説明

放射線による損傷から防護するための天然葉酸を含む方法および組成物

イオン化放射線の有害な効果から患者を保護する方法が開示される。この方法は、少なくとも1種類の還元葉酸の有効量を患者に投与することを含む。第一の放射線防護剤と第二の放射線防護剤を含み、第一の放射線防護剤が還元葉酸である放射線防護組成物も開示される。紫外線の有害な効果から患者を保護する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2005年6月21日出願の米国特許仮出願連続番号60/692,401号明細書の利益を主張するものであり、上記特許仮出願明細書は引用により本明細書に含まれる。
【技術分野】
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的には患者を放射線障害から防護する方法および組成物に関し、更に詳細には患者をイオン化放射線および紫外線によって引き起こされる障害から防護するための天然フォレート(folate)を用いる方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒトおよび他の動物は、様々な線源からの放射線に常に被爆されやすい。紫外線、X線およびγ線のような多くの種類の放射線が、分子および細胞レベルでの障害を引き起こす可能性がある。可視光線および特に日光の紫外AおよびB光線は、体内および体外物質によって吸収された後光増感反応を促進し、これが次にタンパク質、脂質およびDNAを開裂および/または酸化させる可能性がある。一方、イオン化放射線は、極めて反応性の高い溶媒和電子、および次いでヒドロキシルラジカルの形成を促進する可能性がある。
【0004】
生体は、損傷を修復することによってまたは反応性種が損傷を生成することができる前にそれらを除くことによって放射線の有害な効果と闘うことができる。しかしながら、放射線への被爆の結果は、極めて重大となる可能性がある。
【0005】
例えば、仕事が原子力および核兵器産業などのように放射線への被爆(または潜在的被爆)を含んでいる者は、職業的線量のイオン化放射線を受けることがある。破滅的事故がない場合でも、原子力産業の従事者は一般大衆より高いレベルの放射線を受けやすい。
【0006】
原子炉を動力とする船舶に配置された者や放射性降下物によって汚染された地域での軍事行動を命令された兵士のような軍事関係者は、同様なイオン化放射線への被爆の危険に曝されている。職業的被爆は、原子炉や放射性物質を伴う破滅的事故に対処することを求められる救助および緊急事態関係者でも起こることがある。
【0007】
イオン化放射線への被爆は、核兵器爆発(実験的、戦争の結果として、および/またはテロリストの活動の結果として)、核廃棄物保管施設および核燃料処理および再処理センターからのアクチニドの排出、いわゆる「汚い爆弾」の爆発、ラドンガスまたはウラニウムのような天然に存在する放射性物質、放射線治療、診断用X線、宇宙線、および他の高高度飛行および/または宇宙旅行などによるイオン化放射線への被爆から生じることもある。
【0008】
長期線量は、経時的に受ける低レベル(すなわち、100-5000ミリレム)の増加または継続的放射線線量である。長期線量の例としては、約5000ミリレム/年の全身線量が挙げられ、これは原子力プラントで働く成人が典型的に受ける線量 である。対照的に、一般大衆は、100ミリレム/年を越える線量を受けるべきでないと勧告されている。長期線量は長期細胞傷害性および遺伝学的影響を引き起こすことがあり、例えば、人生の後期に発現する放射線によって誘発される癌の危険性の増加として現れる。疫学的研究により、癌で死亡する生涯危険度の推定値は、全身への放射線線量1レム当たり約0.04%だけ増加することが見出されている。
【0009】
放射線防護服や他の防護装備が、放射線被爆に有効なことがあるが、このような装備は高価であり、扱いにくく、通常は一般に手に入れることができないものである。更に、放射線防護服の使用は、増加または継続的放射線線量に対して非実用的および/または無効である。従って、職業的または環境上の被爆で起こり得るイオン化放射線への予想されたまたは不注意による被爆から組織的に防護するのが望ましい。
【0010】
総ての上記理由のため、放射線損傷から防護する方法および組成物の必要が存在し続けており、本発明はこの必要性の検討を目指している。
【0011】
発明の概要
本発明は、その一側面では、患者をイオン化放射線の有害な効果から防護する方法に関する。この方法は、患者に少なくとも1種類の還元フォレートの有効量を投与することを含む。
【0012】
本発明は、第一の放射線防護剤と第二の放射線防護剤を含み、第一の放射線防護剤が還元フォレートである放射線防護組成物にも関する。
【0013】
本発明は、患者を紫外線の有害な効果から防護する方法にも関する。この方法は、患者に少なくとも1種類の還元フォレートの有効量を含みかつビタミンB12は実質的に含まない組成物を投与することを含む。
【0014】
発明の具体的説明
本発明は、その一側面では、患者をイオン化放射線の有害な効果から防護する方法に関する。この方法は、患者に少なくとも1種類の還元フォレートの有効量を投与することを含む。
【0015】
本明細書で用いられる「患者」とは、イオン化放射線の1種類以上の有害な効果からの防護から利益を得る任意の生物を表すことを意味する。適当な患者の例としては、哺乳類、哺乳類、家畜、野生動物、ウシ亜科の動物、ウマ科の動物、ブタ科の動物、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ネズミ科の動物、ヤギ、乳牛、畜牛、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、トラ、クマ、ライオン、鳥類、有袋類などのような動物が挙げられる。本明細書で用いられる「患者」とは、男性人、女性人、成人、青年、および子供のようなヒトを包含することも意味する。実例として、適当な患者は、有害レベルのまたは潜在的に有害レベルのイオン化放射線への被爆を受けているヒトまたは他の患者、並びに有害レベルのまたは潜在的に有害レベルのイオン化放射線への被爆を受ける危険性のあるヒトまたは他の患者を包含することを意味する。これに関連して、「有害レベルのイオン化放射線」とは、単なるバックグラウンドレベルより大きな任意のレベルのイオン化放射線を表すことを意味する。「有害レベルのイオン化放射線」とは、約1000ミリレムより大きな、例えば、約2000ミリレムより大きい、約3000ミリレムより大きい、約4000ミリレムより大きい、約5000ミリレムより大きい、約10,000ミリレムより大きい、約20,000ミリレムより大きい、約50,000ミリレムより大きい、約100,000ミリレムより大きい、約200,000ミリレムより大きい、および/または約500,000ミリレムより大きい急性放射線線量を包含することを意味する。「有害レベルのイオン化放射線」とは、総線量が約100ミリレム/年より大きな、例えば、約200ミリレム/年より大きい、約300ミリレム/年より大きい、約400ミリレム/年より大きい、約500ミリレム/年より大きい、約600ミリレム/年より大きい、約700ミリレム/年より大きい、約800ミリレム/年より大きい、約900ミリレム/年より大きい、約1000ミリレム/年より大きい、約2000ミリレム/年より大きい、約3000ミリレム/年より大きい、約4000ミリレム/年より大きい、約5000ミリレム/年より大きい、および/または約10,000ミリレム/年より大きい継続的、断続的または他の形態の長期放射線線量をも包含することを意味する。適当なヒト患者としては、原子力施設(例えば、原子力プラント、核燃料処理または再処理施設、核燃料保管施設など)に雇用されているまたはを訪問している者、原子力施設(例えば、原子力プラント、核燃料処理または再処理施設、核燃料保管施設など)の近くに住み、働き、学校に通い、あるいはかなりの量の時間を消費している者、原子力潜水艦および他の種類の原子力船舶に配備されまたはを訪問している者、原子力潜水艦および他の種類の原子力船舶に配備されまたはを訪問している者、核兵器降下物によって汚染された地域に住みまたはで作業している民間人、核兵器降下物によって汚染された地域で作業している軍関係者、核事故を処理する緊急事態関係者、テロリストによる放射性物質の放出によって汚染された地域に住みまた派手作業している民間人、軍関係者および緊急事態関係者、高レベルのラドンガスを有する建造物に住み、働き、学校に通い、あるいはかなりの量の時間を消費する者、宇宙飛行士および他の宇宙旅行者、高高度で頻繁に飛行する者、例えば、パイロット、定期航空路線の接客係など、核酸修復酵素の欠損症に罹っている者などが挙げられる。その上またはあるいは、患者はフォレート欠損である者であることができるか、または患者はフォレート欠損でない者であることができる。本明細書で用いられるように、患者は、患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルがその患者の標準値を下回る場合には、フォレート欠損であると見るべきである。ヒト患者の場合には、ヒト患者は、本発明の目的に対して、ヒト患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルが20ナノモルを下回るときには、フォレート欠損であると見るべきである。逆に、本発明の目的に対して、ヒト患者は、ヒト患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルが20ナノモル以上であるときには、フォレート欠損ではないと見るべきである。
【0016】
本明細書で用いられる「イオン化放射線」とは、例えば、X線、γ線、宇宙線、β粒子、α粒子、高エネルギー重原子核、高エネルギープロトン、高速電子、ポジトロン、およびソーラー粒子を包含することを意味する。イオン化放射線への被爆は、高高度飛行、宇宙旅行、放射線治療、事故などによる被爆のような様々な活動の結果であると言える。
【0017】
イオン化放射線に関連して用いられる「防護」とは、1種類以上のイオン化放射線の有害な効果を任意の測定可能なあるいは観察可能な減少を表すことを意味する。有害な効果は、例えば、DNAまたは他の細胞変化を観察することによって直接的に、またはイオン化放射線被爆により生じる患者の症状を定性的または定量的に評価することによって間接的に確かめることができる。上記のように、防護はイオン化放射線の有害な効果の完全な(100%)減少である必要はなく、また多くの場合にはそのようにはならない。実例のためには、イオン化放射線の有害な効果の任意の1つ(または2または3つ以上)の任意の減少は、患者をイオン化放射線の有害な効果「防護」することと解釈すべきである。このような減少は、有害な効果の重篤度、有害な効果の持続時間、または両方に関して観察することができ、また上記のように、定性的または定量的であることができる。
【0018】
患者を本発明の方法によって防護することができるイオン化放射線の有害な効果の例としては、放射線宿酔、脱毛(脱毛症)、脱力、疲労、悪心、嘔吐、下痢、皮膚熱傷、消化管出血、粘膜出血、消化器浸食、口腔粘膜浸食、遺伝子欠損、造血および/または免疫応答性細胞破壊、不妊、骨髄癌およびおよび他の種類の癌、未熟老化、死、肝静脈閉塞症、大脳血管の慢性的血管過形成、白内障および肺炎が挙げられる。
【0019】
還元フォレートは、(部分的には)イオン化放射線被曝の性質によって患者のイオン化放射線への被爆前および/または中に投与することができる。例えば、被爆が慢性的である場合(または被爆の危険性が長期間にわたって高まる場合)には、還元フォレートを定期的に、例えば、1日1回、1日数回(例えば、1日2回、1日3回、1日4回、1日6回など)、または連続的に(例えば、還元フォレートを徐放性処方物で投与する場合)投与することができる。還元フォレートは、防護が所望な時間ホメオスタシスレベルを上回る血漿濃度を維持するように投与することができる。本発明の目的には、ホメオスタシスレベルは、絶食およびフォレートを補充してから約24時間後に測定したとき血液からの血漿中における還元フォレートの濃度である。血漿レベルはそれぞれの個体について決定する必要はないが、むしろそれらは患者の群からの薬物動態データーに基づいて予測することができる。
