説明

放射線画像撮影装置

【課題】撮影対象者による不快感を低減することができると共に、撮影時における使い勝手を向上させることのできる放射線画像撮影装置を得る。
【解決手段】放射線が照射されることにより光を発生するシンチレータ8、当該シンチレータ8で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されたセンサ部、および当該センサ部で発生された電荷を読み出すための薄膜トランジスタが形成されたTFT基板30を有する放射線検出器20が収容された放射線検出ユニット42を、少なくとも放射線検出器20により放射線画像の撮影を行う際に放射線Xの照射方向に対して、放射線検出器20の動作を制御する制御部50が収容された制御ユニット43に重ならないように当該制御ユニット43の側方に位置され、かつ厚さを制御ユニット43に比較して薄くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線検出器を備えた放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、X線等の放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されている。この放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置は、従来のX線フイルムやイメージングプレートを用いた放射線画像撮影装置に比べて、即時に画像を確認でき、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)も行うことができるといったメリットがある。
【0003】
この種の放射線検出器は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を一度CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光をフォトダイオードなどのセンサ部で電荷に変換して蓄積する間接変換方式がある。放射線画像撮影装置では、放射線検出器に蓄積された電荷を電気信号として読み出し、読み出した電気信号をアンプで増幅した後にA/D(アナログ/デジタル)変換部でデジタルデータに変換している。
【0004】
この種の放射線画像撮影装置に関する技術として、特許文献1には、入射した放射線の強度に応じた発光を行う第1層と、前記第1層から出力された光を電気エネルギーに変換する有機化合物からなる第2層と、前記第2層で得られた電気エネルギーに基づく信号の出力を行う第3層と、を有する撮像パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−172783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、放射線画像撮影装置は、特に撮影対象者が臥位とされた状態で放射線画像の撮影を行う際には、当該撮影対象者とベッドとの間に放射線画像撮影装置を挿入する必要があるため、放射線画像撮影装置の厚さが薄いほうが、使い勝手の面や、撮影対象者に対する不快感を低減するうえで好ましい。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、撮像パネル(放射線検出器)を収容する略直方体状の筐体に、当該撮像パネルによる放射線画像の撮影動作を制御する制御部も収容されているため、放射線画像撮影装置を必ずしも十分に薄型化することができるとは限らない、という問題点があった。
【0008】
すなわち、放射線検出器による撮影動作を制御する制御部に含まれる電子部品は、インダクタンス、コイル等といった比較的高さのあるものが多く、制御部の高さが放射線検出器の高さ(厚さ)より高い場合が一般的である。このため、上記特許文献1に開示されている技術では、上記制御部の高さが放射線画像撮影装置全体の薄型化を妨げることになり、当該放射線画像撮影装置を十分には薄型化することができないのである。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、撮影対象者による不快感を低減することができると共に、撮影時における使い勝手を向上させることのできる放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線画像撮影装置は、制御部が収容された制御ユニットと、放射線が照射されることにより光を発生する発光層、当該発光層で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されたセンサ部、および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子が形成された基板を有すると共に前記制御部によって動作が制御される放射線検出器が収容され、少なくとも前記放射線検出器により放射線画像の撮影を行う際に前記放射線の照射方向に対して前記制御ユニットに重ならないように当該制御ユニットの側方に位置され、かつ厚さが前記制御ユニットに比較して薄い放射線検出ユニットと、を備えている。
【0011】
請求項1記載の放射線画像撮影装置によれば、制御部が制御ユニットに収容される一方、放射線が照射されることにより光を発生する発光層、当該発光層で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されたセンサ部、および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子が形成された基板を有すると共に前記制御部によって動作が制御される放射線検出器が放射線検出ユニットに収容される。
【0012】
ここで、本発明では、前記放射線検出ユニットが、少なくとも前記放射線検出器により放射線画像の撮影を行う際に前記放射線の照射方向に対して前記制御ユニットに重ならないように当該制御ユニットの側方に位置されると共に、厚さが前記制御ユニットに比較して薄くされている。
【0013】
この構成により、本発明では、放射線画像の撮影を行う際に、前記放射線検出ユニットが前記照射方向に対して前記制御ユニットに重なる場合に比較して、放射線検出ユニットの部分の厚さを薄くすることができる結果、撮影対象者による不快感を低減することができると共に、撮影時における使い勝手を向上させることができるようにしている。
【0014】
このように、請求項1に記載の放射線画像撮影装置によれば、放射線が照射されることにより光を発生する発光層、当該発光層で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されたセンサ部、および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子が形成された基板を有する放射線検出器が収容された放射線検出ユニットを、少なくとも前記放射線検出器により放射線画像の撮影を行う際に前記放射線の照射方向に対して、前記放射線検出器の動作を制御する制御部が収容された制御ユニットに重ならないように当該制御ユニットの側方に位置され、かつ厚さを前記制御ユニットに比較して薄くしたので、撮影対象者による不快感を低減することができると共に、撮影時における使い勝手を向上させることができる。
【0015】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記放射線検出ユニットが、被写体を透過した放射線が透過する透過面を有すると共に、前記放射線が入射される面の反対側の面に前記放射線検出器が直接的に取り付けられた天板を有してもよい。有機光電変換材料は、可撓性を有し、耐荷重性も有する。このため、患者の荷重が加わる天板に放射線検出器を直接取り付けることができる。これにより、放射線検出ユニットの耐衝撃性を向上させることができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、天板の厚みを薄くしたり、天板を構成する材料を軽量で剛性の低いものとしたりすることができ、これによって放射線検出ユニットのさらなる薄型化や軽量化を図ることができる。
【0016】
特に、請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記天板が、前記放射線検出器の前記基板が直接的に取り付けられていてもよい。これにより、撮影によって得られる放射線画像の分解能を高くすることができると共に、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0017】
また、請求項2または請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記放射線検出器が、前記天板に離間可能に取り付けられていてもよい。これにより、効率的に筐体の交換を行うことができる。
【0018】
また、請求項2から請求項4の何れか1項記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記放射線検出器と前記天板との間に内部空間が形成されるように前記放射線検出器を前記天板に対して接着する接着部材と、前記内部空間および外部を連通すると共に、外部から前記内部空間への異物の混入を阻止する通気手段と、をさらに備えてもよい。
【0019】
本発明によれば、接着部材を用いて放射線検出器および天板の間に内部空間が形成されるように放射線検出器を天板に接着しているので、放射線検出器および天板に対する接着部材の接触面に空気が残存していても、その残存していた空気を内部空間に逃がすことができる。また、通気手段にて内部空間と外部とが連通しているので、気圧が変化した場合でも、内部空間の圧力と外部の気圧とを一定に保つことができる。そのため、気圧変化によって天板に対する放射線検出器の接着性が低下することを防止することができる。
【0020】
また、通気手段は、外部から内部空間への異物の混入を阻止するので、前記内部空間に放射線を吸収する金属片等の異物が混入して放射線画像に表示される懸念を排除することができる。従って、放射線画像の品質低下に繋がる異物混入を抑えることができる。
