説明

放射線保護α,β不飽和アリールスルホン類の処方

溶液及び懸濁液処方が、対象における放射線の毒性の影響を低減するためのイオン化放射線への暴露の前または後の投与のために提供され、この投与には有効量の少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンが含まれ、ここでこの組成物は約8乃至約9の範囲のpHを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン化放射線の毒性からの細胞及び組織の保護及び/または毒性の治療のための、細胞保護剤、例えば少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホンの有効な薬理学的デリバリーのための溶液及び懸濁処方に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線保護スーツまたは別の保護装置が放射線暴露の低減に有効となりうる一方で、こうした装置は高価であり、扱いにくく、また一般的には公衆が利用可能なものではない。更にまた、放射線保護装置は、放射線治療の際に、腫瘍と隣接する正常組織を迷放射線暴露から保護しない。製薬放射線保護剤は、放射線保護装置に代わる、費用効率の高い、有効且つ容易に利用可能な代替物を提供する。しかしながら、製薬組成物を用いる正常細胞の放射線保護のこれまでの試みは、必ずしも成功していない。例えば、末梢血前駆細胞の動員のためのサイトカインは、放射線の前に与えられると骨髄保護効果を奏する(Neta et al., Semin. Radiat. Oncol. 6:306-320, 1996)が、全身性保護を与えはしない。生物反応修飾物質と組み合わせて、または単独で投与される、別の化学的放射線保護剤は、マウスにおいて僅かな保護効果を示すが、これら化合物のより大型のほ乳類への応用には成功例がより少なく、化学的放射線保護に価値があるのか否かが問われていた(Maisin, J.R., Bacq and Alexander Award Lecture. "Chemical radioprotection: past, present, and future prospects", Int J. Radiat Biol. 73:443-50, 1998)。製薬放射線増感剤は、癌性組織において放射線の効果を好ましく増幅することが知られているが、これは明らかに、イオン化放射線への暴露からの正常組織の一般的な全身性保護のためには不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,656,973号明細書
【特許文献2】米国特許第6,667,346号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Neta et al., Semin. Radiat. Oncol. 6:306-320, 1996
【非特許文献2】Maisin, J.R., Bacq and Alexander Award Lecture. "Chemical radioprotection: past, present, and future prospects", Int J. Radiat Biol. 73:443-50, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然るに、必要とされるのは、対象がイオン化放射線への暴露を被ることが予定されるか、または被る危険性があるか、または既に被った場合において、放射線の毒性から対象を保護するための実際的な手段である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の製薬組成物の例は、例えば、約20mg/ml乃至約100mg/mlの少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホン(例えばON.1210.Na((E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンナトリウム塩(C16H12ClNaO4S)))、約25乃至約90w/v%の量の共溶媒(例えば約50%のPEG 400)を含む水性溶液であり、緩衝されており、約7.0乃至約10の範囲のpHを有する(例えば0.2M Tris-EDTA、pHが約8.5である)水溶液である。
【0007】
本発明の製薬組成物の別の実施態様は、例えば、約10mg/ml乃至約250mg/mlの少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホン、約0.1乃至約5w/v%の量の約8乃至約14のHLB値を有する少なくとも一つの親水性湿潤剤(例えばTween 80)、等張性をもたらす当業者には既知の成分(例えばNaCl)を含み、緩衝されており、約7.0乃至約10のpHを示す(例えば0.2M Tris-EDTA、pHが約8.5である)水性懸濁液である。
【0008】
本発明は、また、対象におけるイオン化放射線の毒性の影響を低減するための投与のための、代替的製薬組成物であって、少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンの有効量及び、a)約0.5乃至約90w/v%の量の少なくとも一つの水溶性ポリマー、b)約20乃至約60w/v%の量の少なくとも一つの化学的に変性されたシクロデキストリン、及びc)約10乃至約50w/v%の量のDMA、からなる群より選択される少なくとも一つの成分を含む組成物にも関する。
【0009】
本明細書中に記載される製薬組成物の所定の実施態様は、約0.1mg/ml乃至約250mg/mlの少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホン及び、a)約20乃至約60w/v%の量の、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、及びヒドロキシエチル-β-シクロデキストリンからなる群より選択される少なくとも一つの化学的に変性されたシクロデキストリン、b)約0.5乃至約20w/v%の量のポビドンからなる群より選択される水溶性ポリマー及び約25乃至約90w/v%の量のPEG、並びにc)約10乃至約50w/v%の量のDMA、からなる群より選択される少なくとも一つの成分を含み、約7.0乃至約10の範囲のpHを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1A及び図1Bは、(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホンの存在下または非存在下でのDU145前立腺腫瘍細胞の生存能力に対する、5Gy及び10Gyのイオン化放射線の効果を示す。
【図2】図2A及び図2Bは、 (E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンの存在下または非存在下でのDU145前立腺腫瘍細胞の生存能力に対する、5Gy及び10Gyのイオン化放射線の効果を示す。
【図3】図3A及び図3Bは、それぞれ(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン及び(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンを用いて照射後処置されたDU145前立腺腫瘍細胞の生存能力に対する10Gyのイオン化放射線の効果を示す。
【図4】図4は、18日間に亘り一日おきに4mg/kgの(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホンを与えられたC57B6/Jマウスについての平均体重(グラム)対時間(日)のプロットである。
【図5】図5は、8Gyのイオン化放射線を受ける18時間前及び6時間前の時点で(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンによる予備治療を受けたC57B6/Jマウスのカプランマイヤー生存プロットである。
【図6】図6は、8Gyのイオン化放射線を受けた後に(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンによって治療されたC57B6/Jマウスのカプランマイヤー生存プロットである。
【図7】図7は、4-クロロベンジル-4-カルボキシスチリルスルホンのナトリウム塩(ON.1210.Na)の構造を示す。
【図8】図8は、周囲温度でのON.1210.NaのpH溶解度プロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特記のない限り、本明細書中に使用される全ての技術的及び化学的な用語は、本発明の属する分野の当業者によって通常理解されるものと同様の意味を有する。本明細書中に言及される全ての文献及び特許は、参照のために取り込むこととする。米国特許第6,656,973号明細書及び米国特許第6,667,346号明細書の開示の全体が、参照のために特に取り込まれる。
【0012】
放射線暴露の主な生物学的効果は、骨髄細胞の破壊、胃腸(GI)障害、肺炎、及び中枢神経系(CNS)障害である。放射線暴露の長期的影響には、癌罹患率の上昇が含まれる。100レムの暴露(人体レントゲン当量:有害な生物学的効果を生じる放射線の量の定量化に使用される測定)はARS症状を発生させることが予測される。300レムを超える暴露レベルは、暴露した人口のおよそ50%の死をもたらす。
【0013】
α,β-不飽和アリールスルホン、特にベンジルスチリルスルホンは、動物における放射線誘発性障害からの顕著且つ選択的な全身性保護を提供する。放射線治療義医術において使用される場合には、これらの化合物はまた、癌細胞に対して個別の毒性を示す。本明細書中に記載されるα,β-不飽和アリールスルホンの組成物及び処方は、イオン化放射線への急性及び慢性の暴露の影響から、正常細胞及び組織を保護する。α,β-不飽和アリールスルホンはまた、腫瘍細胞中で実際に細胞毒性である。本明細書中に記載される組成物は予防的使用、例えば生命を脅かすレベルのX線またはγ放射線への暴露の危険が迫っている人の生存を増進すること、及び/または生命を脅かすレベルのX線またはγ放射線を受けたばかりの人の生存を増進することを企図する。動物の有効性研究では、ON.01210.Naを用いる、例えば静注経路、皮下経路、または腹腔内経路による予備治療は、致死量のイオン化放射線からのマウスの保護をもたらす。
【0014】
対象は、増殖性障害の治療のために治療的照射を経る際に、イオン化放射線に暴露されうる。こうした障害には、癌性及び非癌性増殖障害が含まれる。本明細書中に記載される処方は、以下に制限されるものではないが、乳癌、前立腺癌、子宮癌、肺癌、結腸直腸癌、脳腫瘍(すなわちグリオーマ)、及び腎臓癌を含む、広範な腫瘍型の治療的照射の間の正常細胞の保護に有効である。この組成物はまた、例えば白血病細胞に対しても有効である。この組成物は、以下に制限されるものではないが、新生児における血管腫症、二次進行型多発性硬化症、慢性進行性骨髄変性疾患、神経線維腫症、神経節神経腫症、ケロイド形成、骨パジェット病、乳房線維嚢胞病、ペーロニー及びデュピュイトライン線維症、再狭窄、及び肝硬変を含む、非癌性増殖性障害における異常組織の治療的照射の間の正常細胞の保護に有用である。
【0015】
治療用イオン化放射線は、α,β不飽和アリールスルホン放射線保護剤化合物が放射線の前に投与される限りにおいては、規定の治療過程に適合するあらゆる用量で、且ついかなるスケジュールで対象に投与されても良い。治療過程は、対象毎に異なるが、当業者であれば、所与の臨床状況における治療用放射線の適当な用量及びスケジュールを、容易に決定することができる。本明細書中に記載されるα,β不飽和アリールスルホンの組成物は、該化合物が対象の正常細胞に十分な濃度で到達して、正常細胞に放射線保護作用を与えるように、治療用放射線の充分前に投与されるべきである。少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホンを、放射線の約24時間程度前、好ましくは約18時間程度前に投与してよい。一実施態様では、α,β不飽和アリールスルホン性剤は、治療用放射線の投与の少なくとも約6-12時間前に投与される。最も好ましくは、α,β不飽和アリールスルホンを、放射線暴露の約18時間前にいったん投与し、約6時間前に再度投与する。一つまたは複数のα,β不飽和アリールスルホンを同時に投与しても、あるいは別々のα,β不飽和スルホンを治療の間の別の時点に投与しても良い。
【0016】
好ましくは、α,β不飽和アリールスルホンの投与と治療用放射線との間には、約24時間の開きがある。より好ましくは、α,β不飽和アリールスルホンの投与と治療用放射線との間には、約6乃至18時間の開きがある。この戦略により、治療用放射線の抗癌活性に影響を与えることなく、放射線に誘発される副作用に著しい低減をもたらす。
【0017】
治療可能な放射線障害を引き起こし得るイオン化放射線の急性被爆線量には、例えば24時間以内で約10,000ミリレム(0.1 Gy)乃至約1,000,000ミリレム(10 Gy)、好ましくは24時間以内で約25,000ミリレム(0.25 Gy)乃至約200,000(2 Gy)、更に好ましくは24時間以内で約100,000ミリレム(1 Gy)乃至約150,000ミリレム(1.5 Gy) の局所線量または全身線量が含まれる。
【0018】
治療可能な放射線障害を引き起こし得るイオン化放射線の慢性被爆線量には、例えば24時間超の期間に亘って約100ミリレム(.001 Gy)乃至約10,000ミリレム(0.1 Gy)の全身線量、好ましくは約1000ミリレム(.01 Gy)乃至約5000ミリレム(.05 Gy)の線量、あるいは24時間長の期間に亘って約15,000ミリレム(0.15 Gy)乃至50,000ミリレム(0.5 Gy)の局所線量が含まれる。
【0019】
致死量の放射線を放出させるテロ攻撃の場合には、本明細書中に記載される放射線保護組成物は、暴露の直後、例えば約4時間後までに投与されれば保護を提供するはずである。
【0020】
I.構造属の例
本明細書に使用される「α,β不飽和アリールスルホン」とは、一つまたは複数のα,β不飽和アリールスルホン基:
【化1】

