説明

改善したESCRを有するブロー成形樹脂

環境応力亀裂抵抗、剛さ及び耐衝撃性において改善したポリエチレン樹脂を、酸化クロム触媒とシリルクロム触媒との両方を重合反応器へ供給することを含む工程により製造する。酸化クロム触媒とシリルクロム触媒は、別の担体上に存在する。触媒の総重量に対して、酸化クロム触媒は25〜50重量パーセントであり、シリルクロム触媒は50〜75重量パーセントである。触媒は、別々に、または単一の混合物として加えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概してエチレン重合に関し、より詳細には、気相重合反応器においてポリエチレンを生産するためにクロム系触媒(chromium-based catalysts)を使用するための方法及び装置に関し、特に、酸化クロム系であるクロム系触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形や押出用途に用いられるポリエチレン樹脂には、剛さ、耐衝撃性および環境応力亀裂抵抗(ESCR)が必要である。加工の際に、これらの材料は、プロセスの不安定さや、許容できない膨張率(swell)がなく、また余分なヘッド圧力又は温度を要せずに高い速度で流動可能なことが必要とされる。これらの用途で使用されるポリエチレン製品のほとんどは、スラリーまたは気相プロセスにおいてクロム触媒系を用いて製造される。これらの用途のためのポリエチレン製品の設計にあたって、特性間にトレードオフの関係がある。ESCRは、密度(結晶化度)の減少および/または分子量(または高分子量成分)の増加および/または優先的により高分子量の分子への短い分岐鎖(SCB:short chain branches)の付加によって、増加させることができる。密度を減少させることで、一定の剛さが犠牲になる一方、ESCRが増加する。本酸化クロム触媒技術は、産業界の標準製品と本質的に等しい特性のバランスを有する製品を製造することができる。シリルクロム(「シリルクロム酸塩」ともいう)を触媒として製造された製品(silyl chromium catalyzed products)は、ある密度で優れた物理的性質(ESCR、衝撃性)を示すが、より大きい高分子量テール(tail)のために、これらのシリルクロムで製造された製品は、ブロー成形工程において、高い膨張率と高いヘッド圧力を示す。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ある好ましい実施形態では、本発明は、エチレンポリマーを製造する方法である。この方法は、酸化クロム触媒を活性化するのに用いられる条件で焼成して酸化クロムにすることができる化合物を含有し、第1の担体に担持された少なくとも1つの酸化クロム触媒と、第2の担体に担持された少なくとも1つのシリルクロム触媒とを混合して触媒混合物を調製する工程であって、前記酸化クロム触媒は、前記触媒混合物の総重量を基準として約25〜約50重量パーセント含まれ、そして、前記シリルクロム触媒は、前記触媒混合物の総重量を基準として約50〜約75重量パーセント含まれる工程;前記触媒混合物を重合反応器に導入する工程であって、エチレンを含む少なくとも1つのモノマーが前記反応器中に存在し、前記反応器は、前記少なくとも1つのモノマーが前記触媒混合物の存在下で重合するような重合条件に維持される工程;前記混合工程の前又は後のいずれかであるが、前記触媒混合物を前記反応器に導入する前に、前記酸化クロム触媒を活性化する工程;及び、エチレンポリマーが形成されるように、前記反応器において前記触媒混合物と前記モノマーとを接触させる工程を有する。前記方法により製造されるエチレンポリマーは、前記酸化クロム触媒のみの存在下での同様の重合条件で調製されるエチレンポリマーと比較して、環境応力亀裂抵抗(ESCR)が少なくとも約400%増加し、膨張率の増加が約15%以下であることにより特徴付けられる。
【0004】
