎用性も高く複数種類の被試験端末に対して試験が可能であり、対向する端末も不要となるため安価に被試験端末の試験環境を提供できる。
【0028】
請求項2の擬似基地局装置によれば、請求項1の擬似基地局装置と同様に、例えば携帯電話等の被試験端末に対する折り返し試験であっても、擬似基地局装置が通信データのデータ形式(例えば圧縮方式、暗号化方式等)の処理機能を有する必要が無いので、折り返しが高速で、かつ汎用性も高く複数種類の被試験端末に対して試験が可能であり、対向する端末も不要となるため安価に被試験端末の試験環境を提供できる。そして、特に、テレビ電話側で撮影した画像と、通常同一のデータが折り返されるため、画像の比較も容易になる。
【0029】
請求項3の擬似基地局装置によれば、抽出されたデータが可変可能なため、抽出されたデータのデータの一部を誤らせたり、データを欠落させたり、データを付加することができ、通常正常系(データ通信が成功する基本シーケンス)の動作試験である折り返し試験においても準正常系(正常系とは違う何らかの手順を踏むが最終的には正常にデータ通信が終了するシーケンス)、異常系(異常終了で終わり、データ通信が正常に終了しないシーケンス)の試験を簡単に行うことができる。
【0030】
請求項4の擬似基地局装置によれば、被試験端末の音声、画像データの圧縮方法(AMR,MPEG4)等の各種設定情報の制御が必要なく、接続された被試験端末に対して被試験端末と同じ機能を持つ端末とあたかも接続されたように被試験端末と同じ内容で設定させることができる。このため、擬似基地局装置内に各種設定情報を持つ必要が無いばかりでなく、対向試験における端末間の機能の違い等による接続不能のような状態も発生しない。
【0031】
請求項5の擬似基地局装置によれば、抽出されたデータにエラーを付加することができ、被試験端末のエラー訂正能力の試験を簡単に行うことができる。
【0032】
請求項6の擬似基地局装置によれば、抽出されたデータの替わりに例えば予め記憶したダミーデータに置き換えることができ、被試験端末に対して期待されないデータが送られた場合に準正常系や異常系の試験を簡単に行うことができる。
【0033】
請求項7の擬似基地局装置によれば、折り返し処理時間が可変可能な擬似基地局装置を2台用意して、従来端末または他社端末(基準端末)による画像処理時間と、被試験端末による画像処理時間が目視上同一となるようにより速い画像処理時間の端末が接続された擬似基地局装置の折り返し処理時間を調整(遅らせる)することで、基準端末と被試験端末との画像処理時間の性能差を測定することができる。
【0034】
請求項8の擬似基地局装置によれば、制御コマンドをデータファイル等に出力可能なため、任意のプロトコル解析装置が使用可能となり、通信に係るプロトコルの解析が容易となる。
【0035】
請求項9のテレビ電話端末試験方法によれば、第2段階が予め知ることができるほぼ一定の処理時間のため、被試験端末自身のデータ処理時間を測定することができ、被試験端末の開発、検査に役立つ。
【0036】
請求項10のテレビ電話端末試験方法によれば、テレビ電話端末において、カメラで撮像した画像と、多重化データが折り返された画像が表示されているため、折り返される多重化データへエラーを付加しその影響をテレビ電話上で比較判断できるため、簡単にかつ最低限の設備でテレビ電話端末のエラー訂正処理の許容範囲を調べることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は被試験端末のデータ処理機能を試験するための本発明に係る擬似基地局装置の機能ブロック図、図2(a)〜(c)は本発明に係る擬似基地局装置のフレーム抽出部で処理される各種データ例を示す図、図3は本発明に係る擬似基地局装置と被試験端末との間で送受信されるメッセージの具体例を示す動作シーケンス図、図4(a),(b)は本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末の遅延時間を測定する場合の概念図、図5は本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末からのデータに対する誤り訂正確認をする場合の概念図、図6は本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末との間の接続維持確認をする場合の概念図、図7は本発明に係る擬似基地局装置によって制御情報の解析を行う場合の概念図、図8(a),(b)は本発明に係る擬似基地局装置と従来の試験システムの個々における被試験端末との接続時の動作シーケンスの比較図である。
【0038】
(実施例1)
図1に示すように、本例の擬似基地局装置1には、例えば携帯電話や端末装置などの被試験端末2が有線接続又は無線接続される。この擬似基地局装置1は、被試験端末2のデータ処理機能(例えば音声、画像、各種データの処理機能)を試験するもので、送受信データ処理部3とユーザデータ処理部4とを備えて概略構成される。以下では、データ処理機能として、音声、画像の処理によるテレビ電話機能の試験を行う場合を例にとって説明する。
【0039】
被試験端末2は、例えばカメラ機能を有する携帯電話からなり、カメラを用いて被写体の画像を捉え、この画像を多重化データに変換して擬似基地局装置1に送信する。また、被試験端末2は、図1に示すように、表示画面が第1の画面2aと第2の画面2bとに分割された表示器を本体に具備している。第1の画面2aには、カメラで捉えた被写体の画像が表示される。また、第2の画面2bには、被試験端末2からの多重化データの送信に伴って擬似基地局装置1から折り返される多重化データを変換して得られる画像(擬似基地局装置1からの折り返し受信画像)が表示される。
