説明

放射線撮影装置およびその動作方法

【課題】放射線撮影装置において、被写体の撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影する。
【解決手段】被写体の撮影部位を受け付けて輻輳角Δθを設定する。第1の撮影方向から被写体へ放射線を照射して被写体を透過した放射線を放射線検出器131によって検出する。放射線検出器131に到達した到達線量Tを測定し、到達線量Tに基づいて、輻輳角Δθを調整する。第2の撮影方向から被写体へ放射線を照射して被写体を透過した放射線を放射線検出器131によって検出する。放射線検出器131からの検出信号に基づいて第1および第2の撮影方向毎の放射線画像データDL,DRを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の撮影方向から被写体へ放射線を照射した後、第1の撮影方向とは異なる第2の撮影方向から被写体へ放射線を照射し、放射線検出器によって検出された検出信号に基づいて、2つの放射線画像データを取得する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視差を有する2つの画像を組み合わせて表示することにより、立体視できることが知られている。このような立体視できる画像(以下、立体視画像という)は、同一の被写体を互いに異なる2つの撮影方向から撮影して得られた視差のある2つの画像データに基づいて表示される。このような立体視画像の生成は、デジタルカメラやテレビ等の分野だけでなく、放射線撮影の分野においても利用されている。
【0003】
すなわち被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線を照射し、その被写体を透過した放射線を放射線検出器によりそれぞれ検出して視差のある2つの放射線画像データを取得することが行われている。このような立体視画像を用いることにより、奥行感のある放射線画像を観察することが可能となり、診断をより行いやすくできる。
【0004】
ここで、前述した立体視画像は、その立体視画像を生成する2つの撮影方向のなす角度(以下、輻輳角という)によって奥行感が異なる。そして、輻輳角が大きい程、飛び出し量が大きくなり奥行感を得られることになる。
【0005】
そして、たとえば、互いに厚さが異なる被写体の撮影部位を撮影した2つの放射線画像データを用いて被写体毎の立体視画像を表示する際、少なくともいずれか一方の立体視画像において奥行感が十分に得られなかったり、もしくは、視差が大きくなり過ぎて立体視ができなかったりする問題が生じている。
【0006】
特許文献1には、2つの放射線源から被写体の上部までの距離と被写体の厚さの半分とを加算した距離を取得し、所望の輻輳角となるように、上記距離に基づいて2つの放射線源の間隔(基線長)を算出し、その間隔となるように2つの放射線源を移動させる放射線撮影装置が提案されている。特許文献2には、圧迫板の撮影台に対する位置情報を用いて圧迫された乳房の厚みを取得して輻輳角を調整する放射線撮影装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−168601号公報
【特許文献2】特開2010−233875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に提案される技術では、被写体の撮影部位の厚さをどのようにして取得するかは何も提案されていない。また、特許文献2に提案されている技術では、被写体が圧迫板によって圧迫された乳房であるため、被写体の撮影部位の厚さを取得することが可能であるが、圧迫板を用いることがない乳房以外の他の部位を撮影する際に被写体の厚さをどのようにして取得するかは何も提案されていない。したがって、圧迫板を用いないで撮影する場合には、やはり前述したような問題が生じることになる。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み、被写体の撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる放射線撮影装置およびその動作方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の放射線撮影装置は、第1の撮影方向から被写体へ放射線を照射した後、第1の撮影方向とは異なる第2の撮影方向から被写体へ放射線を照射する放射線源と、放射線源によって照射されて被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、放射線検出器からの検出信号に基づいて第1および第2の撮影方向に対応する2つの放射線画像データを生成する画像データ生成部とを備えた放射線撮影装置であって、被写体の撮影部位の指示を受け付ける指示受付部と、指示された撮影部位に基づいて、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を設定する角度設定部と、第1の撮影方向から照射され、被写体を透過して放射線検出器に到達した到達線量を測定する到達線量測定部と、到達線量測定部で測定された到達線量に基づいて、設定された、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を調整する角度調整部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の放射線撮影装置においては、角度調整部が、到達線量が少ない程、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を小さくなるように設定するものであってもよい。