[式中、Q2は置換もしくは無置換のアリールであり、α及びβ炭素に結合した水素原子が別の化学種によって任意に置換されている]
を含む化合物を意味する。
【0021】
「置換の」とは、原子もしくは原子群が、環原子に結合した置換基として水素を置換していることを意味する。環系における置換度は、モノ-、ジ-、トリ-、もしくはより多くの置換であってよい。
【0022】
単独または別の用語との組み合わせで用いられる「アリール」なる語は、特記のない限り、1つ以上の環(典型的には、一つ、二つ、もしくは三つの環)を含む炭素乾式芳香族系を意味し、こうした環は互いにペンダント方式で結合しているかまたは縮合していてよい。例には、フェニル、アントラシル、及びナフチル、特に1-ナフチル及び2-ナフチルが含まれる。アリール部分の上記列挙は、代表的なものであって制限を意図しない。「アリール」なる語は、六員環系に制限されないと解される。
【0023】
「ヘテロアリール」なる語はそれ自体でまたは別の置換基の一部として、特記のない限り、炭素原子並びにN、O、及びSからなる群より選択される1乃至4のヘテロ原子からなる無置換もしくは置換の、安定な、単環もしくは多環式の複素芳香族環系を意味し、ここで窒素及び硫黄のヘテロ原子は任意に酸化されていて良く、窒素原子は任意に四級化されていてよい。複素環系は、特記のない限り、安定な構造をもたらすあらゆるヘテロ原子もしくは炭素原子で結合していてよい。
【0024】
こうしたヘテロアリールの例には、ベンズイミダゾリル、特に2-ベンズイミダゾリル;ベンゾフリル、特に3-、4-、5-、6-、及び7-ベンゾフリル;2-ベンゾチアゾリル及び5-ベンゾチアゾリル;ベンゾチエニル、特に3-、4-、5-、6-、及び7-ベンゾチエニル;4-(2-ベンジルオキサゾリル);フリル、特に2-及び3-フリル;イソキノリル、特に1-及び5-イソキノリル;イソオキサゾリル、特に3-、4-、及び5-イソオキサゾリル;イミダゾリル、特に2-、4-、及び5-イミダゾリル;インドリル、特に3-、4-、5-、6-、及び7-インドリル;オキサゾリル、特に2-、4-、及び5-オキサゾリル;プリニル;ピロリル、特に2-ピロリル、3-ピロリル;ピラゾリル、特に3-及び5-ピラゾリル;ピラジニル、特に2-ピラジニル;ピリダジニル、特に3-及び4-ピリダジニル;ピリジル、特に2-、3-、及び4-ピリジル;ピリミジニル、特に2-及び4-ピリミジニル;キノキサリニル、特に2-及び5-キノキサリニル;基のリニル、特に2-及び3-キノリニル;5-テトラゾリル;2-チアゾリル、特に2-チアゾリル、4-チアゾリル、及び5-チアゾリル;チエニル、特に2-及び3-チエニル;並びに3-(l,2,4-トリアゾリル)が含まれる。ヘテロアリール部分の上記列挙は、代表的なものであって制限を意図しない。
【0025】
一実施態様によれば、α,β不飽和アリールスルホン基は、スチリルスルホン基:
【化2】

[式中、
α及びβ炭素に結合した水素原子は、別の化学種によって任意に置き換えられており、フェニル環は任意に置換されている]
である。
【0026】
本明細書中で使用される「スチリルスルホン」または「スチリルスルホン化合物」または「スチリルスルホン治療剤」とは、1つ以上のこうしたスチリルスルホン基を含む化合物を意味する。
【0027】
α,β不飽和アリールスルホン放射線保護化合物は、二重結合の存在下で生じるシス-トランス異性体によって特徴付けられる。二重結合周囲の立体関係は、「Z」または「E」と示される。いずれの配向も、「α,β不飽和アリールスルホン」の範囲に含まれる。
【化3】

【0028】
一実施態様によれば、α,β不飽和アリールスルホン化合物は、式I:
【化4】

[式中、
nは1または0であり、
Q1及びQ2は、同一または相違し、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールである]
の化合物である。
【0029】
好ましくは、式Iにおけるnは1であり、すなわちこの化合物はα,β不飽和ベンジルスルホン、例えばスチリルベンジルスルホンを含む。
【0030】
式Iに従う好ましい一実施態様では、Q1及び/またはQ2は置換及び無置換のヘテロアリールから選択され、例えば(E)-3-フランエテニル-2,4-ジクロロベンジルスルホンである。
【0031】
式Iに従う別の好ましい実施態様では、Q1及びQ2は、置換及び無置換のフェニルから選択される。Q1及びQ2が置換及び無置換のフェニルから選択される、好ましい化合物には、式II:
【化5】

[式中、
Q1a及びQ2aは、フェニル及びモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、及びペンタ-置換フェニルからなる群より個別に選択され、ここで置換基は同一または相違して良く、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、ホスホナト、アミノ、スルファミル、アセトキシ、ジメチルアミノ(C2-C6アルコキシ)、C1-C6トリフルオロアルコキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より個別に選択される]
の化合物が含まれる。
【0032】
一実施態様では、式IIの化合物は、少なくとも一つの環において少なくとも二置換されており、すなわち少なくとも一つの環上の少なくとも二つの置換基が水素以外である。別の実施態様では、式IIの化合物は少なくとも一つの環上で少なくとも三置換されており、すなわち少なくとも一つの環上の少なくとも三つの置換基が水素以外である。
【0033】
一実施態様では、放射線保護化合物は、式III:
【化6】

[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、ホスホナト、アミノ、スルファミル、アセトキシ、ジメチルアミノ(C2-C6アルコキシ)、C1-C6トリフルオロアルコキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より選択される]
を有する。
【0034】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、放射線保護化合物は式IIIに従い、R1及びR2は、水素、ハロゲン、シアノ、及びトリフルオロメチルからなる群より選択され、R3及びR4は、水素及びハロゲンからなる群より個別に選択される。
【0035】
式IIIの代替実施態様によれば、放射線保護α,β不飽和アリールスルホン化合物は式IIIaの化合物:
【化7】

であり、ここでR2及びR4は水素以外である。
【0036】
E配置を有する式IIIaに従う好ましい化合物には、以下に制限されるものではないが、(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-クロロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-2-クロロ-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-2,4-ジクロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-4-ブロモベンジルスルホン;(E)-4-クロロスチリル-4-ブロモベンジルスルホン;(E)-4-ブロモスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-4-トリフルオロメチルベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-3,4-ジクロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-4-シアノベンジルスルホン;(E)-2,4-ジクロロ-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロフェニルスルホン、及び(E)-4-クロロスチリル-2,4-ジクロロベンジルスルホンを含む。
【0037】
別の実施態様によれば、式IIIaの化合物はZ配置を有し、ここでR1及びR3は水素であり、R2及びR4は4-ハロゲンからなる群より選択される。こうした化合物には、例えば(Z)-4- クロロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(Z)-4-クロロスチリル-4-フルオロベンジルスルホン;(Z)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(Z)-4-ブロモスチリル-4-クロロベンジルスルホン;及び(Z)-4-ブロモスチリル-4-フルオロベンジルスルホンが含まれる。
【0038】
別の実施態様によれば、放射線保護α,β不飽和アリールスルホン化合物は、式IV:
【化8】

[式中、R1、R2、R3、及びR4は、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より個別に選択される]
の化合物である。
【0039】
一実施態様では、式IVにおけるR1は水素、塩素、フッ素、及び臭素からなる群より選択され;R2、 R3、及びR4は水素である。式IVの好ましい化合物は、(Z)-スチリル-(E)-2-メトキシ-4-エトキシスチリルスルホンである。
【0040】
更に別の実施態様によれば、放射線保護α,β不飽和アリールスルホン化合物は、式V:
【化9】

