説明

放射性ヨウ素化ベンズアミド誘導体の薬学的組成物およびそれを作製する方法

式Iの放射性ヨウ素化N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-4-(4-フルオロベンズアミド)-5-ヨード-2-メトキシベンズアミドを含む薬学的組成物を提供する。該薬学的組成物が、貯蔵と黒色腫を有する患者への投与との両方に関して安定な製剤を提供する。また前駆体化合物をヨウ素化する新規の方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2008年9月5日出願の米国特許仮出願第61/094,838号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、放射性ヨウ素化ベンズアミド誘導体N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-4-(4-フルオロベンズアミド)-5-ヨード-2-メトキシベンズアミドおよび薬学的に許容される賦形剤を含有する薬学的組成物に関する。本発明はまた、該ヨウ素化誘導体および該薬学的組成物を作製する方法、ならびに本発明の薬学的組成物を使用して黒色腫腫瘍を有する患者を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
技術状況
米国では現在、年間62,000件の黒色腫の新規症例が診断されている。黒色腫は、がんのなかでも発生率の伸びが最も大きく、早期のおよび広範な転移が理由で特に脅威となる。悪性黒色腫を除去する手術は、直径3ミリメートルを超える原発腫瘍を患者が有する大部分の症例においてしばしば有効ではない。悪性黒色腫に罹患したステージIV患者は平均余命が6ヶ月である。
【0004】
悪性黒色腫の75〜90%は、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基を有するインドール単位を含有する生体高分子であるメラニンを含有する。有機アミン、金属および多環式芳香族炭化水素はメラニンに結合可能である。放射標識ベンズアミド誘導体がインビトロとインビボとの両方でメラニンに結合しかつ黒色腫細胞中での高度な取り込みおよび保持を示すことも実証された。例えば国際公開公報第2005/089815号(特許公報1)を参照。特に、化合物N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-4-(4-フルオロベンズアミド)-5-ヨード-2-メトキシベンズアミドが、メラニンに結合する特に望ましい能力を有し、造影剤および治療薬として有用であることがわかった。'815公報(特許公報1)を参照のこと。
【0005】
いくつかの理由により、放射標識薬物製品を製剤化する際に様々な困難が生じる。第一に、放射性ヨウ素化過程中に生成物の激しい分解があり得る。第二に、薬物製品は、低溶解度が理由でしばしば製剤化が困難なことがある。第三に、放射標識薬物製品は、標的となる疾患を処置するために好適である十分に高い放射化学的収率を示さないことがある。さらに、最終放射性生成物は、輸送に必要な濃度では安定でないことがあり、遊離ヨウ化物などの分解生成物は、生命を危うくする重大な細胞毒性作用を、甲状腺、内分泌臓器および消化器系を含む正常な臓器に対して引き起こすことがある。
【0006】
各種123I-ベンズアミドが転移性黒色腫の画像診断に用いられている。立証された迅速な腫瘍洗い出し(washout)が、治療目的でそれらの131I標識対応物を使用する可能性をなくした。いくつかの例としては以下が挙げられる。

【0007】
B16黒色腫担持C57BL/J1マウスモデルにおける123I-BZAの迅速な腫瘍洗い出し(%ID/g)の例はMoreau MF et al. Nucl Med Biol. 1995,22: 737-47(非特許公報1)に開示されている。結果を表Aに示す。
【0008】
(表A)123I-BZAの腫瘍洗い出し(%ID/g)

【0009】
したがって、黒色腫を処置するための治療薬を含有する実質的に純粋かつ安定な薬物製品の製剤が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開公報第2005/089815号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Moreau MF et al. Nucl Med Biol. 1995,22: 737-47
【発明の概要】
【0012】
本発明は、黒色腫腫瘍を処置するために有用な薬学的組成物に関する。本発明の薬学的組成物は診断薬としても、すなわち腫瘍を画像診断する目的でも有用であり得る。
【0013】
一態様では、式Iの放射性ヨウ素化N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-4-(4-フルオロベンズアミド)-5-ヨード-2-メトキシベンズアミドを含む薬学的組成物が提供される。

【0014】
また、少なくとも1つの可溶化剤および少なくとも1つの保存料が本組成物中で提供される。本発明の組成物は約4.0〜約4.8のpHを有する。別の態様では、pHは約4.4である。貯蔵中に本組成物が最適な安定性および純度を維持するようにpHを選択する。一態様では、式Iの化合物は、本組成物中に約1.25mCi/ミリリットルの濃度で存在する。別の態様では、本組成物はポリエチレングリコール 約6%(w/v); エタノール 約2%(v/v); ゲンチジン酸ナトリウム 約3%(w/v); およびアスコルビン酸 約6%(w/v)を含む。別の態様では、アスコルビン酸は、アスコルビン酸ナトリウム 約3.7%およびアスコルビン酸 2.7%である。別の態様では、本組成物はN-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-4-(4-フルオロベンズアミド)-5-ヨード-2-メトキシベンズアミドをさらに含む。
【0015】
また、Rがフルオロ、クロロまたはメトキシである式IIIの化合物を調製するための方法が提供される。

本方法は、
式IIIの化合物を得るために、反応条件下で式II:

の化合物と、少なくとも約1当量のトリス(2,2,2-トリフルオロアセチル)タリウムならびに体積1:1のトリフルオロ酢酸および酢酸を含む溶液とを接触させる段階
を含む。
【0016】
本発明の別の局面では、Rがフルオロ、クロロまたはメトキシである式IAの化合物を調製する方法が提供される。

本方法は、
式III:

の化合物を得るために、第1の反応条件下で式II:

の化合物と、少なくとも約1当量のトリス(2,2,2-トリフルオロアセチル)タリウムならびに体積比約1:1のトリフルオロ酢酸および酢酸を含む溶液とを接触させる段階; ならびに
式Iの化合物を得るために、第2の反応条件下で式IIIの化合物と、少なくとも約0.5〜約0.7当量の131ヨウ化ナトリウムを含む溶液とを接触させる段階
を含む。
【0017】
一態様では、式IIの化合物が、酢酸を含む溶液中に存在する。別の態様(または直前に言及した同一の態様)では、トリス(2,2,2-トリフルオロアセチル)タリウムが、トリフルオロ酢酸をさらに含む溶液中に存在する。一態様では、131ヨウ化ナトリウムが、水酸化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムをさらに含む溶液中にある。
【0018】
一態様では、反応条件は摂氏約25度で約15分の反応時間を含む。別の態様では、第1の反応条件は摂氏約25度で約10分の反応時間を含む。さらに別の態様では、第2の反応条件は摂氏約25度で約5分の反応時間を含む。
【0019】
本発明の方法はまた、式I(またはIA)の化合物を単離する段階を含む。一態様では、該化合物は高速液体クロマトグラフィーにより単離される。
【0020】
また、本発明の薬学的組成物を作製するための方法が本明細書で提供される。本組成物を作製するための段階は、本明細書および参照により本明細書に組み入れられる添付の付録の全体を通じて見られる。本発明の方法により作製される場合の本発明の組成物は、フリーザーに1週間貯蔵した場合に約70〜約90%の放射化学的収率および約95%またはそれを超える放射化学的純度を有する。
【0021】
一態様では、式Iの化合物は、製造後少なくとも約1日または2日は約104mCi/mgの比放射能を有する。
【0022】
別の態様では、本発明は、薬学的に有効な量の本明細書に記載の薬学的組成物を投与することによって、黒色腫に罹患した患者を処置する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】注入後120時間の黒色腫患者における131I-Cmpd Bの全体画像を図示する。最初の2つのパネルは1つの輝度設定での左側面図および右側面図を示し、一方、第3および第4のパネルは別の輝度設定での左側面図および右側面図を示す。
【図2】131I-Cmpd Bより形成される副生成物のHPLCクロマトグラムおよび反応スキームを図示する。副生成物の構造をLC/MSにより確認した。
【図3】B16F10担持マウスにおける131I-Cmpd Bおよび131I-Cmpd BDの体内分布を図示する。グラフは、副生成物131I-Cmpd BDの低いメラニン標的化能力を示す。
【図4】B16F10担癌マウスにおける131I-Cmpd A、131I-Cmpd B、131I-Cmpd Cおよび131I-Cmpd Dの体内分布を図示する。グラフは、望ましい分布特性が4つすべての試験化合物で観察されることを示す。
【図5】131I-Cmpd Aの高い安定性を図示する。上側2つのHPLCクロマトグラムは、250mCiのNa131Iを用いるCmpd A-pの放射性ヨウ素化により95%超(具体的には96.5%および96.2%)のRCPを有する131I-Cmpd Aが得られることを示す。下側のHPLCクロマトグラムは、25mCiのNa131Iを用いるCmpd B-pの放射性ヨウ素化により約65%のRCPを有する131I-Cmpd Bが得られることを示す。
【図6】SK-MEL-3腫瘍成長に対する様々な線量レベルでの131I-Cmpd A (68mCi/m2)の効果を図示する。グラフは、生理食塩水、ダカルバジン×3、131I-Cmpd A×1、131I-Cmpd A×2および131I-Cmpd A×3を用いる腫瘍変化に対する時間のプロットを示す。
【図7】マウスにおけるSK-MEL-3腫瘍成長に対する様々な線量レベルでの131I-Cmpd A (68mCi/m2)の効果を図示する。グラフは、生理食塩水、ダカルバジン×3、131I-Cmpd A×1、131I-Cmpd A×2および131I-Cmpd A×3で処置した場合の動物の生存率パーセントに対する経過時間のプロットを示す(腫瘍体積が1500mm3超であった場合に動物を安楽死させたことに留意されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本組成物および方法を説明する前に、本発明が特定の記載されている化合物、組成物、方法論、プロトコールおよび試薬に限定されず、これらが変動し得るということを理解すべきである。本明細書で使用する用語法が、本発明の特定の態様を記載するように意図されており、添付の特許請求の範囲および実施例に開示されている本発明の範囲を限定するようには決して意図されていないということも理解すべきである。
【0025】
化合物Aを「Cmpd A」とも呼ぶということに留意されたい。化合物Bを「Cmpd B」または「BA-52」とも呼ぶ。化合物Bの分解生成物を「Cmpd BD」または「BA-52D」とも呼ぶ。化合物Cを「Cmpd C」または「MIP-1143」とも呼ぶ。化合物Dを「Cmpd D」または「MIP-1144」とも呼ぶ。
【0026】
定義
本明細書で使用するある用語は、以下の定義された意味を有し得る。
【0027】
本明細書で使用する「含む(comprising)」という用語は、本組成物および方法が列挙された要素を含むが他を排除しないことを意味する。組成物および方法を定義するために使用する場合の「から本質的になる」とは、意図される目的に使用する場合の組み合わせに本質的に影響がある他の要素を排除することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、微量の混入物または不活性担体を排除しない。「からなる」とは、薬学的組成物を調製するための他の成分および実質的方法段階の微量を超える要素を排除することを意味するものとする。これらの移行語の各々により定義される態様は、本技術の範囲内にある。
【0028】
本組成物の詳細を記載する上で、本明細書で示される数字範囲は、本組成物において機能的な結果を与える量とする。したがってこの範囲は、範囲におけるある種の柔軟性、すなわち示される数字範囲の上限および下限の±10%またはそれ未満を示す「約」という用語と共に一般に導入される。
【0029】
「可溶化剤」という用語は、式Iの化合物を可溶化するために使用される物質を意味する。一態様では、可溶化剤はポリエチレングリコールまたは「PEG」である。本明細書で使用する「ポリエチレングリコール(PEG)」という用語は、式-(OCH2CH2)nOHのポリエーテルを意味し、式中、nは組成に応じて大きく変動し得る。例えば、PEGは約100〜約1000g/molの分子量を有し得る。本発明のいくつかの態様では、PEGは、約400g/molの分子量を有し、本明細書においてPEG400と呼ばれる。
【0030】
本発明の組成物中の別の好適な可溶化剤は、式R-OHのアルコールであり、式中、Rは直鎖状または分岐状のC1〜C4ヒドロカルビル基である。例としてはメタノール、エタノールおよびプロパノールが挙げられるがそれに限定されない。一態様では、可溶化剤はエタノールである。
【0031】
いくつかの態様では、複数の可溶化剤が存在する。例えば、一態様では、エタノールとPEGとの両方が本組成物中に存在する。
【0032】
「保存料」という用語は、使用条件または貯蔵条件下で腐敗、変色もしくは他の形態の損傷から保護するか、それを防止するかまたはそれを遅延させる物質を意味する。したがって、保存料は酸化防止剤、キレート化剤、抗菌剤などのうち1つまたは複数であり得る。好適な保存料としてはゲンチジン酸ナトリウム、メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、アスコルビン酸、イミド尿素(imidurea)、チメロサール、没食子酸プロピル、BHA、BHT、クエン酸、エデト酸二ナトリウムなどが挙げられる。一態様では、ゲンチジン酸ナトリウムが本組成物中で使用される。
【0033】
本発明の一態様では、保存料は、本組成物のpHを約4.0〜約4.8という望ましい範囲に調整する緩衝剤としても作用し得る。いくつかの態様では、pHは約4.1〜約4.7である。一態様では、pHは約4.4である。この目的に好適な保存料はアスコルビン酸である。例えば、アスコルビン酸ナトリウム約3.7%およびアスコルビン酸2.7%を使用して、約4.4という所望のpHを実現することができる。
【0034】
一態様では、少なくとも2つの保存料が存在する。例えば、一態様では、ゲンチジン酸ナトリウム、アスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムが存在する。
【0035】
「化合物A」という用語は、N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-4-(4-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-5-ヨード-2-メトキシベンズアミドを意味する。
【0036】
「化合物A前駆体」または「化合物A-p」という用語は、N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-4-(4-フルオロベンゾイルアミノ)-2-メトキシベンズアミドを意味する。
【0037】
「化合物B」という用語は、ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボン酸[4-(2-ジエチルアミノ-エチルカルバモイル)-2-ヨード-5-メトキシフェニル]アミドを意味する。
【0038】
「化合物B前駆体」または「化合物B-p」という用語は、ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボン酸[4-(2-ジエチルアミノ-エチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル]アミドを意味する。
【0039】
「化合物C」という用語は、4-(4-クロロベンゾイルアミノ)-N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-5-ヨード-2-メトキシベンズアミドを意味する。
【0040】
「化合物C前駆体」または「化合物C-p」という用語は、4-(4-クロロベンゾイルアミノ)-N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-2-メトキシベンズアミドを意味する。
【0041】
「化合物D」という用語は、N-(2-ジエチルアミノ-エチル)-5-ヨード-2-メトキシ-4-(4-メトキシベンゾイルアミノ)ベンズアミドを意味する。
【0042】
「化合物D前駆体」または「化合物D-p」という用語は、N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-メトキシ-4-(4-メトキシベンゾイルアミノ)-ベンズアミドを意味する。
【0043】
化合物A〜Dの構造は以下に示す通りである。

