説明

放送装置

【課題】 極めて簡単かつ安価な構成でありながら、停電時の非常放送への切り換えを確実に保証することができる放送装置を提供する。
【解決手段】 この発明に係る放送装置10によれば、通常時には、通常放送用の音声信号S1,S2,…が、個別の切換回路14,14,…を介して、各出力端子28,28,…から出力され、通常放送が行われる。そして、火災等の非常事態が発生すると、各切換回路14,14,…のリレー16,16,…が、非常放送装置100から非常放送信号入力端子22経由で入力される非常放送用の音声信号Eを各出力端子28,28,…から出力させるように切り換わり、非常放送が行われる。さらに、停電等によって主電源の供給が断たれると、各リレー16,16,…は、非常放送用の音声信号Eを出力させるという復帰状態になる。つまり、停電時にも、非常放送への切り換えが確実に保証される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送装置に関し、特に火災等の非常事態が発生したときに外部に設けられた非常放送装置から入力される非常放送信号に従う非常放送に自動的に切り換える機能を備えた、放送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の放送装置として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、非常放送装置が接続される外部入力端子と、この外部入力端子経由で入力される非常放送信号およびパワーアンプから入力される通常放送用の音声信号のいずれか一方を選択して出力端子から出力させるパワーアンプリレーと、このパワーアンプリレーを制御する制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)と、が設けられている。CPUは、通常時、具体的には非常放送装置から非常信号が供給されていないときは、パワーアンプからの音声信号を選択するようにパワーアンプリレーを制御する。これによって、出力端子に接続されているスピーカから当該音声信号に従うBGM等の音声が出力され、いわゆる通常放送が行われる。一方、火災等の非常事態が発生すると、非常放送装置からCPUに非常信号が供給される。CPUは、これを受けて、外部入力端子経由で入力される非常放送信号を選択するようにパワーアンプリレーを制御する。これにより、当該非常放送信号に従う警報等の非常音声がスピーカから出力され、つまり通常放送から非常放送に自動的に切り換わる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−344406号公報(第0022段落〜第0031段落および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、火災等の非常事態が発生したときは、これに伴い、停電する可能性が高い。そして、もし停電すると、従来技術では、CPUが動作しなくなり、非常放送への切り換えが行われなくなる。これを回避するには、例えば、放送装置についても、非常放送装置と同様に、非常用電源の供給によって駆動させればよいが、そうすると、当該非常用電源の供給源を含む放送装置全体の構成が複雑化し、かつ高コスト化する。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも極めて簡単かつ安価な構成でありながら停電等によって主電源の供給が断たれても非常放送への切り換えを確実に保証することができる放送装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、外部に設けられた非常放送装置から非常放送信号が入力される第1入力端子と、非常事態が発生しているか否かを表す状況信号が外部から入力される第2入力端子と、非常放送信号および通常放送用の音源から発せられる通常放送信号のいずれか一方を選択して出力端子から出力させる切換手段と、状況信号が非常事態の発生を表すときには非常放送信号を選択し、当該状況信号が非常事態の非発生を表すときには通常放送信号を選択するように切換手段を制御する制御手段と、を具備する。そして、切換手段は、自己を駆動するための電源が非供給のときには非常放送信号を選択するように構成された、ものである。
