説明

放送用電波自動追尾装置

【課題】受信用パラボラアンテナの部品点数を削減して、なおかつ、受信用パラボラアンテナの受信特性を良好にして送信源に精度良く追尾できるようにする。
【解決手段】回転台4には、受信用パラボラアンテナ1とその受信信号を増幅するLNA3とを搭載し、受信用パラボラアンテナ1は、その反射面の中央部に1個の一次輻射器2が設けられた構成をなしている。制御部10からの制御信号により、回転台4は受信用パラボラアンテナ1を、その一次輻射器2の先端部が一筆書きのパターン形状の旋回軌道に沿って移動することにより、旋回動作させ、その受信信号を基に、制御部10は受信用パラボラアンテナ1から見た送信源の方向を探索し、この探索結果をもとに回転台4の動作を制御する。受信用パラボラアンテナ1は、送信源を追尾しながら、旋回動作を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコプタなどの移動体からの放送に送信される映像信号や音声信号の放送電波を中継するテレビジョン放送用無線中継伝送装置であるFPU(Field Pickup Unit)に用いられる放送用電波自動追尾装置に係り、特に、受信アンテナを放送電波の送信源に追尾させるようにした放送用電波自動追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放送のために撮影現場で撮影した映像信号や音声信号(以下、放送用信号という)を無線中継装置に無線伝送する場合、従来では、アナログFM(Frequency Modulation :周波数変調)方式による伝送方法が用いられていたが、近年、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)方式やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex:直交周波数分割多重)方式などのデジタル変調方式による無線デジタル伝送方式が用いられるようになってきている。
【0003】
撮影現場から無線中継装置に送信する送信電波は、ビーム半値幅が5゜程度のビーム状をなすものであって、無線中継装置では、かかる送信電波を直径0.3m〜1.2mのパラボラアンテナを用いて受信するが、送信源がヘリコプタなどの移動体に設けられている場合、この移動体の移動とともにパラボラアンテナの向きを変化させ、パラボラアンテナがこの送信源を追尾するようにする必要がある。
【0004】
このような移動する送信源にパラボラアンテナを追尾させるために、人手による作業でもって信号源の移動とともにパラボラアンテナの向きを変化させることは実用上に非常に困難であって、このため、従来、送信源の方向を検出し、その検出結果を用いてパラボラアンテナの向きを自動的に変更されて送信源への自動追尾を行なうようにしている。
【0005】
図17はかかる無線伝送システムの一例を示すシステム図であって、100は送信源、101は送信制御部、102は送信高周波部、103は送信用パラボラアンテナ、110はテレビジョン放送用無線中継伝送装置(FPU)、111は受信用パラボラアンテナ、112は受信高周波部、113は本線用受信制御部、114は追尾用受信制御部、115は回転台(雲台)である。
【0006】
同図において、図示しない撮像装置から送信源100に供給された映像信号や音声信号(以下、放送信号という)は、送信制御部101に供給されて所定の信号処理や変調処理され、送信高周波部102で高周波信号に変換されて送信用パラボラアンテナ103から送信される。送信用パラボラアンテナ103からの送信電波はFPU110の受信用パラボラアンテナ111で受信され、受信高周波部112で増幅処理されてIF(中間周波)信号への変換処理などがなされて後、本線用受信制御部113で信号処理されて出力される。また、受信高周波部112から出力される受信放送信号は追尾用受信制御部114に供給され、この受信放送信号を基に、受信用パラボラアンテナ111からみた送信源100の送信用パラボラアンテナ103の方向(これを、以下、送信源100の方向という)が検出される。
【0007】
ここで、受信用パラボラアンテナ111や受信高周波部112は回転台115に搭載され、受信用パラボラアンテナ111の向きを変更できるように構成されている。追尾用受信制御部114は、受信高周波部112からの受信放送信号を処理して送信源100の方向を検出すると、この検出結果に応じた追尾制御信号を生成して回転台115に送出する。回転台115では、図示しない制御装置や回転駆動装置などが設けられており、この制御装置が追尾用受信制御部114からの追尾制御信号を基に回転駆動装置を回転駆動し、これにより、受信用パラボラアンテナ111の向きを送信源100の方向に変更させる。
【0008】
このように、FPU110において、送信源100の方向を検出するための方法の一従来例として、受信用パラボラアンテナ111に上下,左右に1つずつ計4個の受電器を設け、これらの受信強度を用いて送信源100の方向を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
図18は特許文献1に記載の技術での図17における受信用パラボラアンテナ111の概略的な構成とその動作を示す図であって、116Uは上受電器、116Dは下受電器、116Lは左受電器、116Rは右受電器である。
【0010】
同図(イ)において、受信用パラボラアンテナ111には、その反射面の中心点を中心として、上下対称の位置に上方向からの送信電波を受信する上受電器116Uと下方向からの送信電波を受信する下受電器116Dとが設けられ、同じく左右対称の位置に左方向からの電波を受信する左受電器116Lと右方向からの送信電波を受信する右受電器116Rとが設けられている。これら上受電器116U,下受電器116D,左受電器116L,右受電器116Rで受信した高周波の放送信号は、受信高周波部112において、図示しない選択手段によって順次所定期間ずつ切替選択されて増幅などの処理がなされた後、本線用受信制御部113と追尾用受信制御部114とに供給される。
【0011】
追尾用受信制御部114では、受信高周波部112から供給された高周波受信信号を上受電器116U,下受電器116D,左受電器116L,右受電器116Rの受信高周波信号毎に区分し、それらの受信レベルを検出して、上受電器116Uの受信レベルと下受電器116Dの受信レベルとを比較し、受信用パラボラアンテナ111からみて上下方向での送信源100の方向を検出する。同様にして、左受電器116Lの受信レベルと右受電器116Rの受信レベルとを比較し、受信用パラボラアンテナ111からみて左右方向での送信源100の方向を検出する。これにより、の検出結果から受信用パラボラアンテナ111からみた送信源100の方向が検出されることになり、その検出結果に基づいて追尾制御信号が作成され、この追尾制御信号に応じて回転台115が制御されて、上受電器116Uの受信レベルと下受電器116Dの受信レベルと等しく、かつ左受電器116Lの受信レベルと右受電器116Rの受信レベルとが等しくなるように、受信用パラボラアンテナ111の向きが変更される。
【0012】
図18(a)(イ),(ロ)は、受信用パラボラアンテナ111が所定の方向を向いていて、受信用パラボラアンテナ111の正面の方向にある送信源100からの送信電波(実線矢印)を受信している状態を示すものであって、この場合には、全ての受電器116U,116D,116L,116Rの受信レベルが等しくなり、図18(a)(ハ)に示すように、受信用パラボラアンテナ111の向きは変わらないことになる。
【0013】
図18(b)(イ),(ロ)は、受信用パラボラアンテナ111の現在の向きに対し、下方向にある送信源100からの送信電波(実線矢印)を受信している状態を示すものであって、この場合には、上受電器116Uの受信レベルに対して下受電器116Dの受信レベルが大きくなる。この場合には、図18(b)(ハ)に示すように、受信用パラボラアンテナ111の向きが下方に変更されて送信源100の方向を向くことになる。なお、この場合、左受電器116Uの受信レベルと右受電器116Rとの受信レベルが異なれば、左右方向のうち受信レベルが大きい方にも受信用パラボラアンテナ111は向きを変えることになる。
【0014】
図18(c)(イ),(ロ)は、受信用パラボラアンテナ111の現在の向きに対し、上方向にある送信源100からの送信電波(実線矢印)を受信している状態を示すものであって、この場合には、下受電器116Dの受信レベルに対して上受電器116Uの受信レベルが大きくなる。この場合には、図18(c)(ハ)に示すように、受信用パラボラアンテナ111の向きが上方に変更されて送信源100の方向を向くことになる。なお、この場合、左受電器116Uの受信レベルと右受電器116Rとの受信レベルが異なれば、左右方向のうち受信レベルが大きい方にも受信用パラボラアンテナ111は向きを変えることになる。
【0015】
このようにして、上記特許文献1に記載の技術では、受信用パラボラアンテナ111の向きを送信源100の方向に追尾させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009ー153113公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、受信用パラボラアンテナ111にその送信源100に対する上下方向の向きを検出するための受電器116U,116Dと左右方向の向きを検出するための受電器116L,116Rとを設けているため、受信用パラボラアンテナ111の送信源100への方向に対する向きを検出することができるものであるが、受信用パラボラアンテナ111の構成要素としての部品点数が増加するとともに、これら受電器116U,116D,116L,116R毎にその受信信号を増幅するための増幅回路や順次切り替え選択するための選択手段などが必要となり、このことからも、部品点数が増加することになり、自動追尾装置の規模が大きくなるという問題がある。
【0018】
また、受信用パラボラアンテナ111には、互いに近接した配置関係で4個の受電器116U,116D,116L,116Rが設けられていることから、これら間で反射などの影響が生ずることもあり、これら受電器の受信特性が劣化する場合もある。