【0020】
還元フォレートの防護効果は、血漿中のその濃度が最大に達したときに最適となると思われる。この最大濃度を生じる時間(Tmax)は、還元フォレートを投与する処方物および用量によって変化することができる。例えば、溶液処方物は典型的には0.5-2.0時間(例えば、0.5-1.0時間)でTmaxに達するが、他の処方物ではTmaxを長くすることができる。実例としては、放射線被爆が既知の将来の時間に起こることが予測される場合には、放射線被爆の予測時間前のほぼTmax (溶液処方物については0.5-2時間)に還元フォレートを投与する(または投与を開始する)ことが望ましい。それより早い時間の投与(すなわち、放射線被爆の予測時間前のTmaxを上回る)またはそれより遅い時間の投与(すなわち、放射線被爆の予測時間前のTmaxを下回る)であっても幾らかのレベルの防護を生じるが、この防護のレベルは最適でないことがある。上記しおよび更に以下に説明するように、放射線被爆の予測時間前の少なくともTmaxに投与を開始し、患者がイオン化放射線に被爆している時間還元フォレートの定期的投与(例えば、1日1回以上)を継続するのが有利である。複数回の継続用量または徐放性処方物を用いて、還元フォレートの血漿濃度がホメオスタシスレベルを超過している時間を長くすることができる。静脈内投与を用いて、還元フォレートの血漿濃度をより速やかに増加させることができる。ヒト患者の場合には、還元フォレートは、患者の還元フォレートの血漿レベルを20ナノモルを上回る値、例えば、約30ナノモルを上回る、40ナノモルを上回る、約50ナノモルを上回る、60ナノモルを上回る、約70ナノモルを上回る、約80ナノモルを上回る、約90ナノモルを上回る、約100ナノモルを上回る、約150ナノモルを上回る、約200ナノモルを上回る、約250ナノモルを上回る、約300ナノモルを上回る、約350ナノモルを上回る、約400ナノモルを上回る、約450ナノモルを上回る、約500ナノモルを上回る、約600ナノモルを上回る、約700ナノモルを上回る、約800ナノモルを上回る、約900ナノモルを上回る、約1マイクロモルを上回る、約2マイクロモルを上回る、約5マイクロモルを上回る、約10マイクロモルを上回る、約20マイクロモルを上回る、約30マイクロモルを上回る、約40マイクロモルを上回る、約50マイクロモルを上回る値などに達しおよび/または維持するように投与することができる。
【0021】
本発明の方法のもう一つの態様では、還元フォレートは、一定の手順通りに(例えば、毎日)患者に投与し、患者がフォレート欠損であると考えられる値を上回る値まで患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルを高めるようにする。例えば、ヒト患者の場合には、還元フォレートは、一定の手順通りに(例えば、毎日)ヒト患者に投与して、ヒト患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルを20ナノモルを上回る値、例えば、約30ナノモルを上回る、40ナノモルを上回る、約50ナノモルを上回る、60ナノモルを上回る、約70ナノモルを上回る、約80ナノモルを上回る、約90ナノモルを上回る、約100ナノモルを上回る、約120ナノモルを上回る、約140ナノモルを上回る、約160ナノモルを上回る、約180ナノモルを上回る、約200ナノモルを上回る値などまで増加するようにすることができる。患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルを当該技術分野で十分であると考えられているレベルより高いレベルまで増加させることによって、本発明の方法を用いて患者を予期しなかったイオン化放射線への被曝から防護することができる。
【0022】
上記のように、還元フォレートは、(部分的には)イオン化放射線への被曝の性質によって患者のイオン化放射線への被曝前および/または中に投与することができる。放射性物質を含むイオン化放射線に被爆した患者は、放射性物質によって(例えば、放射性ガスの吸入によって、放射性物質の摂取によって、皮膚または衣類の汚染によって、放射性ヨウ素の吸収などによって)汚染されてしまっていることがあるので、患者がイオン化放射線の一次線源(例えば、核事故の現場、核攻撃の現場、テロリストの放射性物質/核爆発の現場など)から去りまたはから引き離された後の期間、患者はイオン化放射線に被爆し続ける可能性がある(または継続的なイオン化放射線への被曝の危険性がある可能性がある)と思われる。患者がイオン化放射線の一次線源から去りまたはから引き離された後ではあるが、患者が放射性物質で汚染されてしまった結果としてイオン化放射線へ被曝し続けている(または継続的な被曝の危険性がある)ときの還元フォレートの投与は、患者のイオン化放射線への被爆「中」の投与であると考えるべきである。
【0023】
上記のように、本発明の方法は、少なくとも1種類の還元フォレートの患者への投与を含む。適当な還元フォレートとしては、テトラヒドロ葉酸、5-メチル-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-テトラヒドロ葉酸、7,8-ジヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体が挙げられる。これらは、それらの天然異性体、すなわち、(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体として投与することができる。上記の天然異性体は、対応する非天然異性体((6R)-テトラヒドロ葉酸、5-メチル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-(6R)-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体)と組み合わせて投与することができ、またはそれらを単独で(すなわち、対応する非天然異性体を実質的に含まずに)投与することができる。実例として、適当な還元フォレートとしては、ラセミテトラヒドロ葉酸、ラセミ5-メチル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ10-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5,10-メテニル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5-ホルムイミノ-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体が挙げられる。
【0024】
上記のように、還元フォレートは、組み合わせて(例えば、5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸と5-メチル-テトラヒドロ葉酸の混合物)投与することができ、「還元フォレート」はこのような混合物をも包含することを意味する。「還元フォレート」は、ポリグルタミル誘導体、並びに還元フォレートのグルタメート側鎖のモノアルキル、ジアルキル、モノベンジルおよび/またはジベンジルエステルを包含することも意味する。還元フォレートのグルタメート側鎖のモノアルキル、ジアルキル、モノベンジルおよび/またはジベンジルエステルは、局所処方物に特に有用であると思われる。
【0025】
還元フォレートは遊離酸の形態または塩の形態のいずれであることもでき、本明細書で用いられる「還元フォレート」は遊離酸と塩形態の両方を包含することも意味する。適当な塩形態の例としては、塩酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびマグネシウム塩が挙げられる。更にもう一つの例として、還元フォレートは、カルシウム塩の形態であることができる。還元フォレートの塩形態および結晶構造は還元フォレートの安定性および溶解性に幾らか影響し、これは特定の処方物の必要性に応じて最適化することができる。適当な塩形態としては、対イオンが有機アミン塩基であるものも挙げられる。最終組成物のpHは、栄養処理加工およびフォレート化合物の技術分野において詳細に理解されているように、用いられる特定の還元フォレートと(もしあれば)処方物に含まれる他成分の安定性に従って最適化することもできる。
【0026】
還元フォレートは、単独でまたは還元フォレートの他に1種類以上の他成分を含む組成物で投与することができる。適当な投薬形態の例としては、経腸(例えば、経口、胃内または経幽門)、非経口(筋肉内、静脈内、腹腔内、直腸、膣および皮下)、局所、および目への投薬形態が挙げられる。
【0027】
実例として、還元フォレートは、栄養補助食品の形態で経口投与することができる。例えば、丸剤、錠剤、咀嚼可能な錠剤、カプセル、散剤、シロップ、懸濁液、溶液および軟質咀嚼剤が、イオン化放射線に対する防護の目的での還元フォレートの投与の適当な形態である。時間遅延、徐放性および腸溶性保護処方物を用いることもできる。経口投与される栄養補助食品に適当な投薬形態としては、錠剤、分散性散剤、顆粒剤、カプセル、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。錠剤用の不活性希釈剤およびキャリヤーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトースおよびタルクが挙げられる。錠剤は、澱粉およびアルギン酸のような造粒および崩壊剤、澱粉、ゼラチンおよびアラビアゴムのような結合剤、およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクのような滑沢剤を含むこともできる。錠剤はコーティングしていなくともよく、または崩壊および吸収を遅らせるための既知の手法でコーティングしてもよい。カプセルに用いることができる不活性希釈剤およびキャリヤーとしては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムおよびカオリンが挙げられる。懸濁液、シロップおよびエリキシルは、メチルセルロース、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウムのような通常の賦形剤、レシチンおよびポリオキシエチレンステアレートのような湿潤剤、およびp-ヒドロキシ安息香酸エチルのような防腐剤を含むことができる。他の不活性成分を、経口投与用の投薬形態で含むこともできる。
【0028】
上記のように、経口投与用の投薬形態は、増量剤、結合剤、安定剤、栄養甘味料(例えば、スクロース、ソルビトールおよび他のポリオール)および非栄養甘味料(例えば、サッカリン、アスパルタームおよびアセスルファームK)などの甘味料、着色料、香味料、緩衝剤、塩、コーティング剤など栄養補助食品および医薬処方物の技術に熟練した者に知られているような不活性材料を含むことができる。その上またはあるいは、経口投薬形態は、1種類以上の追加の(すなわち、還元フォレートの他に)生物活性材料を含むこともできる。組成物に配合することができるこのような追加の生物活性材料の例としては、他のビタミンおよび/または栄養素(例えば、葉酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンAおよびβ-カロチンのようなその前駆体、ビタミンD、ビタミンEの異性形態および誘導体などのビタミンE、ビタミンK、ビオチン、パントテン酸、メチオニン、コリン、タウリン、カルニチン、アセチル-カルニチン、糖類、脂質、グルタミン、アルギニンおよびメチオニンのようなアミノ酸、およびタンパク質)、還元剤および酸化防止剤、放射線防護剤(例えば、ヨウ化カリウムおよび他のヨウ化物塩のようなヨウ化物、ステロイド性放射線防護剤、特に免疫系の防護反応を高めるのに有用であることが知られているステロイドおよびステロイド誘導体、例えば、DHEA、5-アンドロステンジオールおよび他のアンドロステンジオールおよびアンドロステントリオールおよびそれらの誘導体)、チオール(例えば、グルタチオンおよびグルタチオン増加前駆体、グルタミン、システイン、N-アセチル-システイン、α-リポ酸、シスチニル-グリシン、シクタミン、S-アリルシステインスルホキシド、アミノエチルイソチオ尿素、メルカプトエチルグアニジン、2-メルカプトプロピニルグリシン)、セレン塩、セレン化酵母、セレノメチオニン、補酵素Q10、アミホスチン、N-t-ブチルヒドロキシルアミンおよび他のN-ヒドロキシルアミン誘導体、メラトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、その誘導体および擬似金属錯体、キレート化剤、植物化合物、ポリフェノール、天然物の抽出物、例えば、ハーブ、チャイニーズ・ハーブ、アーユルヴェーダ製剤、茶エキス、ジチオールチオン、アブラナ科植物、フラバノイド、クルクミン、メチルキサンチン、ギンゴー・ビロバ(Gingko biloba)エキス、およびミネラル(例えば、ホウ素、カルシウム、リン、クロム、銅、マンガン、マグネシウム、ニッケル、ナトリウム、モリブデン、カリウム、鉄、セレン、ケイ素、バナジウム、および亜鉛)が挙げられる。更なる実例として、本発明の組成物に用いることができる追加の生物活性材料としては、「健康および疾病における最新栄養(Modern Nutrition in Health and Disease)」, 第8版, Shils et al.監修,フィラデルフィア: Lea and Febiger (1994)など多数の公表文献に編集されているような必須栄養素が挙げられ、上記文献の内容は、引用によって本明細書に含まれる。
