放射線撮影装置及びアンラップ処理方法
【課題】アンラップエラーによる軟部組織の画像化の阻害を防止する。
【解決手段】X線画像検出器は、X線源から放射され第1及び第2の格子を通過したX線を検出して画像データを生成する。位相微分画像生成部は、画像データに基づいて位相微分画像を生成する。OK/NG領域検出部は、位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出する。アンラップ処理部は、OK領域中に起点SPを設定し、この起点SPを基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながらOK領域内の画素を順にアンラップ処理する。
【解決手段】X線画像検出器は、X線源から放射され第1及び第2の格子を通過したX線を検出して画像データを生成する。位相微分画像生成部は、画像データに基づいて位相微分画像を生成する。OK/NG領域検出部は、位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出する。アンラップ処理部は、OK領域中に起点SPを設定し、この起点SPを基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながらOK領域内の画素を順にアンラップ処理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体による放射線の位相変化に基づく画像を検出する放射線撮影装置及びこれに用いられるアンラップ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線、例えばX線は、物質を構成する元素の重さ(原子番号)と物質の密度及び厚さとに依存して吸収され減衰するといった特性を有する。この特性に着目し、医療診断や非破壊検査等の分野において、被検体の内部を透視するためのプローブとしてX線が利用されている。
【0003】
一般的なX線撮影装置では、X線を放射するX線源と、X線を検出するX線画像検出器との間に被検体を配置して、被検体を透過したX線の撮影を行う。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射されたX線は、被検体を透過する際に吸収され減衰した後、X線画像検出器に入射する。この結果、被検体によるX線の強度変化に基づく画像がX線画像検出器により検出される。
【0004】
X線吸収能は、原子番号が小さい元素ほど低くなるため、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線の強度変化が小さく、画像に十分なコントラストが得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線吸収能の差が小さいため、コントラストが得られにくい。
【0005】
このような問題を背景に、被検体によるX線の強度変化に代えて、被検体によるX線の位相変化に基づいた画像を得るX線位相イメージングの研究が近年盛んに行われている。X線位相イメージングは、被検体に入射したX線の位相変化が強度変化より大きいことに基づき、X線の位相変化を画像化する方法であり、X線吸収能が低い被検体に対しても高コントラストの画像を得ることができる。X線位相イメージングの一種として、2枚の回折格子とX線画像検出器とを用いてX線タルボ干渉計を構成することにより、X線の位相変化を検出するX線撮影装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このX線撮影装置は、X線源から見て被検体の背後に第1の回折格子を配置し、第1の回折格子からタルボ距離だけ離れた位置に第2の回折格子を配置し、その背後にX線画像検出器を配置したものである。タルボ距離は、第1の回折格子を通過したX線が、タルボ効果によって第1の回折格子の自己像(縞画像)を形成する距離であり、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長とに依存する。この自己像は、被検体でのX線の位相変化で屈折が生じることにより変調される。この変調量を検出することにより、X線の位相変化が画像化される。
【0007】
上記変調量の検出方法として縞走査法が知られている。縞走査法とは、第1の回折格子に対して第2の回折格子を、第1の回折格子の面に平行でかつ第1の回折格子の格子線方向に垂直な方向に、所定の走査ピッチで並進移動(走査)させながら、各走査位置において、X線源からX線を放射し、被検体、第1及び第2の回折格子を通過したX線をX線画像検出器により撮影する方法である。このX線画像検出器により得られる各画素の画素値の上記走査に対する変化を表す信号(強度変調信号)について位相ズレ量(被検体が存在しない場合の初期位置からの位相差)を算出することにより、上記変調量に関連する画像が得られる。この画像は、被検体の屈折率を反映した画像であり、X線の位相変化(位相シフト)の微分量に対応するため、位相微分画像と呼ばれる。
【0008】
特許文献1に示されているように、上記位相ズレ量は、複素数の偏角を抽出する関数(arg[…])や、逆正接関数(tan−1[…])を用いて算出される。このため、位相微分画像は、上記関数の値域(−πから+π、または、−π/2から+π/2)に畳み込まれた(ラップされた)値により表現される。このようにラップされた位相微分画像には、値域の上限から下限に変化する箇所、または下限から上限に変化する箇所で不連続点が生じることがあるため、この不連続点をなくして連続化するようにアンラップ処理を行うことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
このアンラップ処理は、光学的計測の分野等でも行われている(例えば、特許文献3参照)。一般に、アンラップ処理は、画像内の所定位置を起点とし、該起点から所定の経路に沿って順に行われる。この経路中に上記不連続点が検出されると、この不連続点以降のデータに、上記関数の値域に相当する値が一律に加算または減算される。これにより、不連続点がなくなり、データが連続化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2004/058070号公報
【特許文献2】特開2011−045655号公報
【特許文献3】特開2008−082869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、被検体に骨部等のX線吸収能が高い高吸収体が含まれる場合には、該高吸収体では、X線を大きく減衰させることにより、上記強度変調信号の強度や振幅が低下するため、位相ズレ量の算出精度が低下してしまう。これにより、位相微分画像の高吸収体領域では、アンラップエラーが生じやすくなる。このアンラップエラーには、本来不連続点でない箇所に不連続性が生じて不連続点と見なされることによりアンラップ処理が行われるケースと、本来不連続点である箇所の不連続性が低下して不連続点と見なされないことによりアンラップ処理が行われないケースとがある。
【0012】
図14に示すように、高吸収体である骨部の領域に起点を設定し、起点から一方向に伸びる経路に沿ってアンラップ処理を行う場合には、骨部領域ではアンラップエラーが生じやすいため、一旦アンラップエラーが生じると、アンラップエラーが生じた箇所以降の経路にエラー値(上記関数の値域に相当する値)が積算される。この結果、アンラップ処理後の位相微分画像にはアンラップ処理の経路方向に沿った筋状のノイズが生じ、このノイズが軟部組織である軟骨部の一部に重なるため、X線位相イメージングでの関心領域である肝心の軟部組織の画像化を阻害してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、アンラップエラーによる軟部組織の画像化の阻害を防止することを可能とする放射線撮影装置及びアンラップ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の放射線撮影装置は、放射線源から射出され、被検体を透過した放射線を検出して画像データを生成する放射線検出器と、前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置された格子部と、前記画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成する位相微分画像生成部と、前記位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出するOK/NG領域検出部と、前記OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながら前記OK領域内の画素を順にアンラップ処理するアンラップ処理部と、を備えるものである。
【0015】
前記被検体を配置しない状態で行われるプレ撮影において、前記位相微分画像生成部により生成された位相微分画像をオフセット画像として記憶するオフセット画像記憶部を備え、前記アンラップ処理部は、前記オフセット画像に対しても前記アンラップ処理を行うことが好ましい。この場合、前記アンラップ処理後の位相微分画像から前記アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット処理部を備えることが好ましい。
【0016】
前記アンラップ処理部は、基準点に対して互いに直交する4方向に隣接する隣接画素のうち、前記OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を同時にアンラップ処理することが好ましい。
【0017】
前記アンラップ処理部は、基準点に対して1方向に隣接し、前記OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を1画素ずつアンラップ処理することも好ましい。
【0018】
また、前記アンラップ処理部は、前記OK領域が複数存在する場合に、前記各OK領域中に前記起点を設定して前記アンラップ処理を行うことが好ましい。
【0019】
前記格子部は、放射線源からの放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽して第2の周期パターン像を生成する第2の格子と有し、前記放射線画像検出器は、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成することが好ましい。
【0020】
前記格子部は、前記第1の格子または第2の格子を所定の走査ピッチで移動させ、複数の走査位置に順に設定する走査機構を備え、前記放射線画像検出器は、前記各走査位置で前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成し、前記位相微分画像生成部は、前記放射線画像検出器により生成される複数の画像データに基づいて位相微分画像を生成することが好ましい。この場合、前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に直交する方向に移動させることを特徴とすることが好ましい。また、前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に対して傾斜する方向に移動させることも好ましい。
【0021】
前記位相微分画像生成部は、前記放射線検出器により得られる単一の画像データに基づいて前記位相微分画像を生成することも好ましい。
【0022】
前記OK/NG領域検出部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度、振幅、ビジビリティのうち1つまたは複数の組み合わせに基づいてNG領域を検出することが好ましい。
【0023】
吸収画像、吸収画像の微分画像、小角散乱画像のうちいずれかを生成し、前記位相微分画像の前記NG領域を置換するNG領域画像置換部を備えることが好ましい。
【0024】
前記第1の格子は、吸収型格子であり、入射した放射線を幾何光学的に投影することにより前記第1の周期パターン像を生成することが好ましい。前記第1の格子は、吸収型格子または位相型格子であり、入射した放射線にタルボ効果を生じさせて前記第1の周期パターン像を生成するものであってもよい。
【0025】
前記放射線源から放射された放射線を部分的に遮蔽して焦点を分散化するマルチスリットを備えることが好ましい。
【0026】
本発明のアンラップ処理方は、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出し、前記OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながら前記OK領域内の画素を順にアンラップ処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域とし、OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながらOK領域内の画素を順にアンラップ処理するので、アンラップエラーが生じ難く、アンラップエラーによる軟部組織の画像化の阻害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】X線撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図2】X線画像検出器の構成を示す模式図である。
