説明

改良された黒色防錆処理金属、黒色防錆皮膜形成用組成物および黒色防錆皮膜形成方法

【課題】有害な6価クロムを使用せず、金属基体の表面に優れた防錆性を有し、防錆皮膜に傷が発生しても防錆性が維持され、変色・脱色しない黒色防錆皮膜を形成した黒色防錆処理金属、黒色防錆皮膜形成用組成物および黒色防錆皮膜形成方法の提供。
【解決手段】金属基体2の表面に密着して形成された、必須成分としてVを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上を含む黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜4と、第1黒色防錆皮膜4の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第2防錆皮膜5であって、第1黒色防錆皮膜4を構成する前記黒色化用金属のイオン化傾向と同等あるいは大きいイオン化傾向を有する金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第2防錆皮膜5と、第2防錆皮膜5の少なくとも1部にオーバーラップして形成されたタンニン酸を主体とする第3防錆皮膜6とを備えた黒色防錆処理金属1により課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された黒色防錆処理金属、黒色防錆皮膜形成用組成物および黒色防錆皮膜形成方法に関するものであり、さらに詳しくは金属基体の表面に優れた防錆性を有するとともに生成された皮膜は緻密で密着性に優れた均一な黒色を有する複層黒色防錆皮膜を形成した黒色防錆処理金属、黒色防錆皮膜組成物およびそれを用いた黒色防錆皮膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属基体の表面を保護し、錆の発生を防ぎ、機能性や装飾性を向上させるために6価クロムを含む処理液で皮膜処理を行うことが行われている。
また、落ち着いた黒色の外観とするため、あるいはコピー機でコピーする際の光の乱反射を防止して明瞭なコピーを得るため、あるいは放熱効果を高めるためなどの目的で、金属基体の表面にあるいは金属基体の表面にめっき処理を施してから、6価クロムと銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む処理液で表面処理して黒色皮膜を形成することが行われている。
【0003】
6価クロムを使用すると、防錆性に優れており処理作業も比較的容易であり、また、6価クロムによって生成された防錆皮膜は、金属基体の表面に傷などの損傷ができても皮膜を再生するいわゆる自己修復性の作用があるなどの特徴があるが、非常に毒性が強く環境に与える影響が大きい問題がある。
【0004】
一方、6価クロムを含まない処理液で処理する方法として、タンニン酸を含有する有機皮膜処理が提案されている(例えば、特許文献1〜13など)。
また、6価クロムの代替金属を使用した表面処理が提案されている(例えば、特許文献14〜17など)。
しかし、従来行なわれていた6価クロムを含んだ表面処理に比べ、防錆性が十分とはいえず、また、皮膜に傷などが発生しても自己修復性が見られないためほとんど実用化に至っていないのが、現状である。
【0005】
また、金属表面をリン酸塩を含有する組成物に接触させ処理する工程と、この接触処理表面を、防錆性および耐湿性を付与するに十分な植物性タンニンを含有する組成物に接触させる工程からなる金属表面処理方法が提案されている(特許文献18)。
しかし、防錆性すなわち耐食性の向上は十分とはいえず、また、6価クロムのような自己修復性作用がないため金属基体の表面の傷などの防錆効果が得られないことからほとんど使用されていない。
【0006】
本発明者等は先に、金属基体を公知の黒色化用処理液を用いて処理して、金属基体の表面にCu、Agなどの黒色金属化合物を含む黒色皮膜を形成し、次いで黒色金属化合物を構成する金属のイオン化傾向と同等あるいは大きいイオン化傾向を有する金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有し、タンニン酸を含有しない第1処理液を用いて処理して黒色皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第1防錆皮膜を形成し、次いで、タンニン酸を主体として含有し、前記金属イオンおよび/または金属化合物を含有しない第2処理液を用いて処理して第1防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第2防錆皮膜を形成した黒色防錆処理金属を提案した(特許文献19)。
しかし、均一な黒色の外観を有する製品を製造するのが困難である問題がある上、防錆性や耐食性も十分とはいえなかった。
【特許文献1】特開昭48−27936号公報
【特許文献2】特開昭51−71233号公報
【特許文献3】特開昭52−54630号公報
【特許文献4】特開昭52−141440号公報
【特許文献5】特開昭53−19149号公報
【特許文献6】特開昭53−37150号公報
【特許文献7】特開昭53−116240号公報
【特許文献8】特開昭54−110941号公報
【特許文献9】特開昭55−148773号公報
【特許文献10】特開昭55−62173号公報
【特許文献11】特開昭57−16177号公報
【特許文献12】特開昭58−197285号公報
【特許文献13】特開昭59−116381号公報
【特許文献14】特開昭56−43384号公報
【特許文献15】特開昭52−92836号公報
【特許文献16】特開昭57−145987号公報
【特許文献17】特開平9−53192号公報
【特許文献18】特開昭49−47224号広報
【特許文献19】特願2003−405990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、環境に影響を与える有害な6価クロムなどの化学薬品を使用することなく、金属基体の表面に6価クロムの場合と同等の優れた防錆性を有し、防錆皮膜に傷などが発生しても防錆性が維持される優れた自己修復性を有するとともに、緻密で密着性に優れ、均一な黒色の外観を有し、変色、脱色しないなどの特性を有する複層黒色防錆皮膜を形成した改良された黒色防錆処理金属を提供することであり、
本発明の第2の目的は、本発明の改良された黒色防錆処理金属を容易に得るために使用する黒色防錆皮膜形成用組成物を提供することであり、
本発明の第3の目的は、本発明の黒色防錆皮膜形成用組成物を用いて金属基体の表面を処理して本発明の改良された黒色防錆処理金属を容易に得るための黒色防錆皮膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、例えば必須成分としてVイオンを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上の黒色化用金属イオンおよび硫黄化合物を含む第1黒色化用処理液を用いて処理して金属基体の表面に黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜を形成し、
次いで前記第1黒色防錆皮膜を構成する前記黒色化用金属のイオン化傾向と同等あるいは大きいイオン化傾向を有する金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有し、タンニン酸を含有しない第2処理液を用いて処理して前記第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第2防錆皮膜を形成し、