[式中、
Q3、Q4、及びQ5は、フェニル及びモノ、ジ-、トリ-、テトラ-、及びペンタ-置換フェニルからなる群より個別に選択され、ここで置換基は同一または相違してよいが、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、ホスホナト、アミノ、スルファミル、アセトキシ、ジメチルアミノ(C2-C6アルコキシ)、C1-C6トリフルオロアルコキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より個別に選択される]
の化合物である。
【0041】
式Vの代替実施態様によれば、放射線保護α,β不飽和アリールスルホン化合物は、式Va:
【化10】

[式中、
R1およびR2は、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、およびトリフルオロメチルからなる群より個別に選択され;
R3は、無置換フェニル、モノ置換フェニル、及びジ置換フェニルからなる群より選択され、フェニル環上の置換基はハロゲン及びC1-8アルキルからなる群より個別に選択される]
の化合物である。
好ましくは、式VaにおけるR1は、フッ素及び臭素から成る群より選択され;R2は水素であり;且つR3は2-クロロフェニル、4-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、及び2-ニトロフェニルからなる群より選択される。
【0042】
式Vaにしたがう好ましい放射線保護スチリルスルホンは、R1がフッ素であり、R2が水素であり、R3がフェニルである化合物、すなわち、2-(フェニルスルホニル)-1-フェニル-3-(4-フルオロフェニル)-2-プロペン-1-オン化合物である。
【0043】
「ジメチルアミノ(C2-C6アルコキシ)」は、(CH3)2N(CH2)nO-を意味し、ここでnは2乃至6である。好ましくは、nは2または3である。最も好ましくは、nは2であり、すなわち、この基はジメチルアミノエトキシ基、すなわち(CH3)2NCH2CH2O-である。
「ホスホナト」は、-PO(OH)2基を意味する。
「スルファミル」は、-SO2NH2基を意味する。
【0044】
アリール核上の置換基がアルコキシ基である場合には、炭素鎖は分枝状または直鎖状であってよく、直鎖状が好ましい。好ましくは、アルコキシ基にはC1-C6アルコキシ、より好ましくはC1-C4アルコキシ、最も好ましくはメトキシが含まれる。
【0045】
(E)-α,β不飽和アリールスルホンは、芳香族アルデヒドとベンジルスルホニル酢酸もしくはアリールスルホニル酢酸とのKnoevenagel縮合により調製してよい。この操作は、Reddy et al, Acta. Chim. Hung. 115:269-71 (1984);Reddy et al, Sulfur Letters 13:83-90 (1991); Reddy et al, Synthesis No. 4, 322-23 (1984);及びReddy et al, Sulfur Letters 7:43-48 (1987)に記載されており、これらの開示全体を参照のためにここに取り込むこととする。特に、米国特許第6,656,973号明細書及び米国特許第6,667,346号明細書の開示全体を参照のこと。
【0046】
α,β不飽和アリールスルホンは、製薬品として許容される塩の形態をとりうる。「製薬品として許容される塩」なる語は、アルカリ金属塩を生成させるため及び遊離酸または遊離塩基の付加塩を生成させるために通常使用される塩を含む。製薬品として許容されることを条件として、塩の性質は重要でない。
【0047】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【0048】
典型的な一実施態様では、α,β不飽和アリールスルホンは、式Ia:
【化11】

[式中、
Q1及びQ2は、下記の表2に示される、同一または相違し、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールである]
のものである。
【0049】
【表2A】

【表2B】

【0050】
【表3】

【0051】
本明細書中において開示及び検討される全化合物の多形体が、本願特許請求の範囲内であることが意図される。
【0052】
II.種の例
放射線保護α,β不飽和アリールスルホン種の例は、ON.1210.Naである。ON.1210.Naは、クロロベンジルスルホンの誘導体である。この化合物及び関連化合物は、生命を脅かすレベルの放射線への偶発的及び意図的な暴露の影響を緩和する、価値ある予防特性を示すものとして本明細書中に記載される。然るに、この化合物及び関連化合物の系統的な開発が、貯蔵安定性処方を開発する目的をもって記載される。
表4には、ON.1210.Naの一般的物理特性が記載される。化合物の例は、(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンのナトリウム塩である。
【0053】
【表4】