【図3】第1及び第2の格子の構成を説明する説明図である。
【図4】強度変調信号を示すグラフである。
【図5】画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図6】アンラップ処理方法を説明する第1の説明図である。
【図7】アンラップ処理方法を説明する第2の説明図である。
【図8】アンラップ処理方法を説明する第3の説明図である。
【図9】プレ撮影時のX線撮影装置の作用を説明するフローチャートである。
【図10】本撮影時のX線撮影装置の作用を説明するフローチャートである。
【図11】アンラップ処理方法の第1の変形例を説明する説明図である。
【図12】アンラップ処理方法の第2の変形例を説明する説明図である。
【図13】NG領域画像置換部を備えた画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図14】従来のアンラップ処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1において、X線撮影装置10は、X線源11、格子部12、X線画像検出器13、メモリ14、画像処理部15、画像記録部16、撮影制御部17、コンソール18、及びシステム制御部19を備える。X線源11は、例えば、回転陽極型のX線管と、X線の照射野を制限するコリメータとを有し、撮影制御部17の制御に基づき、被検体Hに向けてX線を放射する。
【0030】
格子部12は、第1の格子21、第2の格子22、及び走査機構23を備える。第1及び第2の格子21,22は、X線照射方向であるz方向に関してX線源11に対向配置されている。X線源11と第1の格子21との間には、被検体Hが配置可能な間隔が設けられている。X線画像検出器13は、例えば、半導体回路を用いたフラットパネル検出器であり、第2の格子22の背後に、検出面13aがz方向に直交するように配置されている。
【0031】
第1の格子21は、z方向に直交する格子面内の一方向であるy方向に延伸された複数のX線吸収部21a及びX線透過部21bを備えた吸収型格子である。X線吸収部21a及びX線透過部21bは、z方向及びy方向に直交するx方向に交互に配列されており、縞状のパターンを形成している。第2の格子22は、第1の格子21と同様にy方向に延伸され、かつx方向に交互に配列された複数のX線吸収部22a及びX線透過部22bを備えた吸収型格子である。X線吸収部21a,22aは、金(Au)、白金(Pt)等のX線吸収性を有する材料により形成されている。X線透過部21b,22bは、シリコン(Si)や樹脂等のX線透過性を有する材料や空隙により形成されている。
【0032】
第1の格子21は、X線源11から放射されたX線を部分的に通過させて第1の周期パターン像(以下、G1像という)を生成する。第2の格子22は、第1の格子21により生成されたG1像を部分的に透過させて第2の周期パターン像(以下、G2像という)を生成する。被検体Hが配置されていない場合において、G1像は、第2の格子22の格子パターンとほぼ一致する。
【0033】
X線画像検出器13は、G2像を検出して画像データを生成する。メモリ14は、X線画像検出器13から読み出された画像データを一時的に記憶する。画像処理部15は、メモリ14に記憶された画像データに基づいて位相微分画像を生成し、この位相微分画像に基づいて位相コントラスト画像を生成する。画像記録部16は、位相微分画像と位相コントラスト画像とを記録する。
【0034】
走査機構23は、第2の格子22をx方向に並進移動させ、第1の格子21に対する第2の格子22の相対位置を順次に変更する。走査機構23は、圧電アクチュエータや静電アクチュエータにより構成され、後述する縞走査を実行するために、撮影制御部17の制御に基づいて駆動される。メモリ14には、縞走査の各走査位置でX線画像検出器13により得られる画像データが一括して記憶される。
【0035】
コンソール18は、操作部18a及びモニタ18bを備えている。操作部18aは、キーボードやマウス等により構成され、X線源11の管電圧、管電流、照射時間等の撮影条件の設定や、本撮影またはプレ撮影のモード選択、撮影実行指示等の操作入力を可能とする。本撮影とは、X線源11と第1の格子21との間に被検体Hを配置した状態で行う撮影モードである。プレ撮影とは、X線源11と第1の格子21との間に被検体Hを配置せずに行う撮影モードである。詳しくは後述するが、プレ撮影は、第1及び第2の格子21,22の製造誤差や配置誤差等により生じるバックグランド成分をオフセット画像として取得するために用いられる。
【0036】
モニタ18bは、撮影条件等の撮影情報や、画像記録部16に記録された位相微分画像及び位相コントラスト画像の表示を行う。システム制御部19は、操作部18aから入力される信号に応じて各部を統括的に制御する。
【0037】
図2において、X線画像検出器13は、入射X線により半導体膜(図示せず)に生じた電荷を収集する画素電極31と、画素電極31によって収集された電荷を読み出すためのTFT(Thin Film Transistor)32とを備えた画素部30が2次元状に多数配列されたものである。半導体膜は、例えば、アモルファスセレンにより形成されている。
【0038】
また、X線画像検出器13は、ゲート走査線33、走査回路34、信号線35、及び読み出し回路36を備える。ゲート走査線33は、画素部30の行ごとに設けられている。走査回路34は、TFT32をオン/オフするための走査信号を各ゲート走査線33に付与する。信号線35は、画素部30の列ごとに設けられている。読み出し回路36は、各信号線35を介して画素部30から電荷を読み出し、画像データに変換して出力する。各画素部30の詳細な層構成については、例えば、特開2002−26300号公報に記載されている層構成と同様である。
【0039】
読み出し回路36は、積分アンプ、A/D変換器、補正回路(いずれも図示せず)等を備える。積分アンプは、各画素部30から信号線35を介して出力された電荷を積分して画像信号を生成する。A/D変換器は、積分アンプにより生成された画像信号を、デジタル形式の画像データに変換する。補正回路は、画像データに対して、暗電流補正、ゲイン補正、リニアリティ補正等を行う。この補正後の画像データがメモリ14に記憶される。
【0040】
X線画像検出器13は、入射X線を半導体膜で直接電荷に変換する直接変換型に限られず、ヨウ化セシウム(CsI)やガドリウムオキシサルファイド(GOS)等のシンチレータで入射X線を可視光に変換し、可視光をフォトダイオードで電荷に変換する間接変換型であってもよい。さらに、X線画像検出器13を、シンチレータとCMOSセンサを組み合わせて構成してもよい。
【0041】
図3において、X線源11から照射されるX線は、X線焦点11aを発光点としたコーンビームである。第1の格子21は、タルボ効果が生じず、X線透過部21bを通過したX線を幾何光学的に投影するように構成される。具体的には、x方向へのX線透過部21bの幅を、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とし、X線の大部分がX線透過部21bで回折しないようにすることで実現される。X線源11の回転陽極としてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は約0.4Åである。この場合には、X線透過部21bの幅を1〜10μm程度とすればよい。
【0042】
これにより、G1像は、第1の格子21からz方向下流への距離に依らず、常に第1の格子21の自己像となる。G1像は、X線焦点11aからz方向下流への距離に比例して拡大される。
【0043】
第2の格子22の格子ピッチp2は、前述のように、第2の格子22の格子パターンが第2の格子22の位置におけるG1像に一致するように設定されている。具体的には、第2の格子22の格子ピッチp2は、第1の格子21の格子ピッチp1、X線焦点11aと第1の格子21との間の距離L1、第1の格子21と第2の格子22との間の距離L2と、下式(1)をほぼ満たすように設定されている。
【0044】
【数1】
【0045】
G1像は、被検体HでX線に位相変化が生じて屈折することにより変調される。この変調量には、被検体HでのX線の屈折角φ(x)が反映される。同図には、被検体HでのX線の位相変化を表す位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折するX線の経路が例示されている。符号X1は、被検体Hが存在しない場合にX線が直進する経路を示し、符号X2は、被検体Hにより屈折したX線の経路を示している。
【0046】
位相シフト分布Φ(x)は、X線の波長をλ、被検体Hの屈折率分布をn(x,z)として、下式(2)で表される。
【0047】
【数2】
【0048】
上記屈折角φ(x)は、位相シフト分布Φ(x)と、下式(3)の関係にある。
【0049】
【数3】
【0050】
第2の格子22の位置において、X線は、屈折角φ(x)に応じた量だけx方向に変位する。この変位量Δxは、X線の屈折角φ(x)が微小であることに基づいて、近似的に下式(4)で表される。
【0051】
【数4】
【0052】
このように、変位量Δxは、位相シフト分布Φ(x)の微分値に比例する。したがって、変位量Δxを後述する縞走査により検出することにより、位相シフト分布Φ(x)の微分値が得られ、位相微分画像が生成される。
【0053】
縞走査は、格子ピッチp2をM個に分割した値(p2/M)を走査ピッチとし、走査機構23により、この走査ピッチで第2の格子22を並進移動させ、第2の格子22を並進移動させるたびに、X線源11からX線を放射してG2像をX線画像検出器13により撮影することにより行われる。Mは3以上の整数であり、例えば、M=5であることが好ましい。
【0054】
上式(1)を僅かに満たさない場合や、第1の格子21と第2の格子22との間にz方向周りの回転や、xy平面に対する傾斜が僅かに生じている場合には、G2像にはモアレ縞が生じる。このモアレ縞は、第2の格子22の並進移動に伴って移動し、x方向への移動距離が格子ピッチp2に達すると元のモアレ縞に一致する。このモアレ縞の移動を確認することで、第2の格子22の並進移動量を検証することができる。
【0055】
上記縞走査により、X線画像検出器13の各画素部30について、M個の画素値が得られる。図4に示すように、M個の画素値Ikは、第2の格子22の走査位置kに対して周期的に変化する。走査位置kは、第2の格子22を一周期分並進移動させた場合の走査ピッチ(p2/M)ごとの各位置である。走査位置kに対する画素値Ikの変化を表す信号を強度変調信号と呼ぶ。
【0056】
同図中の破線は、被検体Hを配置しない状態で得られる強度変調信号を示している。これに対して、実線は、被検体Hを配置した状態で、被検体Hにより位相ズレ量ψ(x)が生じた強度変調信号を示している。この位相ズレ量ψ(x)は、上記変位量Δxと下式(5)の関係にある。
【0057】
【数5】
【0058】
したがって、各画素部30について、縞走査で得られるM個の画素値Ikに基づき、強度変調信号の位相ズレ量ψ(x)を求めることにより、位相微分画像が得られる。
【0059】
次に、位相ズレ量ψ(x)の算出方法について説明する。強度変調信号は、一般に下式(6)で表される。
【0060】
【数6】
【0061】
ここで、A0は入射X線の平均強度を表し、Anは強度変調信号の振幅を表す。nは正の整数、iは虚数単位である。なお、図4に示すように、強度変調信号が正弦波を描く場合には、n=1である。
【0062】
本実施形態では、走査ピッチ(p2/M)が一定であるため、下式(7)が成立する。
【0063】
【数7】
【0064】
上式(7)を上式(6)に適用すると、位相ズレ量ψ(x)は、下式(8)で表される。
【0065】
【数8】
【0066】
ここで、arg[…]は、複素数の偏角を抽出する関数である。また、位相ズレ量ψ(x)は、逆正接関数を用いて下式(9)のように表すことも可能である。
【0067】
【数9】
【0068】
複素数の偏角は、値域が−πから+πの範囲であるため、上式(8)に基づいて位相ズレ量ψ(x)を算出した場合には、位相ズレ量ψ(x)は、−πから+πの範囲に畳み込まれた(ラップされた)値を取る。これに対して、逆正接関数は、通常、値域が−π/2から+π/2の範囲であるため、上式(9)に基づいて位相ズレ量ψ(x)を算出した場合には、位相ズレ量ψ(x)は、−π/2から+π/2の範囲に畳み込まれた値を取る。なお、上式(9)において、逆正接関数内の分母及び分子の正負を判別することにより、値域を−πから+πとすることができるため、−πから+πの範囲で位相ズレ量ψ(x)を算出することも可能である。
【0069】
本実施形態では、各画素部30について位相ズレ量ψ(x)を算出することにより得られるデータを位相微分画像という。なお、位相ズレ量ψ(x)に定数を乗じたり加算したりしたデータで表される画像を位相微分画像としてもよい。以下、位相微分画像は、−α/2から+α/2の範囲に畳み込まれているとする。
【0070】
図5において、画像処理部15は、位相微分画像生成部40、オフセット画像記憶部41、OK/NG領域検出部42、アンラップ処理部43、オフセット処理部44、及び位相コントラスト画像生成部45を備える。位相微分画像生成部40は、本撮影またはプレ撮影において縞走査を行った結果、メモリ14に記憶されたM枚分の画像データを用い、上式(8)または上式(9)に基づいて演算を行うことにより位相微分画像を生成する。