【0007】
即ち、本発明では、第2入力端子経由で入力される状況信号が、火災等の非常事態が発生していないことを表すとき、言わば通常時、制御信号は、通常放送用の音源から発せられる通常放送信号を選択するように切換手段を制御する。そして、この切換手段によって選択された通常放送信号は、出力端子から出力される。従って、出力端子にパワーアンプを介してスピーカが接続されている場合には、当該スピーカから通常放送信号に従う音声が出力され、つまり通常放送が行われる。一方、状況信号が非常事態の発生を表すとき、制御手段は、非常放送装置から第1入力端子経由で入力される非常放送信号を選択するように切換手段を制御する。これにより、スピーカから非常放送信号に従う音声が出力され、つまり通常放送から非常放送に切り換わる。さらに、停電等によって、本発明の放送装置への主電源の供給が断たれ、ひいては切換手段に対してもこれを駆動するための電源の供給が断たれると、当該切換手段は、非常放送信号を選択するという言わばデフォルト状態になる。従って、停電等により主電源の供給が断たれた場合にも、自動的に非常放送に切り換わる。また、言うまでもなく、主電源の供給線路が切断された場合にも、非常放送に切り換わる。
【0008】
なお、本発明における状況信号は、非常事態が発生していないことを表すとき所定の電圧を示し、当該非常事態が発生していることを表すとき略零の電圧を示す信号であってもよい。このようにすれば、状況信号の伝送線路が切断または短絡した場合にも、当該状況信号は非常事態の発生時と同じ態様になり、よって通常放送から非常放送に切り換わる。
【0009】
また、切換手段は、いわゆるトランスファ接点構成(またはc接点構成とも言う。)の単安定リレーを含むものであってもよい。この場合、当該リレーの常時閉路接点端子に、非常放送信号が入力され、常時開路接点端子に、通常放送信号が入力される。そして、当該リレーの共通接点端子は、出力端子に接続される。
【0010】
さらに、制御手段は、CPUのようにソフトウェアを必要とするものではなく、純粋なハードウェアによって構成することができる。このようにすれば、制御手段をより簡単かつ安価に構成することができる。
【0011】
そして、状況信号は、非常放送装置から発せられるものであってもよい。即ち、火災報知器等のセンサに連動してこのような状況信号を発する非常放送装置は数多く、本発明では、この非常放送装置から発せられる状況信号を利用してもよい。
【0012】
そしてさらに、複数の音源に対応するべく、複数の切換手段と、これら複数の切換手段に対応する複数の出力端子と、を設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明によれば、停電等によって主電源の供給が断たれると、切換手段が非常放送信号を選択するというデフォルト状態になり、非常放送に切り換わる。つまり、上述した従来技術とは異なり、停電等に対処するべく、非常用電源を必要としない。ゆえに、従来よりも極めて簡単かつ安価な構成でありながら、停電等により主電源の供給が断たれたときの非常放送への切り換えを確実に保証することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、この第1実施形態に係る放送装置10は、複数のバッファアンプ12,12,…を有している。そして、これらのバッファアンプ12,12,…には、それぞれ図示しない個別の音源から通常放送用の音声信号S1,S2,…が、入力される。なお、ここで言う音源としては、例えばマイクロホンやカセットテープレコーダ、音楽用CD(Compact Disc)再生装置、音声メモリ装置等がある。
【0016】
バッファアンプ12,12,…は、それぞれに入力された音声信号S1,S2,…を増幅する。そして、増幅された音声信号S1,S2,…は、切換手段としての切換回路14,14,…に入力され、具体的には当該切換回路14,14,…に含まれるトランスファ接点構成の単安定リレー16,16,…の常時開路接点端子NO、NO,…に入力される。なお、リレー16,16,…を含む切換回路14,14,…は、電源回路18から供給される例えば+12[V]の直流電圧Vccを電源として駆動する。そして、電源回路18は、電源入力端子20を介して商用電源から供給される主電源としての100[V]の交流電圧を基に、当該直流電圧Vccを生成する。また、図には示さないが、バッファアンプ12,12,…や後述するミュート制御回路30等の他の回路を駆動するための電源も、電源回路18によって生成される。