他の好ましい実施形態では、本発明は、エチレンポリマーを製造する方法である。この方法は、エチレンを含む少なくとも1つのモノマーが存在し、重合条件に維持される、重合反応器を準備する工程;第1の担体に担持された少なくとも1つの活性化された酸化クロム触媒を、前記反応器に連続的に又は断続的に導入する工程であって、前記酸化クロム触媒は、前記酸化クロム触媒を活性化するのに用いられる条件で焼成して酸化クロムにすることができる化合物を含有する工程;前記反応器中に存在する触媒の総重量を基準として、前記酸化クロム触媒が約25〜約50重量パーセント含まれ、そして、前記シリルクロム触媒が約50〜約75重量パーセント含まれるように、第2の担体に担持された少なくとも1つのシリルクロム触媒を、前記反応器に連続的に又は断続的に導入する工程;及び、エチレンポリマーが形成されるように、前記反応器において、前記酸化クロム触媒と前記シリルクロム触媒と前記モノマーとを接触させる工程を有する。前記方法におけるエチレンポリマーは、前記酸化クロム触媒のみの存在下での同様の重合条件で調製されるエチレンポリマーと比較して、ESCRが少なくとも約400%増加し、膨張率の増加が約15%以下であることにより特徴付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、クロム系触媒(chromium-based catalysts)を個別に、又は混合して、乾燥又はスラリーの形態で、重合反応器へ供給する方法を含み、該方法は種々の新規な利点を提供する。該クロム系触媒は、酸化クロムおよびシリルクロムの触媒の組合せである。
【0006】
酸化クロム触媒は、CrO3または適用される活性化条件の下でCrO3に変換可能な化合物であってもよい。CrO3に変換可能な化合物は、米国特許第2,825,721号、第3,023,203号、第3,622,251号及び第4,011,382号(これらの特許における開示は、参照することによって、本明細書に組み込まれる)に開示され、クロムアセチルアセトン、塩化クロム、硝酸クロム、クロムアセテート、硫酸クロム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸アンモニウムまたは他の溶解可能なクロム酸塩を含む。
【0007】
前記シリルクロム触媒は、少なくとも1つの式I:
【化5】

(ここで、Rは、それぞれ、1〜14個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)の基を有することにより特徴付けられる。
【0008】
式Iの基を有する好ましい化合物は、式II:
【化6】

(ここで、Rは上記のように定義される)のビス−トリヒドロカルビルシリルクロム酸塩である。
Rは、1〜約14個の炭素原子を有する、好ましくは約3〜約10個の炭素原子を有するアルキル、アルカリル(alkaryl)、アラルキル又はアリールラジカルのような任意の炭化水素基とすることができる。これらの具体例は、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、2−メチル−ペンチル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ヘンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ベンジル、フェネチル、p−メチル−ベンジル、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、エチルフェニル、メチルナフチル、ジメチルナフチルなどである。この方法に用いることができる網羅的又は完全な例ではないが、好ましいシリルクロム酸塩の具体例は、ビス−トリメチルシリルクロム酸塩、ビス−トリエチルシリルクロム酸塩、ビス−トリブチルシリルクロム酸塩、ビス−トリイソペンチルシリルクロム酸塩、ビス−トリ−2−エチルヘキシルシリルクロム酸塩、ビス−トリデシルシリルクロム酸塩、ビス−トリ(テトラデシル)シリルクロム酸塩、ビス−トリベンジルシリルクロム酸塩、ビス−トリフェネチルシリルクロム酸塩、ビス−トリフェニルシリルクロム酸塩、ビス−トリトリルシリルクロム酸塩、ビス−トリキシリルシリルクロム酸塩、ビス−トリナフチルシリルクロム酸塩、ビス−トリエチルフェニルシリルクロム酸塩、ビス−トリメチルナフチルシリルクロム酸塩、ポリジフェニルシリルクロム酸塩、ポリジエチルシリルクロム酸塩などの化合物である。このような触媒の例は、例えば、米国特許第3,324,101号、第3,704,287号及び第4,100,105号に開示され、これらの特許における開示は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0009】
