放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法
【課題】高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できることにある。
【解決手段】放射線撮影装置11は、放射線検出器2の複数のチャンネルの内、その一部において放射線源から照射される放射線を遮蔽する遮蔽体74を備える。制御演算装置12の格納装置31は、放射線源1と放射線検出器2との間に被検体74が設置されてない状態における、放射線検出器2のリファレンスチャンネル以外の各チャンネルの出力I0(u,v)と、リファレンスチャンネルの出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する。画像再構成装置22は、チャンネル定数k(u,v)に、リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する。
【解決手段】放射線撮影装置11は、放射線検出器2の複数のチャンネルの内、その一部において放射線源から照射される放射線を遮蔽する遮蔽体74を備える。制御演算装置12の格納装置31は、放射線源1と放射線検出器2との間に被検体74が設置されてない状態における、放射線検出器2のリファレンスチャンネル以外の各チャンネルの出力I0(u,v)と、リファレンスチャンネルの出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する。画像再構成装置22は、チャンネル定数k(u,v)に、リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法に係り、特に、配管のような特定の場所に据え付けられた構造物の内部を可視化して検査するに好適な放射線非破壊検査システム及び配管の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントや火力プラント、化学プラント等に設置された配管のように、特定の場所に据え付けられた構造物の内部を可視化して検査する非破壊検査方法に、X線やγ線などの放射線を利用する放射線透過試験(RT:Radiographic Testing)がある。RTは、検査対象となる構造物(被検体)に対して照射した放射線を、被検体を挟んで放射線源の反対側に設置した放射線検出器で計測し、被検体の2次元透過画像を撮影する方法である。RTによる検査では、撮影した透過画像を用いて被検体内部の状況の確認や寸法計測などを実施する。
【0003】
RTによるプラント配管の減肉を検査する装置では、C字型アームと呼ぶ支持機構に放射線源と高感度のイメージインテンシファイア(放射線検出器)を取り付け、プラント配管を走査し、配管の透過画像を撮影し、その透過画像から減肉量を測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、放射線を用いた別の非破壊検査方法として、コンピュータ断層撮影(CT)が知られている。産業用のX線CT装置は、一般的にX線源および放射線検出器を固定し、それらの間に配置した円盤上に設置した被検体を回転させる。そして、被検体を回転させながら放射線を被検体に照射することで、被検体の全周方向から透過画像を撮影し、画像再構成により被検体の断層像を得る。RTによる透過画像との違いは、被検体内部の3次元像が得られることにある。このため、被検体の内部構造について、より詳細な位置情報を取得できる。
【0005】
さらに、配管を非破壊検査するための放射線CT装置として、配管溶接部の継ぎ目を検査するラミノグラフィと呼ばれる撮影方法に基づく撮影装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。ラミノグラフィは、被検体を挟んで対向するように設置された放射線源および放射線検出器が、互いに平行かつ反対方向に相対運動することにより、放射線源及び放射線検出器の運動方向と平行な断層像を撮影する方法である。放射線源の移動距離に対して、放射線検出器の移動距離を変化させることで、放射線源から見た撮影断層面の深さを変えることができる。
【0006】
【非特許文献1】東芝レビュー,Vol.61, No.6(2006),濱田、片山,「配管肉厚検査装置」, pp.68-71
【非特許文献2】16th WCNDT proceedings,(2004) ,B. Redmer, et. al, "MOBLE 3D-X-RAY TOMOGRAPHY FOR ANALYSIS OF PLANAR DEFECTS IN WELDS BY TOMOCARR"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、RTは、撮影方向によって、検査対象である配管に生じた減肉部の見え方が変わるという問題がある。そのため、RTでは、配管の減肉部を観察できるような撮影方向を探索するために、被検体を複数の方向から撮影する必要があり、この作業には通常数分〜数十分程度かかっていた。
【0008】
また、CTは、被検体を回転させるか、あるいは放射線源および放射線検出器を被検体の周りに回転させる必要がある。しかし、プラントに設置された配管の場合、配管を回転させることは不可能である。また、配管の周囲は狭隘であり、放射線源および放射線検出器を配管の周囲に回転させる余裕はなく、CT撮影は困難である。
【0009】
さらに、ラミノグラフィによる配管の断層撮影では、放射線検出器を固定して断層撮影を実施するため、1回の撮影範囲は放射線検出器の検出器サイズに依存する。したがって、長い配管全体の撮影には、時間を要することになる。
【0010】
これらの問題を回避するために、最近、被検体を挟んで対向するように設置された放射線源および放射線検出器が、互いに平行で同方向に相対運動することにより、放射線源及び放射線検出器の運動方向と平行な透過像を撮影し、その透過像データから必要部分を用いて、断層像を再構成する装置が検討されている。
【0011】
以上に述べたいずれの方法においても、通常、放射線源としては密封ガンマ線源またはX線管が使用される。放射線検出器には通常、2次元放射線検出器が用いられている。2次元検出器は、シンチレータ膜で放射線を光に変換し、その光をCCDやTFTパネルで受光し電荷に変換するものや、直接放射線を半導体検出器で検出し電荷に変換するものがあり、FPD(フラットパネルディテクタ)と呼ばれている。これらのFPDは高い形状分解能を得るため、個々の検出器(画素)は小さく、そのために1度のデータ測定(すなわちFPDからのデータ読み出し)に蓄積できる放射線による電荷量は限られ、多くの放射線が入射すると出力が飽和し、データとして使用できなくなるという問題点がある。
【0012】
放射線測定では、その出力信号の揺らぎは検出器により検出した放射線フォトン数の平方に比例するため、検出器出力のS/N(信号対ノイズ比)は検出フォトン数が多いほど向上する。このため、放射線源はできるだけ高線量率のものを使用することが望ましいが、上記のように検出器が飽和する恐れがある。
【0013】
被検体を透過すると、放射線は減衰するため、被検体部分を高画質に撮影するためには線源の強度を上げる必要がある。しかし、そうすると上記の理由により被検体のない部分(以下、空気層という)や被検体の薄い部分では、放射線量が大きすぎて検出器出力が飽和する。2次元検出器では多数の検出器(画素)の出力を直列に読み出すため、測定回路のゲインは画素ごとに変えることはできない。このため、測定回路のゲインを低く設定せざるを得ないので被検体部分の出力が小さくなり、デジタル値に変換する際の誤差が大きくなるという問題がある。
【0014】
断層画像を再構成するためには空気層や被検体の薄い部分の測定データも使用する必要があり、放射線量を弱める必要がある。弱めると、被検体部分の検出器出力が小さくなりフォトンノイズが増加し、S/Nが悪化するという矛盾が生じる。
【0015】
本発明の目的は、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できる放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、被検体をはさんで対向配置される放射線源と2次元放射線検出器とを有する放射線撮影装置と、前記放射線源から照射され、前記被検体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出して得られる前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する制御演算装置とを有する放射線断層撮影装置であって、前記放射線撮影装置は、前記放射線検出器の複数のチャンネルの内、その一部において前記放射線源から照射される放射線を遮蔽する遮蔽体を備え、該遮蔽体によって放射線が遮蔽されたチャンネルをリファレンスチャンネルとし、前記制御演算装置は、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネル以外の各チャンネルの出力I0(u,v)と、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネルの出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する格納装置と、前記チャンネル定数k(u,v)に、前記リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態におけるリファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する画像再構成装置とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるものとなる。
【0017】
(2)また、上記目的を達成するために、本発明は、被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する放射線断層撮影方法であって、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの内、前記放射線源から照射される放射線を遮蔽体により遮蔽されたリファレンスチャンネルの出力I_refと、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネル以外のチャンネルの出力I0(u,v)との比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を算出し、前記チャンネル定数k(u,v)に、前記リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態におけるリファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換して、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出するようにしたものである。
かかる方法により、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるものとなる。
【0018】
(3)さらに、上記目的を達成するために、本発明は、被検体をはさんで対向配置される放射線源と2次元放射線検出器とを有する放射線撮影装置と、前記放射線源から照射され、前記被検体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出して得られる前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する制御演算装置とを有する放射線断層撮影装置であって、前記放射線撮影装置は、前記放射線源から照射される放射線が常に照射される位置に配置され、前記放射線検出器の各チャンネルよりも広いダイナミックレンジを有するモニター検出器を備え、前記制御演算装置は、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの出力I0(u,v)と、前記モニター検出器の出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する格納装置と、前記チャンネル定数k(u,v)に、前記モニター検出器の出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する画像再構成装置とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるものとなる。
【0019】
(4)上記目的を達成するために、本発明は、被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する放射線断層撮影方法であって、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの出力I0(u,v)と、 前記放射線源から照射される放射線が常に照射される位置に配置され、前記放射線検出器の各チャンネルよりも広いダイナミックレンジを有するモニター検出器の出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を算出し、前記チャンネル定数k(u,v)に、前記モニター検出器の出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出するようにしたものである。
かかる方法により、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図14を用いて、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置の構成及び動作について説明する。
本実施形態による放射線断層撮影装置では、放射線源と放射線検出器とを同一方向に移動させ、この運動方向と平行な透過像を撮影し、その透過像データから必要部分を用いて、断層像を再構成する。本実施形態は、かかる放射線断層撮影装置を、発電プラントなどに設置されている保温材を装着した配管を被検体として非破壊検査する場合について説明する。
【0022】
最初に、図1を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態による放射線断層撮影装置は、放射線撮影装置11と、制御演算装置12とから構成される。
【0024】
