説明

改質装置および方法ならびに燃料電池システム

【課題】 長期間安定運転可能な改質装置及び方法並びに燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 水素製造用原料と水蒸気を混合し、その混合物を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質装置において、水素製造用原料と水蒸気とを混合する混合手段;混合手段の下流に配された、水素製造用原料と水蒸気との混合を促進する混合促進手段;及び混合促進手段により混合が促進された混合物を改質触媒の存在下に改質する改質器を有する。水素製造用原料と水蒸気を混合し、その混合物を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質方法において、水素製造用原料と水蒸気とを混合する混合工程;
混合工程の後に、水素製造用原料と水蒸気との混合を促進する混合促進工程;及び混合促進工程で混合が促進された混合物を改質触媒の存在下に改質する改質工程を有する。上記改質装置を有する燃料電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は灯油等の水素製造用原料を水蒸気を用いて改質し、水素を含有する改質ガスを得る改質装置に関する。またこの改質装置を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に優しいエネルギー変換技術として燃料電池が注目されている。固体高分子形など、多くのタイプの燃料電池において、燃料電池の燃料極で実際に電極反応するのは水素である。しかし、水素よりも灯油等の水素製造用原料の方が供給体制や取り扱いにおいて優れる面があるため、灯油等の水素製造用原料を改質して水素を含むガスを製造し、これを燃料電池の燃料極に供給する燃料電池システムが開発されている。
【0003】
水素製造用原料を改質するために、水蒸気改質を行うことが知られている。例えば特許文献1および2に灯油等と水蒸気との混合物を改質触媒の下で改質して水素含有ガスを製造する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−175621号公報
【特許文献2】特開2002−201478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素製造用原料を水蒸気と混合し、適切な温度に加熱して改質触媒層に導入する場合、水素製造用原料と水蒸気との混合物が適切な温度になっていたとしても、この混合物が均一にガス状態で混合されていないと、コークが析出する場合がある。コークは改質触媒が機能するのを阻害し、また流路閉塞の原因にもなるため、コーク析出は改質装置の長期間運転を阻害する。
【0005】
例えば水素製造用原料を水蒸気と配管内で合流させるだけの混合では、混合物の不均一性に起因する改質触媒上でのコーク析出が見られる場合や、CO濃度やメタン濃度の変動が大きく、運転が不安定になる場合がある。特に、水素製造用原料が灯油等の炭化水素油である場合にこのような傾向が強い。
【0006】
改質装置で得た改質ガスを、必要に応じてさらにCO変成器などによって処理してCO濃度を低減した後、燃料電池の燃料として用いることが行われているが、コーク析出やガス組成の変動は、CO変成器などの処理装置や燃料電池にも影響を及ぼす可能性もある。
【0007】
本発明の目的は、上記のような現象を抑制し、長期間安定して運転を行うことのできる改質装置および改質方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の別の目的は、長期間安定して運転を行うことのできる燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、水素製造用原料と水蒸気を混合し、該混合物を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質装置において、
水素製造用原料と水蒸気とを混合する混合手段;
該混合手段の下流に配された、水素製造用原料と水蒸気との混合を促進する混合促進手段;および
該混合促進手段により混合が促進された混合物を改質触媒の存在下に改質する改質器
を有する改質装置が提供される。
【0010】
上記改質装置において、前記混合促進手段が、管状部材の内部に邪魔板が配された構造を有することが好ましい。
【0011】
上記改質装置において、前記混合手段の流路断面積が、混合促進手段の流路断面積の1.5倍以上3倍以下であることが好ましい。
【0012】
上記改質装置が、さらに、前記混合促進手段の下流に、かつ、改質触媒の上流に、水素製造用原料と水蒸気との混合物を加熱するための加熱手段を有することが好ましい。
【0013】
上記改質装置において、前記改質器が水蒸気改質に必要な熱を発生するための燃焼手段を有し、
前記加熱手段が、該燃焼手段の燃焼ガスが流れる流路内に配され、該燃焼ガスによって水素製造用原料と水蒸気との混合物を加熱する熱交換手段であることが好ましい。
【0014】
前記熱交換手段が、管がコイル状に巻かれた構造または複数の直管が並列に接続された構造を有することができる。
【0015】
本発明により、水素製造用原料と水蒸気を混合し、該混合物を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質方法において、
水素製造用原料と水蒸気とを混合する混合工程;
該混合工程の後に、水素製造用原料と水蒸気との混合を促進する混合促進工程;および
該混合促進工程で混合が促進された混合物を改質触媒の存在下に改質する改質工程
を有する改質方法が提供される。
【0016】
上記改質方法において、前記混合工程において混合する水素製造用原料の温度を300℃以下とし、水蒸気の温度を100℃以上とすることが好ましい。
【0017】
上記改質方法が、さらに、前記混合促進工程の後、改質工程の前に、水素製造用原料と水蒸気との混合物を熱交換によって加熱する加熱工程を有することが好ましい。
【0018】
前記加熱工程において、熱交換によって加熱される混合物の滞留時間を0.1秒以上とすることが好ましい。
【0019】
前記加熱工程において、熱交換によって加熱される混合物の線速度を10m/s以上とすることが好ましい。
