説明

攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプ

【要約書】
【課題】 特に、高い揚程(圧力)の流体移送が必要な場所において好適に用いることができる竪型水中ポンプを提供する。
【解決手段】2段またはそれ以上の多段で羽根車14、16を同軸的に回転軸18に固着し、この回転軸18の中間部に軸封装置34を取り付け、回転軸18の先端に攪拌羽根32を取り付けた攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプにおいて、最終羽根車ケーシング12内に配置された羽根車16と、最終羽根車ケーシング12と流路24を介して連通連結される1つ前の羽根車ケーシング10に配置された羽根車14とを背中合わせに配設し、最終羽根車ケーシング12内に配置された羽根車16の羽根取付面を軸封装置34に対向させると共に、軸封装置34側に吸引口22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体移送、特に、セメント工場、汚泥処理現場のフィルタプレスへのスラリー供給ポンプ、トンネル工事用汚泥移送ポンプ、工場廃液移送ポンプなど高い揚程(圧力)の流体移送が必要な場所において好適に用いることができる竪型水中ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示すように、高揚程の竪型水中ポンプBは、モータ100の回転軸101に2段または多段にわたって羽根車(図示の従来例では2段羽根車)102、103を取り付け、モータ100の軸封装置104(メカニカルシール等)側に最高圧力が加わる構造となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の多段羽根車を装備する高揚程の竪型水中ポンプBは、全ての羽根車102、103の羽根取付面がモータ100の回転軸101の基端に設けた軸封装置104側に向けて圧力を発生するように配列され、これらの圧力が全て軸封装置104に加わる構造となっているため、最高揚程は軸封装置104の耐圧力により制限されていた。
特に、高濃度の沈殿スラリーを外部に排出するに際しては、図3に示す高揚程の竪型水中ポンプBの回転軸101の先端にさらに攪拌羽根を取り付け、同攪拌羽根で沈殿スラリーを攪拌した後、高揚程水中ポンプBによって外部に排出することが考えられる。しかし、この場合、上記した多段羽根車を有する高揚程水中ポンプBでは、スラリーが高濃度を有することから、軸封装置104が受ける負荷がさらに増大し、軸封装置104の寿命を短くするおそれがある。
本発明は、上記した従来の問題点を解決するためなされたものであり、軸封装置に作用する圧力を軽減して、より高揚程を発生することができる攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)本発明は、2段またはそれ以上の多段で羽根車を同軸的に回転軸に固着し、この回転軸の中間部に軸封装置を取り付け、回転軸の先端に攪拌羽根を取り付けた攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプにおいて、最終羽根車ケーシング内に配置された羽根車と、最終羽根車ケーシングと流路を介して連通連結される1つ前の羽根車ケーシングに配置された羽根車とを背中合わせに配設し、最終羽根車ケーシング内に配置された羽根車の羽根取付面を軸封装置に対向させると共に、軸封装置側に吸引口を設けたことを特徴とする。
ここで、最終羽根車ケーシング内に配置された羽根車の羽根取付面に取り付けた羽根の向きは、その1つ前の羽根車ケーシングに配置された羽根車との羽根取付面に取り付けた羽根の向きと逆になる。
【0005】
(2)本発明に係る竪型水中ポンプは、単段で羽根車を回転軸に固着し、回転軸の中間部に軸封装置を取り付け、回転軸の先端に攪拌羽根を取り付けた攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプにおいて、羽根車ケーシング内に配置された羽根車の羽根取付面を軸封装置に対向させると共に、軸封装置側に吸引口を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このように、多段の竪型水中ポンプに係る上記した発明(1)では、最終羽根車ケーシング内に配置された羽根車の羽根取付面を軸封装置と対向させると共に、軸封装置側に吸引口を設けるようにしたので、軸封装置には水深圧と第1段羽根車(2段羽根車の場合)によって発生する圧力のみが作用するため、軸封装置に作用する圧力を軽減することができる。従って、第1段、第2段の羽根車が羽根の向きを除いて同一構造を有するとして、ポンプの最高揚程は、(軸封装置の耐圧力×2-(水深圧)とすることができるので、より高揚程のポンプを構成することができ、ひいては液の輸送距離を延長することができる。
