説明

放射硬化性インクを用いた印刷方法

【課題】UV等の放射により硬化するインクを用いる場合に、インクを記録媒体上で平坦化しても、インクが分裂して画像が平坦化装置の後方に残るようなことを防止する。
【解決手段】記録媒体Sの主表面上に,プリントヘッド20により画像データに従ってインクを付加し、放射エネルギーを実質的に透過するウェブ30を記録媒体Sの主表面に当接させ、スプレッダー32によりウェブ30及び記録媒体Sに対してあらかじめ定められた強度の圧力を加え、硬化ステーション34によりウェブ30及び記録媒体Sに対して放射エネルギーを加え、記録媒体S上のインクIを硬化させたあと、ウェブ30と記録媒体Sとを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、放射硬化性インクを用いた印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置は、インクを印刷用紙へ塗布するのに画像レセプター(受容体)を用いる。しかし、上述のようなインクが印刷用紙その他の記録媒体(substrate)上に直接塗布できるようなシステムがあるとすれば、それが望ましい。そのようなシステムへの、実用上での一つの挑戦では、そのようなインクが、室温では「マヨネーズ」粘稠度を持つ傾向を持つが、噴出に伴って加熱されると低粘度の液体に変化する。典型的なインクジェット印刷プロセスでは、インクが液体になるまで加熱し、その後インクの液滴を圧電プリントヘッドから記録媒体上へと直接に発射する。射出されたインクが記録媒体に当たると、インクは液体からより粘性のある濃度の状態へと相変化し、これにより多孔質の媒体の中へのインクの浸透を低減している。このインクがUV(紫外線)放射に曝されると、インク内の光開始剤(photoinitiator)がUV放射により照射され、入射フラックスがインク内に存在するモノマーを橋架けポリマーマトリクス(cross linked polymer matrix)へと変換し、用紙上に非常に固く耐久性の高いマークを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0120930号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0122914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、UV硬化させる前にインクを均したいという要望がある。このようにする理由は、光沢がより均一になり、本来の位置から外れたジェットを隠すことができ、梱包などのある種の応用分野では厚みが比較的均一な薄い層であることが必要であるからである。これらのインクはマヨネーズの粘稠性を持つので、硬化する前は粘着強度がきわめて低い。更に、インクは、一般に、多くの素材に対して良好な親和性を持つように設計されている。このことはインクの層を平坦化するための従来の方法は失敗しがちであることを意味する。なぜなら、インクは分裂し、電子写真方式においてよく知られた従来の定着ロールのようなインクを平坦化しようとする装置の後方に、画像の大部分を取り残してしまうからである。この明細書はこの問題を解決するための方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの側面では、記録媒体上に印刷するための方法であって、記録媒体の主表面上に画像データに従ってインクを付加し、放射エネルギーを実質的に透過するウェブ(巻き取りシート)を前記記録媒体の主表面に当接させ、前記ウェブ及び前記記録媒体に対してあらかじめ定められた強度の圧力を加え、前記ウェブ及び前記記録媒体に対して放射エネルギーを加え、前記ウェブと前記記録媒体とを分離する、という方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態に対応する、例えば大型の印刷装置で見られるような定着装置の単純化した正面図である。
【図2】実施形態で用いることができるスプレッダー(広げ器)の一例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、印刷システムの単純化した正面図である。用紙その他、その上に画像が印刷される用紙その他の記録媒体Sが、ロール10から巻き出される。記録媒体Sは、処理方向Pに沿って、一連のインクジェットプリントヘッド20のところへと導かれ、それらプリントヘッド20はそれぞれ異なる色版を形成するように制御され、記録媒体Sの主表面上に、入力デジタルデータに従った所望のフルカラー画像を形成する。(図では、記録媒体S上のインクをIと示している。)「紙に直接(インクを付ける)」構成のプリントヘッド20を図示したが、別の例(図示省略)では、プリントヘッドが、インクを画像に合わせてまずドラムなどの中間部材に噴射し、次にその中間部材が完全なカラー画像を記録媒体S上に転写するようにしてもよい。また別の例では、オフセットフレキソ印刷などの他の基本的な印刷技術を、記録媒体Sにインクを付けるのに用いることもできる。
【0008】
この実施形態では、インクIは、紫外線(UV)硬化型インクを含んでいる。このようなインクの一例は、1又は複数のコモノマー(共重合用単量体)とゲル化剤とを含んでいる。あらかじめ定められた周波数の放射(電磁波等)に曝されると、これらのコモノマーは重合化し、様々なタイプの表面に結合する。実際の応用では、このようなインクは室温で粘性の高いが、画像形成のために記録媒体上へ噴射するために加熱されるとより液体的になる。
【0009】
処理方向Pに沿ってプリントヘッド20の下流に、インクIをあらかじめ定められた温度にするためのヒーター22を配置してもよい。この温度の正確な値は、インクIの組成と、後続のプロセスで要求される粘度その他のインクの特性とによって決まる。
【0010】
インクIを所望の温度に調整した後で、記録媒体Sのインクを担持する側の表面に対し、ウェブ(巻き取りシート)30を当接する。図示のように、ウェブ30はスプールから繰り出される。ウェブ30と記録媒体Sとが接触する点で,又はその近傍で、スプレッダー32(この例ではニップを形成する2つのロールを備える)があらかじめ定められた大きさの圧力をウェブ30と記録媒体Sとに加え、インクIがウェブ30と記録媒体Sとの間で押しつぶされるようにする。
【0011】
