説明

改良されたニュールツリン分子

本発明は、減少させたヘパリンおよびヘパラン硫酸の結合親和性を有するが、神経栄養活性を保持するニュールツリンポリペプチド、ニュールツリン変異体をコード化する核酸、並びに改良されたニュールツリンポリペプチドを発現するベクターおよび宿主細胞に関する。また、疾患の処置または予防における改良されたニュールツリンポリペプチド、核酸および宿主細胞の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年10月30日に出願の米国仮特許出願第61/256352号の利益を主張するものであり、その全体は、引用によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、減少させたヘパリンおよびヘパラン硫酸の結合親和性を有するが、神経栄養活性を保持する、改良されたニュールツリンポリペプチド;ニュールツリン変異体をコード化する核酸、並びに改良されたニュールツリンポリペプチドを発現するベクターおよび宿主細胞の開発および使用に関する。また、本発明内には、疾患の処置における改良されたニュールツリンポリペプチド、核酸および宿主細胞の使用が包含される。
【背景技術】
【0003】
グリア細胞株に由来する神経栄養因子(GDNF)ファミリーリガンド(GFL)は、TGF−βスーパーファミリーの遠縁の(distant)メンバーであり、それは、インビトロでの強力な神経栄養因子であり、インビボでの別個の神経細胞の個体群の開発にとって重大である(Airaksinen,M.S.,et al.,(1999)”GDNF family neurotrophic factor signaling: four masters, one servant?”Mol.Cell.Neurosci.13,313−325)。高い配列類似性を持ったこのファミリーの4つの既知のメンバー;GDNF、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(artemin)(ARTN)およびパーセフィン(PSPN)がある。これらの因子は全て、トランスフェクション中に再構成された(RET)膜貫通受容体チロシンキナーゼの活性化を介して機能し、それは複数のシグナル経路を活性化する。(Knowles,PP.(2006)”Structure and chemical inhibition of the RET tyrosine kinase domain”,J.Biol.Chem.281 33577−33587。)GFRα(GDNFファミリー受容体α)として呼ばれる高親和性グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカー細胞表面タンパク質が、受容体複合体に含まれ、各々のGFLに対して1つのGFRαがあるが、クロスシグナル伝達(cross signaling)が受容体複合体間で生じる(Airaksinen et al,同上)。GFLはまた、親和性をほとんど又はまったく有しないと考えられるPSPNを除いて、ヘパリンに対する親和性を共有する(Maxim M. Bespalov PhD thesis, 18.12. 2009, University of Helsinki)。ヘパリンは、マスト細胞に主として制限される硫酸化多糖である。しかしながら、関連性の高いヘパラン硫酸(HS)はより遍在し、細胞表面および細胞間マトリックスに存在する。GDNFとヘパリン/HSの間の相互作用が2−Oサルフェートの存在への特に高い依存性を実証することが示された(Rickard et al.,(2003)”The binding of human glial cell line−derived neurotrophic factor(GDNF)to heparin and heparan sulfate:importance of 2−0−sulfate groups and effects on its interaction with its receptor GFR l”.Glycobiology 13,419−426)。
【0004】
それらの神経栄養性の特質のために、GFLは、疾患、および中枢神経系および末梢神経系の損傷の処置に対する候補として出現してきている。ニュールツリンなどのGFLの治療上の有用性の中心は、例えば、ドーパミン作用性、交感神経性、副交感神経性、感覚性のニューロンおよび脊柱の運動性ニューロンを含む広範囲のニューロンの生存および成長を刺激するこれらの分子の能力である。(Bespalov,MM & Saarma,M.(2007)”GDNF family receptor complexes are emerging drug targets”Trends in Pharm.Sci.28(2)68−74)。例えば、GDNFタンパク質と遺伝子療法ベクター内のNRTNの両方は、パーキンソン病の処置のための臨床試験において患者に投与されており、動物モデルにおいてドーパミン代謝回転(turnover)を刺激することが示されている。(Hadaczek et al.,(2010)Pharmacokinetics and bioactivity of glial cell line−derived factor(GDNF)and neurturin(NTN)infused into rat brain”Neuropharm.58 1114−1121)。さらに、アルツハイマー病、ALS、てんかん、中毒、慢性的疼痛および脳卒中などの疾患はまた、ニューロンの生存および成長を促進するニュールツリンの能力に基づくニュールツリンを用いた処置から利益を得ることがある。
【0005】
更に、ニュールツリン処置は、以下の疾患の処置に役立つかもしれないという考えに対して、支持が増えている:糖尿病(Rossi,et al.,(2005)Diabetes 54(5)1324−30;Mwangi et al.,(2008)Gastroenterology 134(3)727−37;Mwangi et al.,(2010)Am.J.Physiol.Gastrointest Liver Physiol.299(1) G283−92);勃起不全(Laurikainen et al.,(2000)Cell.Tissue.Res.302(3)321−9,Laurikainen et al.,(2000)J.Neurobiol.43(2)198−205,May et al.,(2008)Eur.Urol.54(5)1179−87;Kato et al.,(2009)Gene Therapy 16(1)26−33);抜け毛(Botchkareva et al.,(2000)Am.J.Pathol.156(3)1041−53,Adly et al.,(2008)J.Am.Acad.Dermatol.58(2)238−50);難聴(Ylikoski et al., (1998)Hear Res.124(1−2)17−26,Stover et al.,(2001)Hear Res.155(1−2)143−51,Stover et al.,(2000)Brain Res Mol Brain Res.76(1)25−35;Hirschsprung’s disease,(Taraviras et al.,(1999)Development 126(12)2785−97,Roberts et al.,(2008)Am.J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol.294(4)G996−G1008;Neuropathic pain,Adler et al.,(2009)Pain.Med.10(7)1229−36;および網膜症(Igarahi et al.,(2000)Cell.Struct.Funct. 25(4)237−41,Nishikiori et al.,(2007)56(5)1333−40)。
【0006】
最近の第II相の臨床試験において、NRTNはウイルスベクター(CERE−120)を使用して、パーキンソン病患者に投与された。CERE−120は、脳の被殻(putaminal)部分に定位的注入によって送達され、高度に標的化された方法でNRTNの安定した、持続的な発現を提供した。しかしながら、二重盲検の対照試験の結果は、CERE−120で処置された患者と対照群の患者との間に、明らかな違いがないことを示した。両方の群は、およそ39点の基線での平均に比べて、プロトコルに定義された主要評価エンドポイントにおいて約7点の改善を示した(統一されたパーキンソン病評定尺度(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)−12か月でのモーターオフスコア(motor off score))。両方の群には、基線から有意な臨床的改善を示した患者がかなりいた。CER−120は、安全で、かなり許容されるように思われた。CERE−120治験の18か月のフォローアップで、中程度の臨床的な利益がプラセボに対して観察された。
【0007】
治験の失敗の理由は完全には分かられない。1つの仮説は、脳の影響を受けた領域への直接の注入にもかかわらず、ヘパラン硫酸に対するニュールツリンの高い親和性のために、効果が得られるのに十分広範囲な領域へ、分子が十分に拡散することが妨げられるということである。この仮説を支持して、動物研究のみでなく2人の処置された患者の脳内でのニュールツリンの分布の分析は、脳内での注入後にニュールツリンが均一に分散していないことを示唆し(Hadaczek et al.,(2010)Pharmacokinetics and bioactivity of glial cell line−derived factor (GDNF)and neurturin(NTN)infused into rat brain” Neuropharm.58 1114−1121; Ceregene Press Release May 27,2009)、再び、広い体内分布が好ましいかもしれないことを示唆している。
【0008】
さらに、最近の動物研究は、パーキンソン病のアカゲザルモデルにおいて脳へヘパリンをニュールツリンと同時注入(co−infusion)することを含んでいる(Grodin et al.,“Intraputamenal infusion of exogenous neurturin protein restores motor and dopaminergic function in the globus pallidus of MPTP−lesioned rhesus monkeys.Cell Transplantation 17:373−381,2008)。理論上、同時注入されたヘパリンは、標的細胞上のRET/GFR受容体複合体への結合を依然として可能としつつ、細胞間マトリックスへのニュールツリンの結合を阻害する。それ故、同時注入されたニュールツリンは、より広範囲な領域へ拡散し得る。
【0009】
ニュールツリンの有効性および体内分布を改善する別の手法は、その神経栄養の特性に影響を与えずに、分子のヘパリン結合親和性を変えることである。しかしながら、本出願人の発見前に、ニュールツリンにおいてヘパリン結合を媒介することに関与する実際のアミノ酸の位置および正体(identity)は知られていなかった。さらに、ヘパリン結合ドメインの変異が、タンパク質のフォールディングおよび/または3次元構造を崩壊するか否か、および生体機能の喪失、および特に変異した分子の神経栄養の活性の喪失を結果として生じるか否か、について知られていなかった。従って、高い生物活性を保持しつつ改善された体内分布を示す改良されたニュールツリンポリペプチドの必要性が依然として存在している。
【0010】
この手法の魅力にもかかわらず、ニュールツリンおよびGDNFファミリーの他のメンバーのヘパリン結合特性の機能的影響を調べた以前の研究は、雑多で、かつ矛盾している結果を提供した。(Rider,CC,(2006)Biochem.Soc.Trans.34(3)458−460;Rickard SM et al.,(2003)Glycobiology 13(6)419−26,Davies JA et al.,(2003)Growth Factors 21(3−4)109−19,Rider CC,(2003)Biochem.Soc.Trans.31(2)337−9,Tanaka M et al.,(2002)Neuroreport 13(15)1913−1916,Hamilton JF et al(2001)Exp.Neurol.168(1)155−61,Ai X et al.,(2007)Development 134(18)3327−38)。
【0011】
例えば、従来の研究は、モチーフ「BBXB」または「BBBXXB」(ここで、「B」は塩基性アミノ酸であり、「X」は任意のアミノ酸である)は、ヘパリン結合にとって重要であることを示したが、他の研究は、このモチーフを含んでいないタンパク質もヘパリンおよびHSを結合させることを示した(Delacoux et al.“Unraveling the amino acid sequence crucial for heparin binding to collagen V.”J.Biol.Chem.2000 275(38):29377−82)。さらに、ニュールツリンの詳細な3次元構造がないことは、ニュールツリンの対応する正に帯電された残基の何れかが、その側鎖がヘパリンと相互に作用するように正しく配列されるように、成熟タンパク質において実際に表面に露出され、配向されているか否かについて詳細な分析を妨げる。
【0012】
さらに、他のGFLメンバーを用いた研究は、主としてこのタンパク質ファミリーのN末端領域においてヘパリン結合が起こる、またはいくつかの領域にわたって分散していることを示唆した。(Alfano et al.(“The major determinant of the heparin binding of glial cell−line derived neurotrophic factor is near the N−terminus and is dispensable for receptor binding”Biochem. J.404:131−140,2007);Silvian et al.,(“Artemin crystal structure reveals insights into heparan sulfate binding”Biochemistry 45:6801−6812,2006))。
【0013】
Silvianらは、ARTNのヘパリン結合特性を調査し、プレ−アルファ−ヘリックス領域の一連のアルギニン残基が結晶構造中のサルフェート原子とコンタクトする(contact)ことが示されたと示した。彼らは、ARTNのアミノ末端領域(アミノ酸1−9)(それは結晶中でディスオーダーであった(disorder))が、いくつかのHS結合活性を受け持っていることを見出した。さらに、彼らは、ARTNのプレ−アルファ−ヘリックスの領域では3つのアルギニン(Arg48、Arg49およびArg51)を、グルタミン酸残基で置換することによって、これらを変異させた。グルタミン酸のとり込みは、ヘパリン分子への親和性を減少させ、このプレ−ヘリックス領域がヘパラン硫酸の相互作用において役割を果たすことを示唆する。しかしながら、ARTNのこのプレ−ヘリックス領域は、ニュールツリン内でうまく保存されず、このことは、ニュールツリンのこの領域の機能が保存されないことを示唆する。
【0014】
Alfanoらによって報告された研究によると、GDNFのN末端領域の欠失はヘパリン結合の著しい減少を結果として生じた。さらに、Alfanoらは、成熟GDNFタンパク質のアルファ−ヘリックスの領域の1つの面上に存在するいくつかの塩基性アミノ酸を含んでいるGDNF内の領域において、正に帯電されたアミノ酸の対(K81A/K84AおよびR88A/R90A)に関してアラニンスキャニング変異誘発を行った。Alfanoらは、両方の組の2つのアミノ酸の変異は、別々でも又は組み合わられても、ヘパリンに対するGDNFの結合親和性を著しく減少させなかったことを見出した。
【0015】
GDNF、ARTNおよびNRTNは類似しており、通常、類似構造を含むが、成熟タンパク質のN末端領域と、理論上のヘパリン結合配列の周りの領域との両方は、あまり保存されない。従って、NRTNにおけるこれらのタンパク質ドメインの役割に関する正確な予測は、GDNFまたはARTNのいずれかからの研究から正確に推論することができない。
【0016】
本発明は、アミノ酸51〜63(成熟ヒトニュールツリンにおいてそのように番号が付けられた)を含むニュールツリン内のアミノ酸の発見に部分的に基づき、それは、ニュールツリンのヘパリンとの相互作用を媒介する際に重要な役割を果たす。さらに、本出願人は、驚いたことに、この領域のアミノ酸の変異が、ヘパリンに対する減少した親和性を示しつつも、依然として神経栄養の活性、特に、GFRαlまたはGFRα2と相互作用し、RETのリン酸化を誘発し、細胞効果を誘発する能力も保持する、改良されたニュールツリンポリペプチドにつながることを発見した。従って、本発明は、改善された生物活性を有する新しいニュールツリンポリペプチド、そのようなポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド、並びに疾患の処置および予防において使用されるそのようなポリペプチドを発現する細胞およびそれらを使用するための方法を提供する。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、ヘパリン、ヘパラン硫酸およびヘパラン硫酸プロテオグリカン(heparan sulfated proteoglycan)の結合能力を減少させるが、受容体複合体の結合時のRETタンパク質のリン酸化を誘発する能力を保持するニュールツリン分子の発見に部分的に基づく。従って、1つの実施形態において、本発明は、RETのリン酸化を誘発する能力を有し、かつ弱められたヘパリン結合活性を有するニュールツリン変異体を含む、精製されたニュールツリンポリペプチドを含む。別の実施形態において、精製されたニュールツリンポリペプチド変異体は、アミノ酸51、52、54、55、56、57、58、60、61、62または63に1以上の置換を含む。別の実施形態において、ニュールツリン変異体を含む、精製されたポリペプチドは、配列番号1、2、3および4を含む。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、ニュールツリンポリペプチドを含み、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリン(配列番号5)のアミノ酸51〜63を含む領域において正に帯電されたアミノ酸の少なくとも1つの変異によって成熟野生型ニュールツリンと異なり、およびニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリンと比較して、減少したヘパリンへの親和性を有している。
【0019】
1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、100ng/mlの濃度で、37℃で10分間線維芽細胞に加えられると、RETのリン酸化を誘発する能力を有しており、ここで、線維芽細胞は、RETおよびGFRα1、あるいはGFRα2のいずれかを発現する。
【0020】
1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、pH 7.2で1M NaCl未満のNaCl濃度で、ヘパリンアフィニティーカラムから溶出され得る。
【0021】
1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、R52、R54、R56、R58、R61およびR63からなる群から選択される位置に少なくとも1つの変異を有する。
【0022】
1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、R51、R54、R56、Q55、R56、R57、R58、R60、R61およびE62からなる群から選択される位置に少なくとも1つの変異を有する。1つの態様において、変異は、少なくとも1つの中性の、両性イオン性の、または負に帯電された脂肪族アミノ酸を導入する。別の態様において、変異は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、セリンおよびグルタミンからなる群から独立して選択される少なくとも1つのアミノ酸を導入する。
【0023】
1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、変異R52A、R56AおよびR58Aを含む。1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、変異R54A、R61AおよびR63Aを含む。1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、変異R52A、R54A、R56A、R58AおよびR61Aを含む。1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、変異R51A、R54Q、Q55G、R56Q、R57G、R58A、R60V、R61GおよびE62Sを含む。1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、配列ARLQGQGALVGSによるアミノ酸51〜62の置換を含む。
【0024】
これらのニュールツリンポリペプチドの任意の別の態様において、ポリペプチドは改良されたニュールツリンポリペプチドである。これらのニュールツリンポリペプチドの任意の別の態様において、ポリペプチドは改良されたニュールツリンヒトポリペプチドである。
【0025】
これらのニュールツリンポリペプチドの任意の別の態様において、ニュールツリンポリペプチドは、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63によって包含される13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸配列にわたって、配列番号5と実質的に相同であるか、または実質的に類似している。
【0026】
1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、配列番号1を含む。請求項7の1つの態様のポリペプチドにおいて、ニュールツリンポリペプチドは、配列番号2を含む。1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、配列番号3を含む。1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは、配列番号4を含む。
【0027】
これらのニュールツリンポリペプチドの任意の別の態様において、ニュールツリンポリペプチドは別のタンパク質との融合タンパク質である。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、細胞変性または機能不全を処置する方法を含み、そのような処置を必要としている患者に、治療上有効な量の前述のニュールツリンポリペプチドの何れかを投与する工程を含む。
【0029】
1つの態様において、患者は、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷、神経障害性疼痛、糖尿病、勃起不全、抜け毛、ヒルシュスプルング病、神経系の腫瘍、多発性硬化症、難聴、網膜症および感染からなる群から選択される疾患または障害を有している。
【0030】
1つの態様において、細胞変性または機能不全は、好酸球減少症、好塩基球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血症、血小板減少症、および幹細胞機能不全からなる群から選択される造血細胞の変性または機能不全を含む。
【0031】
これらの方法の任意の1つの態様において、ニュールツリンポリペプチドは全身投与によって投与される。別の態様において、ニュールツリンポリペプチドは脊髄内投与によって投与される。別の態様において、ニュールツリンポリペプチドは経鼻投与によって投与される。別の態様において、ニュールツリンポリペプチドは実質内投与(intraparenchymal administration)によって投与される。別の態様において、ニュールツリンポリペプチドは徐放性の組成物またはデバイスによって投与される。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、前述のニュールツリンペプチドのいずれかおよび薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を含む。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、ニュールツリンポリペプチドをコード化する、単離ポリヌクレオチドを含み、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリン(配列番号5)のアミノ酸51〜63を含む領域において正に帯電されたアミノ酸の少なくとも1つの変異によって成熟野生型ニュールツリンと異なり、およびニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリンと比較して、減少したヘパリンへの親和性を有している。
【0034】
1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、10mg/mlの濃度で、37℃で10分間線維芽細胞に加えられると、RETのリン酸化を誘発する能力を有し、ここで、線維芽細胞は、RETおよびGFRα1、あるいはGFRα2のいずれかを発現する。
【0035】
1つの態様において、ポリヌクレオチドは、ニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、pH 7.2で1M NaCl未満のNaCl濃度で、ヘパリンアフィニティーカラムから溶出され得る。
【0036】
1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、R52、R54、R56、R58、R61およびR63からなる群から選択される位置に少なくとも1つの変異を有する。1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、R51、R54、R56、Q55、R56、R57、R58、R60、R61およびE62からなる群から選択される位置に少なくとも1つの変異を有する。1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、変異は、少なくとも1つの中性の、両性イオン性の、または負に帯電された脂肪族アミノ酸を導入する。1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、変異は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、セリンおよびグルタミンからなる群から独立して選択される少なくとも1つのアミノ酸を導入する。
【0037】
1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ポリペプチドは、変異R52A、R56AおよびR58Aを含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、変異R54A、R61AおよびR63Aを含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、変異R52A、R54A、R56A、R58AおよびR61Aを含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、変異R51A、R54Q、Q55G、R56Q、R57G、R58A、R60V、R61GおよびE62Sを含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ポリペプチドは、配列ARLQGQGALVGSによるアミノ酸51〜62の置換を含む。
【0038】
特許請求の範囲に挙げられた(claimed)ポリヌクレオチドの任意の別の態様において、ポリペプチドはニュールツリンポリペプチドをコード化し、ここで、ニュールツリンポリペプチドは、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63によって包含される13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸配列にわたって、配列番号5と実質的に相同であるか、または実質的に類似している。
【0039】
1つの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号6を含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号7を含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号8を含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号9を含む。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、前述のポリヌクレオチドを含む組換えベクターを含む。1つの態様において、組換えベクターは、ポリヌクレオチドに操作可能に結合される(operably linked)発現制御配列をさらに含む。1つの態様において、組換えベクターは、ウイルスベクターである。
【0041】
別の実施形態において、本発明は、細胞変性または機能不全を処置する方法を含み、そのような処置を必要としている患者に、治療上有効な量の前述の組換えベクターの何れかを投与する工程を含む。