【0029】
実例として、本発明の方法の一態様では、還元フォレートは、還元フォレートおよび1種類以上の放射線防護剤を含む組成物で投与する。放射線防護剤の例としては、環境からの放射性ヨウ素の吸収を減少させるのに有効な量で含まれるヨウ化カリウムのようなヨウ化物塩が挙げられる。低レベルのヨウ化物栄養補給により甲状腺による放射性ヨウ素の摂取をある程度防護することができるが、約1 mg-約500 mg (例えば、KI 約8 mg-約260 mg/日、約16 mg-約130 mg)が特に有効であると思われる。環境からの放射性ヨウ素の吸収を減少させるためのKIの使用に関する詳細は、例えば、「手引: 放射能緊急事態における甲状腺遮断薬としてのヨウ化カリウム(Guidance: Potassium Iodide as a Thyroid Blocking Agent in Radiation Emergencies)」, ロックビル, メリーランド: 米国保健福祉省, 食品医薬品局, 医薬品評価研究センター(CDER)(2001年12月)に示されており、上記文献の内容は、引用によって本明細書に含まれる。更なる実例として、放射線防護剤は、アンドロステンジオールのようなステロイド性放射線防護剤であることができる。当業者であれば理解されるように、還元フォレートと追加の放射線防護剤(すなわち、放射線防護用還元フォレートの他のもの)を含む組成物は、例えば、組成物が還元フォレートの他に1種類以上の他のビタミンをも含む場合には、不活性材料および/または生物活性材料のような他成分を含むこともできる。実例として、幾つかの態様では、このような組成物はビタミンB12も含むが、他の態様では、上記組成物はビタミンB12を実質的に含まない。これに関連して用いられる「ビタミンB12を実質的に含まない」とは、組成物に含まれるビタミンB12のレベルが組成物によるイオン化放射線の有害な効果からの防護に対して相当な効果を有するには不十分である組成物を表すことを意味する。実例として、患者をイオン化放射線の有害な効果から防護するための組成物に関連して、ビタミンB12を含まない、患者にとってビタミンB12の推奨1日許容量の300%以下の量のビタミンB12を含む、患者にとってビタミンB12の推奨1日許容量の200%以下の量のビタミンB12を含む、患者にとってビタミンB12の推奨1日許容量以下の量のビタミンB12を含む、0.1 mg/ml未満の濃度のビタミンB12を含む、0.08 mg/ml未満の濃度のビタミンB12を含む、0.05 mg/ml未満の濃度のビタミンB12を含む、20μg (乾燥重量)未満の量のビタミンB12を含む、15μg (乾燥重量)未満の量のビタミンB12を含む、10μg (乾燥重量) 未満の量のビタミンB12を含む、および/または8μg (乾燥重量) 未満の量のビタミンB12を含む、および/または6μg (乾燥重量) 未満の量のビタミンB12を含む組成物は、「ビタミンB12を実質的に含まない」と考えるべきである。本明細書で用いられる「推奨1日許容量」は、ビタミンB12について6μg/日である米国における推奨1日許容量を表すことを意味する。
【0030】
還元フォレートは、1種類以上の還元フォレートで栄養強化した食物として経口投与することもできる。食物は、単一成分食物、例えば、フルーツおよびフルーツジュース(例えば、オレンジジュース)、乳製品(例えば、牛乳)、野菜(例えば、ホウレンソウ)、他の類似した単一成分食物であることができる。食物は、2種類以上の単一成分食物から作られる多成分調製物であることもできる。典型的には、食物は、様々な濃度の内在性還元フォレートを含んでいる。必要とされる加工の性質によっては、食物栄養強化の技術分野で周知のように、栄養強化は任意の特に破壊的加工段階の後に最適に行われることが多い。食物に含まれる内在性還元フォレートの量は変化することができるので、例えば、生成物バッチの試料の分析によって定量されるように、食物または食物調製物中の還元フォレートの最終量(モル数)を知ることが有利である可能性がある。多くの分析的方法(例えば、微生物増殖依存性、フォレート結合タンパク質に基づく分析法、HPLCおよびGC)を、食物、食物調製物および栄養補助食品の還元フォレート含量の測定に利用することができる。
【0031】
還元フォレートを栄養補助食品の形態で、栄養強化食物の形態で、または食物調製物の形態でヒト患者に経口投与することとは無関係に、用量当たりに投与される還元フォレートの総量は、(還元フォレートが異性体の混合物として含まれているときには、天然異性体成分に対して)約0.45マイクロモル-約2ミリモルの範囲、例えば、0.45マイクロモル-2ミリモル、約0.9マイクロモル-約2ミリモル、0.9マイクロモル-2ミリモル、約1.8マイクロモル-約2ミリモル、1.8マイクロモル-2ミリモル、約0.45マイクロモル-約1ミリモル、約0.9マイクロモル-約1ミリモル、約1.8マイクロモル-約1ミリモル、約0.45マイクロモル-約0.5ミリモル、約0.9マイクロモル-約0.5ミリモル、約1.8マイクロモル-約0.5ミリモル、約0.45マイクロモル-約100マイクロモル、約0.9マイクロモル-約100マイクロモル、および/または約1.8マイクロモル-約100マイクロモルであることができる。
【0032】
上記のように、経口投与は、1回用量、多数回用量または連続的に行うことができる。1回用量に含まれる還元フォレートの量は、部分的には投薬法および所定期間(例えば、1日当たり)に患者に投与される還元フォレートの総量によって変化するのは勿論である。イオン化放射線への長期被爆から防護するための適当な1日投与量範囲としては、約0.45マイクロモル-約15マイクロモル、約0.9マイクロモル-約15マイクロモル、0.9マイクロモル-15マイクロモル、約1マイクロモル-約15マイクロモル、約2マイクロモル-約12マイクロモル、約3マイクロモル-約10マイクロモル、約5マイクロモル-約8マイクロモルなどが挙げられる。
【0033】
非経口投与に適当な投薬形態としては、溶液、懸濁液、分散液、エマルションなどが挙げられる。それらは、使用直前に滅菌注射用媒質に溶解または懸濁することができる滅菌固形組成物の形態で製造することもできる。それらは、当該技術分野で知られている懸濁剤または分散剤を含むことができる。非経口投与の例は、筋肉内、静脈内、直腸および皮下投与である。
【0034】
上記のように、還元フォレートは、経口および非経口経路以外の経路で投与することができる。例えば、還元フォレートは、目へ用いるのに適合させた点眼薬、クリーム、またはゲル溶液または懸濁液の形態で目に投与することができる。還元フォレートは、例えば、通常の局所用クリーム、ローション、スプレーまたはゲルマトリックスで局所投与することもできる。局所用処方物は、当該技術分野で知られているように、皮膚浸透性を高める送達系(例えば、リポソームなど)を配合することが有利であることがある。実例として、局所投薬形態は、被覆面積1 m2当たり(還元フォレートが異性体の混合物として含まれているときには、天然異性体成分に対して)約0.05マイクロモル-約1ミリモル、例えば、0.05マイクロモル-1ミリモル、約0.1マイクロモル-約0.5ミリモル、約0.5マイクロモル-約0.1ミリモルを含むように処方することができる。局所処方物は、予め被爆が予想される部分の患者の皮膚に適用するのが好ましい。追加の適用は、還元フォレートの存在を長期間にわたって維持する上で有用であることがあり、または追加の適用は水への有意な暴露の場合に有用であることがある。
【0035】
局所、経腸および非経口投与用組成物のような上記組成物の処方に関する更に詳細は、例えば、「医薬賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」, 第3版(2000年), 米国薬学会; 「産業薬学の理論と実際(The Theory and Practice of Industrial Pharmacy)」, 第3版, Lachman et al. 1986; 「医薬投薬形態: 錠剤編(Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Volume Edition)」, Christopher T編, 1995年; および「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」, 2000年に見出すことができ、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0036】
本発明により投与される還元フォレートの実際の好ましい量は、特定の還元フォレート、処方される特定の組成物および投与の様式によって変化することが理解されるであろう。還元フォレートの作用を変更することがある多くの因子 (例えば、体重、性別、食餌、投与時間、投与経路、排出速度、患者の状態、薬剤の組合せ、反応感受性および重篤度、および患者が被爆するイオン化放射線の種類、強度および期間)を、当業者によって考慮することができる。投与は、最大許容用量範囲内で継続的または定期的に行うことができる。所定の組の条件に対する最適投与速度は、当業者が通常の計量投与試験を用いて確かめることができる。
【0037】
本発明は、そのもう一つの側面では、患者を紫外線の有害な効果から防護する方法に関する。この方法は、患者に少なくとも1種類の還元フォレートの有効量を含みかつビタミンB12を実質的に含まない組成物を投与することを含む。
【0038】
上記のように、本明細書で用いられる「患者」は、1種類以上の紫外線の有害な効果からの防護により利益を得る任意の生物を表すことを意味する。適当な患者の例としては、哺乳類、家畜、野生動物、ウシ亜科の動物、ウマ科の動物、ブタ科の動物、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ネズミ科の動物、ヤギ、乳牛、畜牛、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、トラ、クマ、ライオン、鳥類、有袋類などの動物が挙げられる。本明細書で用いられる「患者」は、男性人、女性人、成人、青年、および子供のようなヒトを含むことも意味する。実例として、適当な患者は、有害なレベルまたは潜在的に有害なレベルの紫外線に被爆しているヒトまたは他の患者、並びに有害なレベルまたは潜在的に有害なレベルの紫外線に被爆する危険性のあるヒトまたは他の患者(例えば、長時間屋外で作業するあるいは屋外にいることが予想される人、または日焼け用ベッドのような人工紫外線源に被爆される人)が挙げられる。その上またはあるいは、患者はフォレートを欠損している者であるか、または患者はフォレートを欠損していない者であることができる。本明細書で用いられるように、患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルがその患者の標準値を下回るときには、患者はフォレート欠損であると考えるべきである。ヒト患者の場合には、ヒト患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルが20ナノモルを下回るときには、ヒト患者は本発明の目的ではフォレート欠損であると考えるべきである。逆に、本発明の目的では、ヒト患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルが20ナノモル以上であるときには、ヒト患者はフォレート欠損ではないと考えるべきである。
