説明

改良された液相アルキル化方法

【課題】モノアルキル化芳香族化合物を高選択率で製造する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明はアルキル化可能な芳香族化合物を有効なアルキル化条件下で触媒組成物の存在下でアルキル化剤と接触させる工程を含むモノアルキル化芳香族化合物の製造方法を提供し、前記触媒組成物は触媒組成物中の結晶/バインダー質量比が20/80以上から約80/20 までであるように、種添加合成方法により生成されたMCM-56結晶及びバインダーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2011年9月16日に出願された、米国仮特許出願第61/535,632号、及び2011年11月10日に出願された欧州特許出願第11188529.9号、及び2012年8月16日に出願された、国際特許出願PCT/US2012/51181、及び2012年8月24日に出願された国際特許出願PCT/US2012/52334(これらの開示が参考として本明細書に完全に含まれる)の優先権及び利益を主張する。
本発明はアルキル芳香族化合物、例えば、エチルベンゼン、クメン及びsec-ブチルベンゼンの改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
改良された本方法により有利に製造されるアルキル芳香族化合物のうち、例えば、エチルベンゼン及びクメンはスチレンモノマーの製造並びにフェノール及びアセトンの夫々の同時製造に工業上使用される有益な商品化学薬品である。実際に、フェノールの製造に普通の経路はクメンを生成するためのプロピレンによるベンゼンのアルキル化、続いて相当するヒドロペルオキシドへのクメンの酸化、次いで等モル量のフェノール及びアセトンを生成するためのヒドロペルオキシドの開裂を伴なう方法を含む。エチルベンゼンは幾つかの異なる化学方法により製造されてもよい。有意な程度の商業上の成功を獲得した一つの方法は固体の、酸性ZSM-5 ゼオライト触媒の存在下のエチレンによるベンゼンの気相アルキル化である。このようなエチルベンゼン製造方法の例が米国特許第3,751,504 号(Keown)、同第4,547,605 号(Kresge)及び同第4,016,218 号(Haag)に記載されている。
有意な商業上の成功を獲得した別の方法はエチルベンゼンをベンゼン及びエチレンから製造するための液相方法である。何とならば、それが気相相当方法よりも低い温度で作業し、それ故、一層低い収率の副生物を生じる傾向があるからである。例えば、米国特許第4,891,458 号(Innes)はゼオライトベータによるエチルベンゼンの液相合成を記載しており、一方、米国特許第5,334,795 号(Chu)はエチルベンゼンの液相合成におけるMCM-22の使用を記載している。後者の特許は約1/99から約90/10 までの結晶/バインダーの比のMCM-22結晶性物質及びバインダーを含む触媒の使用を教示している。
【0003】
クメンは長年にわたってフリーデル-クラフト触媒、特に固体リン酸又は塩化アルミニウム上のプロピレンによるベンゼンの液相アルキル化により商業上製造されていた。しかしながら、最近、ゼオライトをベースとする触媒系がクメンへのベンゼンのプロピル化に一層活性かつ選択的であることがわかった。例えば、米国特許第4,992,606 号(Kushnerick)はプロピレンによるベンゼンの液相アルキル化におけるMCM-22の使用を記載している。
その他の刊行物が少なくとも部分液相変換条件下のアルキル化可能な芳香族化合物及びアルキル化剤を含む供給原料からアルキル芳香族変換生成物への変換のための結晶性ゼオライト及びバインダーを含む触媒の使用を示している。これらとして、65/35 及び100/0 の触媒結晶/バインダー比の使用を示す米国特許第2005/0197517A1号(Cheng)、選択率についてのバインダーの認められる負の効果を注目しつつの100/0 の触媒結晶/バインダー比の使用を示す米国特許第2002/0137977A1号(Hendriksen)、メソポーラス担体中に埋め込まれた微孔性ゼオライトを含む触媒の使用(この場合、ゼオライト/担体比が1/99未満から99/1以上まで、好ましくは3/97から90/10 までである)を示す米国特許第2004/0138051A1(Shan)、20/80 〜95/5、例えば、55/45 の触媒結晶/バインダー比の使用を教示するWO 2006/002805 (Spano) 、70/30 及び83/17 の層状触媒結晶/バインダーの使用を示す米国特許第6,376,730 号(Jan)、50/50 から95/5まで、好ましくは70/30 から90/10 までの触媒結晶/バインダー比の使用を示すEP 0847802B1、並びに30〜70質量%のH-ベータゼオライト、0.5 〜10質量%のハロゲン、及び残部のアルミナバインダーを含む触媒の使用を示す米国特許第5,600,050 号(Huang)が挙げられる。
【0004】
アルキル芳香族化合物、例えば、エチルベンゼン及びクメンを製造するための既存のアルキル化方法は、本来ポリアルキル化種だけでなく、所望のモノアルキル化生成物を製造する。それ故、ポリアルキル化種をアルキル化反応器に循環することにより、又は更に頻繁に、ポリアルキル化種を別々のトランスアルキル化反応器に供給することにより、ポリアルキル化種を付加的な芳香族供給原料、例えば、ベンゼンでトランスアルキル化して付加的なモノアルキル化生成物、例えば、エチルベンゼン又はクメンを製造することが通常である。芳香族種のアルキル化、例えば、エチレン又はプロピレンによるベンゼンのアルキル化、及びポリアルキル化種、例えば、ポリエチルベンゼン及びポリイソプロピルベンゼンのトランスアルキル化に使用されていた触媒の例が、米国特許第5,557,024 号(Cheng)にリストされており、MCM-49、MCM-22、PSH-3 、SSZ-25、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトベータ、酸脱アルミニウム化モルデナイト及びTEA-モルデナイトを含む。TEA-モルデナイトの小結晶(<0.5μm(ミクロン))形態によるトランスアルキル化がまた米国特許第6,984,764 号に開示されている。
アルキル化工程が液相中で行なわれる場合、トランスアルキル化工程を液相条件下で行なうことがまた望ましい。しかしながら、比較的低い温度で作業することにより、液相方法は、特に嵩高のポリアルキル化種が望ましくない副生物を生成しないで付加的なモノアルキル化生成物に変換される必要があるトランスアルキル化工程では、触媒に増大された要件を課する。これは既存の触媒が所望の活性を欠き、又はかなりの量の副生物、例えば、エチルベンゼン及びn-プロピルベンゼンの生成をもたらしていたクメン製造の場合に重大な問題であると判明した。
【0005】
少なくとも部分液相変換条件下のアルキル芳香族変換生成物へのアルキル化可能な芳香族化合物及びアルキル化剤を含む供給原料の変換のための触媒は1/99、例えば、5/95から100/0 までの結晶/バインダーの比の多孔性結晶性アルミノシリケート及びバインダーを含むことが当業界で示唆されているが、この方法のための現在の商用触媒、即ち、商業上有益であるとわかった触媒は65/35 又は80/20 の結晶/バインダーの比の多孔性結晶性アルミノシリケート及びバインダーを含む。モノ選択性を増大し、即ち、ジ-又はポリアルキル生成物製造を低下する少なくとも部分液相変換条件下で行なわれるこのような方法のための商業上許される触媒を見い出すことは、既存のプラントで生産能力拡大を可能にし、一層低い芳香族化合物/アルキル化剤の比の結果としてグラスルーツプラントについての投資費用を低下するであろう。
Clarkらの米国特許出願公開第2011/0178353号は約20/80 から約60/40 までの結晶/バインダーの比の多孔性結晶性物質、例えば、結晶性アルミノシリケート(“結晶”)及びバインダーを含む特定の触媒の存在下で行なわれるアルキル芳香族化合物を製造するための液相又は部分液相アルキル化方法を開示しており、これは活性及び、重要なことには、モノ選択性の特異な組み合わせを生じる。開示された好適な触媒はMCM-22ファミリー物質を含む。
MCM-22ファミリーモレキュラーシーブは種々の炭化水素変換方法に有益であるとわかった。MCM-22ファミリーモレキュラーシーブの例はMCM-22、MCM-49、MCM-56、ITQ-1、ITQ-2、PSH-3、SSZ-25、ERB-1、UZM-8 、及びUZM-8HS である。特に、MCM-56は三次元の規則的なゼオライトではなく、層状酸化物物質であり、この場合、MCM-56中の夫々の層が多孔性であり、MCM-22及びその他のMCM-22ファミリー物質のフレームワーク構造に密接に関連するフレームワーク構造を有する。
2011年9月12日に出願され、本明細書にそのまま含まれる、Johnsonらの米国仮特許出願第61/535,632 号は、MCM-56種結晶を初期の反応混合物に混入することによる高品質多孔性種添加結晶性MCM-56物質の改良された製造方法を開示している。それはまたその改良された方法により製造された種添加MCM-56物質、これらを含む触媒組成物及び炭化水素化合物の接触変換方法におけるこれらの使用に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、約20/80 以上から約80/20 まで、好ましくは約40/60 から約60/40 までの結晶/バインダー質量比のバインダーと組み合わせての種添加MCM-56結晶性アルミノシリケートが、アルキル芳香族化合物を製造するための液相又は部分液相アルキル化方法において活性及び、重要なことには、モノ選択性の特異な組み合わせを生じることが今予期されずにわかった。
本発明によれば、約20/80 から約60/40 までの結晶/バインダーの比の多孔性結晶性物質、例えば、結晶性アルミノシリケート、及びバインダーを含む特定触媒の存在下の少なくとも部分液相変換条件下の所望のアルキル芳香族変換生成物へのアルキル化可能な芳香族化合物及びアルキル化剤を含む供給原料の改良された変換方法が提供される。本発明の一局面によれば、アルキル化可能な芳香族化合物を少なくとも部分液相条件下で触媒組成物の存在下でアルキル化剤と接触させる工程を含む所望のモノアルキル化芳香族化合物の選択的製造方法が提供され、前記触媒組成物が約20/80 から約60/40 までの結晶/バインダー質量比の多孔性結晶性物質、例えば、結晶性アルミノシリケート、及びバインダーを含む。本発明の別の局面はベンゼンをアルキル化条件下でアルキル化触媒(これは約20/80 から約60/40 までの結晶/バインダーの比の多孔性結晶性物質、例えば、結晶性アルミノシリケート、及びバインダーを含む)の存在下でアルキル化剤と反応させる工程を含むモノアルキルベンゼンの選択的製造のための改良されたアルキル化方法である。
本方法における使用のための触媒は、例えば、ゼオライトベータの構造を有する結晶性モレキュラーシーブ、又は12.4±0.25Å、6.9±0.15Å、3.57±0.07Å及び3.42±0.07Åにd間隔最大を含むX線回折パターンを有するものを含んでもよい。更に特別には、本明細書中の使用のための触媒はベータの構造を有する結晶性モレキュラーシーブ、MCM-22ファミリー物質、例えば、MCM-22、又はこれらの混合物を含んでもよい。
【0007】
別の局面において、本発明はベンゼンを含む供給原料を少なくとも部分液相変換条件下で約20/80 以上から約60/40 までの結晶/バインダーの比を有する種添加MCM-56結晶/バインダー組成物の存在下でエチレンと接触させることを含むエチルベンゼンへのベンゼンの選択的変換方法に関する。
別の局面において、本発明はa)アルカリ金属又はアルカリ土類金属(M)カチオン、3価の元素Xの酸化物、4価の元素Yの酸化物の源、及び水を含む第一反応混合物(前記第一反応混合物は下記の範囲:YO2/X2O3=5〜35;H2O/YO2=10〜70;OH-/YO2=0.05〜0.20;M/YO2=0.05〜3.0内の酸化物のモル比に関する組成を有し、前記第一反応混合物は更に前記第一反応混合物の質量を基準として、0.05質量%以上から5質量%以下までの量のゼオライト種結晶を含む)を調製し、b)誘導剤Rを工程a)の反応混合物に添加して第二反応混合物(下記の範囲:R/YO2=0.08〜0.3内のモル比に関して前記誘導剤Rを有する)を生成し、c)工程b)の前記第二反応混合物を約90℃から約175 ℃までの温度及び90時間未満にわたる時間の条件下で結晶化してX線回折により同定して、種添加MCM-56物質の結晶及び前記第二反応混合物中の前記MCM-56結晶の合計質量を基準として10質量%未満の非MCM-56不純物結晶を含む得られる混合物を生成し、そしてd)前記種添加MCM-56物質の前記結晶の少なくとも一部を工程c)の前記得られる混合物から分離し、回収する工程を含む合成多孔性結晶性MCM-56物質を製造し(前記種添加MCM-56物質の前記結晶は下記の表1に示されたX線回折パターンを有する)、
【0008】
【表1】