放射線撮影装置11は、放射線源1と、放射線検出器2と、これらを支持するスキャナ装置3とを備える。放射線源1は、X線管である。放射線検出器2としては、放射線が入射するとその部分が発光するシンチレータ面の裏にCCD(電荷結合素子)パネルやTFT(薄膜トランジスタ)パネルを設置した2次元放射線検出器を用いる。放射線検出器2の検出器パネル71の上面の一部には、放射線源1からの放出される放射線を遮蔽できる遮蔽体74が設けられている。スキャナ装置3は、放射線源1と放射線検出器2の位置関係を保持したまま、保温材99が装着された配管10の長軸方向に、しかも同一方向に、並進走査する機能を有する。
【0025】
放射線源1は、制御装置21からの指令により出力電流を0から数ミリAまで制御できる。出力電流を変化させることによりX線発生量を制御できる。放射線検出器2は、多数の検出器(以下、「チャンネル」と称する)からなる検出器パネル71と、検出器パネル71から出力される各画素の出力を増幅する増幅回路72と、増幅器のアナログ出力をデジタル値に変換するAD変換回路73とを有する。AD変換回路73の出力は、透過画像データ51として順次制御装置21に転送される。増幅回路72のゲインは、制御装置21からの指令により変えられるが、画素ごとに変更できるものではなく、測定前に予め適当なゲイン値に設定してある。
【0026】
制御演算装置12は、画像取込装置20と、制御装置21と、画像再構成装置22と、判定装置24と、格納装置31と、再構成画像格納装置32から構成されている。
【0027】
画像取込装置20は、放射線検出器2で撮影した複数の透過画像データ51を取り込む。制御装置21は、スキャナ装置3や放射線源1、放射線検出器2を制御する。格納装置31は、画像取込装置20に取り込んだ複数の透過画像データ51と、放射線検出器2の各画素のチャンネル定数75を格納する。前述の放射線検出器2の検出器パネル71の上面に設けられた遮蔽体74と、チャンネル定数75を用いる点に本実施形態の特徴があり、この点については、後述する。
【0028】
判定装置24は、複数の透過画像データ51を格納装置31から読み込み、それらを静止画あるいは動画としてPCなどのモニタ上に表示し、表示された画像に基づき、操作者が画像再構成の要否判定結果や画像再構成領域を入力するために用いられる。画像再構成装置22は、被検体の断層像あるいは3次元立体像を再構成する。再構成画像格納装置32は、画像再構成装置22により再構成された被検体の断層像あるいは3次元立体像(再構成画像)を格納する。
【0029】
なお、使用者の利便性を考慮し、断層像あるいは3次元立体像(再構成画像)を用いた画像計測を実施する画像計測ソフトウェア等を搭載した画像計測装置23も、必要に応じて追加可能である。
【0030】
次に、図2を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置に用いる放射線検出器2の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置に用いる放射線検出器の構成を示す上面図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0031】
放射線検出器2の検出器パネル71の上面の一部には、遮蔽体74が設けてある。遮蔽体74の設置位置は、常に被検体を透過したX線ではなく、空気層のみを通過したX線ビームが直接入射する位置とする。すなわち、放射線源1から照射されるX線が、被検体によって遮られることのない位置に、設けられている。遮蔽体74の厚さは、対象被検体の材質,厚さや、放射線検出器の感度と出力や、X線管1と放射線検出器2の距離や、X線管の出力や、増幅回路72の設定ゲインなどにより適当に決定する必要がある。これについては後述する。
【0032】
次に、図3を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における検査方法について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における検査方法を示すフローチャートである。
【0033】
本実施形態の検査方法は、被検体撮影前の初期設定フロー3001と、撮影により透過画像データを取得する撮影フロー2001と、および取得した透過画像データに基づく画像再構成の要否判定および画像再構成を実施する画像処理フロー2002とから構成される。
【0034】
初期設定フロー3001において、システムは被検体に設置しない状態で、X線管電流を0から最大値まで変化させながら、透過画像を撮影する(処理3003)。本状態でのX線管1と放射線検出器2の位置関係は、その後に実施する被検体撮影時と同じにしておく。この処理時には、X線管1と放射線検出器2は移動する必要はないものである。その透過画像データを用いて、遮蔽体付きチャンネルの出力とその他のチャンネルの出力関係から、チャンネル定数75を求め(処理3004)、格納装置31に格納する(処理3005)。
【0035】
チャンネル定数75は、遮蔽体付きのリファレンスチャンネル(u1,v1)の出力I_refと、他のチャンネルの空気層出力I0(u,v)とから、両者の比(I0(u,v)/I_ref)として算出された値である。
【0036】
撮影フロー2001において、スキャナ装置3は、放射線源1および放射線検出器2を配管の長手方向に移動して、並進走査を開始する(処理2003)。放射線源1は、現在のスキャナ位置において放射線を出射し、配管を透過した放射線が放射線検出器2に入射することで透過画像を撮影する(処理2004)。画像取込装置20が放射線検出器2から取り込んだ透過画像データは格納装置31に保存される(処理2005)。
【0037】
そして、制御装置21がスキャナ装置3を配管の長軸方向に指定距離だけ移動させ(処理2006)、スキャナ装置3が配管の終端に到達しているか判定する(処理2007)。処理2007において、スキャナ装置3が配管の終端に到達していない場合、処理2004に戻り、現在のスキャナ位置における透過画像を撮影する。一方、スキャナ装置3が配管の終端に到達した場合、撮影は終了する(処理2008)。
【0038】
画像処理フロー2002では、格納装置31に保存された透過画像データを読み出し、必要に応じて判定装置24の画面に表示する(処理2009)。複数の透過画像データ51は、画面上において静止画または動画で表示される。
【0039】
読み出された透過画像データに基づき、操作者は表示された複数の透過画像データ51を目視確認し、配管の立体形状を観察するために配管の3次元画像を再構成する必要があるか否か判断する(処理2010,処理2011)。再構成の要否判定は、操作者の判断基準に基づいて実行してもよいし、何らかの基準を基準書であらかじめ決めておき、それに基づいて実行してもよい。画像再構成領域を指定し、判定装置24に入力し、再構成処理を指示する(処理2013)。
【0040】
画像再構成装置22は判定装置24からの実行指示により、該当する部分の透過画像データ51とチャンネル定数データ75を用いて画像再構成処理を行い、該当部分の3次元断層画像を出力する(2013)。そして、読み出した透過画像データが配管(検査対象)の終端の場合、処理は終了とし、終端でなければ読出し処理2010を繰り返す(処理2014)。なお、処理2011において画像再構成が不要と判断した場合、その透過画像データが配管の終端におけるデータであるか否か判定する(処理2014)。
【0041】
なお、上述の説明では、撮影と画像処理を並行に実施しているが、撮影が全て終了してから画像処理を実施してもよい。また、透過画像データとして、測定した生データを用いており、被検体のない空気層部分のデータは飽和している。そのかわりに、後述するように各チャンネルの減衰率を透過画像データ51とチャンネル定数データ75を用いて計算し、透過画像に対応する減衰率データ55を画像表示することもできる。
【0042】
次に、図4〜図8を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における被検体の断層像あるいは3次元立体像(再構成画像)の生成方法について説明する。
最初に、図4を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置の具体的構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置の具体的構成を示す斜視図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0043】
放射線撮影装置11において、放射線源1および放射線検出器2は、C字型アーム3aにより保持されている。C字型アーム3aは、ガイドレール3bの上を走査される。ガイドレール3bは、床面上に設置された支持脚3cにより、保温材(図示せず)を装着した配管10の長軸方向に沿うように配置される。また、C字型アーム3aは、配管10の外周面に沿うように形成されており、配管10を挟んで、放射線源1と放射線検出器2が対向配置される。
【0044】
C字型アーム3aが配管の長軸方向に一定距離だけ移動するごとに、透過画像データを1枚測定する。放射線源1にはX線管を使用するので、X線は連続的に照射される。C字型アーム3aが配管を走査中に放射線検出器2が撮影した透過画像データ51は、放射線検出器2から画像取込装置20に随時取り込まれる。一般的な2次元放射線検出器では30枚/秒の透過画像データを出力する。
【0045】
制御演算装置12は、図示のような構成をとる。制御演算装置12の各部は、図1にて説明したとおりである。
【0046】
次に、図5を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における撮影状態について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における撮影状態の説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0047】
図5に示すように、放射線源1および放射線検出器2がC字型アームにより保持されたまま移動し、所定のタイミングで、すなわち、配管の長軸方向に一定距離だけ移動するごとに、透過画像データ51が測定される。これにより、配管に沿って複数枚の透過画像データが得られる。
【0048】
次に、図6を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成に必要となる透過画像データの収集範囲について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成に必要となる透過画像データの収集範囲の説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。また、説明の簡単のため、図6では2次元撮影の場合を示している。3次元撮影の場合は、この2次元での考え方を拡張したものである。
【0049】
図6(a),(b),(c)に示すように、放射線源1および放射線検出器2が左から右に向かって並進走査する場合を考える。また、被検体として板状の物体10aを考え、この物体10aの内部の点10bに着目する。
【0050】
内部の点10bを透過する放射線5は、図6(a)に示す方向で並進走査を開始し、図6(b)の方向による透過を経て、図6(c)に示す方向にて終了する。放射線の開き角をθとすると、この並進走査の間に内部の点10bを透過する放射線5の角度範囲もθとなる。一般に、CT撮影により断層像を画像再構成するためには、被検体に対して180°〜360°の方向から放射線を透過させる必要がある。
【0051】
これに対して、本実施形態の放射線撮影装置11では、放射線の透過方向は角度θとなる。この角度θは、放射線源1の放射角または放射線検出器2の検出面の大きさにより決まり、40°〜60°程度となる。このような条件下において画像再構成をするためには、投影角度が制限された状態で画像再構成を行う手法(Limited Angle 画像再構成)が必要となる。
【0052】
Limited Angle 画像再構成手法はこれまでに多数提案されている。以下ではその一手法であるDTS(Digital Tomosynthesis)法を例として、画像再構成の方法を説明する。もちろん、他のLimited Angle 画像再構成手法を適用することも可能である。
【0053】
次に、図7を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法による画像再構成の原理について説明する。
図7は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法による画像再構成の原理の説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0054】
ここでは、説明の簡単のため、放射線源1のみが並進移動し、放射線検出器2は固定しているものとして説明する。
【0055】
被検体は、厚さのない円形の被検体10cおよび矩形の被検体10dとする。被検体10cおよび被検体10dは、放射線源1から放射線検出器2に向かう方向軸に垂直であって、放射線検出器2に平行に配置されているものとする。また、被検体10cおよび被検体10dは、放射線源1からの距離が異なるものとする。
【0056】
被検体10c,10dは、放射線源1が並進走査する際の各位置に対応して、図に示すような透過画像データ51が撮影される。これらの透過画像データ51から円形の被検体10cを含む断面を再構成する場合、各透過画像データ51における被検体10cの投影部が重ね合わさるように各透過画像データ51を移動させた後、全ての透過画像データ51を重ね合わせる。この処理により、円形の像が鮮明となる。各透過画像データ51の移動量は、各透過画像データ51を撮影する間の放射線源1の移動量、放射線源1と円形の被検体10cを含む断面との距離、および円形の被検体10cを含む断面と放射線検出器2との距離により決まる。
【0057】
一方、各透過画像データ51における被検体10dの投影部は、上記透過画像データ51の移動および重ね合わせ処理により、不鮮明な像となる。この結果、円形の被検体10cと矩形の被検体10dとにコントラスト差が発生し、被検体10cの再構成画像である断層像52を生成することができる。
【0058】
同様に、放射線源1に対して被検体10cと異なる深さ位置にある被検体10dも、前述の再構成方法と同じ手法で再構成画像を生成できる。このように、配管をスクリーニングするために撮影する配管の透過画像を用いて、配管の断層像又は3次元画像を再構成することができるため、データの取り直しは必要ないものである。
【0059】
