放射線位置検出器
【課題】放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを抑えることができる放射線位置検出器を提供する。
【解決手段】放射線位置検出器1Aは、放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセル11がM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロック10Aと、シンチレータブロック10Aの表面と光学的に結合された複数の光センサ20とを備える。各光センサ20は、シンチレータブロック10Aにおける多面体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11のそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。
【解決手段】放射線位置検出器1Aは、放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセル11がM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロック10Aと、シンチレータブロック10Aの表面と光学的に結合された複数の光センサ20とを備える。各光センサ20は、シンチレータブロック10Aにおける多面体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11のそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータブロックと光センサとを含む放射線位置検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線位置検出器は、例えばPET(PositronEmission Tomography)装置に用いられる。PET装置に用いられる放射線位置検出器は、陽電子放出アイソトープ(RI線源)が投入された被検体内における電子・陽電子の対消滅に伴って発生し互いに逆方向に飛行する一対のガンマ線を検出する。PET装置は、複数の放射線位置検出器を利用した同時計数法により一対のガンマ線を検出し、この同時計数情報を蓄積してヒストグラムを作成する。そして、PET装置は、このヒストグラムに基づいて、測定空間における一対のガンマ線の発生頻度の空間分布を表す画像を再構成する。このPET装置は核医学分野等で重要な役割を果たしており、これを用いて例えば生体機能や脳の高次機能の研究を行うことができる。
【0003】
このようなPET装置等において好適に用いられる放射線位置検出器として、複数のシンチレータセルを3次元に配列したシンチレータブロックと、光センサとを備えているものがある(例えば特許文献1を参照)。シンチレータブロックは、入射したガンマ線を吸収してシンチレーション光を発生する。光センサは、シンチレータブロック表面における複数の位置に取り付けられ、シンチレーション光を検出する。このような構成により、シンチレータブロックにおけるガンマ線入射位置およびガンマ線量が特定される。
【特許文献1】特開2007−93376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された放射線位置検出器では、最下層に配置されたシンチレータ表面と対向するようにしか受光素子(光センサ)が配置されていないため、高さ方向(すなわち、底面を直交座標系におけるXY平面と仮定したときのZ軸方向)における放射線入射位置の検出精度が低い。また、受光素子側から入射した放射線における放射線入射位置の検出精度並びに放射線量の検出感度及び精度が低い。したがって、放射線位置検出器への放射線の入射方向によってこれらの検出精度がばらついてしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを抑えることができる放射線位置検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明による第1の放射線位置検出器は、放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセルがM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロックと、シンチレータブロックの表面と光学的に結合された複数の光センサとを備え、各光センサが、シンチレータブロックにおける多面体の頂点を構成する全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明による第2の放射線位置検出器は、放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセルがM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロックと、シンチレータブロックの表面と光学的に結合された複数の光センサとを備え、各光センサが、シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする。
【0008】
上記した第1及び第2の放射線位置検出器においては、複数の光センサの各々が、(1)シンチレータブロックにおける多面体の頂点を構成する全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されているか、或いは(2)複数の光センサの各々が、シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されている。これらの構成(1)、(2)のうち少なくとも一方の構成でもって複数の光センサが配置されることにより、シンチレータブロックの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサが配置されるので、シンチレータブロックの列方向、行方向、及び積層方向それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、上記した第1及び第2の放射線位置検出器によれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0009】
なお、上記構成(1)には、上記構成(2)と比較してより少ない光センサによって放射線入射位置及び放射線量を好適に検出できるという利点がある。例えばシンチレータブロックが六面体である場合、上記構成(2)では12本の辺に対応して少なくとも12個の光センサが必要となるが、上記構成(1)では8つの頂点に対応する8個の光センサで済ませることができる。また、上記構成(2)には、上記構成(1)と比較してより高い精度で放射線線入射位置及び放射線量を検出できるという利点がある。例えば、シンチレータブロックが、直方体状のシンチレータセルを3行、3列、及び3層に配列して成る場合を考える。上記構成(1)では、光センサと光学的に結合されないシンチレータセル(以下、非結合セルという。但し、シンチレータブロックの中心に配置されたシンチレータセルを除く。)の面のうち、光センサと光学的に結合されるシンチレータセル(以下、結合セルという)に隣接する面の数が2であるのに対し、上記構成(2)では、非結合セルの面のうち結合セルに隣接する面の数は3または4となる。したがって、構成(2)では、非結合セルの発光に対する光検出精度が構成(1)より向上するので、より高い精度で放射線入射位置及び放射線量を検出できる。
【0010】
また、放射線位置検出器は、シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成せず頂点も構成しないシンチレータセルの表面と光学的に結合された別の光センサを更に備えることを特徴としてもよい。このように、シンチレータブロックの頂点や辺を構成しないシンチレータセルに対して上記複数の光センサとは別の光センサを補助的に設けることにより、放射線入射位置及び放射線量の検出精度を更に高めることができる。また、この場合、上記別の光センサが、シンチレータブロックにおける多面体の面の中心を構成するシンチレータセルの表面と光学的に結合されていると尚良い。
【0011】
また、放射線位置検出器は、シンチレータブロックが立方体状であることを特徴としてもよい。すなわち、シンチレータブロックの行方向、列方向、および積層方向におけるシンチレータブロックの寸法を互いに等しくすることによって、各方向における検出精度のばらつきを効果的に抑えることができる。また、この場合、複数のシンチレータセルが立方体状であると尚良く、これによりシンチレータブロックの行方向、列方向、および積層方向におけるシンチレータセルの配列数が互いに等しくなり、各方向における放射線入射位置の分解能を均一にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による放射線位置検出器によれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。また、少ない受光素子で構成できるためコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明による放射線位置検出器の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図においては説明の便宜の為にXYZ直交座標系が示されている。
【0014】
(第1の実施の形態)
まず、本発明に係る放射線位置検出器の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線位置検出器1Aの外観を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す放射線位置検出器1Aの分解斜視図である。放射線位置検出器1Aは、シンチレータブロック10A、複数の光センサ20、及び反射材30を備えている。
【0015】
