説明

放射線分布ラインセンサ

【課題】放射線損傷問題を克服した放射線分布ラインセンサを提供する。
【解決手段】液体コアファイバ2と、液体コアファイバ2の両端にそれぞれ接続された第1及び第2光検出器とを具え、液体コアファイバ2に接続し、液体コアファイバ2内の液体コアを交換する手段をさらに具える。前記第1及び第2光検出器が光電子増倍管3,4を具え、光電子増倍管3,4に接続された飛行時間差分析手段をさらに具え、前記飛行時間差分析手段が、光電子増倍管3,4の各々に接続されたファーストプリアンプ5,6と、ファーストプリアンプ5,6の各々に接続されたコンスタントフラクションディスクリミネータ7,8と、コンスタントフラクションディスクリミネータ7,8の一方に接続された遅延線9と、コンスタントフラクションディスクリミネータ7,8の他方と遅延線9とに接続された時間波高変換器10と、時間波高変換器10に接続された波高分析器11とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー粒子線、ガンマ線あるいはガンマ線放出を伴う放射線物質を検知する放射線分布ラインセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバに放射線が入射した時に発生する光をファイバ両端に設置した光検出器によって捉えその時間差から放射線入射位置を同定する検出器は、これまでに複数提案されている。主に発光機構の違いにより、シンチレーションファイバを用いてシンチレーション発光を検出する方法(例えば、特開平8−94758号公報「シンチレーションファイバを用いた分布型検出器」)と、光ファイバを用いてチェレンコフ光を検出する方法(例えば、特開平6−294871号公報「放射線強度分布測定装置」)とがある。また、ファイバを様々な形状にすることにより機能を特化した検出器が作成されている。
【0003】
しかしながら、いずれの方法においてもコア及びクラッドが固体で構成される光ファイバを用いており、光の透過率が劣化してしまう放射線損傷問題が不可避であり、実際に産業応用された例は少ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したことを鑑み、本発明は、放射線損傷問題を克服した放射線分布ラインセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、液体コアファイバと、前記液体コアファイバの両端にそれぞれ接続された第1及び第2光検出器とを具えることを特徴とする放射線分布ラインセンサである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線分布ラインセンサにおいて、前記第1及び第2光検出器が光電子増倍管を具え、前記光電子増倍管に接続された飛行時間差分析手段をさらに具えることを特徴とする放射線分布ラインセンサである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の放射線分布ラインセンサにおいて、前記飛行時間差分析手段が、前記光電子増倍管の各々に接続されたファーストプリアンプと、前記ファーストプリアンプの各々に接続されたコンスタントフラクションディスクリミネータと、前記コンスタントフラクションディスクリミネータの一方に接続された遅延線と、前記コンスタントフラクションディスクリミネータの他方と前記遅延線とに接続された時間波高変換器と、前記時間波高変換器に接続された波高分析器とを具えることを特徴とする放射線分布ラインセンサである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3に記載の放射線分布ラインセンサにおいて、前記液体コアファイバに接続し、前記液体コアファイバ内の液体コアを交換する手段をさらに具えることを特徴とする放射線分布ラインセンサである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射線との相互作用によって生じる光を光検出器まで伝送するファイバーコア部に液体を用いることにより放射線損傷の発生を押さえ、さらに液体コア材を外部供給フロー型にし、コア部素材を放射線損傷が発生する前に入れ替えることにより損損の影響を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明による放射線分布ラインセンサの構成の一例を示すブロック図である。放射線分布ラインセンサ1は、液体コアファイバ2と、液体コアファイバ2の両端にそれぞれ接続された第1及び第2光電子増倍管(PMT)3及び4と、光電子増倍管3及び4の各々に接続された第1及び第2ファーストプリアンプ(FPA)5及び6と、ファーストプリアンプ5及び6の各々に接続された第1及び第2コンスタントフラクションディスクリミネータ(CFD)7及び8と、第2コンスタントフラクションディスクリミネータ8に接続された遅延線(DL)9と、第1コンスタントフラクションディスクリミネータ7と遅延線9とに接続された時間波高変換器(TAC)10と、時間波高変換器10に接続された波高分析器(MCA)11とを具える。液体コアファイバ2は、液体ライトガイドとして市販されているものであってもよい。
【0011】