次に、図8を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法のようなLimited Angle再構成画像手法を配管の撮影に適用した場合について説明する。
図8は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法のようなLimited Angle再構成画像手法を配管の撮影に適用した場合の説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0060】
放射線撮影装置11およびDTS法のようなLimited Angle再構成画像手法を配管の撮影に適用した場合、再構成画像52は、図8に示すように、放射線源1から放射線検出器2に向かう軸と平行な法線ベクトルを持つ断面として生成される。また、放射線源1と放射線検出器2の間に、放射線源1からの距離が異なる複数枚の再構成画像52が生成される。この再構成画像52を放射線源1から放射線検出器2に向かう軸方向に積み上げることで3次元立体像53を構築できる。
【0061】
次に画像再構成の処理フローを説明する。
【0062】
最初に、図17〜図19を用いて、従来の画像再構成の処理について説明する。
図17は、従来の画像再構成の処理内容を示すフローチャートである。図18は、従来の画像再構成方法で使用するデータの説明図である。図19は、従来の画像再構成方法におけるX線強度と検出器の出力の関係の説明図である。
【0063】
最初に、図17を用いて、従来の画像再構成の処理内容について説明する。
【0064】
初めに、入力データ名や演算パラメータなどの演算条件を入力する条件入力処理9001が実行される。次に、入力された演算条件に基づき、画像再構成装置が放射線撮影装置により撮影された透過画像データを格納装置から読み込む透過画像データ読込処理9002、および空気層データを格納装置から読み込む空気層データ読込処理9003が実行される。この透過画像データ読込処理9002、空気層データ読込処理9003では、配管の欠陥部の状態を確認するために画像の再構成を必要とする配管の部位を撮影した第1の透過画像データと、第1の透過画像データの前後で撮影された第2の透過画像データを読み込む。なお、空気層データとは、被検体がない状態で撮影したデータのことであり、減衰のない放射線強度を取得したものである。このデータは次の処理において使用する。
【0065】
次に、対数変換処理9004が実行される。対数変換処理とは、減衰のない放射線強度と被検体を透過して減衰した放射線強度との比を対数変換し、減衰率aを求める処理であり、以下の式(1)で表される。
a(u,v)=In((I0(u,v))/I(u,v))=∫μdt …(1)
ここで、a(u,v)は放射線検出器上の位置(u,v)における減衰率、I0(u,v)は放射線検出器上のチャンネル(u,v)において放射線検出素子により検出された減衰のない放射線強度(検出器出力)、I(u,v)は同位置において検出された減衰のある放射線強度を表す。また、μは材質や放射線エネルギに依存した線減衰係数を、tは放射線の透過経路を表す。
【0066】
画像の再構成は、式(1)の左辺を入力値として、線減衰係数μの空間分布を求める処理である。続いて、前処理9005が実行される。前処理9005では、多数の検出素子間におけるばらつきや欠陥のある素子に対する補正や装置に依存した補正などを実施する。この前処理9005は、場合に応じて対数変換処理9004の前で実施してもよい。
【0067】
以上の処理の後、逆投影演算処理9006が実行される。逆投影演算処理は、これまでに補正、変換したデータを2次元または3次元の空間にマッピング(逆投影)する処理である。先に説明したDTS法では、透過画像データの移動および重ねあわせ処理に対応する。この逆投影演算により最終的に2次元断層像または3次元立体像(再構成画像)が生成される。
【0068】
次に、図18を用いて、従来の方法で使用するデータについて説明する。
【0069】
図18は、従来の格納装置内に格納されたデータを示している。空気層データ932は、被検体を撮影する前に予め測定されている。空気層データ932と透過画像データ933を用いて、減衰率934が求められる。すなわち、予め求めておく空気層データが検出器出力飽和の状態で測定されたのでは意味がないので、被検体無しの状態でも検出器の出力は飽和しないように、X線発生装置の出力を絞る、または増幅回路のゲインを下げることが必要である。
【0070】
次に、図19を用いて、X線強度と検出器の出力の関係について説明する。図19の横軸はX線強度、縦軸は検出器の出力(各チャンネルの出力を増幅器で増幅した電圧)を示している。
【0071】
検出器の各チャンネルが蓄積できるX線により発生した電荷量に上限があること、また2次元検出器や増幅回路の増幅出力には上限があることから、検出器出力はある電圧で飽和する。一点鎖線953は増幅回路のゲインが高い場合(ケース1)、実線954は増幅器のゲインを適切により低く設定した場合(ケース2)を示す。検出器の出力は検出器や増幅回路の測定範囲955を越えると飽和する。
【0072】
従って、X線強度が最も強い空気層の場合(956)にも検出器出力が飽和しないようにするためには、ケース2のようにX線強度と増幅回路のゲインを設定する必要がある。このように設定すれば、空気層測定時の検出器出力I0(957)を飽和出力以下に抑えることができる。
【0073】
通常透過撮影に用いられる出力225kVのX線管を使用した場合、被検体を透過したX線は鉄の厚さ2cmで約2桁減衰することが予想される。すなわち、図19において、被検体を透過したX線強度範囲958に対応する検出器出力I(959)は空気層の場合の出力I0(957)に比べて2桁小さなレベルとなることを意味する。このため、X線フォトン数の減少による出力揺らぎの増加や、AD変換時の誤差の増加により、測定データのS/Nが低下する恐れがある。透過画像データのS/Nの低下は断層画像の画質低下につながる。
【0074】
しかしながら、前述のように被検体撮影時にも放射線検出器のすべてのチャンネルにおいて出力が飽和しないように撮影条件を決める必要があるため、測定データのS/Nが低下する恐れがあり、ひいては断層画像の画質低下につながるという問題点がある。
【0075】
次に、図9〜図11を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成の処理について説明する。
図9は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成の処理内容を示すフローチャートである。図10は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法で使用するデータの説明図である。図11は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法におけるX線強度と検出器の出力の関係の説明図である。
【0076】
最初に、図9を用いて、本実施形態による画像再構成の処理内容について説明する。
【0077】
初めに、入力データ名や演算パラメータなどの演算条件を入力する条件入力処理1001が実行される。次に、入力された演算条件に基づき、画像再構成装置22が放射線撮影装置11により撮影された透過画像データ51を格納装置31から読み込む透過画像データ読込処理1002、およびチャンネル定数データ75を格納装置から読み込むチャンネル定数データ読込処理1003が実行される。
【0078】
本実施形態では、空気層データを格納装置に予め格納しておくのではなく、チャンネル定数データ75を使用する。この透過画像データ読込処理1002、チャンネル定数データ読込処理1003では、配管の欠陥部の状態を確認するために画像の再構成を必要とする配管の部位を撮影した第1の透過画像データと、第1の透過画像データの前後で撮影された第2の透過画像データを読み込む。
【0079】
次に、透過画像データから各チャンネルの空気層データを推定する空気層データ計算処理1004が実施される。これは遮蔽体付きチャンネルの測定データとチャンネル定数データ75を用いて各チャンネルの空気層データを計算する処理である。詳細は後述する。
【0080】
次に、対数変換処理1005が実行される。この処理は従来と同様に、減衰のない放射線強度(空気層データ)と被検体を透過して減衰した放射線強度との比を対数変換し減衰率aを求める処理である。ただし、空気層データは空気層データ計算処理1004で計算されたデータを用いる。
【0081】
続いて、前処理1006が実行され、逆投影演算処理1007が実行され最終的に2次元断層像または3次元立体像(再構成画像)が生成される。
【0082】
次に、図10を用いて、本実施形態の方法で使用するデータについて説明する。
【0083】
本実施形態では、空気層データを格納装置に予め格納しておくのではなく、チャンネル定数75を使用する。図10は、本実施形態における格納装置31の格納データを示している。2次元放射線検出器2は、u1×v1のチャンネル数を有する。減衰率データ55は、チャンネル定数75と測定した透過画像データ51から求まる。
【0084】
なお、測定値I(u,v)が飽和している時は、減衰率は0である。
【0085】
次に、図11を用いて、本実施形態におけるX線強度と検出器の出力の関係について説明する。図11の横軸は検出器に入るX線の強度、縦軸は検出器の出力(各チャンネルの出力を増幅器で増幅した電圧)を示している。
【0086】
検出器の出力特性(増幅回路のゲインとX線管の出力電流)は被検体を透過したX線強度で検出器出力が飽和しない最大ゲインと最大電流に設定する。各チャンネルの出力特性101は、図11に示すようになる。配管を透過したX線のレベル103が検出器に入射した場合の検出器出力104は検出器出力の飽和レベルImaxよりも低く且つできるだけ大きくなるように増幅回路のゲインとX線管の出力を決定する。とくに、X線管出力はできるだけ大きくし、X線フォトン数を増加させ、増幅回路のゲインはできるだけ低くし回路ノイズを低下させるように設定する。
【0087】
以下の説明では、簡単のため、リファレンスチャンネルは1チャンネル(u1,v1)とし、I_ref=I(u1,v1)である。遮蔽体付きのリファレンスチャンネル(u1,v1)は被検体を透過しないX線105にさらされるが、遮蔽体によりX線が遮蔽されるためリファレンスチャンネルの出力I_ref(106)は検出器出力の飽和レベルImaxを超えることはなく、撮影中常に測定可能である。また、そのように遮蔽体の厚さを設定し、設置する。
【0088】
遮蔽体は一定の厚さに固定して設置しておいても良いが、被検体が厚く増幅回路のゲインを上げる必要のある場合には厚く、被検体が薄く増幅回路のゲインを下げる場合には薄く、変更できるように取り外し式とすることも良い。遮蔽体はX線遮蔽能力の高い物質が望ましいため、タングステンやその合金がよい。もちろん、鉛などの密度と原子番号の高い物質が使用できる。
【0089】
リファレンスチャンネル以外の通常のチャンネルは、被検体を透過しないX線(空気層)にさらされる場合には当然検出器出力が飽和するが、その空気層出力の推定値I0(u,v)は、次の式(2)となる。
I0(u,v)=k(u,v)×I_ref …(2)
図11では、この推定値107を示している。
【0090】
従って、チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)は、以下の式(3)、式(4)により、求められる。
【0091】
ここで、I(u,v)<Imaxの場合は、
a(u,v)=In(k(u,v)×I_ref/I(u,v)) …(3)
すなわち、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)は、チャンネル定数k(u,v)に遮蔽体で覆われたリファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、リファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして求められる。
【0092】
また、I(u,v)=Imaxの場合は、
a(u,v)=0 …(4)
となる。すなわち、測定値I(u,v)が飽和している時は、減衰率は0である。
【0093】
ここで、a(u,v)は放射線検出器上の位置(u,v)における減衰率、k(u,v)は放射線検出器上のチャンネル(u,v)のチャンネル定数、I(u,v)は同位置において検出された放射線強度、I_refは遮蔽体付きリファレンスチャンネルの放射線強度、Imaxは検出器の飽和出力を示している。
【0094】
これまでの説明では、リファレンスチャンネルは1チャンネルであったが、2次元放射線検出器の各チャンネルのサイズは0.2から0.5ミリ角程度であるので、1チャンネルに遮蔽体を設置するのは困難である。また、遮蔽体によりそのチャンネルに入射するX線量が2桁ほど低下するため、複数チャンネルの測定から平均処理する。設置する遮蔽体の実用的な大きさを考慮すると5ミリ角の遮蔽体でも100チャンネルを遮蔽できるので、平均処理によりリファレンスチャンネルの出力揺らぎを遮蔽体無しで測定するのと同等に保持できる。
【0095】
以上述べたように、本実施形態によれば、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、被検体を透過するX線をS/N良く測定できるので、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できる。
【0096】
次に、図12〜図14を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における表示例について説明する。
図12及び図13は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における複数の透過画像データの表示例の説明図である。図14は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における3次元立体像の表示例の説明図である。
【0097】
図12及び図13は、複数の透過画像データを判定装置24の画面上に表示した画面の一例を示している。この図では、透過画像読込ボタン60を押下することで、透過画像データ格納装置31から透過画像データを読み込み、複数の透過画像データ51を画面上に動画として表示する。図7に示すように、透過画像データ51は放射線源1と放射線検出器2との間に位置する被検体10c及び10dを深さ方向に重ね合わせた画像となる。そのため、配管の2次元画像や3次元画像を再構成しなくとも、透過画像データ51における濃淡表示で配管の減肉部63を表示することができる。また、減肉などの欠陥が生じた配管の箇所を透過画像によってスクリーニングすることで2次元画像や3次元画像を再構成する領域を絞り込むことができるため、画像再構成の演算量を低減することが可能である。更に、配管全長に渡って再構成する必要もないため、2次元画像や3次元画像を保存する再構成画像格納装置の記憶容量を削減することもできる。