次いで、タンニン酸を主体として含有し、前記金属イオンおよび/または金属化合物を含有しない第3処理液を用いて処理して第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第3防錆皮膜を形成することにより、
落ち着いた均一な黒色の外観を有し、変色したり、脱色しないなどの特性を有する複層黒色防錆皮膜を、金属基体の表面に強く密着させて形成できるるとともに、前記金属イオンなどを含有する第2防錆皮膜中にタンニン酸が浸透、拡散して、前記金属イオンを吸着したり、収着したり、あるいは化学結合するなどして第3防錆皮膜が形成されるので、これらの防錆皮膜の相乗効果により防錆性が顕著に向上し、これらの防錆皮膜に傷などができても防錆性が維持されることを見出して、本発明を成すに至った。
【0009】
課題を解決するため本発明の請求項1記載の発明は、金属基体の表面に密着して形成された、必須成分としてVを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上を含む黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜と、
前記第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第2防錆皮膜であって、前記第1黒色防錆皮膜を構成する前記黒色化用金属のイオン化傾向と同等あるいは大きいイオン化傾向を有する金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第2防錆皮膜と、
前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして形成されたタンニン酸を主体とする第3防錆皮膜とを備え、
さらに必要に応じて、前記第3防錆皮膜の上層部に密着して形成された前記金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第4防錆皮膜を備えるか、あるいはさらに必要に応じて前記第4防錆皮膜の上層部に密着して形成されたタンニン酸を主体とする第5防錆皮膜を備えたことを特徴とする改良された黒色防錆処理金属である。
【0010】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の改良された黒色防錆処理金属において、前記金属基体が、亜鉛およびそれらの合金からなる群から選ばれる金属表面を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1あるいは請求項2記載の改良された黒色防錆処理金属において、前記金属イオンが、Al,Cu,Fe,Ni,Mo,V,Ti,W,Zn,Zrの金属イオンの1種または2種以上の混合物であり、前記金属化合物が、これらの金属を含む金属化合物の1種または2種以上の混合物であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の改良された黒色防錆処理金属において、最外面に透明オーバーコート層が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5記載の発明は、必須成分としてVを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上を含む黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜を金属基体の表面に密着して形成するための第1黒色化用処理液と、
引き続き前記第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第2防錆皮膜を形成するための第2処理液であって、前記第1黒色防錆皮膜を構成する前記黒色化用金属のイオン化傾向と同等あるいは大きいイオン化傾向を有する金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有し、タンニン酸を含有しない第2処理液と、
引き続き前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第3防錆皮膜を形成するためのタンニン酸を主体として含有し、前記金属イオンおよび/または金属化合物を含有しない第3処理液とからなることを特徴とする黒色防錆皮膜形成用組成物である。
【0014】
本発明の請求項6記載の発明は、請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物において、前記第1黒色化用処理液が、必須成分としてVイオンを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上の黒色化用金属イオンおよび硫黄化合物を含み、前記黒色化用金属イオンの濃度が0.1〜100g/lの範囲内にあることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7記載の発明は、請求項5あるいは請求項6記載の黒色防錆皮膜形成用組成物において、前記第1黒色化用処理液のpHが1.0〜10.0の範囲にあることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項8記載の発明は、請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物において、前記第2処理液のpHが2.0〜10.0の範囲にあることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項9記載の発明は、請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物において、前記第3処理液のタンニン酸の濃度が0.1〜30g/lの範囲であり、pHが3.5〜8.0の範囲にあることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項10記載の発明は、請求項5から請求項7のいずれかに記載の第1黒色化用処理液で金属基体の表面を処理して前記金属基体の表面に密着して第1黒色防錆皮膜を形成し、
引き続き請求項5あるいは請求項8記載の第2処理液で処理して前記第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第2防錆皮膜を形成し、必要に応じて水洗し、
引き続き請求項5あるいは請求項9記載の第3処理液で処理して前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第3防錆皮膜を形成した後、必要に応じて水洗し、乾燥することを特徴とする黒色防錆皮膜形成方法である。
【0019】
