説明

放射放出デバイス

電磁放射を放出し端子電極(18,20)に直接コンタクトするように形成された第1の活性半導体層(12)と、電磁放射を放出し端子電極(18,20)に直接コンタクトするように形成された少なくとも1つの別の第2の活性半導体層(14)とを有する放射放出デバイスにおいて、該第1の活性半導体層(12)と該第2の活性半導体層(14)とは相互に積層されて配置されていることを特徴とする、放射放出デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射を放出するために構成された少なくとも2つの活性半導体層を有する放射放出デバイスに関する。
【0002】
DE102006039369A1に、第1の放射生成活性層と第2の放射生成活性層とを含む半導体ボディが開示されており、該第1の活性層と第2の活性層とは垂直方向に相互に重なって配置されており、電気的に直列接続されている。
【0003】
本発明の課題は、放出される電磁放射の高い放射密度を簡単に実現できる放射放出デバイスを提供することである。
【0004】
前記課題は、独立請求項に記載されている特徴を備えた発明によって解決される。従属請求項に本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0005】
本発明の放射放出デバイスの特徴は、電磁放射を放出して端子電極に直接コンタクトするように形成された第1の活性半導体層と、電磁放射を放出して端子電極に直接コンタクトするように形成された少なくとも1つの別の第2の活性半導体層とを有し、該第1の活性半導体層と該第2の活性半導体層とは相互に積層されて配置されていることである。すなわち、前記放射放出デバイスはとりわけ、半導体チップとも称される個々に形成された複数の活性半導体層を有するか、または、1つの層スタックを構成する相互に結合された複数の活性半導体層を有する。活性半導体層と端子電極とを直接コンタクトさせることにより、放射放出デバイスを基板レスの半導体チップから構成することができる。
【0006】
このことの利点は、高い放射密度と非常に高効率の光出力結合とを実現できると同時に、高い経済性も実現できることである。
【0007】
1つの有利な実施形態では、活性半導体層は少なくとも1つのpn接合部を有するか、または少なくとも1つのpn接合部から形成される。その際には、活性半導体層の少なくとも1つの放射生成層が、とりわけpドーピング層とnドーピング層との間の電荷担体再結合領域によって形成される。とりわけ、1つのpドーピング層と1つのnドーピング層との間に1つの電荷担体結合領域が形成される。このような活性半導体層は、たとえばDE102007004304A1に記載されているように形成することができる。この文献の半導体チップないしは活性半導体層および製造方法に関する開示内容は、引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。
【0008】
少なくとも1つの活性半導体層とは、半導体層列も指す。活性半導体層の他に、半導体層列は別の機能層も有することができ、たとえば電極層、トンネル層、コンタクト層、格子整合層、導波層、クラッド層、電荷担体輸送層および/または電荷担体阻止層を有することができる。活性半導体層はこの場合、量子井戸を含むか、または量子井戸から形成することができる。たとえば半導体層列を、WO2005/081319A1に記載されているように形成することができる。この文献の半導体チップないしは半導体層列および製造方法に関する開示内容は、引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。以下ではもっぱら、「活性半導体層」という用語は、1つ以上の複数の層を含む半導体層列を指す場合にも使用する。
【0009】
別の有利な実施形態では、前記少なくとも1つの活性半導体層は1つのpドーピング層と1つのnドーピング層とから構成され、該pドーピング層と該nドーピング層との境界面にpn接合部が形成されており、該pn接合部が放射生成層を成す。任意選択的に、前記活性半導体層が付加的にとりわけ、1つまたは2つの金属層または反射層を含む構成も可能である。この金属層または反射層を介してたとえば、複数の活性半導体層を相互に結合して積層することができる。このことはとりわけ、積層される活性半導体層が相互に別個に製造される場合に適用される。
【0010】
別の有利な実施形態では、当該放射放出デバイスおよび/または前記少なくとも1つの活性半導体層は、生成される放射の少なくとも一部に対して透明または半透明である。換言すると、活性半導体層および/または放射放出デバイスで生成された放射のうち散乱または吸収される割合は50%未満であり、とりわけ20%未満であり、有利には10%未満である。
【0011】