【0098】
操作者は透過画像データ51を確認し、配管の減肉部63を見つけた場合には、配管の3次元画像で減肉部63を確認するために動画を停止するボタン61を押下する。そして、画像再構成の要否を判定するボタン62を押下して判定結果を入力する。
【0099】
画像の再構成が必要と判断した場合には、画面が図13に遷移する。この画面上で、PCに接続されたマウスなどの入力装置を用いてポインタ64で再構成領域65を指定し、ボタン66を押下して演算を実行する。ボタン66を押下することで、画像再構成装置22に対して画像の再構成を行う指令を出す。再構成領域65を指定する際には、配管の減肉部63を囲むように、矩形で指定すれば良い。
【0100】
図14は、透過画像の再構成領域65に相当する配管部位について2次元断層像または3次元立体像を画面上に表示した結果を示している。2次元断層像又は3次元立体像を再構成することで、配管の減肉部63の立体的形状を容易に確認することができる。このように、透過画像データにおいて配管の減肉など欠陥が疑われる箇所のみを2次元断層像又は3次元立体像で確認できる。
【0101】
以上述べたように、本実施形態によれば、被検体を透過するX線をS/N良く測定できるので、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるので、プラント等に据え付けられた配管等の放射線撮影による非破壊検査において、高画質の断層画像を得ることができる。
【0102】
次に、図15及び図16を用いて、本発明の他の一実施形態による放射線断層撮影装置の構成及び動作について説明する。
図15は、本発明の他の一実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。図16は、本発明の他の実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法で使用するデータの説明図である。
【0103】
本実施形態では、図1に示したように、放射線検出器2の検出器パネル71上に遮蔽体を設けるのではなく、図15に示すように、モニタ検出器81を放射線検出器2の近傍に設けている。モニタ検出器81は、放射線源1から発生する放射線が常に直接照射される位置に設置する。
【0104】
放射線検出器2は、図1にて説明したように、放射線が入射するとその部分が発光するシンチレータ面の裏にCCD(電荷結合素子)パネルやTFT(薄膜トランジスタ)パネルを設置した2次元放射線検出器である。したがって、放射線検出器2の各チャンネルのダイナミックレンジは狭いものである。
【0105】
一方、モニタ検出器81は、出力が飽和しない半導体検出器、イオンチェンバなどの放射線検出器を電流出力で用いる。モニタ検出器81は、例えば、放射線が入射するとその部分が発光するシンチレータ面の裏に、空乏層を有するシリコンを設置したものである。モニタ検出器81は、放射線検出器2の個々のチャンネルの大きさよりも大きなものである。したがって、モニタ検出器81は、放射線検出器2の各チャンネルに比べて、ダイナミックレンジが広いものである。すなわち、モニタ検出器81におけるX線強度と検出器の出力の関係は、図11に示した空気層出力の推定値107と同様の特性を有するものである。
【0106】
モニタ検出器81の出力は、検出回路82で増幅・AD変換され、制御装置により、透過画像データ51の撮影と同期して、格納装置31に格納される。
【0107】
次に、図16を用いて、本実施形態における格納装置31の格納データについて説明する。
【0108】
本実施形態では、チャンネル定数データ76、透過画像データ51の他に、モニタ検出器81の測定データ(I_ref)77が格納され、減衰率データ78はチャンネル定数データ76、モニタ検出器81の測定データ77、および透過画像データ51から求まる。チャンネル定数データはモニタ検出器の出力を基準に決定される。
【0109】
チャンネル定数データ76は、モニタ検出器81の測定データ(I_ref)と、他のチャンネルの空気層出力I0(u,v)とから、(I0(u,v)/I_ref)として算出された値である。
【0110】
各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)は、前述の式(3)により求められる。すなわち、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)は、チャンネル定数k(u,v)にモニタ検出器81の測定データであるリファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、リファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして求められる。
【0111】
なお、測定値I(u,v)が飽和している時は、減衰率は0である。
【0112】
初期設定フローは、チャンネル定数データがモニタ検出器の出力を基準に決定されることを除けば、図3と同様であり、また、撮影フローと画像処理フローも同様であるので、説明は省略する。再構成処理もI_refがモニタ検出器出力であることを除けば同様である。
【0113】
本実施形態によれば、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、被検体を透過するX線をS/N良く測定できるので、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できる。
【0114】
また、放射線検出器2の増幅回路72のゲインを変更しても遮蔽体の厚さを変更する手間が省けるため、より簡便に実現できる。
【0115】
なお、以上の説明では、いずれも放射線源と放射線検出器を被検体に対して同方向に並進させる検査システムであったが、放射線源又は放射線検出器のいずれかを移動、回転させたり、逆方向に並進させたりするような検査システムでも同様の効果が得られるものである。
【0116】
また、産業用X線CT装置のようにターンテーブルに被検体をのせて、回転させ、断層像を得るシステムにおいても、被検体に常に遮蔽されない検出器に遮蔽体を設置したり、被検体に常に遮蔽されない位置に別のモニタ検出器を設置したりして、チャンネル定数とモニタ検出器の出力情報から書くチャンネルの空気層データを求めることにより、同様の効果が得られる。
【0117】
なお、本発明は、発電プラントに設置された配管だけでなく、航空機の翼など、大型の構造物に対しても放射線による検査が高画質で効率よく実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置に用いる放射線検出器の構成を示す上面図である。
【図3】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における検査方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置の具体的構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における撮影状態の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成に必要となる透過画像データの収集範囲の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法による画像再構成の原理の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法のようなLimited Angle再構成画像手法を配管の撮影に適用した場合の説明図である。
【図9】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法で使用するデータの説明図である。
【図11】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法におけるX線強度と検出器の出力の関係の説明図である。
【図12】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における複数の透過画像データの表示例の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における複数の透過画像データの表示例の説明図である。
【図14】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における3次元立体像の表示例の説明図である。
【図15】本発明の他の一実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の他の実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法で使用するデータの説明図である。
【図17】従来の画像再構成の処理内容を示すフローチャートである。
【図18】従来の画像再構成方法で使用するデータの説明図である。
【図19】従来の画像再構成方法におけるX線強度と検出器の出力の関係の説明図である。
【符号の説明】
【0119】
1…放射線源、2…放射線検出器、3…スキャナ装置、3a…C字型アーム、3b…ガイドレール、3c…支持脚、5…放射線、10…配管、10a…物体、10c…被検体、10d…被検体、11…放射線撮影装置、12…制御演算装置、22…画像再構成装置、23…画像計測装置、24…判定装置、26…入力装置、27…記憶装置、28…減衰量計算プログラム、29…演算装置、30…記憶装置、31…格納装置、41…演算装置、42…記憶装置、51…透過画像データ、52…再構成画像、55、78…減衰率データ、71…検出器パネル、72…増幅回路、73…AD変換回路、74…遮蔽体、75…チャンネル定数
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法に係り、特に、配管のような特定の場所に据え付けられた構造物の内部を可視化して検査するに好適な放射線非破壊検査システム及び配管の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントや火力プラント、化学プラント等に設置された配管のように、特定の場所に据え付けられた構造物の内部を可視化して検査する非破壊検査方法に、X線やγ線などの放射線を利用する放射線透過試験(RT:Radiographic Testing)がある。RTは、検査対象となる構造物(被検体)に対して照射した放射線を、被検体を挟んで放射線源の反対側に設置した放射線検出器で計測し、被検体の2次元透過画像を撮影する方法である。RTによる検査では、撮影した透過画像を用いて被検体内部の状況の確認や寸法計測などを実施する。
【0003】
RTによるプラント配管の減肉を検査する装置では、C字型アームと呼ぶ支持機構に放射線源と高感度のイメージインテンシファイア(放射線検出器)を取り付け、プラント配管を走査し、配管の透過画像を撮影し、その透過画像から減肉量を測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、放射線を用いた別の非破壊検査方法として、コンピュータ断層撮影(CT)が知られている。産業用のX線CT装置は、一般的にX線源および放射線検出器を固定し、それらの間に配置した円盤上に設置した被検体を回転させる。そして、被検体を回転させながら放射線を被検体に照射することで、被検体の全周方向から透過画像を撮影し、画像再構成により被検体の断層像を得る。RTによる透過画像との違いは、被検体内部の3次元像が得られることにある。このため、被検体の内部構造について、より詳細な位置情報を取得できる。
【0005】
さらに、配管を非破壊検査するための放射線CT装置として、配管溶接部の継ぎ目を検査するラミノグラフィと呼ばれる撮影方法に基づく撮影装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。ラミノグラフィは、被検体を挟んで対向するように設置された放射線源および放射線検出器が、互いに平行かつ反対方向に相対運動することにより、放射線源及び放射線検出器の運動方向と平行な断層像を撮影する方法である。放射線源の移動距離に対して、放射線検出器の移動距離を変化させることで、放射線源から見た撮影断層面の深さを変えることができる。
【0006】
【非特許文献1】東芝レビュー,Vol.61, No.6(2006),濱田、片山,「配管肉厚検査装置」, pp.68-71
【非特許文献2】16th WCNDT proceedings,(2004) ,B. Redmer, et. al, "MOBLE 3D-X-RAY TOMOGRAPHY FOR ANALYSIS OF PLANAR DEFECTS IN WELDS BY TOMOCARR"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、RTは、撮影方向によって、検査対象である配管に生じた減肉部の見え方が変わるという問題がある。そのため、RTでは、配管の減肉部を観察できるような撮影方向を探索するために、被検体を複数の方向から撮影する必要があり、この作業には通常数分〜数十分程度かかっていた。
【0008】
また、CTは、被検体を回転させるか、あるいは放射線源および放射線検出器を被検体の周りに回転させる必要がある。しかし、プラントに設置された配管の場合、配管を回転させることは不可能である。また、配管の周囲は狭隘であり、放射線源および放射線検出器を配管の周囲に回転させる余裕はなく、CT撮影は困難である。
【0009】
さらに、ラミノグラフィによる配管の断層撮影では、放射線検出器を固定して断層撮影を実施するため、1回の撮影範囲は放射線検出器の検出器サイズに依存する。したがって、長い配管全体の撮影には、時間を要することになる。
【0010】
これらの問題を回避するために、最近、被検体を挟んで対向するように設置された放射線源および放射線検出器が、互いに平行で同方向に相対運動することにより、放射線源及び放射線検出器の運動方向と平行な透過像を撮影し、その透過像データから必要部分を用いて、断層像を再構成する装置が検討されている。
【0011】