本発明の請求項11記載の発明は、請求項10記載の黒色防錆皮膜形成方法において、前記第3防錆皮膜を形成した後、請求項5あるいは請求項8記載の第2処理液で処理し前記第3防錆皮膜の上層部に密着して前記金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第4防錆皮膜を形成した後、水洗し、乾燥するか、あるいは前記水洗後、必要に応じて引き続き請求項5あるいは請求項9記載の第3処理液で処理して前記第4防錆皮膜の上層部に密着してタンニン酸を主体とする第5防錆皮膜を形成した後、水洗し、乾燥することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1記載の改良された黒色防錆処理金属は、製品全体にわたり落ち着いた均一な黒色の外観を有し、変色したり、脱色せず、コピー機でコピーする際の光の乱反射を防止して明瞭なコピーを得ることができる効果があり、また放熱を高める作用効果が高いなどの特性を有する複層黒色防錆皮膜(第1黒色防錆皮膜、第2防錆皮膜、第3防錆皮膜などから構成される)が金属基体の表面に緻密に強く密着して形成されており、そして前記金属イオンなどを含有する第2防錆皮膜中にタンニン酸が浸透、拡散して、前記金属イオンを吸着したり、収着したり、あるいは化学結合するなどして第3防錆皮膜が形成されているので、これらの防錆皮膜の相乗効果により防錆性が顕著に向上し、例えこれらの複層黒色防錆皮膜に傷などができても、この傷に第2防錆皮膜中の金属イオンおよび/または金属化合物が供給されて傷を覆って防錆するので防錆性が維持され、自己修復性が高いので、環境に影響を与える有害な6価クロムなどの化学薬品を使用することなく、6価クロムの場合と同等の優れた防錆性を有するという、顕著な効果を奏する。
さらに本発明の請求項1記載の改良された黒色防錆処理金属は、必要に応じて前記第3防錆皮膜の上層部に密着して前記金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第4防錆皮膜を形成するか、あるいはさらに、必要に応じて前記第4防錆皮膜の上層部に密着してタンニン酸を主体とする第5防錆皮膜を形成することができ、これらの防錆皮膜の相乗効果により複層黒色防錆皮膜の金属基体の表面に対する密着性の向上、変色・脱色の抑制、防錆性のさらなる向上および自己修復性のさらなる向上を図ることができる。
【0021】
本発明の請求項2記載の改良された黒色防錆処理金属は、請求項1記載の改良された黒色防錆処理金属において、前記金属基体が亜鉛およびそれらの合金からなる群から選ばれる金属表面を有するので、より優れた防錆性を有するという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0022】
本発明の請求項3記載の改良された黒色防錆処理金属は、請求項1あるいは請求項2記載の改良された黒色防錆処理金属において、前記金属イオンが、Al,Co,Cu,Fe,Ni,Mo,V,Ti,W,Zn,Zrの金属イオンの1種または2種以上の混合物であり、前記金属化合物が、これらの金属を含む金属化合物の1種または2種以上の混合物であるので、より優れた防錆性を有するという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0023】
本発明の請求項4記載の改良された黒色防錆処理金属は、請求項1から請求項3のいずれかに改良された記載の黒色防錆処理金属において、最外面に透明オーバーコート層が形成されているので、より優れた防錆性などを有するという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0024】
本発明の請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物は、その第1黒色化用処理液を用いて、金属基体の表面に密着して黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜を容易に形成でき、引き続き第2処理液を用いて、前記第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第2防錆皮膜を容易に形成でき、引き続き第3処理液を用いて、前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第3防錆皮膜を形成することができるという、顕著な効果を奏する。
【0025】
本発明の請求項6記載の発明は、請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物において、前記第1黒色化用処理液が、必須成分としてVイオンを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上の黒色化用金属イオンおよび硫黄化合物を含み、前記黒色化用金属イオンの濃度が0.1〜100g/lの範囲内にあるので、より密着性に優れた第1黒色防錆皮膜を形成できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0026】
本発明の請求項7記載の発明は、請求項5あるいは請求項6記載の黒色防錆皮膜形成用組成物において、前記第1黒色化用処理液のpHが1.0〜10.0の範囲にあるので、より密着性に優れた第1黒色防錆皮膜を形成できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0027】
本発明の請求項8記載の黒色防錆皮膜形成用組成物は、請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物において、第2処理液のpHが2.0〜10.0の範囲にあるので、密着性および防錆性にさらに優れた複層黒色防錆皮膜を形成できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0028】
本発明の請求項9記載の黒色防錆皮膜形成用組成物は、請求項5から請求項8のいずれかに記載の黒色防錆皮膜形成用組成物において、第3処理液のタンニン酸の濃度が0.1〜30g/lの範囲であり、pHが3.5〜8.0の範囲にあるので、密着性および防錆性にさらに優れた複層黒色防錆皮膜を形成できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0029】
本発明の請求項10記載の黒色防錆皮膜形成方法により、製品全体にわたり落ち着いた均一な黒色の外観を有し、変色したり、脱色せず、コピー機でコピーする際の光の乱反射を防止して明瞭なコピーを得ることができる効果があり、また放熱を高める作用効果が高いなどの特性を有する複層黒色防錆皮膜が金属基体の表面に緻密に強く密着して形成されており、そして、前記金属イオンなどを含有する第2防錆皮膜中にタンニン酸が浸透、拡散して、前記金属イオンを吸着したり、収着したり、あるいは化学結合するなどして第3防錆皮膜が形成されているので、これらの防錆皮膜の相乗効果により防錆性が顕著に向上し、例えこれらの複層黒色防錆皮膜に傷などができても、この傷に第2防錆皮膜中の金属イオンおよび/または金属化合物が供給されて傷を覆って防錆するので防錆性が維持され、自己修復性が高いので、環境に影響を与える有害な6価クロムなどの化学薬品を使用することなく、6価クロムの場合と同等の優れた防錆性を有する改良された黒色防錆処理金属を容易に製造できるという、顕著な効果を奏する。
【0030】
本発明の請求項11記載の黒色防錆皮膜形成方法により、より防錆性が向上するとともにより防錆持続性に優れた自己修復性の高い複層黒色防錆皮膜を容易に形成できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の黒色防錆処理金属の一実施形態の断面を模式的に示す説明図である。
図2は、図1に示した本発明の黒色防錆処理金属の平面を模式的に示す平面説明図である。
図3は、比較の黒色防錆処理金属の平面を模式的に示す平面説明図である。
【0032】
図1に示したように、本発明の黒色防錆処理金属1は、金属基体2の表面に密着して形成された黒色金属硫化物粒子3を含む第1黒色防錆皮膜4と、第1黒色防錆皮膜4の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第2防錆皮膜5と、第2防錆皮膜5の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第3防錆皮膜6とを備えている。この例では第1黒色防錆皮膜4、第2防錆皮膜5、第3防錆皮膜6をまとめて複層黒色防錆皮膜と称す。