【0054】
化合物ON01210.Naは、少なくとも一つの多形体を形成するようである。例えば、沈殿したON01210.NaのX線回折パターンは、元々合成された化合物のものとは異なる。ON01210.Naの多形体は、本願特許請求の範囲内であることが意図される。
【0055】
例えば細胞毒性レベルのイオン化放射線への暴露前の、正常なヒト線維芽細胞のON.1210.Naでの治療は、用量依存的な放射線保護を与える。
【0056】
処方原料の例としてのON.1210.Naの物理化学特性が、これらの化合物の安全で信頼でき、且つ有効な非経口処方の開発のための、適切な処方アプローチを評価するために測定された。これには、微視的研究、分配係数、pKa、pH溶解度研究、加速条件下でのpH安定性研究、処方原料の固体特性解析、及び加速条件下での処方原料の固体安定性が含まれる。下記のIV章を参照のこと。この化合物の例は、オクタノール:水の低い(1.28-2.87)分配係数を有する。pH 4.0、5.0、6.0、7.4、8.0、及び9.0での前記薬剤の平衡溶解度は、それぞれ0.000154、0.0379、0.715、11.09、16.81、及び23.3mg/mLであった。pH溶解度研究から算出されるpKaは、2.85±0.6であった。前記薬剤のpH安定性プロフィールは、中性及び生物学的pHにおいてより優れた安定性を示したが、酸性条件下での分解は迅速であった。この分解は、擬一次速度に従った。処方原料(バルク)の加速された固体安定性研究では、分解の形跡は全く見られなかった。この薬剤は、生物学的pHでの水性環境中で非常に安定である。従って、これは貯蔵安定性の非経口処方として処方可能である。遊離酸としての前記薬剤の水性溶解度は低く、pHの増大、共溶媒、及び錯体型性によって著しく高めることができる。
【0057】
III.放射線保護剤α,β不飽和アリールスルホンの処方
本明細書中に記載及び検討される組成物は、それほど制限されず、例えば投与の際の前記化合物の経口による生物学的利用能のため、本明細書中に記載の組成物の投与の好ましい経路には、例えば非経口投与が含まれる。非経口投与には、静脈内、筋内、動脈内、腹腔内、膣内、膀胱内(例えば膀胱中への)、皮内、局所、または皮下の投与が含まれる。α,β不飽和アリールスルホンは、1つ以上のα,β不飽和アリールスルホンを製薬品として許容される担体と組み合わせて含む製薬組成物の形態で投与されてよい。こうした処方中のα,β不飽和アリールスルホンは、0.1乃至99.99重量%を占めて良い。「製薬品として許容される担体」とは、該処方の別の成分と適合性であって、且つ対象にとって有害でないあらゆる担体、希釈剤、または賦形剤を意味する。
【0058】
放射線保護の利益を得るためのα,β不飽和アリールスルホンの特定用量及びスケジュールは、もちろん、患者の体格、体重、年齢、及び性別、治療しようとする疾患の性質及び段階、疾患の攻撃性、及び投与の経路、並びに放射線の特定の毒性を含む、個別の患者の特段の事情により決定される。例えば、約0.01乃至約150mg/kg/日の一日投与量を採用して良く、より好ましくは約0.05乃至約50mg/kg/日。特に好ましくは、約1.0乃至約10.0mg/kg/日の用量、例えば約7.0mg/kg/日の用量である。前記用量は、多数回の投与に亘って与えられても良く、例えば2度の3.5mg/kgの投与であってもよい。より多いまたは少ない用量もまた検討される。
【0059】
非経口投与のためには、α,β不飽和アリールスルホンを、下記の適当な担体または希釈剤、例えば水、油、食塩水、水性デキストロース(グルコース)、及び関連糖溶液、シクロデキストリン、あるいはグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等と混合して良い。非経口投与のための溶液は、好ましくは、α,β不飽和アリールスルホンの製薬品として許容される水溶性塩を含む。例えば安定化剤、酸化防止剤、キレート剤、及び防腐剤もまた添加して良い。適当な酸化防止剤には、キレート剤としてのナトリウムEDTA、亜硫酸塩、アスコルビン酸、並びにクエン酸及びその塩が含まれる。適当な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、メチル-もしくはプロピル-パラベン、及びクロロブタノールが含まれる。
【0060】
有効量の少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホン化合物を含む貯蔵安定性製薬組成物が、本明細書中に記載される。本明細書中で使用される、少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホン化合物の「有効量」なる語は、例えば以下に記載されるように希釈された後の、対象の正常細胞における放射線に関連する毒性を緩和、低減、または消去するため、且つ/または対象において異常増殖細胞に直接的な細胞毒性効果を及ぼすために有効である、化合物の量を意味する。骨髄浄化に関して使用される「放射線保護α,β不飽和アリールスルホン化合物の有効量」とは、対象から除去された骨髄中の放射線に関連する毒性を低減または消去するため、且つ/または対象から除去された骨髄中の悪性細胞に直接細胞毒性効果を及ぼすために有効な、少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホンの量を意味する。各α,β不飽和アリールスルホンは、例えば、約0.25マイクロモル乃至約100マイクロモル、好ましくは約1.0乃至約50マイクロモル、更に好ましくは約2.0乃至約25マイクロモルの濃度で投与される。投与に特に好ましい濃度は、例えば、約0.5、1.0、及び2.5マイクロモル、及び約5、10、及び20マイクロモルである。当業者に周知の要因によって、より高いまたはより低い濃度もまた採用して良い。
【0061】
本明細書に記載及び請求される処方は、一般的に非経口投与を意図する。本発明の組成物は、一般的に活性成分、例えば本明細書中に記載される1つ以上の化合物を用いて、注入前の適切な非経口希釈剤での希釈に先立ち、貯蔵及び取扱のために濃縮形態で処方される。投与前の希釈向けの、本発明の好ましい貯蔵安定性組成物は、一般的に約10mg/ml乃至約150mg/mlの少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホンを含む。
【0062】
1回投与量は、一般的に、本明細書中に記載されるあらゆる組成物の約1ml乃至約5mlの範囲内である。例えば、本明細書中に記載される組成物の個別の3ml投与量が検討される。前記投与量は、例えば5mlのバイアルに実装して良い。本発明の組成物は、例えば、投与前に約7部の希釈剤で希釈してよい(7:1)。しかしながら、使用される希釈係数及び希釈剤は、処方中の薬剤の濃度に依存する。しかしながら、本発明の組成物は、注入前の約2体積の適当な非経口希釈剤での希釈から投与前の約12体積の適当な非経口希釈剤での希釈までの範囲内で、どのように希釈されても良い。
【0063】
本発明の組成物は、例えば非経口投与向けに希釈されてよく、約6.5乃至約10.0の範囲内のpHを有するべきである。好ましくは、非経口投与向けの最終希釈生成物は、約7.0乃至約9.5の範囲内のpHを有する。pHが約7.0乃至約8.0である希釈生成物が好ましい。非経口投与向けの希釈処方のオスモル濃度は、概ね約200乃至約400mOsm/kgの範囲内であるべきである。非経口投与向けの希釈処方の好ましいオスモル濃度は、概ね300mOsm/kgであるべきである。
【0064】
本明細書中に記載される組成物は、特記のない限り、好ましくは水性ベースであるが、例えばエタノールも本明細書中に記載される処方の好ましいベース成分である。
本発明の好ましい組成物は、水性の、例えば溶液または懸濁液中に、約5mg/ml乃至約200mg/mlの少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホンを含む。
【0065】
溶液
本発明の組成物の例は、約20mg/ml乃至約150mg/ml(例えば約25mg/ml、50mg/ml、75mg/ml、100mg/ml、125mg/ml、150mg/ml)の少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホン(例えば(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンナトリウム塩(ON.1210.Na))を含み、ここで該組成物は約7乃至約10の範囲内のpHを示す。好ましいpHは、例えば、約8乃至約9である。約8.5(約8.4乃至約8.6)が好ましいpHの例である。例えば、約8.3乃至約8.7のpHが好ましい。 好ましい緩衝剤は例えばTris-EDTAであり、これは投与時のpHにて優れた生理学的緩衝性能を与える。本明細書中に記載される本発明の組成物の例は、約0.1M Tris乃至0.01 MEDTAの最終濃度を示す。しかしながら、投与の条件に適合するために、Tris濃度は約0.005M乃至約0.5M(または例えば約0.005M乃至約0.5Mの"Tris-EDTA")の範囲内であってよい。注入処方に適当であると当業者に知られたあらゆる緩衝剤を、本発明のこれら組成物中に使用して良い。適当な緩衝剤には、例えば、リン酸緩衝剤、例えばオルトリン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、重炭酸ナトリウム、並びにクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、N-メチルグルカミン、L(+)リシン、グリシン、及びL(+)アルギニンが含まれ、これらは例えばpH約7乃至9.5の優れた緩衝性能を提供する。
【0066】
本発明の溶液組成物の例は、約10mg/ml乃至約100mg/mlの前記化合物(例えばON.1210.Na);Tris-EDTA、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、N-メチルグルカミン、L(+)リシン、グリシン、L(+)アルギニン、及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも一つの緩衝剤;約20乃至約60w/v%の範囲内の水溶性共溶媒を含み;且つ約8乃至約9のpHを有する処方中に、有効量の少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホン化合物を含む。本発明のこのタイプの組成物の例は、約0.005M-0.5Mの範囲内でのTris-EDTA緩衝剤;約40%乃至約60w/v%の範囲内のPEGを含み、且つ約8.3乃至約8.7のpHを有する。このタイプの好ましい例は、約0.1M乃至約0.3M(例えば0.2M)の範囲内のTris-EDTA緩衝剤;約40乃至約60w/v%(例えば50w/v%)の範囲内のPEG400を含み;且つ約8.3乃至約8.7(例えば約8.4乃至約8.6)の範囲内のpHを有する。
【0067】
本発明の組成物の例は、約20mg/ml乃至約60mg/mlの化合物(ON.1210.Na);約0.15M乃至約0.25Mの範囲のTris-EDTA緩衝剤;約45乃至約55w/v%のPEG 400を含み;且つ約8.4乃至約8.6のpHを有する組成物であって、前記化合物は、この組成物中、約25℃にて少なくとも約120日間は実質的に安定である。
【0068】
本明細書中に記載の、約7.5乃至約9.2の範囲内のpHを有する処方が好ましい。高いpH、例えば約8.5が好ましい。約0.5%乃至約90%の、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、及び少なくとも約90%の少なくとも一つの共溶媒を含む組成物が好ましい。本明細書中で使用される「共溶媒」なる語には、以下に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)(例えばPEG 400)、ポリプロピレングリコール、ポリグリセロール、DMA、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、ソルビトール、及びイソプロピルアルコールを含む、当業者には既知の水溶性賦形剤が含まれる。
【0069】
本発明の好ましい溶液処方は、約0.005M乃至約0.5Mの範囲のTris及び約0.0005M乃至約0.05Mの範囲のEDTA;約40乃至約60w/v%の範囲のPEGを含むTris-EDTA緩衝剤を含み;且つ約8.3乃至約8.7のpHを有する。組成物の例は、約20mg/ml乃至約60mg/mlの化合物(ON.1210.Na);約0.15M乃至約0.25Mの範囲のTris、約0.015M乃至約0.025Mの範囲のEDTA、約45乃至約55w/v%のPEG 400を含むTris-EDTA緩衝剤を含み、且つ約8.4乃至約8.6のpHを有する組成物であって、前記化合物はこの組成物中、約25℃にて、少なくとも約120日間は実質的に安定である。
【0070】
懸濁液
本明細書中に記載される懸濁液処方は、水性組成物であり、この組成物中では薬剤の一部が溶解している一方で残部は固相中にある。懸濁液の固相中の薬剤の濃度は、懸濁液の最終pHに依存する。pHが高いほど、溶液相中の薬剤の濃度が高くなる。約8.5のpHでは溶液相中の薬剤は約1mg/mlの濃度である。しかしながら、この濃度は懸濁液中における親水性湿潤剤の使用によって容易に操作することができる。例えば、0.2MのTRIS-EDTAを含み、pH8.5であり、25mg/mlの薬剤濃度を有する溶液処方については、Tween 80が例えば約1%の濃度まで添加されると薬剤濃度は50mg/ml超に増大し、ここで懸濁液が得られる。換言すれば、溶液相中の薬剤濃度は、例えば0.1mg/ml乃至約50mg/mlに、容易に操作することができる。
【0071】
然るに、本発明は、対象におけるイオン化放射線の毒性の影響を低減するための投与のための、少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンの有効量、並びにa)少なくとも一つの親水性湿潤剤、例えば皮下注入が可能であって約6乃至約17(例えば約8乃至約14の範囲内)のHLB値を有する、当業者には既知の生体適合性界面活性剤、b)約4.5乃至約10のpHをもたらす、当業者には既知の生物学的緩衝剤、及びc)処方の等張性をもたらす、当業者には既知の成分を含む組成物に関する。本発明の一態様には、例えば非経口投与のために生体適合性であり且つ適当である粘度調整剤(懸濁剤)が、約0.1乃至約5%の範囲で含まれる。この濃度は、当業者により、本明細書中に記載される共溶媒のホストを使用して、容易に調整可能である。
【0072】
本明細書中に記載される懸濁液組成物は、一般的に少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンを約3mg/ml乃至約500mg/mlの濃度で含む。本明細書中に記載される好ましい組成物は、少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンを約10mg/ml乃至約250mg/mlの濃度で含む。本明細書中に記載される別の好ましい組成物は、少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンを約10mg/ml乃至約250mg/mlの濃度で含む。本明細書中に記載される懸濁液組成物の実施態様の例は、約25mg/ml乃至役75mg/mlの少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンを含む。懸濁液の実施態様の例は、約50mg/mlの少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンを含む。
【0073】
本発明の製薬組成物の好ましい例は、約20mg/ml乃至約100mg/ml、例えば25mg/ml、50mg/ml、75mg/ml、100mg/mlの化合物ON.1210.Na ((E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンのナトリウム塩(C16H12ClNaO4S))を含む。
【0074】
Tween 80を、例えば、湿潤剤として処方中に使用してよい。しかしながら、製薬品として許容される別のあらゆる親水性湿潤剤を、本発明の組成物中に使用してよい。特に好ましいのは、8-14のHLB値を有するあらゆる界面活性剤である。好ましい界面活性剤は、皮下注入可能であり、以下に限定されるものではないが、当業者には周知のTween 20、Tween 40、Tween 60等を含む、当業者にはよく知られた生体適合性界面活性剤である。このタイプの成分のより完全なリストは、以下に記載される。例えばTween 80の量は、本明細書中に記載される組成物中0.01乃至5%の範囲をとりうる。好ましい濃度は約1%である。親水性湿潤剤には、ソルビタンモノパルミテート(Span 40)、ソルビタンモノラウレート(Span 20)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(Tween 65)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、(Tween 85)、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート60、NF、(Tween 60), ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリソルベート80、NF、(Tween 80)、ポリソルベート40、NF、(Tween 40)、ポリソルベート20、NF、(Tween 20)が含まれる。
【0075】
本明細書中に記載される処方のpHは、一般的に約4.5乃至約10である。好ましいpHは、約7.0乃至約10である。特定の処方pHの適切な選択は、注入の局所部位の耐性及び所望の最高結晶濃度に依存する(pHが高いほどCmaxが増大する)。好ましいpHは、例えば、約8乃至9である。約8.5が好ましいpH(約8.4乃至約8.6)の例である。例えば、約8.3乃至約8.7のpHが好ましい。
