放電灯点灯装置、照明器具および照明システム
【課題】予熱時の予熱電流のばらつきを解消すると共に、予熱終了後の始動時や定常点灯時においても特性のばらつきを抑制し、放電灯負荷や回路部品のストレスを低減可能とする。
【解決手段】インバータ回路1の高周波出力によりLC共振回路2を介して放電灯LAを高周波点灯させる放電灯点灯装置において、放電灯LAの放電開始前に放電灯フィラメントft1,ft2を暖めるための予熱モードと、放電を開始させるために放電灯LAの両端間に放電可能となる電圧を印加する始動モードと、点灯後に所定の放電灯出力を維持する点灯モードの少なくとも3つのモードを有し、予熱モード以前にLC共振回路2の状態を検出し、その検出状態に応じて予熱時の特性を補正する補正制御手段(周波数補正回路8)を設けると共に、この予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段(予熱時補正状態記憶回路9)を設けた。
【解決手段】インバータ回路1の高周波出力によりLC共振回路2を介して放電灯LAを高周波点灯させる放電灯点灯装置において、放電灯LAの放電開始前に放電灯フィラメントft1,ft2を暖めるための予熱モードと、放電を開始させるために放電灯LAの両端間に放電可能となる電圧を印加する始動モードと、点灯後に所定の放電灯出力を維持する点灯モードの少なくとも3つのモードを有し、予熱モード以前にLC共振回路2の状態を検出し、その検出状態に応じて予熱時の特性を補正する補正制御手段(周波数補正回路8)を設けると共に、この予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段(予熱時補正状態記憶回路9)を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を高周波電力に変換して放電灯に供給するインバータ回路を用いた放電灯点灯装置及びこれを用いた照明器具、照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12は従来技術(特開平11−135280号公報)を示す回路ブロック図である。交流電源Vsにダイオードブリッジから成る全波整流器DBが接続され、全波整流器DBの直流出力端子には平滑用のコンデンサCoを介してインバータ回路1が並列に接続されている。このインバータ回路1の出力端には、共振回路2と予熱回路3が並列接続され、インバータ回路1から出力される高周波電圧Voが両者に印加される。また、インバータ回路1の発振周波数(動作周波数)は制御回路4によって制御される。この制御回路4は、インバータ回路1が具備する1乃至複数のスイッチング素子のオン・オフのタイミングを設定して上記動作周波数を制御する周波数制御回路5と、この周波数制御回路5からの信号を受けてインバータ回路1のスイッチング素子を駆動するドライブ回路6と、放電灯Laのフィラメントに流れる予熱電流レベルを検出する予熱電流検出回路7cとを備え、予熱電流検出回路7cにより共振回路2又は予熱回路3に流れる電流から予熱電流レベルを検出し、周波数制御回路5へフィードバックしている。
【0003】
共振回路2は、インダクタL1とコンデンサC2の直列共振回路を有し、コンデンサC2の両端に放電灯Laのフィラメントの一端f2,f4が接続されており、インバータ回路1から供給される高周波電圧Voに対して遅れた位相の電流I1が流れるようにインダクタL1のインダクタンス値とコンデンサC2の容量とが設定されている。
【0004】
一方、予熱回路3はインダクタL2とコンデンサC4との直列共振回路から成り、インダクタL2に設けられた補助巻線n1,n2がそれぞれ放電灯Laのフィラメントの両端f1−f2間、f3−f4間に接続されており、インバータ回路1から供給される高周波電圧Voに対して進んだ位相の電流I2が流れるようにインダクタL2のインダクタンス値とコンデンサC4の容量とが設定されている。
【0005】
この従来例は、制御回路4によりインバータ回路1を制御して高周波電圧Voを共振回路2及び予熱回路3に印加し、放電灯Laの予熱から始動及び点灯維持(定常点灯)を行なうものである。ところが、予熱回路3から放電灯Laのフィラメントに供給される予熱電流Iphは、予熱回路3を構成するインダクタL2やコンデンサC4の部品ばらつきにより、図14の曲線A〜Cに示すように、その共振特性にもばらつきが生じることになる。このような共振特性のばらつきに対して常に一定以上の予熱電流が確保できるようにしている。
【0006】
一定以上の予熱電流を確保するための動作について、図13〜図15を参照して説明する。図13は本従来例における制御回路4の制御動作のタイムチャートを示している。まず、時刻t=t0で交流電源Vsが投入されて制御回路4が動作を開始すると、周波数制御回路5は、予熱回路3の共振周波数がインダクタL2及びコンデンサC4のばらつきにより最も高くなる周波数(図14におけるf3)よりも高い第1の予熱周波数fph1でインバータ回路1の動作を開始させる。
【0007】
そして、周波数制御回路5は、時刻t=t0〜t1の期間に予熱電流検出回路7cによって予熱電流を検出しながら、図15に示すように、予熱電流が所定レベルIph0を越える第2の予熱周波数fph2までインバータ回路1の動作周波数fを徐々に変化させる(低くする)。ここで、予熱電流が所定レベルIph0を越える第2の予熱周波数fph2は、図15に示すように、インダクタL2及びコンデンサC4によって異なり、曲線Aで表される共振特性の場合をfph2(a)、曲線Bで表される共振特性の場合をfph2(b)、曲線Cで表される共振特性の場合をfph2(c)で表すことにする。
【0008】
周波数制御回路5は、予熱電流検出回路7cで検出されるレベルが上記所定レベルIph0を越えた時点でインバータ回路1の動作周波数fを第2の予熱周波数fph2(a)又はfph2(b)又はfph2(c)に固定し、所定の予熱期間(図13における時刻t=t1〜t2)だけ放電灯Laのフィラメントを予熱する。
【0009】
そして、周波数制御回路5が、動作周波数fを第2の予熱周波数fph2(a)又はfph2(b)又はfph2(c)から始動に必要な高電圧が得られる始動周波数fstにまで低下させ、時刻t=t2〜t3の間(始動期間)だけ始動周波数fstに固定する。この動作モードを始動モードと呼ぶ。
【0010】
その結果、放電灯Laが始動した後(時刻t=t3以降)は、周波数制御回路5が放電灯Laを定常点灯させるために、始動周波数fstよりもさらに低い周波数fCTでインバータ回路1を動作させる。この動作モードを点灯モードと呼ぶ。
【0011】
上述のように、本従来例によれば、予熱回路3を構成するインダクタL2やコンデンサC4の部品ばらつきによって共振特性にばらつきが生じた場合であっても、予熱電流検出回路7cにより予熱電流のレベルを検出しながら、周波数制御回路5にて放電灯Laのフィラメントを予熱するのに充分なレベルの予熱電流が常に供給されるようにインバータ回路1の動作周波数fを制御し、常に所定のレベル以上の予熱電流を確保するようにしている。
【特許文献1】特開平11−135280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記従来例においては、予熱時の予熱電流が所定のレベル以上となるよう制御を行っているが、予熱終了後の始動モードにおける特性のばらつきは加味されていない。つまり、放電灯の放電開始に必要となる始動電圧レベルがばらつきを持っていることに対し、確実に放電を開始させるためには、始動電圧レベルが最も低くなる条件をもとに、上記予熱の所定レベルを設定する必要があり、始動電圧が高いものや、分布としても最も多くなる中程度のばらつきのものに対しては必要以上の過剰な予熱電流を流すこととなり、ランプフィラメントに余分なダメージを与え、放電灯の寿命に対し悪影響を及ぼすことがあった。
【0013】
本発明は上述のような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、予熱時の予熱電流のばらつきを解消するだけでなく、予熱動作終了後の始動動作時や定常点灯時においても特性のばらつきを抑制し、放電灯負荷や回路部品のストレスを低減できる放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、上記の課題を解決するために、図1に示すように、直流電源電圧をインバータ回路1により高周波電圧に変換し、共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1によるLC共振回路2を含む放電灯負荷回路ILに電力を供給することにより放電灯LAを高周波点灯させる放電灯点灯装置において、放電灯LAの放電開始前に放電灯フィラメントft1,ft2を暖めるための予熱モードと、放電を開始させるために放電灯LAの両端間に放電可能となる電圧を印加する始動モードと、点灯後に所定の放電灯出力を維持する点灯モードの少なくとも3つのモードを有し、前記予熱モード以前にLC共振回路2の状態を検出し、その検出状態に応じて予熱時の特性を補正する補正制御手段(周波数補正回路8)と、前記予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段(予熱時補正状態記憶回路9)を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達することにより、回路部品のばらつきによる特性のばらつき補正を、予熱電流はもちろんのこと、始動時の発振電圧、及び定常点灯時の特性にも反映させ、各モードにおいて特性ばらつきを小さく抑え、放電灯負荷や回路部品に過剰なストレスを印加することなく所定の特性が得られる、信頼性の高い放電灯点灯装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る放電灯点灯装置DLAの回路図である。以下、その回路構成について説明する。商用の交流電源Vsには、交流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路CVが接続されている。この電源回路CVの出力端にはインバータ回路1が接続されている。インバータ回路1は高周波で交互にオン/オフ駆動される一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えている。インバータ回路1の出力端にはインバータ負荷回路ILが接続されている。インバータ負荷回路ILは、LC直列共振回路を構成する共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1、及び直流カット用コンデンサC2、放電灯負荷LAで構成されている。
【0017】
インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2には制御回路4が接続されている。制御回路4は、スイッチング素子Q1、Q2を駆動するドライブ回路6と、インバータ回路1の動作周波数を制御する周波数制御回路5と、予熱モード、始動モード、点灯モード等のインバータ回路1の動作モードの切り替え、及び、各モードの時間を制御するタイマー回路10と、ランプ電圧を検出して制御回路4の制御に帰還する帰還回路(ランプ電圧検出回路7a)と、ランプ電圧検出回路7aの検出電位を受けてインバータ回路1の動作周波数を適切な周波数とするために周波数制御回路5に周波数補正のための信号を伝達する周波数補正回路8と、周波数補正回路8による予熱時の周波数補正状態を記憶しておいて、予熱時以降のモードへその補正状態を伝達するべく周波数制御回路5に信号を出力する予熱時補正状態記憶回路9とを備えている。なお、図示された回路例では、ランプ電圧検出回路7aは、インバータ負荷回路ILのインダクタL1と放電灯LAのフィラメントft1の接続部の電位によりランプ電圧を検出しているが、ランプ電圧の検出箇所は図示された箇所に限定されるものではなく、要するに、予熱時の状態検出によって始動時や点灯時のランプ電圧を推定できる箇所から検出すれば良い。
【0018】
以下、本回路の動作について説明する。交流電源Vsが入力されると、インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2は、制御回路4の周波数制御回路5により第1の動作周波数(予熱周波数fph0)にて制御され、交互にオン/オフを繰り返す。スイッチング素子Q1、Q2の接続点は上記オン/オフにより矩形波の高周波発振電圧となり、インバータ負荷回路ILに入力される。矩形波の高周波発振電圧は直流カット用コンデンサC2を介して、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、および放電灯フィラメントft1、ft2を含めた直列回路の両端に印加される。
【0019】
上記共振回路の出力電圧Vo2の周波数特性は図5(a)のようになっており、上記予熱周波数fph0での動作時は放電灯負荷点灯前の無負荷時共振の特性曲線上のa点で動作する。インダクタL1とコンデンサC1の直列共振回路の電流は、フィラメントft1、ft2を介して流れ、フィラメントft1、ft2が予熱(放電灯点灯前にフィラメントを暖める)される。
【0020】
制御回路4内のタイマー回路10で制御される予熱モード時間が終わると、放電灯を点灯させる始動モードに移行する。すなわち、周波数制御回路5は予熱モードが終わると、動作周波数をfph0からfst0に変化させ、無負荷時共振の特性曲線上のb点の動作に移行する。a点からb点への電圧上昇により放電灯に放電可能となる電圧が印加され、放電灯が点灯する。
