説明

改善された耐摩耗性を有する装置

導電性接触部が、熱可塑性ポリマー、繊維状強化材および無機充填剤を含むポリマー組成物と摺接可能な装置。導電性接触部のモース硬度が、無機充填剤のモース硬度の1単位以内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接触部が、熱可塑性ポリマー、繊維状強化材および無機充填剤を含むポリマー組成物と摺接可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気部品をはじめとする様々な用途に用いられる多くの装置では、導電性(金属、金属めっきやカーボン)接触部が、ポリマーを含む表面および金属またはその他導電性材料から形成された領域を摺動する必要がある。かかる部品の一例に、1つまたは複数の接触部が、動作中に、位置から位置へ動く電気スイッチがある。ある位置では、接触部が金属(またはその他導電性)表面と接触し、他の位置では、同じ接触部が、スイッチ筺体の一部であるポリマー表面と接触するかもしれない。このような接触部に用いる導電性材料は比較的柔らかいかもしれない。このような場合、ポリマー表面に接触部を摺動させる動作によって、接触部の表面が摩耗し得る。ポリマー材料が、無機充填剤および/または繊維状強化材を含有するときはとりわけである。導電性接触部から摩耗した導電性粒子は、プラスチックに埋め込まれて、装置の操作性が減少する可能性がある(例えば、表面の導電性領域間に望ましくない導電路が形成されることにより)。さらに、接触部は、装置が正確に動作しない点まで摩耗する可能性がある。これは、導電性接触部が薄い金属めっき表面であるときは特に問題がある。
【0003】
ポリマー表面に用いるポリマー組成物には無機充填剤および/または繊維状強化材を用いる必要があるか、またはそれが望ましいため、ポリマー材料が、確実に、剛性、熱たわみ温度および低反り性等の適切な機械的特性を有するようにする。このように、導電性接触部が、ポリマー表面と物理的な接触を繰り返しても、導電性接触部の表面の摩耗の少ない、接触部が表面と摺接する装置が望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示および特許請求されているのは、ポリマー組成物を含むポリマー表面と摺接可能な導電性接触部を含む装置であって、ポリマー組成物が、
(a)約30〜約90重量パーセントの熱可塑性ポリマー、
(b)約5〜約65重量パーセントの少なくとも1種の無機充填剤、および
(c)約5〜約50重量パーセントの少なくとも1種の繊維状強化材
を含み、導電性接触部のモース硬度が、無機充填剤(b)のモース硬度の1単位以内であり、重量百分率は組成物の総重量を基準とする装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の装置は、熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の無機充填剤、および少なくとも1種の繊維状強化材を含むポリマー組成物を含むポリマー表面と摺接する導電性接触部を含む。
【0006】
「摺接」という用語は、操作の動作中、導電性接触部が、ポリマー表面と物理的に接触し、ポリマー表面に対して法線に力をかけながら、ポリマー表面を摺動するようにして動くことを意味する。
【0007】
「導電性接触部」という用語は、ポリマー表面と物理的に接触する導電性表面を意味する。導電性接触部は、電気回路に接続されていてもよい。異なる材料またはポリマー材料でできた表面等他の表面にめっきまたはその他適用された金属または金属層であってもよい。好ましい金属は、銅、銀めっき銅、および錫めっき銅である。その他の有用な金属としては、ステンレス鋼、金および銀が挙げられる。導電性接触部はまた、カーボン等の導電性非金属材料で作製してもよい。接触部は、カーボンブラシの形態であってもよい。
【0008】
ポリマー表面は、装置の全てまたは一部を含む筺体の一部であってもよい。
【0009】
本発明の一実施形態において、装置は電気スイッチアセンブリである。電気スイッチアセンブリは、典型的には、1つまたは複数の部品、電気または電子回路に接続された1つまたは複数の導電性表面(金属表面等)、ポリマー表面、および動作中に位置から位置へ動き、電気または電子回路に接続された1つまたは複数の導電性接触部でできた筺体を含む。ある位置では、導電性接触部が導電性表面と接触し、他の位置では、同じ接触部が、本発明で用いるポリマー組成物を含む表面と物理的に接触する。接触部は、ポリマー表面に対して法線に力をかけながら、それらを導電性およびポリマー表面を摺動させることによって、位置が動く。ポリマー表面は筺体の一部であっても、あるいは、筺体は、他のポリマー材料をはじめとする他の材料でできていてもよい。筺体は、溶接(例えば、振動溶接、超音波溶接またはレーザー溶接)、糊つけ、締結具(ボルト、スクリュー等)等をはじめとする当該技術分野に公知の方法により、互いに取り付けられる2つ以上の部品を含む。導電性表面は、金属リードフレームの一部であってもよい。それらは、ポリマー表面に埋め込まれた導電性金属部品(リードフレーム等)に属するものであっても、ポリマー表面の上部にある金属片等の他の導電性部品であってもよい。導電性部品は、インサートモールディングまたはオーバーモールディング等、当該技術分野に公知の技術によりポリマー表面に埋め込んでもよい。導電性部品は、締結具を用いる等当該技術分野に公知の技術によりポリマー表面の上部に取り付けてもよい。導電性金属部品は、めっきによりポリマーに添加することができる。