【0042】
この方法の1つの態様において、患者は、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷、神経障害性疼痛、糖尿病、勃起不全、抜け毛、ヒルシュスプルング病、神経系の腫瘍、多発性硬化症、難聴、網膜症および感染からなる群から選択される疾患または障害を有している。
【0043】
この方法の別の態様において、細胞変性または機能不全は、好酸球減少症、好塩基球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血症、血小板減少症、および幹細胞機能不全からなる群から選択される造血細胞の変性または機能不全を含む。
【0044】
1つの態様において、組換えベクターは全身投与によって投与される。1つの態様において、組換えベクターは脊髄内投与によって投与される。1つの態様において、組換えベクターは経鼻投与によって投与される。1つの態様において、組換えベクターは実質内投与(intraparenchymal administration)によって投与される。1つの態様において、組換えベクターは徐放性の組成物またはデバイスによって投与される。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、前述の組換えベクターのいずれかおよび薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を含む。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、請求項26〜43の何れか1つに記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。1つの態様において、宿主は、前述の組換えベクターのいずれかで形質転換されるか、またはそれをトランスフェクトされている。1つの態様において、宿主細胞は、前述のニュールツリンポリペプチドのうちの何かを分泌する。
【0047】
別の実施形態において、本発明は、細胞変性または機能不全を処置する方法を含み、そのような処置に必要としている患者に、治療上有効な量の前述の宿主細胞の何れかを投与する工程を含む。
【0048】
1つの態様において、患者は、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷、神経障害性疼痛、糖尿病、勃起不全、抜け毛、ヒルシュスプルング病、神経系の腫瘍、多発性硬化症、難聴、網膜症および感染からなる群から選択される疾患または障害を有している。
【0049】
1つの態様において、細胞変性または機能不全は、好酸球減少症、好塩基球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血症、血小板減少症、および幹細胞機能不全からなる群から選択される造血細胞の変性または機能不全を含む。
【0050】
1つの態様において、宿主細胞は全身投与によって投与される。1つの態様において、宿主細胞は脊髄内投与によって投与される。1つの態様において、宿主細胞は経鼻投与によって投与される。1つの態様において、宿主細胞は実質内投与(intraparenchymal administration)によって投与される。一つの態様において、宿主細胞は、徐放性の組成物又はデバイスによって投与される。
【0051】
別の実施形態において、本発明は、前述の宿主細胞のいずれかおよび薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を含む。別の実施形態において、本発明は、髄腔内ポンプ(intrathecal pump)および前述のポリペプチドのうちの何かを含む製薬の送達システムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】市販のバッチのニュールツリンのみでなく精製された改良されたニュールツリン変異体のサンプルも、非還元状態下で、15%のSDS−PAGEを用いて分析され、クマシー染色によって視覚化された。
【図2】ニュールツリン変異体1、2、3および4(N1からN4)の精製した調製物、成熟野生型ニュールツリンおよびニュールツリン(2ug)の市販の調製物は、HiTrapヘパリンカラムに適用され、(10mMのHepesで始めて、2MまでNaClを増加させる)連続的なNaCl勾配により溶出された。タンパク質の溶出は、214nmで、それらの吸収によってモニタリングされた(左手軸上に示される)。伝導性に基づいて、溶出されたタンパク質を含む画分の正確な塩濃度が測定された(点線および図の右手軸によって示される)。図2のAは、ニュールツリンの市販の調製物の溶出特性を示し、図2のBは、ニュールツリン変異体に関するのと同じ方法を用いて作製されたニュールツリンの野生型調製物の溶出特性を示し、図2のCは、N1の溶出特性を示し、図2のDは、N2の溶出特性を示し、図2のEは、N3の溶出特性を示し、および図2のFは、N4の溶出特性を示す。
【図3】RET−リン酸化アッセイのウエスタンブロット分析を示す。RETを安定して発現する細胞は、GFRα2で一時的にトランスフェクトされ、および示された(indicated)ニュールツリン変異体で刺激した後に、細胞は溶解され、RETは免疫沈降によって単離された。サンプルは、抗リン酸化抗体を用いて調べる(probing with)ことにより分析された(A)。等しい充填を確認するために、サンプルは、続けて、抗RET抗体で再検査された(B)。
【図4】図4は、RETリン酸化アッセイのウエスタンブロット解析を示す。安定してRETを発現する細胞は、GFRαlを一時的にトランスフェクトされ、および示されたニュールツリン変異体で刺激した後に、細胞は溶解され、RETは免疫沈降によって単離された。サンプルは、抗ホスホチロシン抗体を用いて調べることにより分析された(A)。等しい充填を確認するために、サンプルは、続けて、抗RET抗体で再検査された(B)。
【発明を実施するための形態】
【0053】
(定義)
本開示がより容易に理解されるように、一定の用語は、最初に定義される。さらなる定義は、詳細な記載の全体にわたって述べられる。本明細書及び添付の請求項において使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がはっきりと別途定めていない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「分子(a molecule)」への言及は、そのような分子の1以上を含み、「試薬(a reagent)」は、そのような異なる試薬の1以上を含み、「抗体(an antibody)」への言及は、そのような異なる抗体の1以上を含み、および「方法(the method)」への言及は、等価な工程および本明細書に記載の方法に対して改変または置換され得ることが当業者に分かっている方法への言及を含む。
【0054】
値の幅が提供される場合、文脈が明らかに別途指定していなければ、下限の単位の10番目まで(to the tenth of the unit of the lower limit)、その範囲の上限と下限の間の介在する値各々もまた、具体的に開示されていることが理解される。任意の明言された値または明言された範囲の介在する値と、任意の他の明言された値またはその明言された介在する値との間のより小さな範囲は各々、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限下限は、独立して、その範囲に含まれることもあり除外されることもあり、明言された範囲内の任意の明確に除外された極限を前提として、どちらかの極限がより小さな範囲に含まれている、どちらの極限もより小さな範囲に含まれていない、または両方の極限がより小さな範囲に含まれている場合の各範囲も、本発明内に包含される。明言された範囲が1つの極限または両方の極限を含む場合、それらの含まれた極限のいずれかまたは両方を除く範囲もまた、本発明に包含される。
【0055】
用語「約(about)」あるいは「およそ(approximately)」は、当業者に決定されるような特定の値に対する許容可能なエラー範囲内を意味し、それは、部分的には、その値がどのように計測され又は測定されるか、すなわち、測定システムの限界に依存する。例えば、「約(about)」は、平均値から1または2の標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約(about)」は、平均プラスまたはマイナス20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%までの範囲を意味し得る。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「細胞(cell/cells)」、「細胞株」、「宿主細胞(host cell/host cells)」は、交換可能に使用され、動物細胞を包含し、無脊髄動物、哺乳動物以外の脊椎動物および哺乳動物の細胞を含む。
そのような指定はすべて、細胞集団と子孫を含む。したがって、用語「形質転換体」および「トランスフェクタント」は、継代の数(the number of transfers)に関係なく、それから派生したプライマリの被験体の細胞および細胞株を含む。典型的な哺乳動物以外の脊椎動物の細胞は、例えば、鳥類の細胞、爬虫類の細胞および両生類の細胞を含む。典型的な無脊髄動物の細胞は、限定されないが、例えば、毛虫(スポドプテラ・フルギペルダ)の細胞、蚊(ネッタイシマカ)の細胞、ミバエ(キイロショウジョウバエ)の細胞、シュナイダーの細胞およびカイコガの細胞などの昆虫細胞を含む。例えば、Luckow et al.,Bio/Technology 6:47−55 (1988)を参照。細胞は、分化している、部分的に分化している、または、分化していない(例えば、胚性幹細胞と多能性幹細胞を含む幹細胞)であるかもしれない。さらに、臓器または臓器系に由来する組織サンプルは、本発明に従って使用されてもよい。典型的な哺乳動物細胞は、例えば、ヒト、人類以外の霊長類、猫、犬、羊、ヤギ、ウシ、馬、ブタ、ウサギ、マウス、ハムスター、ラットおよびモルモットを含む齧歯類、およびそれらの任意の派生体および子孫に由来する細胞を含む。
【0057】
用語「細胞培養」、「組織培養」は、懸濁液中で育てられた、あるいはローラーボトル、組織培養フラスコ、ディッシュ、マルチウェルプレート、などのベッセル内の様々な表面または基質に付着して育てられた細胞を指す。
【0058】
用語「細胞治療」は、治療のために、哺乳動物の身体へ、細胞を注入する、移植する、またはさもなければ入れることを含む治療を指す。異なる態様において、細胞は自己由来かもしれず、細胞はタンパク質を産生することもあり、細胞は再生性である(regenerative)ことがあり、細胞は改変されることがあり、細胞は遺伝子組み換えかもしれず、細胞は体細胞、前駆細胞または幹細胞であることもある。
【0059】
句「保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)」または「保存的な変異(conservative mutation)」は、共通の性質を有する別のアミノ酸による1つのアミノ酸の置換を指す。個々のアミノ酸間の共通の性質を明らかにする機能的な方法は、相同の生物体の対応するタンパク質間のアミノ酸変異の標準化された頻度を分析することである(Schulz,G.E.and R.H.Schirmer,Principles of Protein Structure,Springer−Verlag)。そのような分析によると、群内のアミノ酸が、互いに、優先的に交換する場合、アミノ酸の群を定義することができ、それ故、全体的な蛋白質構造に対するそれらの影響の点でほとんど互いに類似している(Schulz,G.E.and R.H.Schirmer,Principles of Protein Structure,Springer−Verlag)。
【0060】
このように定義されたアミノ酸の群の例は、次のものを含む:Glu、Asp、Asn、Gln、Lys、ArgおよびHisからなる「荷電/極性の群」;Pro、Phe、Tyr およびTrpからなる「芳香族性または環式の群」;およびGly、Ala、Val、Leu、Ile、Met、Ser、ThrおよびCysからなる「脂肪性の群」。
【0061】
各々の群の内では、サブグループも同定することができ、例えば、荷電/極性のアミノ酸は、Lys、ArgおよびHisからなる「正に帯電されたサブグループ」;GluおよびAspからなる「負に帯電されたサブグループ」、およびAsnおよびGlnからなる「極性のサブグループ」へと細分することもできる。芳香族性または環式の群は、Pro、HisおよびTrpからなる「窒素環サブグループ」、およびPheおよびTyrからなる「フェニル基を含むサブグループ」へ細分することができる。脂肪族性の群は、Val、LeuおよびIleからなる「大きな脂肪族性の無極性サブグループ」;Met、Ser、ThrおよびCysからなる「脂肪族性のわずかに極性のサブグループ」;およびGlyおよびAlaからなる「小さな残りのサブグループ(small−residue sub−group)」へ細分することができる。
【0062】
保存的な変異の例は、上記のサブグループ内のアミノ酸の置換を含み、例えば、Argに対するLys、およびその逆もあり、その結果、正の電荷は保持されることができ;およびAspに対するGlu、およびその逆もあり、その結果、負の荷電は保持されることができ;Thrに対するSer、その結果、遊離−OHは保持されることができ;および、Asnに対するGin、その結果、遊離−NHは保持されることができる。
【0063】
本明細書で使用されるように、用語「減少する(decrease)」または関連する語「減少した(decreased)」、「減らす(reduce)」または「減った(reduced)」は、統計的に有意な減少を指す。疑義を回避するために、その用語は、通常、与えられたパラメーターの少なくとも10%の減少を指し、少なくとも20%の減少、30%の減少、40%の減少、50%の減少、60%の減少、70%の減少、80%の減少、90%の減少、95%の減少、97%減少、99%または100%の減少さえ(すなわち、測定されたパラメーターは、ゼロである)を包含し得る。
【0064】
用語「エピトープタグ」は、任意の抗原決定基、または目的のタンパク質の検出または精製を可能にするために目的のタンパク質のコード領域へ融合される任意の生体構造若しくは配列を指す。そのような融合タンパク質は、例えば、エピトープタグ特異抗体を用いることによって、識別し精製することができる。エピトープタグの代表的な例は、制限されないが、Hisタグ(6−ヒスチジン)、HAタグ(赤血球凝集素)、V5−タグおよびc−Mycタグ、GSTタグおよびFLAGタグ(DYKDDDDK)を含む。
【0065】
「カプセル化された細胞」という表現の文脈における用語「カプセル化された」は、個別の細胞または細胞の群の外部が人工膜で覆われた細胞を指す。
【0066】
本明細書に使用されるように、用語「発現」は、宿主細胞内のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を指す。宿主細胞中の所望の産生物の発現のレベルは、細胞内にある対応するmRNAの量または選択された配列によってコード化された所望のポリペプチドの量のいずれかに基づいて測定され得る。例えば、選択された配列から転写されたmRNAは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNAプロテクション、細胞のRNAに対するインサイツハイブリダイゼーション、またはPCRによって定量することができる。選択された配列によってコード化されたタンパク質は、限定されないが、例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、放射免疫定量法、免疫沈降、タンパク質の生物活性のためのアッセイによって、またはタンパク質の免疫染色によるアッセイ、その後のFACS分析を含む様々な方法によって定量することができる。
【0067】
「発現制御配列」は、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化信号、ターミネーター、内部リボソーム進入部位(IRES)などDNA調節配列であり、宿主細胞においてコード化された配列を発現するために提供される。典型的な発現制御配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。
【0068】
用語「異種のDNA(heterologous DNA)」は、別のソースに由来するか、または、同じソースからであるが、異なる(すなわち、非天然の(non native))コンテキストで配置された細胞、あるいは核酸配列へ導入されたDNAを指す。
【0069】
用語「相同(homology)」は、類似の機能またはモチーフで遺伝子またはタンパク質を同定するために使用される、配列の類似性の数学的に基づいた比較を述べる。例えば、他のファミリーメンバー、関連する配列または同族体を同定するための公のデータベースに対する検索を行なうために、本発明の核酸および蛋白質配列は、「クエリー配列」として使用することができる。そのような検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTとXBLASTのプログラム(バージョン2.0)を使用して行なうことができる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行なうことができる。BLASTタンパク質検索は、本発明の蛋白質分子に相同なアミノ酸配列列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行なうことができる。比較目的のためにギャップされた(gapped)アラインメントを得るために、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載されているようにGapped BLASTを利用することができる。BLASTとGapped BLASTのプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えばXBLASTとBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。
【0070】
用語「相同の(homologous)」は、「共通の進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関係性を指し、動物の同じ種におけるスーパーファミリー(例えば免疫グロブリンスーパーファミリー)からのタンパク質と同様、動物の異なる種からの相同タンパク質(例えば、ミオシン軽鎖ポリペプチドなど;Reeck et al.,Cell,50:667,1987を参照)を含む。百分率同一性の観点からであれ、または特定の残基またはモチーフおよび保存された位置の存在によってであれ、それらの配列類似性に反映されるように、そのようなタンパク質(またそれらのコード化する核酸)は配列相同性を有する。
【0071】
本明細書で使用されるように、用語「増加する(increase)」または関連語「増加された(increased)」、「強める(enhance)」、または「強められた(enhanced)」は、統計的に有意な増加を指す。疑義を回避するために、その用語は、通常、与えられたパラメーターの少なくとも10%の増加を指し、対照値にわたる少なくとも20%の増加、30%の増加、40%の増加、50%の増加、60%の増加、70%の増加、80%の増加、90%の増加、95%の増加、97%増加、99%または100%の増加さえを包含し得る。
【0072】
用語「単離された」は、ニュールツリンポリペプチドを記載するために使用された時、その自然環境の成分から同定された、および分離された及び/又は回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染物質成分は、タンパク質の研究、診断的使用または治療的使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質、または非タンパク質の溶質を含み得る。幾つかの実施形態において、タンパク質は、クマシーブルー、または好ましくは銀染色を用いて、非還元条件または還元条件下でのSDS−PAGEによって評価されると、少なくとも95%の均一性まで精製される。目的の自然環境のタンパク質の少なくとも1つの成分が存在しないので、単離されたタンパク質は組換え細胞内にインサイツでタンパク質を含む。しかしながら、通常、単離されたタンパク質は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0073】
本明細書で使用されるように、「同一性(identity)」は、配列が配列マッチング(sequence matching)を最大限にするように、すなわち、ギャップと挿入を考慮に入れて、配列されるとき、2つ以上の配列における対応する位置での同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、限定されないが、(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991;およびCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988))に記載の既知の方法によって容易に計算することができる。同一性を測定する方法は、検査された配列間の最大の一致を与えるように設計される。さらに、同一性を測定する方法は公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて体系化される。2つの配列間の同一性を測定するコンピュータプログラム方法は、限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J., et al.,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTNおよびFASTAAltschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.215:403−410(1990)およびAltschul et al.Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1997))を含む。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他のソースから公的に利用可能である(BLAST Manual, Altschul,S.,et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894;Altschul,S.,t al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を測定するために使用することができる。
【0074】
本明細書において交換可能に使用されるように、用語「操作可能に結合された」、または「操作可能に結合した」は、意図した方式で作用することを可能にする方式での2つ以上のヌクレオチド配列または配列要素のポジショニングを指す。幾つかの実施形態において、本発明に係る核酸分子は、組換えタンパク質をコード化するヌクレオチド配列に操作可能に結合されたクロマチンをオープンし(open)、オープン状態にクロマチンを保持することができる1以上のDNA要素を含む。他の実施形態において、核酸分子は、以下から選択される1以上のヌクレオチド配列をさらに含んでもよい:(a)翻訳を増加させることができるヌクレオチド配列;(b)細胞の外側の組換えタンパク質の分泌を増加させることができるヌクレオチド配列;および(c)そのようなヌクレオチド配列が組換え型タンパク質をコード化するヌクレオチド配列に操作可能に結合される場合に、mRNAの安定性を増加させることができるヌクレオチド配列。一般に、しかし必ずしもそうではないが、操作可能に結合されたヌクレオチド配列は隣接しており、必要に応じ、読取り枠において隣接している。しかしながら、クロマチンをオープンする及び/又はクロマチンをオープン状態に保持することができる操作可能に結合されたDNA要素は、一般的に、組換えタンパク質をコード化するヌクレオチド配列の上流に位置するが;DNA要素は、それに必ずしも隣接していない。様々なヌクレオチド配列の操作可能な結合は、当該技術分野において周知の組み換え法、例えば、PCR法を用いて、適切な制限部位での核酸結合(ligation)によって、またはアニーリングによって達成される。適切な制限部位が存在しないとき、合成オリゴヌクレオチドリンカーまたはアダプターを、慣行的実務に合わせて使用することができる。
【0075】
本明細書で使用されるように、本発明の文脈における用語「患者(patient)」は、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、ヒト以外の霊長類、マウス、ラット、犬、猫、馬またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、具体的な疾患および障害の動物モデルを代表する患者として好都合に使用することができる。患者は、男性体かもしれないしまたは女性体かもしれない。患者は、以前に診断されたか、細胞変性または機能不全を有していると識別されたものであり得、および治療介入を既に随意に受けたか、経験している者であり得る。好ましくは、患者はヒトである。
【0076】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」および「核酸」は、本明細書において交換可能に使用され、任意の長さのヌクレオチド(リボヌクレオチドかデオキシリボヌクレオチドのいずれか)のポリマー形態を指す。これらの用語は、一本鎖、二本鎖、三本鎖のDNA、ゲノムDNA、c相補的DNA、RNA、DNA−RNハイブリッド、あるいは、プリン塩基およびピリミジン塩基、または他の天然の(natural)、化学的に、生化学的に修飾された、非天然の(non−natural)、または誘導されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。ポリヌクレオチドの骨格は、(典型的にはRNAまたはDNAにおいて見出され得る)糖およびリン酸基、または修飾された若しくは置換された糖またはリン酸基を含み得る。さらに、二重らせん構造のポリヌクレオチドは、相補鎖の合成および適切な条件下での鎖のアニーリングにより、または適切なプライマーと共にDNAポリメラーゼを使用して、新たに相補鎖を合成することにより、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド生成物から得ることができる。核酸分子は、多くの異なる形態、例えば、遺伝子または遺伝子断片、1以上のエキソン、1以上のイントロン、mRNA、tリボ核酸、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー、をとることができる。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾されたヌクレオチド、ウラシル、他の糖、およびフルオロリボース(fluororibose)およびチオアート、およびヌクレオチド分枝(nucleotide branches)などの結合基を含んでもよい。本明細書で使用されるように、「DNA」または「ヌクレオチド配列」は、塩基A、T、CおよびGを含むのみでなく、任意のそれらのアナログまたはこれらの塩基の修飾された形態(メチル化されたヌクレオチドなど)、ヌクレオチド間の修飾体(無電荷の結合およびチオアート(thioate)など)、糖アナログの使用、および修飾された及び/又は代替の主鎖構造(ポリアミドなど)も含む。
【0077】
本明細書で使用されるように、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合(すなわちペプチドアイソスター)によって互いに結合された2以上のアミノ酸残基を含む任意の分子を指す。「ポリペプチド」は、一般に、ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短い鎖と、通常タンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方を指す。ポリペプチドは、20の遺伝子にコード化されたアミノ酸以外にアミノ酸を含み得る。「ポリペプチド」は、翻訳後プロセシングなどの自然工程によってか、または当該技術分野において周知の化学的修飾技術によってかのいずれかで修飾されるアミノ酸配列を含む。そのような修飾は、基本的なテキストにおいて、およびより詳細な研究書と同様、当業者によく知られている夥しい数の研究文献によく記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含むポリペプチドのあらゆる場所で生じ得る。同じタイプの修飾は、与えられたポリペプチド中のいくつかの部位で同じ程度または異なる程度まで存在し得ることが認識される。また、与えられたポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含み得る。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果、分枝させられてもよく、分枝を伴う、または伴わない環式であってもよい。環式の、分枝したポリペプチドおよび分枝した環式のポリペプチドは、翻訳後の自然工程から結果として生じることもあり、または合成方法によって作られることもある。修飾は、例えば、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、ビオチン化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質の誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタネート(pyroglutarnate)の形成、フォルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GP1アンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、パルミトイル化、酸化、蛋白質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化(racernization)、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化(arginylation)などのタンパク質に対するアミノ酸の転移RNA媒介付加、およびユビキチン化を含む(例えば、Proteins−−Structure and Molecular Properties,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York,1993;Wold,F.,Post−translational Protein Modifications: Perspectives and Prospects,1−12,in Post−translational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,1983;Seifter et al,“Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors”,Meth Enzymol,182,626−646,1990,and Rattan et al.,“Protein Synthesis:Post−translational Modifications and Aging”,Ann NY Acad Sci,663,48−62,1992を参照)。