【0021】
放電灯が点灯するとインダクタL1、コンデンサC1に放電灯負荷インピーダンスが加わり、無負荷時共振の特性曲線上のb点から、負荷点灯時の共振曲線上のc点に移行する。
【0022】
制御回路4内のタイマー回路10で制御される始動モード時間が終わると、定常点灯状態に移行する。すなわち、周波数制御回路5は始動モードが終わると、動作周波数をfst0からffull0に変化させ、負荷点灯時の共振曲線上のd点に移行する。
【0023】
ここで、上記共振曲線はインダクタL1、コンデンサC1等の共振回路の部品ばらつきにより、制御回路4の動作周波数とは独立して変動する。
【0024】
例えば、図5(b)のように、部品ばらつきにより固有振動周波数f0が高くなった場合、周波数制御回路5が上記の予熱周波数fph0でスイッチング素子Q1、Q2を動作させると、max_start点で動作することとなる。そうすると、フィラメントft1、ft2への予熱電流が過剰になったり、放電灯に印加される電圧が高くなり、予熱モードの終了前に点灯したりと、放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0025】
そこで、本実施の形態では、インダクタL1、コンデンサC1の接続点の電圧を検出し、所定の予熱状態が得られるように周波数補正回路8を動作させ、動作周波数を△f上昇させ、無負荷時共振の特性曲線上のa’点、fph1へと予熱周波数をシフトさせるように制御する。予熱モードが終わると、始動モードでの周波数を初期設定のfst0から上記△fの所定倍(n×△f)高く補正し、fst1で動作させる。始動モードが終わると、点灯モードでの周波数を初期設定のffull0から上記△fの所定倍(m×△f)高く補正し、負荷点灯時の共振曲線上のd’点、ffull1で動作する。
【0026】
以上のように、本実施の形態では、予熱時のランプ両端間電圧を検出し、その検出電圧に従い、予熱時の動作周波数を補正するとともに、上記予熱時の周波数補正条件(Δf)を所定の相関関係(n倍、m倍)で始動モード、点灯モードへ反映させることにより、予熱、始動、点灯全てのモードにおいて目標とする所定の特性範囲内にてインバータ回路1を動作させることが出来る。
【0027】
また、上記とは逆に図5(c)のように、部品ばらつきにより固有振動周波数f0が低くなった場合、周波数制御回路5が初期設定の予熱周波数fph0でスイッチング素子Q1、Q2を動作させると、min_start点で動作することとなる。そうすると、フィラメントft1、ft2への予熱電流が少なくなり、放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0028】
そこで本実施の形態では、インダクタL1、コンデンサC1の接続点の電圧を検出し、所定の予熱状態が得られるように周波数補正回路8を動作させ、動作周波数を△f下降させ、無負荷時共振の特性曲線上のa’点、fph2へと予熱周波数をシフトさせるように制御する。
【0029】
予熱モードが終わると、始動モードでの周波数を初期設定のfst0から上記△fの所定倍(o×△f)低く補正し、fst2で動作させる。本ばらつき条件で初期のfst0で動作させた場合、共振回路の電圧が低く、放電灯を放電開始させるための十分な電圧が得られず、始動不良を起こしたり、また、始動不良を防ぐための始動モード固有の調整手段を必要としていたが、この周波数補正により、そのような手段を用いず始動性能を満足することが出来た。
【0030】
始動モードが終わると、点灯モードでの周波数を初期設定のffull0から上記△fの所定倍(p×△f)低く補正し、負荷点灯時の共振曲線上のd’点、ffu112で動作させる。
【0031】
なお、予熱時の周波数補正条件(Δf)を始動モード、点灯モードへ反映させる相関係数は、固有振動周波数f0の増加時と減少時とで同じ(n=o、m=p)に設定しても良いし、始動モードと点灯モードとで同じ(n=o=m=p)に設定しても良い。また、予熱モードと同じ(n=o=m=p=1)に設定しても良い。もちろん、これらの相関係数n,m,o,pはそれぞれ異なる最適な値に設定しても良い。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、予熱時のランプ両端間電圧を検出し、その検出電圧に従い予熱時の動作周波数を補正するとともに、上記予熱時の周波数補正条件を始動モード、点灯モードへ反映させることにより、予熱、始動、点灯全てのモードにおいて、目標とする所定の特性範囲内にてインバータ回路1を動作させることが出来る。
【0033】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2に係る放電灯点灯装置DLAの回路図である。以下、その回路構成について説明する。商用の交流電源Vsには、交流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路CVが接続されている。この電源回路CVの出力端にはインバータ回路1が接続されている。インバータ回路1は高周波で交互にオン/オフ駆動される一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えている。インバータ回路1の出力端にはインバータ負荷回路ILが接続されている。インバータ負荷回路ILは、LC直列共振回路を構成する共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1、及び直流カット用コンデンサC2、放電灯負荷LAで構成されている。
【0034】
共振用インダクタL1には補助巻線が設けてあり、コンデンサC4、C5を介してそれぞれ放電灯フィラメントft1、ft2に接続された予熱回路3が構成され、補助巻線に発生する電圧によりフィラメントft1、ft2の予熱が行われる。
【0035】
インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2には制御回路4が接続されている。制御回路4は、スイッチング素子Q1、Q2を駆動するドライブ回路6と、インバータ回路1の動作周波数を制御する周波数制御回路5と、予熱モード、始動モード、点灯モード等のインバータ回路1の動作モードの切り替え、及び、各モードの時間を制御するタイマー回路10と、インダクタL1の発生電圧を検出して制御回路4の制御に帰還する帰還回路(共振電圧検出回路7b)と、共振電圧検出回路7bの検出電位を受けてインバータ回路1の動作周波数を適切な周波数とするために周波数制御回路5に周波数補正のための信号を伝達する周波数補正回路8と、周波数補正回路8による予熱時の周波数補正状態を記憶しておいて、予熱時以降のモードへその補正状態を伝達するべく周波数制御回路5に信号を出力する予熱時補正状態記憶回路9とを備えている。なお、図示された回路例では、共振電圧検出回路7bは、インダクタL1の補助巻線からインダクタL1の発生電圧を検出しているが、共振電圧の検出箇所は図示された箇所に限定されるものではない。
【0036】
本回路の動作について以下に説明する。交流電源Vsが入力されると、インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2は制御回路4の周波数制御回路5により第1の動作周波数(予熱周波数fph0)にて制御され、交互にオン、オフを繰り返す。スイッチング素子Q1、Q2の接続点は上記オン/オフにより矩形波の高周波発振電圧となり、インバータ負荷回路ILに入力される。矩形波の高周波発振電圧は直流カット用コンデンサC2を介し、共振用インダクタL1、共振用コンデンサC1、および放電灯フィラメントft1、ft2を含めた直列接続回路の両端に印加される。
【0037】
上記共振回路2の出力電圧Vo2の周波数特性は図6(a)のようになっており、上記予熱周波数fph0での動作時は放電灯負荷点灯前の無負荷共振時の特性曲線上のa点で動作する。fph0での動作時に、LC直列共振によりインダクタL1に発生した電圧は補助巻線からコンデンサC4、C5を介しそれぞれフィラメントft1、ft2に電力を供給し、フィラメントft1、ft2が予熱(放電灯点灯前にフィラメントを暖める)される。
【0038】
制御回路4内のタイマー回路10で制御される予熱モード時間が終わると、放電灯を点灯させる始動モードに移行する。すなわち、周波数制御回路5は予熱モード時間が終わると、周波数をfph0からfst0に変化させ、無負荷共振時の特性曲線上のb点での動作に移行する。a点からb点への電圧上昇により放電灯に放電可能となる電圧が印加され、放電灯が点灯する。放電灯が点灯すると、インダクタL1、コンデンサC1に放電灯負荷インピーダンスが加わり、無負荷共振時の特性曲線上のb点から負荷点灯時の共振曲線上のc点に移行する。
【0039】
制御回路4内のタイマー回路10で制御される始動モード時間が終わると、定常点灯状態に移行する。すなわち、周波数制御回路5は始動モードが終わると、周波数をfst0からffull0に変化させ、負荷点灯時の共振曲線上のd点に移行する。
【0040】
ここで上記共振曲線は、インダクタL1、コンデンサC1等の共振回路部の部品ばらつきにより制御回路4の動作周波数とは独立して変動する。
【0041】
例えば図6(b)のように、部品ばらつきにより固有振動周波数f0が高くなった場合、周波数制御回路がfph0でスイッチング素子Q1、Q2を動作させると、max_start点で動作することとなる。そうすると、フィラメントft1、ft2への予熱電流が過剰になったり、放電灯に印加される電圧が高くなり、予熱モード終了前に点灯したりと、放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0042】
そこで、本実施の形態では共振用インダクタL1の補助巻線から共振電圧を検出し、所定の予熱状態が得られるよう周波数補正回路8を動作させ、動作周波数を△f上昇させ、図a’点、fph1へと予熱周波数をシフトさせるように制御する。
【0043】
予熱モードが終わると、始動モードでの周波数を初期設定のfst0から予熱時と同様に△f高く補正し、図c’点、fst1で動作する。
【0044】
始動モードが終わると、点灯モードでの周波数を初期設定のffull0から上記△f高く補正し、図d’点、ffull1で動作する。
【0045】
以上のように、本実施の形態では予熱時の共振電圧を検出し、その検出電圧に従い、予熱時の動作周波数を補正するとともに、上記予熱時の周波数補正条件を始動モード、点灯モードへ反映させることにより、予熱、始動、点灯全てのモードにおいて目標とする所定の特性範囲内にてインバータ回路1を動作させることが出来る。
【0046】
また、上記とは逆に、図6(c)のように、部品ばらつきにより固有振動周波数f0が低くなった場合、周波数制御回路5がfph0でスイッチング素子Q1、Q2を動作させると、min_start点で動作することとなる。そうすると、フィラメントft1、ft2への予熱電流が少なくなり、放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0047】
そこで、本実施例では、共振用インダクタL1の補助巻線から共振電圧を検出し、所定の予熱状態が得られるように周波数補正回路8を動作させ、動作周波数を△f下降させ、図a’点、fph2へと制御する。
【0048】
予熱モードが終わると、始動モードでの周波数を初期設定のfst0から予熱時と同様に△f低く補正し、図c’点、fst2で動作する。
【0049】
本ばらつき条件において、初期設定のfst0で動作させた場合、共振回路の電圧が低く、放電灯を放電開始させるための十分な電圧が得られず、始動不良を起こしたり、また、始動不良を防ぐための始動モード固有の調整手段を必要としていたが、上記の周波数補正により、そのような手段を用いずに始動性能を満足することが出来た。
【0050】
始動モードが終わると点灯モードでの周波数を初期設定のffull0から上記と同様に△f低く補正し、図d’点、ffull2で動作する。
【0051】
以上のように本実施の形態では、予熱時の共振電圧を検出し、その検出電圧に従い予熱時の動作周波数を補正するとともに、上記予熱時の周波数補正条件を始動モード、点灯モードへ反映させることにより、予熱、始動、点灯全てのモードにおいて目標とする所定の特性範囲内にてインバータ回路1を動作させることが出来る。
【0052】
(実施の形態3)
図3は本発明の実施の形態3に係る放電灯点灯装置DLAの回路図である。以下、その回路構成について説明する。商用の交流電源Vsには、交流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路CVが接続されている。この電源回路CVの出力端にはインバータ回路1が接続されている。インバータ回路1は高周波で交互にオン/オフ駆動される一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えている。インバータ回路1の出力端にはインバータ負荷回路ILが接続されている。インバータ負荷回路ILは、LC直列共振回路を構成する共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1、及び直流カット用コンデンサC2、放電灯負荷LA1、LA2で構成されている。また、電源回路CVのスイッチング素子Q3を高周波でオン/オフ駆動制御する制御回路CVCCと、インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2を高周波でオン/オフ駆動制御する制御回路4を備えている。その制御回路4は、インバータ負荷回路ILの放電灯負荷電圧Vlaを検出してインバータ周波数制御回路IVDRに帰還する帰還回路を含んだ構成である。さらに、放電灯点灯装置DLAの回路グランドGndはコンデンサC18を介して対地アースE/Gに接続されている。