シンチレータブロック10Aは、複数のシンチレータセル11からなる多面体状の外観を有している。本実施形態のシンチレータブロック10Aは、立方体状の外観を有しており、複数の立方体状のシンチレータセル11が3行3列に配列されて成るシンチレータアレイ12(図2参照)が3層積層されることにより構成されている。各シンチレータセル11は、ガンマ線などの放射線を吸収し、その線量に応じた強さのシンチレーション光を発生する。このようなシンチレータセル11は、例えばCeがドープされたGd2SiO5(GSO)、Lu2SiO5(LSO)やBi4Ge3O12(BGO)によって好適に構成される。
【0016】
複数のシンチレータセル11の全ての表面には、鏡面研磨処理もしくは粗研磨処理が施されている。具体的には、図2に示すように、複数のシンチレータセル11の表面のうち、シンチレータブロック10Aの底面、側面、または上面を構成する面には粗研磨処理が施されている。但し、シンチレータブロック10Aの底面、側面、または上面を構成する面であっても、後述する光センサ20が取り付けられる部分には鏡面研磨処理が施されている。また、複数のシンチレータセル11の表面のうち、隣接するシンチレータセル11と対向する面には鏡面研磨処理が施されている。なお、本実施形態では、互いに隣接するシンチレータセル11同士の隙間には屈折率調整材等は配置されておらず、該隙間は空気層となっている。
【0017】
複数の光センサ20は、例えばMPPC(Multi-Pixel Photon Counter)といった半導体光検出素子である。MPPCは、複数のガイガーモードAPD(アバランシェフォトダイオード)のピクセルから成るフォトンカウンティングデバイスである。各光センサ20は、その光検出面がシンチレータブロック10Aの表面と対向するようにシンチレータブロック10A上に取り付けられることにより、シンチレータブロック10Aと光学的に結合されている。具体的には、各光センサ20は、それぞれ異なるシンチレータセル11の一つの面上に配置されている。光センサ20が配置されるシンチレータセル11は、シンチレータブロック10Aにおける多面体(本実施形態では立方体)の頂点を構成する全てのシンチレータセルである。光センサ20はこれらのシンチレータセル11のそれぞれに対して一個ずつ配置され、対応するシンチレータセル11の一つの面と光学的に結合されている。なお、本実施形態では、シンチレータブロック10Aにおいて立方体の頂点を構成する8個のシンチレータセル11に取り付けられた8個の光センサ20のうち、4個の光センサ20が、当該立方体の一つの側面を構成するシンチレータセル11の面上に配置され、他の4個の光センサ20が、該一つの側面とは反対側の側面を構成するシンチレータセル11の面上に配置されている。
【0018】
ここで、シンチレータブロック10Aを構成する複数のシンチレータセル11のうち、X座標、Y座標、及びZ座標が最も小さいシンチレータセル11をC1,1,1と表し、このC1,1,1を基準としてX軸方向に第m番目に配置され、Y軸方向に第n番目に配置され、Z軸方向に第k番目に配置されたシンチレータセル11をCm,n,kと表すと、光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,1,1、C1,1,3、C1,3,1、C1,3,3、C3,1,1、C3,1,3、C3,3,1、及びC3,3,3の各シンチレータセル11の面上に配置されている。また、これらの光センサ20は、上記各シンチレータセル11の露出面のうちXZ平面に沿った(Y軸と交差する)面上に配置されている。
【0019】
反射材30は、シンチレータブロック10Aの表面のうち、光センサ20が設けられていない部分を全て覆うように配置されている。前述したように、光センサ20が設けられていないシンチレータブロック10Aの表面には粗研磨処理が施されており、反射材30は、この粗研磨面に到達したシンチレーション光が外部へ洩れることを防ぐ。
【0020】
以上の構成を備える放射線位置検出器1Aを用いた、放射線入射位置および放射線量の検出方法を説明する。図3は、放射線位置検出器1Aの側断面図である。図3において、例えばシンチレータブロック10A内の点Oでシンチレーション光Lが発生した場合、このシンチレーション光Lは周囲に均等に拡散する。そして、シンチレーション光Lの光子がいずれかの光センサ20へ到達するまでの経路としては、以下の3つが考えられる。
1.光子が途中で反射することなく光センサ20に直接到達する経路(図中の経路A1)
【0021】
この場合、各光センサ20において検出される光子数は点Oから当該光センサ20までの距離に依存し、点Oからより近い光センサ20ほど、該光子を検出する確率が高い。
2.光子がシンチレータセル11の粗研磨面(拡散面)で拡散して光センサ20に到達する経路(図中の経路A2)
【0022】
この場合、拡散面に達した光子が反射する方向は不規則となるが、反射した位置からより近い光センサ20で検出される確率が高くなる。その結果、点Oからより近い光センサ20ほど、該光子を検出する確率が高くなる。
3.光子がシンチレータセル11と空気層との境界面で全反射して光センサ20に到達する経路(図中の経路A3)
【0023】
光子がシンチレータセル11と空気層との境界面に臨界角以上の角度で入射した場合には、該光子は全反射する。これにより、光の拡がりが抑制され、位置分解能が向上する。
【0024】
このように、放射線位置検出器1Aにおいては、放射線入射位置に近い光センサ20ほどシンチレーション光Lの光子を多く検出することとなる。したがって、放射線入射位置を求める方法としては、次に示す重心演算が好適である。すなわち、或るシンチレータCm,n,kに配置された光センサ20において検出される光子数をPm,n,kとすると、放射線入射位置(x,y,z)は、
x={P3,1,1+P3,1,3+P3,3,1+P3,3,3}/P
y={P1,3,1+P1,3,3+P3,3,1+P3,3,3}/P
z={P1,1,3+P1,3,3+P3,1,3+P3,3,3}/P
(但し、Pは全ての光センサ20に入射した総光子数)
として算出される。
【0025】
本実施形態による放射線位置検出器1Aにおいては、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Aにおける立方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11(すなわち、C1,1,1、C1,1,3、C1,3,1、C1,3,3、C3,1,1、C3,1,3、C3,3,1、及びC3,3,3の各シンチレータセル11)のそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。これにより、シンチレータブロック10Aの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサ20が配置されるので、シンチレータブロック10Aの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、及び積層方向(Z軸方向)それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、本実施形態の放射線位置検出器1Aによれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0026】
また、本実施形態のように、シンチレータブロック10Aは立方体状であることが好ましい。すなわち、シンチレータブロック10Aの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、および積層方向(Z軸方向)におけるシンチレータブロック10Aの寸法を互いに等しくすることによって、各方向における検出精度のばらつきを効果的に抑えることができる。また、この場合、複数のシンチレータセル11が立方体状であることがより好ましい。これにより、シンチレータブロック10Aの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、および積層方向(Z軸方向)におけるシンチレータセル11の配列数が互いに等しくなり、各方向における放射線入射位置の分解能を均一にできる。
【0027】
なお、本実施形態においてはシンチレータブロック10Aの一つの側面上に4個の光センサ20を配置し、該側面とは反対側の側面上に他の4個の光センサ20を配置した例を説明したが、光センサ20の配置方向はこれに限られるものではなく、例えば図4に示された放射線位置検出器1Bのように、或る光センサ20が上記2側面とは異なる面上(例えばシンチレータブロック10Aの上面上や底面上)に配置されてもよい。このような形態であっても、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Aにおける立方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11それぞれの表面と光学的に結合されていれば、上記効果を好適に奏することができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る放射線位置検出器の第2実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係る放射線位置検出器1Cの外観を示す斜視図である。また、図6は、図5に示す放射線位置検出器1Cの分解斜視図である。放射線位置検出器1Cは、シンチレータブロック10C、複数の光センサ20、及び反射材30を備えている。
【0029】
本実施形態の放射線位置検出器1Cと第1実施形態の放射線位置検出器1Aとの相違点は、シンチレータブロックの形状、およびシンチレータブロックに含まれるシンチレータセル11の個数である。すなわち、本実施形態のシンチレータブロック10Cは、直方体状の外観を有しており、複数の立方体状のシンチレータセル11が4行3列に配列されて成るシンチレータアレイ13(図6参照)が4層積層されることにより構成されている。なお、上記した第1実施形態と同様に、複数のシンチレータセル11の表面のうち、シンチレータブロック10Cの底面、側面、または上面を構成する面は、光センサ20が取り付けられる部分を除いて粗研磨処理が施されており、残りの面には鏡面研磨処理が施されている。また、互いに隣接するシンチレータセル11同士の隙間が空気層となっている点も、第1実施形態と同様である。