以上に述べたいずれの方法においても、通常、放射線源としては密封ガンマ線源またはX線管が使用される。放射線検出器には通常、2次元放射線検出器が用いられている。2次元検出器は、シンチレータ膜で放射線を光に変換し、その光をCCDやTFTパネルで受光し電荷に変換するものや、直接放射線を半導体検出器で検出し電荷に変換するものがあり、FPD(フラットパネルディテクタ)と呼ばれている。これらのFPDは高い形状分解能を得るため、個々の検出器(画素)は小さく、そのために1度のデータ測定(すなわちFPDからのデータ読み出し)に蓄積できる放射線による電荷量は限られ、多くの放射線が入射すると出力が飽和し、データとして使用できなくなるという問題点がある。
【0012】
放射線測定では、その出力信号の揺らぎは検出器により検出した放射線フォトン数の平方に比例するため、検出器出力のS/N(信号対ノイズ比)は検出フォトン数が多いほど向上する。このため、放射線源はできるだけ高線量率のものを使用することが望ましいが、上記のように検出器が飽和する恐れがある。
【0013】
被検体を透過すると、放射線は減衰するため、被検体部分を高画質に撮影するためには線源の強度を上げる必要がある。しかし、そうすると上記の理由により被検体のない部分(以下、空気層という)や被検体の薄い部分では、放射線量が大きすぎて検出器出力が飽和する。2次元検出器では多数の検出器(画素)の出力を直列に読み出すため、測定回路のゲインは画素ごとに変えることはできない。このため、測定回路のゲインを低く設定せざるを得ないので被検体部分の出力が小さくなり、デジタル値に変換する際の誤差が大きくなるという問題がある。
【0014】
断層画像を再構成するためには空気層や被検体の薄い部分の測定データも使用する必要があり、放射線量を弱める必要がある。弱めると、被検体部分の検出器出力が小さくなりフォトンノイズが増加し、S/Nが悪化するという矛盾が生じる。
【0015】
本発明の目的は、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できる放射線断層撮影装置および放射線断層撮影方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、被検体をはさんで対向配置される放射線源と2次元放射線検出器とを有する放射線撮影装置と、前記放射線源から照射され、前記被検体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出して得られる前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する制御演算装置とを有する放射線断層撮影装置であって、前記放射線撮影装置は、前記放射線検出器の複数のチャンネルの内、その一部において前記放射線源から照射される放射線を遮蔽する遮蔽体を備え、該遮蔽体によって放射線が遮蔽されたチャンネルをリファレンスチャンネルとし、前記制御演算装置は、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネル以外の各チャンネルの出力I0(u,v)と、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネルの出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する格納装置と、前記チャンネル定数k(u,v)に、前記リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態におけるリファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する画像再構成装置とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるものとなる。
【0017】
(2)また、上記目的を達成するために、本発明は、被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する放射線断層撮影方法であって、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの内、前記放射線源から照射される放射線を遮蔽体により遮蔽されたリファレンスチャンネルの出力I_refと、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネル以外のチャンネルの出力I0(u,v)との比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を算出し、前記チャンネル定数k(u,v)に、前記リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態におけるリファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換して、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出するようにしたものである。
かかる方法により、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるものとなる。
【0018】
(3)さらに、上記目的を達成するために、本発明は、被検体をはさんで対向配置される放射線源と2次元放射線検出器とを有する放射線撮影装置と、前記放射線源から照射され、前記被検体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出して得られる前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する制御演算装置とを有する放射線断層撮影装置であって、前記放射線撮影装置は、前記放射線源から照射される放射線が常に照射される位置に配置され、前記放射線検出器の各チャンネルよりも広いダイナミックレンジを有するモニター検出器を備え、前記制御演算装置は、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの出力I0(u,v)と、前記モニター検出器の出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する格納装置と、前記チャンネル定数k(u,v)に、前記モニター検出器の出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する画像再構成装置とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるものとなる。
【0019】
(4)上記目的を達成するために、本発明は、被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する放射線断層撮影方法であって、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの出力I0(u,v)と、 前記放射線源から照射される放射線が常に照射される位置に配置され、前記放射線検出器の各チャンネルよりも広いダイナミックレンジを有するモニター検出器の出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を算出し、前記チャンネル定数k(u,v)に、前記モニター検出器の出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出するようにしたものである。
かかる方法により、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図14を用いて、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置の構成及び動作について説明する。
本実施形態による放射線断層撮影装置では、放射線源と放射線検出器とを同一方向に移動させ、この運動方向と平行な透過像を撮影し、その透過像データから必要部分を用いて、断層像を再構成する。本実施形態は、かかる放射線断層撮影装置を、発電プラントなどに設置されている保温材を装着した配管を被検体として非破壊検査する場合について説明する。
【0022】
最初に、図1を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態による放射線断層撮影装置は、放射線撮影装置11と、制御演算装置12とから構成される。
【0024】
放射線撮影装置11は、放射線源1と、放射線検出器2と、これらを支持するスキャナ装置3とを備える。放射線源1は、X線管である。放射線検出器2としては、放射線が入射するとその部分が発光するシンチレータ面の裏にCCD(電荷結合素子)パネルやTFT(薄膜トランジスタ)パネルを設置した2次元放射線検出器を用いる。放射線検出器2の検出器パネル71の上面の一部には、放射線源1からの放出される放射線を遮蔽できる遮蔽体74が設けられている。スキャナ装置3は、放射線源1と放射線検出器2の位置関係を保持したまま、保温材99が装着された配管10の長軸方向に、しかも同一方向に、並進走査する機能を有する。
【0025】
放射線源1は、制御装置21からの指令により出力電流を0から数ミリAまで制御できる。出力電流を変化させることによりX線発生量を制御できる。放射線検出器2は、多数の検出器(以下、「チャンネル」と称する)からなる検出器パネル71と、検出器パネル71から出力される各画素の出力を増幅する増幅回路72と、増幅器のアナログ出力をデジタル値に変換するAD変換回路73とを有する。AD変換回路73の出力は、透過画像データ51として順次制御装置21に転送される。増幅回路72のゲインは、制御装置21からの指令により変えられるが、画素ごとに変更できるものではなく、測定前に予め適当なゲイン値に設定してある。
【0026】
制御演算装置12は、画像取込装置20と、制御装置21と、画像再構成装置22と、判定装置24と、格納装置31と、再構成画像格納装置32から構成されている。
【0027】
画像取込装置20は、放射線検出器2で撮影した複数の透過画像データ51を取り込む。制御装置21は、スキャナ装置3や放射線源1、放射線検出器2を制御する。格納装置31は、画像取込装置20に取り込んだ複数の透過画像データ51と、放射線検出器2の各画素のチャンネル定数75を格納する。前述の放射線検出器2の検出器パネル71の上面に設けられた遮蔽体74と、チャンネル定数75を用いる点に本実施形態の特徴があり、この点については、後述する。
【0028】
判定装置24は、複数の透過画像データ51を格納装置31から読み込み、それらを静止画あるいは動画としてPCなどのモニタ上に表示し、表示された画像に基づき、操作者が画像再構成の要否判定結果や画像再構成領域を入力するために用いられる。画像再構成装置22は、被検体の断層像あるいは3次元立体像を再構成する。再構成画像格納装置32は、画像再構成装置22により再構成された被検体の断層像あるいは3次元立体像(再構成画像)を格納する。
【0029】
なお、使用者の利便性を考慮し、断層像あるいは3次元立体像(再構成画像)を用いた画像計測を実施する画像計測ソフトウェア等を搭載した画像計測装置23も、必要に応じて追加可能である。
【0030】
次に、図2を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置に用いる放射線検出器2の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置に用いる放射線検出器の構成を示す上面図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0031】
放射線検出器2の検出器パネル71の上面の一部には、遮蔽体74が設けてある。遮蔽体74の設置位置は、常に被検体を透過したX線ではなく、空気層のみを通過したX線ビームが直接入射する位置とする。すなわち、放射線源1から照射されるX線が、被検体によって遮られることのない位置に、設けられている。遮蔽体74の厚さは、対象被検体の材質,厚さや、放射線検出器の感度と出力や、X線管1と放射線検出器2の距離や、X線管の出力や、増幅回路72の設定ゲインなどにより適当に決定する必要がある。これについては後述する。
【0032】
次に、図3を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における検査方法について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における検査方法を示すフローチャートである。
【0033】
本実施形態の検査方法は、被検体撮影前の初期設定フロー3001と、撮影により透過画像データを取得する撮影フロー2001と、および取得した透過画像データに基づく画像再構成の要否判定および画像再構成を実施する画像処理フロー2002とから構成される。
【0034】
初期設定フロー3001において、システムは被検体に設置しない状態で、X線管電流を0から最大値まで変化させながら、透過画像を撮影する(処理3003)。本状態でのX線管1と放射線検出器2の位置関係は、その後に実施する被検体撮影時と同じにしておく。この処理時には、X線管1と放射線検出器2は移動する必要はないものである。その透過画像データを用いて、遮蔽体付きチャンネルの出力とその他のチャンネルの出力関係から、チャンネル定数75を求め(処理3004)、格納装置31に格納する(処理3005)。
【0035】
チャンネル定数75は、遮蔽体付きのリファレンスチャンネル(u1,v1)の出力I_refと、他のチャンネルの空気層出力I0(u,v)とから、両者の比(I0(u,v)/I_ref)として算出された値である。
【0036】
撮影フロー2001において、スキャナ装置3は、放射線源1および放射線検出器2を配管の長手方向に移動して、並進走査を開始する(処理2003)。放射線源1は、現在のスキャナ位置において放射線を出射し、配管を透過した放射線が放射線検出器2に入射することで透過画像を撮影する(処理2004)。画像取込装置20が放射線検出器2から取り込んだ透過画像データは格納装置31に保存される(処理2005)。
【0037】
そして、制御装置21がスキャナ装置3を配管の長軸方向に指定距離だけ移動させ(処理2006)、スキャナ装置3が配管の終端に到達しているか判定する(処理2007)。処理2007において、スキャナ装置3が配管の終端に到達していない場合、処理2004に戻り、現在のスキャナ位置における透過画像を撮影する。一方、スキャナ装置3が配管の終端に到達した場合、撮影は終了する(処理2008)。
【0038】