【0044】
薬学的組成物
化合物A、B、CおよびDをすべて試験し、これらがインビトロとインビボとの両方でメラニン標的化能力を有することがわかった。結果は、4つすべての試験化合物が同様のメラニン標的化能力、および正常な組織/臓器からの速いクリアランスを有することを実証した。それらのうち、化合物Aが著しく高い水溶解度および安定性を示した。
【0045】
実施例に示すように、化合物Bの製剤化試験は放射性ヨウ素化中の生成物の分解を立証した。分解不純物の割合は、適用される放射能の線量に比例して増加した。例えば、適用される放射能の42%は、23mCiのNa131Iを用いる化合物Bの製剤中の分解副生成物に転化した。分解不純物の構造はLC/MSにより同定され、化合物Bのジオキソール部分をジヒドロキシにする酸化の副生成物であることがわかった。さらに、生物試験の結果は、分解生成物のメラニン結合能力が化合物Bのそれよりも著しく低いことを示した。
【0046】
化合物A製剤化および生成方法は、本明細書に記載のように最適化される。一局面では、放射性ヨウ素化法を評価し、Tl((TFA)3/TFAヨウ素化化学反応の修正に基づいて最適化した。公知のヨウ素化法に対する酢酸の付加により、本明細書に記載の方法を線量漸増試験に使用することができる。例えば、不純物プロファイルを著しく変化させることなく、線量レベル250mCiの化合物A製剤中で、約90%の放射化学的収率(RCY)が得られる。別の局面では、賦形剤の構成成分を検討し、それが化合物A薬物製品の溶解度および安定性を向上させることがわかった。例えば、賦形剤中へのPEG400 6% (w/v)の添加により、化合物Aの溶解度および回収率が著しく改善される。さらに別の局面では、化合物A粗反応液中に存在する残留前駆体ならびに任意の可能な化学不純物および放射性不純物からの化合物A薬物精製について、HPLC精製法を評価した。
【0047】
要約すれば、全体を通じて実証される通り、(1) 化合物Aの賦形剤製剤は他の誘導体よりも高い化学安定性を示し; (2) 担癌動物モデルにおける優れた溶解度、安定性、メラニン標的化能力および望ましい分布特性に基づいて化合物Aが好ましく; (3) 化合物Aの強固な生成および精製プロセスが提供され; (4) 化合物Aの安定性および有効期間を増加させる製剤化強化が提供され; (5) 化合物A薬物製品の貯蔵条件および不純物プロファイルも提供される。結論としては、化合物A薬物製品(TOCで1.25mCi/mL)を、凍結状態で1週間の貯蔵期間(TOE)にわたって、95%超のRCP(遊離I-131 5%未満)を伴って、70〜95%の全RCYで生成することができる。
【0048】
式Iの化合物および式Iを含む薬学的組成物を作製するための方法
本明細書で提供される方法を使用して化合物A、CおよびDを放射性ヨウ素化することができるとさらに想定される。当技術分野で教示される既成の方法は、トリフルオロ酢酸(TFA)およびトリス(2,2,2-トリフルオロアセチル)タリウムを使用する。トリフルオロ酢酸(TFA)溶液中の前駆体と生成物との両方の分解が、TFAの激しい腐食性が理由で経時的に生じ得る。したがって、ヨウ素化の前に前駆体を酢酸に溶解させることで安定性および/または収率が改善されると想定される。さらに、TFAの低い融点および沸点が理由で、それは特に少量を使用する場合に容易に蒸発することがある。この蒸発は標識の再現性に潜在的に影響を与える。しかし、酢酸を添加することによってこの問題が克服されると想定される。酢酸の使用は、治療目的で薬物をヨウ素化する場合などでの大線量ヨウ素化過程においていっそう有益であると考えられる。典型的には治療薬に関して、放射標識薬物がバッチ当たり約3キュリーで生成され、自動化システムがこの目的でしばしば使用される。溶液移動技術をしばしば使用する自動化システムにおいて、TFA蒸発は問題となる。酢酸を添加することによって、分解レベルが増加することなくTl複合体形成用の反応体積が増加すると想定される。
【0049】
したがって、本発明の一態様では、式Iの化合物を作製する方法が提供される。

【0050】
スキームAに従って該化合物を合成することができる。
スキームA

【0051】
反応の詳細を示す前に、すべての略語を実施例のセクションに見ることができるということに留意すべきである。
【0052】
化合物A前駆体(化合物A-p、酢酸に5mg/mLで溶解)80マイクログラムを、Tl(TFA)3 (TFAに10mg/mLで溶解)と、モル比約1〜1.2で混合した。溶液を酢酸50%/TFA 50%(v/v)中で最終体積300μLにした。室温で10分の混合物のインキュベーションの後、0.1N NaOH/0.02M Na2SO4約50μL中に50〜100mCiのI-131を含有する2mL Na131I源バイアル中に溶液を移動させた。反応液を混合し、室温でさらに5分間インキュベートした。
【0053】
粗反応液を賦形剤1.5mL(PEG400 6%(w/v)、エタノール2%(v/v)、アスコルビン酸6%(w/v)およびゲンチジン酸ナトリウム3%(w/v)、pH4.4)に希釈し、生成物をC18カラムを用いてRP-HPLCにより精製した。水(緩衝液B)25〜60%の10分にわたる勾配を用い、流量2mL/分で、水中アスコルビン酸2.5%(w/v)/酢酸0.5%(v/v)(緩衝液A)、および緩衝液B中アスコルビン酸2.5%(w/v)/エタノール85%(v/v)を溶媒として使用して、化合物を溶出させた。生成物ピークを30mLバイアル中に収集し、収集した溶液中の揮発性有機物質を、真空/窒素ガス流下70℃で30分間バイアルを加熱することで除去した。
【0054】
さらなる化合物A (TOCで患者線量5mCi当たり44μgの量まで)をバルク製剤化容器に添加した。化合物A製剤を賦形剤中に、TOCで比放射能約104mCi/mgにて、最終放射能濃度1.25mCi/mLとして希釈した。最終生成物溶液を、滅菌0.2μm Millex GVシリンジフィルターを通過させることで滅菌した後、滅菌およびパイロジェンフリー2mLバイアル中に無菌的に分配した。TOEで、生成物の標的RCPは90%以上であり、遊離I-131は5%以下である。
【0055】
直前に示した合成は化合物CおよびDのヨウ素化に容易に適応可能である。
【0056】
131I-化合物Bはまた、以下のスキームBに示す類似の様式で合成される。
スキームB