【0009】
前記種添加MCM-56結晶を約20/80 以上から約80/20 までの結晶/バインダー質量比でバインダーと合わせて触媒組成物を生成し、ベンゼンとともにエチレンを含む供給原料を少なくとも部分液相中で接触アルキル化条件(約0℃から約500 ℃までの温度、約20kPa-aから約25000kPa-aまでの圧力、約0.1:1から約50:1までのベンゼン対エチレンのモル比、及びエチレンを基準として約0.1hr-1から約500hr-1までの毎時の供給質量空間速度(WHSV)を含む)下で、前記触媒組成物と接触させることを含む、ベンゼンをエチレンで選択的にアルキル化してエチルベンゼンを生成する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】種無添加MCM-56、ex-situ 種添加MCM-56及びin-situ 種添加MCM-56についての、ジイソプロピルベンゼン/イソプロピルベンゼン選択率(縦軸)対バーサル300 アルミナで結合された1/20” クァドルローブ押出物中のMCM-56の%(横軸)のプロットを示す。
【図2】種無添加MCM-56、ex-situ 種添加MCM-56及びin-situ 種添加MCM-56についての、トリイソプロピルベンゼン/イソプロピルベンゼン選択率(縦軸)対バーサル300 アルミナで結合された1/20” クァドルローブ押出物中のMCM-56の%(横軸)のプロットを示す。
【図3】種無添加MCM-56、ex-situ 種添加MCM-56及びin-situ 種添加MCM-56についての、活性(二次速度定数k2x1000)(縦軸)対バーサル300 アルミナで結合された1/20” クァドルローブ押出物中のMCM-56の%(横軸)のプロットを示す。
【図4】種無添加MCM-56、ex-situ 種添加MCM-56及びin-situ 種添加MCM-56についての、ジイソプロピルベンゼン/トリイソプロピルベンゼン選択率(縦軸)対バーサル300 アルミナで結合された1/20” クァドルローブ押出物中のMCM-56の%(横軸)のプロットを示す。
【図5】例16.1-16.5の方法についてのジエチルベンゼン/エチルベンゼン選択率(縦軸)対エチレン転化率(横軸)のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明はアルキル化可能な芳香族化合物、特にベンゼンの液相又は部分液相アルキル化による、モノアルキル化芳香族化合物、特にエチルベンゼン、クメン及びsec-ブチルベンゼンの改良された製造方法に関する。更に特別には、本発明は約20/80から約80/20 まで、又は約20/80 以上から約60/40 まで、好ましくは約20/80 以上から約40/60 まで、もしくは更に好ましくは約40/60 から約60/40 までの結晶/バインダー質量比の多孔性結晶性物質、例えば、結晶性アルミノシリケート、及びバインダーを含む触媒組成物を使用する。
本発明における使用に必要とされる触媒の製造方法は約20/80 から約60/40 までの結晶/バインダー比を含むように最終触媒の、例えば、配合又は押出を調節することのみにより変性された、以下にリストされ、参考として本明細書に含まれる刊行物に教示された方法を含む。これは触媒製造分野の当業者の能力の範囲内にある。例えば、米国特許第4,954,325 号が結晶性MCM-22及びこれを含む触媒を記載しており、米国特許第5,236,575 号が結晶性MCM-49及びこれを含む触媒を記載しており、また米国特許第5,362,697 号及び同第5,557,024 号が結晶性MCM-56及びこれを含む触媒を記載している。特別な結晶性物質をバインダーと配合又は押出して本明細書における使用に必要とされる触媒を生成する際に、最終触媒生成物が約20/80 から約60/40 まで又は約20/80 以上から約80/20 まで、好ましくは約40/80から約80/20 まで、もしくは更に好ましくは約40/60 から約60/40 までの結晶/バインダー比を含むように注意が払われる。
【0012】
本明細書に使用される“ex-situ 種添加”という用語はゼオライト種がそれらの合成されたままの状態で反応器に添加される、ゼオライト種をゼオライト合成反応器に導入するための方法を表す。
本明細書に使用される“in-situ 種添加”という用語は残留ゼオライト種がそれらの合成されたままの状態で先のゼオライト結晶化から反応器中に留まる、ゼオライト種をゼオライト合成反応器に導入するための方法を表す。
本明細書中の供給原料として有益であり得るアルキル化可能な芳香族化合物についての言及中の“芳香族”という用語はそれの当業界で認められる範囲に従って理解されるべきである。これはアルキル置換及び未置換単核化合物及び多核化合物を含む。ヘテロ原子を有する芳香族特性の化合物がまた有益であるが、但し、それらが選ばれた反応条件下で触媒毒として作用しないことを条件とする。
本明細書でアルキル化し得る置換芳香族化合物は芳香族核に直接結合された少なくとも1個の水素原子を有する必要がある。芳香族環は1個以上のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキル基、ハライド基、及び/又はアルキル化反応を妨害しないその他の基で置換し得る。
好適な芳香族化合物として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペリレン、コロネン、及びフェナントレンが挙げられ、ベンゼンが好ましい。
一般に、芳香族化合物に置換基として存在し得るアルキル基は1個から約22個までの炭素原子、通常約1個から8個までの炭素原子、最も通常約1個から4個までの炭素原子を含む。
【0013】
好適なアルキル置換芳香族化合物として、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン、n-プロピルベンゼン、アルファ-メチルナフタレン、エチルベンゼン、メシチレン、ジュレン、シメン、ブチルベンゼン、シュードクメン、o-ジエチルベンゼン、m-ジエチルベンゼン、p-ジエチルベンゼン、イソアミルベンゼン、イソヘキシルベンゼン、ペンタエチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラエチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4-トリエチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、m-ブチルトルエン、p-ブチルトルエン、3,5-ジエチルトルエン、o-エチルトルエン、p-エチルトルエン、m-プロピルトルエン、4-エチル-m-キシレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、2,3-ジメチルアントラセン、9-エチルアントラセン、2-メチルアントラセン、o-メチルアントラセン、9,10-ジメチルフェナントレン、及び3-メチル-フェナントレンが挙げられる。高分子量アルキル芳香族化合物がまた出発物質として使用でき、オレフィンオリゴマーによる芳香族有機化合物のアルキル化により生成されるような芳香族有機化合物を含む。このような生成物が当業界でアルキレートと頻繁に称され、ヘキシルベンゼン、ノニルベンゼン、ドデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキシルトルエン、ノニルトルエン、ドデシルトルエン、ペンタデシルトルエン等を含む。非常にしばしば、アルキレートが高沸点留分(その芳香族核に結合されたアルキル基が約C6から約C12までサイズを変化する)として得られる。クメン又はエチルベンゼンが所望の生成物である場合、本方法は許容し得る程少ないキシレンの如き副生物を生成する。このような場合につくられるキシレンは約500ppm未満であるかもしれない。
ベンゼン、トルエン及び/又はキシレンの混合物を含むリフォーメートが本発明のアルキル化方法に特に有益な供給原料を構成する。
本発明の方法に有益であり得るアルキル化剤として、一般にアルキル化可能な芳香族化合物と反応し得る1個以上の利用できるアルキル化脂肪族基を有するあらゆる脂肪族又は芳香族有機化合物が挙げられ、好ましくはアルキル化基が1個から5個までの炭素原子を有する。好適なアルキル化剤の例はオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、及びペンテン;アルコール(モノアルコール、ジアルコール、トリアルコール等を含む)、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、及びペンタノール;アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及びn-バレルアルデヒド;並びにアルキルハライド、例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、及び塩化ペンチル等である。
【0014】
ライトオレフィンの混合物が本発明のアルキル化方法におけるアルキル化剤として有益である。それ故、種々の製油所流の主要成分であるエチレン、プロピレン、ブテン、及び/又はペンテンの混合物、例えば、燃料ガス、エチレン、プロピレン等を含むガスプラントオフガス、ライトオレフィンを含むナフサクラッカーオフガス、製油所FCC プロパン/プロピレン流等が、本明細書の有益なアルキル化剤である。例えば、典型的なFCC ライトオレフィン流は下記の表3A中の下記の組成を有する。
表3A
【0015】
【表2】