【0039】
本明細書で用いられる「紫外線」は、例えば、UV-A放射線、UV-B放射線、UV-C放射線、真空UV放射線、および上記種類の紫外線の2種類以上の組合せを含むことを意味する。
【0040】
紫外線に関連して用いられる「防護」とは、1種類以上の紫外線の有害な効果の測定可能なあるいは観察可能な減少を表すことを意味する。このような有害な効果の減少は、例えば、DNAまたは他の細胞の変化を観察することによって直接的に、または紫外線への被爆によって生じる患者の症状を評価することによって間接的に確かめることができる。上記のように、防護は紫外線の有害な効果を完全に(100%)減少させる必要はなく、また多くの場合には完全には減少しない。実例では、紫外線の有害な効果のいずれか1つ(または2つまたは3つ以上)の減少は、紫外線の有害な効果からの患者の「防護」と解釈すべきである。このような減少は、有害な効果の強さ、有害な効果の持続時間、または両方によって観察することができ、上記のように、これは定性的または定量的であることができる。
【0041】
本発明の方法によって患者を防護することができる紫外線の有害な効果の例としては、皮膚の光による老化、皮膚の皺形成、DNAの損傷または他の形態の細胞損傷、前癌性皮膚病巣の危険性または発生率の増加、癌病巣の危険性または発生率の増加、黒色腫および他の種類の癌の危険性または発生率の増加、および死が挙げられる。
【0042】
天然フォレートは、(部分的には)紫外線被爆の性質によって患者の紫外線への被爆前および/または中に投与することができる。例えば、被爆が慢性的である場合(または被爆の危険性が長期間にわたって高まる場合)には、還元フォレートを定期的に、例えば、1日1回、1日数回(例えば、1日2回、1日3回、1日4回、1日6回など)、または連続的に(例えば、還元フォレートを徐放性処方物で投与する場合)投与することができる。還元フォレートは、防護が所望な時間ホメオスタシスレベルを上回る血漿濃度を維持するように投与することができる。上記のように、本発明の目的には、ホメオスタシスレベルは、絶食およびフォレートを補充してから約24時間後に測定したとき血液からの血漿中における還元フォレートの濃度である。血漿レベルはそれぞれの個体について決定する必要はないが、むしろそれらは患者の群からの薬物動態データーに基づいて予測することができる。
【0043】
還元フォレートの防護効果は、血漿中のその濃度が最大に達したときに最適となると思われる。この最大濃度を生じる時間(Tmax)は、還元フォレートを投与する処方物および用量によって変化することができる。例えば、溶液処方物は典型的には0.5-2.0時間(例えば、0.5-1.0時間)でTmaxに達するが、他の処方物ではTmaxを長くすることができる。実例としては、紫外線への被爆が既知の将来の時間に起こることが予測される場合には、放射線被爆の予測時間前のほぼTmax (溶液処方物については0.5-2時間)に還元フォレートを投与する(または投与を開始する)ことが望ましい。それより早い時間の投与(すなわち、放射線被爆の予測時間前のTmaxを上回る)またはそれより遅い時間の投与(すなわち、放射線被爆の予測時間前のTmaxを下回る)であっても幾らかのレベルの防護を生じるが、この防護のレベルは最適でないことがある。上記しおよび更に以下に説明するように、紫外線被爆の予測時間前の少なくともTmaxに投与を開始し、患者が紫外線に被爆している時間中還元フォレートの定期的投与(例えば、1日1回以上)を継続するのが有利である。複数回の継続用量または徐放性処方物を用いて、還元フォレートの血漿濃度がホメオスタシスレベルを超過している時間を長くすることができる。更にもう一つの実例として、ヒト患者の場合には、還元フォレートは、患者の還元フォレートの血漿レベルを20ナノモルを上回る値、例えば、約30ナノモルを上回る、40ナノモルを上回る、約50ナノモルを上回る、60ナノモルを上回る、約70ナノモルを上回る、約80ナノモルを上回る、約90ナノモルを上回る、約100ナノモルを上回る、約150ナノモルを上回る、約200ナノモルを上回る、約250ナノモルを上回る、約300ナノモルを上回る、約350ナノモルを上回る、約400ナノモルを上回る、約450ナノモルを上回る、約500ナノモルを上回る、約600ナノモルを上回る、約700ナノモルを上回る、約800ナノモルを上回る、約900ナノモルを上回る、約1マイクロモルを上回る値などに達しおよび/または維持するように投与することができる。
【0044】
本発明の方法のもう一つの態様では、還元フォレートは、一定の手順通りに(例えば、毎日)患者に投与し、患者がフォレート欠損であると考えられる値を上回る値まで患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルを高めるようにする。例えば、ヒト患者の場合には、還元フォレートは、一定の手順通りに(例えば、毎日)ヒト患者に投与して、ヒト患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルを20ナノモルを上回る値、例えば、約30ナノモルを上回る、40ナノモルを上回る、約50ナノモルを上回る、60ナノモルを上回る、約70ナノモルを上回る、約80ナノモルを上回る、約90ナノモルを上回る、約100ナノモルを上回る、約120ナノモルを上回る、約140ナノモルを上回る、約160ナノモルを上回る、約180ナノモルを上回る、約200ナノモルを上回る値などまで増加するようにすることができる。患者の還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルを当該技術分野で十分であると考えられているレベルより高いレベルまで増加させることによって、本発明の方法を用いて患者を予期しなかった紫外線への被曝から防護することができる。
【0045】
上記のように、本発明の方法は、少なくとも1種類の還元フォレートを患者に投与することを含む。適当な還元フォレートとしては、イオン化放射線から患者の防護に関連して上記したもの総て、並びに2種類以上の還元フォレート、ポリグルタミル誘導体、および還元フォレートのグルタメート側鎖のモノアルキル、ジアルキル、モノベンジルおよび/またはジベンジルエステルの混合物が挙げられる。還元フォレートは遊離酸の形態または塩の形態のいずれであることもでき、本明細書で用いられる「還元フォレート」は遊離酸と塩形態の両方を包含することも意味する。適当な塩形態の例としては、塩酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられる。還元フォレートの塩形態および結晶構造は還元フォレートの安定性および溶解性に幾らか影響し、これは特定の処方物の必要性に応じて最適化することができる。適当な塩形態としては、対イオンが有機アミン塩基であるものも挙げられる。最終組成物のpHは、栄養処理加工およびフォレート化合物の技術分野において詳細に理解されているように、用いられる特定の還元フォレートと(もしあれば)処方物に含まれる他成分の安定性に従って最適化することもできる。
【0046】
上記のように、紫外線の有害な効果から患者を防護するための本発明の方法は、ビタミンB12を実質的に含まない組成物を用いて行われる。これに関連して用いられる「ビタミンB12を実質的に含まない」とは、組成物に含まれるビタミンB12のレベルが組成物による紫外線の有害な効果からの防護に対して相当な効果を有するには不十分である組成物を表すことを意味する。実例として、患者を紫外線の有害な効果から防護するための組成物に関連して、ビタミンB12を含まない、患者にとってビタミンB12の推奨1日許容量の300%以下の量のビタミンB12を含む、患者にとってビタミンB12の推奨1日許容量の250%以下の量のビタミンB12を含む、患者にとってビタミンB12の推奨1日許容量の200%以下の量のビタミンB12を含む、患者にとってビタミンB12の推奨1日許容量の150%以下の量のビタミンB12を含む、患者にとってビタミンB12の推奨1日許容量以下の量のビタミンB12を含む、0.1 mg/ml未満の濃度のビタミンB12を含む、0.08 mg/ml未満の濃度のビタミンB12を含む、0.05 mg/ml未満の濃度のビタミンB12を含む、20μg (乾燥重量)未満の量のビタミンB12を含む、15μg (乾燥重量)未満の量のビタミンB12を含む、10μg (乾燥重量) 未満の量のビタミンB12を含む、および/または8μg (乾燥重量) 未満の量のビタミンB12を含む、および/または6μg (乾燥重量) 未満の量のビタミンB12を含む組成物は、「ビタミンB12を実質的に含まない」と考えるべきである。上記のように、本明細書で用いられる「推奨1日許容量」は、ビタミンB12について6μg/日である米国における推奨1日許容量を表すことを意味する。
【0047】
還元フォレートは、単独でまたは還元フォレートの他に1種類以上の他成分を含む組成物で投与することができる。適当な投薬形態の例としては、経腸 (例えば、経口、胃内または経幽門)、非経口(筋肉内、静脈内、直腸、膣および皮下)、局所、およびおよび目への投薬形態が挙げられる。
【0048】
実例として、還元フォレートは、栄養補助食品の形態で経口投与することができる。例えば、丸剤、錠剤、咀嚼可能な錠剤、カプセル、散剤、シロップ、懸濁液、溶液および軟質咀嚼剤が、紫外線に対する防護の目的での還元フォレートの投与の適当な形態である。時間遅延、徐放性および腸溶性保護処方物を用いることもできる。経口投与される栄養補助食品に適当な投薬形態としては、錠剤、分散性散剤、顆粒剤、カプセル、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。錠剤用の不活性希釈剤およびキャリヤーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトースおよびタルクが挙げられる。錠剤は、澱粉およびアルギン酸のような造粒および崩壊剤、澱粉、ゼラチンおよびアラビアゴムのような結合剤、およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクのような滑沢剤を含むこともできる。錠剤はコーティングしていなくともよく、または崩壊および吸収を遅らせるための既知の手法でコーティングしてもよい。カプセルに用いることができる不活性希釈剤およびキャリヤーとしては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムおよびカオリンが挙げられる。懸濁液、シロップおよびエリキシルは、メチルセルロース、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウムのような通常の賦形剤、レシチンおよびポリオキシエチレンステアレートのような湿潤剤、およびp-ヒドロキシ安息香酸エチルのような防腐剤を含むことができる。他の不活性成分を、経口投与用の投薬形態で含むこともできる。
【0049】
