説明

放射線撮影装置

【課題】曝射回数を抑えながらも鮮明な位相画像を得ることを可能とする。
【解決手段】X線源11とX線画像検出器20との間に第1及び第2の格子21,22が対向配置されている。移動機構23は、第2の格子22を、格子線に直交する方向に格子ピッチの半分に相当する距離だけ離れた第1の位置と第2の位置とに移動させる。画像平均部14aは、第1の位置でX線画像検出器20により生成された第1の画像データと、第2の位置でX線画像検出器20により生成された第2の画像データとを平均することにより吸収画像を生成する。減算処理部14bは、第1の画像データから吸収画像を減算することにより表示用画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子を用いて位相イメージングを行う放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線、例えばX線は、物質を構成する元素の原子番号と、物質の密度及び厚さとに依存して減衰するといった特性を有することから、被検体の内部を透視するためのプローブとして用いられている。X線を用いた撮影は、医療診断や非破壊検査等の分野において広く普及している。
【0003】
一般的なX線撮影装置では、X線を放射するX線源とX線を検出するX線画像検出器との間に被検体を配置して、被検体の透過像を撮影する。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射されたX線は、X線画像検出器までの経路上に存在する物質の特性(原子番号、密度、厚さ)の差異に応じた量の減衰(吸収)を受けた後、X線画像検出器の画素に入射する。この結果、被検体のX線吸収像がX線画像検出器により検出され画像化される。X線画像検出器としては、X線増感紙とフイルムとの組み合わせや輝尽性蛍光体のほか、半導体回路を用いたフラットパネル検出器(FPD:Flat Panel Detector)が広く用いられている。
【0004】
しかし、X線吸収能は原子番号が小さい元素からなる物質ほど低くなるため、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線吸収像に十分な濃淡(コントラスト)が得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線吸収能の差が小さいため、コントラストが得られにくい。
【0005】
近年、被検体のX線吸収能の違いによるX線の強度変化に代えて、被検体の屈折率の違いによるX線の位相変化に基づいた位相コントラスト画像を得るX線位相イメージングの開発が進められている。この位相変化に基づいたX線位相イメージングでは、X線吸収能が低い弱吸収物体であっても高コントラストの画像を取得することができる。
【0006】
このようなX線位相イメージングを可能とするX線撮影装置として、X線源とX線画像検出器との間に、第1及び第2の格子を所定の間隔で平行に配置し、X線源から第1及び第2の格子を通過することにより生成されるX線像をX線画像検出器で撮影することにより位相コントラス画像を取得するX線撮影装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0007】
特許文献1,2に記載のX線撮影装置では、第1の格子に対して第2の格子を、格子方向にほぼ垂直な方向に、格子ピッチよりも小さい所定量ずつ相対的に並進移動させながら、並進移動を行うたびに撮影を行って画像データを生成し、一連の撮影の結果得られる複数の画像データに基づいて、被検体との相互作用によって生じたX線の位相変化量を検出して位相微分画像を生成する縞走査法が行われる。この位相微分画像に基づいて被検体の位相コントラスト画像を取得することができる。
【0008】
特許文献1には、位相微分画像や位相コントラスト画像の他に、第1及び第2の格子を固定したまま一回の撮影で得られる単一の画像データに基づく画像を表示用画像としてもよいことが記載されている。同様に、特許文献2には、上記単一の画像データに基づく画像にオフセット補正等を施したものを表示用画像とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2004/058070号公報
