説明

改良された色調を有するN−アルキルラクタムの製造方法

本発明は、N−アルキルラクタムと炭素との接触を含む、N−アルキルラクタムを精製するための方法に関する。本発明は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)及びN−アルキルラクタムを含む混合物に関し、その際N−アルキルラクタムは、それらの製造のための方法と同様にN−アルキルラクタムと接触することによって精製される。本発明は、改良された色が品質要求である適用のためのPVDFの加工における該混合物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アルキルラクタムと炭素との接触を含む、N−アルキルラクタムを精製するための方法に関する。本発明は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)及びN−アルキルラクタムを含む混合物に関し、その際N−アルキルラクタムは、N−アルキルラクタムをそれらの製造のための方法と同様に接触によって精製される。本発明は、PVDFの適用のための加工における該混合物の使用にも関し、その際改良された色は品質要求事項である。
【0002】
N−アルキルラクタムの生成方法は公知である。N N−アルキルラクタムは、例えば部分的な蒸留(JP 06 228 088に記載されているような多重蒸留を含む)によって、又は抽出によって作用されうる。他の又は追加の精製工程は、EP−A−1 038 867(BASF AG)において記載されているようなイオン交換体で、又は固体吸収体(US 3,401,902)、例えばWO−A−2005/092851に類似した酸化アルミニウム(Lyondell L.P.)で処理されてよい。N−アルキルラクタムは、酸、例えばトルエンスルホン酸(例えばJP 11 071 346(Tonen Corp.)において記載されている)又はリン酸(例えばJP 2028148(Ouchi Shinko Chem.)において記載されている)の存在で、蒸留中に精製されてもよい。製造及び/又は蒸留中の他の有利な添加剤は、例えばUS 4,885,371(GAF Chemicals Corp.)において開示されているようなアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはホウ水素化アンモニウム、JP 72 22 225(Teijin Ltd.)において記載されているような酸化剤、例えば過マンガン酸カリウム、過ホウ酸ナトリウムもしくは二クロム酸カリウム、又はUS 2,964,535(Monsanto Chemicals)において記載されているような水酸化ナトリウムであってよい。
【0003】
さらに、JP−A−2001 089 446(Mitsubishi Chem. Corp.)は、低色を有するきれいなNMP(N−メチルピロリドン)が、水素及び酸素の量が、蒸留中にピロリドン含有率に対して、0.01mol%及び0.002mol%の制限値を超えない場合に得られうることを教示している。JP 62 79 401(Mitsubishi Kasei Corp.)によって、無色のN−メチルピロリドンは、熱処理(150〜250℃で加熱)によって得られ、そして続いて蒸留されうる。
【0004】
他のN−アルキルラクタム、例えばN−アルキルピペリドン及びN−アルキルカプロラクタムは、類似の方法で精製されうる。
【0005】
ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)は、フッカビニリデンとして公知でもある1,1−ジフルオロエテンの付加ポリマーである。
【0006】
PVDFは、たいてい遊離基阻害剤を使用する乳化又は懸濁で重合された半結晶ポリマーである。
【0007】
PVDFは、厳しい科学、熱、紫外線、気象及び酸化の環境に対するフルオロポリマーの特徴的な体制と、他の独自の特性、例えば高極性、高い誘電率並びに優れた圧電活性及び焦電活性とを組合せる。
【0008】
前記性質のために、PVDFは、多くの適用で、例えばワイヤ及びケーブル製品、電子装置において、エクステリアの仕上げ部分のための対候性バインダーとして、使用される。
【0009】
前記ポリマーを、溶液から鋳造物の通常の成形又は押出し要求を使用して容易に溶融加工し、膜及びフィルムを形成する。仕上げを、分散液から特定の溶剤を使用して堆積する。
【0010】
PVDFを溶液から又は溶液中で加工する場合に、たいてい高極性を有する溶剤が選択される。多くの適用のために、N−アルキルラクタム、例えばN−メチル−ピロリドン(NMP)、又はホルムアミド、例えばスルホキシド、例えばジメチルスルホキシドのジメチルホルムアミド、その他は、提案されている。