【0019】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、受信用パラボラアンテナでの部品点数を削減して規模を縮小することができ、受信用パラボラアンテナの受信特性を良好にして送信源に精度良く追尾できるようにした放送用電波自動追尾装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、受信用パラボラアンテナと受信用パラボラアンテナの受信信号を増幅するLNA(Low-Noise Amplifier)とを搭載した回転台と、受信用パラボラアンテナの受信信号に基づいて、回転台を回転制御する制御部とを備え、受信用パラボラアンテナは、その反射面の中央部に1個の一次輻射器を備え、制御部は、回転台を回転制御することにより、一次輻射器の先端部を一筆書きのパターン形状の旋回軌道に沿って移動させることによって受信用パラボラアンテナを旋回動作させて、受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を探索するとともに、探索結果に基づいて、受信用パラボラアンテナの向きを送信源の方向に追尾させる追尾動作を行なわせることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、旋回軌道のパターン形状が、正2n角形(但し、nは2以上の整数)をなすことを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明は、制御部が、旋回軌道の最上点側の検出レベルと旋回軌道の最下点側の検出レベルとの比較により、上下方向での受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を検出し、旋回軌道の最左点側の検出レベルと旋回軌道の最右点側の検出レベルとの比較により、左右方向での受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を検出することを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明は、旋回軌道が、正四角形の枠状パターンに内接する広範囲探索軌道と、広範囲探索軌道の中心点を通る中心点探索軌道とからなって、広範囲探索軌道と中心点探索軌道とで一筆書きのパターン形状をなし、少なくとも、広範囲探索軌道は正2n角形(但し、nは2以上の整数)のパターン形状をなすことを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明は、広範囲旋回軌道の最上点側の検出レベルと旋回軌道の最下点側の検出レベルとの比較により、上下方向での受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を検出し、広範囲旋回軌道の最左点側の検出レベルと旋回軌道の最右点側の検出レベルとの比較により、左右方向での受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を検出し、中心点探索軌道での中心点側の検出レベルにより、送信源の有無を判定することを特徴とする。
【0025】
さらに、本発明は、送信源に関する情報と、受信用パラボラアンテナの動作に関する情報とを表示する表示手段を備えたことを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明は、受信用パラボラアンテナで電波の受信がなくなると、回転台の回転を制御して、旋回軌道を拡げてより広い旋回範囲で送信源の探索を行なわせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、受信用パラボラアンテナを旋回させることによって送信源の方向を探索するものであるから、受信用パラボラアンテナには、1つの一次輻射器を設けるだけで済むことになり、受信用パラボラアンテナに用いる部品点数を削減できて、その構造を簡略化でき、しかも、受信用パラボラアンテナの重量を低減できるとともに、回転台に搭載する部品もこの軽量化された受信用パラボラアンテナとその受信信号を増幅するLNAとであるため、回転台の搭載部品の重量も低減でき、受信用パラボラアンテナの旋回動作を円滑を行なうことができて、受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向の検出や受信用パラボラアンテナのこの送信源の方向への追尾が円滑に行なわれることになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による放送用電波自動追尾装置の第1の実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】図1における追尾用受信制御部の一具体例を示すブロック構成図である。
【図3】図2における追尾制御部からの追尾制御信号Bによる図1における受信用パラボラアンテナの送信源への追尾動作の一具体例を示す図である。
【図4】図2におけるアンテナ旋回制御部からの旋回制御信号Cによる図1における受信用パラボラアンテナの旋回動作の一具体例を示す図である。
【図5】図1に示す第1の実施形態のアンテナ制御動作の流れの一具体例を示すフローチャートである。
【図6】図1における受信用パラボラアンテナの一次輻射器の先端部の旋回軌道の一具体例を示す図である。
【図7】図1における受信用パラボラアンテナの一次輻射器の先端部の旋回軌道の他の具体例を示す図である。
【図8】図1における受信用パラボラアンテナの一次輻射器の先端部の旋回軌道のさらに他の具体例を示す図である。
【図9】図1における受信用パラボラアンテナの一次輻射器の先端部の旋回軌道のさらに他の具体例を示す図である。
【図10】図1における受信用パラボラアンテナの一次輻射器の先端部の旋回軌道のさらに他の具体例を示す図である。
【図11】本発明による放送用電波自動追尾装置の第2の実施形態における受信用パラボラアンテナの一次輻射器の先端部の旋回軌道の一具体例を示す図である。
【図12】本発明による放送用電波自動追尾装置の第2の実施形態における受信用パラボラアンテナの一次輻射器の先端部の旋回軌道の他の具体例を示す図である。
【図13】本発明による放送用電波自動追尾装置の第2の実施形態における受信用パラボラアンテナの一次輻射器の先端部の旋回軌道のさらに他の具体例を示す図である。
【図14】図1における表示部で表示される情報の一具体例を示す図である。
【図15】信号源を搭載したヘリコプタがビルの影に隠れた場合を説明するための図である。
【図16】本発明による放送用電波自動追尾装置の第3の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図17】無線伝送システムの一従来例を示すシステム図である。
【図18】図17における受信用パラボラアンテナの概略的な構成とその動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0030】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明による放送用電波自動追尾装置の第1の実施形態を示すブロック構成図であって、1は受信用パラボラアンテナ、2は一次輻射器(受電器)、3はLNA(Low-Noise Amplifier:低雑音増幅器)、4は回転台、5は受信高周波部、6は補償処理部、7は本線用受信制御部、8は表示部、9はスイッチ部、10は追尾用受信制御部、11はスリップリング、12は伝送ケーブルである。
【0031】
同図において、この第1の実施形態も、図17に示される無線伝送システムでFPU110の放送用電波自動追尾装置として用いられるものであって、反射面に1個の輻射器2が設けられた受信用パラボラアンテナ1とLNA3とが回転台4に搭載されており、回転台4の回転動作により、この一次輻射器2の先端部が旋回するようにして、受信用パラボラアンテナ1が旋回する。図示しない送信源(図17での送信源100に相当する)から送信されるRF(無線周波)帯の放送用信号(送信信号)が受信用パラボラアンテナ1の反射面で反射されて一次輻射器2で受信される。
【0032】
回転台4に搭載されるLNA3と回転台4内に設けられた伝送路とがこのLNA3の筐体と回転台4との間に設けられたスリップリング11を介して接続され、また、回転台4に設けられた伝送路は伝送ケーブル12を介して受信高周波部5に接続されている。これにより、受信用パラボラアンテナ1で受信されたRF帯の放送用信号が、LNA3で増幅された後、スリップリング11,回転台4内に設けられた伝送路及び伝送ケーブル12を介して受信高周波部5に供給される。
【0033】
受信高周波部5では、スリップリング11などによって減衰されたRF帯の放送用信号のかかる減衰を補償する補償処理部6が設けられており、RF帯の放送用信号が、この補償処理部6で補償処理された後、IF(中間周波)帯の放送用信号に周波数変換され、本線用受信制御部7に供給される。この本線用受信制御部7では、このIF帯の放送用信号が増幅や復調などの処理がなされ、復調された放送用信号は後段の処理部に供給されるとともに、表示部8に供給される。これにより、この表示部8では、送信源からの受信された放送用の映像や音声がモニタされる。
【0034】
また、受信高周波部5から出力されるRF帯の放送用信号は、追尾用受信制御部10に供給されて処理され、受信用パラボラアンテナ1から見た送信源の方向が検出され、この検出された方向に応じた回転台制御信号Aが作成される。この回転台制御信号Aは回転台4に供給される。回転台4では、図示しない制御装置や回転駆動装置などが設けられており、この制御装置が追尾用受信制御部10からの回転台制御信号Aを基に回転駆動装置を回転駆動し、これにより、受信用パラボラアンテナ1の向きを送信源の方向に設定変更させるとともに、この設定された送信源の方向(以下、これを追尾方向という)を中心方向(即ち、受信用パラボラアンテナ1が後述の旋回動作をしないときのこの受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部と受信用パラボラアンテナ1の反射面の中心位置とを結ぶ直線に沿う方向)として、受信用パラボラアンテナ1の向きを所定パターンの旋回軌道に沿って連続的に変更させる旋回動作をする。
【0035】
図2は図1における追尾用受信制御部10の一具体例を示すブロック構成図であって、13はレベル検出部、14は追尾制御部、15はアンテナ旋回制御部、16は回転台制御部である。
【0036】
同図において、受信高周波部5(図1)からのRF帯の放送用信号はレベル検出部13に供給されてそのレベルが検出される。この検出されたレベルは追尾制御部14とアンテナ旋回制御部15に供給される。追尾制御部14は、供給された検出レベルを基に、受信用パラボラアンテナ1の向きが所定のパターンの全体に沿って連続的に変更される毎に(以下、受信用パラボラアンテナ1の向きがこのパターンに沿って変更開始し、このパターン全体を辿った後、もとの向きに戻るまでの期間を1旋回期間といい、このような受信用パラボラアンテナ1の動作を旋回動作という)、送信源の方向を検出し、追尾制御信号Bを生成する。アンテナ旋回制御部15は、受信用パラボラアンテナ1の旋回動作を行なわせるための制御信号(旋回動作制御信号)Cを生成する。ここで、旋回動作制御信号Cは、受信用パラボラアンテナ1が旋回動作するように、回転台4(図1)を駆動するための制御信号であって、レベル検出部13でレベルが検出されているときには、この旋回動作制御信号Cを生成されて、追尾制御部14で生成された追尾制御信号Bとともに、回転台制御信号Aとして、回転台4に供給される。
【0037】
図3は図2における追尾制御部14からの追尾制御信号Bによる図1における受信用パラボラアンテナ1の送信源への追尾動作の一具体例を示す図であり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0038】
図3(a)は受信用パラボラアンテナ1の追尾方向が、例えば、上下の所定方向であることを示すものであって、この方向は追尾制御部14(図2)で検出されたものである。ここで、例えば、送信源がヘリコプタに搭載されているものとして、ヘリコプタが上昇し、従って、送信源が上昇すると、追尾制御部14がこれを検出する。この検出結果による追尾制御信号Bにより、回転台4が制御されて、図3(b)に示すように、受信用パラボラアンテナ1を上向きに角度θVだけ回動させ、その向きを送信源の方向、即ち、追尾方向に設定する。
【0039】
また、図3(c)は受信用パラボラアンテナ1の追尾方向が、左右の所定の方向であることを示すものであり、この方向も追尾制御部14(図2)で検出されたものである。ここで、例えば、送信源がヘリコプタに搭載されているものとして、ヘリコプタが受信用パラボラアンテナ1側から見て右方向に移動したすると、追尾制御部14がこれを検出する。この検出結果による追尾制御信号Bにより、回転台4が制御されて、図3(d)に示すように、受信用パラボラアンテナ1を右向きに角度θHだけ回動させ、その向きを送信源の方向、即ち、追尾方向に設定する。
【0040】
このようにして、受信用パラボラアンテナ1は上下,左右方向に向きを変えることができるものであるから、送信源が任意の方向に移動しても、受信用パラボラアンテナ1の向きをこれに追尾させることができる。