【0016】
本発明の方法から得られてもよい反応生成物として、ベンゼンとエチレンの反応からのエチルベンゼン、ベンゼンとプロピレンの反応からのクメン、トルエンとエチレンの反応からのエチルトルエン、トルエンとプロピレンの反応からのシメン、及びベンゼンとn-ブテンの反応からのsec-ブチルベンゼンが挙げられる。本発明の特に好ましい方法メカニズムはプロピレンによるベンゼンのアルキル化によるクメンの製造、及びエチレンによるベンゼンのアルキル化によるエチルベンゼンの製造に関する。
改良された本方法のための反応体は部分又は完全液相中にあってもよく、ニートであってもよく、即ち、その他の物質との意図的な混合又は希釈のないものであってもよく、又はそれらはキャリヤーガスもしくは希釈剤、例えば、水素もしくは窒素の助けにより触媒組成物と接触し得る。
本発明の改良されたアルキル化方法は、反応体、即ち、アルキル化可能な芳香族化合物及びアルキル化剤が、好適な反応ゾーン、例えば、触媒組成物の固定床を含む流動式反応器中で、有効なアルキル化条件下で本触媒と接触されるように行なわれてもよい。このような条件は約0℃から約500 ℃まで、好ましくは約10℃から約260 ℃までの温度、約0.2kPa-aから約25000kPa-aまで、好ましくは約100kPa-aから約5500kPa-aまでの圧力、約0.1:1 から約50:1まで、好ましくは約0.5:1 から約10:1までのアルキル化可能な芳香族化合物対アルキル化剤のモル比、及びアルキル化剤を基準として約0.1hr-1から500hr-1まで、好ましくは約0.5hr-1から約100hr-1までの毎時の供給質量空間速度(WHSV)を含む。
ベンゼンがエチルベンゼンを製造するためにエチレンでアルキル化される場合、そのアルキル化反応は少なくとも部分液相条件下で行なわれることが好ましく、即ち、ベンゼンの少なくとも一部がアルキル化反応中に液相中にあるように行なわれる。好適な条件は約150℃から約300 ℃まで、更に好ましくは約170 ℃から約260 ℃までの温度、約20400kPa-aまで、更に好ましくは約2000kPa-aから約5500kPa-aまでの圧力、エチレンアルキル化剤を基準として約0.1hr-1から約20hr-1まで、更に好ましくは約0.5hr-1から約6hr-1までの毎時の質量空間速度(WHSV) 、及び約0.5:1 から約30:1まで、更に好ましくは約1:1 から約10:1までのアルキル化反応器中のベンゼン対エチレンのモル比を含む。
【0017】
ベンゼンがクメンを製造するためにプロピレンでアルキル化される場合、その反応はまた約250 ℃まで、好ましくは約150 ℃まで、例えば、約10℃から約125 ℃までの温度、約25000kPa-a以下、例えば、約100kPa-aから約3000kPa-aまでの圧力、プロピレンアルキル化剤を基準として約0.1hr-1から約250hr-1まで、好ましくは約1hr-1から約50hr-1までの毎時の質量空間速度(WHSV) 、及び約0.5:1 から約30:1まで、更に好ましくは約1:1 から約10:1までのアルキル化反応器中のベンゼン対プロピレンのモル比を含む少なくとも部分液相条件下で行なわれてもよい。
ベンゼンがブチルベンゼン、例えば、sec-ブチルベンゼンを製造するためにブテン、例えば、n-ブテンでアルキル化される場合、その反応はまた約250 ℃まで、好ましくは約150 ℃まで、例えば、約10℃から約125 ℃までの温度、約25000kPa-a以下、例えば、約100kPa-aから約3000kPa-aまでの圧力、ブテンアルキル化剤を基準として約0.1hr-1から約250hr-1まで、好ましくは約1hr-1から約50hr-1までの毎時の質量空間速度(WHSV) 、及び約0.5:1 から約30:1まで、更に好ましくは約1:1 から約10:1までのアルキル化反応器中のベンゼン対ブテンのモル比を含む少なくとも部分液相条件下で行なわれてもよい。
【0018】
本発明における使用のための触媒の結晶部分はゼオライトベータ(米国特許第3,308,069 号に記載されている)又はMCM-22ファミリー物質の構造を有する結晶性モレキュラーシーブを含んでもよい。触媒は通常の様式で約20/80 から約80/20 まで、もしくは約20/80以上から約40/60 まで、好ましくは約20/80 から約40/60 まで、又は更に好ましくは約40/60 から約60/40 までの結晶/バインダーの質量比で以下に詳述される酸化物バインダーと合わされる結晶性モレキュラーシーブを含む必要がある。
触媒の或る適用について、結晶性モレキュラーシーブ成分の平均粒子サイズは約0.05μm(ミクロン)から約200 μm(ミクロン)まで、例えば、約20μm(ミクロン)から約200 μm(ミクロン)までであってもよい。
本明細書に使用される“MCM-22 ファミリー物質”(又は“MCM-22 ファミリーの物質”又は“MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ”)という用語は、
(i) 普通の第一級(first degree)結晶性ビルディングブロック“単位セルはMWWフレームワークトポロジーを有する”からつくられたモレキュラーシーブ(単位セルは“ゼオライトフレームワーク型のアトラス”, 第五編, 2001(その全内容が参考として含まれる)に記載された結晶を記載するために三次元空間中でタイルにされる原子の空間配置である);
(ii) “一つの単位セル厚さ、好ましくは一つのc-単位セル厚さの単層”を形成する、このようなMWWフレームワーク型単位セルの2次元のタイリングである、普通の第二級(second degree)ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ;
(iii) “一つ以上の単位セル厚さの層”である、普通の第二級ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ(一つより多い単位セル厚さの層がMWW フレームワークトポロジーを有する単位セルの一単位セル厚さの少なくとも二つの単層を積み重ね、充填し、又は結合することからつくられる。このような第二級ビルディングブロックの積み重ねは規則的な様式、不規則な様式、ランダム様式、又はこれらのあらゆる組み合わせであってもよい);又は
(iv) MWWフレームワークトポロジーを有する単位セルのあらゆる規則的又はランダムな2次元又は3次元の組み合わせによりつくられたモレキュラーシーブ
を含む。
【0019】
MCM-22ファミリー物質は12.4±0.25Å、3.57±0.07Å及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有することにより特徴づけられる(焼成されたもの又は合成されたままのもの)。MCM-22ファミリー物質はまた12.4±0.25Å、6.9±0.15Å、3.57±0.07Å及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有することにより特徴づけられてもよい(焼成されたもの又は合成されたままのもの)。そのモレキュラーシーブを特性決定するのに使用されるX線回折データは通常の技術により入射放射線としての銅のK-α二重線並びに収集システムとしてのシンチレーションカウンター及び関連コンピュータを備えたディフラクトメーターを使用して得られる。MCM-22ファミリーに属する物質として、MCM-22 (米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH-3 (米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ-25 (米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB-1 (欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ-1 (米国特許第6,077,498号に記載されている), ITQ-2 (国際特許公開WO97/17290に記載されている)、ITQ-30(国際特許公開WO2005118476に記載されている)、MCM-36 (米国特許第5,250,277号に記載されている)、MCM-49 (米国特許第5,236,575号に記載されている)、MCM-56 (米国特許第5,362,697号に記載されている)、及びUZM-8 (米国特許第6,756,030号に記載されている)が挙げられる。これらの特許の全内容が参考として本明細書に含まれる。
上記されたMCM-22ファミリーモレキュラーシーブは、MCM-22物質がモレキュラーシーブの10環内部細孔系と連通しない12環表面ポケットを有する点で、通常の大きい孔のゼオライトアルキル化触媒とは区別されることが理解されるべきである。
MWW トポロジーであるとIZA-SCにより指定されたゼオライト物質は10員環及び12員環の両方の存在から生じる二つの細孔系を有する多層物質である。ゼオライトフレームワーク型のアトラスはこの同じトポロジーを有する5種の異なって命名された物質:MCM-22、ERB-1、ITQ-1、PSH-3、及びSSZ-25を分類している。
【0020】
MCM-22ファミリーモレキュラーシーブは種々の炭化水素変換方法に有益であることがわかった。MCM-22ファミリーモレキュラーシーブの例はMCM-22、MCM-49、MCM-56、ITQ-1 、PSH-3 、SSZ-25、及びERB-1である。このようなモレキュラーシーブは芳香族化合物のアルキル化に有益である。例えば、米国特許第6,936,744 号はポリアルキル化芳香族化合物を少なくとも部分液相条件下でトランスアルキル化触媒の存在下でアルキル化可能な芳香族化合物と接触させてモノアルキル化芳香族化合物を生成する工程を含む、モノアルキル化芳香族化合物、特にクメンの製造方法を開示しており、そのトランスアルキル化触媒は少なくとも2種の異なる結晶性モレキュラーシーブの混合物を含み、そのモレキュラーシーブの夫々がゼオライトベータ、ゼオライトY、モルデナイト並びに12.4±0.25Å、6.9±0.15Å、3.57±0.07Å及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有する物質から選ばれる。
特に、本アルキル化方法に使用されるモレキュラーシーブは合成混合物がゼオライト結晶、特にMCM-56結晶の種を含む方法により生成されたMCM-56結晶を含む。好適な方法が2011年9月16日に出願され、参考として本明細書にそのまま含まれるJohnsonらの米国仮特許出願第61/535,632 号に開示されている。こうして製造された結晶は明細書に種添加MCM-56結晶と特徴づけられている。
種添加MCM-56結晶は米国特許第5,362,697 号及び同第5,827,491 号(夫々の特許が参考として本明細書に含まれる)に開示されたようなX線回折パターンにより特徴づけられる。
米国特許第5,362,697 号及び同第5,827,491 号に開示されたX線回折パターンが以下に表1(合成されたままのもの)及び表2(焼成されたままのもの)に示される。表1及び表2中、強さは12.4Åにあるd間隔ラインに対して特定される。
表1
【0021】
【表3】