【0040】
送受信データ処理部3は、送信手段及び受信手段を含み、図1に示すように、3GPP(3rd Generation Partnership Project :第3世代移動体通信システムの標準化プロジェクト。また、同プロジェクトによる移動体通信システムの標準規格) で定義されているPHY(Physical Layer)3a,MAC(Medium Access Control Layer) 3b,RLC(Radio Link Control Layer)3c,RRC(Radio Resource Control Layer)3dの各レイヤ部を有している。
【0041】
これらのレイヤ部は、被試験端末2と本例の擬似基地局装置1との間で無線区間を確立するために必要なレイヤである。その概略について説明すると、PHY3aは、規格番号TS 25.211〜215で、伝送路上のデータ表現形式とインタフェース形状の規定をする物理層のレイヤである。MAC3bは、規格番号TS 24.321で、相手までデータを届けるための各通信チャネルの変換を行うレイヤである。RLC3cは、規格番号TS 25.322で、相手まで確実に効率良くデータを届けるためのデータ分割、結合、再送制御などを行うレイヤである。RRC3dは、規格番号TS 25.331で、データの送受信を行うための仮想的な経路(コネクション)の確立や開放を行うレイヤである。
【0042】
ユーザデータ処理部4は、上記送受信データ処理部3によって被試験端末2と擬似基地局装置1との間の無線接続が確立されると、その無線区間を介して被試験端末2との間でデータの送受信を行っている。ユーザデータ処理部4は、図1に示すように、フレーム抽出部4a、メッセージ記憶部4b、メッセージ処理部4c、フレーム作成部4d、データ作成部4e、データ処理部4fを備えて概略構成される。なお、フレーム作成部4d及びデータ作成部4eによってフレームデータ作成部(図1の破線で囲んだ部分)を構成している。
【0043】
フレーム抽出部4aは、RLC3cからのUplink RLC Dataから同期フラグを検出し、有意なH.223フレームを抽出している。なお、H.223は、ITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector :国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化部門)勧告のマルチメディア・データの多重分離方法であり、ファイル転送やホワイトボードなどのデータ共有のためのチャネルも提供する。
【0044】
このフレーム抽出部4aによって抽出されるH.223フレームは、被試験端末2からの接続確立要求から使用されるフレームであり、図2(a)〜(c)に示すように、SRP(Simple Retransmission Protocol)コマンド/NSRP(Numbered Simple Retransmission Protocol) レスポンスと多重化データ(無い場合もある)との組み合わせによって構成される。また、SRPコマンドは、再送制御のため処理されて付加される部分であるシーケンスNo.等とH.245制御コマンドとで構成される。NSRPレスポンスは、再送制御のため処理されて付加されるシーケンスNo.等で構成されている。
【0045】
フレーム抽出部4aは、図2(a)に示すように、H.223フレームにSRPコマンドがある場合、SRPコマンドをメッセージ処理部4cに送出し、多重化データがある場合は多重化データをAudio,Visualデータとしてデータ作成部4eに送出している。また、図2(b)に示すように、H.223フレームにNSRPレスポンスがある場合には、NSRPレスポンスを廃棄し、多重化データがある場合は多重化データをAudio,Visualデータとしてデータ作成部4eに送出している。さらに、図2(c)に示すように、H.223フレームが多重化データ(例えばテレビ電話接続確立後の多重化データ)のみで構成される場合には、その多重化データをAudio,Visualデータとしてデータ作成部4eに送出している。すなわち、フレーム抽出部4aは、上記SRPコマンド/NSRPレスポンス以外のデータに関して特別な解析を行わず、Audio,Visualデータとしてデータ作成部4eに送出している。
【0046】
ここで、SRP/NSRPは、H.245メッセージのデータリンクレイヤとして、ITU−T勧告H.324で規定される再送手順プロトコルである。
【0047】
また、H.245は、ITU−T勧告のパケット多重によるマルチメディア通信制御プロトコルであり、QoS(サービス品質)非保証型LANでテレビ電話・会議を行うH.323等のシステムの中で、ACK(Acknowledgment 、肯定確認応答) とNACK(Negative Acknowledgment、否定確認応答) のやり取りによる、エンド・ツー・エンドの通信制御を行っている。
【0048】
メッセージ記憶部4bは、無線接続の確立によって被試験端末2から受けたH.223フレーム中のSRPコマンドのH.245制御コマンドの内容であるメッセージの種類を記憶している。メッセージの種類には、メッセージ自体(名称等)とそのメッセージを受けた時の対応を定義した内容が含まれている。
【0049】
メッセージ処理部4cは、フレーム抽出部4aで抽出された制御コマンドを解析処理している。また、メッセージ処理部4cは、コマンドのやり取りにシーケンス番号等による再送制御を行う再送制御手段4caを有している。さらに説明すると、メッセージ処理部4cでは、フレーム抽出部4aで抽出されたSRPコマンドからシーケンス番号を抽出してNSRPレスポンスを作成している。また、メッセージ処理部4cは、フレーム抽出部4aで抽出されたSRPコマンドからH.245制御コマンドを抽出し、そのメッセージと予めメッセージ記憶部4bに記憶されたメッセージの種類とを比較し、その比較結果に応じて例えば以下に示す(1)〜(5)の処理を実行している。