別の有利な実施形態では、第1の活性半導体層および別の第2の活性半導体層は1つの同じ半導体ボディで形成される。このことは、第1の活性半導体層と第2の活性半導体層とがモノリシックに形成され、たとえばエピタキシャル成長によって形成されることを意味する。換言すると、前記活性半導体層は相互に別個に製造されてたとえば接着、ボンディングまたははんだ付けされることはない。このことにより、放射放出デバイスを簡単に製造することができる。
【0012】
別の有利な実施形態では、第1の活性半導体層および/または第2の活性半導体層は、放熱層に熱伝導結合されている。このことにより、熱エネルギーを第1の活性半導体層または第2の活性半導体層から周辺へ簡単かつ良好に排出することができる。
【0013】
別の有利な実施形態では、第1の活性半導体層および/または第2の活性半導体層は、放熱層に機械的に固定結合される。
【0014】
別の有利な実施形態では、第1の活性半導体層および第2の活性半導体層は等しい波長の放射を放出する。このことにより、1つのスペクトル領域において特に高い発光密度を実現することができる。
【0015】
別の有利な実施形態では、第1の活性半導体層および第2の活性半導体層は異なる波長の放射を放出する。このことにより、混色光または白色光を効率的に生成することができる。
【0016】
別の有利な実施形態では、第1の活性半導体層は放射出力結合面を有し、該第1の活性半導体層には該放射出力結合面と反対側に反射層が配置されている。このことの利点は、放射すべてが所期のように放射放出デバイスの1つの面で放射されるように、該放射すべてを方向づけできることである。
【0017】
別の有利な実施形態では、反射層は放熱層に熱伝導結合されている。このことの利点は、第1の活性半導体層と放熱層との高効率の熱伝導結合を簡単かつ特に高信頼性で実現できることである。
【0018】
別の有利な実施形態では、前記活性半導体層間に1つまたは複数の別の反射層が配置される。この別の反射層は有利には、前記活性半導体層の屈折率と周辺の屈折率との間の屈折率を有する。
【0019】
このような別の反射層によって、活性半導体層と周辺との間の屈折率のジャンプが、2つの比較的小さいジャンプにそれぞれ分割され、活性半導体層から出射して前記別の反射層に入射する放射の割合が大きくなる。このような一部の放射は、別の活性半導体層を透過するか、または出力結合領域を直接透過して周辺に放射することができる。前記別の反射層と周辺との間の屈折率差が小さいことにより、出力結合される放射の割合が大きくなる。
【0020】
別の有利な実施形態では、前記反射層は導電性に形成されている。この実施形態では、前記反射層はたとえば金属薄層であるか、または透明導電材料の層である。金属層の場合、活性半導体層の主面に対して垂直な方向の該金属層の厚さは有利には最大30nmであり、とりわけ最大10nmである。このような厚さにより、反射層を端子電極としても簡単に形成することができる。またこのような反射層によって、前記活性半導体層の面全体にわたって電流を分布させ、電流注入を均質にすることができる。とりわけ反射層は、少なくとも活性半導体層の横方向寸法全体にわたって延在する。その際に、この反射層と異なる要素として端子電極が設けられる場合には、この端子電極が該反射層に所属すると見なされる。
【0021】
別の有利な実施形態では、大部分またはすべての端子電極が活性半導体層を横方向に越えて突出する。この実施形態において有利には、端子電極は、活性半導体層の積層方向に対して平行な方向に相互に重ならないか、または完全には重ならない。このことにより、活性半導体層の電気的コンタクトが容易になる。
【0022】
別の有利な実施形態では、第2の活性半導体層は第1の放射出力結合面を有し、該第2の活性半導体層には該第1の放射出力結合面と反対側に別の放射出力結合面が配置されている。このことにより、活性半導体層は両面で放射を放出し、ひいては放射放出デバイスは両面で放射を放出することができる。
【0023】
別の有利な実施形態では、第2の活性半導体層の放射出力結合面のうち1つは、前記第1の活性半導体層の放射出力結合面に対向している。このことの利点は、混色光または白色光を高い発光密度で、片面放出でも両面放出でも生成できることである。
【0024】
別の有利な実施形態では、活性半導体層は3〜20μmの厚さを有する。このことの利点は、活性半導体層を非常に薄く形成し、ひいては放射放出デバイス全体を非常に薄く構成できることである。
【0025】
別の有利な実施形態では、相互に積層された活性半導体層全体の厚さは、6〜30μmである。このことの利点は、放射放出デバイス全体を非常に薄く構成できることである。
【0026】
別の有利な実施形態では、当該放射放出デバイスは発光ダイオードとして構成されている。したがって、複数の相互に重なって配置された活性半導体層を有する基板レスの放射放出デバイスを発光ダイオード用に使用することができる。