【0022】
表2
【表4】

【0023】
上記X線回折データは銅K-アルファ放射線を使用して、ゲルマニウムソリッドステート検出器を備えた、Scintag 回折システムで収集された。その回折データは2θ(θはBragg角である)の0.02°における段階的スキャニング、及び夫々のステップにつき10秒のカウント時間により記録された。格子面間隔、d間隔は、オングストローム単位(Å)で計算され、ラインの相対的強さ、I/I0はバックグラウンドの上の、最も強いラインの強さの百分の一であり、プロフィールフィッティングルーチン(又は2次微分アルゴリズム)の使用により誘導された。強さはLorentz効果及び偏光効果につき修正されない。相対的強さは記号vs=非常に強い(60-100)、s=強い(40-60)、m=中間(20-40)及びw=弱い(0-20)に関して示される。単一ラインとしてこのサンプルについてリストされる回折データは或る条件、例えば、結晶学的変化の相違のもとに、分解又は部分分解ラインとして現われ得る多数の重なりラインからなってもよいことが理解されるべきである。典型的には、結晶学的変化として、構造の変化のない、単位セルパラメーターの小変化及び/又は結晶シンメトリーの変化が挙げられる。また、相対的強さの変化を含む、これらの小さい効果が、カチオン含量、フレームワーク組成、孔充填の性質及び程度、並びに熱及び/又は水熱の履歴の相違の結果として生じ得る。
種添加MCM-56結晶の生成方法は
a)アルカリ金属又はアルカリ土類金属(M) 、例えば、ナトリウム又はカリウム、カチオン、3価の元素X、例えば、アルミニウムの酸化物、4価の元素Y、例えば、ケイ素の酸化物(好ましくは少なくとも30質量%の固体YO2 を含む)、及び水の源を含む第一反応混合物を調製する工程(前記第一反応混合物は、好ましくは、下記の表3B中の下記の範囲内から選ばれる、酸化物のモル比に関する組成を有し、
【0024】
表3B
YO2/X2O3=5〜35、例えば、15〜20;
H2O/YO2=10〜70、例えば、15〜20;
OH-/YO2=0.05〜0.20、例えば、0.1〜0.15;
M/YO2=0.05〜3.0、例えば、0.11〜0.15;
前記第一反応混合物は更に第一反応混合物の質量を基準として、0.05質量%以上、もしくは0.10質量%以上、又は0.50質量%以上、或いは1.0質量%以上から、5質量%以下まで、例えば、1質量%以上から3質量%以下までの量の、ゼオライト種結晶、好ましくは、MCM-56種結晶を含む)、
【0025】
b)誘導剤R、例えば、好ましくは、ヘキサメチレンイミン(HMI) を工程a)の反応混合物に添加して下記の範囲:R/YO2=0.08〜0.3、例えば、0.1〜0.2内のモル比に関して前記誘導剤Yを有する第二反応混合物を生成する工程、
c)工程b)の第二反応混合物を約90℃から約175 ℃まで、好ましくは、約90℃から160 ℃未満まで、例えば、約125 ℃から約175 ℃までの温度、及び90時間未満、好ましくは、40時間未満、例えば、約20時間から約75時間までの時間の条件下で、約40rpm から約250rpmまで、好ましくは、約40rpm から約100rpmまでの撹拌速度で結晶化して、前記MCM-56物質の結晶及びX線回折により同定して、前記第二反応混合物中の前記MCM-56結晶の合計質量を基準として、10質量%以下、例えば、約5質量%以下の非MCM-56不純物結晶、例えば、結晶性MCM-22ファミリー物質(以下に特定される)、例えば、MCM-49物質、もしくはフェリエライト、ケニアイト又はこれらの混合物を含む得られる混合物を生成する工程、及び
d)工程c)の得られる混合物から前記MCM-56物質の結晶の少なくとも一部を分離し、回収して合成されたままのMCM-56物質(前記合成されたままのMCM-56物質の結晶は上記表1に示されたX線回折パターンにより特徴づけられる)を生成する工程を含む。
工程b)の第二反応混合物は第二反応混合物の質量を基準として、少なくとも12質量%、もしくは少なくとも15質量%、又は少なくとも18質量%、或いは少なくとも20質量%、又は少なくとも30質量%から40質量%未満、もしくは50質量%未満、又は60質量%未満までの範囲の固形分を有する。工程b)の第二反応混合物の固形分が第二反応混合物の質量を基準として、30質量%未満であることが好ましい。
【0026】
この改良された方法に必要とされる第一反応混合物組成を得るために、現在の通例と較べて幾つかの重要な選択的変化がMCM-56物質をつくるための方法になされる必要がある。例えば、苛性NaOHの添加が、例えば、アルミン酸ナトリウムの成分として以外は、省かれる。また、有機誘導剤が第一反応混合物にその生成中に添加されないが、ほぼ化学量論量に減少された有機誘導剤の制御された量のみが完全に生成された第一反応混合物に添加されて第二反応混合物を生成する。更に、ゼオライト種結晶、好ましくは、MCM-22ファミリー物質のゼオライト種結晶、更に好ましくは、MCM-56のゼオライト種結晶は、種結晶の量が第一反応混合物の0.05質量%以上、もしくは0.10質量%以上、又は0.50質量%以上、或いは1.0質量%以上から、5質量%以下まで例えば、1質量%以上から3質量%以下までであるように第一反応混合物にその合計質量を基準として添加される。驚くことに、この改良された方法に必要とされる第一反応混合物へのMCM-56種結晶の添加はこのような結晶化操作で通常予想されるような不純物の生成を促進しない。
本発明の改良された方法はその方法の工程c)における結晶化ウインドーを有益に安定化し、拡大して不純物、例えば、MCM-49物質の生成を回避し、結晶化工程c)における有機ローディングを減少して、特に商用MCM-56製造に重要なコストを低下し、かつ工程c)における結晶化速度を促進して生産量を大いに改良する。更に、好ましいMCM-56種結晶の意図的な添加が結晶化装置中の残留粒子により生じられる不純物の結晶化の促進の通常予想される効果を除く。これは商用製造に特に重要である。改良された方法において、種添加は不純物の導入を促進しなかった。
改良された本方法において、YO2の源が固体YO2 、例えば、少なくとも約30質量%の固体YO2を含む必要がある。YO2がシリカである場合、少なくとも約30質量%の固体シリカを含むシリカ源、例えば、Ultrasil(現在、Sipernat(登録商標)として知られている)(約90質量%のシリカを含む沈澱され、噴霧乾燥されたシリカ)、又はHiSilTM(約87質量%のシリカ、約6質量%の遊離H2O及び約4.5質量%の水和の結合H2Oを含み、約0.02μm(ミクロン)の粒子サイズを有する沈澱され、水和されたシリカ)の使用が必要とされる合成条件下で上記第二反応混合物からの結晶性MCM-56生成を有利にする。それ故、YO2、例えば、シリカ源が少なくとも約30質量%の固体YO2、例えば、シリカ、更に好ましくは少なくとも約40質量%の固体YO2、例えば、シリカを含むことが好ましい。
有機誘導剤Rはシクロアルキルアミン、アザシクロアルカン、ジアザシクロアルカン、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれてもよく、アルキルは5〜8個の炭素原子を含む。Rの非限定例として、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、ヘキサメチレンイミン(HMI) 、ヘプタメチレンイミン、ホモピペラジン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
反応混合物成分は一つより多い源により供給し得ることが注目される。反応混合物は回分式又は連続式で調製し得る。
本方法における第二反応混合物の工程c)結晶化は好適な反応器、例えば、ポリプロピレン容器又はテフロンライニングされたオートクレーブもしくはステンレス鋼オートクレーブ中で撹拌条件下で行なわれることが好ましい。しかしながら、結晶化が静的条件下で起こることが本発明の範囲内である。