【0012】
また、本発明の放射線撮影装置においては、到達線量測定部が、被写体の中心近傍の領域を透過して放射線検出器に到着した到達線量を測定するものであってもよい。ここで、本発明の放射線撮影装置における「被写体の中心近傍の領域」とは、被写体の撮影部位の中心から10mm〜20mmの範囲内にある領域を意味する。
【0013】
また、本発明の放射線撮影装置においては、角度調整部が、到達線量と第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度の調整値とを対応づける参照テーブルを有するものであり、到達線量と指示された撮影部位に対応する参照テーブルとに基づいて、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を調整するものであってもよい。
【0014】
また、本発明の放射線撮影装置においては、角度調整部が、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を2°〜8°の範囲で設定するものであってもよい。また、本発明の放射線撮影装置においては、角度調整部は、撮影部位毎に基準となる到達線量を記憶するとともに、基準となる到達線量と測定された到達線量との差分を用いて第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を調整するものであってもよい。ここで「基準となる到達線量」とは、第1の撮影方向から各撮影部位において標準的な厚みを有する被写体に放射線を照射した場合に測定される到達線量を意味するものであり、「標準的な厚み」とは、複数の被写体の厚みを測定することにより算出される平均値等であってもよい。
【0015】
本発明の放射線撮影装置の動作方法は、第1の撮影方向から被写体へ放射線を照射した後、第1の撮影方向とは異なる第2の撮影方向から被写体へ放射線を照射する放射線源と、放射線源によって照射されて被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、放射線検出器からの検出信号に基づいて第1および第2の撮影方向に対応する2つの放射線画像データを生成する画像データ生成部とを備えた放射線撮影装置の動作方法であって、被写体の撮影部位の指示を受け付け、指示された撮影部位に基づいて、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を設定し、第1の撮影方向から照射され、被写体を透過して放射線検出器に到達した到達線量を測定し、到達線量に基づいて、設定された、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の放射線撮影装置およびその動作方法によれば、被写体の撮影部位の指示を受け付け、指示された撮影部位に基づいて、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を設定し、第1の撮影方向から照射され、被写体を透過して放射線検出器に到達した到達線量を測定し、到達線量に基づいて、設定された、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を調整することにしたので、被写体の撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0017】
また、本発明の放射線撮影装置によれば、角度調整部が、到達線量が少ない程、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度が小さくなるように調整することにしたので、到達線量が少ない程、すなわち被写体が厚い程、飛び出し量が少なくなるように調整して被写体の撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0018】
また、本発明の放射線撮影装置によれば、到達線量測定部が、被写体の中心近傍の領域を透過して放射線検出器に到着した到達線量を測定することにしたので、被写体内の透過経路が長い到達線量に基づくため、被写体の撮影部位に応じた精度良い奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0019】