【0030】
複数の光センサ20は、シンチレータブロック10Cにおける直方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11のそれぞれに対応して一個ずつ配置され、対応するシンチレータセル11の一つの面と光学的に結合されている。すなわち、本実施形態の光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,1,1、C1,1,4、C1,3,1、C1,3,4、C4,1,1、C4,1,4、C4,3,1、及びC4,3,4の各シンチレータセル11の面上に配置されている。これにより、シンチレータブロック10Cの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサ20が配置されるので、シンチレータブロック10Cの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、及び積層方向(Z軸方向)それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、本実施形態の放射線位置検出器1Cによれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0031】
また、本実施形態の放射線位置検出器1Cは、第1実施形態の放射線位置検出器1Aと比較して次のような利点がある。すなわち、シンチレータブロック10Cの行方向(X軸方向)および積層方向(Z軸方向)におけるシンチレータセル11の個数(4個)が、第1実施形態のシンチレータブロック10Aにおける当該個数(3個)より多いにもかかわらず、光センサ20の個数は互いに等しい。したがって、シンチレータブロックの体積に対し必要とする光センサ20の個数の比が小さくて済むので、コストを低減できる。
【0032】
これに対し、第1実施形態の放射線位置検出器1Aは、本実施形態の放射線位置検出器1Cと比較して次のような利点がある。すなわち、シンチレータブロック10Aの体積が小さい分、シンチレーション光が光センサ20に到達するまでの距離が短くなるので、放射線入射位置及び放射線量の検出精度を高めることができる。また、シンチレータブロック10Aを立方体状とし、行方向、列方向、および積層方向の寸法を同一とすることで、各方向における検出精度のばらつきを効果的に抑えることができる。更に、シンチレータブロック10Aの行方向、列方向、および積層方向におけるシンチレータセル11の配列数を互いに等しくすることで、各方向における放射線入射位置の分解能を均一にできる。
【0033】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る放射線位置検出器の第3実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係る放射線位置検出器1Dの外観を示す斜視図である。また、図8は、図7に示す放射線位置検出器1Dの分解斜視図である。放射線位置検出器1Dは、シンチレータブロック10A、複数の光センサ20、及び反射材30を備えている。シンチレータブロック10Aの構成は第1実施形態と同様であり、シンチレータブロック10Aは、複数の立方体状のシンチレータセル11が3行3列に配列されて成るシンチレータアレイ12が3層積層されることにより構成されている。
【0034】
本実施形態の放射線位置検出器1Dと第1実施形態の放射線位置検出器1Aとの相違点は、光センサ20の配置である。すなわち、本実施形態において、複数の光センサ20は、シンチレータブロック10Aにおける立方体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセル11のそれぞれに対応して一個ずつ配置され、対応するシンチレータセル11の一つの面と光学的に結合されている。また、これらの光センサ20は、シンチレータブロック10Aの各側面、上面および底面のそれぞれに2個ずつ配置されている。
【0035】
具体的には、本実施形態の光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,1,2、C1,2,1、C1,2,3、C1,3,2、C2,1,1、C2,3,1、C2,1,3、C2,3,3、C3,1,2、C3,2,1、C3,2,3、及びC3,3,2の各シンチレータセル11の面上に配置されている。C1,1,2およびC3,1,2の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちXZ平面に沿っておりY軸の負方向を向く側面上に配置されている。C1,3,2およびC3,3,2の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちXZ平面に沿っておりY軸の正方向を向く側面上に配置されている。C1,2,1およびC1,2,3の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちYZ平面に沿っておりX軸の負方向を向く側面上に配置されている。C3,2,1およびC3,2,3の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちYZ平面に沿っておりX軸の正方向を向く側面上に配置されている。C2,1,1およびC2,3,1の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちXY平面に沿っておりZ軸の負方向を向く側面上に配置されている。C2,1,3およびC2,3,3の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちXY平面に沿っておりZ軸の正方向を向く側面上に配置されている。
【0036】
本実施形態による放射線位置検出器1Dにおいては、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Aにおける立方体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセル11(すなわち、C1,1,2、C1,2,1、C1,2,3、C1,3,2、C2,1,1、C2,3,1、C2,1,3、C2,3,3、C3,1,2、C3,2,1、C3,2,3、及びC3,3,2の各シンチレータセル11)のそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。これにより、シンチレータブロック10Aの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサ20が配置されるので、シンチレータブロック10Aの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、及び積層方向(Z軸方向)それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、本実施形態の放射線位置検出器1Dによれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0037】
また、本実施形態の放射線位置検出器1Dには、第1実施形態の放射線位置検出器1Aと比較してより高い精度で放射線線入射位置及び放射線量を検出できるという利点がある。すなわち、第1実施形態の放射線位置検出器1Aおよび本実施形態の放射線位置検出器1Dは共に、シンチレータセル11を3行、3列、及び3層に配列してなるシンチレータブロック10Aを備えている。そして、第1実施形態では、光センサ20と光学的に結合されない非結合セル(但し、シンチレータブロック10Aの中心に配置されたシンチレータセルC2,2,2を除く。)の面のうち、光センサ20と光学的に結合される結合セルに隣接する面の数が2であるのに対し、本実施形態では、非結合セルの面のうち結合セルに隣接する面の数は3または4となる。したがって、本実施形態によれば、非結合セルの発光に対する光検出精度が第1実施形態より向上するので、より高い精度で放射線入射位置及び放射線量を検出できる。
【0038】
これに対し、第1実施形態の放射線位置検出器1Aには、本実施形態の放射線位置検出器1Dと比較してより少ない光センサ20によって放射線入射位置及び放射線量を好適に検出できるという利点がある。すなわち、これらの実施形態のようにシンチレータブロック10Aが六面体である場合、本実施形態の放射線位置検出器1Dでは12本の辺に対応して少なくとも12個の光センサ20が必要となるが、第1実施形態の放射線位置検出器1Aでは8つの頂点に対応する8個の光センサ20で済ませることができる。
【0039】
なお、本実施形態においてはシンチレータブロック10Aの各側面、底面および上面に光センサ20が2個ずつ配置された例を説明したが、光センサ20の配置方向はこれに限られるものではなく、各面における光センサ20の配置数に偏りがあってもよい。このような形態であっても、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Aにおける立方体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセル11それぞれの表面と光学的に結合されていれば、上記効果を好適に奏することができる。
【0040】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係る放射線位置検出器の第4実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係る放射線位置検出器1Eの外観を示す斜視図である。また、図10は、図9に示す放射線位置検出器1Eの分解斜視図である。放射線位置検出器1Eは、シンチレータブロック10E、複数の光センサ20、及び反射材30を備えている。