【0078】
「プロモーター」は、細胞においてRNAポリメラーゼを結合することができ、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本明細書で使用されるように、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端に結合され、バックグラウンドを超える検知可能なレベルで転写を始めるのに必要な最低限の数の塩基または要素を含むように上流(5’方向)に伸びる。(ヌクレアーゼSIでマッピングすることにより好都合に定義された)転写開始部位は、RNAポリメラーゼの結合の原因であるタンパク結合ドメイン(コンセンサス配列)のみでなく、プロモーター配列内に見出されることができる。真核生物のプロモーターは、しばしば、しかしいつもではないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含んでいる。原核生物のプロモーターは、−10および−35のコンセンサス配列に加えて(in addition to the−10 and −35 consensus sequences)、Shine−Dalgarno配列を含む。様々な異なるソースからの構成的プロモーター、誘導プロモーター、抑制プロモーターを含む多数のプロモーターが、当該技術分野において周知である。代表的なソースは、例えば、ウイルス、哺乳動物、昆虫、植物、酵母、および細菌の細胞型を含み、これらのソースからの適切なプロモーターは、容易に利用可能であり、例えば、他の商用または個別のソースのみでなくATCCなどの受託所から、公的にオン・ラインで利用可能な配列に基づいて合成的に作ることができる。プロモーターは、一方向性かもしれないし(すなわち、1方向に転写を始める)、または双方向かもしれない(すなわち、3’または5’のいずれかの方向で転写を始める)。プロモーターの限定しない例は、例えば、T7細菌発現系、pBAD(araA)細菌発現系、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、誘導性プロモーター(Tetシステム(米国特許第5,464,758号および第5,814,618号)、エクジソン誘導性システム(No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(1996)93(8):3346−3351;T−RE(商標)システム(Invitrogen Carlsbad,CA)、LacSwitch(登録商標)(Stratagene,(San Diego,CA)、Cre−ER タモキシフェン誘導性レコンビナーゼシステム(Indra et al.Nuc.Acid.Res.(1999)27(22):4324−4327;Nuc.Acid.Res.(2000)28(23):e99;米国特許第7,112,715号;およびKramer & Fussenegger,Methods Mol.Biol.(2005)308:123−144)を含む)又は所望の細胞において発現するのに適している当該技術分野において既知の任意のプロモーターを含む。
【0079】
本明細書において使用されるように、用語「精製された」は、無関係な材料、すなわち、その材料が得られる本来の(native)材料を含む汚染物質の存在を減少させ、または排除する状態下で単離された材料を指す。例えば、精製されたタンパク質は、好ましくは、細胞内で関係する他のタンパク質または核酸を実質的に含まない。精製のための方法は、当該技術分野において周知である。本明細書で使用されるように、用語「実質的に含まない」は、材料を分析的に検査する文脈において、操作上使用される。好ましくは、汚染物質を実質的に含まない精製された材料は、少なくとも50%不純物を含まない(pure);より好ましくは少なくとも75%不純物を含まない、より好ましくはさらに少なくとも95%不純物を含まない。純度は、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、免疫測定、組成分析、生物検定、および当該技術分野において既知の他の方法によって評価することができる。用語「実質的に不純物を含まない(substantially pure)」は、最高純度を示し、それは当該技術分野において既知の従来の精製技術を用いて達成することができる。
【0080】
用語、「組換えタンパク質」または「組換えポリペプチド」は、i)異種DNAによって全てまたは部分的にコード化されたタンパク質、またはii)内因性遺伝子の発現を活性化する異種DNAによって全体または部分的に生成された発現制御配列(プロモーターまたはエンハンサーなど)から発現されるタンパク質を指す。
【0081】
用語「配列類似性」は、共通の進化起源を共有している、またはしていない核酸またはアミノ酸配列間の同一性または一致の程度を指す(上記のReeck et al.を参照)。しかしながら、一般的な使用において、および本出願において、用語「一致している(homologous)」は、副詞により修飾された時のように「大いに(highly)」などの副詞で修飾される場合、配列類似性を指すこともあり、および共通の進化起源に関係があることもあり、または関係がないこともある。
【0082】
特定の実施形態において、BLAST、FASTA、DNAストライダー、CLUSTALなどのような既知の配列比較アルゴリズムによって測定される場合、核酸配列の指定された長さにわたって、少なくとも約85%、より好ましくは、少なくとも約90%または少なくとも約95%のヌクレオチドが一致する時、2つの核酸配列は、「実質的に一致している(substantially homologous)」、または「実質的に類似している(substantially similar)」。そのような配列の例は、本発明の特定遺伝子に異なる対立遺伝子変異型または変種である。実質的に一致している配列はまた、ハイブリダイゼーションによって(例えば、その特定のシステムのために定義された厳しい条件下での、例えば、サザンハイブリダイゼーション実験において)識別され得る。
【0083】
同様に、本発明の特定の実施形態において、アミノ酸残基の90%以上が同一のとき、2つのアミノ酸配列は「実質的に同一である」、または「実質的に類似している」。アミノ酸残基の約95%以上が類似しているとき、2つの配列が機能的に同一である。好ましくは、類似した、または一致したポリペプチド配列は、例えばGCG(Genetics Computer Group,Version 7,Madison,Wis.)pileupプログラム)を用いる、または上記の任意のプログラムとアルゴリズムを用いるアラインメントによって同定される。そのプログラムは、デフォルト値:ギャップ生成ペナルティー(Gap creation penalty)=−(l+l/k)、kは、ギャップ伸長ナンバー(gap extension number)で、平均の一致(Average match)=1、平均の不一致(Average mismatch)=−0.333、を用いた、SmithとWatermanの局所相同性アルゴリズムを使用してもよい。
【0084】
本明細書に定義されるように、用語「徐放」、「持続放出」、または「デポー製剤」は、改良されたニュールツリンポリペプチドの1回量の直接のI.V.またはS.C.投与後のニュールツリンポリペプチドが利用可能な期間より長い期間にわたって生じる、徐放組成物または徐放デバイスからの改良されたニュールツリンポリペプチドなどの薬物の放出を指す。1つの態様において、徐放は、少なくとも約1から2週の期間にわたって生じる放出である。別の態様において、徐放は、少なくとも約4か月の期間にわたって生じる放出である。本明細書により十分に記載されているように、放出の連続性および放出のレベルは、所望の効果を生み出すための徐放デバイスの型(例えば、プログラム可能なポンプまたは浸透圧駆動ポンプ)または使用される徐放組成物(例えば、ポリマーのモノマー比、分子量、ブロック組成および様々な組み合わせ)、徐放デバイスまたは徐放組成物、ポリペプチド充填、および/または賦形剤の選択によって影響を受け得る。
【0085】
用語「形質転換」または「トランスフェクション」は、宿主細胞または生物体へ1以上の核酸分子の転写(transfer)を指す。宿主細胞へ核酸分子を導入する方法は、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、微量注入、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、スクレープローディング(scrape loading)、ウイルスまたは他の伝染性因子を用いた弾丸導入または注入(ballistic introduction or infection)を含む。細胞の文脈において「形質転換された」、「形質導入された」あるいは「トランスジェニックの」は、組換え型か異種の核酸分子(例えば1以上のDNA構築物またはRNA、またはsiRNAの片方の対(counterpart))が導入された宿主細胞または生物体を指す。核酸分子は、安定して発現する(すなわち、約3か月より長い間、細胞において機能的な形態で維持される)ことができ、または3か月未満の間細胞において機能的な形態で安定的に維持されることができない(non−stably maintained)、すなわち、一時的に発現される。例えば、「形質転換された」、「形質転換体」、または「トランスジェニックの」細胞は、形質転換過程を介しており、異種の核酸を含む。用語「非形質転換の」は、形質転換過程を介していない細胞を指す。
【0086】
用語「処置する」あるいは「処置」は、患者における疾病の少なくとも1つの症状を和らげる、緩和する、遅らせる、減少させる、逆戻りさせる、改善する、管理する、妨げることを意味する。用語「処置する」はまた、発症を阻止し、遅らせ(すなわち疾患の臨床症状に先立った期間)、及び/または疾病を進行させるまたは悪化させるリスクを減らすことを意味してもよい。
【0087】
本明細書で使用されるように、用語「治療上有効な量」、「予防的に有効な量」、あるいは「診断上有効な量」は、投与後の所望の生体反応を誘発するために必要である、例えば、改良されたニュールツリンポリペプチド、そのような改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、または組換え型の改良されたニュールツリンを発現する宿主細胞などの活性剤の量である。
【0088】
用語「変異体」は、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと異なるが、そのいくつかの不可欠な特性を保持するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。ポリペプチドの典型的な変異体は、アミノ酸配列において参照ポリペプチドと異なる。一般に、参照ポリペプチドおよび変異体の配列が全体として類似しており、および多くの領域では同一であるように、変化は限定的である。変異体および参照ポリペプチドは、任意の組み合わせにおいて、1以上の置換、挿入または欠失によってアミノ酸配列において異なることがある。置換された、または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコード化されたものであってもよいし、そうではなくいてもよい。
【0089】
用語「野生型ニュールツリン」または「プレ−プロニュールツリン(pre−pro neurturin)」は、アミノ酸配列(表D3における配列番号26)をコード化する遺伝子を指す。用語「成熟野生型ニュールツリン」または「成熟ヒトニュールツリン」は、アミノ酸配列(表D2における配列番号5)をコード化する遺伝子を指し、それは分泌シグナルおよびプレタンパク質の除去によって処理された)。用語「NRTN」は、野生型ニュールツリンをコード化する遺伝子を指す。
【0090】
本発明の実施は、別途定められない限り、化学、生物化学、微生物学、生化学、組換えDNAおよび免疫学の従来の技術を利用し、それらは、当業者の能力内である。そのような技術は、文献に説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,ch.9,13,and 16,John Wiley & Sons,New York,N.Y.);B.Roe,J. Crabtree,and A.Kahn,1996,DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee, 1990,In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(Editor),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,Irl Press;D.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Press;Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO.I by Edward Harlow,David Lane, Ed Harlow (1999,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−544−7);Antibodies:A Laboratory Manual by Ed Harlow(Editor),David Lane(Editor)(1988,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−3,4−2),1855.Handbook of Drug Screening,edited by Ramakrishna Seethala,Prabhavathi B.Fernandes(2001,New York,N.Y.,Marcel Dekker,ISBN 0−8247−0562−9);and Lab Ref:A Handbook of Recipes,Reagents,and Other Reference Tools for Use at the Bench,Edited Jane Roskams and Linda Rodgers,2002,Cold Spring Harbor Laboratory,ISBN 0−87969−630−3を参照。これらの一般的なテキストの各々は、参照によって本明細書に組込まれる。
【0091】
他に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されている方法、組成物、試薬、細胞、それらの類似物又は等価物が本発明を実施又は試験する際に使用され得るが、好ましい方法と材料が、本明細書に記載される。
【0092】
上論された出版物は、本出願の出願日の前にもっぱらそれらの開示のために提供される。本明細書におけるいずれも、本発明が、先行発明によるそのような開示より先立つ権利がないという承認として解釈されない。
【0093】
本明細書に引用される、特許および特許出願を含むすべての出版物および参照は、各個々の出版物または参照の各々が、あたかも、充分に述べられているように、本明細書に参照として組み込まれることが示されているかのように、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。本出願が優先権を主張する特許出願はいずれも、出版物および参照のために上記される形式で、その全体が、参照として本明細書に組み込まれる。
【0094】
(概要)
本発明は、部分的に、ヘパリンおよびヘパラン硫酸の結合能力を減少させるが、受容体複合体の結合時のRETタンパク質のリン酸化を誘発する能力を驚くほど保持する、改良されたニュールツリン分子の発見に基づく。異なる実施形態において、本発明は、RETのリン酸化を誘発し、減少したヘパリン結合親和性を有する能力を有する精製されたポリペプチド、改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主を含む。本発明はまた、ヒトの疾患および障害の処置におけるこれらの様々な実施形態の使用を含む。
【0095】
(I.ニュールツリンポリペプチド)
本明細書で使用されるように、用語「改良されたニュールツリンポリペプチド」、または「改良されたニュールツリン」または「改良されたNRTN」は、対応する成熟野生型ニュールツリン配列番号5と、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む領域において、少なくとも1つの正に帯電したアミノ酸の変異によって異なり、成熟野生型ニュールツリンと比較してヘパリンに対する減少した親和性を示す、自然発生および合成の形態のニュールツリンをすべて含む。
【0096】
別の態様において、改良されたニュールツリンは、対応する成熟野生型ニュールツリン配列番号5と、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む領域において、少なくとも2つの正に帯電したアミノ酸の変異によって異なり、成熟野生型ニュールツリンと比較してヘパリンに対する減少した親和性を示す。
【0097】
別の態様において、改良されたニュールツリンは、対応する成熟野生型ニュールツリン配列番号5と、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む領域において、少なくとも3つの正に帯電したアミノ酸の変異によって異なり、成熟野生型ニュールツリンと比較してヘパリンに対する減少した親和性を示す。
【0098】
別の態様において、改良されたニュールツリンは、対応する成熟野生型ニュールツリン配列番号5と、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む領域において、少なくとも5つの正に帯電したアミノ酸の変異によって異なり、成熟野生型ニュールツリンと比較してヘパリンに対する減少した親和性を示す。
【0099】
1つの実施形態において、用語「改良されたニュールツリンポリペプチド」は、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63によって包含される13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸配列に関して、成熟野生型ニュールツリン(配列番号5)と少なくとも90%同一のポリペプチドを指す。別の態様において、本発明の方法のうちのいずれかで使用される「改良されたヒトニュールツリンポリペプチド」は、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63によって包含される13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸配列に関して、配列番号5(成熟野生型ニュールツリン)と少なくとも95%同一である。
【0100】
1つの実施形態において、改良されたヒトニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリンと比較して、102のアミノ酸長の成熟野生型ニュールツリン(配列番号5)に対するナンバリングを用いて、アミノ酸51、52、54、55、56、57、58、60、61、62または63で1以上の変異を含む。本発明の1つの態様において、改良されたニュールツリンは、成熟ヒトニュールツリン(配列番号5)の残基51〜63によって包含される領域内に1〜13のアミノ酸変異を含む。1つの態様において、改良されたニュールツリンは、成熟ヒトニュールツリン(配列番号5)の残基51〜63によって包含される領域内に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のアミノ酸変異を含む。さらに別の態様において、改良されたニュールツリンは、成熟ヒトニュールツリン(配列番号5)の残基51〜63によって包含される領域内に3、5、7、9または11のアミノ酸変異を含む。
【0101】
任意の改良されたニュールツリンポリペプチドの1つの態様において、1以上の変異は、改良されたニュールツリンに、少なくとも1つの中性、双性イオン性、または負に帯電された脂肪族アミノ酸を導入する。任意の改良されたニュールツリンポリペプチドの別の態様において、少なくとも1以上の変異体は、改良されたニュールツリンに、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、セリンおよびグルタミンからなる群から独立して選択されるアミノ酸を導入する。
【0102】
別の態様において、改良されたニュールツリンポリペプチドは、配列ARLQGQGALVGS(配列番号25)によるアミノ酸51〜62の置換を含む。別の態様において、改良されたニュールツリンポリペプチドは、配列番号22〜25(表D1)から選択される配列を含み、改良されたニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ヒトニュールツリンと比較して、ヘパリンに対する減少した親和性を示す。
【0103】
【表1】

【0104】
本発明のさらに別の態様において、改良されたニュールツリンポリペプチドは、配列番号1、2、3または4(表D2)を含む。
【0105】
【表2】

【0106】
変異体中の置換されたアミノ酸は、野生型配列と比較して、太線のフォントで示される。
【0107】
改良されたニュールツリンポリペプチドは、ヘパリンに対する結合またはRETのリン酸化誘発にさらに実質的に影響を与えない領域51〜63の外側に、付加アミノ酸置換を有することができる。さらに、成熟ヒトニュールツリンの自然発生の変異体は、配列決定され、当該技術分野において少なくとも部分的に機能的に交換可能であると知られている。従って、ヒトと同様の他の種のニュールツリンのホモログ、オルソログおよび自然発生のアイソフォームの任意の配列に基づいて、1以上の保存されたアミノ酸変異を含む改良されたニュールツリンを作製するために、例えば、D3(配列番号26〜30を参照)において示されるようなニュールツリンの自然発生の変異体を選択することは、慣例事項である。
【0108】
【表3】

【0109】
当該技術分野において、タンパク質またはペプチドの配列を、それらの有用な活性を保持しつつ、合成的に修飾することが知られており、これは、当該技術分野における、および文献に広く記載された標準である技術を用いて、例えば、核酸のランダムなまたは部位特異的な変異誘発、開裂、結合反応、またはアミノ酸またはポリペプチド鎖の化学合成または修飾を介して達成することができる。例えば、保存アミノ酸の変異の変化(mutations changes)は、改良されたニュールツリンへ導入することができ、本発明の範囲内で考慮される。
【0110】
従って、改良されたニュールツリンは、アミノ酸51〜63を含むヘパリン結合領域の外側に、任意のニュールツリンの自然発生のアイソフォームに基づいて1以上のアミノ酸の欠失、付加、挿入および/または置換を含んでもよい。これらは、近接してもよいしまたは近接しなくてもよい。代表的な変異体は、表D2にリストにされた任意の配列と比較して、1〜8、またはより好ましくは1〜4、1〜3、または1または2のアミノ酸の置換、挿入および/または欠失を含んでもよい。
【0111】
同様に、改良されたヒトニュールツリンを使用して、例えば、見込みのあるT細胞エピトープを同定するための自動化コンピュータ認識プログラム、および、それほど免疫原でない形態を識別するための定向進化の(directed evolution)アプローチを使用して、免疫原性の問題が生じる場合、その免疫原性の問題を扱い、および/または緩和することは、当該技術分野における範囲内である。任意のそのような修飾、またはその組み合わせは、活性が保持される限り、本発明の任意の方法において作られ、および使用され得る。
【0112】
本発明の任意の方法において使用され得る改良されたニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンの長さにわたって、成熟ヒトニュールツリンアミノ酸配列(配列番号5)と実質的に一致する、または実質的に類似したアミノ酸配列を有し得る(すなわち、配列番号5のアミノ酸1〜50、および64〜102と実質的に一致、または実質的に類似している)。
【0113】
さらに、いくつかの実施形態において、改良されたニュールツリンポリペプチドは、例えばIgG分泌シグナル配列を含む、免疫グロブリンなど他のかなり特徴づけられた分泌タンパク質に由来する、合成のまたは自然発生の(naturally occurring)分泌シグナル配列を含み得る。特に、野生型ニュールツリンは、分泌シグナル(アミノ酸1−19)を含むプレ−プロ−タンパク質、および生合成および細胞からの分泌中に処理されるアミノ酸20〜95を含むプレ−ペプチドとして最初に合成される。従って、1つの態様において、本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドは、野生型ニュールツリン(配列番号26)におけるプレ配列およびプロ配列と一致する、または実質的に類似するプレ配列およびプロ配列を含み得る。幾つかの実施形態において、インサイツで改良された成熟ニュールツリンを形成するために、そのようなタンパク質は蛋白質分解によって処理され得る。そのような融合タンパク質は、例えば、新しいN末端アミノ酸を提供するユビキチンに対する改良されたニュールツリンの融合、または、細胞外の培地へ改良されたニュールツリンの高レベルの分泌を媒介する分泌シグナルの使用、または精製または検知を改善するためのN末端あるいはC末端エピトープタグを含む。
【0114】
他の実施形態において、他のタンパク質に対する改良されたヒトニュールツリンの融合タンパク質も含まれ、これらの融合タンパク質は、改良されたニュールツリンポリペプチドの生物活性、ターゲティング、生物学上の生命、血液脳障壁を浸透する能力または薬物動態特性を増加させ得る。薬物動態特性を改善する融合タンパク質の例は、制限されないが、ヒトアルブミン(Osborn et al.:Eur.J.Pharmacol.456(1−3):149−158,(2002))、抗体Fcドメイン、ポリGluまたはポリAsp配列、およびトランスフェリンに対する融合を含む。さらに、アミノ酸Pro、Ala、およびSerからなる、立体配置的に乱れたポリペプチド配列(「PASylation」)またはヒドロキシエチルデンプン(商標HESYLATION(登録商標)のもと販売されている)との融合は、改良されたニュールツリンの流体力学的堆積を増加させる単純な方法を提供する。このさらなる伸長は、かさばったランダム構造をとり、このことは、結果として生じる融合タンパク質の大きさを著しく増加させる。この手段によって、腎臓ろ過を介した改良されたニュールツリンの典型的には迅速なクリアランスは、何桁か遅くらせられる。さらに、IgG融合タンパク質の使用はまた、GDNFなどのタンパク質による融合タンパク質は、血液脳障壁を浸透することを可能にすることが示された(Fu et al.,(2010)Brain Res.1352:208−13)。本発明内で使用するために熟考されたさらなる融合タンパク質アプローチは、多量体化ドメインに対する改良されたニュールツリンの融合を含む。代表的な多量体化ドメインは、制限されないが、一定のDNA結合ポリペプチドにおいて見出されるロイシンジッパードメインなどのコイルドコイル二量体化ドメイン、免疫グロブリン重鎖CHI定常部または免疫グロブリン軽鎖定常部などの免疫グロブリンFab不変領域の二量体化ドメインを含む。
好ましい実施形態において、多量体化ドメインは、テトラネクチンに由来し、より詳細には、トラネクチン三量体形成構造要素(tetranectin trimerising structural element)を含み、このことは、WO98/56906に詳細に記載されている。
【0115】
改良されたニュールツリンと本明細書に記載された任意の融合タンパク質との間に、フレキシブルな分子リンカー(あるいはスペーサー)が随意に置かれることもあり、および共有結合されることもあることが認識される。任意のそのような融合タンパク質は、本発明の任意の方法、タンパク質、ポリヌクレオチドおよび宿主細胞において使用され得る。