【0076】
対象においてイオン化放射線の毒性の影響を低減するための投与のための、懸濁製薬組成物の例は、少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホンの有効量及び、約0.5乃至約60w/v%の量で約6乃至約17のHLB値を有する少なくとも一つの親水性湿潤剤、等張性をもたらす作用剤を含み、且つ約7.5乃至約9.5のpHを示す。
【0077】
好ましい緩衝剤は、リン酸塩、リン酸カリウム、例えばKH2PO4であり、これは投与のpHにて優れた緩衝性能を提供する。しかしながら、あらゆる適当な生物学的緩衝剤、例えばグリシン、Tris-グリシン、リン酸緩衝剤を使用して良く、これは例えば約pH7-9.5にて優れた緩衝性能を提供する。
【0078】
本発明の懸濁処方の別の例は、約20mg/ml乃至約150mg/mlの少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホン、並びにソルビタンモノパルミテート(Span 40)、ソルビタンモノラウレート(Span 20)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(Tween 65)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、(Tween 85)、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート60、NF、(Tween 60), ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリソルベート80、NF、(Tween 80)、ポリソルベート40、NF、(Tween 40)、ポリソルベート20、NF、(Tween 20)からなる群より選択され、約1乃至約50w/v%の量の少なくとも一つの親水性湿潤剤、NaClとマンニトールからなる群より選択される等張性をもたらす作用剤;並びにリン酸カリウム、オルトリン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、重炭酸ナトリウム、並びにクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、N-メチルグルカミン、L(+)リシン、グリシン、及びL(+)アルギニンからなる群より選択される緩衝剤を含み、且つこの組成物は約7.5乃至約9.5のpHを示す。
【0079】
処方媒体の等張性は、好ましくは塩化ナトリウムによって調整される。しかしながら、例えばマンニトールまたは塩化カリウムもまた使用しうる。実際、当業界において適当な賦形剤として知られるあらゆる適当な製薬剤を、本明細書中に記載される組成物の等張性の調整に使用して良い。
【0080】
処方の粘度は、例えばカルボキシメチルセルロールまたは当業者に周知の類似のあらゆる賦形剤等の適当な懸濁剤を用いて調製して良い。例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipientsを参照のこと。懸濁剤は、生体適合性であり、非経口投与のために適当である。懸濁剤の濃度は、0.1乃至5%の範囲をとりうる。好ましい量は約1%の範囲である。
【0081】
懸濁処方の実施態様の別の例は、約20mg/ml乃至約75mg/mlの量の(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホン(ON.1210.Na)を含み、緩衝剤はリン酸カリウムであり、等張剤はNaClであり、親水性湿潤剤は約1w/v%の量のTween 80であり、ここで該組成物は約8乃至約8.6のpHを示す。
【0082】
本明細書中に更に特定され、開示されるのは、例えばα,β不飽和アリールスルホン、ON.1210.Naの半減期が、投与経路が筋肉内に変更されると(静脈内に対して)著しく増大し、皮下投与の場合には更に増大するという事実である。例えばON.1210.Naを、本明細書中に記載される懸濁液として投与する場合、薬剤の半減期は特定の処方及びその濃度によって、30-40時間のオーダーである。半減期のこの劇的な増大は、72時間超の期間に亘る、薬剤への長期の暴露を意味する。この増大は、投与の部位からの薬剤の、明らかに低い遅い溶出速度の故に可能である。
【0083】
現行処方向けの代替成分
本発明の代替処方における使用のための、本明細書中に使用される「水溶性ポリマー」なる語は、以下に限定されるものではないが、ポリ-オキシエチレン、ポリ-オキシエチレン-ポリ-オキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)(ポビドン(N-ビニル-2-ピロリドンの可溶性ホモポリマー))、ポリビニルピリジンN-オキシド、ビニルピリジンN-オキシドとビニルピリジンとのコポリマー等、並びにこれらの誘導体並びにこれらの組み合わせを含む、当業者には既知の水溶性ポリマー賦形剤を含む。ポリ-オキシエチレン及び/またはポリオキシエチレン-ポリ-オキシプロピレンコポリマーは、本発明の代替処方における使用のための水溶性ポリマーの例である。例えばポロキサマー407(例えばPluronic F127、Lutrol(登録商標)micro 127)及び/またはポロキサマー188(例えばPluronic F68、Lutrol(登録商標)micro 68)は、本発明の処方中に個別にまたは組み合わせて使用可能なポリ-オキシエチレン-ポリ-オキシプロピレンコポリマーである。BASF Corporation, Mount Olive, NJ。
【0084】
ポリエチレングリコール(PEGs)は、好ましい水溶性ポリマーである。低分子量液体ポリエチレングリコール、例えばPEG 300、PEG 400、PEG 600、及びPEG 800は、本発明の処方中に個別にまたは互いに組み合わせて使用可能な好ましい水溶性ポリマーである。特に好ましいのは、PEG 300、PEG 400、及びPEG 600である。例えば、Lutrol(登録商標) E 300、Lutrol(登録商標) E 400、及びLutrol(登録商標) E 600が、BASF Corporation, Mount Olive, NJより市販品を入手可能なものである。PEG 400(ポリエチレングリコール400、Macrogol 400、PEG 400、及びポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、アルファ-ヒドロ-オメガ-ヒドロキシ- (CAS No: 25322-68-3))、例えばLutrol(登録商標) E 400が好ましい。本質的にPEG 300、PEG 400、PEG 600、及びPEG 800からなる群より選択される水溶性ポリマーの例が好ましい。本明細書に具体的に列挙されてはいないが実質的に同様であるか、あるいはこのPEG構成の特徴範囲内であるPEG製品は、本発明の組成物中に使用して良い。
【0085】
例えば、低分子量ポビドン等級(CAS No: 9003-39-8)、Kollidon(登録商標) 12 PF、及びKollidon(登録商標) 17 PFは、前記化合物とポビドンとの可溶性錯体を形成する。いずれの生成物も、BASF Corporation, Mount Olive, NJより、注入物質における使用に適当な、発熱物質を含まない粉末として入手可能である。Kollidon(登録商標) 12 PF、Kollidon(登録商標) 17 PF、 Kollidon(登録商標) 25、Kollidon(登録商標) 30、及びKollidon(登録商標) 90 Fは、ポビドンの好ましい例である。本発明の組成物は、Povidone K 90を例えば水中に約1%乃至約5%の濃度で含む組成物によって例示される。これらの組成物としては、例えば更にPovidone K 90を例えば水中に約0.5%乃至約10%の濃度で含むものが想定される。低分子量ポビドンは、例えば、本発明の組成物中で格段に高濃度で、例えば約5乃至約40重量%で使用されて良い。好ましい範囲は、処方の粘度によって、約5乃至約20重量%である。
【0086】
化学変性シクロデキストリンは、本明細書中に記載される組成物の成分の例である。本明細書中に記載されるシクロデキストリン薬剤組成物は、容易に希釈され、例えば複雑な混合操作の必要性を排除する。化学変性シクロデキストリンの、例えばヒドロキシプロピル-b-シクロデキストリンの処方は、本明細書中に記載される化合物を溶解且つ安定化するシクロデキストリンの性能並びに化学変性シクロデキストリンによって示される非常に安全なプロフィールのため、非経口投与に好ましい。本明細書中に言及されるシクロデキストリンの使用は、投与量体積、並びに、例えば高いpH、別の溶媒、あるいは本明細書中に記載されるもの以外の化合物による直接の化学的刺激によって生じるin situ刺激を低減することができる。
【0087】
多くの異なる化学部分を、例えばヒドロキシプロピル、カルボキシメチル、及びアセチルなどを、環の上部隆線及び下部隆線を成すヒドロキシル基との反応によってシクロデキストリン分子中に導入して良い。各シクロデキストリンヒドロキシル基がその化学反応性において相違するため、反応過程によって何千もの位置異性体及び光学異性体の無定形の混合物が生成される。本発明の処方の成分としての化学変性シクロデキストリンの好ましい例には、以下に限定されるものではないが、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-ガンマ-シクロデキストリン、及びヒドロキシエチル-ベータ-シクロデキストリンが含まれる。シクロデキストリン分子(アルファ、ベータ、またはガンマ)は、上限3(n)の置換基を有することができ、ここでnはシクロデキストリン分子のグルコピラノース単位の数である。これは、置換度(DS)と呼称される。このDSは水素以外の置換基について言及しており、置換基は全て一つの種類であっても混合していてもよい。加重平均として生じる非整数の置換度が、置換変動を説明するために使用される。例えば、Elsevier Science Inc., 660 White Plains road, Tarrytown, N. Y., 10591-5153 USAより入手可能な"Comprehensive Supramolecular Chemistry"、全11巻の第3巻(シクロデキストリン)を参照のこと。更に、Pitha, Josef, U.S. Patent No. 4,727,064, Pharmaceutical Preparations Containing Cyclodextrin Derivatives;Muller, B. W., U.S. Patent No. 4,764,604, Derivatives of Gamma Cyclodextrins;Yoshida, A., et al., (1988) Int. Pharm, Vol. 46, p. 217: Pharmaceutical Evaluation Of Hydroxy Alkyl Ethers Of B-Cyclodextrins;Muller, B. W., (1986). J. Pharm Sci. 75, No 6, June 1986:Hydroxypropyl-B-Cyclodextrin Derivatives: Influence Of Average Degree Of Substitution On Complexing Ability And Surface Activity;Irie, T., et ah, (1988) Pharm Res., No 11, p. 713: Amorphous Water-Soluble Cyclodextrin Derivatives: 2-hydroxyethyl, 3-hydroxypropyl, 2-hyroxyisobutyl, and carboxamidomethyl derivatives of B-Cyclodextrinも参照のこと。
【0088】
ヒドロキシプロピル-B-シクロデキストリン(ヒドロキシプロピルシクロデキストリン)(HPCD)は、それ自体非常に水溶性(室温で500mg/ml超)である。NIHのJoseph Pitha博士は、このシクロデキストリン誘導体の多くの使用を実験的に評価し、これが細胞培養及び膜調製に簡便に応用可能であることを見いだした。また、HPCDは、様々な齧歯動物種へのIP及びIV投与の後に無毒であることも観察される。非経口で与えられる、HPCDの最大ヒト投与量は、一個人に対して5%の水性溶液として連続的に四日に亘って静脈内投与された、およそ500mg/kgであり、いかなる不都合な臨床効果も報告されなかった。Pitha, Josef, et al, (1988) Life Sciences. 43, No 6, 493-502: Drug Solubilizers To Aid Pharmacologists: Amorphous Cycrodextrin Derivatives。
【0089】
本明細書中に記載される化合物は、一般的に少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンの有効量、水、及び少なくとも一つの化学変性シクロデキストリンを含む。本発明の処方の実施態様としては、約5乃至90w/v%の化学変性シクロデキストリンを含み、且つ約6.8乃至約9.6の範囲内のpHを有するものが好ましい。本明細書中に記載される処方としては、約7.6乃至約9.2の範囲内のpHを有する。高いpH、例えば約8乃至約9であること、またはこれより高いことが好ましい。本発明のために特に好ましい組成物は、約20乃至約60w/v%の化学変性シクロデキストリンを含む。本発明の組成物の例は、約30乃至約50w/v%の化学変性シクロデキストリンを含む。本発明の組成物の例は、好ましくは約30乃至約50w/v%の量の、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-ガンマ-シクロデキストリン、及びヒドロキシエチル-ベータ-シクロデキストリンから選択される少なくとも一つの化学変性シクロデキストリン、有効量の少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホン、例えば(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンナトリウム塩(ON.1210.Na)、及び水を含む。2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル-B-シクロデキストリン) (ヒドロキシプロピルシクロデキストリン)(HPCD)が、本発明の組成物における使用のために好ましい化学変性シクロデキストリンである。イオン化放射線の毒性からの正常細胞の保護のため、または生命を脅かすレベルの放射線への偶発的/意図的な暴露の影響を緩和するための、非経口投与の前に希釈される、本発明の貯蔵安定性水性組成物は、例えば有効量の少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホン及び約35乃至約45w/v%(約40w/v%)の化学変性シクロデキストリンを含む。
【0090】
投与の前に希釈される、本発明の好ましい貯蔵安定性組成物は、約10mg/ml乃至約100mg/mlの少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホンを含む。本発明の特に好ましい組成物は、約20mg/ml乃至約80mg/mlの少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホンを含む。本発明の組成物の例は、約20mg/ml乃至約75mg/ml(例えば約25mg/ml、50mg/ml、75mg/ml)の少なくとも一つのα,β不飽和アリールスルホン(例えば、(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンナトリウム塩(ON.1210.Na))を含み、且つ約7.5乃至約9(例えば約8.5)の範囲のpHを有する。
【0091】
本明細書中に記載及び請求される好ましい処方は、放射線保護α,β不飽和アリールスルホンON.1210.Naの溶解度を著しく増大させて本発明の濃縮処方を得ており、ここでは希釈に際して薬剤は少なくとも約24時間に亘って生理学的に安定である。
【0092】
IV.処方研究
ON.1210.Na、クロロベンジルスルホンのナトリウム塩は、有効な放射線保護剤の例である。ON.1210.Naは、生命を脅かすレベルの放射線暴露中に保護を与えることが特に示されている。本明細書中に記載されるのは、患者への治療的投与のためのこの化合物及び関連化合物の貯蔵安定性非経口処方である。
【0093】
処方前研究の間は、安全性指向HPLCAアッセイを用いる。処方前研究には、微視的及び巨視的な特性の測定、分配係数、pKa、pH溶解度、pH安定性、固体特性、及び固体安定性が含まれる。固体及び固体安定性の特性解析のために、XRD及び熱分析が使用される。薬剤の固体安定性並びにpH安定定性は、75℃にて行われる。
【0094】
微視的及びXRDのデータにより、この薬剤が結晶様の不規則な板を有する結晶構造であることが示される。この薬剤の有するオクタノール:水の分配係数は低い(1.28-2.87)。pH 4.0、5.0、6.0、7.4、8.0、9.0での前記薬剤の平衡溶解度、それぞれ0.000154、0.0379、0.715、11.09、16.81、23.3mg/mLである。pH溶解度研究から算出されるpKaは、2.85±0.6である。前記薬剤のpH安定性プロフィールは、中性及び生物学的pHにおいてより優れた安定性を示すが、酸性条件下での分解は迅速である。この分解は、一次反応速度に従った。処方原料(バルク)の加速された固体安定性研究では、分解の形跡は全く見られない。
【0095】
前記薬剤の溶解度は、pHの増大と共に著しく増大する。また、この薬剤の安定性は、水性溶液をpH7付近に緩衝することによって向上させることができる。この薬剤は水性環境中で非常に安定であり、このため貯蔵安定性処方の開発に利用することができる。
【0096】
【表5A】