上記のように、経口投与用の投薬形態は、増量剤、結合剤、安定剤、栄養甘味料(例えば、スクロース、ソルビトールおよび他のポリオール)および非栄養甘味料(例えば、サッカリン、アスパルタームおよびアセスルファームK)などの甘味料、着色料、香味料、緩衝剤、塩、コーティング剤など栄養補助食品および医薬処方物の技術に熟練した者に知られているような不活性材料を含むことができる。その上またはあるいは、経口投薬形態は、1種類以上の追加の(すなわち、還元フォレートの他に)生物活性材料を含むこともできる。組成物に配合することができるこのような追加の生物活性材料の例としては、他のビタミンおよび/または栄養素(例えば、葉酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンAおよびβ-カロチンのようなその前駆体、ビタミンD、ビタミンEの異性形態および誘導体などのビタミンE、ビタミンK、ビオチン、パントテン酸、メチオニン、コリン、タウリン、カルニチン、アセチル-カルニチン、糖類、脂質、グルタミン、アルギニンおよびメチオニンのようなアミノ酸、およびタンパク質)、還元剤および酸化防止剤、チオール(例えば、グルタチオンおよびグルタチオン増加前駆体、グルタミン、システイン、N-アセチル-システイン、α-リポ酸、シスチニル-グリシン、シクタミン、S-アリルシステインスルホキシド、アミノエチルイソチオ尿素、メルカプトエチルグアニジン、2-メルカプトプロピニルグリシン)、セレン塩、セレン化酵母、セレノメチオニン、補酵素Q10、アミホスチン、N-t-ブチルヒドロキシルアミンおよび他のN-ヒドロキシルアミン誘導体、メラトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、その誘導体および擬似金属錯体、キレート化剤、植物化合物、ポリフェノール、ステロイドおよびステロイド誘導体、(特に免疫系の防護反応を高めるのに有用であることが知られているもの、例えば、DHEA、5-アンドロステンジオール、アンドロステンジオールおよびアンドロステントリオールおよびそれらの誘導体)、天然物の抽出物、例えば、ハーブ、チャイニーズ・ハーブ、アーユルヴェーダ(ayurvedic)製剤、茶エキス、ジチオールチオン、アブラナ科植物、フラバノイド、クルクミン、メチルキサンチン、ギンゴー・ビロバ(Gingko biloba)エキス、およびミネラル(例えば、ホウ素、カルシウム、リン、クロム、銅、マンガン、マグネシウム、ニッケル、ナトリウム、モリブデン、カリウム、鉄、セレン、ケイ素、バナジウム、および亜鉛)が挙げられる。更なる実例として、本発明の紫外線防護方法に用いることができる追加の生物活性材料としては、「健康および疾病における最新栄養(Modern Nutrition in Health and Disease)」, 第8版, Shils et al.監修,フィラデルフィア: Lea and Febiger (1994)など多数の公表文献に編集されているような必須栄養素が挙げられ、上記文献の内容は、引用によって本明細書に含まれる。
【0050】
還元フォレートは、1種類以上の還元フォレートで栄養強化した食物として経口投与することもできる。食物は、単一成分食物、例えば、フルーツおよびフルーツジュース(例えば、オレンジジュース)、乳製品(例えば、牛乳)、野菜(例えば、ホウレンソウ)、他の類似した単一成分食物であることができる。食物は、2種類以上の単一成分食物から作られる多成分調製物であることもできる。典型的には、食物は、様々な濃度の内在性還元フォレートを含んでいる。必要とされる加工の性質によっては、食物栄養強化の技術分野で周知のように、栄養強化は任意の特に破壊的加工段階の後に最適に行われることが多い。食物に含まれる内在性還元フォレートの量は変化することができるので、例えば、生成物バッチの試料の分析によって定量されるように、食物または食物調製物中の還元フォレートの最終量(モル数)を知ることが有利である可能性がある。多くの分析的方法(例えば、微生物増殖依存性、フォレート結合タンパク質に基づく分析法、HPLCおよびGC)を、食物、食物調製物および栄養補助食品の還元フォレート含量の測定に利用することができる。
【0051】
還元フォレートを栄養補助食品の形態で、栄養強化食物の形態で、または食物調製物の形態でヒト患者に経口投与することとは無関係に、用量当たりに投与される還元フォレートの総量は、(還元フォレートが異性体の混合物として含まれているときには、天然異性体成分に対して)約0.45マイクロモル-約50マイクロモルの範囲、例えば、0.45マイクロモル-50マイクロモル、約0.9マイクロモル-約50マイクロモル、0.9マイクロモル-50マイクロモル、約1.8マイクロモル-約50マイクロモル、1.8マイクロモル-50マイクロモル、約0.45マイクロモル-約25マイクロモル、約0.9マイクロモル-約25マイクロモル、約1.8マイクロモル-約25マイクロモル、約0.45マイクロモル-約10マイクロモル、約0.9マイクロモル-約10マイクロモル、約1.8マイクロモル-約10マイクロモル、約0.45マイクロモル-約5マイクロモル、約0.9マイクロモル-約5マイクロモル、約1.8マイクロモル-約5マイクロモル、約0.45マイクロモル-約2マイクロモル、約0.9マイクロモル-約2マイクロモル、および/または約1.8マイクロモル-約2マイクロモルであることができる。
【0052】
上記のように、経口投与は、1回用量、多数回用量または連続的に行うことができる。1回用量に含まれる還元フォレートの量は、部分的には投薬法および所定期間(例えば、1日当たり)に患者に投与される還元フォレートの総量によって変化するのは勿論である。紫外線への長期被爆から防護するための適当な1日投与量範囲としては、約0.45マイクロモル-約15マイクロモル、約0.9マイクロモル-約15マイクロモル、0.9マイクロモル-15マイクロモル、約1マイクロモル-約15マイクロモル、約2マイクロモル-約12マイクロモル、約3マイクロモル-約10マイクロモル、約5マイクロモル-約8マイクロモルなどが挙げられる。
【0053】
非経口投与に適当な投薬形態としては、溶液、懸濁液、分散液、エマルションなどが挙げられる。それらは、使用直前に滅菌注射用媒質に溶解または懸濁することができる滅菌固形組成物の形態で製造することもできる。それらは、当該技術分野で知られている懸濁剤または分散剤を含むことができる。非経口投与の例は、筋肉内、静脈内、直腸および皮下投与である。
【0054】
上記のように、還元フォレートは、経口および非経口経路以外の経路で投与することができる。例えば、還元フォレートは、目へ用いるのに適合させた点眼薬、クリーム、またはゲル溶液または懸濁液の形態で目に投与することができる。還元フォレートは、例えば、通常の局所用クリーム、ローション、スプレーまたはゲルマトリックスで局所投与することもできる。局所用処方物は、当該技術分野で知られているように、皮膚浸透性を高める送達系(例えば、リポソームなど)を配合することが有利であることがある。還元フォレートの局所用処方物は、当該技術分野で知られているような1種類以上の日焼け止めまたは遮光剤を含むこともできる。実例として、局所投薬形態は、被覆面積1 m2当たり(還元フォレートが異性体の混合物として含まれているときには、天然異性体成分に対して)約0.05マイクロモル-約1ミリモル、例えば、0.05マイクロモル-1ミリモル、約0.1マイクロモル-約0.5ミリモル、約0.5マイクロモル-約0.1ミリモルを含むように処方することができる。局所処方物は、予め被爆が予想される部分の患者の皮膚に適用するのが好ましい。追加の適用は、還元フォレートの存在を長期間にわたって維持する上で有用であることがあり、または追加の適用は水への有意な被爆の場合に有用であることがある。
【0055】
局所、経腸および非経口投与用組成物のような上記組成物の処方に関する更に詳細は、例えば、「医薬賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」, 第3版(2000年), 米国薬学会; 「産業薬学の理論と実際(The Theory and Practice of Industrial Pharmacy)」, 第3版, Lachman et al. 1986; 「医薬投薬形態: 錠剤編(Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Volume Edition)」, Christopher T編, 1995年; および「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」, 2000年に見出すことができ、上記文献の内容は、引用によって本明細書に含まれる。
【0056】
本発明により投与される還元フォレートの実際の好ましい量は、特定の還元フォレート、処方される特定の組成物および投与の様式によって変化することが理解されるであろう。還元フォレートの作用を変更することがある多くの因子 (例えば、体重、性別、食餌、投与時間、投与経路、排出速度、患者の状態、薬剤の組合せ、反応感受性および重篤度、および患者が被爆する紫外線の種類、強度および期間)を、当業者によって考慮することができる。投与は、最大許容用量範囲内で継続的または定期的に行うことができる。所定の組の条件に対する最適投与速度は、当業者が通常の計量投与試験を用いて確かめることができる。
【0057】
本発明を、下記の非制限実施例によって更に説明する。
実施例
【実施例1】
【0058】
実施例1 フルオレセインのX線による破壊に対する還元フォレートの効果
X線によるフルオレセイン(10mMリン酸緩衝液, pH7.0中のナノモル濃度)を、様々な濃度の5-メチルテトラヒドロフォレートまたは5-ホルミル-テトラヒドロフォレートの存在下にて検討した。プラスチックバイアル(1.5ml)に反応混合物を一杯に満たし、水のタンクの面から一定距離でタンクに浸漬し、X線放射線に8分間被爆させ、25 Gyの総被爆量を得た。フルオレセインの残留蛍光を、Perkin Elmer LS 5OB蛍光計で測定した。上記フォレートの約20マイクロモル-30マイクロモルの濃度では、フルオレセインの破壊による蛍光の減少を50%防護した。
【実施例2】
【0059】
実施例2 DNAのX線による破壊に対する還元フォレートの効果
スーパーコイルプラスミドDNA, PBR 322を、様々な濃度の5-メチルテトラヒドロフォレートまたは5-ホルミル-テトラヒドロフォレートと共に10mMリン酸緩衝液, pH7.0で希釈した。プラスチックバイアル(1.5ml)に反応混合物を一杯に満たし、水のタンクの面から一定距離でタンクに浸漬し、X線放射線に1.6分間被爆させ、5 Gyの総被爆量を得た。スーパーコイルDNAを、アガロースゲル上での電気泳動によって弛緩型および線形型形態から分離し、臭化エチジウムで染色し、Fuji FLA 5000蛍光イメージャー上で定量走査した。約30マイクロモル-40マイクロモルの濃度の上記フォレートは、スーパーコイルDNAの損失、すなわち鎖の分断によるを50%防護した。
【実施例3】
【0060】
実施例3 5-メチルテトラヒドロフォレートはDNAにおける光増感反応と鎖の分断を抑制する
この研究では、光増感剤の存在下および非存在下にてUVA、UVBまたは可視光線に被爆した5-メチルテトラヒドロフォレート(「5-MTHF」)を観察し、プラスミドDNAの光開裂に対する効果を試験した。5-MTHFは、単独で照射を受けたときには安定であったが、光増感反応では激減し、励起した光増感剤は消光し、一重項酸素を補足した。10μMを下回る濃度でも、5-MTHFは光励起したプテリン-6-カルボン酸(「PCA」)の存在下では葉酸の光分解およびプラスミドDNAの鎖の分断を予防した。
【0061】
この研究では、葉酸の光化学特性も再検討した。葉酸のプテリジン光生成物は、当初は6-ホルミル-プテリン(6-FP)であると提案された。更に最近の研究では、追加のp-アミノベンゾイルグルタメートも確認され、6-FPは更に分解されてPCAを生じることが示された。HPLCによる光分解反応を観察し、UVAに被爆した葉酸は最初にp-アミノベンゾイルグルタメートと6-FPを生じ、これが次にPCAに酸化されることを確かめた。同様の結果は、UVBへの被爆でも見られた。
【0062】
5-メチルテトラヒドロフォレートの反応経路を、同じ条件下で決定した。UVAまたはUVBに被爆した5-MTHFは、光の非存在下で観察されたのと同じ程度までしか分解されず、例えば、1時間で<5%自動酸化であった。葉酸の光分解を5-MTHFの存在下で観察したところ、5-MTHFは葉酸の光分解を効果的に抑制した。葉酸は、図1に示されるように、5-MTHFが1μM濃度を下回るまで維持された。