ウェブ30は明確な物理的特性を有する。ウェブ30は、低表面エネルギーの疎水性の表面をインクIに対して提供する。実施例についての材料の組み合わせによって、ウェブ30が疎油性の表面を提供することが求められる場合もあり得る。ウェブ30は、放射エネルギー、特にこの実施形態では紫外線(UV)を透過するものでなければならない。ウェブ30におおむね適切な材料としては、薄いMylar(登録商標)や、UV透過性のポリイミドなどがある。この目的でのいくつかの望ましい特性を呈する他の材料としては、屋内日焼け装置での利用のために市場に供されているCYRO industries 社のACRYLITE(登録商標)などのUV透過アクリルシートがある。材料は、複数回の使用についての費用や物理的な耐久性等を考慮して選択することになる。
【0012】
スプレッダー32にてウェブ30が記録媒体Sに対して押し当てられると、インクIは、UV硬化ステーション34の作用などにより、紫外光などの放射エネルギーの照射を受けることにより、硬化する。一つの例では、硬化ステーション34は、UV又はその他の放射エネルギーを発するLEDアレイ又はLEDランプを備えていてもよい。ウェブ30は放射エネルギーを透過するので、硬化ステーション34からのUV又はその他の放射エネルギーはウェブ30を透過して記録媒体S上のインクIを硬化させる。別の例では、スプレッダー32と硬化ステーション34の機能を組み合わせて1つの装置にしてもよい。第2のヒーター36を設け、ウェブ30と記録媒体Sの温度を硬化の後で必要な温度まで調節してもよい。
【0013】
処理方向Pに沿って更に進むと、ウェブ30は、分離ロール40のところで、記録媒体Sから分離される。ウェブ30は、低表面エネルギー且つ疎水性及び/又は疎油性(疎水性であるか、又は疎油性であるか、又は疎水性且つ疎油性かのいずれか)なので、またインクIは記録媒体Sの表面上で硬化済みであるので、ウェブ30を分離するときに硬化したインクIがどのようにずれることも避けつつ、ウェブ30を機械的に除去することがきわめて効率的に実行できる。この例では、除去されたウェブ30は巻き取りスプール42へと向かい、記録媒体Sは巻き取りスプール48により集められる。しかし、スプレッダー32の背後で再び記録媒体Sに当接できるように、ウェブ30を連続的なベルトの形態としてもよい。いずれにせよ、分離の後のウェブ30を清掃するためのクリーニングロール44を、ウェブ30を再利用するときに有益ないくつかの種類の剥離剤(release agent)をウェブ30に加えるための「剥離リフレッシャー」46とともに、設けてもよい。このような場合に使用できる剥離剤の例としては、フルオロカーボンの薄片又は粒子をスプレー吹きつけしたものや、シリコーンオイルの薄膜などがある。
【0014】
図2は、上述したようなスプレッダー32の一例の平面図である。この例における実用上の懸案事項は、記録媒体Sとウェブ30とを処理の間中、互いに対して見当が合った状態とし、記録媒体Sとウェブ30との間の、画像の乱れをもたらすような相対的な動きをなくすことである。スプレッダー32内のロール50,52が、図示のように、ウェブ/記録媒体の「サンドイッチ」のなかに湾曲が形成されるように、輪郭形状を持つ(profiled)ものであれば、そのサンドイッチの増強された強度により記録媒体Sとウェブ30との間の相対的な動きの傾向を低減することができる。(ここで用いたように、「輪郭形状を持つ」とは1つのロールが単純な円筒形状以外の形状をもっていることを意味するものとする。)図示例では、ウェブ側のロール50は、凹状の輪郭(断面)形状を持ち、記録媒体側のロール52は、凸状の輪郭形状を持つ。ただし、これらロールの形状は、実装上の条件に適合させることができる。いずれかのロールの実質的な形状を、一方のロールの他方のロールに対する相対的な硬さによって形成するようにしてもよい。このように輪郭形状が形成されたロールは、図示のようなスプレッダー32や、記録媒体Sとウェブ30とが互いに接触するいかなる場所のどのロール対に用いてもよい。
【0015】
更に、それらロールの形状にかかわらず、記録媒体Sとウェブ30とが図2に示したように異なる幅を持っている場合には、サンドイッチ構造がローラー対を通り過ぎる際に、記録媒体Sとウェブ30とのうちの少なくとも一方との間の正の摩擦を維持することができる。
【0016】
他の例では、スプレッダー3は、又は他のどのようなローラー対でも、ロール対の代わりに、ロール又はベルトを用いた真空搬送システムを備えていてもよい。図示の例では垂直噴射式のプリントヘッドと水平な記録媒体経路とを示したが、装置が水平噴射式のプリントヘッドと垂直な記録媒体経路とを備えるように構成してもよい。また、装置の動作部分が大きなドラムの周の一部分に沿って配置されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0017】
10 ロール、20 プリントヘッド、22 ヒーター、30 ウェブ、32 スプレッダー、34 硬化ステーション、36 第2のヒーター、40 分離ロール、42 巻き取りスプール、44 クリーニングロール、46 剥離リフレッシャー、48 巻き取りスプール、I 画像(インク)、P 処理方向、S 記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に印刷する印刷方法であって、
記録媒体の主表面上に画像データに従ってインクを付加するステップと、
放射エネルギーを実質的に透過するウェブを前記記録媒体の主表面に当接させるステップと、
前記ウェブ及び前記記録媒体に対してあらかじめ定められた強度の圧力を加えるステップと、
前記ウェブ及び前記記録媒体に対して放射エネルギーを加えるステップと、
前記ウェブと前記記録媒体とを分離するステップと、
を含む印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷方法であって、前記インクはUV硬化可能なインクであることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷方法であって、前記インクを付加するステップの後、前記ウェブを前記記録媒体の主表面に当接させるステップの前に、前記インクをあらかじめ定められた温度にするステップを更に含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷方法であって、前記圧力を加えるステップは、スプレッダーにより実行されることを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−100056(P2010−100056A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240569(P2009−240569)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】