また、本発明の放射線撮影装置によれば、角度調整部が、到達線量と第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度の調整値とを対応づける撮影部位毎の参照テーブルを有し、到達線量と指定された撮影部位に対応する参照テーブルとに基づいて、調整値によって第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を調整するため、被写体の撮影部位に応じたより適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0020】
また、本発明の放射線撮影装置によれば、角度調整部が、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度を2°〜8°の範囲で調整するため、観察者が立体視できる範囲で被写体の撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】放射線撮影装置の概略構成図
【図2】放射線撮影装置の一部側面図
【図3】放射線撮影装置の構成を示すブロック図
【図4】撮影部位を選択する撮影メニューを示す図
【図5】到達線量と輻輳角の調整値とを対応づける参照テーブルを示す図
【図6】差分値と輻輳角の調整値とを対応づける参照テーブルを示す図
【図7】放射線撮影装置による一連の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の放射線撮影装置の一実施形態について説明する。図1は、放射線撮影装置1の概略構成図、図2は放射線撮影装置の一部側面図、図3は放射線撮影装置の構成を示すブロック図である。放射線撮影装置1は、第1の撮影方向から被写体Pを放射線撮影し、その後に第2の撮影方向から被写体Pを放射線撮影して2つの放射線画像データDを取得し、立体視画像として表示するものである。
【0023】
放射線撮影装置1は、図1に示すように、被写体Pを支持するベッド11、放射線を照射する放射線照射部12、照射された放射線を検出して放射線画像データDを出力する放射線検出部13、放射線照射部12および放射線検出部13を所望の向きに回転させるとともに、所望の位置に移動させるアーム部14、放射線撮影装置1を制御するコンピュータ15、コンピュータ15に接続された入力部16およびコンピュータ15に接続されたモニタ17を備えている。なお、図2においては理解を容易にするため、ベッド11、放射線照射部12、放射線検出部13および被写体Pのみを表示してその他の表示は省略している。
【0024】
放射線照射部12は、円錐状に放射線を照射する放射線源121、放射線源121から放射線を照射するタイミングと、放射線源121における撮影条件(管電流(mA)、照射時間(ms)、管電圧(kV)等)と、放射線源121から照射される放射線の線量(mAs)とを制御する照射部コントローラ122を備えている。なお、照射部コントローラの制御については後で詳述する。
【0025】
放射線検出部13は、フラットパネルディテクタ等の放射線検出器131、放射線検出器131からの検出信号に基づいて放射線画像データDを生成する画像データ生成部132、放射線検出器131の検出面131a上に配設された、検出面131aに到達する放射線の線量を測定する到達線量測定部としてのAECセンサ133、および放射線検出器131と画像データ生成部132とを制御する検出部コントローラ134を備えている。
【0026】
放射線検出器131は、放射線の照射を直接受けて検出信号としての電荷信号を発生する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。
【0027】
そして、電荷信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって電荷信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって電荷信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0028】
画像データ生成部132は、読み出された電荷信号を電圧信号に変換し、この電荷信号を相関二重サンプリングしてA/D変換して放射線画像データDを生成するものである。AECセンサ133は、検出面131a上に配置され、検出面131aに到達した放射線量(以下、到達線量Tという)を測定するものである。AECセンサ133は、放射線源121と検出面131aの中心とを結ぶ線が被写体Pの撮影部位の中心Oを通る撮影位置で撮影した際、被写体P内の透過経路が長い到達線量Tを測定するために、検出面131a上の中央部分に配置する。AECセンサ133は、被写体Pの撮影部位の中心から10〜20mm程度の範囲内の領域を透過した到達線量Tを測定するように配置されることが望ましい。
【0029】