【0041】
本実施形態の放射線位置検出器1Eと第1実施形態の放射線位置検出器1Aとの相違点は、シンチレータブロックに含まれるシンチレータセル11の個数、および光センサ20の配置である。すなわち、本実施形態のシンチレータブロック10Eは、立方体状の外観を有しており、立方体状のシンチレータセル11が5行5列に配列されて成るシンチレータアレイ14(図10参照)が5層積層されることにより構成されている。なお、第1実施形態と同様に、複数のシンチレータセル11の表面のうち、シンチレータブロック10Eの底面、側面、または上面を構成する面は、光センサ20が取り付けられる部分を除いて粗研磨処理が施されており、残りの面には鏡面研磨処理が施されている。また、互いに隣接するシンチレータセル11同士の隙間が空気層となっている点も、第1実施形態と同様である。
【0042】
複数の光センサ20は、シンチレータブロック10Eにおける立方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11のそれぞれに対応して一個ずつ配置され、対応するシンチレータセル11の一つの面と光学的に結合されている。すなわち、本実施形態の光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,1,1、C1,1,5、C1,5,1、C1,5,5、C5,1,1、C5,1,5、C5,5,1、及びC5,5,5の各シンチレータセル11の面上に配置されている。
【0043】
また、放射線位置検出器1Eは、上記複数の光センサ20の補助として、シンチレータブロック10Eにおける立方体の辺を構成せず頂点も構成しないシンチレータセル11の表面と光学的に結合された光センサ20を更に備えている。本実施形態では、この光センサ20は、シンチレータブロック10Eにおける立方体の面の中心を構成するシンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。具体的には、この光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,3,3、C3,1,3、C3,3,1、C5,3,3、C3,5,3、及びC3,3,5の各シンチレータセル11の面上に配置されている。
【0044】
本実施形態においては、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Eにおける立方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11(すなわち、C1,1,1、C1,1,5、C1,5,1、C1,5,5、C5,1,1、C5,1,5、C5,5,1、及びC5,5,5の各シンチレータセル11)のそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。これにより、シンチレータブロック10Eの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサ20が配置されるので、シンチレータブロック10Eの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、及び積層方向(Z軸方向)それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、本実施形態の放射線位置検出器1Eによれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0045】
更に、本実施形態の放射線位置検出器1Eは、シンチレータブロック10Eにおける立方体の辺を構成せず頂点も構成しないシンチレータセル11の表面と光学的に結合された別の光センサ20を更に備えている。このように、シンチレータブロック10Eの頂点や辺を構成しないシンチレータセル11に対して光センサ20を補助的に設けることにより、放射線入射位置及び放射線量の検出精度を更に高めることができる。そして、本実施形態のように、この光センサ20が、シンチレータブロック10Eにおける立方体の面の中心を構成するシンチレータセル11(すなわち、C1,3,3、C3,1,3、C3,3,1、C5,3,3、C3,5,3、及びC3,3,5の各シンチレータセル11)の表面と光学的に結合されることで、シンチレータブロック10Eに対してよりバランス良く且つ効率よく光センサ20を配置できる。
【0046】
図11は、本実施形態の放射線位置検出器1Eを用いたPET装置による計測を概念的に示す図である。図11において、Pは被検体であり、Qは被検体Pにおいて陽電子放出アイソトープ(RI線源)が集まった部位である。陽電子放出アイソトープにおける電子・陽電子の対消滅に伴って発生したガンマ線Rは、被検者の周囲に配置された複数の放射線位置検出器1Eによって検出される。従来のPET装置では放射線位置検出器を環状に敷き詰めていたが、本実施形態の放射線位置検出器1Eは全方向からの放射線の入射位置および線量をほぼ均一な精度で検出できるので、放射線位置検出器の配置の自由度が増し、関心領域のイメージングに最適な位置に最低限必要な数を配置することが可能となる。したがって、PET装置における放射線位置検出器の個数の低減に寄与できる。本実施形態に限らず、前述した第1〜第3実施形態の放射線位置検出器1A〜1Dもまた、このような効果を同様に奏することができる。
【0047】
本発明による放射線位置検出器は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記した各実施形態ではシンチレータブロックを構成するシンチレータセルの配列として3行3列3層、4行3列4層、及び5行5列5層の場合を例示したが、シンチレータセルの配列はこれらに限られるものではなく、M行N列K層(ただし、M,Nは3以上の整数であり、Kは2以上の整数)に配列されていれば、本発明の効果を好適に奏することができる。また、シンチレータブロックの形状は立方体や直方体に限られず、他の多面体であってもよい。また、シンチレータセルの形状は立方体に限られず、直方体や他の多面体であってもよい。
【0048】
また、第1、第2および第4の実施形態において(1)シンチレータブロックにおける多面体の頂点を構成する全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して複数の光センサの各々が設けられた形態を示し、第3実施形態において(2)シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して複数の光センサの各々が設けられた形態を示したが、これらの形態(1)および形態(2)を組み合わせて放射線位置検出器を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態に係る放射線位置検出器の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す放射線位置検出器の分解斜視図である。
【図3】図1に示す放射線位置検出器の側断面図である。
【図4】或る光センサがシンチレータブロックの一対の側面とは異なる面上(例えばシンチレータブロックの上面上や底面上)に配置された形態を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る放射線位置検出器の外観を示す斜視図である。
【図6】図6は、図5に示す放射線位置検出器の分解斜視図である。
【図7】図7は、第3実施形態に係る放射線位置検出器の外観を示す斜視図である。
【図8】図8は、図7に示す放射線位置検出器の分解斜視図である。
【図9】図9は、第4実施形態に係る放射線位置検出器の外観を示す斜視図である。
【図10】図10は、図9に示す放射線位置検出器の分解斜視図である。
【図11】図11は、第4実施形態の放射線位置検出器を用いたPET装置による計測を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1A〜1E…放射線位置検出器、10A,10C,10E…シンチレータブロック、11…シンチレータセル、12〜14…シンチレータアレイ、20…光センサ、30…反射材、L…シンチレーション光、P…被検体、R…ガンマ線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータブロックと光センサとを含む放射線位置検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線位置検出器は、例えばPET(PositronEmission Tomography)装置に用いられる。PET装置に用いられる放射線位置検出器は、陽電子放出アイソトープ(RI線源)が投入された被検体内における電子・陽電子の対消滅に伴って発生し互いに逆方向に飛行する一対のガンマ線を検出する。PET装置は、複数の放射線位置検出器を利用した同時計数法により一対のガンマ線を検出し、この同時計数情報を蓄積してヒストグラムを作成する。そして、PET装置は、このヒストグラムに基づいて、測定空間における一対のガンマ線の発生頻度の空間分布を表す画像を再構成する。このPET装置は核医学分野等で重要な役割を果たしており、これを用いて例えば生体機能や脳の高次機能の研究を行うことができる。
【0003】
このようなPET装置等において好適に用いられる放射線位置検出器として、複数のシンチレータセルを3次元に配列したシンチレータブロックと、光センサとを備えているものがある(例えば特許文献1を参照)。シンチレータブロックは、入射したガンマ線を吸収してシンチレーション光を発生する。光センサは、シンチレータブロック表面における複数の位置に取り付けられ、シンチレーション光を検出する。このような構成により、シンチレータブロックにおけるガンマ線入射位置およびガンマ線量が特定される。
