説明

放電灯点灯装置、照明器具及び照明システム

【課題】高温再始動時に最適なランプ点灯を可能にし、ランプ寿命特性を良好に保ちながら、ランプ種別判別ができる放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】放電灯の電気特性を検出手段により検出し、検出した電気特性から放電灯の定格電力を判別する判別手段と、放電灯の消灯から次回の点灯までの時間を計測する手段と、前回の判別結果を記憶する手段を備え、複数の定格電力種の高圧放電灯を負荷対象とし、そのうちいずれか1種を接続して点灯する放電灯点灯装置であって、計測された時間があらかじめ設定された時間よりも短い場合には前回の判別結果に基づいて、電力変換回路の供給電力を制御し、接続された高圧放電灯を点灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数種の高圧放電灯を適合ランプとする放電灯点灯装置およびこれを用いた照明器具、照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧放電灯(HIDランプ)を点灯させる高圧放電灯点灯装置としては、従来、銅鉄型の安定器が主流であった。しかし、近年、安定器の軽量化・小型化・高機能化を目的とした多くの電子部品を用いた電子バラストが主流になりつつある。この電子バラストについて以下に簡単に説明する。
【0003】
図16に電子バラストのブロック図を示す。交流電源Vsに整流回路を含む直流電源回路部Aが接続され、その出力端に放電灯への供給電力を調整・制御できるインバータ回路部Bが接続され、さらにその出力端に放電灯DLが接続されている。インバータ回路部Bは直流電源回路部Aの出力を低周波の交流電圧に変換して放電灯DLに供給する点灯回路部Cと、放電灯DLの状態に応じて点灯回路部Cの動作を制御する制御回路部Dとを備えている。
【0004】
このような従来の点灯装置では、定格電力の異なるHIDランプを点灯する場合、点灯しようとするランプに適合した高圧放電灯点灯装置を用いる必要があった。このため、用途に応じて光出力を変えたい場合にはランプに加えて、放電灯点灯装置ごと取り替える必要があった。このような理由により高圧放電灯点灯装置は、複数の定格電力のHIDランプを点灯することができる性能が望まれていた。
【0005】
そこで、特許文献1〜4では、複数種のHIDランプを負荷対象とした高圧放電灯点灯装置が提案されており、特開2003−229289号公報(特許文献1)ではHIDランプの管電圧が所定の値を超えるまでの時間を計測して負荷種を判別する手段、また、特開2005−310676号公報(特許文献2)ではHIDランプ始動後のランプ電圧の過渡変化によって負荷種を判別する手段、さらに、特開2006−302830号公報(特許文献3)ではHIDランプ始動後のランプ電圧の過渡変化を用いて複数の判定基準から負荷種を判別する手段、加えて、特開2006−73439号公報(特許文献4)ではHIDランプ始動後のランプ電圧の過渡変化と十分に安定に至った後の電気特性を用いて負荷種を判別する手段が開示されている。
【特許文献1】特開2003−229289号公報
【特許文献2】特開2005−310676号公報
【特許文献3】特開2006−302830号公報
【特許文献4】特開2006−73439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2003−229289号公報(特許文献1)には様々のランプ判別手法が開示されており、ランプ判別はランプを始動した後に、ある特性が所定の値に達するまでの時間などによって行われる。この場合、ランプが始動されてから判別されるまでの間は、ランプ種別が分からない状態で点灯することになる。通常、ランプが始動した直後はランプ温度が低く、ランプ内の封入物の蒸気圧が十分得られないため、ランプ電圧は低い。この低ランプ電圧領域では、放電灯点灯装置は定電流を出力することが一般的である。この出力電流値は、ランプ本体およびランプ電極を適切に加熱することができる値に設定する必要があるが、その値はランプ本体およびランプ電極の寸法が異なるため、ランプ電力種別によって異なる。この出力電流が低すぎる場合、電極加熱に時間がかかり、その間は電極からの熱電子放出が不足して電極前面に強電界が形成されてイオンによるスパッタが激しくなる。このスパッタにより電極物質であるタングステンがランプ管壁に付着して黒化を起こし、ランプ光束の低下につながる。さらに電流不足時には供給電力の極性反転時に発生する再点弧電圧のピーク値が高くなり、点灯装置から供給する電圧を超えた場合にはランプの立ち消えが発生する。一方、電流が大きすぎると、ランプ電極が過度に加熱されて電極物質の蒸発を招き、スパッタの場合と同様に、ランプ管壁の黒化からランプ光束の低下につながる。このため始動後の出力電流値は、ランプ寿命特性を確認して最適値に設定されている。ところが特開2003−229289号公報(特許文献1)の手法では、ランプを始動してからランプが判別されるまでの間はランプ電力種別が分からないため、最適な電力供給ができない。