【0057】
黒色腫を処置するための方法
先に言及したように、メラニンに特異的に結合する放射性ヨウ素化ベンズアミド誘導体は、黒色腫診断用の分子標的造影剤としての使用におけるそれらの潜在的可能性を示したが、一方、腫瘍の速い洗い出しは、治療目的でのそれらの使用に影響を与えた。しかし、著しく高度な腫瘍取り込みおよび長期の保持が、131I-化合物A、N-(2-ジエチルアミノ-エチル)-4-(4-フッ素-ベンズアミド)-5-ヨード-2-メトキシ-ベンズアミドについて立証されている。131I-化合物Aは、担癌動物モデルにおける、他の試験化合物に比べての、安定性、溶解度、メラニン標的能力の優位性、および望ましい分布特性を実証した。さらに、ヒト黒色腫マウス異種移植モデルにおける完全寛解(CR)が、131I-化合物A処置(68mCi/m2)について観察された。
【0058】
したがって、本発明の一態様は、黒色腫に罹患した患者を処置する方法であって、薬学的に有効な量の本発明の組成物を該患者に投与する段階を含む方法に関する。
【0059】
「処置」または「処置すること」という用語は、対象における疾患もしくは障害の任意の処置を意味し、これは疾患もしくは障害を予防するかまたはそれに対して保護すること、すなわち臨床的症状を発生させないこと; 疾患もしくは障害を阻害すること、すなわち臨床的症状の発生を停止させるかまたは抑制すること; および/あるいは疾患もしくは障害を軽減すること、すなわち臨床的症状の退行を引き起こすことを含む。
【0060】
本発明の組成物は、好適な経路で、例えば経口、静脈内、非経口、経皮、局所、直腸または鼻腔内で哺乳動物に投与することができる。一態様では、本組成物を静脈内投与する。
【0061】
哺乳動物としては、ヒトおよび他の霊長類、イヌおよびネコなどのペットまたは伴侶動物、ラット、マウスおよびウサギなどの実験動物、ならびにウマ、ブタ、ヒツジおよびウシなどの家畜が例えば挙げられる。一態様では、哺乳動物はヒトである。
【0062】
腫瘍または新生物としては、細胞の増殖が制御されずかつ進行性である、組織細胞の成長が挙げられる。一部のそのような成長は良性であるが、他の成長は「悪性」と称され、生物の死を導くことがある。悪性新生物または「がん」は、攻撃的な細胞増殖を示すことに加えて、周囲組織に浸潤しかつ転移することがあるという点で、良性成長と区別される。さらに、悪性新生物は、互いに対するおよび周囲組織に対する、分化のより大きい損失(より大きい「脱分化」)および組織化のより大きい損失を示すことを特徴とする。この特性を「退形成」と呼ぶ。
【0063】
典型的には、患者に投与される本組成物は、先に記載の薬学的組成物の形態である。これらの組成物は、慣行的滅菌技術で滅菌することができるか、または滅菌濾過することができる。得られる水溶液は、そのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥させることができ、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌水性担体と組み合わせる。ある種の前述の賦形剤、担体または安定剤の使用により薬学的塩が形成されるということが理解される。
【0064】
本発明の化合物および/または組成物の治療投与量は、例えば、処置を行う特定の用途、本化合物の投与様式、患者の健康および状態、ならびに担当臨床医の判断に従って変動する。例えば、経口投与では、用量は、典型的には1日体重1キログラム当たり約5μg〜約50mg、好ましくは1日体重1キログラム当たり約1mg〜約10mgの範囲である。あるいは、静脈内投与では、用量は、典型的には体重1キログラム当たり約5μg〜約50mg、好ましくは体重1キログラム当たり約500μg〜約5000μgの範囲である。想定される代替投与経路としては鼻腔内、経皮、吸入、皮下および筋肉内が挙げられるがそれに限定されない。有効量は、インビトロまたは動物モデルの試験系より導出される用量反応曲線より外挿することができる。
【0065】
患者に投与する量は、何を投与するか、投与、治療の目的、患者の状況、投与様式などに応じて変動する。治療用途では、既に疾患に罹患した患者に、疾患およびその合併症の進行または症状を治癒するかまたは少なくとも部分的に停止させるために十分な量で、組成物を投与する。これを達成するために十分な量を「治療有効量」と定義する。この用途に有効な量は、処置される疾患状態、ならびに、疾患、障害または状態の重症度、患者の年齢、体重および全身状態などの要因に応じた主治医の判断に依存する。
【0066】
一般に、本発明の組成物は、同様の有用性を提供する薬剤について許容される投与形式のいずれかにより、治療有効量で投与される。そのような化合物の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に対する致死量)およびED50(集団の50%における治療有効量)を決定するための、細胞培養液または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒作用と治療効果との間の用量比を治療指数とし、それはLD50/ED50比で表すことができる。大きい治療指数を示す化合物が好ましい。
【0067】
細胞培養アッセイ法および動物試験より得られるデータを、ヒトにおいて使用するある範囲の投与量を製剤化することに使用することができる。そのような化合物の投与量は、ほとんどまたは全く毒性を伴わないED50を含む、ある循環濃度の範囲内にあることが好ましい。使用する剤形および用いる投与経路に応じて、投与量はこの範囲内で変動し得る。本発明の方法で使用する任意の化合物および/または組成物では、治療有効量を最初に細胞培養アッセイ法より推定することができる。細胞培養液中で決定されるIC50(活性の最大半減阻害を実現する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を実現するために、動物モデルにおいて用量を製剤化することができる。ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するためにそのような情報を使用することができる。例えば高速液体クロマトグラフィーによって血漿中レベルを測定することができる。
【0068】
B16黒色腫担持マウスにおける123I-化合物Bの腫瘍取り込みおよび保持(%ID/g)は表Bに示した通りであった。それらの試験はEisenhut et al., J. Med. Chem. 2000, 43(21), 3913-22に開示されている方法を使用して行った。
【0069】
(表B)123I-化合物Bの取り込みおよび保持

【実施例】
【0070】
以下の実施例を参照して本発明をさらに理解するが、それは本発明の単なる例示であるように意図されている。本発明の範囲は例示された態様に限定されず、それは本発明の単一の局面の説明のみとして意図されている。機能的に同等な任意の方法は本発明の範囲内である。本明細書に記載の修正に加えて、本発明の各種の修正が、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような修正は添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0071】
特に明記しない限り、すべての温度は摂氏温度(℃)である。また、これらの実施例および他の箇所において、略語は以下の意味を有する。