【0021】
特に、請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記通気手段が、前記接着部材に形成されて前記内部空間および外部を曲がった状態で連通する連通路であってもよい。
【0022】
本発明によれば、連通路が曲がっているので、外部から連通路に空気と共に異物が流入した場合でも、前記異物が内部空間に混入することを防止することができる。なぜなら、異物の質量が空気の質量よりも大きいので、連通路の曲がっている部位を流通する空気の流れに前記異物が追従することはできないからである。また、連通路が接着部材に形成されているので、前記異物が連通路の壁面に付着し易くなる。従って、連通路の曲がっている部位で空気の流れに追従できなくなった異物が接着性を持った連通路の壁面で確実に捕捉される。これにより、内部空間への異物の混入をより一層確実に防止することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記通気手段が、前記接着部材に形成されて前記内部空間および外部を連通する連通路と、前記連通路と外部との間の空気の流れを許可し、かつ外部から前記連通路への異物の混入を阻止するフィルタ部材と、が設けられていてもよい。これにより、内部空間および外部の連通と、外部から内部空間への異物の混入の阻止とを簡易な構成で実現することができる。
【0024】
また、請求項5から請求項7の何れか1項に記載の発明は、請求項8に記載の発明のように、前記接着部材が、外的要因が作用することにより接着力が変化する材質で構成されていてもよい。
【0025】
本発明によれば、接着部材の接着力を変化させることができるので、例えば、放射線検出器を天板から剥離する場合に前記接着部材の接着力を低下させたり、前記放射線検出器を前記天板に接着する場合に前記接着部材の接着力を上昇させたりすることができる。これにより、放射線検出器の天板からの剥離時に当該放射線検出器が破損したり、天板に接着されている放射線検出器が剥離したりする懸念を排除することができる。
【0026】
また、請求項2から請求項8の何れか1項に記載の本発明は、請求項9に記載の発明のように、前記天板が、前記放射線検出ユニットの筐体の一部を構成してもよい。これにより、天板を筐体とは別に構成する場合に比較して、より簡易に天板を構成することができる。
【0027】
また、請求項2から請求項9の何れか1項に記載の本発明は、請求項10に記載の発明のように、前記天板が、強化繊維樹脂を含む材料により構成されていてもよい。これにより、天板をカーボン単体等で構成した場合に比較して、天板の強度を高くすることができる。
【0028】
特に、請求項10に記載の発明は、請求項11に記載の発明のように、前記強化繊維樹脂が、炭素繊維強化プラスチックであるものとしてもよい。これにより、天板をカーボン単体等で構成した場合に比較して、天板の熱伝導性を高くすることができる結果、放射線検出器により得られた放射線画像の温度むらに起因する画像むらを抑制することができる。
【0029】
また、本発明は、請求項12に記載の発明のように、放射線画像の撮影時における前記放射線検出器の湾曲の度合いを計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果に応じて、前記放射線検出器によって得られた画像情報により示される放射線画像の歪みを補正する補正手段と、をさらに備えてもよい。これにより、放射線検出器が湾曲した場合であっても、当該湾曲に起因する放射線画像の歪みを抑制することができる。
【0030】
また、本発明は、請求項13に記載の発明のように、前記基板が、プラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバの何れかにより構成されていてもよい。これにより、放射線検出器の剛性を高くすることができる結果、天板を薄くすることができる。
【0031】
さらに、本発明は、請求項14に記載の発明のように、前記スイッチング素子を、活性層に非晶質酸化物を含んで構成された薄膜トランジスタとしてもよい。これにより、当該スイッチング素子により放射線を吸収しないか、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、当該スイッチング素子におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の放射線画像撮影装置によれば、放射線が照射されることにより光を発生する発光層、当該発光層で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されたセンサ部、および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子が形成された基板を有する放射線検出器が収容された放射線検出ユニットを、少なくとも前記放射線検出器により放射線画像の撮影を行う際に前記放射線の照射方向に対して、前記放射線検出器の動作を制御する制御部が収容された制御ユニットに重ならないように当該制御ユニットの側方に位置され、かつ厚さを前記制御ユニットに比較して薄くしたので、撮影対象者による不快感を低減することができると共に、撮影時における使い勝手を向上させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態に係る放射線検出器の3画素部分の概略構成を示す断面模式図である。
【図2】実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分の信号出力部の構成を概略的に示した断面側面図である。
【図3】実施の形態に係る放射線検出器の構成を示す概略平面図である。
【図4】実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す斜視図(閉状態時)である。
【図5】実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す斜視図(開状態時)である。
【図6】実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す断面側面図(閉状態時)である。
【図7】実施の形態に係る電子カセッテにおけるヒンジ内での接続配線の構成を示す斜視図である。
【図8】第1の実施の形態に係る電子カセッテの筐体の内部構成を示す断面底面図である。
【図9】第1の実施の形態に係る電子カセッテの筐体の内部構成を示す一部拡大断面底面図である。
【図10】実施の形態に係る電子カセッテにおいて放射線検出器を天板から剥離する状態を示す説明図である。
【図11】実施の形態に係る電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態に係る変換情報の構成を示す模式図である。
【図13】実施の形態に係る電子カセッテの撮影を行う際の各部の配置状態を示す断面側面図である。
【図14】実施の形態に係る画像送信処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】放射線検出器への放射線の表面照射と裏面照射を説明するための断面側面図である。
【図16】第1の実施の形態に係る電子カセッテの筐体の内部構成の変形例を示す一部拡大断面底面図である。
【図17】第2の実施の形態に係る電子カセッテの筐体の内部構成を示す断面底面図である。
【図18】第3の実施の形態に係る電子カセッテの筐体の内部構成を示す一部拡大断面底面図である。
【図19】第4の実施の形態に係る電子カセッテの一部省略断面説明図である。
【図20】実施の形態に係る電子カセッテの筐体の変形例を示す一部省略断面説明図である。
【図21】実施の形態に係る電子カセッテの筐体の変形例を示す説明図である。
【図22】実施の形態に係る電子カセッテの筐体の変形例を示す説明図である。
【図23】他の形態に係る電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0035】
[第1の実施の形態]
まず、本実施の形態に係る間接変換方式の放射線検出器20の構成について説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態である放射線検出器20の3画素部分の構成を概略的に示す断面模式図である。
【0037】
この放射線検出器20は、絶縁性の基板1上に、信号出力部14、センサ部13、およびシンチレータ8が順次積層しており、信号出力部14、センサ部13により画素部が構成されている。画素部は、基板1上に複数配列されており、各画素部における信号出力部14とセンサ部13とが重なりを有するように構成されている。
【0038】
シンチレータ8は、センサ部13上に透明絶縁膜7を介して形成されており、上方(基板1の反対側)から入射してくる放射線を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。このようなシンチレータ8を設けることで、被写体を透過した放射線を吸収して発光することになる。
【0039】
シンチレータ8が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器20によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0040】
シンチレータ8に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmにあるCsI(Ti)(チタンが添加されたヨウ化セシウム)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Ti)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0041】