【特許文献2】WO2008/102654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2に記載のように単一の画像データに基づく画像を表示用画像として用いることは、曝射回数を低減するうえで有用であるが、被検体のエッジに対応する部分が不鮮明であり視認性が悪いといった点がトレードオフとなる。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、曝射回数を抑えながらも鮮明な位相画像を得ることを可能とする放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の放射線撮影装置は、放射線源から放射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽することにより第2の周期パターン像を生成する第2の格子と、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成する放射線画像検出器と、被検体の吸収画像を生成する吸収画像生成手段と、前記画像データから前記吸収画像を減算して表示用画像とする減算処理部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
前記吸収画像生成手段は、前記第1の格子または前記第2の格子を、格子線に直交する方向に格子ピッチの半分に相当する距離だけ離れた第1の位置と第2の位置とに移動させる移動機構と、前記第1の位置で前記放射線画像検出器により生成された第1の画像データと、前記第2の位置で前記放射線画像検出器により生成された第2の画像データとを平均することにより吸収画像を生成する画像平均部と、からなる。
【0014】
前記吸収画像生成手段は、前記第1及び第2の格子を、前記放射線源と前記放射線画像検出器との間から退避させる退避装置と、前記第1及び第2の格子を前記放射線源と前記放射線画像検出器との間から退避させた状態で前記放射線画像検出器により画像データを生成させる制御部と、からなるものであってもよい。
【0015】
本発明の放射線撮影装置は、被検体を配置しない状態で前記放射線画像検出器により生成された画像データを補正画像として記憶する補正画像記憶部と、前記表示用画像から前記補正画像を減算する補正処理部と、を備える。
【0016】
前記第1の格子は、吸収型格子であり、入射した放射線を前記第2の格子に幾何光学的に投影することにより前記第1の周期パターン像を生成するものである。
【0017】
前記第1の格子は、吸収型格子または位相型格子であり、入射した放射線にタルボ効果を生じさせ前記第1の周期パターン像を生成するものであってもよい。
【0018】
本発明の放射線撮影装置は、前記放射線源から放射された放射線を部分的に遮蔽して焦点を分散化するマルチスリットを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1及び第2の格子を介して撮影を行うことにより得られた単一の画像データから吸収画像を減算して表示用画像とするので、曝射回数を抑えながらも鮮明な位相画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】X線撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図2】X線画像検出器の構成を示す模式図である。
【図3】第1及び第2の格子の構成を示す概略側面図である。
【図4】第2の格子の移動量に対する画素値の変化を例示するグラフである。
【図5】第2の実施形態のX線撮影装置に用いられる退避装置を示す図である。
【図6】第3の実施形態のX線撮影装置に用いられる画像処理部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
図1において、X線撮影装置10は、X線源11、撮影部12、メモリ13、画像処理部14、画像記録部15、撮影制御部16、コンソール17、及びシステム制御部18を備えている。X線源11は、例えば、回転陽極型のX線管と、X線の照射野を制限するコリメータとを有し、被検体Hに向けてX線を放射する。
【0022】
撮影部12は、X線画像検出器20、第1及び第2の格子21,22、及び移動機構23を備える。第1及び第2の格子21,22は、吸収型格子であり、X線照射方向であるz方向に関してX線源11に対向配置されている。X線源11と第1の格子21との間には、被検体Hが配置可能な間隔が設けられている。X線画像検出器20は、例えば、半導体回路を用いたフラットパネル検出器であり、第2の格子22の背後に、検出面20aがz方向に直交するように配置されている。
【0023】
第1の格子21は、z方向に直交する格子面内の一方向であるy方向に延伸された複数のX線吸収部21a及びX線透過部21bを備えている。X線吸収部21a及びX線透過部21bは、z方向及びy方向に直交するx方向に沿って交互に配列されており、縞状のパターンを形成している。第2の格子22は、第1の格子21と同様にy方向に延伸され、かつx方向に沿って交互に配列された複数のX線吸収部22a及びX線透過部22bを備えている。X線吸収部21a,22aは、金(Au)、白金(Pt)等のX線吸収性を有する金属からなる。X線透過部21b,22bは、シリコン(Si)や樹脂等のX線透過性を有する材料からなる。
【0024】