【0072】
実施例1: ヨウ素化手順中の化合物Bの不安定性
目的: 当技術分野において記載の化合物Bヨウ素化法の再現性を試験すること。中間体形成およびヨウ素化のためのインキュベーション時間をさらに評価した。
【0073】
実施例1-A: 小規模のNa131I(約1mCi)を用いる化合物Bヨウ素化
(表1−1)実験条件

【0074】
結果: Tl(TFA)3/TFAヨウ素化化学反応における化合物B標識は、約2mCiの放射能線量レベルで成功裏に行われた。90%超のRCPと1%未満の遊離131Iとが標識について得られた。
【0075】
実施例1-B: 化合物B標識の収率に対する中間体形成のインキュベーション時間(2分、5分、10分、20分および30分)の効果
(表1−2)実験条件

【0076】
結果: 中間体の形成は室温で2分以内のインキュベーションで完了することができた。長期のインキュベーションは、強酸化剤としてのTl(TFA)3の特質が理由で分解生成物を増加させると考えられた。データを表1-3に列挙する。
【0077】
(表1−3)化合物Bの収率に対する室温でのタリウム化のインキュベーション時間の効果

【0078】
実施例1-C: 化合物Bの収率に対するヨウ素化のインキュベーション時間(1分、2分、5分および10分で変動)の効果
(表1−4)実験条件

【0079】
結果: 化合物Bのヨウ素化は室温で1分以内のインキュベーションで完了することができた。長期のインキュベーション時間はRCYに著しく影響を与えることがないと考えられた。データを表1-5に列挙する。
【0080】
(表1−5)化合物B標識の収率に対する室温でのヨウ素化時間の効果

【0081】
実施例1-D: 化合物B標識において適用される放射能線量によって増加した分解
(表1−6)実験条件

【0082】
結果: 化合物B標識において適用される131Iの放射能線量によって分解不純物の割合が増加したというデータ。2.2mCiまたは23mCiのNa131Iで標識した化合物Bについての分解生成物の比較を表1-7に列挙する。
【0083】
(表1−7)化合物B標識において適用される放射能線量によって増加した分解副生成物

【0084】
実施例2で論じる前駆体(化合物B-p)と最終生成物(化合物B)との両方のジオキソラン部分をジヒドロキシル形にした分解生成物として、分解不純物を同定した。
【0085】
上記実験に基づいて、Tl(TFA)3/TFA化学反応を経由して化合物Bを形成することができた。Tl(TFA)2-化合物B複合体の中間体を室温で5分以内のインキュベーションにより完成させることができ、かつインキュベーション時間の増加により、Tl(TFA)3の酸化の性質を理由として、薬物製品の分解が増加すると考えられた。化合物B標識において、Tl(TFA)2からの131Iの求核置換は、室温で5分以内のインキュベーションにより完了することができた。化合物Bの低い化学安定性が立証され、化合物B標識において適用される放射能線量によって分解レベルは著しく増加した。
【0086】
実施例2: LC/MSによる化合物Bの分解副生成物の同定
これらの実施例の目的は、LC/MSにより観察される化合物Bの主要な分解副生成物を同定することにある。
【0087】
(表2−1)実験条件

【0088】
結果: 分解不純物をLC/MSにより同定した。データを表2-2に列挙する。結果は、ジオキソラン部分をジヒドロキシル形にする分解が前駆体(化合物B-p)と最終生成物(化合物B)との両方について生じたことを実証した。
【0089】
(表2−2)LC/MSによる化合物B-pと化合物Bとの両方の分解不純物

【0090】
実施例3: 化合物Bの安定性を向上させる試み
この実施例の目的は、分解を減少させ、結果としてRCYを向上させるための、化合物B放射性ヨウ素化における代替ヨウ素化法を使用する可能性を検討することにあった。
【0091】
実施例3-A: KIO3ヨウ素化法においてヨウ素化された127I-化合物B
(表3−1)実験条件

【0092】
実施例3-B: Tl(TFA)3/BF3.Et2.Oヨウ素化法においてヨウ素化された127I-化合物B
(表3−2)実験条件

【0093】
結果: RCYは低く、全RCYは約10%であった。さらに、このヨウ素化法では、新たな形態の不純物が観察された。
【0094】
実施例3-C: 化合物Bのスズ前駆体を使用することによって標識された化合物B
(表3−3)実験条件

【0095】
結果: 室温で10分以内のインキュベーションで反応を完了することができた。しかし、この記載の分析用HPLC条件下では、保持時間6.9分で不純物ピーク(13.9%)が存在した。試験したいずれの代替ヨウ素化法も、化合物B放射性ヨウ素化に使用する上で、Tl(TFA)3/TFA法と比べて著しい利点を示さなかった。
【0096】
実施例4: 保護剤を使用して化合物Bの分解を減少させる試み
目的: 保護剤であるジオキソランおよびトリオキサンをTl(TFA)3/TFAヨウ素化溶液中に添加して、分解副生成物の形成を減少させることによって化合物Bの収率を向上させること。
【0097】
実施例4-A: 化合物B形成に対するジオキソランの保護効果
(表4−1)実験条件

【0098】
結果: 反応液中へのジオキソランの添加は、対照(ジオキソランを添加せず)と比べて、化合物Bの分解を著しく減少させることができた。データを表4-2に列挙する。この結果は、化合物Bの分解が、酸化剤としてのTl(TFA)3の性質による、薬物製品のジオキソラン部分をジヒドロキシルにする酸化が理由であるということを間接的に確認した。
【0099】
(表4−2)ジオキソランを添加することによって2.2mCiまたは23mCiのNa131Iで標識される化合物Bの収率が著しく改善する

【0100】
実施例4-B: 化合物B形成に対するトリオキサンの保護効果
(表4−3)実験条件

【0101】
結果: Tl(TFA)3/TFAヨウ素化反応液中へのトリオキサンの添加もまた、化合物Bの収率を増加させ、分解を減少させることができた。Tl(TFA)3/TFAヨウ素化反応液中へのジオキソランまたはトリオキサンのいずれかの添加は、化合物Bの分解を著しく減少させ、結果としてRCYを向上させることができた。この結果は、化合物Bの分解が、酸化剤としてのTl(TFA)3の性質による、薬物製品のジオキソラン部分をジヒドロキシルにする酸化が理由であるということを間接的に確認した。ジオキソラン20μLの添加は23mCi化合物B標識において分解を42.8%から11.6%に減少させることができたが、保護効率は、治療量の化合物Bの放射性ヨウ素化において使用するには十分に高くない場合があった。
【0102】
実施例5: 異なるバッチの前駆体(化合物B-p)の使用によりヨウ素化した化合物Bの安定性の比較
目的: 化合物Bのヨウ素化中の分解不純物の発生の確認を、異なるベンダーが製造した化合物B-pの2つの異なるバッチ(Cambridge majorおよびUniversity of Heidelberg、それぞれカタログ番号140-0124および140-0114)を使用することによって行った。
【0103】
(表5−1)実験条件