【0020】
前記加熱工程において、前記混合物を300℃以上600℃以下に加熱することが好ましい。
【0021】
前記改質工程において水蒸気改質に必要な熱を発生させるために燃焼を行い、
前記熱交換に用いる授熱流体として300℃以上700℃以下の該燃焼の燃焼ガスを用いることが好ましい。
【0022】
本発明により、水素製造用原料と水蒸気を混合し、該混合物を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質装置と、該改質ガスを燃料とする燃料電池とを有する燃料電池システムにおいて、
上記の改質装置である燃料電池システムが提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、長期間安定して運転を行うことのできる改質装置および改質方法が提供される。
【0024】
また、本発明により、長期間安定して運転を行うことのできる燃料電池システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図面を用いて本発明を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0026】
図1に示すように、本発明の改質装置は、水素製造用原料と水蒸気とを混合する混合手段1001、混合手段の下流に配された、水素製造用原料と水蒸気との混合を促進する混合促進手段1002、および、混合促進手段により混合が促進された混合物を改質触媒の存在下に改質する改質器1003を有する。ここでは水素製造用原料として灯油を用いている。また、改質器として、水蒸気改質器を用いており、特には、改質に必要な熱を燃焼ガスによって供給する外熱式の水蒸気改質器を用いている。
【0027】
混合手段1001に導入する水素製造用原料は、液体、気体、気液混相のいずれであってもよい。混合手段に導入する水素製造用原料を気体とする場合には、必要に応じて、混合手段の上流に水素製造用原料を気化する気化器を設けることができる。混合手段に導入する水素製造用原料を液体とする場合には、気化器は設けず、水素製造用原料を常温で(特に加熱することなく)混合手段に導入することができる。あるいは、水素製造用原料が気化しない範囲で予熱したうえで混合手段に導入することもできる。上記気化器として、水素製造用原料を気化することのできる公知の気化器を適宜用いることができる。上記予熱のための予熱器として、水素製造用原料を予熱することのできる熱交換器などの公知の予熱器を適宜用いることができる。
【0028】
混合手段の構造としては、流体同士の混合を行いうる公知の混合技術を採用することができる。製造容易性の観点から、水蒸気の配管と水素製造用原料の配管とを接続しただけの構造を好ましく採用することができる。例えば、混合手段の構造を、図1に示すように、水蒸気を流す管(直管)の途中に、灯油を導入する管(直管)を接続した構造とすることができる。
【0029】
混合手段に導入する水素製造用原料の温度は、水素製造用原料の熱分解を良好に抑制することのできる温度以下とすることが好ましい。この観点から混合手段に導入する水素製造用原料の温度は350℃以下とすることが好ましく、300℃以下とすることがより好ましい。なお、特に冷却する意味はないので、この温度は常温以上でよい。
【0030】
混合手段に導入する水蒸気の温度は、圧力にもよるが、少なくとも大気圧において水の沸点以上とする観点から100℃以上とすることが好ましい。また、蒸気の熱により灯油の蒸発を促進させるため、より高い方が望ましい。実用的にはおよそ450℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。
【0031】
水素製造用原料と水蒸気との混合比は、改質に好適なS/C(水蒸気/炭素比)を考慮して適宜決めることができる。
【0032】
混合促進手段としては、気体同士の混合を促進することのできる公知の技術、また気体と液体との混合を促進することのできる公知の技術を利用できる。
【0033】
別途動力を必要とせず、また良好な混合促進効果が期待できるため、混合促進手段が管状部材の内部に邪魔板が配された構造を有することが好ましい。このような混合手段として、幾何学的に物質をより均一に混合するための邪魔板が円管等の管内に配された、スタティックミキサーを用いることができる。
【0034】
圧力変動を抑制する観点から、混合手段の流路断面積が、混合促進手段の流路断面積の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上がより好ましい。また、この比は、流体の線速度を維持する観点から3倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましい。例えば水素製造用原料が灯油の場合、蒸気との混合により一部の灯油が気化、およびスチームの一部凝縮により、流体の体積が変化するため、配管径を上のような範囲にすることにより、体積変化に伴う脈動を抑制できる。
【0035】
例えば、混合手段が、水蒸気が流れる管の途中に水素製造用原料が流れる管を接続した構造を有し、かつ、混合促進手段が、管内に邪魔板を備えた構造を有する場合、水蒸気が流れる管の流路断面積を、混合促進手段を形成する管の流路断面積の1.5倍以上3倍以下とすることが好ましく、2倍以上2.5倍以下とすることがより好ましい。なお流路断面積を考える場合、邪魔板は無視して考える。
【0036】
改質器としては、水蒸気改質反応を利用する公知の改質器を用いることができる。水蒸気改質反応に加えて部分酸化反応も利用する改質器を利用することもできる。
【0037】
水蒸気改質反応は激しい吸熱を伴う。改質反応を進ませるために、熱を供給するが、このために燃焼手段を備える外熱式の改質器が知られている。外熱式の改質器には、燃焼用燃料を空気などの酸素含有ガスで燃焼させるバーナーなどの燃焼手段を有し、燃焼手段で発生する燃焼熱によって、例えば改質触媒を充填した反応管を加熱する。
【0038】
図1にも、外熱式の改質器を示しており、バーナー1003aで燃焼を行い、改質触媒が充填された反応管1003bをその輻射熱によって加熱し、またその燃焼ガスを反応管1003bに接触させることで反応管を加熱する。燃焼用燃料としては、適宜公知の燃料を選択して用いればよいが、改質ガスの原料として用いる水素製造用原料を燃焼用燃料としても用いることが装置全体の簡素化のため好ましい。