【0011】
PVDFのための架橋溶剤としてのN−アルキルカクタムの使用は、決定的な妨げを有する。JP−A1−10310795は、N−アルキルラクタム中のPVDFの溶液が、短時間後に変色の傾向がある一方で、N−アルキルラクタム中で含有される少量の不純物のために、ハイエンド適用、例えば電子工学又は被覆における使用に該溶液が不適切であることを開示している。前記問題を回避するために、JP−A1−10310795は、PVDFを、固体酸物質、例えばイオン交換樹脂、又は鉱酸と接触させたN−アルキルラクタムで、蒸留前に溶解又は洗浄するための方法を教示している。
【0012】
本発明の目的は、N−アルキルラクタムの精製方法を発見することであり、その結果、N−アルキルラクタム及び改質された色調を有するPVDFの混合物の製造に好適であるN−アルキルラクタムが、得られる。
【0013】
本発明の他の目的は、経済的に実行可能であり、かつ技術的に実行しやすい、吸収体の再利用及び再生を容易にする方法によって得られる、PVDF及びN−アルキルラクタムの改良した混合物を提供することである。特に、本発明の目的は、N−アルキルラクタムと酸との接触を妨げることである。それというのも、処理後にN−アルキルラクタム中に残っている残留酸の影響が、バッテリーバインダのためのPVDFの適用のための問題となる、腐食の引き金に、及びさらに品質変動を導きうる。
【0014】
したがって、N−アルキルラクタムと活性炭との接触を含むN−アルキルラクタムの精製方法を見出した。
【0015】
本発明による方法において使用されるN−アルキルラクタムは、有利には、一般式I
【化1】

[式中、Rは直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪基、有利にはC1-12−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブシツ、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、シクロペンチルメチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、シクロヘキシルメチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、イソノニル、n−デシル、イソデシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、イソドデシル、より有利にはC1-8−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル及び2−エチルヘキシル、最も有利にはC1-4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル
又は、
炭素原子3〜12個を有する飽和脂環式基、有利にはC4-8−シクロアルキル、例えばシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びイクロオクチル、より有利にはシクロペンチル及びシクロヘキシルであり、
かつnは1〜5の整数である]のN−アルキルラクタムであって、N−置換されたラクタムの複素環の炭素原子は、不活性条件下で1〜2個の置換基、例えばそれぞれ独立して有利にはC1-8−アルキル基、特にC1-4−アルキル基である、アルキル基、例えばC1-8−アルキル基を有する。
【0016】
本発明によって、RはHであってもよい。従って、化合物2−ピロリドンは、本発明においてN−アルキルラクタムの定義でも含まれる。
【0017】
例えばN−置換されたラクタムの複素環の炭素原子を有してよいC1-8−アルキル基は、例えば1,5−ジメチル−2−ピロリドン及び1−エチル−5−メチル−2−ピロリドンにおいて、
メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル及び2−エチルヘキシルである。
【0018】
特に、式I
【化2】

[式中、Rは前記のようなC1-4−アルキルであり、nは1、2又は3である]のN−アルキルラクタムを使用することが好ましく、N−置換されたラクタムの複素環の炭素原子は、C1-4−アルキル基、特にメチル基又はエチル基を有してよい。
【0019】
最も好ましいN−アルキルラクタムは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びN−エチル−2−ピロリドン(NEP)である。
【0020】
