説明

支持部材の製造装置及び製造方法

【課題】ネット体を精度良く位置決めしつつ、支持部材を着座性良く製造することにある。
【解決手段】第一型41と第二型42の間に、ネット体20aの外周を保持した枠部材46を取付け可能とし、第一型41と第二型42を閉じ合せることで、第一型41と第二型42のいずれか一方の突出部54により、一方とは異なる他方の凹部50側にネット体20aを押圧可能とするとともに、枠部材46の内側に、ネット体20aを挟みつけた状態のキャビティ44を設ける構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材(ネット体と枠体を有する部材)の製造装置及び支持部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の支持部材の製造装置として、支持部材(ネット体と枠体を有する部材)を製造する製造装置が公知である(特許文献1を参照)。
枠体は、略矩形の枠状部材であり、その中央にネット体が張設される。ネット体は、メッシュ状の面状部材であり、乗員を弾性的に支持できる。
そして支持部材を、例えば車両用シートの着座側に取付けることにより、乗員を弾性的に支持する。ところでこの種のシート構成では、補完部材(カバー部とクッション部)を支持部材に取付けるなどして、乗員側部を支持できることが望ましい。例えば支持部材(ネット体)の周縁に袋状のカバー部を取付けたのち、その内部にクッション部を収納して、補完部材を突出形成する。
【0003】
そして公知技術の製造装置は、複数の型(第一型,第二型,第三型)と、キャビティと、押え部材を有する。
第一型は、中央の凹部と、凹部周囲の窪み部を有する。また第二型は、留め具と、中央の貫通孔と、貫通孔周囲の窪み部を有する。ここで留め具は、ネット体を仮止め可能な複数の筒状部位であり、窪み部とは異なる面側において貫通孔周囲に設けられる。
そして第三型は、中央の突出部(貫通孔に挿入可能な凸部位)と、突出部周囲の窪み部を有する。また押え部材は、第三型の周囲に配置されたバネ部材であり、ネット体を押圧して位置決めできる。
ここで第一型の窪み部は、枠体の着座側の形状に倣った空間部である。また第二型及び第三型の窪み部は、枠体の裏側の形状に倣った空間部であり、それぞれ第一型の窪み部に体面可能である。そして各型を閉じ合せて、これら窪み部を閉じ合せることにより成形空間(キャビティ)を形成できる。
【0004】
公知技術では、ネット体で、第二型中央(貫通孔)を被いつつ留め具に仮止めする。なお補完部材を設ける場合には、カバー部(補完部材の構成)がネット体に予め取付けられる。
そして第一型と第二型を重ね合わせて、押え部材によりネット体を固定する。つぎに第三型を重ね合わせて、第三型(突出部)にてネット体を貫通孔内に押圧しつつ、各型の窪み部を対面配置してキャビティを形成する。このときネット体(周縁)をキャビティ内に配置しつつ、キャビティ内に溶融樹脂を射出して枠体を成形する。
公知技術では、ネット体を突出部で押圧しつつ(一律にテンションをかけつつ)枠体を成形して、ネット体に一体化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3845049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述のシート構成では、ネット体のテンションを部分的に変更するなどして、シートの着座性を向上できることが望ましい。例えば乗員腰部をしっかりと支持するとともに、乗員肩部をゆったりと支持することで、シートの着座性を向上させる。しかし公知技術では、ネット体全体に一様なテンションをかけることから、テンションの部分的な調節には不向きな構成であった。
またこの種の支持部材では、シートの着座性確保の観点から、複数の留め具を用いて、ネット体の周縁全体を仮止めする。このとき補完部材を設ける際には、カバー部の取付け位置を考慮しつつ、留め具に対してネット体を位置決めする必要があった(位置決め作業が煩雑であった)。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ネット体を精度良く位置決めしつつ、支持部材を着座性良く製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の製造装置は、面状のネット体と、枠体を有する支持部材を製造できる。枠体は、ネット体をその周縁で保持する樹脂製の部材である。
