説明

改良された摩耗抵抗を有する織物製品およびその製造方法

本発明は、一定の摩耗抵抗を有する織物基材上に三次元パターンを適用した織物製品であって、該三次元パターンが該織物基材の面積の少なくとも15%を被覆し、該織物製品の摩耗抵抗が該織物基材の摩耗抵抗よりも高い該織物製品に関する。従って、織物基材の摩耗抵抗は、次の工程(i)および(ii)を含む加工法によって改良される:(i)一定の摩耗抵抗を有する織物基材ウェブを供給し、次いで(ii)該織物基材ウェブ上に三次元パターンを、該織物基材ウェブの面積の少なくとも15%が被覆されるように適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された摩耗抵抗(abrasion resistance)を有する織物製品(textile product)およびその製造方法に関する。この織物製品は特に自動車産業の分野、就中、内装ライニング(lining)、トランクおよびシート張り(seat upholstery)等の分野において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車産業や織物産業およびその他の分野においては、織物製品は、高い摩耗抵抗が要求されるマニホールド領域内において使用されている。例えば、乗客が頻繁に接触する自動車の室内のこのような領域が摩耗にさらされる頻度は増大する。その結果、これらの領域で使用される織物製品は、異なる製造業者による摩耗抵抗に関する要求を満たさなければならない。摩耗抵抗を決定するための一般的試験はマルチンダーレ(Martindale)法(DIN EN ISO 12947-1〜4)によるものであり、これについては以下において詳細に説明する。
【0003】
例えば、ヨーロッパ特許公報EP 0 241 127 A2号からは次のことが知られている。即ち、織物製品に使用される繊維の化学的組成および織物製品中における該繊維の機械的配列は織物製品の品質に影響を与える要因となる。特に、紡織繊維(textile fiber)の製造に使用されるポリマー結合剤は、紡織基材の1または複数の物理的特性に影響を及ぼす。例えば、このような結合剤は、織物製品の変形抵抗、摩耗抵抗、スクラビング(scrubbing)抵抗および物理化学的安定性を改良するために使用される。従って、紡織機材から構成される織物製品の摩耗抵抗は、ポリマー結合剤の選択によって増大させることができる。
【0004】
さらに、独国特許公報DE 198 194 00 A1号には、高番手の糸を耐摩耗性繊維材料(好ましくはポリエステル)から製造すると共に、低番手の糸を吸湿性繊維材料(例えば、羊毛、綿およびビスコース安定繊維等)から製造することによって、カバー織物の摩耗抵抗を改良する技術が開示されている。この技術によれば、カバー織物において十分に高い摩耗抵抗を達成することができる。何故ならば、より強い糸は高い摩耗歪を受けるが、湿気を吸収する作用をする細い糸が機械的な応力または歪を受ける程度が低いからである。
【0005】
以上のように、当該分野における従来技術によれば、織物製品の摩耗抵抗が織物基材中の繊維の機械的配列および/または化学的組成によって増大された織物製品が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、織物基材の摩耗抵抗が、繊維の機械的配列や化学組成とは無関係に改良できる方法および該方法によって製造される製品を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明によれば、上記の課題は以下の織物製品および改良された摩耗抵抗を有する織物製品の製造方法によって解決された。
(i)一定の摩耗抵抗を有する織物基材および(ii)該織物基材上に適用された三次元パターンを含有する織物製品であって、該三次元パターンが該織物基材の面積の少なくとも15%を被覆することに起因して該織物製品の摩耗抵抗が該織物基材の摩耗抵抗よりも高い該織物製品。
【0008】
下記の工程(i)および(ii)を含む、改良された摩耗抵抗を有する織物製品の製造方法:
(i)一定の摩耗抵抗を有する織物基材ウェブを供給し、次いで
(ii)三次元パターンを該織物基材ウェブ上に、該織物基材ウェブの面積の少なくとも15%が該三次元パターンによって被覆されるようにして適用することによって、該織物製品の摩耗抵抗を該織物基材ウェブの摩耗抵抗よりも増加させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
織物基材としては、gsm物質(gsm substance)を50g/m〜500g/m(特に好ましくは100g/m〜450g/m)含有する織物基材が好ましい。この場合、織物基材は織布、たて編生地、よこ編生地、不織布またはラッシェル反物の形態で使用することができ、これらの基材は平滑または平坦であるのが好ましい。非パターン化生地、シャフト(shaft)によって織られた生地またはジャカード(jacquard)でパターン化された平坦な原生地は特に適当である。非パターン化織物生地が特に好ましい。さらに、適当な織物生地は、表面上に8本のたて糸および/または8本のよこ糸よりも長い浮き糸を有すべきではない。5本のたて糸および/5本のよこ糸よりも長くない浮き糸を有する織物生地が特に好ましい。この場合、織物生地は一層織布または多層織布であってもよいが、一層織布が特に好ましい。微細にパターン化した編地または非パターン化編地が特に好ましい。さらに、織物基材は1本バー(bar)もしくは2本バー並びに1本ジャージー(jersey)もしくは2本ジャージーを用いて機械製造されるのが好ましい。
【0010】
使用する糸(yarn)はフラット状もしくは捲縮嵩高状(例えば、仮加撚法による捲縮嵩高状)のポリエステル製エンドレスフィラメント(好ましくは33〜3,000dtex、特に好ましくは45〜1,200dtexの該フィラメント)が好ましい。原則的には、ポリプロピレン以外の全ての材質の糸が適当である。
