説明

放送局映像送出システム

【課題】システム価格、システム運用コスト及び管理コストが低く、しかも信頼性が高い放送局映像送出システムを提供する。
【解決手段】素材登録サーバをクラスタリング型のシングル構成にし、現用系には送出サーバとデコーダを設け、予備系はデコーダだけを設けたハードウェアで構成する低コストな冗長システムとする。現用系の送出サーバの障害時にはデコーダは素材供給元の参照IPアドレスを素材登録サーバに変更して送出を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放送局映像送出システムに関し、特に現用系と予備系によって構成したネットワーク型ビデオサーバを用いたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像を放送するために放送局に設置されるネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムは、現用系と予備系と2つのハードウェア構成を持つことが多い。通常、現用系と予備系のどちらについても、ハードウェア構成が同一の完全二重化した冗長システム(完全二重化システム)を採用している。現用系の機器でシステムの運用を行っている場合でも、バックグラウンドで常に予備系の機器を同等に稼動しており、現用系の機器障害発生時にはシステムを予備系の機器に切替えて運用し、システムダウンしないようにしている(例えば、特許文献1若しくは特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−251454号公報
【特許文献2】特開2007−194709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムにおいては、信頼性を上げるため、障害発生時にも継続的に稼動するよう冗長化する必要性がある。
上述の特許文献1若しくは特許文献2の完全二重化システムでは、現用系と予備系共に同じようなハードウェア構成である。従って、信頼性の高いシステム動作を保証するが、システム価格、システム運用コスト、及び、管理コストが膨大になる。
本発明は、上記のような問題に鑑み、システム価格、システム運用コスト、及び、管理コストが低く、しかも信頼性が高い放送局映像送出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の放送局映像送出システムは、ネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムにおいて、ハードディスク装置を映像記憶に用いた素材登録ビデオサーバを現用と予備の2台以上設け、半導体メモリを映像記憶に用いた送出ビデオサーバを現用の1台設け、上記2台の素材登録ビデオサーバと上記1台の送出サーバとに接続した送出デコーダを現用、予備の2台以上設けたものである。
即ち、本発明の放送局映像送出システムは、素材を放送する放送局映像送出システムにおいて、ハードディスク装置を映像記憶に用いて上記素材を記録するクラスタリング型の素材登録サーバと、上位システムの制御によって動作する第1のネットワーク型ビデオサーバと、上位システムの制御によって動作する第2のネットワーク型ビデオサーバとを有する放送局映像送出システムであって、上記第1のネットワーク型ビデオサーバは、少なくとも不揮発性半導体メモリを用いた第1の記憶装置と、参照元から素材を読出して送出する第1のデコーダとを備え、上記第2のネットワーク型ビデオサーバは、少なくとも上記素材登録サーバが記録した素材を読出して送出する第2のデコーダとを備え、上記第1のデコーダは、上記第1の記憶装置の障害発生時には、上記素材登録サーバが記録した素材を読出して送出するものである。
また好ましくは、上記本発明の放送局映像送出システムの上記第1のデコーダは、上記素材登録サーバのIPアドレスを参照して上記素材を読出すものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムにおいて、現用系は送出サーバ、予備系はクラスタリング型の素材(登録)サーバで各々から送出を行なう冗長化方式にし、送出サーバの障害発生時には供給元参照IPを素材(登録)サーバに変更することで冗長性を維持することが可能な、低コストで信頼性の高い冗長システムが実現できた。。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、説明の重複を避け、できるだけ説明を省略する。
【0008】
図1は、ネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムのブロック構成を示す比較図である。図1は、完全二重化の冗長システムであり、現用系と予備系が、同一のハードウェア構成となっている。1は素材登録サーバ、2は素材登録サーバ1の記憶部を構成するハードディスク装置( HDD:Hard Disk Drive )、3は送出コントローラ、4は送出サーバ、5は送出サーバ4の記憶部を構成する不揮発性半導体メモリを用いた記憶装置、6はデコーダ、7は素材登録サーバ、8は素材登録サーバ7の記憶部を構成するハードディスク装置( HDD:Hard Disk Drive )、9は送出コントローラ、10は送出サーバ、11は送出サーバ10の記憶部を構成する不揮発性半導体メモリを用いた記憶装置、12はデコーダ、101は現用系のネットワーク型ビデオサーバ、102は予備系のネットワーク型ビデオサーバ、110は上位システム、111は送出切替器、130はLAN( Local Area Netowrk )である。
