説明

改質されたハロゲン化ポリマー表面

開示されるのは、(a)ハロゲン化ポリマー表面をナトリウムアジドと反応させ、続いて(a)アルキン官能化開始剤で1,3双極性付加環化させる;又は(a)ハロゲン化ポリマー表面をメルカプト官能化開始剤と反応させる;ことによって、重合開始剤で改質することにより表面を活性化させるステップ(a);及びステップ(a)/(a)又は(a)で得られる活性化された表面を重合性モノマー単位A及び/又はBと反応させるステップ(b);を含む、改質されたハロゲン化ポリマー表面の調製方法、である。本発明に従って改質されたハロゲン化ポリマー基体は、抜きん出た特性を見せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質されたハロゲン化ポリマー表面の調製方法及びそのような方法に従ってハロゲン化ポリマーから調製される表面改質ハロゲン化ポリマー基体に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子基材の表面特性は、その用途の多くにとって、重要なものである。
【0003】
微細技術の重要性がさまざまな科学用途で確実に高まっていることから、分子と表面との相互作用を可能にさせるシステムの開発は依然として重要な課題である。そのような相互作用としては、サンプルから特定の分子を取り出し得ること(例えばサンプルの分析/検出を容易にするために)だけでなく、表面に分子を存在させ、その結果後続の反応が起こることが可能になり得ること、が挙げられる。分子を固定するためのこのような原理は、センサーやクロマトグラフィーシステムに、あるいは一般的には改質された表面を設けるのに、応用され得る。
【0004】
ここ数年、センサー表面にサンプル分子を直接的又は間接的にカップリングさせる、二官能分子の自己組織化単分子膜(SAM)をベースとするセンサーチップを作製しようとする多くの試みがなされてきた。典型的には、そのような二官能分子は、無機表面との結合を達成するためのシランもしくはチオール/ジスルフィド部分構造、及び、多くの場合、オリゴヌクレオチド、タンパク質又はポリサッカリド等の形態で生物サンプル中に含有されているサンプル分子と相互作用するさらなる官能基(例えばアミノ基又はエポキシド基)を有している。
【0005】
所望ポリマー表面は、多くの場合、基材自体からは得られ得ないが、改質によって得ることができる。
【0006】
ポリマー表面の改質は、各種の物理的な方法及び化学的な方法のいずれによっても得られ得る。
【0007】
PVCフィルムが、その表面において、チオラートやアジドのような小分子で、ポリマーにとっての溶媒及び非溶媒の混合物を用いた湿式化学処理により、又は、水溶液中にnBuNBrのような相間移動触媒を用いることによる、塩素原子の求核置換により、改質及び官能化され得るのは、よく知られた先行技術である(非特許文献1;非特許文献2)。
【0008】
可塑化されたPVCフィルムを湿式化学改質法により改質する方法は、非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;に開示されている。
【0009】
記載されている改質PVCフィルムには、PVCフィルムにオリゴマー単位又はポリマー単位が結合されているPVCフィルムは包含されない。
【0010】
分子量、末端基官能、及び構造の制御を可能とするリビング重合系が開発されている(非特許文献6)。
【0011】
最も注記すべきこととしては、そのような系には、イオン重合が含まれることである。この重合系は本質がイオンであるので、重合を成功裡に行うのに必要とされる反応条件としては、反応媒体からの水の完全な排除が挙げられる。イオンリビング重合に伴うもう1つの問題は、成功裡に重合され得るモノマーの数が限定されていることである。また、その成長イオン中心が高度に化学選択性であることから、2種又はそれ以上のモノマーのランダムコポリマーを得るのが、不可能でないにしても、非常に難しいことである(ブロックコポリマーが一般的には形成される)。
【0012】
ラジカル重合は、各種のビニルモノマーから高重合体を調製するのに最も広く用いられている方法のひとつである。ビニルモノマーのラジカル重合は非常に効果的であるが、この重合は、分子量の直接的制御(DP≠Δ[モノマー]/[開始剤])、鎖末端官能の制御や、鎖構造(例えば、線状ポリマー対分岐又はグラフトポリマー)の制御を、可能としない。この5年間は、多くの関心が、本質がラジカルであるが同時にイオンリビング系で見られる高度の制御を可能とする重合系の開発に集中している。
【0013】
分子量、末端基、及び鎖構造の制御を確かにもたらす、また本質がラジカルであった重合系がこれまでに開示されている(非特許文献7;非特許文献8;特許文献1;特許文献2;特許文献3;[これらの文献の内容は、参照により、本明細書に組み込まれる])。この方法は、原子移動ラジカル重合(ATRP)と呼ばれている。ATRPは、ラジカルと、ラジカル式転移性基(X)遷移金属錯体(Mn−1)とのレドックス反応により成長ラジカル(R・)を生成させるためのラジカル式転移性原子もしくは基含有化合物の可逆的活性化及び不活性化を用いるものである。
【0014】
制御重合は、ラジカル式転移性原子もしくは基を含有している分子を使用する(又は生成させる)ことによって開始される。これまでの開発は、生成したラジカルを安定化し得る基に隣接したハロゲン化アルキルを使用することに集中していた。他の開始剤は、窒素、酸素、リン、イオウ、スズ、その他のような、無機/擬ハロゲン基を含有し得、これらも、また、原子移動に参加し得る。
【0015】
スキーム1:
【化1】

【0016】
スキーム1に概説されているこの反応の最も重要な側面は、活性ラジカルと、ドーマント種[R−X(ドーマントポリマー鎖=P−X)]との間の平衡の達成である。この平衡のバランスを理解すること及び制御することは、このラジカル重合を制御する上で非常に重要である。平衡があまりにもドーマント種の方にシフトされると、重合は起こらないであろう。また一方、平衡があまりにも活性ラジカルの方にシフトされると、あまりにも多くのラジカルが生成されて、望ましくないラジカル間同士の二分子停止が起こる。これは、制御されていない重合をもたらすと考えられる。このタイプの非可逆的レドックス開始の1つの例が、鉄(II)の存在下でのペルオキシドの使用である。低いが、ほぼ一定のラジカル濃度が維持される平衡を得ることにより、成長するラジカル間同士の二分子停止は抑えられ得、高重合体が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,763,548号明細書
【特許文献2】米国特許第5,807,937号明細書
【特許文献3】米国特許第5,789,487号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】J. Sacristan, C. Mijangos, H. Reinecke, Polymer 2000, 41 5577-5582
【非特許文献2】A. Jayakrishnan, M. C. Sunny, Polymer 1996, 37, 5213-5218
【非特許文献3】J. Sacristan, C. Mijangos, H. Reinecke, Polymer 2000, 41, 5577-5582
【非特許文献4】J. Reyes-Labarta, M. Herrero, P. Tiemblo, C. Mijangos, H. Reinecke, Polymer 2003, 44, 2263-2269
【非特許文献5】M. Herrero, R. Navarro, N. Garcia, C. Mijangos, H. Reinecke, Langmuir, 2005, 21, 4425-4430
【非特許文献6】Webster, O. Science, 1991, 251 887
【非特許文献7】K. Matyjaszewski, J.-S. Wang, Macromolecules 1995, 28, 7901-7910
【非特許文献8】K. Matyjaszewski, T. Patten, J. Xia, T. Abernathy, Science 1996, 272, 866-868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
意外なこととして、ハロゲン化ポリマーの表面にラジカル開始剤を共有結合させ、続いてこの改質されたハロゲン化ポリマー表面に確定組成のポリマーを制御重合反応でグラフトさせることによって、改質されたハロゲン化ポリマー表面が得られ得ることを見出した。
【0020】
このようにして改質されたハロゲン化ポリマー表面は、新たな特性を呈する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明は、
(a)ハロゲン化ポリマー表面をナトリウムアジドと反応させ、続いて
(a)アルキン官能化開始剤で1,3双極性付加環化させる;
又は別法として
(a)ハロゲン化ポリマー表面をメルカプト官能化開始剤と反応させる;
ことによる重合開始剤での改質によって表面を活性化させるステップ(a);
及び
ステップ(a)/(a)又は(a)で得られるこの活性化された表面を重合性モノマー単位A及び/又はBと反応させるステップ(b);
を含む、改質されたハロゲン化ポリマー表面の調製方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図4:サンプル1〜4(系列1−サンプル1、系列2−サンプル2、系列3−サンプル3、系列4−サンプル4)のタンパク質濃度の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の反応ステップ(a)ではハロゲン化ポリマー基体はナトリウムアジドで、例えばA. Jayakrishnan, M. C. Sunny, Polymer 1996, 37, 5213-5218によって開示されているそれ自体公知の方法で処理される。
【0024】
この反応ステップでアジド基がハロゲン化ポリマーの表面に共有結合されることになる。
【0025】
この反応は、ナトリウムアジドの1%〜25%水溶液中で20℃〜100℃の(好ましくは60℃〜90℃の)温度で好ましくは行われる。
【0026】
反応時間は、0.1時間〜2時間(好ましくは1時間〜4時間)である。
【0027】
反応は、相間移動触媒の存在下で、より好ましくはn−テトラブチルアンモニウムブロミドの存在下で好ましくは行われる。
【0028】
表面の活性化は、アジドのIR活性が強いことから、IR分光分析により制御され得る。
【0029】
ハロゲン化ポリマー基体の改質の程度は、反応時間、温度、溶媒及び試薬濃度等の反応パラメーターに応じて決まる。
【0030】
反応(a)には、ポリマー基体の表面が反応媒体と相互作用するステップ(a1a)(このステップは表面上層部への溶媒の拡散と考えられる)、改質試薬がポリマーの官能基まで輸送される第2のステップ(a1b)、及び反応そのものである第3のステップ(a1c)が含まれる。
【0031】
反応ステップ(a)は、以下の反応スキーム:
【化2】

【0032】
HalPol=ハロゲン化ポリマー
で図示され得る。
【0033】
反応ステップ(a)は、アルキン官能化開始剤での銅触媒1,3双極性付加環化を表している。この反応は、フイスゲン(Huisgen)又はクリック(click)反応と呼ばれる。
【0034】
反応ステップ(a)は、以下の反応スキーム:
【化3】