【0053】
次に、この放電灯点灯装置DLAについて、構成回路をブロック毎に簡単に説明する。
1)電源回路CV
商用電源Vsからの交流電圧は、電流ヒューズFuseを介してフィルタ回路FIの入力端に供給されている。電流ヒューズFuseは、放電灯点灯装置DLA内の故障等による電源短絡時に直ちに交流電源Vsから回路を遮断するものである。フィルタ回路FIはコンデンサCf、コモン(ノーマル)モードフィルタLFよりなり、後段のチョッパ回路の入力電流の高周波成分を除去するものである。フィルタ回路FIの入力端には、サージ電圧を吸収するサージ電圧吸収素子ZNRが並列接続されている。
【0054】
フィルタ回路FIの出力端には、交流電圧を全波整流する整流器DBの入力が接続され、整流器DBの出力には突入電流抑制回路ICCを介して昇圧チョッパ回路UVCが接続されている。昇圧チョッパ回路UVCのスイッチング素子Q3には、そのスイッチング素子Q3を高周波でオン/オフ駆動制御する制御回路CVCCが接続されている。
【0055】
昇圧チョッパ回路UVCは、整流器DBの+出力端の脈流電圧を突入電流抑制回路ICCを介して入力している。コンデンサC8は小容量のコンデンサであり、その端子電圧は脈流電圧となる。コンデンサC8の一端にインダクタL2の一次巻線n1の一端が接続され、インダクタL2の一次巻線n1の他端にはスイッチング素子Q3のドレイン端子とダイオードD1の陽極が接続される。スイッチング素子Q3のソース端子には電流検出抵抗R2が接続され、ダイオードD1の陰極には平滑用のコンデンサC0が接続され、コンデンサC8,抵抗R2,コンデンサC0の他端及び整流器DBの−出力端が回路グランドGndに接続されて、コンデンサC0に発生する平滑電圧Vdcを出力するように構成されている。
【0056】
チョッパ制御回路CVCCは、制御回路IC1として、汎用のチョッパ制御用ICであるモトローラ社製のMC33262を用いたものであり、その構成は周知であるので、ここでは詳しい説明は省略し、制御回路IC1に対する外付け部品の構成を以下に簡単に説明する。
【0057】
制御回路IC1の1番ピン(出力電圧帰還端子)には、平滑用のコンデンサC0に並列接続された抵抗R14と可変抵抗VR1の直列回路によって平滑出力電圧Vdcを分圧した電圧が入力される。2番ピン(誤差アンプ出力/補償端子)とグランド間には抵抗R10とコンデンサC11の並列回路が接続される。3番ピン(マルチプライヤ入力端子)にはチョッパ入力電圧(コンデンサC8の両端電圧)の脈流電圧を抵抗R7,R8によって分圧した電圧が入力される。4番ピン(電流センス入力端子)にはスイッチング素子Q3に流れる電流を検出するために、抵抗R2で得られた電圧が抵抗R13を介して入力される。3番ピン,4番ピンとグランド間に接続されたコンデンサC10,C12は、ノイズ除去用の小容量のコンデンサである。5番ピン(ゼロ電流検出入力端子)にはインダクタL2を流れる電流のゼロクロス点を検出するために、インダクタL2の二次巻線n2の出力が抵抗R9を介して入力される。6番ピン(グランド端子)は回路グランドGndに接続される。7番ピン(出力端子)は、スイッチング素子Q3を駆動するために、抵抗R11、R12を介してスイッチング素子Q3のゲート端子に接続されている。8番ピン(電源電圧端子)には制御回路CCの電源用として、抵抗R3,R4にて分圧された電圧Vccが、コンデンサC9及びツェナーダイオードZD1で平滑されて入力される。
【0058】
以上のように構成することにより、制御回路IC1は昇圧チョッパ回路UVCの入力電圧(脈流電圧)を3番ピンの入力に基づいて検出し、昇圧チョッパ回路UVCからの平滑出力電圧を1番ピンの入力に基づいて検出し、スイッチング素子Q3に流れる電流を4番ピンの入力に基づいて検出し、更にインダクタL2に流れる電流を5番ピンの入力に基づいて検出しながら、スイッチング素子Q3の駆動制御を行なうことができる。
【0059】
次に、突入電流抑制回路ICCについて説明する。突入電流抑制回路ICCは、PTCサーミスタPTHとサイリスタQ4が並列に接続され、サイリスタQ4のゲート・陰極間には、インダクタL2の二次巻線n3と抵抗R6とダイオードD2の直列回路と、抵抗R5とコンデンサC7が並列に接続されて構成される。突入電流抑制回路ICCの動作は、昇圧チョッパ回路UVCの動作時はインダクタL2の二次巻線n3に電圧が発生するため、サイリスタQ4がオンし、サイリスタQ4を通じて昇圧チョッパ回路UVCに電流供給が行なわれ、昇圧チョッパ回路UVCの不動作時はインダクタL2の二次巻線n3に電圧が殆ど発生しないため、サイリスタQ4がオフし、PTCサーミスタPTHを通じて昇圧チョッパ回路UVCに電流供給が行なわれる。
【0060】
つまり、電源投入時は昇圧チョッパ回路UVCが不動作のため、PTCサーミスタPTHによって突入電流が抑制され、定常時には昇圧チョッパ回路UVCが動作するため、サイリスタQ4にてPTCサーミスタPTHが短絡されて、PTCサーミスタによるロスは発生しないという回路動作となる。
【0061】
2)インバータ回路1
インバータ回路1は、電源回路CVの出力端(コンデンサC0の平滑出力電圧Vdc)を入力とし、スイッチング素子Q1,Q2と検出抵抗R1の直列回路を接続したものである。電源回路CVの正出力端には、スイッチング素子Q1のドレイン端子が接続され、そのスイッチング素子Q1のソース端子にはスイッチング素子Q2のドレイン端子が接続され、さらにそのスイッチング素子Q2のソース端子には帰還回路FBC2の検出抵抗R1が接続されて、その抵抗R1は回路グランドGndへと接続されている。そして、スイッチング素子Q1,Q2の各ゲート端子及びインバータ回路1の出力端Vmは、制御回路IVCCへ接続される。
【0062】
制御回路IVCCは、インバータ駆動回路IVDRとタイマー回路TIM及びそれらの周辺部品で構成される。
以下に、インバータ駆動回路IVDRとタイマー回路TIMについて、それらの周辺部品の構成及び動作の説明を行なう。
【0063】
インバータ駆動回路IVDRの1番ピン(発振器用抵抗接続端子)とグランド間には、抵抗R27と、スイッチSW2と抵抗R23の直列回路と、スイッチSW1と抵抗R24の直列回路との並列回路が接続されている。2番ピン(発振器用コンデンサ接続端子)とグランド間にはコンデンサC15が接続され、3番ピン(グランド端子)は回路グランドGndに接続され、4番ピン(電源電圧端子)には制御回路IC1の電源用として、上述の制御電源電圧Vccが入力される。5番ピン(高圧側駆動用基準電圧端子)にはインバータ出力電圧Vmが接続されている。6番ピン(高圧側駆動用電源端子)には、コンデンサC14が5番ピンとの間に接続され、ダイオードD5の陰極が6番ピンヘ、同陽極が制御電源Vccへと接続される。7番ピン(高圧側駆動電圧出力端子)は抵抗R15,R16を介してスイッチング素子Q1のゲート端子へ、8番ピン(低圧側駆動電圧出力端子)は抵抗R17,R18を介してスイッチング素子Q2へ、それぞれ接続される。
【0064】
インバータ駆動回路IVDRの動作は、電源投入後、制御電源電圧Vccがインバータ駆動回路IVDRの動作開始電圧に達すると、1,2番ピンに接続されている抵抗値と容量値によって決まる周波数にて、7,8番ピンに交互に駆動電圧を発生させることで、2つのスイッチング素子Q1,Q2を交互にオン/オフさせるものである。
【0065】
次に、タイマー回路TIMの1番ピン(発振器用抵抗接続端子)とグランド間には、抵抗R25が接続され、2番ピン(発振器用コンデンサ接続端子)とグランド間にはコンデンサC16が接続され、3番ピン(グランド端子)は回路グランドGndに接続され、4番ピン(電源電圧端子)には制御回路CCの電源用として、上述の制御電源電圧Vccが入力される。5,6,7番の各出力ピンには、夫々スイッチSW1,SW2,SW3が接続されている。
【0066】
タイマー回路TIMの動作は、電源投入後、制御電源電圧VccがICの動作開始電圧に達すると、1,2番ピンに接続されている抵抗値と容量値によって決まる時間経過後にスイッチSW1〜SW3のオン/オフを決めるものである。具体的には図7に示すシーケンスでスイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態が変化する。つまり、インバータ制御回路IVCCの動作は、図7で示されるように予熱モード(周波数fph)、始動モード(周波数fst)、点灯モード(周波数ffull)と段階的に周波数を変化させながら、インバータ回路1を駆動するものである。
【0067】
次に、帰還回路FBC1、FBC2の構成及び動作を説明する。インバータ駆動回路IVDRの1番端子には予熱モード、始動モード、点灯モードのすべてのモードに帰還動作を反映させる帰還回路FBC1と、点灯モード時のみに帰還動作させる帰還回路FBC2が接続されている。
【0068】
まず、帰還回路FBC1は、インバータ駆動回路IVDRの1番端子から抵抗R32を介してスイッチSW4がグランド間に接続されている。スイッチSW4にはRSフリップフロップの出力信号Qが接続され、RSフリップフロップのセット入力SにHigh信号が入力されると、RSフリップフロップの出力QがLowからHighに反転し、スイッチSW4がオンする。RSフリップフロップのリセット入力RにHigh信号が入力されると、Q出力がHighからLowに反転し、スイッチSW4がオフする。RSフリップフロップのセット入力Sにはアンド回路AND1の出力端子が接続され、アンド回路AND1の入力にはタイマー回路TIMの5番出力端子と制御電源電圧Vccから抵抗R28によりプルアップされたコンパレータComp1の出力端子が接続され、タイマー回路TIMの5番端子及びコンパレータComp1の出力端子がともにHighとなることにより、アンド回路AND1の出力からHigh信号がRSフリップフロップのセット入力Sに入力される。コンパレータComp1の+入力端子には、ランプLA1の一端からダイオードD8を介して検出されるランプ電圧検出電位を抵抗R31とR30で分圧し、コンデンサC17で平滑した電位が入力され、また、コンパレータComp1の−入力端子には、制御電源電圧Vccを抵抗R33、R34で分圧したしきい値電圧が入力され、ランプ電圧検出電位が−端子電位>+端子電位となった場合に、コンパレータComp1の出力からHigh信号が出力される。
【0069】
このように、タイマー回路TIMの5番端子がHighとなる予熱モードにおいて、ランプ電圧検出電位が所定のしきい値より高い場合にRSフリップフロップの出力QがHighとなり、スイッチSW4がオンし、インバータ駆動回路IVDRの1番端子に接続された抵抗R27に抵抗R32が並列接続されることとなり、その結果、インバータ駆動回路IVDRで制御されるインバータ回路1の発振周波数が高く補正される。この補正動作はRSフリップフロップのリセット信号が入るまで、つまり、タイマー回路TIMの9番端子からの初期リセット信号が入るまでは継続される。
【0070】
次に、帰還回路FBC2はオペアンプOP1を用いたフィードバック回路であり、オペアンプOP1は制御電源電圧Vccを電源として動作する。オペアンプOP1の+側入力端子には、制御電源電圧Vccを抵抗R19と可変抵抗VR3により分圧した基準電圧が入力され、−側入力端子には、インバータ回路1のスイッチング素子Q2の電流を検出する抵抗R1の両端電圧が抵抗R20を介して入力される。オペアンプOP1の出力端子には、−側入力端子との間に抵抗R21とコンデンサC13とが並列に接続され、インバータ駆動回路IVDRの1番ピンとの間にダイオードD6、抵抗R22及びスイッチSW3が接続されている。
【0071】
帰還回路FBC2の動作は、インバータ負荷回路ILの共振電流を、インバータ回路1のスイッチング素子Q2に流れる電流を検出する抵抗R1によって電圧変換し、この電圧が抵抗R20を介してオペアンプOP1の−側入力端子に入力される。このオペアンプOP1の−側入力端子に現れる電圧と、オペアンプOP1の+側入力端子に印加される基準電圧とを比較して、双方の電圧が略等しくなるようにインバータ回路1の動作周波数を可変させる働きを持つ。
【0072】
ここで、オペアンプOP1の−側入力端子に現れる電圧は、インバータ負荷回路ILの消費電力にほぼ正比例で変化する。そして、インバータ負荷回路ILの消費電力の大半は、放電灯負荷LA1、LA2の出力電力が占めている。つまり、帰還回路FBC2は、放電灯負荷LA1、LA2の出力電力を略一定にするように、インバータ回路1の動作周波数を可変させる、即ち定電力制御を行なうものである。
【0073】
帰還回路FBC2の動作を、図7を参照して説明すると、タイマー回路TIMのスイッチSW3によって予熱及び始動モードでは帰還回路FBC2は動作せず、点灯モードにおいては放電灯負荷LA1、LA2の種類によって、ffull〜ffullminの間で放電灯負荷LAの出力電力を略一定にするように、インバータ回路1の動作周波数を可変させる動作を行なう。
【0074】
3)インバータ負荷回路IL