【0116】
改良されたニュールツリンは、その本来の形態(native form)、すなわち、ヒトニュールツリンの機能的に同等な変異体として見られることができる性質で現れる異なる変異体であることもあり、または、それらは、その機能的に同等な天然の(naturall)誘導体であることもあり、それは、それらのアミノ酸配列において、例えば蛋白質分解性切断(例えばNまたはC末端、または両方からの)または他の翻訳後修飾において異なり得る。改良されたヒトニュールツリンの翻訳後修飾および分解生成物を含む自然発生の化学的誘導体はまた、例えば、改良されたヒトニュールツリンのピログルタミル、イソアスパルチル、蛋白質分解性、リン酸化、グリコシル化、酸化(oxidatized)、異性化、脱アミノ化変異体を含む本発明の任意の方法に明確に含まれる。
【0117】
改良されたニュールツリンの化学的修飾(それらは改良されたニュールツリンの活性または生物学的な半減期を保持または安定させる)も、本明細書に記載の任意の方法と共に使用され得る。そのような化学的修飾の方策は、制限されないが、ペグ化、グリコシル化およびアシル化を含む(Clark et al.:J.Biol.Chem.271(36):21969−21977,(1996;Roberts et al.:Adv.Drug.Deliv.Rev.54(4):459−476,(2002);Felix et al.:Int.J.Pept.Protein.Res.46(3−4):253−264,(1995);Garber AJ:Diabetes Obes.Metab.7(6):666−74(2005))。アミノ酸を安定させるC末端およびN末端保護基、およびペプトミメティックユニットも含まれ得る。
【0118】
種々なPEG誘導体は、PEG結合体(PEG−conjugate)の調製において利用可能でもあり、使用にも適している。例えば、商標SUNBRIGHT(登録商標)Rシリーズのもとに販売されているNOF Corp.のPEG試薬は、薬物、酵素、リン脂質、および他の生体材料に様々な方法によって結合させるために、メトキシPEGアミン、マレイミド、およびカルボン酸などのメトキシポリエチレングリコールおよび活性化されたPEG誘導体を含む多数のPEG誘導体を提供し、およびNektar Therapeutics’ Advanced PEGylation technologyはまた、治療の安全性および有効性を改善する多様なPEG結合技術を提供する。
【0119】
特許、公表された特許出願および関連する出版物の検索も、本開示を読む当業者に、重要な可能なPEG結合技術およびPEG誘導体を提供する。例えば、米国特許第6,436,386号;第5,932,462号;第5,900,461号、第5,824,784号;および第4,904,584号(これらの内容は、その全体が参照として組み込まれる)は、そのような技術および誘導体、およびそれらの製造のための方法を記載する。従って、当業者は、本発明の開示とこれらの他の特許の開示の両方を考慮して、その持続放出のために改良されたニュールツリンに、PEG、PEG誘導体または幾つかの他のポリマーを結合することができる。
【0120】
PEGは、水および多くの有機溶媒中で可溶性の特性を有している周知のポリマーであり、毒性がなく、免疫原性がなく、そしてまた透明で、無色で、無臭で、および安定している。PEGの1つの使用は、結果として生じるPEG分子結合体を可溶性にするために、不溶性の分子にポリマーを共有結合させることである。これらの理由および他の理由で、PEGは付着に好ましいポリマーとして選択されたが、それは、もっぱら例示の目的のためであり、制限のためではなく、使用された。類似品は、制限されないが、ポリビニルアルコール、ポリ(プロピレングリコール)などのような他のポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(オキシエチル化グリセロール)などのようなポリ(オキシエチル化ポリオール)、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(polyvinyl purrolidone)、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/マレイン無水物およびポリアミノ酸を含む他の水溶性ポリマーを用いて得ることができる。当業者は、所望の投薬、循環時間、蛋白質分解に対する耐性および他の考察に基づいて、所望のポリマーを選択することができる。
【0121】
本来のLアミノ酸の異性体、例えば、D−アミノ酸は、改良されたニュールツリンの任意の上記の形態に組み入れられることがあり、本発明の方法の任意において使用され得る。さらなる変異体は、単一または複数のアミノ酸の配列間(intrasequence)挿入のみでなく、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合も含み得る。より長いペプチドは、改良されたニュールツリン配列の1以上の複数コピー(multiple copies)を含み得る。挿入アミノ酸配列の変異体は、1以上のアミノ酸残基がタンパク質の1つの部位に導入された変異体である。欠失変異体は、配列から1以上のアミノ酸の除去によって特徴づけられる。変異体は、例えば、他の種において、または地理的変異に起因して、例えば、それらが性質に現われるような異なる対立遺伝子の変異体を含む。
【0122】
改良されたニュールツリンの変異体、誘導体および融合タンパク質は、それらに検知可能なニュールツリン活性がある点において機能的に等しい。特に、それらは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%のヒトニュールツリンの活性を示す。したがって、それらはニュールツリンそれ自体に代替することができる。そのような活性は、生理反応がインビボまたはインビトロの試験システムにおいて示されようと、本来のヒトニュールツリンによって示された任意の活性、または、例えば、酵素、または細胞ベースのアッセイにおいて、または試験組織、膜、または金属イオンへの結合において、本来のヒトニュールツリンによって媒介された、任意の生物活性または反応を意味する。改良されたニュールツリンのそのような変異体、誘導体、融合タンパク質またはフラグメントが全て含まれ、本明細書に開示および請求される任意のポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞および方法において使用され得、用語「改良されたニュールツリン」のもと包含される。
【0123】
機能的なニュールツリン活性を測定するために適切なアッセイはRETリン酸化アッセイ(Virtanen et al.,(2005)“The first cysteine−rich domain of the receptor GFRalpha1 stabilizes the binding of GDNF”Biochem J.387:817−824)、および神経突起伸長アッセイ(Virtanen et al.,(2005)“The first cysteine−rich domain of the receptor GFRalpha1 stabilizes the binding of GDNF”Biochem J.387:817−824;可溶性GFRαタンパク質への結合アッセイ(Virtanen et al.,(2005)“The first cysteine−rich domain of the receptor GFRalpha1 stabilizes the binding of GDNF”Biochem J.387:817−824、またはN−シンデカンへの結合アッセイ(Maxim M.Bespalov PhD thesis,18.12.2009,University of Helsinki)、またはGFRαタンパク質の存在下でのNCAMへの結合アッセイ(Paratcha et al.,(2003)“The neural cell adhesion molecule NCAM is an alternative signaling receptor for GDNF family ligands”. 113:867−879)、細胞表面上のGPIアンカー(GPI−anchored)GFRαタンパク質(Virtanen et al.,(2005)“The first cysteine−rich domain of the receptor GFRalpha1 stabilizes the binding of GDNF”Biochem J.387:817−824;胚ドーパミン作動性ニューロンに関するインビトロの生存アッセイ(Lindholm et al.,(2007)“Novel neurotrophic factor CDNF protects and rescues midbrain dopamine neurons in vivo”Nature 448:73−77)、上頸神経節交感神経ニューロン(Yu et al.,(2003)“GDNF−deprived sympathetic neurons die via a novel nonmitochondrial pathway.”J Cell Biol 163:987−997)、後根神経節または後根神経運動ニューロン(Paveliev et al (2004) “GDNF family ligands activate multiple events during axonal growth in mature sensory neurons”Mol Cell Neurosci25:453−459);および神経毒性6−OHDAにおける成体齧歯類ドーパミン作動性ニューロンを保護する能力(Lindholm et al.,(2007)“Novel neurotrophic factor CDNF protects and rescues midbrain dopamine neurons in vivo”Nature 448:73−77)、MPTP傷害アッセイ(Schober et al.,(2007)“GDNF applied to the MPTP−lesioned nigrostriatal system requires TGF−beta for its neuroprotective action”Neurobiol Dis. 25:378−391 in vivo)を含む。
【0124】
例えば、RETリン酸化アッセイは、ヒトRETロングアイソフォーム(human RET long isoform)を安定して発現しており(Eketjall et al.,1999,EMBO J.,18:5901)、ラットGFRαlまたはヒトGFRα2により一時的にトランスフェクトされた線維芽細胞を用いて容易に行い得る。トランスフェクションの1日後に、細胞は、血清を含まないDMEM(Sigma)中で4時間飢餓にし(starved)、その後試験ニュールツリンを10分間適用した。その後、線維芽細胞を溶解し、溶解物を、(例えば、Santa Cruz Biotechnology Incから市販で入手可能なRET抗体を使用して)RETの免疫沈降に使用した。免疫複合体は、Gタンパク質セファロース(GE Healthcare)を用いて収集し、8%のSDS−PAGEおよびウェスタンブロッティング上で分析することができる。RETのリン酸化は、ホスホチロシンの抗体(Upstate Biotechnologyから市販で入手可能)によって検出することができる。RETの成功したリン酸化は、ニュールツリンが神経栄養因子のように機能的に活性なことを示す。
【0125】
別の態様において、本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドは、野生型成熟ヒトニュールツリンと比較して、ヘパリンまたはヘパラン硫酸に結合する親和性を減少させた。異なる実施形態において、改良されたニュールツリンポリペプチドの親和性は、野生型成熟ヒトニュールツリンと比較してヘパリンまたはヘパラン硫酸への、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍、約100倍、約200倍、約500倍、または約1000倍低い親和性を有する。
【0126】
従って、異なる態様において、本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドは、野生型成熟ニュールツリンが、約2〜4×10−9Mのヘパリンに対する明らかな親和性(K)を有する条件下で測定されると、約5×10−6Mより大きな、約1×10−6Mより大きな、約5×10−7Mより大きな、約1×10−7Mより大きな、約5×10−8Mより大きな、または約1×10−8Mより大きな、ヘパリンに対する明らか親和性を有する(すなわち、Kを有する)ことができる。
【0127】
ヘパリンに対する改良されたニュールツリンポリペプチドの親和性は、例えば、GE HealthcareによってBIACORE(登録商標)という商標のもと販売されてい器具類を用いる表面プラズモン共鳴に基づいた手法、または例えば、Sapidyneから市販で入手可能なKinExA技術を用いる溶液ベースのアフィニティ測定法を含む様々な当該技術分野で認められた方法(art recognized methods)を使用して容易に測定することができる。これらのシステムは、ヘパリンおよび改良されたニュールツリンの親和性が容易に、かつ正確に測定することができるための種々様々な市販の試薬およびカップリング試薬を含む。
【0128】
さらに、ヘパリンに対する改良されたニュールツリンポリペプチドの相対的な親和性は、GE Healthcare Life SciencesからHITRAP(商標)ヘパリンHPという商標のもと販売されているような、ヘパリンアフィニティカムからタンパク質を溶出するのに必要なイオン強度を特徴づけることにより測定することができる。
【0129】
従って、本発明の1つの態様において、改良されたニュールツリンポリペプチドは、約1モルのNaCl未満のNaClの濃度でHITRAP(商標)ヘパリンHPから溶出することができる。本発明の他の態様において、本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドは、2Mまで増加させる、10mMのHepes pH 7.2から成る連続的なNaCl勾配を使用して溶出されると、1.0M未満の、0.9MのNaCl未満;0.8MのNaCl未満;0.7MのNaCl未満;0.6MのNaCl未満;0.5MのNaCl未満;0.4MのNaCl未満;または0.3モル濃度のNaCl未満のNaClの濃度でHITRAP(商標)ヘパリンHPから溶出することができる。タンパク質が複数の画分にわたってカラムから溶出することが認められる間に、意図するポリペプチドの質量の大多数(すなわち、約75%以上)は、限定されないが、ウェスタンブロッティングまたはELISA等の従来の手法によって測定されると、NaClの与えられた濃度未満で溶出する。相互の型の実験において、改良されたニュールツリンポリペプチドを含む本発明のポリペプチドは、固定された支持体上、または1M以上のNaClで溶液中のいずれかで、ヘパリンまたはヘパラン硫酸にわずかに結合する。例えば、1M以上のNaClの濃度、95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満の本発明のポリペプチドが結合する。
【0130】
別の態様において、本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドは、処置部位への送達のために薬物に結合することができ、または目的の細胞を含む部位の画像診断を促進するための検知可能な標識に結合することができる。そのような検知可能な標識にタンパク質を結合する方法は、検知可能な標識を使用して画像化する方法と同様に、当該技術分野において周知である。標識化タンパク質は、種々様々な標識を使用して、種々様々なアッセイにおいて使用され得る。適切な検出手段は、放射性核種、酵素、コエンザイム、蛍光剤、化学発光剤(chemiluminescers)、色原体、酵素基質または補助因子、酵素抑制因子、補欠分子団複合体、フリーラジカル、粒子状物質、色素などの検知可能な標識の使用を含む。
【0131】
従って、1つの態様において、本発明は、そのN末端またはC末端のいずれかが検知可能な標識または薬物で標識化される、改良されたニュールツリンを含む。
【0132】
蛍光の検知可能な標識の例は、レアアースキレート化合物(ユーロビウムキレート化合物)、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン(Lissamine)、フィコエリトリン、テキサスレッドと同様に、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7などの赤外線色素、IR800CW、ICG、およびALEXA(登録商標) FLUORS 680および750などのALEXA(登録商標) FLUORSという商標のもと販売されている色素を含み、これらはすべて、Molecular probesおよび他の販売業者から市販で入手可能である。
【0133】
適切な酵素の例は、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子団複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光体の例は、ウンベリフェロンおよびフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンを含み;発光材料の例はルミノールであり;生物発光の材料の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンを含み;および、適切な放射性物質の例は125I、131I、35SまたはHを含む。そのような標識化された試薬は、例えば、ELISA、蛍光免疫測定法などの放射免疫定量法、酵素免疫定量法など様々な周知のアッセイにおいて使用され得る。
【0134】
本発明に係る改良されたニュールツリンポリペプチドは、細胞毒素、治療薬または放射性金属イオンまたは放射性同位元素などの治療的部分に結合し得る。放射性同位元素の例は、限定されないが、I−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212、Bi−213、Pd−109、Tc−99、In−111などを含む。そのような結合体は、与えられた生体反応を変更するために使用することができ;薬物部分は、古典的な化学的な治療薬に限定されるものと解釈されることはできない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス菌体外毒素またはジフテリア毒素などの毒素を含み得る。
【0135】
(II.改良されたニュールツリンをコード化するポリヌクレオチド)
別の実施形態において、本発明は、本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0136】
1つの態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含み、ここで、改良されたニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む領域において正に帯電されたアミノ酸の少なくとも1つの変異で成熟野生型ニュールツリン(配列番号5)と異なり、および、改良されたニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリンと比較してヘパリンに対する減少した親和性を有する。
【0137】
別の態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、対応する成熟野生型ニュールツリン配列番号5と、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む領域において正に帯電されたアミノ酸の少なくとも2つの変異で異なり、および成熟ヒトニュールツリンと比較してヘパリンに対する減少した親和性を示す。
【0138】
別の態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、対応する成熟野生型ニュールツリン配列番号5と、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む領域において正に帯電されたアミノ酸の少なくとも3つの変異で異なる改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含み、および成熟ヒトニュールツリンと比較してヘパリンに対する減少した親和性を示す。
【0139】
別の態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、対応する成熟野生型ニュールツリン配列番号5と、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸51〜63を含む領域において正に帯電されたアミノ酸の少なくとも5つの変異で異なる改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含み、および成熟ヒトニュールツリンと比較してヘパリンに対する減少した親和性を示す。
【0140】
1つの実施形態において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63によって包含される13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸配列にわたって、配列番号5と少なくとも90%同一である改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含む。別の態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63によって包含される13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸配列にわたって、配列番号5と少なくとも95%同一である改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含む。
【0141】
1つの実施形態において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、成熟した野生型ニュールツリン(配列番号5)と比較して、102のアミノ酸の成熟野生型ニュールツリンに対するナンバリングを使用して、アミノ酸51、52、54、55、56、57、58、60、61、62または63で1以上の変異を含む、改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、成熟ヒトニュールツリン(配列番号5)の残基51〜63によって包含される領域内に1〜13のアミノ酸変異を含む改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、成熟野生型ニュールツリンアミノ酸配列と比較して、成熟ヒトニュールツリン(配列番号5)の残基51〜63によって包含される領域内に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のアミノ酸変異を含む改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含む。更に別の態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、成熟ヒトニュールツリン(配列番号5)の残基51〜63によって包含される領域内に、3、5、7または9のアミノ酸変異を含む改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含む。
【0142】
1つの態様において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、成熟ヒトニュールツリン(配列番号5)の残基51〜63によって包含される領域に、少なくとも1つの中性、双性イオン性、または負に帯電された脂肪族アミノ酸を含む、改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む。本発明の任意の単離されたポリヌクレオチの別の態様において、ポリヌクレオチドは、改良されたニュールツリンをコード化するヌクレオチド配列を含み、成熟ヒトニュールツリン(配列番号5)の残基51〜63によって包含される領域に、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、セリンおよびグルタミンからなる群から独立して選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む。
【0143】
本発明の任意の単離ポリヌクレオチドの別の態様において、ポリヌクレオチドは、配列ARLQGQGALVGSによるアミノ酸51〜62の置換を含む、改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む。本発明の任意の単離ポリヌクレオチドの別の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号6〜9から選択される配列をコード化するヌクレオチド配列を含む。(表D4)
【0144】
1つの態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号6、7、8または9を含むヌクレオチド配列を含む。
【0145】
【表4】

【0146】
遺伝暗号が縮重し、いくつかのアミノ酸が複数のコドンを有することが当業者に理解される。それ故、複数のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコード化することができる。その上、ポリヌクレオチド配列は、様々な理由で操作され得る。例は、限定されないが、様々な生物体においてポリヌクレオチドの発現を高めるための好ましいコドンの取り込みを含む(Nakamura et al., Nuc. Acid. Res. (2000) 28 (1): 292を一般に参照)。さらに、制限部位を導入するか又は排除するために、CpGジヌクレオチドモチーフの密度を減少させるか(例えば、Kameda et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. (2006) 349(4): 1269−1277を参照)、又はステムループ構造を形成する一本鎖配列の能力を低下させるために、サイレント変異が取り込まれ得る:(例えば、Zuker M., Nucl. Acid Res. (2003); 31(13): 3406−3415を参照)。さらに、発現は、開始コドンでKozakコンセンサス配列[即ち、(a/g)cc(a/g)ccATGg]を含めることによりさらに最適化され得る。この目的に有用であるKozakコンセンサス配列は、当該技術分野において知られている(Mantyh et al. PNAS 92: 2662−2666 (1995); Mantyh et al. Prot. Exp. & Purif. 6,124 (1995))。
【0147】
(III. 組換えベクター)
本発明の別の実施形態は、組換えベクター及びポリヌクレオチドを含む組換え型ウイルスベクターを提供し、該ポリヌクレオチドの配列は、本明細書に開示される改良されたニュールツリンポリペプチドのいずれかに関してコード化するヌクレオチド配列を含む。
【0148】
本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現するのに適切な組換えベクターの選択、改良されたニュールツリンを発現するための核酸配列をベクターへ挿入するための方法、及び組換えベクターを対象の細胞に送達する方法は、当該技術分野の範囲内にある。例えば、Tuschl, T. (2002), Nat. Biotechnol, 20: 446−448; Brummelkamp T R et al. (2002), Science 296: 550−553; Miyagishi M et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20: 497−500; Paddison P J et al. (2002), Genes Dev. 16: 948−958; Lee N S et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20: 500−505; Paul C P et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20: 505−508, Conese et al., Gene Therapy 11: 1735−1742 (2004), 及びFjord−Larsen et al., (2005) Exp Neurol 195:49−60を参照(それらの全開示が、引用によって本明細書に組み込まれる)。
【0149】
代表的な市販で入手可能な組換え型発現ベクターは、例えば、InvitrogenからのpREP4、pCEP4、pREP7、及びpcDNA3.1及びpcDNA(商標)5/FRT、及びStratageneからのpBK−CMV及びpExchange−6コアベクターを含む。
【0150】
組換えベクターは、直接又は適切な送達試薬と組み合わせて患者に投与され得、該適切な送達試薬は、Minis Transit LT1親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;ポリカチオン(例えば、ポリリジン)又はリポソームを含む。
【0151】