【表5B】

【0097】
【表6】

【0098】
予備処方及び処方の開発のための、ON.1210.Naについての安定性指向高感度HPLCアッセイを開発及び検証するために研究が行われた。均一系は、水中のアセトニトリル:0.1%のトリフルオロ酢酸(60:40 v:v)からなる移動相を1mL/分の流速で使用する。C-18 Geminiカラム(250×4.6mm)を使用し、流出物を2254nmにてモニターする。強制分解を、ON.1210.Naを0.1HのHCl、0.1NのNaOH、及び3%(v/v)の過酸化水素に暴露することによって行う。検証パラメータには、直線性、特異性、検出感度、精度、及び正確度が含まれる。
【0099】
標準曲線は、0-500μg/mLの濃度範囲では直線状である。薬剤及び幾つかの分解生成物の保持時間は、十分に7分以内であった。一日の及び日毎の精度についての相対標準偏差(RSD)値は、それぞれ0.4乃至2.5%及び2.2乃至4.4%である。正確度測定についてのRSDは、0.85乃至1.7%の範囲である。このアッセイについての臨界レベル、検出レベル、及び測定レベルは、それぞれ、2.86±0.67μg/mL、5.69±0.67μg/mL、及び15.6±1.79μg/mLである。
【0100】
高感度の安定性指向HPLC法が、ON.1210.Naについて開発され、検証される。強制分解、予備処方、及び処方研究は、この方法の適切性を示す。
【0101】
この方法の第1工程は、安定性指向HPLCアッセイの開発である。次の段階は、このアッセイの検証である。このHPLCアッセイは、バルク薬剤及び例えば処方されたON.1210.Naの予備処方、処方開発、及び安定性研究を支えることができる。
【0102】
ON.1210.Na(固体)の安定性
圧着したバイアル中でのオートクレーブの後、固体薬剤サンプル(ON1210)を、開発したHPLC法を使用してさらにあらゆる分解について評価した。サンプルをオートクレーブ後に使用して400μg/mLの標準溶液を調製し、HPLCに注入する。結果は、親ピークの濃度曲線下面積における減少を全く示さず、また更なるピークも全く検出されない。この観察に基づき、バルク薬剤ON.1210.Naはオートクレーブ条件下で安定であると見られる。
【0103】
ON.1210.Naの固体安定性
固体状態のON.1210.Naの安定性は、この薬剤を75℃超に長時間に亘って暴露することによって決定される。サンプルを10mLの注射バイアル中に圧着封入し、上記温度にて維持する。15日と1ヶ月後にサンプルを回収し、希釈溶液で再構成して、その濃度をHPLCで測定する。クロマトグラム中のあらゆる付加的ピークの出現にも注意する。75℃に暴露されていないON.1210.Naを参照用サンプルとし、希釈溶液で既知の濃度に再構成する。この研究の結果を表7に示す。
【0104】
【表7】

【0105】
固体安定性データは、75℃での時間の関数として化合物の抗力に僅かな増大があることを示す。これはおそらく、サンプル中に存在する湿分の喪失に起因する。このことは、バルクON.1210.Naの湿分含量の測定により確認された。結果は、サンプル中には約14.5%の湿分があり、これは1モルのON.1210.Naあたり3モルの水に相当することを示す。クロマトグラムは、サンプル分解の兆候を全く示さなかった。
【0106】
熱分析
示差操作熱量計(DSC)(model DSC-50, Shimadzu, Kyoto, Japan)及び熱重量分析器(TGA) (model TGA-50, Shimadzu, Kyoto, Japan)を、熱分析オペレーティングシステム(TA-50WS, 20 Shimadzu, Kyoto, Japan)に接続する。溶融熱をインジウム(純度99.99%、融点156.4、ΔH 6.8mcal/mg)を使用して測定する。DSCにより分析しようとするサンプル(5-10 mg)をアルミニウムパン中に密閉せずに圧着封入し、窒素流(流速20mL/分)下にて10℃/分の速度で30乃至400℃に加熱する。熱重量分析(TGA)のために、およそ10mgのサンプルを計量してアルミニウムパンに入れ、窒素パージ下にて10℃/分の速度で30乃至400℃に加熱する。DSCサーモグラムは、二度の熱イベントを示し、第1には(i)おそらくは脱溶媒和または脱水による50℃での吸熱ピークである。これは全く同一の温度範囲で重量喪失をも示すTGAサーモグラムによって更に裏付けられる。第2には、(ii)おそらくは分解を伴う薬剤の溶解による360℃での発熱ピークである。
【0107】
粉末X線回折研究
遊離酸(ON.1210)と塩(ON.1210.Na)のサンプル及び、濾過された飽和ON.1210.Na溶液由来の、冷蔵条件下に維持された沈殿サンプルを、周囲温度にてSiemens粉末X線回折装置を使用して分析する。走査範囲(2θ)は、5°乃至40°(ステップ走査、ステップ幅0.05°、積算時間は1秒)である。
【0108】
【表8】