【0039】
改質触媒に供給する段階では、水素製造用原料と水蒸気との混合物は気体とされる。従って、混合促進手段から抜き出される混合物が液体を含んでいる場合、この液体を予め気化しておく。また、改質触媒に供給する混合物の温度を、改質反応に好適な温度に予熱することが好ましい。
【0040】
この気化および/または予熱のために、水素製造用原料と水蒸気との混合物を加熱するための加熱手段を設けることができる。この加熱のために、上記燃焼ガスを利用することができる。加熱手段として、燃焼ガスを授熱流体とし、水素製造用原料と水蒸気との混合物を受熱流体とする熱交換手段を用いることができる。
【0041】
例えば、改質器内の燃焼ガスが流れる流路内に、管がコイル状に巻かれた構造、または複数の直管が並列に接続された構造を有する熱交換手段1004を配することができる。複数の直管が並列に接続された構造としては、中間部に熱収縮を考慮した撓みを有した直管の両端がそれぞれ入口ヘッダーおよび出口ヘッダーに取り付けられた構造が好ましい。
【0042】
この熱交換手段において、水素製造用原料と水蒸気とを均質に混合させる観点から、さらには水素製造用原料が灯油等の液体である場合にはその気化を促進させる観点から、熱交換によって加熱される混合物の滞留時間を0.1秒以上とすることが好ましく、0.2秒以上とすることがより好ましい。つまり灯油等の炭化水素油をスチームと混合し、均質に蒸発させるためには、その混合物が熱交換手段を通過する際の滞留時間を0.1秒以上にし、燃焼ガスとの熱交換を促進させることが好ましい。また、上記熱交換手段を通過する流体の線速度は10m/s以上であることが境膜係数を低下させ、熱交換を促進させるために好ましい。より好ましくは20m/s以上とする。
【0043】
前記熱交換手段入口の蒸気温度は、例えば水素製造用原料が灯油の場合にはその蒸発促進の観点から100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。
【0044】
該熱交換手段出口の混合物温度は改質触媒反応を促進させる観点から300℃以上が好ましく、450℃以上がより好ましい。また、熱分解によるコーク析出防止の観点から600℃以下とすることが好ましく、550℃以下がより好ましい。
【0045】
一方、熱交換に供する燃焼排ガスの温度は、例えば水素製造用原料が灯油の場合には灯油とスチームをより均質に気化混合させる観点から450℃以上が好ましく、550℃以上がより好ましい。また、システムの熱バランスの観点から700℃以下が好ましく、650℃以下がより好ましい。
【0046】
以上説明したように、混合促進手段を用いることにより、混合手段で混合された混合物が気体である場合にはその混合がより均一になり、この混合物が気液混相である場合でも、おそらくは液中に気泡状の気体が取り込まれた形で混合が促進される。その結果、改質触媒に混合物が供給される段階において、混合物の均一さが優れたものになり、前述のコーキング等が抑制され、長期安定運転が可能となる。
【0047】
一般的に、水素製造用原料が灯油などの炭化水素油である場合、コーキングが起きやすいなどの理由で長期安定運転が難しい傾向がある。また、気体と液体を混合する場合、気体同士を混合する場合に比べ、改質触媒に供給される段階における混合物を均一にすることがより難しい。本発明によればこのような場合であっても、改質触媒に供給される段階における混合物の均一性を良好にすることができ、より長期間安定した運転が可能となる。つまり、本発明の効果は、水素製造用原料が灯油などの炭化水素油である場合に、さらには混合手段に導入される炭化水素油が液体である場合に特に顕著である。
【0048】
〔水素製造用原料〕
水素製造の原料としては、水蒸気改質反応により水素を含む改質ガスを得ることのできる物質であれば使用できる。例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類など分子中に炭素と水素を有する化合物を用いることができる。また、25℃、0.101MPaで液体であり、分子中に炭素と水素を有する化合物を含み、水蒸気改質反応により水素を生成しうる有機化合物である炭化水素油を用いることができる。
【0049】
工業用あるいは民生用に安価に入手できる水素製造用原料の好ましい例として、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、メタン、都市ガス、LPG(液化石油ガス)を挙げることができ、また石油から得られるガソリン、ナフサ、灯油、軽油などの炭化水素油を挙げることができる。なかでも灯油は工業用としても民生用としても入手容易であり、その取り扱いも容易なため、好ましい。
【0050】
なお、改質触媒などの触媒被毒を抑制するために、必要に応じ、水素製造用原料中の硫黄分を低減する脱硫を行うことができる。そのために、水素製造用原料を予め脱硫したうえで混合手段に導入することができる。
【0051】
〔水素製造装置〕
本発明の改質装置は、燃料電池システムにおいて好適に用いることができる。改質器で得られた改質ガスを、他の反応器を経ずに燃料電池の燃料として利用することも可能である。しかし、例えば燃料電池が固体高分子形である場合、通例、改質ガス中のCO濃度を低減するためにCO変成器や選択酸化器などを設ける。以下、このような場合を例にして、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明において、改質器に加えてCO変成器および選択酸化器を有する装置を水素製造装置と称する。
【0052】
ここで述べる水素製造装置は、熱効率を向上させ、占有体積を減らし、長寿命かつ運転条件の範囲を拡大できるという効果を有する水素製造装置である。
【0053】
具体的には、この水素製造装置は、炭化水素油を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質管と、改質管を加熱するバーナーとを有する改質器;水蒸気改質に必要な水蒸気を発生するスチーム発生器;改質ガス中のCO濃度をシフト反応により低減するCO変成器;およびCO変成器でCO濃度が低減された改質ガス中のCO濃度を選択酸化反応によりさらに低減する選択酸化器を有する水素製造装置であって、