本発明のクロム系触媒は、従来の触媒担体又は基体、例えば、無機酸化物材料に堆積する(deposited)。本発明の触媒組成物において担体として使用してもよい無機酸化物材料は、広い表面積、例えば、約50〜約1000m2/gの範囲の表面積、及び約30〜200ミクロンの粒径を有する多孔性材料である。使用してもよい無機酸化物は、シリカ、アルミナ、トリア(thoria)、ジルコニア、アルミニウム隣酸塩および他の類似の無機酸化物、及びこれらの酸化物の混合物を含む。酸化クロム系触媒及びシリルクロム酸系触媒は、それぞれ別の担体上に堆積する。好ましくは、酸化クロム触媒及びシリルクロム酸触媒の担体は表面積及び気孔率に関して互いに類似しており、より好ましくは、各触媒担体は平均細孔容積がそれぞれ30%以内であり、最も好ましくは、各触媒担体は全く同一である。
【0010】
担体に触媒を堆積させる方法は公知であり、上記組み込まれた米国特許中に記載されるものであってもよい。クロム化合物は、通常、活性化工程の後に、触媒中のクロムレベルが望ましくなるような量で、それらの溶液から担体へ堆積させる。前記化合物が担体に堆積し、活性化された後、粉末状で、流動性のある微粒子材料となる。
【0011】
前記担持触媒(supported catalyst)の活性化は、およそその焼結温度までのほぼあらゆる温度で達成しうる。活性化中に乾燥空気又は酸素の流れを前記担持触媒に通すことは、前記担体から水分を除去するのに役立つ。十分に乾燥した空気又は酸素を用い、温度が担体の焼成温度より低く維持される場合には、約1時間から長くても24〜48時間の短時間での約300℃〜900℃の活性化温度で十分である。
【0012】
この技術は複数の方法で実施することができる。ある好ましい方法では、酸化クロム及びシリルクロム酸塩の触媒は、2つ又はそれ以上の触媒フィーダーを通して、重合反応器に別々に供給することができる。他の好ましい方法では、酸化クロム及びシリルクロム酸塩の触媒は予め混合することができ、単一の触媒フィーダーを通して、重合反応器に単一混合物として同時に供給することができる。
【0013】
いずれの好ましい方法でも、触媒は乾燥フィーダーを介して、より好ましくは、粘性不活性液体中のスラリーとして反応器に供給される。粘性不活性液体中のスラリーは、スラリーから触媒が沈降するのを防ぐように、好ましくは少なくとも500cpの高粘度を有する。不活性の液体は、典型的には、鉱油である。
【0014】
触媒のスラリーは、適当な送液システムを使用して、重合反応器に供給することができる。典型的には、スラリーは高圧シリンジシステム又は他の積極的な移動装置(positive displacement device)を介して、反応器に導入される。ある典型的な装置が、Moyno(登録商標)ポンプとして知られており、これらは一般的に連続的キャビティポンプ(progressive cavity pump)として知られ、高粘着性のスラリーの移動や高圧の生成のために非常に適している。このような積極的な移動は、正確で精密な送液速度を提供する。
【0015】
酸化クロム及びシリルクロム酸塩の触媒システムは、公知の装置及び反応条件を用いて、懸濁液、溶液、スラリーまたは気相のプロセスによるオレフィン重合に使用することができ、特定のタイプの反応系に限定されない。一般的に、オレフィン重合の温度は、大気圧、減圧又は超減圧(subatmospheric, or superatmospheric pressures)下において、約0℃〜約200℃の範囲である。スラリー又は溶液重合プロセスでは、減圧又は超減圧、及び約40℃〜約115℃の範囲の温度を用いる。実用的な液相重合反応系は、参照することによって、本明細書に組み込まれる米国特許第3,324,095号に記載されている。液相反応系(liquid phase reaction systems)は、一般的に、オレフィンモノマー及び触媒組成物が加えられる反応容器を含み、該ポリオレフィンを溶解又は懸濁させるための反応溶媒を含む。反応溶媒は、バルクの液状モノマー又は適用される重合条件下で非反応性の不活性液体の炭化水素から構成することができる。