本発明に使用するのに適した組換え型ウイルスベクターの選択、改良されたニュールツリンポリペプチドを発現するための核酸配列をベクターへ挿入するための方法、及びウイルスベクターを対象の細胞に送達する方法は、当該技術分野の範囲内にある。例えば、Dornburg R (1995), Gene Therap. 2: 301−310; Eglitis M A (1988), Biotechniques 6: 608−614; Miller A D (1990), Hum Gene Therap. 1 : 5−14; 及びAnderson W F (1998), Nature 392: 25−30を参照(それらの全開示が、引用によって本明細書に組み込まれる)。
【0152】
代表的な市販で入手可能なウイルス発現ベクターは、限定されないが、Crucell,Inc.から入手可能なPer.C6システムなどのアデノウイルスベースのシステム、InvitrogenからのpLPlなどのレンチウイルスベースのシステム、及びStratagene(US)からのRetroviral Vectors pFB−ERV及びpCFB−EGSHなどのレトロウイルスベクターを含む。
【0153】
一般に、発現される改良されたニュールツリンポリペプチドのための暗号配列を受け入れることができる任意のウイルスベクターが使用され得、該ベクターは、例えば、アデノウイルス(AV);アデノ随伴ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス);ヘルペスウイルス、パピロマウイルス(米国特許第6,399,383号、及び第7,205,126号)などに由来するベクターである。ウイルスベクターの指向性(tropism)もまた、ベクターを他のウイルスからの外被タンパク質又は他の表面抗原によってシュードタイピングすることによって変更され得る。例えば、本発明のAAVベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、Ebola、Mokolaなどからの表面タンパク質によって偽型にされ得る。例えばパピロマウイルスの非伝染性の偽ウイルス粒子はまた、遺伝子の粘膜への効率的な送達を可能にするために使用され得る(米国特許第7,205,126号、Peng et al., Gene Ther. 2010 Jul 29 epub)。
【0154】
1つの態様において、AV及びAAVに由来するウイルスベクターは、本発明において使用され得る。本発明の改良されたニュールツリンを発現するための適切なAAVベクター、組換え型AAVベクターを構築するための方法、及びベクターを標的細胞へ送達するための方法は、Samulski R et al. (1987), J. Virol. 61 : 3096−3101; Fisher K J et al. (1996), J. Virol., 70: 520−532; Samulski R et al. (1989), J. Virol. 63: 3822−3826;米国特許第5,252,479号;米国特許第5,139,941号;国際特許出願番号WO 94/13788;国際特許出願番号WO 93/24641に記載され、それらの全開示は、引用によって本明細書に組み込まれる。
【0155】
典型的に、組換えベクター及び組換え型ウイルスベクターは、インビトロ及びインビボ両方で様々なシステムにおける本発明のポリヌクレオチドの発現を配向する発現制御配列を含む。例えば、1つのセットの調節エレメントは、発現を特定の哺乳動物細胞又は組織に配向し、別のセットの調節エレメントは、発現を細菌細胞に配向し、さらに、第3のセットの調節エレメントは、発現をバキュロウィルス系に配向する。いくつかのベクターは、1以上の系統において発現に必要な調節エレメントを含むハイブリッドベクターである。これらの様々な調節系を含むベクターは、市販で入手可能であり、当業者は、本発明のポリヌクレオチドをこのようなベクターに容易にクローン化することができるであろう。
【0156】
幾つかの場合において、ベクターは、種々様々な細胞における発現のためのプロモーターを有する。他の場合において、ベクターは、組織特異的であるプロモーターを有する。例えば、プロモーターは、発現をニューロン中にのみ配向する。1つの態様において、本発明のベクターは、ポリヌクレオチドを含み、そのヌクレオチド配列は配列番号1、2、3、又は4に関してコードする。
【0157】
(IV. 宿主細胞)
別の実施形態において、本発明は、本発明のベクターによって形質転換された宿主細胞を提供する。1つの態様において、本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドは、改良されたニュールツリンポリペプチドを生成又は製造するために宿主細胞によって発現される。このような宿主細胞は、細菌、昆虫細胞、酵母細胞又は哺乳動物細胞を含む。有用な微生物宿主は、限定されないが、バチルス属、エシェリヒア属(大腸菌など)、シュードモナス属、ストレプトマイシーズ属、サルモネラ属、エルウィニア属、バチルスサチリス属、バチルスブレビス属、エシェリヒアコリの様々な菌株(例えば、HB101、(ATCC NO.33694)DH5α、DH10及びMC1061(ATCC NO.53338))からの細菌を含む。当業者に公知の酵母細胞の多くの菌株もまた、ハンゼヌラ属、クルイベロマイセス属、ピチア属、リノスポリジウム属、サッカロミケス属、及びシゾサッカロミセス属、及び他の真菌類からのものを含むポリペプチドの発現のための宿主細胞として利用可能である。好ましい酵母細胞は、例えば、サッカロミケスセレビシエおよびピキアパストリスを含む。さらに、所望される場合、昆虫細胞系は、本発明の改良されたニュールツリンを産生するために利用され得る。このような系統は、例えば、Kitts et al., Biotechniques, 14:810−817 (1993); Lucklow, Curr. Opin. Biotechnol., 4:564−572 (1993); 及びLucklow et al. (J. Virol., 67:4566−4579 (1993)によって記載される。好ましい昆虫細胞は、Sf−9及びHI5(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)を含む。
【0158】
多くの適切な哺乳動物の宿主細胞もまた、当該技術分野に公知であり、多くが、American Type Culture Collection (ATCC), 10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110−2209から利用可能である。例は、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(ATCC、No.CCL61)CHO DHFR細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:4216−4220 (1980))、ヒト胎生腎(HEK)293又は293T細胞(ATCC、No.CRL1573)、PER.C6細胞、NSO、ARPE−19、又は3T3細胞(ATCC、No.CCL92)などの、哺乳動物細胞を含む。形質転換、培養、増幅、スクリーニング及び生成物の生成及び精製のための、適切な哺乳動物の宿主細胞及び方法の選択は、当該技術分野に公知である。他の適切な哺乳動物細胞株は、猿のCOS−1(ATCC No.CRL1650)及びCOS−7細胞株(ATCC No.CRL1651)、及びCV−1細胞株(ATCC No.CCL70)である。さらに典型的な哺乳動物の宿主細胞は、形質転換細胞株を含む、霊長類細胞株及び齧歯類細胞株を含む。正常二倍体細胞、一次組織のインビトロの培養物に由来する細胞株の他に初代移植片もまた適切である。候補細胞は、選択遺伝子において遺伝子的に欠失し得るか、又は優性に作用する選択遺伝子(dominantly acting selection gene)を含み得る。他の適切な哺乳動物細胞株は、限定されないが、マウスニューロブラストーマN2A細胞、ヒーラ、マウスL−929細胞、Swissに由来する3T3株、Balb-c又はNIHマウス、BHK又はHaKハムスター細胞株を含み、これらはATCCから入手可能である。これらの細胞株の各々は知られており、タンパク質発現に利用可能である。
【0159】
別の態様において、宿主細胞は、細胞治療を介して改良されたニュールツリンを発現し送達するために使用され得る。従って、別の態様において、本発明は、改良されたニュールツリンを発現する、又は発現する能力のある宿主細胞を投与することを含む、疾患又は障害を処置するための細胞治療を含む。1つの態様において、疾患又は障害は、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷、神経障害性疼痛、糖尿病、勃起不全、抜け毛、ヒルシュスプルング病、神経系の腫瘍、多発性硬化症、難聴、及び網膜症から成る群から選択される。
【0160】
細胞治療は、体外で、選択され、増殖され、及び薬理学的に処置又は変更された(即ち、遺伝子組み換えされた)細胞の投与を含む(Bordignon, C. et al, Cell Therapy: Achievements and Perspectives (1999), Haematologica, 84, pp.1110−1149)。このような宿主細胞は、例えば、マクロファージを含む初代細胞、及び改良されたニュールツリンポリペプチドを発現するために遺伝子組み換えされた幹細胞を含む。細胞治療の目的は、損傷した組織又は臓器の生体機能を交換、修復、又は強化することである(Bordignon, C. et al, (1999), Haematologica, 84, pp.1110−1149)。
【0161】
移植細胞の使用は、貧血症及び小人症、血液学的疾患、腎不全及び肝不全、下垂体不全及びCNS不全及び糖尿病などの多くの内分泌障害の処置のために調べられてきた(Uludag et al., Technology of Mammalian Cell Encapsulation (2000), Advanced Drug Delivery Reviews, 42, pp. 29−64)。移植細胞は、本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドなどの生物活性化合物を放出することによって機能し得、達成される系統(effected system)において、存在しない又は不十分な量でしか産生されない内因性ニュールツリンを交換する。他のホルモン及び神経伝達物質を使用する、このような手法の例は、パーキンソン病を処置するためのカプセル化されたGDNF分必細胞の移植(Lindvall O, & Wahlberg LU (2008) Exp Neurol. 209(l):82−88)、マクロファージ媒介性のGDNF送達の使用(Biju K, et al., (2010) Mol Ther.18(8): 1536−44)、インシュリン依存型糖尿病の処置のための膵島細胞の注入(implantation) (Miyamoto, M, Current Progress and Perspectives in Cell Therapy for Diabetes Mellitus (2001), Human Cell, 14, pp. 293−300.)、及びパーキンソン病の処置のためのドーパミン産生ニューロンの注入(implantation)(Lindvall, O. and Hagell, P., Cell Therapy and Transplantation in Parkinson’s Disease (2001), Clinical Chemistry and Laboratory Medicine, 39, pp. 356−361)を含む。
【0162】
全体の臓器移植と比較して、細胞治療は、より容易に利用可能である。しかしながら、レシピエントの免疫系による移植細胞の拒絶は、依然として問題であり、特に、糖尿病患者のための膵島移植の場合など、長期間の使用が望まれる場合は問題である(Morris, P. J., Immunoprotection of Therapeutic Cell Transplants by Encapsulation (1996), Trends in Biotechnology, 14, pp. 163−167)。免疫抑制の代替案として、カプセル法が開発され、それによって、移植細胞は、膜障壁によってレシピエントの免疫系から物理的に保護される(Morris, P. J., Immunoprotection of Therapeutic Cell Transplants by Encapsulation (1996), Trends in Biotechnology, 14, pp. 163−167)。免疫抑制剤の全身投与が、免疫系の非特異性の抑制が原因で有害な副作用及び合併症に関係するため、カプセル化された細胞の使用が好ましい。
【0163】
従って、別の態様において、本発明は、改良されたニュールツリンを発現する、又は発現する能力のある宿主細胞を投与することを含む、疾患又は障害を処置するための細胞治療を含み、ここでの宿主細胞はカプセル化される。
【0164】
カプセル法は、一般に、2つのカテゴリーに分類される:(1)個々の細胞又は小さな細胞集団を含有する、直径で0.3〜1.5mmの大きさの範囲を有する小さな球形小胞を典型的に含む、マイクロカプセル化、及び(2)管状又は円盤状の中空デバイスにおいてより大きな細胞集団を含む、マクロカプセル化(Uludag et al., (2000), Advanced Drug Delivery Reviews, 42, pp. 29−64)。
【0165】
理想的に、膜は、カプセル化された細胞を免疫反応から保護する一方で、同時に、細胞生存に必要な分子の流入及び所望される生物活性化合物及び廃棄物の分泌を可能にするのに十分透過性であると考えられる。最も一般的である多糖アルギン酸塩での細胞カプセル化のために数多くの物質が利用されてきた(Rowely, J. A. et al, Alginate Hydrogels as Synthetic Extracellular Matrix Materials (1999), Biomaterials, 20, pp. 45−53)。膜は、典型的に、広く使用されているポリアニオン性アルギン酸塩とポリカチオン性ポリ(L−リジン)の組み合わせたゲル化された複合体を形成する、逆帯電した天然又は合成のポリマーからなる(Uludag et al., (2000), Advanced Drug Delivery Reviews, 42, pp. 29−64)。それぞれのポリマーの濃度及びそれらの接触時間を変えることによって、結果として生じるヒドロゲル膜の空隙率は調節され得る。他の一般に使用される物質は、より毒性がある傾向がある(メチル)アクリル酸塩(acrylmates)、アガロース、中性ポリマーを含む(Uludag et al., (2000), Advanced Drug Delivery Reviews, 42, pp. 29−64)。
【0166】
細胞又は細胞集団は、コンフォーマルコーティング技術によってカプセル化され得、それによって、膜が細胞と直接接触する(Uludag et al., (2000), Advanced Drug Delivery Reviews, 42, pp. 29−64)。あるいは、膜は、細胞集団を含むコアのまわりで形成され得る。コアは、栄養素及び栄養因子の封入などの、細胞生存又は細胞機能を促進する構成要素を含むように操作され得る。
【0167】
膜又はコアはまた、合成細胞間マトリックス(ECM)として作用するように操作され得る。ECM構成要素の付加は、分化機能の発現及びカプセル内の細胞集団の組織化において細胞を援助し得る(Uludag et al., (2000), Advanced Drug Delivery Reviews, 42, pp. 29−64)。ほとんどのアルギン酸塩膜の親水性が、一般に細胞の付着及び拡散を排除するため、合成ECMの使用が、付着細胞に関連して調べられてきた(Rowely, J. A. et al, Alginate Hydrogels as Synthetic Extracellular Matrix Materials (1999), Biomaterials, 20, pp. 45−53)。RGD含有リガンドによって共有結合的に修飾されたアルギン酸塩ヒドロゲルシートは、筋芽細胞の成長を支持すると示されてきた(Rowely, J. A. et al, Alginate Hydrogels as Synthetic Extracellular Matrix Materials (1999), Biomaterials, 20, pp. 45−53)。修飾されたアルギン酸塩ヒドロゲルとの細胞相互作用は、封入されたカプセルとは対照的に、細胞が平板上に成長される場合にのみ達成されてきた(Rowley et al, 1999)。
【0168】
Lim,米国特許第4,409,331号及び第4,352,883号は、インビトロで細胞によって生成した生体物質を生成するマイクロカプセル化の方法の使用を開示し、ここで、カプセルは、生成されている対象の生体物質に依存する、変化する透過性を有する。Wu et al, Int. J. Pancreatology, 3:91−100 (1988)は、インスリン産生の、マイクロカプセル化された膵島の、糖尿病のラットへの移植を開示する。Aebischer et al., Biomaterials, 12:50−55 (1991)は、ドーパミン分泌細胞のマクロカプセル化を開示する。
【0169】
その上、種々様々なカプセル化培地は、本発明の方法及び処置において使用され得る。例は、フィブリンを含むアガロース、フィブロネクチンを含むアガロース、又はフィブロネクチンとフィブリノーゲンの組み合わせを含む。適切な天然由来の培地は、アルカリ金属アルギン酸塩及びアガロースなどの植物由来のガム、及びセルロース及びその誘導体(例えば、メチルセルロース)などの他の植物由来の物質を含む。ゼラチン及びキトサンのような動物組織由来の培地もまた有用である。あるいは、Kleinman et al.,米国特許第4,829,000号によって記載されるように、コアマトリックスは、細胞間マトリックス(ECM)構成要素からなり得る。適切な合成ヒドロゲルは、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコールのブロックコポリマー、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル−メチル−トリベンジル塩化アンモニウム及びポリホスファゼンを含む(Cohen, S. et al. J. Anal. Chem. Soc, 112, pp. 7832−7833 (1990))。
【0170】
細胞は、中空線維、又は大きさが数百ミクロンであるマイクロカプセルにおいてカプセル化され得る。前者は、より高い機械的安定性及び回収可能性があるという利点を有する。一方でマイクロカプセルは、接着依存性細胞の成長に関するより高い比表面積および栄養供給量及び生成物分泌に関するより低い物質移動抵抗を有する。2つの手法の強みを組み合わせるために、マイクロカプセル化された細胞は、例えば、中空線維において、さらにマクロカプセル化され、高い透過性がある中空線維の選択は、全体的な物質移動抵抗にほとんど影響しない。
【0171】
マイクロカプセル製剤は、徐放製剤を製造する製薬産業によって使用される既知の技術である。細胞カプセル化の領域において、アルギン酸塩のゲル化は、最も広範囲に研究されたシステムである。アルギン酸塩は、褐色海藻類から抽出されたグルクロナンである。カルシウム又は他の多価性のカウンターイオンは、多糖に存在するアルファ−4−L−グルクロナン残留物の連続ブロックをキレート化する。懸濁された生細胞を含むアルギン酸塩溶液が、カルシウムイオンを含む溶液に滴下されるか又は押し出される(extruded)ときに、細胞のカプセル化が達成される。形成されたマイクロカプセルは、ポリリジンなどのポリイオンの吸着によってさらにコーティングされ得、アルギン酸塩によって再びコーティングされ得る。膵島、肝細胞、PC112細胞、軟骨細胞、及び線維芽細胞を含む、多くの細胞タイプが、この方法によってカプセル化されてきた。
【0172】
(V. 使用の方法)
別の実施形態において、本発明は、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を、そのような処置を必要とする患者に投与する工程を含む、細胞変性又は機能不全を予防又は処置する方法を含む。
【0173】
別の実施形態において、本発明は、細胞変性又は機能不全の処置に使用するための、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞の使用を含む。
【0174】
1つの態様において、細胞変性又は機能不全は、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷、神経系の腫瘍、多発性硬化症、および感染から成る群から選択される疾病から結果として生じる神経変性から成る。
【0175】
別の態様において、細胞変性又は機能不全は、好酸球減少症、好塩基球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血症、血小板減少症、および幹細胞機能不全から成る群から選択される造血細胞変性又は機能不全から成る。
【0176】
従って、1つの態様において、本発明は、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を、そのような処置を必要とする患者に投与することによって、神経変性の脳疾患を処置する方法を含む。
【0177】
別の態様において、本発明は、神経変性の脳疾患の処置のための、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞の使用を含む。
【0178】
1つの態様において、任意のこれらの方法の中で、神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、及び認知症から成る群から選択される。
【0179】
1つの態様において、本発明は、神経変性の脳疾患の発症を阻止する、遅らせる、即ち、臨床徴候前の期間を遅らせる、又は神経変性の脳疾患を進行させるリスクを減らすための方法を含む。別の態様において、本発明は、神経変性の脳疾患の少なくとも1つの症状又は徴候を和らげる、軽減する、低減する、後退させる、改善する、又は防ぐ方法を含む。
【0180】
1つの態様において、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症であり、該疾患のそのような徴候及び症状は、以下を含む:足及びつま先の前部を上げることが困難(垂れ足)、脚部が弱い、手が弱い又は不器用、言語の失調又は嚥下困難、腕、肩、及び舌における筋肉の痙攣及び攣縮、噛む、呑み込む、話す、及び呼吸することが困難。
【0181】
1つの態様において、神経変性疾患は、パーキンソン病であり、該疾患のそのような徴候及び症状は、以下を含む:振戦、減速運動(運動緩徐)、硬直した筋肉、欠陥的な姿勢及びバランス、自動運動の喪失、話すことが困難及び認知症。
【0182】
1つの態様において、神経変性疾患は、アルツハイマー病であり、該疾患のそのような徴候及び症状は、以下を含む:記憶喪失、抽象的思考を有する問題、正しい言葉を見つけることが困難、見当識障害、判断の喪失、困難、やり慣れた作業を行うことが困難及び人格変化。
【0183】
1つの態様において、神経変性疾患は、ハンチントン舞踏病であり、該疾患のそのような徴候及び症状は、以下を含む:人格変化、低下した認識能力、軽度のバランス問題、不器用、不随意顔面運動、急速眼球運動、呑み込みの問題、及び認知症。
【0184】
1つの態様において、神経変性疾患は、認知症であり、該疾患のそのような徴候及び症状は、以下を含む:健忘性、言語障害、時間と場所の錯乱、低下した判断力及び人格変化。
【0185】
別の態様において、本発明は、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を、そのような処置を必要とする患者に投与することによって、ニューロン損傷を処置する方法を含む。
【0186】
別の態様において、本発明は、ニューロン損傷の処置のための、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞の使用を含む。
【0187】
1つの態様において、このようなニューロン損傷は、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷及び神経障害性疼痛から成る群から選択される。
【0188】
別の態様において、本発明は、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を、そのような処置を必要とする患者に投与することによって、老化に関係する疾患又は障害を処置する方法を含む。
【0189】
別の態様において、本発明は、老化に関係する疾患又は障害の処置のための、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞の使用を含む。
【0190】
1つの態様において、このような疾患又は障害は、難聴、勃起不全、末梢性又は自律性ニューロパシー、網膜症及び老人性認知症から成る群から選択される。
【0191】
別の態様において、本発明は、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を、そのような処置を必要とする患者に投与することによって、糖尿病に関係する疾患又は障害を処置する方法を含む。
【0192】
別の態様において、本発明は、糖尿病に関係する疾患又は障害の処置のための、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞の使用を含む。
【0193】
1つの態様において、このような疾患又は障害は、高血糖、1型糖尿病、2型糖尿病及び1.5型糖尿病から選択される。
【0194】
別の実施形態において、本発明は、本発明の、ポリペプチドベクター、ウイルスベクター又は宿主細胞を細胞に投与する工程を含む、培地中での幹細胞などの細胞の成長及び/又は分化を促進するための方法を提供する。本発明の、ポリペプチド、ベクター、ウイルスベクター又は宿主細胞は、標的細胞の表現型及び/又は遺伝子型の特性を変更するために、培養において細胞に投与され得る。例えば、特定の標的細胞は、ポリペプチドが細胞受容体に結合し、細胞においてシグナル伝達を誘発するように、本発明のポリペプチドに晒され得る。このシグナル伝達は、あらゆる手段に所望される、標的細胞の特定の特性を誘発し得る。ほんの一例として、また限定されないが、本発明のポリペプチドの投与は、標的細胞の分化を誘発し得る。これらの分化細胞は、限定されないが、予防的な又は治療上のレジメンでの被験体への注入を含む様々な用途を有し得る。
【0195】
同様の方法で、本発明のベクター又はウイルスベクターは、培養において標的細胞に適用され得る。どちらかの手段によって本発明の核酸の形質導入は、望ましい性質の一時的か又は安定した遺伝子型変異を結果として生じ得る。最後に、本発明の宿主細胞は、本発明のポリペプチド又はウイルスベクターが宿主細胞によって生成されるように、培養において標的細胞とともに同時培養され得る。生成されたポリペプチド又はベクターは、その後、所望されるように、一過性又は安定性の遺伝子型又は表現型の変異をもたらすために、培養において細胞に結合することができる。この方法で使用される宿主細胞は、宿主細胞の特性が、それらが同時培養される標的細胞に影響を与えるという点で、「フィーダー細胞」としばしば考えられる。本発明の宿主細胞は、標的細胞によって同時培養される前に照射(irradiated)されてもよいし、照射されなくてもよい。
【0196】
(VI. 医薬組成物)
1つの実施形態において、本発明は、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を含む、医薬組成物を提供する。
【0197】
本発明に使用される医薬組成物は、当該技術分野に周知であり、広く文献において議論される技術及び手順に従って製剤され得、タンパク質、ポリヌクレオチド、及び宿主細胞に関して、それぞれ、既知の担体、希釈剤、又は賦形剤のいずれかを含み得る。例えば、Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, ISBN: 0683306472を参照。
【0198】
1つの態様において、組成物は、薬学的に活性な成分の無菌水溶液及び/又は懸濁液、エアロゾル剤、軟膏剤などの形態であり得る。水溶液である製剤が最も好まれる。このような製剤は、典型的に、強化された製剤自体、水、安定剤として作用する1以上の緩衝液(例えば、リン酸塩含有緩衝液)および随意に1以上の防腐剤を含む。
【0199】
本発明の改良された任意のニュールツリンポリペプチド、又は本発明のポリヌクレオチド、又は本発明の組換えベクターの、例えば、約5.0〜250マイクログラム、約5.0〜200マイクログラム、約5.0〜150マイクログラム、約5.0〜120マイクログラム、約5.0〜100マイクログラム、約5.0〜80マイクログラム、又上記の範囲のいずれか、例えば、約200マイクログラム、約180マイクログラム、約160マイクログラム、約140マイクログラム、約120マイクログラム、約100マイクログラム、約80マイクログラム、約60マイクログラム、又は約40マイクログラムを含む、このような製剤は、本発明のさらなる態様を構成する。1つの態様において、このような製剤は、直接の注入によって、又は脳への被殻内注射(intraputamenal injection)を介して、1日当たり1回、又は1週間当たり1回投与され得る(Gill et al., (2003) Nat Med, 9(5):589−95; Lang et al., (2006) Ann Neurol. 59(3):459−66)。
