説明

放射線撮影装置

【課題】簡易な構成で放射線に対する感度や撮影される放射線画像の画質を変更できる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】光透過性を有する袋体29を、放射線検出器20の検出領域と対向するように配置し、ポンプ44により、タンク46に貯留された液体シンチレータの袋体29への注入及び当該袋体29に注入された液体シンチレータの取り出しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、照射されたX線等の放射線を検出し、検出された放射線により表わされる放射線画像を示す電気信号を出力するFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されている。この放射線検出器は、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといったメリットがある。
【0003】
この放射線検出器には、放射線を変換する方式として種々の方式が提案されており、放射線をシンチレータで光に変換した後にフォトダイオード等で電荷に変換する間接変換方式がある。
【0004】
ところで、このシンチレータには液体のものがある。
【0005】
この液体シンチレータを用いた放射線検出器に関する技術として、特許文献1には、X線及び光を透過しない仕切板で直交方向に所定のピッチで2次元状に仕切られた複数の枠各々に液体シンチレータを流し込んでシンチレータを構成する技術が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、液体シンチレータをハウジング内に封入し、照射されたX線をハウジング内の液体シンチレータにより光に変換して検出する技術が記載されている。
【0007】
一方、特許文献3には、放射線に対する発光量を調整した複数のカラー発光シートを交換可能に構成し、複数のカラー発光シートの中から被検体に応じたカラー発光シートを選択して使用することによって、X線吸収の小さい物質からX線吸収の大きい物質まで、それぞれの物質条件に応じて適切な撮影条件を設定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−148148号公報
【特許文献2】昭56−64672号公報
【特許文献3】特開2002−360554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、放射線撮影装置は、放射線に対する感度や撮影される放射線画像の画質を変えて撮影を行いたい場合がある。例えば、標準的な画質で放射線画像の撮影を行い、検査の結果、再検査が必要な場合に、高画質な画像での撮影が必要となる場合がある。また、1枚の放射線画像の撮影を撮影する静止画撮影では、診断のため画質が重要であるが、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)では、患者の被曝量を抑えるために放射線の照射量を少なく抑えることが重要であり、放射線に対する感度が高いことが好ましい。
【0010】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、液体シンチレータを封入したハウジングを交換しないと放射線に対する感度や撮影される放射線画像の画質を変えることができない。
【0011】
また、特許文献3に記載の技術では、シート状の固体シンチレータを交換する機構を設ける必要があり、装置構成が煩雑になる。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑み、簡易な構成で放射線に対する感度や撮影される放射線画像の画質を変更できる放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の放射線撮影装置は、放射線が変換された光を検出する検出領域が設けられ、当該検出領域で受光された光により表わされる画像を撮影する撮影手段と、前記検出領域と対向するように配置され、当該検出領域と対向する対向面が少なくとも光透過性を有する袋体と、放射線が照射された際に発光する液体シンチレータが貯留されたタンクと、前記タンクに貯留された液体シンチレータの前記袋体への注入及び当該袋体に注入された液体シンチレータの取り出しを行うアクチュエータと、を備えている。
【0014】
本発明の放射線撮影装置は、放射線が変換された光を検出する検出領域が設けられた撮影手段により、当該検出領域に照射された光により表わされる画像が撮影される。
【0015】
また、本発明の放射線撮影装置は、検出領域と対向する対向面が少なくとも光透過性を有する袋体が検出領域と対向するように配置され、放射線が照射された際に発光する液体シンチレータがタンクに貯留され、アクチュエータにより、タンクに貯留された液体シンチレータの袋体への注入及び当該袋体に注入された液体シンチレータの取り出しが行われる。
【0016】
このように、本発明は、光透過性を有する袋体を撮影手段の検出領域と対向するように配置し、アクチュエータにより、タンクに貯留された液体シンチレータの袋体への注入及び当該袋体に注入された液体シンチレータの取り出しを行うという簡易な構成でシンチレータの厚さを変更できるため、放射線検出器の感度や画像特性を変更できる。
【0017】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記検出領域及び前記袋体と重なるように配置され、放射線が照射された際に発光するシート状シンチレータをさらに備えてもよい。
【0018】
また、請求項2記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記撮影手段が、放射線に対して透過性を有し、前記袋体及び前記シート状シンチレータを、撮影の際に照射される放射線が前記撮影手段を透過して到達するように配置してもよい。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記撮影手段が、放射線及び光に対して共に透過性を有し、前記袋体及び前記シート状シンチレータを、前記検出領域を挟むように配置してもよい。
【0020】
また、請求項2〜請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記シート状シンチレータが、CsIの柱状結晶を含んで構成されてもよい。
【0021】
また、本発明は、請求項6に記載の発明のように、放射線画像の画質毎に前記袋体内に貯留させる液体シンチレータの液量を示す液量情報を記憶した記憶手段と、撮影を行う放射線画像の画質の指定を受け付ける受付手段と、前記記憶手段に記憶された液量情報に基づき、前記受付手段で指定された画質に対応する液量を特定し、特定された液量の液体シンチレータが前記袋体内に貯留されるように前記アクチュエータを制御する制御手段と、をさらに備えてもよい。