鉛直円柱状の領域である第1領域と、第1領域の外周側に位置し第1領域と同心の環状領域である第2領域と、第2領域の外周側に位置し第1領域と同心の環状領域である第3領域と、第3領域の外周側に位置し第1領域と同心の環状領域である第4領域とを有し、
第1領域に前記バーナーを有し、
第2領域に前記改質管を有し、
第3領域に前記スチーム発生器を有し、
第4領域に前記CO変成器および選択酸化器を有する。かつ、この水素製造装置は、スチーム発生器で発生させた水蒸気と、炭化水素油とを混合する混合手段と、混合手段で得られた混合物の混合を促進する混合促進手段を有する。
【0054】
この水素製造装置において、前記第1領域、第2領域および第3領域が、一つの密閉可能な容器内に形成され、前記第4領域は該容器とは別の密閉可能な容器内に形成された形態がある。
【0055】
また、前記第1領域、第2領域、第3領域および第4領域が一つの密閉可能な容器内に形成された形態がある。
【0056】
この水素製造装置が、前記バーナーの燃焼ガスにより前記改質管、スチーム発生器、CO変成器および選択酸化器をこの順に加熱するための燃焼ガス流路を有することが好ましい。
【0057】
さらに、前記第3領域に、かつ前記燃焼ガス流路内に、炭化水素油を脱硫する脱硫器を有することができる。
【0058】
あるいは、さらに、前記第1領域、第2領域、第3領域および第4領域のいずれも形成されない密閉可能な容器に脱硫剤が充填された脱硫器を有し、
前記改質管、スチーム発生器、CO変成器および選択酸化器を加熱した燃焼ガスにより、脱硫器を加熱するための流路を有することができる。
【0059】
前記バーナーが鉛直下向きに配され、かつ燃焼筒を有することが好ましい。
【0060】
前記第4領域において、CO変成器と選択酸化器とが、鉛直方向に並べられた形態がある。
【0061】
あるいは、前記第4領域において、CO変成器と選択酸化器とが、周方向に並べられた形態がある。
【0062】
前記スチーム発生器で発生した水蒸気により、前記CO変成器および選択酸化器を冷却する冷却ラインを有することが好ましい。
【0063】
前記スチーム発生器に、500kPa〜1000kPaの圧力の水が供給されることが好ましい。
【0064】
上記水素製造装置と、この水素製造装置で製造された水素含有ガスを燃料とする燃料電池とを有する燃料電池システムは、効率の高い、コンパクトな燃料電池システムである。
【0065】
この燃料電池システムにおいて、前記第2領域に燃焼触媒が配され、かつ、
燃料電池のアノードオフガスを燃焼触媒に導くラインを有する形態がある。
【0066】
あるいは、前記バーナーが燃料電池のアノードオフガスと炭化水素油とを燃焼可能な混焼バーナーであり、燃料電池のアノードオフガスを該バーナーに導くラインを有する形態がある。
【0067】
〔脱硫〕
硫黄は水蒸気改質触媒を不活性化させる作用があるため、水蒸気改質反応器に供給される炭化水素油中の硫黄濃度はなるべく低いことが好ましい。好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは20質量ppm以下である。このため、必要であれば水蒸気改質の前に炭化水素油を脱硫することができる。水素製造装置に供給する前に予め脱硫された炭化水素油を用いても良いし、水素製造装置内に脱硫器を設けても良い。脱硫器を設ける場合、脱硫器に供給する炭化水素油は、脱硫器において例えば上記硫黄濃度まで脱硫できるものを適宜使用することができる。
【0068】
脱硫方法としては、システムの簡素化、制御方法の簡便さ、および触媒の前処理の容易さの観点から、収着型脱硫触媒の存在下硫黄分を収着させる方法が好ましい。収着型脱硫触媒は吸着および/または吸収によって硫黄分を除去するもので、例えば、硫黄の吸着容量の観点からZn/ZnO、Cu/CuO、Ni/NiOなどを含むものが好ましい。
【0069】
収着型脱硫触媒を用いる場合、脱硫触媒を良好に機能させる観点から、脱硫温度は100〜350℃が好ましい。
【0070】
また、脱硫触媒が、収着脱硫のみならず炭化水素油の分解反応を促進するものであってもよい。この場合脱硫器が、炭化水素油を一部分解するプレリフォーマーを兼ねる形態となる。
【0071】
〔改質管〕
水蒸気改質反応を行う改質管では、炭化水素油と水が反応して一酸化炭素と水素が得られる。この反応は大きな吸熱を伴うため、外部からの加熱が必要である。このため、水素製造装置にはバーナーが設けられ、燃焼熱により、改質管を外部から加熱する。
【0072】
例えば、改質管内に改質触媒を充填して形成した改質触媒層に、炭化水素油とスチームを供給し、改質管の外部から改質触媒層を加熱することができる。
【0073】
水蒸気改質反応は、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVIII族金属を代表例とする金属触媒の存在下反応を行うことができる。
【0074】
反応温度は450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。
【0075】
改質反応の圧力は、適宜設定できるが、好ましくは大気圧〜20MPa、より好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜1MPaの範囲である。
【0076】
反応系に導入するスチームの量は、炭化水素油に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。この時の液空間速度(LHSV)は炭化水素燃料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h-1、より好ましくは0.1〜10h-1、さらに好ましくは0.2〜5h-1の範囲で設定される。
【0077】
改質管の形態としては、熱バランスの観点から、二重管型反応器が好ましい。二重管型反応器においては、二重管の外環部に改質触媒が充填され、内管には触媒は充填されない。改質の原料は外環部に導入され、触媒層を通過する際に水蒸気改質反応を起こし、導入された側とは反対の端部で折り返し、内管を通過して原料が導入される側の端部から排出される。
【0078】
〔バーナー〕
