説明

改質器、改質方法および燃料電池システム

【課題】炭化水素系の原燃料を水素含有量の高い改質燃料に安定的かつ持続的に改質する。
【解決手段】改質器100の筐体102内に蒸発部104、水蒸気改質部106、および水素分離膜部108をこの順で下から配置し、水素分離膜部108の水素分離膜を透過する前の改質燃料であるオフガスをオフガス送出管110を介して筐体102外に送出し、オフガスを燃焼することにより、蒸発部104および水蒸気改質部106を加熱する。改質器100は、オフガス送出管110の端部から送出されるオフガスの流量を絞り込むように制限する流量制限機構128を含み、筐体102内の蒸発部104および水蒸気改質部106の圧力が高いときには、蒸発部104で蒸発される原燃料の量を低下させるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質器、改質方法および燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、生活をささえる基盤としてエネルギーの安定的な供給は不可欠である。近年、従来の火力発電や原子力発電等の系統電源網の問題点を解決するために、分散型エネルギー源の併用が注目されている。分散型エネルギー源としては、風力発電や太陽光発電等の自然系エネルギー源が期待されているが、その不安定性が問題として残っている。そこで、自然系エネルギー源をより安定的なエネルギー源と組み合わせて、ハイブリッド化することが検討されており、そのエネルギー源として、マイクロガスタービン、ガスエンジン、燃料電池等が考えられている。そのなかでも、燃料電池は可動部を持たず、静かであることから、家庭用分散化電源として期待されている。
【0003】
また、燃料電池は、近年電力使用量が増大しているモバイル機器の電源としての期待も大きい。携帯電話、コンピュータ等の電源として、マイクロ技術を生かした燃料電池の開発も活発化してきている。
【0004】
燃料電池は、水素と酸素を燃料、酸化剤としてエネルギーを生成し、生成物質としては水のみを生成するということから、クリーンなエネルギー源として期待されている。しかし、水素をどのように生成するかは燃料電池を広く有効に用いるためには重要な問題である。水素供給の方法としてはいくつかの方法が考えられるが、水素が持つ基本的な安全性の問題などを考慮すると、改質器を用いて必要に応じて生成するようにすることが望ましい。
【0005】
燃料として水素を用いた場合、燃料極での反応は、以下のようになる。
3H → 6H + 6e (1)
【0006】
酸化剤極での反応は、以下のようになる。
3/2O + 6H + 6e → 3HO (2)
【0007】
メタノール等の原燃料を改質して水素ガスを生成する方法としては、たとえば水蒸気改質法、部分酸化改質法、およびこれらを併用した改質法が知られている。これらの中でも、水蒸気改質反応は部分酸化反応に比べて反応が穏やかであることから、小型、家庭用の改質器としては望ましい。
【0008】
水蒸気改質法における反応は、以下のようになる。
CHOH + HO → CO + 3H (3)
【0009】
特許文献1には、蒸発部と触媒収容部(改質部)とがこの順で鉛直方向に配置された縦型配置の改質器が記載されている。ここで、蒸発部および触媒収容部の内部において、蒸発部で蒸発する原燃料の流路が、蒸発部の底部から触媒収容部にわたって鉛直方向に直線状に形成されている。このような構成により、蒸発部に導入された原燃料を自然対流で上方に移動させ、触媒収容部で改質することができるので、ポンプ等の駆動機構がなくても、原燃料を改質燃料に効率よく変換することができる。
【0010】
ところで、水蒸気改質反応は吸熱反応であることから、水蒸気改質反応を持続するためには外部からの加熱が必要である。特許文献1には、改質燃料の一部や二酸化炭素を加熱部に導入する燃料循環管が設けられた構成が記載されている。ここでは、改質燃料である水素を水素燃焼触媒により燃焼させて、触媒収容部や蒸発部を加熱する構成が記載されている。
【特許文献1】特開2006−216274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、本発明者らのさらなる検討により、改質触媒で改質された改質燃料を単に配管を介して外部に送出し、それを燃焼させるだけでは、安定的かつ持続的な運転を行うのが困難なことが明らかになった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、簡易な構成で、炭化水素系の原燃料を水素含有量の高い改質燃料に安定的かつ持続的に改質する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、
筐体と、
前記筐体内に設けられ、液体である炭化水素系の原燃料を蒸発させる蒸発部と、
前記筐体内において前記蒸発部上に配置されて前記蒸発部と連通し、前記原燃料を水素含有量の高い改質燃料に改質する改質触媒を収容する改質部と、
前記筐体内において前記改質部と連通し、前記改質部で改質された前記改質燃料中の水素を選択的に透過する水素分離膜と、
前記改質部との間に前記水素分離膜を隔てて前記筐体に設けられ、前記水素分離膜を透過した水素を当該筐体外に送出する水素ガス送出口と、
前記筐体に設けられ、前記水素分離膜を透過する前の前記改質燃料であるオフガスを当該筐体外に送出するオフガス送出口と、
前記筐体の外部に配置され、前記オフガス送出口に連結されるとともに前記筐体の前記蒸発部下方の空間に端部を有し、前記オフガスを前記空間に送出するオフガス送出管と、
前記オフガス送出管の端部から送出される前記オフガスの流量を絞り込むように制限する流量制限機構と、を含み、
前記筐体内において、前記蒸発部で蒸発する前記原燃料の流路が、前記蒸発部の底部から前記改質部にわたって鉛直方向に一直線に形成され、
前記オフガス送出管の端部から送出される前記オフガスの流量を制限するとともに、前記筐体内の前記蒸発部および前記改質部の圧力が高いときには、前記蒸発部で蒸発される前記原燃料の量を低下させるようにして、前記オフガス送出管から前記空間に送出される前記改質燃料を燃焼することにより、前記蒸発部および前記改質部を加熱する構成とされた改質器が提供される。
【0014】
本発明によれば、
筐体と、