使用されるN−アルキルラクタムは、≧90質量%、有利には≧95質量%、より有利には≧99質量%の純度を有してよい。
【0021】
N−アルキルラクタムの製造は公知である。N−アルキルラクタムを、例えばガンマ−ブチロラクトン(γ−BL)とモノアルキルアミンとの反応によってもたらすことができ、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,volume A22,5th ed.,p.459(1993)に類似して、又はDE−A−19 626 123(BASF AG)に類似して、水の1当量を放出する。N−アルキルピロリドンは、同様に、無水マレイン酸又は他のジカルボンさん誘導体及びモノエチルアミンから、水素及び水素化触媒の存在で、例えばEP−A−745 598 (Bayer AG)又はWO−A−02/102773(BASF AG)によって製造されうる。
【0022】
他のN−アルキルラクタム、例えばN−アルキルピペリドン及びN−アルキルカプロラクタムは、同様に、例えばYakugaku Zasshi 71(1951),1341(Susagawa et al.)によって記載されているように、対応するラクトンから、モノアルキルアミンとの反応によって製造されうる。さらに、前記ラクタムは、DE−A−11 92 208(BASF AG)において開示されているようなオキシニトリルとモノメチルアミンとの反応によって、あるいは簡潔にChem.Techn.33(1981),193−196(Wehner et al.,VEB Leuna)又はRO 137218(Centrul de Cercetari pentru Fibre Chimice)において記載されているような、酸触媒、例えばAl23上での、ラクタムと、モノアルコール又はジアルキルエーテルとの、もしくは塩基条件下で、例えばJ.Org.Chem.29(1964),2748−2750頁(Moriarty)において記載されているような他のアルキル化剤、例えば硫酸ジアルキル又はハロゲン化アルキルとの反応によっても得られることができる。
【0023】
本発明によって、炭素は、N−アルキルラクタムの処理のために使用される。この方法において有用な炭素は、あらゆる通常の炭素、又は吸収体として使用されるチャコールであってよい。炭素、活性炭及びチャコールは、広く市販されている。
【0024】
好適な炭素は、多種の源から使用されうる。例えば瀝青炭型及びココナッツの殻型として公知の炭素が、当業者によく知られている。
【0025】
炭素の形状は重要ではなく、あらゆる通常の形状、例えば粉末、顆粒、ペレット等の形であってよい。
【0026】
本発明において使用される炭素の平均サイズは、非常に広くてよいが、しかし微粉末炭素は、N−アルキルラクタムから分離することが難しく、通常の連続流系において目詰まりを生じる傾向があるためにほとんど望ましくない。当業者に明らかであるように、床において目詰まりなしに支持されることができるあらゆるサイズの炭素が使用される。
【0027】
炭素は、通常の手法、例えば無機酸での処理を使用して活性化されうる。
【0028】
この目的のために、あらゆる無機酸、又は水中でのその溶液もしくは無機溶剤が使用されてよい。好適な無機溶剤は、酸が混和性である溶剤、例えば乾燥によって容易に除去されるアルコール及びエーテルを含む。無機酸との接触に続いて、使用される炭素を、脱イオン水で、そして有機溶剤、例えばメタノールですすいでよい。すすぎに続いて、炭素を、有利には(典型的に炭素の加熱によって)乾燥し、そして処理工程において炭素を使用する前にN−アルキルラクタムですすぐ。
【0029】
炭素の表面積は、約200〜4000m2/gの広範囲であってよい。好ましい炭素は、400〜3000m2/g、特に700〜1500m2/gの比表面積を有する。
【0030】
炭素の孔サイズ分布は、約0.1mm〜100mm、有利には0.1mm〜50mmの広範囲であってよい。
【0031】
好ましい一実施態様において、前記炭素は、0.1〜10nmの範囲、有利には1nm〜8nmの範囲、及び最も有利には1.5nm〜4.5nmの範囲の孔サイズ分布におけるピークを有する。
【0032】
前記炭素が前記の範囲での孔サイズ分布におけるピークを有する場合に、色数のさらなる減少が実現されてよく、変色に対して非常に安定であるN−アルキルラクタムを達成する。
【0033】
活性炭のグレードの例は、次の商標名で市販されているものである:Carbo Tech社製のCarbo Tech PAK 1220、Chemviron社製のChemviron CAL、Chemviron社製のCPG LF 1240、Chemviron社製の、F300、F400。
【0034】
