説明

改良型ディスプレイ

起動「オン」状態および非起動「オフ」状態の両方を有し、2つの状態の間で切り替え可能式のディスプレイ、典型的にはエレクトロルミネセント・ディスプレイ。
このディスプレイには、ユーザが近傍に存在することを検出可能な静電容量センサと、当該センサの出力を利用して、それに応じてディスプレイの起動を行う手段とが組み込まれる。静電容量センサは一対の電極を備えることが好適であり、この一対の電極の1つはエレクトロルミネセント・ディスプレイの前面電極であってもよい。静電容量は、容量を充電するのにかかる時間を判定することによって感知されてもよく、容量は、静電容量を測定するのにかかる時間を減少し、かつ消費エネルギーを減少するために、2つ以上の速度で充電されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良型ディスプレイに関し、特に、装置のユーザが単に存在することによって起動するディスプレイ付きの装置に関する。さらに具体的には、本発明は、エレクトロルミネセント・ディスプレイなどの、使用しない場合は最も好適には電力を節約するために電源が切断され、静電容量感知手段を用いて近くにいるユーザを検出することによって使用可能状態となるディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の物質としてエレクトロルミネセントがある、これはすなわち、それらを横切る電界が生じることによって発光し、輝く物質である。初めて知られたエレクトロルミネセント物質は、硫化亜鉛などの無機粒子状物質であったのに対して、より最近となって発見されたエレクトロルミネセント物質には、有機LED(OLED)として知られる数多くの小分子有機発光体と、発光ポリマー(LEP)として知られるいくつかのプラスチック(合成有機重合物質)とが含まれる。ドープされ、カプセル形状を有する無機粒子は、具体的には、結合剤に混合され、比較的厚い層として基板表面に塗布されて、今でも用いられている。LEPは、結合剤の基材中の粒子状物質として、または、単独で、比較的薄い連続する膜としても有利に使用されることがある。
【0003】
このエレクトロルミネセント作用はディスプレイの構成に使用されてきた。いくつかの種類のディスプレイにおいては、大きな面積を有するエレクトロルミネセント物質(この文脈で蛍光体と総称される)は、ディスプレイが示そうとするいかなる文字も規定するマスクを通して見ることが可能な、バックライトを形成するために用いられる。他の種類においては、個別の小さい面積を有するEL物質が用いられる。これらのディスプレイは、例えば、簡易な時間および日付ディスプレイ(腕時計または掛け時計において用いられる)、携帯電話のディスプレイ、家庭用機器のコントロールパネル(例えば、食器洗い機または洗濯機)、および手持ち型リモートコントローラ(テレビ、ビデオまたはDVDプレーヤー、ディジボックス、あるいはステレオまたはミュージックセンター用)などの数多くの用途がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレクトロルミネセント・ディスプレイには、電力消費量がかなり高いという問題、また、寿命が1000時間程度と比較的短いという問題がある。従って、使用に際しては、それらが一部に用いられている装置は、通常、ディスプレイが必要でない場合はその電源を切るように構成される。勿論、使用が必要となった場合、最初にディスプレイの起動、または電源入力が必要となる。また、ユーザ自身がこれを手動で行うことが全く可能であったとしても、ディスプレイのスイッチの自動入力が可能であるということは有利であろう。本発明は、ディスプレイの自動起動を容易にすることを目的とする。そしてこの目的を達成するために、本発明は、ディスプレイ、より厳密には、ディスプレイが関連する回路は、静電容量効果を用いて、ユーザが存在することを、具体的には、装置を手に取る際のユーザの手が近傍に存在することを判別し、これを利用してディスプレイを起動させることを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、1つの態様では、本発明は、起動「オン」状態および非起動「オフ」状態の両方を有し、2つ状態の間で切り替え可能式のディスプレイであって、ユーザが近傍に存在することを検出可能な静電容量センサと、当該センサの出力を利用して、それに応じてディスプレイの起動を行う手段とが組み込まれるディスプレイを提供する。
【0006】
装置の種類は制限されず、いかなる種類の装置と併用してもよい。例えば、発光ダイオード(LED)ディスプレイであってもよく、あるいはバックライト付き液晶ディスプレイ(LCD)またはコンピュータの画面で用いるような薄膜トランジスタ(ТFТ)ディスプレイであってもよい。しかしながら、本発明は、光出力を得るためにエレクトロルミネセント物質を用いるディスプレイ、特に、電力を節約し、耐用年数を延ばすために、使用しない場合にはスイッチを切る必要があるディスプレイに適用される場合において特に有用である。典型的なかかるエレクトロルミネセント・ディスプレイには、例えばテレビ用のリモート(手持ち式)コントローラで用いられるものがある。