【0050】
(1)Request Messageが「MasterSlaveDetermination」(通信端末同士で、Master,Slaveを決めるためのメッセージ)であれば、「MasterSlaveDeterminationAck」のResponseメッセージを作成する。Request Messageが「RoundTripDelayRequest」(通信中のDelayを測定する場合に用いられるメッセージ)であれば、「RoundTripDelayResponse」のResponseメッセージを作成する。
【0051】
(2)上記以外のRequestメッセージであれば、Responseメッセージを作成せず、そのまま折り返す。
【0052】
(3)Responseメッセージが、音声・画像データの圧縮方法(AMR,MPEG)等の各種設定情報を含む応答メッセージである「TerminalCapabilitySetAck」、音声・画像データの多重方法の応答メッセージである「MultiplexEntrySendAck」、LogicalChannelの起動の応答メッセージである「OpenLogicalChannelAck」の何れかであれば、そのResponseメッセージをそのまま折り返す。
【0053】
(4)(3)で示した以外のResponseメッセージであれば廃棄する。
【0054】
(5)CommandメッセージとIndicationメッセージは廃棄する。
【0055】
そして、メッセージ処理部4cは、折り返しのために上記で作成したH.245制御コマンドであるResponseメッセージ、及びそのまま折り返す必要のあるRequestメッセージとResponseメッセージとを作成し、各々SRPコマンドとしてカプセリングしている。また、メッセージ処理部4cは、上記で作成したSRPコマンドをフレーム作成部4dに送出している。なお、メッセージ処理部4cは、抽出した(受信した)H.245制御コマンド及び、作成した(送出した)H.245制御コマンドの両方又はどちらか一方を必要に応じてデータファイル等に出力することができる。
【0056】
フレーム作成部4dは、メッセージ処理部4cから送られてきたNSRPレスポンスとSRPコマンドをH.223フレームでカプセリングし、このカプセリングされたH.223フレームをデータ作成部4eに送出している。
【0057】
データ作成部4eは、フレーム抽出部4aで任意の時刻に抽出したAudio,Visualデータと、フレーム作成部4dから任意の時刻に送られてきたH.223フレームとを個別に、又は1つのH.223フレームとし、Downlink RLC DataとしてRLC3cに送出可能なように分割等してRLC3cに送出している。すなわち、フレーム抽出部4aが抽出した同一のH.223フレーム内のSRPコマンドと多重化データ(Audio,Visualデータ)は、別々に処理されるため、折り返すH.223フレームでは同一のフレームに入る必要はない。
【0058】
データ処理部4fは、データを記憶するデータ記憶部を含み、被試験端末2からの多重化データ(Audio,Visualデータ)の加工、記憶、置き換え等を行っている。さらに説明すると、データ処理部4fでは、装置本体に設けられる不図示の入力手段の入力操作(例えば操作パネルに設けられるキー操作やコマンド入力など)により、被試験端末2の試験開始前に、データ作成部4fにデータを送出するまでの遅延時間、エラーを付加するビット数、ダミーフレーム、データ付加の各種設定が行えるようになっている。また、データ処理部4fは、被試験端末2からの多重化データを折り返して送出する際に、その多重化データを設定した遅延時間だけ遅延させて被試験端末2に送出する遅延回路としても機能する。なお、被試験端末2との接続確立後に上記各種設定を行った場合には、設定後に受信した多重化データから設定内容が反映される。また、データ処理部4fは、通常のテレビ電話通信では何も処理しない。
【0059】
(実施例2)
次に、上記のように構成される擬似基地局装置1によるテレビ電話接続(接続確立)時のシーケンス例について図3を参照しながら説明する。
【0060】
図3において、擬似基地局装置1は、被試験端末2から「TerminalCapabilitySet」(イ)を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(2)の処理により、「TerminalCapabilitySet」(ロ)をそのまま被試験端末2に折り返す。そして、被試験端末2は、擬似基地局装置1から「TerminalCapabilitySet」を受けると、「TerminalCapabilitySetAck」(ハ)を擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1は、被試験端末2から「TerminalCapabilitySetAck」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(3)の処理により、「TerminalCapabilitySetAck」(ニ)をそのまま被試験端末2に折り返す。
【0061】