【0071】
プレ撮影時に位相微分画像生成部40により生成された位相微分画像は、オフセット画像としてオフセット画像記憶部41により記憶される。本撮影時に位相微分画像生成部40により生成された位相微分画像は、アンラップ処理部43に入力される。なお、オフセット画像記憶部41は、位相微分画像生成部40から再度オフセット画像が入力された場合には、記憶中のオフセット画像を消去した後、入力されたオフセット画像を記憶する。
【0072】
OK/NG領域検出部42は、メモリ14に記憶されたM枚分の画像データに基づき、位相微分画像中においてアンラップエラーが生じやすい領域(以下、NG領域という)を検出するとともに、NG領域以外の領域をOK領域として検出する。OK/NG領域検出部42は、各画素部30について、強度変調信号の平均強度A0が閾値より低い領域、振幅A1が閾値より低い領域、またはビジビリティA1/A0が閾値より低い領域をNG領域とする。
【0073】
このNG領域は、被検体Hに含まれる高吸収体領域(被検体Hが人体である場合には、X線吸収能が高い骨部等)に相当する。これは、X線が高吸収体で吸収されることにより、平均強度A0、振幅A1、またはビジビリティA1/A0が低下することに基づいている。なお、平均強度A0、振幅A1、ビジビリティA1/A0のうち2以上を組み合わせてNG領域を検出してもよい。また、NG領域が散在することにより、ある程度の大きさを有する集合領域として得られない場合には、上記閾値を変化させてNG領域の大きさを調整すればよい。
【0074】
アンラップ処理部43は、位相微分画像生成部40から入力された位相微分画像に対して、NG領域以外のOK領域のみを対象としてアンラップ処理を施す。また、アンラップ処理部43は、オフセット画像記憶部41に記憶されたオフセット画像に対して、OK領域のみを対象としてアンラップ処理を施す。
【0075】
オフセット処理部44は、アンラップ処理後の位相微分画像から、アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正を行う。位相コントラスト画像生成部45は、オフセット補正後の位相微分画像をx方向に沿って積分処理することにより、位相シフト分布を表す位相コントラスト画像を生成する。オフセット補正後の位相微分画像と、位相コントラスト画像とが画像記録部16に記録される。
【0076】
次に、図6〜図8を用いて、アンラップ処理部43によるアンラップ処理方法をより詳細に説明する。これらの図では、説明の簡略化のため、位相微分画像を10×6画素の画像として表している。
【0077】
図6(A)に示すように、まず、位相微分画像のOK領域中に、アンラップ処理を開始する起点SPが設定され、この起点SPを基準画素として、基準画素にx方向(左右)及びy方向(上下)の4方向に隣接する隣接画素に対してアンラップ処理が行われる。なお、位相微分画像中に複数のOK領域が存在する場合には、各OK領域に起点SPを設定して同様にアンラップ処理が行われる。
【0078】
このアンラップ処理は、基準画素と、この基準画素に隣接する隣接画素とで画素値の差分を取り、この差分値Δψが所定範囲(例えば、−α/2≦Δψ≦+α/2)に入っていなければ、この隣接画素を不連続点と判断し、隣接画素の画素値を、αを単位としてシフトさせて差分値Δψを上記所定範囲内とする処理である。
【0079】
起点SPに隣接する隣接画素のアンラップ処理が行われると、次に、図6(B)に示すように、図6(A)でアンラップ処理が行われた各画素が基準画素とされ、各基準画素に隣接する隣接画素のアンラップ処理が行われる。破線矢印は、前ステップにおけるアンラップ処理経路を示している。実線矢印は、現ステップにおけるアンラップ処理経路を示している。
【0080】
現ステップでは、基準点が複数存在することにより、ある基準点からx方向に隣接する隣接画素と、別の基準点からy方向に隣接する隣接画素とが同一の画素となりアンラップ処理の対象が重複するため、いずれかの方向を優先する必要がある。本実施形態では、x方向を優先している。また、基準点に隣接する隣接画素がOK領域内の画素でない場合(NG領域内の画素である場合)には、その画素にはアンラップ処理は行われない。
【0081】
この後、図6(C)、(D)、図7(A)〜(D)、図8(A)、(B)に示すように、アンラップ処理が行われた各画素が順に基準画素に設定され、各基準画素に隣接する隣接画素のアンラップ処理が行われる。各OK領域内の全ての画素についてアンラップ処理が終了すると、アンラップ処理部43による一連のアンラップ処理が終了する。
【0082】
なお、アンラップ処理において、不連続点の画素値に対するαを単位とした上記シフトは、不連続点が検出されるたびに逐一行ってもよいが、不連続点が検出された際に、その不連続点を解消するためのシフト量を記憶しておき、OK領域内の全ての不連続点が検出された後に各不連続点についてシフトを行ってもよい。
【0083】
次に、図9及び図10に示すフローチャートを参照しながらX線撮影装置10の作用を説明する。操作部18aを用いて撮影モードの選択がなされると(ステップS20)、選択された撮影モードがプレ撮影であるか否かの判定が行われる(ステップS21)。プレ撮影である場合には、撮影指示の待受状態となる(ステップS22)。操作部18aを用いて撮影指示がなされると(ステップS22でYES)、走査機構23により第2の格子22が所定の走査ピッチずつ並進移動されながら、各走査位置kにおいて、X線源11によるX線照射及びX線画像検出器13によるG2像の検出が行われる(ステップS23)。この縞走査の結果、M枚の画像データが生成され、メモリ14に格納される。
【0084】
この後、画像処理部15によりメモリ14に格納されたM枚の画像データが読み出される。画像処理部15内では、位相微分画像生成部40により位相微分画像が生成される(ステップS24)。この位相微分画像は、オフセット画像としてオフセット画像記憶部41に記憶される(ステップS25)。プレ撮影動作は、以上で終了する。なお、このプレ撮影は、X線撮影装置10の立ち上げ時等に被検体Hを配置しない状態で少なくとも一度行われればよく、本撮影の前に毎回行われる必要はない。
【0085】
次に、被検体Hが配置され、ステップS20の撮影モードの選択により本撮影が選択された場合には(ステップS21でNO)、撮影指示の待受状態となる(ステップS30)。操作部18aを用いて撮影指示がなされると(ステップS30でYES)、ステップS23と同様の縞走査が行われ(ステップS31)、メモリ14にM枚の画像データが格納される。この後、同様に、位相微分画像生成部40によって位相微分画像が生成される(ステップS32)。
【0086】
そして、OK/NG領域検出部42により、メモリ14に格納された画像データに基づき、NG領域及びOK領域の検出が行われる(ステップS33)。この検出結果に基づき、アンラップ処理部43により、ステップS32で生成された位相微分画像と、オフセット画像記憶部41に記憶されたオフセット画像とのそれぞれのOK領域に対して、前述のアンラップ処理が行われる(ステップS34)。この後、オフセット処理部44により、アンラップ処理後の位相微分画像から、アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正が行われる(ステップS35)。
【0087】
このオフセット補正後の位相微分画像を位相コントラスト画像生成部45が積分処理することにより、位相コントラスト画像が生成され(ステップS36)、オフセット補正後の位相微分画像及び位相コントラスト画像が画像記録部16に記録された後、モニタ18bに画像表示される(ステップS37)。
【0088】
以上のように、ステップS34のアンラップ処理では、アンラップエラーが生じやすいNG領域を検出し、このNG領域以外のOK領域についてのみアンラップ処理を行っているため、アンラップエラーが生じ難く、ノイズの少ない位相微分画像が得られる。X線位相イメージングでの関心領域である軟部組織(軟骨部等)は、NG領域外に存在するため、アンラップエラーによるノイズで軟部組織の画像化が阻害されることは防止される。
【0089】
なお、上記実施形態では、アンラップ処理を開始する起点SPを、OK領域の中央付近に設定しているが、起点SPは、OK領域内のいずれの画素に設定してもよい。例えば、図11に示すように、OK領域の角部(x方向及びy方向の端部)に起点SPを設定してもよい。アンラップ処理方法は、上記実施形態と同様であり、図11(A)〜(D)に示すように、起点SPから隣接画素が順にアンラップ処理される。図11(D)のステップは同様であるため説明を省略する。
【0090】
また、上記実施形態では、基準画素に対してx方向(左右)及びy方向(上下)の4方向に隣接する隣接画素のうち、OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を同時にアンラップ処理しているが、x方向またはy方向のうち1方向に隣接する隣接画素を1画素ずつ順にアンラップ処理してもよい。
【0091】
例えば、図12(A)に示すように、まず、OK領域の角部(x方向及びy方向の端部)に起点SPを設定し、x方向に隣接する隣接画素をアンラップ処理する。次に、アンラップ処理された該隣接画素を基準画素とし、x方向に隣接する隣接画素をアンラップ処理する。これを繰り返し行い、図12(B)に示すように、OK領域のx方向端に達すると、起点SPからy方向に隣接する隣接画素をアンラップ処理し、図12(C)に示すように、アンラップ処理された該隣接画素からx方向に順にアンラップ処理していく。そして、隣接画素がNG領域内の画素である場合には、この画素のアンラップ処理は行わない。OK領域内の同一行内の画素は、図12(D)に示すように、既にアンラップ処理が行われている上段の行の画素を基準画素として、アンラップ処理を行う。以下、同様にアンラップ処理を行うことにより、OK領域内の全ての画素についてアンラップ処理を行うことができる。
【0092】
また、上記実施形態では、OK/NG領域検出部42は、強度変調信号の平均強度、振幅、またはビジビリティに基づいて、アンラップエラーが生じやすいNG領域を検出しているが、NG領域の検出基準はこれに限られず、強度変調信号の平均強度の画素間のばらつき(すなわち、吸収画像の画素間のばらつき)や、位相微分画像の画素間のばらつきが所定値より大きい領域をNG領域として検出してもよい。なお、この位相微分画像の画素間のばらつきは、第1及び第2の格子21,22の格子線に直交する方向(x方向)へのばらつきとすることが好ましい。
【0093】
また、位相微分画像の各画素について絶対値を取り、この絶対値が所定値を超える箇所を検出することにより、高吸収体領域のエッジ部分を検出することができるため、このエッジ部で囲われる領域をNG領域として検出してもよい。
【0094】
また、強度変調信号の平均強度や最大強度が所定値より大きく、強度変調信号に飽和が生じている領域をNG領域として検出してもよい。この強度変調信号の飽和は、被検体Hを透過せずに第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13に直接入射した画素領域(素抜け領域)で生じやすい。強度変調信号が飽和すると位相ズレ量ψ(x)が正確に得られなくなるため、この素抜け領域もアンラップエラーが生じやすい領域である。以上の検出基準を適宜組み合わせてもよい。
【0095】
さらに、X線画像検出器13、第1の格子21、第2の格子22に欠陥が生じたり、ゴミなどが付着したりした場合には、所定の画素部30の画素値が常に高く、または低くなることがある。このような画素欠陥が生じた領域は、強度変調信号の平均強度、振幅、またはビジビリティが異常値を示すため、アンラップエラーが生じやすい領域となる。このような画素欠陥領域についても、上記の検出基準を適宜組み合わせることにより、NG領域として検出可能である。
【0096】
また、上記実施形態では、NG領域にはアンラップ処理が行われないため、最終的に画像記録部16に記録されモニタ18bに表示される位相微分画像のNG領域は、不連続点が残存したノイズの大きい画像となる可能性があるため、図13に示すように、画像処理部15にNG領域画像置換部50を設けてもよい。
【0097】
NG領域画像置換部50は、本撮影時にメモリ14に記憶されたM枚分の画像データに基づき、吸収画像、吸収画像の微分画像、または小角散乱画像を生成し、該画像のNG領域に対応する部分を、オフセット補正後の位相微分画像のNG領域に挿入して置換する。また、同様に、位相コントラスト画像のNG領域を置換してもよい。吸収画像は、強度変調信号の平均強度を画像化することにより生成される。吸収画像の微分画像は、吸収画像を所定方向(例えば、x方向)に微分処理することにより生成される。小角散乱画像は、強度変調信号の振幅を画像化することにより生成される。
【0098】
また、上記実施形態では、被検体HをX線源11と第1の格子21との間に配置しているが、被検体Hを第1の格子21と第2の格子22との間に配置してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、縞走査時に第2の格子22を格子線に直交する方向(x方向)に移動させているが、本出願人により特願2011−097090号として出願されているように、第2の格子22を格子線に対して傾斜する方向(xy平面内でx方向及びy方向に直交しない方向)に移動させてもよい。この場合には、第2の格子22の移動のx方向成分に基づいて、走査位置kを設定すればよい。第2の格子22を格子線に対して傾斜する方向に移動させることにより、縞走査の一周期分の走査に要するストローク(移動距離)が長くなるため、移動精度が向上するといった利点がある。