【特許文献1】特開2007−93376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された放射線位置検出器では、最下層に配置されたシンチレータ表面と対向するようにしか受光素子(光センサ)が配置されていないため、高さ方向(すなわち、底面を直交座標系におけるXY平面と仮定したときのZ軸方向)における放射線入射位置の検出精度が低い。また、受光素子側から入射した放射線における放射線入射位置の検出精度並びに放射線量の検出感度及び精度が低い。したがって、放射線位置検出器への放射線の入射方向によってこれらの検出精度がばらついてしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを抑えることができる放射線位置検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明による第1の放射線位置検出器は、放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセルがM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロックと、シンチレータブロックの表面と光学的に結合された複数の光センサとを備え、各光センサが、シンチレータブロックにおける多面体の頂点を構成する全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明による第2の放射線位置検出器は、放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセルがM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロックと、シンチレータブロックの表面と光学的に結合された複数の光センサとを備え、各光センサが、シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする。
【0008】
上記した第1及び第2の放射線位置検出器においては、複数の光センサの各々が、(1)シンチレータブロックにおける多面体の頂点を構成する全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されているか、或いは(2)複数の光センサの各々が、シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されている。これらの構成(1)、(2)のうち少なくとも一方の構成でもって複数の光センサが配置されることにより、シンチレータブロックの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサが配置されるので、シンチレータブロックの列方向、行方向、及び積層方向それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、上記した第1及び第2の放射線位置検出器によれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0009】
なお、上記構成(1)には、上記構成(2)と比較してより少ない光センサによって放射線入射位置及び放射線量を好適に検出できるという利点がある。例えばシンチレータブロックが六面体である場合、上記構成(2)では12本の辺に対応して少なくとも12個の光センサが必要となるが、上記構成(1)では8つの頂点に対応する8個の光センサで済ませることができる。また、上記構成(2)には、上記構成(1)と比較してより高い精度で放射線線入射位置及び放射線量を検出できるという利点がある。例えば、シンチレータブロックが、直方体状のシンチレータセルを3行、3列、及び3層に配列して成る場合を考える。上記構成(1)では、光センサと光学的に結合されないシンチレータセル(以下、非結合セルという。但し、シンチレータブロックの中心に配置されたシンチレータセルを除く。)の面のうち、光センサと光学的に結合されるシンチレータセル(以下、結合セルという)に隣接する面の数が2であるのに対し、上記構成(2)では、非結合セルの面のうち結合セルに隣接する面の数は3または4となる。したがって、構成(2)では、非結合セルの発光に対する光検出精度が構成(1)より向上するので、より高い精度で放射線入射位置及び放射線量を検出できる。
【0010】
また、放射線位置検出器は、シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成せず頂点も構成しないシンチレータセルの表面と光学的に結合された別の光センサを更に備えることを特徴としてもよい。このように、シンチレータブロックの頂点や辺を構成しないシンチレータセルに対して上記複数の光センサとは別の光センサを補助的に設けることにより、放射線入射位置及び放射線量の検出精度を更に高めることができる。また、この場合、上記別の光センサが、シンチレータブロックにおける多面体の面の中心を構成するシンチレータセルの表面と光学的に結合されていると尚良い。
【0011】
また、放射線位置検出器は、シンチレータブロックが立方体状であることを特徴としてもよい。すなわち、シンチレータブロックの行方向、列方向、および積層方向におけるシンチレータブロックの寸法を互いに等しくすることによって、各方向における検出精度のばらつきを効果的に抑えることができる。また、この場合、複数のシンチレータセルが立方体状であると尚良く、これによりシンチレータブロックの行方向、列方向、および積層方向におけるシンチレータセルの配列数が互いに等しくなり、各方向における放射線入射位置の分解能を均一にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による放射線位置検出器によれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。また、少ない受光素子で構成できるためコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明による放射線位置検出器の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図においては説明の便宜の為にXYZ直交座標系が示されている。
【0014】
(第1の実施の形態)
まず、本発明に係る放射線位置検出器の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線位置検出器1Aの外観を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す放射線位置検出器1Aの分解斜視図である。放射線位置検出器1Aは、シンチレータブロック10A、複数の光センサ20、及び反射材30を備えている。
【0015】
シンチレータブロック10Aは、複数のシンチレータセル11からなる多面体状の外観を有している。本実施形態のシンチレータブロック10Aは、立方体状の外観を有しており、複数の立方体状のシンチレータセル11が3行3列に配列されて成るシンチレータアレイ12(図2参照)が3層積層されることにより構成されている。各シンチレータセル11は、ガンマ線などの放射線を吸収し、その線量に応じた強さのシンチレーション光を発生する。このようなシンチレータセル11は、例えばCeがドープされたGd2SiO5(GSO)、Lu2SiO5(LSO)やBi4Ge3O12(BGO)によって好適に構成される。
【0016】
複数のシンチレータセル11の全ての表面には、鏡面研磨処理もしくは粗研磨処理が施されている。具体的には、図2に示すように、複数のシンチレータセル11の表面のうち、シンチレータブロック10Aの底面、側面、または上面を構成する面には粗研磨処理が施されている。但し、シンチレータブロック10Aの底面、側面、または上面を構成する面であっても、後述する光センサ20が取り付けられる部分には鏡面研磨処理が施されている。また、複数のシンチレータセル11の表面のうち、隣接するシンチレータセル11と対向する面には鏡面研磨処理が施されている。なお、本実施形態では、互いに隣接するシンチレータセル11同士の隙間には屈折率調整材等は配置されておらず、該隙間は空気層となっている。
【0017】
複数の光センサ20は、例えばMPPC(Multi-Pixel Photon Counter)といった半導体光検出素子である。MPPCは、複数のガイガーモードAPD(アバランシェフォトダイオード)のピクセルから成るフォトンカウンティングデバイスである。各光センサ20は、その光検出面がシンチレータブロック10Aの表面と対向するようにシンチレータブロック10A上に取り付けられることにより、シンチレータブロック10Aと光学的に結合されている。具体的には、各光センサ20は、それぞれ異なるシンチレータセル11の一つの面上に配置されている。光センサ20が配置されるシンチレータセル11は、シンチレータブロック10Aにおける多面体(本実施形態では立方体)の頂点を構成する全てのシンチレータセルである。光センサ20はこれらのシンチレータセル11のそれぞれに対して一個ずつ配置され、対応するシンチレータセル11の一つの面と光学的に結合されている。なお、本実施形態では、シンチレータブロック10Aにおいて立方体の頂点を構成する8個のシンチレータセル11に取り付けられた8個の光センサ20のうち、4個の光センサ20が、当該立方体の一つの側面を構成するシンチレータセル11の面上に配置され、他の4個の光センサ20が、該一つの側面とは反対側の側面を構成するシンチレータセル11の面上に配置されている。
【0018】
ここで、シンチレータブロック10Aを構成する複数のシンチレータセル11のうち、X座標、Y座標、及びZ座標が最も小さいシンチレータセル11をC1,1,1と表し、このC1,1,1を基準としてX軸方向に第m番目に配置され、Y軸方向に第n番目に配置され、Z軸方向に第k番目に配置されたシンチレータセル11をCm,n,kと表すと、光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,1,1、C1,1,3、C1,3,1、C1,3,3、C3,1,1、C3,1,3、C3,3,1、及びC3,3,3の各シンチレータセル11の面上に配置されている。また、これらの光センサ20は、上記各シンチレータセル11の露出面のうちXZ平面に沿った(Y軸と交差する)面上に配置されている。