【0007】
これに対して、ランプ判別までの間は判別する複数のランプ種別の最適値の中間に設定するなども考えられるが、最適値で点灯する場合に比べると長期のランプ寿命特性が悪化することが懸念される。さらにランプ種別が3種以上などの場合や、判別するランプの定格電力差が大きい場合には、たとえ出力電流を中間に設定しても最適値からの差が大きくなり、寿命特性の悪化が大きくなる。特に、ランプ始動が前回のランプ消灯から間もない場合、つまり高温再始動時には、既に高温であるランプに最適値より高い電流を供給する場合が発生し、激しい電極消耗が起こる問題がある。
【0008】
また、特開2005−310676号公報(特許文献2)には、ランプの過渡変化に応じてランプ電力種を判別する手法が開示されている。この場合も同様に、ランプ判別までの間はランプに最適な電力で点灯できない問題がある。
【0009】
さらに、特開2006−302830号公報(特許文献3)には、同じくランプの過渡変化に応じてランプ電力種を判別する際に複数の基準で判別を行う手法が開示されている。具体的にはランプ始動直後とその後の安定点灯に至る直前の二つの時点での変化率を使う方法が開示されている。この場合、ランプの点灯が安定に近い時点までランプ判別が行われず、ランプに最適な点灯がされない時間が長くなり、寿命特性がより悪くなることが懸念される。
【0010】
加えて、特開2006−73439号公報(特許文献4)には、HIDランプ始動後のランプ電圧の過渡変化と十分に安定に至った後の電気特性を用いて負荷種を判別する手法が開示されている。この場合もランプの点灯が十分に安定するまで判別が行われないため、ランプ寿命特性の悪化が懸念される。さらに、ランプの点灯が安定した後にランプ判別を行った場合には、その後に判別結果に応じてランプ電力を変えると点灯装置の光出力が変化してしまい、照度の変化から放電灯点灯装置の利用者に不快を感じさせてしまう問題もある。
【0011】
本発明は上述のような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特に電極などの消耗が起こりやすい高温再始動時に最適なランプ点灯を可能にし、ランプ寿命特性を良好に保ちながら、ランプ種別判別ができる放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、直流電源からの電力を変換して高圧放電灯に電力を供給する電力変換回路と、電力変換回路の供給電力を制御する点灯制御回路と、放電灯の電気特性を検出手段により検出し、検出手段から検出した電気特性から放電灯の定格電力を判別する判別手段と、放電灯の消灯から次回の点灯までの時間を計測する手段と、前回の判別結果を記憶する手段を備え、複数の定格電力種の高圧放電灯を負荷対象とし、そのうちいずれか1種を接続して点灯する放電灯点灯装置であって、計測された時間があらかじめ設定された時間よりも短い場合には前回の判別結果に基づいて、前記電力変換回路の供給電力を制御し、接続された高圧放電灯を点灯することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放電灯の消灯から次回の点灯までの消灯時間を計測し、その消灯時間があらかじめ設定された時間よりも短い場合には前回の判別結果に基づいて放電灯を点灯するので、高温再始動時に最適値と異なる供給電力で放電灯を点灯することが回避でき、ランプ寿命特性を良好に保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態1の回路図を示す。電解コンデンサC01には、例えば昇圧チョッパ回路により商用交流電源を整流平滑して得られた直流電圧が印加されている。この直流電圧は、図2に示すように、一般的にHIDランプを始動するために必要とされている消灯時のランプ両端電圧(無負荷2次電圧)V02=約300Vとなっている。
【0015】
制御電源回路1は、降圧用の抵抗R01,R02とツェナーダイオードZD1,ZD2の直列回路よりなり、制御回路に供給する電圧Vcc1、Vcc2を生成する回路である。
【0016】
降圧チョッパ回路2は、スイッチング素子Q01、回生用ダイオードD01、インダクタL01、コンデンサC02よりなり、スイッチング素子Q01が高周波でスイッチングすることにより、電解コンデンサC01に蓄積されている直流電圧をランプDLに必要な電力に変換する。極性反転回路3は、スイッチング素子Q02,Q03,Q04,Q05のフルブリッジ回路よりなり、フルブリッジ制御回路の制御下で、降圧チョッパ回路2のコンデンサC02の直流電圧を数十Hz〜数百Hzの低周波に変換する。イグナイタ回路4は、パルストランスとパルス発生回路を含み、ランプ始動に必要な高圧パルス(約3〜5kV)を発生させる。