そして製造装置は、第一型と、第一型に閉じ合せ可能な第二型と、第一型と第二型の間に形成されて枠体を成形可能なキャビティと、枠体よりも大寸で相似形の枠部材とを有する。この種の装置構成では、ネット体を精度良く位置決めしつつ、支持部材を着座性良く製造できることが望ましい。
【0008】
そこで本発明では、第一型と第二型の間に、ネット体の外周を保持した枠部材を取付け可能とする。さらに第一型と第二型を閉じ合せることで、第一型と第二型のいずれか一方の突出部により、一方とは異なる他方の凹部側にネット体を押圧可能とするとともに、枠部材の内側に、ネット体を挟みつけた状態のキャビティを設ける構成とした。
本発明では、ネット体を枠部材に予め取付けることにより、製造装置に対してネット体を精度よく位置決めすることができる。またネット体を突出部で押圧する(テンションをかける)前に、枠部材上でネット体のテンションを部分的に調整することができる(支持部材の着座性を向上させることができる)。
【0009】
第2発明の支持部材の製造方法では、面状のネット体と、ネット体をその周縁で保持可能な枠体とを有する支持部材を製造する。
本発明では、上述の支持部材を、第一型と、第一型に閉じ合せ可能な第二型と、第一型と第二型の間に形成されて枠体を成形可能なキャビティと、枠体よりも大寸で相似形の枠部材とを有する製造装置にて製造する。
そしてネット体の外周を枠部材で保持しつつ、第一型と第二型の間に枠部材を配置したのち、第一型と第二型を閉じ合せる。つぎに第一型と第二型のいずれか一方に設けた突出部によって、一方とは異なる他方の凹部側にネット体を押圧しつつ、枠部材の内周側に、ネット体を挟みつけた状態のキャビティを設ける。そしてこの状態のキャビティに樹脂を射出して枠体を成形することとした。
【0010】
第3発明の支持部材の製造方法は、第2発明の支持部材の製造方法において、枠部材によってネット体の外周を保持する際に、ネット体を保持する第一部位と、第一部位よりもネット体にテンションをかけて保持する第二部位とを設けることとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る第1発明及び第2発明によれば、ネット体を精度良く位置決めしつつ、支持部材を着座性良く製造することができる。そして第3発明によれば、支持部材を更に着座性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両用シートの斜視図である。
【図2】枠体とネット体の後面図である。
【図3】枠部材とネット体と基台の斜視図である。
【図4】枠部材と基台の断面図である。
【図5】ネット体と組付け部の断面図である。
【図6】ネット体と被取付け部の断面図である。
【図7】枠部材とネット体の斜視図である。
【図8】枠部材とネット体の別例の斜視図である。
【図9】枠部材のセット時における製造装置の一部断面図である。
【図10】支持部材の製造時における製造装置の一部断面図である。
【図11】枠部材のセット時における製造装置一部の断面図である。
【図12】支持部材の製造時における製造装置一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図12を参照して説明する。
各図には、適宜、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート及び製造装置上方に符号UP、車両用シート及び製造装置下方に符号DWを付す。
【0014】
本実施例では、後述の製造装置40を用いて支持部材20を製造する。支持部材20は、ネット体20aと、枠体20bを有し、車両用シート2の構成部材として使用できる(各部材の詳細は後述)。
また製造装置40は、支持部材20(枠体20b)を成形可能な装置であり、基本構成として第一型41と、第二型42と、キャビティ44を有する(各部材の詳細は後述)。
そして後述するように、第一型41と第二型42の間にネット体20aを配置する。つぎにキャビティ44に樹脂を射出して枠体20bを成形しつつ、枠体20bをネット体20aに一体化する。この種の装置構成では、ネット体20aを精度良く位置決めしつつ、支持部材20を着座性良く製造できることが望ましい。
そこで本実施例では、後述の構成によって、ネット体20aを精度良く位置決めしつつ、支持部材20を着座性良く製造することとした。以下、各構成について詳述する。
【0015】
[車両用シート]
図1の車両用シート2は、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。
