説明

放電加工装置

【課題】径の細い加工電極や超硬合金より軟らかい材料の加工電極を用いた場合であっても、ワーク加工精度の悪化や電極周りの異常放電を防止できる、高精度で低加工コストの放電加工装置を提供する。
【解決手段】ワーク11を保持するための保持部10と、ワーク11に対して放電するための加工電極21を有してなる電極部20とを有してなる放電加工装置100において、電極部20が、放電中に加工電極21を固定して保持するための電極保持体22と、ワーク11と電極保持体22の間に位置し、ワーク11と対向する加工電極21の先端を貫通させて、前記先端を位置決めする電極先端ガイド23と、電極先端ガイド23と電極保持体22の間に位置し、電極保持体22による加工電極21の固定が開放された状態で、加工電極21を把持する電極把持ハンド24とを有してなる放電加工装置100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電によりワークに微細穴の形成や溝加工を行う、放電加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ状の加工電極とワークとの間にパルス電圧を印加し、両者の間にパルス放電を生じさせて微細穴の形成や溝加工を行う放電加工装置が、例えば、特開2000−42834号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
図3は、特許文献1に開示された放電加工装置90の模式図である。
【0004】
図3に示す放電加工装置90は、加工電極92と加工部を設けるべきワーク91との間に電圧パルスを印加する放電電源93とよりなる。加工電極92は、ワーク91に対し回転可能に構成されている。放電加工装置90において、径70μmのタングステン線よりなる加工電極92は、電極送りボックス94内にボビンに巻回された状態で格納され、また電極送りボックス94はNC軸95に接続されている。電極送りボックス94による加工電極92の電極送り量は、NC軸95に接続されたNC軸制御装置によって制御される。加工電極92の回転は、回転軸96がボビンを含んだ送り装置を回転させることにより行われ、該回転軸96は、回転軸制御装置にて駆動されるよう構成されている。また、加工電極92の外周には電極ガイド97が配設され、該加工電極92におけるワーク91と対面する部位の近傍は電極ガイド97により保護されている。加工電極92の下方には加工液が満たされた加工槽が配置され、この加工槽内にワーク91と該ワーク91を支承する治具98とが配置されている。加工電極92とワーク91に対する電圧パルスの印加は放電電源93により行われる。
【0005】
図3に示す放電加工装置90では、以下のステップで放電加工を行う。最初に、電極送りボックス94を作動させ、加工電極92の先端を電極ガイド97の先端から一定量だけ露出させる。次いで、加工電極92を回転軸96を用いて回転させつつワーク91に近づけ、これと共に放電電源93を作動させる。これにより、加工電極92とワーク91との間に電圧パルスが印加され、放電加工が開始される。この放電加工によりワーク91に加工部が形成される。また、放電加工が行われることにより、加工電極92の先端が摩耗する。このため、放電加工装置90では、加工電極92の電極ガイド97からの突き出し量を視覚センサにて測定する。この測定において突き出し量が所定の値未満となったことが検出された場合には、電極送りボックス94を再び作動させ、加工電極92の先端を電極ガイド97の先端から一定量だけ露出させる。
【特許文献1】特開2000−42834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示す放電加工装置90においては、加工電極92が、電極送りボックス94から電極ガイド97からの突き出る先端まで長く伸びている。従って、加工電極92の径が太い場合や、加工電極92の材料として硬い超硬合金を使用した場合には、問題なく高精度な穴加工が可能である。しかしながら、加工電極92の径が細い場合や、加工電極92の材料として安価である反面、超硬合金に較べて軟らかいタングステンを使用すると、加工電極92が電極送りボックス94と電極ガイド97の間で撓みやすくなる。このため、加工電極92の先端とワーク91の間の寸法精度が悪くなり、ワーク91の加工精度の悪化や、加工電極92と電極ガイド97の間の異常放電による電極ガイド97の寿命低下といった問題が発生する。
【0007】