現用系のネットワーク型ビデオサーバ101は、素材登録サーバ1、送出コントローラ3、送出サーバ4、デコーダ6から構成されている。また、予備系のネットワーク型ビデオサーバ102は、素材登録サーバ7、送出コントローラ9、送出サーバ10、デコーダ12から構成されている。
なお、不揮発性半導体メモリを用いた記憶装置5及び11は、例えば、フラッシュメモリ記憶装置( Flash Memory Drive )である。
【0009】
図1において、現用系のネットワーク型ビデオサーバ101は、編集機やVTR( Video Tape Recorder )等の入力ソースから、直接若しくはネットワーク経由で、映像素材を取込んで蓄積しておく素材登録サーバ1、直近の送出素材を素材登録サーバ1からコピー転送して蓄積しておく送出サーバ4、上位システム110から制御信号を受けデコーダ6を制御する送出コントローラ3とで構成されている。なおこれらの機器1、3、4、6は、それぞれ、LAN130を介して相互にアクセスする。
また同様に、予備系のネットワーク型ビデオサーバ102は、編集機やVTR( Video Tape Recorder )等の入力ソースから、直接若しくはネットワーク経由で、映像素材を取込んで蓄積しておく素材登録サーバ7、直近の送出素材を素材登録サーバ7からコピー転送して蓄積しておく送出サーバ10、上位システム110から制御信号を受けデコーダ12を制御する送出コントローラ9とで構成されている。なおこれらの機器7、9、10、12は、それぞれ、LAN130を介して相互にアクセスする。
尚、素材登録サーバ1には大容量のスペックを求められるためハードディスク装置2を用い、送出サーバ4にはディスクの安定性を求められるためフラッシュメモリ等の不揮発性半導体メモリを用いた記憶装置5を用いている。
【0010】
本発明の一実施例を図2によって説明する。図2は、本発明のネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムの一実施例の構成を示すブロック図である。14−1、14−2、‥‥‥、14−nはハードディスク装置、13−1、13−2、‥‥‥、13−nはそれぞれハードディスク装置14−1、14−2、‥‥‥、14−nを具備した素材登録サーバ(nは自然数)、201は現用系のネットワーク型ビデオサーバ、202は予備系のネットワーク型ビデオサーバ、203は共通系の素材登録サーバである。共通系の素材登録サーバ13−1、13−2、‥‥‥、13−nは、クラスタリング型サーバの構成とした共通系の素材登録サーバ203である。なお、共通系クラスタリング型サーバ(共通系の素材登録サーバ203)を構成するハードディスク装置を具備した素材登録サーバの数は、2以上であれば何台でも良い。
現用系のネットワーク型ビデオサーバ201は、図1の現用系のネットワーク型ビデオサーバ101に対して、素材登録サーバ1を削除した構成である。また同様に、予備系のネットワーク型ビデオサーバ202は、図1の現用系のネットワーク型ビデオサーバ102に対して、素材登録サーバ7と送出サーバ10を削除した構成である。また、点線の矢印d1、d2、d3、d4、d5、d6は、それぞれデータの移動経路を示す。
【0011】
図2にあるように素材登録サーバ203をクラスタリング型の構成にして、現用系には高信頼性の送出サーバとデコーダを設け、予備系はデコーダだけを設けたハードウェアで構成しており、これにより低コストな冗長システムの実現を可能とする。クラスタリング型の構成とすることによって、例えば、上位システム110に登録されたプログラムによって、素材登録サーバ203内に仮想リソースが作成され、素材登録サーバ203を構成する個々の素材登録サーバ13−1、13−2、‥‥‥、13−nのどれかが障害等で動作しない時でも、共通系の素材登録サーバ203は安定に動作するものである。
【0012】
図2のネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムにおいて、現用系のデコーダ6は、上位システム110からの制御に応じて、送出サーバ4のIPアドレスを参照し、予備系のデコーダ12は素材登録サーバ203のIPアドレスを参照することで、それぞれ必要な素材の読出しを行う。
通常運用では、現用系のネットワーク型ビデオサーバ201は、素材登録サーバ203から、直近の素材のデータを高信頼性の不揮発性半導体メモリを用いた記憶装置5を具備する送出サーバ4にコピー転送して(矢印d1)おき、デコーダ6は送出サーバ4からデータを読出して(矢印d2)デコーダ6から送出切替器111に送出を行う(矢印d3)。
同時に、バックグランドでは、予備系のネットワーク型ビデオサーバ202が、上位システム110からの制御に応じて、素材登録サーバ203からデコーダ12が直接上記と同じ直近の素材のデータを読出して(矢印d4)送出切替器111に送出を行なう(矢印d5)。
送出切替器111は、上位システム110からの制御に応じて、入力されたデータを放送する(矢印d6)。