画像処理フロー2002では、格納装置31に保存された透過画像データを読み出し、必要に応じて判定装置24の画面に表示する(処理2009)。複数の透過画像データ51は、画面上において静止画または動画で表示される。
【0039】
読み出された透過画像データに基づき、操作者は表示された複数の透過画像データ51を目視確認し、配管の立体形状を観察するために配管の3次元画像を再構成する必要があるか否か判断する(処理2010,処理2011)。再構成の要否判定は、操作者の判断基準に基づいて実行してもよいし、何らかの基準を基準書であらかじめ決めておき、それに基づいて実行してもよい。画像再構成領域を指定し、判定装置24に入力し、再構成処理を指示する(処理2013)。
【0040】
画像再構成装置22は判定装置24からの実行指示により、該当する部分の透過画像データ51とチャンネル定数データ75を用いて画像再構成処理を行い、該当部分の3次元断層画像を出力する(2013)。そして、読み出した透過画像データが配管(検査対象)の終端の場合、処理は終了とし、終端でなければ読出し処理2010を繰り返す(処理2014)。なお、処理2011において画像再構成が不要と判断した場合、その透過画像データが配管の終端におけるデータであるか否か判定する(処理2014)。
【0041】
なお、上述の説明では、撮影と画像処理を並行に実施しているが、撮影が全て終了してから画像処理を実施してもよい。また、透過画像データとして、測定した生データを用いており、被検体のない空気層部分のデータは飽和している。そのかわりに、後述するように各チャンネルの減衰率を透過画像データ51とチャンネル定数データ75を用いて計算し、透過画像に対応する減衰率データ55を画像表示することもできる。
【0042】
次に、図4〜図8を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における被検体の断層像あるいは3次元立体像(再構成画像)の生成方法について説明する。
最初に、図4を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置の具体的構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置の具体的構成を示す斜視図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0043】
放射線撮影装置11において、放射線源1および放射線検出器2は、C字型アーム3aにより保持されている。C字型アーム3aは、ガイドレール3bの上を走査される。ガイドレール3bは、床面上に設置された支持脚3cにより、保温材(図示せず)を装着した配管10の長軸方向に沿うように配置される。また、C字型アーム3aは、配管10の外周面に沿うように形成されており、配管10を挟んで、放射線源1と放射線検出器2が対向配置される。
【0044】
C字型アーム3aが配管の長軸方向に一定距離だけ移動するごとに、透過画像データを1枚測定する。放射線源1にはX線管を使用するので、X線は連続的に照射される。C字型アーム3aが配管を走査中に放射線検出器2が撮影した透過画像データ51は、放射線検出器2から画像取込装置20に随時取り込まれる。一般的な2次元放射線検出器では30枚/秒の透過画像データを出力する。
【0045】
制御演算装置12は、図示のような構成をとる。制御演算装置12の各部は、図1にて説明したとおりである。
【0046】
次に、図5を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における撮影状態について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における撮影状態の説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0047】
図5に示すように、放射線源1および放射線検出器2がC字型アームにより保持されたまま移動し、所定のタイミングで、すなわち、配管の長軸方向に一定距離だけ移動するごとに、透過画像データ51が測定される。これにより、配管に沿って複数枚の透過画像データが得られる。
【0048】
次に、図6を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成に必要となる透過画像データの収集範囲について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成に必要となる透過画像データの収集範囲の説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。また、説明の簡単のため、図6では2次元撮影の場合を示している。3次元撮影の場合は、この2次元での考え方を拡張したものである。
【0049】
図6(a),(b),(c)に示すように、放射線源1および放射線検出器2が左から右に向かって並進走査する場合を考える。また、被検体として板状の物体10aを考え、この物体10aの内部の点10bに着目する。
【0050】
内部の点10bを透過する放射線5は、図6(a)に示す方向で並進走査を開始し、図6(b)の方向による透過を経て、図6(c)に示す方向にて終了する。放射線の開き角をθとすると、この並進走査の間に内部の点10bを透過する放射線5の角度範囲もθとなる。一般に、CT撮影により断層像を画像再構成するためには、被検体に対して180°〜360°の方向から放射線を透過させる必要がある。
【0051】
これに対して、本実施形態の放射線撮影装置11では、放射線の透過方向は角度θとなる。この角度θは、放射線源1の放射角または放射線検出器2の検出面の大きさにより決まり、40°〜60°程度となる。このような条件下において画像再構成をするためには、投影角度が制限された状態で画像再構成を行う手法(Limited Angle 画像再構成)が必要となる。
【0052】
Limited Angle 画像再構成手法はこれまでに多数提案されている。以下ではその一手法であるDTS(Digital Tomosynthesis)法を例として、画像再構成の方法を説明する。もちろん、他のLimited Angle 画像再構成手法を適用することも可能である。
【0053】
次に、図7を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法による画像再構成の原理について説明する。
図7は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法による画像再構成の原理の説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0054】
ここでは、説明の簡単のため、放射線源1のみが並進移動し、放射線検出器2は固定しているものとして説明する。
【0055】
被検体は、厚さのない円形の被検体10cおよび矩形の被検体10dとする。被検体10cおよび被検体10dは、放射線源1から放射線検出器2に向かう方向軸に垂直であって、放射線検出器2に平行に配置されているものとする。また、被検体10cおよび被検体10dは、放射線源1からの距離が異なるものとする。
【0056】
被検体10c,10dは、放射線源1が並進走査する際の各位置に対応して、図に示すような透過画像データ51が撮影される。これらの透過画像データ51から円形の被検体10cを含む断面を再構成する場合、各透過画像データ51における被検体10cの投影部が重ね合わさるように各透過画像データ51を移動させた後、全ての透過画像データ51を重ね合わせる。この処理により、円形の像が鮮明となる。各透過画像データ51の移動量は、各透過画像データ51を撮影する間の放射線源1の移動量、放射線源1と円形の被検体10cを含む断面との距離、および円形の被検体10cを含む断面と放射線検出器2との距離により決まる。
【0057】
一方、各透過画像データ51における被検体10dの投影部は、上記透過画像データ51の移動および重ね合わせ処理により、不鮮明な像となる。この結果、円形の被検体10cと矩形の被検体10dとにコントラスト差が発生し、被検体10cの再構成画像である断層像52を生成することができる。
【0058】
同様に、放射線源1に対して被検体10cと異なる深さ位置にある被検体10dも、前述の再構成方法と同じ手法で再構成画像を生成できる。このように、配管をスクリーニングするために撮影する配管の透過画像を用いて、配管の断層像又は3次元画像を再構成することができるため、データの取り直しは必要ないものである。
【0059】
次に、図8を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法のようなLimited Angle再構成画像手法を配管の撮影に適用した場合について説明する。
図8は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法のようなLimited Angle再構成画像手法を配管の撮影に適用した場合の説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0060】
放射線撮影装置11およびDTS法のようなLimited Angle再構成画像手法を配管の撮影に適用した場合、再構成画像52は、図8に示すように、放射線源1から放射線検出器2に向かう軸と平行な法線ベクトルを持つ断面として生成される。また、放射線源1と放射線検出器2の間に、放射線源1からの距離が異なる複数枚の再構成画像52が生成される。この再構成画像52を放射線源1から放射線検出器2に向かう軸方向に積み上げることで3次元立体像53を構築できる。
【0061】
次に画像再構成の処理フローを説明する。
【0062】
最初に、図17〜図19を用いて、従来の画像再構成の処理について説明する。
図17は、従来の画像再構成の処理内容を示すフローチャートである。図18は、従来の画像再構成方法で使用するデータの説明図である。図19は、従来の画像再構成方法におけるX線強度と検出器の出力の関係の説明図である。
【0063】
最初に、図17を用いて、従来の画像再構成の処理内容について説明する。
【0064】
初めに、入力データ名や演算パラメータなどの演算条件を入力する条件入力処理9001が実行される。次に、入力された演算条件に基づき、画像再構成装置が放射線撮影装置により撮影された透過画像データを格納装置から読み込む透過画像データ読込処理9002、および空気層データを格納装置から読み込む空気層データ読込処理9003が実行される。この透過画像データ読込処理9002、空気層データ読込処理9003では、配管の欠陥部の状態を確認するために画像の再構成を必要とする配管の部位を撮影した第1の透過画像データと、第1の透過画像データの前後で撮影された第2の透過画像データを読み込む。なお、空気層データとは、被検体がない状態で撮影したデータのことであり、減衰のない放射線強度を取得したものである。このデータは次の処理において使用する。
【0065】
次に、対数変換処理9004が実行される。対数変換処理とは、減衰のない放射線強度と被検体を透過して減衰した放射線強度との比を対数変換し、減衰率aを求める処理であり、以下の式(1)で表される。
a(u,v)=In((I0(u,v))/I(u,v))=∫μdt …(1)
ここで、a(u,v)は放射線検出器上の位置(u,v)における減衰率、I0(u,v)は放射線検出器上のチャンネル(u,v)において放射線検出素子により検出された減衰のない放射線強度(検出器出力)、I(u,v)は同位置において検出された減衰のある放射線強度を表す。また、μは材質や放射線エネルギに依存した線減衰係数を、tは放射線の透過経路を表す。
【0066】
画像の再構成は、式(1)の左辺を入力値として、線減衰係数μの空間分布を求める処理である。続いて、前処理9005が実行される。前処理9005では、多数の検出素子間におけるばらつきや欠陥のある素子に対する補正や装置に依存した補正などを実施する。この前処理9005は、場合に応じて対数変換処理9004の前で実施してもよい。
【0067】
以上の処理の後、逆投影演算処理9006が実行される。逆投影演算処理は、これまでに補正、変換したデータを2次元または3次元の空間にマッピング(逆投影)する処理である。先に説明したDTS法では、透過画像データの移動および重ねあわせ処理に対応する。この逆投影演算により最終的に2次元断層像または3次元立体像(再構成画像)が生成される。
【0068】
次に、図18を用いて、従来の方法で使用するデータについて説明する。
【0069】
図18は、従来の格納装置内に格納されたデータを示している。空気層データ932は、被検体を撮影する前に予め測定されている。空気層データ932と透過画像データ933を用いて、減衰率934が求められる。すなわち、予め求めておく空気層データが検出器出力飽和の状態で測定されたのでは意味がないので、被検体無しの状態でも検出器の出力は飽和しないように、X線発生装置の出力を絞る、または増幅回路のゲインを下げることが必要である。
【0070】
次に、図19を用いて、X線強度と検出器の出力の関係について説明する。図19の横軸はX線強度、縦軸は検出器の出力(各チャンネルの出力を増幅器で増幅した電圧)を示している。
【0071】
検出器の各チャンネルが蓄積できるX線により発生した電荷量に上限があること、また2次元検出器や増幅回路の増幅出力には上限があることから、検出器出力はある電圧で飽和する。一点鎖線953は増幅回路のゲインが高い場合(ケース1)、実線954は増幅器のゲインを適切により低く設定した場合(ケース2)を示す。検出器の出力は検出器や増幅回路の測定範囲955を越えると飽和する。
【0072】
従って、X線強度が最も強い空気層の場合(956)にも検出器出力が飽和しないようにするためには、ケース2のようにX線強度と増幅回路のゲインを設定する必要がある。このように設定すれば、空気層測定時の検出器出力I0(957)を飽和出力以下に抑えることができる。
【0073】
通常透過撮影に用いられる出力225kVのX線管を使用した場合、被検体を透過したX線は鉄の厚さ2cmで約2桁減衰することが予想される。すなわち、図19において、被検体を透過したX線強度範囲958に対応する検出器出力I(959)は空気層の場合の出力I0(957)に比べて2桁小さなレベルとなることを意味する。このため、X線フォトン数の減少による出力揺らぎの増加や、AD変換時の誤差の増加により、測定データのS/Nが低下する恐れがある。透過画像データのS/Nの低下は断層画像の画質低下につながる。
【0074】