前記筐体内に設けられ、液体である炭化水素系の原燃料を蒸発させる蒸発部と、
前記筐体内において前記蒸発部上に配置されて前記蒸発部と連通し、前記原燃料を水素含有量の高い改質燃料に改質する改質触媒を収容する改質部と、
前記筐体内において前記改質部と連通し、前記改質部で改質された前記改質燃料中の水素を選択的に透過する水素分離膜と、
前記改質部との間に前記水素分離膜を隔てて前記筐体に設けられ、前記水素分離膜を透過した水素を当該筐体外に送出する水素ガス送出口と、
前記筐体に設けられ、前記水素分離膜を透過する前の前記改質燃料であるオフガスを当該筐体外に送出するオフガス送出口と、
前記筐体の外部に配置され、前記オフガス送出口に連結されるとともに前記筐体の前記蒸発部下方の空間に端部を有し、前記オフガスを前記空間に送出するオフガス送出管と、
を含み、
前記筐体内において、前記蒸発部で蒸発する前記原燃料の流路が、前記蒸発部の底部から前記改質部にわたって鉛直方向に一直線に形成された改質器により、前記原燃料を水素に改質する改質方法であって、
前記オフガス送出管の端部から送出される前記オフガスの流量を絞り込むように制限するとともに、前記筐体内の前記蒸発部および前記改質部の圧力が高いときには、前記蒸発部で蒸発される前記原燃料の量を低下させるようにして、前記オフガス送出管から前記空間に送出される前記改質燃料を燃焼することにより、前記蒸発部および前記改質部を加熱する工程を含む改質方法が提供される。
【0015】
ここで、水素分離膜は、透過する水素の流量を絞り込むように制限する機能を有する。そのため、筐体の水素ガス送出口から外部に送出される水素の流量も制限される。また、改質器の筐体は、水素ガス送出口およびオフガス送出口以外の部分では密封された構成とすることができる。このような構成とすると、上記のようにオフガス送出管の端部から送出されるオフガスの流量も絞り込むように制限されているため、改質器の筐体から送出されるガスの流量が絞り込まれる。これにより、蒸発部および改質部の圧力が高くなっても、水素ガス送出口およびオフガス送出口から所定値以上のガスが送出されないような構成となっている。
【0016】
そのため、筐体内の圧力が筐体内の温度を反映するようにすることができる。また、本発明では、原燃料の改質反応が進むと、生成物のモル濃度が増加する。そのため、原燃料の改質反応が進み、生成物の量が増えると、筐体内の圧力も増加する。従って、筐体内の温度が上昇するとともに改質反応が進むと、筐体内の圧力がより増加するようになる。筐体内の圧力が増加すると、たとえば原燃料タンクから供給される原燃料の量が低下することにより、または加圧により沸点が上昇すること等により、水蒸気改質部で蒸発される原燃料の量が低下する。その結果、改質器で改質される原燃料の量も低下し、オフガス送出管から送出されるオフガスの量も低下する。これに伴い、筐体内の温度が低下して圧力も低下する。その結果、水蒸気改質部で蒸発される原燃料の量が増加する。このように、改質器内の圧力変化に伴って原燃料が改質部に供給される量も調整されるため、改質器は、平衡状態となり徐々に定常かつ安定な状態となる。これにより、改質器により安定的かつ持続的に改質燃料を供給することができる。
【0017】
また、本発明の改質器の構成によれば、蒸発部に導入された原燃料を自然対流で上方に移動させ、触媒収容部で改質することができるので、ポンプ等の駆動機構がなくても、原燃料を改質燃料に効率よく変換することができる。これにより、改質器を簡易な構成とすることができる。また、蒸発部および触媒収容部が鉛直方向に配置されているので、改質器の不使用時に改質器が冷却されると、触媒収容部に異動していた未反応の原燃料が液化して下方に移動し、蒸発部に戻される。これにより、改質器内部が燃料により汚染等されるのを防ぐことができる。
【0018】
本発明の改質器は、前記筐体を覆うとともに、前記筐体外部の前記蒸発部および前記改質部の周囲に前記空間を形成するように前記筐体の周囲に設けられた断熱部材をさらに含むことができ、前記オフガス送出管は、前記筐体と前記断熱部材との間に配置された構成とすることができる。
【0019】
改質部から送出されるオフガスには原燃料も含まれている。そのため、このようなオフガスが冷却されると、オフガス送出管中に水滴が生じ、オフガスの供給が阻害されてしまい、オフガスの燃焼が中断して、改質反応が持続的に行えないという問題がある。オフガス送出管が断熱部材で覆われた構成とすることにより、オフガス送出管中を移動するオフガスが冷却されるのを防ぐことができ、オフガス送出管内での結露を防ぐことができる。これにより、改質器の持続的な駆動を行うことができる。
【0020】
本発明によれば、上記いずれかに記載の改質器と、前記改質器の前記水素ガス送出口から送出される水素が供給される燃料極、および酸化剤が供給される酸化剤極、を含む燃料電池と、を含む燃料電池システムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な構成で、炭化水素系の原燃料を水素含有量の高い改質燃料に安定的かつ持続的に改質することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態における改質器100の構成を示すブロック図である。
改質器100は、筐体102と、筐体102内に設けられた蒸発部104、水蒸気改質部(改質部)106、および水素分離膜部108と、蒸発部104および水蒸気改質部106を加熱するためにガスを燃焼する燃焼器112と、液体である炭化水素系の原燃料を収容する原燃料タンク200と、を含む。改質器100は、家庭用または小型電気機器に用いられる燃料電池に水素ガスを供給するのに用いることができる。
【0024】
蒸発部104は、液体である炭化水素系の原燃料を収容し、当該原燃料を蒸発させる。ここで、原燃料は、メタノール水溶液とすることができる。水蒸気改質部106は、筐体102内において蒸発部104上に配置されて蒸発部104と連通しており、原燃料を水素含有量の高い改質燃料に改質する改質触媒を収容する。水素分離膜部108は、筐体102内において水蒸気改質部106と連通しており、水蒸気改質部106で改質された改質燃料中の水素を選択的に透過する水素分離膜を含む。水素分離膜を設けることにより、筐体102から水素ガス送出管119に送出される水素ガスの流量が制限される。
【0025】