この方法における結晶化に有益な条件の範囲はMCM-56物質の高品質結晶及びX線回折により同定して、反応混合物から回収された前記MCM-56結晶の合計質量を基準として、10質量%以下の非MCM-56不純物結晶を含む得られる混合物を生成するために、約90℃から約175 ℃まで、好ましくは、約90℃から160 ℃未満まで、例えば、約125 ℃から約175℃までの温度、及び、好ましくは、約40rpmから約250rpmまで、更に好ましくは、約40rpmから約100rpmまでの撹拌速度で、90時間未満、好ましくは、40時間未満、例えば、約20時間から約75時間までの時間である。その後に、合成されたままのMCM-22物質の結晶が工程d)で得られる液体混合物から分離され、回収される。
改良方法の別の実施態様は工程b)の第二反応混合物を結晶化工程c)の前に約0.5時間から約48時間まで、例えば、約0.5時間から約24時間までにわたって、約25℃から約75℃までの温度でエージングすることを含む。第二反応混合物が周囲温度で48時間未満にわたって、例えば50rpmの撹拌で撹拌されることが好ましかった。
本発明により製造された種添加MCM-56物質を含む触媒は化学反応で変換を行なうのに使用されてもよく、アルキル化可能な芳香族化合物を少なくとも部分液相条件下で触媒の存在下でアルキル化剤と接触させる工程を含む所望のモノアルキル化芳香族化合物を選択的に製造するための方法に特に有益である。それ故、本発明の別の局面は、モノアルキル化ベンゼンを含む生成物の選択的製造方法における使用のための改良された本方法により製造された高品質種添加MCM-56を含む改良されたアルキル化触媒であり、その方法はベンゼンをアルキル化条件下で前記アルキル化触媒の存在下でアルキル化剤、例えば、エチレン又はプロピレンと反応させて前記生成物を生成する工程を含む。本触媒をアルキル化触媒として使用してアルキル化可能な芳香族化合物のアルキル化を行なう際に、アルキル化剤は1〜5個の炭素原子を有するアルキル化脂肪族基を含んでもよい。アルキル化剤は、例えば、エチレン又はプロピレンであってもよく、このような場合のアルキル化可能な芳香族化合物は好適にはベンゼンであってもよい。
【0028】
モノアルキル化ベンゼンの選択的製造方法の一つ以上の実施態様において、生成物が更にジアルキル化ベンゼンの生成を含んでもよく、トリアルキル化ベンゼンが生じてもよい。このような場合、トリアルキル化ベンゼン対ジアルキル化ベンゼンの質量比が0.02から0.16まで、もしくは0.4から0.16まで、又は0.08から0.12までの範囲である。
本発明により製造されたMCM-56は炭化水素化合物変換を行なうために触媒成分として使用されてもよく、エチルベンゼン又はクメンを選択的に製造するための方法における触媒として特に有益であり、その方法はベンゼンを好適なアルキル化条件、例えば、少なくとも部分液相条件下でエチレン又はプロピレンと接触させる工程を含む。
本発明のアルキル化方法における使用のための触媒は無機酸化物物質マトリックス又はバインダーを含むであろう。このようなマトリックス又はバインダー物質として、合成又は天然産物質だけでなく、無機物質、例えば、クレー、シリカ及び/又は金属酸化物が挙げられる。後者は天然産であってもよく、又はシリカ及び金属酸化物の混合物を含むゲル化性沈澱又はゲルの形態であってもよい。無機酸化物物質と複合し得る天然産クレーとして、モンモリロナイトファミリー及びカオリンファミリーのものが挙げられ、これらのファミリーはサブベントナイト並びにディキシイクレー、マックナミイクレー、ジョージアクレー及びフロリダクレーとして普通知られているカオリン又は主鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト又はアナウキサイトであるその他を含む。このようなクレーは本来微粉砕された生の状態で使用でき、又は初期に焼成、酸処理もしくは化学変性にかけられる。
【0029】
本明細書に使用される特別な有益な触媒マトリックス又はバインダー物質として、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアだけでなく、3成分組成物、例えば、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニアが挙げられる。マトリックスはコゲルの形態であってもよい。これらの成分の混合物がまた使用し得る。
エチルベンゼンをベンゼン及びエチレンから製造する本方法において、種添加MCM-56結晶及びバインダー又はマトリックスの相対的比率は約20/80 以上から約80/20 まで、好ましくは約40/60 から約80/20 まで、又は更には約40/60 から60/40 までの結晶/バインダーの比で狭く変化してもよい。
本発明の方法において、アルキル化反応器流出物は過剰の芳香族供給原料、モノアルキル化生成物、ポリアルキル化生成物、及び種々の不純物を含んでもよい。芳香族供給原料は蒸留により回収され、アルキル化反応器に循環される。通常、小ブリードが循環流から取り出されて未反応不純物をそのループから排除する。蒸留からのボトムが更に蒸留されてモノアルキル化生成物をポリアルキル化生成物及びその他のヘビーから分離してもよい。
アルキル化反応器流出物から分離されたポリアルキル化生成物はアルキル化反応器とは別の、トランスアルキル化反応器中で、好適なトランスアルキル化触媒上で付加的な芳香族供給原料と反応させられてもよい。そのトランスアルキル化触媒はゼオライトベータ、ゼオライトY、モルデナイト又は12.4±0.25Å、6.9±0.15Å、3.57±0.07Å及び3.42±0.07Åにd間隔最大を含むX線回折パターンを有するMCM-22ファミリー物質の構造を有する結晶性モレキュラーシーブの一種又は混合物を含んでもよい。
【0030】
前記触媒構造を特性決定するのに使用されるX線回折データは通常の技術により入射放射線としての銅のK-α二重線並びに収集システムとしてのシンチレーションカウンター及び関連コンピュータを備えたディフラクトメーターを使用して得られる。上記X線回折ラインを有する物質として、例えば、MCM-22 (米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH-3 (米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ-25 (米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB-1 (欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ-1 (米国特許第6,077,498号に記載されている) 、ITQ-2 (米国特許第6,231,751号に記載されている)、ITQ-30(WO 2005-118476に記載されている)、MCM-36 (米国特許第5,250,277号に記載されている)、MCM-49 (米国特許第5,236,575号に記載されている)及びMCM-56 (米国特許第5,362,697号に記載されている)が挙げられ、MCM-22が特に好ましい。
ゼオライトベータは米国特許第3,308,069 号に開示されている。ゼオライトY及びモルデナイトは天然に産出するが、またそれらの合成形態、例えば、超安定Y(USY)(これは米国特許第3,449,070 号に開示されている)、希土類交換Y(REY)(これは米国特許第4,415,438 号に開示されている)、及びTEA-モルデナイト(即ち、テトラエチルアンモニウム誘導剤を含む反応混合物から調製された合成モルデナイト)(これは米国特許第3,766,093号及び同第3,894,104号に開示されている)の一つで使用されてもよい。しかしながら、トランスアルキル化触媒中の使用のためのTEA-モルデナイトの場合、記された特許に記載された特別な合成レジメは1μm(ミクロン)より大きく、典型的には5〜10μm(ミクロン)付近のサイズを有する大結晶を主として含むモルデナイト生成物の製造をもたらす。得られるTEA-モルデナイトが0.5μm(ミクロン)未満の平均結晶サイズを有するようにその合成を制御することが液相芳香族化合物トランスアルキル化のために実質的に高められた活性を有するトランスアルキル化触媒をもたらすことがわかった。
トランスアルキル化に所望される小結晶TEA-モルデナイトは下記の表3C中の下記の範囲内のモル組成を有する合成混合物からの結晶化により製造し得る。
表3C
【0031】
【表5】