第1の格子21は、X線源11から放射されたX線を部分的に通過させて第1の周期パターン像(以下、G1像という)を生成する。第2の格子22は、第1の格子21により生成されたG1像を部分的に透過させて第2の周期パターン像(以下、G2像という)を生成する。G1像は、第2の格子22の格子パターンとほぼ一致する。
【0025】
移動機構23は、圧電素子等のアクチュエータからなり、第2の格子22をx方向に並進移動させ、第1の格子21に対する第2の格子22の相対位置を変更する。具体的には、移動機構23は、第2の格子22を、第1の位置と、第1の位置からx方向に格子ピッチの半分に相当する距離だけずれた第2の位置との間で移動させる。
【0026】
X線画像検出器20は、第2の格子22が第1の位置の場合と、第2の位置の場合とにおいて生成されるG2像をそれぞれ検出して画像データを生成する。以下、第2の格子22が第1の位置の場合に生成される画像データを第1の画像データ、第2の格子22が第2の位置の場合に生成される画像データを第2の画像データという。
【0027】
メモリ13は、X線画像検出器20から読み出された第1及び第2の画像データを一時的に記憶する。画像処理部14は、画像平均部14aと減算処理部14bとを備える。画像平均部14aは、第1の画像データと第2の画像データとを画素ごとに平均することにより吸収画像を生成する。減算処理部14bは、第1の画像データから吸収画像を画素ごとに減算することにより表示用画像を生成する。画像記録部15は、表示用画像を記録する。撮影制御部16は、X線源11及び撮影部12の制御を行う。
【0028】
コンソール17は、撮影条件の設定や撮影実行指示等の操作を可能とする操作部17aと、撮影情報や表示用画像等の表示を行うモニタ17bを備えている。システム制御部18は、操作部17aから入力される信号に応じて各部を統括的に制御する。
【0029】
図2において、X線画像検出器20は、入射X線によりアモルファスセレン(a−Se)等の半導体膜に生じた電荷を収集する画素電極31と、画素電極31によって収集された電荷を読み出すためのTFT(Thin Film Transistor)32とを備えた画素30が2次元状に多数配列されたものである。また、X線画像検出器20は、画素30の行ごとに設けられたゲート走査線33と、各ゲート走査線33にTFT32をオンオフするための走査信号を付与する走査回路34と、画素30の列ごとに設けられた信号線35と、信号線35を介して画素30から電荷を読み出し、画像データに変換して出力する読み出し回路36とから構成されている。なお、各画素30の詳細な層構成については、特開2002−26300号公報に記載されている層構成と同様である。
【0030】
読み出し回路36は、積分アンプ、A/D変換器、補正回路(いずれも図示せず)等により構成されている。積分アンプは、各画素30から信号線35を介して出力された電荷を積分して画像信号を生成する。A/D変換器は、積分アンプにより生成された画像信号を、デジタル形式の画像データに変換する。補正回路は、画像データに対して、暗電流補正、ゲイン補正、及びリニアリティ補正等を行い、補正後の画像データをメモリ13に入力する。
【0031】
X線画像検出器20は、入射X線を電荷に直接変換する直接変換型に限られず、ヨウ化セシウム(CsI)やガドリウムオキシサルファイド(GOS)等のシンチレータで入射X線を可視光に変換し、可視光をフォトダイオードで電荷に変換する間接変換型であってもよい。さらに、TFTに代えて、CMOSセンサ等を用いることも可能である。
【0032】
図3において、X線源11から照射されるX線は、X線焦点11aを発光点としたコーンビームである。第1及び第2の格子21,22は、X線透過部21b,22bを通過したX線を幾何光学的に投影するように構成される。具体的には、x方向に関するX線透過部21b,22bの幅を、X線源11から照射されるX線のピーク波長より十分大きな値とする。これにより、第1及び第2の格子21,22は、X線の大部分を回折させずに、直進性を保ったまま通過させる。例えば、X線源11の回転陽極としてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線のピーク波長は約0.4Åである。この場合には、X線透過部21b,22bのx方向の幅を1〜10μm程度とすればよい。
【0033】
第1の格子21により生成されるG1像は、X線焦点11aからの距離に比例して拡大される。本実施形態においては、第2の格子22の格子ピッチpは、第2の格子22の位置におけるG1像の周期パターンと一致するように決定される。すなわち、第2の格子22の格子ピッチpは、第1の格子21の格子ピッチをp、X線焦点11aと第1の格子21との間の距離L、第1の格子21と第2の格子22との間の距離Lとした場合、下式(1)をほぼ満たすように決定される。
【0034】
【数1】