【0017】
さらに、放送装置10は、外部に設けられた非常放送装置100が接続される2つの入力端子22および24を有している。このうちの一方(図1において左側の端子)22は、火災等の非常事態が発生したときに当該放送装置10から出力される非常放送用の音声信号Eの入力を受け付けるための非常放送信号入力端子である。そして、放送装置10内において、この非常放送信号入力端子22は、上述の各リレー16,16,…の常時閉路接点端子NC、NC,…に接続されている。
【0018】
これに対して、他方の端子24は、非常放送装置100から状況信号Vaの入力を受け付けるための状況信号入力端子である。具体的には、非常放送装置100は、通常時、つまり火災等の非常事態が発生していないときには、当該状況信号Vaとして+24[V]の直流電圧を出力する。そして、非常事態が発生すると、当該状況信号Vaの電圧を0[V]とする。なお、非常事態が発生しているか否かは、非常放送装置100に接続されている図示しない火災報知器等の各種センサによって検知される。
【0019】
この状況信号入力端子24を介して放送装置10内に入力された状況信号Vaは、さらに制御手段としての切換制御回路26に入力される。併せて、切換制御回路26には、ミュート制御回路30から、ミュート制御信号Mが入力される。そして、切換制御回路26は、上述した電源回路18から供給される直流電圧Vccを駆動電源として、次のように動作する。
【0020】
即ち、切換制御回路26は、状況信号Vaとして+24[V]の直流電圧が入力されており、かつミュートオフを指示するミュート制御信号Mが入力されているときにのみ、各リレー16,16,…の常時開路接点端子NO、NO,…と共通端子COM,COM,…とをそれぞれ接続するように、つまり当該各リレー16,16,…を動作状態とするように、当該各リレー16,16,…を制御するための切換制御信号Dを出力する。一方、状況信号Vaの電圧が0[V]であるとき、またはミュート制御信号Mがミュートオンを指示しているときには、切換制御回路26は、各リレー16,16,…の常時閉路接点端子NC、NC,…と共通端子COM,COM,…とをそれぞれ接続するように、つまり当該各リレー16,16,…を復帰状態とするように、切換制御信号Dを出力する。なお、ミュート制御信号Mは、図示しないミュートボタンが操作される等の特別な場合を除いて、主電源がオンされた直後、および当該主電源がオフされる直前にのみ、一定期間(数秒間)にわたって、ミュートオンを指示する状態になる。
【0021】
各リレー16,16,…の共通端子COM,COM,…は、当該各リレー16,16,…に対応して設けられた個別の出力端子28,28,…に接続されている。そして、これらの出力端子28,28,…は、放送装置10の外部に設けられた個別のパワーアンプ200,200,…の入力側にそれぞれ接続されており、当該各パワーアンプ200,200,…の出力側は、図示しない個別のスピーカ回線に接続されている。なお、説明するまでもないが、それぞれのスピーカ回線には、図示しない1以上のスピーカが例えば並列に接続されている。
【0022】
このように構成された放送装置10によれば、火災等の非常事態が発生していないとき、つまり非常放送装置100から状況信号入力端子24を介して+24[V]の状況信号Vaが入力されているときには、ミュート制御信号Mがミュートオンを指示する状態にならない限り、各リレー16,16,…の常時開路接点端子NO、NO,…と共通端子COM,COM,…とがそれぞれ接続される。従って、当該常時開路接点端子NO、NO,…に入力されている通常放送用の音声信号S1,S2,…が、各出力端子28,28,…から出力され、この通常放送用の音声信号S1,S2,…に従う音声、例えばアナウンス音やBGM等が、スピーカから出力され、つまり通常放送が行われる。なお、上述したように、主電源がオンされた直後、および当該主電源がオフされる直前は、一定期間にわたってミュート制御信号Mがミュートオンを指示する状態になるので、当該一定期間にわたってスピーカの出力がオフされる。これにより、主電源のオン/オフ時における不快なノイズ音の発生が防止される。また、上述したミュートボタンが操作された場合にも、スピーカの出力がオフされ、つまりミュートオンされる。