【0017】
定Wla回路5は、電解コンデンサC01の一定電圧から負荷側に供給される電流値を抵抗R05により検出することでランプ電力Wlaを検出し、増幅回路OP1で任意の電圧値に変換し、抵抗R1とコンデンサC1からなる直流変換回路により直流電圧に変換する。変換された直流電圧値とマイコンMから出力されたPWM信号を抵抗R2、コンデンサC2により直流電圧値に変換された値とを誤差増幅器OP2により比較させる。比較されて出力された電圧値と高周波発振回路7で生成された三角波の高周波信号とを比較器CP2により比較することにより、降圧チョッパ回路2のスイッチング素子Q01の駆動信号を生成する。定Wla回路5の出力端に接続されているツェナーダイオードは誤差増幅器OP2の出力電圧の最大値を決めている。
【0018】
さらに、定Ila回路6によりランプDLが始動した直後の低インピーダンス時のランプ電流Ilaを制御させる。この回路は、ランプDLに流れる電流値を抵抗R06により検出し、その検出値と、抵抗R05で検出された電圧値との差を計算することにより実際にランプDLに流れる電流を算出している。つまり、本回路の基準グランドが電解コンデンサC01の負電位側に設けられているため、抵抗R06には、ランプ電流値のほかに、抵抗R05で検出される電解コンデンサC01からの放電電流値も同時に検出されてしまうために、差動アンプOP3により、抵抗R05で検出される値と、抵抗R06で検出される値との差を計算することにより、ランプDLに流れる電流を検出している。
【0019】
次に、検出された電圧を抵抗R3、コンデンサC3からなる直流変換回路により直流電圧に変換し、制御電源電圧Vcc1を分圧してなる基準電圧値と差動アンプOP4により比較することにより降圧チョッパ回路2のスイッチング素子Q01を制御する。
【0020】
高周波発振回路7は、コンパレータCP1,CP2,CP3とCR充放電回路などで構成されており、降圧チョッパ回路2のスイッチング素子Q01をオン・オフ制御するための高周波信号を発振しており、そのオン幅は、定Wla回路5及び定Ila回路6の出力を受けて、図3または図5の出力特性を実現するように制御される。
【0021】
図3は本実施形態の点灯回路のランプが初始動状態にある場合の出力特性を示す。ランプが始動した後、ランプが最初に判別されるまでは図3の点線で示す定Ila領域で駆動される。70Wランプの場合は1.4A、35Wランプの場合は0.9Aが最適値であるに対して、本実施形態ではランプが最初に判別されるまでは両者の電流値の間である1.1Aで点灯する。ランプ電圧が上昇した後は定Wla動作に移行するが、その電力値はランプ判別結果に従って決められる。上述の定Ila回路6では図3の定Ila領域を制御し、定Wla回路5では定Wla領域を制御している。
【0022】
放電灯判別回路8は、放電灯DLのランプ電圧Vlaを検出して、複数種の放電灯を判別する。たとえば、マイクロチップ社製PIC12F675(A/D変換機能・フラッシュメモリ付8ビットマイコン)のような汎用マイコンMで構成されており、抵抗R03、R04の分圧点の電圧を監視することにより、ランプ電圧を検出し、その検出値に応じて、コンデンサC2、抵抗R2のCR積分回路に出力するPWM信号のパルス幅を可変とすることにより、図3のVla≧60Vの定Wla領域を実現するように制御している。PWM信号はマイコンMの2番ピンから出力される。また、1番ピンは電源端子、8番ピンはグランド端子である。さらに、7番ピンは入力に設定されており、コンデンサC02の両端電圧から得られるランプ電圧値を読み取る。
【0023】
この放電灯判別回路8は、判別結果保持手段および消灯時間計測手段9も兼ねている。マイコンMの電源端子には電解コンデンサC6が接続されている。放電灯点灯装置の電源が遮断された後に制御電源電圧Vcc2が低下してある値を下回った場合には、マイコンMはランプが消灯されたものと判断して消灯時間の計測を開始し、低消費電力モードへ移行し、電解コンデンサC6に蓄積された電荷で動作を継続する。このランプ消灯時間の計測は、ランプが十分に冷却されて初始動とみなせる状態になるまで継続する。またこの間、マイコンMは前回のランプ判別結果を保持し続ける。
【0024】
次に、ランプの定格電力種を判別する方法について説明する。
【0025】
図13に35W、70Wランプのランプ始動後のランプ電圧Vlaの立ち上がり特性を示す。また、図14に種々の35W、70WランプのVla=30VからVla=40Vまでの所要時間を示す。図14から明らかなように、約6秒を境に35Wランプと70Wランプを判別することが可能であることが分かる。
【0026】