【0007】
本発明では、ディスプレイ(本明細書では、この用語はディスプレイ自体とその制御回路との組み合わせを意味する)には、ユーザが近傍に存在することを検出可能な静電容量センサが組み込まれる。ここで、静電容量センサは、実際上、互いに間隔を空けた一対の電極に、この一対の電極の静電容量を測定し、それに基づいてある種の信号を出力できる適切な電子回路を加えたものであればよい。この一対の電極の静電容量は、電極の大きさ、それらの間の距離、およびそれらの間の媒体の電気的性質によって決定される。近傍の人体、具体的には、アース/接地電位における人体(例えば、ユーザの手)は、後者に強く影響を及ぼすことになり、結果として生じる静電容量変化、およびそれに関連する出力信号は、要求に応じて、ディスプレイを切り替えて使用可能状態とするのに十分であり得る。
【0008】
静電容量センサが一対の電極を実際に利用する場合に、これらはディスプレイに対して適切ないかなる場所にも定置され得る。本装置のディスプレイがエレクトロルミネセント・ディスプレイであり、かかるディスプレイが、通常、ディスプレイの発光領域を起動させる前面電極を有する場合に、この一対の電極の一方がその前面電極であることが最も簡便であり、他方は装置のケース、または装置およびそのディスプレイを駆動かつ制御する回路の電源端子の1つとなる。特に、ケースが接地されている場合は、例えばリモートコントローラのような手持ち型装置において、装置を手に持つユーザにシステムの他の部品よりもよく接触するために、接地(アース)端子は好ましい選択である。ディスプレイの前面電極の使用により、静電容量感知のために余分の電極をシステムに追加する必要性がなくなるが、それが好ましい場合は、静電容量測定を行うために余分の電極を追加することが可能である。
【0009】
前面電極を用いて高電圧で動作するディスプレイの場合は、ディスプレイが動作している場合にセンサの電子回路をそれから保護するために、適切なダイオードなどによる保護を加えること可能である。
【0010】
本発明はユーザが近傍に存在することを検出可能な静電容量センサを用いる。さらに具体的には、センサは、ディスプレイが一部に用いられている装置をユーザが手に取るか、および/あるいはディスプレイパネルに触れる場合に生じる、互いに間隔を空けた一対の電極の静電容量変化を検出する。静電容量は、本装置の設計、および静電容量がそれらの間で測定される電極によって増減し得る。以下にさらに詳細に説明される例では、静電容量は増大する。
【0011】
本発明のディスプレイには、静電容量センサの出力を利用して、それに応じてディスプレイの起動を行う手段とともに、このセンサが組み込まれている。通常、ディスプレイの起動を行うためにセンサの出力を用いる方法は、簡便であれば制限されない。しかしながら、1つの方法において、容量を特定の値(閾値;この閾値は、マイクロコントローラ、コンパレータ、またはその他の適切な装置への入力の閾値であるということもあり得る)まで充電するのにかかる時間が測定される。容量が大きいほど長い時間がかかることは明らかであり、容量を頻繁に充放電し、充電時間を比較することによって、ユーザが装置の近傍に来ているということが、ユーザが装置を手に取ることで非常に簡単に判別され得る。
【0012】
これをさらに詳細に説明するために、本発明は、ディスプレイ装置の前面電極と装置の接地点との間の試験用容量を測定する場合において説明される。上に述べたように、試験用容量を測定するシステムは、マイクロプロセッサの制御下で試験用容量を充電する工程と、試験用容量の電圧が閾値に達するのにかかる時間の測定を行う工程とを含む。
【0013】
電池式の装置に適用する場合は、電池の寿命を最大にするために、静電容量測定システムの電力消費を最小にすることが好ましい。試験用容量が非常に小さいことになるので、閾値電圧に達するために大量の電荷を必要としないことになり、従ってこれは電力消費を減少させる際に考慮すべき重要な事項ではない(実際に、測定が行われる期間に静電容量測定を制御するために用いるマイクロコントローラ装置の電力消費は、通常、容量を充電する際に消費される電力よりも大きい)。重要な課題は、出来るだけ速く測定を行い、従って電力消費を減少させると同時に、試験用容量の小さい変化を識別できる正確な測定を行うことである。これを達成するために、2つ以上の充電速度を有するシステムが使用されてもよい。一例として、2つの充電速度を用いるシステム(二重傾斜システム)が本明細書において説明される。
【0014】
試験用容量は、まず、非常に短い時間(例えば、1〜50マイクロ秒以下)で閾値電圧に近い電圧まで容量を速く充電するように選択された一定期間、高速で充電される。次いで、所要の閾値電圧に達するまで、容量は著しく低い速度で充電される(遅い傾斜の速度により、遅い傾斜のタイミングによって識別され得る静電容量の変化が判定される)。遅い傾斜の充電期間がこのようにして容量を充電するのにかかる時間によって、静電容量の大きさが測定される。
