説明

改質器

【課題】改質装置の起動及び停止を繰り返した場合における応力変形による歪みの蓄積を低減し、疲労破壊に至るまでの疲労寿命を長くすることが可能な改質器を提供する。
【解決手段】正面視長方形状の第1、第2扁平皿形容器の周縁の鍔部の全周を、正面視長方形状で平板状の仕切り板を介して重ね合わせて固着し、改質材を第1扁平皿形容器と仕切り板との間の第1空間に収納し、第2扁平皿形容器と仕切り板との間の第2空間の特定辺Ft側に、当該特定辺Ftに沿ってバーナを延設して備えた改質器Fにおいて、特定辺Fb3と、その端部から直交して延出される直交側辺Fs1、Fs2との交差部に関し、正面視にて、特定辺Fb3と直交側辺Fs1、Fs2とを、角部の交差角が鈍角を成す複数の鈍角角部Fa1〜Fa4で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ正面視にて長方形状の第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器と、正面視にて長方形状で、平板状の仕切り板とから構成され、前記第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器の周縁に設けられた鍔部の全周が、前記仕切り板を介して重ね合わされて固着された構成で、改質材が、前記第1扁平皿形容器と前記仕切り板との間に形成される第1空間に、改質材が収納されるとともに、前記第2扁平皿形容器と前記仕切り板との間に形成される第2空間の特定辺側に、当該特定辺に沿ってバーナを延設して備えた改質器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の燃料となる水素を主成分とする改質ガスは、天然ガス等の炭化水素を含む原燃料を水蒸気改質して得るのが一般的である。原燃料の水蒸気改質によって水素を主成分とする改質ガスを生成する燃料改質装置において、その水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、水蒸気改質反応に必要な熱を何らかの形で供給する必要がある。
【0003】
このために、従来、原料を改質材で改質する改質器を、正面視にて長方形状の第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器と、正面視にて長方形状で且つ平板状の仕切り板とを、第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器の周縁に設けられた鍔部の全周を仕切り板を介して重ね合わせて固着し、第1扁平皿形容器と仕切り板との間に形成される第1空間に改質材を収納し、第2扁平皿形容器と前記仕切り板との間に形成される第2空間の特定辺側に沿って備えられるバーナの燃焼により、第1空間を加熱するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の例として、改質器として、正面視にて長方形状の第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器と、正面視にて長方形状で且つ平板状の仕切り板とを、第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器の周縁に設けられた鍔部の全周を仕切り板を介して重ね合わせて固着し、第1扁平皿形容器と仕切り板との間に形成される第1空間、及び、第2扁平皿形容器と前記仕切り板との間に形成される第2空間の双方に改質材を収納するとともに、そのように形成される改質器が複数並置して設けられて、互いに隣り合う改質器の間に改質材加熱用のヒータを備えて前記第1空間及び第2空間を加熱するように構成されたものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−235426号公報