炭素を使用する処理方法は、バッチ式、半連続式、又は連続法で操作されうる。
【0035】
本発明の方法は、炭素を、それぞれのバッチに添加し、そしてN−アルキルラクタム及び炭素を、例えば撹拌又は振とうによって互いに本質的に接触することによって実施されうる。そして炭素を有利には分離する。
【0036】
本発明の方法は、当業者に明らかであるようなかかる目的のために適切に設計されたあらゆるバッチ系で処理されうる。
【0037】
接触時間は、要因、例えば温度、圧力、処理されるべきN−アルキルラクタムの量、及び炭素に比例したN−アルキルラクタムの量に非常に依存する。典型的に、接触時間は、0.01時間より多い。有利には時間は0.1時間より多い。典型的に時間は24時間未満である。有利には、時間は18時間未満であり、より有利には8時間未満である。バッチ式において、炭素の量は、有利にはN−アルキルラクタムに比例して1質量%であり、より有利には炭素の量は、約5%より多い。
【0038】
該バッチは撹拌されうる。
【0039】
圧力は大気圧、低大気圧又は超大気圧である。
【0040】
不活性ガス、例えば乾燥窒素のパッドは、該バッチにわたって維持されうる。
【0041】
連続処理方法において、処理されるべきN−アルキルラクタムは、1つ以上の炭素の固定床と接触される。
【0042】
通常の処理装置がこの目的のために使用される。
【0043】
本発明の好ましい一実施態様は、前記炭素を、固定床の形で導入し、そしてN−アルキルラクタムを固定床を覆って通過させる。
【0044】
炭素吸収体は、溶融床又は流動床の形であってもよい。
【0045】
好ましい連続的な実施態様は、回転配置での固定床において特に再生である。
【0046】
好ましい半バッチの実施態様は、2つの皇后に操作される固定床においてである。
【0047】
前記接触時間は、条件に依存して広く、かつ炭素を覆う流量に関して表されてよい。典型的に、前記流量は、N−アルキルラクタム約0.4ml/炭素1リットル/時間より多く、かつ一実施態様において、N−アルキルラクタム約4ml/炭素1リットル/時間より多い。典型的に、前記流量は、たいていN−アルキルラクタム約200ml/炭素1リットル/時間以下であり、一実施態様において前記流量は、たいていN−アルキルラクタム約200ml/炭素1リットル/時間以下であり、かつ他の実施態様において前記流量は、N−アルキルラクタム約20ml/炭素1リットル/時間以下である。
【0048】
圧力は、有利には液状を維持するために十分である。連続操作において、前記装置は、たいてい通常の方法で、流出液が炭素粒子を有さないように満たされる。
【0049】
本発明によるN−アルキルラクタムの炭素での処理温度は、0〜100℃、有利には0〜50℃、特に10〜40℃の範囲で実施される。
【0050】
炭素の活性は、決まった時間を越えて減退する。したがって、該炭素は、通常の実験及び観察による決定と同様に重要な再生を要求してよい。
【0051】
通常の手法を、この目的のために使用することができる。極性溶剤を、炭素を洗い流すために使用してよい。同様に、前記炭素を、堆積物を燃やすために加熱することができる。
【0052】
本発明の方法の好ましい一実施態様は、排気炭素を再生し、従って前記方法において再利用又は再循環させることを可能にする。双方の活性炭の再生は、強鉱酸及び強腐食性アルカリを使用して実施されうる。例えば、種々の濃度、例えば5及び10%でのHClであり、及び種々の濃度、例えば5及び10%での強腐食性アルカリ、例えばNaOH及びKOHである。
【0053】
炭素の再生は、連続して、半バッチで、又はバッチ式で実施されうる。
【0054】
処理後に、前記N−アルキルラクタムを、通常の技術、例えば濾過を使用して炭素から分離することができる。
【0055】
本発明による方法によって得られたN−アルキルラクタムは、特に、N−アルキルラクタムと改良された色調を有するPVDFとの混合物の製造に適している。
【0056】
本発明は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)及びN−アルキルラクタムを含む混合物にも関し、その際該N−アルキルラクタムは、N−アルキルラクタムと吸収体との接触によって精製される。
【0057】
本発明による混合物はN−アルキルラクタムを含む。
【0058】
吸収体と接触させるために好適なN−アルキルラクタムの製造は、前記に記載されている。
【0059】
好ましいN−アルキルラクタムは、NMP及びNEPである。特にNMPが好ましい。
【0060】
本発明によって、N−アルキルラクタムは、N−アルキルラクタムと吸収体との接触によって精製される。
【0061】