【0200】
改良されたニュールツリンポリペプチドのための医薬組成物は、改良されたニュールツリンポリペプチドの薬学的に許容可能な塩を含み得る。適切な塩に対する検討に関してはHandbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use by Stahl and Wermuth (Wiley− VCH, 2002)を参照。適切な塩基性塩は、無毒な塩を形成する塩基から形成される。代表的な例は、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオールアミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛塩を含む。酸と塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩も形成され得る。
【0201】
非経口投与に適した本発明に使用される改良されたニュールツリンポリペプチドのための医薬組成物は、塩化ナトリウム、グリセリン、グルコース、マンニトール、ソルビトールなどを一般に使用して、好ましくはレシピエントの血液と等張にされた薬学的に活性な成分の無菌水溶液及び/又は懸濁液を含み得る。
【0202】
経口投与に適した本発明の改良されたニュールツリンポリペプチドのための医薬組成物は、例えば、胃内のペプチドの分解から保護し、それによって、歯肉からの又は小腸内のこれらの物質の吸収を可能にする1つの外被又は複数の外被(腸内カプセル(enterocapsules))によって好ましくは覆われた、無菌精製されたストックパウダー形態でのペプチドを含み得る。組成物中の活性成分の合計の量は、99.99〜0.01重量パーセントの間で変化し得る。
【0203】
本発明の方法において、本発明のポリヌクレオチドは、単独で、送達試薬と併用して、又はポリヌクレオチドを発現する組換えベクター又はウイルスベクターとしてのいずれかで被験体に投与され得る。本発明の組換えベクターと併用する投与のための適切な送達試薬は、Minis Transit TKO親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;又はポリカチオン(例えば、ポリリジン)、又はリポソームを含む。
【0204】
好ましい送達試薬は、リポソームである。リポソームは、特定の組織への組換えベクターの送達を援助することができ、ベクターの血液半減期を増加させることもできる。本発明に使用するのに適したリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成され、これは一般に、中性の又は負に帯電されたリン脂質、及びコレステロールなどのステロールを含む。脂質の選択は、所望されるリポソームのサイズ及び血流中のリポソームの半減期などの要因の考慮によって一般に導かれる。特許、公開された特許出願、及び関連する出版物の検索も、本開示を読む当業者に、重要で可能なリポソームの技術を提供する。米国特許第6,759,057号;第6,406,713号;第6,352,716号;第6,316,024号;第6,294,191号;第6,126,966号;第6,056,973号;第6,043,094号;第5,965,156号;第5,916,588号;第5,874,104号;第5,215,680号;及び第4,684,479号;の内容は、引用によって本明細書に組み込まれ、リポソーム及び脂質をコーティングしたマイクロバブル、及びそれらの製造のための方法を記載する。
【0205】
リポソームは、当該技術分野に既知の任意の脂質又は脂質の組み合わせから構成され得る。例えば、小胞形成脂質は、米国特許第6,056,973号及び第5,874,104号に開示されるように、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、及びスフィンゴミエリンなどのリン脂質を含む、自然発生又は合成の脂質であり得る。小胞形成脂質はまた、米国特許第6,056,973号にも開示されるように、1,2−ジオレイロキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP);N−;1−(2,3,−ジテトラデシルオキシ)プロピル;−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウム臭化物(DMRIE);N 2,3,−ジオレイロキシ)プロピル;N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウム臭化物(DORIE);N;1−(2,3−ジオレイロキシ)プロピルΝ,Ν,Ν−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA);3;Ν−(Ν’,Ν’− ジメチルアミノエタン)カルバモイル;コレステロール(DC−Choi);又はジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)などの、糖脂質、セレブロシド又はカチオンの脂質であり得る。コレステロールはまた、米国特許第5,916,588号及び第5,874,104号に開示されるように、小胞に安定性を与える適正範囲において存在し得る。
【0206】
本発明の方法のいずれかにおいて使用されるリポソームは、当業者に既知の標準的技術によって製造され得る。例えば、1つの実施形態において、米国特許第5,916,588号に開示されるように、活性薬剤の緩衝液は調製される。その後、水素化された大豆ホスファチジルコリン、及びコレステロールなどの、両方とも粉末形態である、適切な脂質は、クロロホルムなどに溶解され、ロト蒸発(roto−evaporation)によって乾燥される。このように形成された脂質被膜は、ジエチルエーテル中に再懸濁され、フラスコに入れられ、活性薬剤の緩衝液を加える間に水浴内で超音波処理された。一旦エーテルが蒸発すると、超音波処理は中止され、残りのエーテルが取り除かれるまで、窒素流が適用される。他の標準的な製造手順は、米国特許第6,352,716号;第6,294,191号;第6,126,966号;第6,056,973号;第5,965,156号;及び第5,874,104号に記載される。本発明のリポソームは、限定されないが、上記の引用された文書(それらの内容は引用によって本明細書に組み込まれる)の方法を含む、リポソームを製造するために当該技術分野で一般に容認された任意の方法によって生成され得る。
【0207】
1つの態様において、本発明の組換えベクターをカプセル化するリポソームは、リポソームを特定の細胞又は組織に対する標的とし得るリガンド分子を含む。1つの態様において、本発明のベクター又はポリヌクレオチドをカプセル化するリポソームは、単核のマクロファージ及び細網内皮系によって、例えば、オプソニン作用を阻害する部分を構造の表面に結合させることによって、クリアランスを回避するように修飾される。1つの実施形態において、本発明のリポソームはオプソニン作用を阻害する部分及びリガンドの両方を含むことができる。
【0208】
本発明のリポソームを調製する際に使用されるオプソニン作用を阻害する部分は、典型的に、リポソーム膜に結合される大きな親水性ポリマーである。本明細書に使用されるように、オプソニン作用を阻害する部分は、細胞膜に化学的に又は物理的に付けられるときに、例えば、脂質可溶性のアンカーの膜自体へのインターカレーションによって、又は膜脂質の活性基に直接結合することによって、リポソーム膜に「結合」される。例えば、米国特許第4,920,016号(その全開示が引用によって本明細書に組み込まれる)に記載されるように、これらのオプソニン作用を阻害する親水性ポリマーは、マクロファージ単球系(「MMS」)及び細網内皮系(「RES」)によってリポソームの取り込みを著しく減少させる、保護的な表層を形成する。オプソニン作用を阻害する部分によって修飾されるリポソームは、修飾されないリポソームよりはるかに長い循環において残存する。
【0209】
米国特許第6,316,024号;第6,126,966号;第6,056,973号;第6,043,094号(それらの内容がそれらの全体の引用によって本明細書に組み込まれる)に記載されるように、リポソームを囲むのに適切な親水性ポリマーは、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリラート、ポリヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド及び親水性のペプチド配列を含む。
【0210】
(VII. 併用療法)
本発明はまた、第2の活性薬剤と組み合わせて、改良されたニュールツリンポリペプチドの治療量を患者に投与することを含む、併用療法を含む。
【0211】
1つの態様において、第2の活性薬剤は、L−DOPA、BDNF、GFRアルファ2、及びCDNFから成る群から選択される。
【0212】
この文脈において「併用して投与された」は以下を意味する:(1)同じ単一の剤形の一部;(2)別々であるが、同じ治療上の処置計画又はレジメンの一部として、典型的に、しかし必ずしもではないが、同じ日での投与。改良されたニュールツリンが、L−DOPAなどの第2の活性薬剤とのアジュバント療法として投与されるとき、好ましくは、改良されたニュールツリンは、固定された、毎日、又は毎週の投与量で投与され得、L−DOPAは、必要に応じて取り込まれ得る。
【0213】
第2の活性薬剤の投与の経路は、当該技術分野に既知の経路のいずれかであり得る。第2の活性薬剤は、通常、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とともに、例えば、経口投与のための、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、エリキシル剤、溶液、又は懸濁液として、非経口投与に適した注射可能なビヒクルで、又は局所適用のための、ローション、軟膏又はクリームとして、当該技術分野に既知なように製剤され得る。
【0214】
投与される各成分の正確な量は、もちろん、処方される特定成分、処置されている被験体、疾患又は障害の重症度、投与の方法及び処方する医師の判断に依存する。
【0215】
(VIII. 投与の方法)
治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を含む、医薬組成物は、血流へ、筋肉へ、又は臓器へ直接投与され得る。
【0216】
非経口投与のための適切な手段は、静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、実質内、脳室内、尿道内、幹内、頭蓋内、筋肉内、滑液内、及び皮下の投与を含む。非経口投与のための適切なデバイスは、針(顕微針を含む)インジェクター、無針インジェクター、及び注入技術を含む。
【0217】
改良されたニュールツリンポリペプチドのための非経口製剤は、典型的に、塩、炭水化物、及び緩衝剤などの賦形剤を含み得る水溶液であり、典型的に、3〜9のpHを有し、1つの態様において約5のpHであり、約150mMのNaCl濃度を有する。
【0218】
いくらかの適用のために、非経口製剤は、無菌の、発熱物質を含まない水などの適切なビヒクルと併用して使用されるために、無菌の非水性の溶液又は乾燥した形態としてより適切に製剤され得る。無菌条件下の、例えば、凍結乾燥による、非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準の製薬技術を使用して、容易に達成され得る。
【0219】
非経口投与のための製剤は、即時放出及び/又は徐放となるように製剤され得る。徐放性組成物は、遅延された、修飾された、パルス化された、制御された、標的とされた、及びプログラム化された放出を含む。したがって、改良されたニュールツリンポリペプチドは、改良されたニュールツリンポリペプチドの徐放を提供する注入されたデポー剤としての投与のための、懸濁液又は固形、半固形、又は投与用の揺変性の(thixotropic)液体として製剤され得る。そのような製剤の例は、限定されないが、薬物を充填されたポリ(DL−乳酸−co−グリコール)酸(PGLA)、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(PLG)又はポリ(ラクチド)(PLA)ラメラ小胞又は微粒子、ヒドロゲル(Hoffman AS: Ann. N. Y. Acad. Sci. 944: 62−73 (2001))、Flamel Technologies Inc.によって開発された商標MEDUSA(登録商標)の下で販売される、ポリ−アミノ酸ナノ粒子系統(poly-amino acid nanoparticles systems)、Atrix, Inc.によって開発された商標ATRIGEL(登録商標)の下で販売される、非水溶性のゲル系統、及びDurect Corporationによって開発された商標SABER(登録商標)の下で販売される、スクロースアセテートイソブチラート徐放製剤、及びSkyePharmaによって開発され、商標DEPOFOAM(登録商標)の下で販売される、脂質ベースの系統を含む、薬物をコーティングされたステント及び半固形物及び懸濁液を含む。
【0220】
長時間にわたって改良されたニュールツリンポリペプチドの所望される量を送達することができる徐放デバイスは、当該技術分野に公知である。例えば、米国特許第5,034,229号;第5,557,318号;第5,110,596号;第5,728,396号;第5,985,305号;第6,113,938号;第6,156,331号;第6,375,978号;及び第6,395,292号;長時間(即ち、1週間以上から1年間まで又はそれ以上の期間)にわたって所望される割合で、溶液又は懸濁液などの活性薬剤の製剤を送達することができる、浸透圧駆動性のデバイスを教示する。他の典型的な徐放デバイスは、有益な薬剤の製剤の一定の流量、調整可能な流量、又はプログラム可能な流量を提供する調節器タイプのポンプを含み、それらは、商標SYNCHROMED INFUSION SYSTEM(登録商標)の下で販売されるIntrathecalポンプ、商標CODMAN(登録商標)分割ポンプ、及びINSET(登録商標)テクノロジーズのポンプの下で販売されるJohnson and Johnsonのシステムを含むMedtronicから入手可能である。デバイスのさらなる例は、米国特許第6,283,949号;第5,976,109号;第5,836,935号;及び第5,511,355号に記載される。治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を含む、医薬組成物は、中枢神経系又は脳に直接投与され得る。この手法は、典型的に、経口で又は他の注射の経路を介して送達されなければならない投与量よりはるかに少ない投与量を可能にする。薬物の副作用は、しばしば低減されるか又は除去される。さらに、組成物は、血液脳障壁を介して送達される。
【0221】
本発明の1つの態様において、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を含む、医薬組成物は、脊椎管(脊髄を囲む鞘内の空間)への髄腔内注射によって投与される。
【0222】
別の態様において、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を含む、医薬組成物は、実質内送達、注入送達、嗅上皮を介する経鼻送達 (Ilium et al., (2003) J. Contol. Release 87 187−98, Sakane et al., (1991) Chem. Pharm. Bull. 39 1458−2456, Hanson et al., (2008) BMC Neurosci. 10 (9 Suppl 3) S5)、又は従来の改善された送達(Pasha & Gupta (2010) Expert Opin. Drug. Deliv. 7(1) 113−135, Allaed et al., (2009) Biomaterials 30(12) 2302−18) を使用して、脳に直接投与される。
【0223】
使用のいくつかの方法において、開示された医薬製剤のいずれかの特定のタイプの投与が好ましい。例えば、ALS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、及び急性脳外傷の処置のための請求された方法の1つの態様において、実質内の送達が好ましい。その上、このような実質内の送達は、脳の特定領域へ標的化され得る。例えば、脳の特定領域への直接の定位的注入は、パーキンソン病の処置に好ましい。ここで、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を含む医薬組成物のいずれかの被殻内注入が好ましい。
【0224】
被殻の主な機能は、運動を規制し、様々なタイプの学習に影響を与えることである。それは、その機能を実行するドーパミンを利用する。パーキンソン病において、被殻は、その入力と出力が黒質と淡蒼球に相互結合されるため、重要な役割を果たす。パーキンソン病において、内部の淡蒼球への直接的な経路における活性は減少し、外部の淡蒼球への間接的な経路における活性は増加する。これらの作用を一緒にすると、視床の過度の阻害を引き起こす。
【0225】
その上、グリア細胞由来の神経栄養因子の被殻内注入(Hutchinson, M. et al., Journal of Neuroscience Methods 163 (2007) 190−192; Love, S. et al, Nature Medicine 11(7) (2005) 703−704; Gill, S. et al., Nature Medicine 9(5) (2003) 589−595)がパーキンソン病を処置するために使用され得ると示されてきた。GDNFの後部の被殻への注入は、チロシンヒドロキシラーゼ−免疫陽性神経線維の著しい局所的増加を引き起こし、黒質における線維の発芽(sprouting)もあり得る。チロシンヒドロキシラーゼ−免疫陽性神経線維の増加が、軸索出芽から結果としてどれだけ生じるか、及び余分のしかし機能不全のファイバーにおけるチロシンヒドロキシラーゼのアップレギュレーションから結果としてどれだけ生じるかは不明瞭のままである。しかしながら、いずれの場合においても、この発見は、密接に関連するGDNFの被殻内注入を受けるヒトにおいて持続的な臨床的改善を支持する。
【0226】
本発明における使用のための改良されたニュールツリンポリペプチドはまた、皮膚又は粘膜に局所的に、皮膚(の中)に、又は経皮的に投与され得る。この場合、局所投与は、難聴、又は勃起不全を処置することが好ましいかもしれない。この目的のための典型的な製剤は、ゲル剤、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、包帯剤、泡沫剤(foams)、フィルム、皮膚パッチ、オブラート(wafers)、インプラント、スポンジ、ファイバー(fibers)、絆創膏、及びマイクロエマルジョンを含む。リポソームも使用され得る。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールを含む。浸透促進剤が組み入れられ得る ― 例えば、Finnin and Morgan: /. Pharm. Sci. 88(10): 955−958, (1999)を参照。局所投与の他の手段は、例えば、商標POWDERJECT(商標)、及びBIOJECT(商標)の下で販売されるシステムを使用して、エレクトロポレーション、イオン泳動法、音波泳動法、超音波導入、及び顕微針又は無針の注射による送達を含む。
【0227】
局所投与のための製剤は、即時放出及び/又は変更された放出であるように製剤され得る。変更された放出製剤は、遅延放出、徐放、パルス化放出、制御放出、標的化された放出、及びプログラム化された放出を含む。
【0228】
本発明の別の実施形態において、血液への改良されたニュールツリンポリペプチドの徐放は、ミクロスフィアにおいてパッケージ化される改良されたニュールツリンポリペプチドを含む徐放性組成物を含む。ミクロスフィアは、長時間にわたって有益な活性薬剤を制御された方法で目標領域に送達する際の有用性を実証した。ミクロスフィアは、一般に生物分解性であり、皮下、筋肉内、及び静脈内の投与に使用され得る。
【0229】
一般に、各ミクロスフィアは、活性薬剤及び米国特許第6,268,053号に開示されるようなポリマー分子からなり、該活性薬剤は、ポリマー分子によって形成された、膜内の中心に位置付けられ得るか、あるいは、内部構造が活性薬剤のマトリックス及びポリマー賦形剤を含むため、ミクロスフィアの全体にわたって分散され得る。典型的に、ミクロスフィアの外側表面は、水に対して浸透性があり、これは、液体がミクロスフィアに入ることを可能にする他に、可溶化活性剤及びポリマーがミクロスフィアを出ることも可能にする。
【0230】
1つの実施形態において、ポリマー膜は、米国特許第6,395,302号に開示されるような架橋ポリマーを含む。架橋ポリマーの孔径が、活性薬剤の流体力学的径と等しいか、それより小さいとき、活性薬剤は、ポリマーが分解されるときに実質的に放出される。一方で、架橋ポリマーの孔径が、活性薬剤の大きさより大きいとき、活性薬剤は、拡散によって少なくとも部分的に放出される。
【0231】
ミクロスフィア膜を作るための更なる方法は、当該技術分野に公知で、使用されており、本明細書に開示される本発明の実施において使用され得る。外膜の典型的な物質は、以下のカテゴリーのポリマー(1)メチルセルロースなどの、炭水化物ベースのポリマー、カルボキシメチルセルロースベースのポリマー、デキストラン、ポリデキストロース、キチン、キトサン、及びデンプン(ヘタスターチを含む)、及びそれらの誘導体;(2)ポリエチレンオキシドなどのポリ脂肪族アルコール及びPEGを含むその誘導体、PEG-アクリル酸塩、ポリエチレンイミン、ポリ酢酸ビニル、およびそれらの誘導体;(3)ポリビニルアルコールなどのポリビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニル)リン酸塩、ポリ(ビニル)ホスホン酸、及びそれらの誘導体;(4)ポリアクリル酸及びその誘導体;(5)ポリマレイン酸などの、ポリ有機酸(polyorganic acids)、及びその誘導体;(6)ポリリジンなどのポリアミノ酸、及びポリイミノチロシンなどのポリ‐イミノ酸、及びそれらの誘導体;(7)ポロクサマー407又はプルロニックL−101などの、コポリマー及びブロックコポリマー;ポリマー、及びその誘導体;(8)tert-ポリマー及びその誘導体;(9)ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)などのポリエーテル、及びその誘導体;(10)ゼイン、キトサン及びプルランなどの自然発生のポリマー及びその誘導体;(11)ポリn−トリス(ヒドロキシメチル)メタクリル酸メチルなどのオリイミド、及びその誘導体;(12)ポリオキシエチレンソルビタンなどの界面活性剤、及びその誘導体;(13)ポリエチレングリコール(n)モノメチルエーテルルモノ(スクシンイミジル琥珀酸)エステルなどのポリエステル、およびその誘導体;(14)分枝したPEG及びシクロデキストリンなどの分枝ポリマー又はシクロポリマー、及びその誘導体など;及び(15)ポリ(ペルフルオロプロピレンオキシド−b−ペルフルオロホルムアルデヒド)のようなポリアルデヒド、及びその誘導体を含み、それらは米国特許第6,268,053号に開示される通りであり、それらの内容は引用によって本明細に組み込まれる。当業者に既知の他の典型的なポリマーは、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリラクチドホモポリマー;ポログリコリドホモポリマー;ポリカプロラクトン;ポリヒドロキシ酪酸塩−ポリヒドロキシ吉草酸塩コポリマー;ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン);ポリエステルアミド;ポリオルトエステル;ポリ 13-ヒドロキシ酪酸;及び米国特許第6,517,859号に開示されるようになポリ酸無水物を含み、その内容は引用において本明細書に組み込まれる。
【0232】
1つの実施形態において、本発明のミクロスフィアは、さらなる分子に付けられるか、分子でコーティングされる。このような分子は、ターゲティングを促進し、受容体媒介を強め、取込又は破壊からの逃避を提供することができる。典型的な分子は、リン脂質、受容体、抗体、ホルモン、及び多糖を含む。さらに、1以上の開裂可能な分子がミクロスフィアの外側表面に付けられ得、それを所定の部位に対する標的とする。その後、適切な生物学的な条件の下、分子は開裂され、標的からのミクロスフィアの放出を引き起こす。
【0233】
徐放性組成物に使用されるミクロスフィアは、標準的技術によって製造される。例えば、1つの実施形態において、米国特許第6,268,053号に開示されるような粒子を形成するために、十分な時間エネルギー源がある状態で、溶液中の活性薬剤を溶液中のポリマー、又はポリマーの混合物と混合することによって、体積排除が行われる。溶液のpHは、高分子の等電点(pi)の近くのpHに調節される。次に、溶液は、単独で又は超音波処理、ボルテックス、混合又は撹拌と組み合わせて、熱、放射線、又はイオン化などのエネルギー源に晒され、微粒子を形成する。その後、結果として生じる微粒子は、当業者に周知の物理的分離の方法によって溶液中に存在する任意の組み込まれていない構成要素から分離される。他の標準的な製造手順は、米国特許第6,669,961号;第6,517,859号;第6,458,387号;第6,395,302号;第6,303,148号;第6,268,053号;第6,090,925号;第6,024,983号;第5,942,252号;第5,981,719号;第5,578,709号;第5,554,730号;第5,407,609号;第4,897,268号;及び第4,542,025号;に記載され、これらの内容は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。ミクロスフィアは当業者にとって周知であり、徐放性薬物送達のためのこのような技術を提供することに経験のある会社から容易に入手可能である。例えば、Baxter Healthcare Corp.の子会社である、Epic Therapeuticsは、完全に水性の過程において生体内分解性のタンパク質ミクロスフィアを生成する、タンパク質-マトリックス薬物送達システムを開発し、これは、商標PROMAXX(登録商標)の下で販売され;OctoPlusは、表面浸食(erosion)に基づくよりむしろマトリックスの大量の分解に基づいた活性成分を放出する、商標OCTODEX(登録商標)の下で販売される架橋されたデキストランミクロスフィアシステムを開発した。
【0234】
特許、公開された特許出願、及び関連する出版物の検索はまた、本開示を読む当業者に徐放性組成物を製剤する際に使用するためのかなり可能性のあるミクロスフィア技術を提供する。例えば、米国特許第6,669,961号;第6,517,859号;第6,458,387号;第6,395,302号;第6,303,148号;第6,268,053号;第6,090,925号;第6,024,983号;第5,942,252号;第5,981,719号;第5,578,709号;第5,554,730号;第5,407,609号;第4,897,268号;及び第4,542,025号(それらの内容が、その全体において引用によって本明細書に組み込まれる);は、ミクロスフィア及びそれらの製造のための方法を記載する。当業者は、本発明の開示及びこれらの他の特許の開示の両方を考え、本明細書に請求される方法又はキットのいずれかに使用するための改良されたニュールツリンポリペプチドの徐放のためのミクロスフィアを作り、使用することができ得る。
【0235】
改良されたニュールツリンポリペプチドは、典型的に、ドライパウダー吸入器からのドライパウダーの形態において(例えば、ラクトースとの乾式混合における混合物として単独で、又は例えば、ホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合された、混合した構成要素粒子としてのいずれかで)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な推進剤を使用して、又は使用せずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは細かいミストを生みだすために電気流体力学を使用するアトマイザー)、又はネブライザーからのエアロゾルスプレーとして、又は点鼻液として、鼻腔内に又は吸入によって投与され得る。鼻腔内の使用に関して、粉末は、生体付着性薬剤、例えば、キトサン、シクロデキストリンを含み得る。
【0236】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、又はネブライザーは、例えば、エタノール、水溶性エタノール、又は活性の放出を分散するか可溶性にするか又は広げるための適切な代替薬剤を含む、本発明の化合物の溶液又は懸濁液、溶媒としての推進剤、及びソルビタントリオレエート、オレイン酸、又はオリゴ乳酸などの随意の界面活性剤を含む。
【0237】
ドライパウダー又は懸濁液の製剤における使用前に、製剤は、吸入による送達に適した大きさ(典型的に5μm未満)に微粉化される。これは、らせん型ジェットミリング、流動床のジェットミリング、ナノ粒子を形成する超臨界流体処理、高圧均質化、又は噴霧乾燥などの、任意の適切な方法によって達成され得る。
【0238】