改質器100は、原燃料タンク200から蒸発部104に原燃料を供給する原燃料供給管206と、水蒸気改質部106で改質された改質燃料のうち、水素分離膜部108の水素分離膜を透過した改質燃料を筐体102外に送出して燃料電池300に供給する水素ガス送出管119と、水蒸気改質部106で改質された改質燃料のうち、水素分離膜部108の水素分離膜を透過する前の改質燃料であるオフガスを燃焼器112に送出するオフガス送出管110とをさらに含む。また、改質器100は、オフガス送出管110から送出されるオフガスの流量を絞り込むように、オフガスの流量を制限する流量制限機構128をさらに含む。この構成により、筐体102の圧力は、筐体102内の温度を反映するようになる。さらに、改質器100は、筐体102内の温度が高いとき、すなわち筐体102内の圧力が高いときには、原燃料タンク200から供給される原燃料の供給量を低下させるよう構成される。すなわち、本実施の形態における改質器100においては、筐体102内の圧力(温度)によって、原燃料タンク200から供給される原燃料の供給量が制御される。
【0026】
改質器100は、さらに、筐体102を覆うとともに、筐体102外部の蒸発部104および水蒸気改質部106の周囲に空間を形成するように筐体102の周囲に設けられた断熱部材114をさらに含む。本実施の形態において、この空間が燃焼器112となる。オフガス送出管110は、筐体102と断熱部材114との間に配置され、水蒸気改質部106に連結されるとともに端部が蒸発部104および水蒸気改質部106の周囲の空間に配置される。これにより、水蒸気改質部106で改質された改質燃料であるオフガスがこの空間に送出され、このオフガスを燃焼することにより、蒸発部104および水蒸気改質部106が加熱される。
【0027】
断熱部材114には、原燃料供給管206を通すための第1の開口部116、水素ガス送出管119を通すための第2の開口部118、および外部から燃焼器112に空気を取り込むための空気導入口120が設けられる。ここで、オフガス送出管110は、改質器100の運転中、100℃以下とならないようにすることが好ましい。このように、オフガス送出管110が断熱部材114で覆われた構成とすることにより、オフガス送出管110中を移動するオフガスが冷却されるのを防ぐことができ、オフガス送出管110内での結露を防ぐことができる。
【0028】
(第1の実施の形態)
図2は、本実施の形態における改質器100の外観を示す模式図である。図2(a)は、改質器100の正面図である。図2(b)は、改質器100の側面図である。図3は、断熱部材114内部の改質器100の構成を示す模式図である。図3(a)は、改質器100の正面断面図である。図3(b)は、改質器100の側面断面図である。図3(c)は、改質器100の上面断面図である。
【0029】
ここでは、原燃料タンク200が、メタノール(CHOH)を収容する第1の原燃料タンク202と、水(HO)を収容する第2の原燃料タンク204とから構成される例を示す。また、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204は、それぞれ圧縮ガスも収容する。これにより、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204が加圧された状態となっている。第1の原燃料タンク202と原燃料供給管206との間および第2の原燃料タンク204と原燃料供給管206との間には、それぞれ、第1のバルブ208および第2のバルブ210が設けられている。第1のバルブ208および第2のバルブ210を開閉するタイミング等を制御することにより、蒸発部104に供給される原燃料中のメタノール:水の割合を調整することができる。メタノール:水の供給割合は、メタノール:水=1:1(モル比)、または水の割合がメタノールに対して1以上(モル比)となるようにすることができる。ただし、これに限定されず、他の条件に応じて、水の割合がメタノールに対して1未満(モル比)とすることもできる。
【0030】
本実施の形態において、改質器100は、筐体102内で水蒸気改質部106が蒸発部104の直上に配置される縦型配置で利用される。そのため、蒸発部104で蒸発した原燃料は、そのまま自然対流で上方に移動し、水蒸気改質部106に導入される。これにより、蒸発部104で蒸発する原燃料の流路が、蒸発部104の底部から水蒸気改質部106にわたって鉛直方向に一直線に形成される。
【0031】
本実施の形態において、蒸発部104、水蒸気改質部106、および水素分離膜部108は、それぞれ空間的に分離されているのではなく、連通した空間内に配置されている。筐体102の下部に原燃料が供給される原燃料導入口126が設けられ、この部分が蒸発部104となる。また、筐体102内の原燃料導入口126よりも上方に改質触媒を保持する保持板160が取り付けられ、この部分が水蒸気改質部106となる。さらに、筐体102内の保持板160よりも上方または保持板160の近傍に水素分離膜が取り付けられ、この部分が水素分離膜部108となる。
【0032】
本実施の形態において、筐体102は、底面が矩形の四角柱である。本実施の形態において、筐体102は、底面が長方形となるように構成されている。ここで、筐体102の底面の長方形の長い方の辺は、短い方の辺に対して充分長い。このような構成とすると、蒸発部104で蒸発された原燃料の流量が底面の長方形の長い方の辺の長さで規定されるようにすることができる。図2(a)および図3(a)は、長方形の長い方の辺側から見た図を示し、図2(b)および図3(b)は、長方形の短い方の辺側から見た図を示す。
【0033】
筐体102の蒸発部104部分には、原燃料を導入する原燃料導入口126が設けられる。原燃料導入口126は、原燃料供給管206を介して第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204と接続される。筐体102の蒸発部104には、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204から供給される原燃料が収容される。メタノールは約87℃、水は約100℃でそれぞれ蒸発するため、改質器100を駆動させる際の蒸発部104の温度はたとえば140℃程度とされる。
【0034】