次に、被試験端末2は、擬似基地局装置1から「TerminalCapabilitySetAck」を受けると、「MasterSlaveDetermination」を擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1は、被試験端末2から「MasterSlaveDetermination」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(1)の処理により、「MasterSlaveDeterminationAck」をResponseメッセージとして折り返す。被試験端末2は、擬似基地局装置1から「MasterSlaveDeterminationAck」を受けると、「MasterSlaveDeterminationAck」を擬似基地局装置1に送る。
【0062】
そして、擬似基地局装置1は、被試験端末2から「MasterSlaveDeterminationAck」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(4)の処理により、「MasterSlaveDeterminationAck」を廃棄する。
【0063】
その後、擬似基地局装置1は、被試験端末2から「OpenLogicalChannel」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(2)の処理により、「OpenLogicalChannel」をそのまま被試験端末2に折り返す。被試験端末2は、擬似基地局装置1から「OpenLogicalChannel」を受けると、「MultiplexEntrySendAck」を擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1は、被試験端末2から「MultiplexEntrySendAck」を受けると、上述したメッセージ処理部4cの(3)の処理により、「MultiplexEntrySendAck」をそのまま被試験端末2に折り返す。
【0064】
このように、上述したシーケンス例では、被試験端末2からのメッセージ(イ)に対する擬似基地局装置1の応答(ニ)と、擬似基地局装置1からのメッセージ(ロ)に対する被試験端末2の応答(ハ)とが入れ子状態となって見かけ上シーケンスを実現している。そして、本例の擬似基地局装置1では、被試験端末2からのH.223フレーム内のSRPコマンドからH.245メッセージを抽出し、そのメッセージタイプに応じて処理を行っているので、H.245プロトコルで被試験端末2の音声、画像データの圧縮方法(AMR,MPEG4)等の各種設定情報の制御が必要なく、接続された被試験端末2に対して被試験端末2と同じ機能を持つ端末(対向機に相当)とあたかも接続されたように設定させることができる。このため、擬似基地局装置1内に各種設定情報を持つ必要が無いばかりでなく、対向試験における端末間の機能の違い等による接続不能のような状態も発生しない。
【0065】
(実施例3)
次に、本例の擬似基地局装置1を用いてテレビ電話端末試験を行う場合の方法について説明する。
【0066】
テレビ電話端末試験を行う場合には、まず、図3に示すようなテレビ電話の接続手順を行い、被試験端末2と擬似基地局装置1との間でテレビ電話接続を確立する(ステップ1)。このテレビ電話接続が確立した状態で被試験端末2がカメラを用いて被写体を捉え、被試験端末2の表示器上の第1の画面2aに被写体の画像を表示するとともに、その画像を多重化データに変換して擬似基地局装置1に送信する(ステップ2)。擬似基地局装置1では、被試験端末2から送信された多重化データを受けて被試験端末2にそのまま折り返す(ステップ3)。被試験端末2は、擬似基地局装置1から折り返された多重化データを受けて画像に変換し、この変換された画像を被試験端末2の表示器上の第2の画面2bに表示する(ステップ4)。そして、第1の画面2aと第2の画面2bに表示される画像の時間差から被試験端末2の全体処理時間の合計(ステップ2〜4の処理時間の合計)を判定する。なお、第1の画面2aと第2の画面2bに表示される映像の時間差は、被試験端末2内の不図示のタイマ、又は不図示の外部時間測定装置によりカウントされる。そして、その時間差を画面上に表示することができる。
【0067】
上述したテレビ電話端末試験では、擬似基地局装置1内での処理時間、すなわち被試験端末2から送信された多重化データを受けて折り返すまでの時間、また、受けたデータを可変して折り返すまでに要する処理時間がほぼ一定で予め判るため、被試験端末2自身のデータ処理時間を測定することができ、被試験端末の開発、検査に役立つ。
【0068】
(実施例4)
また、上述したテレビ電話端末試験において、エラー訂正処理の許容範囲を判定する場合には、まずステップ1、2を実行する。そして、擬似基地局装置1は、被試験端末2から送信された多重化データを受けると、その多重化データを可変し、エラーを付加した多重化データ(以下エラー多重化データとも言う)として被試験端末2に折り返す(ステップ3’)。被試験端末2は、この折り返されたエラー多重化データを受けて画像に変換し、この変換された画像を被試験端末2の表示器上の第2の画面2bに表示する(ステップ4’)。そして、擬似基地局装置1から折り返されたエラー多重化データを受けて画像に変換し、この変換された画像を第2の画面2bに表示する段階(ステップ4’)でのエラー訂正処理の許容範囲を第1の画面2aと第2の画面2bに表示される画像から判定する。
【0069】
このエラー訂正処理の許容範囲を判定する試験では、被試験端末2において、カメラで撮像した画像と、擬似基地局装置1で折り返された多重化データを変換した画像とが一緒に表示されるので、折り返される多重化データへエラーを付加し、その影響を被試験端末2の表示器の画面上で比較判断することができる。これにより、簡単、かつ最低限の設備でテレビ電話端末のエラー訂正処理の許容範囲を調べることができる。