そこで本発明は、放電によりワークに微細穴の形成や溝加工を行う放電加工装置であって、径の細い加工電極や超硬合金より軟らかい材料の加工電極を用いた場合であっても、ワーク加工精度の悪化や電極周りの異常放電を防止できる、高精度で低加工コストの放電加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ワークを保持するための保持部と、ワークに対して放電するための加工電極を有してなる電極部と、放電のための電力を供給する電源部とを有してなる放電加工装置において、前記電極部が、放電中に前記加工電極を固定して保持するための電極保持体と、前記ワークと前記電極保持体の間に位置し、ワークと対向する前記加工電極の先端を貫通させて、前記先端を位置決めする電極先端ガイドと、前記電極先端ガイドと前記電極保持体の間に位置し、電極保持体による前記加工電極の固定が開放された状態で、加工電極を把持する電極把持ハンドとを有してなることを特徴としている。
【0009】
上記放電加工装置の電極部においては、ワークに近い順に、電極先端ガイド、電極把持ハンドおよび電極保持体が配置され、これら電極部の各部品を貫通するようにして、加工電極が配置される。上記電極先端ガイドは、加工電極の先端を位置決めする機能のみがあればよく、上記電極把持ハンドは、加工電極を把持する機能のみがあればよい。また、上記電極保持体は、加工電極を固定して保持する機能のみがあればよい。このため、これら電極部の各部品は、小型化が可能である。従って、上記放電加工装置においては、従来の放電加工装置に較べて、電極保持体に固定される加工電極の固定位置と電極先端ガイドから突き出る加工電極の先端までの長さを、極力短くすることができる。これによって、径の細い加工電極や超硬合金より軟らかい材料の加工電極を用いた場合であっても、電極先端ガイドと電極保持体の間における加工電極の撓みを、最小限に抑制することができる。このため、加工電極の撓みによるワーク加工精度の悪化や電極周りの異常放電を防止することができ、高精度で低加工コストの放電加工装置とすることができる。
【0010】
上記放電加工装置においては、例えば請求項2に記載のように、前記電極先端ガイドと前記電極把持ハンドが、第1駆動体により前記ワークの加工位置と前記加工電極の先端を結ぶ軸方向に移動可能な第1スライドベースに搭載され、前記電極保持体が、前記第1スライドベースに搭載された第2駆動体により前記軸方向に移動可能な第2スライドベースに搭載されてなる構成とすることができる。
【0011】
上記構成の放電加工装置においては、電極先端ガイドと電極把持ハンドが搭載された第1スライドベースと、電極保持体が搭載された第2スライドベースとが、それぞれ、ワークの加工位置と加工電極の先端を結ぶ軸方向に独立して移動可能となっている。従って、例えば別位置のボビンに巻回された状態で格納されている加工電極を、以下のステップで引き出すことが可能となる。すなわち、電極保持体による加工電極の固定を開放し、電極把持ハンドにより加工電極を把持した状態で、第2スライドベースをワークから離れる方向に移動させる。この位置で、次に、電極保持体によって加工電極を固定し、電極把持ハンドによる加工電極の把持を開放した状態で、再び第2スライドベースをワークに近づける方向に移動させて元の位置に戻す。これによって、加工電極が、上記第2スライドベースの軸方向の移動距離分だけ、ワーク方向に引き出されることになる。従って、上記構成の放電加工装置においては、放電により加工電極の先端が摩耗しても、加工電極の電極先端ガイドからの突き出し長さを簡単に調整することができる。また、上記構成の放電加工装置においては、第1スライドベースを移動させることで、加工電極の電極先端ガイドからの突き出し長さを一定に保ったままで、加工電極の先端からワークまでの距離を簡単に調整することができる。
【0012】
請求項3に記載のように、前記第1駆動体と前記第2駆動体が、サーボモータからなり、前記電極先端ガイドと前記電極保持体の位置が、前記サーボモータのエンコーダで検出されることが好ましい。これによって、上記加工電極の電極先端ガイドからの突き出し長さを、正確に計測することができる。
【0013】
また、上記放電加工装置においては、請求項4に記載のように、前記電源部において、前記加工電極と前記ワークの間の極間電圧が検出されることが好ましい。これによって、加工電極の先端のワークへの接触(極間電圧0Vの短絡状態)を正確に知ることができ、この位置を基準として、加工電極の先端からワークまでの距離や加工電極の磨耗量を、正確に計測することができる。
【0014】
前述したように、上記放電加工装置は、電極先端ガイドと電極保持体の間における加工電極の撓みを最小限に抑制できるため、請求項5に記載のように、前記加工電極が、径の細いワイヤ状である場合に好適である。特に、請求項6に記載のように、前記ワイヤ状の加工電極の直径は、50μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0015】
また、同じ理由で、上記放電加工装置は、請求項7に記載のように、前記加工電極が、超硬合金より硬度の低い軟質材料であってよい。前記軟質材料としては、例えば請求項8に記載のように、タングステンまたは銅とすることができる。
【0016】
このように、上記放電加工装置においては、加工電極として高価な超硬合金を用いる必要がないため、低加工コストの放電加工装置とすることができる。