【0104】
結果: 化合物B前駆体の2つの異なるバッチにおいて標識された化合物Bについて、RCY、および同定された分解不純物の割合に有意な差はなかった。比較のデータを表5-2に列挙する。
【0105】
(表5−2)化合物B-pの2つの異なるバッチを使用することによって(0.9mCiのNa131Iで)標識された化合物Bにおいて観察された分解不純物

【0106】
実施例6: 131I標識における化合物C、化合物Dおよび化合物Aの安定性の比較
目的: 131I標識収率および安定性を、(化合物C、化合物Dおよび化合物A)について並列で、化合物B(ジオキソランの添加有りまたは無し)と共に比較した。
【0107】
実施例6-A: 化合物C、化合物D、化合物Aおよび化合物Bの131I標識
(表6−1)実験条件

【0108】
結果: Tl(TFA)3/TFAヨウ素化法を、131I-化合物C、131I-化合物Dおよび化合物Aについて使用することができた。化合物Bとは異なり、2.5mCiの放射能線量レベルでは、標識(131I-化合物C、131I-化合物Dまたは化合物A)中に、分解不純物はほとんど生じなかった。比較のデータを表6-2に列挙する。
【0109】
(表6−2)Tl(TFA)3/TFAヨウ素化化学反応における化合物C、化合物Dおよび化合物Aの131I標識において分解は観察されなかった

*ジオキソラン10μLで保護
【0110】
実施例6-B: 標識後のおよび放射線分解保護緩衝液を添加することによって保護された、化合物Aと化合物Bとの間の安定性比較
(表6−3)実験条件

*保護溶液: アスコルビン酸 10%、ゲンチジン酸ナトリウム 5.6%、PEG400 6%、pH = 3.4
【0111】
結果: 標識後室温で3日間の貯蔵期間中のかつ放射線分解保護溶液中で希釈した化合物Bと化合物Aとの間に安定性の有意な差はなかった。比較のデータを表6-4に列挙する。
【0112】
(表6−4)室温で3日間の貯蔵期間にわたる化合物Bと化合物Aとの間の安定性比較(試料は標識後に放射線分解保護緩衝液を用いて最終放射能濃度約11mCi/mLに希釈した)

【0113】
Tl(TFA)3/TFA法を化合物C、化合物Dおよび化合物Aの131I-標識に使用することができた。化合物Bとは異なり、131I-化合物C、131I-化合物Dおよび131I-化合物Aは安定しており、放射線ヨウ素化中に分解はほとんど生じなかった。
【0114】
標識後のかつその後放射線分解保護溶液中で希釈した化合物Bと化合物Aとの間には、安定性の差はなかった(化合物Bの分解は、Tl(TFA)3などの酸化剤の存在による放射線ヨウ素化中にのみ現れた)。
【0115】
実施例7: 化合物C、化合物Dおよび化合物Aの溶解度の比較
目的: 濃度3mg/mLでの化合物C、化合物Dおよび化合物Aの溶解度試験。
【0116】
実施例7-A: 水溶解度の有意な差が化合物C、化合物Dおよび化合物Aの間で立証された
最初に化合物をPEG400およびエタノールに溶解させ、続いてマトリックス中に終濃度3mg/mLになるように希釈した。溶液マトリックスの構成成分はゲンチジン酸ナトリウム 3%(w/v)およびアスコルビン酸 6%(w/v)を含んでいた(pH = 3.6)。調製した試料溶液を室温に保持し、目視検査により調査した。結果を表7-1に列挙する。
【0117】
(表7−1)最初にPEG400/エタノールに溶解させ、次にマトリックス中で希釈した、化合物A、化合物Dおよび化合物C (3mg/mL)の間の溶解度比較

【0118】
また、pH = 4.3での溶解度比較も、先に示したものと同様の結果を示した。
【0119】
実施例7-B: 酢酸の添加によって化合物Cおよび化合物Dの溶解度が向上した
最初に化合物を酢酸に溶解させ、続いてPEG400/エタノールで希釈し、最後に溶液をマトリックス中に終濃度3mg/mLになるように希釈した。マトリックスの構成成分はゲンチジン酸ナトリウム 3%(w/v)およびアスコルビン酸 6%(w/v)を含んでいた(pH = 3.6)。調製した試料溶液を室温に保持し、目視検査により調査した。結果を表7-2に列挙する。
【0120】
(表7−2)酢酸、次にPEG400/エタノールに溶解させ、最後にマトリックス中で希釈した、化合物Dおよび化合物C(3mg/mL)の間の溶解度比較

【0121】
実施例7-C: 室温で1週間の貯蔵期間にわたる化合物A、化合物Cおよび化合物Dの間の溶解度比較
最初に化合物Cおよび化合物Dを酢酸に、続いてPEG400/エタノールで溶解させ、最後に溶液をマトリックス中に終濃度3mg/mLになるように希釈した。マトリックスはゲンチジン酸ナトリウム 3%(w/v)およびアスコルビン酸 6%(w/v)を含んでいた(pH = 3.6)。調製した試料溶液を室温に保持し、目視検査により調査した。溶液中または上清中の試験化合物の濃度をHPLCで分析した。結果を表7-3に列挙する。
【0122】
(表7−3)室温で1週間の貯蔵期間にわたる化合物A、化合物Dおよび化合物C(3mg/mL)の間の溶解度比較; それらの濃度はHPLCで確認

*酢酸を添加せず; **調製後は透明溶液、続いて貯蔵後約2時間の時点で析出が発生; ***上清中濃度。
【0123】
3つすべての試験化合物(化合物C、化合物Dおよび化合物A)が低い水溶解度を示し、溶液調製には共溶媒PEG400を必要とした。
【0124】
水溶解度の順序は化合物A>化合物D>>化合物Cであった。
【0125】
実施例8: 127I-化合物Aヨウ素化に対する酢酸添加の効果
目的: 127I-化合物Aヨウ素化において体積を増加させ、腐食レベルを減少させること。
【0126】
(表8−1)実験条件

【0127】
結果: Tl(TFA)3/TFA反応液中の酢酸の添加は化合物Aのヨウ素化に著しく影響を与えることはなく、化合物A-pと適用されるNa127Iとのモル比の計算に基づいて反応を完了することができた。
【0128】
実施例9: 127I-化合物Aヨウ素化の収率に対する前駆体の濃度の効果
目的: 127I-化合物Aヨウ素化の収率に対する前駆体の濃度の効果を、固定量の前駆体と増加する量のTFA/酢酸(体積比1:2)とを使用することによって評価した。
【0129】
(表9−1)実験条件

【0130】
結果: 化合物A-pの濃度は決定的に重要であり、化合物A-pの濃度が0.08mg/mLの場合ほとんど標識が存在しなかった。比較のデータを表9-2に列挙する。
【0131】
(表9−2)化合物A薬物製品の収率に対する化合物A-pの濃度の効果

【0132】
実施例10: 127I-化合物Aヨウ素化の収率に対する0.1N NaOHに溶解したNa127Iの体積の効果
目的:127I-化合物Aヨウ素化の収率に対する水溶液(0.1N NaOH中Na127I)の体積の効果を評価すること。
【0133】
(表10−1)実験条件