インバータ負荷回路ILは、インバータ回路1の出力であるVm−Gnd間に接続され、放電灯負荷LA1、LA2に電力供給する二重共振回路2と、放電灯フィラメントft1,ft2,ft3,ft4を予熱する予熱回路3によって構成される。
【0075】
二重共振回路2は、インバータ回路1の出力であるVm−Gnd間に、共振用インダクタL1の一次巻線n1と、共振用コンデンサC1が直列に接続され、コンデンサC1の両端に、放電灯負荷LA1、LA2と共振兼直流阻止用コンデンサC2が直列に接続して構成されている。コンデンサC6はシーケンスコンデンサである。
【0076】
予熱回路3は、共振用インダクタL1の二次巻線n2,n3に対し、それぞれコンデンサC3,C4を介して放電灯フィラメントft1,ft4を接続すると共に、二次巻線n4に対し、コンデンサC5を介して放電灯フィラメントft2,ft3を接続して構成されている。
【0077】
なお、インバータ回路1が発振動作を開始した後は、共振用インダクタL1の二次巻線n5に生じる電圧を抵抗R26、ダイオードD7を介してコンデンサC9に供給し、効率良く制御電源電圧Vccを確保している。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態によれば、予熱時のランプ電圧を検出し、その検出電圧により予熱時のインバータ回路の動作周波数を補正するとともに、その補正状態を予熱モード以降の始動モード、点灯モードにも伝達し、且つまた、点灯時の共振電流をフィードバックして補正する手段を併せ持つことにより、回路を構成する部品のばらつきや、点灯するランプのばらつきに対しても、また、ランプの種類が変化した際においても確実にランプを始動させることはもちろんのこと、ランプフィラメントへのダメージや回路部品へのストレスを比較的小さく抑えることのできる信頼性の高い放電灯点灯装置を提供することができる。
【0079】
また、特性補正手段としてインバータの電圧源となる平滑出力電圧Vdcを変化させることによっても同様の効果が得られる。平滑出力電圧Vdcの制御手段としては、チョッパ制御用のIC1の1番ピン(出力電圧帰還端子)を用いて行うことができる。その場合、予熱時の特性補正は平滑出力電圧Vdcを補正することで行なわれる。また、その特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段は、予熱時における平滑出力電圧Vdcの補正量と、始動モードまたは点灯モードにおける平滑出力電圧Vdcの補正量との間に所定の相関関係を持たせることで、予熱時の特性補正を始動時または点灯時に反映させれば良い。
【0080】
(実施の形態4)
図4は本発明の実施の形態4に係る放電灯点灯装置DLAの回路図である。以下、その回路構成について説明する。商用の交流電源Vsには、交流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路CVが接続されている。この電源回路CVの出力端にはインバータ回路1が接続されている。インバータ回路1は高周波で交互にオン/オフ駆動される一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えている。そのインバータ回路1の出力側には放電灯LAを負荷とする共振回路2と、放電灯LAのフィラメントft1,ft2に予熱電流を供給するための予熱回路3が接続されている。共振回路2は、共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1、及び共振兼直流阻止用コンデンサC2、放電灯負荷LAで構成される。予熱回路3は、直流カット用コンデンサCtと予熱トランスT1とスイッチSWの直列接続回路により構成され、予熱トランスT1の二次巻線n2、n3にはそれぞれコンデンサC4、C5を介してランプフィラメントft1、ft2が接続されている。
【0081】
インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2には制御回路4の出力が接続されている。制御回路4は、スイッチング素子Q1、Q2を駆動するドライブ回路6と、動作周波数を制御する周波数制御回路5と、予熱モード、始動モード、点灯モード等のインバータ回路1の動作モードの切り替え及び各モードの時間を制御するタイマー回路10と、予熱電流及びランプ電圧を検出する帰還回路7と、帰還回路7の検出出力を周波数制御回路5やタイマー回路10の制御に反映させるマイクロコンピュータとを備えている。帰還回路7は、インバータ負荷回路ILのインダクタL1と放電灯フィラメントft1の接続部の電位、つまりランプ電圧を検出して制御回路4の制御に帰還するランプ電圧検出回路7aと、予熱トランスT1の補助巻線n4の電圧を制御回路4の制御に帰還する予熱電流検出回路7cよりなる。マイクロコンピュータは周波数補正制御部8、予熱時補正状態記憶回路9及び予熱時間補正制御部11を含んで構成されている。周波数補正制御部8は、帰還回路7の検出電位を受けて、インバータ回路1の動作周波数を適切な周波数とするために、周波数制御回路5に周波数補正のための信号を与える。また、予熱時間補正制御部11は、帰還回路7の検出電位を受けて、予熱時間補正のための信号をタイマー回路10へ伝達する。さらに、予熱時補正状態記憶回路9は予熱時の周波数補正状態を記憶し、予熱モード以降の始動モードや点灯モードへその補正状態を伝達し、周波数制御回路5の制御に反映させる。
【0082】
本回路動作について、ランプ電圧検出による周波数補正動作については実施の形態1と同様のため、詳細な説明は省略し、異なる予熱電流検出によるフィードバック制御及び予熱時間の補正について説明する。
【0083】
本実施の形態においては、放電灯LAを負荷とする共振回路2と放電灯LAのフィラメントft1,ft2を予熱するための予熱回路3は独立しており、実施の形態1〜3と同様の予熱時のランプ電圧や共振回路2の出力電圧Vo2による補正では、予熱時の放電灯LAに印加される電圧や、始動モードの放電灯LAに印加する始動電圧レベルの補正はできるが、予熱時の予熱電流のばらつき補正はできないことになる。例として実施の形態1で説明したばらつき条件1に予熱電流特性カーブを重ね合わせたものを図8に示し説明する。予熱時の電圧検出による周波数補正により、予熱周波数はfph0からfph1に移行し、予熱電流はIph0からIph1に移行する。
【0084】
放電灯の予熱時に必要とされる予熱条件は、予熱電流と予熱時間により規定される。例えばFHF32においてはJIS C7617にて予熱時間tpが以下のように規定されている。
・最小予熱電流ik=(a/tp+im)
[a=0.2(As),im=0.25(A)]
・最大予熱電流IK=(A/tp+IM)
[A=0.960(As),IM=0.40(A)]
【0085】
本規定式により得られる適正領域を図9に示し、補正動作について説明する。例えば初期の予熱時間設定1.5秒において、先に述べた予熱時の周波数補正により予熱特性がIph0からIph1に移行したときに、図9に示すように、Iph1が適正領域外となる場合が考えられる。その際、タイマー回路10により制御される予熱時間を1.5秒から1.0秒に補正することにより適正領域内とすることができる。
【0086】
以上、予熱時の共振回路2の出力電圧検出と予熱回路3の予熱電流検出とを組み合わせ、周波数制御回路5及びタイマー回路10に補正制御を行うことにより、回路構成部品のばらつきや、放電灯負荷のばらつきが生じた際においても、ボリューム抵抗での調整等、外部からの調整手段を用いることなく、予熱モード時の適切な予熱電流の供給が可能となり、また、予熱時にコールドスタート(フィラメントの予熱が不十分な状態で放電を開始すること)の無い共振電圧制御、始動モード時の放電灯点灯開始に必要となる所定の始動電圧供給、および点灯モード時の所定の放電灯出力を満たす放電灯点灯装置を提供することができる。
【0087】
(実施の形態5)
上述の実施の形態1〜4で説明したような放電灯点灯装置を搭載した照明器具の一例を図10に示す。図10は2灯の放電灯LA1,LA2を点灯可能な2灯用照明器具の斜視図である。図中、S1〜S4はソケットであり、反射板R、ランプLA1、LA2を備えて構成される。器具の内部には、放電灯点灯装置として、図3のような2灯用の放電灯点灯装置1台、あるいは図1、図2、図4のような1灯用の放電灯点灯装置2台を搭載している。
【0088】
例えば、FHF32、FL40S、FL40SS/37、FLR40S、FLR40S/36の5種類の放電灯は、同一の管長(1198mm)で且つ、同一の口金寸法(G13形)であるため、図10に示した1種類の照明器具にて共用可能である。放電灯のばらつき、種類の違いは実施形態1〜4に示した帰還回路FBC1,FBC2により自動的に補正されるため、照明器具ユーザーは放電灯の種類を気にすることなく使用可能となり、またユーザーの嗜好(放電灯コスト、デザイン、光出力など)に合わせて放電灯の選択も可能となる。
【0089】
(実施の形態6)
上述の実施の形態5に記載した照明器具複数台を制御装置にて一括制御する照明システムの一例を図11に示した。実施の形態5に記載した照明器具A〜Lの12台が人体感知センサー、及びプログラム制御可能なシステムを備えた制御装置Sに接続されている。本実施形態においては、A〜Iにランプ負荷としてFHF32を装着し、外光の入る窓側のJ〜Lには光束はFHF32より低いがコストの安いFLR40/36を装着している。制御装置Sの特徴として人体感知センサーにより人を感知すると放電灯が点灯し、人が不在となると消灯する機能や、負荷の装着状況の入力、任意の照明器具の点灯、消灯条件の設定が可能であるプログラム制御機能を有しており、実施形態5に示した照明器具と組み合わせることにより、放電灯始動時の点灯ばらつきを抑えるとともに、回路特性の影響によるランプ寿命のばらつきを抑え、ランプの長寿命化と交換の利便性がはかれる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を示すブロック回路図である。
【図2】本発明の実施の形態2の構成を示すブロック回路図である。
【図3】本発明の実施の形態3の詳細な構成を示す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態4の構成を示すブロック回路図である。
【図5】本発明の実施の形態1の動作説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2の動作説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3の動作説明図である。
【図8】本発明の実施の形態4の動作説明図である。
【図9】本発明の実施の形態4の動作説明図である。
【図10】放電灯点灯装置を搭載した照明器具の一例を示す斜視図である。
【図11】照明器具複数台を制御装置にて一括制御する照明システムの一例を示す説明図である。
【図12】従来の放電灯点灯装置の構成を示すブロック回路図である。
【図13】図12の回路の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図14】図12の回路の共振特性を示す図である。
【図15】図12の回路の共振特性を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 インバータ回路
2 共振回路
3 予熱回路
4 制御回路
5 周波数制御回路
6 ドライブ回路
7 帰還回路
7a ランプ電圧検出回路
7b 共振電圧検出回路
7c 予熱電流検出回路
8 周波数補正回路
9 予熱時補正状態記憶回路
10 タイマー回路
LA 放電灯
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を高周波電力に変換して放電灯に供給するインバータ回路を用いた放電灯点灯装置及びこれを用いた照明器具、照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12は従来技術(特開平11−135280号公報)を示す回路ブロック図である。交流電源Vsにダイオードブリッジから成る全波整流器DBが接続され、全波整流器DBの直流出力端子には平滑用のコンデンサCoを介してインバータ回路1が並列に接続されている。このインバータ回路1の出力端には、共振回路2と予熱回路3が並列接続され、インバータ回路1から出力される高周波電圧Voが両者に印加される。また、インバータ回路1の発振周波数(動作周波数)は制御回路4によって制御される。この制御回路4は、インバータ回路1が具備する1乃至複数のスイッチング素子のオン・オフのタイミングを設定して上記動作周波数を制御する周波数制御回路5と、この周波数制御回路5からの信号を受けてインバータ回路1のスイッチング素子を駆動するドライブ回路6と、放電灯Laのフィラメントに流れる予熱電流レベルを検出する予熱電流検出回路7cとを備え、予熱電流検出回路7cにより共振回路2又は予熱回路3に流れる電流から予熱電流レベルを検出し、周波数制御回路5へフィードバックしている。
【0003】
共振回路2は、インダクタL1とコンデンサC2の直列共振回路を有し、コンデンサC2の両端に放電灯Laのフィラメントの一端f2,f4が接続されており、インバータ回路1から供給される高周波電圧Voに対して遅れた位相の電流I1が流れるようにインダクタL1のインダクタンス値とコンデンサC2の容量とが設定されている。
【0004】