【0070】
具体的には、上述したエラー多重化データに付加するエラーをデータ処理部4fで増加(エラービット数を増加するなど)させていき、折り返された多重化データによる画像が乱れた場合(カメラで撮像した画像に対して異常な画像となったとき)のエラー付加量を観測することでテレビ電話端末のエラー訂正処理の許容範囲を調べることができる。
【0071】
(実施例5)
次に、本例の擬似基地局装置1の各種試験例について図4乃至図7を参照しながら説明する。
【0072】
まず、本例の擬似基地局装置1によれば、被試験端末2自身の遅延時間を測定することができる。本例の擬似基地局装置1では、従来の試験システムにおける対向機が不要であり、擬似基地局装置1内で処理に要する時間が予め判るため、被試験端末1の遅延時間を求めることができる。
【0073】
具体的には、今、図4に示すように、被試験端末2からの多重化データを受けてから被試験端末2に折り返すまでの擬似基地局装置1内での処理による遅延時間をCとし、被試験端末2がカメラで被写体の映像を捉えて第1の画面2aに表示し、この映像を多重化データに変換して擬似基地局装置1に送るまでの処理時間をA、擬似基地局装置1から折り返される多重化データを画像に変換して第2の画面2bに表示するまでの処理時間をBとする。これにより、被試験端末2がカメラで被写体を捉えて第1の画面2aに画像を表示し、この画像を多重化データに変換して擬似基地局装置1に送り、被試験端末2から送られる多重化データを被試験端末2に折り返し、この折り返された多重化データを画像に変換して第2の画面2bに表示するまでに要する全体の処理時間XはA+B+Cとなる。
【0074】
そして、本例では、擬似基地局装置1での遅延時間Cが予め判っているので、前述したテレビ電話端末試験によって全体の処理時間X(=A+B+C)を判定し、この全体の処理時間Xから遅延時間Cを差し引けば被試験端末2の処理時間A+Bを知ることができる。また、擬似基地局装置1と接続される被試験端末2を変えて同様の試験を行うことにより、被試験端末2毎の処理時間A+Bを知ることができる。そして、被試験端末同士の試験結果を比較することで被試験端末の性能を比較することができる。
【0075】
(実施例6)
次に、本例の擬似基地局装置1によれば、被試験端末2と接続して誤り訂正確認をすることができる。本例の擬似基地局装置1では、被試験端末2からのUplink RLC Dataから有意なH.223フレームを抽出し、さらにH.223フレームからSRPコマンド/NSRPレスポンスと多重化データとを分離抽出し、抽出された多重化データにエラービットを付加することができる。例えば図5に示すように、被試験端末2がカメラで被写体を捉えて第1の画面2aに画像を表示し、この画像を多重化データ「01010010100101」に変換して擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1では、被試験端末2からの多重化データ「01010010100101」に対し、エラービットを付加した多重化データ「01010010100011」を被試験端末2に折り返す。被試験端末2では、擬似基地局装置1からのエラービットを付加した多重化データを処理し、第2の画面2bに表示する。これにより、被試験端末2が擬似基地局装置1から受けたエラービットを付加した多重化データをどのように処理するか、第1の画面2aと第2の画面2bを比較することで誤り訂正能力を確認することができる。
【0076】
(実施例7)
次に、本例の擬似基地局装置1によれば、被試験端末2との接続維持の確認をすることができる。本例の擬似基地局装置1では、被試験端末2から送られてくる多重化データに対してデータを付加したり、ダミーフレームに置き換える処理をデータ処理部4fで行っている。例えば図6の例では、被試験端末2がカメラで被写体を捉えて第1の画面2aに画像(被写体が両手を下げて正面を向いている状態)を表示し、この画像を多重化データAに変換して擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1では、被試験端末2からの多重化データAをそのまま被試験端末2に折り返す。被試験端末2では、擬似基地局装置1から折り返される多重化データAを画像に変換して第2の画面2bに表示する。このとき、第2の画面2bには、第1の画面2aと同様の画像が表示される。次に、片手を上げたときの被写体をカメラで捉えて第1の画面2aに表示し、この画像を多重化データBに変換して擬似基地局装置1に送る。擬似基地局装置1では、被試験端末2からの多重化データBを多重化データA(ダミーフレーム:例えばそれ以前に被試験端末2から送られてきた多重化データ)に置き換えて被試験端末2に折り返す。これにより、擬似基地局装置1からの多重化データAを被試験端末2がどのように処理するか、第2の画面2b(図中の斜線部分)を観察することで通信維持の状態を目視で確認することができ、被試験端末2の動作確認が行える。
【0077】
このように、本例(実施例6及び実施例7)の擬似基地局装置1では、被試験端末2からの抽出された多重化データに対してデータの内容をデータ処理部4fで任意に可変することができるので、抽出された多重化データのデータの一部を誤らせたり、データを欠落させたり、データを付加し、通常の正常系(データ通信が成功する基本シーケンス)の動作試験である折り返し試験においても準正常系(正常系とは違う何らかの手順を踏むが最終的には正常にデータ通信が終了するシーケンス)や異常系(異常終了で終わり、データ通信が正常に終了しないシーケンス)の試験を簡単に行うことができる。
【0078】
(実施例8)