【0035】
X線源11と第1の格子21との間に被検体Hを配置するとG2像が被検体Hにより変調を受ける。同図では、主として、X線源11から放射され被検体Hにより屈折されずに第1の格子21を通過したX線40が第2の格子22で遮蔽され、被検体Hにより屈折されて第1の格子21を通過したX線が第2の格子22を通過し、X線画像検出器20に入射するように第1及び第2の格子21,22が配置されている。この位置が前述の第1の位置である。
【0036】
被検体HによるX線の屈折角φは、被検体Hの位相シフト分布をΦ(x)とすると、下式(2)で表されるため、上記第1の画像データに基づく画像は、被検体Hの位相情報が反映された画像である。ここで、説明の簡略化のため、y座標は省略している。
【0037】
【数2】

【0038】
移動機構23は、第2の格子22を、図3に示す第1の位置からx方向にp/2の距離だけ並進移動させる。この並進移動後の位置が前述の第2の位置である。第2の位置では、主として、X線源11から放射され被検体Hにより屈折されずに第1の格子21を通過したX線40は第2の格子22を通過してX線画像検出器20に入射し、被検体Hにより屈折されて第1の格子21を通過したX線は第2の格子22で遮蔽される。
【0039】
第1の格子21に対して第2の格子22を、x方向に格子ピッチpに相当する距離だけ並進移動させた場合には、図4に例示するように、画素値は、第2の格子22の移動距離に対して、格子ピッチpを一周期とした正弦波を描くように変化する。第1及び第2の位置は、半周期分離れた位置関係であるため、第1及び第2の画素データを平均することにより、各画素値は、上記正弦波の平均値となる。この平均値を画素とした画像が前述の吸収画像である。本実施形態では、移動機構23及び画像平均部14aが吸収画像生成手段を構成している。
【0040】
次に、以上のように構成されたX線撮影装置10の作用を説明する。被検体HがX線源11と第1の格子21との間に配置され、操作部17aから撮影指示が入力されると、移動機構23により第2の格子22が第1の位置に配置され、X線源11によりX線照射が行われるとともに、X線画像検出器20によるG2像の検出が行われ、第1の画像データが生成される。次に、移動機構23により第2の格子22が第2の位置に移動され、同様にX線照射が行われるとともに、G2像の検出が行われ、第2の画像データが生成される。第1及び第2の画像データは、それぞれメモリ13に格納される。
【0041】
この後、画像処理部14によりメモリ13に格納された第1及び第2の画像データが読み出される。画像処理部14内では、画像平均部14aにより第1及び第2の画像データが画素ごとに平均されることにより吸収画像が生成される。減算処理部14bでは、第1の画像データから吸収画像が画素ごとに減算されることにより表示用画像が生成される。この吸収画像の減算により、表示用画像は、被検体Hのエッジに対応する部分が鮮明化し視認性が向上する。
【0042】
そして、表示用画像は、画像記録部15に記録された後、コンソール17に入力され、モニタ17bに表示される。
【0043】
なお、上記第1の実施形態では、被検体HをX線源11と第1の格子21との間に配置しているが、被検体Hを第1の格子21と第2の格子22との間に配置してもよい。
【0044】
また、上記第1の実施形態では、移動機構23により第2の格子22を、図3に示す第1の位置と、第1の位置から格子ピッチpの半周期分ずれた第2の位置とに移動させているが、第1及び第2の位置は、上記位置に限られず、半周期分ずれていればいずれの位置であってもよい。
【0045】
また、上記第1の実施形態では、移動機構23により第2の格子22を移動させているが、第2の格子22に代えて、第1の格子21を同様に格子ピッチpの半周期分だけ離れた第1及び第2の位置に移動させてもよい。
【0046】