センサ部13は、上部電極6、下部電極2、および当該上下の電極間に配置された光電変換膜4を有し、光電変換膜4は、シンチレータ8が発する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。
【0042】
上部電極6は、シンチレータ8により生じた光を光電変換膜4に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ8の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極6としてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極6は、全画素部で共通の一枚構成としてもよく、画素部毎に分割してもよい。
【0043】
光電変換膜4は、有機光電変換材料を含み、シンチレータ8から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含む光電変換膜4であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ8による発光以外の電磁波が光電変換膜4に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜4で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0044】
光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ8で発光した光を最も効率よく吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ8の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ8の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ8から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ8の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0045】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物およびフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ8の材料としてCsI(Ti)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜4で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0046】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器20に適用可能な光電変換膜4について具体的に説明する。
【0047】
本発明に係る放射線検出器20における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電極2,6と、当該電極2,6間に挟まれた有機光電変換膜4を含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、および層間接触改良部位等の積み重ね、もしくは混合により形成することができる。
【0048】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0049】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0050】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0051】
この有機p型半導体および有機n型半導体として適用可能な材料、および光電変換膜4の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0052】
光電変換膜4の厚みは、シンチレータ8からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、ある程度以上厚くなると光電変換膜4の両端から印加されるバイアス電圧により光電変換膜4に発生する電界の強度が低下して電荷が収集できなくなるため、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
【0053】
なお、図1に示す放射線検出器20では、光電変換膜4は、全画素部で共通の一枚構成であるが、画素部毎に分割してもよい。
【0054】
下部電極2は、画素部毎に分割された薄膜とする。下部電極2は、透明または不透明の導電性材料で構成することができ、アルミニウム、銀等を好適に用いることができる。
【0055】
下部電極2の厚みは、例えば、30nm以上300nm以下とすることができる。
【0056】
センサ部13では、上部電極6と下部電極2の間に所定のバイアス電圧を印加することで、光電変換膜4で発生した電荷(正孔、電子)のうちの一方を上部電極6に移動させ、他方を下部電極2に移動させることができる。本実施の形態の放射線検出器20では、上部電極6に配線が接続され、この配線を介してバイアス電圧が上部電極6に印加されるものとする。また、バイアス電圧は、光電変換膜4で発生した電子が上部電極6に移動し、正孔が下部電極2に移動するように極性が決められているものとするが、この極性は逆であってもよい。
【0057】
各画素部を構成するセンサ部13は、少なくとも下部電極2、光電変換膜4、および上部電極6を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜3および正孔ブロッキング膜5の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0058】
電子ブロッキング膜3は、下部電極2と光電変換膜4との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極2から光電変換膜4に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0059】
電子ブロッキング膜3には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0060】
実際に電子ブロッキング膜3に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0061】
電子ブロッキング膜3の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0062】
正孔ブロッキング膜5は、光電変換膜4と上部電極6との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極6から光電変換膜4に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0063】
正孔ブロッキング膜5には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0064】
正孔ブロッキング膜5の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0065】
実際に正孔ブロッキング膜5に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0066】
なお、光電変換膜4で発生した電荷のうち、正孔が上部電極6に移動し、電子が下部電極2に移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5の位置を逆にすればよい。また、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5は両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0067】
各画素部の下部電極2下方の基板1の表面には信号出力部14が形成されている。
【0068】
図2には、信号出力部14の構成が概略的に示されている。
【0069】
下部電極2に対応して、下部電極2に移動した電荷を蓄積するコンデンサ9と、コンデンサ9に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力する電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に薄膜トランジスタという場合がある。)10が形成されている。コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域は、平面視において下部電極2と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部における信号出力部14とセンサ部13とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器20(画素部)の平面積を最小にするために、コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域が下部電極2によって完全に覆われていることが望ましい。
【0070】
コンデンサ9は、基板1と下部電極2との間に設けられた絶縁膜11を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極2と電気的に接続されている。これにより、下部電極2で捕集された電荷をコンデンサ9に移動させることができる。
【0071】
薄膜トランジスタ10は、ゲート電極15、ゲート絶縁膜16、および活性層(チャネル層)17が積層され、さらに、活性層17上にソース電極18とドレイン電極19が所定の間隔を開けて形成されている。また、放射線検出器20では、活性層17が非晶質酸化物により形成されている。活性層17を構成する非晶質酸化物としては、In、GaおよびZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、GaおよびZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、GaおよびZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。