【0035】
で図示され得る。
【0036】
この反応ステップで適する開始剤がハロゲン化ポリマー基体に結合される。
【0037】
この反応は、それぞれのアルキンの0.1%〜10%イソプロパノール溶液中で20℃〜100℃の(好ましくは50℃〜80℃の)温度で好ましくは行われる。
【0038】
反応時間は、0.1時間〜24時間(好ましくは10時間〜16時間)である。
【0039】
反応は、銅触媒及び塩基の存在下、より好ましくはCu[MeCN]PF及び2,6−ルチジンの存在下で好ましくは行われる。
【0040】
反応は、そのカルボニル部分構造のIR活性が強いことから、IR分光分析により制御され得る。
【0041】
ハロゲン化ポリマーの例としては以下のものが挙げられる。
【0042】
ハロポリマーとしては、クロロポリマー、フルオロポリマー及びフルオロクロロポリマーのような、ハロゲン化基を含有している有機ポリマーが挙げられる。ハロポリマーの例としては、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキル、フルオロアリール、ジフルオロアリール、トリフルオロアリール、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、クロロアルキル、ジクロロアルキル、トリクロロアルキル、クロロアリール、ジクロロアリール、トリクロロアリール、パークロロアルキル、パークロロアリール、クロロフルオロアルキル、クロロフルオロアリール、クロロジフルオロアルキル、及びジクロロフルオロアルキル基を含有しているポリマーが挙げられる。ハロポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロテトラフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(発泡PTFE(ePTFE)も含めて)のような、フルオロ炭化水素ポリマーも挙げられる。他のハロポリマーとしては、フルオロポリマー過フッ素化レジン(例えば過フッ素化シロキサン、過フッ素化スチレン、過フッ素化ウレタン)及びテトラフルオロエチレン含有コポリマー並びに他の過フッ素化酸素含有ポリマー例えばペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキシド(これは商品名TEFLON−AFで販売されている)が挙げられる。本発明を実施する上で用いられ得るさらなる他のハロポリマーとしては、ペルフルオロアルコキシ置換フルオロポリマー[例えばMFA(Ausimont USA(Thoroughfare、N.J.)から入手可能)やPFA(Dupont(Willmington、Del.)から入手可能)]、ポリテトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン(FEP’)、エチレンクロロ−トリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、及びポリエステル系ポリマー(これの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、並びにこれらの類似体及びコポリマーが挙げられる)が挙げられる。
【0043】
ハロゲン含有ポリマーとしては、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、塩素化及び臭素化イソブチレン−イソプレンコポリマー(ハロブチルゴム)、塩素化又はスルホ塩素化ポリエチレン、エチレンと塩素化エチレンのコポリマー、エピクロロヒドリンホモ−及びコ−ポリマーが挙げられ、特にはハロゲン含有ビニル化合物のポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、並びにこれらのコポリマー例えば塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニル/酢酸ビニル又は塩化ビニリデン/酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。
【0044】
用語「ポリ塩化ビニル」とは、ポリマーが塩化ビニルホモポリマーである組成物を意味する。ホモポリマーは、例えば塩素化により、化学的に改質されたものであってもよい。
【0045】
ポリ塩化ビニルは、特には、塩化ビニルと、エチレン重合性結合含有モノマー(例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン;マレイン酸もしくはフマル酸又はこれらのエステル;オレフィン例えばエチレン、プロピレン又はヘキセン;アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル;スチレン;ビニルエーテル例えばビニルドデシル+エーテル)の共重合によって得られるポリマーである。
【0046】
本発明による組成物は、少量の他のポリマーを含有している塩素化ポリマーをベースとした混合物(例えばハロゲン化ポリオレフィンやアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー)を含有しているものであってもよい。
【0047】
通常、コポリマーは、少なくとも50重量%の塩化ビニル単位を含有しており、好ましくは少なくとも80重量%のそのような単位を含有している。
【0048】
一般的には、あらゆるタイプのポリ塩化ビニルが、その調製方法に関係なく適している。つまり、例えば、バルク法、懸濁法又はエマルジョン法を行うことによって得られるポリマーは、ポリマーの固有粘度に関係なく、本発明による組成物を用いて安定化され得る。
【0049】
好ましくは、開始剤とは、制御ラジカル重合を活性化させる触媒の存在下でエチレン性不飽和モノマーの重合を開始させることができる重合開始剤のフラグメントのことを表す。
【0050】
開始剤は、好ましくは、C〜C−アルキルハロゲン化物、C〜C15−アラルキルハロゲン化物、C〜C−ハロアルキルエステル、アレーンスルホニルクロリド、ハロアルカンニトリル、α−ハロアクリラート及びハロラクトンからなる群から選択される。
【0051】
特定の開始剤は、α,α’−ジクロロ−又はα,α’−ジブロモ−キシレン、p−トルエンスルホニルクロリド(PTS)、ヘキサキス−(α−クロロ−又はα−ブロモ−メチル)−ベンゼン、1−フェネチルクロリド又はブロミド、メチル又はエチル2−クロロ−又は2−ブロモプロピオナート、メチル−又はエチル−2−ブロモ−又は2−クロロ−イソブチラート、並びに対応する2−クロロ−又は2−ブロモ−プロピオン酸、2−クロロ−又は2−ブロモ−イソ酪酸、クロロ−又はブロモ−アセトニトリル、2−クロロ−又は2−ブロモ−プロピオニトリル、α−ブロモベンズアセトニトリル、α−ブロモ−γ−ブチロラクトン(=2−ブロモ−ジヒドロ−2(3H)−フラノン)並びに先の式の1,1,1−(トリス−ヒドロキシメチル)プロパン及びペンタエリトリトールから誘導される開始剤からなる群から選択される。
【0052】
ATRP開始剤
ATRP用開始剤はさまざまな方法で調製され得る。ATRP開始剤に必要とされるのは、ハロゲンのようなラジカル式転移性原子もしくは基だけであるので、ATRP開始剤の調製には標準的有機合成手法が適用され得る。本明細書ではいくつかのATRP開始剤の一般的調製方法を述べることにする。一般的にはこの開始剤は一般式:Y(X)[式中、Yは、分子のコアであり、Xは、ラジカル式転移性原子もしくは基である]を有し得る。数nは1又はそれ以上の任意の数であり得、コア基Yの官能に応じて決まる。例えば、n=1で、Yがベンジルであり、Xが臭素である場合、得られる化合物は臭化ベンジルである。Yが、フェニル環のそれぞれの炭素にCH基が結合されているフェニル部分構造であり、Xが、n=6のBrである場合、この化合物はヘキサ(ブロモメチル)ベンゼンであり、単一開始剤から6ポリマー鎖を調製するのに用いられ得る六官能開始剤である。
【0053】
開始剤種類の第1の分類としては、小分子と高分子の2つの群がある。ベンジル酸ハロゲン化物、2−ハロプロピオナート及び2−ハロイソブチラート、2−ハロプロピオニトリル、α−ハロマロナート、ハロゲン化トシル、四ハロゲン化炭素、三ハロゲン化炭素、その他のような小分子開始剤は商業的に入手可能であり得る。当然、これらの官能基は、他の小分子に組み込まれ得る。これらの官能基の組み込みは単一置換としてなされ得るものであり、又は小分子は、2つ以上のATRPのための開始部位を有し得る。例えば、2つ以上のヒドロキシル基を含有している分子は、エステル化反応を受けて、ATRPを開始させ得るα−ハロエステルを生成し得る。当然、他の開始剤残基も、望まれるとおりに導入され得る。開始剤が結合されている小分子は有機系又は無機系であり得る(開始剤が触媒を毒さない又は成長ラジカルと有害に相互作用しないかぎり、開始剤は用いられ得る)。開始部位を取り付けるためのベースとして用いられた小分子のいくつかの例は、ポリジメチルシロキサン立方体、シクロトリホスファゼン環、2−トリス(ヒドロキシエチル)エタン、グルコース系化合物、その他である。さらには、トリクロロメチルイソシアナートも、開始剤残基を、ヒドロキシ、チオール、アミン及び/又はアミド基含有のいずれの物質に取り付けるのにも用いられ得る。
【0054】
高分子開始剤は、各種のさまざまな形態を取り得、またさまざまな方法によって調製され得る。高分子開始剤は、可溶性ポリマー、不溶性/架橋高分子支持体、不溶性/架橋高分子表面、又は固体無機支持体であり得る。高分子開始剤を調製するためのいくつかの一般的な方法としては、既存基材の改質、ATRP/非ATRP法による又はATRP開始剤残基を含有している(他の重合タイプ用の)開始剤を用いたABモノマーの(共)重合が挙げられる。ここでも、高分子化合物/基体を改質してATRP開始部位を作出するのは、基材/ポリマー改質の技術分野の当業者には簡単なことである。例えば、フェニル環上にハロメチル基を有する架橋されたポリスチレン(固相ペプチド合成に用いられる)、官能分子が取り付けられたシリカ表面、臭素化された可溶性ポリマー(例えばイソプレン、スチレン、及び他のモノマーの(コ)ポリマー)、又はATRP開始剤含有小分子が取り付けられたポリマー鎖は、すべて、高分子開始剤として用いられ得る。1つ又はそれ以上の開始部位がポリマー鎖末端部にある場合は、ブロック(コ)ポリマーが調製されるし;開始部位がポリマー鎖に沿って分散されている場合は、グラフト(コ)ポリマーが形成されることになる。
【0055】
ABモノマー、又はATRP開始剤残基を含有しているあらゆる種類のモノマーは、他のモノマーの存在又は不存在にかかわらず、ペンダントB基付き線状ポリマーを調製するためのATRPを除いた、実質的にあらゆる重合法によって(共)重合され得る。ただ一つの必要条件は、ATRP開始剤残基が、重合の期間中及びその後も無傷のままであるということである。このポリマーは、このあと、適するビニルモノマー及びATRP触媒の存在下にある場合、ATRPを開始させるのに用いられ得る。ABモノマーを(共)重合させるのにATRPが用いられる場合は、(超)分岐ポリマーがもたらされるだろう。当然、この高分子も、ATRPを開始させるのに用いられ得る。
【0056】
他のタイプの重合系、すなわち、通常のフリーラジカル重合系、カチオン開環重合系、その他のための官能化された開始剤も用いられ得る。ここでも、重合機構は、ATRP開始部位との反応を含めべきでない。また、純ブロックコポリマーを得るためには、高分子開始剤のそれぞれの鎖は、始原の官能化された開始剤によって開始されなければならない。そのようなタイプの開始剤のいくつかの例としては、官能化されたアゾ化合物及びペルオキシド(ラジカル重合)、官能化された移動剤(カチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合)、及びテトラヒドロフランのカチオン開環重合用2−ブロモプロピオニルブロミド/トリフルオロメタンスルホン酸銀が挙げられると考えられる。
【0057】
ATRP開始剤は、ATRP反応を開始させるのに用いられたあと特定の機能を行うように設計され得る。例えば、生分解性(高分子)開始剤は、コポリマーを再使用可能なポリマーセグメントにリサイクル又は分解するための方法として用いられ得る。これの一つの例は、二官能生分解性開始剤を用いたテレケリック・ポリマーの調製だろう。適切に官能化されていると仮定して、テレケリック・ポリマーは階段式成長重合で用いられ得るので、ポリマー鎖に沿って多数の生分解性部位を有する線状ポリマーが調製され得る。適切な条件(すなわち、湿度、酵素、その他)下で生分解性セグメントは崩壊し得るので、ビニルポリマーセグメントは回収され、リサイクルされる。さらには、シロキサン含有開始剤は、シロキサン末端基/ブロックを有するポリマーを調製するのに用いられ得る。そのようなポリマーは、ゾル−ゲル法で用いられ得る。
【0058】
また、1つ又はそれ以上のATRP用開始部位、及び、非ATRP重合を開始させることができる1つ又はそれ以上の開始部位をもっている多官能開始剤を用いることも可能である。非ATRP重合としては、限定するものではないが、カチオン重合、アニオン重合、フリーラジカル重合、メタセシス重合、開環重合及び配位重合を含めた、あらゆる重合機構が挙げられ得る。例としての多官能開始剤としては、限定するものではないが、2−ブロモプロピオニルブロミド(カチオンもしくは開環重合及びATRP用);ハロゲン化されたAIBN誘導体又はハロゲン化されたペルオキシド誘導体(フリーラジカル重合及びATRP重合用);及び2−ヒドロキシエチル2−ブロモプロピオナート(アニオン重合及びATRP重合用);が挙げられる。
【0059】
逆ATRPとは、通常のラジカル開始剤、及び、ラジカル式転移性リガンド(X)と一緒になったより高い酸化状態にある遷移金属(例えば、ハロゲン化銅をモデルとして用いると、Cu(II)Br)を用いることによって、ラジカル式転移性基及びより低い酸化状態遷移金属を含有している開始剤を、in situで、発生させることである。通常のフリーラジカル開始剤が分解すると、生成したラジカルは、成長を開始し得るか又は(成長鎖ができるように)直接Mn−1Lと反応してハロゲン化アルキル及びMy−1Lを生成し得る。大半の開始剤/Mn−Lが消費された後は、主に、ハロゲン化アルキル及びより低い酸化の金属種が存在しており;この二つがこのあとATRPを開始させることができる。
【0060】
これまでは、Cu(II)X/bpy及びAIBNが逆ATRP触媒系として用いられてきた(米国特許第5,763,548号明細書;K, Matyjaszewski, J.-S. Wang, Macromolecules 1995, 28, 7572-7573)。しかしながら、分子量は制御するのが難しく、多分散度も高かった。また、Cu(II)対AIBNの比も高かった(20:1)。本発明は、重合の制御における有意な改善並びに必要とされるCu(II)の量の低減をもたらす、(触媒を可溶化させるために)dNbpyを用いた、改善された逆ATRP法を提供するものである。
【0061】
逆ATRPは、今は、スチレン、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、及びアクリロニトリルのようなモノマーの「リビング」重合に、成功裡に用いられ得る。得られるポリマー分子量は理論と一致し、多分散度も非常に低い(M/M=1.2)。dNbpyを(リガンドとして)用いることによってCu(II)の溶解度が向上されていることから、Cu(II):AIBNの比は、1:1の比まで劇的に低減され得る。標準的AIBN開始重合と違って、逆ATRP開始ポリマーは、すべて、同じ2−シアノプロピル(AIBNの分解から)頭部基及びハロゲン尾部基を有しており、これらは、さらに、他の官能基に変換され得る。さらには、フリーラジカル開始剤上にある置換基は、分子にさらなる官能を導入するのに用いられ得る。
【0062】
逆ATRPに用いられるラジカル開始剤は、限定するものではないが、有機ペルオキシド、有機ペルスルファート、無機ペルスルファート、ペルオキシジスルファート、アゾ化合物、ペルオキシカルボナート、ペルボラート、ペルカルボナート、ペルクロラート、ペルアシッド、水素ペルオキシド、及びこれらの混合物を含めて、いずれの通常のラジカル開始剤であってもよい。これらの開始剤は、また、ATRPを妨害しない他の官能性基を場合により含有していてもよい。
【0063】
別法としては、重合開始剤で改質することによるハロゲン化ポリマー表面の活性化は、チオール置換開始剤によっても行われ得る(反応ステップ(a))。このケースではイオウが求核試薬として反応し、対応する開始剤がクロロ原子を置換することによってハロゲン化ポリマー表面に結合され得る。
【0064】
反応ステップ(a)は、以下の反応スキーム:
【化4】

【0065】
で図示され得る。
【0066】
反応ステップ(b)では、重合性モノマー単位A及びBは、ステップ(a)/(a)又は(a)で得られる活性化された表面の開始剤が参加する原子移動ラジカル重合(ATRP)によって好ましくは共重合される。
【0067】
ATRP法は、改質されたハロゲン化ポリマー表面にいわゆる「ポリマーブラシ」、すなわち多分散度が低くまた架橋結合が排除された確定組成の共有結合ポリマー鎖群の作出を可能にさせるものである。注記すべきこととして、本発明で形成されるポリマーブラシは、限定するものではないがRAFT、NMP及びROMPを含めた、当技術分野で標準的なものである、いくつかの他の重合法によっても形成され得るものである。
【0068】
原理的にはモノマー単位Bとの反応の後にモノマー単位Aとの重合を行うことが可能である。
【0069】
また、モノマー単位A及びBの混合物で重合反応を行うことも可能である。
【0070】
反応ステップ(a)、(a)又は(a)に従って改質された、例えばフィルムの形態にある、ハロゲン化ポリマー基体は、さらなる反応ステップ(b)で、適する条件下で対応するモノマーと反応される。
【0071】
反応ステップ(b)は、以下の反応スキーム:
【化5】

【0072】
で図示され得る。
【0073】
この反応は、それぞれのモノマーの水+アルコール混合物中(又はアルコール中)5%〜50%溶液中で20℃〜100℃の(好ましくは20℃〜60℃の)温度で好ましくは行われる。
【0074】
反応時間は、0.1時間〜24時間(好ましくは1時間〜4時間)である。
【0075】
反応は、触媒系の存在下で、より好ましくはCuBr、CuBr及びビピリジンの存在下で好ましくは行われる。
【0076】
モノマー
本重合法で用いられ得るモノマーは、いずれのラジカル式(共)重合性モノマーであってもよい。本発明の文脈内では、用語「ラジカル式(共)重合性モノマー」とは、たとえ当該のモノマーがそれ自体ではラジカルホモ重合され得なくても、そのモノマーがラジカル式重合によってホモ重合され得るか又は別のモノマーとラジカル式共重合され得ることを意味する。そのようなモノマーとしては、典型的には、限定するものではないが、スチレン、アクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、アクリロニトリル、イソブチレン、ジエン、ビニルアセタート、N−シクロヘキシルマレイミド、2−ヒドロキシエチルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、及びフルオロ含有ビニルモノマーを含めた、あらゆるエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。これらのモノマーは、例えばアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ビニル、アリル、ヒドロキシ、エポキシ、アミド、エーテル、エステル、ケトン、マレイミド、スクシンイミド、スルホキシド、グリシジル又はシリルのような、重合法を妨害しない、任意の置換基によって場合により置換されていてもよい。
【0077】
ポリマーは各種のモノマーから調製され得る。水可溶性又は水分散性モノマーの特に有用な群は、式:
【化6】

【0078】
[ここで、Rは、H又はアルキル基であり;R及びRは、水素、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、及びこれらの組み合わせからなる群から、独立して選択され;R及びRは、一緒になって、ヘテロ環式環構造も含めた、環式環構造になっていてよく、またそれには別の飽和もしくは芳香族環が縮合していてよい]を有しているアクリルアミドモノマーによって代表される。特に好ましい実施形態は、R及びRが、ヒドロキシ置換アルキル、ポリヒドロキシ置換アルキル、アミノ置換アルキル、ポリアミノ置換アルキル及びイソチオシアナト置換アルキルからなる群から独立して選択される場合である。好ましい実施形態では、ポリマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(例えば、N−メチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、及びN−n−ブチルアクリルアミド)、N−アルキルメタクリルアミド(例えば、N−tert−ブチルメタクリルアミド及びN−n−ブチルメタクリルアミド)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド)、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルオルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、及びこれらの組み合わせのようなモノマーから誘導されるアクリルアミドベースの繰り返し単位を含んでいる。別の好ましい実施形態では、ポリマーは、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド及びN,N−ジアルキルメタクリルアミドから選択されるモノマーから誘導されるアクリルアミド繰り返し単位を含んでいる。好ましい繰り返し単位は、特には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びtert−ブチルアクリルアミドから誘導され得る。
【0079】
コポリマーは、2つ又はそれ以上の前記したアクリルアミドベースの繰り返し単位を含み得る。コポリマーは、また、例えば、1つ又はそれ以上の前記したポリアクリルアミドベースの繰り返し単位を1つ又はそれ以上の他の繰り返し単位との組み合わせで含み得る。
【0080】
一般的にいうと、本発明の一部の実施形態ではモノマーは、式
(1b)
【化7】

【0081】
[式中、Pは、フリーラジカルの存在下で重合する官能基であって(例えば、炭素−炭素二重結合)、Eは、対象のプローブと反応してそれと化学結合を形成することができる基である]によって表わされ得る。
【0082】
E(又はその一部)とプローブとの間に形成される結合は、大半のケースでは、共有結合である、又は共有結合的特性を有している。しかしながら、注記すべきこととして、本発明には、他のタイプの結合又は結合形態(例えば、水素結合、イオン結合、金属配位、又はこれらの組み合わせ)も包含される。後者の1つの例は、E基が、混合錯体を通してタンパク質に結合することができる金属錯化剤を含有している場合である(Eは、例えば、Ni混合錯体を通してヒスチジンタグタンパク質に結合することができるイミノ二酢酸のような、リガンドであり得る)。
【0083】
Eは、例えば、限定するものではないが、イソチオシアナート、イソシアナート、アシルアシド、アルデヒド、アミン、スルホニルクロリド、エポキシド、カルボナート、酸フルオリド、酸クロリド、酸ブロミド、酸無水物、アシルイミダゾール、チオール、ハロゲン化アルキル、マレイミド、アジリジン及びオキシランであり得る。
【0084】
別の実施形態では、Eは、ある種のポリオール分子(例えば、1,2−シスジオールやその他の関連化合物)を含有している生物プローブと強力に錯体形成することができる、フェニルボロン酸部分構造である。1つの好ましい実施形態では、Eは、プローブ中に存在している求核部位と反応すると、そのプローブと化学結合を形成する、求電子基である。そのような活性化されたモノマーとしては、限定するものではないが、N−ヒドロキシスクシンイミド、トシラート、ブロシラート、ノシラート、メシラート、その他が挙げられる。他の実施形態では、求電子基は、求核基と反応すると開環する3員〜5員環からなっている。そのような環状求電子基としては、限定するものではないが、エポキシド、オキセタン、アジリジン、アゼチジン、エピスルフィド、2−オキサゾリン−5−オン、その他が挙げられる。さらなる他の実施形態では、求電子基は、求核プローブと反応すると、付加反応が起こり、プローブとポリマーとの間に共有結合の形成がもたらされる、基であり得る。そのような求電子基としては、限定するものではないが、マレイミド誘導体、アセチルアセトキシ誘導体、その他が挙げられる。
【0085】
Xに関して、注記すべきこととして、存在している場合は(すなわち、nが、ゼロに等しくない場合は)、Xは、例えばXがPの不飽和炭素原子を求電子E基に連結しているケースのように、PをEにつなぐある種の連結基を表す。Xは、例えば、アルキル、アミノ、アミノアルキル又はアミノアルキルアミド基から誘導されるリンカーも含めた、置換された又は置換されていないヒドロカルビレン又はヘテロヒドロカルビレンリンカー、ヘテロリンカー、その他であり得る。このような例においては、mは、1、2、3、4又はそれ以上のような整数である。他の実施形態では(すなわち、nが、ゼロに等しい場合は)、Pは、直接Eに結合されている。
【0086】
Xは、例えば、共有結合、(ヘテロ)環によって場合により中断された置換されていてもよいC〜C40アルキル基(このアルキル基は少なくとも1個のヘテロ原子もしくは少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいる基によって場合により中断されている)又は置換されていてもよいフェニル基から選択される。
【0087】
1つの好ましい実施形態では、Xは、一般的には、式
【化8】