一方、予熱回路3はインダクタL2とコンデンサC4との直列共振回路から成り、インダクタL2に設けられた補助巻線n1,n2がそれぞれ放電灯Laのフィラメントの両端f1−f2間、f3−f4間に接続されており、インバータ回路1から供給される高周波電圧Voに対して進んだ位相の電流I2が流れるようにインダクタL2のインダクタンス値とコンデンサC4の容量とが設定されている。
【0005】
この従来例は、制御回路4によりインバータ回路1を制御して高周波電圧Voを共振回路2及び予熱回路3に印加し、放電灯Laの予熱から始動及び点灯維持(定常点灯)を行なうものである。ところが、予熱回路3から放電灯Laのフィラメントに供給される予熱電流Iphは、予熱回路3を構成するインダクタL2やコンデンサC4の部品ばらつきにより、図14の曲線A〜Cに示すように、その共振特性にもばらつきが生じることになる。このような共振特性のばらつきに対して常に一定以上の予熱電流が確保できるようにしている。
【0006】
一定以上の予熱電流を確保するための動作について、図13〜図15を参照して説明する。図13は本従来例における制御回路4の制御動作のタイムチャートを示している。まず、時刻t=t0で交流電源Vsが投入されて制御回路4が動作を開始すると、周波数制御回路5は、予熱回路3の共振周波数がインダクタL2及びコンデンサC4のばらつきにより最も高くなる周波数(図14におけるf3)よりも高い第1の予熱周波数fph1でインバータ回路1の動作を開始させる。
【0007】
そして、周波数制御回路5は、時刻t=t0〜t1の期間に予熱電流検出回路7cによって予熱電流を検出しながら、図15に示すように、予熱電流が所定レベルIph0を越える第2の予熱周波数fph2までインバータ回路1の動作周波数fを徐々に変化させる(低くする)。ここで、予熱電流が所定レベルIph0を越える第2の予熱周波数fph2は、図15に示すように、インダクタL2及びコンデンサC4によって異なり、曲線Aで表される共振特性の場合をfph2(a)、曲線Bで表される共振特性の場合をfph2(b)、曲線Cで表される共振特性の場合をfph2(c)で表すことにする。
【0008】
周波数制御回路5は、予熱電流検出回路7cで検出されるレベルが上記所定レベルIph0を越えた時点でインバータ回路1の動作周波数fを第2の予熱周波数fph2(a)又はfph2(b)又はfph2(c)に固定し、所定の予熱期間(図13における時刻t=t1〜t2)だけ放電灯Laのフィラメントを予熱する。
【0009】
そして、周波数制御回路5が、動作周波数fを第2の予熱周波数fph2(a)又はfph2(b)又はfph2(c)から始動に必要な高電圧が得られる始動周波数fstにまで低下させ、時刻t=t2〜t3の間(始動期間)だけ始動周波数fstに固定する。この動作モードを始動モードと呼ぶ。
【0010】
その結果、放電灯Laが始動した後(時刻t=t3以降)は、周波数制御回路5が放電灯Laを定常点灯させるために、始動周波数fstよりもさらに低い周波数fCTでインバータ回路1を動作させる。この動作モードを点灯モードと呼ぶ。
【0011】
上述のように、本従来例によれば、予熱回路3を構成するインダクタL2やコンデンサC4の部品ばらつきによって共振特性にばらつきが生じた場合であっても、予熱電流検出回路7cにより予熱電流のレベルを検出しながら、周波数制御回路5にて放電灯Laのフィラメントを予熱するのに充分なレベルの予熱電流が常に供給されるようにインバータ回路1の動作周波数fを制御し、常に所定のレベル以上の予熱電流を確保するようにしている。
【特許文献1】特開平11−135280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記従来例においては、予熱時の予熱電流が所定のレベル以上となるよう制御を行っているが、予熱終了後の始動モードにおける特性のばらつきは加味されていない。つまり、放電灯の放電開始に必要となる始動電圧レベルがばらつきを持っていることに対し、確実に放電を開始させるためには、始動電圧レベルが最も低くなる条件をもとに、上記予熱の所定レベルを設定する必要があり、始動電圧が高いものや、分布としても最も多くなる中程度のばらつきのものに対しては必要以上の過剰な予熱電流を流すこととなり、ランプフィラメントに余分なダメージを与え、放電灯の寿命に対し悪影響を及ぼすことがあった。
【0013】
本発明は上述のような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、予熱時の予熱電流のばらつきを解消するだけでなく、予熱動作終了後の始動動作時や定常点灯時においても特性のばらつきを抑制し、放電灯負荷や回路部品のストレスを低減できる放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、上記の課題を解決するために、図1に示すように、直流電源電圧をインバータ回路1により高周波電圧に変換し、共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1によるLC共振回路2を含む放電灯負荷回路ILに電力を供給することにより放電灯LAを高周波点灯させる放電灯点灯装置において、放電灯LAの放電開始前に放電灯フィラメントft1,ft2を暖めるための予熱モードと、放電を開始させるために放電灯LAの両端間に放電可能となる電圧を印加する始動モードと、点灯後に所定の放電灯出力を維持する点灯モードの少なくとも3つのモードを有し、前記予熱モード以前にLC共振回路2の状態を検出し、その検出状態に応じて予熱時の特性を補正する補正制御手段(周波数補正回路8)と、前記予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段(予熱時補正状態記憶回路9)を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達することにより、回路部品のばらつきによる特性のばらつき補正を、予熱電流はもちろんのこと、始動時の発振電圧、及び定常点灯時の特性にも反映させ、各モードにおいて特性ばらつきを小さく抑え、放電灯負荷や回路部品に過剰なストレスを印加することなく所定の特性が得られる、信頼性の高い放電灯点灯装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る放電灯点灯装置DLAの回路図である。以下、その回路構成について説明する。商用の交流電源Vsには、交流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路CVが接続されている。この電源回路CVの出力端にはインバータ回路1が接続されている。インバータ回路1は高周波で交互にオン/オフ駆動される一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えている。インバータ回路1の出力端にはインバータ負荷回路ILが接続されている。インバータ負荷回路ILは、LC直列共振回路を構成する共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1、及び直流カット用コンデンサC2、放電灯負荷LAで構成されている。
【0017】
インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2には制御回路4が接続されている。制御回路4は、スイッチング素子Q1、Q2を駆動するドライブ回路6と、インバータ回路1の動作周波数を制御する周波数制御回路5と、予熱モード、始動モード、点灯モード等のインバータ回路1の動作モードの切り替え、及び、各モードの時間を制御するタイマー回路10と、ランプ電圧を検出して制御回路4の制御に帰還する帰還回路(ランプ電圧検出回路7a)と、ランプ電圧検出回路7aの検出電位を受けてインバータ回路1の動作周波数を適切な周波数とするために周波数制御回路5に周波数補正のための信号を伝達する周波数補正回路8と、周波数補正回路8による予熱時の周波数補正状態を記憶しておいて、予熱時以降のモードへその補正状態を伝達するべく周波数制御回路5に信号を出力する予熱時補正状態記憶回路9とを備えている。なお、図示された回路例では、ランプ電圧検出回路7aは、インバータ負荷回路ILのインダクタL1と放電灯LAのフィラメントft1の接続部の電位によりランプ電圧を検出しているが、ランプ電圧の検出箇所は図示された箇所に限定されるものではなく、要するに、予熱時の状態検出によって始動時や点灯時のランプ電圧を推定できる箇所から検出すれば良い。
【0018】
以下、本回路の動作について説明する。交流電源Vsが入力されると、インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2は、制御回路4の周波数制御回路5により第1の動作周波数(予熱周波数fph0)にて制御され、交互にオン/オフを繰り返す。スイッチング素子Q1、Q2の接続点は上記オン/オフにより矩形波の高周波発振電圧となり、インバータ負荷回路ILに入力される。矩形波の高周波発振電圧は直流カット用コンデンサC2を介して、共振インダクタL1、共振コンデンサC1、および放電灯フィラメントft1、ft2を含めた直列回路の両端に印加される。
【0019】
上記共振回路の出力電圧Vo2の周波数特性は図5(a)のようになっており、上記予熱周波数fph0での動作時は放電灯負荷点灯前の無負荷時共振の特性曲線上のa点で動作する。インダクタL1とコンデンサC1の直列共振回路の電流は、フィラメントft1、ft2を介して流れ、フィラメントft1、ft2が予熱(放電灯点灯前にフィラメントを暖める)される。
【0020】
制御回路4内のタイマー回路10で制御される予熱モード時間が終わると、放電灯を点灯させる始動モードに移行する。すなわち、周波数制御回路5は予熱モードが終わると、動作周波数をfph0からfst0に変化させ、無負荷時共振の特性曲線上のb点の動作に移行する。a点からb点への電圧上昇により放電灯に放電可能となる電圧が印加され、放電灯が点灯する。
【0021】
放電灯が点灯するとインダクタL1、コンデンサC1に放電灯負荷インピーダンスが加わり、無負荷時共振の特性曲線上のb点から、負荷点灯時の共振曲線上のc点に移行する。
【0022】
制御回路4内のタイマー回路10で制御される始動モード時間が終わると、定常点灯状態に移行する。すなわち、周波数制御回路5は始動モードが終わると、動作周波数をfst0からffull0に変化させ、負荷点灯時の共振曲線上のd点に移行する。
【0023】
ここで、上記共振曲線はインダクタL1、コンデンサC1等の共振回路の部品ばらつきにより、制御回路4の動作周波数とは独立して変動する。
【0024】
例えば、図5(b)のように、部品ばらつきにより固有振動周波数f0が高くなった場合、周波数制御回路5が上記の予熱周波数fph0でスイッチング素子Q1、Q2を動作させると、max_start点で動作することとなる。そうすると、フィラメントft1、ft2への予熱電流が過剰になったり、放電灯に印加される電圧が高くなり、予熱モードの終了前に点灯したりと、放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0025】
そこで、本実施の形態では、インダクタL1、コンデンサC1の接続点の電圧を検出し、所定の予熱状態が得られるように周波数補正回路8を動作させ、動作周波数を△f上昇させ、無負荷時共振の特性曲線上のa’点、fph1へと予熱周波数をシフトさせるように制御する。予熱モードが終わると、始動モードでの周波数を初期設定のfst0から上記△fの所定倍(n×△f)高く補正し、fst1で動作させる。始動モードが終わると、点灯モードでの周波数を初期設定のffull0から上記△fの所定倍(m×△f)高く補正し、負荷点灯時の共振曲線上のd’点、ffull1で動作する。
【0026】
以上のように、本実施の形態では、予熱時のランプ両端間電圧を検出し、その検出電圧に従い、予熱時の動作周波数を補正するとともに、上記予熱時の周波数補正条件(Δf)を所定の相関関係(n倍、m倍)で始動モード、点灯モードへ反映させることにより、予熱、始動、点灯全てのモードにおいて目標とする所定の特性範囲内にてインバータ回路1を動作させることが出来る。
【0027】
また、上記とは逆に図5(c)のように、部品ばらつきにより固有振動周波数f0が低くなった場合、周波数制御回路5が初期設定の予熱周波数fph0でスイッチング素子Q1、Q2を動作させると、min_start点で動作することとなる。そうすると、フィラメントft1、ft2への予熱電流が少なくなり、放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0028】
そこで本実施の形態では、インダクタL1、コンデンサC1の接続点の電圧を検出し、所定の予熱状態が得られるように周波数補正回路8を動作させ、動作周波数を△f下降させ、無負荷時共振の特性曲線上のa’点、fph2へと予熱周波数をシフトさせるように制御する。
【0029】
予熱モードが終わると、始動モードでの周波数を初期設定のfst0から上記△fの所定倍(o×△f)低く補正し、fst2で動作させる。本ばらつき条件で初期のfst0で動作させた場合、共振回路の電圧が低く、放電灯を放電開始させるための十分な電圧が得られず、始動不良を起こしたり、また、始動不良を防ぐための始動モード固有の調整手段を必要としていたが、この周波数補正により、そのような手段を用いず始動性能を満足することが出来た。
【0030】
始動モードが終わると、点灯モードでの周波数を初期設定のffull0から上記△fの所定倍(p×△f)低く補正し、負荷点灯時の共振曲線上のd’点、ffu112で動作させる。