【0010】
本発明による電気スイッチアセンブリ装置を図面に示す。図1を参照すると、ポリマー表面12およびポリマー表面12に取り付けられた複数の導電性(好ましくは、金属)表面14を含むスイッチ筺体10が概略的に示されている。図2を参照すると、導電性(好ましくは、金属)接触部18を含むワイパーアーム16が概略的に示されている。図3を参照すると、スイッチ筺体10とワイパーアーム16を含む電気スイッチアセンブリ20が概略的に示されている。ワイパーアーム16は、筺体10に接続されていて、導電性接触部18[図示せず]が、アセンブリ20と接触して、各導電性接触部18が、ポリマー表面12または導電性表面14と物理的に接触するようになっている。図4を参照すると、導電性接触部30、32および34がワイパーアーム16に取り付けられた電気スイッチアセンブリ20の断面図が示されている。導電性接触部30は、導電性表面36および37と電気的に結合および接触しており、一方、導電性接触部34は、導電性表面39および40と電気的に結合および接触している。導電性接触部32は、導電性表面とは電気的に結合していない。ポリマー表面12および導電性表面38と接触しているからである。導電性表面36、37、38、39および40は、1つのリードフレームに属している。
【0011】
図3を参照すると、ワイパーアーム16の物理的な位置は、軸22周囲を回転することにより変えることができる。位置が変化するにつれて、異なる組み合わせの接触部18が、導電性表面14およびポリマー表面12と物理的に接触する。接触部18および導電性表面14が、ワイパーアーム16およびリードフレームを通して、電気または電子回路に接続されているときは、これらの異なる位置は、スイッチの異なる配列に対応しており、スイッチの配列によって、導電性表面14とスイッチ配列と物理的に接触している導電性接触部18との間に電気を流して、他のデバイスを制御するのに用いてもよい。
【0012】
本発明の装置がスイッチアセンブリのときは、スイッチアセンブリは、車両ニュートラルセーフティスイッチ(パークセレクションスイッチまたはインヒビションスイッチとしても知られている)に用いてもよい。スイッチアセンブリはまた、他のタイプのスイッチ、特に、自動車やその他車両に用いられるもの、例えば、ファン速度スイッチ、ライトスイッチ(例えば、ハイビーム/ロービームスイッチ)、風防ワイパー速度スイッチ等に用いてもよい。スイッチは、導電性トレースとトレースを拭く導電性ワイパーを含むスイッチであるのが好ましい。スイッチは、異なる回路が各位置で電圧印加される用途に特に好適である。
【0013】
本発明の装置は、数多くのその他の形態を取り得る。例えば、導電性接触部が、ポリマー表面にまたがる金属プランジャの形態であるソレノイド体等である。装置は、圧縮カーボンが、銅整流子を払うようなものであってもよい。
【0014】
本発明で用いる組成物に用いる熱可塑材は、任意の熱可塑性ポリマーであってもよい。2種以上の熱可塑性ポリマーのブレンドを用いてよい。好適な熱可塑性ポリマーとしては、これらに限られるものではないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド、およびシンジオタクチックポリスチレンが例示される。好ましいのはポリアミドとポリエステルである。
【0015】
好適なポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンおよび/またはアミノカルボン酸の縮合生成物、および/または環状ラクタムの開環重合生成物である。好適なジカルボン酸としては、これらに限られるものではないが、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が挙げられる。好適なジアミンとしては、これらに限られるものではないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、およびp−キシレンジアミンが挙げられる。好適なアミノカルボン酸は、11−アミノドデカン酸である。好適な環状ラクタムは、カプロラクタムおよびラウロラクタムである。好ましいポリアミドとしては、脂肪族ポリアミド、例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12、半芳香族ポリアミド、例えば、ポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)、ならびにこれらのポリマーのコポリマーおよび混合物が挙げられる。ポリアミドは、アモルファスまたは半結晶であってもよい。
