説明

放射線監視装置

【課題】主蒸気配管内を流れる放射性核種に起因した放射線量の変化の検出精度を向上でき、かつ、構成を単純化できる放射線監視装置を提供する。
【解決手段】放射線監視装置1は、放射線検出器5、プリアンプ7及び信号処理装置8をケーブル6によって直列に接続している。放射線量率指示計9,16、放射線量率記録計10,17、警報装置11,18及びトリップ回路15は、ケーブル6によって信号処理装置8に接続される。放射線監視装置1は、主蒸気管放射線モニタ及びCAMSとして機能する。放射線量率指示計9、放射線量率記録計10及び警報装置11はCAMS用の構成である。トリップ回路15、放射線量率指示計16、放射線量率記録計17及び警報装置18は主蒸気管放射線モニタ用の構成である。放射線検出器5は、原子炉格納容器19に設けられた貫通部4内の先端部に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線監視装置に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラントの原子炉格納容器内の放射線量を監視するのに好適な放射線監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントは、原子炉で発生した蒸気を、主蒸気管を用いてタービンに供給している。主蒸気配管内を流れる蒸気の放射線量を監視するために、主蒸気管放射線モニタが用いられる。主蒸気管放射線モニタは、放射線検出器、指示計,記録計及び警報装置を備えている。指示計、記録計及び警報装置は、制御室に配置されている。放射線検出器は、通常放射線レベルから高放射線レベルまで広いレンジをカバーすることができ、且つ耐震性にすぐれた電離箱を使用している。主蒸気管放射線モニタの例が、特開昭61−129596号公報及び特開平6−130177号公報に記載されている。特開昭61−129596号公報及び特開平6−130177号公報では、放射線検出器を原子炉建屋内で原子炉格納容器の外側で主蒸気配管付近に配置している。特に、特開昭61−129596号公報では、放射線検出器をトンネル室内に配置している。
【0003】
原子炉内の炉心に装荷されている燃料集合体に含まれる燃料棒が破損した場合には、燃料棒内で核分裂によって発生した放射性核種が、原子炉内の冷却水中に漏洩し、蒸気に伴って主蒸気配管に達する。主蒸気管放射線モニタの放射線検出器は、この放射性核種から放出される放射線を検出する。検出された放射線量が過度の設定レベルを超えたとき、主蒸気管放射線モニタは、警報装置から警報を発し、トリップ回路からトリップ信号を出力する。
【0004】
さらに、沸騰水型原子力プラントは原子炉格納容器内雰囲気モニタ系(以下、CAMSという)を備えている。原子炉格納容器内雰囲気モニタ系は、冷却材喪失事故が発生したとき、この事故の規模を確認するために、原子炉格納容器内の放射線量を計測する放射線検出器を有する。CAMSの放射線検出器の設置例が、実開平1−134299号公報に記載されている。この放射線検出器は、原子炉格納容器を貫通したペネトレーション内に設置されている。ペネトレーションは、原子炉格納容器内に挿入された一端が密封されており、原子炉格納容器の外側に位置する他端が外部に解放されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−129596号公報
【特許文献2】特開平6−130177号公報
【特許文献3】実開平1−134299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
主蒸気管放射線モニタの放射線検出器は、原子炉格納容器の外側に設置されている。このため、原子炉格納容器内に配置された原子炉から放射線検出器の設置位置まで離れているので、主蒸気管内を流れる蒸気の流量が少ない場合には、蒸気に含まれる放射性核種に起因した放射線量変化の検出に遅れが生じる。さらに、主蒸気管放射線モニタ及びCAMSの構成の単純化が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、主蒸気配管内を流れる放射性核種に起因した放射線量の変化の検出精度を向上でき、かつ、構成を単純化できる放射線監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、主蒸気配管が接続された原子炉を取り囲む原子炉格納容器に設けられた貫通部で先端が原子炉格納容器内において主蒸気配管のそばまで達しているその貫通部内に配置された放射線検出器と、放射線検出器から出力された放射線検出信号に基づいて放射線量を求める信号処理装置と、信号処理装置に接続された主蒸気配管モニタの指示計及び記録計と、信号処理装置に接続された原子炉格納容器内雰囲気モニタ系の指示計及び記録計とを備えたことにある。