【0072】
薄膜トランジスタ10の活性層17を非晶質酸化物で形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部14におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0073】
ここで、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物や、光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、基板1としては、半導体基板、石英基板、およびガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板や、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0074】
また、基板1には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0075】
一方、アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(Indium Tin Oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して基板を形成してもよい。
【0076】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ高強度、高弾性、低熱膨張である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3〜7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く基板1を形成できる。
【0077】
本実施の形態では、基板1上に、信号出力部14、センサ部13、透明絶縁膜7を順に形成することによりTFT基板30を形成し、当該TFT基板30上に光吸収性の低い接着樹脂等を用いてシンチレータ8を貼り付けることにより放射線検出器20を形成している。
【0078】
図3に示すように、TFT基板30には、上述したセンサ部13、コンデンサ9、および薄膜トランジスタ10を含んで構成される画素32が一定方向(図3の行方向)、および当該一定方向に対する交差方向(図3の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0079】
また、放射線検出器20には、上記一定方向(行方向)に延設され、各薄膜トランジスタ10をオン・オフさせるための複数本のゲート配線34と、上記交差方向(列方向)に延設され、オン状態の薄膜トランジスタ10を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線36と、が設けられている。
【0080】
放射線検出器20は、平板状で、かつ平面視において外縁に4辺を有する四辺形状、より具体的には、矩形状に形成されている。
【0081】
次に、この放射線検出器20を内蔵し、放射線画像を撮影する可搬型の放射線画像撮影装置(以下、電子カセッテという。)40の構成について説明する。
【0082】
図4および図5には、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成を示す斜視図が示されている。
【0083】
図4に示すように、電子カセッテ40は、放射線検出器20が収容され、照射された放射線による放射線画像を撮影する平板状の放射線検出ユニット42と、放射線検出器20の撮影動作を制御する後述する制御部50(図6参照。)が収容された平板状の制御ユニット43と、を備えており、各々の一端部がヒンジ48によって連結されている。
【0084】
放射線検出ユニット42および制御ユニット43は、一方に対して他方がヒンジ48を回動中心として回動することにより、放射線検出ユニット42と制御ユニット43とが並んだ開状態(図5に示す状態)と、放射線検出ユニット42と制御ユニット43とが重なり合って折り畳まれた閉状態(図4に示す状態)となるように開閉可能とされている。
【0085】
図4に示すように、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、閉状態とされている際には、放射線検出ユニット42の一方の面と制御ユニット43の一方の面とが対向する状態とされ、図5に示すように、開状態とされている際には、放射線検出ユニット42の上記一方の面と制御ユニット43の上記一方の面とが同一平面上で側方に並ぶ状態とされる。
【0086】
すなわち、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、図5(A)に示されるように、開状態とされている場合において、放射線検出ユニット42と制御ユニット43の上面の段差がなくなるように構成されている。また、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、図4および図5に示されるように、放射線検出ユニット42が制御ユニット43より厚さが薄くされている。
【0087】
制御ユニット43には、電子カセッテ40を移動させる際に把持される取手49が設けられている。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、取手49が制御ユニット43におけるヒンジ48が設けられている側壁とは反対側の側壁の中央部に設けられているが、これに限らず、例えば、当該側壁を除くヒンジ48が設けられていない何れかの側壁の中央部や、これらの側壁の中央部より電子カセッテ40の重心位置の偏りを考慮した距離だけ偏倚した位置等、他の位置に設けてもよいことは言うまでもない。
【0088】
本実施の形態に係る電子カセッテ40は、開状態とされた状態、かつ後述する撮影領域41Aを被写体(患者)の方向に向けた状態、すなわち、図5(B)に示すように、電子カセッテ40を裏返した状態で放射線画像の撮影を行う。
【0089】
ここで、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、制御ユニット43の放射線検出ユニット42に対向する面の反対側の面、すなわち、図5(B)に示すように裏返して設置した際に露出される面に、画像等を表示可能な表示デバイスを備えた表示部43Aと、十字キーやテンキーなどの各種ボタンを備えた操作部43Bとが設けられている。
【0090】
図6には、本実施の形態に係る電子カセッテ40の閉状態時における断面側面図が示されている。
【0091】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線検出ユニット42は、放射線Xを透過させる材料からなる平板状の筐体41を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。筐体41の内部には、種々の部品を収容する空間(外部空間)Aが形成されており、当該空間内には、筐体41の同図上端側から、放射線検出器20および放射線のバック散乱線を吸収する鉛板45が順に配設されている。
【0092】
ここで、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、筐体41の平板状の一方の面の放射線検出器20の配設位置に対応する領域が放射線Xを検出可能な四辺形状の撮影領域41Aとされている。この筐体41の撮影領域41Aを有する面が放射線検出ユニット42における天板41Bとされており、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、図6に示すように、放射線検出器20が、TFT基板30が天板41B側となるように配置され、当該天板41Bの筐体41における内側の面(天板41Bの放射線Xが入射される面の反対側の面)に貼り付けられている。
【0093】
ところで、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、放射線検出器20の放射線入射方向に対する歪みに起因して生じる、撮影によって得られた画像情報により示される放射線画像の歪みを補正する画像補正機能を有している。このため、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20のシンチレータ8の下面側の中央部に当該放射線検出器20の歪み量を検出するための歪みゲージ46が接着されている。
【0094】
筐体41は、電子カセッテ40全体の軽量化を図るために、例えば、カーボンファイバ(炭素繊維)、アルミニウム、マグネシウム、バイオナノファイバ(セルロースミクロフィブリル)、または複合材料等で構成されている。
【0095】
複合材料としては、例えば、強化繊維樹脂を含む材料が用いられ、強化繊維樹脂には、カーボンやセルロース等が含まれる。具体的には、複合材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のもの、または発泡材の表面にCFRPをコーティングしたもの等が用いられる。なお、本実施の形態では、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のものが用いられている。これにより、筐体41をカーボン単体で構成した場合と比較して、筐体41の強度(剛性)を高めることができる。
【0096】
筐体41の内部には、天板41Bと対向する背面部41Cの内面に支持体44が配置され、支持体44および天板41Bの間には、放射線検出器20および鉛板45が放射線Xの照射方向にこの順で並んで配置されている。
【0097】