そのような不活性液体の炭化水素は、触媒組成物又は該工程によって得られるポリマーのための溶媒として機能する必要はないが、通常、重合で用いられるモノマーのための溶媒として働く。この目的のために適した不活性液体の炭化水素は、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等である。オレフィンモノマーと触媒組成物との反応性接触は、一定の混合又は攪拌によって維持される。オレフィンポリマー生成物および未反応のオレフィンモノマーを含む反応溶媒は反応器から連続的に回収される。オレフィンポリマー生成物は分離され、未反応のオレフィンモノマーおよび液状の反応溶媒は反応器にリサイクルされる。
【0016】
1〜1000psi、好ましくは50〜500psi、最も好ましくは100〜450psiの範囲の超減圧(superatmospheric pressures)下、30〜130℃、好ましくは65〜115℃の範囲の温度での、気相重合の適用が好ましい。混合床又は流動床の気相反応システムが特に好ましい。オレフィンの気相流動床重合においては、重合は流動床反応器において行われ、ポリマー粒子の床はガス状反応モノマーを含むガス流を上昇させることを利用して流動状態を維持する。混合床反応器におけるオレフィンの重合は、床での流動に寄与する反応ゾーンでの機械的混合による働き(action of a mechanical stirrer)の点で、ガス流動床反応器における重合とは異なる。このような重合プロセスの開始時には、一般的に、製造が望まれるポリマーに類似した予め形成されたポリマー粒子の床(bed)を用いる。重合の間は、触媒作用によるモノマーの重合により新たなポリマーが生成され、ポリマー生成物は、床をほぼ一定の容量に維持するために、回収される。産業上有利な工程では、床に流動ガスを供給したり、ガス供給が停止された場合に床のためのサポートとしても働く流動グリッド(fluidization grid)を用いる。未反応モノマーを含む流れは反応器から連続的に回収され、米国特許第4,528,790号及び第5,462,999号(共に参照することにより本明細書に組み込まれる)に開示されるように、圧縮、冷却、そして任意に、完全にまたは部分的に凝縮され、反応器へリサイクルされる。生成物は反応器から回収され、補給モノマーはリサイクル流れに加えられる。触媒組成物及び反応物に不活性な任意のガスがガス流れ中に存在すると、システムの温度調整のために望ましい。さらに、カーボンブラック、シリカ、クレイまたはタルクのような流動化助剤も、米国特許第4,994,534号に開示されているように使用することができ、該開示は参照することによって、本明細書に組み込まれる。触媒活性を大きく損失させることなく、酸化クロム及びシリルクロム酸塩の触媒の両方を用いて、重合反応器を作動させることができると予想される。
【0017】
重合は単一反応器または一連の2つ以上の反応器で実施され、実質的に触媒毒(catalyst poison)がない状態で行われる。
【0018】
本発明にしたがって有用に重合されるモノマーは、例えば、エチレン性不飽和モノマー(ethylenically unsaturated monomers)、共役又は非共役のジエン類、ポリエン類などである。好ましいモノマーには、C2−C8α−オレフィン類、特に、エチレン、プロペン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテン、及びジエン類、5−エチリデン−2−ノルボルネン及びピペリレンが含まれる。他の有用なモノマーは、スチレン、ハロ−又はアルキルで置換されたスチレン類、テトラフルオロエチレン、ビニルベンゾシクロブテン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4−ビニルシクロヘキセン、及びビニルシクロヘキサン、2,5−ノルボルナジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン及びナフテン酸類(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン及びシクロオクテン)を含む。
【0019】