水蒸気改質部106は、原燃料を水素含有量の高い改質燃料に改質する改質触媒を収容する。改質触媒は、たとえば、CuO−AlやCuO−ZnO−Al等の銅亜鉛系触媒とすることができる。さらに、水蒸気改質部106には、改質触媒を保持する保持板160が配置されている。保持板160には複数の孔がマトリクス状に形成されている。保持板160は、たとえばステンレスにより構成することができる。ここで、保持板160の各孔には、ペレット状の改質触媒が差し込まれている。保持板160は、複数の改質触媒の塊を互いに間隔を隔てて保持する。そのため、原燃料が水蒸気改質部106を移動する際に、原燃料と改質触媒との接触効率をさらに高めることができ、原燃料の改質を効率よく行うことができる。
【0035】
また、保持板160は、蒸発部104で蒸発する原燃料の流路内に配置されるとともに、鉛直方向に延在する面を有する。保持板160は、この面に改質触媒を保持する。すなわち、保持板160は、筐体102の底面の長さが長い方の辺上に形成された壁面に略平行な面を有し、その面に改質触媒を保持している。これにより、原燃料が水蒸気改質部106を移動する際に、原燃料と改質触媒との接触効率を高めることができ、原燃料の改質を効率よく行うことができる。
【0036】
ところで、上記式(3)の水蒸気改質法では、一酸化炭素と水蒸気と二酸化炭素と水素の平衡から、以下のシフト反応が生じ得る。
【0037】
(シフト反応)
CO + HO ⇔ CO + H (4)
【0038】
このシフト反応のために、水蒸気改質部106から水素分離膜部108に移動する改質燃料には微量の一酸化炭素が含まれる。改質燃料中に一酸化炭素が含まれると、燃料電池の燃料極の触媒の性能が低下してしまうため、改質燃料からは一酸化炭素を除去することが好ましい。また、改質燃料中の水素含有量を高めるために、水蒸気改質法で水素とともに生成される二酸化炭素も除去することが好ましい。水素分離膜部108は、水蒸気改質部106で生成された改質燃料から水素を選択的に分離して改質燃料中の水素含有量を高める処理を行う。
【0039】
水素分離膜部108は、水素分離膜が設けられる。水素分離膜は、水素を選択的に透過させ、二酸化炭素を透過させない膜である。ここで、水素分離膜は、たとえば、水素を透過させ、二酸化炭素を透過させないような孔が形成された多孔質の膜とすることができる。水素分離膜は、たとえば金属やセラミックスにより構成することができる。
【0040】
筐体102の水素分離膜部108には、水蒸気改質部106との間に水素分離膜を隔てて設けられ、水素分離膜を透過した水素を筐体102外に送出する水素ガス送出口124が設けられる。水素分離膜部108において、改質燃料が水素分離膜を通過することにより、改質燃料中の水素含有量をさらに高めることができる。水素分離膜を通過した水素含有量の高い改質燃料である水素ガスは、水素ガス送出口124から水素ガス送出管119を介して燃料電池300(図1参照)等に供給される。
【0041】
筐体102の水蒸気改質部106と水素分離膜部108との間には、水素分離膜を透過する前の改質燃料であるオフガスを筐体102外に送出するオフガス送出口122が設けられる。
【0042】
本実施の形態において、断熱部材114は、筐体102の周囲を覆うように配置される。なお、筐体102は、上部が断熱部材114に固定されており、下方に空間を有するように配置されている。本実施の形態において、この空間が燃焼器112となる。断熱部材114は、燃焼器112に空気を取り込むための空気導入口120を有する。また、オフガス送出管110は、筐体102外部の断熱部材114で覆われた領域に配設される。これにより、オフガス送出管110中を移動するオフガスが冷却されるのを防ぐことができ、オフガス送出管110内での結露を防ぐことができる。また、筐体102の蒸発部104および水蒸気改質部106の周囲には、断熱部材114との間に空間がある。これにより、オフガスを燃焼することにより、蒸発部104および水蒸気改質部106を加熱することができる。
【0043】
オフガスは、オフガス送出口122からオフガス送出管110を介して、蒸発部104下部の空間に送出される。オフガス送出管110から送出されるオフガスを燃焼させることにより、蒸発部104および水蒸気改質部106が加熱される。燃焼器112でオフガスが燃焼されると、蒸発部104および水蒸気改質部106が加熱される。これにより、蒸発部104において、原燃料導入口126から導入された原燃料を蒸発させることができる。蒸発部104で蒸発された原燃料は、蒸発部104の上部にある水蒸気改質部106に移動する。水蒸気改質部106に原燃料の蒸発ガスを供給しつつ水蒸気改質部106を燃焼器112で加熱することにより、水蒸気改質部106において、上記式(3)の水蒸気改質法の反応が起こり、原燃料が二酸化炭素(CO)および水素(H)に改質される。水蒸気改質部106で改質された改質燃料は、一部が水素分離膜部108の水素分離膜を透過して水素ガス送出口124から外部に送出されるとともに、一部はオフガス送出管110を介して燃焼器112に送出される。これにより、改質器100による持続的な改質が可能となる。
【0044】
本実施の形態において、流量制限機構128は、たとえばオリフィス130とすることができる。図4は、本実施の形態における流量制限機構128の構成を示す拡大図である。オリフィス130は、筐体102の筐体壁部132に設けられる。オリフィス130は、オフガス送出管110よりも径が小さく形成されている。オリフィス130の開口部の好ましい直径は、原燃料の供給量や生成される改質燃料の量等の条件により変化するが、たとえば水素が2モル/時間程度生成される場合、2mm以下とすることができる。オフガス送出口122にオリフィス130を設けることにより、筐体内部134からオフガス送出口122を介して筐体外部136のオフガス送出管110に送出される燃焼用のオフガスの流量を絞りこむことができ、オフガスの流量がある一定以上にならないように制御することができる。
【0045】
図5は、このような流量制限機構128が設けられた構成において、改質器100を駆動させた際の、筐体102内の圧力と、筐体102の蒸発部104に供給される原燃料の供給量との関係を示す図である。横軸は時間を示す。
【0046】