支持体44は、軽量化の観点、寸法偏差を吸収する観点から、例えば、発泡材で構成されており、鉛板45を支持する。
【0098】
一方、本実施の形態に係る制御ユニット43には、放射線検出器20の撮像動作を制御する制御部50と、制御部50等に対して駆動用の電力を供給する電源部70とが収容されている。なお、制御ユニット43の筐体の材質としては特に制限はないが、電子カセッテ40全体の軽量化を図るうえで、放射線検出ユニット42の筐体41と同様に、例えば、カーボンファイバ、アルミニウム、マグネシウム、バイオナノファイバ、または複合材料等で構成されることが好ましい。
【0099】
ここで、放射線検出器20と制御部50とは、ヒンジ48を介して設けられた接続配線47により電気的に接続されている。
【0100】
また、ヒンジ48には、放射線検出ユニット42と制御ユニット43との開閉状態を検出する開閉センサ48Bが設けられている。この開閉センサ48Bは、例えば、磁石とホールセンサの組み合わせにより、放射線検出ユニット42と制御ユニット43との開閉による磁界の変化を検出することにより上記開閉状態を検出してもよく、また、放射線検出ユニット42と制御ユニット43との間の開閉角度を検出する角度センサを用いて上記開閉状態を検出してもよく、さらに、放射線検出ユニット42と制御ユニット43との開閉状態によってオン状態およびオフ状態の組み合わせが変わるように配置された複数のメカニカル・スイッチを用いて上記開閉状態を検出してもよい。
【0101】
このように、放射線検出ユニット42と制御ユニット43とは、ヒンジ48によって開閉可能とされているので、接続配線47のヒンジ48部分には絶えず折り曲げ、あるいは屈曲応力が加わり、断線や破損が発生しやすくなる。このため、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、接続配線47を、平面視クランク状のフレキシブルなプリント基板等によりに形成し、一例として図7に示すように、放射線検出ユニット42と制御ユニット43とを開閉可能に支持するヒンジ48の回転軸48Aに接続配線47の中間部を複数回巻いて円筒部47Aを形成した後、その外周にテープを巻いて円筒部47Aを保持固定する。そして、接続配線47の円筒部47Aの両側をそれぞれ回転軸48Aに対して余裕を持たせてゼンマイ状に複数回巻いて、放射線検出ユニット42および制御ユニット43に向けて引き出している。
【0102】
これにより、放射線検出ユニット42および制御ユニット43を開閉させると、回転軸48Aに沿って接続配線47が回転するが、接続配線47の円筒部47Aの両側が回転軸48Aに対して余裕を持たせて巻かれているので、放射線検出ユニット42および制御ユニット43の開閉に極めて柔軟に追随し、接続配線47が破損することがない。
【0103】
図6,図8〜図9に示すように、天板41Bの内面には、放射線検出器20のTFT基板30を剥離可能に接着する接着部材80が設けられている。接着部材80としては、例えば、両面テープが用いられる。この場合、両面テープは、一方の接着面の接着力が他方の接着面の接着力よりも強くなるように形成されている。
【0104】
具体的には、接着力の弱い面(弱接着面)は、180°ピール接着力で1.0N/cm以下に設定されている。そして、接着力の強い面(強接着面)が天板41Bに接し、弱接着面がTFT基板30に接する。これにより、ねじ等の固定部材等によって放射線検出器20を天板41Bに固定する場合と比べて放射線検出ユニット42の厚みを薄くすることができる。また、衝撃や荷重で天板41Bが変形しても、放射線検出器20は剛性の高い天板41Bの変形に追従するため、大きな曲率(緩やかな曲がり)しか発生せず、局所的な低曲率で放射線検出器20が破損する可能性が低くなる。さらに、放射線検出器20が天板41Bの剛性の向上に寄与する。また、前記両面テープは、TFT基板30および天板41Bと接する面以外の面にも接着力を有する。
【0105】
また、図8に示すように、接着部材80は、帯状に形成された状態で筐体41の側壁に沿って配置されている。これにより、TFT基板30を天板41Bに接着した状態で、TFT基板30および天板41Bの間に内部空間Bが形成される(図6も参照。)。
【0106】
図9に示すように、接着部材80には、天板41Bの角部に対応する部位に内部空間Bと外部空間Aを連通する通気手段としての連通路82が形成されている。連通路82は、曲がっており、詳細には、4つの角部84を有している。つまり、連通路82は、折り曲げられるようにして形成されたラビリンス構造を有している。なお、連通路82の折り曲げられた部位(角部84)の折り曲げ角度は、任意に設定することができ、弓なりに曲がっていてもよい。また、連通路82の通路幅dは、空気が流通できる程度の範囲内において、できる限り狭く設定されている。ただし、連通路82の通路幅dは、任意に設定してよい。
【0107】
このように、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20を筐体41の天板41Bの内部に貼り付けているため、筐体41が、天板41B側と背面部41C側とで2つに分離可能とされており、放射線検出器20を天板41Bに貼り付けたり、放射線検出器20を天板41Bから剥離したりする際には、筐体41を天板41B側と背面部41C側とで2つに分離した状態とされる。
【0108】
なお、本実施の形態では、放射線検出器20の天板41Bへの接着をクリーンルーム等で行わなくてもよい。なぜなら、放射線検出器20および天板41Bの間に放射線を吸収する金属片等の異物が混入した場合に、放射線検出器20を天板41Bから剥離して当該異物を除去できるからである。
【0109】
ところで、放射線検出器20を直接把持するようにして天板41Bから放射線検出器20を剥離する場合、筐体41の側壁が邪魔になる。そのため、図10に示すように、放射線検出器20のTFT基板30に耳86を設けてもよい。これにより、作業者は、耳86を把持した状態で放射線検出器20を天板41Bから容易に剥離することができる。なお、耳86は、TFT基板30に固定されていてもよいし、TFT基板30に着脱可能であってもよい。後者の場合、放射線画像の撮影時に耳86が邪魔になる懸念を排除することができる。
【0110】
一方、図11には、本実施の形態に係る電子カセッテ40の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0111】
本実施の形態に係る電子カセッテ40は、ゲート線ドライバ52および信号処理部54を備えている。TFT基板30の個々のゲート配線34はゲート線ドライバ52に接続され、TFT基板30の個々のデータ配線36は信号処理部54に接続されている。
【0112】
また、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、画像メモリ56、カセッテ制御部58、および無線通信部60を備えている。
【0113】
TFT基板30の各薄膜トランジスタ10は、ゲート線ドライバ52からゲート配線34を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、オン状態とされた薄膜トランジスタ10によって読み出された電荷は、電気信号としてデータ配線36を伝送されて信号処理部54に入力される。これにより、電荷は行単位で順に読み出され、二次元状の放射線画像が取得可能となる。
【0114】
図示は省略するが、信号処理部54は、個々のデータ配線36毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路およびサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線36を伝送された電気信号は増幅回路で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0115】
信号処理部54には画像メモリ56が接続されており、信号処理部54のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ56に順に記憶される。画像メモリ56は所定枚分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ56に順次記憶される。
【0116】
画像メモリ56はカセッテ制御部58と接続されている。カセッテ制御部58はマイクロコンピュータを含んで構成され、CPU(中央処理装置)58A、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むメモリ58B、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部58Cを備えており、電子カセッテ40全体の動作を制御する。
【0117】
また、カセッテ制御部58には、歪みゲージ46が接続され、当該歪みゲージ46における抵抗が組み込まれたホイートストーン・ブリッジを有し、当該ホイートストーン・ブリッジを用いて歪みゲージ46の配設部位における放射線検出器20の歪み量を測定する歪み測定部58Dが備えられており、カセッテ制御部58は、歪みゲージ46の抵抗値の変化量に基づいて、放射線検出器20の平面視中央部の歪み量を把握することができる。
【0118】
さらに、カセッテ制御部58には無線通信部60が接続されている。無線通信部60は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部58は、無線通信部60を介して、放射線画像の撮影に関する制御を行うコンソールなどの外部装置と無線通信が可能とされており、コンソール等との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0119】
また、カセッテ制御部58は、表示部43A、操作部43B、開閉センサ48Bが各々接続されており、表示部43Aへの各種情報の表示を制御すると共に、操作部43Bに対する操作内容、および放射線検出ユニット42と制御ユニット43との開閉状態を把握することができる。