【0022】
また、本発明は、請求項7に記載の発明のように、前記袋体が、前記液体シンチレータを注入するための注入口及び注入された液体シンチレータの取り出すための取出口を有するようにし、前記アクチュエータが、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影の際、前記注入口へ前記液体シンチレータを所定量ずつ注入させつつ前記取出口から液体シンチレータを当該所定量ずつ取り出すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の放射線撮影装置は、簡易な構成で放射線に対する感度や撮影される放射線画像の画質を変更できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線撮影装置の概略構成を示した側面図である。
【図2】図2(A)は貯留された液量が少ない袋体の状態を示した側面図であり、図2(B)は貯留された液量が少ない袋体の状態を示した側面図である。放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図3】実施の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図4】実施の形態に係るTFT基板の構成を概略的に示した断面図である。
【図5】実施の形態に係るTFT基板の構成を示した平面図である。
【図6】実施の形態に係る制御部の構成を示したブロック図である。
【図7】実施の形態に係る液量情報のデータ構造を模式的に示した模式図である。
【図8】第1の実施の形態に係る画質液量注入処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る液量変更処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態に係る放射線撮影装置の概略構成を示す上面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る画質液量注入処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】他の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図13】表面照射(裏面読取方式)と裏面照射(表面読取方式)を説明するための断面側面図である。
【図14】他の形態に係る放射線検出器の構成を詳細に示した断面図である。
【図15】他の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図16】他の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図17】CsIとGOSの温度と感度の関係を示すグラフである。
【図18】CsIの累積被曝量と感度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0026】
[第1の実施の形態]
図1には、本実施の形態に係る放射線撮影装置10の概略構成を示す構成図が示されている。
【0027】
本実施形態に係る放射線撮影装置10は、間接変換型の放射線検出器20を備えている。
【0028】
間接変換型の放射線検出器20は、光を検出する検出領域にフォトダイオードがマトリクス状に形成されたTFT基板26を備えており、TFT基板26の、撮影の際に放射線Xが照射される照射側にシート状のシンチレータ28が配置されている。放射線検出器20は、放射線Xをシンチレータ28で一旦、光に変換し、シンチレータ28で変換された光をTFT基板26のフォトダイオードで検出することにより、放射線画像を検出する。
【0029】
この放射線検出器20上には、TFT基板26の検出領域に対向するように、光透過性を有する袋体29が配置されている。袋体29はポンプ44に接続され、ポンプ44はタンク46に接続されている。タンク46には放射線が照射された際に発光する液体シンチレータが貯留されている。ポンプ44は、制御部50に接続されており、制御部50からの制御により動作し、タンク46に貯留された液体シンチレータの袋体29への注入、及び袋体29に注入された液体シンチレータの取り出しを行う。
【0030】
袋体29は、内部に貯留された液体シンチレータの液量に応じて厚さが変化し、貯留された液量が少ない場合、図2(A)に示すように薄くなり、貯留された液量が多い場合、図2(B)に示すように厚くなる。
【0031】
図3には、本実施形態に係る放射線検出器20の構成を模式的に示した断面図が示されており、図5には、放射線検出器20の構成を示す平面図が示されている。
【0032】
図3に示すように、放射線検出器20は、絶縁性基板300に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などのスイッチ素子24が形成されたTFT基板26を備えている。
【0033】
このTFT基板26上には、入射される放射線を光に変換するシンチレータ28が設けられている。このシンチレータ28としては、例えば、CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)を用いることができる。なお、シンチレータ28は、これらの材料に限られるものではない。
【0034】
シンチレータ28が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器20によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0035】
シンチレータ28に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmにあるCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0036】
シンチレータ28は、例えば、CsI(Tl)等の柱状結晶で形成しようとする場合、蒸着基板への蒸着によって形成されてもよい。このように蒸着によってシンチレータ28を形成する場合、蒸着基板は、X線の透過率、コストの面からAlの板がよく使用されるがこれに限定されるものではない。なお、シンチレータ28としてGOSを用いる場合、蒸着基板を用いずにTFT基板26の表面にGOSを塗布することにより、シンチレータ28を形成してもよい。
【0037】