【0015】
マイクロコントローラは、遅い傾斜において容量を閾値電圧にまで充電するのにかかる時間をフィルタリングし、ノイズを低減するために多数の測定値の平均を取る。遅い傾斜時間の大きい変化、すなわち静電容量測定時のランダムノイズの通常レベルよりも大きい変化は、ユーザの手などが存在することによる試験用容量の変化を示すことになり、マイクロコントローラに装置を起動させる。試験用容量が増大する場合は、遅い傾斜の時間は長くなり、試験用容量が減少する場合は、遅い傾斜の時間は短くなる。
【0016】
試験時間を最小にするために、従って電力消費を最小にするために、速い傾斜の期間は、遅い傾斜時間からのフィードバックによって調整される。遅い傾斜の時間が所定の時間よりも長い場合は、速い傾斜の時間は1単位時間分だけ増大される。これによってマイクロプロセッサが作動する時間が減少され、従って電力消費が減少される。
【0017】
速い傾斜が終了する前に、試験用容量が閾値電圧に達する場合は、速い傾斜の期間は、トリガー点を遅い傾斜の期間に含めるように、短縮されることが必要である。
【0018】
要約すれば、本発明は、ディスプレイ、特にエレクトロルミネセント・ディスプレイが組み込まれた装置に関するものであり、これらのディスプレイは、これらがユーザによって手に取られた、または触れられたことを感知することが可能であり、この機能によって、装置がユーザによって必要とされる場合にのみ、装置のディスプレイパネルを動作状態とすることが可能となる。本発明は、具体的には、特に電池式装置の場合、電力消費を最小にするような方法で、2つの電極間の静電容量の測定を行う装置に適用されることが好ましい。使用される2つの電極は、例えば、ディスプレイの前面電極、および装置のケース、または装置回路の電源端子の1つ(装置を手に持つユーザにシステムの他の部品よりもよく接触するため、接地(アース)端子が好ましい)であってもよい。ユーザが装置を手に取る、および/またはそのディスプレイパネルに触れる場合に、電極の静電容量は影響を受けることになる(静電容量は、本装置の設計、および静電容量がその間で測定される電極によって増減し得る)。可能な場合は、ディスプレイの前面電極の使用により、静電容量感知のために余分の電極をシステムに追加する必要性がなくなるが、それが望ましい場合は、余分の電極を追加可能であることは言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、これらは例示にすぎない。
【0020】
図1は、本発明による静電容量感知システムを用いるディスプレイシステムの回路図を示す。図には、測定される試験用容量(ТC)、試験用容量を充電する2つの抵抗(R1、R2)、保護ダイオード(D1)、試験用容量を放電させるトランジスタ(Q1)(放電電流を制御する抵抗(R3)とともに示されている)、閾値電圧について試験する入力(I)、測定値を処理するマイクロコントローラ(CPU)、およびユーザを検出すると起動するディスプレイ(D)を示す。ここでは、ディスプレイの前面電極(FE)が電極の1つとして使用される場合が示されている。
【0021】
図2は、時間と対比させた試験用容量に関する、図1の感知システムの電圧を表すグラフを示す。図3は、感知回路のシステム動作の流れを示すフローチャートである。感知システムの動作を以下に説明する。
【0022】
試験用容量ТC(ここでは、ディスプレイの前面電極FEと接地/アースとの間の容量)はまず抵抗R1(通常100kΩ)を通して一定期間充電される。この期間(Tfast)は、試験用容量ТCを閾値電圧Vthresholdに近い電圧まで短期間(通常、1〜50マイクロ秒)で充電するように選択される。次いで試験用容量ТCは、所要の閾値電圧に達するまで、より大きい抵抗R2(通常5MΩ)を通してより遅い速度で充電される。
【0023】
遅い傾斜の充電期間において、入力Iで測定を行った場合、試験用容量を閾値電圧まで充電するのにかかる時間(Tslow)によって、試験用容量の静電容量が測定される。遅い傾斜の速度により、遅い傾斜のタイミングによって識別され得る静電容量の変化が判別される。
【0024】
マイクロコントローラCPUは、遅い傾斜において試験用容量を閾値電圧まで充電するのにかかる時間Tslowをフィルタリングする。これはノイズを低減するために多数の測定値の平均を取ることによって行われる。遅い傾斜の時間の大きい変化、すなわち静電容量測定時のランダムノイズの通常レベルよりも大きい変化は、人の手など(図示せず)が存在することによる試験用容量ТCの変化を示し、マイクロコントローラに装置(感知システムが一部を形成するディスプレイD)を起動させる。試験用容量ТCが増大する場合は、遅い傾斜の時間Tslowは長くなり、試験用容量が減少する場合は、遅い傾斜の時間は短くなる。
【0025】
試験時間を最小にするために、従って電力消費を最小にするためにも、速い傾斜の期間Tfastは遅い傾斜の時間Tslowからのフィードバックによって調整される。遅い傾斜の時間が所定の時間よりも長くかかる場合は、速い傾斜の時間は、マイクロプロセッサが作動する時間を減少し、従って電力消費を減少するために、1単位時間分だけ増大される。