また、上記第1の実施形態では、X線源11から射出されるX線をコーンビームとしているが、これに代えて、平行ビームを射出するX線源を用いることも可能である。この場合には、上式(1)に代えて、p=pをほぼ満たすように第1及び第2の格子21,22を構成すればよい。
【0047】
また、上記第1の実施形態では、第1の画像データから吸収画像を減算したものを表示用画像としているが、さらに、この表示用画像に適当な補正係数を掛けたうえで吸収画像を加算したものを表示用画像としてもよい。このようにすることで、被検体のエッジ部分と吸収部分との両方のコントラストを揃えて視認性を高めることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、第1及び第2の格子21,22のいずれか一方を格子ピッチの半周期分だけ離れた第1及び第2の位置に移動させ、各位置で得られた画像データを平均することにより吸収画像を生成しているが、第2の実施形態のX線撮影装置では、移動機構23に代えて、図5に示すように、第1及び第2の格子21,22をX線源11とX線画像検出器20との間から退避させる退避装置50を設ける。
【0049】
本実施形態では、第1及び第2の格子21,22を退避させた状態でX線照射を行いX線画像検出器20により生成された画像データを吸収画像として、第1の画像データから減算する。本実施形態では、退避装置50及びシステム制御部18が吸収画像生成手段を構成する。その他の構成や作用については、第1の実施形態と同一である。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、被検体HをX線源11と第1の格子21との間に配置した状態で一連の撮影を行い、表示用画像を生成しているが、第1及び第2の格子21,22の製造誤差や配置誤差等により表示用画像にノイズによりムラが生じることがあるため、被検体Hを配置せずに撮影(プレ撮影)を行い、このプレ撮影で得られた画像データを補正画像として補正を行うようにしてもよい。
【0051】
第3の実施形態のX線撮影装置は、コンソール17の操作部17aにより、被検体Hを配置して撮影を行う本撮影モードと、被検体Hを配置せずに撮影を行うプレ撮影モードの切り替えが可能となっている。
【0052】
図6において、本実施形態の画像処理部は、画像平均部60、減算処理部61、補正画像記憶部62、及び補正処理部63を備える。画像平均部60及び減算処理部61は、第1の実施形態の画像平均部14a及び減算処理部14bと同一である。補正画像記憶部62は、プレ撮影モードにおいてX線照射を行いX線画像検出器20により生成された画像データを補正画像として記憶する。
【0053】
本撮影モードでは、第1の実施形態と同様に撮影が行われ、第1及び第2の画像データが生成される。画像平均部60は、第1及び第2の画像データから吸収画像を生成し、減算処理部61は、第1の画像データから画像平均部60により生成された吸収画像を減算する。
【0054】
そして、補正処理部63は、減算処理部61による減算処理後の画像から補正画像記憶部62に記憶された補正画像を減算する。本実施形態では、補正処理部63による補正処理後の画像が表示用画像となる。なお、吸収画像を上記第2の実施形態の方法で取得してもよい。その他の構成や作用については、第1の実施形態と同一である。
【0055】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、X線源11は単一焦点であるが、第4の実施形態のX線撮影装置では、X線源11の射出側直後に、WO2006/131235号公報等に記されたマルチスリット(線源格子)を設け、焦点を分散化する。これより、高出力のX線源を用いることが可能となり、X線量が向上するため、画質が向上する。この場合、マルチスリットのピッチpは、下式(3)を満たす必要がある。本実施形態では、距離Lは、マルチスリットから第1の格子21までの距離である。その他の構成や作用については、第1の実施形態と同一である。
【0056】
【数3】