シートバック6は、シートクッション4に対して起倒可能に連結する部材である。本実施例のシートバック6は、フレーム部材(図示省略)と、支持部材20を有する。フレーム部材は、シート骨格をなす部材(典型的にアーチ状)であり、その着座側に、支持部材20を取付けることができる。
【0016】
[支持部材]
支持部材20は、乗員を支持可能な部材(略長方形)であり、ネット体20aと、枠体20bと、補完部材30を有する(図1及び図2を参照)。
本実施例の支持部材20(枠体20b)は、フレーム部材よりも若干幅広い外形形状を有し、フレーム部材に組付けることができる。
ネット体20aは、天然繊維又は合成繊維を網目状に織製した部材であり、乗員を弾性的に支持できる。なおネット体20aでは、繊維を二次元的に交絡させてもよく、繊維を三次元的に交絡させてもよい。
【0017】
(枠体)
枠体20bは、略長方形の枠部材であり、フレーム部材(着座側)に組付けることができる(図2を参照)。
枠体20bの材質として、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン,塩化ビニル樹脂,ポリエチレン)や、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,ユリア樹脂)を例示できる。
本実施例の枠体20bは、中央が中空であるとともに、基本構成(上枠部22,一対の側枠部24,下枠部26)を有する。
上枠部22は、枠体20bの上部をなす部位であり、一対の側枠部24は、各々、枠体20bの側部をなす部位である。また下枠部26は、枠体20bの側部をなす部位であり、本実施例では枠体20b下部の平板部位である。
【0018】
ここで上枠部22と側枠部24は、略L字状(横断面視)をなしており、各々、外枠部28と、内枠部29と、リブRを有する(図2を参照)。
外枠部28は、枠体20bの外形形状を構成する平板部位であり、内枠部29は、外枠部の外縁から内方に向かって屈曲する部位である。そしてリブR(補強構造の一例)は、外枠部28と内枠部29に跨って立設する平板部位であり、支持部材20を補強するための構成である。リブRは、枠体20bの外周に沿って所定間隔で複数形成できる(なお図3では、便宜上、一部のリブのみに符号を付す)。
【0019】
(補完部材)
補完部材30は、枠体20bの周囲を補完する部材であり、カバー部32と、クッション部34(図示省略)を有する(図1を参照)。
カバー部32は、枠体20bの周囲を被覆可能な面状部材であり、布帛(織物,編物,不織布)や皮革にて構成できる。またクッション部34は、ポリウレタンフォーム等の弾性部材である。
本実施例では、支持部材20の周縁に袋状のカバー部32を取付けて、その内部にクッション部34を配置する。このときカバー部32の一側はネット体20aに取付けられ、カバー部32の他側はフレーム部材等に取付けられる(図1及び図4を参照)。
【0020】
[支持部材の製造]
支持部材20の製造工程では、後述の製造装置40と、基台60を用いる(図4〜図12を参照)。
そして本実施例では、製造装置40にてネット体20aにテンションをかける前に、基台60上で、ネット体20aのテンションを部分的に調節可能とした。
【0021】
(製造装置)
製造装置40は、第一型41と、第二型42と、キャビティ44と、型締機構(71,72,73)及び射出機構70と、後述の枠部材46を有する(図9〜図12を参照)。
第一型41は、凹部50と、第一取付け部51を有する(図11を参照)。凹部50は、第一型41中央の凹み部位(正面視で略矩形)であり、第一段差部50fと、第一段差部50fよりも一段低い第二段差部50sを有する。
また第一取付け部51は、後述の枠部材46を取付ける凹み部位(略長方形)であり、一対の取付け孔部Hを有する。一対の取付け孔部Hは、それぞれピン部材P(後述)を挿設可能な孔部である。
本実施例では、第一取付け部51を、凹部50を取囲むように(上方視で略長方形となるように)形成し、一対の取付け孔部Hを、第一取付け部51の対向する隅部に設ける。
【0022】
第二型42は、突出部54と、窪み部56と、スプルー部58と、第二取付け部52を有する(図11を参照)。突出部54は、第一型41中央の凸部位(正面視で略長方形)であり、凹部50に挿入されて第一段差部50fに当接する。
窪み部56は、突出部54周面の切欠き部位(例えば断面視で略L字状)であり、枠体形状に倣った形状を有して第一段差部50fに対面可能である。
スプルー部58は、溶融樹脂をキャビティ44内に供給するための導入路である。本実施例のスプルー部58は、第二型42内で二又に分かれたのち、それぞれ窪み部56に連通する。