【0009】
放射線検出器が原子炉格納容器を貫通する貫通部内で原子炉格納容器内において主蒸気配管の近くに配置されるので、原子炉から排出された放射性核種の放射能の減衰度合いが小さい位置で放射性核種から放出されるγ線を検出することができる。このため、主蒸気配管内を流れる主蒸気流量の影響を受けずに、主蒸気配管内を流れる放射性核種に起因した放射線量の変化の検出精度を向上させることができる。
【0010】
放射線監視装置は放射線検出器及び信号処理装置を主蒸気管放射線モニタ及び原子炉格納容器内雰囲気モニタ系の構成として使用しているので、原子力プラントの放射線監視装置の構成を単純化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主蒸気配管内を流れる放射性核種に起因した放射線量の変化の検出精度を向上でき、かつ、放射線監視装置の構成を単純化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な一実施例である放射線監視装置を、図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
本実施例の放射線監視装置1は沸騰水型原子力プラントに適用される。原子炉2は原子炉格納容器19内に設置されている。原子炉2に接続される4本の主蒸気配管3は、原子炉格納容器19を貫通して主蒸気配管トンネル室12内に達している。各主蒸気配管3は、原子炉格納容器19内で垂直部を有する。2つの貫通部4が原子炉格納容器19に設けられる。貫通部4は、原子炉格納容器19を貫通する円管であり、原子炉格納容器19内の一端が密封されている。この円管の他端は原子炉格納容器19の外部に開放されている。それぞれの貫通部4の先端は、主蒸気配管2の垂直部付近まで達している。
【0014】
放射線監視装置1は、放射線検出器5、プリアンプ7、信号処理装置8、放射線量率指示計9,16、放射線量率記録計10,17、警報装置11,18及びトリップ回路15を有する。放射線検出器5、プリアンプ7及び信号処理装置8は、この順にケーブル6によって直列に接続されている。放射線量率指示計9,16、放射線量率記録計10,17、警報装置11,18及びトリップ回路15は、ケーブル6によって信号処理装置8に接続される。放射線監視装置1は、主蒸気管放射線モニタ及びCAMSとして機能する。放射線量率指示計9、放射線量率記録計10及び警報装置11はCAMS用の構成である。トリップ回路15、放射線量率指示計16、放射線量率記録計17及び警報装置18は主蒸気管放射線モニタ用の構成である。
【0015】
放射線監視装置1はそれぞれの貫通部4に対応して、2系統設けられている。各放射線監視装置1の放射線検出器5は、それぞれの貫通部4内に配置されて貫通部4の先端部に位置している。これらの放射線検出器5は、主蒸気配管5の原子炉格納容器19内に配置された部分の近くに配置される。主蒸気配管放射線検出器5は、電離箱を用いており、γ線を検出する。放射線量率指示計16で表示できる放射線量率のレンジは、放射線量率指示計9で表示できる放射線量率のレンジよりも狭くなっている。これは、主蒸気配管3内を流れる放射性核種から放出されるγ線の強度が、冷却材喪失事故において原子炉格納容器19のドライウエル13に放出される放射性核種のγ線強度よりも小さいからである。
【0016】
沸騰水型原子力プラントの通常運転時における放射線監視装置1の作用を説明する。沸騰水型原子力プラントの通常運転時では、放射線検出器5、プリアンプ7及び信号処理装置8は主蒸気管放射線モニタの放射線検出器、プリアンプ及び信号処理装置として機能する。沸騰水型原子力プラントの通常運転時において、主蒸気配管3の近くに配置された放射線検出器5は、主蒸気配管3内を流れる蒸気に含まれた放射性核種から放出されるγ線を検出する。放射線検出器5から出力されたγ線検出信号は、プリアンプ7で増幅され、信号処理装置8に入力される。信号処理装置8は、入力したγ線検出信号に基づいて放射線量率を算出する。得られた放射線量率は、信号処理装置8から、放射線量率指示計9,16、放射線量率記録計10,17、警報装置11,18及びトリップ回路15にそれぞれ出力される。信号処理装置8から出力された放射線量率は、放射線量率指示計9,16で表示される。レンジの広い放射線量率指示計9よりも、レンジの狭い放射線量率指示計9によって、その放射線量率の具体的な値を正確に知ることができる。信号処理装置8から出力された放射線量率は放射線量率記録計10,17に記録される。
【0017】