前記吸収体は、吸収性を有する当業者に公知のあらゆる材料であってよい。
【0062】
本発明の記載内容において、"吸収体"という用語は、JP−A1−10310795において記載されている固体酸物質を除く。
【0063】
好適な吸収体は、US 4,501,902において記載されており、例えばアルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類酸化物、及びアルミナである。
【0064】
特に、N−アルカリラクタムを処理するために使用される吸収体は、炭素又は活性炭、シリカ、ケイ酸マグネシウム、例えば商標名Ambosol(登録商標)下で公知のケイ酸マグネシウム、ケイ酸土、アルミナ又はマグネシアである。
【0065】
アルミノシリケート、ケイ酸ジルコニウム又はゼオライトが吸収体に好適でもある。
【0066】
好ましい吸収体は、炭素又は活性炭、ケイ酸マグネシウム、例えば商標名Ambosol(登録商標)下で公知のケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ又はマグネシアである。
【0067】
特に好ましい吸収体は、炭素又は活性炭、ケイ酸マグネシウム、アルミナ又はマグネシアであり、最も好ましい炭素又は活性炭である。
【0068】
特にもっとも好ましい吸収体は活性炭である。
【0069】
本発明による混合物において吸収体として使用されてよい炭素は、前記で詳細に記載されている。
【0070】
本発明の好ましい一実施態様において、前記吸収体は、分子ふるいの形で存在する。分子ふるいは、実質的に大意の孔及び均一なタイプを接触する材料である。分子ふるいは、有利には、アルミノシリケート鉱物、土、多孔質ガラス、微孔質チャコール、ゼオライト、活性炭又は小分子を拡散するオープン構造を有する合成化合物からなる。種々の分子ふるいの他の記載は、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3d.ed.,vol.16,pp.811−853(2004)において見出されてよく、参照を持って本発明に組み込まれたものとする。
【0071】
好ましい分子ふるいは、ゼオライト及びアルミノシリケートである。
【0072】
N−アルキルラクタムの吸収体での精製は、N−アルキルラクタムと、吸収体との接触によっておよそもたらされる。
【0073】
N−アルキルラクタムの、N−アルキルラクタムと吸収体との接触による精製は、バッチ式、半バッチ式又は連続法で操作されうる。
【0074】
本発明の方法は、1つ又は複数の吸収体を、それぞれバッチに添加し、N−アルキルラクタム及び吸収体を本質的に互いに、例えば撹拌又は振とうによって接触することによって実施されうる。
【0075】
そして吸収体を有利には分離する。
【0076】
本発明の方法は、当業者に明らかであるようなかかる目的のために適切に設計されたあらゆるバッチ系で処理されうる。
【0077】
接触時間は、要因、例えば温度、圧力、処理されるべきN−アルキルラクタムの量、及び吸収体に比例したN−アルキルラクタムの量に非常に依存する。典型的に、接触時間は、0.01時間より多い。有利には時間は0.1時間より多い。典型的に時間は24時間未満である。有利には、時間は18時間未満であり、より有利には8時間未満である。バッチ式において、吸収体の量は、有利にはN−アルキルラクタムに比例して1質量%であり、より有利には吸収体の量は、約5%より多い。
【0078】
該バッチは撹拌されうる。
【0079】
圧力は大気圧、低大気圧又は超大気圧である。
【0080】
不活性ガス、例えば乾燥窒素のパッドは、該バッチにわたって維持されうる。
【0081】
連続処理方法において、処理されるべきN−アルキルラクタムは、1つ以上の吸収体の固定床と接触される。
【0082】
通常の処理装置がこの目的のために使用される。
【0083】
本発明の好ましい一実施態様は、前記吸収体を、固定床の形で導入し、そしてN−アルキルラクタムを固定床を覆って通過させる。
【0084】
吸収体は、溶融床又は流動床の形であってもよい。
【0085】
好ましい連続的な実施態様は、回転配置での固定床において特に再生である。
【0086】
好ましい半バッチの実施態様は、2つの皇后に操作される固定床においてである。
【0087】
前記接触時間は、条件に依存して広く、かつ吸収体を覆う流量に関して表されてよい。典型的に、前記流量は、N−アルキルラクタム約0.4ml/吸収体1リットル/時間より多く、かつ一実施態様において、N−アルキルラクタム約4ml/吸収体1リットル/時間より多い。典型的に、前記流量は、たいていN−アルキルラクタム約200ml/吸収体1リットル/時間以下であり、一実施態様において前記流量は、たいていN−アルキルラクタム約200ml/吸収体1リットル/時間以下であり、かつ他の実施態様において前記流量は、N−アルキルラクタム約20ml/吸収体1リットル/時間以下である。