AECセンサ133は、複数、たとえば、10〜20個程度を検出面131a上に配置するものであってもよい。この場合、全てのAECセンサ133を用いずに、複数のAECセンサ133の中から前述の被写体Pの撮影部位の中心近傍の領域を透過する到達線量Tを検出するAECセンサ133を選択するようにしてもよい。AECセンサ133は、到達線量Tを測定して照射部コントローラ122および後述するコンピュータ15の角度調整部156に出力する。なお、AECセンサ133は、放射線検出器131と別体ではなく、放射線検出器131の検出素子の一部を利用するものであってもよい。さらに、AECセンサ133は、放射線検出器131の下方に配置されるものであってもよい。
【0030】
アーム部14は、Cの字形状であって、その一端には放射線照射部12が、その他端には放射線照射部12と対向するように取り付けられたCアーム141、このCアーム141が回転軸Cの周りに360°回転自在となるように取り付けられた、Cアーム141を回転させる回転駆動部142、回転駆動部142を保持するとともに可動機構144によって回転軸Cの向きおよび位置を変更できるアーム143、アーム143を保持するとともに天井に対して移動可能に設置された基台145、および基台145に内蔵された、回転駆動部142と可動機構144と基台145とを制御するアーム部コントローラ146を備えている。
【0031】
コンピュータ15は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスを備えており、これらのハードウェアによって、図3に示すような制御部151、撮影条件設定部152、角度設定部153、画像データ記憶部154、表示制御部155および角度調整部156を構成している。
【0032】
制御部151は、各種のコントローラ122、134、146に対して所定の制御信号を出力し、放射線撮影装置全体の制御を行うものである。撮影条件設定部152は撮影条件を照射部コントローラ122に設定するものである。撮影条件設定部152は、入力部16が受け付けた撮影条件の入力に基づいて設定してもよいが、本実施形態では、撮影条件設定部152は、撮影部位と撮影条件とを対応づけた撮影条件テーブルを予め有しており、入力部16が受け付けた撮影部位の指示に基づいて撮影条件を設定する。
【0033】
角度設定部153は、第1の撮影方向に対応する撮影角度θ(以下、撮影角度θという)と、第1の撮影方向と第2の撮影方向とのなす角度である輻輳角Δθとをアーム部コントローラ146に設定するものである。撮影角度θは、Cアーム141がベッド11の表面111に垂直な方向に対してなす角度であり、放射線照射部12が上方、放射線検出部13が下方となり、且つCアーム141が表面111に対して垂直となる状態が撮影角度θ=0°である。
【0034】
本実施形態においては、撮影角度θは、図2示すように時計回りを正方向、反時計回りを負方向とする。角度設定部153は、図4に示すような撮影部位を選択する撮影メニューを表示して、入力部16が受け付けた撮影部位の指示に基づいて、撮影角度θおよび輻輳角Δθを設定する。なお、撮影部位の選択は撮影メニューの表示に限定されるものではなく、キーボード入力等であってもよい。
【0035】
第2の撮影方向に対応する撮影角度θ2(以下、第2の撮影角度θ2という)は、第1の撮影角度θから輻輳角Δθ分および後述する調整値λ分だけ正方向または負方向に回転させた角度である。正方向または負方向のいずれかであるかは、入力部16からの撮影者の指示によって設定される。なお、調整値λについては後で詳述する。
【0036】
画像データ記憶部154は、放射線検出器131から出力されて撮影方向毎の放射線画像データDを記憶するものである。表示制御部155はモニタ17の表示を制御するものである。
【0037】
角度調整部156は、設定された輻輳角Δθを調整値λ分だけ調整するものである。角度調整部156は調整値λをアーム部コントローラ146に設定する。なお、角度調整部156による調整値λの決定については後で詳述する。
【0038】
入力部16は、キーボードやマウスなどのポインティングデバイス等から構成されるものである。入力部16は、撮影者による撮影条件、撮影部位、撮影角度θ等の入力や操作指示を受け付けるものである。ここで、撮影部位とは、たとえば、頭部、頸部、胸部、腹部、脚部または乳房等である。なお、撮影条件および撮影角度θについては、前述の通りである。
【0039】
モニタ17は、コンピュータ15から出力された2つの放射線画像データDを用いて、撮影方向毎の放射線画像をそれぞれ2次元画像として表示することにより、立体視画像を表示するように構成されたものである。また、モニタ17は、必要に応じて診断レポート等を表示する。
【0040】
立体視画像を表示する構成としては、たとえば、2つの画面を用いて2つの放射線画像データDに基づく放射線画像を互いに直交する偏光によって表示させて、これら2つの放射線画像をハーフミラー等によって光学的に結合し、右眼用および左眼用の偏光レンズを備えた立体視眼鏡を装着した観察者の左右各眼に分離して入射させることにより、立体視画像を表示する構成を採用することができる。