酸化クロムおよびシリルクロム酸塩の触媒混合物を用いて製造されたポリエチレンの樹脂は、改善した物理的性質と抑制された膨張率(moderate swell)との望ましいバランスを示す。続いて、研究対象のサンプルはブロー成形機に導入され、比較品用と同じダイギャップを維持しつつ、ボトルの重さを決定する。
【実施例】
【0020】
触媒1
酸化クロム系触媒(触媒1)を、欧州特許第0640625号A2に記載されるように製造した。欧州特許第0640625号A2に記載されるように、この触媒は、以下の複数の工程からなる手順により製造することができる。
【0021】
ステップ1:(乾燥)
約70%の細孔容積、100オングストロームより大きい細孔サイズ(Davison Grade 955)を有する、酸化クロム被覆のシリカ(0.5重量%重のCr、クロムとして計算される)を、周囲温度及び周囲圧力条件下かつ窒素(N2)雰囲気下に維持された流動床乾燥容器(fluid-bed drying vessel)に導入した。容器の温度を50℃/時の速度で150℃まで上昇させた。前記シリカを150℃で4時間保持し、2〜3時間で100℃以下まで冷却した。
【0022】
ステップ2:(チタネーション(titanation))
ステップ1の生成物190Kgを、ジャケット付き混合容器に入れた。ステップ1の生成物1Kgに対して5.4リットルのイソペンタンを、攪拌しながら、かつ、55度まで昇温しながら容器内の内容物に加えた。温度が55℃に到達した後、ヘキサン中の50重量%のテトラ−イソプロピルチタン酸塩(TIPT)をステップ1の生成物1Kgに対して0.55リットル加えた。容器を大気圧から4.1気圧(4.1 atmospheres)まで加圧し、2時間維持し混合した。温度を100℃まで上昇させ、圧力を1.15気圧まで減圧することで、イソペンタン及びヘキサン溶媒を蒸発させた。圧力を開放してから2時間後、混合物を18Kg/時のチッソで容器の底をとおして24時間パージした。
【0023】
ステップ3:(活性化(activation))
良好な流動下で、ステップ2の生成物を、窒素雰囲気下、50℃/時の速度で室温から150℃まで昇温した。次に、窒素中、150℃で2時間加熱した後、50℃/時の速度で150℃から325℃まで昇温した。窒素中で2時間、次に、空気中で1時間、生成物を325℃に維持した。空気中、100℃の速度で325℃から825℃まで温度を上げて、空気中、825℃で6時間維持した。次に、空気中、300℃まで温度をできるだけ速く降下させた。300℃において、空気を窒素に換えて、温度をできるだけ速く室温まで降下させた。
【0024】
触媒2
シリルクロム酸塩系触媒(触媒2)を、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,022,933号及び第3,704,287号に記載される方法により製造した。触媒2は、シリコンに担持された、アルミニウム/クロム原子比が1.5:1のトリフェニルシリルクロム酸塩とジエチルアルミニウムエトキシドの反応性生物である。触媒2は、次のようにして製造することができる。反応ボトルに注意して窒素を入れて、反応ボトルの中から空気をパージし、次に、ボトルに25ミリリットルのn−デカンを入れた。次に、ボトルに10mgのシリルクロム酸エステルと400mgの活性化担体(activated support)を入れた。実験に使用したn−デカンは、硫酸またはフィルトロールクレイ(Filtrol clay)のいずれかで処理し、次いでモレキュラーシーブで乾燥させることにより、予め水及び他の潜在的な触媒毒を除去して精製しておいた。活性化担体上のクロム酸エステルの堆積を、溶媒中の色が消えることを証拠として、完了させた後、触媒系を含むボトルを、予め望ましい還元温度±5℃に加熱したオイルバスに沈めた。還元反応が室温で行われるべき場合は、ボトルは一切加熱されなかった。ボトル及び内容物が望ましい反応温度に達した後、0.5Mの還元剤のデカン溶液0.5mlを、担持されたクロム酸エステルのスラリーに、効率よく攪拌しながら素早く加えた。次に、得られた還元触媒スラリーを冷却し(必要ならば周囲温度まで)、そして、得られた還元触媒スラリーを以下に開示する重合反応に用いた。ヘキサン中の担持されたクロム酸エステルのスラリーを調製し、室温での減圧下、ヘキサンを除去した後、乾燥した担持クロム酸エステルを望ましい還元温度で必要量の還元剤を含む25mlのデカンに加えることにより、同様の生成物を得た。