【0100】
また、上記実施形態では、縞走査時に第2の格子22を移動させているが、第2の格子22に代えて、第1の格子21を格子線に直交する方向または傾斜する方向に移動させてもよい。
【0101】
また、上記第実施形態では、X線源11から射出されるコーンビーム状のX線を射出するX線源11を用いているが、平行ビーム状のX線を射出するX線源を用いることも可能である。この場合には、上式(1)に代えて、p2=p1をほぼ満たすように第1及び第2の格子21,22を構成すればよい。
【0102】
また、上記実施形態では、X線源11から射出されたX線を第1の格子21に入射させており、X線源11は単一焦点であるが、X線源11の射出側直後に、WO2006/131235号公報等に記されたマルチスリット(線源格子)を設けることにより、X焦点を分散化してもよい。これより、高出力のX線源を用いることが可能となり、X線量が向上するため、位相微分画像の画質が向上する。この場合、マルチスリットのピッチp0は、下式(10)を満たす必要がある。この場合、距離L1は、マルチスリットから第1の格子21までの距離を表す。
【0103】
【数10】
【0104】
また、上記実施形態では、第1の格子21が入射X線を幾何光学的に投影するように構成しているが、WO2004/058070号公報等で知られているように、第1の格子21をタルボ効果が生じる構成としてもよい。第1の格子21でタルボ効果を生じさせるためには、X線の空間干渉性を高めるように、小焦点のX線光源を用いるか、上記マルチスリットを用いればよい。
【0105】
第1の格子21でタルボ効果が生じる場合には、第1の格子21の自己像(G1像)が、第1の格子21からz方向下流にタルボ距離Zmだけ離れた位置に生じるため、第1の格子21から第2の格子22までの距離L2をタルボ距離Zmとする必要がある。
【0106】
タルボ距離Zmは、第1の格子21の構成とX線のビーム形状とに依存する。第1の格子21が吸収型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(11)で表される。ここで、mは正の整数である。
【0107】
【数11】
【0108】
また、第1の格子21がX線にπ/2の位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(12)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0109】
【数12】
【0110】
また、第1の格子21がX線にπの位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(13)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0111】
【数13】
【0112】
また、第1の格子21が吸収型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(14)で表される。ここで、mは正の整数である。
【0113】
【数14】
【0114】
また、第1の格子21がX線にπ/2の位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(15)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0115】
【数15】
【0116】
そして、第1の格子21がX線にπの位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(16)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0117】
【数16】
【0118】
また、上記実施形態では、格子部12に第1及び第2の格子21,22の2つの格子を設けているが、第2の格子22を省略し、第1の格子21のみとすることも可能である。
【0119】
例えば、特開平2009−133823号公報に記されたX線画像検出器を用いることにより、第2の格子22を省略し、第1の格子21のみとすることが可能である。このX線画像検出器は、X線を電荷に変換する変換層と、変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極とを備えた直接変換型のX線画像検出器であり、各画素の電荷収集電極が複数の線状電極群を備える。1つの線状電極群は、一定の周期で配列された線状電極を互いに電気的に接続したものであり、他の線状電極群と互いに位相が異なるように配置されている。この線状電極群が第2の格子22として機能し、線状電極群が複数存在することにより、一度の撮影で位相の異なる複数のG2像の検出が行われる。したがって、この構成では、走査機構23を省略することが可能である。
【0120】
また、走査機構23を省略し、第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13により得られる単一の画像データに基づいて位相微分画像を生成する方法がある。この方法として、本出願人により特願2010−256241号として出願されている画素分割法がある。この画素分割法では、第1の格子21と第2の格子22とを、z方向の回りに僅かに回転させて、y方向に周期を有するモアレ縞をG2像に発生させる。X線画像検出器13により得られる単一の画像データを、該モアレ縞に対して互いに位相が異なる画素行(x方向に並ぶ画素)の群に分割し、分割された複数の画像データを、縞走査により互いに異なる複数のG2像に基づくものと見なして、上記縞走査法と同様な手順で位相微分画像を生成する。この画素分割法において、前述の強度変調信号は、単一の画像データに生じるモアレ縞の1周期分の画素値の強度変化として表される。
【0121】
さらに、画素分割法と同様に、走査機構23を省略し、第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13により得られる単一の画像データに基づいて位相微分画像を生成する方法として、WO2010/050483号公報に記載されたフーリエ変換法が知られている。このフーリエ変換法は、上記単一の画像データに対してフーリエ変換を行うことによりフーリエスペクトルを取得し、このフーリエスペクトルからキャリア周波数に対応したスペクトル(位相情報を担うスペクトル)を分離した後、逆フーリエ変換を行なうことにより位相微分画像を生成する方法である。なお、このフーリエ変換法において、前述の強度変調信号は、画素分割法の場合と同様に、単一の画像データに生じるモアレ縞の1周期分の画素値の強度変化として表される。
【0122】
本発明は、医療診断用の放射線撮影装置の他に、工業用の放射線撮影装置等に適用することが可能である。また、放射線は、X線以外に、ガンマ線等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0123】
10 X線撮影装置
12 格子部
20 X線画像検出器
21 第1の格子
21a X線吸収部
21b X線透過部
22 第2の格子
22a X線吸収部
22b X線透過部
30 画素部
31 画素電極
33 ゲート走査線
35 信号線
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体による放射線の位相変化に基づく画像を検出する放射線撮影装置及びこれに用いられるアンラップ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線、例えばX線は、物質を構成する元素の重さ(原子番号)と物質の密度及び厚さとに依存して吸収され減衰するといった特性を有する。この特性に着目し、医療診断や非破壊検査等の分野において、被検体の内部を透視するためのプローブとしてX線が利用されている。
【0003】
一般的なX線撮影装置では、X線を放射するX線源と、X線を検出するX線画像検出器との間に被検体を配置して、被検体を透過したX線の撮影を行う。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射されたX線は、被検体を透過する際に吸収され減衰した後、X線画像検出器に入射する。この結果、被検体によるX線の強度変化に基づく画像がX線画像検出器により検出される。
【0004】
X線吸収能は、原子番号が小さい元素ほど低くなるため、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線の強度変化が小さく、画像に十分なコントラストが得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線吸収能の差が小さいため、コントラストが得られにくい。
【0005】
このような問題を背景に、被検体によるX線の強度変化に代えて、被検体によるX線の位相変化に基づいた画像を得るX線位相イメージングの研究が近年盛んに行われている。X線位相イメージングは、被検体に入射したX線の位相変化が強度変化より大きいことに基づき、X線の位相変化を画像化する方法であり、X線吸収能が低い被検体に対しても高コントラストの画像を得ることができる。X線位相イメージングの一種として、2枚の回折格子とX線画像検出器とを用いてX線タルボ干渉計を構成することにより、X線の位相変化を検出するX線撮影装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このX線撮影装置は、X線源から見て被検体の背後に第1の回折格子を配置し、第1の回折格子からタルボ距離だけ離れた位置に第2の回折格子を配置し、その背後にX線画像検出器を配置したものである。タルボ距離は、第1の回折格子を通過したX線が、タルボ効果によって第1の回折格子の自己像(縞画像)を形成する距離であり、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長とに依存する。この自己像は、被検体でのX線の位相変化で屈折が生じることにより変調される。この変調量を検出することにより、X線の位相変化が画像化される。
【0007】
上記変調量の検出方法として縞走査法が知られている。縞走査法とは、第1の回折格子に対して第2の回折格子を、第1の回折格子の面に平行でかつ第1の回折格子の格子線方向に垂直な方向に、所定の走査ピッチで並進移動(走査)させながら、各走査位置において、X線源からX線を放射し、被検体、第1及び第2の回折格子を通過したX線をX線画像検出器により撮影する方法である。このX線画像検出器により得られる各画素の画素値の上記走査に対する変化を表す信号(強度変調信号)について位相ズレ量(被検体が存在しない場合の初期位置からの位相差)を算出することにより、上記変調量に関連する画像が得られる。この画像は、被検体の屈折率を反映した画像であり、X線の位相変化(位相シフト)の微分量に対応するため、位相微分画像と呼ばれる。
【0008】
特許文献1に示されているように、上記位相ズレ量は、複素数の偏角を抽出する関数(arg[…])や、逆正接関数(tan−1[…])を用いて算出される。このため、位相微分画像は、上記関数の値域(−πから+π、または、−π/2から+π/2)に畳み込まれた(ラップされた)値により表現される。このようにラップされた位相微分画像には、値域の上限から下限に変化する箇所、または下限から上限に変化する箇所で不連続点が生じることがあるため、この不連続点をなくして連続化するようにアンラップ処理を行うことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
このアンラップ処理は、光学的計測の分野等でも行われている(例えば、特許文献3参照)。一般に、アンラップ処理は、画像内の所定位置を起点とし、該起点から所定の経路に沿って順に行われる。この経路中に上記不連続点が検出されると、この不連続点以降のデータに、上記関数の値域に相当する値が一律に加算または減算される。これにより、不連続点がなくなり、データが連続化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2004/058070号公報
【特許文献2】特開2011−045655号公報
【特許文献3】特開2008−082869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、被検体に骨部等のX線吸収能が高い高吸収体が含まれる場合には、該高吸収体では、X線を大きく減衰させることにより、上記強度変調信号の強度や振幅が低下するため、位相ズレ量の算出精度が低下してしまう。これにより、位相微分画像の高吸収体領域では、アンラップエラーが生じやすくなる。このアンラップエラーには、本来不連続点でない箇所に不連続性が生じて不連続点と見なされることによりアンラップ処理が行われるケースと、本来不連続点である箇所の不連続性が低下して不連続点と見なされないことによりアンラップ処理が行われないケースとがある。
【0012】