【0088】
圧力は、有利には液状を維持するために十分である。連続操作において、前記装置は、たいてい通常の方法で、流出液が吸収体を有さないように満たされる。
【0089】
本発明によるN−アルキルラクタムの吸収体での処理温度は、0〜100℃、有利には0〜50℃、特に10〜40℃の範囲で実施される。
【0090】
吸収体の活性は、決まった時間を越えて減退する。したがって、該吸収体は、通常の実験及び観察による決定と同様に重要な再生を要求してよい。
【0091】
通常の手法を、この目的のために使用することができる。極性溶剤を、吸収体を洗い流すために使用してよい。同様に、前記吸収体を、堆積物を燃やすために加熱することができる。
【0092】
本発明の方法の好ましい一実施態様は、排気吸収体を再生し、従って前記方法において再利用又は再循環させることを可能にする。吸収体の再生は、連続的に、半連続的に又はバッチ式で実施されうる。
【0093】
処理後に、前記N−アルキルラクタムを、通常の技術、例えば濾過を使用して吸収体から分離することができる。
【0094】
好ましい一実施態様において、吸収及び濾過は、単工程で、N−アルキルラクタムの正のゼータポテンシャルを有する体積バルクフィルター(volume bulk filter)で濾過することによって導入されてよい。かかる体積バルクフィルターは、添加物、例えばケイソウ土、パーライト、合成ポリマー(改質ナイロン、ポリビニリピリジン)及び活性炭又は炭素を有するセルロースに基づく濾過装置である。かかるフィルターは、Seitz社(K−und T−Series)から得られる。
【0095】
好ましい他の実施態様において、N−アルキルラクタムは、双方の炭素、有利には活性炭、及び分子ふるいを組合せて接触させる。接触は、連続して又は半連続的であってよい。有利にはN−アルキルラクタムは、最初に分子ふるいと接触し、そしてその後炭素と、例えば分子ふるいの床上のN−アルキルラクタムを覆って、そして炭素の床を覆って通過することによって接触される。炭素及び分子ふるいの組合せでのN−アルキルラクタムの精製は、色数さらなる減少を導き、かつN−アルキルラクタムを、変色に対して非常に安定にする。
【0096】
本発明の混合物は、PVDFを含む。
【0097】
PVDFは、例えばArkema社製のKynar(登録商標)、Dyneon社製のDyneon(登録商標)、及びSolvay S.A.製のSolet(登録商標)、及びKureha社製のKF−Polymer(登録商標)として市販されている。
【0098】
製造方法は、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,"Fluorine−Containing Polymers,Poly(vinylidene fluoride)",Electronic Edition,Last updated:17 Oct 2008,John Wiley&Sons,Inc.)において開示されている。
【0099】
本発明による混合物におけるPVDFの含有率は、N−アルキルラクタムの合された質量に対して、1〜95質量%、有利には1〜80質量%、最も有利には1〜60質量%。特にN−アルキルラクタムに対して1〜50質量%である。
【0100】
本発明は、N−アルキルラクタムと吸収体との接触によって生成された、PVDF及びN−アルキルラクタムを接触することによってPVDFを含有する、改良された色調を有する混合物の製造方法にも関する。
【0101】
本発明による混合物を、PVDF及びN−アルキルラクタムを、最も有利には混合物を、例えば撹拌容器反応器中で撹拌することによって接触することによって製造してもよい。本発明による混合物を製造するための好適な攪拌機、例えば遊星型攪拌機、及び容器は、当業者に公知である。
【0102】
前記混合物の成分を接触させる温度範囲は、たいてい、0〜200℃、有利には0〜100℃、及び最も有利には10〜100℃、及び最も有利には19〜50℃の範囲、特に周囲温度である。
【0103】
均一な溶液得るための成分の混合の持続時間は、PVDFの濃度及び温度に依存する。たいてい混合の持続時間は、1分〜24時間、有利には5分〜12時間、最も有利には10分〜6時間、及び特に15分〜2時間である。
【0104】
前記混合物の成分は、大気圧条件下で、又は不活性条件で、例えば窒素雰囲気下で接触されうる。最も有利には、前記混合物は不活性条件下で混合される。
【0105】
