説明

放熱装置

【課題】フィラーを充填しながら接合部の厚さを抑え、熱伝導率の高いフィラーを用いて低熱抵抗化を図る。
【解決手段】銅製の基台11上に、アルミ基板121上と絶縁基板122を貼り合わせたメタル基板12を接着部材15で固着する。接着部材15にはシリコーン接着剤52に基台11とメタル基板12より硬く熱伝導率の高いフィラー51を充填させ、接着時に基台11とメタル基板12にプレスをかけることでフィラー51を基台11とメタル基板12にそれぞれ減り込ませるようにしたことで、フィラー51の作用で発光ダイオード16側から発生された熱を基台11側に放熱させることができる。この場合、フィラー51が高熱伝導率であることから低熱抵抗化が図れることに加え、フィラー51が被接合体である基台11とメタル基板12に減り込むことで接着層を薄くすることも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光ダイオード等の発熱性の電子部品から発せられる熱の放熱を効率的に行う放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発熱性の電子部品であるLED等が搭載されたプリント基板は、発熱性の電子部品の発熱による樹脂劣化等が原因で寿命が短くなったり発光効率が低下したりする等の問題があった。その対策としては、発熱部品から放熱部品に効率よく熱を伝導する必要があり、発熱部品とプリント基板や、プリント基板と筐体、フィン等の接合部分の熱抵抗を下げるため、接合材料中のフィラーの充填率を上げる接合材料が使用されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2000−169873公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、接合材料中のフィラーの充填率を上げることによる低熱抵抗化は、粘度が増加し流動性が低下するため、作業性から見て限界がある。また、粘度が高い場合、接合時に接合材料の厚さが厚くなるため、熱抵抗が大きくなり熱伝導的に不利となる、という問題があった。
【0004】
この発明の目的は、高熱伝導率のフィラーが充填された接着部材に基づいて接合層の厚さを抑えるとともに低熱抵抗化を図った放熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の放熱装置は、第1および第2の被接合部材と、前記第1および第2の被接合部材の少なくとも一方に取り付けられた発熱性の電子部品と、接着性の樹脂材中に、前記第1および第2の被接合部材の少なくとも一方より高い硬度の球状または非球状の少なくとも一種類のフィラーを充填させて前記第1および第2の被接合部材を接合させる接着部材とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、被接合部材間にこれらを接合する接着部材に充填したフィラーを減り込ませて固定したことで接合層を薄くできる。また、高熱伝導性のフィラーが被接合部材間に接触した状態で介在されることにより熱伝導性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1、図2は、この発明の放熱装置の一実施形態について説明するためのものであり、図1は断面図、図2は正面図である。
【0009】
図1、図2において、11は例えば銅製の基台であり、12は金属製の例えばアルミ基板121上にガラスエポキシ樹脂等の耐熱性の絶縁基板122を貼り合わして形成されたメタル基板である。131,132は絶縁基板122上に固着された導電性を持つ例えば銅で形成された配線パターンであり、14は図3に示すように配線パターン131,132と同材料で同時に固着された放熱用の放熱パターンである。基台11とメタル基板12は、接着部材15で固着する。16は発熱性の電子部品である発光ダイオードで、181,182は発光ダイオード16を電気的に接続するための接続端子である。接続端子181,182は、半田191,192を用いて配線パターン131,132に電気的にそれぞれ接続する。
【0010】
図4は、発光ダイオード16の断面図である。発光部161は放熱を行うため放熱特性に優れた例えばアルミニウム製の基部162に固着される。発光部161は、リード163を介して接続端子181に、リード164を介して接続端子182にそれぞれ電気的に接続され、接続端子181,182を介して供給される駆動電圧に基づいて発光部161を発光させる。165は本体ケース、166は発光部161を覆いながらケース165に支持された透光性のカバーケースである。接続端子181,182は、配線パターン131,132に半田191,192を用いて電気的に接続される。メタル基板12上に固着された放熱パターン14と発光ダイオード16の基部162は、接着部材20で固着する。
【0011】
図5の断面図を参照し、接着部材15について説明する。なお、接着部材20も同様であり、その説明は省略する。
【0012】
接着部材15は、粒径が30μm〜50μm程度の球状のAl(アルミナ)製の大小の大きさを持つ複数個のフィラー51が充填された室温硬化型シリコーン接着剤52である。フィラー51は、被接合部材である基台11およびメタル基板12のアルミ基板121よりも硬いアルミナを使用している。そこで、接着部材15を基台11およびメタル基板12に介在させた状態でプレスを行いながらシリコーン接着剤52を硬化させる。従って、フィラー51が被接合部材である基台11とメタル基板12をプレスによりそれぞれ減り込んだ状態でシリコーン接着剤52を硬化させて基台11とメタル基板12を固着させる。
【0013】