【特許文献2】特開2010−140726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような改質器は、通常運転時の温度と停止時の温度の差が大きいとともに、比較的頻繁に起動と停止とを繰返すため、当該温度差に起因する部材の熱膨張・収縮が頻繁に起こり、熱疲労を受ける。具体的には、改質器は、扁平皿形容器形状の第1扁平皿形容器及び第2扁平皿形容器と、両者間に介挿される平板状の仕切り板とに関して、周縁部を固着した構造とされるため、温度変化に伴って発生する両扁平皿形容器と仕切り板との変形形態が異なることに起因して、熱ひずみが扁平皿形容器の各端辺に沿った方向(図4(a)におけるX方向及びY方向)において顕著に起こり、長方形状の各角部(特に特定辺であるバーナ配設側の角部)にひずみが集中し、仕切り板から扁平皿形容器が当該角部で外れてしまう等の問題が発生する場合あった。
このような破壊は、起動開始、起動停止を繰返すことによる、熱ひずみ起因の疲労破壊と考えられる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、改質装置の起動及び停止を繰り返した場合における熱ひずみ起因の疲労の蓄積を低減し、疲労破壊が発生するまでの寿命(疲労寿命)を長くすることが可能な改質器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る改質器は、それぞれ正面視にて長方形状の第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器と、正面視にて長方形状で、平板状の仕切り板とから構成され、前記第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器の周縁に設けられた鍔部の全周が、前記仕切り板を介して重ね合わされて固着された構成で、前記第1扁平皿形容器と前記仕切り板との間に形成される第1空間に、改質材が収納されるとともに、前記第2扁平皿形容器と前記仕切り板との間に形成される第2空間の特定辺側に、当該特定辺に沿ってバーナを延設して備えるものであって、その第1特徴構成は、前記特定辺と、当該特定辺の端部から直交して延出される直交側辺との交差部に関して、正面視にて、前記特定辺と前記直交側辺とを、角部の交差角が鈍角を成す、複数の鈍角角部で接続した点にある。
【0009】
すなわち、特定辺と、当該特定辺の端部から直交して延出される直交側辺との交差部に関して、正面視にて、前記特定辺と前記直交側辺とを、角部の交差角が鈍角を成す、複数の鈍角角部で接続することによって、特定辺に沿って延設して備えられるバーナの燃焼熱による第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器及び仕切り板の変形に伴う熱ひずみを、複数の鈍角角部にて分散させることが可能となる。
【0010】
説明を加えると、本願に係る改質器は、第1扁平皿形容器及び第2扁平皿形容器と、仕切り板とで構成され、当該仕切り板が、第1扁平皿形容器及び第2扁平皿形容器に介挿された構造を取る。さらに、第1扁平皿形容器及び第2扁平皿形容器の裏底部は、その内部に第1空間及び第2空間を形成されるように構成される。そして、先にも示したように、熱の影響による第1扁平皿形容器及び第2扁平皿形容器の変形形態と仕切り板の変形形態とが異なり、さらに、両者間はその周縁部がその全周に亘って固着・拘束されているため、変形形態の差に起因する両者間で熱ひずみが発生しやすい構造となっている。
しかしながら、本願発明によれば、特定辺と、当該特定辺の端部から直交して延出される直交側辺との交差部に関して、正面視にて、特定辺と直交側辺とを、角部の交差角が鈍角を成す、複数の鈍角角部で接続することによって、バーナによる加熱に伴う変形を分散するものであるから、仕切り板と第1扁平皿形容器又は第2扁平皿形容器との固着部分に発生する熱応力を低減させることができる。
【0011】
つまり、上記のように特定辺と、当該特定辺の端部から直交して延出される直交側辺との交差部に関して、正面視にて、特定辺と直交側辺とを、角部の交差角が鈍角を成す、複数の鈍角角部で接続することによって、仕切り板と第1扁平皿形容器又は第2扁平皿形容器との固着部分に発生する熱応力が小さいものとなるから、改質装置の起動及び停止を繰り返した場合における疲労の蓄積を低減させることができるものとなり、改質器における第1扁平皿形容器又は第2扁平皿形容器が疲労破壊に至るまでの疲労寿命を長くすることが可能となる。