絶縁性基板300としては、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものあれが何れでもよく、例えば、ガラス基板、透明セラミック基板、光透過性の樹脂基板を用いることができる。なお、絶縁性基板300は、これらの材料に限られるものではない。
【0038】
シンチレータ28とTFT基板26との間には、シンチレータ28によって変換された光が入射されることにより電荷を発生する光導電層30が形成されている。この光導電層30のシンチレータ28側の表面には、光導電層30にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極32が形成されている。
【0039】
TFT基板26には、光導電層30で発生した電荷を収集する電荷収集電極34が形成されている。TFT基板26では、各電荷収集電極34で収集された電荷が、スイッチ素子24によって読み出される。
【0040】
光導電層30は、シンチレータ28から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光導電層30は、光が照射されることにより電荷を発生する材料により形成すればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料などにより形成することができる。アモルファスシリコンを含む光導電層30であれば、幅広い吸収スペクトルを持ち、シンチレータ28による発光を吸収することができる。有機光電変換材料を含む光導電層30であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ28による発光以外の電磁波が光導電層30に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光導電層30で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0041】
光導電層30を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ28で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ28の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ28の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ28から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ28の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0042】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ28の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光導電層30で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0043】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器20に適用可能な光導電層30について具体的に説明する。
【0044】
本発明に係る放射線検出器20における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電荷収集電極34,バイアス電極32と、該電荷収集電極34,バイアス電極32間に挟まれた光導電層30とを含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ねもしくは混合により形成することができる。
【0045】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0046】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0047】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0048】
この有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料、及び光導電層30の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。なお、光導電層30は、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0049】
各画素部を構成するセンサ部36は、少なくとも電荷収集電極34、光導電層30、及びバイアス電極32を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0050】
電子ブロッキング膜は、電荷収集電極34と光導電層30との間に設けることができ、電荷収集電極34とバイアス電極32間にバイアス電圧を印加したときに、電荷収集電極34から光導電層30に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0051】
電子ブロッキング膜には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0052】
実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光導電層30の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光導電層30の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0053】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部36の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0054】
正孔ブロッキング膜は、光導電層30とバイアス電極32との間に設けることができ、電荷収集電極34とバイアス電極32間にバイアス電圧を印加したときに、バイアス電極32から光導電層30に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0055】
正孔ブロッキング膜には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0056】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部36の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0057】