【0063】
特性決定された光増感反応における5-MTHFの反応を検討するため、ローズベンガルを用いた。光照射したローズベンガルは一重項酸素の他にスーパーオキシドラジカルを生成することができるので(Lee et al., Photochem. Photobiol., 45:79-86 (1987), この文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)、スーパーオキシドジスムターゼを反応混合物に加えた。図2Aに示されるように、5-MTHFは可視光線で増感されたローズベンガルの存在下で激減して自動酸化によって生じたのと同じ生成物を生成した。5-MTHFと励起状態のローズベンガルとの反応を一重項酸素との反応と区別するため、様々な酸素レベルで実験を行った。図2Aに示されるように、5-MTHFの消費速度はO2の濃度が増加するに従って低下した。しかしながら、反応にアルゴンを激しく噴霧することによって、消費は100%酸素で得た速度より下まで低下した。
【0064】
消費は少なくとも部分的には一重項酸素に依存していることを確かめるために、5-MTHFの減量をアジドの漸増濃度の存在下であること以外は100% O2を用いたのと同じ実験条件下で測定した。図2Bに示されるように、5-MTHFの消費についての初期濃度は5mMアジドでは約80%だけ減少し、一重項酸素の関与を示していた。図2Bに更に示されるように、0.5mMアジドの濃度では5-MTHFの消費速度は約50%だけ減少した。一重項酸素を効率的に発生する50μM PCA(Thomas et al., Photochem. Photobiol. Sci., 2:245-250 (2003), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)の存在下では、25μMの初期濃度の5-MTHFはUVA被爆下では15分間で完全に消費された。
【0065】
高酸素レベルにおけるローズベンガルによって誘発される光増感反応での5-MTHFの減少速度は、図2Cに示されるように、mMレベルのアスコルビン酸ナトリウムの存在下では減少することが分かった。5-MTHFの減少速度は、アスコルビン酸塩の減少と平行して経時的に増加した。最新のHPLC法の限界では、5-MTHFの減少の初期速度を測定することができなかった。10μM PCAの存在下でのUVA照射条件下では、1mMアスコルビン酸塩は25μM 5-MTHFを反応中実施例に保持した。
【0066】
DNAはUVA放射線の発色団ではないが、これは光増感剤によって開始される酸化反応によって損傷を受ける可能性がある (Fiel et al., Cancer Res., 41:3543-3545 (1981)、およびBlazek et al., Photochem. Photobiol., 49:607-613 (1989), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。50μM葉酸または50μM PCAの存在下でスーパーコイルプラスミド-DNAをUVAに80分間被爆させたところ、図3(上パネル)に示されるように、高率で鎖が分断された。UV被爆は、以前に報告されているように、それだけではスーパーコイルプラスミドに損傷効果を持たなかった(これもまた図3に示されている)(Hirakawa et al., Arch. Biochem. Biophys., 410:261-268 (2003), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。また、葉酸またはPCAは、50μMでは、暗所でプラスミドと80分間インキュベーションしたときには、効果を示さなかった。
【0067】
上記のように、5-MTHFは、光増感反応に酸化すると激減する。その濃度の維持を改善するため、50μM葉酸または50μM PCAを含む0.25mM 5-MTHFを反応混合物に1.1μl/分で加え、その残留濃度をHPLCによってUV被爆中の様々な時点に分析した。いずれの場合にも、UVAによるDNA損傷は5-MTHFによって抑制され、5-MTHFは連続添加にも拘わらず初期の10μMから反応の終了までに0.25μMに減少した (図3, 下パネル)。10mMのアジ化ナトリウムも同じ条件下では完全な防護を示し、損傷が主として一重項酸素によるものであることが確かめられた。
【0068】
天然フォレートのUVAによる直接的光分解は、光増感剤の非存在下では起こらなかった。これは、5-MTHFが330 nmより長波長では有意な吸光度を持たないことによって説明することができる。興味深いことには、5-MTHFの安定性は、その290 nmにおける吸収が重複しているUVB照射によっても影響を受けなかった。一重項酸素が5-MTHFとUVBとの相互作用によって生成するとは思われず、そうでなければ5-MTHFは暗所でのその自動酸化より速い速度で減少してしまうであろう。励起状態の5-MTHFは、恐らく非放射性崩壊を行い、および/または分子状酸素とのその相互作用より速やかに蛍光によってエネルギーを放出するものと思われる。
【0069】
高濃度のO2下でのローズベンガル反応における5-MTHFの減量が遅いことは、(図2Aに示されるように)励起状態の光増感剤の消滅に加えて、5-MTHFが一重項酸素と一層低速で反応することを示している。これは、図4に示されている。競争反応では、5-MTHF 高濃度のO2での一重項酸素の除去におけるアジドより約20倍効果的であった(図2B)。水中におけるアジドと一重項酸素の反応の速度定数は4.5・108 M-1-1 であるので(Miskoski et al., Photochem. Photobiol., 57:447-452 (1993), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)、5-MTHFと一重項酸素の反応はほぼ拡散によって限定されると思われる。5mMアジドによる5-MTHFの減量が完全に抑制されることがないのは、5-MTHFと光活性化したローズベンガルとの残留反応による可能性がある。反応を100%酸素(すなわち、-1.4mM)で飽和しても、反応を一重項酸素経路に完全に追い込むには十分でなかった可能性がある(図4)。
【0070】
DNAにおける鎖の分断の発生は、以前に報告されているように、光増感反応での一重項酸素の形成と関係している (Fiel et al., Cancer Res., 41:3543-3545 (1981); Ravanat et al., J. Photochem. Photobiol. B, 63:88-102 (2001); Ito et al., Biol. Chem., 378:1307-1312 (1997); Ravanat et al., CL. Biol. Chem., 276:40601-40604 (2001);およびDevasagayam et al., Biochemistry, 30:6283-6289 (1991), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。一重項酸素はPCAと6-FPによって生成し、葉酸の光崩壊に関与することが示唆されている(Thomas et al., Photochem. Photobiol. Sci., 2:245-250 (2003), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。これにより、葉酸の光崩壊の促進の観察を説明することができる。本発明の研究では、PCAは光増感剤として働き、Hirakawa et al., Arch. Biochem. Biophys., 410:261-268 (2003)に記載されているように、UVAへ被爆中のDNA鎖の分断形成を触媒することを確かめた(上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。Hirakawaが提案した電子移動の機構(I型)とは対照的に、PCAに依存する光増感反応でアジドがDNA損傷を抑制したという知見は、一重項酸素が葉酸およびその光生成物の損傷効果にも関与している可能性があることを示唆している。
【0071】
光損傷を生じることがある多くの内在性光増感剤がある(Fiel et al., Cancer Res., 41:3543-3545 (1981); Fiel et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 107:1067-1074 (1982); およびManns et al., Free Radical Res., 37:391-397 (2003), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。未代謝葉酸が、200μgを上回る葉酸を消費する個体の血漿中に検出されている(Kelly et al., Am. J. Clin. Nutr., 65:1790-1795 (1997), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。皮膚における未代謝葉酸の組織レベルは現在は知られていないので、光増感反応に対する葉酸の寄与は未解決のままである。
【0072】
生理濃度のアスコルビン酸塩は、図2Cに示されるように、光増感による5-MTHFの減量を減少させることが分かった。水中での一重項酸素とアスコルビン酸塩の反応の二次速度定数は8.3・106 M-1-1であるので(Chou et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 115:932-937 (1983), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)、2mMアスコルビン酸塩との擬似一次速度は1.7・104-1である。これは、一重項酸素の自然崩壊速度より10倍以上遅い (Studer et al., J. Am. Chem. Soc., 111:7643-7644 (1989), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。更に、アスコルビン酸塩は、ローズベンガルを加えた成長可能なTHP-I細胞におけるタンパク質由来のペルオキシドの生成に効果がないことが以前に報告されている(Wright et al., Free. Radic. Biol. Med., 34:637-647 (2003), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。従って、この濃度のアスコルビン酸塩は、一重項酸素を直接除去することによってまたはローズベンガルを直接除去することによって5-MTHFを有意に防護しない。アスコルビン酸塩は、5-MTHFをその光分解反応の初期中間体 (ほとんどの場合、そのラジカルカチオン)を還元することによって復元することができる。図2Cに示される結果は、かなりの画分が最初のHPLC分析の時点までにデヒドロアスコルビン酸塩に速やかに転換されるので、アスコルビン酸塩が5-MTHFを保持する能力を低く見積もっている。
【0073】
Branda and Eatonによって報告された研究 (Branda et al., Science, 201:625-626 (1978), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)では、メトキサレンを投与した乾癬患者の血漿中のフォレート濃度に対するUV被爆と光線療法の効果を測定し、UVによるフォレートの有意な光分解を明らかにした。この研究と疫学データーに基づき、神経管の欠損とUV被爆との可能な因果関係を提案した (Van Rootselaar, Med. Hypotheses, 41:78-82 (1993)、およびJablonski, Med. Hypotheses, 52:581-582 (1999), 上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。しかしながら、フォレートのイン・ビボでの光分解と臨床的フォレート欠損との関連性は、未だはっきりとは確立されていない。本発明者らの結果は、この研究で観察されたフォレートの光分解は、5-MTHFの本質的な光不安定性によるよりは血漿中の光増感剤に依存していると思われることを暗示している。皮膚および/または血漿中の光増感剤およびもしかするとアスコルビン酸塩の状態によっては、日光への長期被爆によりフォレート貯留物に影響が生じることがある。5-MTHFの崩壊生成物の性質に関する予備検討では、それらはなおp-アミノベンゾイル-グルタメート側鎖を含んでいることを示している。ヒトの尿中のフォレートカタボライトの初期の研究ではp-アミノベンゾイルグルタメートおよびそのN-アセチル化体を探すことだけであったので、酸化的または光分解的崩壊を介する5-MTHFの減量は検出されていなかった。