【0012】
要するに、本発明に係る改質器の第1特徴構成によれば、改質装置の起動及び停止を繰り返した場合における疲労の蓄積を低減し、疲労破壊に至るまでの寿命(疲労寿命)を長くすることが可能な改質器を提供できる。
【0013】
本発明に係る改質器の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記特定辺と前記直交側辺との間に傾斜辺を備え、前記複数の鈍角角部として、前記特定辺と傾斜辺との間の特定辺側角部と、前記傾斜辺と前記直交側辺との間の側辺側角部とを備え、前記特定辺側角部の交差角と、前記側辺側角部の交差角が等しい点にある。
【0014】
すなわち、特定辺と直交側辺との間に傾斜辺を備え、複数の鈍角角部として、特定辺と傾斜辺との間の特定辺側角部と、傾斜辺と前記直交側辺との間の側辺側角部とを備え、特定辺側角部の交差角と、側辺側角部の交差角とが等しくなるように構成することによって、第1扁平皿形容器、仕切り板、第2扁平皿形容器の変形を、角部周辺において、各部材の端縁に沿う方向において略均等に分散することができるものとなり、第1扁平皿形容器、又は、第2扁平皿形容器の疲労の蓄積を適切に低減させることができるものとなる。
【0015】
要するに、本発明に係る改質器の第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、第1扁平皿形容器、又は、第2扁平皿形容器の熱ひずみ起因の疲労の蓄積を適切に低減させることが可能な改質器を提供できる。
【0016】
本発明に係る改質器の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器及び仕切り板が、鉛直上下方向に広がる縦姿勢で使用され、前記縦姿勢における下側に前記特定辺が位置されるとともに、前記特定辺の両端部位に、前記傾斜辺部を設けた点にある。
【0017】
すなわち、第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器及び仕切り板が、鉛直上下方向に広がる縦姿勢で使用され、縦姿勢における下側に特定辺が位置されるとともに、特定辺の両端部位に、傾斜辺部を設けられるものであるから、第2空間においてバーナに燃焼に伴って発生する燃焼ガスを鉛直情報に導いて、改質材が収納された第1空間を良好に加熱することができる。また、燃料改質装置をコンパクトな構造とできる。
【0018】
説明を加えると、バーナは、鉛直上下方向に広がる縦姿勢で使用される第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器及び仕切り板における下側に位置する特定辺の近傍に備えられ、上昇する燃焼排ガスによって、その大部分がバーナよりも上方に位置することになる第1空間及び第2空間を加熱することになる。したがって、鉛直上下方向に広がる縦姿勢で使用される第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器及び仕切り板は、その下方に位置するバーナに近接する特定辺の近傍が最も高温になる。そこで、この特定辺の両端部位に、傾斜辺部を設けることにより、第1扁平皿形容器又は第2扁平皿形容器の熱膨張が最も大きい部分の膨張変形を分散することができるものとなり、第1扁平皿形容器、又は、第2扁平皿形容器の応力変形による歪みの蓄積を適切に低減させることができるものとなる。
【0019】
要するに、本発明に係る改質器の第3特徴構成によれば、上記第2特徴構成による作用効果に加えて、第1扁平皿形容器又は第2扁平皿形容器の疲労の蓄積を適切に低減させることができるものとなる。
【0020】
本発明に係る改質器の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、前記バーナを、前記傾斜辺より上で、前記直交側辺の前記傾斜辺側下部領域に設けた点にある。
【0021】