【0016】
好ましいポリエステルとしては、固有粘度が0.3以上のポリエステルが挙げられ、通常、ジオールとジカルボン酸の線状飽和縮合生成物またはこれらの反応性誘導体である。好ましくは、8〜14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸と、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、および式HO(CH)nOH(式中、nは2〜10の整数)の脂肪族グリコールの縮合生成物を含む。20モルパーセントまでのジオールは、アクゾノーベルケミカルズ社(Akzo Nobel Chemicals,Inc.)よりジアノール(Dianol)220という商品名で販売されているエトキシル化ビスフェノールA、ヒドロキノン、ビスフェノールまたはビスフェノールA等の芳香族ジオールであってよい。50モルパーセントまでの芳香族ジカルボン酸は、8〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種の異なる芳香族ジカルボン酸に置換でき、かつ/または20モルパーセントまでを、2〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸に置換することができる。コポリマーは、2種以上のジオールまたはその反応性等価物および少なくとも1種のジカルボン酸またはその反応性等価物または2種以上のジカルボン酸またはその反応性等価物および少なくとも1種のジオールまたはその反応性等価物から調製してよい。ヒドロキシ安息香酸やヒドロキシナフトエ酸等の二官能性ヒドロキシ酸モノマーを用いてもよい。
【0017】
好ましいポリエステルとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンナフタレート)(PBN)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)、およびこれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。同じく好ましいのは、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート/イソフタレートコポリマー、イソフタル酸、ビベンゾイック酸、1,5−、2,6−および2,7−ナフタレンジカルボン酸をはじめとするナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、エチレン−ビス−p−安息香酸、1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香)酸、エチレンビス(p−オキシ安息香)酸、1,3−トリメチレンビス(p−オキシ安息香)酸、および1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香)酸をはじめとする芳香族ジカルボン酸から誘導されたその他線状ホモポリマーエステル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択されるグリコール、一般式HO(CH)nOH(式中、nは2〜10の整数)の脂肪族グリコール、例えば、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,8−オクタメチレングリコール、1,10−デカメチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、および1,4−ブチレングリコールである。上述したとおり、アジピン、セバシン、アゼライン、ドデカンジ酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導された1種または複数種の脂肪族酸から誘導された20モルパーセントまでの繰り返し単位が存在し得る。同じく好ましいのは、1,4−ブタンジオール、エトキシル化ビスフェノールA、およびテレフタル酸またはその反応性等価物から誘導されたコポリマーである。同じく好ましいのは、少なくとも2種のPET、PBT、およびPPTのランダムコポリマー、少なくとも2種のPET、PBT、およびPPTの混合物およびこれらの混合物である。
【0018】
ポリエステルはまた、ポリ(アルキレンオキシド)ソフトセグメントを含有するコポリマーの形態であってもよい。ポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、ポリエステルの重量を基準として100重量部当たり約1〜約15重量部で存在しているのが好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの数平均分子量は、約200〜約3250、より好ましくは、約600〜約1500の範囲である。好ましいコポリマーは、PETまたはPBT鎖に組み込まれたポリ(エチレンオキシド)を含有する。組み込み方法は、当業者に知られており、重合反応中に、コモノマーとしてポリ(アルキレンオキシド)ソフトセグメントを用いて、ポリエステルを形成することが含まれる。PETは、PBTのコポリマーおよび少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)とブレンドしてよい。ポリ(アルキレンオキシド)はまた、PET/PBTコポリマーとブレンドしてもよい。ポリ(アルキレンオキシド)ソフトセグメントを組成物のポリエステル部分に含めると、ポリエステルの結晶化速度が促進される。