【0088】
[式中、nは、約1〜約5の整数であって、mは、約1〜約2、3、4又はそれ以上の整数である]で表されるリンカーである。1つのそのような実施形態では、好ましいモノマーとしては、N−ヒドロキシスクシンイミド基を有しているものが挙げられる。例えば、そのようなモノマーのうちのいくつかは、一般的には、以下の式
【化9】

【0089】
[式中、
は、水素又はアルキル置換基であり、
は、水素、置換された又は置換されていないヒドロカルビル(例えば、アルキル、アリール、ヘテロアルキル)、ヘテロヒドロカルビル、アルコキシ、置換された又は置換されていないアリール、スルファート、チオエーテル、エーテル、ヒドロキシ、その他からなる群から選択される1個又はそれ以上の置換基である(すなわち、wは、1、2である)]
で表され得る。
【0090】
一般的にいうと、Rは、基本的には、それが含有されている水可溶性又は水分散性セグメントの親水性を実質的に低下させないいずれの置換基であってもよい。この点に関して注記すべきこととして、多くの置換されたスクシンイミド化合物が市販されており、本発明で用いるのに適している。
【0091】
特に好ましいモノマー群の中には、N−アクリルオキシスクシンイミド及び2−(メタクリロイルオキシ)エチルアミノN−スクシンイミジルカルバマートが含まれ、これらは、一般的には、式(I)
【化10】

【0092】
の化合物及び式(II)
【化11】

【0093】
[式中、R、R及びwは、先に定義されているとおりである]の化合物で表される。
【0094】
また、以下の式(III)の化合物
【化12】

【0095】
及び式(IV)の化合物
【化13】

【0096】
[式中、R、R、n及びwは、先に定義されているとおりである]
で表されるモノマー[式中、末端カルボニル−オキソ−スクシンイミド基は、ポリマー鎖骨格からはアミノアルキル又はアミノアルキルアミドリンカー(すなわち、「X」)の存在分だけ遠くに位置している]も好ましい。
【0097】
別法としては、しかしながら、式(V)
【化14】