吸入器又は注入器で使用するための(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから作られた)カプセル剤、発泡剤及びカートリッジは、本発明の化合物の粉末混合物、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤、及び1‐ロイシン、マンニトール、又はステアリン酸マグネシウムなどのパフォーマンス変性剤(performance modifier)を含むように製剤され得る。ラクトースは無水又は一水化物の形態であり得、好ましくは後者であり得る。他の適切な賦形剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、果糖、蔗糖、及びトレハロースを含む。
【0239】
細かいミストを製造するために電気流体力学を使用するアトマイザーに使用するための適切な溶液製剤は、1回の作動当たり1μgから20mgの改良されたニュールツリンを含み得、作動量は1μLから100μLで変化し得る。典型的な製剤は、改良されたニュールツリンポリペプチド、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、及び塩化ナトリウムを含み得る。プロピレングリコールの代わりに使用され得る代替的な溶媒は、グリセロール及びポリエチレングリコールを含む。メントール及びレボメントールなどの適切な香料、又はサッカリン又はサッカリンナトリウムなどの甘味料は、吸入/鼻腔内の投与のために意図された本発明のこれらの製剤に加えられ得る。吸入/鼻腔内の投与のための製剤は、例えば、PGLAを使用して、即時放出又は変更された放出となるように製剤され得る。変更された放出製剤は、遅延放出、徐放、パルス化放出、制御放出、標的化された放出、及びプログラム化された放出を含む。
【0240】
ドライパウダー吸入器及びエアロゾル剤の場合に、投与ユニットは、定量(metered amount)を送達するバルブによって決定される。本発明に従うユニットは、典型的に、改良されたニュールツリンポリペプチドの0.1mgから10mgまでを含む一定の服用量(metered dose)又は「パフ(puff)」を投与するために配される。全体的な一日用量は、典型的に、単一の用量で、又はより一般的には、一日を通しての分割量として投与され得る0.1mgから20mgまでの範囲であり得る。
【0241】
鼻腔内送達は、無針の、患者にやさしい投与経路であり、これは、血液関門がバイパスされるのを可能にする。その上、くも膜腔から移動すると考えられる、CSF流体は、くも膜下CSFへ再循環し、嗅粘膜に適用される薬物をCNSのくも膜腔へ戻し得る(Begley et al., (2004) Pharmacol. Ther. 104 29−45)。さらに、鼻の送達の単純性は、家庭の場での自己投与を可能にする。この経路には、医療管理下で一般に与えられなければならない非経口投与に対する大きな利点が明らかにある。鼻腔内送達の他の利点は、鼻の上皮の高い透過性及び、鼻腔の比較的大きな表面積及び比較的高い血流の結果としての、迅速な吸収を含む。経口製剤などの、他の非注射投与と比較して、鼻の送達は、肝臓初回通過効果、迅速な開始作用及びより高いバイオアベイラビリティーを回避するその特性のための魅力的な経路である(Hussain, Adv. Drug Deliv. Rev. (1998) 29(1−2): 39−49; Ilium, J. Control Release (2003) 87(1−3): 187−98)。
【0242】
歴史的に、経鼻投与後の治療上のペプチド及びタンパク質のバイオアベイラビリティーは、容易な継代を可能にするそれらの大きな分子のサイズが主に原因で、及び迅速な酵素分解が原因で、比較的低くなる傾向がある。アミノ酸の数が約20を越えて増加すると、バイオアベイラビリティーは、典型的に非常に低くなる(Wearly, Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 1991; 8: 331−394)。
【0243】
これらの制限にもかかわらず、いくつかのペプチド生成物は、鼻腔内製剤として市場に出るのに成功した(Ilium, The nasal route for delivery of polypeptides. In: Peptide and Protein Drug Delivery. Eds. Frokjaer, S., Christrup, L., Krogsgaard−Larsen, P., Munksgaard, Copenhagen 1990, p 157−170)。FDAが認可した例は、DDAVP(登録商標)、MIACALCIN(商標)(カルシトニン)及びSYNAREL(商標)(ナファレリン)を含む。臨床試験は、インフルエンザ(三価)及びジフテリア毒素(CRM−197)が、良い効果を有して経鼻的に送達され得ることを実証した(Davis, Adv. Drug Del. Rev. (2001) 51: 21−42)。Larsenら(Eur. J. Clin. Pharmacol. 1987; 33: 155−159)は、低分子量ポリペプチドブセレリンの鼻腔内の適用が、投与の信頼できる様式を表わすという結論を下した。インスリン、ヒト成長ホルモン、グルカゴン、ヒルジン、ヒトインターフェロン‐β及びヒト副甲状腺ホルモンなどの、ペプチドの鼻腔内製剤の他の例は、Costantinoら (www.ondrugdelivery.com, 2005; Sakr, Int. J. Pharmaceutics 1996, 132: 189−194; O’Hagan et al., Pharm. Res. 1990, 7: 772−776; Cefalu, Diabetes Care 2004, 27: 239−245; Zhang et al., Biol. Pharm. Bull 2005, 28: 2263−2267))において議論される。
【0244】
その上、いくつかの薬物は、鼻腔内投与後に脳に送達されることに成功した(Yu et al., (2005) Neurosci. Lett. 387(1) 5−10, Reger et al., (2008) J. Alzheimer’s Dis. 13(3) 323−31, Thorne et al., (2004) Neuroscience 127 481−96)。鼻腔内送達のための方法及び医薬組成物は、US20100129354、US20030077300、米国特許第7,244,709号及び米国特許第7,812,120号においてさらに教示される。
【0245】
本発明の1つの態様に従って、治療上有効な量の、任意の改良されたニュールツリンポリペプチド、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換えベクター、任意の改良されたニュールツリンポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む、組換え型ウイルスベクター、又は任意の組換え型の改良されたニュールツリンポリペプチドを発現する宿主細胞を含む医薬組成物は、鼻腔内投与によって投与される。本発明の別の態様において、医薬組成物は、鼻腔内投与のために製剤され、鼻腔内送達を増加させるために随意に1以上の薬剤を含む。
【0246】
以下の実施例は、限定されないが、任意の方法、形状、又は形態における発明を、明確に又は黙示的にのどちらかで例示することが意図される。それらは使用され得る典型的な実施例ではあるが、当業者に既知の、他の手順、方法論、又は技術が、代替的に使用され得る。
【実施例】
【0247】
<実施例1:分子モデリング>
ニュールツリンの一次配列の最初の分析は、ニュールツリンのヒール領域(heel region)における残基の伸張を明らかにし(RRLRQRRRLRRER)(配列番号31)、これはヘパリン結合のためのコンセンサス配列;特に、配列「BBXB」または「BBBXXB」(Hileman et al., (1998) Bioessays. 20(2): 156−67)と一致しており、ここで、Bは塩基性アミノ酸であり、Xは任意の残基である。この配列の識別はヘパリン結合と一致しているが、タンパク質の一次構造におけるこのコンセンサス配列の発見は、配列がヘパリン結合に必ずしも関係することを意味しないことを留意されたい。特に、i)これらのコンセンサス配列を欠くタンパク質が、ヘパリンに依然として結合し得る(Delacoux et al. (2000) J. Biol. Chem. 275(38):29377−82)、及びii)このモチーフを含むタンパク質が、ヘパリンを結合し得ないことの両方が確立されてきた。
【0248】
事実、すべてのタンパク質に関して、ヘパリン又はヘパラン硫酸に結合する、正に帯電されたアミノ酸の連続的に配された伸張の能力は、成熟した完全に折り畳まれたタンパク質の全体的な三次元構造のコンテキスト内の塩基性残基の3次元の配向性に依存する。その上、ヘパリン及びヘパラン硫酸が線形ポリマーであるため、ニュールツリンにおける正に帯電された残基は、一次配列中に存在しなければならないだけでなく、正確に間隔を置いて配列されなければならない。言いかえれば、少なくとも3つの正に帯電された側鎖は、表面が晒されなければならず、正確な方角に配向されるべきであり、及びヘパリン及びヘパラン硫酸における負に帯電された残基と効率的にドッキングするために、正確な相対的な空間関係で配されるべきである。
【0249】
従って、本発明の研究に関して、我々は、我々の変異を計画するために、一次配列分析及び相同モデリングの組み合わせを使用した。特に、ニュールツリンにおける選択された正に帯電された残基もこれらの空間規則に従うかを確認するために、ニュールツリンの3D構造は、GDNFの既知の結晶構造に基づいてモデル化された(Eigenbrot and Gerber, (1997) Nat. Struct. Biol. 1997 4(6):435−8)。構造を視覚化し、インシリコの変異誘発を、PyMolソフトウェア(DeLano Scientific)によって行った。
【0250】
この分析の結果は、ニュールツリン及びヘパリンの相互作用ドメインが、成熟ニュールツリンのアミノ酸51〜63によって結合された領域にほぼ及ぶことを示唆する。より具体的には、この領域における正に帯電されたアミノ酸の各々が、ニュールツリンに対するヘパリン及びヘパラン硫酸の相互作用に寄与し得ることを分析は示唆する。より具体的には、我々は、正に帯電されたアミノ酸R51、R52、R54、R56、R57、R58、R60、R61、及びR63が、少なくともある程度、ヘパリンに対するニュールツリンの親和性に寄与するというこの分析に基づいて結論を下す。
【0251】
この仮説を直接的に試験するために、一連の変異を構築し、その中で、様々な数の正に帯電されたアルギニン残基を、アラニン残基と置換した。構築物N1、N2は各々、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63に及ぶニュールツリン及びヘパリンの推定上の相互作用ドメインの表面上に散乱された3つのアミノ酸変異を含んだ。
【0252】
構築物N3において、5点の変異を導入するように、N1及びN2の変異の構築で作られた変異を結合した。この構築物において、R63を、関連する遺伝子、ARTN、PSPN及びGDNF中の塩基性アミノ酸残基の保護が、機能的に有意であるという仮説を試験するために変異させなかった。さらに、最終構成物において、残基51〜62に及ぶニュールツリンの推定上のヘパリン結合領域(N4)を、PSPNの相当する領域及び関係する配列から7の残基と置換した他に、5の無関係な残基とも置換した(ARLQGQGALVGS)(配列番号25)。この変異は、結果的に、野生型ヒトニュールツリンの相当する配列と比較して、9のアミノ酸変異をもたらした。
【0253】
より十分に以下に記載されるように、すべてのこれらの構築物は、発現に成功し、正確な折畳を示し、及び機能的アッセイにおいて活性的である且つヘパリンに対して減少した親和性を示した。アミノ酸51〜63に及ぶニュールツリンのこの領域が、ヘパリンに対して減少した親和性を示すニュールツリンの機能的に活性な変異を生成するために、タンパク質最適化を容易に受け入れられることができる、タンパク質の領域を提供すると結論付けられる。
【0254】
<実施例2:ニュールツリン変異体の生成>
受入番号BC137399に相当する、ヒトニュールツリンをコード化するDNAを、OpenBiosystemsから購入した。ニュールツリンの成熟配列(その内因性のシグナル配列及びプロ−配列を除く)を、ベクターpSJP−2へサブクローニングした。そのベクター骨格は、IgGシグナル配列(Fjord−Larsen et al., (2005) “Efficient in vivo protection of nigral dopaminergic neurons by lentiviral gene transfer of a modified Neurturin construct.” Exp Neurol 195:49−60)、その後のプロ−配列のない成熟ニュールツリンの配列をコード化するプラスミド(E778)をもたらすpAAV−MCS(Stratagene)に基づく。E778を、逆PCR変異誘発のためのテンプレートとして使用した。標識のないニュールツリン変異体N1のためのプライマーは:N2に関する、F/5’−ag gcg cgg gcc ctg cgg cgg gag cgg gtg cgc −3’(配列番号11)及びR/5’−g gcg cag tgc tcg cag ccc gag gtc gta gac g −3’(配列番号12):N3に関する、F/5’−ctg cgg gcg gag gcg gtg cgc gcg cag ccc tgc tgc −3’(配列番号13)及びR/5’−gcg ccg ccg ctg ggc cag tcg tcg cag ccc gag gtc g −3(配列番号14):N4に関する、F/5’−cgg gcc ctg cgg gcg gag cgg gtg cgc gcg cag ccc −3’(配列番号15)及びR/5’−cgc ctg ggc cag tgc tcg cag ccc gag gtc gta gac g −3’(配列番号16):F/5’−ggc gcc ctg gtg ggg tcc cgg gtg cgc gcg cag ccc tgc −3’(配列番号17)、R/5’−ctg acc ctg cag tcg tgc cag ccc gag gtc gta gac gcg c−3’(配列番号18)であった。PCR反応を、Phusion(商標)の高い再現性の(high−fidelity)のDNAポリメラーゼ(Finnzymes)を用いて行った。PCR混合物を、DpnI(Fermentas)によって消化し、変異したプラスミドを、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)によってアガロースゲルから精製し、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Fermentas)によってリン酸化し、T4DNAリガーゼ(Fermentas)によって結合し、及びコンピテントなDH5a E.coli細胞に形質転換した。プラスミドDNAを単一のコロニーから単離し、変異誘発の結果を、挿入物の配列決定によって確認した。
【0255】
V5タグ(GKPIPNPLLGLDST、配列番号19)を、すべての構築物のN末端に加えた。シグナル配列後に開裂を増強するために、2つの追加のアミノ酸残基(アラニン及びアルギニン)をシグナル配列とV5タグの間で導入した。タグ−エピトープの露出(exposure)を強めるために、2つの追加のアミノ酸残基(セリン及びグリシン)を、V5タグと成熟ニュールツリン配列の間で導入した。E778、N1、N2、N3及びN4を、変異誘発のためのテンプレートとして使用し、プライマーは:F/5’−ctc ctc ggt ctc gat tct acg tcg ggg gcg cgg ttg ggg gcg cgg cct tg −3’(配列番号20)、R/5’−agg gtt agg gat agg ctt acc ccg cgc cga att cac ccc tgt aga aag aaa ggc −3’(配列番号21)であった。逆PCR変異誘発及び続くクローニング工程を、上記のように行った。V5標識(V5−tagged)クローンを、(E778からの)E779、(N1からの)NV1、(N2からの)NV2、(N3からの)NV3、及び(N4からの)NV4と呼んだ。
【0256】
<実施例3:ニュールツリン変異体の生成及び精製>
CHO細胞を、E436(GFP)、野生型のV5標識ニュールツリン又はV5標識ニュールツリン変異体NV1−NV4によって一時的にトランスフェクトした。トランスフェクションを、製造業者の指示に従って、Turbofect(Fermentas)を使用して行った。4時間後、トランスフェクション試薬を含む培地を、DMEM(Sigma)、10%のFBS(HyClone)、100U/mlのペニシリン(Gibco)及び100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)から成る通常培地と置換した。2日後、培地を各プレートから収集した。浮遊細胞をペレット状にするために、培地を、使用前に遠心分離にかけた(5分、16,200xg)。採取したサンプルを、15%のSDS−PAGE上に充填し、V5抗体(Invitrogen)とともにウエスタンブロッティングによって分析した。すべての変異体は発現に成功し、培地へ分泌され、修正された予測分子量でSDS−PAGE上で流れた(データは示さず)。
【0257】
<実施例4:ニュールツリン変異体のヘパリン結合特性>
一時的にトランスフェクトしたCHO細胞からの培地(5ml)を、10mMのHepes、pH7.2 20mlで希釈した。HiTrapヘパリンHPカラム(GE Healthcare)を、10mMのHepes、pH7.2 10mlで平衡化し、希釈したサンプルを、製造業者の指示に従って注射器で適用した。カラムを、10mMのHepes、pH7.2における0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M及び1.5Mの段階的な(各工程0.5ml)NaCl−勾配での溶出前に、10mMのHepes、pH7.2中の0.1MのNaCl、5mlで洗浄した。カラムを、製造業者の指示に従って2.0MのNaCl、5mlで再生成し、10mMのHepes緩衝液、pH7.2 10mlで再平衡化し、続くサンプルに使用した。分析したサンプルの順番は、1番目はNVl、2番目はNV2、3番目はNV3、4番目はNV4及び5番目は野生型ニュールツリンであった。野生型を、アッセイの全体にわたるカラムの機能性を制御するために最後のサンプルとして適用した。
【0258】
各溶出画分からのサンプル(20μl)を、Laemmli緩衝液とともに沸騰させ、15%のSDS−PAGE上に充填し、V5抗体(Invitrogen)とともにウエスタンブロッティングによって分析した。対照として、20μlの元の培地を、ゲルの最初のレーン上に充填した。アッセイを2回行い、同一の結果を得た。結果を表E1に示す。表において、NaClのモル濃度が、カラムに適用された溶液の濃度を示し、溶出した画分のNaCl濃度が、このアッセイにおいて測定されないことを留意されたい。(++)は、V5に対する抗体とともにWBによって検出された、約15kDaの分子量を有するニュールツリンのより強力なバンドを示し、(+)は、より弱いバンドを示す。結果は、すべての4つのV5標識ニュールツリン変異体が、野生型ニュールツリンと比較して、ヘパリン結合を著しく減少させたことを示す。
【0259】
【表5】

【0260】
特に、ニュールツリン野生型タンパク質を、約1.0〜1.2MのNaClのNaCl濃度範囲にわたってカラムから溶出した。対照的に、ニュールツリン変異NV1を、約0.9〜1.0MのNaClのNaCl濃度範囲にわたってカラムから溶出し;ニュールツリン変異NV2を、約0.6〜0.8MのNaClのNaCl濃度範囲にわたってカラムから溶出し;ニュールツリン変異NV3を、約0.6〜0.7MのNaClのNaCl濃度範囲にわたってカラムから溶出し;及びニュールツリン変異NV4を、約0.4〜0.7MのNaClのNaCl濃度範囲にわたってカラムから溶出した。したがって、すべてのニュールツリン変異が、野生型ニュールツリンと比較して、減少した親和性を有すると結論付けられる。さらに、ニュールツリン変異NV4及びNV3が、ヘパリンに対して最も低い見かけ上の親和性を示したと結論付けられる。
【0261】
<実施例5:ニュールツリン変異体の受容体リン酸化特性>
ヒトRETロングアイソフォーム(Eketjaell et al.,1999,EMBO J.,18:5901)によって安定してトランスフェクトされる線維芽細胞(MG87−RET)を、ラットGFRα1又はヒトGFRα2によって一時的にトランスフェクトした。トランスフェクションを、製造業者の指示に従って、Turbofect(Fermentas)によって行った。4時間後、トランスフェクション試薬を含む培地を、DMEM(Sigma)、10%のFBS(HyClone)、2μg/mlのピューロマイシン(Sigma)、100U/mlのペニシリン(Gibco)及び100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)から成る通常培地と置換した。1日後、細胞を、DMEM(Sigma)中で4時間飢餓状態にされた(starved)。絶食後、(GFP、野生型のV5標識ニュールツリン又はV5標識ニュールツリン変異体、NV1−NV4を発現する)一時的にトランスフェクトされたCHO細胞からの培地を、DMEM(Sigma)によって1:2で希釈し、GFRα1又はGFRα2のトランスフェクトされたMG87−RET線維芽細胞上に10分間適用した。その後、線維芽細胞を溶解し、溶解物を、RETの免疫沈殿のために使用した(Santa Cruz Biotechnology IncからのRETに対する抗体)。免疫複合体を、Gタンパク質セファロース(GE Healthcare)によって収集し、8%のSDS−PAGE及びウエスタンブロッティング上で分析した。RETのリン酸化を、ホスフォチロシンに対する抗体によって検出した(Upstate Biotechnology)。フィルターを取り除き、RET(Santa Cruz Biotechnology Inc)に対する抗体によってそれを再調査することによって等しい充填を確認した。このアッセイを2回行い、同一の結果を得た。
【0262】
【表6】

【0263】
表E2に要約される結果は、すべての構築物が、共受容体GFRアルファ1及びGFRアルファ2によって媒介されたRETのリン酸化を促進することができたことを示す。従って、すべてのこれらの変異体は、可溶性であり、正確に発現され、及び哺乳動物発現系から分泌されるタンパク質を生成し、及び機能的に活性な3次元構造を採用すると結論付けられる。
【0264】
<実施例6:GFRアルファ2−Fc融合タンパク質によるニュールツリンの沈殿>
ニュールツリン変異体が、GFRα2に対するそれらの親和性に基づいて未精製の培地調製物から精製され得るかを決定するために、V5標識NRTN変異体によって一時的にトランスフェクトされたCHO細胞からの媒体を収集し、+4℃で保存し、及び試験的な沈殿アッセイのために使用した。各培地のアリコート(400μl)を、混合しながら+4℃で1時間、組換え型ヒトGFRα2−Fcキメラ(0.4μg、R&D Systems)、V5−エピトープに対する抗体(0.4μg、Invitrogen)又はNRTNに対する抗体(0.4μg、R&D Systems)とともにインキュベートした。Gタンパク質は、組換え型GFRα2−FcキメラにおけるヒトIgGのFc部分と同様に、マウス及びヤギからの抗体に関する強力な親和性を有する。それ故、Gタンパク質セファロースをサンプルに加え、インキュベーションを、混合しながら+4°Cで1時間継続した。ペレット状にした後、サンプルを、還元Laemmli緩衝液によってGタンパク質セファロースから溶出し、SDS−PAGE上に充填した。NRTNのV5標識変異体のウエスタンブロット解析に関して、抗V5抗体(Invitrogen)を、還元条件下でSDS−PAGE上に充填したサンプルとともに使用した。NRTN標識のない変異体のウエスタンブロット解析に関して、抗NRTN抗体(R&D Systems)を、非還元条件下でSDS−page上に充填したサンプルとともに使用した。抗NRTN抗体の感度は、還元条件下で充填したサンプルで著しく低い。すべてのニュールツリン変異体が、抗体定常(Fc)ドメインへ融合した市販で利用可能なGFRα2の助けによって沈殿され得、続いてGタンパク質セファロースカラムを介して精製され得ることを結果(図示せず)は実証した。その上、この精製手法は、V−5エピトープタグを使用して、免疫沈殿と少なくとも同じくらい効率的に見える。
【0265】
<実施例7:神経突起増殖アッセイ>
RETリン酸化アッセイでの結果を裏付けるために、GFP又はV5標識NRTN変異体のいずれかによって2日間一時的にトランスフェクトされたCHO細胞からの培地を収集し、+4℃で保存し、及び試験的な神経突起増殖アッセイのために使用した。培地からのサンプル(DMEM、10%のウシ胎児血清、ペニシリン及びストレプトマイシン)を、DMEMによって1:2で希釈し、ウマ血清を、5%の終末濃度まで加えた。親のPC12細胞株から元々サブクローン化された、PC6−3細胞を、GFRα2によって一時的にトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後に、培地を、CHO細胞からの希釈された培地と交換した。GFPでトランスフェクトされたCHO細胞からの培地を上記のように希釈し、陰性対照としてPC6−3細胞上で使用した。NRTN(50ng/ml、PeproTech)を、(上記のように希釈された)調製CHO培地に加え、陽性対照としてPC6−3細胞上で使用した。神経突起は数えなかったが、細胞の代表的な領域を、誘発の5日後に撮影した。すべてのニュールツリン変異体が、このアッセイにおいて生物学的に活性でもあることを結果(図示せず)は実証した。
【0266】
<実施例8:安定性のアッセイ>
CHO細胞を、V5標識NRTN変異体によって一時的にトランスフェクトした。2日後、培地を収集し、(A)10mMのEDTAがある又はない状態で希釈せずに、又は(B)、50mMの緩衝液(クエン酸ナトリウム緩衝液pH6.0、トリス緩衝液pH6.8、又はトリス緩衝液pH8.0、トリス緩衝液pH8.8、トリス緩衝液pH9.5)によって1:10で希釈して使用した。希釈していない又は希釈した培地(400μl)を、細胞がない状態で、空のプレートに移動させ、37℃で5時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、20μlのサンプルを取り、還元条件下でSDS−PAGE上に充填した。ウエスタンブロット解析を、以前に記載したように行い、タンパク質を抗V5抗体を使用して検出した。表E3に示される結果は、ニュールツリンの野生型及びNV1の変異体が、EDTAがある及びない状態の両方において、細胞がない状態で培地から消えたことを実証する。対照的に、変異NV2、NV3及びNV4は、これらの条件下で安定性を強めたように見えた。
【0267】
【表7】

【0268】
従って、改良されたニュールツリンポリペプチド、及び特に変異体NV2、NV3及びNV4が、野生型ニュールツリンと比較して、改善された安定性の予期しない特性をさらに有することをこのデータは実証する。
【0269】
<実施例9:正常な及びヘパラン硫酸欠損CHO細胞に対する免疫細胞化学的染色>
CHO細胞を、標識のない野生型NRTN、V5標識野生型NRTN又はV5標識NV4のNRTN変異体によって一時的にトランスフェクトした。2日後、培地のサンプルを収集し、+4℃で保存した。CHO細胞の第2のセットを、カバースリップ上に蒔いた。2日後、これらの細胞の部分を、GFRα2によってトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後に、培地を、NRTN変異体を発現するCHO細胞の第1のセットから収集した、保存した培地と交換した。細胞を、培地とともに10分間インキュベートし、PBSで5分間3回すすぎ、続いて、3%のPFAで15分間固定し、0.2%のトリトンX−100中で5分間透過処理し、及び1%のBSA中で30分間遮断した。V5に対する抗体(Invitrogen)を1:500で希釈し、CY3共役の(CY3 -conjugated)ロバ抗マウス抗体(Jackson)を1:400で希釈した。アッセイを、上記のように、しかしヘパラン硫酸を欠損したCHO細胞を使用して繰り返した(psgA 745)。この場合、細胞を透過処理し、核を、配置(mounting)前にHoechst(Invitrogen)で染色した。野生型ニュールツリンが、野生型の表面に付くが、ヘパラン硫酸欠損CHO細胞には付かないことを結果(図示せず)は実証した。対照的に、ニュールツリン変異体NV4は、野生型CHO細胞又はヘパラン硫酸欠損CHO細胞のいずれにも結合しない。したがって、少なくとも変異体NV4に関して、アミノ酸51〜62によって包含される高親和性相互作用ドメインの喪失が、細胞表面への改善されたニュールツリンの結合を妨げるのに十分であると結論付けられる。
【0270】
<実施例10:改良されたニュールツリンポリペプチドの大規模な生成及び特徴づけ>
成熟した完全に折り畳まれたニュールツリンを、7つのジスルフィド架橋を有するシステイン結節構造によって特徴付ける。二量体タンパク質の各モノマーは、3つの分子内のジスルフィド架橋を含み(harbors)、モノマーを、更なる分子間のジスルフィド架橋によって一緒に連結させる。哺乳動物のチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)におけるNRTN発現が、典型的に、E.coli生成のNRTNよりも高い生物学的活性(インビトロ)を有するタンパク質の生成を可能にすると従来の研究は確証した(Hoane et al., (2000) Exp Neurol. 162(1): 189−93)。これは、哺乳動物細胞が、ジスルフィド架橋を有する分泌されたタンパク質の折畳のための厳格な細胞内の精度管理を有し、一方で、E.coli発現は、典型的に、ジスルフィドの結合したタンパク質が封入体から再び折り畳まれることを必要とするからである。