バーナーの燃焼のために供給される燃料としては、可燃物を適宜用いることができる。例えば、水素製造の原料として用いる炭化水素油を燃焼用に用いることが、水素製造装置あるいはその付帯設備の簡素化の観点から好ましい。また、水素製造装置を燃料電池システムに用いる場合には、燃料電池のアノード(燃料極)から排出されるアノードオフガスを用いることが、エネルギー効率の観点から好ましい。
【0079】
バーナーの燃焼最高温度は、改質管材料の耐熱温度の観点から800〜1000℃とすることが好ましい。
【0080】
〔CO変成器〕
改質管で発生する改質ガスは水素の他に一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水蒸気を含む。水素濃度を高めるため、また一酸化炭素は触媒毒となることもあるので一酸化炭素濃度を低減するため、一酸化炭素を水と反応させ水素と二酸化炭素に転換するのがCO変成器である。Fe−Crの混合酸化物、Zn−Cuの混合酸化物、白金、ルテニウム、イリジウムなど貴金属を含有する触媒を用い、一酸化炭素含有量(ドライベースのモル%)を好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下までに落とすことができる。
【0081】
シフト反応を二段階で行うこともでき、この場合CO変成器を二つに分ける。一方は相対的に高い定格運転温度を持つ高温CO変成器であり、他方は相対的に低い定格運転温度を持つ低温CO変成器である。高温CO変成は300〜500℃を好適な使用温度とする高温CO変成触媒を用いて行うことができ、低温CO変成は100〜300℃を好適な使用温度とする低温CO変成触媒を用いて行うことができる。改質ガスの流れに対し、上流から、高温CO変成器、低温CO変成器の順に設置する。
【0082】
CO変成はガス空間速度GHSV(15℃、0.101MPa換算)800〜3000h-1で行うことが好ましい。
【0083】
〔高温CO変成器〕
高温CO変成器には、300〜500℃でシフト反応活性を有する触媒である高温CO変成触媒を用いることができる。
【0084】
高温CO変成触媒としては、300〜500℃におけるシフト反応活性の観点から、硫黄の他に、鉄、クロムおよび銅から選ばれる少なくとも一種の金属を含むものが好ましい。例えば、高温変成触媒の酸化物基準での質量組成としては、硫黄を含み、かつ鉄を60〜95%、クロムを1〜30%、銅を0.1〜10%含むものが好ましい。形状は球状,円柱状、塊状、リング状のものが好ましく、成型法はどのような方法でも構わないが、錠剤成型および押し出し成型が好ましい。
【0085】
高温CO変成工程において、GHSVが200〜10000h-1であることが好ましい(GHSVは15℃、0.101MPa換算のガス空間速度を表す。以下同様。)。200h-1以上とすることでガス処理能力および経済性を良好にすることができ、10000h-1以下であればCO濃度低減能に優れる。
【0086】
〔低温CO変成器〕
低温CO変成器には、100〜300℃でシフト反応活性を有する触媒である低温CO変成触媒を用いることができる。
【0087】
低温変成触媒としては、シフト反応活性の観点から、銅、亜鉛、ニッケル、鉄、マンガン、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびレニウムから選ばれる少なくとも一種の金属を含むものが好ましい。含有する総金属量は酸化物基準で5〜90質量%が好ましく,形状は球状,円柱状、塊状、リング状のものが好ましく、成型法はどのような方法でも構わないが、錠剤成型および押し出し成型が好ましい。触媒調製法は特に限定しないが、共沈法、ゲル混練法、含浸法が好ましい。
【0088】
低温CO変成器に供給するガスは、高温CO変成触媒への負担が大きくなるのを防止して劣化を防止する観点からCO濃度(ドライベースのモル%)が2%以上であることが好ましく、低温CO変成触媒の負担が大きくなるのを防止して触媒劣化を防止する観点からCO濃度(ドライベースのモル%)が20%以下であることが好ましい。従って、高温CO変成器において、この範囲までCO濃度を低減することが好ましい。
【0089】
低温変CO変成器に供給されるガスについては、GHSVが200〜50000h-1であることが好ましい。200h-1以上とすることでガス処理能力および経済性を良好にすることができ、50000h-1以下であればCO濃度低減能に優れる。
【0090】
〔選択酸化器〕
例えば固体高分子形燃料電池システムでは、さらに一酸化炭素濃度を低減させることが好ましく、このためにCO変成器の出口ガスを選択酸化器で処理することができる。選択酸化器ではCOが選択的に酸化されて二酸化炭素となる。
【0091】
この反応には、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金などを含有する触媒を用い、残存する一酸化炭素モル数に対し好ましくは0.5〜10倍モル、より好ましくは0.7〜5倍モル、さらに好ましくは1〜3倍モルの酸素を添加することで一酸化炭素を選択的に二酸化炭素に転換することにより一酸化炭素濃度を好ましくは10ppm(ドライベースのモル基準)以下に低減させる。この場合、一酸化炭素の酸化と同時に共存する水素と反応させメタンを生成させることで一酸化炭素濃度の低減を図ることもできる。酸素源としては例えば空気を用いることができる。
【0092】
選択酸化は、100〜200℃を好適な使用温度とする選択酸化触媒を用いて行うことができる。供給する酸素とCOのモル比(O2/CO比)は1.0〜2.0が好ましく、またGHSV(15℃、0.101MPa換算)で7000〜10000h-1が好ましい。
【0093】
〔水/蒸気系〕
水蒸気改質に必要な水蒸気を供給するために、水素製造装置は水蒸発器(スチーム発生器)を備える。また、安定運転の観点から、水蒸発器は発生した水蒸気を過熱するスーパーヒート部を有することが好ましい。
【0094】
水素製造装置に供給する水の温度については、特に加熱することなく常温の水を用いることができ、あるいは例えば35〜60℃とすることができる。その圧力は適宜設定できるが、熱回収の促進による熱効率向上の観点から500kPa〜1000kPaが好ましい。
【0095】
発生させる水蒸気は例えば圧力に応じた飽和水蒸気でもよいが、これをスーパーヒートして例えば250〜450℃とすることができる。
【0096】
〔配置〕