【0027】
別の有利な実施形態では、当該放射放出デバイスは面状に形成されている。面状に形成されているとはここでは、放射放出デバイスが少なくとも数mmの面積を有する面領域にわたって繋がって延在することを意味し、有利には数cmの面積を有する面領域にわたって繋がって延在することを意味し、特に有利には少なくとも10〜数十cm以上の面積を有する面領域にわたって繋がって延在することを意味する。たとえば、この放射放出面領域は少なくとも1mmであり、とりわけ少なくとも10mmであり、有利には少なくとも1cmであり、特に少なくとも5cmである。このような放射放出面領域により、複数の活性半導体層を有する非常にフラットな面形状の基板レスの放射放出デバイスを実現することができる。
【0028】
別の有利な実施形態では、放射放出デバイスは第1の活性半導体層と少なくとも2つの別の第2の活性半導体層とを有し、該活性半導体層のうち少なくとも1つは赤色スペクトル領域の電磁放射を放出するように形成されており、該活性半導体層のうち少なくとも1つは緑色スペクトル領域の電磁放射を放出するように形成されており、該活性半導体層のうち少なくとも1つは青色スペクトル領域の電磁放射を放出するように形成されている。このような実施形態により、放射放出デバイスによって任意の色の光ならびに白色光を生成することができる。
【0029】
別の有利な実施形態では、すべての活性半導体層の横方向寸法が、製造公差の枠内で等しい。換言すると、活性半導体層は相互に合同で積層されている。有利には、相互に隣接する活性半導体層は相互に直接コンタクトしており、とりわけ、相互に対向する主面全体にわたって直接コンタクトしている。すなわちこの場合には、主面全体にわたって活性半導体層は相互に接触する。
【0030】
別の有利な実施形態では、活性半導体層はそれぞれ相互に独立して電気的に駆動制御されるように構成されている。たとえば活性半導体層は、電気的に並列接続されている。
【0031】
別の有利な実施形態では、活性半導体層は相互に電気的に絶縁されている。たとえば反射層に誘電体材料が設けられている。電気的に絶縁されているとは、半導体ボディ内においてとりわけ相互に隣接する活性半導体層が直接電気的にコンタクトしないことを意味する。
【0032】
別の有利な実施形態では、当該放射放出デバイスは変換手段を有さない。換言すると当該放射放出デバイスは、活性半導体層から放出された放射を別の周波数の放射に変換する蛍光体を含まない。
【0033】
有利には、当該放射放出デバイスは照明用に使用される。このことの利点は、コンパクトかつ省スペースのカラー照明を、場合によっては両面で、フラット形状で実現することができ、なおかつ、高い放射密度と高いエネルギー効率と実現できることである。
【0034】
有利には放射放出デバイスは、単色または多色のエレクトロルミネセンスディスプレイに使用される。このことの利点は、コンパクトかつ省スペースのカラーディスプレイをフラット形状で実現することができ、なおかつ、高い放射密度と高いエネルギー効率と実現できることである。
【0035】
有利には、当該放射放出デバイスはプロジェクション用に使用される。このことの利点は、コンパクトかつ省スペースのカラープロジェクタを実現できることである。
【0036】
以下で本発明の有利な実施形態を、概略的な図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態の放射放出デバイスの断面図である。
【図2】別の実施形態の放射放出デバイスの断面図である。
【0038】
全図にわたって、同構造または同機能の構成要素には同一の参照符号を付している。
【0039】
ここに図示された要素および該要素相互間のサイズ比は、基本的に比率どおりであると見なすべきではない。むしろ、たとえば層、部品、素子および領域等の個々の要素は、より良好に見やすくし、かつ/または理解しやすくするため、過度に厚く、ないしは過度に大きく図示されていることがある。
【0040】
図1および2にそれぞれ、放射放出デバイス40の実施例を示している。
【0041】
図1に、第1の実施形態の放射放出デバイス40を示す。放射放出デバイス40は半導体ボディ10を有する。半導体ボディ10は、電磁放射を放出するように形成された第1の活性半導体層12と、電磁放射を放出するように形成された別の第2の活性半導体層14とを有する。図中に示された実施形態の放射放出デバイス40はそれぞれ、電磁放射を放出するように形成された2つの別の活性半導体層14を有する。しかし、放射放出デバイス40のこれらの別の活性半導体層14の数は、これとは異なる任意の値をとることができる。
【0042】