【0109】
【表9】

図には、ON.1210のナトリウム塩が結晶性物質であることが明示される。
【0110】
沈殿物の特性解析
ナトリウム塩は、水中で過飽和応益を形成する経口を有し、貯蔵に際してはこの溶液が沈殿を呈し始める。沈殿物を単離し、乾燥し、HPLC、DSC、TGA、及びXRPDによって特性解析する。
沈殿物を、アセトニトリルと水との混合物に溶解させ、HPLCによって分析する。沈殿物は、同時に、ON.1210の沈殿を示唆するON.1210.Naの標準として溶出する。
沈殿物を、更にDSCによって特性解析する。沈殿物のサーモグラムは、ON.1210.Na標準に見られるような50℃付近での遷移を示さない。しかしながら、これは、同様の360℃付近での溶解/分解を確かに示している。
沈殿物を、更にXRPDによって特性解析する。回折図形は、8.815で観察された一つを除き、ON.1210.Naについて観察されたピークのほとんどを示す。
【0111】
【表10】

【0112】
結論として、この薬剤、例えばON.1210.Naは、驚くべきことに、水性環境中で生物学的pHにて、非常に安定であることが示される。従って、有効な貯蔵安定性非経口処方として処方することができる。本発明者は、前記薬剤は水性溶解度が低く、これを高いpH及び共溶媒によって、また包接錯体の形成によって高めることができる旨を更に見いだした。
【0113】
関連化合物には、以下に制限されるものではないが、(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-クロロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-2-クロロ-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-2,4-ジクロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-4-ブロモベンジルスルホン;(E)-4-クロロスチリル-4-ブロモベンジルスルホン;(E)-4-ブロモスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-4-トリフルオロメチルベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-3,4-ジクロロベンジルスルホン;(E)-4-フルオロスチリル-4-シアノベンジルスルホン;(E)-2,4-ジクロロ-4-クロロベンジルスルホン;及び(E)-4-クロロスチリル-2,4-ジクロロベンジルスルホンが含まれる。
【0114】
関連化合物には、以下に制限されるものではないが、(Z)-4- クロロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(Z)-4-クロロスチリル-4-フルオロベンジルスルホン;(Z)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン;(Z)-4-ブロモスチリル-4-クロロベンジルスルホン;及び(Z)-4-ブロモスチリル-4-フルオロベンジルスルホンが含まれる。
【0115】
米国特許第6,656,973号明細書に開示、検討、または例示される全ての関連化合物が、合成実施例1-219を含むがこれに制限されることなく、ここに参照のために取り込まれる。
【実施例1】
【0116】
(実施例I)
ON.1210.Na塩の調製
4-クロロベンジル-4-カルボキシスチリルスルホン(ON 01210)(49g、0.145mol)を1リットルの三角フラスコに仕込み、500mlの蒸留水を加えた。水酸化ナトリウム溶液(16ml:10Mストック)(0.150mol)を前記三角フラスコに加えた。フラスコの内容物を、撹拌しつつ沸騰させ、ON.01210を完全に溶解させた。その後溶液を室温に冷却し、分離してきた光沢のある結晶を溝付き濾紙で濾過した。結晶性物質を真空下で乾燥させ、48g(収率92%)の純粋ON.1210.Naを得た。
【0117】
(実施例II)
培養正常細胞に対するα,β不飽和アリールスルホンの放射線保護効果
培養された正常細胞に対する、下記の表11中の化合物の放射線保護効果を以下のように評価した。
HFL-1細胞は、正常2倍体肺繊維芽細胞であるが、これを、24ウェルの皿に、10%のウシ胎児血清及び抗生物質を加えたDMEM中で10mm2当たり3000細胞の細胞密度にて播種した。表11に列挙した試験化合物を、DMSOを溶媒として使用し、2.5乃至20ミクロモルの選択的濃度で、24時間後に細胞に加えた。参照細胞はDMSO単独で処理した。細胞を試験化合物またはDMSOに24時間に亘って暴露させた。その後、細胞に、10Gy(グレイ)または15Gyのイオン化放射線(IR)を、放射源としてセシウム137を備えたJ.L. Shepherd Mark I, Model 30-1 Irradiatorを用いて照射した。
【0118】
照射の後、試験細胞及び参照細胞上の培地を除去し、試験化合物またはDMSOを含まない新たに準備した培地と置き換えた。照射された細胞を96時間インキュベートし、二重ウェルをトリプシン処理し、100mm2の組織培養皿に再度乗せる。再度乗せた細胞を、通常条件下にて、新鮮培地での一度の交換を伴って3週間に亘り培養した。生存細胞の数を表す、培養皿100mm2毎のコロニーの数を、以下に記載のように皿を染色することによって測定した。
【0119】
個別の放射線保護細胞のクローン増殖から誘導されるコロニーを可視化及び計数するために、培地を除去し、プレートを室温のリン酸緩衝食塩水で一度洗浄した。細胞を、1:10希釈したギムザ染色液(Sigma)で20分間に亘って染色した。着色剤を取り除き、プレートを水道水で洗浄した。プレートを風乾し、各プレートのコロニー数をカウントし、二重プレートの平均を決定した。
【0120】
結果を表11に示す。「+」は試験した濃度での2乃至4.5倍の放射線保護活性を示す。何倍の保護であるかは、試験プレート由来のコロニーの平均数を参照プレート上のコロニーの平均数で除算することによって決定された。
【0121】
【表11】

【0122】
(実施例III)
(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンでの予備処置による、放射線毒性からのマウスの保護
10-12週齢のC57ブラックマウス(Taconic)を10匹ずつの二つの処置グループに分けた。「200×2」と表示される一方の群は、DMSO中に溶解させた200マイクログラムの(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホン(20gのマウスを基準として10mg/Kgの投与量)の腹腔内注射を、8Gyのガンマ線を照射される18時間前及び6時間前に受けた。「500×2」と表示される他方のグループは、DMSO中に溶解させた500マイクログラムの(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホン(20gのマウスを基準として25mg/Kgの投与量)の腹腔内注射を、8Gyのガンマ線を照射される18時間前及び6時間前に受けた。16匹の参照グループは8Gyのガンマ線照射のみを受けた。参照グループ及び実験グループの死亡率を、照射の40日後に評価した。結果を図5に示す。
【0123】
照射後20日までに、参照マウスは80%なる最高の死亡率を示した。然るに、線量8Gyのガンマ線を、LD80線量とする。対照的に、LD80放射線量を受けた20日後に死亡していたマウスは、「200×2」グループでは約50%のみ、及び「500×2」グループでは約30%のみであった。40日後までには、「200×2」グループではおよそ60%の最高死亡率が達成され、「500×2」グループではおよそ50%の最高死亡率が達成された。これらのデータは、マウスにおける放射線毒性は、(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンでの予備処置によって著しく低減されることを示す。
【0124】
(実施例IV)
放射線暴露の後に与えられた場合の、マウスにおける(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンの放射線保護効果
10-12週齢のC57 B6/Jマウス(Taconic)をそれぞれ10匹と9匹の二つの処置グループに分けた。「200×2」と表示される一方の群は、DMSO中に溶解させた200マイクログラムの(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホン(20gのマウスを想定して10mg/Kgの投与量)の腹腔内注射を、8Gyのガンマ線を照射される18時間前及び6時間前に受けた。「200Post」と表示される他方のグループは、DMSO中に溶解させた200マイクログラムの(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホン(20gのマウスを想定して10mg/Kgの投与量)の腹腔内注射を、8Gyのガンマ線を照射された15分後に受けた。16匹の参照グループは8Gyのガンマ線照射のみを受けた。参照グループ及び実験グループの死亡率を、照射の40日後に評価した。結果を図6に示す。
【0125】
図6は、(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンでの照射後のマウスの処置により、参照グループと比較して放射線に誘発される死亡率に著しい遅延がもたらされたことを示す。照射後処置により与えられる放射線保護は、照射前処置に見られるほど良好でないが、それでも、(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンは、対象が放射線線量を受けた後の放射線毒性の影響の低減に有効である。
【0126】
(実施例V)
25mg/mlのON.1210.Na((E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンナトリウム塩(C16H12ClNaO4S))の処方
12.114gのトロメタミン(0.1M)及び2.9224gのEDTA(0.01M)を0.5Lの脱塩水中とする。この溶液に、500mlのPEG400を加え、pHが平衡化されるまで攪拌を続ける。最終溶液のpHは、HCl/NaOHのいずれかを用いて7.8に調整される。
上記媒体に十分なON01210 Naを添加して25mg/mlの最終濃度を得る。この処方のpHは、HClとNaOHとのいずれかで8.5の最終pHを得るように調整される。
【0127】
(実施例VI)
実施例Vで調製された処方を、その物理的安定性についてモニターした。この処方の物理的安定性を、水中に調製され、且つリン酸緩衝剤.5を使用して調製された同様の処方と比較した(全処方は、1:1 w/緩衝剤:PEG400である(例えば実施例Vを参照のこと))。
【0128】
【表12A】