【0041】
図4は図2におけるアンテナ旋回制御部15からの旋回動作制御信号Cによる図1における受信用パラボラアンテナ1の旋回動作の一具体例を示す図であって、1’は仮想受信用パラボラアンテナ、2’は仮想一次輻射器であり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0042】
図4(a)(イ)〜(ニ)での仮想受信用パラボラアンテナ1’は、送信源(図示せず)の方向に向いている状態にある受信用パラボラアンテナ1を正面から見た場合を、説明の都合上、仮想的に示しているものであって、その仮想一次輻射器2’は仮想受信用パラボラアンテナ1’の反射面の中心に位置していることになる。実際の受信用パラボラアンテナ1も、その正面から見たものである。なお、図4(b)は仮想受信用パラボラアンテナ1’と受信用パラボラアンテナ1を、その左側から見たものである。なお、この仮想受信用パラボラアンテナ1’の向きは、追尾制御部14(図2)からの追尾制御信号Bによって設定されるものである。
【0043】
受信用パラボラアンテナ1は、その一次輻射器2の先端部が仮想受信用パラボラアンテナ1’の仮想一次輻射器2’の先端部を中心とするパターンに沿って旋回するように、その向きを連続的に変化させる。ここで、パターンとは、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部と仮想受信用パラボラアンテナ1’の仮想一次輻射器2’の先端部とを含む平面上のパターンであって、この一次輻射器2の先端部の旋回軌道であり、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部がかかるパターンに沿って旋回するということは、かかる平面上をこれに設定されるパターンに沿って移動する、ということである。
【0044】
ここで、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部が、仮想受信用パラボラアンテナ1’の仮想一次輻射器2’の先端部を中心点として、反時計方向に旋回するものとしている。図4(イ)では、一次輻射器2の先端部が仮想一次輻射器2’の先端部よりも左上方向にある状態を示しており、このときには、受信用パラボラアンテナ1は上向きとなっている。かかる状態から、矢印で示すように、一次輻射器2の先端部が仮想一次輻射器2’の先端部を中心として反時計方向に旋回し、図4(ロ)に示す状態では、一次輻射器2の先端部が仮想一次輻射器2’の先端部よりも左下方向にあって、受信用パラボラアンテナ1は下向きとなる。かかる状態からさらに反時計方向に旋回すると、図4(ハ)に示すように、一次輻射器2の先端部が仮想一次輻射器2’の先端部よりも右下方向にあって、受信用パラボラアンテナ1は下向きとなり、さらに、反時計方向に旋回すると、図4(ニ)に示すように、一次輻射器2の先端部が仮想一次輻射器2’の先端部よりも右上方向にあって、受信用パラボラアンテナ1は上向きとなり、さらに、反時計方向に旋回すると、図4(イ)に示すもとの状態に戻る。
【0045】
ここでは、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部が辿るパターンは、一例として、仮想受信用パラボラアンテナ1’の仮想一次輻射器2’の先端部を中心点とする円状のパターンであるが、後述するように、これに限るものではない。但し、いずれの形状であっても、一筆書きの閉じた(即ち、必ず出発点に戻る)パータンである。
【0046】
以上のようにして、レベル検出部13(図2)で受信されたRF帯の放送用信号のレベルが検出される限り、追尾制御部14(図2)からの追尾制御信号Bとアンテナ旋回制御部15(図2)からの旋回動作制御信号Cとにより、回転台4が駆動制御されて、受信用パラボラアンテナ1が図3に示す送信源への追尾動作と図4に示す旋回動作とが行なわれることになる。
【0047】
そして、この実施形態では、回転台4に受信用パラボラアンテナ1とLNA3とが搭載されているだけであるので、回転台4が旋回動作させる対象物の重量が充分低減でき、その旋回動作が非常に円滑に行なわれることになる。
【0048】
図5はこの第1の実施形態のアンテナ制御動作の流れの一具体例を示すフローチャートである。以下、前出図面を用いてこの具体例を説明する。
【0049】
アンテナ旋回制御部15(図2)からの旋回動作制御信号Cにより、受信用パラボラアンテナ1は旋回動作を行なっており(図5のステップS100)、追尾制御部14(図2)は、送信源の方向(受信用パラボラアンテナ1から見た方向:、以下、同様)を検知すると(図5のステップS102)、この検知した送信源の方向に対して受信用パラボラアンテナ1の向きを変更させる必要があるか否かを判別し、変更させる必要がなければ(図5のステップS103の“NO”)、図5のステップ100に戻り、受信用パラボラアンテナ1の向きを変更させる必要がない限り、受信用パラボラアンテナ1に旋回動作のみを行なわせる(図5のステップS100→S101→S102→S103→S100)。
【0050】
検知した送信源の方向に対して受信用パラボラアンテナ1の向きを変更させる必要があるときには(図5のステップS103の“YES”)、追尾制御部14(図2)で得られた追尾制御信号Bが回転台制御部16(図2)から回転台4(図1)に供給され、これにより、受信用パラボラアンテナ1の向きが変更されて送信源への追尾動作が行なわれる(図5のステップS104)。この動作は受信用パラボラアンテナ1の向きが送信源の方向に一致するまで行なわれ(図5のステップS105の“NO”→S104→S105の“NO”:なお、この間も、受信用パラボラアンテナ1は旋回動作を続ける)、これらが一致すると(図5のステップS105の“YES”)、ステップS100からの上記の動作を繰り返す。
【0051】
図6は受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部の旋回の軌跡(上記のパターン)の一具体例を示す図であって、20は旋回軌道、21U,21D,21L,21Rはレベル検出点、22U,22D,22L,22Rはレベル検出エリアである。
【0052】
同図において、ここでは、旋回軌道20を円形状とするものである。図6(a)に示す具体例では、レベル検出点21Uがこの旋回軌道20の最上点であり、レベル検出点21Dがこの旋回軌道20の最下点であり、レベル検出点21Lがこの旋回軌道20の最左点であり、レベル検出点21Rがこの旋回軌道20の最右点である。一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道20上を繰り返し旋回するように、受信用パラボラアンテナ1が繰り返し旋回するものであるが、一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道20上を1周する毎に、追尾制御部14(図2)は、レベル検出部13で検出されたレベル検出点21U,21L,21D,21Rの検出レベルを取り込み、レベル検出点21U,21Dの検出レベルを比較し、かつレベル検出点21L,21Rの検出レベルを比較する。
【0053】
かかるレベル検出点21U,21Dの検出レベルの比較からは、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が上方向にあるか、下方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出することができ、また、レベル検出点21L,21Rの検出レベルの比較からは、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が左方向にあるか、右方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出することができる。
【0054】
このようにして、追尾制御部14(図2)では、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部の旋回軌道20のレベル検出点21U,21L,21D,21Rの検出レベルを基に、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対する送信源の方向が検出され、その検出結果が追尾制御信号B(図2)として回転台4(図1)に供給され、これにより、受信用パラボラアンテナ1の向きが、送信源の方向に一致するように、制御される。
【0055】
なお、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部の旋回軌道20上の位置は、一例として、アンテナ旋回制御部15(図2)によって指令することができ、この場合には、この一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道20上のレベル検出点21U,21L,21D,21Rに位置すると、その旨の情報が追尾制御部14(図2)に通知される。他の例としては、この一次輻射器2の先端部の旋回軌道20上の位置が回転台4(図1)によって検出され、この一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道20上のレベル検出点21U,21L,21D,21Rに位置すると、その旨の情報が追尾制御部14(図2)に通知される。
【0056】
ところで、図6(a)に示す具体例では、旋回軌道20上のレベル検出点21U,21L,21D,21Rという各点位置での受信レベルを用いて送信源の方向を検出するものであるため、ノイズの影響を受け易く、送信源の方向の検出精度が充分でない場合もある。この問題を解消したものが図6(b)に示す具体例である。
【0057】
図6(b)に示す具体例では、一次輻射器2の先端部の旋回軌道20を、図6(a)でのレベル検出点21Uに相当する最上点を中心としてその前後45゜のエリアを上側のレベル検出エリア22Uに区分し、図6(a)でのレベル検出点21Dに相当する最下点を中心としてその前後45゜のエリアを下側のレベル検出エリア22Dに区分し、図6(a)でのレベル検出点21Lに相当する最左点を中心としてその前後45゜のエリアを左側のレベル検出エリア22Lに区分し、図6(a)でのレベル検出点21Rに相当する最右点を中心としてその前後45゜のエリアを右側のレベル検出エリア22Rに区分して、追尾制御部14(図2)は、レベル検出部13(図2)からの検出レベルをレベル検出エリア22U,22D,22L,22R毎に区分して夫々積分し、レベル検出エリア22Uでの検出レベル積分値(上方向の検出レベル積分値)をLU,レベル検出エリア22Dでの検出レベル積分値(下方向の検出レベル積分値)をLD,レベル検出エリア22Lでの検出レベル積分値(左方向の検出レベル積分値)をLL,レベル検出エリア22Rでの検出レベル積分値(右方向の検出レベル積分値)をLRとすると、
検出レベル積分値LU−検出レベル積分値LD
の比較演算を行なって、その結果から、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が上方向にあるか、下方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出し、
検出レベル積分値LL−検出レベル積分値LR
の比較演算を行なって、その結果から、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が左方向にあるか、右方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出する。
【0058】