【0011】
本発明によれば、三次元的パターンは織布、たて編生地、よこ編生地、不織布またはラッシェル反物へ直接的に適用してもよいが、織物基材は、織物を完全に被覆する被覆物(coating)をさらに含んでいてもよい。一般に、この被覆物は適当なポリマーを含む被覆物、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンコポリマー、アクリレート、EVAおよびポリマー混合物を基材とする被覆物等である。この種のポリマーは安定もしくは準安定な発泡体またはペーストとして織物上へ塗布してもよい。ポリウレタン被覆物、特に安定なポリウレタン発泡体が好ましい。
【0012】
一般に、アイオノマーポリウレタンの水性分散液は、例えば、国際公開公報WO94/06852号に記載されているようにして、発泡安定剤を含有していてもよい発泡ポリウレタン分散液の製造に使用される。ポリウレタン分散液の固形分含有量は、好ましくは30〜70重量%、特に32〜60重量%である。「ポリウレタン」という用語には、「ポリウレタンポリウレア」も包含される。ポリウレタン(PUR)分散液の概説としては、次の文献が例示される:ローストハウザーおよびナハトカンプ、水性ポリウタレン」、アドヴァンシズ・イン・ウレタン・サイエンス・アンド・テクノロジー、第10巻、第121頁〜第162頁(1987年)。適当な分散液は、例えば、次の文献に記載されている:ハンザー編、「クンストストッフハンドブーフ」、第7巻、第2版、第24頁〜第26頁。本発明によれば、トゥビコート(Tubicoat)、PRV、トゥビコートMS(いずれの製品も、CHT R.バイトリッヒGmbH社(チュービンゲン、独国)から製造販売されているものである。)を含むPUR分散液およびWO94/06852に記載されている調質性(temperable)ポリマー系を使用するのが好ましい。
【0013】
ポリウレタン分散液は気泡安定剤[例えば、CHT R.バイトリッヒGmbH社(チュービンゲン、独国)から市販されている「トゥビコート安定剤RP」等]、顔料、アンモニア、固着剤、防炎加工剤、増粘剤、乳化剤および/または光安定剤を含有するのが好ましくは、また、この種の添加剤は三次元パターンに使用してもよい。
【0014】
通常、この分散液は、被覆物の摩耗抵抗を決定する可塑剤を含有する。本発明によれば、比較的多量の可塑剤を使用してもよい。この理由は、安定な発泡体に適用される三次元的パターンによって摩耗抵抗は顕著な影響を受けるからである。可塑剤としては、次の文献に記載されているものを使用してもよい:A.K.ドゥーリトル、「ザ・テクノロジー・オブ、ソルベンツ・アンド・プラスティサイザーズ」、J.ウィリー&ソンズ社発行。ポリマー可塑剤、例えば、トゥビコートMV[CHT R.バイトリッヒ社(チュービンゲン、独国)の製品]およびミリテックス(Millitex)PD−92[ミリケン社(米国)の製品]等を使用するのが好ましい。
【0015】
織物基材上への塗布前に、ポリウレタン分散液を発泡させるが、一般に、この操作は機械的におこなう。この操作は発泡混合装置内において、高剪断力を印加しておこなってもよい。さらに、発泡操作は、気泡発生器内において、圧縮空気の吹込によっておこなってもよい。好ましくは、ストークミキサーまたは発泡加工機(foam processor)、例えば、ストークFP3発泡加工機等を使用するのが好ましい。発泡は、好ましくは150〜280g/l、特に好ましくは180〜220g/lのフォーム(foam)密度が得られるようにおこなわれる。
【0016】
このようにして得られる発泡体は安定である。即ち、該発泡体は、塗布後に分解して液体に変化することはなく、織物基材上においては発泡形態を保持する。
【0017】
安定な発泡体を用いる被覆操作は、ナイフ−ロール塗布機、エアーブレード(air blade)およびバリオプレス(variopress)を用いるフォーム塗布システム、あるいはスクリーン印刷を用いる開放スキージー(squeegee)(ストーク回転式スクリーン塗布UNIT CFT)を使用しておこなわれるが、後者を使用するのが好ましい。一般に、塗布後の発泡体の厚さは0.4〜0.8mm、好ましくは0.5〜0.6mmである。
【0018】
次いで、得られるポリウレタン発泡体−織物基材複合材は乾燥処理に付される。一般に、乾燥処理は80℃〜150℃、好ましくは100℃〜130℃でおこなわれる。ポリウレタンフォームの塗布前に、織物基材が膨張しているときには、ポリウレタン発泡体−織物複合材の自由収縮を可能にする集成装置(aggregate)上において、例えば、ループ乾燥機またはウェブ乾燥機(スクリーンベルト乾燥機)を用いて上記乾燥処理をおこなうのが好ましい。
【0019】
次いで、ポリウレタン発泡体は、高圧を印加することによって、織物基材と共に圧縮される。この加圧処理は、例えば、加圧装置(例えば、カレンダー等)を用いて20℃〜80℃(好ましくは100℃〜180℃)の温度と10t〜60tのゲージ圧(line pressure)の条件下でおこなってもよく、あるいは、固定ユニット[例えば、「スーパークラブ(Supercrab)GCP1200」(m−テック・マシーネンバウゲゼルシャフトmbH社(フィールセン)製)等]を用いて100℃〜160℃(好ましくは135℃〜145℃)の温度と10bar〜200barの圧力の条件下でおこなってもよい。これによって発泡体は圧縮され(発泡体の厚さ:0.6mm〜0.2mm、特に0.6mm〜0.4mm)、発泡体と織物基材間の接着性は保証される。
【0020】
圧縮処理中において、ポリウレタンは完全もしくは部分的に縮合されていてもよい。圧縮中に十分な縮合が得られないときには、複合体を、例えば140℃〜180℃(好ましくは170℃〜180℃)において十分に加熱することによって、ポリウレタン発泡体の十分な縮合を保証する。この縮合処理(condensating-out)は幅出機(tenter frame)を用いておこなってもよく、これによって幅出処理を同時におこなって、最終的な寸法を有する製品を得る。