【0023】
そして、火災等の非常事態が発生し、状況信号Vaの電圧が0[V]になると、ミュート制御信号Mがミュートオンおよびミュートオフのいずれを指示しているのかに拘らず、各リレー16,16,…の常時閉路接点端子NC、NC,…と共通端子COM,COM,…とがそれぞれ接続される。併せて、非常放送装置100から非常放送信号入力端子22を介して当該常時閉路接点端子NC、NC,…に非常放送用の音声信号Eが入力され、この音声信号Eは、各出力端子28,28,…から出力される。これにより、非常放送用の音声信号Eに従う音声、例えばシグナル音や注意喚起メッセージ等が、スピーカから出力され、つまり通常放送から非常放送に切り換わる。
【0024】
さらに、非常事態の発生に伴って停電すると、電源回路18が働かなくなり、この電源回路18から各切換回路14,14,…への駆動電源Vccの供給が断たれる。すると、各リレー16,16,…が復帰状態となり、当該各リレー16,16,…の常時閉路接点端子NC、NC,…と共通端子COM,COM,…とがそれぞれ接続され、非常放送に切り換わる。このことは、主電源の供給ラインが切断されたときも、同様である。
【0025】
即ち、この第1実施形態によれば、停電等によって放送装置10への主電源の供給が断たれたときにも、非常放送に切り換わる。しかも、この非常放送への切り換えは、各リレー16,16,…がデフォルト状態としての復帰状態に戻るという、言わば当該各リレー16,16,…の性質を利用して、実現される。従って、停電等に対処するのに非常電源を必要とする上述した従来技術に比べて、当該非常電源が不要であることを含め、極めて簡単かつ安価な構成でありながら、停電等によって電源の供給が断たれたときの非常放送への切り換えを確実に保証することができる。
【0026】
さらに、この第1実施形態では、非常放送装置100から放送装置10の状況信号入力端子24に至る状況信号Vaの伝送ラインが切断または短絡されると、当該状況信号Vaは0[V]となり、つまり非常事態発生時と同じ態様になる。従って、当該状況信号Vaの伝送ラインが切断または短絡されたときも、これが非常事態の発生と同格に捉えられ、自動的に非常放送に切り換わる。
【0027】
また、この第1実施形態における各リレー16,16,…は、いわゆるミュート用としても機能し、換言すれば、非常放送への切換手段として、当該ミュート用のリレー16,16,…が兼用されている。このことも、放送装置10の構成を簡素化し、かつ低コスト化するのに、大きく寄与している。
【0028】
なお、この第1実施形態における制御回路26は、例えば図2に示すような構成によって実現することができる。即ち、フォトカプラ260を設け、このフォトカプラ260の発光ダイオード262に電流制御用の抵抗器264を介して状況信号Vaが順方向に供給されるように構成する。一方、フォトトランジスタ266については、コレクタ端子に、反転回路を構成するディジタルトランジスタ(抵抗内蔵トランジスタ)268を介して、ミュート制御信号Mを供給すると共に、エミッタ端子を、抵抗器270経由で、接地電位に接続する。そして、この抵抗器270とフォトトランジスタ266のエミッタ端子との接続点に現れる信号を、切換制御信号Dとする。なお、ディジタルトランジスタ268は、上述した直流電圧Vccを駆動電源とする。
【0029】
この構成によれば、駆動電源Vccが供給されていることを条件に、状況信号Vaとして+24[V]の直流電圧が入力されており、かつミュート制御信号Mがロー(L)レベル(≒0[V])であるときにのみ、切換制御信号Dとしてハイ(H)レベル(≒Vcc)の信号が出力される。そして、状況信号Vaの電圧が0[V]であるか、若しくはミュート制御信号Mがハイレベルまたはハイインピーダンス状態であるときには、切換制御信号Dとしてローレベルの信号が出力される。なお、停電等によって駆動電源Vccの供給が断たれたときにも、切換制御信号Dはローレベルとなる。
【0030】