原子炉の炉心内に装荷されている燃料集合体に含まれる一部の燃料棒が破損したとき、燃料棒内で核分裂によって発生した放射性核種(例えば、Xe,Kr)が、原子炉2内の冷却水中に漏洩し、蒸気に伴って主蒸気配管3に達する。放射線検出器5はこの放射性核種のγ線を検出する。燃料棒から放出された放射性核種のγ線の強度が高いので、放射線検出器5から出力されたγ線検出信号に基づいて求められた放射線量率は、主蒸気管放射線モニタとして設定されている設定線量率を超えてしまう。このため、警報装置18から警報信号が出力され、トリップ回路15からトリップ信号が出力される。このトリップ信号により、主蒸気配管3に設けられた隔離弁(図示せず)が閉じられる。
【0018】
冷却材喪失事故が発生したとき、放射線監視装置1は、CAMSとして機能する。すなわち、放射線検出器5、プリアンプ7及び信号処理装置8は、CAMSの放射線検出器、プリアンプ及び信号処理装置として機能する。冷却材喪失事故によって、原子炉1内の冷却水が、例えば、主蒸気配管3の破断箇所からドライウエル13内に蒸気となって排出される。破断箇所から排出される蒸気は多量の放射性核種を含んでいる。放射線検出器5は、これらの放射性核種から放出されるγ線を検出する。放射線検出器5から出力されたγ線検出信号は、プリアンプ7で増幅されて信号処理装置8に入力される。信号処理装置8は、沸騰水型原子力プラントの通常運転時と同様に、γ線検出信号に基づいて放射線量率を算出する。求められた放射線量率は、信号処理装置8から、放射線量率指示計9,16、放射線量率記録計10,17、警報装置11,18及びトリップ回路15にそれぞれ出力される。この放射線量率を入力した放射線量率指示計16はレンジが振り切れてしまうので、レンジの広い放射線量率指示計9によって正確な放射線量率の値を知ることができる。この放射線量率は、放射線量率記録計10,17に記録される。得られた放射線量率は、CAMSの設定線量率を超えているので、警報装置11から警報信号が発せられる。CAMSの設定線量率は主蒸気管放射線モニタとして設定されている設定線量率よりも高くなっている。冷却材喪失事故時に求められた放射線量率は、前述の燃料棒破損時における主蒸気管放射線モニタとして設定されている設定線量率よりも高いので、警報装置18からも警報信号が発せられる。冷却材喪失事故が発生したときには、トリップ回路15からトリップ信号が出力される。
【0019】
本実施例は、放射線検出器5が原子炉格納容器19を貫通する貫通部5内で原子炉格納容器19内において主蒸気配管3の近くに配置されるので、原子炉1から排出された放射性核種の放射能の減衰度合いが小さい位置で放射性核種から放出されるγ線を検出することができる。このため、主蒸気配管3内を流れる主蒸気流量の影響を受けずに、主蒸気配管内を流れる放射性核種に起因した放射線量の変化の検出精度を向上させることができる。
【0020】
本実施例の放射線監視装置1は、主蒸気管放射線モニタ及びCAMSとして機能し、放射線検出器5、プリアンプ7及び信号処理装置8を主蒸気管放射線モニタ及びCAMSの構成として使用しているので、構成を単純化することができる。貫通部4が、原子炉格納容器19の外側に向かって開放されているので、放射線検出器5の取付け取外しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好適な一実施例である放射線監視装置の構成図である。
【図2】図1に示す貫通部付近での原子炉格納容器の横断面である。
【符号の説明】
【0022】
1…放射線監視装置、2…原子炉、3…主蒸気配管、4…貫通部、5…放射線検出器、7…プリアンプ、8…信号処理装置、9,16…放射線量率指示計、10,17…放射線量率記録計、11,18…警報装置、12…主蒸気配管トンネル室、15…トリップ回路、19…原子炉格納容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主蒸気配管が接続された原子炉を取り囲む原子炉格納容器に設けられた貫通部で先端が前記原子炉格納容器内において前記主蒸気配管のそばまで達している前記貫通部内に配置された放射線検出器と、前記放射線検出器から出力された放射線検出信号に基づいて放射線量を求める信号処理装置と、前記信号処理装置に接続された主蒸気配管モニタの指示計及び記録計と、前記信号処理装置に接続された原子炉格納容器内雰囲気モニタ系の指示計及び記録計とを備えたことを特徴とする放射線監視装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−48752(P2010−48752A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215205(P2008−215205)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】