また、ポンプの揚程を従来のポンプBと同様にした場合には、軸封装置に作用する圧力は、水深圧を除くと2分の1に軽減されることになり、軸封装置の寿命を延ばすことができるため、メンテナンス頻度及びコストを低減することができる。
また、上記した単段の竪型水中ポンプに係る本発明(2)では、羽根車の羽根取付面を軸封装置と対向させると共に、軸封装置側に吸引口を設けるようにしたので、軸封装置には水深圧のみが作用することになり、水深圧を除いては、羽根車の発生する圧力に制限がなくなるため、より高揚程のポンプを構成することができると共に、軸封装置の寿命を伸ばすことができるため、メンテナンス頻度及びコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面に示す幾つかの実施の形態を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
(第1実施例)
まず、本実施例に係る竪型水中ポンプAの構成について、図1を参照して説明する。なお、本実施例は、竪型水中ポンプAが2段羽根車構造を具備する場合である。
図示するように、本実施例では、それぞれ第1段羽根車ケーシング部(1つ前の羽根車ケーシング)10と第2段羽根車ケーシング部(最終段羽根車ケーシング)12とを形成する複合ケーシング13に囲繞された第1段羽根車14と第2段羽根車16が同軸的にモータ17の回転軸18に固着されており、下段ケーシングである第1段羽根車ケーシング部10の吐出口20と第2段羽根車ケーシング部12の吸引口22とは流路24を介して連通連結されている。また、第2段羽根車ケーシング部12の吸引口22は第2段羽根車ケーシング部12の中央部の上方に開口している。
第2段羽根車ケーシング部12の上部には、筒状の支持枠26を介してモータ17が支持されており、モータ17の回転軸18は、筒状の支持枠26、第2段羽根車ケーシング部12の吸引口22、第1段羽根車ケーシング部10の吸引口30を貫通して下方に伸延しており、伸延端には攪拌羽根32が固着されている。また、回転軸18の中間部であってモータ17の下方には、メカニカルシール等の軸封装置34が取り付けられている。
【0008】
上記した構成を有する竪型水中ポンプAにおいて、本実施例は、第2段羽根車ケーシング12内に配置された第2段羽根車16と、第2段羽根車ケーシング12と流路24を介して連通連結される第1段羽根車ケーシング部10に配置された第1段羽根車14とを背中合わせに配設し、かつ、第2段羽根車ケーシング12内に配置された第2段羽根車16の羽根取付面を軸封装置34に対向させると共に、軸封装置34側に吸引口22を設けたことを特徴とする。なお、図中、36は第2段羽根車ケーシング12の周縁部に設けられ、排出管38に接続される吐出口である。
ここで、第2段羽根車ケーシング12内に配置された第2段羽根車16の羽根取付面に取り付けた羽根の向きは、第1段羽根車ケーシング部10に配置された第1段羽根車14との羽根取付面に取り付けた羽根の向きと逆になっている。
【0009】
次に、上記した構成を有する竪型水中ポンプAの作動について説明する。モータ17の駆動による攪拌羽根32、第1段羽根車14及び第2段羽根車16の回転によって、例えば、高濃度のスラリーが攪拌羽根32によって攪拌された後、吸引口30を通して第1段羽根車ケーシング部10内に流入し、その後、多段に設けられた第1段羽根車14及び第2段羽根車15の回転によって昇圧され、その後、スラリーは第1段羽根車ケーシング部10、流路24、第2段羽根車ケーシング12、吐出口36、排出管38を通して所望の箇所まで移送されることになる。
この際、本実施例に係る竪型水中ポンプAでは、第2段羽根車ケーシング12内に配置された第2段羽根車の羽根取付面を軸封装置34と対向させると共に、軸封装置側に吸引口22を設けたので、軸封装置34には水深圧と第1段羽根車14によって発生する圧力のみが作用するため、軸封装置34に作用する圧力を軽減することができる、従って、第1段、第2段羽根車14,16が羽根の向きを除いて同一構造を有するとして、ポンプの最高揚程は、(軸封装置の耐圧力×2-(水深圧)とすることができるので、より高揚程のポンプを構成することができ、ひいては液の輸送距離を延長することができる。
また、ポンプの揚程を従来のポンプBと同様にした場合には、軸封装置34に作用する圧力は、水深圧を除くと2分の1に軽減されることになり、軸封装置34の寿命を延ばすことができるため、メンテナンス頻度及びコストを低減することができる。
【0010】
(第2実施例)
まず、本実施例に係る竪型水中ポンプA1の構成について、図2を参照して説明する。なお、本実施例は、竪型水中ポンプAが単段羽根車構造を具備する場合である。
図示するように、本実施例では、単段の羽根車ケーシング50に囲繞された羽根車52がモータ54の回転軸56に固着されており、羽根車ケーシング50の吸引口58は羽根車ケーシング50の中央部の上方に開口している。