このような切換制御信号Dを出力する制御回路26に対して、当該切換制御信号Dの入力を受け付ける各々の切換回路14は、例えば図3に示すような構成とすればよい。即ち、スイッチ手段としてのNPN型トランジスタ140を設け、このトランジスタ140のベース端子に、電流制御用の抵抗器142を介して切換制御信号Dが入力されるようにする。そして、このトランジスタ140のコレクタ端子に、リレー16のコイル160を介して駆動電源Vccを印加すると共に、エミッタ端子を、接地電位に接続する。さらに、コイル160と並行に、サージ吸収用のダイオード144を逆方向に接続する。
【0031】
この構成によれば、切換制御信号Dがハイレベルであるとき、トランジスタ140がオンし、コイル160に電流が流れる。これにより、リレー16の常時開路接点端子NOと共通端子COMとが接続され、通常放送が行われる。一方、切換制御信号Dがローレベルであるときは、トランジスタ140がオフするので、コイル160に電流が流れない。従って、リレー16の常時閉路接点端子NCと共通端子COMとが接続され、非常放送が行われる。なお、停電等によって駆動電源Vccの供給が断たれたときにも、コイル160に電流が流れないので、非常放送になる。
【0032】
以上、この第1実施形態で説明した内容は、飽くまで本発明を実現するための一例であり、本発明を限定するものではない。
【0033】
例えば、図1に示す構成では、主電源として、商用電源から供給される100[V]の交流電圧を採用したが、これに限らず、200[V]の交流電圧を採用してもよい。また、当該交流電圧は、単相でも3相でもよい。さらに、交流電圧ではなく、バッテリ等の直流電源から供給される直流電圧を、当該主電源として採用してもよい。
【0034】
そして、状況信号Vaとして、通常時の電圧が+24[V]、非常事態発生時の電圧が0[V]となる信号を採用したが、これと逆の電圧を呈する信号を採用してもよいし、いわゆるTTL(Transistor-Transistor Logic)レベルの信号や接点信号等の他態様の信号を採用してもよい。併せて、この状況信号Vaは、非常放送装置100から供給されるものとしたが、これ以外の装置、例えば火災報知器等の各種センサから直接供給されてもよい。また、バッファアンプ12,切換回路14および出力端子28を、それぞれ複数としたが、これらは1つであってもよい。
【0035】
図2についても、これ以外の構成によって切換制御回路26を実現してもよい。例えば、フォトカプラ260に代えて、リレー等の他のスイッチング手段を採用してもよいし、ディジタルトランジスタ268に代えて一般のトランジスタ回路を採用してもよい。また、CPUを用いて、当該切換制御回路26と同様の作用を奏する回路を実現してもよい。ただし、図2からも明らかなように、ソフトウェアを必要とするCPUを用いなくとも、切換制御回路26は、純粋なハードウェアによって構成することができる。このように純粋なハードウェアによって切換制御回路26を構成することで、CPUを採用する上述した従来技術に比べて、当該切換制御回路26を含む放送装置10全体の構成をより簡素化しかつ低コスト化することができる。
【0036】
図3についても同様に、これ以外の構成によって切換回路14を実現してもよい。例えば、この切換回路14に含まれるリレー16として、いわゆる機械式リレーを採用したが、これに限らず、半導体リレー等の非機械式リレー、或いはハイブリッドリレーを採用してもよい。
【0037】
ところで、図1の構成によれば、放送装置10は、通常放送を行うのに、主電源が供給されていることに加えて、非常放送装置100から状況信号Vaとして+24[V]の直流電圧が供給されていること、換言すれば当該非常放送装置100が接続されていること、が必要とされる。つまり、放送装置10単体では通常放送を行うことができない。そこで、放送装置10単体でも通常放送を行えるようにするべく、当該放送装置10を図4に示すような構成としてもよい。
【0038】
即ち、電源回路18として、上述した駆動電源Vccの他に、通常時の状況信号Vaと同じ態様、つまり+24[V]の直流電圧Vcc’、を生成する機能を備えたものを採用する。そして、この直流電圧Vcc’を一旦外部に出力するための外部出力端子40と、この外部出力端子40から出力された直流電圧Vcc’を言わばダミーの状況信号Va’として状況信号入力端子24に入力する(言わば戻す)ためのジャンパ線42と、を設ける。このようにすれば、非常放送装置100がなくとも、放送装置10単体で通常放送を行うことができる。