実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光導電層30の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光導電層30の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0058】
なお、光導電層30で発生した電荷のうち、正孔がバイアス電極32に移動し、電子が電荷収集電極34に移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。又、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0059】
図4には、スイッチ素子24の構成が概略的に示されている。
【0060】
TFT基板26は、電荷収集電極34に対応して、絶縁性基板300上に電荷収集電極34に移動した電荷を電気信号に変換して出力するスイッチ素子24が形成されている。スイッチ素子24の形成された領域は、平面視において電荷収集電極34と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部におけるスイッチ素子24とセンサ部36とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器20(画素部)の平面積を最小にするために、スイッチ素子24の形成された領域が電荷収集電極34によって完全に覆われていることが望ましい。
【0061】
スイッチ素子24は、ゲート電極320、ゲート絶縁膜322、及び活性層(チャネル層)324が積層され、さらに、活性層324上にソース電極326とドレイン電極328が所定の間隔を開けて形成されている。
【0062】
ドレイン電極328は、絶縁性基板300と電荷収集電極34との間に設けられた絶縁膜319を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する電荷収集電極34と電気的に接続されている。これにより、電荷収集電極34で捕集された電荷をスイッチ素子24に移動させることができる。
【0063】
活性層324は、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層324を構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0064】
活性層324を構成可能な非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層324を構成可能な非晶質酸化物は、これらに限定されるものではない。
【0065】
活性層324を構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0066】
スイッチ素子24の活性層324を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、スイッチ素子24におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0067】
また、活性層324をカーボンナノチューブで形成した場合、スイッチ素子24のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低いスイッチ素子24を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層324を形成する場合、活性層324に極微量の金属性不純物が混入するだけで、スイッチ素子24の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0068】
ここで、上述した非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板300としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0069】
また、基板300には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0070】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために,透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板300を形成してもよい。
【0071】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く絶縁性基板300を形成できる。
【0072】
本実施の形態では、絶縁性基板300上に、スイッチ素子24、センサ部36、透明な平坦化層38を順に形成し、当該絶縁性基板300上に光吸収性の低い接着樹脂等を用いた接着層39でシンチレータ28を貼り付けることにより放射線検出器20を形成している。以下、平坦化層38まで形成された絶縁性基板300をTFT基板26と称する。
【0073】
図5に示すように、TFT基板26には、バイアス電極32、光導電層30、電荷収集電極34により構成され、光が入射されることにより電荷を発生するフォトダイオードとして機能するセンサ部36と、センサ部36に蓄積された電荷を読み出すためのスイッチ素子24と、を含んで構成される画素37が一定方向(図5の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図5の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0074】
また、TFT基板26には、一定方向(行方向)に延設され各スイッチ素子24をオンオフさせるための複数本のゲート配線40と、交差方向(列方向)に延設されオン状態のスイッチ素子24を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線42が設けられている。
【0075】
なお、TFT基板26上には、TFT基板26上を平坦化するための平坦化層38(図3参照)が形成されている。また、TFT基板26とシンチレータ28との間であって、平坦化層38上には、シンチレータ28をTFT基板26に接着するための接着層39が、形成されている。
【0076】
図6には、本実施の形態に係る制御部50の構成を示すブロック図が示されている。
【0077】
同図に示すように、制御部50は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)100と、各種データを一時的に記憶するRAM102と、装置全体を制御する制御プログラムや後述する画質液量注入処理プログラム、液量変更処理プログラムを含む各種プログラムが予め記憶されたROM104と、各種情報を記憶するHDD(ハード・ディスク・ドライブ)105と、を備えている。