【0019】
本発明で用いる組成物は、約30〜約90重量パーセント、好ましくは約40〜約80重量パーセント、より好ましくは約45〜約75重量パーセントの熱可塑性ポリマーを含む。重量百分率は、組成物の総重量を基準とする。
【0020】
本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、約5〜約65重量パーセント、より好ましくは、約10〜約40重量パーセント、さらに好ましくは、約15〜約30重量パーセントの少なくとも1種の無機充填剤を含む。
【0021】
無機充填剤は、少なくとも1種の非繊維状または非針状充填剤であり、フレーク、板状、顆粒、球状、立方体、管状、歯状、矩形、不規則等の形態を有していてよい。
【0022】
導電性接触部の材料は、少なくとも約75重量パーセント、好ましくは少なくとも約90重量パーセント、さらに好ましくは少なくとも95重量パーセント、さらに好ましくは少なくとも99重量パーセント、より好ましくは少なくとも100重量パーセントの量の組成物中に存在する無機充填剤が、約1単位のモース硬度以内のモース硬度を有するように(無機充填剤のモース硬度が約1単位未満から、各無機充填剤のモース硬度の約1単位以上の間にあることを意味する)選択される。好ましくは、導電性接触部の材料は、少なくとも約75重量パーセント、好ましくは少なくとも約90重量パーセント、さらに好ましくは少なくとも95重量パーセント、さらに好ましくは少なくとも99重量パーセント、より好ましくは少なくとも100重量パーセントの量の組成中に存在する無機充填剤が、約0.5単位のモース硬度以内のモース硬度を有するように、選択される。導電性接触部および無機充填剤の材料は、導電性接触部材料のモース硬度が約2.5〜約4であり、各無機充填剤のモース硬度が約2.5〜約4となるように選択されるのが好ましい。
【0023】
例えば、導電性接触部の材料が、モース硬度が約2.5〜3の銅または銀めっき銅であるときは、好適な無機充填剤は、炭酸カルシウム(モース硬度約3)、マイカ(モース硬度約3)、モンモリロナイト(モース硬度約2〜3)、および石膏(モース硬度約2.3〜3)の形態を含む。
【0024】
無機充填剤は、組成物の総重量を基準として、約5〜約65重量パーセント、より好ましくは、約10〜約40重量パーセント、さらに好ましくは、約15〜約30重量パーセントで存在する。
【0025】
繊維状強化材は、アスペクト比が約3以上の少なくとも1種の繊維状または針状材料である。好適な強化材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、珪灰石、およびアラミド等が例示される。用いる強化材の量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは、約5〜約50重量パーセント、より好ましくは、約10〜約40重量パーセント、さらに好ましくは、約15〜約30重量パーセントである。
【0026】
組成物は、これらに限られるものではないが、1種または複数種の衝撃改質剤、可塑剤、熱安定剤、酸化安定剤、UV光安定剤、難燃剤、化学安定剤、潤滑剤、離型剤、着色剤(例えば、カーボンブラックやその他染料、顔料)、核形成剤、ナノクレイ、流量増加剤等任意の追加の成分を含有していてもよい。
【0027】
本発明で用いる組成物は、溶融混合ブレンドである。溶融ブレンドは、当業者に知られた任意の適切な方法を用いて実施してよい。好適な方法としては、単軸または二軸押出し機、ブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、成形機等を用いることが挙げられる。二軸押出し機が好ましい。組成物は、射出成形、回転成形、およびその他溶融処理技術をはじめとする任意の適切な溶融処理技術により作製された筺体をはじめとする様々な物品の形態にあってよい。
【0028】
本発明の一実施形態において、熱可塑性ポリマーが、ポリアミドやポリエステル等の縮合ポリマーであるときは、組成物は、任意で、熱可塑性ポリマー、強化材、無機充填剤、および任意の追加の成分を、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ジカルボン酸無水物、および/またはトリカルボン酸無水物の形態の少なくとも1種の流量増加剤と溶融ブレンドすることにより作製してもよい。これらは、本明細書では、「カルボン酸および/または無水物」と呼ばれる。あるいは、ポリマーと、1種または複数種の所望の成分を予め溶融ブレンドした混合物を、カルボン酸および/または無水物および必要または所望の追加の成分と溶融ブレンドしてもよい。