すなわち、傾斜辺より上で、直交側辺の前記傾斜辺側下部領域にバーナを設けるものであるから、一対の傾斜辺を設けることにより、特定辺に沿った方向の長さが減少し、空間容積が減少する、傾斜辺より下の第2空間内ではなく、傾斜辺より上で、直交側辺の傾斜辺側下部領域にバーナを位置させることで、バーナの特定辺に沿った長さを充分確保できる。結果、第2空間、仕切り板、第1空間に対して、特定辺に沿った方向で、均等且つ安定した加熱を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る燃料改質装置の構成を説明する図
【図2】本発明に係る燃料改質装置における改質器の分解斜視図並びに全体斜視図
【図3】本発明に係る燃料改質装置における改質器の平面図
【図4】平面視において2つ以上の角部が鈍角となる多角形状に形成されていない場合と形成されている場合とにおける歪蓄積量の解析結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下に、図面を参照して、炭化水素系の原燃料を改質して、水素を主成分とする改質ガスを生成する燃料改質装置の構成について説明する。
以下の実施形態では、発電出力700W級の家庭用燃料電池システムにおいて、燃料改質装置で生成した水素を燃料電池の燃料として供給する例を説明するが、生成した水素を別の用途に供給してもよい。
図1は、燃料改質装置の構成を説明する図である。図1に示すように、燃料改質装置Rが備える装置本体Aは、改質ガスを生成するための複数の反応器(脱硫処理部1、水蒸気生成部2、燃焼部4、水蒸気改質部3、変成処理部5、選択酸化部6)を有する。図1において、装置本体Aは断面図で示す。
【0024】
まず、脱硫処理部1から選択酸化部6に至るガスの流路について説明する。
図1に示すように、原燃料ガス用熱交換器Eaの原燃料ガス通流部16に原燃料ガス供給路21を接続して、そこから原燃料ガスを供給する。そして、原燃料ガス通流部16、脱硫処理部1、被改質ガス用熱交換器Epの被改質ガス通流部13、水蒸気改質部3、保温用通流部7、被改質ガス用熱交換器Epの上流側改質処理ガス通流部12、原燃料ガス用熱交換器Eaの下流側改質処理ガス通流部15、変成処理部5、選択酸化部6の順に流れるガス処理経路を形成するように、それらをガス処理用流路22で接続している。
【0025】
脱硫処理部1は、供給される都市ガスなどの炭化水素系の原燃料ガス(炭化水素系の原燃料)を脱硫処理する。水蒸気生成部2は、燃焼部4から排出された燃焼ガスを通流させる水蒸気生成用加熱通流部11と、供給される原料水を水蒸気生成用加熱通流部11による加熱にて蒸発させる蒸発部Vとを有する。燃焼部4は、燃焼用ガスを燃焼して燃焼熱を発生させる。燃焼用ガスとしては、燃料電池(図示せず)から排出された排燃料ガス(発電反応に用いられなかった水素を含むガス)を用いることができ、原燃料ガスを燃焼用ガスとして用いることもできる。水蒸気改質部3は、燃焼部4で発生された燃焼熱を利用して原燃料ガスを水蒸気改質して上記改質ガスを生成する。具体的には、水蒸気改質部3には、ルテニウム、ニッケル、白金などの改質触媒を保持したセラミック製の多孔質粒状体の多数が通気可能な状態で充填される。水蒸気改質部3には、改質処理温度(即ち、反応器の温度)を検出する温度センサ38が設けられている。また、別の反応器の温度を検出する温度センサを設けてもよい。そして、水蒸気改質部3に被改質ガス(後述する脱硫原燃料ガスと水蒸気との混合ガス)を通流させて、原燃料ガスを水素と一酸化炭素と二酸化炭素とを含む改質ガスに改質する。原燃料ガスが、メタンを主成分とする天然ガスである場合、水蒸気改質部3では、燃焼部4によって例えば650℃〜750℃程度の加熱下でメタンと水蒸気とが下記の反応式にて改質反応して、水素と一酸化炭素と二酸化炭素を含むガスに改質処理される。
【0026】
〔化1〕
CH4+H2O→CO+3H2
〔化2〕
CH4+2H2O→CO2+4H2
【0027】
選択酸化部6は、変成処理部5から排出される変成処理ガス中に残留している一酸化炭素を除去する。具体的には、選択酸化部6においては、ルテニウムや白金、パラジウム、ロジウム等の触媒作用によって、100℃〜200℃程度の反応温度で変成処理ガス中に残っている一酸化炭素が、添加された空気中の酸素によって酸化される。その結果、一酸化炭素濃度の低い(例えば10ppm以下)、水素リッチな燃料ガスが生成される。