図2には、水素製造装置の概略を模式的に示す。水素製造装置は4つの領域を有する。第1領域1は鉛直に配置される円柱状の領域であり、第2領域2はその外周に配される環状の領域であり、第3領域3はさらにその外周に配される環状の領域であり、第4領域4はさらにその外周に配される環状の領域である。
【0097】
第1領域にはバーナーが、第2領域には改質管が、第3領域にはスチーム発生器が、第4領域にはCO変成器および選択酸化器が設けられる。
【0098】
第1から第4の全ての領域が一つの密閉可能な容器内に形成されていてもよい。この場合、容器は円筒状の容器を用いることができる。この形態では、全領域を一つの容器に収め、その外側を保温材で覆うこと及び/または容器外壁を真空断熱構造とすることなどして、容器全体を保温することができ、熱効率の観点および断熱材スペース低減の観点から好ましい。真空断熱構造は、容器壁を内壁と外壁の二重構造とし、内壁と外壁の間を真空とするものである。
【0099】
また、全ての領域が一つの容器内にある必要はなく、例えば、第1から第3までの領域が一つの密閉可能な容器内に形成され、第4の領域がこの容器とは独立した密閉可能な容器に形成されていることもできる。この場合、前者の容器は円筒状とし、後者の容器は環状とし、両容器を間隔をあけて設置し、両容器を繋ぐ流路を設けることができる。両容器ともそれぞれ外壁を真空断熱構造とすることが好ましい。この形態は、例えば第4領域にあるCO変成器および選択酸化器の過熱を避けるため、第3領域と第4領域の間で直接熱伝導しない方が良い場合に好適に採用される。このとき、両容器をまとめて一体的に保温することが熱効率の観点および断熱材スペース低減の観点から好ましい。
【0100】
〔水素製造装置の第1の形態〕
上記水素製造装置の一形態につき、図3に垂直断面を模式的に、また図4に模式的水平断面を示す。なお以降の各図は説明のための図であって、必ずしも厳密に装置を表すものではない。この形態では、第1から第3領域までが一つの円筒状容器101内に隣接して形成され、第4領域は独立した環状の容器102に形成され、第3領域と第4領域とを接続する接続部103を有する。全ての領域の中心軸は一致する。
【0101】
第1領域1にはバーナー11が容器101の上面を貫通して下向きに設けられ、燃焼時には火炎12が形成される。バーナーが下向きであると、液だれを効果的に防止できるため好ましい。また燃焼筒13を有し、燃焼筒により第1領域と第2領域とが区画される。燃焼筒は容器底面に達するが、下端近傍に開口14を有し、バーナーの燃焼ガスは開口を通って隣接する第2領域2へと流れる。バーナーは全ての領域の中心軸に沿う位置に設けられている。
【0102】
燃焼筒には、例えばセラミック製の円筒を用いることができ、下部に開口部を有する。燃焼筒を用いることで燃焼ガスにより均一に第2領域の改質管を加熱できる。開口は、燃焼ガスが改質管を均等に加熱するように適宜設けることができるが、このために例えば燃焼筒長の下部30%程度から下端までの間に複数の開口を設けることができる。また、第1領域の底面には、断熱材15を設けることができる。
【0103】
この水素製造装置を燃料電池システムにおいて用いる場合、このバーナーは、炭化水素油と燃料電池のアノードオフガスの両者を燃焼可能な混焼バーナーであることができる。このようにすると、アノードオフガスの有効利用を図り、炭化水素油の消費量を削減でき、熱効率の観点から好ましい。
【0104】
第2領域には下端が閉じられた二重管式の改質管21が設けられ、改質管は燃焼ガスによって加熱される。一方、改質管の外環部には原料ガスマニホールド22から炭化水素油と水蒸気が混合された原料ガスが供給され、外環部に設けられた改質触媒層21aにて改質反応が起こり改質ガスに転換され、改質ガスは改質管の内管部を上昇し、連通部24を経て改質ガスマニホールド36に至る。隔壁23は第2領域と第3領域との間を区画する。隔壁は断熱材で形成することができる。
【0105】
なお、容器101の第1領域および第2領域の底面には断熱材110を設けることが、熱効率の観点から好ましい。
【0106】
また、改質管出口改質ガス流路に、オリフィスを取り付け、複数本の改質管の圧力損失を均一化し、安定性を図ることもできる。例えば、オリフィスを各改質管出口部(内管の出口部)につけることができる。オリフィス径はオリフィス部の差圧が触媒充填した改質管差圧の好ましくは50%〜300%程度、より好ましくは100%〜150%程度となる径とする。オリフィスを取り付けることにより、複数の改質管への原料ガスの分布が均一となり、改質管温度のばらつきが少なくなるため、改質管温度制御が容易で、均質な改質ガスを得ることができる。
【0107】
改質管は、バーナーを取り囲むように、全領域の中心軸を中心とする円周に沿って複数設けられる。その本数は第二領域の大きさ及び原料ガスの流量分散性を考慮すると6〜12本が好ましい。ここでは9本の改質管が設けられている。また、改質管の外表面にフィンを設けることもできる。これにより燃焼ガスの熱が改質管内部の触媒に、より伝わりやすくなり、好ましい。
【0108】
第3領域には水蒸発器31および原料ガス予熱器32が設けられる。第2領域から供給される燃焼ガスは、原料ガス予熱器および水蒸気発生器にこの順に接し、これらを加熱し、燃焼ガス排出口33から容器101外に排出される。一方、水供給管34から供給された水が水蒸発器でスチームとされ、このスチームはスチーム供給管35を経て、後述するように第4領域で選択酸化器およびCO変成器を冷却するとともに自身は加熱され、混合器51で原料と混合され、さらに混合促進手段であるスタティックミキサー120を経た上で原料ガス予熱器32に供給される。原料ガス予熱器に供給される混合物が液体を含む場合には、原料ガス予熱器が気化器を兼ねる。原料ガス予熱器で加熱された原料ガス(気化した炭化水素油と水蒸気との混合ガス)は、原料ガスマニホールド22に供給され、改質に供される。なお図4では、説明のために第3領域を二つに分けて改質ガスマニホールド36と水蒸発器31が水平方向に並んでいるかのごとくに示してあるが、実際は図3に示されるようにこれらは上下に配置されている。
【0109】
水蒸発器、原料ガス予熱器は、単管が第3領域の周方向にコイル状に巻かれた形態を有する。
【0110】