【0039】
また、この場合、状況信号入力端子24および外部出力端子40として、例えば図5に示すように、互いに一体化されたものを採用すれば、これら両者24および40の構成が極めて簡素化されると共に、ジャンパ線42の着脱が容易になる。
【0040】
具体的には、一体の端子台400と、この端子台400に一列に設けられた4つのネジ止め式端子402,404,406および408と、を備えたものを採用する。そして、これら4つのネジ止め式端子402,404,406および408のうち、中央の2つの端子404および406を、状況信号入力端子24として用いる。つまり、非常放送装置100がある場合には、この中央の2つの端子404および406に当該非常放送装置100が接続されるものとし、例えば、図5において右側の端子404をプラス(Va+)側とし、左側の端子406をマイナス(Va−)として、これら両端子404および406に状況信号Vaが入力されるものとする。
【0041】
そして、両端にある2つの端子402および408を、外部出力端子40とする。詳しくは、上述のプラス側端子404の隣にある端子402をプラス側とし、マイナス側端子406の隣にある端子408をマイナス側として、これら両端子402および408にダミー状況信号Va’としての直流電圧Vcc’が印加されるようにする。
【0042】
このようにすれば、非常放送装置100がないときには、互いに隣り合うプラス側端子402および404同士と、マイナス側端子406および408同士とを、それぞれジャンパ線42で短絡することによって、当該非常放送装置100がなくとも、放送装置10単体で通常放送を行えるようになる。また、ジャンパ線42として、一般に知られているコの字状ジャンパ板を採用することができ、当該ジャンパ線42の着脱が容易になる。
【0043】
また、上述の外部出力端子40(図5に示した端子)に代えて、例えば図6に示すように、手動のスイッチ50を設けてもよい。
【0044】
即ち、状況信号入力端子24経由で入力される状況信号Vaと、電源回路18によって生成されるダミー状況信号Va’としての直流電圧Vcc’との、いずれか一方を手動で選択できるように、当該スイッチ50を設ける。そして、このスイッチ50によって選択された状況信号Vaまたはダミー状況信号Va’(Vcc’)が、切換制御回路26に入力されるようにする。
【0045】
このようにすれば、非常放送装置100があるときには、状況信号Vaを選択するようにスイッチ50を操作することで、当該非常放送装置100と連動して放送装置10を稼働させることができる。一方、非常放送装置100がないときには、ダミー状況信号Va’を選択することで、放送装置10単体で通常放送を行えるようになる。なお、スイッチ50は、放送装置10の外部から操作できるようにするのが、望ましい。
【0046】
さらに、スイッチ50に代えて、例えば図7に示すように、切換制御回路26に手動のスイッチ60を設けてもよい。
【0047】
即ち、フォトカプラ260を構成するフォトトランジスタ266のコレクタ−エミッタ端子間をオン/オフするように、当該スイッチ60を設ける。このようにすれば、非常放送装置100があるときには、このスイッチ60をオフ(開放)することで、当該非常放送装置100と連動して放送装置10を稼働させることができる。一方、非常放送装置100がないときには、当該スイッチ60をオン(短絡)することで、放送装置10単体で通常放送を行えるようになる。なお、このスイッチ60もまた、放送装置10の外部から操作できるようにするのが、望ましい。
【0048】
続いて、本発明の第2実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。
【0049】
この第2実施形態に係る放送装置10aは、通常放送時に、それぞれの切換回路14の属する出力系統毎にミュートオン/オフを制御可能としたものであり、図8に示すように、上述した図1の構成に対して、第2の切換回路70と、個別ミュート制御手段としてのCPU80と、が付加されたものである。
【0050】