本実施形態の放電灯点灯装置の動作フローを図4に示す。ステップ#1で点灯装置に電源が投入されると、まず前回の電源OFF(消灯)時からの計測時間を確認して、初始動か再始動かを判別する(ステップ#2)。ここで前回の電源OFF(消灯)時から十分に時間が経過し、ランプがほぼ室温になっていると判断できた場合、再始動ではなく初始動であると判断し、ステップ#4でランプ判別のための電力制御モードを設定し、ステップ#7でランプを始動させる。その後、始動確認(ステップ#10)を経て、ランプ電圧の過渡変化特性によってランプ種別判別(ステップ#13)を行う。ここで判別された結果に応じて、ランプ制御を変えて、ランプを点灯安定させるとともにランプ判別結果を記録する(ステップ#14,#15)。このときの点灯装置の出力特性は図3のようになる。
【0027】
これに対し、ステップ#2で前回の電源OFF(消灯)時からまもなく、ランプが高温であると判別されれば、初始動ではなく再始動であると判断し、前回の点灯時に判別した結果を参照し(ステップ#3)、その結果に従ってランプの立ち上がり時の電力制御を行う(ステップ#5,#6)。また、参照したランプ判別は引き続き保持される。これにより、ランプが高温再始動である場合のランプ立ち上げ時に電力(電流)を過大入力することを回避でき、ランプの寿命特性を良好に保つことが可能となる。このときの点灯装置の出力特性は図5のようになる。前回の判別結果が70Wの場合は1.4A、35Wの場合は0.9Aが最適値として選択される。このように、再始動時には前回の判別結果を参照することにより、それぞれのランプに適した定Ila動作をさせることが可能となる。
【0028】
ステップ#17でランプが消灯された際、ステップ#18でランプ消灯時間の計測を開始する。この消灯時間の計測と判別結果保持は、ランプがほぼ室温に達し、初始動とみなせる状態になるまで行う。このように、放電灯点灯装置への供給電力が遮断された後もランプが十分に冷却されるのに必要な時間は消灯時間の計測手段と判別結果の保持手段が動作することで、ランプ消灯時に放電灯点灯装置への電力供給がない場合にも、前回判別結果を参照して、ランプを最適に点灯することが可能となる。
【0029】
なお、初始動であっても前回のランプ判別結果を参照するような制御も考えられるが、このためには長時間にわたり判別結果を保持する特殊な手段を設ける必要があり、点灯装置の大型化、コストアップを招く問題がある。また、初始動の場合には、前回の判別結果のみで制御するとランプが入れ替えられた場合に、異なるランプ電力を入力してしまう事態を招くため、ランプ脱着を長時間常時検知するなどといったことが必要となる。これに対し、本実施形態の場合には、ランプの寿命特性に影響を与える高温再始動時のランプ電力制御を前回の判別結果に従って行うことにより、ランプ寿命特性を良好に保ちつつ、より小型で安価なランプ判別機能付き放電灯点灯装置の提供が可能となる。
【0030】
(実施形態2)
本発明の実施形態2における安定器は、実施形態1で用いたものとほぼ同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態では、図6に示すような消灯時間計測手段および判別結果保持手段9を備えている。放電灯判別回路8のマイコンMは3,4番ピンをアナログ入力、5,6番ピンを2値出力に設定され、ランプ判別結果に応じて、70Wの場合には抵抗R9を介してコンデンサC7に、35Wの場合には抵抗R10を介してコンデンサC8に電圧を印加する。この電圧印加はランプが点灯している間、保持される。その後、放電灯点灯装置の電源が遮断されると、コンデンサC7あるいはC8に充電された電荷は抵抗R7またはR8を通じて放電される。放電時間はコンデンサC7,C8の容量と抵抗R7とR8の抵抗値で決まる。この放電時間はランプが消灯されて冷却されるのに十分な長さに設定されている。そして、放電灯点灯装置の電源が投入された際にコンデンサC7あるいはC8の電圧を参照することで前回の判別結果を知ることができ、かつ、コンデンサの電圧値レベルにより前回の消灯からの時間も分かる。この場合、マイコンMは実施形態1のように電源を保持して動作しつづける必要がない。
【0031】
(実施形態3)
本発明の実施形態3における放電灯点灯装置の構成は、実施形態1または2で用いたもの(図1または図6)と同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態の点灯装置の動作フローを図7に示す。この動作フローは、実施形態1で示したフローとほぼ同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態では、初始動の場合には実施形態1と同様のフローであり、出力特性も図3と同じである。これに対して再始動時にはステップ#5aと#6aでランプへの供給電力の選択を単に前回のランプ判別結果だけに基づいて切り替えるのではなく、前回の電源OFF時から今回の電源ON時までの消灯時間をも参照してランプへの供給電力を設定する。この場合の出力特性は図8となる。図中のTは消灯時間である。消灯時間が60秒未満の場合にはランプが非常に高温であるので、再始動時に投入するランプ電流Ilaを低く抑制する。こうすることにより、ランプ寿命特性をさらに改善できる。