【0120】
また、前述したように、電子カセッテ40には電源部70が設けられており、上述した各種回路や各素子(表示部43A、操作部43B、開閉センサ48B、ゲート線ドライバ52、信号処理部54、画像メモリ56、無線通信部60、カセッテ制御部58として機能するマイクロコンピュータ)は、電源部70から供給された電力によって作動する。電源部70は、電子カセッテ40の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する。図11では、電源部70と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
【0121】
なお、前述した制御部50には、ゲート線ドライバ52、信号処理部54、画像メモリ56、カセッテ制御部58、および無線通信部60が含まれる。
【0122】
ところで、前述したように、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、放射線検出器20の放射線入射方向に対する歪みに起因する、撮影によって得られた画像情報により示される放射線画像の歪みを補正する画像補正機能を有している。このため、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、メモリ58BのROMに一例として図12に示す変換情報が予め記憶されている。
【0123】
同図に示すように、本実施の形態に係る変換情報は、歪みゲージ46および歪み測定部58Dにより測定される放射線検出器20の平面視中央部の予め定められた歪み量毎に、変換前座標および変換後座標により構成される変換テーブルが記憶されて構成されている。
【0124】
ここで、上記変換テーブルは、放射線検出器20の平面視中央部の歪み量が、対応する歪み量である場合に、上記画像情報を構成する各画素データの位置座標を、変換前座標から変換後座標に置き換えることにより、上記歪み量が0(零)である場合の位置座標に変換することができるものとして予め導出されたものである。
【0125】
なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、画像補正機能により画像補正を行う上記歪み量の下限値(本実施の形態では、3mm)が予め定められており、上記変換情報には、当該下限値以上で、かつ予め定められた刻み幅の歪み量毎の変換テーブルが記憶されている。
【0126】
次に、本実施の形態に係る電子カセッテ40の作用を説明する。
【0127】
電子カセッテ40は、図4および図6に示すように放射線検出ユニット42と制御ユニット43とが重なり合って折り畳まれた閉状態で搬送される。
【0128】
一方、電子カセッテ40は、放射線画像を撮影する際、図5(A)に示すように放射線検出ユニット42と制御ユニット43とが並んだ開状態とされた後、図5(B)に示すように裏返される。また、電子カセッテ40は、コンソールから無線通信部60を介して患者情報を受信する。カセッテ制御部58は、患者情報が受信されると、当該患者情報に基づく患者に関する情報(例えば、患者の氏名やID(Identification))を表示部43Aに表示するように制御する。このように、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、表示部43Aに氏名やIDが表示されるので、例えば撮影技師が患者本人に対して氏名を確認し、確認した氏名を上記画面に表示されている氏名と照合すること等により、撮影を行う患者の取り違いがないか否かを確実に確認することができる。
【0129】
撮影技師は、患者の確認を終了した後、電子カセッテ40を図13に示すように開状態とすると共に裏返し、放射線発生装置72と間隔を空けて配置した後、撮影領域41A上に患者の撮影対象部位Cを配置する。
【0130】
カセッテ制御部58は、開閉センサ48Bによる検出結果に基づいて放射線検出ユニット42と制御ユニット43との開閉状態を把握しており、閉状態とされている場合は電源オフの状態となり、開状態とされている場合は放射線画像の撮影が可能な状態となる。カセッテ制御部58は、放射線画像の撮影が可能な状態(以下、撮影可能状態という。)になると、無線通信部60を介して撮影可能状態となったことをコンソールへ通知する。
【0131】
コンソールでは、撮影可能状態となったことが電子カセッテ40から通知されると撮影条件の設定が可能となり、撮影技師により撮影条件が設定される。コンソールは、撮影条件の設定が完了すると、設定された撮影条件を示す撮影条件情報を電子カセッテ40へ無線通信で送信する。
【0132】
撮影技師は、撮影条件の設定完了後、コンソールに対して撮影開始を指示する指示操作を行う。これにより予め与えられた撮影条件等に応じた放射線量の放射線が放射線発生装置72から射出される。放射線発生装置72から射出された放射線Xは、撮影対象部位Cを透過することで画像情報を担持した後に電子カセッテ40に照射される。
【0133】
放射線発生装置72から照射された放射線Xは、撮影対象部位Cを透過した後に電子カセッテ40に到達する。これにより、電子カセッテ40に内蔵された放射線検出器20の各センサ部13には照射された放射線Xの線量に応じた電荷が発生し、コンデンサ9にはセンサ部13で発生した電荷が蓄積される。
【0134】
カセッテ制御部58は、放射線Xの照射終了後に、ゲート線ドライバ52を制御し、ゲート線ドライバ52から放射線検出器20の各ゲート配線34に1ラインずつ順にオン信号を出力させて画像情報の読み出しを行う。放射線検出器20から読み出された画像情報は、画像メモリ56に記憶される。
【0135】
次に、図14を参照して、撮影によって得られた画像情報をコンソールに送信する際の電子カセッテ40の作用を説明する。なお、図14は、画像メモリ56に1画像分の画像情報が記憶されるたびにカセッテ制御部58により実行される画像送信処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ58BのROMに予め記憶されている。
【0136】
同図のステップ100では、画像メモリ56に記憶されている画像情報を読み出し、次のステップ102では、この時点の放射線検出器20の平面視中央部の歪み量を歪み測定部58Dにより測定する。
【0137】
次のステップ104では、上記ステップ102の処理によって測定した歪み量が上記下限値(本実施の形態では、3mm)以上であるか否かを判定することにより、上記画像補正機能による画像補正が必要か否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ108に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ106に移行する。
【0138】
ステップ106では、上記ステップ102の処理によって測定した歪み量に対応する変換テーブルを変換情報(図12も参照。)から読み出し、読み出した変換テーブルを用いて、上記ステップ100の処理によって読み出した画像情報の画素毎の座標位置を変換することにより、上記画像補正機能による画像補正を実行した後、ステップ108に移行する。
【0139】
ステップ108では、以上の処理によって得られた画像情報を、無線通信部60を介してコンソールに送信し、その後に本画像送信処理プログラムを終了する。
【0140】
ところで、本実施の形態に係る電子カセッテ40は、図6に示すように、放射線検出器20がTFT基板30側から放射線Xが照射されるように内蔵されている。
【0141】
ここで、放射線検出器20は、図15に示すように、シンチレータ8が形成された表側から放射線が照射(表面照射)された場合、シンチレータ8の同図上面側(TFT基板30の反対側)でより強く発光し、TFT基板30側(裏側)から放射線が照射(裏面照射)された場合、TFT基板30を透過した放射線がシンチレータ8に入射してシンチレータ8のTFT基板30側がより強く発光する。TFT基板30に設けられた各センサ部13には、シンチレータ8で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器20は、裏側から放射線が照射された場合の方が表側から放射線が照射された場合よりもTFT基板30に対するシンチレータ8の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0142】
また、放射線検出器20は、光電変換膜4を有機光電変換材料により構成しており、光電変換膜4で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器20は、裏面照射により放射線がTFT基板30を透過する場合でも光電変換膜4による放射線の吸収量が少ないため、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。裏面照射では、放射線がTFT基板30を透過してシンチレータ8に到達するが、このように、TFT基板30の光電変換膜4を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜4での放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができるため、裏面照射に適している。
【0143】
また、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物や光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板1を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板1は放射線の吸収量が少ないため、裏面照射により放射線がTFT基板30を透過する場合でも、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0144】