【0019】
反射材30は、シンチレータブロック10Aの表面のうち、光センサ20が設けられていない部分を全て覆うように配置されている。前述したように、光センサ20が設けられていないシンチレータブロック10Aの表面には粗研磨処理が施されており、反射材30は、この粗研磨面に到達したシンチレーション光が外部へ洩れることを防ぐ。
【0020】
以上の構成を備える放射線位置検出器1Aを用いた、放射線入射位置および放射線量の検出方法を説明する。図3は、放射線位置検出器1Aの側断面図である。図3において、例えばシンチレータブロック10A内の点Oでシンチレーション光Lが発生した場合、このシンチレーション光Lは周囲に均等に拡散する。そして、シンチレーション光Lの光子がいずれかの光センサ20へ到達するまでの経路としては、以下の3つが考えられる。
1.光子が途中で反射することなく光センサ20に直接到達する経路(図中の経路A1)
【0021】
この場合、各光センサ20において検出される光子数は点Oから当該光センサ20までの距離に依存し、点Oからより近い光センサ20ほど、該光子を検出する確率が高い。
2.光子がシンチレータセル11の粗研磨面(拡散面)で拡散して光センサ20に到達する経路(図中の経路A2)
【0022】
この場合、拡散面に達した光子が反射する方向は不規則となるが、反射した位置からより近い光センサ20で検出される確率が高くなる。その結果、点Oからより近い光センサ20ほど、該光子を検出する確率が高くなる。
3.光子がシンチレータセル11と空気層との境界面で全反射して光センサ20に到達する経路(図中の経路A3)
【0023】
光子がシンチレータセル11と空気層との境界面に臨界角以上の角度で入射した場合には、該光子は全反射する。これにより、光の拡がりが抑制され、位置分解能が向上する。
【0024】
このように、放射線位置検出器1Aにおいては、放射線入射位置に近い光センサ20ほどシンチレーション光Lの光子を多く検出することとなる。したがって、放射線入射位置を求める方法としては、次に示す重心演算が好適である。すなわち、或るシンチレータCm,n,kに配置された光センサ20において検出される光子数をPm,n,kとすると、放射線入射位置(x,y,z)は、
x={P3,1,1+P3,1,3+P3,3,1+P3,3,3}/P
y={P1,3,1+P1,3,3+P3,3,1+P3,3,3}/P
z={P1,1,3+P1,3,3+P3,1,3+P3,3,3}/P
(但し、Pは全ての光センサ20に入射した総光子数)
として算出される。
【0025】
本実施形態による放射線位置検出器1Aにおいては、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Aにおける立方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11(すなわち、C1,1,1、C1,1,3、C1,3,1、C1,3,3、C3,1,1、C3,1,3、C3,3,1、及びC3,3,3の各シンチレータセル11)のそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。これにより、シンチレータブロック10Aの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサ20が配置されるので、シンチレータブロック10Aの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、及び積層方向(Z軸方向)それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、本実施形態の放射線位置検出器1Aによれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0026】
また、本実施形態のように、シンチレータブロック10Aは立方体状であることが好ましい。すなわち、シンチレータブロック10Aの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、および積層方向(Z軸方向)におけるシンチレータブロック10Aの寸法を互いに等しくすることによって、各方向における検出精度のばらつきを効果的に抑えることができる。また、この場合、複数のシンチレータセル11が立方体状であることがより好ましい。これにより、シンチレータブロック10Aの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、および積層方向(Z軸方向)におけるシンチレータセル11の配列数が互いに等しくなり、各方向における放射線入射位置の分解能を均一にできる。
【0027】
なお、本実施形態においてはシンチレータブロック10Aの一つの側面上に4個の光センサ20を配置し、該側面とは反対側の側面上に他の4個の光センサ20を配置した例を説明したが、光センサ20の配置方向はこれに限られるものではなく、例えば図4に示された放射線位置検出器1Bのように、或る光センサ20が上記2側面とは異なる面上(例えばシンチレータブロック10Aの上面上や底面上)に配置されてもよい。このような形態であっても、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Aにおける立方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11それぞれの表面と光学的に結合されていれば、上記効果を好適に奏することができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る放射線位置検出器の第2実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係る放射線位置検出器1Cの外観を示す斜視図である。また、図6は、図5に示す放射線位置検出器1Cの分解斜視図である。放射線位置検出器1Cは、シンチレータブロック10C、複数の光センサ20、及び反射材30を備えている。
【0029】
本実施形態の放射線位置検出器1Cと第1実施形態の放射線位置検出器1Aとの相違点は、シンチレータブロックの形状、およびシンチレータブロックに含まれるシンチレータセル11の個数である。すなわち、本実施形態のシンチレータブロック10Cは、直方体状の外観を有しており、複数の立方体状のシンチレータセル11が4行3列に配列されて成るシンチレータアレイ13(図6参照)が4層積層されることにより構成されている。なお、上記した第1実施形態と同様に、複数のシンチレータセル11の表面のうち、シンチレータブロック10Cの底面、側面、または上面を構成する面は、光センサ20が取り付けられる部分を除いて粗研磨処理が施されており、残りの面には鏡面研磨処理が施されている。また、互いに隣接するシンチレータセル11同士の隙間が空気層となっている点も、第1実施形態と同様である。
【0030】
複数の光センサ20は、シンチレータブロック10Cにおける直方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11のそれぞれに対応して一個ずつ配置され、対応するシンチレータセル11の一つの面と光学的に結合されている。すなわち、本実施形態の光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,1,1、C1,1,4、C1,3,1、C1,3,4、C4,1,1、C4,1,4、C4,3,1、及びC4,3,4の各シンチレータセル11の面上に配置されている。これにより、シンチレータブロック10Cの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサ20が配置されるので、シンチレータブロック10Cの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、及び積層方向(Z軸方向)それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、本実施形態の放射線位置検出器1Cによれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0031】
また、本実施形態の放射線位置検出器1Cは、第1実施形態の放射線位置検出器1Aと比較して次のような利点がある。すなわち、シンチレータブロック10Cの行方向(X軸方向)および積層方向(Z軸方向)におけるシンチレータセル11の個数(4個)が、第1実施形態のシンチレータブロック10Aにおける当該個数(3個)より多いにもかかわらず、光センサ20の個数は互いに等しい。したがって、シンチレータブロックの体積に対し必要とする光センサ20の個数の比が小さくて済むので、コストを低減できる。
【0032】
これに対し、第1実施形態の放射線位置検出器1Aは、本実施形態の放射線位置検出器1Cと比較して次のような利点がある。すなわち、シンチレータブロック10Aの体積が小さい分、シンチレーション光が光センサ20に到達するまでの距離が短くなるので、放射線入射位置及び放射線量の検出精度を高めることができる。また、シンチレータブロック10Aを立方体状とし、行方向、列方向、および積層方向の寸法を同一とすることで、各方向における検出精度のばらつきを効果的に抑えることができる。更に、シンチレータブロック10Aの行方向、列方向、および積層方向におけるシンチレータセル11の配列数を互いに等しくすることで、各方向における放射線入射位置の分解能を均一にできる。