【0021】
被覆物を具有するか、または具有しない織物基材は、自動車の内装材(例えば、シートの中央部のウェブまたはシートの側面材等)としての用途に対しては、通常は不十分な摩耗抵抗を有するのが好ましい。この摩耗はマルチンダール法(DIN EN ISO 12947-1〜4)に従って測定することができる。
【0022】
織物基材は、通常は、自動車の内装材としての用途に対しては適していないので、以下の基準の少なくとも1つを満たす場合には、本発明による織物基材としては好ましい。
【0023】
(a)使用する織物基材としては、50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後の摩耗試験における織物サンプルの質量損失が0.03gよりも多くなる織物(好ましくは該質量損失が0.05gよりも多くなる織物)が好ましい。即ち、DIN EN ISO 12947-3(1998年12月)によって要求される直径が38mmの円形状の織物基材サンプルをマルタンダール法の開始前に秤量する。摩耗試験の終了後、即ち、50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後、該サンプルを再度秤量し、2つの秤量値の差を質量損失として求める。次いで、サンプルを50,000回の摩耗サイクルを伴う摩耗試験に付す。この場合、円形サンプルは、摩耗試剤(例えば、標準的な織物等)に対して所定の荷重を加えた条件下において、ほぼリサジュー図形を描くように並進移動させる。使用する荷重は、795±7gの固定重量である。摩耗サイクルは、マルチンダール試験装置の2つの外接ギアの回転からもたらされる。使用される摩耗試剤は、DIN EN ISO 12947-1の表1による要求を満たす直径が少なくとも140mmの円形平坦状の羊毛織物である。
【0024】
(b)代替法においては、50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後のサンプルに破壊が観察される織物を使用するのが好ましい。(この破壊はDIN EN ISO 12947-2(1998年12月)に従って測定される)。織布の場合、2本の糸が完全に破壊するときに破壊が発生する。メリヤス生地の場合、1本の糸が破壊されて孔が発生するときに破壊が発生する。また、不織布の場合、摩耗によって形成される最初の孔の直径が少なくとも0.5mmになるときに破壊が発生する。
【0025】
(c)別の方法においては、50,000回のマルチンダール摩耗サイクル後のサンプルにピリング(pilling)が観察される織物を使用するのが好ましい。50,000回のマルチンダール摩耗サイクル後にピリングが発生するかどうかは、同じ織物基材と比較すれば、25,000回の摩耗サイクル後に観察することができる。25,000回の摩耗サイクルの場合に比較して、50,000回の摩耗サイクル後に明瞭な変化(例えば、表面上でのピルの発生)が肉眼で観察されるならば、織物基材は対応する基準を満たさず、本発明による織物基材としては好ましいものである。
【0026】
本発明において基材として使用するのに特に好ましいものは、上記の基準(a)および/または(b)を満たさない織布および上記の基準(c)を満たさない不織布である。
【0027】
三次元パターンを織物基材上へ適用すると、該織物基材の一つの表面の面積の少なくも15%は該三次元パターンによって被覆されるので、最終製品、即ち、織物製品の摩耗抵抗は織物基材の摩耗抵抗よりも高くなる。質量損失が織物基材の場合よりも小さくなるとき[上記の基準(a)参照]、織物基材とは異なって破壊が観察されないとき[上記の基準(b)参照]、または織物基材とは異なってピリングが観察されないとき[上記の基準(c)参照]、最終製品の摩耗抵抗は織物基材の摩耗抵抗よりも高くなる。
【0028】
三次元パターンによって被覆される織物基材の面積は、好ましくは25%、特に好ましくは25%〜50%、より好ましくは30%〜40%である。
【0029】
前述の種類の三次元パターンは織物基材から隆起している(即ち、該パターンは三次元の形態を有する)。このため、三次元パターンは単に印刷カラーパターンとして適当であるだけでなく、パターンの種類(例えば以下に説明するようなパターン)に応じて左右される一定の体積を有するパターンとしても適当である。さらに、全面被覆の場合にはパターンが認識できないので、このような態様は三次元パターンという用語には包含されない。従って、織物基材の被覆率が100%になることはない。
【0030】
三次元パターンは、同一もしくは異なる幾何学的形態を規則的もしくは不規則的に配置させたものにすることができる幾何学的形態は、織物基材面に平行な横断面を形成するような形態である。従って、例えば、ドット(dot)、三角形、正方形、長方形、ハート形、星形またはその他の幾何学的形態を適用することができる。さらに、三次元パターンは規則的な様式でデザイン化することができる。即ち、異種もしくは同種の幾何学的形態を織物基材上に規則的に(即ち、ラスター(raster)状に)適用する。しかしながら、同種もしくは異種の幾何学的形態の不規則な配置を採用してもよい。即ち、幾何学的形態を織物基材面にわたって不規則的に分布させることができる。例えば、異なる幾何学的形態の使用および/または不規則的配置によって、図柄および/または商標もしくは製造業者の標章が視識されるようにしてもよい。
【0031】
しかしながら、幾何学的形態はドットにするのが便宜である。この場合、適用するドットの直径は0.2mm〜10mm、好ましくは0.5mm〜5mm、特に好ましくは1mm〜2mmである。幾何学的形態および/またはドットの中心点の相互間の距離は1mm〜10mm、特に好ましくは2mm〜5mmである。さらに、2つのドット(ドットのエッジ)の間の距離は、ドットの直径の50%〜200%にするのが好ましく、特に50%〜90%にするのが好ましい。
【0032】