図14に示すように、高吸収体である骨部の領域に起点を設定し、起点から一方向に伸びる経路に沿ってアンラップ処理を行う場合には、骨部領域ではアンラップエラーが生じやすいため、一旦アンラップエラーが生じると、アンラップエラーが生じた箇所以降の経路にエラー値(上記関数の値域に相当する値)が積算される。この結果、アンラップ処理後の位相微分画像にはアンラップ処理の経路方向に沿った筋状のノイズが生じ、このノイズが軟部組織である軟骨部の一部に重なるため、X線位相イメージングでの関心領域である肝心の軟部組織の画像化を阻害してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、アンラップエラーによる軟部組織の画像化の阻害を防止することを可能とする放射線撮影装置及びアンラップ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の放射線撮影装置は、放射線源から射出され、被検体を透過した放射線を検出して画像データを生成する放射線検出器と、前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置された格子部と、前記画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成する位相微分画像生成部と、前記位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出するOK/NG領域検出部と、前記OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながら前記OK領域内の画素を順にアンラップ処理するアンラップ処理部と、を備えるものである。
【0015】
前記被検体を配置しない状態で行われるプレ撮影において、前記位相微分画像生成部により生成された位相微分画像をオフセット画像として記憶するオフセット画像記憶部を備え、前記アンラップ処理部は、前記オフセット画像に対しても前記アンラップ処理を行うことが好ましい。この場合、前記アンラップ処理後の位相微分画像から前記アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット処理部を備えることが好ましい。
【0016】
前記アンラップ処理部は、基準点に対して互いに直交する4方向に隣接する隣接画素のうち、前記OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を同時にアンラップ処理することが好ましい。
【0017】
前記アンラップ処理部は、基準点に対して1方向に隣接し、前記OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を1画素ずつアンラップ処理することも好ましい。
【0018】
また、前記アンラップ処理部は、前記OK領域が複数存在する場合に、前記各OK領域中に前記起点を設定して前記アンラップ処理を行うことが好ましい。
【0019】
前記格子部は、放射線源からの放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽して第2の周期パターン像を生成する第2の格子と有し、前記放射線画像検出器は、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成することが好ましい。
【0020】
前記格子部は、前記第1の格子または第2の格子を所定の走査ピッチで移動させ、複数の走査位置に順に設定する走査機構を備え、前記放射線画像検出器は、前記各走査位置で前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成し、前記位相微分画像生成部は、前記放射線画像検出器により生成される複数の画像データに基づいて位相微分画像を生成することが好ましい。この場合、前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に直交する方向に移動させることを特徴とすることが好ましい。また、前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に対して傾斜する方向に移動させることも好ましい。
【0021】
前記位相微分画像生成部は、前記放射線検出器により得られる単一の画像データに基づいて前記位相微分画像を生成することも好ましい。
【0022】
前記OK/NG領域検出部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度、振幅、ビジビリティのうち1つまたは複数の組み合わせに基づいてNG領域を検出することが好ましい。
【0023】
吸収画像、吸収画像の微分画像、小角散乱画像のうちいずれかを生成し、前記位相微分画像の前記NG領域を置換するNG領域画像置換部を備えることが好ましい。
【0024】
前記第1の格子は、吸収型格子であり、入射した放射線を幾何光学的に投影することにより前記第1の周期パターン像を生成することが好ましい。前記第1の格子は、吸収型格子または位相型格子であり、入射した放射線にタルボ効果を生じさせて前記第1の周期パターン像を生成するものであってもよい。
【0025】
前記放射線源から放射された放射線を部分的に遮蔽して焦点を分散化するマルチスリットを備えることが好ましい。
【0026】
本発明のアンラップ処理方は、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出し、前記OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながら前記OK領域内の画素を順にアンラップ処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域とし、OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながらOK領域内の画素を順にアンラップ処理するので、アンラップエラーが生じ難く、アンラップエラーによる軟部組織の画像化の阻害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】X線撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図2】X線画像検出器の構成を示す模式図である。
【図3】第1及び第2の格子の構成を説明する説明図である。
【図4】強度変調信号を示すグラフである。
【図5】画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図6】アンラップ処理方法を説明する第1の説明図である。
【図7】アンラップ処理方法を説明する第2の説明図である。
【図8】アンラップ処理方法を説明する第3の説明図である。
【図9】プレ撮影時のX線撮影装置の作用を説明するフローチャートである。
【図10】本撮影時のX線撮影装置の作用を説明するフローチャートである。
【図11】アンラップ処理方法の第1の変形例を説明する説明図である。
【図12】アンラップ処理方法の第2の変形例を説明する説明図である。
【図13】NG領域画像置換部を備えた画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図14】従来のアンラップ処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1において、X線撮影装置10は、X線源11、格子部12、X線画像検出器13、メモリ14、画像処理部15、画像記録部16、撮影制御部17、コンソール18、及びシステム制御部19を備える。X線源11は、例えば、回転陽極型のX線管と、X線の照射野を制限するコリメータとを有し、撮影制御部17の制御に基づき、被検体Hに向けてX線を放射する。
【0030】
格子部12は、第1の格子21、第2の格子22、及び走査機構23を備える。第1及び第2の格子21,22は、X線照射方向であるz方向に関してX線源11に対向配置されている。X線源11と第1の格子21との間には、被検体Hが配置可能な間隔が設けられている。X線画像検出器13は、例えば、半導体回路を用いたフラットパネル検出器であり、第2の格子22の背後に、検出面13aがz方向に直交するように配置されている。
【0031】
第1の格子21は、z方向に直交する格子面内の一方向であるy方向に延伸された複数のX線吸収部21a及びX線透過部21bを備えた吸収型格子である。X線吸収部21a及びX線透過部21bは、z方向及びy方向に直交するx方向に交互に配列されており、縞状のパターンを形成している。第2の格子22は、第1の格子21と同様にy方向に延伸され、かつx方向に交互に配列された複数のX線吸収部22a及びX線透過部22bを備えた吸収型格子である。X線吸収部21a,22aは、金(Au)、白金(Pt)等のX線吸収性を有する材料により形成されている。X線透過部21b,22bは、シリコン(Si)や樹脂等のX線透過性を有する材料や空隙により形成されている。
【0032】
第1の格子21は、X線源11から放射されたX線を部分的に通過させて第1の周期パターン像(以下、G1像という)を生成する。第2の格子22は、第1の格子21により生成されたG1像を部分的に透過させて第2の周期パターン像(以下、G2像という)を生成する。被検体Hが配置されていない場合において、G1像は、第2の格子22の格子パターンとほぼ一致する。
【0033】
X線画像検出器13は、G2像を検出して画像データを生成する。メモリ14は、X線画像検出器13から読み出された画像データを一時的に記憶する。画像処理部15は、メモリ14に記憶された画像データに基づいて位相微分画像を生成し、この位相微分画像に基づいて位相コントラスト画像を生成する。画像記録部16は、位相微分画像と位相コントラスト画像とを記録する。
【0034】
走査機構23は、第2の格子22をx方向に並進移動させ、第1の格子21に対する第2の格子22の相対位置を順次に変更する。走査機構23は、圧電アクチュエータや静電アクチュエータにより構成され、後述する縞走査を実行するために、撮影制御部17の制御に基づいて駆動される。メモリ14には、縞走査の各走査位置でX線画像検出器13により得られる画像データが一括して記憶される。
【0035】
コンソール18は、操作部18a及びモニタ18bを備えている。操作部18aは、キーボードやマウス等により構成され、X線源11の管電圧、管電流、照射時間等の撮影条件の設定や、本撮影またはプレ撮影のモード選択、撮影実行指示等の操作入力を可能とする。本撮影とは、X線源11と第1の格子21との間に被検体Hを配置した状態で行う撮影モードである。プレ撮影とは、X線源11と第1の格子21との間に被検体Hを配置せずに行う撮影モードである。詳しくは後述するが、プレ撮影は、第1及び第2の格子21,22の製造誤差や配置誤差等により生じるバックグランド成分をオフセット画像として取得するために用いられる。
【0036】
モニタ18bは、撮影条件等の撮影情報や、画像記録部16に記録された位相微分画像及び位相コントラスト画像の表示を行う。システム制御部19は、操作部18aから入力される信号に応じて各部を統括的に制御する。
【0037】
図2において、X線画像検出器13は、入射X線により半導体膜(図示せず)に生じた電荷を収集する画素電極31と、画素電極31によって収集された電荷を読み出すためのTFT(Thin Film Transistor)32とを備えた画素部30が2次元状に多数配列されたものである。半導体膜は、例えば、アモルファスセレンにより形成されている。
【0038】
また、X線画像検出器13は、ゲート走査線33、走査回路34、信号線35、及び読み出し回路36を備える。ゲート走査線33は、画素部30の行ごとに設けられている。走査回路34は、TFT32をオン/オフするための走査信号を各ゲート走査線33に付与する。信号線35は、画素部30の列ごとに設けられている。読み出し回路36は、各信号線35を介して画素部30から電荷を読み出し、画像データに変換して出力する。各画素部30の詳細な層構成については、例えば、特開2002−26300号公報に記載されている層構成と同様である。
【0039】
読み出し回路36は、積分アンプ、A/D変換器、補正回路(いずれも図示せず)等を備える。積分アンプは、各画素部30から信号線35を介して出力された電荷を積分して画像信号を生成する。A/D変換器は、積分アンプにより生成された画像信号を、デジタル形式の画像データに変換する。補正回路は、画像データに対して、暗電流補正、ゲイン補正、リニアリティ補正等を行う。この補正後の画像データがメモリ14に記憶される。
【0040】
X線画像検出器13は、入射X線を半導体膜で直接電荷に変換する直接変換型に限られず、ヨウ化セシウム(CsI)やガドリウムオキシサルファイド(GOS)等のシンチレータで入射X線を可視光に変換し、可視光をフォトダイオードで電荷に変換する間接変換型であってもよい。さらに、X線画像検出器13を、シンチレータとCMOSセンサを組み合わせて構成してもよい。
【0041】
図3において、X線源11から照射されるX線は、X線焦点11aを発光点としたコーンビームである。第1の格子21は、タルボ効果が生じず、X線透過部21bを通過したX線を幾何光学的に投影するように構成される。具体的には、x方向へのX線透過部21bの幅を、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とし、X線の大部分がX線透過部21bで回折しないようにすることで実現される。X線源11の回転陽極としてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は約0.4Åである。この場合には、X線透過部21bの幅を1〜10μm程度とすればよい。