具体的には、第2切換回路70は、切換回路14,14,…と同様に、トランスファ接点構成の単安定リレー72を有しており、このリレー72の常時閉路接点端子NCに、非常放送信号入力端子22が接続されている。そして、リレー72の常時開路接点端子NOは、接地電位に接続されており、共通端子COMは、各切換回路14,14,…のリレー16,16,…の常時閉路接点端子NC,NC,…に接続されている。さらに、この第2切換回路70には、電源回路18から駆動電源Vccが供給されると共に、切換制御回路26から第2の切換制御信号D’が入力される。なお、この第2切換回路70の具体的な構成は、上述した図3と同様であり、同図3における切換制御信号Dに代えて、第2切換制御信号D’が入力される。また、切換制御回路26は、上述したミュート制御信号Mの態様に関係なく、駆動電源Vccが正常に供給されていることを条件に、状況信号Vaが+24[V]のとき、第2切換制御信号D’としてハイレベルの信号を出力し、当該状況信号Vaが0[V]であるとき、第2切換制御信号D’としてローレベルの信号を出力する。
【0051】
従って、第2切換回路70に駆動電源Vccが正常に供給されており、かつ第2切換制御信号D’がハイレベルであるとき、つまり通常放送時には、当該第2切換回路70のリレー72の常時開路接点端子NOと共通端子COMとが接続される。これにより、各切換回路14,14,…のリレー16,16,…の常時閉路接点端子NC,NC,…は、当該第2切換回路70のリレー72を介して、接地電位に接続される。一方、第2切換回路70に駆動電源Vccが供給されておらず、または第2切換制御信号D’がローレベルであるとき、つまり非常事態発生時には、当該第2切換回路70のリレー72の常時閉路接点端子NCと共通端子COMとが接続される。これにより、各切換回路14,14,…のリレー16,16,…の常時閉路接点端子NC,NC,…は、当該第2切換回路70のリレー72を介して、非常放送信号入力端子22に接続される。
【0052】
CPU80は、ミュート制御信号Mとは別の第2のミュート制御信号M’を、それぞれの切換回路14毎に生成する。そして、このミュート制御信号M’は、それぞれの切換回路14毎に与えられ、それぞれの切換回路14は、当該第2ミュート制御信号M’に従って、次のように動作する。即ち、駆動電源Vccが供給されており、かつ上述した切換制御信号Dがハイレベルであることを条件として、第2ミュート制御信号M’がハイレベルであるとき、切換回路14は、リレー16の常時閉路接点端子NCと共通端子COMとを接続する。これにより、当該切換回路14の属する出力系統は、ミュートオンの状態になる。一方、第2ミュート制御信号M’がローレベルであるときには、切換回路14は、リレー16の常時開路接点端子NOと共通端子COMとを接続する。これにより、当該切換回路14の属する出力系統は、ミュートオフの状態になる。なお、駆動電源Vccが供給されておらず、または切換制御信号Dがローレベルであるときには、第1実施形態と同様、それぞれの切換回路14のリレー16の常時閉路接点端子NCと共通端子COMとが接続される。
【0053】
なお、この第2実施形態における切換制御回路26は、例えば図9に示すような構成とされる。即ち、上述した図2の構成において、フォトカプラ260のフォトトランジスタ266のエミッタ端子側に、ディジタルトランジスタ268が設けられる。具体的には、当該フォトトランジスタ266のエミッタ端子に現れる信号が、ディジタルトランジスタ268の駆動電源として用いられる。そして、このディジタルトランジスタ268の出力信号が、切換制御信号Dとされ、各切換回路14,14,…に入力される。なお、この切換制御信号Dを安定化させるべく、ディジタルトランジスタ268の出力端子には、プルダウン用の抵抗器272が設けられる。そして、フォトトランジスタ266のエミッタ端子に現れる信号は、第2切換制御信号D’としても用いられ、第2切換回路70に入力される。
【0054】
また、それぞれの切換回路14は、例えば図10に示すような構成とされている。即ち、上述した図3の構成に対して、反転回路としてのディジタルトランジスタ146が付加される。具体的には、CPU80からの第2ミュート制御信号Mが、当該ディジタルトランジスタ146に入力される。そして、このディジタルトランジスタ146の出力信号が、トランジスタ140のベース端子に入力される。