【0017】
また、上記放電加工装置においては、請求項9に記載のように、前記電極保持体が、回転可能であるように構成することが好ましい。これによって、放電による加工電極の磨耗が均一なものとなり、常に安定した放電加工を実施することができる。
【0018】
以上のようにして、上記放電加工装置は、請求項10に記載のように、前記ワークとして微細な穴加工が要求される、噴射ノズルの噴射穴の形成に用いられて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明における放電加工装置の一例で、放電加工装置100を模式的に示した側面図である。図2は、図1に示す放電加工装置100の要部である電極部20について、ワーク11と対向する先端部分を拡大して示した部分的な断面図である。
【0021】
放電加工装置100は、図1に示すように、ワーク11を保持するための保持部10と、ワークに対して放電するための加工電極21を有してなる電極部20と、放電のための電力を供給する電源部30とを有しており、これらがベースとなる架台部40上に設置されている。尚、図1の保持部10における符号12の部分は、ワーク11を保持するワーク保持体である。また、図2では、図を見やすくするために加工電極21の図示を省略しているが、放電加工装置100の使用時には、図中に一点鎖線で示した中心軸に沿ってワイヤ状の加工電極21が挿入される。
【0022】
放電加工装置100の電極部20は、図1および図2に示すように、放電中に加工電極を固定して保持するための電極保持体22と、ワークと電極保持体22の間に位置し、ワークと対向する加工電極21の先端を貫通させて、先端を位置決めする電極先端ガイド23と、電極先端ガイド23と電極保持体22の間に位置し、電極保持体22による加工電極21の固定が開放された状態で、加工電極21を把持する電極把持ハンド24を有している。尚、図2の電極保持体22の中にある符号22aの波状の部分は、放電時に加工電極21を固定する固定ハンドで、加工電極21は、この固定ハンド22aにより多点で押えられて固定される。図2に示す符号22bの部分は、固定ハンド22aを開閉する固定ハンド駆動体で、この固定ハンド駆動体22bにより固定ハンド22aを開閉することで、それぞれ、加工電極21を開放・固定にすることができる。図2に示す符号22dの部分はプーリーで、図1に示す電極回転モータ22cとベルトで連結されており、固定ハンド22aによって固定された加工電極21が、電極保持体22と共に回転される構造となっている。また、図2に示す符号24aの部分は、把持ハンド駆動体である。この把持ハンド駆動体24aにより電極把持ハンド24を開閉することで、電極保持体22における固定ハンド22aと独立して、それぞれ、加工電極21を開放状態および固定状態にすることができる。
【0023】
図1と図2に示す放電加工装置100の電極部20においては、ワーク11に近い順に、電極先端ガイド23、電極把持ハンド24および電極保持体22が配置され、これら電極部20の各部品を貫通するようにして、加工電極21が配置される。電極先端ガイド23は、加工電極21の先端を位置決めする機能のみがあればよく、電極把持ハンド24は、加工電極21を把持する機能のみがあればよい。また、電極保持体22は、加工電極21を固定して保持する機能のみがあればよい。このため、これら電極部20の各部品22〜24は、小型化が可能である。従って、放電加工装置100においては、図3に示した従来の放電加工装置90に較べて、電極保持体22に固定される加工電極21の固定位置と電極先端ガイド23から突き出る加工電極21の先端までの長さを、極力短くすることができる。これによって、径の細い加工電極21や超硬合金より軟らかい材料の加工電極21を用いた場合であっても、電極先端ガイド23と電極保持体22の間における加工電極21の撓みを、最小限に抑制することができる。このため、加工電極21の撓みによるワーク11の加工精度の悪化や電極周りの異常放電を防止することができ、高精度で低加工コストの放電加工装置とすることができる。
【0024】
また、放電加工装置100においては、図1に示すように、電極先端ガイド23と電極把持ハンド24が、第1駆動体25aによりワーク11の加工位置と加工電極21の先端を結ぶ軸方向である図のZ軸方向に移動可能な第1スライドベース25に搭載されている。また、電極保持体22は、第1スライドベース25に搭載された第2駆動体26aにより同じZ軸方向に移動可能な第2スライドベース26に搭載されている。尚、図1の電極部20における符号28の部分は、図の紙面に垂直なY軸方向に移動可能な第4スライドベースである。符号27の部分は、第4スライドベース28に搭載された第3駆動体27aにより図のX軸方向に移動可能な第3スライドベースである。これら第3スライドベース27と第4スライドベース28により、X−Y面内において、ワーク11と加工電極21の位置合わせを行う。