【0031】
なお、予熱時の周波数補正条件(Δf)を始動モード、点灯モードへ反映させる相関係数は、固有振動周波数f0の増加時と減少時とで同じ(n=o、m=p)に設定しても良いし、始動モードと点灯モードとで同じ(n=o=m=p)に設定しても良い。また、予熱モードと同じ(n=o=m=p=1)に設定しても良い。もちろん、これらの相関係数n,m,o,pはそれぞれ異なる最適な値に設定しても良い。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、予熱時のランプ両端間電圧を検出し、その検出電圧に従い予熱時の動作周波数を補正するとともに、上記予熱時の周波数補正条件を始動モード、点灯モードへ反映させることにより、予熱、始動、点灯全てのモードにおいて、目標とする所定の特性範囲内にてインバータ回路1を動作させることが出来る。
【0033】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2に係る放電灯点灯装置DLAの回路図である。以下、その回路構成について説明する。商用の交流電源Vsには、交流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路CVが接続されている。この電源回路CVの出力端にはインバータ回路1が接続されている。インバータ回路1は高周波で交互にオン/オフ駆動される一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えている。インバータ回路1の出力端にはインバータ負荷回路ILが接続されている。インバータ負荷回路ILは、LC直列共振回路を構成する共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1、及び直流カット用コンデンサC2、放電灯負荷LAで構成されている。
【0034】
共振用インダクタL1には補助巻線が設けてあり、コンデンサC4、C5を介してそれぞれ放電灯フィラメントft1、ft2に接続された予熱回路3が構成され、補助巻線に発生する電圧によりフィラメントft1、ft2の予熱が行われる。
【0035】
インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2には制御回路4が接続されている。制御回路4は、スイッチング素子Q1、Q2を駆動するドライブ回路6と、インバータ回路1の動作周波数を制御する周波数制御回路5と、予熱モード、始動モード、点灯モード等のインバータ回路1の動作モードの切り替え、及び、各モードの時間を制御するタイマー回路10と、インダクタL1の発生電圧を検出して制御回路4の制御に帰還する帰還回路(共振電圧検出回路7b)と、共振電圧検出回路7bの検出電位を受けてインバータ回路1の動作周波数を適切な周波数とするために周波数制御回路5に周波数補正のための信号を伝達する周波数補正回路8と、周波数補正回路8による予熱時の周波数補正状態を記憶しておいて、予熱時以降のモードへその補正状態を伝達するべく周波数制御回路5に信号を出力する予熱時補正状態記憶回路9とを備えている。なお、図示された回路例では、共振電圧検出回路7bは、インダクタL1の補助巻線からインダクタL1の発生電圧を検出しているが、共振電圧の検出箇所は図示された箇所に限定されるものではない。
【0036】
本回路の動作について以下に説明する。交流電源Vsが入力されると、インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2は制御回路4の周波数制御回路5により第1の動作周波数(予熱周波数fph0)にて制御され、交互にオン、オフを繰り返す。スイッチング素子Q1、Q2の接続点は上記オン/オフにより矩形波の高周波発振電圧となり、インバータ負荷回路ILに入力される。矩形波の高周波発振電圧は直流カット用コンデンサC2を介し、共振用インダクタL1、共振用コンデンサC1、および放電灯フィラメントft1、ft2を含めた直列接続回路の両端に印加される。
【0037】
上記共振回路2の出力電圧Vo2の周波数特性は図6(a)のようになっており、上記予熱周波数fph0での動作時は放電灯負荷点灯前の無負荷共振時の特性曲線上のa点で動作する。fph0での動作時に、LC直列共振によりインダクタL1に発生した電圧は補助巻線からコンデンサC4、C5を介しそれぞれフィラメントft1、ft2に電力を供給し、フィラメントft1、ft2が予熱(放電灯点灯前にフィラメントを暖める)される。
【0038】
制御回路4内のタイマー回路10で制御される予熱モード時間が終わると、放電灯を点灯させる始動モードに移行する。すなわち、周波数制御回路5は予熱モード時間が終わると、周波数をfph0からfst0に変化させ、無負荷共振時の特性曲線上のb点での動作に移行する。a点からb点への電圧上昇により放電灯に放電可能となる電圧が印加され、放電灯が点灯する。放電灯が点灯すると、インダクタL1、コンデンサC1に放電灯負荷インピーダンスが加わり、無負荷共振時の特性曲線上のb点から負荷点灯時の共振曲線上のc点に移行する。
【0039】
制御回路4内のタイマー回路10で制御される始動モード時間が終わると、定常点灯状態に移行する。すなわち、周波数制御回路5は始動モードが終わると、周波数をfst0からffull0に変化させ、負荷点灯時の共振曲線上のd点に移行する。
【0040】
ここで上記共振曲線は、インダクタL1、コンデンサC1等の共振回路部の部品ばらつきにより制御回路4の動作周波数とは独立して変動する。
【0041】
例えば図6(b)のように、部品ばらつきにより固有振動周波数f0が高くなった場合、周波数制御回路がfph0でスイッチング素子Q1、Q2を動作させると、max_start点で動作することとなる。そうすると、フィラメントft1、ft2への予熱電流が過剰になったり、放電灯に印加される電圧が高くなり、予熱モード終了前に点灯したりと、放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0042】
そこで、本実施の形態では共振用インダクタL1の補助巻線から共振電圧を検出し、所定の予熱状態が得られるよう周波数補正回路8を動作させ、動作周波数を△f上昇させ、図a’点、fph1へと予熱周波数をシフトさせるように制御する。
【0043】
予熱モードが終わると、始動モードでの周波数を初期設定のfst0から予熱時と同様に△f高く補正し、図c’点、fst1で動作する。
【0044】
始動モードが終わると、点灯モードでの周波数を初期設定のffull0から上記△f高く補正し、図d’点、ffull1で動作する。
【0045】
以上のように、本実施の形態では予熱時の共振電圧を検出し、その検出電圧に従い、予熱時の動作周波数を補正するとともに、上記予熱時の周波数補正条件を始動モード、点灯モードへ反映させることにより、予熱、始動、点灯全てのモードにおいて目標とする所定の特性範囲内にてインバータ回路1を動作させることが出来る。
【0046】
また、上記とは逆に、図6(c)のように、部品ばらつきにより固有振動周波数f0が低くなった場合、周波数制御回路5がfph0でスイッチング素子Q1、Q2を動作させると、min_start点で動作することとなる。そうすると、フィラメントft1、ft2への予熱電流が少なくなり、放電灯の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0047】
そこで、本実施例では、共振用インダクタL1の補助巻線から共振電圧を検出し、所定の予熱状態が得られるように周波数補正回路8を動作させ、動作周波数を△f下降させ、図a’点、fph2へと制御する。
【0048】
予熱モードが終わると、始動モードでの周波数を初期設定のfst0から予熱時と同様に△f低く補正し、図c’点、fst2で動作する。
【0049】
本ばらつき条件において、初期設定のfst0で動作させた場合、共振回路の電圧が低く、放電灯を放電開始させるための十分な電圧が得られず、始動不良を起こしたり、また、始動不良を防ぐための始動モード固有の調整手段を必要としていたが、上記の周波数補正により、そのような手段を用いずに始動性能を満足することが出来た。
【0050】
始動モードが終わると点灯モードでの周波数を初期設定のffull0から上記と同様に△f低く補正し、図d’点、ffull2で動作する。
【0051】
以上のように本実施の形態では、予熱時の共振電圧を検出し、その検出電圧に従い予熱時の動作周波数を補正するとともに、上記予熱時の周波数補正条件を始動モード、点灯モードへ反映させることにより、予熱、始動、点灯全てのモードにおいて目標とする所定の特性範囲内にてインバータ回路1を動作させることが出来る。
【0052】
(実施の形態3)
図3は本発明の実施の形態3に係る放電灯点灯装置DLAの回路図である。以下、その回路構成について説明する。商用の交流電源Vsには、交流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路CVが接続されている。この電源回路CVの出力端にはインバータ回路1が接続されている。インバータ回路1は高周波で交互にオン/オフ駆動される一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えている。インバータ回路1の出力端にはインバータ負荷回路ILが接続されている。インバータ負荷回路ILは、LC直列共振回路を構成する共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1、及び直流カット用コンデンサC2、放電灯負荷LA1、LA2で構成されている。また、電源回路CVのスイッチング素子Q3を高周波でオン/オフ駆動制御する制御回路CVCCと、インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2を高周波でオン/オフ駆動制御する制御回路4を備えている。その制御回路4は、インバータ負荷回路ILの放電灯負荷電圧Vlaを検出してインバータ周波数制御回路IVDRに帰還する帰還回路を含んだ構成である。さらに、放電灯点灯装置DLAの回路グランドGndはコンデンサC18を介して対地アースE/Gに接続されている。
【0053】
次に、この放電灯点灯装置DLAについて、構成回路をブロック毎に簡単に説明する。
1)電源回路CV
商用電源Vsからの交流電圧は、電流ヒューズFuseを介してフィルタ回路FIの入力端に供給されている。電流ヒューズFuseは、放電灯点灯装置DLA内の故障等による電源短絡時に直ちに交流電源Vsから回路を遮断するものである。フィルタ回路FIはコンデンサCf、コモン(ノーマル)モードフィルタLFよりなり、後段のチョッパ回路の入力電流の高周波成分を除去するものである。フィルタ回路FIの入力端には、サージ電圧を吸収するサージ電圧吸収素子ZNRが並列接続されている。
【0054】
フィルタ回路FIの出力端には、交流電圧を全波整流する整流器DBの入力が接続され、整流器DBの出力には突入電流抑制回路ICCを介して昇圧チョッパ回路UVCが接続されている。昇圧チョッパ回路UVCのスイッチング素子Q3には、そのスイッチング素子Q3を高周波でオン/オフ駆動制御する制御回路CVCCが接続されている。
【0055】
昇圧チョッパ回路UVCは、整流器DBの+出力端の脈流電圧を突入電流抑制回路ICCを介して入力している。コンデンサC8は小容量のコンデンサであり、その端子電圧は脈流電圧となる。コンデンサC8の一端にインダクタL2の一次巻線n1の一端が接続され、インダクタL2の一次巻線n1の他端にはスイッチング素子Q3のドレイン端子とダイオードD1の陽極が接続される。スイッチング素子Q3のソース端子には電流検出抵抗R2が接続され、ダイオードD1の陰極には平滑用のコンデンサC0が接続され、コンデンサC8,抵抗R2,コンデンサC0の他端及び整流器DBの−出力端が回路グランドGndに接続されて、コンデンサC0に発生する平滑電圧Vdcを出力するように構成されている。
【0056】
チョッパ制御回路CVCCは、制御回路IC1として、汎用のチョッパ制御用ICであるモトローラ社製のMC33262を用いたものであり、その構成は周知であるので、ここでは詳しい説明は省略し、制御回路IC1に対する外付け部品の構成を以下に簡単に説明する。
【0057】
制御回路IC1の1番ピン(出力電圧帰還端子)には、平滑用のコンデンサC0に並列接続された抵抗R14と可変抵抗VR1の直列回路によって平滑出力電圧Vdcを分圧した電圧が入力される。2番ピン(誤差アンプ出力/補償端子)とグランド間には抵抗R10とコンデンサC11の並列回路が接続される。3番ピン(マルチプライヤ入力端子)にはチョッパ入力電圧(コンデンサC8の両端電圧)の脈流電圧を抵抗R7,R8によって分圧した電圧が入力される。4番ピン(電流センス入力端子)にはスイッチング素子Q3に流れる電流を検出するために、抵抗R2で得られた電圧が抵抗R13を介して入力される。3番ピン,4番ピンとグランド間に接続されたコンデンサC10,C12は、ノイズ除去用の小容量のコンデンサである。5番ピン(ゼロ電流検出入力端子)にはインダクタL2を流れる電流のゼロクロス点を検出するために、インダクタL2の二次巻線n2の出力が抵抗R9を介して入力される。6番ピン(グランド端子)は回路グランドGndに接続される。7番ピン(出力端子)は、スイッチング素子Q3を駆動するために、抵抗R11、R12を介してスイッチング素子Q3のゲート端子に接続されている。8番ピン(電源電圧端子)には制御回路CCの電源用として、抵抗R3,R4にて分圧された電圧Vccが、コンデンサC9及びツェナーダイオードZD1で平滑されて入力される。