生成された燃料ガスは、燃料ガス路23を通じて燃料電池に供給される。本実施形態では、選択酸化部6から排出された選択酸化処理ガス(燃料電池に供給される燃料ガス)の温度は100℃〜200℃程度であり、例えば固体高分子型の燃料電池の動作温度は70℃〜80℃程度であるので、燃料ガス路23には、選択酸化部6から排出された選択酸化処理ガスを、燃料電池の動作温度付近にまで冷却する燃料ガス冷却用熱交換器(図示せず)が設けられている。
また、上述したように、燃料電池から排出される排燃料ガス(発電反応に用いられなかった水素を含むガス)は、排燃料ガス路24を通じて一対のパイプバーナ44に燃焼用ガスとして供給される。
【0028】
(水蒸気生成部への原料水の供給経路)
次に、水蒸気生成部2の蒸発部Vへの原料水の供給経路について説明する。
変成処理部5と選択酸化部6とを接続するガス処理用流路22には、原料水供給路25を流れる原料水を変成処理ガスにて予熱する原料水予熱用熱交換器17と、更に、もう1つの水冷熱交換器(図示せず)と、変成処理ガスから凝縮水を除去するドレントラップ34とが順に設けられている。
更に、原料水供給路25における原料水予熱用熱交換器17よりも下流側の箇所には、原料水を蛇行状に流す蛇行状通流部18が設けられている。蛇行状通流部18は、装置本体Mの外壁部のうちの、燃焼部4を覆う箇所に熱伝導可能に当て付けて設けられる。その結果、装置本体Aの外壁部からの伝導熱および輻射熱により、蛇行状通流部18を通流する原料水が予熱される。
以上のようにして、水蒸気生成部2の蒸発部Vに供給する原料水を、原料水予熱用熱交換器17及び蛇行状通流部18を用いて予熱する。
【0029】
(改質器の装置構成)
燃焼部4は、燃焼用ガス(排燃料ガス)を火炎を形成する状態で燃焼させる有炎燃焼部4Fと、その有炎燃焼部4Fに対して、その有炎燃焼部4Fの火炎形成方向下流側に配置されて、有炎燃焼部4Fにて燃焼しなかった燃焼用ガスを燃焼触媒4cにて燃焼させる触媒燃焼部4Cを備える。有炎燃焼部4Fには、改質装置用の加熱バーナとしての一対のパイプバーナ44が設けられる。パイプバーナ44にはイグナイタ4iを用いて点火される。燃焼部4の外表面の最高温度は例えば600℃〜700℃である。
【0030】
図1において一点鎖線矢印にて示すように、燃焼用空気が、燃焼用ブロア28から燃焼用空気路29を通って一対のパイプバーナ44に供給される。
更に、燃焼用ブロア28に接続した酸化用空気供給路31が、変成処理部5と選択酸化部6とを接続するガス処理用流路22に接続される。それにより、燃焼用ブロア28からの空気は酸化用空気として選択酸化部6に供給される。但し、酸化用空気供給路31には開閉弁35が設けられており、開閉弁35を閉止作動させることで選択酸化部6への空気の供給を遮断可能である。
【0031】
(装置本体Aを通流するガスの熱交換)
次に、装置本体Aを通流するガスの熱交換について説明する。
燃料改質装置の装置本体Aには、水蒸気改質部3から排出された高温の改質処理ガスを通流させて、水蒸気改質部3を保温する保温用通流部7と、高温の改質処理ガスにより水蒸気改質部3に供給される被改質ガスを加熱する被改質ガス用熱交換器Epと、高温の改質処理ガスにより脱硫処理部1に供給される原燃料ガスを加熱する原燃料ガス用熱交換器Eaと、変成処理部5を冷却するために冷却用流体を通流させる変成部冷却用通流部8と、変成処理部5および選択酸化部6を冷却する冷却用ファン10とが設けられている。
【0032】
被改質ガス用熱交換器Epでは、保温用通流部7から排出された改質処理ガスを通流させる上流側改質処理ガス通流部12と、水蒸気改質部3に供給する被改質ガスを通流させる被改質ガス通流部13との熱交換が行われる。
原燃料ガス用熱交換器Eaでは、上流側改質処理ガス通流部12から排出された改質処理ガスを通流させる下流側改質処理ガス通流部15と、脱硫処理部1に供給する原燃料ガスを通流させる原燃料ガス通流部16との熱交換が行われる。
【0033】
(水蒸気と原燃料ガスとの混合)