【0026】
速い傾斜が終了する前に、試験用容量が閾値電圧Vthresholdに達する場合は、速い傾斜の期間Tfastは、トリガー点を遅い傾斜の期間に含めるように、短縮されることが必要である。
【0027】
測定が行われた後に、トランジスタ(Q1)は、次の測定を行う前に試験用容量を確実に放電するために、電荷の全てを試験用容量から引き出すために用いられる。抵抗R3はこの放電で用いられる電流を制御する。ダイオードD1は、ディスプレイDが動作中に、前面電極FEに存在する高電圧からマイクロコントローラを保護するために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による静電容量感知システムを用いるディスプレイシステムの回路図
【図2】時間と対比させた試験用容量に関する、図1の感知システムの電圧を表すグラフ
【図3】図1の感知回路のシステム動作の流れを示すフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動「オン」状態および非起動「オフ」状態の両方を有し、前記2つの状態の間で切り替え可能式のディスプレイであって、ユーザが近傍に存在することを検出可能な静電容量センサと、当該センサの出力を利用して、それに応じて前記ディスプレイの起動を行う手段とが組み込まれたディスプレイ。
【請求項2】
前記ディスプレイが、エレクトロルミネセント・ディスプレイである請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記静電容量センサが、互いに間隔を空けた一対の電極と、前記一対の電極の静電容量を測定し、それに基づいて信号を出力する適切な電子回路とを備える請求項1または2に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記エレクトロルミネセント・ディスプレイが、前記エレクトロルミネセント・ディスプレイの発光領域を起動させる前面電極を備え、前記静電容量センサの前記一対の電極の1つが前記前面電極である請求項2および3に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記一対の電極の他方が、前記ディスプレイのケース、または前記ディスプレイを駆動かつ制御する回路の電源端子である請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記電源端子が接地端子である請求項5に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記静電容量センサまたは前記ディスプレイの起動を行う手段を、前記前面電極に存在する電圧から保護するために、ダイオードが設けられる請求項4〜6のいずれか1項に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記静電容量センサが容量を備え、前記容量を特定の値まで充電するのにかかる時間を検出するようにディスプレイが構成される請求項1〜7のいずれか1項に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記容量を2つ以上の充電速度で充電するように構成される請求項8に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記容量を閾値電圧の近くまで充電するように第1期間の間に第1速度で、続いて前記閾値電圧に達するまで第2の著しく遅い速度で、前記容量を充電するように構成される請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記閾値電圧に達し、ユーザが存在することを示すのにかかる時間の変化を検出するように構成される請求項10に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記容量を前記閾値電圧まで充電するのにかかる時間からのフィードバックによって、前記第1期間を調整するように構成される請求項10または11に記載のディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−526509(P2007−526509A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553672(P2006−553672)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000604
【国際公開番号】WO2005/081213
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(503183640)ペリコン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】