【0033】
本発明の黒色防錆処理金属1は、図2に示したように製品全体にわたり落ち着いた均一で微細な黒色金属硫化物粒子3が生成するため均一な黒色の外観を有している。
本発明の黒色防錆処理金属1は、変色したり、脱色せず、コピー機でコピーする際の光の乱反射を防止して明瞭なコピーを得ることができる効果があり、また放熱を高める作用効果が高いなどの特性を有する複層黒色防錆皮膜が金属基体2の表面に緻密に強く密着して形成されている。
そして、前記金属イオンなどを含有する第2防錆皮膜5中に第3防錆皮膜6からタンニン酸が浸透、拡散して、前記金属イオンを吸着したり、収着したり、あるいは化学結合するなどして第3防錆皮膜6が形成されているので、これらの防錆皮膜の相乗効果により防錆性が顕著に向上し、例えこれらの複層黒色防錆皮膜に傷などができても、この傷に第2防錆皮膜5中の金属イオンおよび/または金属化合物が供給されて傷を覆って防錆するので、防錆性が維持され、自己修復性が高い。
【0034】
図3は、公知の黒色化用処理液を用いて金属基体2の表面にCu、Agなどの黒色金属硫化物を含む黒色皮膜を形成した以外は図1に示した本発明の黒色防錆処理金属と同様に処理した比較の黒色防錆処理金属の平面を模式的に示す平面説明図である。
比較の黒色防錆処理金属11は、図3に示したように製品の中央部には褐色状の金属硫化物粒子31が生成し、そして製品の周縁部には荒い黒色金属硫化物粒子32が生成しており、全体にわたり不均一な黒褐色の外観を呈する。
【0035】
図4は、本発明の黒色防錆処理金属の他の実施形態の断面を模式的に示す説明図である。
図4に示した本発明の黒色防錆処理金属1Aは、金属基体2の表面に密着して形成された黒色金属硫化物粒子3を含む第1黒色防錆皮膜4と、第1黒色防錆皮膜4の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第2防錆皮膜5と、第2防錆皮膜5の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第3防錆皮膜6とを備えおり、そしてさらに前記第2処理液を用いて第3防錆皮膜6の上層部に密着して形成された前記金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第4防錆皮膜7と、前記第3処理液を用いて第4防錆皮膜7の上層部に密着して形成されたタンニン酸を主体と第5防錆皮膜8とを備えている。この例では第1黒色防錆皮膜4、第2防錆皮膜5、第3防錆皮膜6、第4防錆皮膜7、第5防錆皮膜8をまとめて複層黒色防錆皮膜と称す。
本発明の黒色防錆処理金属1Aは、図1に示した本発明の黒色防錆処理金属1の第3防錆皮膜6の上にさらに第4防錆皮膜7と第5防錆皮膜8とが形成されているので、本発明の黒色防錆処理金属1と同様な効果を有する上、防錆性および自己修復性がさらに向上する。
【0036】
図5は、本発明の黒色防錆処理金属の他の実施形態の断面を模式的に示す説明図である。
図5に示したように、本発明の黒色防錆処理金属1Bは、金属基体2の表面に密着して形成された黒色金属硫化物粒子3を含む第1黒色防錆皮膜4と、第1黒色防錆皮膜4の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第2防錆皮膜5と、第2防錆皮膜5の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第3防錆皮膜6と、第3防錆皮膜6の面に公知の透明ラッカーなどを用いて公知の方法、装置を用いて形成された透明オーバーコート層9とを備えている。この例では第1黒色防錆皮膜4、第2防錆皮膜5、第3防錆皮膜6をまとめて複層黒色防錆皮膜と称す。
本発明で用いる透明オーバーコート層9はの形成法は、特に限定されるものではなく、下層の複層黒色防錆皮膜の黒色が見えなくなるなど複層黒色防錆皮膜の特性を損なうものでなければ、コーテイング法、スプレー法、浸漬法、印刷法、フィルム貼着法などいずれの手段によって形成してもよい。複層黒色防錆皮膜の特性を損なわない範囲で透明オーバーコート層9の種類(熱可塑性、熱硬化性、あるいは紫外線などによる放射線硬化性など)、厚さ、透明度、防錆性、耐摩耗性などを決めることが好ましい。
そして、本発明の黒色防錆処理金属1Bは、図1に示した本発明の黒色防錆処理金属1の第3防錆皮膜6の上にさらに透明オーバーコート層9が形成されているので、本発明の黒色防錆処理金属1と同様な効果を有する上、防錆性などをさらに向上させたり、耐摩耗性などの新たな特性を付与することができる。
【0037】
本発明で用いる金属基体の表面の材質には特に限定されないが、具体的には、例えば、亜鉛およびそれらの合金からなる群から選ばれる金属表面を挙げることができる。金属基体はこれらの金属自体で形成されたものでも、あるいは、金属基体の本体は金属やセラミックやプラスチックスなどの材料から形成されているが、表面に電気メッキ、化学メッキ、真空蒸着などの手法や積層法などの手法によりこれらの金属の層が形成されているものでも、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0038】
本発明で用いる第1黒色化用処理液は、黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜を形成するための処理液であり、必須成分としてVを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上の黒色化用金属を含む処理液である。黒色化用金属は黒色化用金属のイオンの混合物であってもよく、これらの黒色化用金属を含む金属化合物の混合物であってもよい。黒色化用金属は黒色化用金属のイオンの混合物である方が好ましい。
【0039】
第1黒色化用処理液に用いる前記金属化合物としては、具体的には、例えば、バナジン酸化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、チタン酸化合物、タングステン酸化合物などの金属化合物、前記金属を含む金属酸化物、前記金属を含むフッ素金属化合物の1種または、2種以上の混合物である。
前記バナジン酸化合物としては、例えば、バナジン酸アンモン、バナジン酸ナトリウムなどが使用できる。
前記コバルト化合物としては、例えば、硫酸コバルト、硝酸コバルトなどが使用できる。
前記ニッケル化合物としては、例えば、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルなどが使用できる。
前記タングステン酸化合物としては、例えば、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウムなどが使用できる
前記チタン酸化合物については、例えば、各種アルカリ金属塩などのほかにハロゲン化合物も使用できる。
【0040】
黒色化用金属を硫化して黒色金属硫化物を生成させるためには、第1黒色化用処理液に硫黄イオンや硫黄化合物を所定量添加することが好ましい。
硫黄イオンや硫黄化合物は、第1黒色化用処理液に含まれる黒色化用金属(必須成分としてVを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上を含む)に対して当量あるいは当量以下の量を添加することが好ましい。
黒色化用金属に対して当量以下の量を添加することがより好ましい。
黒色化用金属に対して当量以下で且つ(1/100)当量までの量を添加することがさらに好ましく、黒色化用金属に対して当量以下で且つ(1/10)当量までの量を添加することが特に好ましい。