次に、本例の擬似基地局装置1によれば、被試験端末2のテレビ電話に使用するプロトコルの解析に貢献することができる。本例の擬似基地局装置1では、図7に示すように、被試験端末2からのUplink RLC Data(図のA)からH.245制御コマンド(図中のControl)と多重化データ(図中のAudio,Visual)とを分離抽出し、抽出したH.245制御コマンドを例えばデータファイルとして出力することができる。そして、この外部出力されるH.245制御コマンドは、例えばTCP−IPに乗せて他の機器へ送信することが可能であり、プロトコル解析用ツールを用いてH.245制御コマンドの内容を解析することでテレビ電話に使用するプロトコルの解析に貢献することができる。
【0079】
尚、上記抽出したH.245制御コマンドに加えて、折り返し(送出)するために作成されたH.245制御コマンドについても、抽出したH.245制御コマンドと共に出力することもできる。また、折り返し(送出)するために作成されたH.245制御コマンドのみを出力することもできる。
【0080】
(実施例9)
また、他の応用例として、2つの試験環境を構築するため、データ処理部4fによる被試験端末2からの多重化データの折り返し処理時間(遅延時間)が可変可能な擬似基地局装置1を2台用意し、基準端末(従来端末や他社端末)による画像処理時間と、被試験端末2による画像処理時間とが目視上又は、時間計測にて同一となるように2台の擬似基地局装置1の折り返し処理時間(遅延時間)をデータ処理部4fで調整する。これにより、被試験端末2の基準端末との画像処理時間の性能差を測定することができる。
【0081】
このように、本例の擬似基地局装置1では、被試験端末2に対する擬似基地局として、被試験端末2から受信したデータ(多重化データ)を折り返すことにより1台の装置でのテレビ電話を実現している。これにより、被試験端末のデータ処理機能(テレビ電話機能)を試験することができる。しかも、図8(a),(b)の本例の擬似基地局装置1と従来の測定システムにおける被試験端末2とのシーケンスの比較図を見ても判るように、本例の擬似基地局装置1によれば、従来の試験システムのように、対向端末(図9(a)に示すような試験装置と相手端末、図9(b)に示すような相手端末)が不要となり、システムをシンプルに構成することができる。
【0082】
また、被試験端末2との通信上のフレーム内の多重化データを分解せずにそのまま折り返すので、従来のような対向機による遅延もなく速度向上が図れ、被試験端末2とは関係ない相手端末の性能にも左右されない。そして、被試験端末2からの多重化された音声データと画像データとを分離して解析する処理も必要ないので、通信相手側の処理時間の短縮が図れ、測定時間を短縮化でき、被試験端末2自身の遅延を測定することも可能となる。
【0083】
さらに、被試験端末2からのフレーム内の多重化データをそのまま被試験端末2に折り返すので、プロトコルバージョン等の差異等で繋がらない可能性もなく、かつ送受信でバージョン等が変わることもない。そして、接続できない端末もないので、完全互換をとることができる。
【0084】
ところで、上述した形態では、被試験端末2のテレビ電話機能を試験する場合を例にとって説明したが、例えばパソコン通信のように各種データの処理機能を試験する場合にも本例の擬似基地局装置1を採用することができる。
【0085】
また、本例の擬似基地局装置1によれば、図1に示すように、被試験端末2との間の無線区間が確立した状態で、ユーザデータ処理部4を介して被試験端末2とISDN端末や他の試験装置との間で通信を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る擬似基地局装置の機能ブロック図である。
【図2】(a)〜(c) 本発明に係る擬似基地局装置のフレーム抽出部で処理される各種データ例を示す図である。
【図3】本発明に係る擬似基地局装置と被試験端末との間で送受されるメッセージの具体例を示す動作シーケンス図である。
【図4】本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末の遅延時間を測定する場合の概念図である。
【図5】本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末からのデータに対する誤り訂正確認をする場合の概念図である。
【図6】本発明に係る擬似基地局装置によって被試験端末との間の接続維持確認をする場合の概念図である。
【図7】本発明に係る擬似基地局装置によって制御情報の解析を行う場合の概念図である。
【図8】(a),(b) 本発明に係る擬似基地局装置と従来の試験システムの個々における被試験端末との接続時の動作シーケンスの比較図である。
【図9】(a),(b) 従来の試験システムの各例を示す概略図である。
【図10】図9(a)の試験システムによる被試験端末の対向試験時の動作シーケンスの概略図である。
【図11】図9(b)の試験システムによる被試験端末のISDN端末との接続試験時の動作シーケンスの概略図である。
【図12】特許文献1に開示される従来の画像通信システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0087】
1 擬似基地局装置
2 被試験端末
2a 第1の画面
2b 第2の画面
3 送受信データ処理部
3a PHY
3b MAC
3c RLC
3d RRC
4 ユーザデータ処理部
4a フレーム抽出部
4b メッセージ記憶部
4c メッセージ処理部
4ca 再送制御手段
4d フレーム作成部
4e データ作成部
4f データ処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験端末(2)のデータ処理機能を試験するための擬似基地局装置(1)であって、