第二取付け部52は、後述の枠部材46を取付ける凹み部位(略矩形)であり、一対の取付け孔部Hを有する(図11を参照)。本実施例では、第二取付け部52を、突出部54を取囲むように(上方視で略矩形となるように)形成して、第一取付け部51に体面可能とする。そして一対の取付け孔部Hを、第二取付け部52の対向する隅部に設けて、第一取付け部51の当該個所に対面させる。
【0023】
(キャビティ)
キャビティ44は、第一型41と第二型42の間に形成されて枠体20bを成形可能な形成空間である(図12を参照)。
本実施例では、第一型41と第二型42を閉じ合せて、凹部50(第一段差部50f)に突出部54を挿入する。このとき第一段差部50fに窪み部56が当接することで、枠体形状に倣った空間部(キャビティ44)を形成できる。そして本実施例のキャビティ44は、第一取付け部51及び第二取付け部52(枠部材46)の内側に形成される。
【0024】
(型締機構及び射出機構)
本実施例では、第一型41と第二型42を、型締機構によって閉じ合せたのち、射出機構70からスプルー部58内に溶融樹脂を供給する(図9及び図10を参照)。
型締機構は、第一部材71と、第二部材72と、タイバー部73を有する。本実施例では、凹部50と突出部54が対面する向きで、第一部材71に第一型41を取付けるとともに、第二部材72に第二型42を取付ける。そしてタイバー部73によって、第一部材71と第二部材72を互いに近づく向きに移動させる(水平方向にスライド移動させる)ことで、第一型41と第二型42を型閉じする。
また射出機構70は、典型的な基本構成(ホッパやシリンダ等)を有する。本実施例では、射出機構70(シリンダ)を第二型42に取付けて、スプルー部58内に溶融樹脂を供給する。
【0025】
(枠部材)
枠部材46は、枠体20bよりも大寸で相似形の枠状部材(正面視で略長方形)であり、枠体形状に倣って、側部途中が上方(着座側)に湾曲して突出する(図4、図7、図8を参照)。
本実施例の枠部材46は、第一枠46fと、第二枠46sと、組付け部(48f,48s)と、被取付け部(49f,49s)と、一対のピン部材Pを有する。一対のピン部材P(筒状部材)は、枠部材46を位置決めして固定するための部材である。
また第一枠46fと第二枠46sは、ともに同形(正面視で略長方形)の平板部材であり、ネット体20aを挟持した状態で互いに重ね合わせることができる。第一枠46fと第二枠46sは、典型的に金属製である(剛性体である)。
【0026】
また組付け部は、第一枠46fと第二枠46sを互いに組付ける部位である(図5及び図7を参照)。本実施例の組付け部は、第一枠周囲に設けた複数の貫通孔48fと、第二枠周囲に設けた複数の貫通孔48sである。そして両枠を重ねた状態で、それぞれの貫通孔(48f,48s)を対面配置したのちネジ部材Nを挿設することで、両枠を組付けることができる。
そして被取付け部は、枠部材46を、製造装置40又は基台60に取付ける部位である(図6、図7、図11を参照)。本実施例の被取付け部は、第一枠46fの一対の貫通孔49fと、第二枠46sの一対の貫通孔49sである。これら一対の貫通孔49f,49sは、それぞれピン部材Pを挿入可能な孔部であり、各枠の対向する隅部に設けることができる。そして両枠を重ねた状態で、それぞれの貫通孔(49f,49s)を対面配置したのちピン部材Pを挿設することで、両枠を後述の基台60等に取付けることができる。
【0027】
(基台)
基台60は、略長方形の台座であり、第一型41に倣った構成(取付け箇所61、凹箇所62)を有する(図3及び図4を参照)。凹箇所62は、基台中央の凹み部位(正面視で略長方形)である。
また取付け箇所61は、枠部材46を取付け可能な部位(略長方形)であり、一対の孔部Hを有する。本実施例の取付け箇所61は、枠部材46の側面形状に倣って側部途中が上方(着座側)に湾曲して突出する。また一対の孔部Hは、それぞれピン部材Pを挿設可能な孔部である。そして取付け箇所61を、凹箇所62を取囲むように(上方視で略矩形となるように)形成し、一対の孔部Hを、取付け箇所61の対向する隅部に設ける。
【0028】
(製造方法)
図3及び図4を参照して、ネット体20aを、枠体形状よりも大きい寸法(典型的に略長方形)に裁断しつつ、ネット体20aの周囲にカバー部32の一側を縫着する(縫製ラインSEW)。このときカバー部32が枠部材46の成形時に邪魔とならないように、カバー部32を内折してネット体20aの内側にまとめる。