【0033】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る放射線位置検出器の第3実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係る放射線位置検出器1Dの外観を示す斜視図である。また、図8は、図7に示す放射線位置検出器1Dの分解斜視図である。放射線位置検出器1Dは、シンチレータブロック10A、複数の光センサ20、及び反射材30を備えている。シンチレータブロック10Aの構成は第1実施形態と同様であり、シンチレータブロック10Aは、複数の立方体状のシンチレータセル11が3行3列に配列されて成るシンチレータアレイ12が3層積層されることにより構成されている。
【0034】
本実施形態の放射線位置検出器1Dと第1実施形態の放射線位置検出器1Aとの相違点は、光センサ20の配置である。すなわち、本実施形態において、複数の光センサ20は、シンチレータブロック10Aにおける立方体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセル11のそれぞれに対応して一個ずつ配置され、対応するシンチレータセル11の一つの面と光学的に結合されている。また、これらの光センサ20は、シンチレータブロック10Aの各側面、上面および底面のそれぞれに2個ずつ配置されている。
【0035】
具体的には、本実施形態の光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,1,2、C1,2,1、C1,2,3、C1,3,2、C2,1,1、C2,3,1、C2,1,3、C2,3,3、C3,1,2、C3,2,1、C3,2,3、及びC3,3,2の各シンチレータセル11の面上に配置されている。C1,1,2およびC3,1,2の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちXZ平面に沿っておりY軸の負方向を向く側面上に配置されている。C1,3,2およびC3,3,2の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちXZ平面に沿っておりY軸の正方向を向く側面上に配置されている。C1,2,1およびC1,2,3の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちYZ平面に沿っておりX軸の負方向を向く側面上に配置されている。C3,2,1およびC3,2,3の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちYZ平面に沿っておりX軸の正方向を向く側面上に配置されている。C2,1,1およびC2,3,1の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちXY平面に沿っておりZ軸の負方向を向く側面上に配置されている。C2,1,3およびC2,3,3の面上に配置された光センサ20は、シンチレータブロック10Aの側面のうちXY平面に沿っておりZ軸の正方向を向く側面上に配置されている。
【0036】
本実施形態による放射線位置検出器1Dにおいては、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Aにおける立方体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセル11(すなわち、C1,1,2、C1,2,1、C1,2,3、C1,3,2、C2,1,1、C2,3,1、C2,1,3、C2,3,3、C3,1,2、C3,2,1、C3,2,3、及びC3,3,2の各シンチレータセル11)のそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。これにより、シンチレータブロック10Aの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサ20が配置されるので、シンチレータブロック10Aの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、及び積層方向(Z軸方向)それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、本実施形態の放射線位置検出器1Dによれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0037】
また、本実施形態の放射線位置検出器1Dには、第1実施形態の放射線位置検出器1Aと比較してより高い精度で放射線線入射位置及び放射線量を検出できるという利点がある。すなわち、第1実施形態の放射線位置検出器1Aおよび本実施形態の放射線位置検出器1Dは共に、シンチレータセル11を3行、3列、及び3層に配列してなるシンチレータブロック10Aを備えている。そして、第1実施形態では、光センサ20と光学的に結合されない非結合セル(但し、シンチレータブロック10Aの中心に配置されたシンチレータセルC2,2,2を除く。)の面のうち、光センサ20と光学的に結合される結合セルに隣接する面の数が2であるのに対し、本実施形態では、非結合セルの面のうち結合セルに隣接する面の数は3または4となる。したがって、本実施形態によれば、非結合セルの発光に対する光検出精度が第1実施形態より向上するので、より高い精度で放射線入射位置及び放射線量を検出できる。
【0038】
これに対し、第1実施形態の放射線位置検出器1Aには、本実施形態の放射線位置検出器1Dと比較してより少ない光センサ20によって放射線入射位置及び放射線量を好適に検出できるという利点がある。すなわち、これらの実施形態のようにシンチレータブロック10Aが六面体である場合、本実施形態の放射線位置検出器1Dでは12本の辺に対応して少なくとも12個の光センサ20が必要となるが、第1実施形態の放射線位置検出器1Aでは8つの頂点に対応する8個の光センサ20で済ませることができる。
【0039】
なお、本実施形態においてはシンチレータブロック10Aの各側面、底面および上面に光センサ20が2個ずつ配置された例を説明したが、光センサ20の配置方向はこれに限られるものではなく、各面における光センサ20の配置数に偏りがあってもよい。このような形態であっても、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Aにおける立方体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセル11それぞれの表面と光学的に結合されていれば、上記効果を好適に奏することができる。
【0040】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係る放射線位置検出器の第4実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係る放射線位置検出器1Eの外観を示す斜視図である。また、図10は、図9に示す放射線位置検出器1Eの分解斜視図である。放射線位置検出器1Eは、シンチレータブロック10E、複数の光センサ20、及び反射材30を備えている。
【0041】
本実施形態の放射線位置検出器1Eと第1実施形態の放射線位置検出器1Aとの相違点は、シンチレータブロックに含まれるシンチレータセル11の個数、および光センサ20の配置である。すなわち、本実施形態のシンチレータブロック10Eは、立方体状の外観を有しており、立方体状のシンチレータセル11が5行5列に配列されて成るシンチレータアレイ14(図10参照)が5層積層されることにより構成されている。なお、第1実施形態と同様に、複数のシンチレータセル11の表面のうち、シンチレータブロック10Eの底面、側面、または上面を構成する面は、光センサ20が取り付けられる部分を除いて粗研磨処理が施されており、残りの面には鏡面研磨処理が施されている。また、互いに隣接するシンチレータセル11同士の隙間が空気層となっている点も、第1実施形態と同様である。
【0042】
複数の光センサ20は、シンチレータブロック10Eにおける立方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11のそれぞれに対応して一個ずつ配置され、対応するシンチレータセル11の一つの面と光学的に結合されている。すなわち、本実施形態の光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,1,1、C1,1,5、C1,5,1、C1,5,5、C5,1,1、C5,1,5、C5,5,1、及びC5,5,5の各シンチレータセル11の面上に配置されている。
【0043】
また、放射線位置検出器1Eは、上記複数の光センサ20の補助として、シンチレータブロック10Eにおける立方体の辺を構成せず頂点も構成しないシンチレータセル11の表面と光学的に結合された光センサ20を更に備えている。本実施形態では、この光センサ20は、シンチレータブロック10Eにおける立方体の面の中心を構成するシンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。具体的には、この光センサ20は、複数のシンチレータセル11のうちC1,3,3、C3,1,3、C3,3,1、C5,3,3、C3,5,3、及びC3,3,5の各シンチレータセル11の面上に配置されている。
【0044】
本実施形態においては、複数の光センサ20の各々が、シンチレータブロック10Eにおける立方体の頂点を構成する全てのシンチレータセル11(すなわち、C1,1,1、C1,1,5、C1,5,1、C1,5,5、C5,1,1、C5,1,5、C5,5,1、及びC5,5,5の各シンチレータセル11)のそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセル11の表面と光学的に結合されている。これにより、シンチレータブロック10Eの最下層に限らず全ての層に対してバランス良く且つ効率よく光センサ20が配置されるので、シンチレータブロック10Eの行方向(X軸方向)、列方向(Y軸方向)、及び積層方向(Z軸方向)それぞれにおける放射線入射位置及び放射線量の検出精度を均等に高めることができる。したがって、本実施形態の放射線位置検出器1Eによれば、放射線入射方向に対する放射線入射位置及び放射線量の検出精度のばらつきを好適に抑えることができる。
【0045】