前記被試験端末からの通信を受信する受信手段(3)と、
前記受信手段を介して前記被試験端末からのデータ通信の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出するフレーム抽出手段(4a)と、
前記フレーム抽出手段で抽出された前記制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて前記被試験端末へ応答するための折り返し制御コマンドを作成するメッセージ処理手段(4c)と、
前記フレーム抽出手段で抽出された任意の時刻での通信データと、及び前記メッセージ処理手段で作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから前記接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成するフレームデータ作成手段(4d,4e)と、
前記フレームデータ作成手段で作成された前記折り返しフレームを前記被試験端末へ送信する送信手段(3)とを備えたことを特徴とする擬似基地局装置。
【請求項2】
被試験端末(2)のテレビ電話機能を試験するための擬似基地局装置(1)であって、
前記被試験端末からの通信を受信する受信手段(3)と、
前記受信手段を介して前記被試験端末からのテレビ電話の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出するフレーム抽出手段(4a)と、
前記フレーム抽出手段で抽出された前記制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて前記被試験端末へ応答するための折り返し制御コマンドを作成するメッセージ処理手段(4c)と、
前記フレーム抽出手段で抽出された任意の時刻での通信データと、及び前記メッセージ処理手段で作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから前記接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成するフレームデータ作成手段(4d,4e)と、
前記フレームデータ作成手段で作成された前記折り返しフレームを前記被試験端末へ送信する送信手段(3)とを備えたことを特徴とする擬似基地局装置。
【請求項3】
前記抽出したデータのデータを可変するためのデータ処理手段(4f)を備えたことを特徴とする請求項2記載の擬似基地局装置。
【請求項4】
前記制御コマンドの種類を示すメッセージを記憶するメッセージ記憶部(4b)を備え、
前記メッセージ処理手段(4c)は、前記制御コマンドを前記メッセージ記憶部に記憶された前記メッセージの種類に基づいて同様の内容のコマンドの送出が必要なコマンドと解析したときに、該制御コマンドをそのまま前記折り返し制御コマンドとすることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の擬似基地局装置。
【請求項5】
前記データ処理手段(4f)は、前記抽出したデータにエラーを付加することを特徴とする請求項3記載の擬似基地局装置。
【請求項6】
前記データ処理手段(4f)は、前記抽出したデータに替えてダミーデータに置き換えることを特徴とする請求項3記載の擬似基地局装置。
【請求項7】
前記データ処理手段(4f)は、前記抽出したデータを任意の時間遅らせるための遅延回路として機能することを特徴とする請求項3記載の擬似基地局装置。
【請求項8】
前記メッセージ処理手段(4c)は、前記制御コマンドを出力可能なことを特徴とする請求項2記載の擬似基地局装置。
【請求項9】
請求項2の擬似基地局装置(1)を用いて被試験端末(2)のテレビ電話機能を試験するテレビ電話端末試験方法であって、
テレビ電話の接続手順を行いテレビ電話接続を確立する段階と、
前記被試験端末がカメラを用いて被写体の画像を捉え、前記被試験端末の表示器上の第1の画面(2a)に前記画像を表示するとともに前記画像を多重化データに変換して送信する第1の段階と、
前記被試験端末から送信された前記多重化データを受けて折返す第2の段階と、
折り返された前記多重化データを受けて画像に変換し前記被試験端末の表示器上の第2の画面(2b)に表示する第3の段階と、
前記第1の画面と前記第2の画面に表示される画像の時間差から前記被試験端末の第1の段階、第2の段階および第3の段階の処理時間の合計を判定する段階とを有することを特徴とするテレビ電話端末試験方法。
【請求項10】
請求項5の擬似基地局装置(1)を用いて被試験端末(2)のテレビ電話機能を試験するテレビ電話端末試験方法であって、
テレビ電話の接続手順を行いテレビ電話接続を確立する段階と、
前記被試験端末がカメラを用いて被写体の画像を捉え、前記被試験端末の表示器上の第1の画面(2a)に前記画像を表示するとともに前記画像を多重化データに変換して送信する第1の段階と、
前記被試験端末から送信された前記多重化データを受けてそのデータを可変してエラーを付加した多重化データとして折返す第2の段階と、
折り返された前記エラーを付加した多重化データを受けて画像に変換し前記被試験端末の表示器上の第2の画面(2b)に表示する第3の段階と、
前記第1の画面と前記第2の画面に表示される画像から前記被試験端末の前記第3の段階のエラー訂正処理の許容範囲を判定する段階とを有することを特徴とするテレビ電話端末試験方法。
【請求項1】
被試験端末(2)のデータ処理機能を試験するための擬似基地局装置(1)であって、
前記被試験端末からの通信を受信する受信手段(3)と、