【0041】
黒色化用金属に対して当量以下で且つ(1/100)当量までの量を添加すると例えば、硫化バナジウムと硫化コバルトなどの黒色金属硫化物が生成するとともに、水酸化バナジウムや水酸化コバルトなどが同時に生成し、これらが均一に混合した状態で金属基体の表面に第1黒色防錆皮膜が形成されるため、形成された第1黒色防錆皮膜は、より均一な黒色の外観を有し、金属基体の表面により緻密に強く密着しており、耐食性により優れている。
【0042】
本発明で用いる硫黄化合物としては具体的には、例えば、硫黄、硫化ソーダ、チオ硫酸ソーダなどの無機硫黄化合物、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、1−チオグリセロール、チオジグリコールなどの脂肪族系硫黄化合物、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオ安息香酸などの芳香族系硫黄化合物、その他にN,N’−ジエチルチオ尿素などを挙げることができる。これらは単独でも2つ以上の混合しても使用できる。
【0043】
第1黒色化用処理液のpHは、特に限定されないが、pH1.0〜10.0の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、1.0〜8.0に調整するのがよい。pHが1.0未満あるいはpH10.0を超えると金属基体を溶解したり、不活性化したりして密着性が低下し易くなる。
【0044】
第1黒色化用処理液中の金属イオンおよび/または金属化合物の含有量は特に限定されないが、1種または、2種以上の混合物の金属イオンに換算して総含有量は、0.1〜100g/lが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜50g/lである。0.1g/l未満では、十分な黒色が得られなく、100g/lを超えてもそれ以上の黒色化とならず不経済となる恐れがある。
【0045】
第1黒色化用処理液のpHは、酸性物質やアルカリ性物質を用いて調整するのが良い。pH調整用のアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、アンモニア水などが挙げられ、酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、弗化水素酸、蟻酸、酢酸、有機酸、有機カルボン酸などを挙げることができる。
【0046】
第1黒色化用処理液による処理温度は、およそ10〜60℃程度、好ましくは、およそ15〜40℃がよい。10℃未満では、反応速度が遅く十分な黒色が得られなく、50℃を超えると処理液の蒸発量が多くなり不経済となる。さらに、第1黒色化用処理液による処理時間は、およそ5〜180秒であり、好ましくは、およそ20〜150秒がよい。10秒未満では短く十分な黒色が得られなく、150秒を超えても処理濃度の低減、黒色化においてより以上の効果を期待できない。
【0047】
第1黒色化用処理液には、安定化剤として酸化剤、還元剤、クエン酸などの有機カルボン酸あるいはそのアルカリ金属塩などの塩からなるキレート剤などの公知の添加剤を添加することができる。
【0048】
中でも前記キレート剤の添加はより有効であり、本発明において好ましく使用できる。
例えば亜鉛や亜鉛合金などの表面を有する金属基体を第1黒色化用処理液で処理して第1黒色防錆皮膜を形成する際には、処理する表面の亜鉛や亜鉛合金などがイオンになって溶解し、均一な黒色の第1黒色防錆皮膜が金属基体の表面に緻密に強く密着して、且つ迅速に形成されるのが阻害される。しかし、第1黒色化用処理液に前記キレート剤を添加すると、溶解した亜鉛や亜鉛合金などのイオンがキレート化されて安定化されるので、より均一な黒色の外観を有し、且つ金属基体の表面により緻密に強く密着した第1黒色防錆皮膜が迅速に形成される。
【0049】
第1黒色化用処理液で処理して得られる第1黒色防錆皮膜の厚さは特に限定されるものではない。しかし、上記処理条件で処理するとおよそ0.02〜0.2μm程度の厚さの第1黒色防錆皮膜が得られる。
【0050】
第1黒色化用処理液を用いて金属基体の表面を処理して金属基体の表面に黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜を形成した後、引き続き第2処理液を用いて処理して前記第1黒色防錆皮膜に浸透、拡散させ、第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップさせて第2防錆皮膜を形成する。
【0051】
第1黒色化用処理液を用いて金属基体の表面を処理して金属基体の表面に黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜を形成した後すぐに、好ましくは第1黒色化用処理液を用いて金属基体の表面を処理した後に水洗して第1黒色防錆皮膜から第1黒色化用処理液を実質的に洗い流した後に、第2処理液を用いて第1黒色防錆皮膜の表面を処理して第2防錆皮膜を形成する。
【0052】
前記黒色金属硫化物を構成する黒色化用金属のイオン化傾向と同等あるいは大きいイオン化傾向を有する金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有し、タンニン酸を含有しない第2処理液を使用すると、第2処理液を用いて処理する際に前記黒色金属硫化物が分解したり、溶解したり、変化するのを防止でき、前記第1黒色防錆皮膜を安定に維持しつつ第2処理液を用いて前記第1黒色防錆皮膜の表面を処理して第2防錆皮膜を形成できるので、本発明において重要である。
【0053】
イオン化傾向とは金属が液体と接触して陽イオンになろうとする傾向であり、定量的には、その液体中における金属(M)/金属陽イオン(Mz+)系の標準電極電位*o (Mz+/M)の大きさでその序列が決まる。
水に対するイオン化傾向の大きさの順序に並べた元素の序列をはオン化序列と称されるが、主な元素に対するこの序列は、K、Na、Ca、Mg、Zn、Cr、Fe(II)、Cd、Co、Ni、Sn、Pb、Fe(III)、H、Cu、Hg、Auである。
【0054】
本発明において、もし、第1黒色化用処理液を用いて金属基体の表面を処理して金属基体の表面に黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜を形成した後、引き続きタンニン酸を主体として含有し、前記金属イオンおよび/または金属化合物を含有しない第3処理液を用いて処理すると、タンニン酸の作用により前記黒色金属硫化物が溶解したり変化して前記第1黒色防錆皮膜が溶解、消失したり、破壊されたりする現象が起きるので、避けなければならない。
【0055】
第2処理液に用いる前記金属イオンは、特に限定されないが、具体的には、例えば、Al、Cu、Fe、Ni、Mo、V、Ti、W、Zn、Zrの金属イオンの1種または、2種以上の混合物を挙げることができる。前記金属化合物は、これらの金属を含む金属化合物の1種または、2種以上の混合物である。
【0056】
第2処理液に用いる前記金属化合物としては、具体的には、例えば、モリブデン酸化合物、バナジン酸化合物、チタン酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物などの金属化合物、前記金属を含む金属酸化物、前記金属を含むフッ素金属化合物の1種または、2種以上の混合物である。
前記モリブデン酸化合物としては、例えば、モリブデン酸アンモン、モリブデン酸ナトリウムなどが使用できる。