この合成混合物からの小結晶TEA-モルデナイトの結晶化は6〜180 時間の時間にわたって90〜200 ℃の温度で行なわれる。
【実施例】
【0032】
改良されたアルキル化メカニズムを伴なう本発明の非限定実施例を下記の実験を参照して記載する。これらの実験において、触媒反応性を下記の操作により測定した。
装置
撹拌棒及び静止触媒バスケットを備えた300ml のパールバッチ反応器を活性及び選択率の測定に使用した。反応器にベンゼン及びプロピレンの夫々の導入のための二つの除去可能な容器をフィットした。
供給原料前処理
ベンゼン
ベンゼンを商業源から得た。ベンゼンをモレキュラーシーブ13X 500cc、続いてモレキュラーシーブ5A 500cc 、次いでSelexsorb CD 1000cc、次いで500ccの80質量%のMCM-49及び20質量%のAl2O3を含む前処理容器(2LのHoke容器)に通した。全ての供給原料前処理物質を使用前に12時間にわたって260 ℃のオーブン中で乾燥させた。
プロピレン
プロピレンを商業特殊ガス源から得、これはポリマーグレードであった。プロピレンを下記の順序で前処理物質を含む300ml の容器に通した。
a. モレキュラーシーブ5A 150ml
b. Selexsorb CD 150ml
両方のガード床物質を使用の前に12時間にわたって260 ℃のオーブン中で乾燥させた。
窒素
窒素は超高純度のグレードであり、これを商業特殊ガス源から得た。窒素を下記の順序で前処理物質を含む300ml の容器に通した。
a. モレキュラーシーブ5A 150ml
b. Selexsorb CD 150ml
両方のガード床物質を使用の前に12時間にわたって260 ℃のオーブン中で乾燥させた。
【0033】
触媒調製及び装填
触媒のサンプル2gをオーブン中で空気中で260 ℃で2時間乾燥させた。触媒をオーブンから除去し、直ちに触媒1gを計量した。石英チップを使用してバスケットの底部をライニングし、続いて触媒0.5g又は1.0gをバスケットに石英の第一層の上に装填した。次いで石英チップを触媒の上に入れた。触媒及び石英チップを含むバスケットを260℃で一夜にわたってオーブン中に約16時間にわたって空気中に置いた。
触媒及び石英チップを含むバスケットをオーブンから除去し、直ちに反応器に入れ、反応器を直ちに組み立てた。
【0034】
試験順序
反応器温度を170 ℃にセットし、2時間にわたって超高純度窒素100sccm(標準立方センチメートル)でパージした。反応器を2時間窒素パージした後、反応器温度を130 ℃に下げ、窒素パージを中断し、反応器ベントを閉じた。156.1gの量のベンゼンを300ml の移送容器に装填し、密閉系で実施した。ベンゼン容器を超高純度窒素で2169kPa-a(300psig)に加圧し、ベンゼンを反応器に移した。撹拌機速度を500rpmにセットし、反応器を1時間にわたって平衡にした。次いで75mlのHoke移送容器に液体プロピレン28.1gを充満し、反応器に連結し、次いで2169kPa-a(300psig)の超高純度窒素と連結した。1時間のベンゼン撹拌時間が経過した後、プロピレンをHoke容器から反応器に移した。2169kPa-a(300psig)の窒素源をプロピレン容器に連結して維持し、全実験中に反応器に開放して維持して試験中の一定反応圧力を維持した。液体生成物サンプルをプロピレンの添加後の30分、60分、90分、120 分、及び180 分に採取した。
下記の実施例において、選択率はプロピレン転化率が99+%に達した後に回収された生成物ジイソプロピルベンゼン対回収された生成物イソプロピルベンゼン(DIPB/IPB)の質量比である。当業者に知られている数学的技術を使用してバッチ反応器についての二次速度定数を計算することにより全ての実施例の活性を測定する。
【0035】
例1
水16部及び45%のアルミン酸ナトリウム溶液(22%のAl2O3、19.5%のNa2O)1部を、オートクレーブ反応器に仕込んだ。その溶液を60 rpmで周囲温度で1〜24時間にわたって撹拌した。次いでSiO2(Ultrasil-VN3PM-変性、現在Sipernat 320Cとして知られ、Evoniks、以前のDegussaから得られる)3.14部及びMCM-56種(乾燥ケーキ)0.02部を添加して第一反応混合物を生成した。反応器をシールし、圧力試験した。次いでヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.53部を反応器に仕込んで第二反応混合物を生成した。第二反応混合物を周囲温度で48時間未満にわたって50 rpmで撹拌した。次いで反応器を50 rpmで151 ℃に加熱し、内容物を28時間にわたって結晶化して得られる混合物を生成した。得られる混合物はX線回折により確認してMCM-56及び10質量%未満の不純物を含んでいた。反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。フラッシされた溶媒(“凝縮液”)をその後のバッチのために追加の新しいHMI と合わせることにより循環のために集めた。反応器を冷却し、生成物を排出した。結晶化の程度をBET 表面積により確認した。この例1についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
【0036】
例1.1
水16部、45%のアルミン酸ナトリウム溶液(22%のAl2O3、19.5%のNa2O)1部、SiO2(Sipernat 320C)3.13部、MCM-56種0.02部、及びヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.53部をオートクレーブ反応器に仕込んだ。反応器をシールし、圧力試験した。得られる溶液を周囲温度で48時間未満にわたって250rpmで撹拌した。次いでオートクレーブを250rpmで151 ℃に加熱し、内容物を72時間にわたって反応させた。その時点で、生成物が無定形であることをX線回折により確認した。反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。反応器を冷却し、生成物を排出した。結晶化の欠如をBET 表面積により確認した。この例1.1 についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
【0037】
例1.2
水16部、45%のアルミン酸ナトリウム溶液(22%のAl2O3、19.5%のNa2O)1部、SiO2(Sipernat 320C)3.14部及びMCM-56種(乾燥ケーキ)0.02部をオートクレーブ反応器に仕込んで第一反応混合物を生成し、次いでヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.53部を反応器に仕込んで第二反応混合物を生成した。反応器をシールし、圧力試験した。第二反応混合物を周囲温度で48時間未満にわたって250rpmで撹拌した。反応器を250rpmで151 ℃に加熱し、内容物を72時間にわたって結晶化して得られる混合物を生成した。得られる混合物はX線回折により確認してMCM-56及び10質量%未満の不純物を含んでいた。反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。反応器を冷却し、生成物を排出した。幾つかの結晶について、結晶化の程度をBET 表面積により確認した。この例1.2 についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
【0038】
例2
水16部及び45%のアルミン酸ナトリウム溶液(22%のAl2O3、19.5%のNa2O)1部を、オートクレーブ反応器に仕込んだ。その溶液を60 rpmで周囲温度で1〜24時間にわたって撹拌した。次いでSiO2(Sipernat 320C)3.14部及びMCM-56種(乾燥ケーキ)0.02部を添加して第一反応混合物を生成した。反応器をシールし、圧力試験した。次いでヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.53部を反応器に仕込んで第二反応混合物を生成した。第二反応混合物を周囲温度で48時間未満にわたって50 rpmで撹拌した。反応器をシールし、50 rpmで141.5 ℃に加熱し、内容物を36時間にわたって結晶化して得られる混合物を生成した。得られる混合物はX線回折により確認してMCM-56及び10質量%未満の不純物を含んでいた。反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。フラッシされた溶媒(“凝縮液”)をその後のバッチのために追加の新しいHMI と合わせることにより循環のために集めた。反応器を冷却し、生成物を排出した。結晶化の程度をBET 表面積により確認した。この例2についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
【0039】
例3
先のMCM-56結晶化から反応器中に残された、合成されたままの状態のMCM-56種約0.02部に、オートクレーブ反応器中で水0.72部及び5%のUSALCO、即ち、アルミン酸ナトリウム溶液(初期の22%のAl2O3及び19.5%のNa2Oから2.9%のAl2O3及び1.8%のNa2Oであるように追加の水で希釈された受け取られたままの溶液)1部を添加した。その溶液を60 rpmで周囲温度で1〜24時間にわたって撹拌した。次いでSiO2(Sipernat 320C)0.31部を添加して第一反応混合物を生成した。反応器をシールし、圧力試験した。次いでヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.053部を反応器に仕込んで第二反応混合物を生成した。第二反応混合物を周囲温度で48時間未満にわたって60 rpmで撹拌した。反応器をシールし、60 rpmで148.5 ℃に加熱し、内容物を36時間にわたって結晶化して得られる混合物を生成した。得られる混合物はX線回折により確認してMCM-56及び10質量%未満の不純物を含んでいた。反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。フラッシされた溶媒(“凝縮液”)をその後のバッチのために追加の新しいHMI と合わせることにより循環のために集めた。反応器を冷却し、生成物を排出した。結晶化の程度をBET 表面積により確認した。この例3についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
【0040】
例3.1
水0.702部にオートクレーブ反応器中でUSALCOから得られる5%のアルミン酸ナトリウム溶液(初期の22%のAl2O3及び19.5%のNa2Oから2.9%のAl2O3及び1.8%のNa2Oであるように追加の水で希釈された受け取られたままの溶液)1部を添加した。その溶液を60 rpmで周囲温度で1〜24時間にわたって撹拌した。次いでSiO2(Sipernat 320C)0.31部を添加して第一反応混合物を生成したが、種結晶を含んでいなかった。反応器をシールし、圧力試験した。次いでヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.053部を反応器に仕込んで第二反応混合物を生成した。第二反応混合物を周囲温度で48時間未満にわたって60 rpmで撹拌した。反応器をシールし、60 rpmで148.5 ℃に加熱し、内容物を61時間にわたって結晶化させた。MCM-56をX線回折により確認した。反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。フラッシされた溶媒(“凝縮液”)をその後のバッチのために追加の新しいHMI と合わせることにより循環のために集めた。反応器を冷却し、生成物を排出した。結晶化の程度をBET 表面積により確認した。この例3.1 についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
【0041】
例4
先のMCM-56結晶化から反応器中に残された、合成されたままの状態のMCM-56種約0.02部に、オートクレーブ反応器中で水0.72部及び5%のUSALCO(初期の22%のAl2O3及び19.5%のNa2Oから2.9%のAl2O3及び1.8%のNa2Oであるように追加の水で希釈された受け取られたままの溶液)1部を添加した。その溶液を60 rpmで周囲温度で1〜24時間にわたって撹拌した。次いでSiO2(Sipernat 320C)0.32部を添加して第一反応混合物を生成した。反応器をシールし、圧力試験した。次いでヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.17部を反応器に仕込んで第二反応混合物を生成した。第二反応混合物を周囲温度で48時間未満にわたって60 rpmで撹拌した。反応器をシールし、60 rpmで141.5 ℃に加熱し、内容物を33時間にわたって結晶化し、その時点で得られる混合物が完全結晶化に進行しないために結晶化を停止した。反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。反応器を冷却し、生成物を排出した。結晶化の欠如をBET 表面積により確認した。この例4についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
【0042】
例4.1
5%のUSALCO(初期の22%のAl2O3及び19.5%のNa2Oから2.9%のAl2O3及び1.8%のNa2Oであるように追加の水で希釈された受け取られたままの溶液)1部及び水0.72部をオートクレーブ反応器に仕込んだ。次いでSiO2(Sipernat 320C)0.31部を添加した。反応器をシールし、圧力試験した。その溶液を1〜24時間にわたって周囲温度で60rpmで撹拌した。次いでヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.17部を反応器に仕込んで第二反応混合物を生成した。第二反応混合物を周囲温度で48時間未満にわたって60 rpmで撹拌した。反応器をシールし、60 rpmで141.5 ℃に加熱し、内容物を69時間にわたって結晶化させた。その時点でMCM-56への結晶化をX線回折により確認し、反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。反応器を冷却し、生成物を排出した。結晶化の程度をBET 表面積により確認した。この例4.1 についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
【0043】
例5
水16部及び45%のアルミン酸ナトリウム溶液(22%のAl2O3、19.5%のNa2O)1部をオートクレーブ反応器に仕込んだ。その溶液を60 〜250 rpmで周囲温度で1〜24時間にわたって撹拌した。次いでSiO2(Sipernat 320C)3.43部を反応器に添加した。反応器をシールし、圧力試験した。次いでヘキサメチレンイミン(100%の有機物としてのHMI)0.53部を反応器に仕込んで第二反応混合物を生成した。第二反応混合物を周囲温度で48時間未満にわたって60 rpmで撹拌した。反応器をシールし、60 rpmで148.5 ℃に加熱し、内容物を56時間にわたって結晶化させた。その時点でMCM-56への結晶化をX線回折により確認し、反応器を127 ℃に冷却し、有機物を収集容器にHMI/水共沸により除去し、即ち、“フラッシ”した。反応器を冷却し、生成物を排出した。結晶化の程度をBET 表面積により確認した。この例5についての配合詳細及び結果を下記の表4及び表5に報告する。
表4
【0044】
【表6】