また、本実施の形態によれば、図6に示すように、放射線検出器20をTFT基板30が天板41B側となるように筐体41内の天板41Bに貼り付けているが、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体の剛性が高いため、筐体41の天板41Bを薄く形成することができる。また、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体が可撓性を有するため、撮影領域41Aに衝撃が加わった場合でも放射線検出器20が破損しづらい。
【0145】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、放射線が照射されることにより光を発生するシンチレータ8、当該シンチレータ8で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されたセンサ部13、および当該センサ部13で発生された電荷を読み出すための薄膜トランジスタ10が形成された基板1を有する放射線検出器20が収容された放射線検出ユニット42を、少なくとも放射線検出器20により放射線画像の撮影を行う際に前記放射線の照射方向に対して、放射線検出器20の動作を制御する制御部50が収容された制御ユニット43に重ならないように当該制御ユニット43の側方に位置され、かつ厚さを制御ユニット43に比較して薄くしたので、撮影対象者による不快感を低減することができると共に、撮影時における使い勝手を向上させることができる。
【0146】
また、本実施の形態では、放射線検出ユニット42に設けられた天板41Bの放射線が入射される面の反対側の面に放射線検出器20が直接的に取り付けられているので、放射線検出ユニット42の耐衝撃性を向上させることができる結果、天板41Bの厚みを薄くしたり、天板41Bを構成する材料を軽量で剛性の低いものとしたりすることができ、これによって放射線検出ユニット42のさらなる薄型化や軽量化を図ることができる。
【0147】
特に、本実施の形態では、天板41Bに、放射線検出器20の基板1が直接的に取り付けられているので、撮影によって得られる放射線画像の分解能を高くすることができると共に、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0148】
また、本実施の形態では、放射線画像の撮影時における放射線検出器20の湾曲の度合いを計測し、当該計測結果に応じて、放射線検出器20によって得られた画像情報により示される放射線画像の歪みを補正しているので、放射線検出器20が湾曲した場合であっても、当該湾曲に起因する放射線画像の歪みを抑制することができる。
【0149】
また、本実施の形態では、天板41Bが放射線検出器20を収容する筐体41の一部を構成しているので、天板を筐体とは別に構成する場合に比較して、より簡易に天板を構成することができる。
【0150】
また、本実施の形態では、TFT基板30および天板41Bの間に内部空間Bが形成されているので、放射線検出器20の天板41Bへの接着時に、TFT基板30および天板41Bに対する接着部材80の接着面に空気が残存していても、その残存していた空気を内部空間Bに逃がすことができる。また、内部空間Bと外部空間Aを連通する連通路82が接着部材80に形成されているので、外部空間Aの気圧が変化した場合でも、内部空間Bの圧力と外部空間Aの気圧とを一定に保つことができる。これにより、気圧変化によって天板41Bに対するTFT基板30の接着性が低下することを防止することができる。
【0151】
また、本実施の形態では、連通路82が角部84を有している。そのため、外部空間Aから連通路82に空気と共に空気よりも質量の大きい異物が流入した場合でも、角部84を流通する空気の流れに前記異物が追従することができないので、前記異物が内部空間Bに混入することを防止することができる。これにより、放射線画像の品質低下に繋がる異物混入を抑えることができる。
【0152】
さらに、連通路82が接着部材80に形成され、接着部材80がその全面に接着力を有しているので、角部84において、空気に追従できなかった異物が連通路82の壁面に付着し易くなる。従って、前記異物を連通路82内で確実に捕捉することができる。よって、内部空間Bへの異物の混入をより一層確実に防止することができる。
【0153】
また、本実施の形態によれば、連通路82の通路幅dを空気が流通できる範囲内において、できる限り狭く設定されているので、比較的小さな金属粉等の異物の混入に対応することができる。なお、想定される異物の大きさに応じて連通路82の通路幅dを設定すると、効率的に異物の混入を防止することができる。
【0154】
ところで、一般的に、シンチレータ8はTFT基板30よりも脆弱である。そのため、シンチレータ8を天板41Bに接着部材80にて接着した場合、放射線検出器20を剥離するときにシンチレータ8が破損するおそれがある。しかしながら、本実施の形態では、接着部材80にてTFT基板30を天板41Bに接着しているので、放射線検出器20を剥離するときにシンチレータ8が破損する懸念を排除することができる。
【0155】
また、天板41Bに被写体(患者)を乗せた状態で撮影を行う場合、天板41Bに傷が付き易い。そして、天板41Bに傷が付いた場合、当該傷が固定パターンノイズとして放射線画像に表示されることがあるため、筐体41を交換することが望ましい。しかしながら、天板41Bに放射線検出器20を剥離不能に貼り付けた場合、筐体41を交換するときに、高価な放射線検出器20も一緒に交換する必要がありコストが掛かるといった問題が生じていた。本実施の形態によれば、放射線検出器20を天板41Bに対して剥離可能に接着しているので、効率的に筐体41の交換を行うことができる。
【0156】
なお、本実施の形態は、上述した構成に限定されない。一例として図16に示すように、連通路90は、角部92を1つだけ有していてもよい。これにより、接着部材80に連通路90を容易に形成することができる。
【0157】
また、天板41Bから放射線検出器20を剥離するときに、有機溶剤等を接着部材に流し込み、接着部材80の接着性を弱くした上で放射線検出器20を剥離してもよい。この場合、接着部材80が角部を有しているので、前記有機溶剤が接着部材80にしみ込み易くなる。
【0158】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る電子カセッテ40について図17を参照しながら説明する。なお、第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0159】
図17に示すように、本実施の形態では、連通路94の構成が第1の実施の形態と異なると共に、フィルタ部材96が追加されている。具体的には、連通路94は、第1の実施の形態の角部92が省略されている。そして、フィルタ部材96は、連通路94の外部空間A側の開口部を塞ぐようにして天板41Bの内面に貼り付けられている。また、フィルタ部材96には、外部空間Aと連通路94との間の空気の流れを許可し、かつ外部空間Aから連通路94への異物の混入を阻止できる程度の微細な孔が形成されている。そして、これにより、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同等の効果を奏する。なお、本実施の形態においては、連通路94およびフィルタ部材96が通気手段に相当する。
【0160】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係る電子カセッテ40について図18を参照しながら説明する。なお、第3の実施の形態は、第1の実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0161】
図18に示すように、本実施の形態では、各連通路82の外部空間A側の開口部を塞ぐようにして天板41Bの内面にフィルタ部材98が貼り付けられている。そして、フィルタ部材98には、外部空間Aと連通路82との間の空気の流れを許可し、かつ外部空間Aから連通路82への異物の混入を阻止できる程度の微細な孔が形成されている。これにより、連通路82に混入する異物を抑制することができるので、内部空間Bへの異物の混入の抑制効果をさらに高めることができる。なお、本実施の形態においては、連通路82およびフィルタ部材98が通気手段に相当する。
【0162】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態に係る電子カセッテ40について図19を参照しながら説明する。なお、第4の実施の形態は、第1の実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、本実施の形態は、第2および第3の実施の形態に対しても適用することができる。図19は、理解を容易にするために、筐体内部において、放射線検出器以外の部品の図示を省略している。
【0163】
図19に示すように、本実施の形態では、放射線検出器20’の構成が第1の実施の形態と異なる。具体的には、放射線検出器20’は、シンチレータ8’を挟んでTFT基板30’の反対側に位置し、かつシンチレータ8’に接触する接触部材88と、接触部材88をTFT基板30’側に押し付け可能な押付部材89とをさらに有している。押付部材89としては、ねじ等を用いることができる。この場合、背面部41C側からTFT基板30’にねじを締付けることによって、接触部材88をTFT基板30’側に押し付けることができる。なお、TFT基板30’にねじの締付孔を形成することが難しい場合には、TFT基板30’にナット等を取り付けてもよい。
【0164】
本実施の形態によれば、押付部材89にて接触部材88をTFT基板30’側に押し付けた場合、シンチレータ8’がTFT基板30’および接触部材88に狭持されるので、TFT基板30’、シンチレータ8’、および接触部材88が一体となる。これにより、接着部材等によってシンチレータ8’をTFT基板30’に接着させた場合と比べて放射線検出器20’の強度(剛性)を向上させることができる。また、接触部材88の押し付けを解除した場合、シンチレータ8’およびTFT基板30’が分離される。これにより、シンチレータ8’およびTFT基板30’のいずれか一方が故障した場合に、いずれか他方を再利用することができる。さらに、接着部材等を用いてシンチレータ8’をTFT基板30’に接着していないので、シンチレータ8’をTFT基板30’から取り外すときに、シンチレータ8’が破損することもない。