【0074】
結論として、本発明の結果は、葉酸とは異なり、5-MTHFはUVによって直接光分解されずまたプラスミドDNAの開裂を誘発しない。5-MTHFは、恐らくは励起状態の光増感剤を消光させかつ一重項酸素を除去することによって、増感反応におけるDNAを防護することができる(図4にまとめられている通り)。本発明者らの結果は、μM濃度以内の天然フォレートである5-MTHFは、光増感が起こるときに生体分子を防護することができることを示唆している。更に、アスコルビン酸塩は、光分解的減成に対してフォレート貯留物を保持することによって相乗効果を得ることができる。
【0075】
この実施例3で行った実験に関する更に詳細を、下記の実施例4に示す。
【実施例4】
【0076】
実施例4 5-メチルテトラヒドロフォレートが光増感反応とDNAの鎖分断を抑制することを示す研究に関する実験的詳細
下記の材料と方法を用いた。アジ化ナトリウム(>99%)は、Flukaから購入した。葉酸 (98% + 8% H2O)、アスコルビン酸ナトリウム、およびスーパーオキシドジスムターゼ (「SOD」)はSigma (セントルイス, ミズーリー)から購入した。5-メチル-6S-テトラヒドロ葉酸カルシウム塩は、Eprova (スイス国)から購入した。スーパーコイルプラスミドDNA, PBR 322 (4361塩基対, 分子量 2.83 x 106ダルトン)は、Fermentasから得た。プテリン-6-カルボン酸および6-ホルミル-プテリンは、Schirck's Laboratories (ジョナ, スイス国)から購入した。ローズベンガル(95%ナトリウム塩)はAldrichから購入し、BLUEJUICE(登録商標)ゲルローディングバッファーおよびSYBR Safe DNAゲル染色剤はInvitrogenから購入した。
【0077】
UVAおよびUVB照射は、下記の条件下で行った。試料を、15 W UVAランプ, Sylvania 350 BL, (λmax=365 nm, 820 μW/cm2)または15 W UVBランプ, UVP (λmax=302 nm, 820 μW/cm2)(いずれもUVP, Inc. (米国)から購入)から30 cmの距離でUV光線に被爆させた。ランプは、XX被爆スタンドに載せたUVP Model XX-15ランプホルダーに取り付けた。
【0078】
溶液深さを約3 mmとするため、0.5 mlの反応容積を透明な24穴プレートで用いた。UVA被爆中の蒸発を防止するため、330 nm以上の波長で80%を上回る透過が可能なMICROAMP(登録商標) Optical Adhesive Film (ABI)で試料を被覆した。UVB反応は、石英ウインドウで被覆した。総ての反応は、100μMジエチレントリアミン五酢酸の存在下で空気に対して平衡にした10mMリン酸カリウムpH 7.41 (10mMおよび21℃で測定)中で周囲温度で行い、偶発的酸化還元活性金属イオンの効果を防止し、Fenton反応を自動切り戻しし、ヒドロキシルラジカルによって誘発される損傷を回避した。
【0079】
DNAにおける鎖の分断は、下記のようにして検出した。スーパーコイルプラスミドDNAを一本鎖の分断によりニックド円形(弛緩状)に転換した後、二本鎖の分断により線状形態に転換する。これら3つの形態は、アガロースゲル電気泳動によって分離することができる。スーパーコイルDNAは線形形態より移動距離が大きく、線形形態はまた弛緩形態より移動距離が大きい。
【0080】
0.1μgのプラスミドDNA、PBR 322、および葉酸、5-MTHFまたはPCAを10mMリン酸カリウム, pH 7.4中で混合したものを、総被爆量4 J/cm2に対して上記UVA照射条件下で80分間インキュベーションした。5-MTHFの濃度を部分的に維持するため、0.25mM溶液をマグネティックスターラーを有するHarvardシリンジポンプを用いて1.1μl/分で反応混合物に連続的に加えた。
【0081】
次に、10Xゲルローディングバッファー2μlを添加した後、反応混合物10μlの試料にアガロースゲル電気泳動を行った。電気泳動用のアガロースゲルは、0.9%アガロースを1mM EDTAを含む45mMトリス-ホウ酸塩緩衝液(pH 8.3)に溶解することによって調製した。電気泳動を、4 V/cmで1時間行った。ゲルを1μg/ml SYBR Safe染色剤と共にインキュベーションし、DNAバンドをFuji FLA-5000ホスホル-イメージング装置を用いて操作した。
【0082】
光励起したプテリン-6-カルボン酸または葉酸との反応は、下記通りに行った。試料を、10mMリン酸カリウム緩衝液 pH 7.42中アスコルビン酸ナトリウムの非存在下または存在下で5-MTHFと葉酸またはPCAを含む0.5 ml反応容積で、24穴プレートにてUVA光線に被爆させた。反応は、上記照射条件下で空中酸素中で周囲温度で行った。試料をシリンジで採取し、HPLCに直接注入した。
【0083】
ローズベンガルとの光化学反応は、下記の通りに行った。隔膜栓付ガラスキュベット中の試料に、Wratten #16ゼラチンフィルターを通過した40Wタングステンランプからの光線を12cmの距離から照射した。反応を空気と平衡させ、または100%または1.8% O2/アルゴン、または100%アルゴンで置換し、照射は周囲温度で行った。試料をシリンジで隔膜を通して採取し、HPLCに直接注入した。
【0084】
5-MTHF光分解は、下記の手順を用いてHPLCによって分析した。試料を光線被爆中に様々な時点で採取し、Lunaフェニル-ヘキシル5μm (25 x 0.46cm)カラム(Phenomenex)上でHPLCによって分析し、リン酸アンモニウム(アンモニウム中20mM), pH2.8/アセトニトリル(17:1)を用いて1.5ml/分の流速で溶出し、Waters 996光ダイオード分光光度計を用いてUV吸光度によって検出した。
【実施例5】
【0085】
実施例5 イオン化放射線への長期被爆からの防護のための還元フォレートを含む典型的な毎日のマルチビタミン錠剤の処方物
イオン化放射線への長期被爆からの防護のための還元フォレートを含む典型的な毎日のマルチビタミン錠剤の処方物は、炭酸カルシウム、5-MTHFのCa塩0.4-7 mg (例えば、4 mg)、アスコルビン酸12-300 mg (例えば、60 mg)、ゼラチン、ビタミンEアセテート5-150 I.U. (例えば、30 I.U.)、澱粉、ニコチンアミド 4-100 mg (例えば、20 mg)、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、パントテン酸カルシウム 2-50 mg (例えば、10 mg)、ケイ酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ピリドキシン塩酸塩 0.4-10 mg (例えば、2 mg)、リボフラビン 0.35-8.5 mg (例えば、1.7 mg)、チアミン一硝酸塩 0.3-7.5 mg (例えば、1.5 mg)、βカロチンおよびビタミンAアセテート 1000-25000 I.U. (例えば、5000 I.U.)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ビタミンD 80-2000 I.U. (例えば、400 I.U.)、ビタミンB12 1-30μg(例えば、6μg)、およびレシチンを含むことができる。
【実施例6】
【0086】
実施例6 紫外線への長期被爆からの防護のための還元フォレートを含む典型的な毎日のマルチビタミン錠剤の処方物
紫外線への長期被爆からの防護のための還元フォレートを含む典型的な毎日のマルチビタミン錠剤の処方物は、炭酸カルシウム、5-MTHFのCa塩0.4-7 mg (例えば、4 mg)、アスコルビン酸12-300 mg (例えば、60 mg)、ゼラチン、ビタミンEアセテート5-150 I.U. (例えば、30 I.U.)、澱粉、ニコチンアミド 4-100 mg (例えば、20 mg)、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、パントテン酸カルシウム 2-50 mg (例えば、10 mg)、ケイ酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ピリドキシン塩酸塩 0.4-10 mg (例えば、2 mg)、リボフラビン 0.35-8.5 mg (例えば、1.7 mg)、チアミン一硝酸塩 0.3-7.5 mg (例えば、1.5 mg)、βカロチンおよびビタミンAアセテート 1000-25000 I.U. (例えば、5000 I.U.)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ビタミンD 80-2000 I.U. (例えば、400 I.U.)、ビタミンB12 1-19μg(例えば、6μg)、およびレシチンを含むことができる。
【0087】
本発明を例示の目的で詳細に説明してきたが、この詳細な説明はその目的のためだけのものであり、当業者であれば、特許請求の範囲に定義されている本発明の精神および範囲から離反することなく変更を行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】5-メチルテトラヒドロフォレート(「5-MTHF」)による葉酸光分解を示すグラフ。試料は、光暴露中に様々な時点で採取し、リン酸アンモニウム(アンモニウムで20mM), pH2.8/アセトニトリル(17:1)を用いて1.5ml/分の流速で溶出し、Waters 996,光ダイオード分光光度計を用いるUV吸光度によって検出するLunaフェニル-ヘキシル5μm(25 x 0.46cm)カラム(Phenomenex)上でHPLCによって分析した。四角形は5-MTHF濃度を示し、円形は葉酸濃度を示す。
【図2】図2A−2Cローズベンガルによる5-MTHFの光分解を示すグラフ。図2Aでは、5-MTHF, 25μM, pH7.4を、100% O2 (円形)、空気(四角形)または1.8% O2/アルゴン(三角形)中5μMローズベンガルおよびスーパーオキシドジスムターゼ(「SOD」) 900 Uの存在下にてWratten #16ゼラチンフィルターを通過した40Wタングステンランプからの光によって照明した。図2Bでは、5-MTHF, 25μM, pH7.4を、100% O2の存在下および10μMローズベンガルおよびSODの存在下でアジドなし(三角形)、0.5mMアジド(四角形)または5mMアジド(円形)でWratten #16ゼラチンフィルターを通過した40 Wタングステンランプからの光によって照明した。図2Cでは、25μM 5-MTHF, pH7.4を、100% O2の存在下および10μMローズベンガルおよびSODの存在下でアスコルビン酸塩なし(菱形)、0.2mMアスコルビン酸塩(三角形)、1mMアスコルビン酸塩(四角形)または2mMアスコルビン酸塩(円形)でWratten #16ゼラチンフィルターを通過した40 Wタングステンランプからの光によって照明した。