【0098】
によってそれぞれ一般的には表される、2−(メチルアクリロイルオキシ)エチルアセトアセタート、グリシジルメタクリラート(GMA)及び4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン−5−オンのようなモノマーも、用いられ得る[Rは、水素又はヒドロカルビル(例えば、本明細書に定義されているように、メチル、エチル、プロピル、その他)である]。
【0099】
上記で引用したモノマー(例えば、N−アクリルオキシスクシンイミド、2−(メチルアクリロイルオキシ)エチルアセトアセタート、グリシジルメタクリラート及び4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン−5−オン)の1つ又はそれ以上は市販されている(例えばAldrich Chemical Companyから)。さらには、先の、一般的には式(III)及び式(IV)によって表されるモノマーは、当技術分野で一般的な方法によって調製され得る。
【0100】
注記すべきこととして、そのようなモノマーは、ニトロオキシド及びイニファーター(iniferter)開始系を含めて、本明細書に記載されているいずれの重合法にも有利に用いられ得る。
【0101】
本発明の適する重合モノマー及びコモノマーとしては、限定するものではないが、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、プロピルメタクリラート(すべての異性体)、ブチルメタクリラート(すべての異性体)、2−エチルヘキシルメタクリラート、イソボルニルメタクリラート、メタクリル酸、ベンジルメタクリラート、フェニルメタクリラート、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート(すべての異性体)、ブチルアクリラート(すべての異性体)、2−エチルヘキシルアクリラート、イソボルニルアクリラート、アクリル酸、ベンジルアクリラート、フェニルアクリラート、アクリロニトリル、スチレン、グリシジルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート(すべての異性体)、ヒドロキシブチルメタクリラート(すべての異性体)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリラート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート、トリエチレングリコールメタクリラート、無水イタコン酸、イタコン酸、グリシジルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート(すべての異性体)、ヒドロキシブチルアクリラート(すべての異性体)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリラート、N,N−ジエチルアミノアクリラート、トリエチレングリコールアクリラート、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルオールアクリルアミド、ビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノスチレン(すべての異性体)、α−メチルビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノアルファ−メチルスチレン(すべての異性体)、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリラート、トリエトキシシリルプロピルメタクリラート、トリブトキシシリルプロピルメタクリラート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリラート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリラート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリラート、ジイソプロピオキシメチルシリルプロピルメタクリラート、ジメトキシシリルプロピルメタクリラート、ジエトキシシリルプロピルメタクリラート、ジブトキシシリルプロピルメタクリラート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリラート、トリメトキシシリルプロピルアクリラート、トリエトキシシリルプロピルアクリラート、トリブトキシシリルプロピルアクリラート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリラート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリラート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリラート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリラート、ジメトキシシリルプロピルアクリラート、ジエトキシシリルプロピルアクリラート、ジブトキシシリルプロピルアクリラート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリラート、ビニルアセタート、ビニルブチラート、ビニルベンゾアート、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ベタイン、スルホベタイン、カルボキシベタイン、ホスホベタイン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、エチレン、プロピレン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ブタジエン、及び1,4−ペンタジエンが挙げられる。
【0102】
さらなる適する重合性モノマー及びコモノマーとしては、限定するものではないが、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルアミン、N−アルキルビニルアミン、アリルアミン、N−アルキルアリルアミン、ジアリルアミン、N−アルキルジアリルアミン、アルキレンイミン、アクリル酸類、アルキルアクリラート類、アクリルアミド類、メタクリル酸類、無水マレイン酸、アルキルメタクリラート類、n−ビニルホルムアミド、ビニルエーテル類、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルスルホナート類、エチルビニルベンゼン、アミノスチレン、ビニルビフェニル、ビニルアニソール、ビニルイミダゾリル、ビニルピリジニル、ジメチルアミノメチスチレン、トリメチルアンモニウムエチルメタクリラート、トリメチルアンモニウムエチルアクリラート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、トリメチルアンモニウムエチルアクリラート、トリメチルアンモニウムエチルメタクリラート、トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミド、ドデシルアクリラート、オクタデシルアクリラート、及びオクタデシルメタクリラートが挙げられる。
【0103】
「ベタイン」とは、本明細書で使われる場合、塩化合物、特には双性イオン化合物の一般的な群のことをいい、ポリベタインも含まれる。本発明で用いられ得るベタインの代表的な例としては、N,N−ジメチル−N−アクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−アクリルアミドプロピル−N−(2−カルボキシメチル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−アクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−アクリルアミドプロピル−N−(2−カルボキシメチル)−アンモニウムベタイン、2−(メチルチオ)エチルメタクリロイル−S−(スルホプロピル)−スルホニウムベタイン、2−[(2−アクリロイルエチル)ジメチルアンモニオ]エチル2−メチルホスファート、2−(アクリロイルオキシエチル)−2’−(トリメチルアンモニウム)エチルホスファート、[(2−アクリロイルエチル)ジメチルアンモニオ]メチルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、2−[(3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]エチル2’−イソプロピルホスファート(AAPI)、1−ビニル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド、(2−アクリルオキシエチル)カルボキシメチルメチルスルホニウムクロリド、1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウムベタイン、N−(4−スルホブチル)−N−メチル−N,N−ジアリルアミンアンモニウムベタイン(MDABS)、N,N−ジアリル−N−メチル−N−(2−スルホエチル)アンモニウムベタイン、等が挙げられる。
【0104】
理解されるべきこととして、上記した官能モノマー、特には塩基性アミノ基を含有しているモノマーは、その対応する塩の形態でも用いられ得る。例えばアミノ基含有アクリラート、メタクリラート又はスチレンは、有機又は無機酸との塩としてあるいは塩化ベンジルのような公知のアルキル化剤で四級化することにより用いられ得る。この塩形成は、予形成されたブロックコポリマーに適切な試薬を続いて反応させることによってもなされ得る。別の実施形態では、例えば色素コンセントレートを調製している期間中に塩基性又は酸性基を有するブロックコポリマーと適切な中和剤を反応させることによって、塩形成は、組成物又は処方物中でin situで行われる。
【0105】
ハロゲン化ポリマー基体の表面に形成されるグラフトポリマーは5nm〜100μm(好ましくは10nm〜200nm)の薄層を形成し、3>の低多分散度を特徴とする。
【0106】
表面に形成されるポリマーの層厚は、溶媒、反応成分濃度、温度及び/又は反応時間等のパラメーターに応じて決まるものである。
【0107】
必要なら、これらのポリマーは、ポリマーブラシの形態で、すなわち表面に対して垂直に配向された鎖の形態で存在していてよい。
【0108】
「ポリマーブラシ」は、その名が示唆するように、ポリマー鎖を含有しており、多少はブラシの毛と同じように、鎖の一方の末端が表面に直接又は間接的につながれており、鎖の他方の末端が表面から自由に延びている。
【0109】
ポリマーを共有結合で取り付けてポリマーブラシを形成するのは、一般的には、「〜にグラフトさせる」技術及び「〜からグラフトさせる」技術により達成される。「〜にグラフトさせる」技術には、予形成された末端官能化ポリマー鎖を適する基体に適切な条件下でつなぐことが含まれる。「〜からグラフトさせる」技術には、これに対して、基体表面に開始剤を共有結合で固定化し、続いて表面開始重合させてポリマーブラシを作出することが含まれる。
【0110】
そのような技術のそれぞれには、当技術分野で知られているさまざまな技術を用いて行われ得る、表面に種(例えば、ポリマー又は開始剤)を取り付けることが含まれる。
【0111】
上記したように、「〜からグラフトさせる」方法では、一旦開始剤が表面に取り付けられると、重合反応がそのあと行われて表面結合ポリマーが作出される。各種の縮合、アニオン、カチオン及びラジカル重合法を含めて、さまざまな重合反応が用いられ得る。これら及び他の方法が、大群のモノマー及びモノマー組み合わせを重合するのに用いられ得る。
【0112】
数ある中でも、ラジカル重合法の特定的な例が、制御/「リビング」ラジカル重合、例えば、金属触媒原子移動ラジカル重合(ATRP)、安定フリーラジカル重合(SFRP)、ニトロオキシド媒介法(NMP)、及び退化的移動(例えば、可逆的付加開裂型連鎖移動(RAFT))法、である。ポリマーブラシを作出するのに「リビング」フリーラジカル系を用いることの利点としては、分子量制御及び狭多分散度からくるブラシ厚を制御できること、及び、異種モノマー群の存在下でドーマント鎖末端を逐次的に活性化することによりブロックコポリマーを調製できることが挙げられる。これらの方法は文献に十分詳述されており、例えば、Pyun及びMatyjaszewskiによる論文、"Synthesis of Nanocomposite Organic/Inorganic Hybrid Materials Using Controlled/"Living" Radical Polymerization," Chem. Mater., 2001, 13, 3436-3448に記載されている(この文献の内容は参照によりその全体が組み込まれる)。
【0113】
必要であれば、ブロックポリマーを形成させるためには、最初の重合が中断され、さらなる重合が新たなモノマーで開始され得る。
【0114】
用語ポリマーには、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマー、又はコポリマー(例えば、ブロック、マルチブロック、星型、勾配型、ランダム型、櫛型、超分岐型及び樹枝型コポリマー並びにグラフトコポリマー)が含まれる。ブロックコポリマー単位Aには、1つ又はそれ以上のオレフィン二重結合を有している重合性脂肪族モノマーの少なくとも2つの繰り返し単位(x≧2)が含有されている。ブロックコポリマー単位Bには、1つ又はそれ以上のオレフィン二重結合を有している少なくとも1つの重合性脂肪族モノマー単位(y≧0)が含有されている。
【0115】
本発明の方法に従って調製される改質されたハロゲン化ポリマー基体は本発明のさらなる実施形態を表す。
【0116】
改質されたハロゲン化ポリマーは、以下の式:
(1) HalPol−[In−A−B−C−Z]
[式中、
A、B、Cは、ブロック又はランダムで配置され得る、モノマーフラグメント、オリゴマーフラグメント又はポリマーフラグメントを表し;
Zは、ATRPから誘導される末端基としてそれぞれのポリマーブラシの末端に位置しているハロゲンであり;
HalPolは、ハロゲン化ポリマー基体を表し;
Inは、制御ラジカル重合を活性化する触媒の存在下でエチレン性不飽和モノマーの重合を開始させることができる重合開始剤のフラグメントを表し;
xは、1より大きい数を表し、A中の繰り返し単位の数を確定しており;
yは、ゼロ又はゼロより大きい数を表し、B中のモノマー、オリゴポリマー又はポリマー繰り返し単位の数を確定しており;
zは、ゼロ又はゼロより大きい数を表し、C中のモノマー、オリゴポリマー又はポリマー繰り返し単位の数を確定しており;
nは、部分式(1a) In−(A−B−C−X)−で表される基の数を確定している、1又は1より大きい数である]
によって表され得る。
【0117】
サブユニットA、B、及びCは、さらに、一般式
(1b)P−[X]−E[式中、P、X、E及びnは、先に定義されていると同じである]
に細分解され得る。
【0118】
本発明の明細書の文脈においては、用語アルキルには、メチル、エチル、並びにプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル各異性体が含まれる。アリール置換アルキルの1つの例はベンジルである。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、並びにプロポキシ及びブトキシ各異性体である。アルケニルの例は、ビニル及びアリルである。アルキレンの例は、エチレン、n−プロピレン、1,2−プロピレン又は1,3−プロピレンである。
【0119】
シクロアルキルのいくつかの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル及びメチルシクロヘキシルである。置換されたシクロアルキルの例は、メチル−、ジメチル−、トリメチル−、メトキシ−、ジメトキシ−、トリメトキシ−、トリフルオロメチル−、ビス−トリフルオロメチル−及びトリス−トリフルオロメチル−置換シクロペンチル並びにシクロヘキシルである。
【0120】
アリールの例は、フェニル及びナフチルである。アリールオキシの例は、フェノキシオキシ及びナフチルオキシである。置換されたアリールの例は、メチル−、ジメチル−、トリメチル−、メトキシ−、ジメトキシ−、トリメトキシ−、トリフルオロメチル−、ビス−トリフルオロメチル−又はトリス−トリフルオロメチル置換フェニルである。アラルキルの1つの例はベンジルである。置換されたアラルキルの例は、メチル−、ジメチル−、トリメチル−、メトキシ−、ジメトキシ−、トリメトキシ−、トリフルオロメチル−、ビス−トリフルオロメチル−又はトリス−トリフルオロメチル置換ベンジルである。
【0121】
脂肪族カルボン酸のいくつかの例は、酢酸、プロピオン酸又は酪酸である。脂環式カルボン酸の一例はシクロヘキサン酸である。芳香族カルボン酸の一例は安息香酸である。脂肪族二カルボン酸の例は、マロニル、マレオイル又はスクシニルである。芳香族二カルボン酸の一例はフタロイルである。
【0122】
用語へテロシクロアルキルは、その所定の構造中に、窒素、イオウ及び酸素からなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子を有している1つ又は2つのヘテロ環式基を包含している。ヘテロシクロアルキルのいくつかの例は、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、ピペラジニル及びテトラヒドロチエニルである。ヘテロアリールのいくつかの例は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル及びピリミジニルである。
【0123】
一価シリル基の一例はトリメチルシリルである。
【0124】
本発明に従って改質されたハロゲン化ポリマー基体は、多くの用途に用いられ得る。
【0125】
検知デバイス:
特異的に検出すること又は認識することを可能にさせる、分析又は検知デバイスに対する第1の必要条件は、非特異的吸着に対するデバイス表面の抵抗である。この必要条件は、先に記載したコポリマーによって満たされ得る。第2の必要条件は、検体中の選択された成分と特異的に相互作用することを可能にさせる官能基(以下認識単位と呼ぶ)の導入である。例えば、ある分子の物理的−化学的吸着を引き起こして続いて分析又は検知のための検出をする認識単位。認識単位の例は、検知段階の期間中に分析されるべき分子(標的分子と呼ばれる)を認識することができまたそれに特異的に結合(錯体形成)するであろう、例えば、有機分子、バイオマーカー、代謝体、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、DNAもしくはRNAフラグメント、炭水化物又はこれらのフラグメントのような構造体単位である。認識単位と標的分子との相互作用は、水素結合、静電気相互作用、ファンデルワールス力、π−π相互作用、疎水相互作用、金属配位、又はこれらの組み合わせによって達成されるものである。
【0126】
認識単位の例には、エステル、アミド、ウレタン、カルバマート、マレイミド又はスクシンイミジルのようなイミド、ビニルスルホン、共役C=C二重結合、エポキシド、アルデヒド、ケトン、アルコール、エーテル、アミン、ニトロ基、スルホキシド、スルホン、スルホンアミド、チオール、ジスルフィド、シラン又はシロキサン官能が含まれる。これらの認識単位は、標的分子の官能基と反応することができる。
【0127】
細胞表面の受容体に結合することができる認識単位:標的分子は反応により直接認識単位に結合され得る。一例は、システイン含有ペプチドのビニルスルホン認識単位への反応である。細胞表面の受容体に結合するペプチド認識単位のケースは、例えば培養系中での又は埋め込み片上での細胞挙動の解析あるいは細胞挙動の治療的操作で特に興味あるものであり得る。
【0128】
生物活性標的部分構造に特異的に結合することができる認識単位:そのような標的の例としては、抗原、タンパク質、酵素、オリゴヌクレオチド、DNAフラグメント、RNAフラグメント、炭水化物例えばグルコース、及びその他の基又は分子が挙げられる(ただし、これらのものは、続いての分析又は検知アッセイで認識単位と特異的に相互作用することができるものとする)。
【0129】
カチオンと安定な錯体を形成することができる認識単位。第2の段階でこのカチオンは、適する官能基を通して直接標的分子と錯体を形成するものである。この認識単位の例としては、カルボキシラート、アミド、ホスファート、ホスホナート、ニトリロ三酢酸、及びカチオンをキレートすることができるものとして知られているその他の基が挙げられる。そのようなカチオンの例としては、Mg(II)、Ti(IV)、Co(III)、Co(VI)、Cu(II)、Zn(II)、Zr(IV)、Hf(IV)、V(V)、Nb(V)、Ta(V)、Cr(III)、Cr(VI)、Mo(VI)、及びキレートリガンドと安定な錯体を形成すると知られているその他のカチオンが挙げられる。
【0130】
細胞反応の生物分析で重要な認識単位の多くはペプチドである。そのようなケースでは、ペプチドは、改質されたハロゲン化ポリマー表面(1)にカップリングされ得る。ペプチドは、ペプチド内に組み込まれたシステイン残基へ反応させることも含めた、さまざまな手段によって、改質されたハロゲン化ポリマー表面(1)に結合され得る。システイン残基は、細胞接着に直接関与することはめったにない。そのようなことと、システイン残基を含んでいる細胞接着ペプチドはほとんどないので、ペプチドをカップリングする目的のために組み込まれているシステイン残基はカップリングのための唯一のシステイン残基となる。他の方法も考えられるが、好ましい方法は、ポリマー上にあるシステイン残基を介してペプチドを多官能ポリマーにカップリングさせる方法である。他の生物活性成分、例えば接着タンパク質、増殖因子タンパク質、サイトカインタンパク質、ケモカインタンパク質、等も組み込まれ得る。官能化された表面は、測定される成分が細胞機能のある種のアフェクターである、細胞関与生物分析装置で用いられ得る。試験流体は、細胞が反応することが求められている、検体を含有し得る。細胞反応は、検体が存在していることの尺度としてあるいは検体の活性の尺度に用いられ得る。別の形態としては、細胞反応は、それ自体が、求められている情報であり得、例えば、細胞がある特定の接着基体へ移動しているときの、ある特定の細胞種が増殖因子に移動する反応である。そのような科学的情報の収集は、薬物候補の活性のスクリーニングで、特には、接着、移動、及び細胞−細胞相互作用のようなより高い次元の細胞反応が標的にされている場合、有意な意味があることである。
【0131】
官能化された表面は、細胞が後の治療使用のために培養される、細胞関与治療装置で用いられ得る。現代の治療装置では、培養された細胞が用いられることがある。例えば、膝の関節軟骨欠陥部に移植されるための軟骨細胞の培養での使用あるいは血管埋め込み片を移植するための内皮細胞の培養での使用である。そのようなケースでは、細胞表現型の変調及び操作が、主な関心事である。
【0132】
官能化された表面は、医用デバイスに用いられ得る。一般的には医用デバイスとは、生体機能の実行、増強、保護、又は代替をし、身体と実質的に適合性がある、生きた構造体のすべて又は一部を含んでいる、天然又は合成の物品である。
【0133】
本発明の組成物を用いてあらゆる造形物品が作製され得る。例えば、医用デバイスのような、体液と接触するのに適している物品が、本明細書に記載されている組成物を用いて作製され得る。接触の期間は、例えば、手術器具のように、短時間のものであり得、あるいは埋め込み片のように長期間使用の物品もあり得る。医用デバイスとしては、限定するものではないが、カテーテル、ガイドワイヤ、血管ステント、微小粒子、電子リード線、プローブ、センサー、薬物デポー、経皮パッチ、血管パッチ、血液バッグ、及びチューブが挙げられる。医用デバイスは、埋め込まれたデバイス、経皮デバイス、又は皮膚デバイスであり得る。埋め込まれたデバイスとしては、患者に完全に埋め込まれている、すなわち、完全に内部にある物品が挙げられる。経皮デバイスとしては、皮膚に浸透し、それによって身体外部から身体の中へと送る、品目が挙げられる。皮膚デバイスは、皮相的に用いられる。埋め込みデバイスとしては、限定するものではないが、ペースメーカーのようなプロテーゼ、ペースメーカーリード線のような電気リード線、除細動器、人工心臓、心室補助デバイス、豊胸埋め込み片のような再構築解剖プロテーゼ、人工心臓弁、心臓弁ステント、心膜パッチ、手術パッチ、冠ステント、血管埋め込み片、血管ステント、構造ステント、血管又は心血管シャント、生体管路、外科用綿撒糸、縫合糸、輪状形成リング、ステント、ステープル、弁付き埋め込み片、創傷治癒用真皮移植片、脊髄整形移植片、整形ピン、子宮内避妊具、尿路ステント、上顎顔面再構築移植片、歯科埋め込み片、眼内レンズ、クリップ、胸骨ワイヤー、骨、皮膚、靭帯、腱、及びこれらの組み合わせが挙げられる。経皮デバイスとしては、限定するものではないが、カテーテルつまり各種タイプのカテーテル、カニューレ、胸チューブのような排液チューブ、鉗子、レトラクタ、針、及び手袋のような手術器具、及びカテーテルカフが挙げられる。皮膚デバイスとしては、限定するものではないが、火傷ドレッシング、創傷ドレッシング、及び歯科用ハードウェア(例えばブリッジ支持具及びブレース部具)が挙げられる。
【0134】
官能化された表面は、細胞が培養され、表面と接触して用いられる、細胞関与治療装置で用いられ得る。このような状況の例としては、急性肝不全患者の血液を解毒するのに用いられる肝細胞培養器のような、バイオリアクターが、一部の体外治療装置で用いられている。そのようなケースでは、リアクター中の肝細胞を、機能性の、区別された状態に維持しておきたいものである。細胞とその基体との間の付着相互作用はそのような相互作用で重要な役割を演じると思われるので、本発明の技術は、そのような反応を制御するための手段を提供する。
【0135】
官能化された表面は、官能化された表面が埋め込み片素子である、細胞関与治療装置で用いられ得る。埋め込み片環境中にある細胞と埋め込み片表面との間の相互作用は、埋め込み片の生体適合性を決定する上で支配的な役割を演じ得る。例えば、冠動脈内に埋め込まれたステントの表面に、血液血小板が存在しているのは望ましいものではなく、ステント内狭窄をもたらし得る。したがって、ステント表面に血液血小板が付着するのを防ぐことは望ましいと考えられる。
【0136】
本明細書に記載されている基材は、分析又は検知目的のための基体又はデバイス(一般的な意味では「チップ」と呼ばれる)の分野でさまざまな用途を有している。特には、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、DNAもしくはRNAフラグメントのような生物学的又は医学的関連分子を特異的に検出することが目的である分析又は検知用途であるいは一般的にはあらゆるタイプの抗原−抗体又はキー−ロックタイプのアッセイで用いられることが意図されているチップを表面処理するのに、本発明の基材は適している。特に検体がさまざまな分子又はイオン種を含有している場合、また目的が多くの成分から1つの分子又はイオンを又は多くの成分からいくつかの分子又はイオンを特異的に検知することである場合、本発明は、チップ表面の必要な特性、すなわち1)非特異的吸着に耐えることができること、及び2)分析又は検知操作の期間中に検体中の標的分子又はイオンと特異的に相互作用することになる、認識実体の所定濃度を制御された方式で導入することができること、をもたらすのに適しているベースを提供するものである。適する分析又はセンサー検出法と組み合わせると、本発明は、あらゆるタイプの分析又は検知アッセイに、特にはバイオアフィニティータイプのアッセイに、高い特異性及び高い検出感度の両方を兼備しているチップを作製できる可能性をもたらすものである。
【0137】
本明細書に記載されている基材は、さらに、「チップ」系用途でない基体又はデバイスの分野でさまざまな用途を有している。特には、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、DNAもしくはRNAフラグメント等の生物学的又は医学的関連分子の特異的検出が目的である分析又は検知用途であるいは一般的にはあらゆるタイプの抗原−抗体アッセイ又はキー−ロックタイプのアッセイで用いるためのものである。
【0138】
この方法は、いずれのタイプの定性、半定量又は定量分析又は検出アッセイ用のチップにも適用され得る。チップと組み合わせられるのに特に適している検出法としては、以下のものが挙げられる。
【0139】
1)チップ表面に吸着された標的分子と相互作用してその量を検出するのにエバネセント場が用いられる、光導波路法。この方法は、光カップリング素子、好ましくは回折格子又はホログラフィー構造体を通して導波層にインカップリングしてくる白色又は単色光によって決めるものである。
【0140】
2)蛍光標識された標的分子がその蛍光光の強さを測定することによって定量的に分析される蛍光分光又は顕微法。
【0141】
3)改質されたチップ表面に吸着された標的又はトレーサー分子の蛍光タグを励起させるのにエバネセント光場が用いられる、1)と2)の組み合わせ。蛍光は、液体フロー・セルの反対側に位置している蛍光検出器を用いて検出される。
【0142】