【0078】
また、制御部50は、各種の操作画面を表示する液晶表示パネル等の表示装置106に接続されて当該表示装置106を制御する表示制御部108と、ユーザからの各種の操作指示が入力される操作パネル110に接続されて当該操作パネル110に対する操作を検出する操作入力検出部112と、ネットワークNETに接続され、ネットワークNETを介して外部装置との間で通信データの送受信を行う通信I/F(インタフェース)114と、ポンプ44の駆動を制御するポンプ制御部116と、を備えている。
【0079】
CPU100、RAM102、ROM104、HDD105、表示制御部108、操作入力検出部112、通信I/F114、及びポンプ制御部116は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU100は、RAM102、ROM104、及びHDD105へのアクセスと、表示制御部108を介した表示装置106への操作画面、各種メッセージ等の各種情報の表示の制御と、通信I/F部114を介した外部装置との情報の送受信の制御と、ポンプ制御部116を介したポンプ44の駆動の制御と、を各々行うことができる。また、CPU100は、操作入力検出部112により検出された操作情報に基づく、操作パネル110に対する操作内容を把握することができる。
【0080】
ところで、シンチレータは、厚くなるほど放射線に対して発光量が多く感度が高くなるが、厚くなるほどシンチレータ内で光が拡散されるため、画像がぼやけてしまう。
【0081】
本実施形態に係る放射線撮影装置10は、シート状のシンチレータ28の厚さが画質重視した撮影用に調整されており、放射線に対する感度を高くする場合、袋体29内に液体シンチレータを貯留させて放射線に対する発光量を多くする。
【0082】
また、本実施形態に係る放射線撮影装置10は、袋体29内に貯留させた液体シンチレータの液量と画質の対応を予め調べた結果に基づいて、図7に示すように、撮影を行う画質毎に、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を液量情報としてHDD105に記憶している。
【0083】
また、本実施形態に係る放射線撮影装置10では、操作パネル110から袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を制御することも可能とされている。
【0084】
次に、本実施の形態に係る放射線撮影装置10の作用について説明する。
【0085】
撮影者は、放射線画像の撮影を行う場合、操作パネル110に対して、撮影を行う放射線画像の画質の指定を行う。
【0086】
放射線撮影装置10は、操作パネル110に対して画質の指定が行われると、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を指定された画質が得られる液量に調整する。
【0087】
図8には、CPU100により実行される画質液量注入処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはROM104の所定の領域に予め記憶されている。
【0088】
ステップS10では、HDD105に記憶された液量情報に基づき、操作パネル110に対して指定された画質に対応する液量を特定する。
【0089】
次のステップS12では、ポンプ44を制御して、上記ステップ10で特定した液量の液体シンチレータを袋体29内に貯留させ、処理終了となる。
【0090】
また、撮影者は、画質を微調整したい場合、操作パネル110に対して、感度向上又は画質向上を指示する所定の画質変更指示操作を行う。
【0091】
放射線撮影装置10は、操作パネル110に対して画質変更指示操作が行われると、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を変更する。
【0092】
図9には、CPU100により実行される液量変更処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはROM104の所定の領域に予め記憶されている。
【0093】
ステップS50では、画質変更の指示が感度向上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合は、ステップS52へ移行し、否定判定となった場合はステップS54へ移行する。
【0094】
ステップS52では、ポンプ44を制御して袋体29に液体シンチレータを所定量注入し、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を所定量増加させ、処理終了となる。
【0095】
一方、ステップS52では、画質変更の指示が画質向上であるものとして、ポンプ44を制御して袋体29から液体シンチレータを所定量取出し、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を所定量減少させ、処理終了となる。
【0096】
このように本実施の形態に係る放射線撮影装置10は、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を変えることにより、シート状のシンチレータ28及び袋体29内の液体シンチレータによりシンチレータ全体の厚さを変えることができるため、放射線検出器20の感度や画像特性を変更することができる。
【0097】
また、動画撮影では、撮影される画像が多少ノイジーであっても影響は少なく、患者の被曝量を低く抑えることがより重要である。本実施の形態に係る放射線撮影装置10は、放射線検出器20に袋体29を積層させて、袋体29に液体シンチレータを貯留させることにより感度が向上するため、患者の被曝量を低く抑えることができる。
【0098】
[第2の実施の形態]
図10には、第2の実施の形態に係る放射線撮影装置10の概略構成を示す構成図が示されている。なお、図10は、放射線撮影装置10を上方向から見た構成図である。第1の実施の形態(図1)と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0099】
第2の実施の形態に係る袋体29は、液体シンチレータを注入するための注入口29A及び注入された液体シンチレータの取り出すための取出口29Bを有している。
【0100】
注入口29A及び取出口29Bはポンプ44に接続されている。
【0101】
また、第2の実施の形態に係る放射線撮影装置10は、液体シンチレータを冷却するための冷却機構48を有している。タンク46に貯留された液体シンチレータは、冷却機構48を介してポンプ44に供給される。ポンプ44は冷却機構48から供給される液体シンチレータを注入口29Aへ注入し、取出口29Bから取り出した液体シンチレータをタンク46へ排出する。