【0271】
従って、改良されたニュールツリンタンパク質の大規模な生成を、Icosagen Ltd.で開発された専売のQMCF技術を使用して、CHO細胞を用いて完了させた(ヨーロッパ特許番号EP1851319を参照)。簡潔に言うと、改良されたニュールツリンコード配列のためのQMCF発現ベクターは、Epstein-Barr Virus Family of Repeatsによって提供される複製及び維持の構成要素のエンハンサーがないポリオーマウイルスの最小の起点を含む、ハイブリッドの複製起点を有する。QMCF技術は、QMCFマルチコピーの核染色体外発現ベクターの複製及び安定した維持を支持することができる細胞を使用して、治療上のタンパク質の発現のために発展されてきた。生成に使用される細胞株は、改変された懸濁CHO細胞(CHOEBNALT85)であって、これは、ポリオーマウイルスのエンハンサーがない起点で複製の開始を提供するために2つの更なるタンパク質を発現し、発現ベクターの有効な維持を提供する。ニュールツリン変異体は、任意のN末端タグ、又は追加のN末端アミノ酸残基なしで発現された。配列を、表D2に示す。
【0272】
(精製方法)
NRTNを発現するCHO細胞からの培地(Icosagen LtdでのQMCF Technology)を、室温で溶かした。HITRAP(商標)ヘパリンHPカラム(1ml、GE Healthcare)を、10mMのHepes、pH7.2 10mlによって平衡化し1〜10mlの希釈されていない培地を、製造業者の指示に従って注射器によって適用した。培地を収集し、もう一度、カラムを通して流した。カラムを、10mMのHepes、pH7.2中の0.2MのNaCl、10mlで洗浄した。NRTNが豊富なサンプルを、10mMのHepes pH7.2、1.2MのNaClの5×600μlで溶出した。AmiconUltraの0.5ml 10Kの濃縮器(Millipore)における製造業者の指示に従って、画分番号2及び3を収集し、50〜65μlの最終容量まで濃縮した。その後、サンプルを、約120mMのNaClの終末濃度まで、10mMのHepes pH7.2によって1:10で希釈した。可溶性の組換え型GFRα2−Fcキメラ(10〜200μg、R&D Systems)を、製造業者の指示に従って、PBS中のGタンパク質HP SpinTrapカラム(GE Healthcare)に付けた。1:10で希釈したサンプルを、GFRα2カラムに加え、混合しながら+4℃で少なくとも1時間インキュベートした。カラムを、冷たい10mMのHepes pH7.2、1.0MのNaCl、4×400μlでまず洗浄し、その後、冷たい10mMのHepes pH7.2、0.1MのNaCl、4×400μlで洗浄した。NRTNサンプルを、あらかじめ暖められた(25℃)10mMのHepes pH7.2、2.0MのMgCl、5×200μlで溶出した。溶出した画分を、10mMのHepes pH7.2、0.150MのNaClで(1:2で)直ちに希釈し、AMICONULTRA(商標)の0.5ml 10Kの濃縮器で濃縮した。サンプルを、同じ緩衝液(1:2)中で更に希釈し、続いて、3回濃縮し、約125mMのMgCl、及び10mMのHepes pH7.2中の150mMのNaClの終末濃度を与えた。市販で入手可能な1バッチのニュールツリンに加えて、精製されたタンパク質のサンプルも、非還元条件下で、15%のSDS−PAGEを使用して分析し、クマシー染色を介して視覚化した。図1に示される結果は、精製手順が、結果的に、改良されたニュールツリンの各々の効率的な単離につながったことを実証する。
【0273】
(N末端配列及び質量分析)
精製されたNRTN変異体のN末端配列を、応用の生物系の正確な494A Biosystems Precise 494A HT Sequencer (Perkin Elmer, Waltham, MA)によってEdman分解によって決定した(ここでシステインは、事前の修飾なしでは検出することができない)。二量体タンパク質の分子量を、MALDI−TOF機器(Ultraflex TOF/TOF、Bruker)によって測定し、これを、5700〜16900Daの間で正確に較正した。タンパク質が正確な量のタンパク質であり、n末端クリッピングをほとんど又はまったく示さなかったことを表E4の結果は示した。
【0274】
【表8】

【0275】
<実施例11:ヘパリンに対するニュールツリン変異体の親和性のBiacore分析>
ヘパリンに対するNRTN変異体の親和性を、Biacore T100機器、及びストレプトアビジンをコーティングしたSensor Chip SA(Series S、GE Healthcare)を使用して、表面プラズモン共鳴によってアッセイした。ビオチン化されたヘパリン(Sigma)を、チップに付けた。ビオチン−ヘパリン調製物において遊離ビオチンを排除するために、50μlのビオチン−ヘパリン(20μg/μl)を、10mMのHepes pH7.2中で1:10で希釈し、続いて、Amicon Ultraの濃縮管(10K、Millipore)によって濃縮し、50μlまで戻した。希釈/濃縮の繰り返されたサイクルによって、1.000.000倍の脱塩効果を達成した。我々は、脱塩されたビオチン−ヘパリンの回復が100%であると考え、5μl/分の流量でチップをコーティングしたストレプトアビジン上にそれを10分間充填する前に、HBS−EP+緩衝液(GE Healthcare:100mMのHepes pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%(v/v)の界面活性剤P20)中の200μg/mlの終末濃度までそれを希釈した。チップへのビオチン−ヘパリンの付着によって、結果的に、チップ上で361 RUが増加した。リガンドを参照チップに加えなかった。
【0276】
NRTN変異体の実際の濃度をクマシー染色によって測定した。NRTN変異体を、5つの異なる濃度(25、50、100、200及び500nM)でヘパリンをコーティングされたチップ上に置いた。NRTN変異体が標準緩衝液(HBS−EP+)中に希釈した時、その会合(association)の開始は著しく遅れた。それ故、我々は、緩衝液のNaCl濃度を235mMまで増加させた。改変された緩衝液を使用して、我々は、30μl/分の流速、240秒の注射時間、及び600秒の解離時間でNRTN変異体及びヘパリンの間の相互作用を分析した。チップを、サイクル間で30秒間、1MのNaClで再生成した。安定化の期間は20秒であった。野生型ニュールツリンが、2.5×10−9M及び3.8×10−9Mの間のこれらの条件下でヘパリンに対して見かけの親和性を示したことを結果は示した。対照的に、すべてのニュールツリン変異体は、かなり低いヘパリンに対する見かけ上の親和性を示した。(データは示さず)。
【0277】
<実施例12:ヘパリンアフィニティークロマトグラフィー>
ヘパリンに対するNRTN変異体の親和性を特徴づけるために、我々は小さなヘパリンアフィニティークロマトグラフィーカラムを使用した。10mMのHepes pH7.2中のヘパリンアフィニティークロマトグラフィーカラムに対する精製されたNRTN変異体の各々、約2μgを充填後に、サンプルを、連続的なNaCl勾配(2Mまで増加するNaClを有する10mMのHepes)によって溶出した。タンパク質の溶出を、214nmでのそれらの吸収によって監視した。溶出されたタンパク質を含む画分の正確な塩濃度を、伝導性に基づいて測定した。A214nmの検出器を、伝導性検出器の前に配置した(約20〜25μl)。流量が50μl/分であったため、A214吸収に相当する伝導性を、約0.5分の遅延とともに記録した。図2に示される結果は、ヘパリンアフィニティーカラムからのこれらのタンパク質の溶出特性の我々の初期の分析(表E1に示す)にかなり一致した。ここで、溶出されたタンパク質を含む画分の正確な塩濃度を、伝導性に基づいて測定した。A214nmの検出器を、伝導性検出器の前に配置した(約20〜25μl)。流量が50μl/分であったため、A214吸収に相当する伝導性を、約0.5分の遅延とともに記録した。特に、ニュールツリン野生型タンパク質を、約1.08MのNaCl濃度に相当する伝導性でピークを有するカラムから溶出した。対照的に、ニュールツリン変異N1を、より低い収量で回収させたが、約0.97MのNaCl濃度に相当する伝導性でピークを有するカラムから溶出し;ニュールツリン変異N2を、約0.56MのNaCl濃度に相当する伝導性でピークを有するカラムから溶出し;ニュールツリン変異N3を、約0.56MのNaCl濃度に相当する伝導性でピークを有するカラムから溶出し;及びニュールツリン変異N4を、約0.48MのNaCl濃度に相当する伝導性でピークを有するカラムから溶出した。
【0278】
<実施例13:精製されたニュールツリン変異体の受容体リン酸化特性>
ヒトRETロングアイソフォーム(Eketjaell et al., 1999, EMBO J., 18:5901)を安定して発現する線維芽細胞(MG87−RET)を、以前に記載したように、ラットGFRα1又はヒトGFRα2によって一時的にトランスフェクトした。100ng/mlの市販のニュールツリンを含むサンプル、又は精製されたNRTN変異体を、37℃で10分間細胞に加え、その後、線維芽細胞を溶解し、溶解物を、RETの免疫沈殿に使用した(Santa Cruz Biotechnology IncからのRETの抗体)。免疫複合体を、Gタンパク質セファロース(GE Healthcare)によって収集し、8%のSDS−PAGE及びウエスタンブロッティング上で分析した。RETのリン酸化を、ホスフォチロシンに対する抗体(Upstate Biotechnology)によって検出した。フィルターを取り除き、RETに対する抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc)によってそれを再調査することによって等しい充填を確認した。アッセイを2回行い、同一の結果を得た。
【0279】
図3は、RET−リン酸化アッセイのウエスタンブロット解析を示す。安定してRETを発現する細胞を、GFRα2によって一時的にトランスフェクトし、示されるニュールツリン変異体での刺激後に、細胞を溶解し、RETを免疫沈殿によって単離した。サンプルを、抗ホスフォチロシン抗体を用いて調べることによって分析した(A)。等しい充填を確認するために、続いて、サンプルを抗RET抗体で再検査した(B)。図4は、RET−リン酸化アッセイのウエスタンブロット解析を示す。安定してRETを発現する細胞を、GFRα1によって一時的にトランスフェクトし、示されるニュールツリン変異体での刺激後に、細胞を溶解し、RETを免疫沈殿によって単離した。サンプルを、抗ホスフォチロシン抗体を用いて調べることにより分析した(A)。等しい充填を確認するために、続いて、サンプルを抗RET抗体で再検査した(B)。ニュールツリン変異体の未精製の調製物によって以前に測定されたように、改良されたすべてのニュールツリンポリペプチドが機能的な活性を示すことを結果は確認する。
【0280】
【表9−1】

【0281】
【表9−2】

【0282】
【表9−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟野生型ニュールツリン(配列番号5)のアミノ酸51〜63を含む領域において正に帯電されたアミノ酸の少なくとも1つの変異によって成熟野生型ニュールツリンと異なり、および成熟野生型ニュールツリンと比較して、減少したヘパリンへの親和性を有していることを特徴とするニュールツリンポリペプチド。
【請求項2】
前記ニュールツリンポリペプチドが、100ng/mlの濃度で、37℃で10分間線維芽細胞に加えられると、RETのリン酸化を誘発する能力を有しており、ここで、線維芽細胞は、RETおよびGFRα1あるいはGFRα2のいずれかを発現することを特徴とする請求項2に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項3】
前記ニュールツリンポリペプチドが、pH 7.2で1M NaCl未満のNaCl濃度で、ヘパリンアフィニティーカラムから溶出され得ることを特徴とする請求項1または2に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項4】
前記ニュールツリンポリペプチドが、R52、R54、R56、R58、R61およびR63からなる群から選択される位置に少なくとも1つの変異を有することを特徴とする請求項3に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項5】
前記ニュールツリンポリペプチドが、R51、R54、R56、Q55、R56、R57、R58、R60、R61およびE62からなる群から選択される位置に少なくとも1つの変異を有することを特徴とする請求項3に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項6】
前記変異が、少なくとも1つの中性の、両性イオン性の、または負に帯電された脂肪族アミノ酸を導入することを特徴とする請求項4又は5に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項7】
前記変異が、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、セリンおよびグルタミンからなる群から独立して選択される少なくとも1つのアミノ酸を導入することを特徴とする請求項6に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項8】
前記ニュールツリンポリペプチドが、変異R52A、R56AおよびR58Aを含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項9】
前記ニュールツリンポリペプチドが、変異R54A、R61AおよびR63Aを含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項10】
前記ニュールツリンポリペプチドが、変異R52A、R54A、R56A、R58AおよびR61Aを含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項11】
前記ニュールツリンポリペプチドが、変異R51A、R54Q、Q55G、R56Q、R57G、R58A、R60V、R61GおよびE62Sを含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項12】
前記ニュールツリンポリペプチドが、配列ARLQGQGALVGSによるアミノ酸51〜62の置換を含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項13】
前記ニュールツリンポリペプチドが、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63によって包含される13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸配列にわたって、配列番号5と実質的に相同であるか、または実質的に類似していることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、配列番号1を含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、配列番号2を含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、配列番号3を含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、配列番号4を含むことを特徴とする請求項7に記載のニュールツリンポリペプチド。
【請求項18】
細胞変性または機能不全を処置する方法であって、前記方法が、そのような処置に必要としている患者に、治療上有効な量の請求項1乃至17のいずれかに記載のニュールツリンポリペプチドを投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記患者が、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷、神経障害性疼痛、糖尿病、勃起不全、抜け毛、ヒルシュスプルング病、神経系の腫瘍、多発性硬化症、難聴、網膜症および感染からなる群から選択される疾患または障害を有していることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
細胞変性または機能不全が、好酸球減少症、好塩基球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血症、血小板減少症、および幹細胞機能不全からなる群から選択される造血細胞の変性または機能不全を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ニュールツリンポリペプチドが全身投与によって投与されることを特徴とする請求項18乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ニュールツリンポリペプチドが脊髄内投与によって投与されることを特徴とする請求項18乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記ニュールツリンポリペプチドが経鼻投与によって投与されることを特徴とする請求項18乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記ニュールツリンポリペプチドが実質内投与によって投与されることを特徴とする請求項18乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記ニュールツリンポリペプチドが徐放性の組成物またはデバイスによって投与されることを特徴とする請求項18乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
請求項1乃至17のいずれかに記載のニュールツリンペプチドと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項27】
ポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドであって、前記ニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリン(配列番号5)のアミノ酸51〜63を含む領域において正に帯電されたアミノ酸の少なくとも1つの変異によって成熟野生型ニュールツリンと異なり、およびニュールツリンポリペプチドは、成熟野生型ニュールツリンと比較して、減少したヘパリンへの親和性を有していることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項28】
前記ニュールツリンポリペプチドが、100ng/mlの濃度で、37℃で10分間線維芽細胞に加えられると、RETのリン酸化を誘発する能力を有し、ここで、線維芽細胞は、RETおよびGFRα1あるいはGFRα2のいずれかを発現することを特徴とする請求項27に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
前記ニュールツリンポリペプチドが、pH 7.2で1M NaCl未満のNaCl濃度で、ヘパリンアフィニティーカラムから溶出され得ることを特徴とする請求項27又は28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
前記ニュールツリンポリペプチドが、R52、R54、R56、R58、R61およびR63からなる群から選択される位置に少なくとも1つの変異を有することを特徴とする請求項29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
前記ニュールツリンポリペプチドが、R51、R54、R56、Q55、R56、R57、R58、R60、R61およびE62からなる群から選択される位置に少なくとも1つの変異を有することを特徴とする請求項29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
前記変異が、少なくとも1つの中性の、両性イオン性の、または負に帯電された脂肪族アミノ酸を導入することを特徴とする請求項30又は31に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
前記変異が、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、セリンおよびグルタミンからなる群から独立して選択される少なくとも1つのアミノ酸を導入することを特徴とする請求項32に記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
前記ニュールツリンポリペプチドが、変異R52A、R56AおよびR58Aを含むことを特徴とする請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
前記ニュールツリンポリペプチドが、変異R54A、R61AおよびR63Aを含むことを特徴とする請求項34に記載のポリヌクレオチド。
【請求項36】
前記ニュールツリンポリペプチドが、変異R52A、R54A、R56A、R58AおよびR61Aを含むことを特徴とする請求項35に記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記ニュールツリンポリペプチドが、変異R51A、R54Q、Q55G、R56Q、R57G、R58A、R60V、R61GおよびE62Sを含むことを特徴とする請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記ニュールツリンポリペプチドが、配列ARLQGQGALVGSによるアミノ酸51〜62の置換を含むことを特徴とする請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記ニュールツリンポリペプチドが、成熟ヒトニュールツリンの残基51〜63によって包含される13のアミノ酸を除いて、成熟野生型ニュールツリンのアミノ酸配列にわたって、配列番号5と実質的に相同であるか、または実質的に類似していることを特徴とする請求項27乃至38のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
前記ポリヌクレオチドが配列番号6を含むことを特徴とする請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
前記ポリヌクレオチドが配列番号7を含むことを特徴とする請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
前記ポリヌクレオチドが配列番号8を含むことを特徴とする請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
前記ポリヌクレオチドが配列番号9を含むことを特徴とする請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項44】
請求項27乃至43のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項45】
ポリヌクレオチドに操作可能に結合される発現制御配列をさらに含むことを特徴とする請求項44に記載の組換えベクター。
【請求項46】
前記ベクターが、ウイルスベクターであることを特徴とする請求項44または45に記載の組換えベクター。
【請求項47】
治療上有効な量の請求項44乃至46のいずれかに記載の組換えベクターを、そのような処置を必要としている患者に投与する工程を含む細胞変性または機能不全を処置する方法。
【請求項48】
前記患者が、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷、神経障害性疼痛、糖尿病、勃起不全、抜け毛、ヒルシュスプルング病、神経系の腫瘍、多発性硬化症、難聴、網膜症および感染からなる群から選択される疾患または障害を有していることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞変性または機能不全が、好酸球減少症、好塩基球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血症、血小板減少症、および幹細胞機能不全からなる群から選択される造血細胞の変性または機能不全を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記組換えベクターが全身投与によって投与されることを特徴とする請求項47乃至49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記組換えベクターが脊髄内投与によって投与されることを特徴とする請求項47乃至49のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記組換えベクターが経鼻投与によって投与されることを特徴とする請求項47乃至49のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記組換えベクターが実質内投与によって投与されることを特徴とする請求項47乃至49のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記組換えベクターが徐放性の組成物またはデバイスによって投与されることを特徴とする請求項47乃至49のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
請求項44乃至46のいずれかに記載の組換えベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項56】
請求項26乃至43のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項57】
前記宿主が、請求項44乃至46のいずれかに記載の組換えベクターのいずれかで形質転換されるか、またはそれをトランスフェクトされていることを特徴とする請求項56に記載の宿主細胞。
【請求項58】
前記宿主細胞が、請求項1乃至17のいずれかに記載のポリペプチドを分泌することを特徴とする請求項56または57に記載の宿主細胞。
【請求項59】
治療上有効な量の請求項56乃至58に記載の宿主細胞を、そのような処置に必要としている患者に投与する工程を含む細胞変性または機能不全を処置する方法。
【請求項60】
前記患者が、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、虚血性脳卒中、急性脳外傷、急性脊髄損傷、神経障害性疼痛、糖尿病、勃起不全、抜け毛、ヒルシュスプルング病、神経系の腫瘍、多発性硬化症、難聴、網膜症および感染からなる群から選択される疾患または障害を有していることを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞変性または機能不全が、好酸球減少症、好塩基球減少症、リンパ球減少症、単球減少症、好中球減少症、貧血症、血小板減少症、および幹細胞機能不全からなる群から選択される造血細胞の変性または機能不全を含むことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記宿主細胞が全身投与によって投与されることを特徴とする請求項58乃至61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記宿主細胞が脊髄内投与によって投与されることを特徴とする請求項58乃至61のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記宿主細胞が経鼻投与によって投与されることを特徴とする請求項58乃至61のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記宿主細胞が実質内投与によって投与されることを特徴とする請求項58乃至61のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
前記宿主細胞が徐放性の組成物又はデバイスによって投与されることを特徴とする請求項58乃至61のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
請求項58乃至61のいずれかに記載の宿主細胞と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項68】
髄腔内ポンプと、請求項1乃至17のいずれかに記載のポリペプチドとを含む医薬送達システム。
【請求項69】
前記ニュールツリンポリペプチドが、別のタンパク質またはポリペプチド配列に融合することを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載のニュールツリンポリペプチド。

【公表番号】特表2013−509422(P2013−509422A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537030(P2012−537030)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/054419
【国際公開番号】WO2011/053675
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512112965)シーエヌエス セラピューティクス,インク. (1)
【Fターム(参考)】