【0025】
上記構成の放電加工装置100においては、電極先端ガイド23と電極把持ハンド24が搭載された第1スライドベース25と、電極保持体22が搭載された第2スライドベース26とが、それぞれ、ワーク11の加工位置と加工電極21の先端を結ぶZ軸方向に独立して移動可能な2重の搭載構造となっている。従って、例えば別位置のボビンに巻回された状態で格納されている加工電極21を、以下のステップで引き出すことが可能となる。すなわち、電極保持体22による加工電極21の固定を開放し、電極把持ハンド24により加工電極21を把持した状態で、第2スライドベース26をワーク11から離れる方向に移動させる。この位置で、次に、電極保持体22によって加工電極21を固定し、電極把持ハンド24による加工電極21の把持を開放した状態で、再び第2スライドベース26をワーク11に近づける方向に移動させて元の位置に戻す。これによって、加工電極21が、上記第2スライドベース26のZ軸方向の移動距離分だけ、ワーク11方向に引き出されることになる。従って、上記構成の放電加工装置100においては、放電により加工電極21の先端が摩耗しても、加工電極21の電極先端ガイド23からの突き出し長さを簡単に調整することができる。また、上記構成の放電加工装置100においては、第1スライドベース25を移動させることで、加工電極21の電極先端ガイド23からの突き出し長さを一定に保ったままで、加工電極21の先端からワークまでの距離を簡単に調整することができる。
【0026】
尚、図1に示す第1駆動体25aと第2駆動体26aは、サーボモータからなり、電極先端ガイド23と電極保持体22の位置が、サーボモータのエンコーダで検出されることが好ましい。これによって、加工電極21の電極先端ガイド23からの突き出し長さを、正確に計測することができる。
【0027】
図1の放電加工装置100においては、電源部30において、加工電極21とワーク11の間の極間電圧が検出されることが好ましい。これによって、加工電極21の先端のワーク11への接触(極間電圧0Vの短絡状態)を正確に知ることができ、この位置を基準として、加工電極21の先端からワーク11までの距離や加工電極21の磨耗量を、正確に計測することができる。
【0028】
前述したように、上記放電加工装置100は、電極先端ガイド23と電極保持体22の間における加工電極21の撓みを最小限に抑制できるため、加工電極21が、径の細いワイヤ状である場合に好適である。特に、ワイヤ状の加工電極21の直径は、50μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0029】
また、同じ理由で、上記放電加工装置100は、加工電極21が、超硬合金より硬度の低い軟質材料であってよい。軟質材料としては、例えば、タングステンまたは銅とすることができる。
【0030】
このように、上記放電加工装置100においては、加工電極21として高価な超硬合金を用いる必要がないため、低加工コストの放電加工装置とすることができる。
【0031】
また、上記放電加工装置100のように、電極保持体22は、回転可能であることが好ましい。これによって、放電による加工電極21の磨耗が均一なものとなり、常に安定した放電加工を実施することができる。
【0032】
次に、上記放電加工装置100の概略作動を簡単に説明する。
【0033】
まず、ワーク11をワーク保持体12に取付ける。次に、加工電極21をセットし、電極保持体22で保持する。次に、加工電極21を電極先端ガイド23に通す。
次に、加工電極21の先端をワーク11に接近させ、第1スライドベース25を移動させて加工電極21の先端を位置決めする。次に、ワーク保持体12の加工槽(図示省略)にワーク11を浸漬する加工液を注入する。次に、加工電極21に通電し、第2スライドベース26を下方に移動させながら加工電極21とワーク11間に放電を発生させて加工する。この時、放電開始時の第2スライドベース26の位置Z1をサーボモータからなる第2駆動体26aにて検知し記憶する。次に、第2スライドベース26を初期位置Z1から(加工穴深さ+加工電極21の磨耗量)に対応した所定距離だけ移動させた点で通電を停めて、放電加工を終了する。
【0034】
次に、加工電極21の先端がワーク11の上方にくるまで、第2スライドベース26を上方に移動させる。次に、電極把持ハンド24で加工電極21をチャックし、固定ハンド22aを開いて、加工電極21の磨耗量だけ第2スライドベース26を上方に移動させる。次に、固定ハンド22aを閉じると共に電極把持ハンド24を開いて、第2スライドベース26を再び加工位置に移動して位置決めする。
【0035】
次に、次の穴加工位置に加工電極21の先端が来るようにワーク11を移動して位置決めし、上記ステップを繰り返して、次の穴加工位置で放電加工を行う。
【0036】