【0102】
すなわち、第2の実施の形態に係る放射線撮影装置10は、液体シンチレータを循環させることが可能とされている。
【0103】
また、放射線撮影装置10は、1枚の放射線画像の撮影を撮影する静止画撮影と、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影が可能とされている。
【0104】
撮影者は、放射線画像の撮影を行う場合、操作パネル110に対して、静止画撮影又は透視撮影を指定し、さらに撮影を行う放射線画像の画質の指定を行う。
【0105】
放射線撮影装置10は、操作パネル110に対して画質の指定が行われると、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を指定された画質が得られる液量に調整する。また、放射線撮影装置10は、透視撮影の場合、注入口29Aへ液体シンチレータを所定量ずつ注入させつつ取出口29Bから液体シンチレータを当該所定量ずつ取り出して、袋体29内の液体シンチレータの循環を行う。
【0106】
撮影者は、透視撮影中、画質を微調整したい場合、操作パネル110に対して、感度向上又は画質向上を指示する所定の画質変更指示操作を行う。
【0107】
図11には、第2の実施の形態に係る画質液量注入処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、第1の実施の形態(図8参照)と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0108】
次のステップS14では、操作パネル110に対して透視撮影が指定されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS16へ移行し、否定判定となった場合は処理終了となる。
【0109】
ステップS16では、ポンプ44から所定量ずつ液体シンチレータを注入口29Aへ注入すると共に、取出口29Bから当該所定量ずつ取り出しを行うように液体シンチレータの循環させるポンプ44の制御を開始する。これにより、冷却機構48により冷却された液体シンチレータが袋体29に順次供給されるので、放射線検出器20を冷却できる。また、注入口29Aへ液体シンチレータを所定量ずつ注入すると共に、取出口29Bから液体シンチレータを同じ量ずつ取り出すことにより、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を一定量に維持できる。
【0110】
ステップS18では、操作パネル110に対して画質変更の指示がされたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS20へ移行し、否定判定となった場合はステップS26へ移行する
ステップS20では、画質変更の指示が感度向上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合は、ステップS22へ移行し、否定判定となった場合はステップS24へ移行する。
【0111】
ステップS22では、ポンプ44を制御して取出口29Bからの液体シンチレータの取出しを一時的に停止させ、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を所定量増加させ、処理終了となる。
【0112】
一方、ステップS24では、画質変更の指示が画質向上であるものとして、ポンプ44を制御して注入口29Aへ液体シンチレータの注入を一時的に停止させ、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を所定量減少させる。
【0113】
次のステップS26では、透視撮影が終了したか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップS28へ移行し、否定判定となった場合は再度ステップS18へ移行する。
【0114】
ステップS28では、液体シンチレータの循環させるポンプ44の制御を終了して処理終了となる。
【0115】
このように本実施の形態に係る放射線撮影装置10は、透視撮影時に撮影を繰り返すため発熱量が多くなるが、液体シンチレータを循環させて冷却を行うことにより、放射線検出器20の温度上昇を抑制できる。
【0116】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0117】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0118】
なお、上記各実施の形態の放射線検出器20は、図1に示すように、TFT基板26の撮影の際に放射線Xが照射される照射側に、シート状のシンチレータ28及び袋体29を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、TFT基板26を放射線に対して透過性を有するように形成し、図12に示すように、シート状のシンチレータ28及び袋体29を、撮影の際に照射される放射線XがTFT基板26を透過して到達するように配置してもよい。
【0119】
ここで、放射線検出器20は、図13に示すように、シンチレータ28が接着された表側から放射線が照射(「表面照射」、「裏面読取方式」(所謂PSS(Penetration Side Sampling)方式)ともいう。)された場合、シンチレータ28の上面側(TFT基板26の反対側)でより強く発光し、シンチレータ28が接着された表側されていない裏側から放射線が照射(「裏面照射」、「表面読取方式」(所謂ISS(Irradiation Side Sampling)方式))ともいう。)された場合、TFT基板26を透過した放射線がシンチレータ28に入射してシンチレータ28のTFT基板26側がより強く発光する。各光導電層30には、シンチレータ28で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器20は、表側から放射線が照射された場合の方が裏側から放射線が照射された場合よりも、放射線がTFT基板26を透過しないため、放射線に対する感度を高く設計することが可能であり、また、裏側から放射線が照射された場合の方が表側から放射線が照射された場合よりも各光導電層30に対するシンチレータ28の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。このため、図12に示すように、シンチレータ28及び袋体29を配置した場合、放射線画像の分解能が高くなる。
【0120】