【0025】
実験室およびパイロット−プラントのスケールの両方において、スラリー中のクロム触媒(単独及び混合)の特徴が明らかになるように、実験を計画した。
【0026】
F−3及びS−2の触媒系を用いて製造され、基本的に同じフローインデックス(高い負荷のメルトインデックス,I21)及び密度を有するPE樹脂のブレンド物を混合した。特性評価には、ブロー成形装置における処理工程での測定に加えて、物理的性質の測定を含めた。物理的性質を表1にまとめ、膨張特性を図1及び2に示した。
【0027】
市販の反応器におけるF−3触媒からS−2触媒への移行状態(a transition from F-3 to S-2 catalyst)から得られた樹脂サンプルの特性を明らかにした。生成物の評価結果は表2と図3及び4にまとめてある。触媒残留物の分析に基づくサンプル2及び3については、触媒混合物におけるシリルクロム酸塩成分の濃度をおよそ50〜75%と推定した。特性を実施例1にまとめた。
【0028】
「びん重量」テスト("bottle weight" test)により、樹脂の膨張率(swell)を明らかにした。このテストでは、ボトルは改良型B-15フロー成形装置で成形される。装置は、対照樹脂(酸化クロム触媒を用いて製造した標準HIC樹脂)を用い、75グラムのボトルを製造するようにセットアップした。続いて、研究対象のサンプルはブロー成形機に導入され、比較品用と同じダイギャップを維持しつつ、ボトルの重さを決定する。
【0029】

【0030】
パイロットプラントの反応器におけるS−2からF03の触媒への移行状態(a transition from S-2 to F03 catalyst)から得られた樹脂サンプルの特性を明らかにした。生成物の分析結果を表3と図5及び6にまとめた。これらのサンプルは、酸化クロムのサンプルと比較して、改善したESCRを示したが、膨張率(swell)は、実験された他の転移サンプルにおいて観察されたものよりも高かった。
【0031】
好ましい製品設計(0.956〜0.958の高密度)のものは、この密度範囲のサンプルが入手できなかったため、製造しなかった。実施例2にまとめられた特性は、0.950〜0.955の密度範囲のもので観察される特性に基づいて予想されたものである。
【0032】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化クロム触媒を活性化するのに用いられる条件で焼成して酸化クロムにすることができる化合物を含有し、第1の担体に担持された少なくとも1つの酸化クロム触媒と、第2の担体に担持された少なくとも1つのシリルクロム触媒とを混合して触媒混合物を調製する工程であって、前記酸化クロム触媒は、前記触媒混合物の総重量を基準として約25〜約50重量パーセント含まれ、そして、前記シリルクロム触媒は、前記触媒混合物の総重量を基準として約50〜約75重量パーセント含まれる工程;
前記触媒混合物を重合反応器に導入する工程であって、エチレンを含む少なくとも1つのモノマーが前記反応器中に存在し、前記反応器は、前記少なくとも1つのモノマーが前記触媒混合物の存在下で重合するような重合条件に維持される工程;
前記混合工程の前又は後のいずれかであるが、前記触媒混合物を前記反応器に導入する前に、前記酸化クロム触媒を活性化する工程;及び
エチレンポリマーが形成されるように、前記反応器において前記触媒混合物と前記少なくとも1つのモノマーとを接触させる工程を有し、
前記エチレンポリマーは、前記酸化クロム触媒のみの存在下での同様の重合条件で調製されるエチレンポリマーと比較して、環境応力亀裂抵抗(ESCR)が少なくとも約400%増加し、膨張率の増加が約15%以下であることにより特徴付けられる、エチレンポリマーを製造する方法。
【請求項2】
前記第1の担体及び前記第2の担体は平均細孔容積がそれぞれ30%以内である、請求項1に記載する方法。
【請求項3】
前記重合反応器が気相反応器である、請求項1に記載する方法。
【請求項4】
前記モノマーはさらにC3−C20α−オレフィン及び/又はジエンを含む、請求項1に記載する方法。
【請求項5】