さらに、熱効率向上のために、第3領域にバーナー燃焼用の空気を予熱する空気予熱器を設けることもできる。たとえば、第3領域の改質ガス流れに対して最も下流に、第3領域の周方向にコイル状に巻かれた単管を設け、ここに空気を流して改質ガスによって加熱した上でバーナーに供給することができる。
【0111】
第4領域の内部は垂直な隔壁によって周方向に区画され、各区画に必要に応じて触媒が充填されてなる高温CO変成器41、改質ガス冷却器42、低温CO変成器43、第1の改質ガス空気混合器44、第1の選択酸化器45、第2の改質ガス空気混合器46および第2の選択酸化器47が周方向に並んでいる。接続部103を通して改質ガスマニホールド36から供給された改質ガスは、まず高温CO変成触媒が充填された高温CO変成器41内の高温CO変成触媒層41aにてシフト反応によりそのCO濃度が低減される。このとき高温CO変成器内を貫通する冷却管48を流れるスチームにより、高温CO変成器は冷却される。高温CO変成器を通過した改質ガスは、改質ガス冷却器42(触媒は充填されない)にて冷却管を流れるスチームにより、低温CO変成に好適な温度まで冷却され、低温CO変成触媒が充填された低温CO変成器43に供給される。ここで改質ガスは、シフト反応によりそのCO濃度がさらに低減される。このとき低温CO変成器内を貫通する冷却管を流れるスチームにより、低温CO変成器は冷却される。低温CO変成器を出た改質ガスは、第1の改質ガス空気混合器44(触媒は充填されない)にて、CO選択酸化のための空気と混合される。空気と混合された改質ガスは、選択酸化触媒が充填された第1の選択酸化器45にて、COの酸化により、そのCO濃度がさらに低減される。第1の選択酸化器を出た改質ガスは、さらに第2の改質ガス空気混合器46(触媒は充填されない)にて、空気と混合され、選択酸化触媒が充填された第2の選択酸化器47においてCOの酸化によりCO濃度が低減され、低CO濃度の水素含有ガスとして水素含有ガス取り出し口50から取り出される。なお、高温CO変成器41と改質ガス冷却器42の間を結ぶ改質ガス流路など、上記機器41〜47間をそれぞれ結ぶ改質ガス流路は図示を省略してある。
【0112】
改質ガスと空気とをより良く混合する観点から、第1および第2の改質ガス空気混合器内には、それぞれ邪魔板が配され、いわゆるスタティックミキサーが形成されることが好ましい。第1および第2の選択酸化器は、それぞれその内部を貫通する冷却管を流れるスチームにより冷却される。なお、改質ガス空気混合器内には冷却管は設けなくてよい。
【0113】
CO選択酸化を一段で行うことも可能であるが、上に示したように2段階でCO選択酸化を行うと、例えばCO濃度(ドライベースのモル基準)を1%から10ppmに容易に低減できるため好ましい。例えば第1のCO選択酸化によりCO濃度(ドライベースのモル基準)を1%から5000ppmまで低減し、第2のCO選択酸化により10ppmまで低減することができる。
【0114】
一方、水蒸発器31で発生したスチームはスチーム供給管35からスチームマニホールド49aに供給され、高温CO変成器41、改質ガス冷却器42、低温CO変成器43、第1の選択酸化器45、および第2の選択酸化器47内に配される冷却管を通過する際に改質ガスを冷却するとともに自身は加熱され、スチームマニホールド49bで集合し、混合器51で脱硫された炭化水素油と混合される。冷却管はいわゆるシェルアンドチューブ型の熱交換器のように、鉛直方向に設けられた複数の管であり、図4では一部のみ示してある。
【0115】
炭化水素油の脱硫は、容器101、102とは独立した不図示の脱硫器にて行われる。この脱硫器は燃焼ガス排出口33から排出される燃焼ガスによって加熱される。この脱硫器の構造は、例えば、二重管式構造で外側が脱硫触媒層であり、原料が下部から上部に流れ、脱硫反応温度100℃〜350℃となるように、内管部を流れる燃焼ガスによって温度調節することができる。
【0116】
〔水素製造装置の第2の形態〕
図5に、上記水素製造装置の別の形態を示す。この形態は、改質器部分である第2領域に燃焼触媒層25を有し、またこの燃焼触媒に燃料電池のアノードオフガスを供給するアノードオフガス供給管26を有する。バーナーは炭化水素油を燃焼させるだけでよく、混焼バーナーである必要はない。酸素が残留するバーナーの燃焼ガスと、アノードオフガスが燃焼触媒によって燃焼し、その燃焼ガスが第2領域に供給される。燃焼触媒層はバーナーの燃焼ガスが全て燃焼触媒層を通るように設けることができる。例えば、改質管21の周りに、バーナーの燃焼ガス流路断面全域に設けることができる。
【0117】
この形態は、改質管温度分布の均質化及び排ガス性状の改善の点において好ましい。
【0118】
燃焼触媒は公知の燃焼触媒から適宜選ぶことができるが、例えばセラミックスや金属等のハニカム担体に、シリカ、アルミナ等の活性担体が担持され、かつその上にPt、Pd等の貴金属或いは複合酸化物が担持された構成の触媒を用いることができる。
【0119】
上記以外は、第1の形態と同様である。
【0120】
第1の形態および第2の形態を含め上述の水素製造装置においては、水素製造に必要な改質器、CO変成器、選択酸化器などの反応器、水蒸発器、予熱器などの熱交換器類を一体的に構成することができ、また、それぞれの触媒の使用温度、空間速度等の反応条件が適正となるような装置構造及び機器配置等にすることで、触媒寿命により規定される寿命の長期化や運転条件範囲の拡大が達成できる。従って、この水素製造装置は、コンパクトで熱効率に優れ、長寿命かつ運転条件の範囲が広い水素製造装置である。また、この水素製造装置は、炭化水素油と水蒸気との混合物の混合が促進されるため、コーク析出やガス組成の変動が抑制され、長期間安定して運転可能である。
【0121】
〔燃料電池システム〕
上述の水素製造装置と、この水素製造装置から得られる水素含有ガスを燃料極供給ガスとして用いる燃料電池とを備える燃料電池システムには、カソードに空気等の酸素含有ガスを供給する手段、燃料電池から電気を取り出すための手段、計装制御機器など、従来から燃料電池システムに備わる機器等として公知の機器等を適宜設けることができる。
【0122】
燃料電池のアノードオフガスは、水素製造装置が混焼バーナーを有する場合(例えば前述の第1の形態)、バーナーで燃焼させることができる。水素製造装置が燃焼触媒を有する場合(例えば前述の第2の形態)、燃焼触媒にて燃焼させることができる。このため、燃料電池システムは、アノードオフガスを混焼バーナーに導くラインや、アノードオフガスを燃焼触媒に導くラインを有することができる。このラインは配管やバルブ等により適宜形成できる。