このようにして、この具体例では、旋回軌道20に沿って区分した検出エリアでの検出レベルの積分値を用いて送信源の方向を検出するものであるから、この積分処理によってノイズの影響を低減することができ、送信源の方向を精度良く検出することができる。
【0059】
ところで、上記の旋回軌道20は、円形状をなすものであるが、厳密に言えば、円形状に近似した多数の直線からなる多角形状をなすものである。このような円形状の旋回軌道20を描かせるためには、かかる多角形の辺となる多数の直線を順次描かせる場合、1つの直線を描いて次の直線を描かせる毎に新たな直線を描かせるための制御が必要となって制御回数が多くなり、制御のたびに遅延が生ずる。このことから、旋回軌道20を1周するのに要する時間が増加し、追跡対象となる送信源に追尾可能な受信用パラポラアンテナ1の追尾速度の限界値が小さくなるという問題もある。
【0060】
かかる問題を解消する手段としては、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部が辿る旋回軌道の形状を直線部(辺部)の数が少ない多角形状とする。これによると、旋回軌道の直線部から次の直線部への切り替わり回数が大幅に低減できるので、旋回軌道を1周するのに要する時間を大幅に低減でき、受信用パラポラアンテナ1の追尾速度の限界値を向上させることができる。以下、かかる多角形状の旋回軌道の具体例について説明する。
【0061】
図7は辺数が少ない多角形状の旋回軌道の一具体例を示す図であって、23は旋回軌道、24U,24D,24L,24Rはレベル検出点、25U,25D,25L,25Rはレベル検出エリアである。
【0062】
同図において、ここでは、旋回軌道23を正方形状とするものである。図7(a)に示す具体例では、レベル検出点24Uがこの旋回軌道23の上辺の中心点であり、レベル検出点24Dがこの旋回軌道23の下辺の中心点であり、レベル検出点24Lがこの旋回軌道23の左辺の中心点であり、レベル検出点24Rがこの旋回軌道23の右辺の中心点である。一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道23上を繰り返し旋回するように、受信用パラボラアンテナ1が繰り返し旋回するものであるが、図6(a)の旋回軌道20の場合と同様、一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道23上を1周する毎に、追尾制御部14(図2)は、レベル検出部13で検出されたレベル検出点24U,24L,24D,24Rでの検出レベルを取り込み、レベル検出点24U,24Dの検出レベルを比較して受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が上方向にあるか、下方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出し、かつレベル検出点24L,24Rの検出レベルを比較して受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が左方向にあるか、右方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出する。
【0063】
これにより、追尾制御部14(図2)では、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対する送信源の方向が検出され、その検出結果が追尾制御信号B(図2)として回転台4(図1)に供給され、これにより、受信用パラボラアンテナ1の向きが、送信源の方向に一致するように、制御される。
【0064】
図7(b)に示す具体例では、一次輻射器2の先端部の旋回軌道23を、その上辺をレベル検出エリア25Uとし、その下辺をレベル検出エリア25Dとし、その左辺をレベル検出エリア25Lとし、その右辺をレベル検出エリア25Rとして、追尾制御部14(図2)は、レベル検出部13(図2)からの検出レベルをレベル検出エリア25U,25D,25L,25R毎に区分して夫々積分し、図6(b)の旋回軌道20の場合と同様、レベル検出エリア25Uとレベル検出エリア25Dとの検出レベル積分値の比較により、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が上方向にあるか、下方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出し、レベル検出エリア25Lとレベル検出エリア25Rとの検出レベル積分値の比較により、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が左方向にあるか、右方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出する。そして、この検出結果に基づいて、受信用パラボラアンテナ1を制御する。
【0065】
このようにして、この具体例では、旋回軌道23の辺毎に区分した検出エリアでの検出レベルの積分値を用いて送信源の方向を検出するものであるから、この積分処理によってノイズの影響を低減することができ、送信源の方向を精度良く検出することができる。
【0066】
図8は辺数が少ない多角形状の旋回軌道の他の具体例を示す図であって、26は旋回軌道、27U,27D,27L,27Rはレベル検出点、28U,28Dはレベル検出点,28L,28Rはレベル検出エリアである。
【0067】
同図において、ここでは、旋回軌道26を正六角形状とするものである。図8(a)に示す具体例では、レベル検出点27Uがこの旋回軌道26の最上角部であり、レベル検出点27Dがこの旋回軌道26の最下角部であり、レベル検出点27Lがこの旋回軌道26の左辺の中心点であり、レベル検出点27Rがこの旋回軌道26の右辺の中心点である。一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道26上を繰り返し旋回するように、受信用パラボラアンテナ1が繰り返し旋回するものであるが、図6(a)の旋回軌道20の場合と同様、一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道26上を1周する毎に、追尾制御部14(図2)は、レベル検出部13で検出されたレベル検出点27U,27L,27D,27Rでの検出レベルを取り込み、これら検出レベルを用いて受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対する送信源の方向を検出し、その検出結果により、受信用パラボラアンテナ1の向きが、送信源の方向に一致するように、制御されるものである。
【0068】
図8(b)に示す具体例では、正六角形状の旋回軌道26の最上角部をレベル検出点28Uとし、その最下角部をレベル検出点28Dとし、その左辺をレベル検出エリア28Lとし、その右辺をレベル検出エリア28Rとする、そして、追尾制御部14(図2)は、レベル検出部13(図2)からの検出レベルからレベル検出点28U,28Dの検出レベルを抽出して比較することにより、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が上方向にあるか、下方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出し、また、レベル検出部13(図2)からの検出レベルをレベル検出エリア28L,28R毎に区分して夫々積分し、図6(b)の旋回軌道20の場合と同様、レベル検出エリア28Lとレベル検出エリア28Rとの検出レベル積分値の比較により、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が左方向にあるか、右方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出する。そして、これらの検出結果に基づいて、受信用パラボラアンテナ1を制御する。
【0069】
このようにして、この具体例では、旋回軌道26の辺毎に区分した検出エリアでの検出レベルの積分値を用いて送信源の方向を検出するものであるから、この積分処理によってノイズの影響を低減することができ、送信源の方向を精度良く検出することができる。
【0070】
図9は辺数が少ない多角形状の旋回軌道のさらに他の具体例を示す図であって、29は旋回軌道、30U,30D,30L,30Rはレベル検出点、31U,31D,31L,31Rはレベル検出エリアである。
【0071】
同図において、ここでは、旋回軌道29を正八角形状とするものである。図9(a)に示す具体例では、レベル検出点30Uがこの旋回軌道29の上辺部の中心点であり、レベル検出点30Dがこの旋回軌道29の下辺部の中心点であり、レベル検出点30Lがこの旋回軌道29の左辺の中心点であり、レベル検出点30Rがこの旋回軌道29の右辺の中心点である。一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道29上を繰り返し旋回するように、受信用パラボラアンテナ1が繰り返し旋回するものであるが、図6(a)の旋回軌道20の場合と同様、一次輻射器2の先端部がこの旋回軌道29上を1周する毎に、追尾制御部14(図2)は、レベル検出部13で検出されたレベル検出点30U,30L,30D,30Rでの検出レベルを取り込み、これら検出レベルを用いて受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対する送信源の方向を検出し、その検出結果により、受信用パラボラアンテナ1の向きが、送信源の方向に一致するように、制御されるものである。
【0072】
図9(b)に示す具体例では、正八角形状の旋回軌道29の上辺部全体をレベル検出エリア31Uとし、その下辺部全体をレベル検出エリア31Dとし、その左辺全体をレベル検出エリア31Lとし、その右辺全体をレベル検出エリア31Rとする、そして、追尾制御部14(図2)は、レベル検出部13(図2)からの検出レベルからレベル検出エリア31U,31Dの検出レベルを抽出して夫々積分し、それらの検出レベル積分値を比較することにより、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が上方向にあるか、下方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出し、また、レベル検出部13(図2)からの検出レベルをレベル検出エリア31L,31Rの検出レベルを抽出して夫々積分し、図6(b)の旋回軌道20の場合と同様、レベル検出エリア31Lとレベル検出エリア31Rとの検出レベル積分値の比較により、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が左方向にあるか、右方向にあるのか、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出する。そして、これらの検出結果に基づいて、受信用パラボラアンテナ1を制御する。
【0073】
このようにして、この具体例では、旋回軌道29の辺毎に区分した検出エリアでの検出レベルの積分値を用いて送信源の方向を検出するものであるから、この積分処理によってノイズの影響を低減することができ、送信源の方向を精度良く検出することができる。
【0074】
以下同様にして、正2n角形(但し、nは2以上の整数)の旋回軌道を用いることにより、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対する送信源の方向を検出することができ、特に、正4n角形の旋回軌道を用いる場合には、その上辺,下辺,左辺,右辺をレベル検出エリアとして、かかるレベル検出エリア内での検出レベルを積分し、それら積分値を受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対する送信源の方向を検出するのに用いることができるものであって、ノイズによる影響を低減できてより精度良く送信源の方向を検出することができる。