原燃料ガス供給路21から供給される原燃料ガスを脱硫処理部1で脱硫処理し、その脱硫原燃料ガスと水蒸気路26からの水蒸気とを混合する。具体的には、図1に示すように、装置本体Aにおいて、水蒸気生成用の原料水を供給する原料水供給路25を水蒸気生成部Sの蒸発部Vに接続し、蒸発部Vにて生成された水蒸気を送出する水蒸気路26を、脱硫処理部1と被改質ガス通流部13とを接続するガス処理用流路22に接続する。その結果、ガス処理用流路22を通流する脱硫原燃料ガスに改質用の水蒸気が混合される。
【0034】
(燃焼部から排出される燃焼ガスの利用形態)
図1において、破線矢印にて示すように、燃焼部4から排出された燃焼ガスを、水蒸気生成用加熱通流部11、変成部冷却用通流部8の順に流すように、それら燃焼部4、水蒸気生成用加熱通流部11、変成部冷却用通流部8が燃焼ガス路27により接続されている。そして、水蒸気生成用加熱通流部11においては、燃焼ガスによって蒸発部Vを加熱し、変成部冷却用通流部8においては、燃焼ガスによって、発熱反応である変成反応が行われる変成処理部5を冷却する。
【0035】
(燃料改質装置の装置本体の構成)
燃料改質装置Rが備える複数の反応器(脱硫処理部1、水蒸気生成部2、改質器Fを構成する燃焼部4、改質器Fを構成する水蒸気改質部3、変成処理部5、選択酸化部6)は、上記改質ガスの生成処理工程で用いられる処理空間を内部に備えた平板型モジュールとしての容器Bを用いて形成される。それら複数の容器B(複数の反応器:平板型モジュール)は、並列に密着して並べられた状態で装置本体Aを構成する。複数の容器Bを並べるに当たっては、上述したような伝熱させる必要のあるもの同士は互いに密着させた状態で並べ、且つ、伝熱量を調節する必要のあるもの同士の間に伝熱量調節用の断熱材19a、19b、19d、19eを介在させた状態で並べてある。また、容器Bは、皿形状の容器形成用部材を、それらの間に板状の仕切り部材を位置させた状態で溶接接続して、二つの処理空間を備えるように構成されている。尚、図1に示すように、燃焼部4を直接覆うように設けられている断熱材19は、後述する皿形状の容器形成用部材としての第2扁平皿形容器Nで覆われる状態で収納されている。
更に、変成処理部5と選択酸化部6との間や、変成処理部5を構成する複数の容器Bの間には容器B(反応器)を加熱するための板状のヒータHが設けられている。
【0036】
(改質器の構成)
改質器Fは、図2に示すように、それぞれ正面視にて長方形状の第1扁平皿形容器K、第2扁平皿形容器Nと、正面視にて長方形状で、平板状の仕切り板Dとから構成され、第1扁平皿形容器K、第2扁平皿形容器Nの周縁に設けられた鍔部KE、鍔部NEの全周が、仕切り板Dを介して重ね合わされて固着されている。
【0037】
そして第1扁平皿形容器Kと仕切り板Dとの間に形成される第1空間KRに、改質材(図示なし)が収納されるとともに、第2扁平皿形容器Nと仕切り板Dとの間に形成される第2空間NRの特定辺Ft側に、当該特定辺Ftに沿ってバーナ44を延設して備えている。
尚、第1扁平皿形容器Kには、水蒸気改質部3と保温用通流部7とが、水蒸気改質部3が仕切り板D側となり、保温用通流部7が裏底部KB側となる状態で設けられている。そして、この実施形態においては、水蒸気改質部3が第1空間KRに相当する。
【0038】
図3に示すように、特定辺Ftと、当該特定辺Ftの端部から直交して延出される直交側辺Fs1、Fs2との交差部に関して、特定辺Ftと直交側辺Fs1、Fs2との間に傾斜辺Fb1、Fb2を備え、正面視にて、特定辺Ftと直交側辺Fs1、Fs2とを、角部の交差角が鈍角である角度α、βを成す複数の鈍角角部Fa1〜Fa4によって接続するように構成されている。
つまり、鈍角角部Fa1〜Fa4は、特定辺Ft(Fb3)と傾斜辺Fb1、Fb2との間の特定辺側角部Fa2、Fa3と、傾斜辺Fb1、Fb2と直交側辺Fs1、Fs2との間の側辺側角部Fa1、Fa4とを備えている。
そして、図3に示すように、特定辺側角部Fa2とFa3とは、等しい交差角βを成すように構成され、側辺側角部Fa1とFa4とは、等しい交差角αを成すように構成されている。ここで、図示する例では、α=βである。
【0039】