このように、上記放電加工装置100においては、加工電極21を電極磨耗量に相当する量だけ少しづつ供給しながら放電加工することができる。これにより、電極先端ガイド23とワーク11間を可能な限り小さく維持できるようになり、細くて柔らかく撓み易い材料の加工電極21を使用して高精度な微小穴を加工できるようになる。
【0037】
以上に示したようにして、本発明の放電加工装置は、放電によりワークに微細穴の形成や溝加工を行う放電加工装置であって、径の細い加工電極や超硬合金より軟らかい材料の加工電極を用いた場合であっても、ワーク加工精度の悪化や電極周りの異常放電を防止できる、高精度で低加工コストの放電加工装置とすることができる。
【0038】
従って、上記した本発明の放電加工装置は、例えば、ワークとして微細な穴加工が要求される、噴射ノズルの噴射穴の形成に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明における放電加工装置の一例で、放電加工装置100を模式的に示した側面図である。
【図2】放電加工装置100の要部である電極部20について、ワーク11と対向する先端部分を拡大して示した部分的な断面図である。
【図3】特許文献1に開示された放電加工装置90の模式図である。
【符号の説明】
【0040】
100 放電加工装置
10 保持部
11 ワーク
12 ワーク保持体
20 電極部
21 加工電極
22 電極保持体
22a 固定ハンド
22b 固定ハンド駆動体
22c 電極回転モータ
22d プーリー
23 電極先端ガイド
24 電極把持ハンド
24a 把持ハンド駆動体
25 第1スライドベース
25a 第1駆動体
26 第2スライドベース
26a 第2駆動体
27 第3スライドベース
27a 第3駆動体
28 第4スライドベース
30 電源部
40 架台部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するための保持部と、ワークに対して放電するための加工電極を有してなる電極部と、放電のための電力を供給する電源部とを有してなる放電加工装置において、
前記電極部が、
放電中に前記加工電極を固定して保持するための電極保持体と、
前記ワークと前記電極保持体の間に位置し、ワークと対向する前記加工電極の先端を貫通させて、前記先端を位置決めする電極先端ガイドと、
前記電極先端ガイドと前記電極保持体の間に位置し、電極保持体による前記加工電極の固定が開放された状態で、加工電極を把持する電極把持ハンドとを有してなることを特徴とする放電加工装置。
【請求項2】
前記電極先端ガイドと前記電極把持ハンドが、第1駆動体により前記ワークの加工位置と前記加工電極の先端を結ぶ軸方向に移動可能な第1スライドベースに搭載され、
前記電極保持体が、前記第1スライドベースに搭載された第2駆動体により前記軸方向に移動可能な第2スライドベースに搭載されてなることを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項3】
前記第1駆動体と前記第2駆動体が、サーボモータからなり、
前記電極先端ガイドと前記電極保持体の位置が、前記サーボモータのエンコーダで検出されることを特徴とする請求項2に記載の放電加工装置。
【請求項4】
前記電源部において、前記加工電極と前記ワークの間の極間電圧が検出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放電加工装置。
【請求項5】
前記加工電極が、ワイヤ状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放電加工装置。
【請求項6】
前記加工電極の直径が、50μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の放電加工装置。
【請求項7】
前記加工電極が、超硬合金より硬度の低い軟質材料からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の放電加工装置。
【請求項8】
前記軟質材料が、タングステンまたは銅であることを特徴とする請求項7に記載の放電加工装置。
【請求項9】
前記電極保持体が、回転可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の放電加工装置。
【請求項10】
前記ワークが、噴射ノズルであり、
当該放電加工装置が、前記噴射ノズルの噴射穴の形成に用いられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の放電加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−200806(P2008−200806A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39675(P2007−39675)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】