燃焼器112により蒸発部104および水蒸気改質部106を加熱することにより、改質器100内の温度が上昇する。オフガス送出口122にオリフィス130を設けることにより、筐体102の圧力は、筐体102内の温度を反映するようになる。すなわち、筐体102内の温度が上昇するとともに筐体102内の圧力が増加する。また、水蒸気改質部106における原燃料の改質反応が進み改質燃料の生成量が増えると、上記式(3)に示した反応が起こり、生成物のモル濃度等も増加する。オフガス送出口122にオリフィス130を設けることにより、筐体102の圧力は、このようなモル濃度の増加等も反映するようになる。従って、改質燃料の生成量が増えると、これによっても改質器100内の圧力が上昇する。改質器100内の圧力が上昇すると、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204の圧力と、改質器100内の圧力との圧力差が小さくなる。そのため、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204から供給される原燃料の供給量が低下する。その結果、改質器100で改質される原燃料の量も低下し、オフガス送出管110から送出されるオフガスの量も低下する。これに伴い、改質器100の温度が低下し、それに伴い、改質器100内の圧力が低下する。改質器100内の圧力が低下すると、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204の圧力と、改質器100内の圧力との圧力差が大きくなり、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204から供給される原燃料の供給量が増加する。このように、改質器100内の圧力変化に伴って原燃料の供給量も調整されるため、改質器100は、徐々に定常かつ安定な状態となる。これにより、時間の経過とともに、改質器100内の温度も圧力も一定値に漸近するため、改質器100により安定した改質処理を行うことができる。
【0047】
図6は、流量制限機構128の他の例を示す図である。流量制限機構128は、オリフィス130にかえて、オフガス送出口122またはオフガス送出管110において、オフガスの流路を塞ぐように設けられた多孔板140および多孔板142とすることができる。
【0048】
多孔板140および多孔板142は、たとえばステンレスあるいは銅、アルミ、またはセラミクス等により構成することができる。このような多孔板を設けることによっても、オリフィス130を設けた場合と同様の効果が得られる。このような多孔板140および多孔板142を用いることにより、多孔板の圧力損失は透過流量と多孔板の透過率(あるいは空隙率)で決定されるので、圧力損失を精度よく設定することができる。また、多孔板140および多孔板142は、フィルター効果を有するため、外部からのほこり等の侵入を防ぐこともできる。なお、ここでは、多孔板140および多孔板142の2つの多孔板を示しているが、改質器100は、いずれか一方のみの多孔板を有する構成とすることもでき、さらに3つ以上の多孔板を有する構成としてもよい。
【0049】
次に、本実施の形態における改質器100の動作を説明する。
第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204を原燃料供給管206に取り付け、筐体102の蒸発部104に原燃料を供給する。初動時には、オフガス送出口122から改質燃料であるオフガスが送出されないため、バーナー等を用いて蒸発部104および水蒸気改質部106を加熱する。これにより、蒸発部104に供給された原燃料が蒸発して、蒸発部104の上方に位置する水蒸気改質部106に移動する。蒸発した原燃料は、そのまま上方に移動していく。ここで、水蒸気改質部106も加熱されているため、水蒸気改質部106において、原燃料が保持板160に保持された改質触媒の間を通過する間に上記式(3)の水蒸気改質法の反応が起こる。これにより、原燃料が二酸化炭素(CO)および水素(H)に改質される。
【0050】
水蒸気改質部106で改質された改質燃料は、さらに上方に移動し、水蒸気改質部106の上方に位置する水素分離膜部108に導入される。水素分離膜部108において、改質燃料中の水素が選択的に水素分離膜を透過し、水素ガス送出口124から外部に送出される。水素ガス送出口124から送出される改質燃料は、水素ガス送出管119等を介して燃料電池300の燃料極に供給される。また、燃料電池300の酸化剤極には、空気が供給される。これにより、燃料電池300の燃料極および酸化剤極において、上記式(1)および(2)の反応がそれぞれ行われ、燃料電池300から電力を取り出すことができる。
【0051】
一方、水素分離膜を透過しないオフガスは、オフガス送出口122からオフガス送出管110を介して燃焼器112に送出される。これにより、燃焼器112において、オフガスが外部から取り込まれた空気とともに燃焼して火炎を形成し、蒸発部104および水蒸気改質部106が加熱される。本実施の形態において、上述したように、オフガス送出管110が断熱部材114で覆われているため、オフガス送出管110中を移動するオフガスが冷却されるのを防ぐことができ、オフガス送出管110内での結露を防ぐことができる。これにより、改質器100の連続的な運転が可能になる。また、上述したように、本実施の形態における改質器100において、オフガス送出管110から送出されるオフガスの流量が制限され、筐体102内の圧力と原燃料の供給量とが一定に保たれる安定的な運転が行われる。これにより、炭化水素系の原燃料を水素含有量の高い改質燃料に安定的かつ持続的に改質することができる。
【0052】
また、本実施の形態における改質器100において、蒸発部104、水蒸気改質部106、および水素分離膜部108が鉛直方向に配置されている。そのため、原燃料や改質燃料が自然対流で上方に移動していくので、ポンプ等の駆動機器がなくても、原燃料を改質燃料に改質することができる。
【0053】
本実施の形態における改質器100によれば、簡易な構成で燃料電池300の燃料を生成することができる。改質器100を所望の位置に配置することにより、コンセント等の商用電源がない場所でも、ノートパソコンの電気機器への電源を供給することができ、利用者の利便性が高まる。
【0054】
図7は、図3に示した改質器100の他の例を示す正面断面図である。