【表12B】

【0129】
(実施例VII)
懸濁処方の例
1Lの50mg/mL ON.1210.Na懸濁液
13.609gのKH2PO4
8.766gのNaCl
10mLのTween 80
50gのONl210.Na及び
全体で1Lとする残量の脱塩水
【0130】
その後、前記懸濁液を攪拌により混合し、pHを8.2に調整し、ひと晩攪拌する。翌日pHを確認し(ひと晩で減少している)、pH8.2に再調整する。この操作を、pHが安定化するまで続ける。
【0131】
本明細書中で言及される全ての文献及び特許は、参照のために取り込まれる。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、記載の主題の様々な変形及び変更が当業者にはあきらかである。本発明は特定の実施態様に関して説明されているが、特許請求の範囲に係る本発明がこれらの実施態様にまで過度に制限されるべきでないことが理解されるべきである。実際、本発明を実施するための様々な変形は、当業者には自明であり、特許請求の範囲内とすることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるイオン化放射線の毒性の影響を低減するための投与のための水性製薬溶液組成物であって、少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンの有効量及び約10乃至90w/v%の量の少なくとも一つの共溶媒を含み、且つ約7.5乃至約9.5のpHを示す組成物。
【請求項2】
前記放射線保護化合物が、式I:
【化1】

[式中、
nは1または0であり;
Q1及びQ2は、同一または相違し、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリール;あるいはその製薬品として許容される塩または多形体である]
を有する、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記放射線保護化合物が、(E)-3-フランエテニル-2,4-ジクロロベンジルスルホンである、請求項2の組成物。
【請求項4】
Q1及びQ2が、置換及び無置換のフェニルから選択される、請求項2の組成物。
【請求項5】
前記放射線保護化合物が、式II:
【化2】

[式中、
nは1または0であり;
Q1a及びQ2aは、フェニル及びモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、及びペンタ-置換フェニルからなる群より個別に選択され、ここで置換基は同一または相違して良く、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、ホスホナト、アミノ、スルファミル、アセトキシ、ジメチルアミノ(C2-C6アルコキシ)、C1-C6トリフルオロアルコキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より個別に選択される]
を有する、請求項4の組成物。
【請求項6】
Q1aが4-アルコキシフェニルであり、Q2aが2,4,6-トリアルコキシフェニルである、請求項5の組成物。
【請求項7】
前記放射線保護化合物が、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシベンジルスルホンである、請求項6の組成物。
【請求項8】
前記放射線保護化合物が、式III:
【化3】

[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、ホスホナト、アミノ、スルファミル、アセトキシ、ジメチルアミノ(C2-C6アルコキシ)、C1-C6トリフルオロアルコキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より個別に選択される]
を有するかまたはこれらの製薬品として許容される塩である、請求項5の組成物。
【請求項9】
前記放射線保護化合物が、式IIIa:
【化4】

[式中、
R2及びR4は水素でない]
を有する、請求項8の組成物。
【請求項10】
前記放射線保護化合物が、(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン、(E)-4-フルオロスチリル-4-トリフルオロメチルベンジルスルホン、(E)-4-フルオロスチリル-4-シアノベンジルスルホン、(Z)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン、(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロフェニルスルホン、及び(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンからなる群より選択される、請求項9の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンのナトリウム塩である、請求項10の組成物。
【請求項12】
約20mg/ml乃至約100mg/mlの少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホン及び、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリグリセロール、DMA、プロピレングリコール、グリセロール、エタノール、ソルビトール、及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される少なくとも一つの共溶媒を約25乃至約90w/v%の量で含み、且つ約7.5乃至約9.5の範囲のpHを有する、水性製薬溶液組成物。
【請求項13】
前記放射線保護化合物が、式I:
【化5】

[式中、
nは1または0であり;
Q1及びQ2は、同一または相違し、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールである]
を有するかまたは、
その製薬品として許容される塩または多形体である、請求項12の組成物。
【請求項14】
前記放射線保護化合物が、(E)-3-フランエテニル-2,4-ジクロロベンジルスルホンである、請求項13の組成物。
【請求項15】
Q1及びQ2が、置換及び無置換のフェニルから選択される、請求項13の組成物。
【請求項16】
前記放射線保護化合物が、式II:
【化6】

[式中、
nは1または0であり;
Q1a及びQ2aは、フェニル及びモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、及びペンタ-置換フェニルからなる群より個別に選択され、ここで置換基は同一または相違して良く、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、ホスホナト、アミノ、スルファミル、アセトキシ、ジメチルアミノ(C2-C6アルコキシ)、C1-C6トリフルオロアルコキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より個別に選択される]
を有する、請求項15の組成物。
【請求項17】
Q1aが4-アルコキシフェニルであり、Q2aが2,4,6-トリアルコキシフェニルである、請求項16の組成物。
【請求項18】
前記放射線保護化合物が、(E)-2,4,6-トリメトキシスチリル-4-メトキシベンジルスルホンである、請求項17の組成物。
【請求項19】
前記放射線保護化合物が、式III:
【化7】

[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、ヒドロキシ、ホスホナト、アミノ、スルファミル、アセトキシ、ジメチルアミノ(C2-C6アルコキシ)、C1-C6トリフルオロアルコキシ、及びトリフルオロメチルからなる群より個別に選択される]
を有するかまたはこれらの製薬品として許容される塩である、請求項16の組成物。
【請求項20】
前記放射線保護化合物が、式IIIa:
【化8】

[式中、
R2及びR4は水素でない]
を有する、請求項19の組成物。
【請求項21】
前記放射線保護化合物が、(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン、(E)-4-フルオロスチリル-4-トリフルオロメチルベンジルスルホン、(E)-4-フルオロスチリル-4-シアノベンジルスルホン、(Z)-4-フルオロスチリル-4-クロロベンジルスルホン、(E)-4-フルオロスチリル-4-クロロフェニルスルホン、及び(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンからなる群より選択される、請求項20の組成物。
【請求項22】
前記化合物が、(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホンのナトリウム塩(ON.1210.Na)である、請求項21の組成物。
【請求項23】
約20mg/ml乃至約100mg/mlの化合物(ON.1210.Na);Tris-EDTA、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リシン-HCl;アルギニン-HClからなる群より選択される少なくとも一つの緩衝剤;約40乃至約60w/v%の範囲の共溶媒を含み;且つ約8乃至約9のpHを有する、請求項22の組成物。
【請求項24】
約0.005M乃至約0.5Mの範囲のTris及び約0.0005M乃至約0.05Mの範囲のEDTA;約40乃至約60w/v%の範囲のPEGを含むTris-EDTA緩衝剤を含み、且つ約8.3乃至約8.7のpHを有する、請求項23の組成物。
【請求項25】
約0.1M乃至約0.3Mの範囲のTris、約0.01M乃至約0.03Mの範囲のEDTA、約40乃至約60w/v%のPEG 400を含むTris-EDTA緩衝剤を含み、且つ約8.3乃至約8.7の範囲のpHを有する、請求項24の組成物。
【請求項26】
約20mg/ml乃至約60mg/mlの化合物(ON.1210.Na);約0.15M乃至約0.25Mの範囲のTris、約0.015M乃至約0.025Mの範囲のEDTA、約45乃至約55w/v%のPEG 400を含むTris-EDTA緩衝剤を含み、約8.4乃至約8.6のpHを有する組成物であって、この組成物中、約25℃にて、前記化合物が少なくとも約120日間は実質的に安定である、請求項25の組成物。
【請求項27】
約25mg/mlまたは約50mg/mlの化合物(ON.1210.Na);約0.2MのTris及び約0.02Mの範囲のEDTA、約50w/v%のPEG 400を含む約0.2MのTris-EDTA緩衝剤を含み、約8.4乃至約8.6のpHを有する組成物であって、この組成物中、約25℃にて、前記化合物が少なくとも約175日間は実質的に安定である、請求項26の組成物。
【請求項28】
対象におけるイオン化放射線の毒性の影響を低減するための投与のための懸濁製薬組成物であって、少なくとも一つの放射線保護α,β不飽和アリールスルホンの有効量及び、約0.1乃至約5w/v%の量の約6乃至約17のHLB値を有する少なくとも一つの親水性湿潤剤、等張性をもたらす作用剤を含み、且つ約7.5乃至約9.5のpHを示す組成物。
【請求項29】
約20mg/ml乃至約150mg/mlの少なくとも一つの放射線保護化合物α,β不飽和アリールスルホン及び、ソルビタンモノパルミテート(Span 40)、ソルビタンモノラウレート(Span 20)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(Tween 65)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(Tween 85)、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート60、NF、(Tween 60)、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリソルベート80、NF、(Tween 80)、ポリソルベート40、NF、(Tween 40)、ポリソルベート20、NF、(Tween 20)からなる群より選択される、約0.5乃至約2.5w/v%の少なくとも一つの親水性湿潤剤、NaCl及びマンニトールからなる群より選択される等張性をもたらす作用剤;及びリン酸カリウム、オルトリン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、重炭酸ナトリウム並びにクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、N-メチルグルカミン、L(+)リシン、グリシン、及びL(+)アルギニンからなる群より選択される緩衝剤を含み、且つ約7.5乃至約9.5のpHを示す、請求項28に記載の製薬組成物。
【請求項30】
放射線保護化合物α,β不飽和アリールスルホンが約20mg/ml乃至約75mg/mlの量の(E)-4-カルボキシスチリル-4-クロロベンジルスルホン(ON.1210.Na)であり、緩衝剤がリン酸カリウムであり、等張剤NaClであり、親水性湿潤剤が約1w/v%の量のTween 80であって、且つ約8乃至約8.6のpHを示す、請求項29の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−544714(P2009−544714A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521847(P2009−521847)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/016879
【国際公開番号】WO2008/105808
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(504105184)オンコノバ・セラピューティックス・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】