【0042】
これにより、G1像は、第1の格子21からz方向下流への距離に依らず、常に第1の格子21の自己像となる。G1像は、X線焦点11aからz方向下流への距離に比例して拡大される。
【0043】
第2の格子22の格子ピッチp2は、前述のように、第2の格子22の格子パターンが第2の格子22の位置におけるG1像に一致するように設定されている。具体的には、第2の格子22の格子ピッチp2は、第1の格子21の格子ピッチp1、X線焦点11aと第1の格子21との間の距離L1、第1の格子21と第2の格子22との間の距離L2と、下式(1)をほぼ満たすように設定されている。
【0044】
【数1】
【0045】
G1像は、被検体HでX線に位相変化が生じて屈折することにより変調される。この変調量には、被検体HでのX線の屈折角φ(x)が反映される。同図には、被検体HでのX線の位相変化を表す位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折するX線の経路が例示されている。符号X1は、被検体Hが存在しない場合にX線が直進する経路を示し、符号X2は、被検体Hにより屈折したX線の経路を示している。
【0046】
位相シフト分布Φ(x)は、X線の波長をλ、被検体Hの屈折率分布をn(x,z)として、下式(2)で表される。
【0047】
【数2】
【0048】
上記屈折角φ(x)は、位相シフト分布Φ(x)と、下式(3)の関係にある。
【0049】
【数3】
【0050】
第2の格子22の位置において、X線は、屈折角φ(x)に応じた量だけx方向に変位する。この変位量Δxは、X線の屈折角φ(x)が微小であることに基づいて、近似的に下式(4)で表される。
【0051】
【数4】
【0052】
このように、変位量Δxは、位相シフト分布Φ(x)の微分値に比例する。したがって、変位量Δxを後述する縞走査により検出することにより、位相シフト分布Φ(x)の微分値が得られ、位相微分画像が生成される。
【0053】
縞走査は、格子ピッチp2をM個に分割した値(p2/M)を走査ピッチとし、走査機構23により、この走査ピッチで第2の格子22を並進移動させ、第2の格子22を並進移動させるたびに、X線源11からX線を放射してG2像をX線画像検出器13により撮影することにより行われる。Mは3以上の整数であり、例えば、M=5であることが好ましい。
【0054】
上式(1)を僅かに満たさない場合や、第1の格子21と第2の格子22との間にz方向周りの回転や、xy平面に対する傾斜が僅かに生じている場合には、G2像にはモアレ縞が生じる。このモアレ縞は、第2の格子22の並進移動に伴って移動し、x方向への移動距離が格子ピッチp2に達すると元のモアレ縞に一致する。このモアレ縞の移動を確認することで、第2の格子22の並進移動量を検証することができる。
【0055】
上記縞走査により、X線画像検出器13の各画素部30について、M個の画素値が得られる。図4に示すように、M個の画素値Ikは、第2の格子22の走査位置kに対して周期的に変化する。走査位置kは、第2の格子22を一周期分並進移動させた場合の走査ピッチ(p2/M)ごとの各位置である。走査位置kに対する画素値Ikの変化を表す信号を強度変調信号と呼ぶ。
【0056】
同図中の破線は、被検体Hを配置しない状態で得られる強度変調信号を示している。これに対して、実線は、被検体Hを配置した状態で、被検体Hにより位相ズレ量ψ(x)が生じた強度変調信号を示している。この位相ズレ量ψ(x)は、上記変位量Δxと下式(5)の関係にある。
【0057】
【数5】
【0058】
したがって、各画素部30について、縞走査で得られるM個の画素値Ikに基づき、強度変調信号の位相ズレ量ψ(x)を求めることにより、位相微分画像が得られる。
【0059】
次に、位相ズレ量ψ(x)の算出方法について説明する。強度変調信号は、一般に下式(6)で表される。
【0060】
【数6】
【0061】
ここで、A0は入射X線の平均強度を表し、Anは強度変調信号の振幅を表す。nは正の整数、iは虚数単位である。なお、図4に示すように、強度変調信号が正弦波を描く場合には、n=1である。
【0062】
本実施形態では、走査ピッチ(p2/M)が一定であるため、下式(7)が成立する。
【0063】
【数7】
【0064】
上式(7)を上式(6)に適用すると、位相ズレ量ψ(x)は、下式(8)で表される。
【0065】
【数8】
【0066】
ここで、arg[…]は、複素数の偏角を抽出する関数である。また、位相ズレ量ψ(x)は、逆正接関数を用いて下式(9)のように表すことも可能である。
【0067】
【数9】
【0068】
複素数の偏角は、値域が−πから+πの範囲であるため、上式(8)に基づいて位相ズレ量ψ(x)を算出した場合には、位相ズレ量ψ(x)は、−πから+πの範囲に畳み込まれた(ラップされた)値を取る。これに対して、逆正接関数は、通常、値域が−π/2から+π/2の範囲であるため、上式(9)に基づいて位相ズレ量ψ(x)を算出した場合には、位相ズレ量ψ(x)は、−π/2から+π/2の範囲に畳み込まれた値を取る。なお、上式(9)において、逆正接関数内の分母及び分子の正負を判別することにより、値域を−πから+πとすることができるため、−πから+πの範囲で位相ズレ量ψ(x)を算出することも可能である。
【0069】
本実施形態では、各画素部30について位相ズレ量ψ(x)を算出することにより得られるデータを位相微分画像という。なお、位相ズレ量ψ(x)に定数を乗じたり加算したりしたデータで表される画像を位相微分画像としてもよい。以下、位相微分画像は、−α/2から+α/2の範囲に畳み込まれているとする。
【0070】
図5において、画像処理部15は、位相微分画像生成部40、オフセット画像記憶部41、OK/NG領域検出部42、アンラップ処理部43、オフセット処理部44、及び位相コントラスト画像生成部45を備える。位相微分画像生成部40は、本撮影またはプレ撮影において縞走査を行った結果、メモリ14に記憶されたM枚分の画像データを用い、上式(8)または上式(9)に基づいて演算を行うことにより位相微分画像を生成する。
【0071】
プレ撮影時に位相微分画像生成部40により生成された位相微分画像は、オフセット画像としてオフセット画像記憶部41により記憶される。本撮影時に位相微分画像生成部40により生成された位相微分画像は、アンラップ処理部43に入力される。なお、オフセット画像記憶部41は、位相微分画像生成部40から再度オフセット画像が入力された場合には、記憶中のオフセット画像を消去した後、入力されたオフセット画像を記憶する。
【0072】
OK/NG領域検出部42は、メモリ14に記憶されたM枚分の画像データに基づき、位相微分画像中においてアンラップエラーが生じやすい領域(以下、NG領域という)を検出するとともに、NG領域以外の領域をOK領域として検出する。OK/NG領域検出部42は、各画素部30について、強度変調信号の平均強度A0が閾値より低い領域、振幅A1が閾値より低い領域、またはビジビリティA1/A0が閾値より低い領域をNG領域とする。
【0073】
このNG領域は、被検体Hに含まれる高吸収体領域(被検体Hが人体である場合には、X線吸収能が高い骨部等)に相当する。これは、X線が高吸収体で吸収されることにより、平均強度A0、振幅A1、またはビジビリティA1/A0が低下することに基づいている。なお、平均強度A0、振幅A1、ビジビリティA1/A0のうち2以上を組み合わせてNG領域を検出してもよい。また、NG領域が散在することにより、ある程度の大きさを有する集合領域として得られない場合には、上記閾値を変化させてNG領域の大きさを調整すればよい。
【0074】
アンラップ処理部43は、位相微分画像生成部40から入力された位相微分画像に対して、NG領域以外のOK領域のみを対象としてアンラップ処理を施す。また、アンラップ処理部43は、オフセット画像記憶部41に記憶されたオフセット画像に対して、OK領域のみを対象としてアンラップ処理を施す。
【0075】
オフセット処理部44は、アンラップ処理後の位相微分画像から、アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正を行う。位相コントラスト画像生成部45は、オフセット補正後の位相微分画像をx方向に沿って積分処理することにより、位相シフト分布を表す位相コントラスト画像を生成する。オフセット補正後の位相微分画像と、位相コントラスト画像とが画像記録部16に記録される。
【0076】
次に、図6〜図8を用いて、アンラップ処理部43によるアンラップ処理方法をより詳細に説明する。これらの図では、説明の簡略化のため、位相微分画像を10×6画素の画像として表している。
【0077】
図6(A)に示すように、まず、位相微分画像のOK領域中に、アンラップ処理を開始する起点SPが設定され、この起点SPを基準画素として、基準画素にx方向(左右)及びy方向(上下)の4方向に隣接する隣接画素に対してアンラップ処理が行われる。なお、位相微分画像中に複数のOK領域が存在する場合には、各OK領域に起点SPを設定して同様にアンラップ処理が行われる。
【0078】
このアンラップ処理は、基準画素と、この基準画素に隣接する隣接画素とで画素値の差分を取り、この差分値Δψが所定範囲(例えば、−α/2≦Δψ≦+α/2)に入っていなければ、この隣接画素を不連続点と判断し、隣接画素の画素値を、αを単位としてシフトさせて差分値Δψを上記所定範囲内とする処理である。
【0079】
起点SPに隣接する隣接画素のアンラップ処理が行われると、次に、図6(B)に示すように、図6(A)でアンラップ処理が行われた各画素が基準画素とされ、各基準画素に隣接する隣接画素のアンラップ処理が行われる。破線矢印は、前ステップにおけるアンラップ処理経路を示している。実線矢印は、現ステップにおけるアンラップ処理経路を示している。
【0080】
現ステップでは、基準点が複数存在することにより、ある基準点からx方向に隣接する隣接画素と、別の基準点からy方向に隣接する隣接画素とが同一の画素となりアンラップ処理の対象が重複するため、いずれかの方向を優先する必要がある。本実施形態では、x方向を優先している。また、基準点に隣接する隣接画素がOK領域内の画素でない場合(NG領域内の画素である場合)には、その画素にはアンラップ処理は行われない。
【0081】
この後、図6(C)、(D)、図7(A)〜(D)、図8(A)、(B)に示すように、アンラップ処理が行われた各画素が順に基準画素に設定され、各基準画素に隣接する隣接画素のアンラップ処理が行われる。各OK領域内の全ての画素についてアンラップ処理が終了すると、アンラップ処理部43による一連のアンラップ処理が終了する。
【0082】
なお、アンラップ処理において、不連続点の画素値に対するαを単位とした上記シフトは、不連続点が検出されるたびに逐一行ってもよいが、不連続点が検出された際に、その不連続点を解消するためのシフト量を記憶しておき、OK領域内の全ての不連続点が検出された後に各不連続点についてシフトを行ってもよい。
【0083】
次に、図9及び図10に示すフローチャートを参照しながらX線撮影装置10の作用を説明する。操作部18aを用いて撮影モードの選択がなされると(ステップS20)、選択された撮影モードがプレ撮影であるか否かの判定が行われる(ステップS21)。プレ撮影である場合には、撮影指示の待受状態となる(ステップS22)。操作部18aを用いて撮影指示がなされると(ステップS22でYES)、走査機構23により第2の格子22が所定の走査ピッチずつ並進移動されながら、各走査位置kにおいて、X線源11によるX線照射及びX線画像検出器13によるG2像の検出が行われる(ステップS23)。この縞走査の結果、M枚の画像データが生成され、メモリ14に格納される。
【0084】
この後、画像処理部15によりメモリ14に格納されたM枚の画像データが読み出される。画像処理部15内では、位相微分画像生成部40により位相微分画像が生成される(ステップS24)。この位相微分画像は、オフセット画像としてオフセット画像記憶部41に記憶される(ステップS25)。プレ撮影動作は、以上で終了する。なお、このプレ撮影は、X線撮影装置10の立ち上げ時等に被検体Hを配置しない状態で少なくとも一度行われればよく、本撮影の前に毎回行われる必要はない。
【0085】
次に、被検体Hが配置され、ステップS20の撮影モードの選択により本撮影が選択された場合には(ステップS21でNO)、撮影指示の待受状態となる(ステップS30)。操作部18aを用いて撮影指示がなされると(ステップS30でYES)、ステップS23と同様の縞走査が行われ(ステップS31)、メモリ14にM枚の画像データが格納される。この後、同様に、位相微分画像生成部40によって位相微分画像が生成される(ステップS32)。
【0086】
そして、OK/NG領域検出部42により、メモリ14に格納された画像データに基づき、NG領域及びOK領域の検出が行われる(ステップS33)。この検出結果に基づき、アンラップ処理部43により、ステップS32で生成された位相微分画像と、オフセット画像記憶部41に記憶されたオフセット画像とのそれぞれのOK領域に対して、前述のアンラップ処理が行われる(ステップS34)。この後、オフセット処理部44により、アンラップ処理後の位相微分画像から、アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正が行われる(ステップS35)。