【0029】
カルボン酸および/または無水物は、好ましくは、縮合ポリマーの融点吸熱の開始温度以下の融点を有する芳香族カルボン酸および/または無水物である。カルボン酸および/または無水物はまた、脂環式カルボン酸および/または無水物、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等であってもよい。
【0030】
カルボン酸および/または無水物を参照して本明細書で用いる「融点」という用語は、有機酸が融点を有していない場合には、昇華点または分解点のことを指す。好適な芳香族ジカルボン酸および/または芳香族ジカルボン酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸および無水トリメリト酸が例示される。
【0031】
熱可塑性縮合ポリマーの「融点吸熱の開始温度」とは、ASTM法D3418−82(改訂1988年)に従って、示差走査熱量計(DSC)により測定される、ポリアミドまたはポリエステルの融解曲線の外挿開始温度(T)を意味する。縮合ポリマーが、2つ以上の融点吸熱を有する場合は、最低融点吸熱の開始温度を選択する。2種以上のポリマーを用いる場合には、最低融点吸熱開始温度のポリマーの融点吸熱の開始温度を選択する。
【0032】
カルボン酸および/または無水物は、約0.01〜約10重量パーセント、好ましくは約0.05〜約2重量パーセント、より好ましくは約0.1〜約1重量パーセントで用いる。重量百分率は、縮合ポリマーの総重量に基づいている。
【実施例】
【0033】
以下のポリマー樹脂組成物を実施例および比較例で用いた。ポリマー樹脂は全て本願特許出願人により供給された。
【0034】
実施例1:ミンロン(Minlon)(登録商標)IG39BK434:13重量パーセントのガラス繊維および25重量パーセントの炭酸カルシウムおよび黒色着色剤を含有するポリアミド6,6
比較例1:ミンロン(Minlon)(登録商標)IG38C1BK434:10重量パーセントのガラス繊維および28重量パーセントのカオリンおよび黒色着色剤を含有するポリアミド6,6
比較例2:ミンロン(Minlon)(登録商標)FE6228BK192Y:17重量パーセントのガラス繊維および20重量パーセントの珪灰石および黒色着色剤を含有するポリアミド6
比較例3:ミンロン(Minlon)(登録商標)IG40D2BK434:13重量パーセントのガラス繊維および25重量パーセントのタルクおよび黒色着色剤を含有するポリアミド6,6
比較例4:ミンロン(Minlon)(登録商標)FE6190BK086:16.5重量パーセントのガラス繊維および19.6重量パーセントの珪灰石および黒色着色剤を含有するポリアミド6,6
比較例5:ミンロン(Minlon)(登録商標)11C40NC010:40重量パーセントのカオリンを含有するポリアミド(ポリアミド6,6およびポリアミド6の重量を基準として3:1の溶融混合ブレンドを含む)
比較例6:ザイテル(Zytel)(登録商標)70G33LNC010:33重量パーセントのガラス繊維を含有するポリアミド6,6
比較例7:ザイテル(Zytel)(登録商標)72G33LNC010:33重量パーセントのガラス繊維を含有するナイロンコポリマー66/6
比較例8:45重量パーセント(A)、36重量パーセント(B)および19重量パーセント(C)のキューブブレンド。(A)はザイテル(Zytel)(登録商標)77G33L:33重量パーセントのガラス繊維を含有するポリアミド6,12。(B)は、ミンロン(Minlon)(登録商標)IG38C1BK434:10重量パーセントのガラス繊維および28重量パーセントのカオリンおよび黒色着色剤を含有するポリアミド6,6。(C)は、ザイテル(Zytel)(登録商標)101LNC010:ポリアミド6,6。
比較例9:45重量パーセント(A)、40重量パーセント(B)および15重量パーセント(C)のキューブブレンド。(A)はザイテル(Zytel)(登録商標)77G33L:33重量パーセントのガラス繊維を含有するポリアミド6,12。(B)は、ミンロン(Minlon)(登録商標)IG40D2BK434:13重量パーセントのガラス繊維および25重量パーセントのタルクおよび黒色着色剤を含有するポリアミド6,6。(C)は、ザイテル(Zytel)(登録商標)101LNC010:ポリアミド6,6。
比較例10:50重量パーセント(A)および50重量パーセント(B)のキューブブレンド。(A)はザイテル(Zytel)(登録商標)70GB30:30重量パーセントのガラスビーズを含有するポリアミド6,6。(B)は、ザイテル(Zytel)(登録商標)70G33LNC010:33重量パーセントのガラス繊維を含有するポリアミド6,6。
【0035】
(試験方法)
熱たわみ温度(HDT)を、1.8MPaで、ISO法75を用いて求めた。結果を表1に示す。
【0036】