活性半導体層12,14には、たとえばInAlGaAs、InGaAlPおよび/またはInGaAlN等の半導体材料が適しており、たとえばGaAs、AlGaAs、GaP、InP、GaAlP、GaNまたはInGaN等の2元化合物や3元化合物が含まれる。上記の各材料は必ずしも、数学的に正確な組成にしたがう必要はない。むしろこの材料は、その物理的特性を実質的に変化させない1つまたは複数のドープ材ならびに付加的な成分を含有することができる。しかし、簡略化するために、結晶格子の重要な成分(Al,Ga,In,P)のみを挙げたが、これらの成分の一部を少量の別の物質に置換することができる。
【0043】
放射放出デバイス40の活性半導体層12,14の配置および材料のパターニングは有利には、当業者に公知である配置およびパターニングであるから、このことに関してはここで詳細に説明しない。放射放出デバイス40の活性半導体層12,14は有利には、モノリシック成長によって形成された層である。活性半導体層12,14において、電子および正孔の再結合により、1つの波長または波長領域を有する電磁放射を生成することができ、この電磁放射が生成される際に、観察者に単色および/または多色および/または混色の発光印象を生成することができる。
【0044】
放射放出デバイス40の活性半導体層12,14によって生成される電磁放射はとりわけ、紫外線〜赤外線のスペクトル領域内の波長を有するスペクトルを有することができる。とりわけ、活性半導体層12,14によって生成される電磁放射のスペクトルが、観察者に対して可視である少なくとも1つの波長を含むと有利である。この電磁放射のスペクトルが複数の波長を含むことにより、観察者に混色の発光印象が与えられるように構成することも有利である。こうするために、放射放出デバイス40自体が複数の波長を有する電磁放射を生成できるように構成することもできる。
【0045】
図中の放射放出デバイス40は有利には、1つの発光ダイオードとして構成されるか、または発光ダイオードアレイとして構成される。有利には、放射放出デバイス40は面状に形成される。
【0046】
第1の活性半導体層12と第2の活性半導体層14とは、相互に積層されて層スタックとして構成される。その際には、活性半導体層12,14、とりわけ第1の活性半導体層12は、基板レスの層として形成される。基板レスとはここでは、たとえば発光ダイオードとして構成される放射放出デバイス40に設けられる支持層または基板層が省略されていることを意味する。活性半導体層12と別の第2の活性半導体層14とがこのように積層されて配置されることにより、有利には、生成される全放射量が非常に高くなる。放射放出デバイス40の寸法は、活性半導体層が1つだけである場合と比較して有意には変わらず、とりわけ放射放出デバイス40の断面は活性半導体層12,14の数に依存しないので、放射密度を有利には著しく上昇させることができる。
【0047】
第1の活性半導体層12と別の第2の活性半導体層14とは有利には、図1に示した第1の実施形態の放射放出デバイス40において示しているように、モノリシックに1つの共通の半導体ボディ10に統合される。活性半導体層12,14を有するこのようなモノリシックの半導体ボディ10は、特に簡単に製造することができる。
【0048】
有利には、半導体ボディ10は動作中に放射を垂直方向に放出し、典型的には、第1の活性半導体層12によって放出された放射成分と、別の第2の活性半導体層14によって放出された放射成分とが混合される。
【0049】
活性半導体層12,14は有利には、3〜20μmの厚さDを有する。特に有利には、活性半導体層12,14の厚さDは12〜15μmである。このように薄い活性半導体層12,14もなお良好に製造することができ、かつ、放射放出デバイス40を非常に薄く形成することができる。特に有利には、相互に積層された活性半導体層12,14を合わせた全体の厚さD_Tは、6〜30μmである。
【0050】
各活性半導体層12,14は、該活性半導体層12,14を直接電気的にコンタクトするための端子電極18,20を有する。このようにして、支持層または基板層を設けてこれを介して、発光ダイオードとして構成された放射放出デバイス40の電気的コンタクトを行うのを回避することができる。とりわけ、端子電極18,20を扁平に形成するか、または部分領域においてパターニングして形成することができる。
【0051】
端子電極18,20は有利には、導電性酸化物として形成される。特に有利なのは、端子電極18,20を透明導電性酸化物として形成することである(Transparent Conductive Oxid、TCO)。
【0052】