【0087】
このオフセット補正後の位相微分画像を位相コントラスト画像生成部45が積分処理することにより、位相コントラスト画像が生成され(ステップS36)、オフセット補正後の位相微分画像及び位相コントラスト画像が画像記録部16に記録された後、モニタ18bに画像表示される(ステップS37)。
【0088】
以上のように、ステップS34のアンラップ処理では、アンラップエラーが生じやすいNG領域を検出し、このNG領域以外のOK領域についてのみアンラップ処理を行っているため、アンラップエラーが生じ難く、ノイズの少ない位相微分画像が得られる。X線位相イメージングでの関心領域である軟部組織(軟骨部等)は、NG領域外に存在するため、アンラップエラーによるノイズで軟部組織の画像化が阻害されることは防止される。
【0089】
なお、上記実施形態では、アンラップ処理を開始する起点SPを、OK領域の中央付近に設定しているが、起点SPは、OK領域内のいずれの画素に設定してもよい。例えば、図11に示すように、OK領域の角部(x方向及びy方向の端部)に起点SPを設定してもよい。アンラップ処理方法は、上記実施形態と同様であり、図11(A)〜(D)に示すように、起点SPから隣接画素が順にアンラップ処理される。図11(D)のステップは同様であるため説明を省略する。
【0090】
また、上記実施形態では、基準画素に対してx方向(左右)及びy方向(上下)の4方向に隣接する隣接画素のうち、OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を同時にアンラップ処理しているが、x方向またはy方向のうち1方向に隣接する隣接画素を1画素ずつ順にアンラップ処理してもよい。
【0091】
例えば、図12(A)に示すように、まず、OK領域の角部(x方向及びy方向の端部)に起点SPを設定し、x方向に隣接する隣接画素をアンラップ処理する。次に、アンラップ処理された該隣接画素を基準画素とし、x方向に隣接する隣接画素をアンラップ処理する。これを繰り返し行い、図12(B)に示すように、OK領域のx方向端に達すると、起点SPからy方向に隣接する隣接画素をアンラップ処理し、図12(C)に示すように、アンラップ処理された該隣接画素からx方向に順にアンラップ処理していく。そして、隣接画素がNG領域内の画素である場合には、この画素のアンラップ処理は行わない。OK領域内の同一行内の画素は、図12(D)に示すように、既にアンラップ処理が行われている上段の行の画素を基準画素として、アンラップ処理を行う。以下、同様にアンラップ処理を行うことにより、OK領域内の全ての画素についてアンラップ処理を行うことができる。
【0092】
また、上記実施形態では、OK/NG領域検出部42は、強度変調信号の平均強度、振幅、またはビジビリティに基づいて、アンラップエラーが生じやすいNG領域を検出しているが、NG領域の検出基準はこれに限られず、強度変調信号の平均強度の画素間のばらつき(すなわち、吸収画像の画素間のばらつき)や、位相微分画像の画素間のばらつきが所定値より大きい領域をNG領域として検出してもよい。なお、この位相微分画像の画素間のばらつきは、第1及び第2の格子21,22の格子線に直交する方向(x方向)へのばらつきとすることが好ましい。
【0093】
また、位相微分画像の各画素について絶対値を取り、この絶対値が所定値を超える箇所を検出することにより、高吸収体領域のエッジ部分を検出することができるため、このエッジ部で囲われる領域をNG領域として検出してもよい。
【0094】
また、強度変調信号の平均強度や最大強度が所定値より大きく、強度変調信号に飽和が生じている領域をNG領域として検出してもよい。この強度変調信号の飽和は、被検体Hを透過せずに第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13に直接入射した画素領域(素抜け領域)で生じやすい。強度変調信号が飽和すると位相ズレ量ψ(x)が正確に得られなくなるため、この素抜け領域もアンラップエラーが生じやすい領域である。以上の検出基準を適宜組み合わせてもよい。
【0095】
さらに、X線画像検出器13、第1の格子21、第2の格子22に欠陥が生じたり、ゴミなどが付着したりした場合には、所定の画素部30の画素値が常に高く、または低くなることがある。このような画素欠陥が生じた領域は、強度変調信号の平均強度、振幅、またはビジビリティが異常値を示すため、アンラップエラーが生じやすい領域となる。このような画素欠陥領域についても、上記の検出基準を適宜組み合わせることにより、NG領域として検出可能である。
【0096】
また、上記実施形態では、NG領域にはアンラップ処理が行われないため、最終的に画像記録部16に記録されモニタ18bに表示される位相微分画像のNG領域は、不連続点が残存したノイズの大きい画像となる可能性があるため、図13に示すように、画像処理部15にNG領域画像置換部50を設けてもよい。
【0097】
NG領域画像置換部50は、本撮影時にメモリ14に記憶されたM枚分の画像データに基づき、吸収画像、吸収画像の微分画像、または小角散乱画像を生成し、該画像のNG領域に対応する部分を、オフセット補正後の位相微分画像のNG領域に挿入して置換する。また、同様に、位相コントラスト画像のNG領域を置換してもよい。吸収画像は、強度変調信号の平均強度を画像化することにより生成される。吸収画像の微分画像は、吸収画像を所定方向(例えば、x方向)に微分処理することにより生成される。小角散乱画像は、強度変調信号の振幅を画像化することにより生成される。
【0098】
また、上記実施形態では、被検体HをX線源11と第1の格子21との間に配置しているが、被検体Hを第1の格子21と第2の格子22との間に配置してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、縞走査時に第2の格子22を格子線に直交する方向(x方向)に移動させているが、本出願人により特願2011−097090号として出願されているように、第2の格子22を格子線に対して傾斜する方向(xy平面内でx方向及びy方向に直交しない方向)に移動させてもよい。この場合には、第2の格子22の移動のx方向成分に基づいて、走査位置kを設定すればよい。第2の格子22を格子線に対して傾斜する方向に移動させることにより、縞走査の一周期分の走査に要するストローク(移動距離)が長くなるため、移動精度が向上するといった利点がある。
【0100】
また、上記実施形態では、縞走査時に第2の格子22を移動させているが、第2の格子22に代えて、第1の格子21を格子線に直交する方向または傾斜する方向に移動させてもよい。
【0101】
また、上記第実施形態では、X線源11から射出されるコーンビーム状のX線を射出するX線源11を用いているが、平行ビーム状のX線を射出するX線源を用いることも可能である。この場合には、上式(1)に代えて、p2=p1をほぼ満たすように第1及び第2の格子21,22を構成すればよい。
【0102】
また、上記実施形態では、X線源11から射出されたX線を第1の格子21に入射させており、X線源11は単一焦点であるが、X線源11の射出側直後に、WO2006/131235号公報等に記されたマルチスリット(線源格子)を設けることにより、X焦点を分散化してもよい。これより、高出力のX線源を用いることが可能となり、X線量が向上するため、位相微分画像の画質が向上する。この場合、マルチスリットのピッチp0は、下式(10)を満たす必要がある。この場合、距離L1は、マルチスリットから第1の格子21までの距離を表す。
【0103】
【数10】
【0104】
また、上記実施形態では、第1の格子21が入射X線を幾何光学的に投影するように構成しているが、WO2004/058070号公報等で知られているように、第1の格子21をタルボ効果が生じる構成としてもよい。第1の格子21でタルボ効果を生じさせるためには、X線の空間干渉性を高めるように、小焦点のX線光源を用いるか、上記マルチスリットを用いればよい。
【0105】
第1の格子21でタルボ効果が生じる場合には、第1の格子21の自己像(G1像)が、第1の格子21からz方向下流にタルボ距離Zmだけ離れた位置に生じるため、第1の格子21から第2の格子22までの距離L2をタルボ距離Zmとする必要がある。
【0106】
タルボ距離Zmは、第1の格子21の構成とX線のビーム形状とに依存する。第1の格子21が吸収型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(11)で表される。ここで、mは正の整数である。
【0107】
【数11】
【0108】
また、第1の格子21がX線にπ/2の位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(12)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0109】
【数12】
【0110】
また、第1の格子21がX線にπの位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(13)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0111】
【数13】
【0112】
また、第1の格子21が吸収型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(14)で表される。ここで、mは正の整数である。
【0113】
【数14】
【0114】
また、第1の格子21がX線にπ/2の位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(15)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0115】
【数15】
【0116】
そして、第1の格子21がX線にπの位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zmは、下式(16)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0117】
【数16】
【0118】
また、上記実施形態では、格子部12に第1及び第2の格子21,22の2つの格子を設けているが、第2の格子22を省略し、第1の格子21のみとすることも可能である。
【0119】
例えば、特開平2009−133823号公報に記されたX線画像検出器を用いることにより、第2の格子22を省略し、第1の格子21のみとすることが可能である。このX線画像検出器は、X線を電荷に変換する変換層と、変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極とを備えた直接変換型のX線画像検出器であり、各画素の電荷収集電極が複数の線状電極群を備える。1つの線状電極群は、一定の周期で配列された線状電極を互いに電気的に接続したものであり、他の線状電極群と互いに位相が異なるように配置されている。この線状電極群が第2の格子22として機能し、線状電極群が複数存在することにより、一度の撮影で位相の異なる複数のG2像の検出が行われる。したがって、この構成では、走査機構23を省略することが可能である。
【0120】
また、走査機構23を省略し、第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13により得られる単一の画像データに基づいて位相微分画像を生成する方法がある。この方法として、本出願人により特願2010−256241号として出願されている画素分割法がある。この画素分割法では、第1の格子21と第2の格子22とを、z方向の回りに僅かに回転させて、y方向に周期を有するモアレ縞をG2像に発生させる。X線画像検出器13により得られる単一の画像データを、該モアレ縞に対して互いに位相が異なる画素行(x方向に並ぶ画素)の群に分割し、分割された複数の画像データを、縞走査により互いに異なる複数のG2像に基づくものと見なして、上記縞走査法と同様な手順で位相微分画像を生成する。この画素分割法において、前述の強度変調信号は、単一の画像データに生じるモアレ縞の1周期分の画素値の強度変化として表される。
【0121】
さらに、画素分割法と同様に、走査機構23を省略し、第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13により得られる単一の画像データに基づいて位相微分画像を生成する方法として、WO2010/050483号公報に記載されたフーリエ変換法が知られている。このフーリエ変換法は、上記単一の画像データに対してフーリエ変換を行うことによりフーリエスペクトルを取得し、このフーリエスペクトルからキャリア周波数に対応したスペクトル(位相情報を担うスペクトル)を分離した後、逆フーリエ変換を行なうことにより位相微分画像を生成する方法である。なお、このフーリエ変換法において、前述の強度変調信号は、画素分割法の場合と同様に、単一の画像データに生じるモアレ縞の1周期分の画素値の強度変化として表される。
【0122】
本発明は、医療診断用の放射線撮影装置の他に、工業用の放射線撮影装置等に適用することが可能である。また、放射線は、X線以外に、ガンマ線等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0123】