前記バナジン酸化合物としては、例えば、バナジン酸アンモン、バナジン酸ナトリウムなどが使用できる。
前記タングステン酸化合物としては、例えば、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウムなどが使用できる
前記チタン酸化合物、ジルコン酸化合物については、例えば、同様に各種アルカリ金属塩などのほかにハロゲン化合物も使用できる。
【0057】
第2処理液のpHは、特に限定されないが、pH2.0〜10.0の範囲にあることが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0に調整するのがよい。第2処理液のpHがpH2.0未満あるいはpH10.0を超えると生成した第1黒色防錆皮膜が再溶解し易くなるので好ましくない。
【0058】
第2処理液の金属イオンおよび/または金属化合物の含有量は特に限定されないが、金属イオンに換算して含有量は、0.1〜100g/lが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜60g/lである。0.1g/l未満では、防錆性が劣る恐れがあり、100g/lを超えてもそれ以上防錆性が向上せず不経済となる恐れがある。
【0059】
第2処理液のpHは、酸性物質やアルカリ性物質を用いて調整するのが良い。pH調整用のアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などが挙げられ、酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、弗化水素酸、蟻酸、酢酸、有機酸、有機カルボン酸などを挙げることができる。
【0060】
第2防錆皮膜の厚さは特に限定されるものではない。しかし、上記処理条件で処理すると第1黒色防錆皮膜とほぼ同じおよそ0.02〜0.2μm程度の厚さあるいはそれよりやや厚い厚さの第2防錆皮膜が得られる。
【0061】
第2処理液による処理温度は、およそ10〜60℃程度、好ましくは、およそ15〜40℃がよい。10℃未満では、第1黒色防錆皮膜に対して浸透、拡散、吸着、収着、化学結合するなどの速度が遅く十分な防錆性が得られなくなる恐れがあり、60℃を超えると処理液の蒸発量が多くなり不経済となる。
さらに、第2処理液による処理時間は、およそ5〜180秒であり、好ましくは、およそ10〜150秒がよい。10秒未満では第2防錆皮膜が生成するが不十分な厚さとなる恐れがあり、150秒を超えても処理濃度の低減、防錆性能においてより以上の効果を期待できない。
【0062】
第2処理液には金属イオンおよび/または金属化合物以外に、金属イオンの処理液中での安定化剤として酸化剤、還元剤、前記キレート剤などの公知の添加剤を添加することができる。
【0063】
中でも前記キレート剤の添加は第2処理液の安定化に対して有効であり、本発明において好ましく使用できる。
【0064】
そして、第2防錆皮膜を形成した後、必要に応じて水洗し、引き続き第3処理液で第2防錆皮膜の表面を処理して前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第3防錆皮膜を形成する。
第2処理液を用いて前記第2防錆皮膜を形成した後すぐに、好ましくは前記第2防錆皮膜を形成した後に水洗して皮膜から第2処理液を実質的に洗い流した後に、タンニン酸を主体として含有し、前記金属インオおよび/または金属化合物を含まない第3処理液を用いて前記第2防錆皮膜の表面を処理して前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第3防錆皮膜を形成する。
【0065】
第3処理液で処理した後、水洗して第2防錆皮膜の上から第3処理液を実質的に洗い流した後、乾燥して仕上げることにより本発明の黒色防錆処理金属を得ることができる。
【0066】
本発明で用いるタンニン酸は、ポリオキシフェニルを基本構造とする複雑な分子構造を有するガロタンニン類であり、必ずしも純物質ではなく、粗製のものはタンニンと称せられる。本発明で用いるタンニン酸の具体例としては、例えばデプシド、中国産タンニン、トルコ産タンニン、ハマメリタンニン、スマツクタンニン、ケプリン酸、5倍子タンニン、エラーグ酸タンニン、カテキン、カテキュー、ガンビア、ケブラチョタンニンなど、これらの1種または2種以上の混合物などを挙げることができる。
本発明においては、市販のタンニン酸を用いることができる。
【0067】
第3処理液のタンニン酸の濃度やpHは、特に限定されないが、タンニン酸の濃度は好ましくは0.1〜30g/l、さらに好ましくは、0.5〜25g/lの範囲であり、pHは好ましくは3.5〜8.0、さらに好ましくは4.0〜7.0の範囲である。
第3処理液のタンニン酸の濃度が、0.1g/l未満であると良好な防錆性のあるタンニン酸を主体とする第3防錆皮膜が得られない恐れがあり、30g/lを超えても処理時間短縮、防錆性能においてより以上の効果を期待できない。
第3処理液のpHがpH3.5未満である場合あるいはpH8.0を超える場合は、生成した第3防錆皮膜あるいはさらに第1黒色防錆皮膜が再溶解し易くなる。
【0068】
またこの第3処理液の温度は、およそ10〜60℃が望ましい。10℃未満では、反応速度が遅く十分な第3防錆皮膜の形成がなされない恐れがあり、60℃を超えると有機物が分解する恐れがある上、処理液の蒸発量が多くなり不経済となる。
さらに、第3処理液での処理時間は、およそ15〜180秒が望ましい。15秒未満では第3防錆皮膜を生成するが厚さなどが不十分となる恐れがあり、180秒を超えても処理濃度の低減、防錆性能においてより以上の効果を期待できない。
【0069】
第3処理液のpHは、酸性物質やアルカリ性物質を用いて調整するのが良い。pH調整用のアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などが挙げられ、酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、弗化水素酸、蟻酸、酢酸、有機酸、有機カルボン酸などを挙げることができる。
【0070】
第3処理液で処理して得られる第3防錆皮膜の厚さは特に限定されるものではない。
しかし、上記処理条件で処理すると、第2防錆皮膜とほぼ同じおよそ0.02〜0.2μm程度の厚さあるいはそれよりやや厚い厚さの第3防錆皮膜が得られる。
【0071】
第3処理液にはタンニン酸の安定化剤として酸化剤、還元剤、前記キレート剤などの公知の添加剤を添加することができる。
【0072】
上記のようにして金属基体の上に形成される第1黒色防錆皮膜、第2防錆皮膜および第3防錆皮膜の厚さの合計は、特に限定されるものではない。しかし上記の処理条件で処理すると合計でおよそ0.05〜0.5μm程度の厚さの防錆性に優れた複層黒色防錆皮膜が得られる。
第3防錆皮膜の上にさらに第4防錆皮膜と第5防錆皮膜とを形成すると合計でおよそ0.05〜0.5μm程度よりさらにやや厚い厚さの防錆性にさらに優れた複層黒色防錆皮膜が得られる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
[実施例1]
SPCC鋼鈑(100×50×0.1mm)にめっき膜厚8〜12μmの亜鉛めっきを施したものを試験片とした。
黒色化用金属を含む金属化合物としてメタバナジン酸アンモン、硫酸コバルトを用いて、本発明の黒色防錆皮膜形成用組成物の第1黒色化用処理液(V10g/l、Co10g/l、硝酸にてpH3.0)を調製した。前記の試験片をこの第1黒色化用処理液に硫黄化合物(チオグリコール酸)1g/l添加した処理液で30℃で60秒間浸漬して処理して表面に第1黒色防錆皮膜を形成した後、水洗した。