4)金属薄膜共鳴状態にある表面プラズモンの相互作用が変わる、すなわち、金属薄膜の表面プラズモンを励起するための共鳴入射角が、金属膜に/金属膜から分子が吸着又は脱着されると、それによって生じる有効屈折率の変化のために変わる、表面プラズモン共鳴法(SPR)。
【0143】
5)改質された表面に吸着又は付着した標的分子の量を定量するのに特定固有波長における吸収が用いられる、紫外又は可視(UV/VIS)分光法。
【0144】
6)表面改質チップにすでに吸着又は付着された標的分子を検出及び定量するのに赤外領域での原子又は分子振動の励起が用いられる、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法等の赤外法。全反射減衰分光法(ATR−FTIR)又は赤外反射−吸収分光法(IRAS)のようなIR分光法の表面又は界面高感度形態のものは特に適する方法である。
【0145】
7)改質されたチップ表面に吸着又は付着された分子の固有振動レベルを検出するための、ラマン分光法(RS)。表面又は界面高感度型のRS、例えば表面増感ラマン分光法(SERS)は、特に適している。
【0146】
8)例えば特定の標的分子又はその分子の一部を還元又は酸化させるための電流又は電荷が所定ポテンシャルで測定される、電気化学法。チップ系デバイスは、エバネセント場相互作用とは対照的に、励起が基体表面から反射した光によってである標準的蛍光又は吸光法でもアッセイされ得る。
【0147】
定性、半定量又は定量分析又は検出アッセイには他の分析又は生物分析デバイス表面が用いられ得る。非「チップ」系基体としては光ファイバー基体も挙げられる。光ファイバーのケースでは、「チップ」基体に対して記載した方法が適用可能である。エバネセント場が支持されていない又は「チップ」でない他の非「チップ」系基体に対して、適する方法が以下に記載されている。
【0148】
1)蛍光標識された標的分子が、その蛍光光の強度を測定することによって定量分析される、蛍光分光又は顕微法。蛍光は、透過、又は、より好ましくは、反射をベースにした検出法のために配置された標準的検出器を用いて検出される。
【0149】
2)本発明に従って改質された表面に吸着又は付着した標的分子の量を反射又は透過法により定量するのに特定固有波長における吸光が用いられる、吸光分光法。ラテラルフローアッセイのような単純アッセイ方式に対しては、検出は、アッセイ領域中の色変化の目視検査による。
【0150】
3)改質されたチップ表面にすでに吸着又は付着された標的分子を検出及び定量するのに赤外領域での原子又は分子振動の励起が用いられる、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法等の赤外法。赤外反射−吸収分光法(IRAS)のようなIR分光法の表面又は界面高感度形態のものは特に適する方法である。
【0151】
4)例えば特定の標的分子又はその分子の一部を還元又は酸化させるための電流又は電荷が所定ポテンシャルで測定される、電気化学法。
【0152】
分析又はセンサーチップはさまざまな使い方で用いられ得る。
【0153】
非改質及び改質コポリマーは純粋形態で又は混合物として適する表面に吸着され得る。最適な選択は、標的分子の種類と濃度並びに検出法の種類によって決まる。さらに、この方法は、多数の検体が1個のチップで、順次に又は同時に、測定されるアッセイで用いられることになるチップを改質するのに特に適している。
【0154】
例えば、抗体−抗原認識及び分析セット(Proteomics Chips)をベースにしてタンパク質を認識して分析するための、多目的DNA及びRNAバイオアフィニティー分析用マイクロアレイ「Genomics Chips」である。そのような方法は、生物医学センサー、診断用DNA/RNAセンサー、又はタンパク質センサーにおける用途に対してあるいはゲノミクス及びプロテオミクスにおける拡張ライブラリーを確立する目的に対して1個の微小チップで多数の成分を分析するのに特に有効である。
【0155】
検出ステップの観点からは、2つの基本的な選択肢がある。
【0156】
1)バッチ法のタイプではチップはバッチ式に官能化される。流体マニホールド中で、1種又は数種の検体及び試薬が局所的にチップ表面に適用される。バイオアフィニティー反応(インキュベーションステップ)の完了又はほぼ完了を待った後、チップは緩衝液で洗浄され、先に記載した各方法のうちの1つ又は組み合わせを用いて分析される。
【0157】
2)連続法ではチップは連続式に官能化され、気体又は液体セルつまりフロー・スルー・セルの一部となっている。表面の調整は、そのような液体又はフロー・スルーセル内にある連続式且つ連続式にモニタリングされている工程で行われ得、そのあと検体溶液中の特異的標的分子の特異的相互作用及び吸着又は付着からくるシグナルのin situモニタリングが行われる。チップの元の表面はこのあと再び回復/再生されて、次の直後のバイオアフィニティーアッセイのために調整され得る。これは何回でも繰り返され得る。
【0158】
関連するが異なる分野では、チップの表面処理はバイオセンサーで用途を有しており、ここではその目的は、そのようなチップに確定された様式で生きた細胞を付着させ、組織することである。タンパク質吸着と細胞付着は密接に関連しているので、これは、細胞をチップ上に確定された様式で組織する可能性を開くものである。
【0159】
パターンの特異的部分の検出は、その特異的部分に局所化され得るし、あるいは多数の特異的部分に対して同時に行われ得る。一般的には、重要な側面は、1つ又はそれ以上の液体サンプル中の多数の検体の逐次又は同時測定であり、ここではパターン化された表面は、ペプチド、タンパク質、抗体又は抗原、受容体又はそのリガンド、キレート化物質又は「ヒスチジンタグ成分」、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNAフラグメント、RNAフラグメント、酵素、酵素コファクター又は阻害物質、レクチン、炭水化物から構成される群の検体を測定するためのマイクロアレイアッセイで用いられる。
【0160】
要約すると、本明細書に記載されている基材及び方法は、例えば、薬理研究、コンビナトリアルケミストリー、臨床開発又は前臨床開発でのスクリーニングアッセイにおける化学、生化学又は生物検体を定量又は定性測定するための;DNA及びRNA分析のための、アフィニティースクリーニング又は研究でリアルタイム結合を研究又は動的パラメーターを測定して、例えば単一ヌクレオチド多型性等の、ゲノム中のゲノム又はプロテオーム差を測定するための;タンパク質−DNA相互作用を測定するための;mRNA発現及びタンパク質(生)合成の調節機構を測定するための;発現プロファイルを毒物学的研究及び測定するための、特には、mRNA、タンパク質、ペプチド又は低分子有機(メッセンジャー)化合物のような、生物又は化学マーカーを測定するための;薬理医薬品の研究開発、ヒト及び動物の診断、農薬製品の研究開発、植物体症候診断及び前症候診断で、抗原、病原体又は細菌を測定するための;医薬品開発で患者を層別化するためのまたその治療薬剤を選択するための;病原体、有害化合物又は病原菌を測定するための、特には栄養及び環境検体中の、サルモネラ、プリオン、ウイルス及び細菌を測定するための;多くの用途分野で用いられ得るものである。
【0161】
バイオアフィニティーセンサー及び診断センサーの選択性及び感度をよりよくしようとするニーズが、特にスクリーニングアッセイ、DNA/RNAライブラリー及びタンパク質ライブラリーでの使用に対して存在する。診断センサーを設計するための一般的な方法には、生理学的サンプル中の特定の成分の特異的結合の測定が含まれる。典型的には、対象の生理学的サンプル(例えば血液サンプル)は多くの成分の複雑な混合物であり、これらはすべて診断センサーの表面とさまざまな程度に相互作用する。しかしながら、診断センサーの目的は、1つの成分の特異的相互作用のみを、他のすべての関係のない相互作用を最少としながら、探査することである。血液と接触するセンサーのケースでは、タンパク質、糖タンパク質及び/又はサッカリドが、さらには細胞までもが、多くの場合、センサー表面に非特異的に吸着する。これは選択性も感度も害するものであり、バイオアフィニティーセンサーでの2つのきわめて重要な性能基準となっている。
【0162】
先に略述したように、本発明に従って多官能ポリマー単一層を直接生じる反応性モノマーを用いることが可能である。別法としては、最終表面上に用いられるべき官能基の前駆体を有しているモノマー、例えば酸塩化物又は酸無水物も、選択され得る。これらは、この後、ポリマーがサンプル分子又はプローブ分子と所望の条件下で相互作用をすることを可能にさせる、反応性基、例えばNHSエステル又はグリシジルエステル基に変換され得る。
【0163】
つまり、本発明の目的のためには、あらゆる重合性モノマーが、それらが、ポリマーとサンプル分子又はプローブ分子との相互作用を可能にさせるのに必要な官能基と組み合わせられ得るかぎり、又はそのような官能基を含んでいるかぎり適している。
【0164】
本発明の目的のために用いられ得る官能基は、相互作用が達成されるべき分子に照らし合わせて好ましくは選択される。相互作用は、1つの単一種のサンプル分子、又は各種のサンプル分子に向けられ得る。本発明の1つの重要な用途は生物サンプル中の特異的分子の検出であるので、ポリマーブラシ中に存在する官能基は、好ましくは、生物サンプル中の分子と特異的に相互作用することができる天然又は合成生体分子と相互作用して、その検出をもたらすものとなる。適する官能部分構造は、好ましくは、(DNA、RNA又はPNAのような)核酸及びその誘導体(例えばオリゴヌクレオチド又はアパタマー)、サッカリド及びポリサッカリド、グリコシド変性タンパク質又は抗体も含めたタンパク質、酵素、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン又は抗生物質、又はペプチド又は標識化されたその誘導体と反応することができるものとなる。
【0165】
特に生物学的又は医学的用途においては、プローブ分子の多くには、立体障害されていない求核部分構造が含まれているので、ポリマーブラシとの好ましい相互作用には、ポリマー鎖とサンプル分子又はプローブ分子との間に共有結合をもたらす求核置換反応又は付加反応が含まれている。
【0166】
適切な官能基がポリマーブラシ中に存在しているとして、本発明のポリマー単一層は、分離法でも、例えばクロマトグラフィー用途での静止相として、用いられ得る。
【0167】
固定化されることになる分子の群また先に記載した他の必要条件(反応時間、温度、pH値)に従って固定化されることになる分子の群に関しての好ましい官能基は、先行技術文献から選択され得る。適する基の例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS−エステル)のようないわゆる活性又は反応性エステル、エポキシド(好ましくはグリシジル誘導体)、イソチオシアナート、イソシアナート、アジド、カルボン酸群又はマレインイミドである。
【0168】
多官能ポリマー単一層を直接生じる好ましい官能モノマーとしては、以下の化合物が、本発明の目的のために用いられ得る:アクリル酸もしくはメタクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミド、N−メタクリロイル−6−アミノプロパン酸ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−メタクリロイル−6−アミノカプロン酸ヒドロキシスクシンイミドエステル又はアクリル酸もしくはメタクリル酸グリシジルエステル。
【0169】
用途に応じて、2つ又はそれ以上の異なる官能基の組み合わせを有するポリマーブラシが、例えばそのポリマー鎖をもたらす重合を異なる種類の官能化されたモノマーの存在下で行うことによって、もたらされるという可能性がある。別の形態としては、官能基は、同じであり得る。
【0170】
ポリマー単一層に成功裡に固定化されたサンプル又はプローブ分子の検出には、さまざまな方法が適用され得る。特には、本発明のポリマー層はその厚みの有意な増大を受けていることが見出されており、これは、適する方法(例えば偏光解析法)で検出され得る。質量感度法も適用され得る。
【0171】
生物サンプル中の核酸、例えば所望ヌクレオチド配列又はDNA分子を有するオリゴヌクレオチドが分析されることになる場合は、合成オリゴヌクレオチド1本鎖がポリマー単一層と反応され得る。
【0172】
このようにして調製された表面がハイブリッド形成反応で用いられる前に、未反応官能基が、適する求核試薬、好ましくは単純一級アルキルアミン(例えばプロピル又はブチルアミン)、二級アミン(ジエチルアミン)又はアミノ酸(グリシン)のような、C〜Cアミンを加えることによって脱活性化される。
【0173】
例えばPCRから得られるような、標識化されている、オリゴヌクレオチド1本鎖の混合物に曝されると、そのPCR生成物に相補の合成鎖をプローブとして具備している表面部分のみが、スキャンするとハイブリッド形成による検出可能シグナルを示すだろう。異なるオリゴヌクレオチド配列の平行検出を容易にするためには、試験溶液には、異なるタイプの合成オリゴヌクレオチドプローブが具備されている各部分にセンサー表面を分けることを可能にさせる印刷法が用いられ得る。
【0174】
本発明で使われている用語「ハイブリッド形成」は、緊縮又は非緊縮状態に関し得る。
【0175】
分析されることになる核酸は、合成及び半合成核酸ライブラリーも含めた、DNAライブラリー又はゲノムライブラリー起源のものであり得る。好ましくは、核酸ライブラリーには、オリゴヌクレオチドが含まれている。
【0176】
固定化された状態にある核酸の検出を容易にするためには、核酸分子は、好ましくは、標識化されるべきである。適する標識としては、放射性、蛍光、リン光、生物発光又は化学発光標識、酵素、抗体又はその機能フラグメントもしくは機能誘導体、ビオチン、アビジン、又はストレプトアビジンが挙げられる。
【0177】
抗体としては、限定するものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ又は1本鎖抗体あるいはそのような抗体の機能フラグメント又は誘導体が挙げられ得る。
【0178】
適用される標識化方法に応じて、検出は、当技術分野で知られている方法により、例えばレーザースキャンによりあるいはCCDカメラを用いて行われ得る。
【0179】
また、検出が間接的に行われる方法も、本発明に含まれる。
【0180】
本発明によるポリマー単一層のさらなる用途が、例えば物質を精製するための、アフィニティークロマトグラフィーの分野にある。この目的のためには、サンプルと接触する、同一の官能基又はプローブ分子を有するポリマーブラシが好ましくは用いられる。ポリマーブラシによって所望の物質が固定化された後、未結合基材は、例えば洗浄工程で、除去され得る。精製された物質は、適する溶離液で、このあと、アフィニティーマトリックスから分離され得る。
【0181】
そのようなマトリックス上に固定化され得る好ましい物質は、核酸分子、ペプチド又はポリペプチド(タンパク質、酵素)(又は、抗体、その機能フラグメント又は誘導体のような、その複合体)、サッカリド又はポリサッカリドである。
【0182】
固定化が行われた後、表面の再生は可能であるが、結果の質を確実なものにするためには、1回使用が好ましい。
【0183】
本発明によって、異なる種類のサンプルが、精度が向上されて及び/又は必要空間が低減されてシリーズ(連続)並びにパラレル(並行)検出法で分析され得る。本発明によるセンサー表面は、したがって、例えば、血液、血清、痰その他のような生理液中の成分を検出するための、診断用機器あるいは他の医用用途で役立ち得る。
【0184】
センサー
本発明のセンサー(すなわち、プローブが取り付けられたポリマーブラシ)は、多数の生体分子標的が連続方式で適用又は分析され得る、多段又は「サンドイッチ」アッセイ方法でも利用され得る。この方法は、所望生体分子標的のためのタンパク質プローブを固定化するのに有用であり得る。二番目、三番目、他の生体分子がシグナルレポーター分子(すなわち、蛍光色素分子)の数を増大させるように働く場合は、この方法は、シグナル増強方式でも適用され得る。
【0185】
センサーは、血液、結晶、尿、唾液、涙、粘膜由来物、精液、便サンプル、組織サンプル、組織ぬぐい物及びこれらの組み合わせのような生物サンプルを分析するのに用いられ得る。
【0186】
つながれたプローブがポリペプチドであるセンサーは、Leuking et al., Anal. Biochem., 1991, 270(1):103 111に総説的に記載されている手順に従って、例えば、ある特定の標的抗原に対して特異的結合アフィニティーを有しいる抗体の個体群をスクリーニング又はキャラクタリゼーションするのに、又はある特定の受容体に対してリガンドがアフィニティーを持っていたかどうかを測定するのに用いられ得る。標的ポリペプチドは、例えば、蛍光的に又はアルカリホスファターゼ等の酵素であるいは容易な検出には放射線標識で標識化され得る。
【0187】
プローブ
本発明との関連ではさまざまな生物プローブが用いられ得る。一般的には、プローブ分子は、好ましくは、1種又はそれ以上の対象の生物分子に対して実質的に選択的である。選択性の度合は扱っているその特定の用途に応じて変わるものであって、一般には、当業者によって選択され得る及び/又は最適化され得るものである。
【0188】
プローブ分子は、官能基保有ポリマーセグメントには通常のカップリング法(これの例は、本明細書以下の見出し「用途」でさらに説明される)を用いて結合され得る。プローブは、共有で又は非共有で(例えば、数ある中でも、静電気、疎水、アフィニティー結合、又は水素結合で)結合され得る。
【0189】
プローブを共有で取り付けるのに有用である典型的ポリマーブラシ官能は、ヒドロキシル、カルボキシル、アルデヒド、アミノ、イソシアナート、イソチオシアナート、アズラクトン、アセチルアセトナート、エポキシ、オキシラン、カルボナートスルホニルエステル(例えばメシチル又はトリルエステル)、アシルアジド、活性化されたエステル(例えばN(ヒドロキシ)スクシンイミドエステル)、COOH−カルボジイミド付加物由来O−アシルイソ−尿素中間体、フルオロ−アリール、イミドエステル、無水物、ハロアセチル、アルキルヨージド、チオール、ジスルフィド、マレイミド、アジリジン、アクリロイル、ジアゾ−アルカン、ジアゾ−アセチル、ジアゾニウム、等の中から選択される。プローブは、2−ヒドロエチル(メト)アクリラート、ヒドロキシエチル(メト)アクリルアミド、ヒドロキシエチル−N(メチル)(メト)アクリルアミド、(メト)アクリル酸、2−アミノエチル(メト)アクリラート、アミノ−被保護モノマー例えばアミノ官能モノマーのマレイミド誘導体、3−イソプロペニル、α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、2−イソシアナト−エチルメタクリラート、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン−5−オン、アセチ−ルアセトナート−エチルメタクリラート、及びグリシジルメタクリラートのような官能モノマーを共重合させることによって具備され得る。
【0190】
ポリマーブラシのポスト誘導体化も有効であると判明する。典型的な方法には、例えばホスゲン、チオホスゲン、4−メチル−フェニルスルホニルクロリド、メチルスルホニルクロリド、及びカルボニルジ−イミダゾールで、−OH官能化された基を活性化することが含まれる。カルボン酸基の活性化は、カルボジイミド、例えば、数ある中でも、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド、又は1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドを用いて行われ得る。アルデヒド基は、エポキシ官能ブラシの加水分解から得られる、隣接−OHのペルヨーダート媒介酸化から合成され得る。別の方法としては、アルデヒド基は、ビス−アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)をアミノ改質ポリマーブラシに反応させることによって取り付けられる。アミノ官能ブラシは、ジーアミノ化合物をアミノ反応性ブラシ(例えばカルボキシラートブラシのN(ヒドロキシ)スクシンイミドエステル)に反応させることによっても調製され得る。(他の最新技術のカップリング化学、例えばBioconjuguate Technique, Greg. T. Hermanson, Academic Press, 1996に記載されているようなカップリング化学も、適用可能である[参照により本明細書に組み込まれる]。)
【0191】
本発明で用いられるプローブの例としては、アセチルコリン受容体タンパク質、組織適合性抗原、リボ核酸、基底膜タンパク質、免疫グロブリン群及び下位群、骨髄腫タンパク質受容体、補体成分、ミエリンタンパク質、さらには各種のホルモン、ビタミン及びそれらの受容体成分、並びに遺伝子工学によるタンパク質、核酸、及び誘導体(例えばDNA、RNA又はペプチド核酸)、オリゴヌクレオチド又はアプタマー、ポリサッカリド、グリコシド変性タンパク質又は抗体も含めたタンパク質、酵素、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン又は抗生物質又はペプチド又はこれらの標識化誘導体が挙げられる。プローブは、天然又は合成細胞外タンパク質、抗体、抗体フラグメント、細胞接着分子、細胞接着分子フラグメント、増殖因子、サイトカイン、ペプチド、糖類、炭水化物、ポリサッカリド、脂質、ステロール、脂肪酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0192】
より詳細には、本発明に従って本発明で考えられている官能化されたモノマー又はポリマーセグメントと連結させるのに適していると考えられている生体分子としては、例えば、以下が挙げられる。
【0193】
フィブリン;フィブロイン;ミチルス・エデュリス(和名:ムラサキガイ)足タンパク質(mefpi、「ムール貝由来接着タンパク質」);他のムール貝接着タンパク質;富グリシンブロックを有するタンパク質及びペプチド;ポリアラニンブロックを有するタンパク質及びペプチド;及び絹;を含めた生体接着物質。
【0194】
脊椎動物発生、新生、再生及び修復の期間中に細胞−基質並びに細胞−細胞相互作用に参加する分子、例えば、白血球上のCD受容体群のような細胞の外表面にある分子、免疫グロブリン及び血球凝集性タンパク質、及びそのような細胞分子に付着する細胞外基質分子/リガンド、アンキリン;カドヘリン(カルシウム依存接着分子);コネキシン;デルマタン硫酸;エンタクチン;フィブリン;フィブロネクチン;糖脂質;グリコホリン;グリコプロテイン;ヘパラン硫酸;硫酸ヘパリン;ヒアルロン酸;免疫グロブリン;硫酸ケラタン;インテグリン;ラミニン;N−CAM(カルシウム依存接着分子);プロテオグリカン;スペクトリン;ビンクリン;及びビトロネクチン;を含めた、細胞接着因子(生体表面又は他の細胞及び組織への細胞の接着及び拡散を媒介する生体分子)。
【0195】
組織靭性、強度、剛性、一体性の作出に参加する細胞外基質の各要素、例えば、アルギン酸塩;アメロゲニン;セルロース;キトサン;コラーゲン;ゼラチン;オリゴサッカリド;及びペクチン;を含めた、生体高分子。
【0196】
アルブミン;アルブメン;サイトカイン;因子IX;因子V;因子VII;因子VIII;因子X;因子XI;因子XII;因子XIII;ヘモグロビン(鉄を含む又は含まない);免疫グロブリン(抗体);フィブリン;血小板由来増殖因子(PDGF);プラスミノゲン;トロンボスポンジン;及びトランスフェリン;等の、血液タンパク質(炎症、細胞ホーミング、凝固、細胞シグナル伝達、防御、免疫反応、及び代謝のようなさまざまな生体プロセスに参加する、通常は全血中に存在している、溶解された又は凝集されたタンパク質)。
【0197】
アブザイム(酵素能力を有する抗体);アデニル酸シクラーゼ;アルカリホスファターゼ;カルボキシラーゼ;コラゲナーゼ;シクロオキシゲナーゼ;ヒドロラーゼ;イソメラーゼ;リガーゼ;リアーゼ;金属−基質プロテアーゼ(MMP);ヌクレアーゼ;酸化還元酵素;ペプチダーゼ;ペプチドヒドロラーゼ;ペプチジル転移酵素;ホスホリパーゼ;プロテアーゼ;スクラーゼ−イソマルターゼ;TIMP;及び転移酵素;を含めた、酵素(1種又はそれ以上の生体基質に対して特異的触媒作用があるあらゆるタンパク質又はペプチドで、これらは、基質分子を分解することによって組織の生体反応を引き起こすのに、あるいは埋め込み片コーティング中で他の生物活性化合物を活性化させる又は放出させるのに潜在的に有用である)。
【0198】
アメロブラスチン;アメリン;アメロゲニン;コラーゲン(I〜XII);象牙質−唾液−タンパク質(DSP);象牙質−唾液−リン−タンパク質(DSPP);エラスチン;エナメリン;フィブリン;フィブロネクチン;ケラチン(1〜20);ラミニン;ツフテリン;炭水化物;硫酸コンドロイチン;硫酸ヘパラン;硫酸ヘパリン;ヒアルロン酸;脂質及び脂肪酸;及びリポポリサッカリド;を含めた、細胞外基質タンパク質及び非タンパク質。
【0199】
アクチビン(Act);アンフィレグリン(AR);アンギオポイエチン(Ang 1〜4);アポ3(TWEAK、DR3、WSL−1、TRAMP又はLARDとも呼ばれる弱アポトーシス誘発因子);ベタセルリン(BTC);塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、FGF−b);酸性線維芽細胞成長因子(aFGF、FGF−a);4−1 BBリガンド;脳由来神経組織栄養因子(BDNF);乳及び腎由来ボロキン(BRAK);骨形態形成タンパク質(BMP);B−リンパ球化学誘引物質/B細胞誘引ケモカイン1(BLC/BCA−1);CD27L(CD27リガンド);CD30L(CD30リガンド);CD40L(CD40リガンド);増殖誘発リガンド(APRIL);カルジオトロフィン−1(CT−1);毛様体神経栄養因子(CNTF);結合組織成長因子(CTGF);サイトカイン;6−システインケモカイン(ΘCkine);上皮細胞増殖因子(EGF);エオタキシン(Eot);上皮細胞由来好中球活性化タンパク質78(ENA−78);エリトロポイエチン(Epo);線維芽細胞成長因子(FGF3〜19);フラクタルキン;神経膠由来神経栄養因子(GDNF);グルココルチコイド誘発TNF受容体リガンド(GITRL);顆粒白血球コロニー刺激因子(G−CSF);顆粒白血球大食細胞コロニー刺激因子(Gm−CSF);顆粒白血球走化性タンパク質(GCP);成長ホルモン(GH);I−309;成長関連発ガン遺伝子(GRO);インヒビン(Inh);インターフェロン誘発性T細胞アルファ化学誘引物質(I−TAC);ファリガンド(FasL);ヘレグリン(HRG);ヘパリン結合性上皮細胞増殖因子様成長因子(HB−EGF);fms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt−3L);ヘモフィルトレートCcケモカイン(HCC−1〜4);肝細胞増殖因子(HGF);インシュリン;インシュリン様成長因子(IGF 1及び2);インターフェロン−ガンマ誘発性タンパク質10(IP−10);インターロイキン(IL 1〜18);インターフェロン−ガンマ(IFN−ガンマ);ケラチン生成細胞成長因子(KGF);ケラチン生成細胞成長因子−2(FGF−10);レプチン(OB);白血病抑制因子(LIF);リンホトキシンベータ(LT−B);リンホタクチン(LTN);大食細胞−コロニー刺激因子(M−CSF);大食細胞由来ケモカイン(MDC);大食細胞刺激タンパク質(MSP);大食細胞炎症性タンパク質(MIP);ミッドカイン(MK);単球化学誘引性タンパク質(MCP−1〜4);IFN−ガンマによって誘発されるモノキン(MIG);MSX 1;MSX 2;ミューラー阻害物質(MIS);骨髄始原阻害因子1(MPIF−1);神経成長因子(NGF);ニューロトロフィン(NT);好中球活性化ペプチド2(NAP−2);オンコスタチンM(OSM);オステオカルシン;OP−1;オステオポンチン;OX40リガンド;血小板由来増殖因子(PDGF aa、ab及びbb);血小板因子4(PF4);プレイオトロフィン(PTN);肺及び活性化支配ケモカイン(PARC);活性化されると調節される、正常T細胞発現・分泌物質(RANTES);感覚及び運動ニューロン由来因子(SMDF);誘発性小サイトカイン亜族Aメンバー26(SCYA26);幹細胞因子(SCF);間質細胞由来因子1(SDF−1);胸腺及び活性化支配ケモカイン(TARC);胸腺発現ケモカイン(TECK);TNF及びApoL関連白血球発現リガンド−1(TALL−1);TNF関連アポトーシス誘発性リガンド(TRAIL);TNF関連活性化誘発サイトカイン(TRANCE);リンホトキシン誘発性発現及びHSVグリコプロテインD競合HVEMTリンパ球受容体(LIGHT);胎盤成長因子(PIGF);トロンボポエチン(Tpo);トランスフォーミング成長因子(TGFアルファ、TGFベータ1、TGFベータ2);腫瘍壊死因子(TNFアルファ及びベータ);血管内皮成長因子(VEGF−A、B、C及びD);カルシトニン;及び天然起源性ホルモン例えばエストロゲン、黄体ホルモン、及びテストステロンのようなステロイド化合物並びにその類似体;等の、成長因子及びホルモン(細胞表面構造体(受容体)に結合し、標的細胞中で特異的生体内作用(例えば成長、プログラムされた細胞死、他の分子(例えば細胞外基質分子又は糖)の放出、細胞分化及び成熟、及び代謝速度の調節)を開始させるためのシグナルを発生する分子)。