透明導電性酸化物は透明な導電性の材料であり、通常は、例えば酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化インジウム、または、特に有利には酸化インジウムスズ(ITO)のような金属酸化物である。たとえばZnO、SnOまたはIn等である第2級金属酸素化合物の他に、たとえばZnSnO、CdSnO、ZnSnO、MgIn、GaInO、ZnInまたはInSn12等の第3級金属酸素化合物も透明導電性酸化物の群に属し、または、複数の異なる透明導電性酸化物の混合物も属する。さらに、透明導電性酸化物は必ずしも化学量論的な組成に相応しなくてはならないわけではなく、p型ドーピングまたはn型ドーピングすることもできる。
【0053】
端子電極の材料としてはとりわけ、アルミニウム、バリウム、インジウム、銀、金、マグネシウム、カルシウム、リチウム等の材料、ならびにこれらの材料を組み合わせた化合物、組成物ないし合金も有利である。
【0054】
図面ではそれぞれ活性半導体層12,14の下方に配置された端子電極18は、有利にはアノードとして形成され、正孔注入要素として作用するように構成される。
【0055】
図面ではそれぞれ活性半導体層12,14の上方に配置された端子電極20は、有利にはカソードとして形成され、電子注入要素として作用するように構成される。
【0056】
図1に示された第1の実施形態の放射放出デバイス40では、前記第1の活性半導体層12において前記別の活性半導体層14と反対側に反射層22が配置される。この反射層22はたとえば、金属反射層または誘電体反射層として形成することができる。誘電体材料によって屈折率のジャンプが発生することにより、入射した放射が反射する。誘電体反射層をブラッグミラーとして形成することもできる。
【0057】
特に有利なのは、反射層22を導電性に形成することである。というのも、反射層22を導電性にすることによって簡単に、この反射層22を第1の活性半導体層12の端子電極として使用できるからだ。
【0058】
反射層22は放熱層24に機械的および熱的に結合され、活性半導体層12,14と放熱層24とを機械的に固定結合するように使用され、また、前記活性半導体層12,14のうちいずれかに発生した熱を吸収して周辺に排出するのにも使用される。このようにして、活性半導体層12,14の過熱を回避することができる。特に有利なのは、放熱層24の横方向の寸法を活性半導体層12,14より大きくすることである。こうすることにより、機械的および熱的な要件を良好に満たすことができる。放熱層24は有利には、AlNを含む材料から成る。
【0059】
2つの半導体層12,14間に、別の反射層23が配置される。
【0060】
この別の反射層23は有利には、前記活性半導体層12,14の屈折率と周辺の屈折率との間の屈折率を有する。この別の反射層23は、生成された放射に対して透明である。適した材料はたとえば二酸化シリコンである。
【0061】
この別の反射層23によって、半導体層12,14からの放射のうち、該半導体層12,14から出射して該別の反射層23に入り込む割合が大きくなる。この別の反射層23から放射は別の半導体層12,14に入射し、その後に、放射出力結合面を通って放射放出デバイス40から出射する。このことは以下で説明する。出力結合効率は、このような別の反射層23によって上昇する。
【0062】
第1の活性半導体層12は放射出力結合面26を有する。前記別の活性半導体層14はそれぞれ、第1の放射出力結合面28と、該別の活性半導体層14の第1の放射出力結合面28と反対側に配置された別の放射出力結合面30とを有する。
【0063】
図1の実施形態の放射放出デバイス40の動作を、以下に簡単に示す。
【0064】
活性半導体層12,14内で第1の電磁放射成分32が生成され、放熱層24の方向に放射され、反射層22で反射されて第1の活性半導体層12の放射出力結合面26と前記別の活性半導体層14の放射出力結合面28とを介して放射放出デバイス40から出射する。活性半導体層12,14はそれぞれ、隣接する活性半導体層12,14からの電磁放射成分32に対して透明であるように形成される。
【0065】
さらに、活性半導体層12,14内で生成された第2の電磁放射成分34が、前記第1の活性半導体層12の放射出力結合面26と、前記別の活性半導体層14の放射出力結合面28とを介して直接、放射放出デバイス40から出射する。
【0066】
このことにより、活性半導体層12,14から構成される図1の実施形態の基板レスの放射放出デバイス40は、片面放出型の構成になる。
【0067】
図2に示した実施形態でも、活性半導体層12,14は支持層なしで、すなわち基板レスで構成され、複数の別個の独立した半導体チップとして構成されている。したがってこの実施例では、基板レスの個々の半導体チップとして形成された活性半導体層12,14を任意に組み合わせて相互に積層して配置し、層スタックとして構成することにより、適切に適合された各放射放出デバイス40を構成することができる。
【0068】