羽根車ケーシング50の上部には、筒状の支持枠60を介してモータ54が支持されており、モータ54の回転軸56は、筒状の支持枠60、羽根車ケーシング50の吸引口58、羽根車ケーシング50の下部に設けた流路形成用ケーシング62の中央部に設けた吸引口64を貫通して下方に伸延しており、伸延端には攪拌羽根66が固着されている。また、回転軸56の中間部であってモータ54の下方には、メカニカルシール等の軸封装置68が取り付けられている。
【0011】
上記した構成を有する竪型水中ポンプA1において、本実施例は、羽根車ケーシング50内に配置された羽根車52の羽根取付面を軸封装置68に対向させると共に、軸封装置68側に吸引口58を設けたことを特徴とする。
なお、図中、70は第2段羽根車ケーシング12の周縁部に設けられ、排出管72に接続される吐出口である。
【0012】
次に、上記した構成を有する竪型水中ポンプA1の作動について説明する。モータ54の駆動による攪拌羽根66、羽根車52の回転によって、例えば、高濃度のスラリーが攪拌羽根66によって攪拌された後、吸引口64及び流路形成用ケーシング62内に設けた流路65を通して羽根車ケーシング50内に流入し、その後、羽根車52の回転によって昇圧される。その後、スラリーは吐出口70、排出管72を通して所望の箇所まで移送されることになる。
この際、本実施例に係る竪型水中ポンプA1では、羽根車ケーシング50内に配置された羽根車52の羽根取付面を軸封装置68に対向させると共に、軸封装置68側に吸引口58を設けたことを特徴とする。
このように、本実施例では、羽根車52の羽根取付面を軸封装置68に対向させると共に、軸封装置68側に吸引口58を設けたので、軸封装置68には水深圧のみが作用することになり、水深圧を除いては、羽根車52の発生する圧力に制限がなくなるため、より高揚程のポンプを構成することができると共に、軸封装置68の寿命を伸ばすことができるため、メンテナンス頻度及びコストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明に係る竪型水中ポンプは、特に、高い揚程(圧力)の流体移送が必要な場所において好適に用いることができる竪型水中ポンプに関する
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例に係る竪型水中ポンプの設置状態を説明する正面図。
【図2】本発明の第2実施例に係る竪型水中ポンプの設置状態を説明する平面図。
【図3】従来の竪型水中ポンプの設置状態を説明する平面図。
【符号の説明】
【0015】
A:竪型水中ポンプ
A1:竪型水中ポンプ
10: 第1段羽根車ケーシング部
12: 第2段羽根車ケーシング部
13:複合ケーシング
14:第1段羽根車
16:第2段羽根車
17:モータ
18:回転軸
20:吐出口
22:吸引口
24:流路
26:支持枠
30:吸引口
32:攪拌羽根
34:軸封装置
36:吐出口
38:排出管
50:羽根車ケーシング
52:羽根車
54:モータ
56:回転軸
58:吸引口
60:支持枠
62:流路形成用ケーシング
64:吸引口
65:流路
66:攪拌羽根
68:軸封装置
70:吐出口
72:排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2段またはそれ以上の多段で羽根車を同軸的に回転軸に固着し、該回転軸の中間部に軸封装置を取り付け、該回転軸の先端に攪拌羽根を取り付けた攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプにおいて、
最終羽根車ケーシング内に配置された前記羽根車と、前記最終羽根車ケーシングと流路を介して連通連結される1つ前の羽根車ケーシングに配置された前記羽根車とを背中合わせに配設し、前記最終羽根車ケーシング内に配置された前記羽根車の羽根取付面を前記軸封装置に対向させると共に、前記軸封装置側に吸引口を設けたことを特徴とする攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプ。
【請求項2】
単段で羽根車を回転軸に固着し、該回転軸の中間部に軸封装置を取り付け、該回転軸の先端に攪拌羽根を取り付けた攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプにおいて、
羽根車ケーシング内に配置された前記羽根車の羽根取付面を前記軸封装置に対向させると共に、前記軸封装置側に吸引口を設けたことを特徴とする攪拌羽根を具備する竪型水中ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−90134(P2006−90134A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272818(P2004−272818)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(591013388)株式会社東洋電機工業所 (11)
【Fターム(参考)】