前記受信手段を介して前記被試験端末からのデータ通信の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出するフレーム抽出手段(4a)と、
前記フレーム抽出手段で抽出された前記制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて前記被試験端末へ応答するための折り返し制御コマンドを作成するメッセージ処理手段(4c)と、
前記フレーム抽出手段で抽出された任意の時刻での通信データと、及び前記メッセージ処理手段で作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから前記接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成するフレームデータ作成手段(4d,4e)と、
前記フレームデータ作成手段で作成された前記折り返しフレームを前記被試験端末へ送信する送信手段(3)とを備えたことを特徴とする擬似基地局装置。
【請求項2】
被試験端末(2)のテレビ電話機能を試験するための擬似基地局装置(1)であって、
前記被試験端末からの通信を受信する受信手段(3)と、
前記受信手段を介して前記被試験端末からのテレビ電話の接続確立要求から始まるフレームのうち少なくとも1つのフレームから制御コマンドと通信データとを抽出するフレーム抽出手段(4a)と、
前記フレーム抽出手段で抽出された前記制御コマンドを解析し、解析された制御コマンドに応じて前記被試験端末へ応答するための折り返し制御コマンドを作成するメッセージ処理手段(4c)と、
前記フレーム抽出手段で抽出された任意の時刻での通信データと、及び前記メッセージ処理手段で作成された任意の時刻での折り返し制御コマンドのうち少なくとも1つから前記接続確立要求に応答するための折り返しフレームを作成するフレームデータ作成手段(4d,4e)と、
前記フレームデータ作成手段で作成された前記折り返しフレームを前記被試験端末へ送信する送信手段(3)とを備えたことを特徴とする擬似基地局装置。
【請求項3】
前記抽出したデータのデータを可変するためのデータ処理手段(4f)を備えたことを特徴とする請求項2記載の擬似基地局装置。
【請求項4】
前記制御コマンドの種類を示すメッセージを記憶するメッセージ記憶部(4b)を備え、
前記メッセージ処理手段(4c)は、前記制御コマンドを前記メッセージ記憶部に記憶された前記メッセージの種類に基づいて同様の内容のコマンドの送出が必要なコマンドと解析したときに、該制御コマンドをそのまま前記折り返し制御コマンドとすることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の擬似基地局装置。
【請求項5】
前記データ処理手段(4f)は、前記抽出したデータにエラーを付加することを特徴とする請求項3記載の擬似基地局装置。
【請求項6】
前記データ処理手段(4f)は、前記抽出したデータに替えてダミーデータに置き換えることを特徴とする請求項3記載の擬似基地局装置。
【請求項7】
前記データ処理手段(4f)は、前記抽出したデータを任意の時間遅らせるための遅延回路として機能することを特徴とする請求項3記載の擬似基地局装置。
【請求項8】
前記メッセージ処理手段(4c)は、前記制御コマンドを出力可能なことを特徴とする請求項2記載の擬似基地局装置。
【請求項9】
請求項2の擬似基地局装置(1)を用いて被試験端末(2)のテレビ電話機能を試験するテレビ電話端末試験方法であって、
テレビ電話の接続手順を行いテレビ電話接続を確立する段階と、
前記被試験端末がカメラを用いて被写体の画像を捉え、前記被試験端末の表示器上の第1の画面(2a)に前記画像を表示するとともに前記画像を多重化データに変換して送信する第1の段階と、
前記被試験端末から送信された前記多重化データを受けて折返す第2の段階と、
折り返された前記多重化データを受けて画像に変換し前記被試験端末の表示器上の第2の画面(2b)に表示する第3の段階と、
前記第1の画面と前記第2の画面に表示される画像の時間差から前記被試験端末の第1の段階、第2の段階および第3の段階の処理時間の合計を判定する段階とを有することを特徴とするテレビ電話端末試験方法。
【請求項10】
請求項5の擬似基地局装置(1)を用いて被試験端末(2)のテレビ電話機能を試験するテレビ電話端末試験方法であって、
テレビ電話の接続手順を行いテレビ電話接続を確立する段階と、
前記被試験端末がカメラを用いて被写体の画像を捉え、前記被試験端末の表示器上の第1の画面(2a)に前記画像を表示するとともに前記画像を多重化データに変換して送信する第1の段階と、
前記被試験端末から送信された前記多重化データを受けてそのデータを可変してエラーを付加した多重化データとして折返す第2の段階と、
折り返された前記エラーを付加した多重化データを受けて画像に変換し前記被試験端末の表示器上の第2の画面(2b)に表示する第3の段階と、
前記第1の画面と前記第2の画面に表示される画像から前記被試験端末の前記第3の段階のエラー訂正処理の許容範囲を判定する段階とを有することを特徴とするテレビ電話端末試験方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−157633(P2006−157633A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346693(P2004−346693)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
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