【0058】
以上のように構成することにより、制御回路IC1は昇圧チョッパ回路UVCの入力電圧(脈流電圧)を3番ピンの入力に基づいて検出し、昇圧チョッパ回路UVCからの平滑出力電圧を1番ピンの入力に基づいて検出し、スイッチング素子Q3に流れる電流を4番ピンの入力に基づいて検出し、更にインダクタL2に流れる電流を5番ピンの入力に基づいて検出しながら、スイッチング素子Q3の駆動制御を行なうことができる。
【0059】
次に、突入電流抑制回路ICCについて説明する。突入電流抑制回路ICCは、PTCサーミスタPTHとサイリスタQ4が並列に接続され、サイリスタQ4のゲート・陰極間には、インダクタL2の二次巻線n3と抵抗R6とダイオードD2の直列回路と、抵抗R5とコンデンサC7が並列に接続されて構成される。突入電流抑制回路ICCの動作は、昇圧チョッパ回路UVCの動作時はインダクタL2の二次巻線n3に電圧が発生するため、サイリスタQ4がオンし、サイリスタQ4を通じて昇圧チョッパ回路UVCに電流供給が行なわれ、昇圧チョッパ回路UVCの不動作時はインダクタL2の二次巻線n3に電圧が殆ど発生しないため、サイリスタQ4がオフし、PTCサーミスタPTHを通じて昇圧チョッパ回路UVCに電流供給が行なわれる。
【0060】
つまり、電源投入時は昇圧チョッパ回路UVCが不動作のため、PTCサーミスタPTHによって突入電流が抑制され、定常時には昇圧チョッパ回路UVCが動作するため、サイリスタQ4にてPTCサーミスタPTHが短絡されて、PTCサーミスタによるロスは発生しないという回路動作となる。
【0061】
2)インバータ回路1
インバータ回路1は、電源回路CVの出力端(コンデンサC0の平滑出力電圧Vdc)を入力とし、スイッチング素子Q1,Q2と検出抵抗R1の直列回路を接続したものである。電源回路CVの正出力端には、スイッチング素子Q1のドレイン端子が接続され、そのスイッチング素子Q1のソース端子にはスイッチング素子Q2のドレイン端子が接続され、さらにそのスイッチング素子Q2のソース端子には帰還回路FBC2の検出抵抗R1が接続されて、その抵抗R1は回路グランドGndへと接続されている。そして、スイッチング素子Q1,Q2の各ゲート端子及びインバータ回路1の出力端Vmは、制御回路IVCCへ接続される。
【0062】
制御回路IVCCは、インバータ駆動回路IVDRとタイマー回路TIM及びそれらの周辺部品で構成される。
以下に、インバータ駆動回路IVDRとタイマー回路TIMについて、それらの周辺部品の構成及び動作の説明を行なう。
【0063】
インバータ駆動回路IVDRの1番ピン(発振器用抵抗接続端子)とグランド間には、抵抗R27と、スイッチSW2と抵抗R23の直列回路と、スイッチSW1と抵抗R24の直列回路との並列回路が接続されている。2番ピン(発振器用コンデンサ接続端子)とグランド間にはコンデンサC15が接続され、3番ピン(グランド端子)は回路グランドGndに接続され、4番ピン(電源電圧端子)には制御回路IC1の電源用として、上述の制御電源電圧Vccが入力される。5番ピン(高圧側駆動用基準電圧端子)にはインバータ出力電圧Vmが接続されている。6番ピン(高圧側駆動用電源端子)には、コンデンサC14が5番ピンとの間に接続され、ダイオードD5の陰極が6番ピンヘ、同陽極が制御電源Vccへと接続される。7番ピン(高圧側駆動電圧出力端子)は抵抗R15,R16を介してスイッチング素子Q1のゲート端子へ、8番ピン(低圧側駆動電圧出力端子)は抵抗R17,R18を介してスイッチング素子Q2へ、それぞれ接続される。
【0064】
インバータ駆動回路IVDRの動作は、電源投入後、制御電源電圧Vccがインバータ駆動回路IVDRの動作開始電圧に達すると、1,2番ピンに接続されている抵抗値と容量値によって決まる周波数にて、7,8番ピンに交互に駆動電圧を発生させることで、2つのスイッチング素子Q1,Q2を交互にオン/オフさせるものである。
【0065】
次に、タイマー回路TIMの1番ピン(発振器用抵抗接続端子)とグランド間には、抵抗R25が接続され、2番ピン(発振器用コンデンサ接続端子)とグランド間にはコンデンサC16が接続され、3番ピン(グランド端子)は回路グランドGndに接続され、4番ピン(電源電圧端子)には制御回路CCの電源用として、上述の制御電源電圧Vccが入力される。5,6,7番の各出力ピンには、夫々スイッチSW1,SW2,SW3が接続されている。
【0066】
タイマー回路TIMの動作は、電源投入後、制御電源電圧VccがICの動作開始電圧に達すると、1,2番ピンに接続されている抵抗値と容量値によって決まる時間経過後にスイッチSW1〜SW3のオン/オフを決めるものである。具体的には図7に示すシーケンスでスイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態が変化する。つまり、インバータ制御回路IVCCの動作は、図7で示されるように予熱モード(周波数fph)、始動モード(周波数fst)、点灯モード(周波数ffull)と段階的に周波数を変化させながら、インバータ回路1を駆動するものである。
【0067】
次に、帰還回路FBC1、FBC2の構成及び動作を説明する。インバータ駆動回路IVDRの1番端子には予熱モード、始動モード、点灯モードのすべてのモードに帰還動作を反映させる帰還回路FBC1と、点灯モード時のみに帰還動作させる帰還回路FBC2が接続されている。
【0068】
まず、帰還回路FBC1は、インバータ駆動回路IVDRの1番端子から抵抗R32を介してスイッチSW4がグランド間に接続されている。スイッチSW4にはRSフリップフロップの出力信号Qが接続され、RSフリップフロップのセット入力SにHigh信号が入力されると、RSフリップフロップの出力QがLowからHighに反転し、スイッチSW4がオンする。RSフリップフロップのリセット入力RにHigh信号が入力されると、Q出力がHighからLowに反転し、スイッチSW4がオフする。RSフリップフロップのセット入力Sにはアンド回路AND1の出力端子が接続され、アンド回路AND1の入力にはタイマー回路TIMの5番出力端子と制御電源電圧Vccから抵抗R28によりプルアップされたコンパレータComp1の出力端子が接続され、タイマー回路TIMの5番端子及びコンパレータComp1の出力端子がともにHighとなることにより、アンド回路AND1の出力からHigh信号がRSフリップフロップのセット入力Sに入力される。コンパレータComp1の+入力端子には、ランプLA1の一端からダイオードD8を介して検出されるランプ電圧検出電位を抵抗R31とR30で分圧し、コンデンサC17で平滑した電位が入力され、また、コンパレータComp1の−入力端子には、制御電源電圧Vccを抵抗R33、R34で分圧したしきい値電圧が入力され、ランプ電圧検出電位が−端子電位>+端子電位となった場合に、コンパレータComp1の出力からHigh信号が出力される。
【0069】
このように、タイマー回路TIMの5番端子がHighとなる予熱モードにおいて、ランプ電圧検出電位が所定のしきい値より高い場合にRSフリップフロップの出力QがHighとなり、スイッチSW4がオンし、インバータ駆動回路IVDRの1番端子に接続された抵抗R27に抵抗R32が並列接続されることとなり、その結果、インバータ駆動回路IVDRで制御されるインバータ回路1の発振周波数が高く補正される。この補正動作はRSフリップフロップのリセット信号が入るまで、つまり、タイマー回路TIMの9番端子からの初期リセット信号が入るまでは継続される。
【0070】
次に、帰還回路FBC2はオペアンプOP1を用いたフィードバック回路であり、オペアンプOP1は制御電源電圧Vccを電源として動作する。オペアンプOP1の+側入力端子には、制御電源電圧Vccを抵抗R19と可変抵抗VR3により分圧した基準電圧が入力され、−側入力端子には、インバータ回路1のスイッチング素子Q2の電流を検出する抵抗R1の両端電圧が抵抗R20を介して入力される。オペアンプOP1の出力端子には、−側入力端子との間に抵抗R21とコンデンサC13とが並列に接続され、インバータ駆動回路IVDRの1番ピンとの間にダイオードD6、抵抗R22及びスイッチSW3が接続されている。
【0071】
帰還回路FBC2の動作は、インバータ負荷回路ILの共振電流を、インバータ回路1のスイッチング素子Q2に流れる電流を検出する抵抗R1によって電圧変換し、この電圧が抵抗R20を介してオペアンプOP1の−側入力端子に入力される。このオペアンプOP1の−側入力端子に現れる電圧と、オペアンプOP1の+側入力端子に印加される基準電圧とを比較して、双方の電圧が略等しくなるようにインバータ回路1の動作周波数を可変させる働きを持つ。
【0072】
ここで、オペアンプOP1の−側入力端子に現れる電圧は、インバータ負荷回路ILの消費電力にほぼ正比例で変化する。そして、インバータ負荷回路ILの消費電力の大半は、放電灯負荷LA1、LA2の出力電力が占めている。つまり、帰還回路FBC2は、放電灯負荷LA1、LA2の出力電力を略一定にするように、インバータ回路1の動作周波数を可変させる、即ち定電力制御を行なうものである。
【0073】
帰還回路FBC2の動作を、図7を参照して説明すると、タイマー回路TIMのスイッチSW3によって予熱及び始動モードでは帰還回路FBC2は動作せず、点灯モードにおいては放電灯負荷LA1、LA2の種類によって、ffull〜ffullminの間で放電灯負荷LAの出力電力を略一定にするように、インバータ回路1の動作周波数を可変させる動作を行なう。
【0074】
3)インバータ負荷回路IL
インバータ負荷回路ILは、インバータ回路1の出力であるVm−Gnd間に接続され、放電灯負荷LA1、LA2に電力供給する二重共振回路2と、放電灯フィラメントft1,ft2,ft3,ft4を予熱する予熱回路3によって構成される。
【0075】
二重共振回路2は、インバータ回路1の出力であるVm−Gnd間に、共振用インダクタL1の一次巻線n1と、共振用コンデンサC1が直列に接続され、コンデンサC1の両端に、放電灯負荷LA1、LA2と共振兼直流阻止用コンデンサC2が直列に接続して構成されている。コンデンサC6はシーケンスコンデンサである。
【0076】
予熱回路3は、共振用インダクタL1の二次巻線n2,n3に対し、それぞれコンデンサC3,C4を介して放電灯フィラメントft1,ft4を接続すると共に、二次巻線n4に対し、コンデンサC5を介して放電灯フィラメントft2,ft3を接続して構成されている。
【0077】
なお、インバータ回路1が発振動作を開始した後は、共振用インダクタL1の二次巻線n5に生じる電圧を抵抗R26、ダイオードD7を介してコンデンサC9に供給し、効率良く制御電源電圧Vccを確保している。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態によれば、予熱時のランプ電圧を検出し、その検出電圧により予熱時のインバータ回路の動作周波数を補正するとともに、その補正状態を予熱モード以降の始動モード、点灯モードにも伝達し、且つまた、点灯時の共振電流をフィードバックして補正する手段を併せ持つことにより、回路を構成する部品のばらつきや、点灯するランプのばらつきに対しても、また、ランプの種類が変化した際においても確実にランプを始動させることはもちろんのこと、ランプフィラメントへのダメージや回路部品へのストレスを比較的小さく抑えることのできる信頼性の高い放電灯点灯装置を提供することができる。
【0079】
また、特性補正手段としてインバータの電圧源となる平滑出力電圧Vdcを変化させることによっても同様の効果が得られる。平滑出力電圧Vdcの制御手段としては、チョッパ制御用のIC1の1番ピン(出力電圧帰還端子)を用いて行うことができる。その場合、予熱時の特性補正は平滑出力電圧Vdcを補正することで行なわれる。また、その特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段は、予熱時における平滑出力電圧Vdcの補正量と、始動モードまたは点灯モードにおける平滑出力電圧Vdcの補正量との間に所定の相関関係を持たせることで、予熱時の特性補正を始動時または点灯時に反映させれば良い。
【0080】
(実施の形態4)
図4は本発明の実施の形態4に係る放電灯点灯装置DLAの回路図である。以下、その回路構成について説明する。商用の交流電源Vsには、交流電圧を所定の直流電圧に変換する電源回路CVが接続されている。この電源回路CVの出力端にはインバータ回路1が接続されている。インバータ回路1は高周波で交互にオン/オフ駆動される一対のスイッチング素子Q1、Q2を備えている。そのインバータ回路1の出力側には放電灯LAを負荷とする共振回路2と、放電灯LAのフィラメントft1,ft2に予熱電流を供給するための予熱回路3が接続されている。共振回路2は、共振用インダクタL1と共振用コンデンサC1、及び共振兼直流阻止用コンデンサC2、放電灯負荷LAで構成される。予熱回路3は、直流カット用コンデンサCtと予熱トランスT1とスイッチSWの直列接続回路により構成され、予熱トランスT1の二次巻線n2、n3にはそれぞれコンデンサC4、C5を介してランプフィラメントft1、ft2が接続されている。
【0081】