改質器100は、筐体102内の圧力を測定する圧力計150と、圧力計150の圧力に応じて、筐体102内の圧力が高いときには、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204から供給される原燃料の供給量が低下するように第1のバルブ208および第2のバルブ210を開閉するタイミング等をそれぞれ制御する制御部152とを含む。この例においても、改質器100は、図4に示したオリフィス130や図6に示した多孔板140および多孔板142等の流量制限機構を含む。このような構成によっても、図3に示した改質器100と同様の効果が得られる。
【0055】
図8は、図3に示した改質器100の他の例を示す正面断面図である。
改質器100は、図7に示したのと同様の圧力計150および制御部152をさらに含む。また、改質器100は、オフガス送出管110と連通するとともに、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204の上部に連結されたオフガス供給管220をさらに含む。このような構成とすると、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204に予め圧縮ガスを導入しておかなくても、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204中の原燃料が加圧された状態とすることができる。この例においても、改質器100は、図4に示したオリフィス130や図6に示した多孔板140および多孔板142等の流量制限機構を含む。このような構成によっても、図3に示した改質器100と同様の効果が得られる。
【0056】
図9は、図3に示した改質器100の他の例を示す図である。図9(a)は、改質器100の正面断面図、図9(b)は、改質器100の側面断面図である。
ここで、改質器100は、原燃料タンク200と筐体102とが一体に設けられ、蒸発部104下部に原燃料タンク200が設けられた構成となっている。この場合、オフガス送出管110から送出されたオフガスにより、原燃料タンク200が加熱される。これにより、原燃料タンク200に収容された原燃料が蒸発部104を通過して水蒸気改質部106に移動し、水蒸気改質部106で改質触媒により改質される。
【0057】
この例においても、改質器100は、図4に示したオリフィス130や図6に示した多孔板140および多孔板142等の流量制限機構を含む。このような構成において、筐体102内の圧力が高くなると、原燃料の沸点が上昇し、原燃料が蒸発しにくくなる。つまり、筐体102内の圧力が高くなると、原燃料の供給量が低下することになる。そのため、図5を参照して説明したのと同様の現象が生じ、筐体102内の圧力と原燃料の供給量とが一定に保たれる安定的な運転が行われるようになる。これにより、図3に示した改質器100と同様の効果が得られる。
【0058】
(第2の実施の形態)
図10は、本実施の形態における改質器100の構成を示す正面断面図である。図10(a)は、改質器100の正面断面図である。図10(b)は、図10(a)のA−A’断面図である。なお、本実施の形態においても、改質器100は、断熱部材114で覆われた構成を有する。
【0059】
本実施の形態において、筐体102は、外周が円形の円柱である。また、筐体102の下方の中央部分には、円形の凹部161が形成されており、この凹部161が燃焼器112となる。蒸発部104および水蒸気改質部106は、凹部161の外周に配置されている。
【0060】
このように、燃焼器112が筐体102の内部に設けられ、その周囲に蒸発部104および水蒸気改質部106が配置された構成とすることにより、加熱効率を高くすることができる。
【0061】
(第3の実施の形態)
図11は、本実施の形態における改質器100の構成を示す正面断面図である。図11(a)は、改質器100の正面断面図である。図11(b)は、図11(a)のB−B’断面図である。なお、本実施の形態においても、改質器100は、断熱部材114で覆われた構成を有する。
【0062】
本実施の形態において、改質器100は、外周が円形の円筒である。また、筐体102の中央に空洞164が形成されている。この空洞164部分が燃焼器112となる。蒸発部104および水蒸気改質部106は、空洞164の外周に配置されている。本実施の形態において、燃焼器112が空洞164部分に設けられており、上部が開口しているため、燃焼ガスが外部に放出されるようになっている。これにより、空気のエンレインメント効果(吸引効果)が顕著になり、より安定した燃焼が可能となる。
【0063】
また、本実施の形態において、水素分離膜部108の水素分離膜は、水蒸気改質部106の改質触媒のすぐ近くに配置され、改質器100は、メンブレンリアクター構造となっている。このような構成とすることにより、改質触媒により改質された水素が効率よく水素分離膜を透過して筐体102内から送出されるので、上述した式(4)のシフト反応が右側に進行し、水素を効率よく生成することができる。これにより、安定的に水素ガスおよびオフガスを生成することができる。
【0064】
図12は、図11に示した改質器100の他の例を示す図である。ここで、改質器100は、図11に示した構成に加えて、筐体102の空洞164内のオフガス送出管110の端部上方に蓄熱剤162をさらに含む。ここで、蓄熱剤162は、金属多孔板等熱伝導が良好な材料により構成することができる。このような蓄熱剤162を設けることにより、燃焼器112でオフガスが燃焼されると、蓄熱剤162も加熱され、空洞164内の熱回収を効率よく行うことができる。
【実施例】
【0065】
図10に示したのと同様の構成の改質器100を用いて、オフガスを燃焼させることにより、蒸発部104および水蒸気改質部106を加熱して、改質反応を行った。ただし、流量制限機構128としては、オリフィスにかえて、圧力損失の程度を変えられる小型ニードルバルブを用いた。ここで、小型ニードルバルブにより、オフガス送出管110から送出されるオフガスの量を絞り込むようにした。また、小型ニードルバルブによりオフガス送出管110から送出されるオフガスの量が水蒸気改質部106で改質された改質燃料の90%以上となるようにした。すなわち、オフガス送出口122から送出されるガスの量が、水素ガス送出口124から送出されるガスとオフガス送出口122から送出されるガスの量の総量に対して90%以上となるようにした。