【図3】5-MTHFがプテリン-6カルボン酸(「PCA」)によって触媒されるUVA性のDNA損傷を抑制することを示すゲル電気泳動実験のイメージ。上パネルでは、スーパーコイル状のプラスミドDNAであるPBR 322 (0.1μg)を、50μM PCAのみの存在下でまたは実施例4に記載のように5-MTHFを連続添加しながらのPCAの存在下でUVAに80分間暴露した。下パネルでは、スーパーコイルプラスミドDNAであるPBR 322 (0.1μg)を、50μM 葉酸のみ、50μM 5-MTHFと共に加えた葉酸、または5-MTHFのみの存在下にてUVAに80分間暴露した。それぞれの場合に、反応混合物(10μl)を次にアガロースゲル電気泳動を行った。スーパーコイル状形態(S)、ニックド円形(弛緩状)(R)および線状形態(L)が示される。
【図4】5-MTHFの光酸化防止活性の可能な機構。一重項酸素濃度が低い低酸素では、5-MTHFは光活性化したローズベンガル(「RB」)と直接反応するため、より速やかな速度で消耗される。一重項酸素の形成が増加する高O2レベルでは、5-MTHFの消耗は遅くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者をイオン化放射線の有害な効果から防護する方法であって、少なくとも1種類の還元フォレートの有効量を患者に投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項2】
還元フォレートがテトラヒドロ葉酸、5-メチル-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-テトラヒドロ葉酸、7,8-ジヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
還元フォレートが(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
還元フォレートがラセミテトラヒドロ葉酸、ラセミ5-メチル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ10-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5,10-メテニル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5-ホルムイミノ-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
患者が有害レベルのイオン化放射線への暴露を受けている者である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
患者が有害レベルのイオン化放射線への暴露を受ける危険性を有する者である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
イオン化放射線がγ線である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
イオン化放射線がX線放射線である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
イオン化放射線が宇宙放射線である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
還元フォレートを経口投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
還元フォレートを徐放性処方物で経口投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
還元フォレートを静脈投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
還元フォレートを、還元フォレートを含んでなる組成物で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
組成物が更に1種類以上の追加の生物活性材料を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1種類以上の追加の生物活性材料が放射線防護剤を含んでなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
放射線防護剤がヨウ化物塩である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ヨウ化物塩がヨウ化カリウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
放射線防護剤がステロイド性放射線防護剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ステロイド性放射線防護剤がアンドロステンジオールである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
組成物が、還元フォレートの他に1種類以上の他のビタミンを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
還元フォレートを、20ナノモルを上回る還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルを確立しおよび/または維持するのに有効な条件下で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
還元フォレートを、約30ナノモルを上回る還元フォレートのホメオスタシス血漿レベルを確立しおよび/または維持するのに有効な条件下で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
還元フォレートを、約0.45マイクロモル-約15マイクロモルの一日用量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
還元フォレートを、約0.45マイクロモル-約2ミリモルを含む用量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
第一の放射線防護剤であって、還元フォレートである第一の放射線防護剤、および
第二の放射線防護剤を含んでなる、放射線防護組成物。
【請求項26】
還元フォレートが、テトラヒドロ葉酸、5-メチル-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-テトラヒドロ葉酸、7,8-ジヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項25に記載の放射線防護組成物。
【請求項27】
還元フォレートが、(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項25に記載の放射線防護組成物。
【請求項28】
還元フォレートが、ラセミテトラヒドロ葉酸、ラセミ5-メチル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ10-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5,10-メテニル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5-ホルムイミノ-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項25に記載の放射線防護組成物。
【請求項29】
第二の放射線防護剤がヨウ化物塩である、請求項25に記載の放射線防護組成物。
【請求項30】
ヨウ化物塩がヨウ化カリウムである、請求項29に記載の放射線防護組成物。
【請求項31】
第二の放射線防護剤がステロイド性放射線防護剤である、請求項25に記載の放射線防護組成物。
【請求項32】
ステロイド性放射線防護剤がアンドロステンジオールである、請求項31に記載の放射線防護組成物。
【請求項33】
組成物がビタミンB12を実質的に含まない、請求項25に記載の放射線防護組成物。
【請求項34】
組成物が還元フォレート約0.45マイクロモル-約2ミリモルを含んでなる、請求項25に記載の放射線防護組成物。
【請求項35】
第二の放射線防護剤がヨウ化カリウムでありかつ組成物がヨウ化カリウム約1mg-約500mgを含んでなる、請求項25に記載の放射線防護組成物。
【請求項36】
組成物が還元フォレート約0.45マイクロモル-約2ミリモルを含んでなる、請求項35に記載の放射線防護組成物。
【請求項37】
患者を紫外線の有害な効果から防護する方法であって、
患者に少なくとも1種類の還元フォレートの有効量を含んでなる組成物であって、ビタミンB12を実質的に含まない上記組成物を投与することを含んでなる、
上記方法。
【請求項38】
還元フォレートが、テトラヒドロ葉酸、5-メチル-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-テトラヒドロ葉酸、7,8-ジヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
還元フォレートが、(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルムイミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
還元フォレートが、ラセミテトラヒドロ葉酸、ラセミ5-メチル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ10-ホルミル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5,10-メチレン-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5,10-メテニル-テトラヒドロ葉酸、ラセミ5-ホルムイミノ-テトラヒドロ葉酸、およびそれらのポリグルタミル誘導体からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
上記組成物がビタミンB12を含んでいないか、または上記組成物がビタミンB12を患者にとってのビタミンB12の推奨一日許容量の300%以下の量で含んでなる、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
上記組成物がビタミンB12を含んでいないか、または上記組成物がビタミンB12を患者にとってのビタミンB12の推奨一日許容量の200%以下の量で含んでなる、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
上記組成物がビタミンB12を含んでいないか、または上記組成物がビタミンB12を患者にとってのビタミンB12の推奨一日許容量以下の量で含んでなる、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
組成物を経口投与する、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
組成物を局所投与する、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
組成物が徐放性組成物でありかつ組成物を経口投与する、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−546799(P2008−546799A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518413(P2008−518413)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/024415
【国際公開番号】WO2007/002356
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(594066213)サウス、アラバマ、メディカル、サイエンス、ファウンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】SOUTH ALABAMA MEDICAL SCIENCE FOUNDATION
【出願人】(503037929)チルドレンズ ホスピタル アンド リサーチ センター アット オークランド (6)
【Fターム(参考)】