つぎに第一枠46fを基台60(取付け箇所61)に配置しつつ、被取付け部にピン部材Pを挿設する。そしてネット体20aを、第一枠46fと第二枠46sの間に挟付けつつ、組付け部にネジ部材Nを挿設して両枠を組付ける。
このとき本実施例では、カバー部32の配置状態を考慮しつつ、枠部材46にネット体20aを位置決めする。例えば縫製ラインSEWにレーザーポインタLPを合わせつつ、ネット体20aの適切な位置を枠部材46に挟持させる。
【0029】
(ネット体のテンション調節)
本実施例では、枠部材46内のネット体20aの長さ寸法を適宜調節することで(比較的簡単な作業により)、ネット体20aのテンションを調整できる。
例えば図7を参照して、ネット体20aの長さ寸法L1を比較的長めとする(枠部材46の形状に倣って弛ませる)ことで、ネット体20aのテンションを弱く設定できる。
このときネット体20aの長さ寸法L1を長めにして、基台60の凹箇所62に沿って配置することもできる(図4を参照)。そしてネット体20aのテンションを段替したいときは、基台60(凹箇所62)を設計変更することで、比較的容易に対応できる。
【0030】
また図8を参照して、ネット体20aの長さ寸法を比較的短めとする(緊張状態とする)ことで、ネット体20aのテンションを強く設定できる。
このときネット体20a側部の長さ寸法L2を比較的長めに設定することで、ネット体20aを非緊張状態で保持する(第一部位を設ける)。またネット体20a中央の長さ寸法L1を短めに設定することで、ネット体20aを緊張状態で保持する(第二部位を設ける)ことができる。
このようにネット体20aのテンションを部分的に変更することで、支持部材20(ネット体20a)の着座性を向上させることができる。例えばネット体20a中央で乗員腰部をしっかりと支持したり、ネット体20a側部で乗員肩部をゆったりと支持したりすることができる。
【0031】
(枠部材の成形)
図9〜図12を参照して、第一型41と第二型42を型締機構に取付けるとともに、第二型42に射出機構70を取付ける。
つぎに枠部材46を基台60から取り外したのち、ロボットアーム74を用いて第一型41と第二型42の間に配置する。そして第一取付け部51に枠部材46(一側)を配置しつつ、一対のピン部材Pを孔部Hに挿入して位置決め固定する。このとき本実施例では、第二段差部50s内にカバー部32を配置しつつ、凹部50上にネット体20aを配置する。なお枠部材46は、ネット体20aよりも剛性に優れるため、一対のピン部材(比較的少数)で固定できる。
そして第一型41と第二型42を閉じ合せる。こうすることで突出部54によって、第一段差部50fにネット体20aを押圧するとともに、枠部材46(他側)が、第二取付け部52に配置する。そしてネット体20aは、突出部54の押圧によりテンションがかけられた状態で、第一段差部50fに当接する。
【0032】
さらに窪み部56が、第一段差部50f(ネット体20a)に当接する(図12を参照)。これにより枠部材46の内側に、ネット体20aを挟みつけた状態の空間部(キャビティ44)を形成できる。
この状態でスプルー部58からキャビティ44に成形原料(溶融樹脂等)を流し込むことにより、枠体20bを成形する。このときネット体20aの縁部(網目)に成形原料が挿入固化することで、ネット体20aの周端を枠体20bに一体化できる。
【0033】
そして余分なネット体20a部分をカットして適切な形状としたのち、枠部材46を、シートバック6(フレーム部材)に組付ける(図1を参照)。なおネット体20aは、枠部材46に取付け可能な面積を有しておればよいため、製造装置40に直接取付ける場合と比較して、ネット体20aのカット量を低減できる(図2を参照)。
つぎに表皮材を展開してクッション部34を被覆することにより、支持部材20の周側に補完部材30を形成する(図1を参照)。補完部材30は、例えばシート側方位置でシート前側に向かって突出することで、サイドサポートとして機能できる。
【0034】
以上説明したとおり本実施例では、ネット体20aを枠部材46に取付けることにより、ネット体20aを精度よく位置決めできる。
また本実施例では、枠部材46内のネット体20aの長さ寸法(周長)を適宜調節することで(比較的簡単な操作により)、ネット体20aのテンションを調整できる。そしてネット体20aのテンションを部分的に変更するなどして、着座性を向上させることができる。このときシートの形状と、枠部材46内のネット体20aの長さ寸法と、ネット体20a自体のテンションの関係を予め確認することで、各種の形状及びテンションを有する車両用シート2に対応できる。