【0075】
なお、nが3以上の奇数であるときの正2n角形の旋回軌道では、図8(b)に示す正六角形の旋回軌道26のように、上下が角部となるが、この場合でも、この角部を中心とした所定のエリアをレベル検出エリアとしても良い。この場合には、かかる旋回軌道の上下のレベル検出エリアでは、検出レベルが積分され、それらの積分値を比較することにより、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対する上下の送信源の方向を検出するようにすることもできる。
【0076】
図10は辺数が少ない多角形状の旋回軌道のさらに他の具体例を示す図であって、32は旋回軌道、32a〜32lは直線部、33U,33D,33L,33Rはレベル検出エリアである。
【0077】
同図において、ここでは、旋回軌道32を正12角形状とするものである。この旋回軌道32は、1つの角部を最上位置となり、これに対向する他の角部を最下位置となり、これら最上位置と最下位置の中間でこれらに対して左側に位置する角部を最左位置、右側に位置する角部を最右位置となるように、設定されるものである。
【0078】
かかる旋回軌道32は最上位置の左側から時計回りに順に配列される角部間の直線部32a,32b,32c,……,32k,32lからなり、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2(図1)の先端部は、この旋回軌道32に沿って旋回移動し、受信用パラボラアンテナ1が送信源の方向を中心軸として旋回する。かかる旋回中、追尾用受信制御部10(図1)において、受信高周波部5(図1)からのRF帯の受信放送用信号のレベルがレベル検出部13(図2)で検出される。
【0079】
ここで、旋回軌道32の最上位置を中心とする直線部32kから反時計回りに直線部32bまでの範囲が上方向のレベル検出エリア33Uと設定され、最左位置を中心とする直線部32bから反時計回りに直線部32eまでの範囲が左方向のレベル検出エリア33Lと設定され、最下位置を中心とする直線部32eから反時計回りに直線部32hまでの範囲が下方向のレベル検出エリア33Dと設定され、最右位置を中心とする直線部32hから反時計回りに直線部32kまでの範囲が左方向のレベル検出エリア33Rと設定されている。
【0080】
そこで、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2(図1)の先端部がこの旋回軌道32に沿って旋回移動するとともに、追尾制御部14(図2)は、上方向のレベル検出エリア33Uでの検出レベルを積分して上方向の検出レベル積分値LUを求め、また、左方向のレベル検出エリア33Lでの検出レベルを積分して左方向の検出レベル積分値LLを求め、さらに、下方向のレベル検出エリア33Dでの検出レベルを積分して下方向の検出レベル積分値LDを求め、さらに、右方向のレベル検出エリア33Rでの検出レベルを積分して右方向の検出レベル積分値LRを求める。そして、先の具体例と同様、上方向の検出レベル積分値LUと下方向の検出レベル積分値LDとを比較することにより、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が上方向にあるか、下方向にあるのかを判定し、あるいはまた、現在の向きの方向にあるのかを検出し、かつ左方向の検出レベル積分値LLと右方向の検出レベル積分値LRとを比較することにより、受信用パラボラアンテナ1の現在の向きに対して送信源が左方向にあるか、右方向にあるのかを判定し、その判定結果に基づいてこの受信用パラボラアンテナ1の送信源への追尾の制御を行なう。
【0081】
かかる具体例によると、上方向のレベル検出エリア33Uと左方向のレベル検出エリア33Lとが直線部32bでオーバラップしており、左方向のレベル検出エリア33Lと下方向のレベル検出エリア33Dとが直線部32eでオーバラップしており、下方向のレベル検出エリア33Dと右方向のレベル検出エリア33Rとが直線部32hでオーバラップしており、右方向のレベル検出エリア33Rと上方向のレベル検出エリア33Uとが直線部32kでオーバラップしており、夫々のレベル検出エリアが両隣のレベル検出エリアと1直線部ずつオーバラップしている。
【0082】
そして、上方向のレベル検出エリア33Uと左方向のレベル検出エリア33Lとがオーバラップする直線部32bは、上方向のレベル検出エリア33Uの中心位置である最上位置と左方向のレベル検出エリア33Lの中心位置である最左位置とを結ぶ直線に平行な45゜の傾斜角の直線部であり、水平線,垂直線に対して中間的な線をなしている。このことからこの直線部32bを移動中の受信信号のレベルは、受信用パラボラアンテナ1の向きに対して上方向や左方向の検出に利用できるものであり、このために、上方向のレベル検出エリア33Uと左方向のレベル検出エリア33Lとを直線部32bでオーバラップさせているものである。同様のことから、左方向のレベル検出エリア33Lと下方向のレベル検出エリア33Dとを直線部32eでオーバラップさせ、下方向のレベル検出エリア33Dと右方向のレベル検出エリア33Rとを直線部32hでオーバラップさせ、右方向のレベル検出エリア33Rと上方向のレベル検出エリア33Uとを直線部32kでオーバラップさせている。
【0083】
このように、夫々のレベル検出エリアを両隣のレベル検出エリアと1直線部ずつオーバラップさせることにより、各レベル検出エリア33U,33D,33L,33Rで得られる信号量がより多くなり、その分ノイズによる影響がより低減されることになる。
【0084】
なお、ここでは、正12角形の旋回軌道32について説明したが、これに限るものではなく、これ以外の正多角形についても同様に適用することができる。但し、例えば、図9に示す正八角形の旋回軌道32の場合にも、同様に、各レベル検出エリア31U,31L,31D,31Rの間の直線部は45゜の傾斜をなしているので、かかる直線部で隣接するレベル検出エリアをオーバラップさせるようにすることも可能であるが、この直線部は比較的長い区間であるため、このオーバラップの直線部で検出されるレベルはレベル検出エリアで検出するのに必要な方向の検出レベルからかけ離れたものとなり、却って送信源の方向検出精度を低下させるものとなる。従って、正12角形以上の多角形の旋回軌道に適用することが望ましい。
【0085】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明による放送用電波自動追尾装置の第3の実施形態について説明する。
【0086】
これまで示した受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2(図1)の先端部が辿る旋回軌道は、1つの円周に内接、あるいは外接する正多角形状をなすものであって、一次輻射器2の先端部がかかる旋回軌道を辿って旋回することにより、送信源の探索を広い範囲にわたって探索することができる。以下では、かかる旋回軌道を広範囲探索旋回軌道といい、この広範囲探索旋回軌道に沿う旋回によってなされる送信源の探索を広範囲探索ということにする。
【0087】
ところで、かかる広範囲探索軌道のみを用いて受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2(図1)を旋回動作させると、広い範囲にわたって受信用パラボラアンテナ1の向きから見た送信源の方向を探索することができるが、受信用パラボラアンテナ1は指向性を有していることから、受信用パラボラアンテナ1から見てかかる広範囲探索軌道の中心点の方向の受信感度が低下する。このため、追尾対象とする送信源が遠方にあって、そこからの送信電波の電界レベルが低く受信できない状態から、この送信源が受信用パラボラアンテナ1に向かって徐々に近づいて来ている場合、このとき、この受信用パラボラアンテナ1が、その向きが近づきつつある送信源の方向に設定されていて、広範囲探索が行なわれているものとすると、この送信源が近づくにつれて受信用パラボラアンテナ1でのこの送信源からの送信電波の電界強度が徐々に上昇しているにもかかわらず、受信用パラボラアンテナ1はこれを受信することができず、この送信源を検知できずに追尾できないというケースも発生することになる。この場合、勿論、送信源がある程度受信用パラボラアンテナ1に近づくと、広範囲探索で送信源を検知できるようになるが、この検知に時間遅れが生ずることになる。
【0088】
かかる問題を解消する第2の実施形態について説明するが、この第3の実施形態は、広範囲探索軌道にその中心点を通る探索軌道(以下、中心点探索軌道という)を付加した旋回軌道を用い、広範囲探索軌道の中心点方向の送信源も探索できるようにした旋回軌道とするものである。但し、かかる広範囲探索軌道と中心点探索軌道とからなる旋回軌道も、一筆書き状の閉じたパターンをなすものであることはいうまでもない。
【0089】
図11は第2の実施形態での広範囲探索軌道と中心点探索軌道とからなる旋回軌道の一具体例を示す図であって、34は旋回軌道、35a,35bは広範囲探索軌道、36a,36bは中心点探索軌道、37Uは最上点、37Dは最下点、37Lは最左点、37Rは最右点、38は中心点、39L,39Rはオーバラップエリア38Rである。
【0090】
同図において、旋回軌道34は、中心点38を中心とする正四角状の枠に内接するパターン形状をなしており、最右点37Rから最上点37Uを経て最左点37Lに至る広範囲探索軌道35aと最左点37Lから最下点37Dを経て最右点37Rに至る広範囲探索軌道35aとからなる正多角形(ここでは、一例として、正12角形としている)の広範囲探索軌道(これを、以下、広範囲探索軌道35という)と、最右点37Rから中心点38に至る中心点探索軌道36aとこの中心点38から最左点37Lに至る中心点探索軌道36bとからなる中心点探索軌道(以下、これを中心点探索軌道36)とからなっている。
【0091】
ここで、広範囲探索軌道35は、図10での旋回軌道32と同様、中心点38を中心とする正12角形のパターンをなすものであって、この中心点38は、受信用パラボラアンテナ1(図1)が旋回動作をしないときのこの受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2(図1)の先端部と受信用パラボラアンテナ1の反射面の中心位置とを結ぶ直線に沿う方向を表わすものである。
【0092】
また、最右点37Rから中心点38に至る中心点探索軌道36aは、最右点37Rから最上点37Uを経て最左点37Lに至る広範囲探索軌道35aを上下左右1/2倍に縮小したパターンをなすものであり、また、中心点38から最右点からに至る中心点探索軌道36bは、最左点37Lから最下点37Dを経て最右点37Rに至る広範囲探索軌道35bを上下左右1/2倍に縮小したパターンをなすものである。従って、中心点探索軌道36aと中心点探索軌道36bとを上下に組み合わせると、広範囲探索軌道35と同一形状で上下左右1/2倍に縮小されて正12角形のパターンとなる。
【0093】
なお、広範囲探索軌道35aでの最右点37Rから始まる最上点37U方向への辺部の一部と中心点探索軌道36aでの最右点37Rから始まる辺部とは重なって軌道オーバラップエリア39Rをなしており、また、広範囲探索軌道35bでの最左点37Lから始まる最下点37D方向への辺部の一部と中心点探索軌道36bでの最左点37Lから始まる辺部とは重なって軌道オーバラップエリア39Lをなしている。
【0094】