【0057】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、第1の格子21が入射X線を回折せずに幾何光学的に投影する構成としているが、第5の実施形態のX線撮影装置では、特開2008−200361号公報等に記されているように、第1の格子21でタルボ効果が生じる構成とする。タルボ効果を生じさせるためには、X線の空間干渉性を高めるように、小焦点のX線光源を用いるか、上記のようなマルチスリットを有するX線源を用いればよい。
【0058】
タルボ効果が生じる場合には、第1の格子21の自己像(G1像)は、第1の格子21から下流にタルボ距離Zだけ離れた位置に生じる。このため、本実施形態では、第1の格子21から第2の格子22までの距離Lをタルボ距離Zに設定する必要がある。その他の構成や作用については、第1の実施形態と同一である。
【0059】
第1の格子21が吸収型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビームである場合には、タルボ距離Zは、下式(4)で表される。ここで、mは正の整数である。
【0060】
【数4】

【0061】
また、第1の格子21がπ/2の位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビームである場合には、タルボ距離Zは、下式(5)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0062】
【数5】

【0063】
また、第1の格子21がπの位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビームである場合には、タルボ距離Zは、下式(6)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0064】
【数6】

【0065】
また、第1の格子21が吸収型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビームである場合には、タルボ距離Zは、下式(7)で表される。ここで、mは正の整数である。
【0066】
【数7】

【0067】
また、第1の格子21がπ/2の位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビームである場合には、タルボ距離Zは、下式(8)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0068】
【数8】

【0069】
そして、第1の格子21がπの位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビームである場合には、タルボ距離Zは、下式(9)で表される。ここで、mは0または正の整数である。
【0070】
【数9】

【0071】
本発明は、医療診断用の放射線撮影装置に限定されず、工業用等のその他の放射線撮影装置に適用することが可能である。また、放射線はX線に限られず、ガンマ線等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 X線撮影装置
20 X線画像検出器
21 第1の格子
21a X線吸収部
21b X線透過部
22 第2の格子
22a X線吸収部
22b X線透過部
30 画素
31 画素電極
33 ゲート走査線
35 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から放射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、
前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽することにより第2の周期パターン像を生成する第2の格子と、
前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成する放射線画像検出器と、
被検体の吸収画像を生成する吸収画像生成手段と、
前記画像データから前記吸収画像を減算して表示用画像とする減算処理部と、
を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記吸収画像生成手段は、前記第1の格子または前記第2の格子を、格子線に直交する方向に格子ピッチの半分に相当する距離だけ離れた第1の位置と第2の位置とに移動させる移動機構と、
前記第1の位置で前記放射線画像検出器により生成された第1の画像データと、前記第2の位置で前記放射線画像検出器により生成された第2の画像データとを平均することにより吸収画像を生成する画像平均部と、
からなることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記吸収画像生成手段は、前記第1及び第2の格子を、前記放射線源と前記放射線画像検出器との間から退避させる退避装置と、
前記第1及び第2の格子を前記放射線源と前記放射線画像検出器との間から退避させた状態で前記放射線画像検出器により画像データを生成させる制御部と、
からなることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
被検体を配置しない状態で前記放射線画像検出器により生成された画像データを補正画像として記憶する補正画像記憶部と、
前記表示用画像から前記補正画像を減算する補正処理部と、
を備えることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記第1の格子は、吸収型格子であり、入射した放射線を前記第2の格子に幾何光学的に投影することにより前記第1の周期パターン像を生成することを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記第1の格子は、吸収型格子または位相型格子であり、入射した放射線にタルボ効果を生じさせ前記第1の周期パターン像を生成することを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記放射線源から放射された放射線を部分的に遮蔽して焦点を分散化するマルチスリットを備えることを特徴とする請求項1から6いずれか1項に記載の放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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