これにより、フィラー51が被接合部材に減り込んだ分、フィラー51が充填された接着部材15であってもその接合層の厚さを薄くすることが可能となる。また、基台11とメタル基板12はフィラー51のみを介して接合される割合が多くなり、フィラー51がシリコーン接着剤52より二桁程度高い熱伝導率を持つことから伝わる熱量を増大させることができる。このため、接合層の熱抵抗が小さくなり、発熱部より発生した熱は、効率よく基台11に伝導して放熱される。
【0014】
なお、接合材料中のフィラーがエッジを有する非球状のフィラーの場合は、プレスの圧力がエッジ部分に集中するため、球状に比べ被接合部材に減り込む割合が大きくなるため、接合層がより薄くなり、より低い熱抵抗の接合層を得ることができる。
【0015】
図6は、この発明の他の実施形態について説明するための断面図である。この実施形態は、非球状で粒径が30μm〜50μm程度の非形状の例えばAl製のフィラー61を充填させた室温硬化型シリコーン接合剤62を接着部材151として用いたものである。
【0016】
接着部材15は、接合時に被接合部材同士をプレスしながら擦り合わせて接合する。一方の被接合部材である銅やアルミニウム製の基台11より硬いフィラー61は基台11に減り込んだ状態になる。また、他方の被接合部材である例えばアルミ基板121にもこれより硬いフィラー61が減り込んだ状態になる。
【0017】
なお、図中の63は被接合部材をプレスしながら擦り合わせすることで、硬いフィラー61が被接合部材である基台11やアルミ基板121を削り取ったカスである。
【0018】
また、上記した実施形態と同様に、基台11とメタル基板12はフィラー61のみを介して接合させる割合が多くなり、フィラー61がシリコーン接着剤62より二桁程度高い熱伝導率を持つことから伝わる熱量を増大させることができる。また、プレスしながら擦り合わせたことにより熱伝導率の高い被接合部材の一部が接合層に混入される。このため、接合層の熱抵抗が小さくなり、発熱部より発生した熱は、効率よく筐体に伝導する。
【0019】
なお、上記した各実施形態において、接合材料の一例である室温硬化型シリコーン接合剤中に、被接合部材の一部が充填されるのは接合過程中である。このため、接合作業前は低粘度で、接合材料の流動性は良好であることから、滴下等の作業性に悪影響を与えることはない。
【0020】
以上説明したように、この発明の要件は、フィラーの硬度および接合方法により接合層を薄くし、接合時に被接合部材の一部を接合層に充填させることにより、接合層を低熱抵抗率とするとともに、作業性に悪影響を及ぼすことなく接合層の低熱抵抗化を図ったものである。
【0021】
この発明の要件に合えば、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、接合材料の樹脂材料は、シリコ-ンに限定されるものではなく、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等でもよく、フィラーの種類も、被接合部材の少なくとも一方より硬い材料であればよい。充填させるフィラーは、一種類である必要はなく、複数種類でもよく、大きさも均一である必要はない。
【0022】
また、被接合部材同士に絶縁を持たせることが必要な場合の接着部材としては、フィラーをセラミック等の絶縁性のものを使用することが考えられる。フィラーは、被接合部材である基台11とアルミ基板121よりも硬い必要はなく、いずれか一方より硬ければよい。これは、放熱パターン14と基部162の関係についても同様である。
【0023】
さらに、発熱性の電子部品として発光ダイオードを例にしたが、これに限らず他の例えばパワートランジスタ等の発熱性の電子部品の放熱にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態について説明するための正面図。
【図2】図1の断面図。
【図3】図1の一部について説明するための正面図。
【図4】図1に用いる発光ダイオードの断面図。
【図5】この発明の一実施形態について説明するための断面図。
【図6】この発明の他の実施形態について説明するための断面図。
【符号の説明】
【0025】
11 基台
12 メタル基板
121 アルミ基板
122 絶縁基板
131,132 配線パターン
14 放熱パターン
15,20 接着部材
16 発光ダイオード
162 基部
51,61 フィラー
52,62 シリコーン接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の被接合部材と、
前記第1および第2の被接合部材の少なくとも一方に取り付けられた発熱性の電子部品と、
接着性の樹脂材中に、前記第1および第2の被接合部材の少なくとも一方より高い硬度の球状または非球状の少なくとも一種類のフィラーを充填させて前記第1および第2の被接合部材を接合させる接着部材とを具備したことを特徴とする放熱装置。
【請求項2】
前記第1および第2の被接合部材に前記接着部材を介在させ、前記第1および第2の被接合部材をプレスあるいはプレスとともに擦り合わせを行いながら前記第1および第2の被接合部材を接合したことを特徴とする請求項1記載の放熱装置。
【請求項3】
前記接着部材中の前記フィラーが、前記第1および第2の被接合部材に減り込んだ状態で接合していることを特徴とする請求項1記載の放熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−185963(P2006−185963A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374980(P2004−374980)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】