更に、本実施形態の放射線位置検出器1Eは、シンチレータブロック10Eにおける立方体の辺を構成せず頂点も構成しないシンチレータセル11の表面と光学的に結合された別の光センサ20を更に備えている。このように、シンチレータブロック10Eの頂点や辺を構成しないシンチレータセル11に対して光センサ20を補助的に設けることにより、放射線入射位置及び放射線量の検出精度を更に高めることができる。そして、本実施形態のように、この光センサ20が、シンチレータブロック10Eにおける立方体の面の中心を構成するシンチレータセル11(すなわち、C1,3,3、C3,1,3、C3,3,1、C5,3,3、C3,5,3、及びC3,3,5の各シンチレータセル11)の表面と光学的に結合されることで、シンチレータブロック10Eに対してよりバランス良く且つ効率よく光センサ20を配置できる。
【0046】
図11は、本実施形態の放射線位置検出器1Eを用いたPET装置による計測を概念的に示す図である。図11において、Pは被検体であり、Qは被検体Pにおいて陽電子放出アイソトープ(RI線源)が集まった部位である。陽電子放出アイソトープにおける電子・陽電子の対消滅に伴って発生したガンマ線Rは、被検者の周囲に配置された複数の放射線位置検出器1Eによって検出される。従来のPET装置では放射線位置検出器を環状に敷き詰めていたが、本実施形態の放射線位置検出器1Eは全方向からの放射線の入射位置および線量をほぼ均一な精度で検出できるので、放射線位置検出器の配置の自由度が増し、関心領域のイメージングに最適な位置に最低限必要な数を配置することが可能となる。したがって、PET装置における放射線位置検出器の個数の低減に寄与できる。本実施形態に限らず、前述した第1〜第3実施形態の放射線位置検出器1A〜1Dもまた、このような効果を同様に奏することができる。
【0047】
本発明による放射線位置検出器は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記した各実施形態ではシンチレータブロックを構成するシンチレータセルの配列として3行3列3層、4行3列4層、及び5行5列5層の場合を例示したが、シンチレータセルの配列はこれらに限られるものではなく、M行N列K層(ただし、M,Nは3以上の整数であり、Kは2以上の整数)に配列されていれば、本発明の効果を好適に奏することができる。また、シンチレータブロックの形状は立方体や直方体に限られず、他の多面体であってもよい。また、シンチレータセルの形状は立方体に限られず、直方体や他の多面体であってもよい。
【0048】
また、第1、第2および第4の実施形態において(1)シンチレータブロックにおける多面体の頂点を構成する全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して複数の光センサの各々が設けられた形態を示し、第3実施形態において(2)シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全てのシンチレータセルのそれぞれに対応して複数の光センサの各々が設けられた形態を示したが、これらの形態(1)および形態(2)を組み合わせて放射線位置検出器を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態に係る放射線位置検出器の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す放射線位置検出器の分解斜視図である。
【図3】図1に示す放射線位置検出器の側断面図である。
【図4】或る光センサがシンチレータブロックの一対の側面とは異なる面上(例えばシンチレータブロックの上面上や底面上)に配置された形態を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る放射線位置検出器の外観を示す斜視図である。
【図6】図6は、図5に示す放射線位置検出器の分解斜視図である。
【図7】図7は、第3実施形態に係る放射線位置検出器の外観を示す斜視図である。
【図8】図8は、図7に示す放射線位置検出器の分解斜視図である。
【図9】図9は、第4実施形態に係る放射線位置検出器の外観を示す斜視図である。
【図10】図10は、図9に示す放射線位置検出器の分解斜視図である。
【図11】図11は、第4実施形態の放射線位置検出器を用いたPET装置による計測を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1A〜1E…放射線位置検出器、10A,10C,10E…シンチレータブロック、11…シンチレータセル、12〜14…シンチレータアレイ、20…光センサ、30…反射材、L…シンチレーション光、P…被検体、R…ガンマ線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセルがM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロックと、
前記シンチレータブロックの表面と光学的に結合された複数の光センサと
を備え、
各光センサが、前記シンチレータブロックにおける多面体の頂点を構成する全ての前記シンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする、放射線位置検出器。
【請求項2】
放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセルがM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロックと、
前記シンチレータブロックの表面と光学的に結合された複数の光センサと
を備え、
各光センサが、前記シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全ての前記シンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする、放射線位置検出器。
【請求項3】
前記シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成せず頂点も構成しない前記シンチレータセルの表面と光学的に結合された別の光センサを更に備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の放射線位置検出器。
【請求項4】
前記別の光センサが、前記シンチレータブロックにおける多面体の面の中心を構成する前記シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする、請求項3に記載の放射線位置検出器。
【請求項5】
前記シンチレータブロックが立方体状であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の放射線位置検出器。
【請求項6】
前記複数のシンチレータセルが立方体状であることを特徴とする、請求項5に記載の放射線位置検出器。
【請求項1】
放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセルがM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロックと、
前記シンチレータブロックの表面と光学的に結合された複数の光センサと
を備え、
各光センサが、前記シンチレータブロックにおける多面体の頂点を構成する全ての前記シンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする、放射線位置検出器。
【請求項2】
放射線の吸収に応じてシンチレーション光を発生する複数のシンチレータセルがM行N列(ただし、M,Nは3以上の整数)に2次元配列されたシンチレータアレイがK層(ただし、Kは2以上の整数)積層されて成る多面体状のシンチレータブロックと、
前記シンチレータブロックの表面と光学的に結合された複数の光センサと
を備え、
各光センサが、前記シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成し且つ頂点を構成しない全ての前記シンチレータセルのそれぞれに対応して設けられ、当該シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする、放射線位置検出器。
【請求項3】
前記シンチレータブロックにおける多面体の辺を構成せず頂点も構成しない前記シンチレータセルの表面と光学的に結合された別の光センサを更に備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の放射線位置検出器。
【請求項4】
前記別の光センサが、前記シンチレータブロックにおける多面体の面の中心を構成する前記シンチレータセルの表面と光学的に結合されていることを特徴とする、請求項3に記載の放射線位置検出器。
【請求項5】
前記シンチレータブロックが立方体状であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の放射線位置検出器。
【請求項6】
前記複数のシンチレータセルが立方体状であることを特徴とする、請求項5に記載の放射線位置検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−121929(P2009−121929A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295884(P2007−295884)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度 文部科学省 科学技術試験研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度 文部科学省 科学技術試験研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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