【0055】
このような構成によって、この第2実施形態の放送装置10aによれば、通常放送時に、それぞれの出力系統毎にミュートのオン/オフ制御が可能となる。そして、停電時を含む非常事態発生時には、当該ミュートのオン/オフ制御に関係なく、非常放送に切り換わる。
【0056】
なお、この第2実施形態においては、CPU80を採用したが、当該CPU80と同様の作用を奏する回路を、純粋なハードウェアで構成してもよい。そして、第2切換回路70についても、この第2実施形態で説明したような構成のものではなく、例えばリレー72に代えてアナログスイッチを有する回路等を採用してもよい。さらに、上述の第1実施形態においても、より良好なミュートオン効果を実現するべく、第2切換回路70と同様の回路を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1における切換制御回路の詳細を示す電気回路図である。
【図3】図1における切換回路の詳細を示す電気回路図である。
【図4】図1とは別の構成例を示すブロック図である。
【図5】図4における状況信号入力端子と外部出力端子との拡大図である。
【図6】図4とはさらに別の構成例を示すブロック図である。
【図7】図4および図6と同様の機能を実現するための別の例を示す図解図である。
【図8】本発明の第2実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図9】図8における切換制御回路の詳細を示す電気回路図である。
【図10】図8における切換回路の詳細を示す電気回路図である。
【符号の説明】
【0058】
10 放送装置
14 切換回路
16 リレー
18 電源回路
22 非常放送入力端子
24 状況信号入力端子
26 制御回路
28 出力回路
100 非常放送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に設けられた非常放送装置から非常放送信号が入力される第1入力端子と、
非常事態が発生しているか否かを表す状況信号が外部から入力される第2入力端子と、
上記非常放送信号および通常放送用の音源から発せられる通常放送信号のいずれか一方を選択して出力端子から出力させる切換手段と、
上記状況信号が上記非常事態の発生を表すとき上記非常放送信号を選択し該状況信号が該非常事態の非発生を表すとき上記通常放送信号を選択するように上記切換手段を制御する制御手段と、
を具備し、
上記切換手段は該切換手段を駆動するための電源が非供給のとき上記非常放送信号を選択する状態に構成された、
放送装置。
【請求項2】
上記状況信号は、上記非常事態の非発生を表すとき所定の電圧を示し、該非常事態の発生を表すとき略零の電圧を示す、請求項1に記載の放送装置。
【請求項3】
上記切換手段は、上記非常放送信号が入力される常時閉路接点端子と、上記通常放送信号が入力される常時開路接点端子と、上記出力端子に接続された共通接点端子と、を備えた単安定リレーを含む、請求項1または2に記載の放送装置。
【請求項4】
上記制御手段は純粋なハードウェアによって構成された、請求項1ないし3のいずれかに記載の放送装置。
【請求項5】
上記状況信号は上記非常放送装置から発せられる、請求項1ないし4のいずれかに記載の放送装置。
【請求項6】
複数の上記音源に対応して設けられた複数の上記切換手段と、該複数の切換手段に対応して設けられた複数の上記出力端子と、を備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の放送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−65685(P2008−65685A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244300(P2006−244300)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000223182)ティーオーエー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】