かかる旋回軌道34に沿って受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部が移動し、受信用パラボラアンテナ1が旋回動作をする場合には、いま、最右点37Rを出発点として説明すると、一次輻射器2の先端部は、最右点37Rから広範囲探索軌道35aに沿って、実線矢印に示すように、移動し、最左点37Lに達すると、広範囲探索軌道35bに沿って、実線矢印に示すように、最右点37Rまで移動する。これにより、一次輻射器2は広範囲探索軌道35に沿って旋回したことになり、この間、追尾制御部14は、最右点37R,最上点37U,最左点37L,最下点37Dで受信レベルを検出し、あるいは、図9(b)や図10(b)のように、これらの点37U,37L,37D,37R毎にレベル検出エリアが設定されていて、これらレベル検出エリアでの検出レベル積分値を求めて、受信用パラボラアンテナ1から見た送信源の方向を判定し、受信用パラボラアンテナ1の送信源への追尾動作を行なわせる。ここで、最右点37Rで取得する受信レベルあるいは検出レベル積分値を、まとめていう場合、最右点37R側の検出レベルといい、同様に、最上点37U,最左点37L,最下点37Dで取得する受信レベルあるいは検出レベル積分値を夫々、最上点37U側,最左点37L側,最下点37D側の検出レベルという。
【0095】
なお、最右点37R側のレベル検出エリアとしては、最右点37Rを中心とするエリアであって、広範囲探索軌道35aでのこの最右点37Rから最上点37Uの方向の軌道オーバラップエリア39Rと広範囲探索軌道35bでの最右点37Rから最下点37Dの方向での軌道オーバラップエリア39Rに等しい長さのエリアとからなるエリア内に設定されるものであり、同様に、最左点37L側のレベル検出エリアとしては、最左点37Lを中心とするエリアであって、広範囲探索軌道35bでのこの最左点37Lから最下点37Dの方向の軌道オーバラップエリア39Lと広範囲探索軌道35aでの最左点37Lから最上点37Uの方向での軌道オーバラップエリア39Lに等しい長さのエリアとからなるエリア内に設定されるものである。
【0096】
かかるレベル検出エリア内で検出レベル積分値を取得する場合には、まず、最右点37Rから実線矢印方向に反時計廻りに広範囲探索軌道35を1周旋回するときには、まず、最左点37L側のレベル検出エリアで検出レベル積分値を取得し、次いで、最右点37R側のレベル検出エリアで検出レベル積分値を取得する。これにより、最左点37L側と最右点37R側とで完全にレベル検出エリアから検出レベル積分値を取得することができる。次いで、中心点探索軌道36a,36bに沿って旋回した後、最左点37Lから破線矢印方向に時計廻りに広範囲探索軌道35を1周旋回するが、このときにも、まず、最左点37L側のレベル検出エリアで検出レベル積分値を取得し、次いで、最右点37R側のレベル検出エリアで検出レベル積分値を取得する。これにより、最左点37L側と最右点37R側とで完全にレベル検出エリアから検出レベル積分値を取得することができる。以下、かかる旋回動作が繰り返される。
【0097】
このように、一次輻射器2の先端部が広範囲探索軌道35の最右点37Rに戻ると、次に、一次輻射器2は、この最右点37Rから、実線矢印で示すように、中心点探索軌道36aに沿って移動し、中心点38を通過した後、中心点探索軌道36bに沿って最左点37Lまで移動する。これにより、一次輻射器2の先端部は、中心点探索軌道36に沿って移動動作を行なうものであり、この移動中に、追尾制御部14(図2)は中心点探索軌道36上の中心点38での受信レベルを検出し、あるいは、図9(b)や図10(b)のように、中心点38を中心とするレベル検出エリアが設定されていて、このレベル検出エリアでの検出レベル積分値を求め、受信用パラボラアンテナ1から見て中心点38の方向での送信源の有無を判定する。ここで、中心点38でのこれら検出レベルあるいは検出レベル積分値をまとめていう場合、中心点38側の検出レベルという。
【0098】
次いで、一次輻射器2の先端部は最左点37Lから広範囲探索軌道35aに沿って、破線矢印で示すように、移動し、広範囲探索軌道35aと広範囲探索軌道35bとの広範囲探索軌道35に沿う最左点37Lまでの移動による上記とは逆方向の旋回動作が行なわれ、このときも、点37U,37L,37D,37R毎でのレベル検出やレベル検出エリアでの検出レベル積分値の検出が行なわれ、送信源への追尾制御が行なわれる。
【0099】
そして、一次輻射器2の先端部は、破線矢印で示す広範囲探索軌道35に沿う旋回動作によって最左点37Lに戻ると、次に、移動方向を逆転して、中心点探索軌道36bを破線矢印方向に移動し、中心点38を通過した後、中心点探索軌道36aに沿って最右点37Rまで移動する。これにより、一次輻射器2の先端部は、中心点探索軌道36に沿って逆方向に移動動作を行なうことになり、この移動中に、上記と同様、追尾制御部14(図2)は中心点探索軌道36上の中心点38側の検出レベルを取得し、受信用パラボラアンテナ1から見て中心点38の方向での送信源の有無を判定する。
【0100】
以下、以上の動作が繰り返され、このようにして、この具体例では、受信用パラボラアンテナ1の広範囲探索軌道35に沿う旋回動作により、送信源の方向を広範囲に探索することができ、また、中心点探索軌道36を設けたことにより、この受信用パラボラアンテナ1の向きの方向で遠距離にある送信源がこの受信用パラボラアンテナ1に近づいて来るような場合でも、受信用パラボラアンテナ1の旋回動作中でも、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2をこの送信源の方向に向けることができるため、かかる送信源の有無を検出することができる。
【0101】
そして、広範囲探索軌道35に沿う旋回動作によって送信源の方向が検出できず、中心点探索軌道36での移動中に送信源が検出できたときには、受信用パラボラアンテナ1の向きをそのときの向きに保持する。
【0102】
また、広範囲探索軌道35aと中心点探索軌道36aとは大きさが異なり、また、広範囲探索軌道35bと中心点探索軌道36bとは大きさは異なるが、同じパターン形状をなすものであるから、これら探索軌道を形成する直線部(辺部)での移動量は異なるものの、移動制御方法は同じであり、その制御のためのデータ量を低減できる。
【0103】
図12は第2の実施形態での広範囲探索軌道と中心点探索軌道とからなる旋回軌道の他の具体例を示す図であって、34’は旋回軌道、36a’,36b’は中心点探索軌道、39L’,39R’は軌道オーバラップエリアであり、図11に対応する部分には同一符号を付けて重複する説明を省略する。
【0104】
同図において、この旋回軌道34’は、図11に示す旋回軌道34に中心点探索軌道36a’と中心点探索軌道36b’が追加されたものである。中心点探索軌道36a’は、中心点探索軌道36aとともに、広範囲探索軌道35と同一パターン形状の正12角形をなすものであり、中心点探索軌道36b’も、中心点探索軌道36bとともに、広範囲探索軌道35と同一パターン形状の正12角形をなすものである。従って、中心点探索軌道36a,36a’,36b,36b’は、概略横向きの「8」の字状のパターン形状をなしている
ここで、広範囲探索軌道35bは、その最右点37Rからの直線状の辺部の一部が、中心点探索軌道36a’の最右点37Rからの直線状の辺部と軌道オーバラップエリア39R’をなしており、広範囲探索軌道35aも、その最左点37Lからの直線状の辺部の一部が、中心点探索軌道36b’の最左点37Lからの直線状の辺部と軌道オーバラップエリア39L’をなしている。
【0105】
かかる旋回軌道34’に沿う受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2(図1)の移動は、最右点37Rからみると、一次輻射器2の先端部は、最右点37Rから広範囲探索軌道35aに沿って、実線矢印に示すように、移動し、最左点37Lに達すると、広範囲探索軌道35bに沿って、実線矢印に示すように、最右点37Rまで移動する。これにより、一次輻射器2は広範囲探索軌道35に沿って旋回したことになり、この間、追尾制御部14は、最右点37R,最上点37U,最左点37L,最下点37Dで受信レベルを検出し、あるいは、図9(b)や図10(b)のように、これらの点37U,37L,37D,37R毎にレベル検出エリアが設定されていて、これらレベル検出エリアでの検出レベル積分値を求めて、即ち、最右点37R,最上点37U,最左点37L,最下点37D夫々側の検出レベルを取得し、受信用パラボラアンテナ1から見た送信源の方向を判定し、受信用パラボラアンテナ1の送信源への追尾動作を行なわせる。なお、最右点37R側でのレベル検出エリアは、この最右点37Rを中心とし、軌道オーバラップエリア39R,39R’の範囲内で設定され、最左点37L側でのレベル検出エリアは、この最左点37Lを中心とし、軌道オーバラップエリア39L,39L’の範囲内で設定される。
【0106】
このように、一次輻射器2の先端部が広範囲探索軌道35の最右点37Rに戻ると、次に、一次輻射器2は、この最右点37Rから、実線矢印で示すように、中心点探索軌道36aに沿って移動し、中心点38を通過した後、中心点探索軌道36bに沿って最左点37Lまで移動する。これにより、一次輻射器2の先端部は、中心点探索軌道36a,36bからなる中心点探索軌道36に沿って移動動作を行なうものであり、この移動中に、追尾制御部14(図2)は中心点探索軌道36上の中心点38での受信レベルを検出し、あるいは、図9(b)や図10(b)のように、中心点38を中心とするレベル検出エリアが設定されていて、このレベル検出エリアでの検出レベル積分値を求め、受信用パラボラアンテナ1から見て中心点38の方向での送信源の有無を判定する。
【0107】
次いで、一次輻射器2の先端部は最左点37Lから広範囲探索軌道35aに沿って、破線矢印で示すように、移動し、広範囲探索軌道35aと広範囲探索軌道35bとの広範囲探索軌道35に沿って最左点37Lまでの移動による上記とは逆方向の旋回動作が行なわれ、このときも、各点37U,37L,37D,37R側の検出レベルを取得し、送信源への追尾制御が行なわれる。
【0108】
ここまでは、図11に示す具体例と同様であるが、一次輻射器2の先端部は、破線矢印で示す広範囲探索軌道35に沿う旋回動作によって最左点37Lに戻ると、次に、中心点探索軌道36b’を破線矢印方向に移動し、中心点38を通過した後、中心点探索軌道36a’に沿って最右点37Rまで移動する。これにより、一次輻射器2の先端部は、中心点探索軌道36b’36a’からなる中心点探索軌道36’に沿って最左点37Lから最右点37Rに上記とは逆方向に移動動作を行なってことになり、この移動中も、上記と同様、追尾制御部14(図2)は中心点探索軌道36’上の中心点38での受信レベルを検出し、あるいは、図9(b)や図10(b)のように、中心点38を中心とするレベル検出エリアが設定されていて、このレベル検出エリアでの検出レベル積分値を求め、即ち、中心点38側の検出レベルを取得し、受信用パラボラアンテナ1から見て中心点38の方向での送信源の有無を判定する。
【0109】
以下、以上の旋回動作が繰り返され、送信源の方向を広範囲に探索することができるとともに、この受信用パラボラアンテナ1の向きの方向で遠距離にある送信源がこの受信用パラボラアンテナ1に近づいて来るような場合でも、受信用パラボラアンテナ1の旋回動作中でも、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2をこの送信源の方向に向けることができ、かかる送信源の有無を検出することができるものであって、図11に示す具体例と同様の効果が得られるものである。
【0110】
なお、図12に示す具体例では、中心点探索軌道36a,36b,36a’36b’が概略横向きの「8」の字状のパターン形状をなすように制御したが、以下に示す動作方法であってもよく、上記具体例と同様の効果が得られる。