前記α−オレフィンは、1−プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン又はそれらの組合せである、請求項4に記載する方法。
【請求項6】
前記酸化クロム触媒が、クロムアセチルアセトン、塩化クロム、硝酸クロム、クロムアセテート、硫酸クロム、クロム酸アンモニウムまたは重クロム酸アンモニウムの少なくとも1つである、請求項1に記載する方法。
【請求項7】
前記シリルクロム触媒が、少なくとも1つの式I:
【化1】

(ここで、Rは、それぞれ、1〜14個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)の基を有することにより特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
シリルクロム触媒は、式II:
【化2】

(ここで、Rは請求項7で定義される)のビス−トリヒドロカルビルシリルクロム酸塩である、請求項7に記載する方法。
【請求項9】
前記シリルクロム触媒が、ビス−トリメチルシリルクロム酸塩、ビス−トリエチルシリルクロム酸塩、ビス−トリブチルシリルクロム酸塩、ビス−トリイソペンチルシリルクロム酸塩、ビス−トリ−2−エチルヘキシルシリルクロム酸塩、ビス−トリデシルシリルクロム酸塩、ビス−トリ(テトラデシル)シリルクロム酸塩、ビス−トリベンジルシリルクロム酸塩、ビス−トリフェネチルシリルクロム酸塩、ビス−トリフェニルシリルクロム酸塩、ビス−トリトリルシリルクロム酸塩、ビス−トリキシリルシリルクロム酸塩、ビス−トリナフチルシリルクロム酸塩、ビス−トリエチルフェニルシリルクロム酸塩、ビス−トリメチルナフチルシリルクロム酸塩、ポリジフェニルシリルクロム酸塩またはポリジエチルシリルクロム酸塩の少なくとも1つである、請求項1に記載する方法。
【請求項10】
前記モノマーは、さらに、プロペン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテン、及びジエン類、5−エチリデン−2−ノルボルネン及びピペリレンの少なくとも1つを含み、他の有用なモノマーは、スチレン、ハロ−又はアルキルで置換されたスチレン類、テトラフルオロエチレン、ビニルベンゾシクロブテン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4−ビニルシクロヘキセン、及びビニルシクロヘキサン、2,5−ノルボルナジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン又はナフテン酸類を含む、請求項1に記載する方法。
【請求項11】
請求項1に記載する方法により製造したエチレンポリマー。
【請求項12】
請求項11に記載するエチレンポリマーを含む組成物。
【請求項13】
請求項1に記載するエチレンポリマーを含む物品。
【請求項14】
ブロー成形された請求項13に記載する物品。
【請求項15】
ボトルである請求項14に記載する物品。
【請求項16】
前記触媒混合物は、粘性不活性液体中のスラリーとして前記反応器に導入される、請求項1に記載する方法。
【請求項17】
エチレンを含む少なくとも1つのモノマーが存在し、重合条件に維持される、重合反応器を準備する工程;
第1の担体に担持された少なくとも1つの活性化された酸化クロム触媒を、前記反応器に連続的に又は断続的に導入する工程であって、前記酸化クロム触媒は、前記酸化クロム触媒を活性化するのに用いられる条件で焼成して酸化クロムにすることができる化合物を含有する工程;
前記反応器中に存在する触媒の総重量を基準として、前記酸化クロム触媒が約25〜約50重量パーセント含まれ、そして、前記シリルクロム触媒が約50〜約75重量パーセント含まれるように、第2の担体に担持された少なくとも1つのシリルクロム触媒を、前記反応器に連続的に又は断続的に導入する工程;及び
エチレンポリマーが形成されるように、前記反応器において、前記酸化クロム触媒と前記シリルクロム触媒と前記モノマーとを接触させる工程を有し、
前記エチレンポリマーは、前記酸化クロム触媒のみの存在下での同様の重合条件で調製されるエチレンポリマーと比較して、環境応力亀裂抵抗(ESCR)が少なくとも約400%増加し、膨張率の増加が約15%以下であることにより特徴付けられる、エチレンポリマーを製造する方法。