また本実施例では、枠部材46にネット体20aを張設した状態で、製造装置40にセットすることができる。このためネット体20aのテンションの安定化が図られる。また枠部材46が剛性体であることから、極力少数の部材(一対のピン部材P)で製造装置40に取付けることができる(装置構成を簡略化できる)。
よって本実施例によれば、ネット体20aを精度良く位置決めしつつ、支持部材20を着座性良く製造することができる。
【0035】
本実施形態の車両用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、第一型41と第二型42を備えた製造装置40を用いたが、第一型41と第二型42と中間型を有する製造装置40を使用することもできる。また本実施例とは異なり、第二型42に凹部50を形成し、第一型41に突出部54を形成することもできる。
また第一型41と第二型42は、水平方向にスライド移動する構成でもよく、垂直方向にスライド移動する構成でもよい。
【0036】
(2)また本実施形態では、ネジ部材Nを用いて、第一枠46fと第二枠46sを組付ける例を説明した。第一枠46fと第二枠46sの組付けは、ネジ部材Nのほか、ボルト締結、クランプ、マグネット等の各種手段を使用することができる。
(3)また本実施形態では、シートバック6の枠体20bを一例として説明した。本実施例の構成は、シートクッション4等の各種シート構成部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
20 支持部材
20a ネット体
20b 枠体
22 上枠部
24 側枠部
26 下枠部
30 補完部材
32 カバー部
34 クッション部
40 製造装置
41 第一型
42 第二型
44 キャビティ
46 枠部材
46f 第一枠
46s 第二枠
50 凹部
50f 第一段差部
50s 第二段差部
51 第一取付け部
52 第二取付け部
54 突出部
56 窪み部
58 スプルー部
60 基台
61 取付け箇所
62 凹箇所
LP レーザーポインタ
P ピン部材
SEW 縫製ライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状のネット体と、前記ネット体をその周縁で保持する樹脂製の枠体とを有する支持部材の製造装置において、
前記製造装置が、第一型と、前記第一型に閉じ合せ可能な第二型と、前記第一型と前記第二型の間に形成されて前記枠体を成形可能なキャビティと、前記枠体よりも大寸で相似形の枠部材とを有し、
前記第一型と前記第二型の間に、前記ネット体の外周を保持した枠部材を取付け可能とし、
前記第一型と前記第二型を閉じ合せることで、前記第一型と前記第二型のいずれか一方の突出部により、前記一方とは異なる他方の凹部側に前記ネット体を押圧可能とするとともに、前記枠部材の内側に、前記ネット体を挟みつけた状態の前記キャビティを設ける構成とした支持部材の製造装置。
【請求項2】
面状のネット体と、前記ネット体をその周縁で保持可能な枠体とを有する支持部材の製造方法において、
前記支持部材を、第一型と、前記第一型に閉じ合せ可能な第二型と、前記第一型と前記第二型の間に形成されて前記枠体を成形可能なキャビティと、前記枠体よりも大寸で相似形の枠部材とを有する製造装置にて製造するに際して、
前記ネット体の外周を枠部材で保持しつつ、前記第一型と前記第二型の間に前記枠部材を配置したのち、前記第一型と前記第二型を閉じ合せるとともに、
前記第一型と前記第二型のいずれか一方に設けた突出部によって、前記一方とは異なる他方の凹部側に前記ネット体を押圧しつつ、前記枠部材の内周側に、前記ネット体を挟みつけた状態の前記キャビティを設けたのち、前記キャビティに樹脂を射出して前記枠体を成形する支持部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の支持部材の製造方法において、
前記枠部材によって前記ネット体の外周を保持する際に、前記ネット体を保持する第一部位と、前記第一部位よりも前記ネット体にテンションをかけて保持する第二部位とを設ける支持部材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−183755(P2012−183755A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49048(P2011−49048)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】