本発明の混合物は、特定の適用のために要求される、他の成分、例えば補助溶剤、充填剤、加工助剤、他のポリマー、酸を含んでもよい。
【0106】
前記混合物は、混合後に直接加工されてよく、またそれらは貯蔵されてよい。たいてい、前記混合物は周囲温度で貯蔵される。
【0107】
本発明による混合物は、改良された色調を有する。PVDFをN−アルキルラクタムに添加すると、本発明による混合物は、茶又は黒に変化しないが、しかし明るい透明色を維持する。
【0108】
本発明の混合物のDIN 6162によって決定されたヨウ素色数は、有利には500未満、最も有利には300未満、さらに寄り遊離位は100未満、特に50未満である。
【0109】
本発明の混合物は、改良された色が品質要求事項である適用のためのPVDFの加工において使用されてよい。
【0110】
特に、本発明による混合物は、改良された色調を示すPVDFフィルム及び/又は膜のために使用されうる。有利には、本発明による混合物は、バッテリーバインダーの製造のためにも使用される。
【0111】
従って、本発明は、本発明による混合物を使用してPVDFを加工する方法にも関する。
【0112】
改良された色調の膜は、Grandine et al.(US 4,203,847)又はBenzinger et. al(US 4,384,047)によって開示され、参照をもって本発明に組み込まれたものとする方法によって製造されてよく、その際これらの参照内で開示された溶剤の代わりに本発明の混合物を処理してよい。
【0113】
かかる膜及びフィルムは、発光ダイオード燃料電池、及び特に電極の製造のための又は固体電解質としてのリチウムバッテリーの製造において要求される。PVDFに基づく電極材料及び電解質の製造方法は、例えばW0−A1−01/65616、EP−A1−0567015、US 5,900,183、US 5,962,167、EP−A1−0793286、WO−A1−01/82403及びUS−B1−6,510,042において開示されている。
【0114】
本発明の利点は、改良された色が重要である適用のためのPVDFの加工に適している混合物が見出されていることである。この混合物は容易に得られる。該混合物は、色調、及び変色に関する不純物が所望されない電子適用において使用される膜及びフィルムの二次加工のために使用されてよい。
【0115】
N−アルキルラクタムを精製するための本発明による方法は、経済的に実行可能であり、かつN−アルキルラクタムをもたらし、その際、改良された色調を有するPVDF及びN−アルキルラクタムの溶液の製造のために使用されてよい。
【0116】
前記適用を、次の実施例において詳述する。
【0117】
実施例1:
NMP(BASF社製)100mlを、活性炭(JapanEnviroChemicals Ltd.製のCarboraffin(登録商標))5gと接触させた。活性炭を、NMPから、濾紙を介してNMPを濾過することによって分離した。
【0118】
PVDF(Kureha KF W1 100)10質量%を、濾過したNMPに、室温で、窒素のブランケット下で添加した。その混合物を、温度をゆっくりと80℃まで上昇させながら、ポリマーが溶解するまで撹拌した。
【0119】
ポリマーが溶解した後、その温度を室温まで下げ、そしてPVDF溶液のヨウ素色数を測定した。該ヨウ素色数は、DIN 6162によって測定し、1であった。
【0120】
比較例1:
PVDF(Kureha KF W1100)10質量%を、未処理のNMPに、室温で、窒素のブランケット下で添加した。その混合物を、温度をゆっくりと80℃まで上昇させながら、ポリマーが溶解するまで撹拌した。
【0121】
ポリマーが溶解した後、その温度を室温まで下げ、そしてPVDF溶液のヨウ素色数を測定した。該ヨウ素色数は、DIN 6162によって測定し、1100であった。
【0122】
実施例2:
NEP(BASF社製)100mlを、活性炭(JapanEnviroChemicals Ltd.製のCarboraffin(登録商標))5gと接触させた。活性炭を、NEPから、濾紙を介してNEPを濾過することによって分離した。
【0123】
PVDF(Kureha KF W1100)10質量%を、濾過したNEPに、室温で、窒素のブランケット下で添加した。その混合物を、温度をゆっくりと80℃まで上昇させながら、ポリマーが溶解するまで撹拌した。
【0124】
ポリマーが溶解した後、その温度を室温まで下げ、そしてPVDF溶液のヨウ素色数を測定した。該ヨウ素色数は、DIN 6162によって測定し、1であった。
【0125】
比較例2:
PVDF(Kureha KF W1 100)10質量%を、未処理のNEPに、室温で、窒素のブランケット下で添加した。その混合物を、温度をゆっくりと80℃まで上昇させながら、ポリマーが溶解するまで撹拌した。