【0045】
*反応混合物から回収された結晶の質量を基準とする種の質量%
表5
【表7】

【0046】
**結晶化が完結し、又は進行しなくなるまでの時間(単位:時間)
第二反応混合物を生成するのにMCM-56種結晶を必要としない第一反応混合物は、一層全く高い温度及び同じ温度でさえも、例1についての結晶化時間の2.5 倍以上で結晶化しなかったことが例1.1 から観察される。例1.2 は第一反応混合物が種を含む以外は例1.1 の反復が結晶性MCM-56を与えることを示す。例3は第一反応混合物についての種添加の順序が結果に悪影響しないこと、及びMCM-56種が合成されたままであってもよいことを示す。例3と較べての例3.1 は結晶化が本方法の必要とされる第一反応混合物を生成しないとかなり遅いことを実証する。例4と較べての例4.1 は結晶化が本方法の必要とされる第一反応混合物又は第二反応混合物を生成しないとかなり遅いことを実証する。
【0047】
例6
改良された本方法により製造された“ex-situ種添加”MCM-56を含む触媒を配合するために、例1から回収されたMCM-56生成物(固体基準で100 %)60部をUOP Versal 300TM擬ベーマイトアルミナ(固体基準で100 %)40部と合わせた。合わされた乾燥粉末を実験規模のLancaster Mullerに入れ、30分間混合した。充分な水を混合中に添加して押出可能なペーストを生成した。2インチ(3cm)の実験Bonnot押出機を使用して押出可能なペーストを1/20”のクァドルローブ押出物に成形した。その押出物をオーブン中で121 ℃で一夜乾燥させた。乾燥された押出物を2.4 ℃/分の速度で538 ℃に加熱し、流れている窒素の下で3時間保持した。次いで押出物を周囲温度に冷却し、一夜にわたって飽和空気で保湿した。保湿された押出物を1時間にわたって触媒1g当り5mlの1N硝酸アンモニウムと交換した。硝酸アンモニウム交換を新しい硝酸アンモニウムで繰り返した。次いでアンモニウム交換押出物を押出物の体積当り5倍容の脱イオン水で洗浄して残留硝酸塩を除去した。洗浄された押出物をオーブン中で121 ℃で一夜乾燥させた。次いで押出物を下記の条件で窒素/空気混合物中で焼成した。押出物を1%のO2/99%のN2混合物中で時間当たり28℃の加熱速度で周囲温度から426 ℃まで傾斜上昇させ、3時間にわたって426 ℃に保った。次いで温度を時間当たり28℃の速度で482 ℃まで上昇させ、更に3時間にわたって482 ℃に保った。482 ℃で、O2を7.6 %のO2まで段階的に増大した。押出物を更に3時間にわたって7.6 %のO2/92.4 %のN2流中で482 ℃に保った。次いで温度を時間当たり28℃の速度で534 ℃に上昇させた。O2の%を12.6 %のO2に徐々に増大し、押出物を12時間にわたって12.6 %のO2中で534 ℃に保った。次いで押出物を室温に冷却した。
この例6で製造されたMCM-56を含む触媒をそのBET表面積、普通知られている方法により誘導結合プラズマ(ICP) により測定されるナトリウムの濃度を測定することにより特性決定した。アルファ活性(ヘキサンクラッキング)を米国特許第3,354,078 号に記載されたようにして測定した。
【0048】
例7、8、9、及び10
一種が60質量%のMCM-56及び40質量%のアルミナを含み(例7)、別の種が80質量%のMCM-56及び20質量%のアルミナを含み(例8)、また別の種が20質量%のMCM-56及び80質量%のアルミナを含み(例9)、また別の種が65質量%のMCM-56及び35質量%のアルミナを含む(例10)以外は、3種の追加の触媒を例6のように配合した。これらの例で製造されたMCM-56を含む触媒をそのBET表面積、ICP により測定されるナトリウムの濃度、及び特許文献で普通知られているアルファ試験活性(ヘキサンクラッキング)を測定することにより特性決定した。
例11
同様の様式で、例3に従って調製された“in-situ 種添加”MCM-56結晶を使用して60質量%のMCM-56、40質量%のアルミナの触媒を例6に従って配合した。
例12
同様の様式で、例5に従って調製された“種無添加”MCM-56結晶を使用して100 質量%のMCM-56、0質量%のアルミナの触媒を例6に従って配合した。
例13
同様の様式で、例5に従って調製された“種無添加”MCM-56結晶を使用して80質量%のMCM-56、20質量%のアルミナの触媒を例6に従って配合した。
例14
同様の様式で、例5に従って調製された“種無添加”MCM-56結晶を使用して80質量%のMCM-56、20質量%のアルミナの触媒を例6に従って配合した。0.05質量%のポリビニルアルコールを配合方法で押出助剤として使用した。
【0049】
例15
例6〜14の触媒を更に試験するために、押出物触媒0.5gを石英チップ12g とともにワイヤメッシュスクリーンバスケットに装填した。バスケット及び内容物をオーブン中で260℃で一夜(約16時間)乾燥させた。次いでバスケットを300cc のパールオートクレーブに装填した。オートクレーブをシールし、空気を含まない流れている窒素でパージした。オートクレーブを170 ℃に加熱し、2時間にわたって100 sccmの窒素でパージした。オートクレーブ撹拌機を500rpmにセットした。次いで、ベンゼン156.1gをそのオートクレーブに移し、温度を1時間にわたって500rpmの撹拌速度で130 ℃にセットした。1時間後、75ccのHoke移送容器を使用してプロピレン28.1gをそのオートクレーブに移した。窒素シールを使用して一定ヘッド圧力をオートクレーブで維持した。液体生成物サンプルを30分、60分、90分、120 分及び180 分で採取した。液体サンプルをAgilent 5890 GC で分析した。そのGCデータを二次速度モデルにフィットした。ベンゼン及びプロピレンの変換についての二次速度定数を3時間のオンストリームでジイソプロピルベンゼン(DIPB)対クメンの比及びトリイソプロピルベンゼン(TRIPB)対クメンの比とともに計算した。
表6並びに図1、2、3及び4は“ex-situ 種添加”MCM-56触媒組成物(例6〜10)、“in-situ ”種添加MCM-56触媒組成物(例11)、及び“種無添加”MCM-56触媒組成物(例12〜14)の物理的性質及び触媒特性を要約する。
【0050】
図1は押出物中のMCM-56含量が100 %から20%に減少するにつれてDIPB/IPB比が一般に減少することを示す。図2はMCM-56含量が80質量%未満、好ましくは65質量%未満、最も好ましくは60質量%未満である場合に、ヘビー成分(TRI-IPBの)(これらは逆にクメンへの付加的かつ困難なトランスアルキル化反応を必要とする)が、減少されることを明らかに示す。図3はゼオライト含量が100 %から20%に減少されるとしても、本発明者らがベンゼンとのプロピレンのアルキル化についての二次速度定数k2を0.20以上に維持することができることを示す。図4はDIPB/TRI-IPBの比が20〜100 質量%のMCM-56含量の範囲にわたって比較的に一定であることを示す。これらの図中の“ex-situ ”種添加MCM-56データの全てがこれらの表中にある。
表6
【0051】
【表8】