このような距離に起因して、特に効率的な態様によって達成されることは、三次元パターンによって織物基材が十分に保護されるために、摩耗抵抗が改良されることである。幾何学的形態の中心点間の距離および織物基材面に平行な該形態の横断面積に起因して、被覆率も決定される。
【0033】
しかしながら、三次元パターンは、同種もしくは異種の個々の独立した幾何学的形態に関連するだけでなく、連続的構造を有していてもよい。即ち、三次元パターンは、例えば、格子状の態様で織物基材上に適用してもよい。また、三次元パターンは、織物基材の縁部まで平行状もしくは横断状に延びるラインであってもよい。
【0034】
三次元パターンは、通常は、プラスチック材料、例えば、シリコーン、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、ビニルアセテートコポリマー、ビニルクロリドコポリマー、(メタ)アクリレートコポリマー[これらのコポリマーはコモノマーとしていずれのモノマーを含んでいてもよいが、好ましいモノマーはコポリマーの水溶性を高めるモノマー(例えば、ビニルアルコール)または架橋を受けやすいモノマーである。]、ポリウレタンおよびこれらの(コ)ポリマーの少なくとも2種を含む混合物から選択されるプラスチック材料から構成される。この場合、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートコポリマー、ポリウレタンおよびこれらの(コ)ポリマーの少なくとも2種を含む混合物が好ましい。使用する(コ)ポリマーは水に分散させるのが好ましい。この種の分散液は高粘性にするのが好ましく、また、該分散液中の好ましい固形分含有量は50重量%〜80重量%、特に65重量%〜75重量%である。
【0035】
ポリウレタン製の三次元パターンを製造するためには、適用後に乾燥されるポリウレタン分散液、特にアイオノマー性(アニオン性)ポリウレタンの水性分散液を使用する。この場合、「ポリウレタン」という用語には、ポリウレタンポリウレアも包含される。ポリウレタン(PUR)分散液の概説的文献としては次の文献が挙げられる:ロストハウザーおよびナハトカンプ、「水性ポリウレタン」、アドバンシズ・イン・ウレタン・サイエンス・アンド・テクノロジー、第10巻、第121頁〜第162頁(1987年)。適当な分散液は、例えば、次の文献に記載されている:クンストストッフハンドブーフ、第7巻、第2版、ハンザー、第24頁〜第26頁。
【0036】
本発明に従って使用される分散液および/またはペーストはチキソトロープ(thixotrope)であるのがさらに好ましい。使用される分散液および/またはペーストの粘度は一定の剪断歪の条件下では低下するが、試験時間中は増大する。
【0037】
分散液の静止粘度(剪断力を予め印加せずに測定した粘度)は、好ましくは120ポイズ〜300ポイズ、特に200ポイズ〜290ポイズである[ブルックフィールドに従って25℃で測定した粘度(2本のスピンドルを使用し、回転数は20/分とした。)]。
【0038】
本発明において使用するのに好ましい分散液は「トゥビコートAS60」および「トゥビコートAS65」[CHT R.バイトリッヒGmbH社(チュービンゲン)の製品]を含有する。
【0039】
使用する分散液の粘度を調整するためには、増粘剤を使用することができる。適当な増粘剤は、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ケイ酸、ベントナイト、カオリンおよび/またはアルギン酸等の増粘剤である。例えば、次の増粘剤を使用することができる:「トゥビコート・フェアディッカーDAE」[CHT R.バイトリッヒGmbH社(チュービンゲン)の製品]。
【0040】
さらに、通常は、分散液は顔料を含有する。本発明において使用される顔料は、次の文献に記載されている:「ウルマンズ・エンサイクロペディア・オブ・インダストリアル・ケミストリー、第5版、1992年、A20巻、第243頁〜第413頁。本発明において使用される顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれであってもよい。使用する顔料の耐光堅牢度は、好ましくは出来る限り高くすべきであって、以下に例示する顔料類の有する耐光堅牢度の範囲内にするのが好ましく、また、下記の顔料は本発明においては特に好ましいものである。
【0041】
ベザマAG社(モントリンゲン、スイス)製の「ベザプリント(Bezaprint)」、例えばベザプリント・ゲルプRP(イエロー)、ベザプリント・ゲルプ6G(イエロー)、ベザプリント・グリューンB(グリーン)、ベザプリント・ローザBW(ピンク)、ベザプリント・ブラウンTT(ブラウン)、ベザプリント・ブラウBT(ブルー)、ベザプリント・ブラウB2G(ブルー)、ベザプリント・シュヴァルツDW(ブラック)およびベザプリント・グリューンBT(グリーン)、サンケミカル社(バートホンネフ、ドイツ)の製品であるピグマテックス(PIGMATEX)・ゲルプ(イエロー)2GNA(60456)、ピグマテックス・ゲルプ(イエロー)K(60455)、ピグマテックス・フクシアBW(60416)、ピグマテックス・マリーネ(ネイビーブルー)RN(60434)、ピグマテックス・ブラウン(ブラウン)R(60446)およびピグマテックス・シュヴァルツ(ブラック)T(60402)、並びにEMB NR社(ブロンハイム、ベルギー)の製品であるオッカー(Ocker)(オーカー)E.M.B(商品番号3500)、ロート−ヴィオレット(Rot-Violett)(レッド−パープル)E.M.B.(商品番号4406)、ブラウン(Braun)(ブラウン)E.M.B.(商品番号5550)およびブラウ(ブルー)E.M.B.(商品番号6500)。
【0042】