【請求項18】
前記第1の担体及び前記第2の担体は平均細孔容積がそれぞれ30%以内である、請求項17に記載する方法。
【請求項19】
前記重合反応器が気相反応器である、請求項17に記載する方法。
【請求項20】
前記モノマーはさらにC3−C20α−オレフィン及び/又はジエンを含む、請求項17に記載する方法。
【請求項21】
前記α−オレフィンは、1−プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン又はそれらの組合せである、請求項20に記載する方法。
【請求項22】
前記酸化クロム触媒が、クロムアセチルアセトン、塩化クロム、硝酸クロム、クロムアセテート、硫酸クロム、クロム酸アンモニウムまたは重クロム酸アンモニウムの少なくとも1つである、請求項17に記載する方法。
【請求項23】
前記シリルクロム触媒が、少なくとも1つの式I:
【化3】

(ここで、Rは、それぞれ、1〜14個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)の基を有することにより特徴付けられる、請求項17に記載する方法。
【請求項24】
シリルクロム触媒は、式II:
【化4】

(ここで、Rは請求項23で定義される)ビス−トリヒドロカルビルシリルクロム酸塩である、請求項23に記載する方法。
【請求項25】
前記シリルクロム触媒が、ビス−トリメチルシリルクロム酸塩、ビス−トリエチルシリルクロム酸塩、ビス−トリブチルシリルクロム酸塩、ビス−トリイソペンチルシリルクロム酸塩、ビス−トリ−2−エチルヘキシルシリルクロム酸塩、ビス−トリデシルシリルクロム酸塩、ビス−トリ(テトラデシル)シリルクロム酸塩、ビス−トリベンジルシリルクロム酸塩、ビス−トリフェネチルシリルクロム酸塩、ビス−トリフェニルシリルクロム酸塩、ビス−トリトリルシリルクロム酸塩、ビス−トリキシリルシリルクロム酸塩、ビス−トリナフチルシリルクロム酸塩、ビス−トリエチルフェニルシリルクロム酸塩、ビス−トリメチルナフチルシリルクロム酸塩、ポリジフェニルシリルクロム酸塩またはポリジエチルシリルクロム酸塩の少なくとも1つである、請求項17に記載する方法。
【請求項26】
前記モノマーは、さらに、プロペン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテン、及びジエン類5−エチリデン−2−ノルボルネン及びピペリレンの少なくとも1つを含み、他の有用なモノマーは、スチレン、ハロ−又はアルキルで置換されたスチレン類、テトラフルオロエチレン、ビニルベンゾシクロブテン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4−ビニルシクロヘキセン、及びビニルシクロヘキサン、2,5−ノルボルナジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン又はナフテン酸類を含む、請求項17に記載する方法。
【請求項27】
請求項17に記載する方法により製造したエチレンポリマー。
【請求項28】
請求項27に記載するエチレンポリマーを含む組成物。
【請求項29】
請求項17に記載するエチレンポリマーを含む物品。
【請求項30】
ブロー成形された請求項29に記載する物品。
【請求項31】
ボトルである請求項30に記載する物品。
【請求項32】
少なくとも1つの触媒は、粘性不活性の液体のスラリーとして前記反応器に導入される、請求項17に記載する方法。


【公表番号】特表2007−515541(P2007−515541A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547049(P2006−547049)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/040841
【国際公開番号】WO2005/066221
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(591123001)ユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス・テクノロジー・コーポレイション (85)
【Fターム(参考)】