ガンマ線の測定を例として説明する。放射線分布ラインセンサ1に入射したガンマ線は、液体コアファイバ2の液体コアあるいは液体コア近傍で光電効果又はコンプトン散乱を起こし、高速電子を生成する。生成された高速電子が液体コア中を移動する際に液体コア中光速度よりも速い速度を持っている場合、チェレンコフ光が生成される。このチェレンコフ光の放出方向は前記高速電子の速度に依存し、電子進行方向に対し円錐状の放出され、その角度θはcosθ=1/nβとなり、β〜1の場合はθ=約48度となる。市販の液体ライトガイドには液体コアの屈折率が1.5付近のものが実現されており、十分にチェレンコフ光を液体コアファイバ2の左右に向けて伝達することができる。液体コアファイバ2中を左右に伝達された光は第1及び第2光電子増倍管3及び4の各々に入射し、電気パルスを生成する。第1及び第2光電子増倍管3及び4は、この電気パルスを各々第1及び第2ファーストプリアンプ5及び6に供給する。第1及び第2ファーストプリアンプ5及び6は、各々供給された電気パルスを増幅し、第1及び第2コンスタントフラクションディスクリミネータ7及び8に各々供給する。第1及び第2コンスタントフラクションディスクリミネータ7及び8は、各々供給された増幅された電気パルスをロジックパルスに変換する。第1コンスタントフラクションディスクリミネータ7はこのロジックパルスを時間波高変換器10に直接供給し、第2コンスタントフラクションディスクリミネータ8はロジックパルスを、遅延線9を経て時間波高変換器10に供給する。時間波高変換器10は、前記2つのロジックパルスを左右の信号の到達時間差に比例した信号に変換し、波高分析器11に供給する。波高分析器11はこの時間差情報を記録する。
【0012】
図2は、図1に示すような構成の放射線分布ラインセンサ1によって、60Coガンマ線源を2m長さの液体コアファイバ2中央部に密着させて測定した結果を示すグラフである。中央1280ch付近に、線源からのガンマ線を捕らえたピークが明瞭に観察される。左右870ch、1680ch付近のピークは、液体コアファイバ2の端面における反射が原因であると思われる。
【0013】
図3は、液体コアファイバの構成の他の例を示す図である。液体コアファイバ内の液体コアを外部からフロー型にて連続供給する。このようにすれば、放射線によるコアの損傷を回避することができる。
【0014】
上記例はガンマ線の場合について説明したが、液体コア中でチェレンコフ光を放射する放射線であれば本発明による放射線分布ラインセンサによって測定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
高レベル廃棄物一時保管所等、高線量率下で数100メートルオーダの空間を長時間にわたって線量測定を行うような条件下において優れた性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による放射線分布ラインセンサの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明による放射線分布ラインセンサによる測定結果を示すグラフである。
【図3】液体コアファイバの構成の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 放射線分布ラインセンサ
2 液体コアファイバ
3 第1光電子増倍管
4 第2光電子増倍管
5 第1ファーストプリアンプ
6 第2ファーストプリアンプ
7 第1コンスタントフラクションディスクリミネータ
8 第2コンスタントフラクションディスクリミネータ
9 遅延線
10 時間波高変換器
11 波高分析器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体コアファイバと、前記液体コアファイバの両端にそれぞれ接続された第1及び第2光検出器とを具えることを特徴とする放射線分布ラインセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線分布ラインセンサにおいて、前記第1及び第2光検出器が光電子増倍管を具え、前記光電子増倍管に接続された飛行時間差分析手段をさらに具えることを特徴とする放射線分布ラインセンサ。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線分布ラインセンサにおいて、前記飛行時間差分析手段が、前記光電子増倍管の各々に接続されたファーストプリアンプと、前記ファーストプリアンプの各々に接続されたコンスタントフラクションディスクリミネータと、前記コンスタントフラクションディスクリミネータの一方に接続された遅延線と、前記コンスタントフラクションディスクリミネータの他方と前記遅延線とに接続された時間波高変換器と、前記時間波高変換器に接続された波高分析器とを具えることを特徴とする放射線分布ラインセンサ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の放射線分布ラインセンサにおいて、前記液体コアファイバに接続し、前記液体コアファイバ内の液体コアを交換する手段をさらに具えることを特徴とする放射線分布ラインセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−84414(P2006−84414A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271731(P2004−271731)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月28日 社団法人応用物理学会発行の「2004年(平成16年)春季 第51回 応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第1分冊」に発表
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】