【0066】
また、原燃料としては、メタノール:水=1:1.1(図中1.1×continue)、1:1.2(図中1.2×)、1:1.3(図中1.3×)となるようにした。
【0067】
図13に、水蒸気改質部106の温度の経時変化を示す。図中横軸は時間(分)、縦軸は水蒸気改質部106の温度(℃)を示す。各条件において、時間0の時点まではアルコールランプを用いて加熱を行った。これにより、改質器100内で改質反応が生じ、オフガス送出管110の端部からオフガスが送出されるようになった。その後、アルコールランプを撤去し、オフガス送出管110の端部から送出されるオフガスを燃焼させることにより、筐体102の加熱を行った。この結果、いずれの場合でも、水蒸気改質部106の温度を約60分程度、約245℃程度に保つことができた。
【0068】
以上、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0069】
以上の実施の形態において、オフガス送出管110が2本設けられた構成を示しているが、オフガス送出管110は、1本または3本以上とすることもできる。この場合、各オフガス送出管110にそれぞれ流量制限機構128が設けられる。また、図10には、原燃料供給管206が2本設けられた構成を示しているが、原燃料供給管206も、1本または3本以上とすることもできる。
【0070】
なお、ここでは図示していないが、改質器100の原燃料導入口126、オフガス送出口122、水素ガス送出口124は、改質器100の不使用時に外部の空気等が筐体102内に入り込まないように、逆流防止弁等が設けられた構成とすることができる。
【0071】
以上の実施の形態において、水蒸気改質部106では、保持板160に複数の孔がマトリクス状に形成された例を示したが、複数の孔は、たとえば千鳥状等、マトリクス状以外のパターンに形成することもできる。また、改質触媒は、複数の孔が設けられた保持板とペレット状の触媒との組み合わせだけでなく、たとえば孔が設けられていない保持板の表面に触媒ペーストをマトリクス状や千鳥状等のパターンに配置させてそれを固めて形成することもできる。
【0072】
本発明において、原燃料として、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、またはメチルエチルエーテル等の酸素含有炭化水素、あるいはこれらの混合物と、水との混合溶液を用いることができる。
【0073】
また、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204は、たとえば、噴出口を有するスプレー缶とすることができる。この場合、原燃料供給管206には、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204の取付部(不図示)が設けられ、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204の噴出口は、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204がそれぞれ原燃料供給管206の取付部に取り付けられると開くように構成される。第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204の噴出口が開くと、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204内の圧縮ガスの圧力により、第1の原燃料タンク202および第2の原燃料タンク204からそれぞれ原燃料が原燃料供給管206に流出する。
【0074】
なお、以上の実施の形態において、たとえば図10、図11、図12等において、蒸発部104と水蒸気改質部106との間、および水蒸気改質部106と水素分離膜部108との間に実線が引いてある箇所があるが、これらは各領域を説明上区切るために示したものであり、いずれの実施の形態においても、蒸発部104、水蒸気改質部106、および水素分離膜部108は、それぞれ空間的に分離されているのではなく、連通した空間内に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態における改質器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における改質器の外観を示す模式図である。
【図3】断熱部材内部の改質器の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態における流量制限機構の構成を示す拡大図である。
【図5】流量制限機構が設けられた構成において、改質器を駆動させた際の、筐体内の圧力と、筐体の蒸発部に供給される原燃料の供給量との関係を示す図である。
【図6】流量制限機構の他の例を示す図である。
【図7】図3に示した改質器の他の例を示す正面断面図である。
【図8】図3に示した改質器の他の例を示す正面断面図である。
【図9】図3に示した改質器の他の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における改質器の構成を示す正面断面図である。
【図11】本発明の実施の形態における改質器の構成を示す正面断面図である。
【図12】図11に示した改質器の他の例を示す正面断面図である。
【図13】実施例における、水蒸気改質部の温度の経時変化を示す。
【符号の説明】
【0076】
100 改質器
102 筐体
104 蒸発部
106 水蒸気改質部
108 水素分離膜部
110 オフガス送出管
112 燃焼器
114 断熱部材
116 第1の開口部
118 第2の開口部
119 水素ガス送出管
120 空気導入口
122 オフガス送出口
124 水素ガス送出口
126 原燃料導入口
128 流量制限機構
130 オリフィス
132 筐体壁部
140 多孔板
142 多孔板
150 圧力計
152 制御部
160 保持板
161 凹部
162 蓄熱剤
164 空洞
200 原燃料タンク
202 第1の原燃料タンク
204 第2の原燃料タンク
206 原燃料供給管
208 第1のバルブ
210 第2のバルブ
220 オフガス供給管