【0111】
即ち、最右点37Rを1旋回の出発点として説明すると、一次輻射器2の先端部は、最右点37Rから広範囲探索軌道35aに沿って最左点37Lに向かって反時計廻りに移動する。最左点37Lに達すると、中心点探索軌道36bに沿って中心点38に向かって反時計廻りに移動し、中心点38を通過すると、中心点探索軌道36aに沿って最右点37Rに向かって時計廻りに移動する。最右点37Rに達すると、広範囲探索軌道35bに沿って最左点37Lに向かって時計廻りに移動する。最左点37Lに達すると、中心点探索軌道36b’に沿って中心点38に向かって時計廻りに移動し、中心点38を通過すると、中心点探索軌道36a’に沿って最右点37Rに向かって反時計廻りに移動する。かかる旋回動作により、最右点37Rに戻る。以下、かかる旋回動作が繰り返される。
【0112】
図13は第2の実施形態での広範囲探索軌道と中心点探索軌道とからなる旋回軌道のさらに他の具体例を示す図であって、40は旋回軌道、41U1,41U2は上側広範囲探索軌道、41D1,41D2は下側広範囲探索軌道、41Lは左側広範囲探索軌道、41Rは右側広範囲探索軌道、42Cは中心点探索軌道、42U1,42U2は最上点、42D1,42D2は最下点、42Lは最左点、42Rは最右点、42Cは中心点、42a〜42fは境界点、43は仮想正四角枠である。
【0113】
同図において、旋回軌道40は、図11での中心点38に相当する中心点42cを中心とする仮想的な正四角枠43に内接するパターン形状をなしており、この中心点42Cを通る垂直な直線状の中心点探索軌道41Cと、この中心点探索軌道41Cの左側にあって、円39の接触点である最左点42Lを中心に上下に直線状をなす左側広範囲探索軌道41Lと、中心点探索軌道41Cの右側にあって、円39の接触点である最右点42Rを中心に上下に直線状をなす右側広範囲探索軌道41Rと、右側広範囲探索軌道41Rの上側の境界点42aと中心点探索軌道41Cの上側の境界点42eとの間の正多角形の上半分のパターン形状をなす上側広範囲探索軌道41U1と、左側広範囲探索軌道41Lの上側の境界点42cと中心点探索軌道41Cの上側の境界点42eとの間の上側広範囲探索軌道41U1と同じ正多角形の上半分のパターン形状をなす上側広範囲探索軌道41U2と、右側広範囲探索軌道41Rの下側の境界点42bと中心点探索軌道41Cの下側の境界点42fとの間の上側広範囲探索軌道41U1と同じ正多角形の下半分のパターン形状をなす下側広範囲探索軌道41D1と、左側広範囲探索軌道41Lの下側の境界点42dと中心点探索軌道41Cの上側の境界点42fとの間の上側広範囲探索軌道41U2と同じ正多角形の下半分のパターン形状をなす下側広範囲探索軌道41D2とから形成されている。
【0114】
ここで、一例として、上側広範囲探索軌道41U1,41U2は正12角形の上半分のパターン形状をなし、下側広範囲探索軌道41D1,41D2は正12角形の下半分のパターン形状をなしている。なお、上側広範囲探索軌道41U1,41U2と下側広範囲探索軌道41D1,41D2とは、正12角形の上半分,下半分の形状に限るものではなく、他の正多角形の上半分,下半分の形状としてもよい。但し、これら上半分,下半分の形状は同じ正多角形の上半分,下半分の形状である。従って、この旋回軌道40は、概略横向きの「8」の字状のパターン形状をなしている。
【0115】
受信用パラボラアンテナ1(図1)は、その一次輻射器2(図1)の先端部がかかる探索軌道40に沿って繰り返し移動することにより、旋回動作を繰り返すが、以下、この一次輻射器2の先端部の移動動作について説明する。
【0116】
いま、一次輻射器2の先端部が右側広範囲探索軌道41Rに沿って実線矢印の方向に移動しているものとすると、この右側広範囲探索軌道41Rに沿った移動中、追尾制御部14は、この右側広範囲探索軌道41Rの中心点となる最右点42Rで受信信号のレベルを検出し、あるいは、この右側広範囲探索軌道41Rで最右点42Rを中心とするレベル検出エリアが設定され、このレベル検出エリアの受信信号の検出レベルの積分値を求める。
【0117】
一次輻射器2の先端部が右側広範囲探索軌道41Rの上側の境界点42aに達すると、次に、この一次輻射器2の先端部は最上点42U1を経て境界点42eに至る上側広範囲探索軌道41U1を実線矢印の方向に移動する。この移動期間、追尾制御部14は、この上側広範囲探索軌道41U1の中心点となる最上点42U1で受信信号のレベルを検出し、あるいは、この上側広範囲探索軌道41U1で最上点42U1を中心とするレベル検出エリアが設定され、このレベル検出エリアの受信信号の検出レベルの積分値を求める。
【0118】
次に、この一次輻射器2の先端部は、境界点42eから中心点42Cを経て境界点42fに至る中心点探索軌道41Cを実線矢印で示す方向に移動し、この移動期間、追尾制御部14は、この中心点探索軌道41Cの中心点42Cで受信信号のレベルを検出し、あるいは、この中心点探索軌道41Cで中心点42Cを中心とするレベル検出エリアが設定され、このレベル検出エリアの受信信号の検出レベルの積分値を求める。
【0119】
次に、この一次輻射器2の先端部は、境界点42fから最下点42D2を経て境界点42dに至る下側広範囲探索軌道41D2を実線矢印の方向に移動する。この移動期間、追尾制御部14は、この下側広範囲探索軌道41D2の中心点となる最下点42D2で受信信号のレベルを検出し、あるいは、この下側広範囲探索軌道41D2で最下点42D2を中心とするレベル検出エリアが設定され、このレベル検出エリアの受信信号の検出レベルの積分値を求める。
【0120】
次に、この一次輻射器2の先端部は、境界点42dから最左点42Lを経て境界点42cに至る左側広範囲探索軌道41Lを実線,破線矢印の方向に移動する。この移動期間、追尾制御部14は、この左側広範囲探索軌道4Lの中心点となる最左点42Lで受信信号のレベルを検出し、あるいは、この左側広範囲探索軌道41Lで最左点42Lを中心とするレベル検出エリアが設定され、このレベル検出エリアの受信信号の検出レベルの積分値を求める。
【0121】
次に、この一次輻射器2の先端部は、境界点42cから最上点42U2を経て境界点42eに至る上側広範囲探索軌道41U2を破線矢印の方向に移動する。この移動期間、追尾制御部14は、この上側広範囲探索軌道41U2の中心点となる最上点42U2で受信信号のレベルを検出し、あるいは、この上側広範囲探索軌道41U2で最上点42U2を中心とするレベル検出エリアが設定され、このレベル検出エリアの受信信号の検出レベルの積分値を求める。
【0122】
次に、この一次輻射器2の先端部は、境界点42eから中心点42Cを経て境界点42fに至る中心点探索軌道41Cを再び破線矢印で示す方向に移動し、この移動期間、追尾制御部14は、この中心点探索軌道41Cの中心点42Cで受信信号のレベルを検出し、あるいは、この中心点探索軌道41Cで中心点42Cを中心とするレベル検出エリアが設定され、このレベル検出エリアの受信信号の検出レベルの積分値を求める。
【0123】
次に、この一次輻射器2の先端部は、境界点42fから最下点42D1を経て境界点42bに至る下側広範囲探索軌道41D1を破線矢印の方向に移動する。この移動期間、追尾制御部14は、この下側広範囲探索軌道41D1の中心点となる最下点42D1で受信信号のレベルを検出し、あるいは、この下側広範囲探索軌道41D1で最下点42D1を中心とするレベル検出エリアが設定され、このレベル検出エリアの受信信号の検出レベルの積分値を求める。
【0124】
以上のようにして、受信用パラボラアンテナ1の一次輻射器2の先端部が旋回軌道40の1周の移動がなされたことになり、旋回軌道40に沿うかかる移動が繰り返し行なわれる。
【0125】
そして、この一次輻射器2の先端部が旋回軌道40を1周移動する毎に、追尾制御部14は、上側広範囲探索軌道41U1,41U2で得られた検出レベルの平均値、あるいは検出レベルの積分値の平均値(以下、これらをまとめて上側平均レベル値という)を、また、下側広範囲探索軌道41D1,41D2で得られた検出レベルの平均値、あるいは検出レベルの積分値の平均値(以下、これらをまとめて下側平均レベル値という)を夫々求め、先に説明したのと同様に、これら上側平均レベル値と下側平均レベル値とを比較して受信用パラボラアンテナ1の向きに対する上下方向の送信源の方向を検出するとともに、右側広範囲探索軌道41Rと右側広範囲探索軌道41Lとでの検出レベルあるいは検出レベル積分とを比較して受信用パラボラアンテナ1の向きに対する左右方向の送信源の方向を検出する。そして、このようにして得られた送信源の上下,左右方向の検出結果を基に、受信用パラボラアンテナ1の送信源への追尾動作が行なわれる。
【0126】
また、広範囲探索軌道42R,42L,42U1,42U2,42D1,42D2に沿う旋回動作によって送信源の方向が検出できず、中心点探索軌道42Cでの移動中に送信源が検出できたときには、受信用パラボラアンテナ1の向きをそのときの向きに保持する。
【0127】
また、広範囲探索軌道42U1,42U2は、それらの位置が異なるだけで同じパターン形状をなすものであるから、それらでの移動制御方法は同じであり、その制御のためのデータ量を低減できる。広範囲探索軌道42D1,42D2についても、同様である。
【0128】
このようにして、この具体例においても、図11に示した具体例と同様の効果が得られることになる。
【0129】
なお、この具体例では、さらに、広範囲探索軌道42U1,42U2や広範囲探索軌道42D1,42D2では、一次輻射器2の移動方向を変更させる制御が必要であるのに対し、広範囲探索軌道42R,42Lと中心点探索軌道42Cとは、垂直方向の直線状のパターン形状をなすものであるから、かかる探索軌道での移動期間、受信用パラボラアンテナ1の旋回制御は一定であり、このため、広範囲探索軌道42U1,42U2,42D1,42D2での移動に対して、その旋回速度を高速にすることができ、旋回探索軌道の一周の旋回に要する時間を短縮できて、送信源の方向の探索を時間的により細かく行なうことができる。
【0130】
なお、図11に示す具体例では、中心点探索軌道36を水平方向の軌道としているが、垂直方向(即ち、概略縦向きの「8」の字のパターン形状)などの他の方向の軌道としてもよいし、図13に示す具体例でも、広範囲探索軌道42R,42Lや中心点探索軌道42Cを水平方向などの他の方向の軌道としてもよい。
【0131】
以上説明した各探索軌道による旋回動作では、先にも説明したように、回転台4に受信用パラボラアンテナ1とLNA3だけが搭載され、LNA3のみを抱えた状態で受信用パラボラアンテナ1が旋回動作するものであって、回転台4での搭載重量が軽減されているものであるから、その旋回動作が非常に円滑に行なわれることになる。
【0132】
図1に戻って、先に説明したように、表示部8では、本線用受信制御部7で復調された放送用信号が供給され、送信源から送られる映像や音声が表示されるが、また、スイッチ9がオン操作されると、追尾用受信制御部10から受信用パラボラアンテナ1の追尾情報が供給され、この受信用パラボラアンテナ1の追尾情報が表示される。これにより、FPU装置の作業者は、その動作状態をモニタすることができる。
【0133】
図14は図1における表示部8の表示画面に表示される情報の一具体例を示す図であって、8aは表示部8の表示画面、50はFPU装置の筐体、51は送信源の位置情報、52は送信源の方向情報、53は送信源までの距離情報、54は送信源の移動速度情報、55は受信用パラボラアンテナ1の旋回速度情報である。
【0134】
同図において、図示しないが、図1に示す受信用パラボラアンテナ1やLNA3が搭載されている回転台4が設けられたFPU装置の筐体50のフロントパネルには、図示しない操作部とともに、表示部8(図1)の表示画面8aが設けられており、この表示画面8aにより、上記のように、受信用パラボラアンテナ1で受信された放送用信号の映像や音声をモニタすることができる。