10 X線撮影装置
12 格子部
20 X線画像検出器
21 第1の格子
21a X線吸収部
21b X線透過部
22 第2の格子
22a X線吸収部
22b X線透過部
30 画素部
31 画素電極
33 ゲート走査線
35 信号線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から射出され、被検体を透過した放射線を検出して画像データを生成する放射線検出器と、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置された格子部と、
前記画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成する位相微分画像生成部と、
前記位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出するOK/NG領域検出部と、
前記OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながら前記OK領域内の画素を順にアンラップ処理するアンラップ処理部と、
を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記被検体を配置しない状態で行われるプレ撮影において、前記位相微分画像生成部により生成された位相微分画像をオフセット画像として記憶するオフセット画像記憶部を備え、前記アンラップ処理部は、前記オフセット画像に対しても前記アンラップ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記アンラップ処理後の位相微分画像から前記アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット処理部を備えることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記アンラップ処理部は、基準点に対して互いに直交する4方向に隣接する隣接画素のうち、前記OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を同時にアンラップ処理することを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記アンラップ処理部は、基準点に対して1方向に隣接し、前記OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を1画素ずつアンラップ処理することを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記アンラップ処理部は、前記OK領域が複数存在する場合に、前記各OK領域中に前記起点を設定して前記アンラップ処理を行うことを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記格子部は、放射線源からの放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽して第2の周期パターン像を生成する第2の格子と有し、
前記放射線画像検出器は、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成することを特徴とする請求項1から6いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記格子部は、前記第1の格子または第2の格子を所定の走査ピッチで移動させ、複数の走査位置に順に設定する走査機構を備え、
前記放射線画像検出器は、前記各走査位置で前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成し、
前記位相微分画像生成部は、前記放射線画像検出器により生成される複数の画像データに基づいて位相微分画像を生成することを特徴とする請求項7に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に直交する方向に移動させることを特徴とする請求項8に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に対して傾斜する方向に移動させることを特徴とする請求項8に記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
前記位相微分画像生成部は、前記放射線検出器により得られる単一の画像データに基づいて前記位相微分画像を生成することを特徴とする請求項7に記載の放射線撮影装置。
【請求項12】
前記OK/NG領域検出部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度、振幅、ビジビリティのうち1つまたは複数の組み合わせに基づいてNG領域を検出することを特徴とする請求項8から11いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項13】
吸収画像、吸収画像の微分画像、小角散乱画像のうちいずれかを生成し、前記位相微分画像の前記NG領域を置換するNG領域画像置換部を備えることを特徴とする請求項8から12いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項14】
前記第1の格子は、吸収型格子であり、入射した放射線を幾何光学的に投影することにより前記第1の周期パターン像を生成することを特徴とする請求項7から13いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項15】
前記第1の格子は、吸収型格子または位相型格子であり、入射した放射線にタルボ効果を生じさせて前記第1の周期パターン像を生成することを特徴とする請求項7から13いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項16】
前記放射線源から放射された放射線を部分的に遮蔽して焦点を分散化するマルチスリットを備えることを特徴とする請求項1から15いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項17】
所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出し、前記OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながら前記OK領域内の画素を順にアンラップ処理することを特徴とするアンラップ処理方法。
【請求項1】
放射線源から射出され、被検体を透過した放射線を検出して画像データを生成する放射線検出器と、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置された格子部と、
前記画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成する位相微分画像生成部と、
前記位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出するOK/NG領域検出部と、
前記OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながら前記OK領域内の画素を順にアンラップ処理するアンラップ処理部と、
を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記被検体を配置しない状態で行われるプレ撮影において、前記位相微分画像生成部により生成された位相微分画像をオフセット画像として記憶するオフセット画像記憶部を備え、前記アンラップ処理部は、前記オフセット画像に対しても前記アンラップ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記アンラップ処理後の位相微分画像から前記アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット処理部を備えることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記アンラップ処理部は、基準点に対して互いに直交する4方向に隣接する隣接画素のうち、前記OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を同時にアンラップ処理することを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記アンラップ処理部は、基準点に対して1方向に隣接し、前記OK領域内で、かつアンラップ処理が行われていない隣接画素を1画素ずつアンラップ処理することを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記アンラップ処理部は、前記OK領域が複数存在する場合に、前記各OK領域中に前記起点を設定して前記アンラップ処理を行うことを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記格子部は、放射線源からの放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽して第2の周期パターン像を生成する第2の格子と有し、
前記放射線画像検出器は、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成することを特徴とする請求項1から6いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記格子部は、前記第1の格子または第2の格子を所定の走査ピッチで移動させ、複数の走査位置に順に設定する走査機構を備え、
前記放射線画像検出器は、前記各走査位置で前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成し、
前記位相微分画像生成部は、前記放射線画像検出器により生成される複数の画像データに基づいて位相微分画像を生成することを特徴とする請求項7に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に直交する方向に移動させることを特徴とする請求項8に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に対して傾斜する方向に移動させることを特徴とする請求項8に記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
前記位相微分画像生成部は、前記放射線検出器により得られる単一の画像データに基づいて前記位相微分画像を生成することを特徴とする請求項7に記載の放射線撮影装置。
【請求項12】
前記OK/NG領域検出部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度、振幅、ビジビリティのうち1つまたは複数の組み合わせに基づいてNG領域を検出することを特徴とする請求項8から11いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項13】
吸収画像、吸収画像の微分画像、小角散乱画像のうちいずれかを生成し、前記位相微分画像の前記NG領域を置換するNG領域画像置換部を備えることを特徴とする請求項8から12いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項14】
前記第1の格子は、吸収型格子であり、入射した放射線を幾何光学的に投影することにより前記第1の周期パターン像を生成することを特徴とする請求項7から13いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項15】
前記第1の格子は、吸収型格子または位相型格子であり、入射した放射線にタルボ効果を生じさせて前記第1の周期パターン像を生成することを特徴とする請求項7から13いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項16】
前記放射線源から放射された放射線を部分的に遮蔽して焦点を分散化するマルチスリットを備えることを特徴とする請求項1から15いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項17】
所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像においてアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出し、前記OK領域中に起点を設定し、この起点を基準点として隣接画素をアンラップ処理した後、アンラップ処理が行われた画素に基準点を変更しながら前記OK領域内の画素を順にアンラップ処理することを特徴とするアンラップ処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−42788(P2013−42788A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180534(P2011−180534)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]