図2に示した実施形態の放射放出デバイス40では、各活性半導体層12,14がそれぞれ2つの放射出力結合面26,28,30を介して、放射を基本的に2方向に放出することができる。
【0069】
第1の電磁放射成分32は活性半導体層12,14内で生成され、前記第1の活性半導体層12の放射出力結合面26と、前記別の活性半導体層14の第1の放射出力結合面28とを介して、放射放出デバイス40から出射する。
【0070】
さらに、第2の電磁放射成分34が活性半導体層12,14内で生成され、前記別の活性半導体層14の別の放射出力結合面30と第1の活性半導体層12の別の放射出力結合面30とを介して、放射放出デバイス40から出射する。
【0071】
つまり、図2中の活性半導体層12,14から成る基板レスの放射放出デバイス40は、両面放出型の構成になっている。このようにして両面で光出力結合を行えることにより、活性半導体層12,14の内部鏡面加工を省略することができ、反射層を省略することができる。
【0072】
第1の活性半導体層12と別の活性半導体層14とが等しい波長の放射を放出する場合、放射放出デバイス40の放射密度を特に高くすることができる。
【0073】
それに対し、第1の活性半導体層12と別の活性半導体層14とがそれぞれ異なる波長の放射を放出するように構成される場合、放射放出デバイス40によって多色混合光または白色光を非常に簡単に生成することができる。
【0074】
活性半導体層12,14のうち少なくとも1つが赤色スペクトル領域の電磁放射を放出するように形成されており、該活性半導体層12,14のうち別の活性半導体層12,14が緑色スペクトル領域の電磁放射を放出するように形成されており、前記別の活性半導体層12,14のうち少なくとも1つが青色スペクトル領域の電磁放射を放出するように構成されている場合、多色混合光または白色光を特に簡単に形成することができる。
【0075】
放射の出力結合を改善するために、外側の別の活性半導体層14の第1の放射出力結合面28が、該放射出力結合面で全反射が生じるのを阻止するための粗面部または別のパターンを有することができる。このような構成により、外側の別の活性半導体層14の第1の放射出力結合面28を介して出力結合される放射出力を上昇することができる。粗面部の代わりに、たとえばマイクロプリズム等の形態の表面パターンを設けるか、または、放射出力結合面で発生する全反射損失を低減するための別の手段を設けることもできる。
【0076】
さらに放射放出デバイス40では、電磁放射の放射方向で見て前記外側の別の活性半導体層14より後方に光学的素子を配置することができる。とりわけ、たとえば前記外側の別の活性半導体層14の外側に円偏波器を配置することができる。この円偏波器によって有利には、外部から放射放出デバイス40に入射してたとえば端子電極18,20で反射された光が該放射放出デバイス40から出射されるのを回避することができる。
【0077】
上記の放射放出デバイス40は、放射密度が高く高効率であるという上記の利点により、高い経済性を実現することができる。
【0078】
ここで示した放射放出デバイス40は、コンパクトかつ省スペースのフラットな形状を特徴とするディスプレイ装置および/または照明装置で使用するのに適している。
【0079】
複数の活性半導体層12,14を積層して配置することにより発光ダイオードとして構成された基板レスの放射放出デバイス40は、特に有利には照明用に使用され、特に、たとえば空間等の大面積の照明に使用される。
【0080】
また別の使用領域に、自動車または移動電話機用のディスプレイやタッチスクリーンディスプレイ等がある。このようなディスプレイは有利には、単色または多色のエレクトロルミネセンスディスプレイとして構成される。
【0081】
さらに、発光ダイオードとして構成された放射放出デバイス40はプロジェクタに使用することもできる。ここで開示した放射放出デバイス40により、このようなプロジェクタを非常に小さくコンパクトに構成することができる。
【0082】
本発明は、上述した実施例の開示内容に限定されるものではない。むしろ本発明はあらゆる新規の特徴ならびにそれらの特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、これには殊に特許請求の範囲に記載した特徴のあらゆる組み合わせが含まれる。このことはこのような特徴またはこのような組み合わせ自体が特許請求の範囲あるいは実施例に明示的には記載されていない場合であっても当てはまる。
【0083】
本願は、独国特許出願第102007060257.1号および独国特許出願第102008013030.3号の優先権を主張するものであり、その開示内容は引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・電磁放射を放出し、端子電極(18,20)に直接コンタクトするように形成された第1の活性半導体層(12)と、