【0041】
また、パララックスバリア方式およびレンチキュラー方式を用いて立体視画像を表示する構成を採用してもよい。また、2つの放射線画像を所定の周期で交互に切り替えて表示し、観察者が、右目用部分および左目用部分のそれぞれに所定の周期に同期して開閉する液晶シャッタ等を有する立体視眼鏡を装着して立体視する構成を採用してもよい。
【0042】
照射部コントローラ122の制御について説明する。照射部コントローラ122は、設定された撮影条件で放射線源121から放射線を照射させ、AECセンサ133によって測定された到達線量Tに基づいて自動露出制御を行うものである。
【0043】
角度調整部156による調整値λの決定について説明する。角度調整部156は、AECセンサ133によって測定された到達線量Tに基づいて、輻輳角Δθの調整値λを決定する。ここで、到達線量Tと被写体Pの厚みとの関係について説明する。一般的に、被写体Pの厚みが大きいと被写体が吸収する放射線量(以下、吸収線量という)が多くなり、到達線量Tが少なくなる。これに対し、被写体Pの厚みが小さいと被写体の吸収線量が少なくなり、到達線量Tが大きくなる。
【0044】
したがって、角度調整部156は、到達線量Tが多い程、飛び出し量を大きくするために輻輳角Δθが大きくなるように調整値λを決定し、到達線量Tが少ない程、飛び出し量を小さくするために輻輳角Δθが小さくなるように調整値λを決定する。また、角度調整部156は、観察者が立体視できるように、調整後の輻輳角Δθが2°〜8°の範囲となるように調整値λを決定するものである。
【0045】
角度調整部156は、図5に示すような到達線量Tと調整値λとを対応づける参照テーブルを撮影部位毎に有しており、到達線量Tと撮影部位毎の参照テーブルとに基づいて、到達線量Tが参照テーブル内のいずれの閾値の範囲内にあるかを参照して調整値λを決定してもよい。図5の上図は、輻輳角Δθが2°である撮影部位に対する参照テーブルであり、調整後の輻輳角Δθが2°〜8°の範囲となるように、0°〜6°の調整値λが規定されている。図5の中図は輻輳角Δθが5°である撮影部位に対する参照テーブルであり、−3°〜+3°の調整値、図5の下図は輻輳角Δθが8°である撮影部位に対する参照テーブルであり、−6°〜0°の調整値がそれぞれ規定されている。なお、本実施形態では、図5に示すように、調整値λを1°毎の刻み幅で設定しているが、特に限定されるものではない。
【0046】
また、角度調整部156は、撮影部位毎に基準となる到達線量Rを記憶しており、基準となる到達線量Rと測定された到達線量Tとの差分を利用して輻輳角Δθを設定するものであってもよい。この基準となる到達線量Rは、撮影者が設定するものであってもよく、あるいは、異なる被写体の到達線量Tを所定数集計することによって得られた平均値であってもよい。
【0047】
本実施形態では、角度調整部156は、基準となる到達線量Rから測定された到達線量Tを差分して差分値ΔTの絶対値|ΔT|を求める。そして、角度調整部156は、差分値ΔTの符号が正である場合は絶対値|ΔT|が大きい程、輻輳角Δθが小さくなるように調整値λを決定するとともに、差分値ΔTの符号が負である場合は絶対値|ΔT|が大きい程、輻輳角Δθが大きくなるように調整値λを決定する。そして、角度調整部156は、測定した到達線量Tを直接用いる場合と同様に、図6に示すような参照テーブルを有するものであってもよい。
【0048】
ここで、図6は輻輳角Δθが5°である撮影部位の参照テーブルを示すものであるが、角度調整部156は、図6のような参照テーブルを撮影部位毎に有するものであってもよい。また、図6に示すように、絶対値|ΔT|が所定値以下の場合は、差分値ΔTの符号に関わらず調整値λを0°としてもよい。なお、角度調整部156は、差分値ΔTを測定した到達線量Tから基準となる到達線量Rを差分するものであってもよい。
【0049】
図7は放射線撮影装置による一連の処理を示すフローチャートである。放射線撮影装置1の作用について説明する。まず、被写体Pをベッド11上に横たわらせる。入力部16が撮影者から初期位置合わせの指示を受け付けると、制御部151がアーム部コントローラ146にCアーム141の初期位置合わせを行う制御信号を出力する。
【0050】
そして、アーム部コントローラ146によって回転軸Cが被写体Pの略中心と一致して、この回転軸Cを挟んで放射線照射部12と放射線検出部13とが対象位置に配置されるようにCアーム141の初期位置合わせが行われる(ST1)。
【0051】
そして、入力部16が撮影部位の入力を受け付けると、撮影条件設定部152は、撮影条件テーブルを参照して照射部コントローラ122に撮影条件を設定する(ST2)。そして、入力部16が撮影角度θの入力を受け付けると、角度設定部153は、アーム部コントローラ146に撮影角度θおよび輻輳角Δθを設定する(ST3)。本実施形態においては、撮影角度θ=0°、輻輳角Δθ=5°が設定されたものとするが、特に限定されるものではない。