300 燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、液体である炭化水素系の原燃料を蒸発させる蒸発部と、
前記筐体内において前記蒸発部上に配置されて前記蒸発部と連通し、前記原燃料を水素含有量の高い改質燃料に改質する改質触媒を収容する改質部と、
前記筐体内において前記改質部と連通し、前記改質部で改質された前記改質燃料中の水素を選択的に透過する水素分離膜と、
前記改質部との間に前記水素分離膜を隔てて前記筐体に設けられ、前記水素分離膜を透過した水素を当該筐体外に送出する水素ガス送出口と、
前記筐体に設けられ、前記水素分離膜を透過する前の前記改質燃料であるオフガスを当該筐体外に送出するオフガス送出口と、
前記筐体の外部に配置され、前記オフガス送出口に連結されるとともに前記筐体の前記蒸発部下方の空間に端部を有し、前記オフガスを前記空間に送出するオフガス送出管と、
前記オフガス送出管の端部から送出される前記オフガスの流量を絞り込むように制限する流量制限機構と、を含み、
前記筐体内において、前記蒸発部で蒸発する前記原燃料の流路が、前記蒸発部の底部から前記改質部にわたって鉛直方向に一直線に形成され、
前記オフガス送出管の端部から送出される前記オフガスの流量を制限するとともに、前記筐体内の前記蒸発部および前記改質部の圧力が高いときには、前記蒸発部で蒸発される前記原燃料の量を低下させるようにして、前記オフガス送出管から前記空間に送出される前記改質燃料を燃焼することにより、前記蒸発部および前記改質部を加熱する構成とされた改質器。
【請求項2】
請求項1に記載の改質器において、
前記水素分離膜は、透過する水素の流量を制限する機能を有し、
前記筐体および前記水素分離膜で区画される前記筐体内の前記蒸発部および前記改質部の圧力が前記筐体内の温度の変化に応じて変化するように構成された改質器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の改質器において、
前記流量制限機構は、前記オフガス送出口または前記オフガス送出管に設けられ、前記オフガス送出管の他の部分よりも径が小さいオリフィスを含む改質器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の改質器において、
前記流量制限機構は、前記オフガス送出口または前記オフガス送出管において、前記オフガスの流路を塞ぐように設けられた多孔板を含む改質器。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の改質器において、
前記液体である炭化水素系の前記原燃料を収容し、前記原燃料を前記筐体の前記蒸発部に供給する原燃料タンクをさらに含み、
前記筐体内の圧力が高いときには、前記原燃料タンクから前記蒸発部に供給される前記原燃料の供給量を低下させるよう構成された改質器。
【請求項6】
請求項5に記載の改質器において、
前記原燃料タンクは、前記原燃料を加圧された状態で収容し、
当該原燃料タンク内の圧力と前記筐体内の圧力との圧力差により、前記原燃料が前記原燃料タンクから前記筐体の前記蒸発部に供給されるように構成された改質器。
【請求項7】
請求項5に記載の改質器において、
前記原燃料タンクから前記蒸発部に供給する前記原燃料の供給量を調整するバルブと、
前記筐体内の圧力に応じて、前記筐体内の圧力が高いときには、前記原燃料タンクから供給される前記原燃料の供給量が低下するように前記バルブを制御する制御部と、
をさらに含む改質器。
【請求項8】
請求項1から7いずれかに記載の改質器において、
前記筐体を覆うとともに、前記筐体外部の前記蒸発部および前記改質部の周囲に前記空間を形成するように前記筐体の周囲に設けられた断熱部材をさらに含み、
前記オフガス送出管は、前記筐体と前記断熱部材との間に配置された改質器。
【請求項9】
請求項1から8いずれかに記載の改質器において、
前記改質部に設けられ、前記改質触媒を保持する保持板をさらに含み、当該保持板は、前記流路内に配置されるとともに鉛直方向に延在する面を有し、当該面に前記改質触媒を保持する改質器。
【請求項10】
請求項1から9いずれかに記載の改質器と、
前記改質器の前記水素ガス送出口から送出される水素が供給される燃料極、および酸化剤が供給される酸化剤極、を含む燃料電池と、
を含む燃料電池システム。
【請求項11】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、液体である炭化水素系の原燃料を蒸発させる蒸発部と、
前記筐体内において前記蒸発部上に配置されて前記蒸発部と連通し、前記原燃料を水素含有量の高い改質燃料に改質する改質触媒を収容する改質部と、
前記筐体内において前記改質部と連通し、前記改質部で改質された前記改質燃料中の水素を選択的に透過する水素分離膜と、
前記改質部との間に前記水素分離膜を隔てて前記筐体に設けられ、前記水素分離膜を透過した水素を当該筐体外に送出する水素ガス送出口と、
前記筐体に設けられ、前記水素分離膜を透過する前の前記改質燃料であるオフガスを当該筐体外に送出するオフガス送出口と、
前記筐体の外部に配置され、前記オフガス送出口に連結されるとともに前記筐体の前記蒸発部下方の空間に端部を有し、前記オフガスを前記空間に送出するオフガス送出管と、
を含み、
前記筐体内において、前記蒸発部で蒸発する前記原燃料の流路が、前記蒸発部の底部から前記改質部にわたって鉛直方向に一直線に形成された改質器により、前記原燃料を水素に改質する改質方法であって、
前記オフガス送出管の端部から送出される前記オフガスの流量を絞り込むように制限するとともに、前記筐体内の前記蒸発部および前記改質部の圧力が高いときには、前記蒸発部で蒸発される前記原燃料の量を低下させるようにして、前記オフガス送出管から前記空間に送出される前記改質燃料を燃焼することにより、前記蒸発部および前記改質部を加熱する工程を含む改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−222508(P2008−222508A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64464(P2007−64464)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】