【0200】
A−DNA;B−DNA;哺乳動物DNA保有人工染色体(YAC);染色体DNA;円形DNA;哺乳動物DNA保有コスミド;DNA;二本鎖DNA(dsDNA);ゲノムDNA;ヘミメチル化DNA;線形DNA;哺乳動物cDNA(相補DNA;RNAのDNAコピー);哺乳動物DNA;メチル化されたDNA;ミトコンドリアDNA;哺乳動物DNA保有ファージ;哺乳動物DNA保有ファゲミッド;哺乳動物DNA保有プラスミド;哺乳動物DNA保有プラスチド;組み換えDNA;哺乳動物DNAの制限フラグメント;哺乳動物DNA保有レトロポゾン;一本鎖DNA(ssDNA);哺乳動物DNA保有トランスポゾン;T−DNA;哺乳動物DNA保有ウイルス;及びZ−DNA;を含めた、DNA核酸。
【0201】
アセチル化された転移RNA(活性化されたtRNA、負荷されたtRNA);円形RNA;線形RNA;哺乳動物ヘテロ核RNA(hnRNA)、哺乳動物メッセンジャーRNA(mRNA);哺乳動物RNA;哺乳動物リボソームRNA(rRNA);哺乳動物トランスポーターRNA(tRNA);mRNA;ポリアルデニル化されたRNA;リボソームRNA(rRNA);組み換え型RNA;哺乳動物RNA保有レトロポゾン;リボザイム;トランスポートRNA(tRNA);哺乳動物RNA保有ウイルス;及び抑制性短RNA(siRNA);を含めた、RNA核酸。
【0202】
受容体CDのCD群;EGF受容体;FGF受容体;フィブロネクチン受容体(VLA−5);成長因子受容体、IGF結合性タンパク質(IGFBP 1〜4);インテグリン(VLA 1〜4を含めた);ラミニン受容体;PDGF受容体;トランスフォーミング成長因子アルファ及びベータ受容体;BMP受容体;Fas;血管内皮成長因子受容体(Flt−1);及びビトロネクチン受容体;を含めた、受容体(細胞表面生体分子で、シグナル(例えばホルモンリガンド及び成長因子)に結合し、そのシグナルを細胞膜を超えて細胞の内部器官へと伝達する分子)。
【0203】
天然に生じる生体分子をベースにした分子又は類似体のような、合成生体分子。
【0204】
A−DNA;アンチセンスDNA;B−DNA;相補DNA(cDNA);化学変性されたDNA;化学的安定化されたDNA;DNA;DNA類似体;DNAオリゴマー;DNAポリマー;DNA−RNAハイブリッド;二本鎖DNA(dsDNA);半メチル化されたDNA;メチル化されたDNA;一本鎖DNA(ssDNA);組み換えDNA;3倍体DNA;T−DNA;及びZ−DNA;を含めた、合成DNA。
【0205】
アンチセンスRNA;化学変性されたRNA;化学的安定化されたRNA;ヘテロ核RNA(hnRNA);メッセンジャーRNA(mRNA);リボザイム;RNA;RNA類似体;RNA−DNAハイブリッド;RNAオリゴマー;RNAポリマー;リボソームRNA(rRNA);トランスポーターRNA(tRNA);及び抑制性短RNA(siRNA);を含めた、合成RNA。
【0206】
カチオン性及びアニオン性リポソーム;酢酸セルロース;ヒアルロン酸;ポリ乳酸;ポリグリコールアルギン酸塩;ポリグリコール酸;ポリプロリン;及びポリサッカリド;を含めた、合成生体高分子。
【0207】
DOPA及び/又はdiDOPAを含んでいるデカペプチド;配列「Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys」(SEQ ID NO:2)を含むペプチド;Proがヒドロキシプロリンで置換されたペプチド;1つ又はそれ以上のProがDOPAで置換されたペプチド;1つ又はそれ以上のProがdi−DOPAで置換されたペプチド;1つ又はそれ以上のTyrがDOPAで置換されたペプチド;ペプチドホルモン;上記に掲載されている抽出されたタンパク質をベースにしたペプチド配列;及びRGD(Arg GIy Asp)モティーフを含んでいるペプチド;を含めた、合成ペプチド。
【0208】
組み換えにより調製されたペプチド及びタンパク質すべてを含めた、組み換えタンパク質。
【0209】
酵素に直接結合することによって酵素活性を遮断する、金属イオン;酵素の天然基質に類似しているつまり主要基質(ペプスタチン)と競合している、分子;ポリ−プロリン;D−糖;D−アミノ酸;シアン化物;ジイソプロピルフルオロホスファート(DFP);N−トシル−1−フェニルアラニネクロロメチルケトン(TPCK);フィソスチグミン;パラチオン;及びペニシリン;を含めた、合成酵素阻害物質。
【0210】
ビオチン;カルシフェロール(ビタミンD群;骨石灰化に必須);シトリン;葉酸;ナイアシン;ニコチンアミド;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD、NAD+);ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP、NADPH);レチノイン酸(ビタミンA);リボフラビン;ビタミンB群;ビタミンC(コラーゲン合成に必須);ビタミンE;及びビタミンK群;を含めた、ビタミン(合成又は抽出)。
【0211】
アデノシンジ−ホスファート(ADP);アデノシンモノホスファート(AMP);アデノシントリ−ホスファート(ATP);アミノ酸;環状AMP(cAMP);3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA);5’−ジ(ジヒドロキシフェニル−L−アラニン(diDOPA);diDOPAキノン;DOPA様o−ジフェノール;脂肪酸;グルコース;ヒドロキシプロリン;ヌクレオシド;ヌクレオチド(RNA塩基及びDNA塩基);プロスタグランジン;糖;スフィンゴシン1−ホスファート;ラパマイシン;エストロゲン、プロゲステロン又はテストステロン類似体等の合成性ホルモン(例えばTamoxifene);エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)例えばラロキシフェン;ビス−ホスホナテス例えばアレンドロナート、リセンドロナート及びエチドロナート;セリバスタチン、ロバスタチン、シムバストスチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン及びナトリウム3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(メチルエチル)−1−H−インドール−2−イル]−ヘプタ−6−エノアート等のスタチン、侵入してくる細菌に対する局所抵抗性を改善するための薬物、局所疼痛コントロールを改善するための薬物、プロスタグランジン合成の局所阻害を改善するための薬物;局所炎症調節物質、バイオミネラリゼーション局所誘発物質及び組織成長局所刺激物質、抗生物質;シクロオキシゲナーゼ阻害物質;ホルモン;炎症阻害物質;NSAID(非ステロイド抗炎症薬);鎮痛薬;プロスタグランジン合成阻害物質;ステロイド、及びテトラサイクリン(バイオミネラリゼーション剤としても);を含めた、他の生物活性分子。
【0212】
酵素作用、酵素遮断、生体分子の細胞取り込み、特異的細胞ホーミング、バイオミネラリゼーション、アポトーシス、生体分子細胞分泌、細胞代謝及び細胞防御のような生物作用を局所的に刺激するイオン、例えば、カルシウム;クロム;銅;フルオリド;金;ヨージド;鉄;カリウム;マグネシウム;マンガン;セレン;硫黄;スタンナム(スズ);銀;ナトリウム;亜鉛;ニトラート;ニトリット;ホスファート;クロリド;スルファート;カルボナート;カルボキシル;及びオキシド;を含めた、生物活性イオン。
【0213】
カルセイン;アリザランレッド;テトラサイクリンス;フルオレシン;フラ;ルシフェラーゼ;アルカリホスファターゼ;放射性同位元素標識化アミノ酸又はヌクレオチド(例えば、32P、33P、H、35S、14C、125I、51Cr、45Caで印を付けられた);放射性同位元素標識化ペプチド及びタンパク質;放射性同位元素標識化DNA及びRNA;免疫−金複合体(抗体が取り付けられた金粒子);免疫−銀複合体;免疫−マグネタイト複合体;緑蛍光発光タンパク質(GFP);赤蛍光発光タンパク質(E5);ビオチン化されたタンパク質及びペプチド;ビオチン化された核酸;ビオチン化された抗体;ビオチン化されたカーボン−リンカー;リポーター遺伝子(発現されるとシグナルを発生するあらゆる遺伝子);ヨウ化プロピジウム;及びジアミジノイエロー;を含めた、例えば臨床研究に先行して有効性及び安全性確認を実証するための、生体適合性、組織形成、組織新生、バイオミネラリゼーション、炎症、感染、再生、修復、組織ホメオスタシス、組織崩壊、組織代謝回転、埋め込み片表面からの生体分子の放出、放出生体分子の生物活性、埋め込み片表面から放出された核酸の取り込み及び発現、及び埋め込み片表面の抗生能力のような作用を追跡するのに用いられ得ると考えられる、特異的機器又はアッセイによりあるいは顕微鏡検査又はX線もしくは核磁気共鳴のようなイメージング法により検出され得る、例えば光放射、酵素活性、放射能、特異的発色、磁気、X線密度、特異的構造、抗原性その他による、検出可能シグナルを発生する、マーカー生体分子。
【0214】
プローブは、細胞でもあり得る。そのような細胞は、天然に生じる又は改変された細胞であり得る。一部の実施形態においては、そのような細胞は、既知エピトープを有している又は対象の特定の生物分子に対してアフィニティーを有している表面タンパク質(例えば、表面抗原)を発現させるために遺伝子的に改変され得る。用いられ得る細胞の例としては、血液細胞、肝細胞、体細胞、ニューロン、及び幹細胞が挙げられる。その他の生体高分子としては、炭水化物、コレステロール、脂質、その他が挙げられ得る。
【0215】
生物分子は多くの用途でプローブとして有用であり得るが、プローブ自体は、非生物分子であり得る。1つのケースでは、染料プローブが、本明細書に一般的に記載されているように、選択的に生体分子を認識するのに用いられ得る。非生物プローブとしては、生物リガンド構造類似有機小分子、薬物候補、触媒、金属イオン、脂質分子、その他も挙げられ得る。また、別の検出経路を可能にさせるために、本発明では、染料、マーカー又はその他の指示試薬がプローブとして用いられ得る。染料同士の組み合わせも用いられ得る。別のケースでは、染料は、基体(ポリマープローブ又は標的)を処理後識別するために、特定の基体又は基体上の特定の領域をコードするための基体「タグ」としても用いられ得る。
【0216】
本発明による表面は、特には固相合成の(例えばオリゴ−又はポリ−マーのin situ形成の期間中の)合成用途用のスターター分子を固定化することもできる。好ましくは、このオリゴ−又はポリ−マーは、生体分子であって、ペプチド、タンパク質、オリゴ−又はポリ−サッカリド、又はオリゴ−又はポリ−核酸を含んでいる。固定化された開始剤としては、そのような高分子のモノマーが用いられ得る。
【0217】
本発明のいくつかある特徴の中でも挙げられるのは、したがって、水性環境に曝されたときの安定性が改善されている、生体分子と選択的に相互作用させるための、ポリマーブラシの提供;水性環境中での安定性の改善が、ブラシの基体表面に疎水ポリマー鎖が存在していて、制御された厚みの疎水層が形成されていることによって達成されている、そのようなブラシの提供;プローブに結合することができる官能基を有している水可溶性又は水分散性セグメントを有するポリマー鎖が疎水ポリマー鎖に取り付けられている、そのようなブラシの提供;基体表面への結合安定性を最適化するために疎水ポリマー鎖の分子量及び/又は密度が制御されている、そのようなブラシの提供;及び、水可溶性又は水分散性ポリマーセグメントの密度が疎水ポリマー鎖密度とは無関係に制御されていて、さらにはプローブを取り付けるための官能基の接近のし易さ及び/又は対象の分子を取り付けるためのプローブの接近のし易さを最適化するように制御されている、そのようなブラシの提供;である。
【0218】
本発明の特徴の中でもさらに挙げられるのは、ブラシの基体表面と組み合わせられている水可溶性又は水分散性ポリマーが、化学的活性化を必要とすることなしにプローブを取り付ける官能基を含有している、生体分子と選択的に相互作用するためのポリマーブラシの提供である。
【0219】
本発明の特徴の中でもなおさらに挙げられるのは、センサーの基体表面に取り付けられたポリマー鎖が、生体分子に結合するためのプローブが既に取り付けられているモノマーの残基を含有している水可溶性又は水分散性セグメントを有している、生体分子と選択的に相互作用するためのセンサーの提供である。
【0220】
本発明の特徴の中でもなおさらに挙げられるのは、大直径プローブを取り付けるための官能基の接近のし易さ及び/又は大直径分子を取り付けるためのプローブの接近のし易さを最適化するために、低密度の水可溶性又は水分散性ポリマーセグメントが、ブラシの基体表面に直接又は間接的に取り付けられている、生体分子と選択的に相互作用するためのポリマーブラシの提供である。
【0221】
本発明の特徴の中でもなおさらに挙げられるのは、多数のポリマー層がブラシの基体表面に存在している、生体分子と選択的に相互作用するためのポリマーブラシの調製方法の提供;表面から第1のポリマー層を成長させるのにリビングフリーラジカル重合が用いられる、そのような方法の提供;及び、第2の層のポリマー鎖密度を制御するために、第1のポリマー層から第2の層が成長する前に、さらなるポリマー鎖成長が起こらないように、「リビング」ポリマー鎖末端群の一部を脱活性化又は停止させる、そのような方法の提供;である。
【0222】
本発明は、さらに、本発明のポリマーブラシを調製するための方法にも関する。例えば、本発明は、さらに、アッセイの水性サンプル中の分子に結合するためのポリマーブラシを調製するための方法にも関し、その方法には、少なくとも約50オングストロームの乾燥厚みを有している疎水層を基体表面に形成させること、及びそのあとその疎水層上に親水層を形成させることが含まれる。
【0223】
本発明の方法に従って微細印刷されたポリマー表面を含むデバイスはしたがって本発明の1つの態様でもある。当業者には明らかであるように、ポリマーに生物リガンドやその他のリガンドを直接取り付けることは、例えば、医薬タンパク質の製造、貯蔵及び送達、クロマトグラフィーによるタンパク質の精製、バイオセンサーや人工デバイスの設計、及び組織培養体を取り付けるための基体の製造を含めた多くのバイオテクノロジーの分野で重要である。本方法は、特定の位置また所定の位置に細胞やその他の生物分子を付着させるためのデバイスを作るのに用いられている。それによれば、本発明のデバイスの1つの例は、本発明の方法に従って微細印刷された少なくとも1つの表面を含んでいる組織培養プレートである。そのようなデバイスは、細胞を表面上で又は媒体中で培養するための方法及びサイトメトリーを行うための方法でも用いられ得るだろう。
【0224】
本発明は、また、埋め込み片又は医用デバイスとして用いるために基材をコートすることにも関する。
【0225】
コートされることになる基材は、腎臓透析膜、血液保存用バッグ、ペースメーカーリード線又は血管移植片の製造に通常用いられているいずれの血液接触基材であってもよい。例えば、表面が改質されることになる基材は、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、Dacron(商標)型ポリマー又はSilastic(商標)型ポリマー、又はこれらから作られる複合材であり得る。
【0226】
コートされることになる基材の形態は、広い範囲内で変わり得る。例は、粒子、顆粒、カプセル、ファイバー、チューブ、フィルム又はメンブレンであり、好ましくは、眼科用成型品、例えば、眼内レンズ、人工角膜、又は特にはコンタクトレンズのようなあらゆる種類の成型品である。
【0227】
ポリマーブラシのもう1つの興味ある側面は、多くの異なる基体への付着からトライボロジーに至るまでのさまざまな異なる表面特性に影響を及ぼすその可能性、及び外部刺激を用いてそのような特性を整調する能力である。これは、制御放出バイオコーティングのようなハイテク用途に対して防食のためにコーティングするような用途のことを意味している。
【0228】
ポリマーブラシは、ミクロン並びにナノメーター長さ尺度で化学官能、形状、及び素子大きさ及び素子間間隔を制御しながらナノ又はミクロパターンアレイを製作するのに十分適している。これらの特徴は、分子認識、バイオセンサー、タンパク質分離のクロマトグラフィー、コンビナトリアルケミストリー、再生医療用土台、及びミクロ及びナノ流体でのその使用を含めたさまざまなバイオテクノロジー用途に対してポリマーブラシを魅力あるものにしている。
【0229】
付着
付着を促進させること、あるいは付着を阻害することを考慮するにしても、付着は、基本的に重要である。
【0230】
ヒト身体に生体適合基材埋め込み片又はデバイスを挿入した後の微生物付着は深刻な合併症であって、付着している微生物及び生体適合基材の物理化学的表面特性によって左右される。ポリマーブラシは微生物と基層表面との間の距離を増大させるものであり、これでもって表面と微生物との間の引力が低減される。
【0231】
生体適合表面
良好な機械特性と生体適合性を有する生体適合基材を開発するために相当なる努力がなされてきた。しかしながら、そのような努力は、細胞及び組織の表面取り付けが芳しくないことを含めて、さまざまな問題に悩んでいる。すべての望ましい特性を有している新規な生体適合基材の開発はコスト的に高くつくので、現在の努力は、現時点で利用可能な生体適合基材を用いるが、表面は設計されているという開発に焦点が合わされている。生体適合表面(例えば、人工埋め込み片、細胞培養ディッシュ、バイオセンサー)関与用途が考えられている場合は付着及び付着の阻害はどちらも重要である。物理吸着及び「〜にグラフトする」方法によって多くの表面がこれまでにタンパク質及び細胞で官能化されている。
【0232】
ポリ(ビニリデンジフルオリド)(PVDF)は、軟組織用途で、生体適合基材として用いられている。その基材特性はこの用途に十分適しているが、インテグリン媒介細胞付着を促進するタンパク質及びペプチドの付着性の改善が望まれている。PVDIF表面にポリ(アクリル酸)ポリマーブラシを作出し(プラズマ誘発SIP)、カルボジイミドカップリング反応によってその酸官能化されたブラシをフィブロネクチンコート表面に変換させることによって組織適合性が工作され、改質された表面を比較曝露することによって、研究されている。
【0233】
ポリマーブラシは、特には、表面取り付け刺激応答性ポリマーを用いて、スマートポリマー及び受容体タンパク質を用いた「スマート」バイオコンジュゲートを作ることによってもこの分野で用途が見出されている。外部刺激(例えば、pH、電場、光、温度、溶解)を用いてポリマー特性に変化を起こすことも、生体適合表面への付着を制御するのに非常に有用であることが見出されている。この変化は、通常、疎水性/親水性に影響を及ぼす、配置上の変化、つまり表面取り付けポリマーの表面エネルギーの変化から来るものである。多くの刺激応答性ポリマーが知られており、ポリ(Nイソプロピルアクリルアミド)をベースにしたポリマーで多くの研究が行われてきた。
【0234】
組織培養ポリスチレン基体担持ポリ(111PAAM)ポリマーブラシ(電子線開始重合による)からは温度応答性表面が作出され得、炎症細胞付着挙動を調査研究するのに用いられている。高められた温度で、ヒト単球及び単球由来大食細胞は、その疎水表面に付着、拡散、及び癒合して、異物巨細胞(FBGC)を形成することができる。細胞取り外しは、LCST微分大食細胞取り外し温度以下にブラシコート表面の温度を下げることによって達成される。
【0235】
細胞成長調節
細胞成長の調節は、表面に細胞を取り付け、細胞を増殖・成長させ、そのあと細胞を取り外すことによって達成され得る。細胞取り付け及び増殖は、特には疎水表面に対しては簡単な方法であるが、取り外しには損傷なしに細胞を回収するという洗練さが必要とされる。疎水特性/親水特性を調節する能力を有する、温度応答性ポリマーブラシが、そのような方法におけるこのブラシの有効性を決定するために調査研究された。
【0236】
表面取り付けポリマー(すなわち、「〜にグラフトしている」及び「〜からグラフトしている」のいずれも)は、ポリ(アクリルアミド)/PEGコポリマー、櫛型ポリマー、及びポリカチオンPEGグラフトコポリマーをベースとする撥タンパク質微細パターンを用いて細胞成長を調節するのに用いられ得る。
【0237】
SAMに対して既に広く探索された、ポリマーブラシのもう1つの大きな用途分野は分子認識の分野であり、ここでは、生体適合性で非バイオファウリング性のPEGもしくはポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)含有ポリマーブラシが各種のリソグラフィー技術によって表面にパターン形成されている。パターン形成されていない部分は、後に、細胞又はその他の生体分子例えばタンパク質やペプチドとの特異的相互作用を引き起こす生体分子で埋め戻され得る。
【0238】
非ファウリングバイオ表面
最近のこととして、ポリマーブラシコート表面は、非ファウリング特性を有している。細胞外タンパク質は、疎水相互作用を通して多くの表面に強く吸着する。非ファウリングバイオ表面は、バイオコーティングを作るのに有用である。
【0239】
トライボロジー
ナノスケールで表面特性を調節できることはポリマーブラシに大きな希望を抱かせるものである。電解質ポリマーブラシは、中性ポリマーブラシに比較して、優れた潤滑特性を有していて、水性環境中での低滑り速度(250〜500nm・s−1)及び負荷圧数気圧で0.0006〜0.001未満の有効摩擦係数を示す。
【0240】
表面コーティング
表面の湿潤性は多くの用途にとっては重要な特性であって、基体にコーティングを塗布する際、また、ほぼあらゆる界面を作出する際、2つの基体を一緒に合わせるときの接着結合を作出するのに必須である。得られる表面が疎水性であるべきかそれとも親水性であるべきかは、大きくは、用途によって決まる。ナノ構造体及びパターン形成されたポリマーを用いて表面形態を調節することによって超疎水表面が作出され得る。湿潤性を調節するのにグラフトポリマーを使用することが多くの用途で用いられてきた。ファイバー表面の疎水性、湿潤性、及び付着性特性の調節は複合材形成で重要である。アクリル酸メチルATRPからのグラフトによってセルロースファイバー上にポリマーブラシが調製される。
【0241】
ポリ(4−ビニル−N−メチルピリジニウム)ヨージド高分子電解質ブラシで修飾された表面は、一層ずつの堆積によるよく画定された高分子電解質多層体を調製するための基体として役立つ。表面結合ポリカチオン/溶液相ポリアニオン複合体の強い静電気力及び低い溶解度は、非化学量論的フィルム形成並びにこの新しく形成されたフィルムの乾燥フィルム厚に近い厚みへの崩壊をもたらす。
【0242】
導電性の基体上にはコーティングは電気化学重合を用いて調製され得る。この方法によって調製されたコーティングは、良好な付着等の非常に望ましい特性を有している傾向がある。さらには、そのようなコーティングは実質的にどのような形状の基体上にも形成され得、処理も、プライマーが排除されていることによって単純化され得る。別の重合方法で逐次的陰極電解重合カップリングさせることによってより厚いコーティングが作成され得る。このようにして、ポリマーブラシが、導電性の表面(例えば、鋼鉄、銅その他)に作られたことがある。
【0243】
ポリマーブラシの他の用途としては、腐食性の物質が基体に浸透して基体を損傷するのを防ぐためのバリアーを作ると考えられるコーティングが挙げられる。ポリマーブラシは、工業用途で、新規な潤滑材を作出し得ると考えられる。
【0244】
応答性スマート表面
ポリマー構成にもよるが、基体の表面特性(例えば、表面エネルギー(すなわち湿潤性/疎水性)、さらには透明性、光吸収、細胞付着や殺微生物活性その他のような生物学的特性)は、外部刺激(溶媒パラメーター、温度、光、電場)によって影響を受けて変化され得ることがある。
【0245】
特性を変えるというこのような機能の結果として、そのようなポリマーブラシは、刺激応答性、「スイッチ性」又は「スマート」ポリマーブラシと呼ばれることがある。
【0246】
現在、外部刺激、例えば、光、温度、電気、pH、及び溶媒に応答する応答性スマート表面の開発に大きくなりつつある注目が払われている。
【0247】
多くの有望用途にとってはフィルム又は表面の光スイッチ機能は望ましいものである。スマートデバイスの作製では、注記に値することとして、表面に光活性分子をグラフトさせること又は光活性コーティングを調製することは、ある種の独特の光応答性の、例えば湿潤性、摩擦、生体適合性、及び光学特性のような物理特性を有するスマートデバイスをもたらすための重要で有用な経路である。
【0248】
刺激応答性及びスイッチ性表面
刺激応答性ポリマーブラシの使用は、特に生物学的用途における、付着の調節で非常に有用である。
【0249】
ブロックコポリマーブラシが曝されていた溶媒を単に変えるだけで表面形態及び水接触角は改変される。ポリスチレン−ブロック−ポリ(メチルメタクリラート)(PS−b−PMMA)ブラシはCHZCIZに曝されているときは平滑(RMS粗さ=0.77nm;接触角−74°)であったが、シクロヘキサンに曝された後はより粗く(RMS=1.79nm;接触角=99℃)なった。
【0250】
刺激応答性ポリマーブラシ表面の1つの興味ある用途では、フォトリソグラフィによりパターン形成された表面に永久パターンを書き込むための、ポリ(2−ビニルピリジン)とポリイソプレンとから構成されている混合型ブラシが用いられている(「環境応答性リソグラフィ」と呼ばれる方法)。溶媒をスイッチすることにより、パターンを作出するための刺激及びパターンを消去するための刺激がもたらされる。フォトリソグラフィ段階の期間中におけるUV照射は混合型ブラシ中のポリイソプレンを架橋するので、それによって、その部分の表面のスイッチ特性の喪失が引き起こされる。画像は、照射された表面の部分同士間に現像されるコントラストによって決まり、溶媒に曝されるとマスク化される。
【0251】
さらなる可能性のある用途
【0252】
分離
混合物をその各成分に分離することは、化学のあらゆる部門に、そして特には純粋物質の単離がヒトでのその使用に決定的な意味をもつ生物学の分野に、影響を及ぼすきわめて重要な処理である。
【0253】
メンブレン
メンブレンへのポリマーブラシの取り付けはさまざまな流体流動特性に影響を及ぼし得る。適切に官能化されたメンブレン表面は混合物中の1つの成分を選択的に吸着することから分離や分割を改善又は向上させ得ることが考えられ得る。キラル表面は、医薬生成物のエナンチオマー混合物を分割するのに用いられ得ると考えられる。
【0254】
ポリマーブラシのもう1つの用途では流れを制御するためのマイクロバルブとしてポリマーブラシが用いられていることが挙げられる。2つの狭い間隔で配置されたポリマーブラシを流体の流れを制御するためのゲートとして用いるというこのアイディアは、理論的にも実験的にも探求されたことがある。
【0255】
マイクロ流体
生物学的分析物を分析するのに、マイクロリアクター中での反応を研究するのに、及び流動下の流体混合を理解するのに欠くことのできない関わり合いがあるマイクロ流体デバイスの開発は、急速に発展している分野である。パターン形成されたポリマーブラシをマイクロ流体チャネル中に用いることにより、デバイス中の混合及び流体流れが制御され得るという可能性に、関心が寄せられている。
【0256】
超小型電子機器
光起電
光起電デバイスを作製するための基体としてポリマーブラシは役立ち得る。適するポリマーは電子ホール輸送要素として働き、これが、半導体ナノ結晶と一緒になって、量子収率が高いヘテロ接合光起電ダイオードを形成する(W. T. S. Huck et al. Nano Lett. 2005, 5, 1653-1657)。
【0257】
無電解メッキ
フレキシブル電子部品へとの流れにとっては高分子基体の金属化は非常に重要なことである。部位選択的に金属を蒸着してフレキシブル超小型電子機器を作製するという可能性をポリマーブラシはもたらす(W. T. S. Huck et al. Langmuir 2006, 22, 6730-6733)。
【0258】
トランジスター作製
電界効果トランジスターや発光ダイオードのような電子デバイス中に有機基材を使用することは興味をそそる試みであり、確かに、重量及びコストを低減し、製造工程を単純化し、そのようなデバイスの多用性を増大させる。そのようなデバイス用の高分子誘電体層は、厚み及び組成が制御可能で、ピンホールがあってはならない。ポリマーブラシはそのような特徴をもたらすものであって、電界効果トランジスターがポリマーブラシで作製され得ることが、示された(R. H. Grubbs et al. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 4062-4063)。
【実施例】
【0259】
以下の実施例は本発明を説明するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0260】
(実施例1)
ワイヤー・バー・システムを用いて適切な支持体上にPVC粒状体(平均分子量60000d、Sigma−Aldrich)のTHF中20%溶液を注型することによって固体PVCフィルムを調製する(およそ1mmの層厚さ)。空気で2時間乾燥させた後フィルムを離し上げ、250mlの25%NaN水溶液+n−テトラブチルアンモニウムブロミド(c=40mmol/l)中80℃で反応させる。
【0261】
精製するためにフィルムを超音波バス中の水で処理する。
【0262】
IRスペクトルにより表面のアジド化が明確に示される。
【0263】
反応スキーム:
【化15】