このような現用系と予備系を有する冗長システムであることと、共通の素材登録サーバ203がクラスタリング型の構成であるために、障害発生時にもシステムとして運用は持続できる。
【0013】
本発明の他の実施例を図3によって説明する。図3は、本発明のネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムの一実施例の構成を示すブロック図である。図3によって、現用系のネットワーク型ビデオサーバ201の送出サーバ6に障害が発生した時のシステムの動作を説明する。
図3に示すように現用系のネットワーク型ビデオサーバ201において、送出サーバ4に障害が発生した時には、デコーダ6は、上位システム110の制御により素材供給元の参照IPアドレスを素材登録サーバ202に変更することで、予備系のネットワーク型ビデオサーバ202と同様に、素材登録サーバ203から直接データを読出し(矢印e1)、データの送出を可能としている。このようにすることによって、システム全体としての冗長性を維持することができる。
【0014】
なお、上記本発明のネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムにおいては、例えば、特許文献1と同様に、送出コントローラ3及び9、送出サーバ4、並びに、デコーダ6及び12のそれぞれに、LAN130に接続された外部接点ボードを実装し、それらの機器に異常が発生したり、停止状態となった時には上位システム110に通報するようにすることによって、上位システム110はどの機器が異常若しくは停止しているかが分かるようにしている。
また、その他の方法として、例えば、特許文献2と同様に、送出コントローラ3及び9、送出サーバ4、並びに、デコーダ6及び12のそれぞれに、監視装置を設け、それらの機器に異常が発生したり、停止状態となった時には、監視装置からLAN130を介して上位システム110に通報が出力されることによって、上位システム110はどの機器が異常若しくは停止しているかが分かるようにしても良い。
【0015】
上記実施例によれば、ネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムにおいて、冗長化方式をハードウェアの完全二重化方式ではなく、現用系は送出サーバ、予備系はクラスタリング型の素材(登録)サーバで各々から送出を行なう冗長化方式にし、送出サーバの障害発生時には供給元参照IPを素材(登録)サーバに変更することで冗長性を維持することが可能な、低コストで信頼性の高い冗長システムが実現した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムのブロック構成を示す比較図。
【図2】本発明のネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムの一実施例の構成を示すブロック図。
【図3】本発明のネットワーク型ビデオサーバを用いた放送局映像送出システムの一実施例の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0017】
1:素材登録サーバ、 2:ハードディスク装置、 3:送出コントローラ、 4:送出サーバ、 5:不揮発性半導体メモリを用いた記憶装置、 6:デコーダ、 7:素材登録サーバ、 8:ハードディスク装置、 9:送出コントローラ、 10:送出サーバ、 11:不揮発性半導体メモリを用いた記憶装置、 12:デコーダ、 13−1、13−2、‥‥‥、13−n:素材登録サーバ、 14−1、14−2、‥‥‥、14−n:ハードディスク装置、 201:現用系のネットワーク型ビデオサーバ、 101:現用系のネットワーク型ビデオサーバ、 102:予備系のネットワーク型ビデオサーバ、 110:上位システム、 111:送出切替器、 130はLAN、 202:予備系のネットワーク型ビデオサーバ、 203:共通系の素材登録サーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材を放送する放送局映像送出システムにおいて、ハードディスク装置を映像記憶に用いて上記素材を記録するクラスタリング型の素材登録サーバと、上位システムの制御によって動作する第1のネットワーク型ビデオサーバと、上位システムの制御によって動作する第2のネットワーク型ビデオサーバとを有する放送局映像送出システムであって、
上記第1のネットワーク型ビデオサーバは、少なくとも不揮発性半導体メモリを用いた第1の記憶装置と、参照元から素材を読出して送出する第1のデコーダとを備え、
上記第2のネットワーク型ビデオサーバは、少なくとも上記素材登録サーバが記録した素材を読出して送出する第2のデコーダとを備え、
上記第1のデコーダは、上記第1の記憶装置の障害発生時には、上記素材登録サーバが記録した素材を読出して送出することを特徴とする放送局映像送出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−290428(P2009−290428A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139320(P2008−139320)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】