耐光堅牢度の値は少なくとも6であることが好ましく、特に少なくとも7であることが好ましい[ブルーの尺度は1g/kgである;DIN 75 202参照)。顔料の使用量は所望の色の深さに左右され、特に限定的ではない。好ましくは、顔料の使用量は、分散液の全重量に基づいて10重量%までであり、特に好ましくは、0.1〜5重量%(イエローのような淡色の場合)または5〜10重量%(ブラックやブルーのような暗色の場合)である。
【0043】
分散液は、三次元パターンの硬度を高めるために架橋剤および/または固着剤をさらに含有していてもよい。本発明において使用するのに好ましい固着剤はアミノ樹脂またはフェノール樹脂である。適当なアミノ樹脂またはフェノール樹脂は周知の市販品であり、これらの製品に関しては次の文献を参照されたい:「ウルマンズ・エンツィクロペディー・デア・テヒニッシェン・ヘミー」、第7巻、第4版、1974年、第403頁〜第422頁;「ウルマンズ・エンサイクロペジア・オブ・インダストリアル・ケミストリー」、A19巻、第5版、1991年、第371頁〜第384頁。
【0044】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。この場合、20モル%のメラミンを当量の尿素で置換してもよい。メチロール化メラミン、例えば、ビー、トリーおよび/またはテトラメチロール化メラミン等が好ましい。
【0045】
一般に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は粉末形態または水性濃厚液(固形分:40〜70重量%)として使用に供される。例えば、トゥビコート・フィキシーラー(固着剤)HTまたはトゥビコート・フィキシーラー(固着剤)Rを使用してもよい[これらの製品は、CHT R.バイトリッヒGmbH社(チュービンゲン)の市販品である]。
【0046】
あるいは、固着剤は、所望によりブロック化されていてもよい脂肪族または芳香族イソシアネートおよびポリアジリジンであってもよい。
【0047】
固着剤の使用量は、好ましくは、分散液1000部あたり0〜60部である。
【0048】
さらに、分散液はアンモニアおよび難燃剤を含有していてもよい。適当な難燃剤としては次のものが例示される:三酸化アンチモンSb、水和アルミナAl・3HO、ホウ酸亜鉛Zn(BO・2HOもしくは2ZnO・(B・(HO)3,5、アンモニウムオルト−もしくはポリホスフェートNHPOまたは(NHPOおよびクロロパラフィン。
【0049】
特に好ましい化合物は、ホスホン酸エステル、特に(5−エチル−2−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルホスホネート−P−オキシドおよびビス(5−エチル−2−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルホスホネート−P,P’−ジオキシド、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロデカンおよびポリホスホネート、例えば、市販品「アピロール(Apirol)PP46」[CHT R.バイトリッヒGmbH社(チュービンゲン)の製品]等であり、これらの好ましい使用量は、全分散液1000部あたり150〜250部、特に好ましくは170〜190部である。
【0050】
本発明に使用する分散液は日光遮断剤(sun screen)を含有していてもよい。日光遮断剤、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートおよびメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、UV吸収剤並びにヒンダードフェノールを本発明において使用する組成物中に配合させてもよい。
【0051】
この配合成分は、三次元パターンが力の印加に起因して変形した後で復元するという利点に寄与する。この場合、力の印加とは、約350kg/m(好ましくは480kg/mまで)に相当する重量を意味し、このような力は、例えば、シート上に腰掛ける人の体重によってもたらされるか、または自動車のトランス内に置かれる荷物の重さによってもたらされる。
【0052】
織物基材上の三次元パターンの厚みは、好ましくは0.1mm〜5mmであり、特に好ましくは0.3mm〜3mmであり、最も好ましくは1mm〜2mmである。この厚みの上限(5mm)は、製造時の限界条件に起因するものであり、特に、以下に説明するような三次元パターンを適用するための回転スクリーン印刷法に使用されるステンシルの品質に起因する。この厚みは、先に言及したような三次元度および/または嵩度を規定する。
【0053】
三次元パターンを適用した後に50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後においては、本発明による織物製品の示す質量損失(DIN EN ISO 12947-3に従う織物サンプルあたりの値)は、好ましくは0.03g未満、特に好ましくは0.02g未満、最も好ましくは0.01g未満である。
【0054】
さらに、三次元パターンを適用した後に50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後のサンプルには破壊は観察されない。この破壊観察は、DIN EN ISO 12947-2(1998年12月)に従っておこなう。
【0055】
さらにまた、三次元パターンを適用した後に50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後のサンプルにはピリングは観察されない。
【0056】
50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後の本発明による織物製品の質量損失(DIN EN ISO 12947-3に従う織物サンプルあたりの値)は好ましくは0.03g未満、特に好ましくは0.02g未満、最も好ましくは0.01g未満である。さらに、本発明による織物製品は、DIN EN ISO 12947-2(1998年12月)に従って測定される破壊およびピリングを示さない。
【0057】