第1黒色化用処理液で処理、水洗後、続いて本発明の黒色防錆皮膜形成用組成物の第2処理液(Vイオン含有量3.0g/l)で25℃で60秒間浸漬して処理して第2防錆皮膜を形成した後、水洗し、さらに続いて本発明の黒色防錆皮膜形成用組成物の第3処理液(タンニン酸含有量3.0g/l)で25℃で60秒間浸漬して処理して第3防錆皮膜を形成した後、水洗し、60℃で10分間乾燥して本発明の黒色防錆処理金属を得た。
【0074】
得られた本発明の黒色防錆処理金属の防錆性を評価するためにJIS−2371に準拠する塩水噴霧試験(但し、試験温度は50℃とした)を行った。評価の方法は、試験片に白錆が発生した時間(h)と白錆の発生した面積(試験片の全面積に対する白錆の発生した合計面積の割合)が5%を超えるまでの時間(h)で評価した。
表1に、第1黒色化用処理液のVイオン含有量、Co、Ni、Mo、Wイオンの含有量、pH調整剤、pH、塩水噴霧試験結果(白錆発生時間、白錆面積5%超までの時間)および外観を目視で評価した時の色調を示す。
【0075】
[実施例2〜6]
表1に示した第1黒色化用処理液としてVとCoの濃度を変えた処理液(pHは、硝酸にて3.0)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用い、第2防錆皮膜を形成するための第2処理液、第3防錆皮膜を形成するための第3処理液(タンニン酸含有量3.0g/l)は実施例1と同様のものを用いて、実施例1と同様にして試験片を処理して、本発明の黒色防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表1に示す。
【0076】
[実施例7〜12]
表1に示した第1黒色化用処理液としてVを含むとともに、Co以外のNi、Mo、Wから選択される1種の金属イオンをそれぞれ用い、これらの金属イオンの濃度を変えた第1黒色化用処理液(pHは、硝酸にて3.0)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用い、第2防錆皮膜を形成するための第2処理液、第3防錆皮膜を形成するための第3処理液(タンニン酸含有量3.0g/l)は実施例1と同様のものを用いて、実施例1と同様にして試験片を処理して、本発明の黒色防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表1に示す。
【0077】
[実施例13〜15]
表1に示した第1黒色化用処理液としてVとCoを用い、pHを硝酸または、水酸化ナトリウムにて、1.0、6.0、9.0に調整した処理液に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用い、第2防錆皮膜を形成するための第2処理液、第3防錆皮膜を形成するための第3処理液(タンニン酸含有量3.0g/l)は実施例1と同様のものを用いて、実施例1と同様にして試験片を処理して、本発明の黒色防錆処理金属を得た。本発明の黒色防錆処理金属を実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
(比較例1)
実施例1で用いた試験片を用い、Vを含むが、Co、Ni、Mo、Wから選択される1種の金属イオンを含まない処理液(V含有量5.0g/l)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用い、そして、第2防錆皮膜を形成するための第2処理液、第3防錆皮膜を形成するための第3処理液(タンニン酸含有量3.0g/l)は実施例1と同様のものを用い、実施例1と同様にして、比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表2に示す。
【0080】
(比較例2)
V含有量を10.0g/lとした処理液に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用いた以外は比較例1と同様にして、比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表2に示す。
【0081】
(比較例3)
Vを含まず、Coを含む処理液(Co含有量10.0g/l)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用いた以外は比較例1と同様にして比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表2に示す。
【0082】
(比較例4)
Vを含まず、Niを含む処理液(Ni含有量10.0g/l)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用いた以外は比較例1と同様にして比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表2に示す。
【0083】
(比較例5)
Vを含まず、Moを含む処理液(Mo含有量10.0g/l)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用いた以外は比較例1と同様にして比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表2に示す。
【0084】
(比較例6)
Vを含まず、Wを含む処理液(W含有量10.0g/l)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用いた以外は比較例1と同様にして比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表2に示す。
【0085】
(比較例7)
Cuを含む処理液(Cu含有量5.0g/l)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用いた以外は比較例1と同様にして比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表2に示す。
【0086】
(比較例8)
Agを含む処理液(Ag含有量5.0g/l)に前記硫黄化合物1g/l添加した処理液を用いた以外は比較例1と同様にして比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行なった結果および色調を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
表1から、第1黒色化用処理液―第2処理液―第3処理液で順次処理した実施例1〜15の本発明の黒色防錆処理金属は優れた均一な黒色の色調を有するとともに優れた防錆性を有することが判る。
それに対して、表2から、V,Co,Ni,TiおよびWから選択される1種のみを含む処理液を用いて処理を行った、比較例1〜6の比較のための防錆処理金属は、防食層の色調が淡青色〜無色である上、防錆性が劣り、Cu、Agのみを含む処理液を用いて処理を行った、比較例7〜8の比較のための防錆処理金属は、防食層の色調が黒色であるが不均一である上、防錆性が劣り、いずれも実用性がないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の黒色防錆処理金属は、構成が簡単で、複層黒色防錆皮膜が金属基体の表面に強く密着して形成されており、落ち着いた黒色の外観を有し、変色したり、脱色したりせず、コピー機でコピーする際の光の乱反射を防止して明瞭なコピーを得ることができる効果があり、また、放熱を高める作用効果が高く、そして金属イオンなどを含有する第2防錆皮膜中にタンニン酸が浸透、拡散して、前記金属イオンを吸着したり、収着したり、あるいは化学結合するなどして第3防錆皮膜が形成されており、これらの防錆皮膜の相乗効果により防錆性が顕著に向上し、これらの防錆皮膜に傷などができても防錆性が維持され、自己修復性が高い特性を有するので、産業上の利用価値が高い。