【0264】
PVC基体を活性化させた後適する開始剤が表面に銅触媒1,3−双極性付加により共有結合され得る。
【0265】
(実施例2)
実施例1で調製したPVCフィルムを3.6gのアルキン開始剤と一緒に250mlのDMF+水(5:1)の混合物に加え、65℃まで加熱し、この温度で1時間撹拌する。
【0266】
このあとCuSO水溶液(30mg/5ml HO)及びアスコルビン酸ナトリウム水溶液(127mg/5ml HO)を加え、一晩撹拌する。
【0267】
平滑な表面を得るためには得られたフィルムはジエチルエーテルで24時間抽出されなければならない。
【0268】
反応スキーム:
【化16】

【0269】
(実施例3)
実施例1及び2で述べた方法に代わるものとして、PVC基体は、チオール置換開始剤とも反応し得る。
【0270】
このケースではイオウが求核試薬として反応し、開始剤がPVC表面にその塩素を置換することによって取り付けられる。
【0271】
反応スキーム:
【化17】

【0272】
(実施例4)
33.4g(119.7mmol)の(7)をメタノール+水の混合物に投入する。
【0273】
933.8mg(5.978mmol)のビピリジル及び53mg(0.238mmol)の臭化銅(II)を加えた後、溶液を窒素で脱ガスする。
【0274】
343mg(2.394mmol)の臭化銅(I)及び活性化されたフィルムをこの脱ガスされた溶液に加える。この反応混合物を室温にて1時間撹拌する。
【0275】
反応を完了させるためにフィルムを反応混合物から取り出し、超音波バスで洗浄し、乾燥させる。
【0276】
フィルムは、6.3mgの質量増加を示す。
【0277】
反応スキーム:
【化18】