本発明の特に好ましい態様においては、(i)50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後に0.03gよりも多い質量損失および/または破壊および/またはピリングを示す織物基材および(ii)該織物基材上に適用されるポリウレタンおよび/またはポリビニルアセテート製の三次元パターンであって、該織物基材面の少なくとも30%を被覆する該三次元パターンを具有し、50,000回のマルチンダール摩耗サイクルに付した後に0.02g未満の質量損失を示すと共に、破壊とピリングを示さない織物製品が提供される。
【0058】
本発明による織物製品は、下記の工程(a)および(b)を含む方法によって製造することができる:
(a)前述のような一定の摩耗抵抗を有する織物基材ウェブを供給し、次いで
(b)該ウェブ面の少なくとも15%が被覆されるように該織物基材ウェブ上へ三次元パターンを適用することによって、織物製品の摩耗抵抗を織物基材ウェブの摩耗抵抗よりも高くする。
【0059】
換言すれば、ウェブ形態を有すると共に、前述のように、マルチンダール法に従って確認することができる一定の摩耗抵抗を有する織物基材が供給され、次いで、三次元パターンを該ウェブ上へ適用することによって、該織物基材ウェブの少なくとも15%を該三次元パターンによって被覆させる。この場合の被覆率は、好ましくは25%であり、最も好ましくは30〜40%である。三次元パターンの特に好ましい態様については先に説明した。
【0060】
三次元パターンを適用するためには、回転スクリーン印刷機の利用を含むスクリーン印刷法を使用することができる。この場合、被塗布マスは、スキージー(好ましくは密閉スキージー)を使用することによって、該三次元パターンに対応するパターンを有するステンシルを通して織物基材上へ移行させる。塗布工程は、「ストーク回転スクリーン塗布UNIT CET」[ストーク・ブラバントB.V.社(ボクスメール、オランダ)製]を使用しておこなうのが好ましい。回転スクリーン印刷法に使用するステンシルはクロム−ニッケル製ステンシルであってもよいが、プラスチック製ステンシルが好ましく、特にポリアミド製またはポリエステル製のステンシルが好ましい。この種のタイプのプラスチック製ステンシルは、より容易かつ正確に製造できるので好ましい。
【0061】
三次元パターンは、ポリウレタンおよび/またはポリビニルアセテート(および/またはビニルアセテートコポリマー)のマスを塗布することによって適用するのが有利である。この場合、この種のマスは易流動性であって、チキソトロープ特性を有するのが好ましい。スキージー圧(使用圧力によって決定される圧力であって、好ましくは0.5〜5.7bar、特に好ましくは約2.5barである。)、スキージーの位置および回転速度は、ペーストが易流動性になるように調整される。
【0062】
ステンシルは、所望の三次元パターンに対応するようにデザイン化される。即ち、例えば、0.5mm〜5mmの同一および/または異なる直径を有する孔から構成される孔(hole)状パターンが所望の場合には、ステンシルは0.5mm〜5mmのサイズの孔を有するようにする。このようなステンシルを使用する場合には、三次元パターンは、同一および/または異なる直径を有するドット状パターンとして塗布される。この場合、塗布後のドットはマスの粘度に応じて幾分拡がる結果として、ドットの厚みは幾分低下すると共に、ドットの直径は幾分大きくなることがある。
【0063】
マス(即ち、三次元パターン)の塗布後、基材ウェブは80℃〜180℃の温度で乾燥させる。その他の加工過程には、約140℃〜190℃の幅出機を用いる基材ウェブの付加的な幅出し処理並びに織物基材ウェブのサイズを最終サイズに調整するための裁断処理および/または延伸処理が含まれる。このようにして得られる最終製品(即ち、織物製品)は、織物製品に関連して先に説明したような特性を示す。即ち、織物基材の初期の摩耗抵抗よりも高い摩耗抵抗が達成される。
【0064】
この結果、このような織物製品は、自動車の内装用ライニング(lining)もしくはシートカバーの分野、特に、摩耗抵抗に関連して高い要求が求められている分野において使用することができ、これによって、製造が容易で比較的好適な基材原料の利用が可能となる。この種の基材原料の摩耗抵抗は、三次元パターンの適用によって、上記分野において求められている高い要求を満たす織物製品が製造される程度まで改良される。このような織物製品は、例えば、木材製または合成物質製の支持体上に積層させてもよく、あるいは、トランク内においてクッションとして使用してもよく、また、シートカバーとして使用される発泡剤や不織布に積層させてもよい。
【0065】
本発明の好ましい態様を、添付図に基づいて説明する。
図1は、均一な点状パターンを有する織物製品の平面図である。
図2は、織物基材ウェブを横断する連続パターンを有する織物製品の平面図である。
図3は、面積の異なる異種の幾何学的形態を有する不均一パターンを具有する織物製品の平面図である。
図4は、図1に示す織物製品の側面図である。
図5は、回転スクリーン印刷法によって、三次元パターンを織物基材上へ適用する状態を示す模式図である。
【0066】
図1〜図3に示す織物製品は、三次元パターンが塗布された織物基材である。この場合、図1は、織物基材1上に塗布された点状隆起2の均一な配置を示す。ドット2および/または隆起の間の距離は、織物基材面にわたって均一に設定されているので、該織物基材面の少なくとも30%はこれらのパターンによって被覆される。
【0067】
一方、図2は、織物基材1の端部間を横断して延びるストリップ形態の三次元パターン2を示す。従って、該パターンは連続的パターンである。これらのストリップは、織物基材1を横切る態様で他の方向に向かって延びる。この場合、該ストリップは斜方向に延びてもよい。さらに、格子状のパターンを使用してもよい。
【0068】