本発明の燃料改質装置Rにおいては、第1扁平皿形容器K、第2扁平皿形容器N及び仕切り板Dが、図1及び図3に示すように、鉛直上下方向に広がる縦姿勢で使用され、縦姿勢における下側に特定辺Ftが位置する状態となる。
そして、特定辺Ftの両端部位に、傾斜辺部Fb1、Fb2が設けられ、バーナ44は、図2及び図3に示すように、傾斜辺部Fb1、Fb2より上で、直交側辺Fs1、Fs2の傾斜辺側下部領域に設けられている。
【0040】
(改質器の使用態様)
燃料改質装置Rの使用において、改質器Fは、バーナ44の燃焼により第1空間KRを加熱するとともに、第1空間KRに供給される原料を改質材で改質する。
このとき、第1扁平皿形容器K及び第2扁平皿形容器Nは、バーナによる加熱に伴って、例えば650℃〜750℃程度にまで温度が上昇するため、その加熱に伴い変形することになる。具体的には、図4(a)に示すように、第1扁平皿形容器Kの裏底部KB及び第2扁平皿形容器Nの裏底部NBは、変形に伴って特定辺Ftに沿うX方向及び特定辺Ftに直交するY方向を含むX−Y面に沿って膨張する。
本発明は、特定辺Ftと、当該特定辺Ftの端部から直交して延出される直交側辺Fs1、Fs2との交差部に関して、特定辺Ftと直交側辺Fs1、Fs2との間に傾斜辺Fb1、Fb2を備え、正面視にて、特定辺Ftと直交側辺Fs1、Fs2とを、角部の交差角が鈍角である角度α、βを成す複数の鈍角角部Fa1〜Fa4によって接続するように構成することにより、バーナ44による加熱に伴う熱ひずみ変形であって裏底部KB、NBの面方向の膨張、すなわち、X−Y平面に沿う変位を分散することにより、改質装置Rの起動及び停止を繰り返した場合における疲労の蓄積を低減し、疲労破壊が発生するまでの寿命(疲労寿命)を長くすることが可能な改質器Fを提供することができる。
【0041】
(熱応力解析の結果)
以下に、上記複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けることの効果を確認すべく行った熱応力解析の結果を示す。この解析結果は、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けることの効果を示すものであるが、この解析にて得られた数値は、本発明を限定するものではない。
【0042】
熱応力解析は、改質器Fをその設置姿勢において上下に二分割し、さらに、バーナ44が設けられる特定辺側端部をさらに特定辺に直交する状態で二分割した解析対象部分Fiに対して行った(図4参照)。
すなわち、図4におけるFi1は、改質器Fの特定辺Ftにおける一方側の端部であり、同Fi2は、改質器Fの特定辺Ftに沿う方向における中央部を示すものである。
なお、解析は、常温(室温)状態から加熱状態(例えば650℃)への加熱、及び、加熱状態から常温状態への自然冷却を1サイクルとして、このサイクルをnサイクル(nは一定数)繰り返し行なった。そして、この場合における、解析終了後の歪蓄積量(無次元量)を求めた。
【0043】
図4(a)は、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けていない(すなわち、全ての角の角度が直角である)場合の解析対象部分Fiを示す図であり、図4(b)は、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けた場合の解析対象部分Fiを示す図である。
第1扁平皿形容器Kの裏底部KBにおいて、その平面視における特定辺側の一端側の角部Fi1、及び、特定辺の中央部分Fi2の歪蓄積量を比較した。
その結果、角部Fi1における歪蓄積量は、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けていない場合(図4(a))に対して、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けた場合(図4(b))は約85%(108k/126k:kは定数)に低下していることが分かる。