【0134】
結果: データを表10-2に列挙する。この表は、化合物Aのヨウ素化が酢酸/TFA有機溶液において好ましいこと、および適用される水溶液(0.1N NaOH)の体積によって収率が減少することを実証した。
【0135】
(表10−2)化合物A薬物製品の収率に対するNaI溶液の体積の効果

【0136】
実施例11: 70mCiおよび250mCiのNa131Iを用いる化合物A製剤化
目的: 漸増線量70mCiまたは250mCiのNa131Iを用いて製剤化される化合物Aの実行可能性および安定性を検査すること。
【0137】
実施例11-A: 70mCiのNa131Iを用いる化合物A製剤化
(表11−1)実験条件

【0138】
実施例11-B: 250mCiのNa131Iを用いる化合物A製剤化
(表11−2)実験条件

【0139】
結果: この試験において、最適化された化合物Aヨウ素化法における線量漸増の潜在的可能性を予備的に評価した。室温で10分のインキュベーションによる中間的反応においてモル比1.2のTl(TFA)3対化合物A-pを適用した後、これを放射能源バイアル中に移し、混合し、さらに5分間インキュベートした。結果は、250mCiという大線量を化合物A製剤化に適用した場合に、放射性不純物プロファイルに有意な変化はなく、RCYが95%超である(表11-3)ことを実証した。
【0140】
(表11−3)化合物A製剤化の線量漸増に関する予備試験の要約

【0141】
実施例12: 化合物A製剤化に使用される賦形剤中の構成成分の決定
目的: 薬物製品の溶解度および安定性を維持するために化合物A製剤化に使用される賦形剤の構成成分を評価および最終決定すること。
【0142】
実施例12-A: 化合物Aの溶解度に対するpHの効果
濃度3mg/mLの化合物Aの溶液を、急性毒性試験の試案用に要求した。最初に化合物A原薬をPEG400に溶解させ、次に4.05〜4.95のpH範囲を有するマトリックス中で希釈してPEG400終濃度を30% (w/v)にすることによって、この試料溶液を調製した。マトリックスの構成成分はゲンチジン酸ナトリウム 3%(w/v)およびアスコルビン酸 6%(w/v)を含んでいた。アスコルビン酸のpKaは4.17であり、異なる部分のアスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸を混合して合計6%のアスコルビン酸(ナトリウム塩形態に加えて遊離酸形態)を生じさせることにより、マトリックス溶液のpHを調整した。調製した試料溶液を室温に保持し、その溶解度を目視検査により調査した。結果を表12-1に列挙する。
【0143】
(表12−1)PEG400に溶解させ、次に異なるpHのマトリックス中で希釈した化合物A原薬(3mg/mL)の溶解度

【0144】
実施例12-B: PEG400中の化合物Aの溶解度
化合物Aの長期溶解度試験を、濃度0.8mg/mLまたは16μg/mLで行った。化合物A原薬を、最初にPEG400に溶解させ、次にマトリックス中で希釈して、最終溶液中のPEG400の異なる%を生じさせた。マトリックスの構成成分はSWFI中にゲンチジン酸ナトリウム 3%(w/v)、エタノール 2%(v/v)ならびにアスコルビン酸 6%(w/v)(アスコルビン酸ナトリウム 3.7%およびアスコルビン酸 2.7%)を含んでおり、最終pHは4.3であった。調製した試料溶液の溶解度を目視検査により調査し、HPLC分析により確認した。結果を表12-2に列挙する。
【0145】
(表12−2)化合物A原薬の溶解度を増加させるためのPEG400の添加

【0146】
結果: 観察に基づいて、化合物A薬物製品の製剤に使用する賦形剤の最終構成成分を以下に列挙する。
PEG400 6%(w:w)
エタノール 2%(v/v)
ゲンチジン酸ナトリウム 3%(w/v)
アスコルビン酸 6%(w/v)(アスコルビン酸ナトリウム 3.7%およびアスコルビン酸2.7%)
pH 4.4±0.3
【0147】
実施例13: 化合物A薬物製品の回収率を最大化するシリンジフィルターの選択
目的: 放射能回収率を最大化する滅菌シリンジフィルターを評価、比較および選択すること。
【0148】
0.5mL(約1.2mCi)と賦形剤(PEG400 6%、ゲンチジン酸ナトリウム 3%およびアスコルビン酸 6%、pH = 4.3) 30mLとを混合することによって、この試験に使用する化合物A混合物溶液を調製した。試料溶液4mLのアリコートをフィルター試験毎に適用し、溶液を10mL真空バイアルにより溶出した。フィルター上に残留しかつ収集溶液中で回収された放射能を測定し、メンブレン上に付着した放射能の割合を計算した。結果を表13-1に列挙する。
【0149】
(表13−1)化合物A薬物製品の無菌濾過用のシリンジフィルターの評価および選択

*抵抗があまりに大きく、試料溶液はメンブレンを通じて容易に濾過されなかった。
**この製品の滅菌形態は市販されていない。
***メンブレンを予め湿潤させかつ/または化合物Aの濃度を増加させることによって、付着を著しく減少させることができた。
【0150】
実施例14: 室温対-80℃という異なる温度での化合物A薬物製品(1.25mCi/mL)の安定性
目的: 異なる温度で貯蔵した化合物A(1.25mCi/mL)薬物製品の安定性を評価および比較すること。
【0151】
賦形剤[SWFI中PEG400 6%(w/v)、ゲンチジン酸ナトリウム 3%(w/v)、エタノール 2%(v/v)、アスコルビン酸ナトリウム 3.7%(w/v)およびアスコルビン酸 2.7%(w/v)、最終pH 4.3]中の化合物A薬物製品の安定性を調査し、異なる温度での貯蔵に関して比較した。
【0152】
約42mCiの化合物A粗反応液をHPLCに注入し、33.6mCiの化合物A薬物製品を収集した。バイアルを70℃で60分間加熱することによって、薬物製品収集物中の揮発性有機物質を除去した。化合物A薬物製品を、賦形剤中にてTOCで最終放射能濃度1.25mCi/mLまで希釈した後、2mLバイアル中に分配した。試料を室温でまたはフリーザー(-80℃)中に貯蔵した。RCPを所定の時点で試験した。結果を表14-1に列挙する。
【0153】
(表14−1)室温または-80℃で7日間の貯蔵期間にわたる化合物A薬物製品(1.25mCi/mL、バイアル当たり2mL)の安定性

*HPLC収集溶液中の薬物製品は加熱過程中に保護されなかった。
【0154】
結果: 化合物A薬物製品はフリーザー(-80℃)中1週間の貯蔵期間にわたって安定であったが、遊離131Iは室温で貯蔵後それぞれ0日および7日の時点で9.3%から18.5%まで増加した。
【0155】
実施例15: 室温対-80℃で貯蔵した化合物A薬物製品(10mCi/mL)の安定性比較
目的: 室温対-80℃という異なる温度での放射能濃度10mCi/mLを有する化合物A薬物製品の安定性を評価および比較すること。
【0156】
約60mCiの化合物A粗反応液をHPLCに注入し、43.8mCiの化合物A薬物製品を収集した。バイアルを70℃で60分間加熱することによって、薬物製品収集物上の揮発性有機物質を除去した。化合物Aを、賦形剤中にて最終放射能濃度10mCi/mLまで希釈した後、2mLバイアル中に分配した。試料を室温でまたはフリーザー(-80℃)中に貯蔵した。RCPを所定の時点で試験した。結果を表15-1に列挙する。
【0157】
(表15−1)室温または-80℃で8日間の貯蔵期間にわたる化合物A薬物製品(10mCi/mL)の安定性