【0052】
表6(続き)
【表9】

【0053】
表6(続き)
【表10】

【0054】
例16
MCM-56ゼオライトを例1に上記されたように、種添加ゼオライト合成を使用して製造した。また、MCM-49ゼオライトを例8のように種を使用して製造し、触媒に配合した。MCM-56を含む触媒を例16〜19のように触媒に配合した。次いでこれらの配合された触媒を試験装置に入れてジエチルベンゼン(DEB) 副生物についてのそれらの選択率を測定した(エチルベンゼン(EB)により割られたジエチルベンゼンの合計により測定して)。試験装置はベンゼン(B) 及びエチレン(E) を供給するための供給システム;ベンゼン中のエチレンの適当な溶解を確実にするための混合ゾーン;1/2”のステンレス鋼管からなる反応器;±4℃の線形温度プロフィールを維持し得る加熱部材;自動化サンプル収集のためのインラインサンプリング弁;及び流出物中に存在する炭化水素種の相対量を測定するためのFID を含むGCからなった。触媒約1gを希釈剤としての小粒子サイズの炭化ケイ素とともに反応器に充填して良好な流れ分布を確実にした。また、反応器は内部温度プロフィールを(5点で)測定するための1/16”の内部熱伝対を含む。試験の温度及び圧力を反応器床の入口で公称で180 ℃及び反応器床の出口で約35kg/cm2ゲージ圧(500psig)であるようにセットした。ベンゼン対エチレン (B:E)モル比を公称で19にセットした。全流量を調節して100 %未満の転化率を得た。5種の異なる触媒を試験し、結果を例16.1〜16.5について示す。転化率はエチレン転化率(供給されたエチレンにより割られた転化されたエチレン)の目安である。
【0055】
例16.1
比較例において、80質量%のMCM-49、20質量%のアルミナバインダー物質を或る範囲の転化率にわたって試験した。選択率を図5及び表7に示す。
例16.2
40質量%の種添加MCM-56、60質量%のアルミナバインダー物質を或る範囲の転化率にわたって試験した。選択率を図5及び表7に示す。
例16.3
60質量%の種添加MCM-56、40質量%のアルミナバインダー物質を或る範囲の転化率にわたって試験した。選択率を図5及び表7に示す。
例16.4
80質量%の種添加MCM-56、20質量%のアルミナバインダー物質を或る範囲の転化率にわたって試験した。選択率を図5及び表7に示す。
例16.5
20質量%の種添加MCM-56、80質量%のアルミナバインダー物質を或る範囲の転化率にわたって試験した。選択率を図5及び表7に示す。
表7
【0056】
【表11】

【0057】
表7は異なる転化率レベルにおける夫々の例触媒についての選択率を示す。選択率はEB生成物により割られたDEB 生成物の合計の目安である。また、それはデータが比較できることを確実にするためにB:E 比の反比例により調節される。
図5は夫々の例についてのエチルベンゼン選択率対エチレン転化率のプロットを示す。このプロットから、幾つかの重要な結論が導かれる:
・種添加MCM-56はMCM-49と較べて非常に高い転化率を有する。
・ゼオライト含量を低下することにより、或る活性が犠牲にされるが、DEB 副生物の一層低い選択率の利点がある。この触媒による作業がユーティリティ消費を低減する。何とならば、蒸留が一層低いDEB 濃度でそれ程必要とされないからである。
・一層低いゼオライト含量の利点は80/20 未満かつ20/80 より上の結晶/バインダー質量範囲に制限される。何とならば、20/80 レベル以下では、転化率があまりにも低くて商業上有益ではないからである(触媒の残部について>10%と較べて<10%)。
本明細書で引用された全ての特許、特許出願、試験操作、優先権書類、論文、刊行物、マニュアル、及びその他の書類はこのような開示が本発明と不一致ではない程度に、またこのような組み入れが許される全ての司法権について参考として完全に含まれる。
【0058】
数的下限及び数的上限が本明細書にリストされる場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が意図されている。
本発明の例示の実施態様が特別に記載されたが、種々のその他の改良が本発明の精神及び範囲から逸脱しないで当業者に明らかであり、直ぐになし得ることが理解されるであろう。それ故、特許請求の範囲が本発明に示された例及び記載に制限されることが意図されているのではなく、むしろ、特許請求の範囲は本発明が関係する当業者により均等物として処理されるような全ての特徴を含む、本発明にある特許性の新規性の全ての特徴を含むと見なされることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) a)アルカリ金属又はアルカリ土類金属(M)カチオン、3価の元素Xの酸化物、4価の元素Yの酸化物の源、ゼオライト種結晶及び水を含む第一反応混合物(前記第一反応混合物は下記の範囲:
YO2/X2O3=5〜35;
H2O/YO2=10〜70;
OH-/YO2=0.05〜0.20;
M/YO2=0.05〜3.0内の酸化物のモル比に関する組成を有し、前記第一反応混合物は更に前記第一反応混合物の質量を基準として、0.05質量%以上から5質量%以下までの量のゼオライト種結晶を含む)を調製し、
b)誘導剤Rを工程a)の反応混合物に添加して第二反応混合物(下記の範囲:R/YO2=0.08〜0.3内のモル比に関して前記誘導剤Rを有する)を生成し、
c)工程b)の前記第二反応混合物を約90℃から約175 ℃までの温度及び90時間未満にわたる時間の条件下で結晶化してX線回折により同定して、種添加MCM-56物質の結晶及び前記第二反応混合物中の前記MCM-56結晶の合計質量を基準として10質量%未満の非MCM-56不純物結晶を含む生成物混合物を生成し、そして
d)前記種添加MCM-56物質の前記結晶の少なくとも一部を工程c)の前記生成物混合物から分離し、回収する工程を含む方法により合成多孔性結晶性MCM-56物質を製造し(前記種添加MCM-56物質の前記結晶は下記の表1に示されたX線回折パターンを有する)、
【表1】

(ii) 前記種添加MCM-56結晶を20/80 以上から約80/20 までの結晶/バインダー質量比でバインダーと合わせて触媒組成物を生成し、そして
(iii) 前記ベンゼン及び前記アルキル化剤を含む供給原料を有効なアルキル化条件下で前記触媒組成物と接触させて前記モノアルキル化ベンゼンを含む生成物を生成することを含み、前記アルキル化条件が約0℃から約500 ℃までの温度、約0.2kPa-aから約25000kPa-aまでの圧力、約0.1:1から約50:1までの前記ベンゼン対前記アルキル化剤のモル比、及び前記アルキル化剤を基準として約0.1hr-1から約500hr-1までの毎時の供給質量空間速度(WHSV)を含むことを特徴とする、ベンゼンをアルキル化剤で選択的にアルキル化してモノアルキル化ベンゼンを生成する方法。
【請求項2】
工程(c) における前記生成物が更にジアルキル化ベンゼン及びトリアルキル化ベンゼンを含み、かつトリアルキル化ベンゼン対ジアルキル化ベンゼンの質量比が0.08から0.12までの範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルキル化可能な芳香族化合物がベンゼンであり、前記アルキル化剤がエチレンであり、かつ前記モノアルキル化芳香族化合物がエチルベンゼンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記アルキル化可能な芳香族化合物がベンゼンであり、前記アルキル化剤がプロピレンであり、かつ前記モノアルキル化芳香族化合物がクメンである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記アルキル化可能な芳香族化合物がベンゼンであり、前記アルキル化剤がブテンであり、かつ前記モノアルキル化芳香族化合物がブチルベンゼンである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記誘導剤Rがシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、ヘキサメチレンイミン(HMI) 、ヘプタメチレンイミン、ホモピペラジン、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記誘導剤Rがヘキサメチレンイミン(HMI) を含み、Xがアルミニウムを含み、かつYがケイ素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程c)の前記混合物がX線回折により同定して、前記生成物混合物中の前記MCM-56結晶の合計質量を基準として、約5質量%以下の非MCM-56不純物結晶を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ゼオライト種結晶が下記の表1:
表1
【表2】

に示された前記MCM-56結晶についての前記X線回折パターンを示す、請求項1記載の方法。
【請求項10】
工程d)からのMCM-56の前記結晶を1分から約20時間の時間にわたって約370 ℃から約925 ℃までの温度で加熱することにより熱処理して焼成されたMCM-56結晶を生成し、前記焼成されたMCM-56結晶が下記の表2:
表2
【表3】

に示されたX線回折パターンを有する、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100264(P2013−100264A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−221684(P2012−221684)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】