また、放射線検出器20は、光導電層30を有機光電変換材料により構成した場合、光導電層30で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器36は、表面読取方式により放射線がTFT基板26を透過する場合でも光導電層30による放射線の吸収量を少ないため、放射線Xに対する感度の低下を抑えることができる。表面読取方式では、放射線がTFT基板26を透過してシンチレータ28に到達するが、このように、TFT基板26の光導電層30を有機光電変換材料により構成した場合、光導電層30での放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができるため、表面読取方式に適している。
【0121】
また、スイッチ素子24の活性層324を構成する非晶質酸化物や光導電層30を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板300を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板300は放射線の吸収量を少ないため、表面読取方式により放射線がTFT基板26を透過する場合でも、放射線Xに対する感度の低下を抑えることができる。
【0122】
また、例えば、放射線撮影装置10の筐体内の放射線Xが照射される照射面部分に放射線検出器36をTFT基板26が照射面側となるように貼り付けるものとし、基板300を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器36自体の剛性が高くいため、筐体の照射面部分を薄く形成することができる。また、基板300を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器36自体が可撓性を有するため、照射面に衝撃が加わった場合でも放射線検出器36が破損しづらい。
【0123】
図14には、シンチレータ28をCsI(Tl)の柱状結晶とし、TFT基板26側から放射線Xが入射する表面読取方式で放射線検出器20を配置し、その放射線検出器20のシンチレータ28上に袋体29を配置した場合が示されている。
【0124】
シンチレータ28は、光透過性の樹脂(例えば、耐熱性の透明ポリイミドなど)による蒸着基板400上にCsI(Tl)を蒸着させて形成する。蒸着基板400上には、蒸着によってCsI(Tl)の非柱状部が形成され、その上に柱状部が形成される。図14では、シンチレータ28の柱状部側の面とTFT基板26とを貼り合わせており、放射線検出器20の蒸着基板400側に面に袋体29を積層している。TFT基板26は、例えば、絶縁性基板300としてプラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用い、センサ部36を有機光電変換材料を用いて形成し、活性層324として非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブを用いてスイッチ素子24を形成する。これにより、放射線検出器20を軽量、薄型化できるため、袋体29を積層させた場合でも全体を軽量、薄型にできる。なお、図14では、TFT基板26に対して放射線Xが入射する反対側にシンチレータ28及び袋体29を配置したが、TFT基板26に対して放射線Xが入射側に袋体29を配置してもよい。例えば、放射線Xの入射側から順に袋体29、TFT基板26、シンチレータ28、蒸着基板400と配置される場合、蒸着基板400は光透過性を有する必要はない。このように配置することにより、袋体29内の液体シンチレータとTFT基板26との距離が近くなるため、感度を向上させることができる。
【0125】
また、TFT基板26を放射線に対して透過性を有する共に、検出領域に設けられたセンサ部36を表裏の両側で光に対して感度を有するように形成し、シート状のシンチレータ28及び袋体29を、検出領域を挟むように配置してもよい。シート状のシンチレータ28及び袋体29は何れを表側、裏側としてもよい。図15には、シート状のシンチレータ28をTFT基板26の裏側に配置し、袋体29をTFT基板26の表側に配置した例が示されている。
【0126】
また、上記各実施の形態では、放射線検出器20にシート状のシンチレータ28を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シート状のシンチレータ28を設けずに、袋体29内に貯留させた液体シンチレータのみで放射線の光への変換を行うようにしてもよい。この場合、液量情報には、シート状のシンチレータ28を設けていない放射線検出器20での袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量と画質の対応を予め調べ、画質の対応する液量を記憶させればよい。袋体29は、表側、裏側の何れに配置されもよい。図16には、袋体29をTFT基板26の裏側に配置した例が示されている。
【0127】
また、上記第2の実施の形態では、透視撮影の際に、撮影中、液体シンチレータを循環させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、静止撮影時も液体シンチレータを循環させるようにしてもよい。
【0128】
また、上記第2の実施の形態では、冷却機構48により液体シンチレータを冷却する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、タンク46に貯留される液体シンチレータの液量が多く、タンク46で液体シンチレータを十分に冷却できる場合は冷却機構48設けなくてもよい。
【0129】
また、上記各実施の形態では、画質変更指示操作を操作パネル110に対して行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、透視撮影などにおいては、リアルタイムで撮影画像をモニタできるので、術者がモニタ表示を見ながら、例えばフットスイッチなどを用いて袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を随時を制御できる構成にすることが望ましい。
【0130】
また、上記各実施の形態では、撮影を行う画質毎に、袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を液量情報として記憶させた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、撮影部位毎に、当該撮影部位の撮影に適した画質が得られる液量を液量情報として記憶してもよい。
【0131】