*加熱過程中に化合物A HPLC収集物を賦形剤により保護した。
【0158】
結果: フリーザー(-80℃)中で8日間貯蔵した化合物A薬物製品では遊離131Iは5%未満であったが、室温で貯蔵後それぞれ0日および8日の時点で遊離131Iは1.5%から15.0%まで増加した。
【0159】
実施例16: マウスにおける131I-Cmpd A、131I-Cmpd B、131I-Cmpd Cおよび131I-Cmpd Dの臓器分布および腫瘍蓄積
臓器分布および腫瘍蓄積実験をB16F10担癌マウスにおいて行った。物質の静脈内投与後の指示された時点(1時間および24時間)に、動物を屠殺し、臓器および腫瘍を除去し、任意的に軽く叩いて乾燥させ、秤量し、対応する同位体標準物質を用いてキャリブレーター中の放射能含有量について測定した。結果を注入量/組織グラムの%として表す。図4は、B16F10担癌マウスにおける131I-Cmpd A、131I-Cmpd B、131I-Cmpd Cおよび131I-Cmpd Dの体内分布を図示する。グラフは、望ましい分布特性が4つすべての試験化合物で観察されたことを示す。
【0160】
実施例17: マウスにおけるSK-MEL-3腫瘍成長に対する131I-Cmpd Aの効果
SK-MEL-3腫瘍成長に対する131I-Cmpd A(68mCi/m2)の効果をマウスにおいて検討した。生理食塩水およびダカルバジンを試験用の参照物質として使用した。この実験では、異なる群のマウスに線量68mCi/m2131I-Cmpd Aを1日1回、1日2回および1日3回投与した。処置は125日間続いた。腫瘍体積が1500mm3を超えた場合にマウスを安楽死させた。処置したマウスを綿密にモニタリングし、死が近づく徴候が示された場合は屠殺した。腫瘍変化(腫瘍の長さおよび幅)を数日おきにモニタリングした。腫瘍変化を定量的に測定した。図6に示す結果は、腫瘍成長の減少における131I-Cmpd Aの有効性を示している。また、図7に示す結果は、マウスの生存率の増加における131I-Cmpd Aの有効性を示している。
【0161】
実施例18: N-(2-ジエチルアミノ-エチル)-4-(4-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-5-ヨード-2-メトキシ-ベンズアミド(化合物A)の合成
その全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2005/089815号で実証されている合成と類似した当技術分野で公知の方法により、標記化合物を合成することができる。
【0162】
実施例19: ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボン酸[4-(2-ジエチルアミノ-エチルカルバモイル)-2-ヨード-5-メトキシフェニル]アミド(化合物B)の合成
その全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2005/089815号で実証されている合成と類似した当技術分野で公知の方法により、標記化合物を合成することができる。
【0163】
実施例20: 4-(4-クロロ-ベンゾイルアミノ)-N-(2-ジエチルアミノ-エチル)-5-ヨード-2-メトキシ-ベンズアミド(化合物C)の合成
その全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2005/089815号で実証されている合成と類似した当技術分野で公知の方法により、標記化合物を合成することができる。
【0164】
実施例21: N-(2-ジエチルアミノ-エチル)-5-ヨード-2-メトキシ-4-(4-メトキシ-ベンゾイルアミノ)-ベンズアミド(化合物D)の合成
その全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2005/089815号で実証されている合成と類似した当技術分野で公知の方法により、標記化合物を合成することができる。
【0165】
他の態様
他の態様は当業者には自明であろう。前述の詳細な説明が明確化のためにのみ与えられ、単に例示的なものであるということを理解すべきである。本発明の精神および範囲は、上記実施例に限定されないが、以下の特許請求の範囲に包含される。本明細書において引用されるすべての参考文献の内容は、その全体が参照により組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:

の化合物;
少なくとも1つの可溶化剤; および
少なくとも1つの保存料
を含み、
約4.0〜約4.8のpHを有する、
薬学的組成物。
【請求項2】
約1.25mCi/ミリリットルの式Iの化合物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリエチレングリコール 約6%(w/v);
エタノール 約2%(v/v);
ゲンチジン酸ナトリウム 約3%(w/v); および
アスコルビン酸 約6%(w/v)
を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
アスコルビン酸が、アスコルビン酸ナトリウム 約3.7%およびアスコルビン酸 2.7%である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
N-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-4-(4-フルオロベンズアミド)-5-ヨード-2-メトキシベンズアミドをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
以下の段階を含む、Rがフルオロ、クロロまたはメトキシである式III:

の化合物を調製する方法:
式IIIの化合物を得るために、反応条件下で式II:

の化合物と、少なくとも約1当量のトリス(2,2,2-トリフルオロアセチル)タリウムならびに体積1:1のトリフルオロ酢酸および酢酸を含む溶液とを接触させる段階。
【請求項7】
以下の段階を含む、Rがフルオロ、クロロまたはメトキシである式I:

の化合物を調製する方法:
式III:

の化合物を得るために、第1の反応条件下で式II:

の化合物と、少なくとも約1当量のトリス(2,2,2-トリフルオロアセチル)タリウムならびに体積比1:1のトリフルオロ酢酸および酢酸を含む溶液とを接触させる段階; ならびに
式Iの化合物を得るために、第2の反応条件下で式IIIの化合物と、少なくとも約0.5〜約0.7当量の131ヨウ化ナトリウムを含む溶液とを接触させる段階。
【請求項8】
式IIの化合物が、酢酸を含む溶液中に存在する、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
トリス(2,2,2-トリフルオロアセチル)タリウムが、トリフルオロ酢酸を含む溶液中に存在する、請求項6または7記載の方法。
【請求項10】
131ヨウ化ナトリウムが、水酸化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムを含む溶液中にある、請求項6または7記載の方法。
【請求項11】
前記反応条件が、摂氏約25度で約15分の反応時間を含む、請求項6記載の方法。
【請求項12】
前記第1の反応条件が、摂氏約25度で約10分の反応時間を含む、請求項7記載の方法。
【請求項13】
前記第2の反応条件が、摂氏約25度で約5分の反応時間を含む、請求項7記載の方法。
【請求項14】
式Iの化合物を単離する段階をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項15】
前記単離する段階が高速液体クロマトグラフィーを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
薬学的に有効な量の請求項1記載の薬学的組成物を投与することによって、黒色腫に罹患した患者を処置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−502060(P2012−502060A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526244(P2011−526244)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/056093
【国際公開番号】WO2010/028281
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(507412863)モレキュラ インサイト ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】