・電磁放射を放出し、端子電極(18,20)に直接コンタクトするように形成された少なくとも1つの別の第2の活性半導体層(14)と
を有する放射放出デバイスにおいて、
前記第1の活性半導体層(12)と前記第2の活性半導体層(14)とは相互に積層されて配置されていることを特徴とする、放射放出デバイス。
【請求項2】
前記第1の活性半導体層(12)と前記第2の活性半導体層(14)とは、共通の半導体ボディ(10)で形成されている、請求項1記載の放射放出デバイス。
【請求項3】
前記第1の活性半導体層(12)および/または前記第2の活性半導体層(14)は放熱層(24)に機械的に固定結合および/または熱伝導結合されている、請求項1または2記載の放射放出デバイス。
【請求項4】
前記第1の活性半導体層(12)および前記第2の活性半導体層(14)は、等しい波長の放射を放出する、請求項1から3までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項5】
前記第1の活性半導体層(12)および前記第2の活性半導体層(14)は、異なる波長の放射を放出する、請求項1から4までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項6】
前記第1の活性半導体層(12)は放射出力結合面(26)を有し、
前記第1の活性半導体層(12)において前記放射出力結合面(26)と反対側に反射層(22)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項7】
前記反射層(22)は前記放熱層(24)に熱伝導結合されている、請求項6記載の放射放出デバイス。
【請求項8】
前記活性半導体層(12,14)間に1つまたは複数の別の反射層(23)が配置されており、
前記反射層(23)は導電性に形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項9】
前記第2の活性半導体層(14)は第1の放射出力結合面(28)を有し、
前記第2の活性半導体層(14)において前記第1の放射出力結合面(28)と反対側に別の第2の放射出力結合面(30)が配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項10】
前記第2の活性半導体層(14)の前記第1の放射出力結合面(28)および前記第2の放射出力結合面(30)のうち1つは、前記第1の活性半導体層(12)の放射出力結合面(26)に対向している、請求項9記載の放射放出デバイス。
【請求項11】
前記活性半導体層(12,14)は3〜20μmの厚さ(D)を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項12】
相互に積層された前記活性半導体層(12,14)全体の厚さ(D_T)は6〜30μmである、請求項1から11までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項13】
面状に形成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項14】
前記第1の活性半導体層(12)が設けられており、かつ前記第2の活性半導体層(14)は少なくとも2つであり、
前記活性半導体層(12,14)のうち少なくとも1つは、赤色スペクトル領域の電磁放射を放出するように形成されており、
前記活性半導体層(12,14)のうち少なくとも1つは、緑色スペクトル領域の電磁放射を放出するように形成されており、
前記活性半導体層(12,14)のうち少なくとも1つは、青色スペクトル領域の電磁放射を放出するように形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の放射放出デバイス。
【請求項15】
照明用および/または単色または多色のエレクトロルミネセンスディスプレイ用および/またはプロジェクション用に、請求項1から14までのいずれか1項記載の放射放出デバイスを使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−507239(P2011−507239A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537249(P2010−537249)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【国際出願番号】PCT/DE2008/002026
【国際公開番号】WO2009/076933
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】