また、上記各実施の形態では、操作パネル110に対して画質の指定を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、通信I/F114を介して外部装置から画質が指定された撮影オーダを受信するもとした場合、当該撮影オーダで指定された画質で袋体29内に貯留させる液体シンチレータの液量を特定するものとしてもよい。
【0132】
また、上記各実施の形態の袋体29は、全面が光透過性を有する必要はなく、放射線検出器20の検出領域と対向する対向面が少なくとも光透過性を有すればよく、対向面の反対となる面は遮光されていることが好ましい。これにより、外部からの光の入射を防止する点、及び発生した光の外部への散乱を防止できる。
【0133】
また、上記各実施の形態では、袋体29への液体シンチレータの注入、及び取り出しをポンプ44で行う場合について説明したが、袋体29への液体シンチレータの注入、及び取り出しができれば何れの機構でもよい。
【0134】
また、シンチレータ28として用いられるCsIは、図17に示すように、温度変化により感度が変化し、例えば、1度温度の上昇により約0.3%感度が低下する。一方、GOSは、温度変化による感度変化はほとんど発生しない。
【0135】
放射線撮影装置10は、撮影を行うことにより各種回路や各素子が発熱する。特に、動画撮影は、撮影時間が長時間となるため、発熱量が大きくなる。このため、シンチレータ28としてCsIを用いた放射線撮影装置10では、動画撮影に各種回路や各素子からの熱によりシンチレータ28の感度が低下する場合がある。撮影者は、シンチレータ28の感度が低下した際に診断に必要な画質を維持しようとした場合、照射する放射線の線量を増加させるが、線量を増加させた場合、患者への被曝量も増加してしまう。そこで、放射線検出器20に袋体29を積層させて、袋体29に液体シンチレータを貯留させることにより、袋体29内の液体シンチレータにより放射線検出器20を冷却することができるため、シンチレータ28の感度の低下を抑制できる。特に、第2の実施の形態に係る放射線撮影装置10のように袋体29に液体シンチレータを循環させるものとした場合、シンチレータ28の感度の低下をより抑制できる。このように、シンチレータ28の感度の低下を抑制することにより、患者への被曝量の増加を抑制することができる。
【0136】
また、CsIは、図18に示すように、連続して撮影が行われて累積被曝量の増加と共に感度が低下し、放射線が照射されない状態で維持されると低下した感度が回復する。動画撮影は、撮影時間が長時間となり、また、動画撮影中に静止画撮影を頻繁に行った場合、静止画撮影の放射線の照射量は動画撮影の1フレームの10〜1000倍程度であるため、シンチレータ28は累積被曝量の増加の増加と共に感度が低下する。そこで、放射線検出器20に袋体29を積層させて、袋体29に液体シンチレータを貯留させることにより、シンチレータ28の感度低下を袋体29に貯留された液体シンチレータで補うことができる。これにより、撮影者は、診断に必要な画質を維持するために照射する放射線の線量を増加させる必要が無くなるため、患者への被曝量の増加を抑制することができる。
【0137】
その他、上記実施の形態で説明した放射線撮影装置10及び放射線検出器20の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0138】
10 放射線撮影装置
20 放射線検出器
26 TFT基板(撮影手段)
28 シンチレータ
29 袋体
29B 取出口
29A 注入口
44 ポンプ(アクチュエータ)
46 タンク
50 制御部
100 CPU(制御手段)
105 HDD(記憶手段)
110 操作パネル(受付手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が変換された光を検出する検出領域が設けられ、当該検出領域で受光された光により表わされる画像を撮影する撮影手段と、
前記検出領域と対向するように配置され、当該検出領域と対向する対向面が少なくとも光透過性を有する袋体と、
放射線が照射された際に発光する液体シンチレータが貯留されたタンクと、
前記タンクに貯留された液体シンチレータの前記袋体への注入及び当該袋体に注入された液体シンチレータの取り出しを行うアクチュエータと、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記検出領域及び前記袋体と重なるように配置され、放射線が照射された際に発光するシート状シンチレータをさらに備えた
請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記撮影手段は、放射線に対して透過性を有し、
前記袋体及び前記シート状シンチレータを、撮影の際に照射される放射線が前記撮影手段を透過して到達するように配置した
請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記撮影手段は、放射線及び光に対して共に透過性を有し、
前記袋体及び前記シート状シンチレータを、前記検出領域を挟むように配置した
請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記シート状シンチレータは、CsIの柱状結晶を含んで構成された
請求項2〜請求項4の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
放射線画像の画質毎に前記袋体内に貯留させる液体シンチレータの液量を示す液量情報を記憶した記憶手段と、
撮影を行う放射線画像の画質の指定を受け付ける受付手段と、
前記記憶手段に記憶された液量情報に基づき、前記受付手段で指定された画質に対応する液量を特定し、特定された液量の液体シンチレータが前記袋体内に貯留されるように前記アクチュエータを制御する制御手段と、
をさらに備えた請求項1〜請求項5の何れか1記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記袋体は、前記液体シンチレータを注入するための注入口及び注入された液体シンチレータの取り出すための取出口を有し、
前記アクチュエータは、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影の際、前記注入口へ前記液体シンチレータを所定量ずつ注入させつつ前記取出口から液体シンチレータを当該所定量ずつ取り出しを行う
請求項1〜請求項6の何れか1記載の放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−203237(P2011−203237A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277137(P2010−277137)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】