しかしながら、前述のように被検体撮影時にも放射線検出器のすべてのチャンネルにおいて出力が飽和しないように撮影条件を決める必要があるため、測定データのS/Nが低下する恐れがあり、ひいては断層画像の画質低下につながるという問題点がある。
【0075】
次に、図9〜図11を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成の処理について説明する。
図9は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成の処理内容を示すフローチャートである。図10は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法で使用するデータの説明図である。図11は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法におけるX線強度と検出器の出力の関係の説明図である。
【0076】
最初に、図9を用いて、本実施形態による画像再構成の処理内容について説明する。
【0077】
初めに、入力データ名や演算パラメータなどの演算条件を入力する条件入力処理1001が実行される。次に、入力された演算条件に基づき、画像再構成装置22が放射線撮影装置11により撮影された透過画像データ51を格納装置31から読み込む透過画像データ読込処理1002、およびチャンネル定数データ75を格納装置から読み込むチャンネル定数データ読込処理1003が実行される。
【0078】
本実施形態では、空気層データを格納装置に予め格納しておくのではなく、チャンネル定数データ75を使用する。この透過画像データ読込処理1002、チャンネル定数データ読込処理1003では、配管の欠陥部の状態を確認するために画像の再構成を必要とする配管の部位を撮影した第1の透過画像データと、第1の透過画像データの前後で撮影された第2の透過画像データを読み込む。
【0079】
次に、透過画像データから各チャンネルの空気層データを推定する空気層データ計算処理1004が実施される。これは遮蔽体付きチャンネルの測定データとチャンネル定数データ75を用いて各チャンネルの空気層データを計算する処理である。詳細は後述する。
【0080】
次に、対数変換処理1005が実行される。この処理は従来と同様に、減衰のない放射線強度(空気層データ)と被検体を透過して減衰した放射線強度との比を対数変換し減衰率aを求める処理である。ただし、空気層データは空気層データ計算処理1004で計算されたデータを用いる。
【0081】
続いて、前処理1006が実行され、逆投影演算処理1007が実行され最終的に2次元断層像または3次元立体像(再構成画像)が生成される。
【0082】
次に、図10を用いて、本実施形態の方法で使用するデータについて説明する。
【0083】
本実施形態では、空気層データを格納装置に予め格納しておくのではなく、チャンネル定数75を使用する。図10は、本実施形態における格納装置31の格納データを示している。2次元放射線検出器2は、u1×v1のチャンネル数を有する。減衰率データ55は、チャンネル定数75と測定した透過画像データ51から求まる。
【0084】
なお、測定値I(u,v)が飽和している時は、減衰率は0である。
【0085】
次に、図11を用いて、本実施形態におけるX線強度と検出器の出力の関係について説明する。図11の横軸は検出器に入るX線の強度、縦軸は検出器の出力(各チャンネルの出力を増幅器で増幅した電圧)を示している。
【0086】
検出器の出力特性(増幅回路のゲインとX線管の出力電流)は被検体を透過したX線強度で検出器出力が飽和しない最大ゲインと最大電流に設定する。各チャンネルの出力特性101は、図11に示すようになる。配管を透過したX線のレベル103が検出器に入射した場合の検出器出力104は検出器出力の飽和レベルImaxよりも低く且つできるだけ大きくなるように増幅回路のゲインとX線管の出力を決定する。とくに、X線管出力はできるだけ大きくし、X線フォトン数を増加させ、増幅回路のゲインはできるだけ低くし回路ノイズを低下させるように設定する。
【0087】
以下の説明では、簡単のため、リファレンスチャンネルは1チャンネル(u1,v1)とし、I_ref=I(u1,v1)である。遮蔽体付きのリファレンスチャンネル(u1,v1)は被検体を透過しないX線105にさらされるが、遮蔽体によりX線が遮蔽されるためリファレンスチャンネルの出力I_ref(106)は検出器出力の飽和レベルImaxを超えることはなく、撮影中常に測定可能である。また、そのように遮蔽体の厚さを設定し、設置する。
【0088】
遮蔽体は一定の厚さに固定して設置しておいても良いが、被検体が厚く増幅回路のゲインを上げる必要のある場合には厚く、被検体が薄く増幅回路のゲインを下げる場合には薄く、変更できるように取り外し式とすることも良い。遮蔽体はX線遮蔽能力の高い物質が望ましいため、タングステンやその合金がよい。もちろん、鉛などの密度と原子番号の高い物質が使用できる。
【0089】
リファレンスチャンネル以外の通常のチャンネルは、被検体を透過しないX線(空気層)にさらされる場合には当然検出器出力が飽和するが、その空気層出力の推定値I0(u,v)は、次の式(2)となる。
I0(u,v)=k(u,v)×I_ref …(2)
図11では、この推定値107を示している。
【0090】
従って、チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)は、以下の式(3)、式(4)により、求められる。
【0091】
ここで、I(u,v)<Imaxの場合は、
a(u,v)=In(k(u,v)×I_ref/I(u,v)) …(3)
すなわち、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)は、チャンネル定数k(u,v)に遮蔽体で覆われたリファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、リファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして求められる。
【0092】
また、I(u,v)=Imaxの場合は、
a(u,v)=0 …(4)
となる。すなわち、測定値I(u,v)が飽和している時は、減衰率は0である。
【0093】
ここで、a(u,v)は放射線検出器上の位置(u,v)における減衰率、k(u,v)は放射線検出器上のチャンネル(u,v)のチャンネル定数、I(u,v)は同位置において検出された放射線強度、I_refは遮蔽体付きリファレンスチャンネルの放射線強度、Imaxは検出器の飽和出力を示している。
【0094】
これまでの説明では、リファレンスチャンネルは1チャンネルであったが、2次元放射線検出器の各チャンネルのサイズは0.2から0.5ミリ角程度であるので、1チャンネルに遮蔽体を設置するのは困難である。また、遮蔽体によりそのチャンネルに入射するX線量が2桁ほど低下するため、複数チャンネルの測定から平均処理する。設置する遮蔽体の実用的な大きさを考慮すると5ミリ角の遮蔽体でも100チャンネルを遮蔽できるので、平均処理によりリファレンスチャンネルの出力揺らぎを遮蔽体無しで測定するのと同等に保持できる。
【0095】
以上述べたように、本実施形態によれば、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、被検体を透過するX線をS/N良く測定できるので、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できる。
【0096】
次に、図12〜図14を用いて、本実施形態による放射線断層撮影装置における表示例について説明する。
図12及び図13は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における複数の透過画像データの表示例の説明図である。図14は、本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における3次元立体像の表示例の説明図である。
【0097】
図12及び図13は、複数の透過画像データを判定装置24の画面上に表示した画面の一例を示している。この図では、透過画像読込ボタン60を押下することで、透過画像データ格納装置31から透過画像データを読み込み、複数の透過画像データ51を画面上に動画として表示する。図7に示すように、透過画像データ51は放射線源1と放射線検出器2との間に位置する被検体10c及び10dを深さ方向に重ね合わせた画像となる。そのため、配管の2次元画像や3次元画像を再構成しなくとも、透過画像データ51における濃淡表示で配管の減肉部63を表示することができる。また、減肉などの欠陥が生じた配管の箇所を透過画像によってスクリーニングすることで2次元画像や3次元画像を再構成する領域を絞り込むことができるため、画像再構成の演算量を低減することが可能である。更に、配管全長に渡って再構成する必要もないため、2次元画像や3次元画像を保存する再構成画像格納装置の記憶容量を削減することもできる。
【0098】
操作者は透過画像データ51を確認し、配管の減肉部63を見つけた場合には、配管の3次元画像で減肉部63を確認するために動画を停止するボタン61を押下する。そして、画像再構成の要否を判定するボタン62を押下して判定結果を入力する。
【0099】
画像の再構成が必要と判断した場合には、画面が図13に遷移する。この画面上で、PCに接続されたマウスなどの入力装置を用いてポインタ64で再構成領域65を指定し、ボタン66を押下して演算を実行する。ボタン66を押下することで、画像再構成装置22に対して画像の再構成を行う指令を出す。再構成領域65を指定する際には、配管の減肉部63を囲むように、矩形で指定すれば良い。
【0100】
図14は、透過画像の再構成領域65に相当する配管部位について2次元断層像または3次元立体像を画面上に表示した結果を示している。2次元断層像又は3次元立体像を再構成することで、配管の減肉部63の立体的形状を容易に確認することができる。このように、透過画像データにおいて配管の減肉など欠陥が疑われる箇所のみを2次元断層像又は3次元立体像で確認できる。
【0101】
以上述べたように、本実施形態によれば、被検体を透過するX線をS/N良く測定できるので、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できるので、プラント等に据え付けられた配管等の放射線撮影による非破壊検査において、高画質の断層画像を得ることができる。
【0102】
次に、図15及び図16を用いて、本発明の他の一実施形態による放射線断層撮影装置の構成及び動作について説明する。
図15は、本発明の他の一実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。図16は、本発明の他の実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法で使用するデータの説明図である。
【0103】
本実施形態では、図1に示したように、放射線検出器2の検出器パネル71上に遮蔽体を設けるのではなく、図15に示すように、モニタ検出器81を放射線検出器2の近傍に設けている。モニタ検出器81は、放射線源1から発生する放射線が常に直接照射される位置に設置する。
【0104】
放射線検出器2は、図1にて説明したように、放射線が入射するとその部分が発光するシンチレータ面の裏にCCD(電荷結合素子)パネルやTFT(薄膜トランジスタ)パネルを設置した2次元放射線検出器である。したがって、放射線検出器2の各チャンネルのダイナミックレンジは狭いものである。
【0105】
一方、モニタ検出器81は、出力が飽和しない半導体検出器、イオンチェンバなどの放射線検出器を電流出力で用いる。モニタ検出器81は、例えば、放射線が入射するとその部分が発光するシンチレータ面の裏に、空乏層を有するシリコンを設置したものである。モニタ検出器81は、放射線検出器2の個々のチャンネルの大きさよりも大きなものである。したがって、モニタ検出器81は、放射線検出器2の各チャンネルに比べて、ダイナミックレンジが広いものである。すなわち、モニタ検出器81におけるX線強度と検出器の出力の関係は、図11に示した空気層出力の推定値107と同様の特性を有するものである。
【0106】
モニタ検出器81の出力は、検出回路82で増幅・AD変換され、制御装置により、透過画像データ51の撮影と同期して、格納装置31に格納される。
【0107】
次に、図16を用いて、本実施形態における格納装置31の格納データについて説明する。
【0108】
本実施形態では、チャンネル定数データ76、透過画像データ51の他に、モニタ検出器81の測定データ(I_ref)77が格納され、減衰率データ78はチャンネル定数データ76、モニタ検出器81の測定データ77、および透過画像データ51から求まる。チャンネル定数データはモニタ検出器の出力を基準に決定される。
【0109】
チャンネル定数データ76は、モニタ検出器81の測定データ(I_ref)と、他のチャンネルの空気層出力I0(u,v)とから、(I0(u,v)/I_ref)として算出された値である。
【0110】
各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)は、前述の式(3)により求められる。すなわち、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)は、チャンネル定数k(u,v)にモニタ検出器81の測定データであるリファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、リファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして求められる。
【0111】
なお、測定値I(u,v)が飽和している時は、減衰率は0である。
【0112】
初期設定フローは、チャンネル定数データがモニタ検出器の出力を基準に決定されることを除けば、図3と同様であり、また、撮影フローと画像処理フローも同様であるので、説明は省略する。再構成処理もI_refがモニタ検出器出力であることを除けば同様である。
【0113】
本実施形態によれば、測定データの高S/N化に必要な高放射線量と測定回路の高ゲイン設定を両立させ、被検体を透過するX線をS/N良く測定できるので、放射線透過画像データから断層画像を高画質に再構成できる。
【0114】
また、放射線検出器2の増幅回路72のゲインを変更しても遮蔽体の厚さを変更する手間が省けるため、より簡便に実現できる。
【0115】