【0123】
このような構成により、例えば、燃料電池システムの起動時には炭化水素油を燃焼させるが、定格運転時にはアノードオフガスのみを燃焼させ、燃焼用の炭化水素油の消費を抑えることができる。
【0124】
上記燃料電池システムは、高効率かつコンパクト、長寿命かつ運転条件の範囲が広い燃料電池システムであり、また、コーク析出やガス組成の変動が抑制され、長期間安定して運転可能である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の改質装置は、水素製造に好適に用いることができ、燃料電池システムに好適に用いることができる。また本発明の燃料電池システムは、発電システムとして、あるいはコージェネレーションシステムとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の改質装置の一形態を示す模式図である。
【図2】水素製造装置を示す概念図である。
【図3】上記水素製造装置の第1の形態につき、垂直方向断面を模式的に示す説明図である。
【図4】上記水素製造装置の第1の形態につき、水平垂直方向断面を模式的に示す説明図である。
【図5】上記水素製造装置の第2の形態につき、垂直方向断面を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0127】
1 第1領域
2 第2領域
3 第3領域
4 第4領域
11 バーナー
12 火炎
13 燃焼筒
14 開口
15 断熱材
21 改質管
21a 改質触媒層
22 原料ガスマニホールド
23 隔壁
24 連通部
25 燃焼触媒層
26 アノードオフガス供給管
31 水蒸発器
32 原料ガス予熱器
33 燃焼ガス排出口
34 水供給管
35 スチーム供給管
36 改質ガスマニホールド
41 高温CO変成器
41a 高温CO変成触媒層
42 改質ガス冷却器
43 低温CO変成器
44 第1の改質ガス空気混合器
45 第1の選択酸化器
46 第2の改質ガス空気混合器
47 第2の選択酸化器
48 冷却管
49a、b スチームマニホールド
50 水素含有ガス取り出し口
51 混合器
101 第1から第3領域までを収める円筒状容器
102 第4領域を独立して収める環状容器
103 接続部
110 断熱材
120 混合促進手段
1001 混合手段
1002 混合促進手段
1003 改質器
1003a バーナー
1003b 反応管
1004 熱交換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造用原料と水蒸気を混合し、該混合物を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質装置において、
水素製造用原料と水蒸気とを混合する混合手段;
該混合手段の下流に配された、水素製造用原料と水蒸気との混合を促進する混合促進手段;および
該混合促進手段により混合が促進された混合物を改質触媒の存在下に改質する改質器
を有する改質装置。
【請求項2】
前記混合促進手段が、管状部材の内部に邪魔板が配された構造を有する請求項1記載の改質装置。
【請求項3】
前記混合手段の流路断面積が、混合促進手段の流路断面積の1.5倍以上3倍以下である請求項1または2記載の改質装置。
【請求項4】
さらに、前記混合促進手段の下流に、かつ、改質触媒の上流に、水素製造用原料と水蒸気との混合物を加熱するための加熱手段を有する請求項1〜3の何れか一項記載の改質装置。
【請求項5】
前記改質器が水蒸気改質に必要な熱を発生するための燃焼手段を有し、
前記加熱手段が、該燃焼手段の燃焼ガスが流れる流路内に配され、該燃焼ガスによって水素製造用原料と水蒸気との混合物を加熱する熱交換手段である請求項4記載の改質装置。
【請求項6】
前記熱交換手段が、管がコイル状に巻かれた構造または複数の直管が並列に接続された構造を有する請求項5記載の改質装置。
【請求項7】
水素製造用原料と水蒸気を混合し、該混合物を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質方法において、
水素製造用原料と水蒸気とを混合する混合工程;
該混合工程の後に、水素製造用原料と水蒸気との混合を促進する混合促進工程;および
該混合促進工程で混合が促進された混合物を改質触媒の存在下に改質する改質工程
を有する改質方法。
【請求項8】
前記混合工程において混合する水素製造用原料の温度を300℃以下とし、水蒸気の温度を100℃以上とする請求項7記載の改質方法。
【請求項9】
さらに、前記混合促進工程の後、改質工程の前に、水素製造用原料と水蒸気との混合物を熱交換によって加熱する加熱工程を有する請求項7または8記載の改質方法。
【請求項10】
前記加熱工程において、熱交換によって加熱される混合物の滞留時間を0.1秒以上とする請求項9記載の改質方法。
【請求項11】
前記加熱工程において、熱交換によって加熱される混合物の線速度を10m/s以上とする請求項9または10記載の改質方法。
【請求項12】
前記加熱工程において、前記混合物を300℃以上600℃以下に加熱する請求項9〜11の何れか一項記載の改質方法。
【請求項13】
前記改質工程において水蒸気改質に必要な熱を発生させるために燃焼を行い、
前記熱交換に用いる授熱流体として300℃以上700℃以下の該燃焼の燃焼ガスを用いる請求項9〜12の何れか一項記載の改質方法。
【請求項14】
水素製造用原料と水蒸気を混合し、該混合物を水蒸気改質して水素を含有する改質ガスを得る改質装置と、該改質ガスを燃料とする燃料電池とを有する燃料電池システムにおいて、
該改質装置が請求項1〜6の何れか一項記載の改質装置である燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−76850(P2006−76850A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264209(P2004−264209)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】