【0278】
PVCサンプル表面の元素組成をESCA法で測定する。分析される部分の大きさは直径が100マイクロメーターである。分析の深さは5ナノメーターである。
【0279】
以下の表中の結果は、2つの測定値を平均したものである。
【表1】

【0280】
(実施例5)
2ml(14.0mmol)の(9)をメタノール+水の混合物に投入する。
【0281】
28mg(0.178mmol)のビピリジル及び2mg(0.008mmol)の臭化銅(II)を加えた後、溶液を窒素で脱ガスする。
【0282】
12mg(0.081mmol)の臭化銅(I)及び活性化されたフィルムをこの脱ガスされた溶液に加える。反応混合物を室温にて2時間撹拌する。
【0283】
反応を完了させるためにフィルムを反応混合物から取り出し、超音波バスで洗浄し、乾燥させる。
【0284】
フィルムは、4.8mgの質量増加を示す。
【0285】
反応スキーム:
【化19】

【0286】
(実施例6)
4.3ml(14.0mmol)の(11)をメタノール+水の混合物に投入する。
【0287】
28mg(0.178mmol)のビピリジル及び2mg(0.008mmol)の臭化銅(II)を加えた後、溶液を窒素で脱ガスする。
【0288】
12mg(0.081mmol)の臭化銅(I)及び活性化されたフィルムをこの脱ガスされた溶液に加える。この反応混合物を室温にて2時間撹拌する。
【0289】
反応を完了させるためにフィルムを反応混合物から取り出し、超音波バスで洗浄し、乾燥させる。
【0290】
フィルムは、4.8mgの質量増加を示す。
【0291】
反応スキーム:
【化20】

【0292】
(実施例7)
3.39ml(13.3mmol)の(13)をイソ−プロパノールに投入する。
【0293】
52mg(0.226mmol)のMeTREN及び1.2mg(0.007mmol)の塩化銅(II)を加えた後、この溶液を窒素で脱ガスする。
【0294】
9mg(0.091mmol)の塩化銅(I)及び活性化されたフィルムをこの脱ガスされた溶液に加える。この反応混合物を65℃にて64時間撹拌する。
【0295】
反応を完了させるためにフィルムを反応混合物から取り出し、超音波バスで洗浄し、乾燥させる。
【0296】
反応スキーム:
【化21】

【0297】
(実施例8)
11.6g(42.8mmol)の(15)をメタノール+水の混合物に投入する。
【0298】
196mg(1.255mmol)のビピリジル及び15mg(0.067mmol)の臭化銅(II)を加えた後、溶液を窒素で脱ガスする。
【0299】
73mg(0.506mmol)の臭化銅(I)及び活性化されたフィルムをこの脱ガスされた溶液に加える。この反応混合物を室温にて16時間撹拌する。
【0300】
反応を完了させるためにフィルムを反応混合物から取り出し、超音波バスで洗浄し、乾燥させる。
【0301】
反応スキーム:
【化22】

【0302】
(実施例9)
BSAの標識化:
50mgのBSA(ウシ血清アルブミン、Thermo Scientific)を20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させた。このBSAリン酸緩衝液中溶液に0.5当量のトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリドを加え、この混合物を10分間室温でインキュベートした。この後、6当量のN−(5−フルオレセイニル)マレイミド(F5M、Sigma−Aldrich))を加え、この溶液を室温にて5時間震盪した。遠心濾過装置を用いてこの標識化されたBSAを単離した。標識化BSAを遠心分離し、UV分光法を用いてF5M(吸収最大492nm)の吸収がまったく検出されなくなるまで、PBS緩衝液で洗浄した。標識化BSA含有濃溶液をエッペンドルフ型試験管に移し、−20℃で保存した。
【0303】
(実施例10)
BSAの共有結合固定化:
PVCシート(1cm)1、PEG付きポリマーブラシを有しているPVC(1cm)2、及びPEG−活性化エステル基付きポリマーブラシを有しているPVC(1cm)3を別々のエッペンドルフ型バイアル中に配置した。それぞれのバイアルに蛍光標識BSAの100mM NaHCO緩衝液pH8.3中溶液1mLを加えた。シートを3時間室温にて震盪し、その後、その箔をバイアルからゆっくり取り出し、100mM NaHCOで強力に洗浄し、そうして4℃で保存した。蛍光顕微鏡を用いて箔を分析した。無処理PVCシート及びPEG−ポリマーブラシ付きPVCには蛍光は検出されなかった。グラフトPEG−活性化エステル基付きPVCは、有意な蛍光反応を示した。
【0304】
(実施例11)
ブラッドフォードアッセイでの固定化BSAの定量
ブラッドフォードアッセイ:
濃度が2mg/mLから0mg/mLまでのBSA標準液を調製した。5つの異なるPVCフィルムサンプル(上記に記載されているようにして調製)(1cm)をBSAの100mM炭酸ナトリウム緩衝液pH8.3中溶液(0.5mg/mL)と共に室温にてインキュベートした。サンプル1−PVC箔;サンプル2−ベタイン付きポリマーブラシを有している、PVC;サンプル3−PEG付きポリマーブラシを有している、PVC;サンプル4−PEG及び活性化基付きポリマーブラシを有している、PVC。これらのサンプルを室温にて5時間インキュベートした。0分後、1時間後、2時間後、3時間後及び5時間後にそれぞれの溶液から50μLのサンプルを採取した。サンプルを1.5mLのブラッドフォードアッセイ(Thermo Scientific)含有溶液と混合し、この混合物をさらに10分間室温でインキュベートし、吸収を465nmで測定した。BSAに対して得られた標準曲線を用いて溶液のタンパク質濃度を測定した(図1参照)。
【0305】
表1:タンパク質濃度サンプル1〜4
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハロゲン化ポリマー表面をナトリウムアジドと反応させ、続いて
(a)アルキン官能化開始剤で1,3双極性付加環化させる;
又は
(a)ハロゲン化ポリマー表面をメルカプト官能化開始剤と反応させる;
ことによる重合開始剤での改質によって表面を活性化させるステップ(a);
及び
ステップ(a)/(a)又は(a)で得られる活性化された表面を重合性モノマー単位A及び/又はBと反応させるステップ(b);
を含む、改質されたハロゲン化ポリマー表面の調製方法。
【請求項2】
開始剤が、制御ラジカル重合を活性化する触媒の存在下でエチレン性不飽和モノマーの重合を開始させることができる重合開始剤のフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合性モノマー単位A及びBが、ステップ(a)/(a)又は(a)で得られる活性化された表面の開始剤と共に原子移動ラジカル重合(ATRP)によって共重合される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
開始剤が、制御ラジカル重合を活性化する触媒の存在下でエチレン性不飽和モノマーの重合を開始させることができる重合開始剤のフラグメントである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
開始剤が、C〜C−アルキルハロゲン化物、C〜C15−アラルキルハロゲン化物、C〜C−ハロアルキルエステル、アレーンスルホニルクロリド、ハロアルカンニトリル、α−ハロアクリラート及びハロラクトンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
重合性モノマー単位A及びBが、異なる極性を有しており、1つ又はそれ以上のオレフィン性二重結合を含有している、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
重合性モノマー単位A及びBが、スチレン、アクリル酸、C〜C−アルキルアクリル酸、アミド、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル酸の無水物及び塩、アクリル酸−C〜C24−アルキルエステル、及びC〜C−アルキルアクリル酸−C〜C24−アルキルエステルから選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
重合性モノマー単位A及びBが、4−アミノスチレン、ジ−C〜C−アルキルアミノスチレン、スチレン、アクリル酸、C〜C−アルキルアクリル酸、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリルアミド、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル−モノ−もしくは−ジ−C〜C−アルキルアミド、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル−ジ−C〜C−アルキルアミノ−C〜C−アルキルアミド、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリルアミノ−C〜C−アルキルアミド、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル酸の無水物及び塩、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル酸−モノ−もしくは−ジ−C〜C−アルキルアミノ−C〜C−アルキルエステル、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル酸−ヒドロキシ−C〜C−アルキルエステル、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル酸−(C〜C−アルキル)シリルオキシ−C〜C−アルキルエステル、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル酸−(C〜C−アルキル)シリル−C〜C−アルキルエステル、アクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル酸ヘテロシクリル−C〜C−アルキルエステル、C〜C24−アルコキシル化ポリ−C〜C−アルキレングリコールアクリル酸又はC〜C−アルキルアクリル酸エステル、アクリル酸−C〜C24−アルキルエステル及びC〜C−アルキルアクリル酸−C〜C24−アルキルエステルからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法で得られる、改質されたハロゲン化ポリマー表面。
【請求項10】

(1) HalPol−[In−A−B−C−Z]
[式中、
A、B、Cは、ブロック又は統計的に配置され得る、モノマーフラグメント、オリゴマーフラグメント又はポリマーフラグメントを表し;
Zは、それぞれのポリマーブラシの末端にATRPから誘導される末端基として位置しているハロゲンであり;
HalPolは、ハロゲン化ポリマー基体を表し;
Inは、制御ラジカル重合を活性化する触媒の存在下でエチレン性不飽和モノマーの重合を開始させることができる重合開始剤のフラグメントを表し;
xは、1より大きい数を表し、A中の繰り返し単位の数を確定しており;
yは、ゼロ又はゼロより大きい数を表し、B中のモノマー、オリゴポリマー又はポリマー繰り返し単位の数を確定しており;
zは、ゼロ又はゼロより大きい数を表し、C中のモノマー、オリゴポリマー又はポリマー繰り返し単位の数を確定しており;
nは、部分式(1a)In−(Ax−By−Cz−X)−で表される基の数を確定している、1又は1より大きい数である]
に対応している、請求項9に記載の改質されたハロゲン化ポリマー表面。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の改質されたハロゲン化ポリマー表面のセンサーデバイスのための、使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−518907(P2011−518907A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505494(P2011−505494)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054785
【国際公開番号】WO2009/130233
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】