なお、以上の説明では、いずれも放射線源と放射線検出器を被検体に対して同方向に並進させる検査システムであったが、放射線源又は放射線検出器のいずれかを移動、回転させたり、逆方向に並進させたりするような検査システムでも同様の効果が得られるものである。
【0116】
また、産業用X線CT装置のようにターンテーブルに被検体をのせて、回転させ、断層像を得るシステムにおいても、被検体に常に遮蔽されない検出器に遮蔽体を設置したり、被検体に常に遮蔽されない位置に別のモニタ検出器を設置したりして、チャンネル定数とモニタ検出器の出力情報から書くチャンネルの空気層データを求めることにより、同様の効果が得られる。
【0117】
なお、本発明は、発電プラントに設置された配管だけでなく、航空機の翼など、大型の構造物に対しても放射線による検査が高画質で効率よく実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置に用いる放射線検出器の構成を示す上面図である。
【図3】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における検査方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置の具体的構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における撮影状態の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成に必要となる透過画像データの収集範囲の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法による画像再構成の原理の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置におけるDTS法のようなLimited Angle再構成画像手法を配管の撮影に適用した場合の説明図である。
【図9】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法で使用するデータの説明図である。
【図11】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法におけるX線強度と検出器の出力の関係の説明図である。
【図12】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における複数の透過画像データの表示例の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における複数の透過画像データの表示例の説明図である。
【図14】本発明の一実施形態による放射線断層撮影装置における3次元立体像の表示例の説明図である。
【図15】本発明の他の一実施形態による放射線断層撮影装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の他の実施形態による放射線断層撮影装置における画像再構成方法で使用するデータの説明図である。
【図17】従来の画像再構成の処理内容を示すフローチャートである。
【図18】従来の画像再構成方法で使用するデータの説明図である。
【図19】従来の画像再構成方法におけるX線強度と検出器の出力の関係の説明図である。
【符号の説明】
【0119】
1…放射線源、2…放射線検出器、3…スキャナ装置、3a…C字型アーム、3b…ガイドレール、3c…支持脚、5…放射線、10…配管、10a…物体、10c…被検体、10d…被検体、11…放射線撮影装置、12…制御演算装置、22…画像再構成装置、23…画像計測装置、24…判定装置、26…入力装置、27…記憶装置、28…減衰量計算プログラム、29…演算装置、30…記憶装置、31…格納装置、41…演算装置、42…記憶装置、51…透過画像データ、52…再構成画像、55、78…減衰率データ、71…検出器パネル、72…増幅回路、73…AD変換回路、74…遮蔽体、75…チャンネル定数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体をはさんで対向配置される放射線源と2次元放射線検出器とを有する放射線撮影装置と、前記放射線源から照射され、前記被検体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出して得られる前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する制御演算装置とを有する放射線断層撮影装置であって、
前記放射線撮影装置は、前記放射線検出器の複数のチャンネルの内、その一部において前記放射線源から照射される放射線を遮蔽する遮蔽体を備え、
該遮蔽体によって放射線が遮蔽されたチャンネルをリファレンスチャンネルとし、
前記制御演算装置は、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネル以外の各チャンネルの出力I0(u,v)と、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネルの出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する格納装置と、
前記チャンネル定数k(u,v)に、前記リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態におけるリファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する画像再構成装置とを備える
ことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する放射線断層撮影方法であって、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの内、前記放射線源から照射される放射線を遮蔽体により遮蔽されたリファレンスチャンネルの出力I_refと、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネル以外のチャンネルの出力I0(u,v)との比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を算出し、
前記チャンネル定数k(u,v)に、前記リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態におけるリファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換して、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出することを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項3】
被検体をはさんで対向配置される放射線源と2次元放射線検出器とを有する放射線撮影装置と、前記放射線源から照射され、前記被検体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出して得られる前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する制御演算装置とを有する放射線断層撮影装置であって、
前記放射線撮影装置は、前記放射線源から照射される放射線が常に照射される位置に配置され、前記放射線検出器の各チャンネルよりも広いダイナミックレンジを有するモニター検出器を備え、
前記制御演算装置は、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの出力I0(u,v)と、前記モニター検出器の出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する格納装置と、
前記チャンネル定数k(u,v)に、前記モニター検出器の出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する画像再構成装置とを備える
ことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する放射線断層撮影方法であって、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの出力I0(u,v)と、 前記放射線源から照射される放射線が常に照射される位置に配置され、前記放射線検出器の各チャンネルよりも広いダイナミックレンジを有するモニター検出器の出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を算出し、
前記チャンネル定数k(u,v)に、前記モニター検出器の出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出することを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項1】
被検体をはさんで対向配置される放射線源と2次元放射線検出器とを有する放射線撮影装置と、前記放射線源から照射され、前記被検体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出して得られる前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する制御演算装置とを有する放射線断層撮影装置であって、
前記放射線撮影装置は、前記放射線検出器の複数のチャンネルの内、その一部において前記放射線源から照射される放射線を遮蔽する遮蔽体を備え、
該遮蔽体によって放射線が遮蔽されたチャンネルをリファレンスチャンネルとし、
前記制御演算装置は、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネル以外の各チャンネルの出力I0(u,v)と、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネルの出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する格納装置と、
前記チャンネル定数k(u,v)に、前記リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態におけるリファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する画像再構成装置とを備える
ことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する放射線断層撮影方法であって、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの内、前記放射線源から照射される放射線を遮蔽体により遮蔽されたリファレンスチャンネルの出力I_refと、前記放射線検出器の前記リファレンスチャンネル以外のチャンネルの出力I0(u,v)との比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を算出し、
前記チャンネル定数k(u,v)に、前記リファレンスチャンネルの出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態におけるリファレンスチャンネル以外の各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換して、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出することを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項3】
被検体をはさんで対向配置される放射線源と2次元放射線検出器とを有する放射線撮影装置と、前記放射線源から照射され、前記被検体を透過した放射線を前記放射線検出器により検出して得られる前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する制御演算装置とを有する放射線断層撮影装置であって、
前記放射線撮影装置は、前記放射線源から照射される放射線が常に照射される位置に配置され、前記放射線検出器の各チャンネルよりも広いダイナミックレンジを有するモニター検出器を備え、
前記制御演算装置は、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの出力I0(u,v)と、前記モニター検出器の出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を格納する格納装置と、
前記チャンネル定数k(u,v)に、前記モニター検出器の出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出する画像再構成装置とを備える
ことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項4】
被検体をはさんで放射線源と放射線検出器を対向配置し、撮影した前記被検体の透過データの集合から、前記被検体の断層像を構築する放射線断層撮影方法であって、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置されてない状態における、前記放射線検出器の各チャンネルの出力I0(u,v)と、 前記放射線源から照射される放射線が常に照射される位置に配置され、前記放射線検出器の各チャンネルよりも広いダイナミックレンジを有するモニター検出器の出力I_refとの比(I0(u,v)/I_ref)からなるチャンネル定数k(u,v)を算出し、
前記チャンネル定数k(u,v)に、前記モニター検出器の出力値I_refを乗じ、前記放射線源と前記放射線検出器との間に前記被検体が設置された状態における各チャンネルにおける出力I(u,v)で除したものを、対数変換したものとして、各チャンネル(u,v)の減衰率a(u,v)を算出することを特徴とする放射線断層撮影方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−276285(P2009−276285A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129768(P2008−129768)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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