インバータ回路1のスイッチング素子Q1、Q2には制御回路4の出力が接続されている。制御回路4は、スイッチング素子Q1、Q2を駆動するドライブ回路6と、動作周波数を制御する周波数制御回路5と、予熱モード、始動モード、点灯モード等のインバータ回路1の動作モードの切り替え及び各モードの時間を制御するタイマー回路10と、予熱電流及びランプ電圧を検出する帰還回路7と、帰還回路7の検出出力を周波数制御回路5やタイマー回路10の制御に反映させるマイクロコンピュータとを備えている。帰還回路7は、インバータ負荷回路ILのインダクタL1と放電灯フィラメントft1の接続部の電位、つまりランプ電圧を検出して制御回路4の制御に帰還するランプ電圧検出回路7aと、予熱トランスT1の補助巻線n4の電圧を制御回路4の制御に帰還する予熱電流検出回路7cよりなる。マイクロコンピュータは周波数補正制御部8、予熱時補正状態記憶回路9及び予熱時間補正制御部11を含んで構成されている。周波数補正制御部8は、帰還回路7の検出電位を受けて、インバータ回路1の動作周波数を適切な周波数とするために、周波数制御回路5に周波数補正のための信号を与える。また、予熱時間補正制御部11は、帰還回路7の検出電位を受けて、予熱時間補正のための信号をタイマー回路10へ伝達する。さらに、予熱時補正状態記憶回路9は予熱時の周波数補正状態を記憶し、予熱モード以降の始動モードや点灯モードへその補正状態を伝達し、周波数制御回路5の制御に反映させる。
【0082】
本回路動作について、ランプ電圧検出による周波数補正動作については実施の形態1と同様のため、詳細な説明は省略し、異なる予熱電流検出によるフィードバック制御及び予熱時間の補正について説明する。
【0083】
本実施の形態においては、放電灯LAを負荷とする共振回路2と放電灯LAのフィラメントft1,ft2を予熱するための予熱回路3は独立しており、実施の形態1〜3と同様の予熱時のランプ電圧や共振回路2の出力電圧Vo2による補正では、予熱時の放電灯LAに印加される電圧や、始動モードの放電灯LAに印加する始動電圧レベルの補正はできるが、予熱時の予熱電流のばらつき補正はできないことになる。例として実施の形態1で説明したばらつき条件1に予熱電流特性カーブを重ね合わせたものを図8に示し説明する。予熱時の電圧検出による周波数補正により、予熱周波数はfph0からfph1に移行し、予熱電流はIph0からIph1に移行する。
【0084】
放電灯の予熱時に必要とされる予熱条件は、予熱電流と予熱時間により規定される。例えばFHF32においてはJIS C7617にて予熱時間tpが以下のように規定されている。
・最小予熱電流ik=(a/tp+im)
[a=0.2(As),im=0.25(A)]
・最大予熱電流IK=(A/tp+IM)
[A=0.960(As),IM=0.40(A)]
【0085】
本規定式により得られる適正領域を図9に示し、補正動作について説明する。例えば初期の予熱時間設定1.5秒において、先に述べた予熱時の周波数補正により予熱特性がIph0からIph1に移行したときに、図9に示すように、Iph1が適正領域外となる場合が考えられる。その際、タイマー回路10により制御される予熱時間を1.5秒から1.0秒に補正することにより適正領域内とすることができる。
【0086】
以上、予熱時の共振回路2の出力電圧検出と予熱回路3の予熱電流検出とを組み合わせ、周波数制御回路5及びタイマー回路10に補正制御を行うことにより、回路構成部品のばらつきや、放電灯負荷のばらつきが生じた際においても、ボリューム抵抗での調整等、外部からの調整手段を用いることなく、予熱モード時の適切な予熱電流の供給が可能となり、また、予熱時にコールドスタート(フィラメントの予熱が不十分な状態で放電を開始すること)の無い共振電圧制御、始動モード時の放電灯点灯開始に必要となる所定の始動電圧供給、および点灯モード時の所定の放電灯出力を満たす放電灯点灯装置を提供することができる。
【0087】
(実施の形態5)
上述の実施の形態1〜4で説明したような放電灯点灯装置を搭載した照明器具の一例を図10に示す。図10は2灯の放電灯LA1,LA2を点灯可能な2灯用照明器具の斜視図である。図中、S1〜S4はソケットであり、反射板R、ランプLA1、LA2を備えて構成される。器具の内部には、放電灯点灯装置として、図3のような2灯用の放電灯点灯装置1台、あるいは図1、図2、図4のような1灯用の放電灯点灯装置2台を搭載している。
【0088】
例えば、FHF32、FL40S、FL40SS/37、FLR40S、FLR40S/36の5種類の放電灯は、同一の管長(1198mm)で且つ、同一の口金寸法(G13形)であるため、図10に示した1種類の照明器具にて共用可能である。放電灯のばらつき、種類の違いは実施形態1〜4に示した帰還回路FBC1,FBC2により自動的に補正されるため、照明器具ユーザーは放電灯の種類を気にすることなく使用可能となり、またユーザーの嗜好(放電灯コスト、デザイン、光出力など)に合わせて放電灯の選択も可能となる。
【0089】
(実施の形態6)
上述の実施の形態5に記載した照明器具複数台を制御装置にて一括制御する照明システムの一例を図11に示した。実施の形態5に記載した照明器具A〜Lの12台が人体感知センサー、及びプログラム制御可能なシステムを備えた制御装置Sに接続されている。本実施形態においては、A〜Iにランプ負荷としてFHF32を装着し、外光の入る窓側のJ〜Lには光束はFHF32より低いがコストの安いFLR40/36を装着している。制御装置Sの特徴として人体感知センサーにより人を感知すると放電灯が点灯し、人が不在となると消灯する機能や、負荷の装着状況の入力、任意の照明器具の点灯、消灯条件の設定が可能であるプログラム制御機能を有しており、実施形態5に示した照明器具と組み合わせることにより、放電灯始動時の点灯ばらつきを抑えるとともに、回路特性の影響によるランプ寿命のばらつきを抑え、ランプの長寿命化と交換の利便性がはかれる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を示すブロック回路図である。
【図2】本発明の実施の形態2の構成を示すブロック回路図である。
【図3】本発明の実施の形態3の詳細な構成を示す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態4の構成を示すブロック回路図である。
【図5】本発明の実施の形態1の動作説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2の動作説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3の動作説明図である。
【図8】本発明の実施の形態4の動作説明図である。
【図9】本発明の実施の形態4の動作説明図である。
【図10】放電灯点灯装置を搭載した照明器具の一例を示す斜視図である。
【図11】照明器具複数台を制御装置にて一括制御する照明システムの一例を示す説明図である。
【図12】従来の放電灯点灯装置の構成を示すブロック回路図である。
【図13】図12の回路の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図14】図12の回路の共振特性を示す図である。
【図15】図12の回路の共振特性を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 インバータ回路
2 共振回路
3 予熱回路
4 制御回路
5 周波数制御回路
6 ドライブ回路
7 帰還回路
7a ランプ電圧検出回路
7b 共振電圧検出回路
7c 予熱電流検出回路
8 周波数補正回路
9 予熱時補正状態記憶回路
10 タイマー回路
LA 放電灯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源電圧をインバータ回路により高周波電圧に変換し、共振用インダクタと共振用コンデンサによるLC共振回路を含む放電灯負荷回路に電力を供給することにより放電灯を高周波点灯させる放電灯点灯装置において、放電灯の放電開始前に放電灯フィラメントを暖めるための予熱モードと、放電を開始させるために放電灯の両端間に放電可能となる電圧を印加する始動モードと、点灯後に所定の放電灯出力を維持する点灯モードの少なくとも3つのモードを有し、前記予熱モード以前にLC共振回路の状態を検出し、その検出状態に応じて予熱時の特性を補正する補正制御手段と、前記予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段を設けたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記LC共振回路の状態を検出する検出手段は、放電灯の両端間に発生する電圧、もしくは該電圧と相関のある部位の電圧を検出する手段であることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記予熱モードにおける放電灯フィラメントへの予熱電流供給手段は、前記LC共振回路の共振用インダクタの補助巻線から予熱電流を供給し、前記補正制御手段は該補助巻線から検出した前記LC共振回路の状態に応じて予熱時の特性を補正することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段は、予熱時の特性の補正制御量と、始動モードまたは点灯モードにおける特性の補正制御量との間に相関関係を持たせる手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記予熱時の特性を補正する補正制御手段は、インバータ回路の動作周波数の制御と予熱時間の時間制御を組み合わせることにより予熱時の特性を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段としてマイクロコンピュータを用いたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
放電灯と、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置を備える照明器具において、前記放電灯点灯装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の放電灯点灯装置であることを特徴とする照明器具。
【請求項8】
請求項7に記載の照明器具を有することを特徴とする照明システム。
【請求項1】
直流電源電圧をインバータ回路により高周波電圧に変換し、共振用インダクタと共振用コンデンサによるLC共振回路を含む放電灯負荷回路に電力を供給することにより放電灯を高周波点灯させる放電灯点灯装置において、放電灯の放電開始前に放電灯フィラメントを暖めるための予熱モードと、放電を開始させるために放電灯の両端間に放電可能となる電圧を印加する始動モードと、点灯後に所定の放電灯出力を維持する点灯モードの少なくとも3つのモードを有し、前記予熱モード以前にLC共振回路の状態を検出し、その検出状態に応じて予熱時の特性を補正する補正制御手段と、前記予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段を設けたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記LC共振回路の状態を検出する検出手段は、放電灯の両端間に発生する電圧、もしくは該電圧と相関のある部位の電圧を検出する手段であることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記予熱モードにおける放電灯フィラメントへの予熱電流供給手段は、前記LC共振回路の共振用インダクタの補助巻線から予熱電流を供給し、前記補正制御手段は該補助巻線から検出した前記LC共振回路の状態に応じて予熱時の特性を補正することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段は、予熱時の特性の補正制御量と、始動モードまたは点灯モードにおける特性の補正制御量との間に相関関係を持たせる手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記予熱時の特性を補正する補正制御手段は、インバータ回路の動作周波数の制御と予熱時間の時間制御を組み合わせることにより予熱時の特性を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記予熱時の特性補正状態を記憶して始動モードまたは点灯モードに伝達する手段としてマイクロコンピュータを用いたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
放電灯と、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置を備える照明器具において、前記放電灯点灯装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の放電灯点灯装置であることを特徴とする照明器具。
【請求項8】
請求項7に記載の照明器具を有することを特徴とする照明システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−149409(P2007−149409A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339676(P2005−339676)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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