【0052】
そして、入力部16が撮影開始の指示を受け付けると、アーム部コントローラ146が、撮影部位および撮影角度θ=0°の情報に基づいて、表面111に対して垂直であり、所定の撮影位置まで移動するように、Cアーム141を回転および/または移動させる制御信号を出力する。
【0053】
Cアーム141が、表面111に対して垂直である0°となるとともに、所定位置まで移動すると、制御部151は、照射部コントローラ122および検出部コントローラ134に対して放射線の照射と右眼用の放射線画像データDRの読み出しを行うように制御信号を出力する。
【0054】
この制御信号に応じて、照射部コントローラ122によって放射線源121が放射線を照射し(ST4)、検出部コントローラ134によって放射線検出器131が電荷信号を出力して画像データ生成部が放射線画像データDRを出力する(ST5)。画像データ記憶部154が出力された放射線画像データDRを記憶する。角度調整部156が、AECセンサ133が検出した到達線量Tに基づいて、調整値λを決定する(ST6)。本実施形態においては、調整値λとして−1°が設定されたものとするが、特に限定されるものではない。
【0055】
次に、アーム部コントローラ146が、輻輳角Δθ=5°および調整値λ=−1°の情報に基づき、Cアーム141が、図2に示すように、撮影角度θ=0°から正方向に4°傾くような制御信号を出力する。なお、本実施形態では、アーム部コントローラ146が、撮影角度θから輻輳角Δθ分だけ正方向に傾くように制御するが、負方向に傾くように制御するものであってもよい。
【0056】
そして、Cアーム141が撮影角度θ=0°から4°傾くと、制御部151は、照射部コントローラ122および検出部コントローラ134に対して照射部コントローラ122および検出部コントローラ134に対して放射線の照射と左眼用の放射線画像データDLの読み出しを行うように制御信号を出力する。
【0057】
この制御信号に応じて、照射部コントローラ122によって放射線源121が放射線を照射し(ST7)、検出部コントローラ134によって放射線検出器131が電荷信号を出力して画像データ生成部が放射線画像データDLを出力する(ST8)。画像データ記憶部154が出力された放射線画像データDLを記憶する。
【0058】
表示制御部155が、記憶された2つの放射線画像データDR、DLに基づいて、モニタ17に2つの放射線画像を表示することにより、被写体Pの立体視画像を表示し(ST9)、処理を終了する。
【0059】
上記の実施形態によれば、AECセンサ133が第1の撮影方向から撮影された際の到達線量Tを測定し、角度調整部156が、被写体の厚みによって変化する到達線量Tに基づいて、輻輳角Δθを調整するため、被写体Pの撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0060】
また、上記の実施形態によれば、角度調整部156が、到達線量Tが少ない程、輻輳角Δθを小さくなるように輻輳角Δθを調整することにしたので、被写体Pの厚みが大きい程、飛び出し量が少なくなるように調整して被写体Pの撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。また、上記の実施形態によれば、角度調整部156が、到達線量Tと基準となる到達線量Rとの差分を用いて輻輳角Δθを調整できるので、標準的な被写体Pの厚みと比較して適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0061】
また、上記の実施形態によれば、AECセンサ133が、被写体Pの中心近傍の領域を透過した到達線量Tを測定するので、被写体P内の透過経路が長い到達線量Tに基づくため、被写体Pの撮影部位に応じた精度良い奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0062】
また、上記の実施形態によれば、角度調整部156が、到達線量Tと調整値λとの参照テーブルに基づいて、輻輳角Δθを調整するため、被写体Pの撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0063】
また、上記の実施形態によれば、角度調整部156が、輻輳角Δθを2°〜8°の範囲となるように調整値λを決定するため、観察者が立体視できる範囲で被写体Pの撮影部位に応じた適切な奥行感を有する立体視画像を撮影できる。
【0064】
なお、本実施形態においては、第1の撮影方向から撮影された放射線画像データDを右眼用の放射線画像データDR、第2の撮影方向から撮影された放射線画像データDを左眼用の放射線画像データDLとしたが、特に限定されるものではなく、第1の撮影方向から撮影された放射線画像データDを左眼用の放射線画像データDL、第2の撮影方向から撮影された放射線画像データDを右眼用の放射線画像データDRとしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