【0135】
そして、かかる操作部で図1に示すスイッチ9のオン操作がなされると、追尾用受信制御部10(図1)から送信源に関する情報や受信用パラボラアンテナ1の旋回状態に関する情報などが表示部8に供給され、表示画面8aに表示される。
【0136】
送信源に関する情報としては、送信源の位置(緯度,経度)の情報51や受信用パラボラアンテナ1の向きに対する上下,左右方向の情報(送信源の方向情報)52,送信源までの距離情報53,送信源の移動速度情報54などであり、受信用パラボラアンテナ1の旋回状態に関する情報としては、その旋回速度情報55などである。ここで、送信源の方向情報52は、追尾用受信制御部7での追尾制御部14(図2)で得られる情報であり、受信用パラボラアンテナ1の旋回速度情報55は、同じくアンテナ線快制御部15から得られるものである。また、送信源からはGPS(Grobal Positioning System)によるその現在位値や飛行速度の情報が送信され、それらが受信されて追尾用受信制御部10で処理されて、送信源の位置情報51や移動速度情報54が作成され、また、この送信源の位置情報51とFPU装置の位置情報とからこの送信源までの距離情報53が作成され、夫々表示部8に供給されて表示画面8aで表示される。
【0137】
このようして、FPU装置の作業者は、送信源の状態やそれへの追尾状態などをモニタすることができる。
【0138】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明による放送用電波自動追尾装置の第3の実施形態について説明するが、この第3の実施形態も、先の第1の実施形態と同様の図1〜図4に示す構成をなし、図6〜図13に示す旋回軌道のいずれかによって旋回動作されるものである。
【0139】
ところで、図15に示すように、本発明による放送用電波自動追尾装置を備えたFPU装置60がヘリコプタ70に搭載された送信源(図示せず)から放送用信号電波を受信中、ヘリコプタ70が、FPU装置60に対し、ビル80などの影となる位置に進むと、ヘリコプタ70からの放送用信号電波がこのビル70によって遮られ、FPU装置60は送信源からの放送用信号電波を受信できなくなり、この送信源への追尾ができなくなる。
【0140】
この第3の実施形態は、かかる問題を解消するものであって、図15に示すように、ヘリコプタ70がビル80などの影に隠れてFPU装置60が送信源からの放送用信号電波を受信できない状態になっても、ヘリコプタ70がビル80から外れて現われると、直ちにその送信源に追尾できるようにするものである。
【0141】
このために、この第3の実施形態では、送信源からの放送用信号電波が突然途絶えた場合には、旋回軌道を拡げ、受信用パラボラアンテナ1を大きく旋回するようにして、送信源の探索範囲をより広くするものである。
【0142】
図16はこの第3の実施形態の動作の一具体例を示すフローチャートである。以下、前出図面を用いてこの具体例を説明する。
【0143】
追尾用受信制御部10(図1)は、受信用パラボラアンテナ1で送信源からの放送用信号電波が受信されているときには(図16のステップS200の“YES”)、追尾制御部14とアンテナ線快制御部15(図2)との制御動作により、回転台4(図1)を回転制御し、受信用パラボラアンテナ1の送信源への追尾動作を行なわせる(図16のステップS201,S202の“NO”)。そして、上記の操作部からの停止指示があると(図16のステップS202の“YES”)、追尾用受信制御部10は回転台4を停止させ(図16のステップS207)、追尾動作を停止させる。
【0144】
また、かかる受信用パラボラアンテナ1の送信源への追尾動作中、受信用パラボラアンテナ1で送信源からの放送用信号電波が受信されなくなると(図16のステップS202の“NO”)、それでも、これまでの受信用パラボラアンテナ1の旋回動作を予め決められた所定期間継続し(図16のステップS203)、この所定期間内に再び受信用パラボラアンテナ1で送信源からの放送用信号電波が受信されるようになると(図16のステップS204の“YES”)、ステップS200からの追尾動作を行なう。
【0145】
上記の所定期間を経過しても、受信用パラボラアンテナ1で送信源からの放送用信号電波が受信されないと(図16のステップS204の“NO”)、受信用パラボラアンテナ1の向きをこれまでの追尾方向に変化させながら、上記のように、旋回軌道を拡げ、受信用パラボラアンテナ1を大きく旋回するようにして、送信源の探索範囲をより広くして送信源の探索を行なう(図16のステップS205)。かかる探索状態が予め決められた設定時間行なわれるのであるが、この設定時間内に受信用パラボラアンテナ1で送信源からの放送用信号電波が受信されるようになると(図16のステップS206の“YES”)、ステップS200からの追尾動作を行なう。これにより、図15で説明したように、ヘリコプタ70がピル80の影に入った一時そこからの放送用信号電波が途切れても、ヘリコプタ70がピル80の影から出てきて放送用信号電波がFPU装置60側に再び送られる状態になると、これを受信用パラボラアンテナ1で確実に受信することができ、送信源を見失ってしまうことを防止することができる。
【0146】
これに対し、この設定時間が経過しても、受信用パラボラアンテナ1で送信源からの放送用信号電波を受信できない場合には(図16のステップS206の“NO”)、送信源が送信を中止したと判定し、回転台4の回転を停止させ(図16のステップS207)、受信用パラボラアンテナ1の追尾動作を終了させる。
【符号の説明】
【0147】
1 受信用パラボラアンテナ
1’ 仮想受信用パラボラアンテナ
2 一次輻射器(受電器)
2’ 仮想一次輻射器
3 LNA
4 回転台
5 受信高周波部
6 補償処理部
7 本線用受信制御部
8 表示部
8a 表示部8の表示画面
9 スイッチ部
10 追尾用受信制御部
11 スリップリング
12 伝送ケーブル
13 レベル検出部
14 追尾制御部
15 アンテナ旋回制御部
16 回転台制御部
20 旋回軌道
21U,21D,21L,21R レベル検出点
22U,22D,22L,22R レベル検出エリア
23 旋回軌道
24U,24D,24L,24R レベル検出点
25U,25D,25L,25R レベル検出エリア
26 旋回軌道
27U,27D,27L,27R レベル検出点
28U,28D レベル検出点,28L,28R レベル検出エリア
29 旋回軌道
30U,30D,30L,30R レベル検出点
31U,31D,31L,31R レベル検出エリア
32 旋回軌道
32a〜32l 直線部
33U,33D,33L,33R レベル検出エリア
34,34’ 旋回軌道
35a,35b 広範囲探索軌道
36a,36a’,36b,36b’ 中心点探索軌道
37U 最上点
37D 最下点
37L 最左点
37R 最右点
38 中心点
39R,39R’,39L,39L’ 軌道オーバラップエリア
40 旋回軌道
41U1,41U2 上側広範囲探索軌道
41D1,41D2 下側広範囲探索軌道
41L 左側広範囲探索軌道
41R 右側広範囲探索軌道
42C 中心点探索軌道
42U1,42U2 最上点
42D1,42D2 最下点
42L 最左点
42R 最右点
42C 中心点
42a〜42f 境界点
43 仮想四角枠
50 FPU装置の筐体
51 送信源の位置情報
52 送信源の方向情報
53 送信源までの距離情報
54 送信源の移動速度情報
55 受信用パラボラアンテナ1の旋回速度情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信用パラボラアンテナと該受信用パラボラアンテナの受信信号を増幅するLNA(Low Noise Amplifier)とを搭載した回転台と、
該受信用パラボラアンテナの受信信号に基づいて、該回転台を回転制御する制御部と
を備え、
該受信用パラボラアンテナは、その反射面の中央部に1個の一次輻射器を備え、 該制御部は、該回転台を回転制御することにより、該一次輻射器の先端部を一筆書きのパターン形状の旋回軌道に沿って移動させることによって該受信用パラボラアンテナを旋回動作させて、該受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を探索するとともに、該探索結果に基づいて、該受信用パラボラアンテナの向きを該送信源の方向に追尾させる追尾動作を行なわせる
ことを特徴とする放送用電波自動追尾装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記旋回軌道のパターン形状は、正2n角形(但し、nは2以上の整数)をなすことを特徴とする放送用電波自動追尾装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、
前記旋回軌道の最上点側の検出レベルと前記旋回軌道の最下点側の検出レベルとの比較により、上下方向での受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を検出し、
前記旋回軌道の最左点側の検出レベルと前記旋回軌道の最右点側の検出レベルとの比較により、左右方向での受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を検出する
ことを特徴とする放送用電波自動追尾装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記旋回軌道は、正四角形の枠状パターンに内接する広範囲探索軌道と、該広範囲探索軌道の中心点を通る中心点探索軌道とからなって、該広範囲探索軌道と該中心点探索軌道とで一筆書きのパターン形状をなし、
少なくとも、広範囲探索軌道は正2n角形(但し、nは2以上の整数)のパターン形状をなす
ことを特徴とする放送用電波自動追尾装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御部は、
前記広範囲旋回軌道の最上点側の検出レベルと前記旋回軌道の最下点側の検出レベルとの比較により、上下方向での受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を検出し、
前記広範囲旋回軌道の最左点側の検出レベルと前記旋回軌道の最右点側の検出レベルとの比較により、左右方向での受信用パラボラアンテナから見た送信源の方向を検出し、
前記中心点探索軌道での中心点側の検出レベルにより、前記送信源の有無を判定する
ことを特徴とする放送用電波自動追尾装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つにおいて、
前記送信源に関する情報と、前記受信用パラボラアンテナの動作に関する情報とを表示する表示手段を備えたことを特徴とする放送用電波自動追尾装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つにおいて、
前記制御部は、前記受信用パラボラアンテナで電波の受信がなくなると、前記回転台の回転を制御して、前記旋回軌道を拡げてより広い旋回範囲で前記送信源の探索を行なわせることを特徴とする放送用電波自動追尾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−101312(P2011−101312A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256302(P2009−256302)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】