図3に示すように、三次元パターンは異種の幾何学的形態から構成されていてもよい。例えば、大きな直径を有するドットと小さな直径を有するドットを組合せてもよく、あるいは、異種の幾何学的形態を相互に組合せてもよい。この場合、幾何学的形態を組合せることによって、例えば、特定の会社の商標またはロゴタイプ(logotype)が形成されるようにしてもよい。例えば、点状隆起2aを、より小さなサイズを有する正方形2bと組合せることによって、より大きなサイズを有するドット2aの配置自体を正方形2bの配置と区別させて「V」字状のマークを現出させてもよい。
【0069】
図4は、図1に示す三次元パターンを有する織物基材1の側面図である。この場合、該パターンは織物基材上に単に適用されているだけでなく、実際上は、先に説明したような三次元パターンとして存在する。また、この場合においては、ペーストは織物基材の表面下まで部分的に浸透することができる。
【0070】
前述のように、本発明による三次元パターンは、回転スクリーン印刷法を用いて適用される。この場合、易流動性でチキソトロープ性のマス3は、予め設定された孔状パターンを具有する円筒状ステンシル(5)を用いて織物基材上へ塗布される。このステンシルは、適用されるべき三次元パターンに対応するパターンを具有する。堅固に固定されたスキージー4は、回転する円筒状ステンシル5を通してマス3を通過させる。
【0071】
さらに、図5に示すように、パターンが付与されるべき織物基材1の表面は、ステンシルの円形断面に対する接線方向において、織物基材ウェブ形態で移動する。マスはチキソトロープ性を有しているのが好ましく、該マスはスキージーによる加圧条件下において易流動性を示すようになるために、ステンシルのパターンの開口部を通して織物基材ウェブの表面へ塗布される。マスが織物基材ウェブ1の表面上へ塗布されると(即ち、スキージーによる圧力が存在しなくなると)、マスの粘度は復元するので、三次元パターン2の流延もしくは拡がりはほとんど防止される。
【0072】
三次元パターンが織物基材ウェブ上に塗布されると、該織物基材ウェブは乾燥装置内へ移動し、該装置内において80℃〜180℃の温度で乾燥される。織物基材ウェブのさらなる乾燥は、該ウェブを幅出機上において約150℃〜190℃の温度での延伸処理に付すことによっておこなわれる。最後に、乾燥された織物基材ウェブを最終的なサイズに裁断することによって、改良された摩耗抵抗を有する織物製品が得られる。
【0073】
さらに、本発明は、摩耗抵抗は三次元パターンによって必ずしも改良されないが、織布、たて編生地、よこ編生地、不織布もしくはラッシェル反物と三次元パターンとの間に介在させるポリウレタン被覆物(好ましくは、前述のような安定なポリウレタンフォーム被覆物)に起因する有利な製品特性(例えば、良好な触感と外観等)を具有する製品を提供する。
【実施例】
【0074】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。
ラントール(Lantor)不織布385137製織物基材(基本重量:150g/m)にポリウレタン発泡体(3.2mm)を積層した基材を使用したが、該基材の摩耗抵抗は低かった。マルチンダール(DIN EN ISO12947-1および3)によれば、50,000回の摩耗サイクル後の質量損失は0.013gであり、また、強度のピリングが観察された。
【0075】
下記の配合処方によって調製したポリウレタンペーストを織物基材上へ点状パターンとして塗布した。
配合成分 配合量(部)
トゥビコートAS60(1) 950
トゥビコート・フィクシーラーR(固着剤)(1) 50
ベザプリント・シュヴァルツDW(ブラック)(2) 40
(1)CHT社(チュービンゲン)の製品
(2)ベゼマ社(モントリンゲン)の製品
【0076】
ストーク回転スクリーンコーティングUNIT CFTを用いる密閉スキージーを使用することによって、上記ペーストを3種類の三次元パターン様式A〜Cに従って織物基材上へ塗布した。これらのパターンの塗布態様を以下の表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
パターンの塗布後、乾燥処理を乾燥機内において、80℃〜110℃の温度でおこなった。縮合処理は、幅出機を用いて180℃でおこない、製品の幅を最終的なサイズに調整した。
【0079】
次いで、形成されたパターンをマルチンダール試験に付した。50,000回のマルタンダール摩耗サイクルに付したところ、いずれのパターンも質量損失を示さなかった。パターンAの場合とは異なり、パターンBおよびCにおいては、ピリングは観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】均一な点状パターンを有する織物製品の平面図である。
【図2】織物基材ウェブを横断する連続パターンを有する織物製品の平面図である。
【図3】面積の異なる異種の幾何学的形態を有する不均一パターンを具有する織物製品の平面図である。
【図4】図1に示す織物製品の側面図である。
【図5】回転スクリーン印刷法によって、三次元パターンを織物基材上へ適用する状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0081】
1 織物基材
2 三次元パターン
3 マス
4 スキージー
5 ステンシル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)一定の摩耗抵抗を有する織物基材および(ii)該織物基材上に適用された三次元パターンを含有する織物製品であって、該三次元パターンが該織物基材の面積の少なくとも15%を被覆することに起因して該織物製品の摩耗抵抗が該織物基材の摩耗抵抗よりも高い該織物製品。
【請求項2】
三次元パターンが織物基材の面積の25%〜50%を被覆する請求項1記載の織物製品。
【請求項3】
三次元パターンがポリウレタン、ポリビニルアセテートおよび/またはビニルアセテートコポリマーから成る請求項1または2記載の織物製品。
【請求項4】