【0165】
本発明は、上述した第1〜第4の実施の形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。例えば、接着部材として、接着剤を利用してもよい。この場合、接着剤としては、外的要因が作用することにより接着力が変化する接着剤が用いられる。外的要因とは、例えば、光や熱等の物理的なものや、薬剤などの化学的なものがある。このような接着剤としては、例えば、熱可塑性接着剤、通電加熱可塑性接着剤、紫外線可塑性接着剤、または吸水可塑性接着剤等の解体型接着剤を用いることができる。
【0166】
これにより、接着部材の接着力を変化させることができるので、例えば、放射線検出器を天板から剥離する場合に接着部材の接着力を低下させたり、放射線検出器を天板に接着する場合に接着部材の接着力を上昇させたりすることができる。よって、放射線検出器の天板からの剥離時に放射線検出器が破損したり、天板に接着されている放射線検出器が剥離したりする懸念を排除することができる。なお、接着部材は、前記接着剤と両面テープを組み合わせたものでもよい。
【0167】
また、本発明は、TFT基板を接着部材にて天板の内面に接着させる例に限定されない。例えば、上述した放射線検出器のTFT基板とシンチレータの位置を入れ替えて、シンチレータを接着部材にて天板の内面に接着させてもよい。
【0168】
さらに、本発明は、放射線検出器を天板の内面に接着する形態に限らない。例えば、本発明は、天板と放射線検出器の間に中間部材を配設して、前記中間部材に前記放射線検出器を接着させてもよい。
【0169】
図20に示すように、筐体41’は、天板41B’を板状に形成すると共に、天板41B’を除く部分筐体41Dを断面コ字状に形成してもよい。なお、図20は、筐体41’内部に収容される部品の図示を省略している。この場合、天板41B’は、CFRP等の繊維強化樹脂等で構成され、部分筐体41Dは、天板41B’と材質の異なる樹脂や金属等で構成される。
【0170】
さらに、本発明の筐体は、種々の材質で構成してよい。例えば、図21に示すように、筐体41’’は、複数の炭素繊維シートを積層するようにして構成してよい。この場合、荷重が集中的に生じる箇所に対して炭素繊維シートの積層数を増加して、荷重が集中的に生じない箇所に比べて補強することが可能である。
【0171】
また、図22に示すように、筐体41’’’は、複数のハニカム構造体99Aをカバー部材99Bで挟み込むようにして構成してもよい。この場合、カバー部材99Bは、CFRPで形成され、ハニカム構造体99Aは、例えば、アラミド材や発泡材で形成されている。発泡材としては、発泡スチロール、アクリル発泡体、塩ビ発泡体、発泡シリコン、ポリウレタン発泡体等が用いられる。ただし、発泡材として、アクリル発泡体である発泡ポリプロピレンを用いた場合、他の発泡材を利用した場合よりもコストを低く抑えることができる。
【0172】
また、上記各実施の形態では、電子カセッテ40を、放射線検出ユニット42と制御ユニット43の2つのユニットを分離した状態で構成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一例として図23に示すように、放射線検出器20が内蔵された放射線検出ユニット42’と、制御部50や電源部70が配置された制御ユニット43’とを一体的かつ平板状に構成すると共に、放射線検出ユニット42’を制御ユニット43’より薄く形成してもよい。
【0173】
また、本発明に係る放射線画像撮影装置は、所定の位置に固定されている放射線画像撮影装置として用いられてもよい。
【0174】
さらに、上記各実施の形態では、画像補正機能における画像補正処理を、変換テーブルを用いて実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、変換前座標を代入することにより変換後座標を得ることのできる演算式を予め導出しておき、当該演算式を用いて画像補正処理を実行する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0175】
1 基板
8、8’ シンチレータ(発光層)
10 薄膜トランジスタ(スイッチング素子)
13 センサ部
20、20’ 放射線検出器
30、30’ TFT基板(基板)
40、40’ 電子カセッテ
41、41’、41’’、41’’’ 筐体
41A 撮影領域
41B、41B’ 天板
41C 背面部
42、42’ 放射線検出ユニット
43、43’ 制御ユニット
46 歪みゲージ(計測手段)
50 制御部
58 カセッテ制御部(補正手段)
58D 歪み測定部(計測手段)
80 接着部材
82 連通路
84 角部
90 連通路
92 角部
94 連通路
96、98 フィルタ部材
X 放射線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部が収容された制御ユニットと、
放射線が照射されることにより光を発生する発光層、当該発光層で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されたセンサ部、および当該センサ部で発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子が形成された基板を有すると共に前記制御部によって動作が制御される放射線検出器が収容され、少なくとも前記放射線検出器により放射線画像の撮影を行う際に前記放射線の照射方向に対して前記制御ユニットに重ならないように当該制御ユニットの側方に位置され、かつ厚さが前記制御ユニットに比較して薄い放射線検出ユニットと、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記放射線検出ユニットは、被写体を透過した放射線が透過する透過面を有すると共に、前記放射線が入射される面の反対側の面に前記放射線検出器が直接的に取り付けられた天板を有する
請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記天板は、前記放射線検出器の前記基板が直接的に取り付けられている
請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記放射線検出器は、前記天板に離間可能に取り付けられている
請求項2または請求項3記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記放射線検出器と前記天板との間に内部空間が形成されるように前記放射線検出器を前記天板に対して接着する接着部材と、
前記内部空間および外部を連通すると共に、外部から前記内部空間への異物の混入を阻止する通気手段と、
をさらに備えた請求項2から請求項4の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記通気手段は、前記接着部材に形成されて前記内部空間および外部を曲がった状態で連通する連通路である
請求項5記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記通気手段は、前記接着部材に形成されて前記内部空間および外部を連通する連通路と、前記連通路と外部との間の空気の流れを許可し、かつ外部から前記連通路への異物の混入を阻止するフィルタ部材と、が設けられている
請求項5記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記接着部材は、外的要因が作用することにより接着力が変化する材質で構成されている
請求項5から請求項7の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記天板は、前記放射線検出ユニットの筐体の一部を構成する
請求項2から請求項8の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記天板は、強化繊維樹脂を含む材料により構成されている
請求項2から請求項9の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記強化繊維樹脂は、炭素繊維強化プラスチックである
請求項10記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
放射線画像の撮影時における前記放射線検出器の湾曲の度合いを計測する計測手段と、
前記計測手段による計測結果に応じて、前記放射線検出器によって得られた画像情報により示される放射線画像の歪みを補正する補正手段と、
をさらに備えた請求項1から請求項11の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項13】
前記基板は、プラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバの何れかにより構成されている
請求項1から請求項12の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項14】
前記スイッチング素子は、活性層に非晶質酸化物を含んで構成された薄膜トランジスタである
請求項1から請求項13の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−252731(P2011−252731A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125316(P2010−125316)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】