D,DL,DR 放射線画像データ
O 中心
P 被写体
R 基準となる到達線量
T 到達線量
Δθ 輻輳角
λ 調整値
1 放射線撮影装置
16 入力部(指示受付部)
121 放射線源
131 放射線検出器
132 画像データ生成部
133 AECセンサ(到達線量測定部)
153 角度設定部
156 角度調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の撮影方向から被写体へ放射線を照射した後、前記第1の撮影方向とは異なる第2の撮影方向から前記被写体へ放射線を照射する放射線源と、該放射線源によって照射されて前記被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、該放射線検出器からの検出信号に基づいて前記第1および第2の撮影方向に対応する2つの放射線画像データを生成する画像データ生成部と備えた放射線撮影装置であって、
前記被写体の撮影部位の指示を受け付ける指示受付部と、
前記指示された撮影部位に基づいて、前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度を設定する角度設定部と、
前記第1の撮影方向から照射され、前記被写体を透過して前記放射線検出器に到達した到達線量を測定する到達線量測定部と、
前記到達線量測定部で測定された到達線量に基づいて、前記設定された、前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度を調整する角度調整部とを備えたことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記角度調整部が、前記到達線量が少ない程、前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度が小さくなるように調整するものであることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記到達線量測定部が、前記被写体の中心近傍の領域を透過して前記放射線検出器に到達した到達線量を測定するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記角度調整部が、前記到達線量と前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度の調整値とを対応づける撮影部位毎の参照テーブルを有するものであり、前記到達線量と前記指示された撮影部位に対応する前記参照テーブルとに基づいて、前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度を調整するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記角度調整部が、前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度を2°〜8°の範囲で調整するものであることを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記角度調整部が、撮影部位毎に基準となる到達線量を記憶するとともに、該基準となる到達線量と前記測定された到達線量との差分を用いて前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度を調整するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
第1の撮影方向から被写体へ放射線を照射した後、前記第1の撮影方向とは異なる第2の撮影方向から前記被写体へ放射線を照射する放射線源と、該放射線源によって照射されて前記被写体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、該放射線検出器からの検出信号に基づいて前記第1および第2の撮影方向に対応する2つの放射線画像データを生成する画像データ生成部とを備えた放射線撮影装置の動作方法であって、
前記被写体の撮影部位の指示を受け付け、
前記指示された撮影部位に基づいて、前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度を設定し、
前記第1の撮影方向から照射され、前記被写体を透過して前記放射線検出器に到達した到達線量を測定し、
前記到達線量に基づいて、前記設定された、前記第1の撮影方向と前記第2の撮影方向とのなす角度を調整することを特徴とする放射線撮影装置の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−39366(P2013−39366A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177745(P2012−177745)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】