摩耗試験を、ASTM D3702スラストワッシャ機で実施した。各実施例および比較例のポリマー樹脂組成物を、ASTM法に規定されたものからは少し修正して、0.2inの表面積を有する可動試験試料へと成形した。試験は、1秒当たり0.13フィートおよび213psi(27.7PV)で、一方向回転で行った。試験は、銀めっき銅の固定リングカウンタ表面に対して行った。試験時間は100分であった。試験は、23℃、50%相対湿度で行い、試料は、試験開始の際、成形時乾燥状態であった。各組成物の3つの試料を試験し、結果を平均した。平均重量損失を表1に示す。
【0037】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ポリマー表面を含むスイッチ筺体の平面図である。
【図2】導電性接触部を含むワイパーアームの図である。
【図3】本発明による電気スイッチアセンブリ装置の平面図である。
【図4】本発明による電気スイッチアセンブリ装置の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物を含むポリマー表面と摺接可能な導電性接触部を含む装置であって、前記ポリマー組成物が、
(a)約30〜約90重量パーセントの熱可塑性ポリマー、
(b)約5〜約65重量パーセントの少なくとも1種の無機充填剤、および
(c)約5〜約50重量パーセントの少なくとも1種の繊維状強化材
を含み、前記導電性接触部のモース硬度が、前記無機充填剤(b)のモース硬度の1単位以内であり、前記重量百分率は、前記組成物の総重量を基準とすることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記導電性接触部の前記モース硬度が、前記無機充填剤(b)のモース硬度の0.5単位以内であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびシンジオタクチックポリスチレンの1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、1種または複数種のポリエステルおよび/または1種または複数種のポリアミドであることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンナフタレン)、ポリ(エチレンナフタレート)、およびポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)からなる群の1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド、およびヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミドからなる群の1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記強化材が、ガラス繊維、カーボン繊維、珪灰石、およびアラミドの1つまたは複数であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記強化材がガラス繊維であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項9】
前記導電性接触部が金属であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記金属接触部が銅または銀めっき銅であり、前記無機充填剤が、炭酸カルシウム、マイカおよび石膏の1つまたは複数であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記無機充填剤が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ポリマー組成物が、1種または複数種のポリアミドおよび/または1種または複数種のポリエステルを含む混合物を、無機充填剤(b)と、および少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸、および/または芳香族トリカルボン酸無水物と溶融ブレンドすることにより調製されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項13】
電気スイッチアセンブリの形態にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
車両ニュートラルセーフティスイッチの形態にあることを特徴とする請求項13に記載の電気スイッチアセンブリ。
【請求項15】
ソレノイド体の形態にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−529763(P2009−529763A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558411(P2008−558411)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/006007
【国際公開番号】WO2007/106380
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】