【0032】
(実施形態4)
本発明の実施形態4における放電灯点灯装置の構成は、実施形態1で用いたものとほぼ同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態では、図9のように放電灯脱着検知手段10としてスイッチSW1が設けられている。スイッチSW1は放電灯DLの脱/着に応じて開/閉され、その開/閉はマイコンMの入力端子(ここでは5番ピンに設定)により監視されている。
【0033】
図10には点灯装置の動作フローを示す。この動作フローは、実施形態1で示したフローとほぼ同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態では、ステップ#2aでランプ脱着が検知された場合には、消灯時間の長/短にかかわらずランプ判別を再度行う。このことにより、消灯時間の計測中にランプが脱着された場合に前回の判別結果を参照して誤ったランプ電力に設定することを防止することが可能となる。すなわち、新たに取り付けられたランプが冷えているにも関わらず、高温再始動として前回の判別結果を用いてしまう不具合を生じない。
【0034】
(実施形態5)
本発明の実施形態5における放電灯点灯装置の構成は、実施形態1または2で用いたもの(図1または図6)と同一であるので、重複する説明は省略する。図11は点灯装置の動作フローである。実施形態4と同様にランプ脱着を検知するため、実施形態5ではランプの電気特性を用いる。具体的には、ステップ#19で再始動時にランプ電気特性から推定される消灯時間と、実際に計測された消灯時間に大きな差がある場合にはランプが脱着されたと判定して、ステップ#20で新たにランプ判別を行う。この場合、実施形態4のように特別なランプ脱着検知手段を必要とせず、安価な点灯装置の提供が可能となる。
【0035】
(実施形態6)
本発明の実施形態6における放電灯点灯装置の構成は、実施形態1で用いたもの(図1)と同一であるので、重複する説明は省略する。図12は点灯装置の動作フローである。ランプを始動した後、ステップ#2bで前回のランプ判別結果が保持されているかどうかの確認を行う。もし保持が行われていない場合には、ステップ#2の再始動判別を行わず、ステップ#4からランプ判別を行う。これにより、何らかの原因でランプ判別結果が保持できていない場合に、負荷として接続されているランプと異なるランプ電力を投入してしまう不具合を回避し、信頼性の高い点灯装置の提供が可能となる。
【0036】
このように、前回の判別結果を記憶する手段が前回の判別結果を保持していない場合には、新たにランプ点灯後に判別を行うことにより、放電灯点灯装置が設置されて初回の点灯時や、ランプが前回に点灯されて十分に時間が経過し、前回の判別結果を記憶する手段が動作を停止してしまった場合にも不具合を生じない。
【0037】
(実施形態7)
図15は本発明の放電灯点灯装置を用いた照明器具の構成例を示す。(a)、(b)はスポットライトに適用した例、(c)はダウンライトに適用した例であり、図中、11は点灯装置の回路を格納した電子バラスト、12は高圧放電灯を装着した灯体、13は配線である。いずれの照明器具も35W、70Wのような複数の種類の高圧放電灯を適宜選択して装着することができる。これらの照明器具を複数組み合わせて照明システムを構築しても良く、必要な照度、発光色、デザイン等に応じて、種類の異なる複数の高圧放電灯が混在して用いられても構わない。
【0038】
これらの照明器具、照明システムにおいて、本発明の放電灯点灯装置を用いることにより、ランプの寿命特性を良好に保ちつつ、ランプ電力種別を精度よく判別して点灯できる。これにより利用者は用途に応じてランプの電力種を変えることが可能となり、必要な光出力を用途に応じて容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態1の回路構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施形態1の無負荷2次電圧を示す波形図である。
【図3】本発明の実施形態1のランプ初始動時の出力特性を示す特性図である。
【図4】本発明の実施形態1の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態1のランプ再始動時の出力特性を示す特性図である。
【図6】本発明の実施形態2の回路構成を示す回路図である。
【図7】本発明の実施形態3の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態3のランプ再始動時の出力特性を示す特性図である。