また、中央部分Fi2における歪蓄積量は、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けていない場合(図4(a))に対して、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けた場合(図4(b))は約11%(16k/146k:kは定数)に低下していることが分かる。
【0044】
このように、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けた場合は、複数の鈍角角部Fa1〜Fa4を設けていない場合と較べて明らかに歪蓄積量が低下していることが判明した。
【0045】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を説明する。
(1)上記実施形態においては、特定辺側角部Fa2、Fa3の交差角βと、側辺側角部Fa1、Fa4の交差角αとを、等しく構成したが、側辺側角部Fa1、Fa4及び特定辺側角部Fa2、Fa3の全てが、鈍角となっていればよい。
また、Fa1〜Fa4の角度を、夫々全て異ならせるように構成してもよい。
つまり、それらの角度の全てが鈍角である条件において、Fa1〜Fa4の角度は任意に選択可能である。
【0046】
(2)上記実施形態においては、特定辺Ftと直交側辺Fs1、Fs2との間に傾斜辺Fb1、Fb2を備えるように構成したが、傾斜辺Fb1、Fb2と直交側辺Fs1、Fs2との間にさらに傾斜辺を備えるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、改質装置の起動及び停止を繰り返した場合における応力変形による歪みの蓄積を低減し、疲労破壊に至るまでの疲労寿命を長くすることが可能な改質器を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
F 改質器
Ft(Fb3) 特定辺
Fd 下側
Fs1、Fs2 直交側辺
Fa1、Fa4 側辺側角部
Fa2、Fa3 特定辺側角部
Fb1、Fb2 傾斜辺
α、β 交差角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ正面視にて長方形状の第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器と、正面視にて長方形状で、平板状の仕切り板とから構成され、前記第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器の周縁に設けられた鍔部の全周が、前記仕切り板を介して重ね合わされて固着された構成で、
前記第1扁平皿形容器と前記仕切り板との間に形成される第1空間に、改質材が収納されるとともに、前記第2扁平皿形容器と前記仕切り板との間に形成される第2空間の特定辺側に、当該特定辺に沿ってバーナを延設して備えた改質器であって、
前記特定辺と、当該特定辺の端部から直交して延出される直交側辺との交差部に関して、
正面視にて、前記特定辺と前記直交側辺とを、角部の交差角が鈍角を成す、複数の鈍角角部で接続した改質器。
【請求項2】
前記特定辺と前記直交側辺との間に傾斜辺を備え、
前記複数の鈍角角部として、前記特定辺と傾斜辺との間の特定辺側角部と、前記傾斜辺と前記直交側辺との間の側辺側角部とを備え、
前記特定辺側角部の交差角と、前記側辺側角部の交差角が等しい請求項1記載の改質器。
【請求項3】
前記第1扁平皿形容器、第2扁平皿形容器及び仕切り板が、鉛直上下方向に広がる縦姿勢で使用され、
前記縦姿勢における下側に前記特定辺が位置されるとともに、
前記特定辺の両端部位に、前記傾斜辺を設けた請求項2記載の改質器。
【請求項4】
前記バーナを、前記傾斜辺より上で、前記直交側辺における前記傾斜辺側の下部領域に設けた請求項3記載の改質器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−148916(P2012−148916A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8149(P2011−8149)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】