50,000回のマルチンダーレ摩耗サイクル後の摩耗試験における織物基材の質量損失が0.03gよりも多く、織物製品の対応する質量損失が該織物基材の質量損失よりも少ない請求項1から3いずれかに記載の織物製品。
【請求項5】
織物製品の対応する質量損失が0.02g未満である請求項4記載の織物製品。
【請求項6】
50,000回のマルチンダーレ摩耗サイクル(DIN EN ISO 12947-2)後の摩耗試験において、織物基材が破壊を示す請求項1から5いずれかに記載の織物製品。
【請求項7】
50,000回のマルチンダーレ摩耗サイクル(DIN EN ISO 12947-2)後の摩耗試験において、織物製品が破壊を示さない請求項6記載の織物製品。
【請求項8】
50,000回のマルチンダーレ摩耗サイクル後の摩耗試験において、織物基材がピリングを示す請求項1から7いずれかに記載の織物製品。
【請求項9】
50,000回のマルチンダーレ摩耗サイクル後の摩耗試験において、織物製品がピリングを示さない請求項8記載の織物製品。
【請求項10】
三次元パターンが、0.1mm〜5mm(好ましくは0.3mm〜3mmであり、最も好ましくは1mm〜2mm)の厚みを有する請求項1から9いずれかに記載の織物製品。
【請求項11】
三次元パターンが、同種もしくは異種の幾何学的形態の均一的もしくは不均一的配置を有する請求項1から10いずれかに記載の織物製品。
【請求項12】
幾何学的形態が、同一もしくは異なる直径(0.2mm〜10.0mm)を有するドットである請求項11記載の織物製品。
【請求項13】
幾何学的形態の中心点の相互間の距離が2mm〜5mmである請求項11または12記載の織物製品。
【請求項14】
2つのドット(ドットの縁)の間の距離が、ドットの直径の50%〜200%になる請求項11から13いずれかに記載の織物製品。
【請求項15】
三次元パターンが連続的構造を有する請求項1から10いずれかに記載の織物製品。
【請求項16】
三次元パターンが、450kg/mまでの力の印加に起因して変形した後で、元の状態に復帰して再生される請求項1から15いずれかに記載の織物製品。
【請求項17】
織物基材が50g/m〜500g/m(好ましくは100g/m〜450g/m)の基本重量を有する請求項1から16いずれかに記載の織物製品。
【請求項18】
織物基材が織布、たて編生地、よこ編生地、不織反物またはラッシェル反物である請求項1から17いずれかに記載の織物製品。
【請求項19】
織物基材が平坦である請求項18記載の織物製品。
【請求項20】
織物基材がポリマー被覆層を有する織布、たて編生地、よこ編生地、不織布またはラッシュル反物である請求項1から17いずれかに記載の織物製品。
【請求項21】
ポリマー被覆層が、ポリウレタンに基づく被覆層である請求項20記載の織物製品。
【請求項22】
下記の工程(i)および(ii)を含む、改良された摩耗抵抗を有する織物製品の製造方法:
(i)一定の摩耗抵抗を有する織物基材ウェブを供給し、次いで
(ii)三次元パターンを該織物基材ウェブ上に、該織物基材ウェブの面積の少なくとも15%が該三次元パターンによって被覆されるようにして適用することによって、該織物製品の摩耗抵抗を該織物基材ウェブの摩耗抵抗よりも増加させる。
【請求項23】
織物基材ウェブの面積の少なくとも25%〜50%が三次元パターンによって被覆される請求項22記載の方法。
【請求項24】
三次元パターンを、ポリウレタン、ポリビニルアセテートおよび/またはビニルアセテートコポリマーのマスの塗布によって適用する請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
マスが易流動性のあるキキソトロープ性を有する請求項24記載の方法。
【請求項26】
三次元パターンを、プラスチック製ステンシルを用いて適用する請求項22から25いずれかに記載の方法。
【請求項27】
ステンシルが、0.5mm〜5mmの同一または異なる直径と0.5mm〜5mmの高さを有する孔から構成される孔状パターンを有する請求項26記載の方法。
【請求項28】
ステンシルがポリアミドまたはポリエステルから成る請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
マスが120〜300ポイズの静止粘度を有する請求項24から28いずれかに記載の方法。
【請求項30】
マスが65%〜75%の固形分を含有する請求項24から29記載の方法。
【請求項31】
三次元パターンが付与された織物基材ウェブを80℃〜180℃の温度で乾燥させる工程をさらに含む請求項22から30いずれかに記載の方法。
【請求項32】
織物基材ウェブを幅出機上において140℃〜190℃で幅出しする工程および織物基材ウェブをその最終サイズに裁断する工程をさらに含む請求項22から31いずれかに記載の方法。
【請求項33】
自動車の車内もしくはトランク内あるいはシートカバー、特にシートの中間ウェブもしくはシートの側面材としての請求項1から20いずれかに記載の織物製品の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−511734(P2006−511734A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502439(P2005−502439)
【出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014242
【国際公開番号】WO2004/055262
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(504003282)ヴィクトール・アッハター・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】VIKTOR ACHTER GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】