さらに必要に応じて前記第3防錆皮膜の上層部に密着して金属イオンなどを含有する第4防錆皮膜を形成するか、あるいはさらに必要に応じて前記第4防錆皮膜の上層部に密着してタンニン酸を主体と第5防錆皮膜を形成すれば、黒色皮膜の金属基体の表面に対する密着性の向上、変色・脱色の抑制、防錆性のさらなる向上および自己修復性のさらなる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の黒色防錆処理金属の一実施形態の断面を模式的に示す説明図である。
【図2】図1に示した本発明の黒色防錆処理金属の平面を模式的に示す平面説明図である。
【図3】比較の黒色防錆処理金属の平面を模式的に示す平面説明図である。
【図4】本発明の黒色防錆処理金属の他の実施形態の断面を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明の黒色防錆処理金属の他の実施形態の断面を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1、1A、1B 本発明の黒色防錆処理金属
2 金属基体
3 黒色金属硫化物粒子
4 第1黒色防錆皮膜
5 第2防錆皮膜
6 第3防錆皮膜
7 第4防錆皮膜
8 第5防錆皮膜
9 透明オーバーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基体の表面に密着して形成された、必須成分としてVを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上を含む黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜と、
前記第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして形成された第2防錆皮膜であって、前記第1黒色防錆皮膜を構成する前記黒色化用金属のイオン化傾向と同等あるいは大きいイオン化傾向を有する金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第2防錆皮膜と、
前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして形成されたタンニン酸を主体とする第3防錆皮膜とを備え、
さらに必要に応じて、前記第3防錆皮膜の上層部に密着して形成された前記金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第4防錆皮膜を備えるか、あるいはさらに必要に応じて前記第4防錆皮膜の上層部に密着して形成されたタンニン酸を主体とする第5防錆皮膜を備えたことを特徴とする改良された黒色防錆処理金属。
【請求項2】
前記金属基体が、亜鉛およびそれらの合金からなる群から選ばれる金属表面を有することを特徴とする請求項1記載の改良された黒色防錆処理金属。
【請求項3】
前記金属イオンが、Al,Cu,Fe,Ni,Mo,V,Ti,W,Zn,Zrの金属イオンの1種または2種以上の混合物であり、前記金属化合物が、これらの金属を含む金属化合物の1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の改良された黒色防錆処理金属。
【請求項4】
最外面に透明オーバーコート層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の改良された黒色防錆処理金属。
【請求項5】
必須成分としてVを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上を含む黒色金属硫化物を含む第1黒色防錆皮膜を金属基体の表面に密着して形成するための第1黒色化用処理液と、
引き続き前記第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第2防錆皮膜を形成するための第2処理液であって、前記第1黒色防錆皮膜を構成する前記黒色化用金属のイオン化傾向と同等あるいは大きいイオン化傾向を有する金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有し、タンニン酸を含有しない第2処理液と、
引き続き前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第3防錆皮膜を形成するためのタンニン酸を主体として含有し、前記金属イオンおよび/または金属化合物を含有しない第3処理液とからなることを特徴とする黒色防錆皮膜形成用組成物。
【請求項6】
前記第1黒色化用処理液が、必須成分としてVイオンを含むとともに、Co,Ni,TiおよびWから選択される1種あるいは2種以上の黒色化用金属イオンおよび硫黄化合物を含み、前記黒色化用金属イオンの濃度が0.1〜100g/lの範囲内にあることを特徴とする請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物。
【請求項7】
前記第1黒色化用処理液のpHが1.0〜10.0の範囲にあることを特徴とする請求項5あるいは請求項6記載の黒色防錆皮膜形成用組成物。
【請求項8】
前記第2処理液のpHが2.0〜10.0の範囲にあることを特徴とする請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物。
【請求項9】
前記第3処理液のタンニン酸の濃度が0.1〜30g/lの範囲であり、pHが3.5〜8.0の範囲にあることを特徴とする請求項5記載の黒色防錆皮膜形成用組成物。
【請求項10】
請求項5から請求項7のいずれかに記載の第1黒色化用処理液で金属基体の表面を処理して前記金属基体の表面に密着して第1黒色防錆皮膜を形成し、
引き続き請求項5あるいは請求項8記載の第2処理液で処理して前記第1黒色防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第2防錆皮膜を形成し、必要に応じて水洗し、
引き続き請求項5あるいは請求項9記載の第3処理液で処理して前記第2防錆皮膜の少なくとも1部にオーバーラップして第3防錆皮膜を形成した後、必要に応じて水洗し、乾燥することを特徴とする黒色防錆皮膜形成方法。
【請求項11】
前記第3防錆皮膜を形成した後、請求項5あるいは請求項8記載の第2処理液で処理し前記第3防錆皮膜の上層部に密着して前記金属イオンおよび/または金属化合物を主として含有する第4防錆皮膜を形成した後、水洗し、乾燥するか、あるいは前記水洗後、必要に応じて引き続き請求項5あるいは請求項9記載の第3処理液で処理して前記第4防錆皮膜の上層部に密着してタンニン酸を主体とする第5防錆皮膜を形成した後、水洗し、乾燥することを特徴とする請求項10記載の黒色防錆皮膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−328483(P2006−328483A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154069(P2005−154069)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(595098103)株式会社サンビックス (3)
【Fターム(参考)】