【0126】
ポリマーが溶解した後、その温度を室温まで下げ、そしてPVDF溶液のヨウ素色数を測定した。該ヨウ素色数は、DIN 6162によって測定し、1100であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アルキルラクタムと炭素との接触を含む、N−アルキルラクタムの精製方法。
【請求項2】
前記N−アルキルラクタムが、N−アルキルラクタムと吸収体との接触によって精製される、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)及びN−アルキルラクタムを含有する改良された色調を有する混合物。
【請求項3】
前記PVDFの含有率が、N−アルキルラクタム1〜95質量%である、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
前記PVDFの含有率が、N−アルキルラクタムに対して1〜50質量%である、請求項2又は3に記載の混合物。
【請求項5】
前記N−アルキルラクタムが、N−メチル−ピロリドン(NMP)及び/又はN−エチル−ピロリドン(NEP)である、請求項2から4までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項6】
前記吸収体が、炭素、シリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、マグネシア、ゼオライト、アルミノシリケート、又はケイ酸ジルコニウムである、請求項2から5までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項7】
前記吸収体が炭素である、請求項2から6までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項8】
前記吸収体が、1.5nm〜4.5nmの範囲の孔サイズ分布におけるピークを有する、請求項7に記載の混合物。
【請求項9】
炭素及び分子ふるいの組合せを、吸収体として使用する、請求項2から8までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項10】
N−アルキルラクタムと吸収体との接触によって生成された、PVDF及びN−アルキルラクタムを接触することによってPVDFを含有する、改良された色調を有する混合物の製造方法。
【請求項11】
前記吸収体を、15〜100℃の温度で、5分〜24時間の持続時間で、PVDFと接触させる、請求項10に記載の改良された色調を有するPVDFを含む混合物の製造方法。
【請求項12】
前記吸収体が炭素である、請求項10又は11に記載の改良された色調を有するPVDFを含む混合物の製造方法。
【請求項13】
前記吸収体が、1.5nm〜4.5nmの範囲の孔サイズ分布におけるピークを有する、請求項12に記載の改良された色調を有するPVDFを有する混合物の製造方法。
【請求項14】
改良された色調が品質要求事項である適用のためのPVDFの加工における、請求項2から9までのいずれか1項に記載の混合物の使用。
【請求項15】
改良された色調のフィルム、膜及び被覆のための、請求項2から9までのいずれか1項に記載の混合物の使用。
【請求項16】
電子適用のための改良された色調のフィルム及び膜のための、請求項2から9までのいずれか1項に記載の混合物の使用。
【請求項17】
リチウムイオンバッテリーのための改良された色調のフィルム及び膜のための、請求項2から9までのいずれか1項に記載の混合物の使用。
【請求項18】
N−アルキルラクタムと吸収体との接触による、改良された色調を有するPVDFの溶液を製造するために精製される、N−アルキルラクタムの使用。
【請求項19】
N−アルキルラクタムと炭素との接触による、改良された色調を有するPVDFの溶液を製造するために精製される、N−アルキルラクタムの使用。
【請求項20】
請求項2から9までのいずれか1項に記載の混合物を使用するPVDFの製造方法。

【公表番号】特表2012−509855(P2012−509855A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536851(P2011−536851)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065387
【国際公開番号】WO2010/057917
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】