【図9】本発明の実施形態4の回路構成を示す回路図である。
【図10】本発明の実施形態4の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態5の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態6の動作を示すフローチャートである。
【図13】始動時のランプ電圧立ち上がり特性の一例を示す特性図である。
【図14】ランプ種別判別手法の一例を示す説明図である。
【図15】本発明の照明器具の外観を示す斜視図である。
【図16】従来の点灯装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
1 制御電源回路
2 降圧チョッパ回路
3 極性反転回路
4 イグナイタ回路
5 定Wla回路
6 定Ila回路
7 高周波発振回路
8 放電灯判別回路
9 消灯時間計測手段および判別結果保持手段
10 放電灯脱着検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電力を変換して高圧放電灯に電力を供給する電力変換回路と、電力変換回路の供給電力を制御する点灯制御回路と、放電灯の電気特性を検出手段により検出し、検出手段から検出した電気特性から放電灯の定格電力を判別する判別手段と、放電灯の消灯から次回の点灯までの時間を計測する手段と、前回の判別結果を記憶する手段を備え、複数の定格電力種の高圧放電灯を負荷対象とし、そのうちいずれか1種を接続して点灯する放電灯点灯装置であって、計測された時間があらかじめ設定された時間よりも短い場合には前回の判別結果に基づいて、前記電力変換回路の供給電力を制御し、接続された高圧放電灯を点灯することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載の放電灯点灯装置であって、あらかじめ設定する時間は、放電灯が消灯後に冷却されてほぼ安定状態になる長さであることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の放電灯点灯装置であって、放電灯の消灯から次回の点灯までの時間を計測する手段と、前回の判別結果を記憶する手段は、放電灯点灯装置への供給電力が停止されても一定時間動作することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項3記載の放電灯点灯装置であって、放電灯の消灯から次回の点灯までの時間を計測する手段と、前回の判別結果を記憶する手段が動作する時間は、少なくとも放電灯が消灯後に冷却されてほぼ安定状態になるのに十分な長さであることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の放電灯点灯装置であって、計測された放電灯の消灯から次回の点灯までの時間が所定の時間より短い場合には、前回の判別結果と計測時間に応じて放電灯が点灯安定に至るまでの間の放電灯への供給電力を制御することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置であって、さらに放電灯の脱着を検出する手段を備え、同手段が放電灯の脱着を検出した場合には、放電灯の消灯から次回の点灯までの時間にかかわらず、放電灯の電気特性を検出手段により検出し、検出した電気特性から放電灯の定格電力を判別することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項6記載の放電灯点灯装置であって、放電灯の脱着を検出する手段は、放電灯の電気特性の検出手段により検出した電気特性から脱着を検出することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の放電灯点灯装置であって、前回の判別結果を記憶する手段が前回の判別結果を保持していない場合には、放電灯の電気特性を検出手段により検出し、検出した電気特性から放電灯の定格電力を判別することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の放電灯点灯装置を搭載したことを特徴とする照明器具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の放電灯点灯装置または照明器具を含む照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−243465(P2008−243465A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79846(P2007−79846)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】